『チャラチャラ感が加速する中国は崩壊目前 作家・星野博美氏に聞く中国(1)、中国全体で格差を真剣に議論する時が来た 作家・星野博美氏に聞く中国(2)』(12/4・5日経ビジネスオンライン 山田泰司)について

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12/4ダイヤモンドオンライン ロイター<中国の債務は引き続き拡大、見えない政府の抑制効果>

http://diamond.jp/articles/-/151836?utm_source=daily&utm_medium=email&utm_campaign=doleditor

12/6宮崎正弘氏メルマガ<中国全土50の都市に地下鉄を掘っているが、工事中断が始まった 債務の膨張をこのまま放置しては深刻な事態が惹起されるだろう>

http://melma.com/backnumber_45206_6618314/

経済に疎い習近平がGDPの数字の誤魔化し是正や債務の削減を実行しようとしているように見えますが、地雷を踏むことになるでしょう。緊縮財政は当然失業に繋がります。また賄賂や供応もできなくなり、地方の権力者の不満が蓄積されます。クーデターか習の暗殺が起きるかもしれません。今の中国人に北の「苦難の行軍」や毛の「長征」をする覚悟はないでしょう。米国が経済で中国を締め上げればバブル崩壊、ハゲタカの餌食になるのでは。これが世界平和の為に良いのでは。

12/6日経朝刊中国、ネット統制正当化 新興国に拡散の恐れ 「世界大会」が閉幕

【上海=小高航】中国政府がインターネット空間への統制を強める方針を内外に示した。5日閉幕した政府主催の世界インターネット大会で、ネットに対する管理・統制を「国家主権の問題」として正当化した。今後も最新技術を使い、情報統制を強める。大会は東南アジアやアフリカ諸国の高官らが参加。中国発のデジタル保護主義が新興国など世界に拡散する恐れが強まってきた。

中国政府は3~5日、浙江省烏鎮で4回目となる大会を開催した。習近平(シー・ジンピン)国家主席は大会に寄せた祝辞で「IT(情報技術)を核に新たな産業革命が芽生えつつある」と技術革新を歓迎する姿勢をみせた。その一方で「ネットの発展は各国の主権や安全にとって新たな挑戦だ」と警戒感を示した。 習氏はネットを情報統制の主戦場と位置付け、締め付けを強めている。中国では以前から「グレート・ファイアウオール」(ネットの長城)とも呼ばれる仕組みで、海外のニュースやフェイスブックなど「不都合な情報」が流れ込むサイトを遮断してきた。

さらに2017年6月には統制を強化する「インターネット安全法」を施行している。同法は中国で集めた顧客データの国内保存や、海外に持ち出す際に当局の審査を義務付ける内容。日本の経団連を含む世界の54団体は5月に「世界経済に大きな影響を与える」と延期を求めたが、中国側は聞く耳を持たない。逆に新浪などネット大手を「違法情報」を流したとして処分し、デジタル保護主義への傾注を強める。

浙江省烏鎮で開かれた大会は世界大会をうたうが、欧米や日本など先進国の政府高官の姿はほとんど見当たらない。中国国内ですら「閉ざされたネット空間しかない中国が『世界大会』を名乗るのはおかしい」との批判も根強い。それでも、東南アジアやアフリカ、中東の新興諸国が副首相級らの高官を送り込んだ。

参加した新興国の多くは、中国が広域経済圏構想「一帯一路」で経済支援する国々と重なる。経済支援の見返りに、政治面だけでなくネット空間の統制手法でも「仲間作り」を進めたい中国側の思惑がのぞく。

世界インターネット大会の開幕式で、演説する王滬寧・共産党政治局常務委員=3日、中国浙江省烏鎮(共同)

大会では「一帯一路・デジタル経済国際協力」と題した提言も発表。ラオスやタイ、トルコ、サウジアラビアなど一帯一路の沿線国が共同で、デジタル化の促進やネット空間の「秩序」を高める方策を探るとした。ネット統制の流れが新興諸国に広がる可能性がある。

