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5/15伊勢雅臣メルマガ 国際派日本人養成講座『地球史探訪:ルーズベルト大統領が播いた「竜の歯」 ~ 日米戦争、冷戦、そして共産中国』について
5/27オバマ大統領の広島訪問でライス補佐官(トランプの副大統領候補として名前の上っているコンドリ-ザ・ライスとは違います。http://business.newsln.jp/news/201605161021170000.html)は「謝罪はしないし、日本から求められたこともない」とインタビューで答えていました。米国内向けの答弁と思われますが、トルーマンの原爆投下の正当性主張が米世論に与えた影響が大きいためです。本記事はその見方をフーバー大統領が完全に否定しています。日本は勿論中韓のように謝罪要求→金よこせのような乞食根性は持っていません。プライドが許しません。ですから謝罪は不要です。それより、歴史の見直しを進めてほしいです。事実を述べると「修正主義者」の烙印を押し、発言を封じ込めるのでは、米国も中韓と同じレベルになります。日米共にこの本が流通し、早く歴史の真実が各国民に伝わってほしい。”freedom betrayed”は未翻訳or未出版です。どこかで圧力がかかっているのかも。『ルーズベルトの開戦責任: 大統領が最も恐れた男の証言』(ハミルトン・フィッシュ著 渡辺惣樹訳)と『日米戦争を起こしたのは誰か ルーズベルトの罪状・フーバー大統領回顧録を論ず』(藤井厳喜、稲村公望、茂木茂道、加瀬英明著)は読めますが。
東京裁判だってパル判事は日本の開戦責任を否定していました。
http://rokugadb.html.xdomain.jp/book/Diplomacy/pal/body.html
http://www6.plala.or.jp/mwmw/kotoba.html
日本は如何に戦争したくなかったかは、本記事を読めば分かります。でも日本の陸海軍とも邪悪なFDRの罠に嵌まってしまいました。而も宣戦布告を外務省が遅らしてパールハーバーを攻撃したというおまけ付き(これが原爆投下の正当性の論理に繋がる)。尚且つセカンドアタックもしないという中途半端な攻撃で終わりました。日清戦争後の三国干渉に明治の軍人は「臥薪嘗胆」しました。それができなかったのは昭和の日本人は劣化したということでしょう。戦後の日本人は更に劣化して他国の言うがままに動き、捏造が得意な朝日新聞社の言うことを容易に信じてきました。常識が足りないとしか言いようがない。日本の弱体化に国民が自覚もなく手を貸してきたわけです。自分で自分の首を絞めてきました。いい加減、戦後利得者の跋扈を許さないようにしないと。
一人でも多くの日本人が真実の歴史に近づかんことを。他国や左翼のご都合主義の解釈ではなく。
記事
共産主義者に操られたルーズベルト大統領が、日本を開戦に追い込み、ソ連を護り育て、世界に戦争の危機をばらまいた。
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■1.「狂人(ルーズベルト)の欲望」
米国の第31代大統領ハーバート・フーバーは、退任後の昭和21(1946)年5月、日本を占領中のマッカーサー総司令官を訪れて対談した。そこで次のようなやり取りがあった、とフーバーは記録している。
< 「日本との戦争の全ては、戦争に入りたいという狂人(ルーズベルト)の欲望であった」と私(フーバー)がいうとマッカーサーは同意した。[1,p7]・・・
私(フーバー)は更に続けて次のように言った。「1941年7月の(日本への)経済制裁は、・・・例え自殺行為であると分っていても、日本に戦争を余儀なくさせるものであった。なぜなら、この経済制裁は、殺人と破壊を除く、あらゆる戦争の悲惨さを(日本に)強制するものであり、誇りのある国ならとても忍耐できるものではないからだ」。この私の発言にもマッカーサーは同意した。[1,p7] ・・・
さらにマッカーサーは言葉を続けて「ルーズベルトは1941年の9月に近衛と和平を達成できたはずだ。そうすれば太平洋と中国の自由、そして恐らく満州の自由を確保するというアメリカの目標をすべて獲得出来ていたに違いない」と言った。[1,p162]>
フーバーはルーズベルト大統領の前任者で、その回想録”Freedom Betrayed(『裏切られた自由』)が47年ぶりに出版された。そこでは第二次大戦が「民主主義 対 全体主義」の戦いだったというアメリカの史観は完全に否定されている。この回想録が完成後半世紀近くも刊行されなかったという事実が、その衝撃を表している。
同様の史観は今までにいろいろな歴史学者、軍人、政治家が発表して、弊誌でも紹介してきたが[a,b,c]、前大統領の発言となれば重みが違う。しかもフーバーは30冊もの著書を残した著述家であり、20数年かけて、後に資料25百万点を備えるスタンフォード大学のフーバー研究所に発展するほどの資料を収集して書いたのが、この本なのだ。
あと20年もすれば、この史観が世の定説になるのではないか。そのためにも、まず日本人自身がこういう本を読んで、自虐史観から脱しなければならない。今回は、フーバーの著書から、ルーズベルトが日本を開戦に追い込んだ経緯を見ていこう。
■2.共産ロシアを1933年11月に承認
フーバーはルーズベルトが冒した19の過ちを列挙しているが、その2番目に以下がある。
<ルーズベルトの第2の失策が、共産ロシアを1933年11月に承認したことである。四人の大統領と、五人の国務長官にわたって、共和党か民主党かを問わずに、そのような承認行為を、(国際共産主義運動の目的と手法の全体を知った上で)ずっと拒否してきた。
共産主義者は、宗教の信仰、人間の自由と民族や国家の独立をぶちこわすようなばい菌を運び、アメリカに浸透してくることを、彼ら(四人の大統領と五人の国務長官)は知っていたからである。彼らは、米国が共産ロシアを承認すれば、ソ連の威信と国力が高まることを知っていた。
ルーズベルトが(スターリンと)結んだ愚かな合意、つまり共産主義者は、米国の国境の内側では活動しないという約束は、48時間後には公然と反故にされた。共産主義の機関車と、それに乗った共産主義の乗客が、政府の高いレベルに入り込み、第五列の活動が全国にひろがり、フランクリン・ルーズベルトが大統領であった12年間に亘って、国家反逆者の行為が長く続く事になった。[1,p81]>
ルーズベルト政権に多くの共産主義者が入り込み、その政策を親ソ反日にねじ曲げていった様子がヴェノナ文書などで明らかにされている。公民権活動や、中国支援などの看板を掲げつつ、内実はソ連のために活動していた組織が1千もできた。これが日米開戦の悲劇の最大の要因となった。
■3.ソ連への軍事支援、航空機1万4千7百機、、、
ルーズベルト政権の親ソ路線は、ますます露骨になっていく。
<アメリカの歴史の全史を通じてもっとも政治の大道が失われたのが、ヒトラーがロシアを1941年に攻鑿したときに、共産ロシアを支援して、アメリカとロシアが非公然の同盟関係になったことである。・・・
ロシアを米国が支援すると言うことは、共産主義が世界に広がることであった。ドイツとロシアの戦争に米国は巻き込まれるべきではなかった。平和が持続するという最大のチャンスがあったのだが、ルーズベルト大統領は、その機会を捉えることができなかった。[1,p97]>
共産主義のソ連とナチスドイツの二つの全体主義国家が戦っているのだから、アメリカは独ソ戦を傍観していれば、とも倒れになり、アメリカも欧州も「平和が持続するという最大のチャンスがあった」というのが、フーバーの考えである。
それなのにルーズベルトはソ連に対して凄まじい軍事支援を行う。その内容は、航空機1万4千7百機(零戦の全生産量に匹敵)、戦車7千両、装甲車6千3百両、トラック37万5千台、ジープ5万2千台という規模であった。
もちろん、これだけの規模の軍事支援は、ルーズベルトだけでなく、実務面も含めて多数のソ連工作員が政権内に蠢(うごめ)いていたからこそ、可能になったのだろう。
■4.経済封鎖による「宣戦なき戦争」
<第5の誤りは、41年の冬にルーズベルト大統領が、米国がドイツと日本に対して、宣戦をしないで戦争を始めた事である。これは、数週間前の大統領選の公約に全面的に違反するものであった。[1,p93]>
1940年秋、ルーズベルトは、「米国は海外でのいかなる戦いにも巻き込まれない」との公約で、大統領再選を果たした[a]。そのわずか数ヶ月後の41年冬には、日独に対して経済封鎖という「宣戦なき戦争」を始める。
同年1月、幕末に黒船の圧力で強要した日米友好通商条約を破棄し、いつでも日本に対する原油や鉄鋼などの輸出を止めることができるようになった。「経済封鎖は戦争行為である」とはパリ不戦条約批准の際にケロッグ米国務長官の議会での発言である。
<第8番目の、ルーズベルトが犯した巨大な誤りは、1941年7月、つまり、スターリンとの隠然たる同盟関係となったその一ヶ月後に、日本に対して全面的な経済制裁を行ったことである。その経済制裁は、弾こそ射っていなかったが本質的には戦争であった。
ルーズベルトは、自分の腹心の部下からも再三に亘って、そんな挑発をすれば遅かれ早かれ報復のための戦争を引き起こすことになると警告を受けていた。[1,p099]>
この7月、米国は工作機械、石油、屑鉄などを輸出許可制とした。これらの品目を米国からの輸入に頼っていた我が国の新聞は、これは経済的対日挑戦であると論じ、駐米大使が正式抗議を申し入れた。ルーズベルトはさらに日本の在米資産を凍結し、8月には石油の対日全面禁輸を実施した。
「参戦しない」という公約を守りながら、戦争を始めるには、日本から攻撃をさせる必要があり、そのために日本を経済的窮地に追い込んでいったのである。
■5.近衛総理大臣の和平の提案を受け入れ拒否
第9の過ちは:
<ルーズベルトが近衛総理大臣の和平の提案を受け入れ拒否したこと。この和平の提案が受け入れられることを、日本に駐在するアメリカの大使もイギリスの大使も積極的に働きかけたし、又祈る様な気持で見守っていた。近衛が提案した条件は、満州の返還を除く全てのアメリカの目的を達成するものであった。
しかも、満州の返還ですら、議論する余地を残していた。皮肉に考える人は、ルーズベルトは、この重要ではない問題をきっかけにして自分の側でもっと大きな戦争を引き起こしたいと思い、しかも満州を共産ロシアに与えようとしたのではないかと考えることになるだろう。[1,p102]>
昭和16(1941)年9月、石油禁輸のもとで、あてどない対米交渉を続けていくのは座して死を待つのみ、と近衛内閣は10月下旬までに平和的交渉が決着しなければ対米開戦すると決意したが、昭和天皇は御前会議で「よもの海みなはらからと思ふ世になど波風のたちさわぐらむきようく」との明治天皇御製を読み上げられた。
この御心を受けて、近衛は日米首脳会談による打開を決意し、ルーズベルトに申し入れたが、拒否されたのである。
■6.「90日の冷却期間」提案を拒否
それでも、日本はなおも忍耐強く和平交渉の道を探ったが、ルーズベルトは第10の過ちで応える。
<昭和16年の11月に、天皇陛下が三ヶ月間のスタンドスティル、すなわち冷却期間をおこなうとの提案を、駐日の米国大使を通じてされたが、ルーズベルトは是を拒否した。米国の軍高官も、冷却期間の提案を受け入れるべきであるとルーズベルト大統領に促した。
当時、日本はロシアが、同盟関係にあったヒトラーを打倒する可能性を警戒していたのである。90日の冷却期間があって、(戦端開始の)遅れがあれば、日本から全ての戦意を喪失させて、太平洋で戦争する必要を無くしたに違いない。[1,p107]>
日本の真珠湾攻撃は12月8日だったが、この頃にはソ連軍の冬期大反抗が開始され、ドイツ軍をモスクワ正面から後退させていた。3ヶ月の冷却期間があれば、ドイツ軍の敗色は日本の朝野にも明らかになり、開戦の意思は萎(しぼ)んでいただろう。
<スティムソンの日記が明らかにしたように、ルーズベルトとその幕僚は、日本側から目立った行動が取られるように挑発する方法を探していたのだ。だから、ハルは、馬鹿げた最後通牒を発出して、そして我々は真珠湾で負けたのだ。[1,p107]>