新興国は必ずしも経済支援の見返りだけで参加しているとは限らない。中国と同じく、政権安定へ向け言論統制や国民監視にネット活用をもくろむ国は少なくない。顔認証などの最新技術とネットを組み合わせ威力を増す中国の監視技術の「輸入」を望む国もあるとみられる。

自由や中立性を前面に米国発で発展してきたインターネット。一方で中国発のネットの保護主義が新興国を覆いつつある。今後、ネットという現代社会の利器の使い方を巡り、世界の溝が深まる可能性がある。

デジタル化の流れを取り込み発展した米国の大手企業は、中国のネット規制への対応に苦慮している。中国は中間所得層が厚みを増し、消費市場として重要性を増す。大会には米グーグルやアップルの首脳も参加したが、中国のネット政策への批判は封印した。>(以上)

本記事で山田氏や星野氏が言っています「国民監視の目」は益々激しくなっているというのが上記の日経の記事でしょう。日本の左翼野党と偏向メデイアはこの中国のやり方を批判しません。日本政府が事務の効率化を目指してマイナンバー等入れるときには「国民監視」とか文句を付けていました。彼らはいつも二重基準です。でも騙される国民が悪いのですが。

本記事の中で、日本人で中国人が嫌いな人が増えたとありますが、それはそうでしょう。中国人の実態を目の当たりに見ればそうなります。小生が8年の駐在を終えて日本に帰ってきたときに、会社で中国人の実態を話したら「人種差別主義者」とか「国粋主義者」の烙印を押されました。今だったら深く頷いて貰えたでしょう。

山田氏も星野氏も農民工に同情していますが、共産党を打倒しない限り展望は開けません。戸籍の問題も档案の問題も共産党支配が続く限り、解決は望めません。

それと政治システム以外に中国人の長い歴史の中で培われた民族的質特質があります。「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という基本的価値観です。信用を重んじる日本人と全く違います。ですから平気で嘘がつける訳です。南京も慰安婦も北京発の謀略でしょう。朝日はそれに乗っかって世界に嘘を広めたフェイクニュース社です。こんなプロパガンダ新聞を権威として未だ読んでいる人の眼力を疑ってしまいます。また賄賂とハニーの得意な国です。人間の欲に直接訴えかけるやり方で、これもまた仕掛けられる方が悪いのですが、人類の進歩に反し、21世紀には相応しくありません。

また、中国は世界を征服しようといろいろ画策しています。南シナ海や東シナ海だけでなく、一帯一路、世界各地に軍港建設や駐留基地を置いてパクスアメリカーナに対抗しようとしています。自由のないパクスシニカには絶対反対です。

記事

今回から2回に渡って、作家の星野博美さんをお招きして対談を行った様子を紹介する。星野さんは、『転がる香港に苔は生えない』(文春文庫、第32回大宅壮一ノンフィクション賞受賞)で香港在住時の体験をつづったり、『謝々!チャイニーズ』(文春文庫)、『愚か者、中国をゆく』(光文社新書)で中国旅行の話を紹介したりなど、中華圏に関する多くの著書を持つ。

実は、星野さんと筆者は約20年近くの付き合いになる。私が、香港在住時に勤めていた邦字紙に、やはり当時は香港に在住していた星野さんに連載を依頼していた。またその後も、中国情報を日本に伝える月刊誌の編集長を務めていた際に、連載を始めてもらうなど、とてもお世話になった方だ。

今回、『3億人の中国農民工 食いつめものブルース』を上梓したのを機に、ノンフィクション作家の大先輩にあたる星野さんとの対談を企画。星野さんに今の中国に思うことや日中関係に対して感じることなどについて聞いた。

星野 博美(ほしの・ひろみ) 1966年東京都生まれ。作家、写真家。『転がる香港に苔は生えない』(文春文庫)で第32回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『コンニャク屋漂流記』(文春文庫)で第2回いける本屋大賞、第63回読売文学賞「随筆・紀行賞」受賞。その他の著書に『謝々!チャイニーズ』(文春文庫)、『銭湯の女神』(文藝春秋)、『のりたまと煙突』(文藝春秋)、『島へ免許を取りに行く』(集英社)、『戸越銀座でつかまえて』(朝日新聞出版)、『みんな彗星を見ていた』(文藝春秋)、写真集に『華南体感』(情報センター出版局)、『ホンコンフラワー』(情報センター出版局)などがある。最新書は『今日はヒョウ柄を着る日』(岩波書店)。(写真=深澤明、以下同)

山田:今日はよろしくお願いいたします。

星野さんの著書は、星野さんにもらったり、また自分で買ったりして読んでいました。ようやく私の方からも送ることができる1冊ができてホッとしています。読んでいただけましたか。

星野:拝読しました。中国も、私が知っている時代とちょっと変わってきたなというのは感じました。都市では、農民工をもう受け入れませんと書かれていましたね。都市では飽和状態になっているんでしょうか?

山田:そうですね。非常にそれが顕著になってきました。

私は1997年に星野さんと香港で知り合いましたが、そもそも星野さんが中華圏に関わり始めたのは、もっと前ですよね。

星野:私は、もともと子供のころから中国が好きでした。ちょうど6歳のときに日中の国交が正常化しました。その後、中国残留孤児の初めての来日があった。そういうのに感動していました。

そのあと文化大革命が終わって、四人組裁判が始まり、中国が外国人に少しずつ開放され始めました。NHKでシルクロードの番組をやったのですが、それを見て中国にあこがれちゃったんですね。漠然としたあこがれだったのですが、それで大学に入ってすぐに初めて中国に行って、「やっぱり中国は素晴らしい」と思ったんです。

山田:それはいつですか?

    

転がる香港に苔は生えない』、星野博美著(文春文庫) 3億人の中国農民工 食いつめものブルース』、山田泰司著(日経BP)

星野:1984年です。当時は日本から個人旅行ができなかったので、ツアーで行きました。上海から入って、蘇州、杭州、北京を回るというとても一般的なルートでした。

できれば中国にもっと長く行きたいと思っていたところ、私の通っていた大学で香港と交換留学のシステムがあるということが分かり、じゃあ、香港でいいかなみたいな感じで、1986年に香港に留学したんですね。そのときは1年弱香港にいました。

日本に帰ってきてからは、大学を卒業して一般の企業に勤めました。ただ、香港が中国へ返還するのを見たくて、その10年後に再び、香港に渡って、2年間を香港で過ごしました。

ベトナム難民キャンプがぼこぼこあった香港

山田 泰司

山田:そうですか。では、私たちが知り合ったのは、星野さんが初めて香港に渡ってから、10年後だったんですね。

星野:そうなんです。だから私の香港観の基本というのは返還時じゃないんです。80年代の香港。だから山田さんとはちょっとずれがあるんです。私の中では80年代の香港が最高の香港だと思っています。まだ香港にベトナム難民のキャンプがぼこぼこあったんです。

山田:ぼこぼこですか。

星野:そうです。文革のときには、私の留学先の大学があった近くの道路を、中国から逃れてきた人たちがぞろぞろと歩いていて、大学の学生寮にその人たちを収容したという話が、ついこの間のことみたいな感じで語られていたんですよね。香港の友達が九龍城(注1)生まれとか、文革でいとこが逃げてきたけど国境で捕まって身代金を要求されているとか、そういう話が生きていたころです。

(注1) 香港の九龍にあったスラム街。英国・中国どちらの主権も及ばない場所だったが、香港の返還が決まると1994年に取り壊された。

だから返還の際に訪れたときは、私のイメージする香港はすでに変わっていたんです。私が求める香港はすでになくなっていた。

山田:求めているというのは?