陸軍長官スティムソンの日記には、日本にハル・ノートをつきつけたコーデル・ハル国務長官が「私はこの件(日米交渉)から手を引いた。あとはあなたとノックス海軍長官の出番だ」と語ったとある。
ハル・ノートは米国からの最後通牒として出されたものであり、それがソ連工作員ハリー・デクスター・ホワイトによって作成された事が明らかになっている。[b]
■7.日本に無条件降伏を要求し、原爆投下
こうして日本は対米戦争に追い込まれ、当初は西太平洋、東南アジアから米英勢力を駆逐したが、昭和20(1945)年には敗色濃厚となり、講和の道を探っていた。そこにポツダム宣言が出される。
< ポツダムにおけるトルーマンの過ちが、第16番目の過ちである。・・・
これ(JOG注: ソ連の東欧への勢力拡張を許した事)に加え、指導者の人々の忠告に反して、日本に無条件降伏の最後通牒が出されたことである。アメリカの経験ある多くの專門家が勧告した、天皇(みかど)を維持することを許す救済条項を入れないで、無条件降伏を要求したのである。日本側は、回答として、この条件のみを求めたが、原子爆弾が投下された。そして、最後になって、この条件が受け入れられた。1,p124]>
<第17番目のアメリカの政治の大道からの逸脱は、トルーマンが日本人の上に原子爆弾を落とすという非道徳的な命令を下したことである。日本は繰り返して平和を求めていたにもかかわらず。これはアメリカの全ての歴史のなかで、他に比較するもののない残忍な行為であった。これはアメリカの良心に対して、永久に重くのしかかるであろう。[1,p127]>
■8.「竜の歯が、世界中の至る所にばらまかれた」
こうして、ルーズベルトは共産主義の防壁である日独を打ち破って、ソ連に東独から北朝鮮に至る勢力圏を築かせた。さらに後任のトルーマンは中国の共産化を許した。
「第三次世界大戦を引き起こす危険のある竜の歯が、世界中の至る所にばらまかれた」とは、第19の過ちの一節だ。ギリシャ神話には、大地に播かれた竜の歯から武装戦士たちが生まれ出た、という逸話がある。
その予言の通り、冷戦と朝鮮戦争、ベトナム戦争の種はこうして蒔かれた。のちの共和党レーガン政権は日独の協力を得て、冷戦に打ち勝ち、ソ連の打倒を果たしたが、その際に利用した中国が強大化して、現在の世界を危機に陥れている。
日米戦争は、共産主義者に操られたルーズベルトの錯誤によって引き起こされたものだが、その時に播かれた竜の歯はいまも世界の平和を脅かし続けているのである。
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5/12日経ビジネスオンライン 『日本人には「リアリズム」の視点が欠けている 今、世界史と地政学を学ぶ理由(1)』、5/13日経ビジネスオンライン 『移民を先兵に領土を奪ってきたリアルな歴史 今、世界史と地政学を学ぶ理由(2)』について
日本の歴史学会は実証主義とアイデアリズムをベースにしていると茂木氏は言いっていますが、実証主義については「慰安婦」や「南京虐殺」など中韓のデッチアゲを認め、畸形左翼のイデオロギーで歪曲したものが大手を振ってまかり通る世界です。また、アイデアリズムというのもダーウィンを発展させた社会進化論をベースにした進歩主義(≒リベラリズムではないか)で保守主義とは相容れない価値観でしょう。戦後民主主義が齎した弊害と思います。歴史学会の偉い先生が教科書を執筆する訳ですから堪ったものではありません。偏向教科書になるのは必定。教科書以外であれば、「表現の自由」の範囲内ですが。育鵬社や自由社の教科書が採択されないのは問題です。出版社が教育委員や先生に賄賂を与えて、教育を捻じ曲げていることに国民はもっと怒るべきです。
日本人は権威に弱いというか、安易に権威を有難がり過ぎでは。和田秀樹の『学者は平気でウソをつく』にも権威に対しもっと眉に唾して見た方が良いとありました。学説は時代と共に変わり、ニュートン力学からアインシュタインの相対性理論に、フロイトも世界では20年くらい前から相手にされなくなったとのこと。フロイトが日本でまだ生き延びているのは、マルクス経済学を教えている大学がまだあるのと同じです。東大=官僚と朝日新聞を有難がる心理は戴けません。日本に害を為す連中は糾弾していかねば。
これに対し、地政学はリアリズムの世界、突き詰めればハードパワー(軍事力)とソフトパワー(経済・文化)の世界です。
第二次大戦で果たした日本の世界史的役割は、副次的効果(主たる目的は資源確保・アウタルキーできる生存権確保)でありましたが植民地の解放を成し遂げたことです。トインビーもそれを認めています。日本の戦後利得者達が認めないだけです。護憲を言っている連中は言うことで利権(メシの種)を持っているからです。
<1956年10月28日付け「オブザーバー」紙
ひとたび失われた(欧米の)政治権力はもはや回復できない。インドシナ半島を取り戻したフランスはわずか8年でベトナムの抵抗に屈し、インドネシアを取り戻したオランダは戦前の地位を回復できないで独立を承認した。・・・・・マレー半島とシンガポールで起きた激変はイギリス軍の軍事的瓦解である。ひとたび惨敗した以上、失われた権威は戻らない。・・・・・第二次大戦において日本人は、日本のためよりもこの戦争によって利益を得た国々のために偉大な歴史を残したと言わねばならぬ。それは日本が掲げた思想『大東亜共栄圏』に含まれた国々である。今日のアジアの最重要課題は、この覆された日本の衣鉢を誰が継ぐかである。日本人が歴史の上に残した業績の意義は、西洋人以外の人類の面前で、アジアとアフリカを支配してきた西洋人が、過去二百年の間に考えられてきたような不敗の半神ではないことを明示したことにある。イギリス人も、フランス人も、オランダ人も、ともかくわれわれは皆ばたばたと将棋倒しにやられてしまったのだ。やっと最後にアメリカ人だけが軍事上の栄誉を保てたのである。>
米国は親中派の国の首脳を、パナマ文書を利用して追い落としを図っているように見えます。英国のキャメロンや豪・ターンブル等。キャメロンはオズボーン(パンダハガー、ハニーにかかったのではと小生は見ています)財務相の言いなりになって臍を噛んでいるのでは。エリザベス女王の園遊会での中国人に対するrude発言は内閣に「中国に近づくな」という事を示唆したのでは。中国経済が崩壊寸前で「元」を活用して儲けようというのは甘すぎ。独も中国に近づきすぎてEUもガタガタになるでしょう。6/23Brexitは起きないと見ていますが。
記事
「世界史」と「地政学」がにわかに注目を集めている。メディアの報道を見ると「地政学的リスク」という文字があちこちで躍る。書店では「○○の世界史」というタイトルが棚を占める。地政学とは何なのか。世界史とはいかなる関係にあるのか。地政学と世界史を学ぶと、世界で起きているニュースはどのように理解できるのか。『世界史で学べ! 地政学』などの著書がある茂木誠氏に聞いた。
(聞き手 森 永輔)
—「地政学」という文字を頻繁に目にするようになりました。この言葉の使われ方を見ていると、「世界史」と何が違うのだろうという疑問が浮かびます。

東京都出身。大学受験予備校の世界史科講師。iPadを駆使したビジュアルな授業に人気がある。近著に『世界史で学べ! 地政学』『ニュースの“なぜ?”は世界史に学べ』がある。(撮影:菊池くらげ、以下同)
茂木:まず「歴史」についてお話ししましょう。事実の羅列・記録は歴史ではありません。なので年表は歴史とは言えません。年表を歴史にするためには歴史観を加える必要があります。たくさんある出来事の中で、どの事実に注目するのか、ある事実ともう一つの事実はどういう関係にあるのかを解釈するための視点ですね。
—私が高校時代に習ったのは世界史ではなくて年表だった気がします。その年表すら十分に覚えることはできませんでしたが。
茂木:同じ事実を見ても、その解釈の仕方は幾通りもあります。その解釈の視点の一つが「リアリズム」という考え方に基づいて歴史を見る方法です。「歴史には正義も悪もない。生存競争を続けているだけ」とする歴史観です。地政学は「リアリズム」の一つで、地理的条件に注目して国家の行動を説明します。
学者や教科書の執筆者は自分の歴史観を示すのを嫌がる傾向があります。歴史観は多様なので、異なる歴史観を持つ人から必ず批判されます。それを恐れて、事実の羅列に終始するのです。
—他の国の歴史教育も、事実の羅列にとどまる傾向があるのですか。
茂木:例えば米国には検定制度がありません。だから、教科書会社がそれぞれの歴史観に基づいた教科書を出版しています。日本への原爆投下を「仕方がなかった」と解釈する教科書があれば、「必要なかった」と書いているものもあります。
日本の学会はこの半世紀にわたって事実に重きを置く実証主義とアイデアリズム(理想主義)に重心を置いてきました。アイデアリズムというのは、世の中は「進歩」「統一」「戦争のない世界」などの理想(アイデア)に向かって動いているという歴史観です。
例えば国連中心主義というのはアイデアリズムに基づいた考え方の典型例です。日本もこれに則って、第2次世界大戦までの行動を反省し、国連の一員として活動し、軍備を制限すれば平和に貢献できると考えてきました。
ところが、周囲を見渡すと、どうもそうなっていないことが肌感覚として分かってきました。それが、世界史と地政学が注目を集めるようになった原因なのだと思います。
悪である共産主義が打倒され、冷戦が終わった。自由と民主主義の世界が実現し、紛争はなくなるだろうと米国の思想家フランシス・フクヤマ氏が『歴史の終わり』で論じました。しかし、そんな世界は到来しませんでした。中東は大混乱に陥って、過激派組織の「IS(イスラム国)」が登場。中国は海洋進出を強化。ロシアもウクライナ問題に介入し、西側に対して再び対決姿勢を取るようになりました。
こうした現実を説明する手段として、リアリズムが注目されているのだと思います。
学校では教わらないリアリズム
—今、ビジネスパーソンが世界史と地政学を学ぶ意義は何でしょう。
茂木:ビジネスと地政学はかなり遠い関係にあると思います。ビジネスは「理性」の世界ですよね。数字に基づいて合理的判断する。市場があって儲かるところに出ていく。一方、地政学は不合理と感情の世界です。価格が多少高くても自国製品を使いたいとか、生産性が低くても国内での雇用を優先したいというのは感情です。「ナショナリズム」の世界と言い換えてもよいでしょう。しかしこれがリアルな現実なのです。
ビジネスパーソンにはぜひリアリズムの考え方を身につけていただきたいと思います。日本の学校では、小学校でも中学校でも、アイデアリズムに基づいた教育がなされます。「話し合えば、ジャイアンとも仲良くやっていける」と習うわけです。性善説に立っているわけですね。こうしたしつけの影響は大きい。結果として社会や世界に出た時に、騙されたり、いいように使われてしまったりするわけです。
世界にはずるいことをする国や、ダブルスタンダードで外国に接する国があることを世界史と地政学から学ぶ必要があるわけですね。英国は第1次世界大戦の時、トルコ人が牛耳るオスマン帝国を内部から崩壊させるべくアラブ人をけしかける一方で、同帝国の支配地域をアラブ人の意向を無視して列強で分割する協定をフランスやロシアと結びました。米国はイスラエルの核開発には目をつぶる一方で、イランや北朝鮮には厳しい態度を崩しません。
私は世界史と地政学を学ぶべき理由として、日本人は「大きな地図」を見る訓練ができていないことがあるのではと考えています。「小さな地図」はちゃんと見ています。しかし、大きな地図にはなかなか注意がいきません。
日露戦争が典型例です。朝鮮半島の権益を巡って日本と帝政ロシアが対立しました。日本人の頭の中には、日本とロシア、朝鮮半島、中国の一部からなる地図が思い浮かぶ。これが小さい地図です。
一方、日露戦争は、南下政策を進めるロシアとこれを阻止しようとする英国とが演じるグレートゲームの一部をなすものでした。英国は、クリミア戦争ではロシアと戦うオスマン帝国を支援、第2次アフガニスタン戦争ではロシアに支援されたアフガニスタンと対決。日露戦争ではロシアと戦う日本を支援しました。この「大きな地図」については、司馬遼太郎さんが書いた「坂の上の雲」も多くの紙幅を割いてはいません。