星野:混沌とした80年代の香港がもうなかったんです。ベトナム難民キャンプもないし、バラックも相当なくなっていたし。

私は、中国大陸には旅行者としてしか行っていません。80年代の中国に住まなかったのは一生の後悔ですけど、まだ諦めてはいない。

山田:旅行とかでは行かれてました?

星野:90年代は頻繁に行っていたんですけど、最後に行ったのは2005年。その時点でもう中国に疲れました。

山田:その疲れるというのが面白いですね。

星野:私はやっぱり社会主義国家中国が好きなので、資本主義国家中国は疲れるんです。

山田:何に疲れたんですか。

星野:「改革開放」政策が提唱されて、鄧小平が1992年には南方講話(注2)を行った。それで、特に南中国から先に自由化されましたが、その時代に私はちょうど南中国を旅していました。そのとき、社会主義しか知らない人たちが資本主義になるときの何でもありな欲望みたいなものを目の当たりにしたんですね、旅をしている最中に。それは本当に、生まれて初めて資本主義というものをゼロから学ぶ人たちのパワーと面白さ。そして、全員スタートラインについて一斉に走りだすみたいな、平等な感じがあったんですよ。土地が高騰して誰かが濡れ手で粟で大金を手に入れるということではなくて。

(注2) 鄧小平が改革開放の加速を主張した一連の講話。1989年の天安門事件以降、保守派が握っていた主導権を取り戻した。

山田:確かにそうですね。

面器の水で商売をする才覚

星野:大金を得た人はほとんど密航者とその家族。それなりに命を懸けた人しか大金は得られないみたいな、すごくフェアな競争だった。その、海賊みたいなアウトローさには好感を持ったんですね。この資本主義だったら私は容認できるという感じ。

前に『愚か者、中国をゆく』に書いたことがあるんですけど、あるとき人民が大勢いる駅でへとへとに疲れて座っていたら、隣にぼろぼろの服を着たおじさんが水を入れた洗面器を置いたんです。そこには1角(0.1元)とか2角といった値段が書いてあって、これで顔を洗っていいぞという商売を始めたんです。それを見たとき感動して。駅に入って洗面所へ行って手を洗えばいいんだけど、人民がいっぱいいるからそこに到達するのがものすごく大変。そうすると洗面器に公共の水一杯だけでも商売になるんだと。

山田:アイデアと才覚でお金儲けができる。

星野:そうです。それで少しお金がたまったら、今度はリンゴを売ったりすればいいという。本当に資本主義の原始形態を見たんですよ、そのときに。

山田:日本にいたら決して見られないですね。

星野:そうなんです。私はバブルを経験した、ものすごいチャラチャラした世代だったので、これはもう日本は負ける、とそのとき思ったんです。

ただ、常に私は言っているんですけど、日本は戦後、40年ぐらいかけてやっとチャラチャラしたのが、中国はもっとスピードが速いんですよね。だから退廃も堕落も崩壊もすぐ来ると思うんです。

山田:そういう意味では、中国経済がすごくなって、強国になって、そして2大国と言うけど、私はそこまでじゃないだろうと思うんです。今はちょっとチャラチャラしているじゃないですか。

星野:この中国の繁栄というのが、農民工の人たちまで豊かになっていたものだったら、本当の強国だけど、絶対そうはならないですよね。

山田:そうですね。

星野:中国人は根本的に、平等が嫌いだから。平等が嫌いだから、無理に革命を起こさなきゃいけなかったので。

山田:中国人が平等が嫌いと感じるようになったのは、何がきっかけですか。

都会人も農民も中国人は平等が大嫌い

星野:何というんですかね。どちらというと私は社会主義は、日本人に合うシステムだと思っています。中国は広すぎるし、多様すぎる。すべての人に平等な教育をとか、すべての人が食えるようにとか、そういった感覚がない。自分の才覚や一族の才覚で食えない人も面倒を見るというシステムで4000年やってきているから。

山田:農民工の人たちって、農村で生まれたか、都会で生まれたかだけの違いで、貧乏な暮らしをしている。だから中国は不平等な国だよなというふうに言うと、「それ仕方ないじゃない」、みたいな反応なんです、農民工自身が。何でそう思えるのかなというと、平等嫌いみたいなところに通じるのかもしれないですね。

ただ、それは仕方がないけど、でもいつまでも俺たちはそうじゃないよと思っているわけですね、そこは。

星野:それは、何というんでしょうか、中国の強国イメージに洗脳されている感じ。強国イメージで、自分もこの国の一部だということで惑わされている。

山田:そうなんです。取り込もうとしている。

この本でも書いたんですけど、この表紙の彼。1年ぐらい上海を離れて、武漢に行っていた。ただ、武漢でやっぱり仕事がうまくいかなくて、ほとんど故郷でぶらぶらしていたらしい。ぶらぶらしているとテレビに洗脳されちゃって、久々に会ったら……。

星野:中国すごいと。

山田:そう、すごく愛国主義者になっちゃったんです(笑)。

星野:つまりいつもは一生懸命働いているから、あまりテレビを見てないんですよね。

山田:こうやって話をすると思い出しますが、何でこの不平等をこの人たちは我慢しているんだろうと思うけど、改めて考えてみると、道の渡り方ひとつとってみても、信号の色が何色であれ、隙あらば他人より1センチでも1ミリでも先に進もうとする人たちですものね。

星野:香港人も平等が大嫌い。いや、嫌いというより、平等をはなから諦めているところがある。一族の中でも頭のいい子だけよりすぐって、その子だけ学校に行かせて、あとはみんな働かせるとか。動物の子育てと似ている。生き残れる子をとにかく強く生き残らせる。それだけ、これまでが過酷だったという証拠だと思いますが。

山田:全員にはとてもじゃないけど行き渡らせられないから、一族の資源をそこに集中するということですね。

星野:それを4000年ぐらいやって、やっぱり革命が起きた。だから、今のこの加速の感じだと、私が死ぬまでにもう1回革命が起きるんじゃないかなと思っています。

山田:それでこそ中国というところですね。

星野:私は昔から革命が好きだって公言しているので。

山田:でも認めかかっていたわけですよね。最初の資本主義のとば口のときは。

星野:そうなんです、あのときは。1992~1993年ぐらいのときは、この混乱、何というか、どうしようもない混乱の中の自由な感じ。これで面白いことになるなと思っていたんですが、やっぱり日本と同じで、不動産の価値が中国人をだめにしている。山田さんの本にも書いてありましたが、親とかおじいさんが勤め先からもらった住宅が、すごい値が上がって億万長者になったりした。

山田:錬金術ですよね。

星野:日本のバブルのころも、実態のないお金を得ちゃった人が堕落して、若者がダメになったのと同じことが、もっとメタなレベルで中国で起きている。人数が半端なく多いから、堕落の度合いもたぶんすごくなると思う。

山田:本当そうですね。だから一番最後に、星野さんが中国に行った2005年、疲れちゃったんですね。

星野:物欲が渦巻いていることに耐えられないんですよね。日本でも、渋谷や新宿に行けば物欲が宙に飛び交っているけど、自分はほとんど行かない。日常の中で、今何がはやっているとか、そういうふうに生きていないので、何か宙を飛び交っている物欲とかにダメージを受けちゃうんですよね。うまく説明できないんですけど。香港に行ってもやっぱりダメージを受けますね。

中国が嫌いすぎる香港人

山田:香港には最近ではいつ行ったのですか。

星野:雨傘革命(注3)のデモが起きた3週間後ぐらいと、一昨年に行きました。

(注3) 2014年に香港で起きた若者主体の民主化要求デモ。

山田:どうでしたか。

星野:雨傘革命で若い人たちが立ち上がったというのは素晴らしいし、その純粋さには敬意を覚えます。ただ、私が危惧しているのは、香港人がとにかく中国が嫌いで嫌いで仕方がないこと。