—日本人は大きな地図を見られるように訓練する必要があるのではないでしょうか。
茂木:世界観の欠如ですね。日露戦争の時、ロシアとの講和に反対し、ロシアの当時の首都だったサンクトペテルブルグまで攻め込むよう新聞に意見広告を出した東大教授がいました。大きな地図を見ることができなかったのでしょう。
ただ、大きな地図を見られる人は限られています。世界に影響を及ぼすことのできる大国、例えば米国、英国、ロシアといった国のリーダーだけです。
学ぶべきは近代以降の支配国の歴史
—ビジネスパーソンが改めて世界史を学ぼうと考えたとき、どこから手を付けるのがよいでしょう。期間は長いし、国の数も多いので悩みます。
茂木:近代以降の帝国主義の時代、日本で言えば明治時代からの歴史を学ぶべきです。この時代を動かす原理は「国益」です。これは今にも通じます。古代や中世はとりあえず放っておきましょう。これらの時代を動かしていた原理は「宗教」で今とは異なります。
注目すべきは支配する側だった国、列強ですね。欧州では英国、フランス、ドイツ、オーストリア、イタリアの5大国。これにロシアと米国。あと日本を加えた8大列強です。
—日本史を見ると、スポットライトが当たる時期というのは決まっています。NHKの大河ドラマは戦国時代と明治維新を繰り返し取り上げています。世界史にも同様の時期があるのでしょうか。
茂木:世界史、なかでも欧州史は統一と混乱の繰り返しです。最初の統一はローマ帝国が果たしました。これが崩壊して中世が始まる。中世はカトリック教会が再統一します。これをルターによる宗教改革が打ち壊した。カソリックとプロテスタントによる宗教戦争が拡大して混乱。これを収集して統一を果たしたのがナポレオンでした。ナポレオン体制が崩れると三国同盟と三国協商が対立する混乱の時代が訪れ第1次世界大戦へとつながります。第1次世界大戦でオーストリア、ロシア、ドイツの3つの帝国が滅びると、生き残った国々は国際連盟を結成して統一を図りました。
(次回に続く)
『世界史で学べ! 地政学』などの著書がある茂木誠氏に聞く第二弾。世界の注目を集める現在進行形の事件について、その意義と背景をリアリズムの視点から斬る。取り上げるのは「ブレグジット」「パナマ文書」「中国の一帯一路政策」「カラー革命とアラブの春」だ。
(聞き手 森 永輔)
(前回記事はこちら)
ブレグジットは、英国によるドイツ覇権への反発
—ここからは、いま注目を集めている出来事を対象に、世界史と地政学の視点からどう解釈できるかうかがいます。最初のテーマは英国のEU(欧州連合)離脱(ブレグジット)です。英国はこれまでオフショアバランシングを対欧州大陸政策の柱にしていました。大陸に覇権国家が現れそうな時にはそのライバル国を支援して叩くというものです 。第2次世界大戦ではドイツを叩くべく、ソ連と手を組みました。それまでグレートゲームを戦ってきたにもかかわらずに。ブレグジットはこのオフショアバランシングとはずいぶん趣を異にしているように見えます。

東京都出身。大学受験予備校の世界史科講師。iPadを駆使したビジュアルな授業に人気がある。近著に『世界史で学べ!地政学』『“ニュースのなぜ?”は世界史に学べ』がある。(撮影:菊池くらげ、以下同)
茂木:英国にとってドイツは長年のライバルです。ブレグジットは、ドイツの風下には立ちたくないという英国のナショナリズムの表れでしょう。英国から見ると、EUはドイツに仕切られている機関にほかなりません。
英国は産業革命によっていち早く工業立国を実現したものの、19世紀後半には輸出額でドイツに抜かれ、金融立国に転換しました。輸出によって蓄えた資本を外国に投資し、その収益によって成り立っています。いま、この金融国家の地位もドイツに脅かされるようになりました。冷戦が終わって東西ドイツが統合し巨大ドイツが復活したことも英国にとって脅威でした。ユーロ導入を拒否してポンドを守ってきたのもそのためです。
ドイツが仕切る大陸市場に依存したくない英国が選んだ投資先が中国です。中国の習近平国家主席が昨年10月 に訪英した時に、キャメロン首相らが非常な歓待をしたことが話題になりました。中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加するといち早く名乗りを上げたのもこのためです。米国の不興を買うことも厭いませんでした。
—第1次世界大戦の時にロシアと手を組んでドイツを叩いたように、他の国と協力してドイツにビジネス的に対抗することは考えなかったのでしょうか。
茂木:現在の欧州にドイツと対抗する力を持った国は見当たりません。
ロシアも頼りにはなりません。プーチン大統領とドイツのメルケル首相が良好な関係を維持しています。またロシアは、「90年代に外資導入で痛い目にあった」というネガティブな感情を英国に対して抱いています。プーチン大統領の前任だったエリツィン大統領が外資の導入と資本主義化を推進したのに伴って、ガスや石油といった基幹産業を含む多くの企業が外資企業やそれと結んだ新興財閥によって買収されたからです。
米国のドル支配に対しても、英国は快く思っていません。ドルもユーロも敵となれば、人民元と手を組むしかない、というのがロンドンの金融街(シティ)の判断です。
パナマ文書はドイツによる英国への意趣返し
パナマ文書が注目を集めています。これはドイツによる英国への意趣返しの面があるでしょう。この文書を最初に入手したのは南ドイツ新聞とされています 。そしてキャメロン首相と習近平国家主席の名前がいの一番に報じられました。
この文書を世界に公開した国際報道ジャーナリスト連盟(ICIJ)という団体には、米国の代表的ヘッジファンドのジョージ=ソロスが資金を提供しています。ウォール街は、英国と中国が関係を密にするのを面白く思っていません。同文書を巡って、米国の大物政治家の名前が出てこないのも作為を感じます。
一帯一路政策は「モンゴル帝国」の再来
—なんともきな臭い話ですね。次にお伺いしたいのは中国が進める一帯一路政策です。これは習近平国家主席がモンゴル帝国(元朝)の再現を狙っているのでしょうか。極東から欧州に至る巨大な勢力圏を築こうとしている。
茂木:その通りです。目的の一つは、長い国境線を接し、潜在的には緊張関係にあるロシアとの間でユーラシア同盟を築きたいということ。同時に、カザフスタンなど旧ソ連圏の中央アジア諸国に投資して影響力を拡大すること。
—ロシアはかつて2世紀にわたってモンゴル帝国に支配されました。一帯一路政策が経済的に元を再現するものであれば、ロシアはこれに恐怖を抱いているのではないでしょうか。
茂木:そうですね。ロシアはその2世紀を「タタールのくびき」として暗黒時代と位置づけています 。「タタールがまた来た」という思いかもしれません。
ロシアは極東でも中国の人口圧力を警戒しています。バイカル湖以東のロシア人口が620万人で千葉県の人口程度しかいないのに対し、国境の南の旧満州には1億人が住んでいます。
米国は移民を先兵にテキサスとハワイを手に入れた
—移民を受け入れることは「人道的に正しいこと」というイメージがあります。しかし、現実には移民は“武器”と言えませんか。茂木先生は著書の中で「テキサス共和国」について触れています。米国は、当時はメキシコ領だったテキサスへの移民を拡大。これは合法的なものでした。人口でメキシコ人を上回ると独立を宣言し、米国への加盟を申請し、28番目の州になりました 。
ハワイでも同様のことをしています。大量の移民を送り込んだ後に「ハワイ革命」を起こし、米国の50番目の州となった 。
茂木:おっしゃる通りです。ロシア系住民が多いクリミアをウクライナから分離してロシアに併合したプーチン大統領も、当然、これらの歴史的事実を意識していたでしょう。
加えて、一帯一路政策は純粋な経済政策ではないことも、ロシアの恐怖心を高めていると思います。例えば中国企業が、「一帯」の西端に位置するギリシャ最大の港、ピレウス港を買収しました 。ロシアから見ると、ロシア艦隊が黒海から地中海に出る際のチョークポイントを、中国に塞がれる可能性が出てきました。
同様に中国は、海路である「一路」の通り道であるオーストラリアでも港を抑えています。米海兵隊がローテーションで駐留するダーウィンの港を、中国企業が99年にわたって借りる契約を結びました 。米豪の同盟関係にくさびを打ち込むことが狙いでしょう。オーストラリア経済は、資源を海外に販売することで成り立っています。その最大の貿易相手は中国です。
—オーストラリアが、米海兵隊の拠点近くの港を中国に貸し与える判断までしているのでは、日本の潜水艦が選ばれないのも道理ですね(関連記事「豪潜水艦の商談を機に日本の防衛産業を考える」)。
茂木:オーストラリアには中国からの移民が年々増えています。中国傾斜を強めるターンブル政権は彼らの意向にも配慮する必要があったのでしょう。
—ここでも移民が重要な役割を果たしているのですね。
中央アジア諸国は一帯一路政策をどう思っているのでしょう。彼らもモンゴル帝国に支配された記憶を思い出すのでしょうか。
茂木:ロシアほどではないと思います。民族的にも同じ系統ですし。
例えばカザフスタンの場合、反イスラム過激派ということで中国と利益を共有しています。ナザルバエフ大統領 は旧ソ連時代から政権を維持しており世俗主義をとっています。従ってイスラム過激派とは相容れません。一方、中国はISが新疆のウイグル人独立派に勢力を拡大しようとしているのを警戒しています。「反テロ」で両者の利害は一致します。
—ロシア以外に大きな反対勢力がないとすると、一帯一路政策は順調に進むのでしょうか。
茂木:この政策の進み具合を左右するのは、周囲の国の動向よりも、上海株の暴落以来、失速している中国経済のほうだと思います。
カラー革命とアラブの春の背景にあったもの
—米国の状況についてうかがいます。内向き志向がどんどん強まっているように見えます。オバマ大統領は2013年9月に「米国は世界の警察官ではない」と明言しました 。次期大統領を目指して予備選を戦う候補者たちも、格差を中心とする内政にその興味が向いています。TPP(環太平洋経済連携協定)やTTIP(環大西洋貿易投資協定)などのメガ自由貿易協定にもネガティブな姿勢を示しています。
茂木:おっしゃる通りですね。米国が内向きになった理由はイラク戦争とリーマンショックの二つです。イラク戦争が長引いたため、厭戦気分が広まりました。「なぜ中東で、米国の若者が命を落とさなければならないのか」という声が高まっています。
リーマンショックは貧富の格差を拡大させました。奨学金を返済できずに苦しんでいる人がたくさんいます。ここに、共和党のトランプ氏や民主党のサンダース氏が大統領候補として躍進してきた理由があります。
米国が力を落としたのにつけ込んで、ロシアはウクライナに、中国は南シナ海に触手を伸ばしました。
—アラブの春も米国の衰退が原因でしょうか。
茂木:アラブの春は様相が異なります。これはソ連の崩壊を受けて米国が中東の親ロシア政権を倒す運動の一環でした。
アラブの春で倒れたのは、エジプトのムバラク、チュニジアのベン・アリ、リビアのカダフィの各政権です。いずれも親ソ派でした。これらの国は冷戦終結を受けて米国にすり寄る姿勢を見せましたが、米国は面従腹背と見て信用しませんでした。
アラブの親ロ政権が倒される中で、唯一、政権を維持しているのがシリアのアサド政権です。ロシアが軍事介入に踏み切ったのはそれゆえです。ロシア海軍がシリアのタルトス港を拠点として利用しているのも理由の一つです 。
アラブの春に先立って、ジョージア(グルジア)でバラ革命が、ウクライナでオレンジ革命が起こりました。これは旧ソ連諸国における親ロ政権を倒したものです。スポンサーは例のジョージ・ソロスの財団でした。アラブの春はこれを中東に応用したものです。
—独裁政権が倒れるのは、アイデアリズムの視点から見れば好ましいことですが、その結果起きたのは混乱でした。
茂木:中東には「どんな独裁であっても混乱よりはましだ」ということわざがあります。
—なんとも皮肉なことわざですね。
再びシーパワーを目指す中国
茂木:中国の話をしましょう。習近平政権は明時代の中国のようにランドパワーからシーパワーへ転換することを目指しているのだと思います。永楽帝は、鄭和に南海遠征を命じました 。艦隊を東南アジアからインド洋、東アフリカへと回らせ、周辺国に朝貢するよううながしたのです 。