山田:そうですね。

星野:ほとんどヘイトの塊みたいな行動を平気でやっている。中国相手だったら、何をやってもいいと思っている。

山田:いいというのがあるんですよね、歴史的に。

星野:みんな中国を知らなさ過ぎるし、今の香港人の精神状態は相当病んでいる。

山田:そうですか。

星野さんの最新著書『今日はヒョウ柄を着る日』(岩波書店)

星野:雨傘革命で占拠していた子、ピュアですごい繊細な子たちなんです。彼らと話していたときに、ちょうど小笠原諸島の周辺海域で大量の中国漁船がサンゴ密猟で見つかったというニュースが流れたんです。そのときに「チェッ」みたいに言うんです。そのうえ「日本は中国と戦争をして、やっつけてくれ」とか言われて。中国嫌いがここまで来ちゃったかのかと戦慄を覚えました。

かつて香港にいた時、尖閣列島問題のときには、すごい嫌な思いもしたんです。日本はまだ侵略者だとか言われた。そのときは、中国人と香港人ってこういうところで急に連携するのかと思っていました。それがたかだか20年間で、いまや日本は中国をやっつけてくれとか言う。これって、すごくやばいんじゃないのかなと感じました。

山田:日本より中国が嫌いってことですよね。

星野:今の若い人はだいぶ日本の文化に慣れていて、日本が好きな人は多いし、それはありがたいこと。一方で、あまりに中国から多大なプレッシャーを与えられ続けているがゆえに、中国が「巨神兵」みたいに感じられている。

(以下、明日公開の2回目に続く)

3億人の中国農民工 食いつめものブルース』を上梓したのを機に実現した、ノンフィクション作家の大先輩・星野博美さんとの対談の2回目。星野さんは、相変わらず貧富の激しい状況が改善しない中国に疑問を呈するとともに、嫌中派の人には、もっと中国を知ってもらいたいと訴える。

(前回の記事「チャラチャラ感が加速する中国は崩壊目前」から読む)

星野 博美(ほしの・ひろみ) 1966年東京都生まれ。作家、写真家。『転がる香港に苔は生えない』(文春文庫)で第32回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『コンニャク屋漂流記』(文春文庫)で第2回いける本屋大賞、第63回読売文学賞「随筆・紀行賞」受賞。その他の著書に『謝々!チャイニーズ』(文春文庫)、『銭湯の女神』(文藝春秋)、『のりたまと煙突』(文藝春秋)、『島へ免許を取りに行く』(集英社)、『戸越銀座でつかまえて』(朝日新聞出版)、『みんな彗星を見ていた』(文藝春秋)、写真集に『華南体感』(情報センター出版局)、『ホンコンフラワー』(情報センター出版局)などがある。最新書は『今日はヒョウ柄を着る日』(岩波書店)。(写真=深澤明、以下同)

山田:香港を見ていると、やっぱり大人たちがもうちょっと何とかしないと、というところですよね。

星野:そうなんです。大人に絶望しちゃったんです、香港の若者たちは。大人たちが中国と手を組んで俺たちを切り捨てたというふうに感じているんですよ。だから世代断絶もすごく深刻。

山田:大人から子供までピュアという感じでしょうか。若い子たちはピュアでやらせてもいいけど、それを後ろでもうちょっと大人たちが交渉するなり、根回しするなりすべきだと思う。地ならししてやらなきゃしょうがないだろうと思いますね。

星野:もちろん40~50代で精神的に支えている人もいたし、私の友達なんかもデモに行ったりしていたけど、そういう人ってやっぱり少数派ですね。

あと香港人って50歳になったらもう引退モードに入るじゃないですか。人生のスピードがすごく速い。そうすると、老後を考えると、あまり動乱を大きくしたくないとなりますね。

山田:返還のときもそうなのですが、香港の場合は民主派がとにかく頭でっかちというか、きれいごと過ぎるというところがとてもある。

星野:香港の古い民主派は超インテリです。まったく庶民からかけ離れている。市場でかんかんがくがくやるような人たちじゃない。そういう人たちが交渉などで中国共産党とはやりあえるわけがない。

山田:やれるわけがないですね。

星野:香港はいまも中国から1日150人の移民を受け入れていますが、計算だとあと20年も経つと香港人より中国人の方が多くなります。そうなると、中身が入れ替わっちゃう。香港という箱はそのままで「一国両制」といいながら、中身を入れ替えちゃうんです。私の想像ですが、それこそ中国が香港に対して目論んでいることでしょう。

山田:入れ替えちゃえばという発想ですか、すごい。多分、星野さんの指摘通りでしょう。

星野:どんどん、どんどん中国人を送り込めばもう香港人は嫌になっちゃうでしょう。選択できる人は香港人なら外に出ていきます、何もしなくても。中国にとっては、弾圧なんかしなくても、毎日150人送り込めば、自然に出ていってくれる。カナダとかオーストラリアとか。

山田:でも一方で行き場のない人たちもいるでしょう。

星野:だから香港の底辺にいる人たちは、濃いスープの一番下のどろどろとしたようなところに永遠にずっといることになってしまう。

私はこういう人たちにすごいシンパシーがあるから、山田さんの本を読んで、面白かったと言うのもあるけど、中国の底辺層の人たちの話を読むと、何か怒りを覚えますね、やっぱり。

山田:そうですね。

星野:だって努力とかは関係ない。本当に農村戸籍と都市戸籍だけで差別されているわけでしょう。共産党、マジでどうにかした方がいいのでは?

山田:共産党もそうだけど、やっぱり都市の住民がもうちょっと関心を寄せる時期に来ている。星野さんが中国に頻繁に行っていたときには、そういう農民戸籍とか都市戸籍というのは意識されてましたか。

やっぱり夢が見られない農民工

星野:聞いていましたし、農村から出稼ぎする人たちの群れを都会で見ていました。一般の人は、農村から大勢が移動する様を見て「盲流(モウリュウ)」と呼んでいたときです。社会現象として出現したころですよね。

それは1990年代の前半。だから、四半世紀たった現実がここにあるわけです。その盲流と言われた人は、四半世紀たって、やっぱり夢は見られないという現実にだんだん気付いてきてしまったわけですね。

山田 泰司

山田:気付いてしまった。そればかりか今度は都会に生まれていても、底辺の人たちは、「もう夢が見られないかも」というところに今、来ている。

星野:農民工の人たちが夢を見られなくなって来たというのは、都会に建てるものが飽和状態になったということが関係しますか?

山田:それもそうですね。あとは農民工の人が大勢働いていた雇用先の製造工場、例えばiPhoneを作ったりする工場では、人件費をもう上げられない。

人件費が上がった、上がったと日本のメディアなどは報道していますが、それでも1万円から始まったのが5倍の5万円になった程度。でも共産党はとにかく福利厚生などを全部企業にやらせるから、正規に雇うとすると、お給料が5万円でも、福利厚生費を併せると10万円ぐらい掛かってしまう。そうなってくると、企業とすれば、ベトナムで作ろう、ミャンマーで作ろうと。

星野:どんどんそうなってしまいますね。

山田:それとともに中国の経済成長というのが鈍化してきた。中国の場合は成長率が10%ぐらいあって、ようやく農民工も恩恵にありつけるというぐらいの感じです。今の6%とかの成長時代になってきちゃうと、彼らを満足させるだけの余力が都会にも企業にもなくなってきてしまっている。

だからこの本『食いつめものブルース』の表紙の彼なんかも、子供が中学生だったときには、「やつを大学に行かせるためにやっているんだ」と言っていたんだけど、だんだんあきらめてきている。「田舎の子供はみんなこんな感じだから」といって。