—しかし、その試みは長続きしませんでした。
茂木:北方騎馬民族のモンゴル人が中国の北辺を再び襲ったからです 。
—茂木先生は著書の中で、中国は長いこと南と北に敵を背負ってきたことを説明されています。「北虜南倭」ですね。北には騎馬民族、南には倭寇。米国の力が衰え、ようやく海洋進出の機会を得た中国は、北を襲う可能性があるロシアと敵対したくはないでしょうね。
茂木:中国の海洋進出が可能になったのは、ソ連崩壊で北の脅威から解放されたからです。
冷戦期に、ソ連に対抗するため毛沢東とニクソンが米中関係を正常化して以来、両国は良好な関係にありました。だからこそ、中国は経済を急速に発展させることができた。しかし、海洋進出やAIIBの設立で流れが変わりました。AIIBの設立は米国にとって、飼い犬に手を噛まれたようなものでしょう。米国は今後、警戒感を強めるでしょう。
これまでは米国防総省と防衛産業が中国を敵視しても、米国務省と金融界は中国に好意的でした。しかし今は国務省も警戒感を強めています。習近平国家主席は「やり過ぎた」と言えるでしょう。
—米国の戦略家、エドワード・ルトワック氏の近著『中国4.0』によると、習近平政権はやり過ぎに気付き、政策を改めつつあるようです。
茂木:習近平政権が政策を改めるかどうかは国内政治の動向によるでしょう。カギを握るのは人民解放軍です。独裁政権は民衆の声を気にしませんが、軍の忠誠は政権の維持に不可欠です。そして軍の中には「米国なんか目じゃない」と主張する強硬派がいるのです。
—世界史と地政学の視点から分析すると、米中関係の将来像が読めるものでしょうか。
茂木:地政学では北米大陸を巨大な島と考えます。カナダやメキシコが、米国を軍事的に脅かすことは考えられません。一方、中国は常に、北方にロシアの脅威を抱えています。
—オバマ政権の動きを見ていると、ウクライナ問題でもシリア問題でもロシアに対して寛容であるように見えます。これは、中国の北辺にプレッシャーをかけ得る存在であるロシアとの関係を保ちたい意図があるからでしょうか。
茂木:オバマ大統領がそこまで考えているかどうかは分かりません。しかし、側近の中にはそのように考えている人もいるでしょう。
—だとするとオバマ政権は、安倍政権がプーチン政権との関係を深めるのも歓迎でしょうか。
茂木:日ロ首脳会談を開くことにオバマ大統領は不快感を示していますね。しかし、リアリズムの視点に立てば、日ロの関係強化を認めることもありうるでしょう。
ロシアがISへの空爆を始めて以降、ロシアに対するオバマ政権の姿勢はソフトになっています。対ISでロシアの力を利用しようと考えているのでしょう。同じように、中国を牽制するためにもロシアを利用しようと考えるかもしれませんね。
だとすると、現在の環境は、日本にとって北方領土交渉を進めるチャンスです。米国からの妨害を受けずに対ロ交渉を進められますから。米国の衰退は、日本が自立した外交を展開する千載一遇のチャンスなのです。
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5/13日経ビジネスオンライン 池田元博『プーチン大統領が安倍首相を歓待した3つの理由 ~孤立脱却、対中、そして経済~』、5/15日経『石油転変(7)ロシア、ガス外交暗転 供給盾に権勢、市況急落の誤算』について
中国はレアアース、ロシアはガスを政治力として利用してきています。独裁国家のやり口です。サウジも宗教国家であり、独裁国家で石油を政治力に使ってきました。米国のシエールオイルを潰すために故意に原油価格を下げたのも独裁国家だからできることです。
ルトワックの言うように、中露分断が日本の独立にとって死活的に重要ですので、領土問題が一気に片付かなくても、シベリア振興の経済協力をして行った方が良いと思います。袴田茂樹氏の「北方4島」一括返還は無理でしょう。これでは敵国を増やすだけです。
藤和彦氏の言う日本にガスパイプラインを敷くのは、日経記事を読みますと危険な気がします。メタンハイドレートも商用化できればパイプラインも必要なくなります。
池田氏が言うように、プーチンの交渉術に嵌まってはダメで、当方からの提案に対して、如何に相手の譲歩を引き出していくかが大事になります。
確かに、安倍—プーチンでなければ、領土問題は解決しないかもしれません。国民の支持と支援が大切です。戦争しないで奪われた領土が還ることはありません。金で買えば別でしょうけど。米国のアラスカ買収はこの例です。ただ、情報が一瞬に世界を俟ることができる今日にあって、金で領土を売るのは不面目になりますので難しく、経済協力の形しかないと思います。
日経ビジネスオンライン記事

5月6日、ロシアで2年ぶりに日ロ首脳会談が開かれた(代表撮影/ロイター/アフロ)
プーチン大統領は大のスポーツ好きだ。自ら様々なスポーツに果敢に挑戦するし、スポーツが国民の愛国心をくすぐり、ひいては国民の支持を自身に集める手段として利 用できることも十分に心得ている。
そのロシアで5月6日、2016年のアイスホッケー世界選手権チャンピオンシップが開幕した。今年は80回目の記念すべき大会で、アイスホッケーはロシア国民の間でとくに人気のスポーツだ。
そんな注目度の高い国際大会の開幕式での演説は、国家指導者にとって格好の国民向けアピールとなるはずである。ところがモスクワで開かれた開幕式に、プーチン大統領の姿はなかった。この日、栄誉ある演説をしたのはナンバー2のメドベージェフ首相だった。
3時間超の首脳会談で見せた「日本重視」の姿勢
大統領はどこにいたのか。一昨年の冬季五輪の開催地として世界的に有名となった、南部の保養地ソチである。
日本の安倍晋三首相との首脳会談が主要な目的だった。同日夕刻から始まった日ロ首脳会談は少人数会合、通訳のみを交えた2人の会談、そして閣僚らも交えたワーキングディナーと続き、合計で3時間10分に及んだ。大統領は当初、日ロ首脳会談を短時間で切り上げ、首相が同意すれば一緒にモスクワに向かい、チャンピオンシップの開幕式に出席する案も検討したようだが、結局は断念した。それだけ安倍首相とのソチでの会合を重視したわけだ。
「日本は単に我々の隣国だけでなくパートナーだ。とくにアジア太平洋地域における重要なパートナーである」――。大統領は会談の冒頭、日本を重視する姿勢を強調し、ソチを訪れた首相を歓待した。
非公式会談にもかかわらず、ディナーまで用意してもてなした。3時間を超える会談時間は2013年4月、安倍首相がモスクワを公式訪問した時とほぼ同じだ。これらを踏まえれば、日本重視の姿勢は単なる外交辞令ではなく、大統領の本音とみてもいいだろう。
15年3月、伊首相訪ロ以来の画期的な出来事
では大統領が安倍首相のソチ訪問をここまで歓待したのはなぜか。大きく3つの理由を挙げられるだろう。1つ目は国際的な孤立からの脱却だ。
安倍首相の訪ロは2014年2月、冬季五輪開会式への出席をかねた首脳会談のため、ソチを訪問して以来となる。ところが今回、首脳会談に同席したラブロフ外相は終了後のメディア向けブリーフィングで、「安倍首相が13年4月にロシア(モスクワ)を訪問して以降、初めてとなる本格形式の訪問となった」と強調した。五輪の開会式や国際会議の場を利用した首脳会談とは質が全く異なるというわけだ。なぜ、そこまでこだわるのか。
ロシアと西側諸国との関係は14年以降、急速に悪化した。同年春、ロシアがウクライナ領のクリミア半島を併合し、同国東部にも軍事侵攻したためだ。日米欧はロシアが国際秩序を乱したとして主要8カ国(G8)の枠組みから除外し、厳しい経済制裁も科した。当然、西側との首脳外交も大きく停滞した。
もちろん、ウクライナ危機後も訪ロする外国の首脳はいたが、こと主要7カ国(G7)に限れば、もともとロシアと関係が深いイタリアのレンツィ首相が15年3月にモスクワを訪問したぐらいだ。G8の枠組みから外されたロシアは、西側主要国との首脳外交の面でも相当な孤立感を味わっていたといえるだろう。
確かに、危機後にドイツのメルケル首相、フランスのオランド大統領がロシアを訪問した経緯はあるが、ウクライナ危機の収拾策の協議や記念行事への出席が目的で、2国間関係の発展のために特別、訪れたわけではない。ラブロフ外相が重視する「本格形式の訪問」という意味で、ロシアにとって安倍首相の訪問は、伊首相の訪ロ以来の画期的な出来事となったわけだ。
米国の影響力の限界を誇示できたロシア
ラブロフ外相は1月の記者会見で、日ロの外交分野での緊密な協力を訴えるとともに、外交政策で「米国の立場を100%追随する」のではなく、「より自立した日本をみてみたい」と述べていた。その日本が米国の否定的な反応にもかかわらず、首相の訪ロを断行した。ロシアにとっては、米国の影響力の限界を誇示する面でも意義があったわけだ。
「日本の友人たちは米国をはじめとするパートナーたちの圧力にもかかわらず、(日ロ)関係を維持しようと努めている」。プーチン大統領が首脳会談に先立って語った言葉は、それを如実に示している。しかも、日本は今年のG7の議長国だ。ロシアもさすがに対ロ制裁緩和のきっかけになるとは期待していないが、少なくともウクライナ危機をめぐるG7の対ロ包囲網の弱まりを内外にアピールできたとみているようだ
2つ目の理由は中国との絡みだ。ロシアはウクライナ危機後の国際的孤立のなかで、対中傾斜を一段と強めた。中ロは実際、両国首脳が戦勝70周年の記念行事に互いに出席したり、東シベリアの天然ガスを長距離のパイプラインを建設して中国に大量供給する〝世紀のディール〟に調印したりするなど、その蜜月ぶりが国際社会でも話題になった。
ロシアは当初、とくに経済面では欧米の経済制裁による打撃を中国が完全に穴埋めしてくれると期待していたと、多くの専門家が指摘する。ところが中国はそんなロシアを「ジュニア・パートナー」とみなし、ロシア市場での独占的な地位を利用して無理難題を押しつけたり、契約の履行を渋ったりするケースもみられるようになったという。
ロシアにとって中国は国別で最大の貿易相手国ではあるが、昨年の貿易額は前年比でおよそ3割も減少した。ロシアの外交評論家フョードル・ルキヤノフ氏は「ロシアの政権は中国に前向きな発言は続けているが、対中依存の比重を減らすべくアジア外交のバランスをとろうとしている」と分析する。
「新アプローチ」の背景に中国の影
「日本はアジア太平洋地域の重要なパートナー」とするプーチン大統領の発言が単なる外交辞令でなく本音とみられるのは、こうした背景がある。今回、安倍首相は北方領土問題を含む平和条約締結交渉を「新たな発想に基づくアプローチ」で加速しようと提案し、プーチン大統領の同意を得た。
この新アプローチについて日本側は、グローバルな視点を考慮したものとしている。中国の海洋進出や軍事的台頭を踏まえれば、中国とどう付き合うかは日本の安全保障にとっても重要だ。新アプローチの中に中国ファクターを踏まえた日ロ協力の視点が含まれる、とみるのが自然だろう。
そして3つ目が日ロの経済協力だ。「経済が最も重要だ」。プーチン大統領は会談で昨年の日ロの貿易額が210億ドルにとどまり、前年比で30%も減少したとする一方で、ロシアで活動する日本企業が約270社に上ると指摘。具体的なビジネス案件も挙げて、日本の企業進出を歓迎したという。

大統領はもともと、経済協力の具体的な数字を挙げて2国間関係のバロメーターにし、将来の関係発展につなげようとする思惑が強い。とりわけ近年は、原油安と欧米の経済制裁の影響でロシア経済は低迷している。経済大国の日本の首相との会談で経済協力に弾みをつけ、停滞する極東開発の活性化などにつなげたいとの思いは強かっただろう。
現に大統領は日ロ首脳会談の2日前、極東開発を担当するトルトネフ副首相、ガルシカ極東発展相をクレムリンに呼び、開発の進展状況を聴取している。さらに当日の首脳会談にはラブロフ外相のほか、ウリュカエフ経済発展相、マントゥロフ産業貿易相、ノバク・エネルギー相やロシア最大の国営石油会社「ロスネフチ」のセチン社長を同席させた。
領土交渉をめぐるハードルが低くなるとは限らない
その意味で、安倍首相が「8項目の協力プラン」を提示したことは、大統領の関心をくすぐる格好の演出になったといえそうだ。エネルギー開発、医療、原子力・情報技術(IT)、都市づくり、中小企業など8項目の協力を掲げたプランを大統領は歓迎し、具体化の作業を進めるよう求めたという。
孤立脱却、対中、そして経済協力――。ロシアの期待に見事に応えた首相のソチ訪問は、ウクライナ危機で冷え込んだ日ロ関係を再構築するきっかけになったことは間違いない。ただし、これが北方領土問題を含めた平和条約締結交渉の加速につながる保証はない。今月中旬にはさっそく、トルトネフ副首相が来日する。くだんの「8項目プラン」にはロシア極東地域の産業新興協力が含まれており、日本側の本気度が試されるだろう。
プーチン大統領が9月にウラジオストクで開く東方経済フォーラムに安倍首相を招待したのも、頻繁な首脳対話に執心する首相の心をくすぐりつつ、極東での経済協力の具体的な〝果実〟を暗に求めたともいえる。さらに、仮にロシア側の要求に満足するような対応を日本側が示したにせよ、領土交渉をめぐるハードルが低くなるとは必ずしもいえない。
過去のプーチン語録をひとつ、最後に紹介したい。「人道、文化、経済の絆が強まれば、もちろん環境づくりにはつながる。しかし、経済、人道、文化交流の見返りに、領土交渉の立場を軟化させるという取引はすべきではない」。06年9月、大統領と各国の有識者による国際会合「ヴァルダイ会議」での発言だ。
百戦錬磨の外交経験をもつプーチン大統領が、手ごわい相手であることを忘れてはならない。
日経記事
世界最大級の埋蔵量を誇る原油と天然ガスの輸出をテコに権勢を振るってきたロシアのプーチン政権を原油安が直撃した。エネルギーを勢力拡大に利用、武力行使も辞さない強硬外交で「大国再興」を誇示し、絶頂の中で市場の変化を見誤った。(モスクワ=古川英治)

2月、ロシアからトルコへのガス供給が減少した。ロシアが2015年12月、突如値上げを要求し、これに応じないトルコ民間ガス会社向け輸出を一時最大4割減らした。
「ビジネス上の問題」とするロシアの説明を額面通りに取る向きは少ない。プーチン大統領は15年11月、トルコがロシア軍機を撃墜した事件に激怒し、報復を宣言していた。輸出削減はガス需要の5割をロシアに依存するトルコへの圧力だったとの見方が多い。
ロシアはこれまでも政治を絡めてガス供給を操作してきた。輸出を担う国営ガスプロムが06年1月、ウクライナへの供給を止めた事件は欧州を凍り付かせた。
親欧米に転換したウクライナに大幅値上げを通告し、交渉不調を理由に輸出を止めた。同国を通るパイプラインでロシアからガスを調達する欧州にも影響が広がった。「ガスによる脅し」との非難を浴びながら、ロシアはエネルギー大国の力を見せつけた。
友好度に応じ格差
ロシアにとってガス供給は政治上の武器になる。欧州は需要の3割をロシアに頼る。どこからも調達が容易な原油と比べ、ロシアはガスパイプラインで各国と結び、供給の元栓を握る。
ガスプロムは各国との長期契約の価格を石油相場に連動させながら、その国のロシアとの友好度合いなどによって差を付ける。バルト3国やポーランド向けの価格は、地理的に遠いドイツ向けを上回る。
ロシアから延びるパイプラインは政治の縮図ともいえる。プーチン政権は主要ルートが通るウクライナ外しを画策し、経済性を問わずに新たな輸送網の建設をガスプロムに指示。ドイツとの間では海底パイプラインで直接結ぶ「ノルドストリーム」を完成させた。
この輸送網のルートから外された東欧のある首脳は当時、自国の調達確保を優先したドイツへの怒りをあらわにした。「ナチスドイツとソ連が東欧の勢力圏分割を決めた1939年の密約と同じだ」。輸送網は特定の国を取り込み、欧州を分裂させる手段でもある。
「(ロシアを強国にするには)天然資源が最も重要な要素になる」。プーチン氏は2000年の大統領就任前にエネルギー戦略の青写真となる論文を書いている。ソ連崩壊後に「オリガルヒ」と呼ばれる新興財閥が支配した資源の国家管理を唱え、国策を担う強力な企業の必要性を主張した。「資源政策は地政学上の利益と安全保障に資するものでなければならない」。
2003~04年のユーコス事件がこの戦略の起点となる。政権と敵対した石油大手ユーコスの社長を脱税容疑で逮捕し、国営ロスネフチに買収させた。三井物産と三菱商事が参加する石油・ガス開発「サハリン2」には環境問題を口実に圧力を掛け、権益の過半をガスプロムに譲渡させた。
国際的な批判を省みず強行した一連の事件についてロシア政府高官は当時こう語った。「誰もロシアを無視できない。ロシアに変わるエネルギー源はない」
プーチン氏はその後、原油高騰と連動するかのように強硬路線に傾く。価格ピーク時の08年に親欧米路線を強めたジョージアに侵攻。14年にはウクライナ領クリミア半島を武力で自国に編入し、同国東部への軍事介入にも踏み込んだ。原油はまだ1バレル=100ドルを維持していたころだった。
クリミア編入を巡り欧米が制裁を発動すると、ロシアはアジアカードを切る。プーチン氏は14年5月に訪中し、新たなパイプラインを通じた大型ガス供給で合意した。中国に輸出を振り向けることによって、欧州を揺さぶる思惑があったのは間違いない。
ソ連の教訓学べず
戦術にたけたプーチン氏も、その半年後の原油急落は見通せなかったことが誤算になった。シェール革命や欧州の供給源多様化の影響を過小評価していた。景気が減速した中国への輸出も不透明になった。エネルギー頼みのロシア経済は不況に陥った。
第2次石油危機後に起きた1980年代の原油価格急落は、エネルギー輸出依存を強めていたソ連の崩壊の引き金となった。新生ロシアの改革を担った故ガイダル元第1副首相は2006年末の取材で警鐘を鳴らしていた。「原油高が永遠に続くかのように振る舞うプーチン政権はソ連の教訓を学んでいない」
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5/13日経ビジネスオンライン 北村豊『21歳の辞世ブログが暴いた中国医療の暗部 がん発症の大学生、ニセ病院とウソ広告に翻弄された悲劇』について
麗澤大学の図書館で、台湾の5/10「中国時報」を読みました。WHA(世界衛生大会)のオブザーバー参加についてWHO(世界保健機構)は台湾が「一つの中国の原則」を認めないとダメと言ってきているとのこと。台湾民進党は「オブ参加と一つの中国は無関係、健康は人類の普遍的価値だから条件を付けるのはおかしい」と言ってるようです。何せ国連事務総長が韓国の潘基文、WHOの事務局長はSARSの時の対応がまずかった香港人のマーガレット・チャンですから、中国人の圧力に弱いので、5/20蔡英文総統就任まで圧力をかけ続けるでしょう。本記事によれば招待状は届いたが、参加できるパスワードが書いていないという姑息なことをやってるようです。如何に国際組織が腐っているかです。5/20総統就任式での発言によってパスワードを出すか出さないか決めるのかもしれません。

蔡英文次期総統は、日本の潜水艦を米国経由で購入し、安保面でも米日と連携していく考えとメルマガかFacebookで読みました。ただ、軍は国民党支持が多いのと、将来経済がうまく行かなくなれば台湾民進党から国民党に政権が変わる可能性もありますので、良く検討した方が良いでしょう。今、豪のターンブル首相がパナマ文書で名前が挙がっているのは、彼は中国に近いので牽制の意味もあったのでは。日本の潜水艦購入を米国は画策していたのに、米日豪一体で中国へ対抗しようとする目論見が崩れたためでしょう。でなければもっと早く名前が出ていたはずです。
本記事は如何に中国社会が腐敗しているかという事です。賄賂や不正を許容する社会、力を信奉する社会ですから、弱者に対する目配りはありません。民主主義国家であれば、選挙でダメな政党は政権交代させられますが、共産主義国では望むべくもありません。本来このケースのような場合には、国民が怒って、革命を起こすべきでしょう。民衆自体不正に狎れ、また自らも不正をしているケースが多々あるので怒りのエネルギーが出て来ないのでしょう。何せ「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という基本的価値観の国柄ですから。
中国在勤時代には、怪しげな診療所のチラシが電柱や壁に貼っていました。町中で堂々と営業していました。とても怖くて診て貰いたいとは思えないような所でしたが。それでも病院へ行くと保険があっても、当時2000年頃は20元くらいの給付しかないので、金持ちしかかかれませんでした。病気になったら、自分で治すしかない社会でした。
記事
中国の医療は“看病難、看病貴(診療を受けるのは難しく、受けられても医療費が高い)”と言われて久しく、ただでさえも悪評ふんぷんだが、その医療体制を根底から揺り動かす驚くべき事実が明らかになった。それはがんで死亡した21歳の大学生が死の直前にスマホのメッセージアプリ“微信(WeChat)”に書き込んだ、病魔と闘う経緯を記した文章が引き金となったものだった。
がんとの戦い、武警第二医院に託す
“魏則西”は陝西省“西安市”にある“西安電子科技大学”の“計算機学院(コンピューター学部)”の学生であった。彼は大学2年生の時に行われた“体格検査(健康診断)”で異常が発見され、精密検査を受けた結果、がんの一種である滑膜肉腫の晩期であることが判明した。滑膜肉腫は悪性軟部腫瘍であり、新たな技術開発や臨床実験中の技術を除いて有効な治療方法が発見されていない難病である。将来の希望に燃えていた魏則西にとって、これは正に青天の霹靂であったが、彼の両親にとっても寝耳に水の出来事だった。大事な1人息子を凶悪な病魔に侵されて、両親は悲しみに打ちひしがれた。
晩期であっても治療方法は必ずあるはずだ。そう考えた両親は魏則西を連れて北京、上海、広州など各地の医院を訪ね歩いたが、どの医院も治癒の可能性に否定的だった。最早この病気から逃れる術はないのか。思いあぐねた魏則西はその治療方法についてインターネットの活用を思い付き、2014年3月30日に中国最大の検索エンジン「百度(バイドゥ)」で滑膜肉腫の治療方法を検索してみた。その検索結果の第1位にランクされたのは「武装警察北京総隊第二医院」(以下「武警第二院」)の生物免疫療法だった。この旨を両親に告げると、両親は即座に武警第二院へ電話を入れて面談の約束を取り付けると、大急ぎで北京へ向かった。
北京に到着した両親は、武警第二院で「“生物診療中心(センター)”」主任医師の“李志亮”と面談した。両親は息子が滑膜肉腫の晩期であることを告げて、何としても生物免疫療法で治癒して欲しいと述べると、李志亮は両親に次のように語った。すなわち、生物免疫療法は米国のスタンフォード大学が研究開発したもので、滑膜肉腫に対する有効確率は80~90%に達しているので、息子さんの命を20年間保証することは何も問題がない。
これを聞いて安堵した両親が李志亮について調べてみると、李志亮は“中央電視台(中央テレビ)”の番組で何度も紹介されているし、武警第二院は“三甲医院(最上ランクの医院)”であった。さらに、武警第二院の生物免疫療法は百度の検索結果で第1位にランクされていたこともあり、信頼に足ると判断できたことから、両親は魏則西の治療を武警第二医院に委ねることを決断したのだった。
2014年9月から2015年12月末まで、魏則西は武警第二院で都合4回にわたる生物免疫療法の治療を受けた。この間の費用は20数万元(約400万円)に達したが、両親は家中のカネをかき集めても到底足りず、親戚友人に借金して賄った。しかし、魏則西の病状は一向に改善しないばかりか、がんは肺に転移する始末で、医師から余命2か月と宣告されるに至った。
最大の悪は希望を餌に苦しむ人を騙すこと
生物免疫療法を4回も実施したのに病状は悪化するだけで、何らの改善も見られないのはなぜか。疑問を感じた魏則西が知り合いの米国人留学生経由で調査を行った結果、生物免疫療法は米国では20年前に淘汰された技術であり、米国内の医院では全く使われていないことが判明した。一方、父親が主任医師の李志亮に「息子の命を20年間保証すると言ったのに、余命2か月とはどういうことだ」と詰め寄ると、李志亮は前言を翻し、今までにどの患者にも命の保証などしたことがないと述べ、生物免疫療法をさらに続ければ効果がでると言う始末だった。李志亮が魏則西と両親を騙し続けていたことは明白だった。
2016年4月12日、武警第二院の病室で魏則西は21歳の若き命を閉じた。魏則西は死の直前、スマホの“微信”へ「あなたは人間性で最大の悪は何だと思う」と題する文章を書き込み、病魔と闘う経緯を記していた。魏則西はその答が何かを明確に述べてはいなかったが、彼の文章を読んだ人々は、それが「人間性で最大の悪は希望を餌に苦しむ人を騙すこと」なのだと理解した。魏則西の死によって辞世となった彼の文章は、人々の共感を呼んで広く知られることとなり、中国社会に大きな波紋を投げかけた。彼の文章に突き動かされた人々やメディアは、中国の医療体制を根底から揺り動かす一大事を暴き出したのである。メディアが報じた内容を取りまとめると、その概要は以下の通り。
【1】武警第二院が“武装警察”系列というのは名ばかりで、経営の実態は“莆田(ほでん)系”と呼ばれる詐欺的医療集団が請負っていた。彼らの目的は金儲けだけで、病気の治癒などは最初からまじめに考えていなかった。莆田系とは、福建省“莆田市東庄鎮”出身の医療従事者を言い、その起源は文化大革命期間中に毛沢東によって生み出された“赤脚医生(はだしの医者)”に遡る。彼らは正式な医学教育を受けていない農村医療人員で、農業に従事しながら初歩的な予防・治療活動を行っていたが、文化大革命終結後は全国各地をわたり歩いて無免許で違法かつ詐欺的な医療行為を行った。
【2】彼らは性病、鼻炎、腋臭(わきが)、リューマチ、皮膚病など、命に関わることのない病気を治療する旨の広告を電柱に張って客を集め、効果が期待できない自家製の軟膏、膏薬、丸薬などを原価の何倍、時には何十倍の価格で売り付けて大儲けした。客の患者たちが全く効果のない薬に疑問を抱く頃には、彼らはとんずらして他地域へ移動しているという筋書きであった。どだい彼らには医学や薬学の基礎知識すらなく、有るのは口八丁で患者を騙すペテンの技術だけだった。何はともあれ、偽医者である彼らは全国をわたり歩いて患者を騙してカネを稼ぐことで巨万の富を築き上げた。
【3】2002年頃から、彼らはその財力を背景に、各地の二流医院や“人民解放軍”や武装警察などの系列医院の「科」や「室」の経営を請け負うことを始め、徐々に系列医院や民営医院そのものの経営を請け負うようになり、その後は民営医院を買収して勢力を広げていった。2013年の政府統計によれば、全国の医院総数は2万4700カ所で、そのうち民営医院は1万1300カ所だが、8000か所(70%)以上の民営医院は莆田系と考えられている。莆田系の民営医院では“陳”、“詹(せん)”、“林”、“黄”の4大家族グループが有名で、彼らが大きな勢力を占めている。陳家グループは全国の“華夏”、“華康”、“華東”を頭に冠した医院、詹家グループは全国の“瑪麗医院”と“瑪麗亜婦産医院”、林家グループは全国の“博愛”、“仁愛”、“曙光”を頭に冠した医院、黄家グループは各地の“五洲男子医院”および“聖保羅(セントポール)女子医院”などをそれぞれ経営している。
ニセ医者集団が病院をグループ化
【4】彼ら4大家族グループの創始者も“游医”と呼ばれる各地を転々とする無資格の医師であったが、偽薬を販売することで大金持ちとなり、今ではこれら4大家族グループに属する人々の中には個人資産が億元(約17億円)を超える人が数百人いると言われている。一方、莆田グループ発祥の地である福建省莆田市東庄鎮では、全人口11万人のうちの7万人が医院だけでなく、薬品や医療器械などの医療産業に従事している。彼らは全国の1万社以上の医薬関連企業に身を置いており、その年間営業額は3200億元(約5兆4400億円)に達しているが、この規模は寧夏回族自治区、青海省、チベット自治区の各域内総生産(GRP)を上回っている。ちなみに、全国31省・自治区・直轄市のGRP(2015年)は、29位の寧夏回族自治区が推計2900億元、30位の青海省が2417億元、31位のチベット自治区が1026億元。
【5】それでは、武警第二院で魏則西に生物免疫療法による治療を行った主任医師の李志亮は本当に莆田系なのか。李志亮は魏則西の死亡後に武警第二院を引退した模様だが、ネット上に残る李志亮に関する紹介文には次のように記載されている。
李志亮:“中国腫瘤(=腫瘍)生物治療協会”常務副会長、“南京明基医院腫瘤精準医院中心”主任医師。1977年に“江南(長江下流南岸)”の有名校、“東南大学医学院”を卒業。40年近く一貫して悪性腫瘍の臨床治療と科学研究に従事し、国家や地方政府の課題研究に数多く参加し、科学研究論文を30本以上発表している。現在、武警第二院腫瘤生物診療中心主任医師。
メディアの記者がこの内容を調査した結果は以下の通り。 (1)東南大学医学院の学籍簿には李志亮という名の卒業生は見当たらない。 (2)中国腫瘤生物治療協会という組織は存在しない。 (3)悪性腫瘍の専門家に問い合わせても、誰一人として李志亮という名を知る者はいない。 (4)紹介文には李志亮が発表した論文30本以上の明細が列記されていたが、それら全ては他人が発表した論文で、李志亮本人の論文は見つからなかった。
これ以外にも李志亮が中央テレビで紹介された事実はなく、カネを出して李志亮が映し出される広告を買ったというのが真相だった。
かつては電柱、今は百度
【6】要するに、李志亮という人物は医学の知識も医師の資格も持たないインチキ医師であることが明白となったのである。そのインチキ医師が魏則西に施したという生物免疫療法による治療とは何だったのか。恐らく生物免疫療法と称して治療の演技を行っていただけで、魏則西の病状を放置したものと思われる。李志亮にとって、魏則西は生物免疫療法という疑似餌(ルアー)に飛びついた魚で、釣り上げた後は好きに料理してカネを儲ければ良かったのだろう。それこそが莆田系のインチキ医師の本分であり、魏則西の場合は見事にそれが成功した例であったのである。
【7】魏則西が生物免疫療法を見つけ出したのは、検索エンジン「百度」で滑膜肉腫の治療方法を検索した結果であり、武警第二院の生物免疫療法は検索結果の第1位にランクされていた。魏則西がそれを信頼できるものと考えて両親に伝えたことが、全ての始まりだった。李志亮によるルアーフィッシングに手を貸し、検索結果の第1位に配置することにより武警第二院の生物免疫療法に権威と信頼性を与えたのが百度だった。
【8】かつては電柱に広告を張って客(患者)を呼び込むことで偽薬を販売した莆田系だが、彼らの営業戦略は依然として宣伝広告である。時代の変遷は彼らの広告手段を電柱からインターネットやテレビへと変え、今や彼らの広告媒体の主体は中国最大の検索エンジン「百度」となり、百度にカネをつぎ込むことで患者の獲得を図っている。それは、百度が広告枠の配置順位をオークションにより決定しており、それが推薦可能な医院の検索結果にも反映されることになっていることに起因している。財力に勝る莆田系医院は常に広告枠の上位を勝ち取り、推薦可能な医院の検索結果でも上位に配置される。
【9】最も重要な事は、百度が広告主の資格審査を従来から全く行わぬまま、オークションで高価格を提示する莆田系医院を優遇し、彼らのインチキ商売に手を貸し、彼らを野放しにしたことだった。百度と莆田系医院の密接な関係は、2003年に百度が広告枠のオークション制度を開始した時から始まり、すでに13年が経過している。百度はカネが儲かるという理由だけで、広告主の資格審査を行わぬまま、莆田系医院に便宜を図ってきたことは明白だった。その結果が百度の検索結果を信じた魏則西を死に追いやったといっても過言ではない。
【10】こうした背景を知った世論は激高し、百度の責任追及を求める声が沸騰した。世論の圧力を受けた百度は医院広告の担当責任者を解雇することで事件の沈静化を図ったが、世論はその姑息な対応に怒りをさらに強めた。世論に押された中国政府および北京市の関係部門は5月2日に調査チームを組織し、“魏則西事件”に絡んで百度の広告枠オークション制度の調査を行った。5月9日、調査チームは調査結果を発表し、百度に対して医療広告の全面的見直しと広告枠オークション制度の廃止を含む業務改善を勧告した。一方、同調査チームは百度と並行して武警第二院の調査も実施し、武警第二院は営業停止を命じられた。
無法の放置、撲滅なるか
『三国志・蜀志・諸葛亮伝』に「死せる孔明生ける仲達を走らす」という言葉がある。これは偉大な諸葛孔明は死んでも、敵の仲達を恐れさせて敗走させたということで、「死してもなお影響力のあること」を意味する。魏則西は諸葛孔明のような偉人ではないが、死を前にして“微信”に書き込んだ文章が死後に注目されたことで、百度の医院広告の不条理や莆田系医院によるインチキ治療が暴き出される切っ掛けとなった。
百度は調査チームの勧告に従って業務改善を行うだろうが、問題は民営医院の70%以上を占め、一部の公営医院にも進出している莆田系をどうするかであろう。今回の事件により莆田系医院が百度の検索を広告媒体とすることには歯止めがかかるだろうが、財力がある莆田系の人々がただ手をこまねいているとは思えない。中国政府が徹底的に無資格医を取締り、莆田系を壊滅させない限り、魏則西に続く新たな犠牲者が出る可能性は高い。また、死に至っていなくとも莆田系医院およびその医師によって騙された経験を持つ国民は膨大な数に上るはずである。莆田系の撲滅はひとえに中国政府の決断にかかっている。
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5/12日経ビジネスオンライン 鈴置高史『「トランプからの請求書」は日本に回せ 在韓米軍の経費を誰が支払うのか』、5/16日経ビジネスFT『トランプ氏は世界秩序の脅威だ』について
FTの記事は米大統領選で「ヒラリーが楽勝すると考えるのは危険」という事です。宮崎正弘氏ノメルマガでも同じような指摘がありました。
http://melma.com/backnumber_45206_6366088/
日本もトランプ大統領になったときのことを真剣に考えないと。政治家任せは危険です。国民主権なのだから、国民一人ひとりが日本のあるべき姿を考えねば。韓国の経費を日本が払うのは論外です。こいつらの頭の中を覗いてみたい。どうしたらこういう発想ができるのかと。聞くだに不愉快になります。今まで日本人が甘やかして来たツケが回っています。これからは違うという事を日本人は中韓北に見せないと。舐められてばかりでは子々孫々に不名誉を遺産として残すことになりかねません。
トランプは日本人に今まで深く考えずに済んできたことを強制的にでも考えさせてくれます。戦後米軍に憲法を押し付けられ、思考停止してずっと生きて来た日本人が今また米国人によってその頸城から脱せられるのかもしれないという事態です。主体性がありません。外圧頼みでしか物が考えられないのでは国際社会は生き抜いていけませんが。
日米同盟と核保有については宮崎正弘氏の言う日本の持つ米国債で第七艦隊(核付き)を買うというアイデアが実現できれば良いのでしょうけど、人員付きでなければ動きませんので、米国籍のままですと、完全な傭兵となり、米軍のプライドから言って無理でしょう。
やはり、米国と1個1個相談しながら、日本の自立を進め、米国の覇権に挑戦する中国の包囲網を両国を中心に展開していかねば。
5/12記事

米大統領選で共和党の指名を確実にしたトランプ氏は、日本と韓国の「米軍駐留経費全額負担」を主張(写真:ロイター/アフロ)
在韓米軍の費用は日本に払わせればよい――。韓国でこんな声が出てきた。
日韓独は100%支払え
—米軍の駐留経費の分担問題が日本の新聞をにぎわせています。
鈴置:共和党の予備選で、不動産王のトランプ(Donald Trump)候補が「日本や韓国、ドイツなどには駐留経費を100%支払わせよう」と語ったのがきっかけです。
トランプ氏が大統領にならなくても、駐留経費は米国と同盟国の間で問題化しそうです。「なぜ、我々の税金を使って豊かな同盟国を守っているのか」と考える米国人が増えているからです。
韓国では日本以上に論議を呼んでいます。米国との同盟があるからこそ国を維持できている、との意識が強いためです。ことに今、韓国は北朝鮮の核武装の脅威に直面していますし。
米国に払うなら中国と同盟
—でも、米韓同盟は揺れているのではありませんか?
鈴置:ええ、そこがポイントです。「北朝鮮の核」に対しては米韓同盟を頼りにしたい半面、それにより本当に抑制できるのかと韓国人が疑いを持ち始めたところです。
米国ではなく中国を頼りにすればいい、という発想も広がっています。意識調査を見ても明らかです(「米中どちらが重要か」参照)。
グラフ●米中どちらが重要か

今後、米国が「トランプ化」するにつれ、在韓米軍への負担――米韓同盟を巡る議論はかなり複雑になるでしょう。米国が「経費分担を増やせ」と強力に要求するのなら、中国と同盟を結ぼう――という声も出てきかねないからです。
ただ今現在は、ほとんどの韓国メディアが「米韓同盟は存続する」との前提で「韓国は十分に経費を分担している」と主張しています。保守系紙は政府を代弁して、左派系紙は反米感情から――と背景は異なりますが。
GDP比では韓国は優等生
鈴置:この分野で有名な、朝鮮日報のユ・ヨンウォン軍事専門記者は「トランプの主張を受け入れ米軍の韓国駐留経費を100%負担すると、韓国の支払いは年間9320億ウォン(1ウォン=約0.09円)から2兆ウォン程度に倍増する」と推算しました。
「トランプの望み通りにするなら……韓国が出す米軍負担金は9320億→2兆ウォン」(5月6日、韓国語版)という記事です。
そして同じ日に「米軍防衛費負担、GDP比重で考えれば韓国が最高水準」(韓国語版)も書きました。韓国政府の主張を紹介した記事です。骨子は以下です。
- 政府当局者は「米軍駐留費用の(受け入れ国による)負担比率に関して言えば、韓国は日本よりも低いが、ドイツなどNATOより高い。とはいえ、GDP基準で考えれば、我々が世界最高の負担水準にある」と分析している。
日本は75%負担
計算方式にもよりますが、日本は米軍駐留経費の50-70%を負担しているとされます。米国防総省が2004年にまとめた「2004 STATISTICAL COMPENDIUM on ALLIED CONTRIBUTIONS TO THE COMMON DEFENCE」にもデータがあります。
この手の統計はあまり公開されないためか、少し古いのですがあちこちで引用されます。それによれば日本は直接・間接的な支援を合わせ、米軍駐留経費の74.5%を払っています(B-21ページ)。
韓国は40.0%(B-22)、ドイツは32.6%(B-7ページ)です。何でも日本と比較される韓国とすれば、こんなデータを持ち出されたらかなりまずい。そこで韓国政府は「GDP比」という、自分に都合のいい概念を考え出して対米交渉に臨んできたのでしょう。
もっとも韓国政府が計算したという対GDP比の韓国の数値は0.068%。ドイツの0.016%と比べればはるかに大きいのですが、日本の0.064%とはほぼ同じ水準です。
日本こそ「ただ乗り」だ
—へ理屈ですね。
鈴置:ヘ理屈でも何でもいいから、予想される「トランプの値上げ攻勢」を乗り切ろうとの韓国政府の必死の姿勢が、この記事から伝わってきます。現行の負担を決めた米韓協定は2018年末に満了となり、改定交渉が近く始まることも影響しているのでしょう。
「トランプの値上げ」に対するもっと強力な、というか珍妙な反論も開陳されました。同じ朝鮮日報の崔普植(チェ・ボシク)先任記者の「全斗煥(チョン・ドファン)が米国を助けた方式」(5月6日、韓国語版)です。以下、要約しながら翻訳します。
- 朴正煕(パク・チョンヒ)政権とカーター(Jimmy Carter)政権当時の韓米関係は最悪だった。カーター大統領は1977年に就任するや否や「在韓米軍を今後4-5年以内に段階的に撤収する」と、人権問題を指摘しつつ通告してきた。朴正煕大統領は「撤収するというならすればよい」と核兵器開発に動いた。
- 朴正煕大統領が暗殺された後を継いだ全斗煥大統領は、レーガン(Ronald Reagan)大統領が就任すると直ちに訪米した。1981年2月、ホワイトハウスで全斗煥大統領は「在韓米軍を撤収すると、ソ連はアジアの兵力を欧州に展開できる」との理屈でレーガン大統領を説得し、米軍撤収を撤回させた。
- さらに「この会談はレーガン大統領をお助けするためのもの」と切り出し「韓国はGNPの6%を国防費に支出しているが、日本は0.09%しか充てていない。日本は無賃乗車している。日本をして韓国に100億ドルの借款を提供させれば、そのカネで米国製の兵器も買える」と説いた。
- レーガン大統領は「意見の相違はない」と大きな声で答え、笑い出した。2年後、韓国は日本から40億ドルの借款を引き出した。このケースは将来、トランプを相手にする際に(韓国の)指導者がどんな心構えで突破しなければならないのか、どうすれば局面を我が国に有利なものに変えるかの答えである。
またも韓国・天動説
—なるほど。「トランプ大統領」から防衛費の負担増を求められたら日本に請求書を回せばいい、との主張ですね。
鈴置:その通りです。なお、この記事はいくつか誤りがあります。当時から日本の防衛費の対GDP(GNP)比は1%前後で推移しています。0.09%という数字は1ケタ間違っています。
当時、レーガン大統領に日本のただ乗りを強調するために全斗煥大統領が適当な数字を言ったか、現在の韓国人読者に「日本は悪い奴だ」と強調するため崔普植先任記者がそれらしい数字を挙げたか、あるいは単純に間違えたか、どれかでしょう。なお、韓国の数字も現在は3%弱で、6%には遠く及びません。
そもそも韓国の大統領の説得で米国や日本を動かした――との認識は、相当に天動説的な発想です。1980年代初めに米国と日本に登場した保守コンビ――レーガン大統領と中曽根康弘首相はソ連に強い姿勢で対しました。
米国や日本の保守派にすれば、在韓米軍撤収なんてとんでもない話。韓国の大統領に言われなくとも撤回すべき案でした。
また1979年の朴正煕暗殺後、とにもかくにも韓国を安定させた全斗煥政権は、日米ともに強力に支える必要があったのです。
「無賃乗車の日本を懲らしめると同時に、米国製兵器の売り上げ増を狙って米国が日本に借款を出させた」わけではありません。
なお、全斗煥政権のこの借款は――「日本からカネを出させた」と国民に誇るためのスタンドプレーは、後に韓国を苦しめることになります。
円ベースの借款でしたが、返済時にはかなりの円高となっていたからです。記事の書き込みでも、1人の読者がそれを指摘しています。
「言いつけ方式」は藪蛇に
—韓国人は周辺大国を自分が操っている、という話が好きですね。
鈴置:「我々はいつも周辺大国の都合で突き動かされている」との現実認識があるためでしょう。
韓国紙を読んでいると、時々こういう気宇広大な記事に出くわします。中国の戦国時代に遊説家――武力は持たず、口舌だけで諸侯を動かした人々が活躍しました。彼らこそが韓国知識人の理想の姿なのかもしれません。
—では「全斗煥方式」と言いますか「言いつけ方式」で「トランプ大統領」を説得できるのでしょうか。
鈴置:難しい、というか藪蛇になると思います。仮に、韓国が説得に成功し、在韓米軍の駐留経費のなにがしかを日本に支払わせることで米韓が合意したとします。
すると日本が「トランプ大統領」に対し「米韓同盟はいつまで持つのですか。韓国は米国よりも中国の言うことを聞くようになっているようですが」と尋ねるのは間違いありません。
トランプ氏の外交・安保認識は現実と比べ、10年は遅れています。そこで最新の状況を調べ、朴槿恵(パク・クンヘ)政権下の韓国が「中国側の国」になっていることにようやく気がつくことでしょう。
AIIB債も韓国が引き受け
—普通の米国人は「韓国の寝返り」にまだ気づいていないのですね。
鈴置:外交関係者は別として、普通の人は中韓関係などに関心を払いません。でも、いったん注目を集めると、状況は変わるでしょう。
ことに「トランプ大統領」の関心が深い経済分野で、韓国の裏切りが目立つからです(「米中星取表」参照)。
| 案件 | 米国 | 中国 | 状況 |
| 日本の集団的自衛権 の行使容認 | ● | ○ | 2014年7月の会談で朴大統領は習近平主席と「各国が憂慮」で意見が一致 |
| 米国主導の MDへの参加 | ● | ○ | 中国の威嚇に屈し参加せず。代わりに「韓国型MD」を採用へ |
| 在韓米軍への THAAD配備 | △ | ▼ | 韓国は米国からの要請を拒否していたが、2016年2月7日に「協議を開始」と受け入れた |
| 日韓軍事情報保護協定 | ▼ | △ | 中国の圧力で署名直前に拒否。米も入り「北朝鮮の核・ミサイル」に限定したうえ覚書に格下げ |
| 米韓合同軍事演習 の中断 | ○ | ● | 中国が公式の場で中断を要求したが、予定通り実施 |
| CICAへの 正式参加(注1) | ● | ○ | 正式会員として上海会議に参加。朴大統領は習主席に「成功をお祝い」 |
| CICAでの 反米宣言支持 | ○ | ● | 2014年の上海会議では賛同せず。米国の圧力の結果か |
| AIIBへの 加盟 (注2) | ● | ○ | 米国の反対で2014年7月の中韓首脳会談では表明を見送ったものの、英国などの参加を見て2015年3月に正式に参加表明 |
| FTAAP (注3) | ● | ○ | 2014年のAPECで朴大統領「積極的に支持」 |
| 中国の 南シナ海埋め立て | ● | ○ | 米国の対中批判要請を韓国は無視 |
| 抗日戦勝 70周年記念式典 | ● | ○ | 米国の反対にも関わらず韓国は参加 |
| 米中星取表~「米中対立案件」で韓国はどちらの要求をのんだか (○は要求をのませた国、―はまだ勝負がつかない案件、△は現時点での優勢を示す。2016年5月11日現在) | |||
(注1)中国はCICA(アジア信頼醸成措置会議)を、米国をアジアから締め出す組織として活用。 (注2)中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)設立をテコに、米国主導の戦後の国際金融体制に揺さぶりをかける。 (注3)米国が主導するTPP(環太平洋経済連携協定)を牽制するため、中国が掲げる。
金融による米国の世界支配を崩そうと、中国がAIIB(アジアインフラ投資銀行)を設立しました。韓国は米国の反対を押し切って参加しました。
さらにAIIBの無格付けの債券も、韓国は引き受けることにしました。時事通信が「AIIB債、無格付け発行=設立当初、韓国引き受けか」(2015年12月3日)で報じています。
2015年12月8日、韓国政府は中国市場で30億元(1元=約16.5円)の人民元建て国債を発行しました。もちろん初めてのことで、人民元の国際化への援護射撃です。
「強いアメリカ」の復活を旗印に掲げるトランプ氏が、米国の足を引っ張る中国のお先棒を担ぐ韓国に対し、激怒するのは間違いありません。
「米国はもう、世界の警察官ではない」と繰り返すオバマ(Barack Obama)大統領でさえ「中国を批判しろ」と朴槿恵大統領を満座の中で難詰したのです(「蟻地獄の中でもがく韓国」参照)。
契約違反の店子
—韓国のやっていることは「ただ乗り」どころか「利敵行為」ですからね。
鈴置:「トランプ大統領」は韓国の「追い出し」を直ちに指示するでしょう。それまで韓国は日本やドイツと同様、自分の所有する不動産に相場よりも安く入居するテナントと見なしていた。
ところがよく調べると、韓国は隣のビルとの間の壁に穴を開けて行き来している。もちろん、貸しビルは無茶苦茶に……。
こんな状況が判明した以上、貸借契約を守らず、ビルを破壊する店子を大家が追い出すのは当然です。少なくともビジネスマンたるトランプ氏はそうするでしょう。
彼にとって、日本やドイツとの同盟に関する懸案は「テナント料金の値上げ」問題です。しかし韓国とは「不良の店子」をどう処理するかの問題なのです。
「損切り」の対象に
—これまでは、そんな韓国でも許されてきた……。
鈴置:神戸大学大学院の木村幹教授は「失礼な奴でも自分の陣営に置いておくことで大国は度量を見せる」と説明しています(「『南シナ海』が揺らす米韓同盟」参照)。
でも、そんな度量の重要さに考えが及ぶのは政治家だけです。株主の短期的な利益を極大化することが仕事の経営者は、会社に損害をもたらす要因は直ちに切り捨てます。
崔普植先任記者の主張する「全斗煥方式」――日本の無賃乗車を声高に言い立てて費用分担を転嫁する方式が実施されなくとも、トランプ的な発想が広がるほどに米韓同盟は危機に瀕するのです。
—なぜ、韓国人はそれに気がつかないのでしょうか。
鈴置:「米韓同盟は血盟だ」と信じているからです。米国は朝鮮戦争で4万人もの戦死者・行方不明者を出した。だから米国にとって韓国は何があっても手放せない存在だ――という神話と言いますか、信仰が韓国にはあるのです(「『中国に立ち向かう役は日本にやらせよう』」参照)。
だから舌先三寸で適当なことを言っておけば、米国との同盟は続く――といった言説が、韓国では堂々とまかり通るのです。
それも、米国の有力な大統領候補者が「これ以上、損害を増やさないために同盟の見直しを検討しよう」と“損切り”を言い出した時に、です。
「全額、支払おうではないか」
もっとも少数ながら、韓国が直面する危うさに気がついている韓国人もいます。「ヴァンダービルド」の匿名を使い、外交・安保を縦横に論じる識者です。
興味深い主張をしています。趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムの「トランプの暗示は『韓日は米軍撤退に備え、核武装を検討せよ!』」(3月27日、韓国語)から、要約して引用します。
- トランプの要求通り、労務費、施設建設費など在韓米軍を維持するための費用は100%支払えば良い。すでに韓国はその40%を毎年、負担している。残りの60%の1兆3800億ウォンを追加して支払うだけで、在韓米軍の130兆ウォンの装備を我が国に維持できると考えれば安いものだ。
- 2000年に韓国政府が正式に研究調査した在韓米軍の装備の価値が1112億5000万ドル(約130兆ウォン)だった。装備は高度化され続けており、2000年時点と比べその価値が飛躍的に高いのは間違いない。
日米同盟は片務条約
—思い切った主張ですね。
鈴置:ヴァンダービルド氏は前々から「二股外交をこのまま続ければ、いつかは米国に捨てられるぞ」と朴槿恵政権に警告を発してきました。
さらに、トランプ候補の浮上とともに「同盟国は米国ばかり頼るな」との「トランプ的発想」が米国で盛り上がると読んだのです。
日本も他人事ではありません。確かに、米軍駐留経費の負担比率は米国の同盟国の中で飛び抜けて高い。
しかし、防衛費の対GDP比は1%前後に過ぎません。米国の3%強、英仏の2%前後と比べかなり低いのは事実です。これは以前から米国の安全保障関係者の不満の種でした。
そして日米同盟が片務条約であることです。トランプ候補も指摘するように「米国は日本を守る義務があるが、日本に米国を守る義務はない」のです。こうした同盟に米国人の支持がいつまで続くかは怪しいのです。
ことにこれから、中国による太平洋の軍事基地化を日米が力を合わせて防ごうという時なのですから。
(次回に続く)
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5月3日の米大統領予備選で、ドナルド・トランプ氏が共和党候補の指名を事実上、獲得した格好となった。米国は衰退したとはいえ、今も唯一の超大国であり、その米国民の選択は世界中に大きな影響を及ぼす。同氏の主張は詰まるところ現行の世界秩序をひっくり返すことだが、それは米国を含め世界のためにならない。

トランプ氏の狙いは米国が築いた国際秩序をひっくり返すことにある (写真=ロイター/アフロ)
世界各国の首都で、米国について2つの点が指摘されてきた。一つは、米国はもはやかつてのような超大国ではない、ということ。もう一つは、米国は大統領選挙が終わるまで重要な案件は保留してきたという点だ。
だが今、3つ目の見解が加わった。ドナルド・トランプ氏が大統領になったら、悪夢どころではない事態となるということだ。
米国だけの問題ではない
米国衰退論は、かねて誇張されてきた。それでも米国は今も唯一の超大国である。というのも、米国だけが世界のあらゆる地域に介入できる力を持つからだ。米国は、圧倒的な力を持つ同盟体制の頂点に立っている。
過去10年ほどで変わったのは、その立場を阻む力が働くようになってきたことだ。世界のパワーバランスが変化し、国内では政治的な空気が足かせになっている。
とはいえ、米国の力に匹敵する国はほかにないことも事実だ。中国が仮に軍事的な影響力と技術力で米国に肩を並べる日が来るとしても、それは何十年も先のことだろう。米国政府は今なお、世界秩序の維持に欠かせない守護者である。
ゆえに、ホワイトハウスの主人を決めるのは確かに米国民だが、その選択は世界にとっても大きな意味を持つ。
特にトランプ氏が、共和党の大統領候補としての指名を事実上、獲得した今、このことの重大性はかつてなく高まっている。
予備選でトランプ氏がなぜ勝利するに至ったのかについては、多くを指摘することができる。アブラハム・リンカーン以来の歴史を誇る共和党*が、いかに自己破壊的な道を歩むに至ったのか。不動産開発業者からテレビのリアリティー番組のスターへと転身したトランプ氏が、いかに国民の間に高まる不安と怒りを利用したか。米国民は、なかなか改善しない生活水準と、グローバル化が進んだことに伴う社会的、文化的な変化に対し、不安と怒りを募らせてきたのだ。
そして、残念なことだがマスコミがトランプ氏を、その出馬表明以来、視聴率を稼げるタレントのように扱ってきたことで、いわば同氏の指名獲得に半ば加担する形になったという問題点も指摘できる。
*=1854年に黒人奴隷制反対を掲げて結成され、1860年にリンカーンが初の共和党出身の大統領となる
保守などではないトランプ氏
世界の多くの民主主義国において、今、左派と右派双方の大衆迎合的な政治家がトランプ氏と似たような発言をしている。
フランスの極右政党、国民戦線(FN)のマリーヌ・ルペン党首も、ドイツの右派政党「ドイツのための選択肢(AfD)」も、トランプ氏と同じくイスラム排斥を訴えている。英国では欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)を推す陣営が、やはり政治的エリートに対する一般国民の敵意に乗じて、欧州大陸から英国を引き離そうとしている。
政治は、その時々の状況に順応しようとするものだ。従って、「そんなにひどい事態にはならないかもしれない」と言いたくなるのも分かる。「候補者たちは、予備選挙中は自分を最も支持してくれる層にアピールする発言をするが、党の指名を獲得すれば方針を中道に戻すのが常だから、トランプ氏も例外ではないだろう」と。
しかし問題は、トランプ氏の場合、そうはならないということだ。トランプ氏は保守でもなければ、共和党員ですらない。同氏の立場は、左翼的な大衆迎合的経済政策と、非常に醜悪な右翼的ナショナリズムの混ぜ合わせだ。
トランプ氏には大した外交政策はないが、その特徴と言えば好戦的な孤立主義ということだ。「メキシコとの国境に壁を築く」「イスラム教徒は入国させない」といった政策は、一度表明した以上、簡単に撤回できるものではない。
「どうせ本選挙で負ける」は危険
古参の共和党員たちは、「11月の本選挙でトランプ氏は勝てないから心配ない」と言う。同氏は、女性の70%、ヒスパニック系やアフリカ系の米国人有権者に至ってはもっと高い比率を敵に回してきた。トランプ氏に対する不支持率は、とてつもなく高い。従って、単純に計算すれば彼は負ける。
だが、共和党の主流派が本当に心配しているのは、トランプ氏と共に共和党も負けるのではないかという懸念だ。上院では既に民主党が過半数を奪還する可能性が高まっている。トランプ氏のせいで共和党は、下院でも過半数を失いかねない状況にある。
確かに共和党の候補指名を獲得したからといって、米国民がトランプ氏を大統領に選ぶと決まったわけではない。それでも今回の予備選挙で得た教訓がもう1つあるとすれば、対立候補たちはみんな、ずっとトランプ氏を過小評価してきたということだ。
トランプ氏の勢いに最も当惑させられてきた共和党員たちの方が、驚いたことに、どうも民主党の人たちよりもトランプ氏が投票日までに自滅すると信じ込んでいるようなのだ。
ヒラリー・クリントン氏は大統領になる資質を十分備えた人物と言えるだろう。だが、民主党員はだからといって、彼女が有力な大統領候補になるとは限らないことを知っている。

民主党候補のヒラリー・クリントン氏は大統領としての資質は備えていても当選するとは限らない (写真=ロイター/アフロ)
ここでトランプ氏の外交政策を見ておきたい。同氏の選挙スローガンは「米国を再び偉大な国にする」だ。彼は自分が大統領になったら、もはや弱腰な外交政策は取らないという。
米国の敵、特にイスラム国(IS)に対しては奇襲攻撃をかけるだろう。同氏によれば、相手に予測させないことが強みになるという。だが重要なのは、彼の外交政策とは米国が以前に取った孤立主義に、傍若無人なナショナリズムを付け加えるということだ。
トランプ氏は、欧州やアジアの同盟諸国は米軍の駐留費用を負担すべきで、そうでなければ米軍は撤退することになる、としている。日本や韓国などが東アジア情勢の不安定化に対応するために核武装しようとしても、トランプ氏は気にしない。
トランプ氏はロシアのウラジーミル・プーチン大統領を崇拝している。トランプ氏は、貿易協定は米国のほぼ全ての企業と雇用に打撃を与えるものと考えているため、そのほとんどを破棄し、中国からの輸入品には新たな関税を課すだろう。
狙いは現在の国際秩序の破壊
要するにトランプ氏は、第2次大戦の終戦時に米国が構築した世界秩序を事実上ひっくり返すことを提案している。その前提として彼は、パクス・アメリカーナ(米国による平和)とは米国以外の国ばかりが恩恵を受ける秩序だと考えている。つまり、現在の国際秩序は、寛大な米国が、米国に感謝することを知らない世界に対して与えている贈り物であり、米国のためにならない、というわけだ。
だが、トランプ氏は理解していないが、理解すべきは今の国際秩序におけるルールや制度は米国の国益を織り込んでいるという点だ(つまり、トランプ氏が言うほど米国は容易に孤立主義の立場は取れないはずだ)。米国の繁栄と安全保障は、世界の力関係の中で米国が優越性を保持していることと切り離して考えることはできない。中国をはじめとする新興諸国が、国際的システム管理の在り方について強く主張し始めているのも、それゆえだ。
海外の駐留米軍を撤退させて、今の国際体制全体をひっくり返したなら、米国の力は大きく減退するだろう。
決めるのは米国民だ。だが、トランプ氏を選ぶ判断は世界中にとって悪い選択となるだろう。
Philip Stephens ©Financial Times, Ltd. 2016 May .5
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