星野:もう少しで切れちゃいますよね。これまでゴムを引っ張るように酷使されてきて、それで夢がないと分かってしまたら、パチンと切れてしまう。

私が中国を訪れていた当時は、みんな目がきらきらしていましたよね。全然まだ挫折はしてないし、格差が付いていない。やっぱり人間を絶望させるのって格差なんですね。

私は政治のことはあまりよく分かりませんが、世界のトップを目指す前に、中国はやることがあるだろうと言いたいですよね。思いませんか。

山田:思いますね。

星野:日本と比べても仕方がないんだけど、大きさも違うし、多様さが違うから。もちろん中国の性質として自分たちが一番を取るんだという気持ちはよく分かるけれども、このままでは済まない気がします。人民がそのカラクリに気づいて声を上げるのを恐れて、監視とかしているんでしょうけど。

山田:実際監視は非常に強まっていると思います。

星野:ですよね。だけど、やっぱりそう遠くないうちに矛盾が噴出すると思いますよね。

山田:ただ、中国でも都会に住んでいる人はそこまでの切迫感がないんです。何か相変わらず他人事。

星野:実際、農村の暮らしも知らないでしょうし。

山田:本当に知らない。

頑張って生きている人をみんなが知るべき

星野:国内に行くとしたら観光地しか行かないでしょうから。

また香港の人たちだって、日本人もそうだけど、中国の農民がどれだけ大変かというのを全然知らない。みんなが中国のどぎつい経済成長とかばっかり見て、底辺であえぐ人たちが見えなくなっちゃっている。

逆にこの人たちを見たら、中国を好きだとか嫌いだとか絶対言えないと思います。今、中国を嫌いな日本人がすごく多いけど、この人たちを見たら絶対嫌いになれない。だから、ぜひ知ってほしい、こんなに頑張って生きている人たちがいるということを。

山田:星野さんがいま言ったように考えるのが、私は普通の感覚だと思うのだけど、一方で、日本の中にはヘイトとか、そういうのがあるじゃないですか。だから農民工の生き様を知っても、なおかつ悪く言う人は多くいるような気がします。

星野:日本の競争力がなくなり、日本人が自信を失うごとに、中国脅威論が加速していく。中国は体のいいスケープゴートなのだと思います。

山田:そうですね。

星野:私たちが10代とか20代のころは、中国が好きだと言うと、完全に変わり者扱い。何か貧しくてかわいそうな国よねという感じでした。もちろん全然脅威じゃなかった。

しかも、日本はイケイケだったから、誰も関心がないし、何の感情もわかなかったと思うんです。だけど、ギョーザとラーメンは好きで食べてるみたいな(笑)。中国人もそんなに来なかったし、いるとしても中華料理屋で片言しゃべって、一生懸命働いている人ぐらいしかいなかった。

でも北京オリンピックのあたりから、急に中国がわーっと来て、あれ? ちょっとやばくない? みたいに。全然中国に興味がなかった人たちにとっては、霧の向こうからいきなり姿を現した怪物みたいに感じられるのでしょう。しかも、あの広さと人民の多さと物量。

あのプレッシャーというのは、韓国も同じように感じていると思うんですが、小さい国にとってはものすごい脅威。本能的にやられるという感覚が強くなると思う。

山田:今、星野さんが言ったみたいに、関心なかった人が最近の中国を見て脅威に思って、理解不能で、何だ何だと怖がるというのはとてもよく分かるんです。ただ、そんなことを思う必要はまったくなくて、例えば一帯一路とか21世紀のシルクロードを築くとか言ってますが、あれは国の中だけで支えていけなくなったから、外に広がって稼ぐところを求めているだけ。

星野:活路を求めてるんですよね。それを中国が違うふうにパッケージして宣伝していて、みんなだまされちゃっている。

山田:本当にそうなんですよ。日本のマスコミもその通りに伝える。

星野:誰も中国を理解なんかしようとしていないんです。

山田:そういうことですかね。なぜあれを脅威に思うのかというのは。

日本人は名誉白人の勘違い

星野:それと、例えば韓流ドラマとか韓国の映画とかを見ていても思うのですが、韓国と中国と香港の芸能界って、みんなアジアで頑張ろうといった感じで、すごく活気がある。資本も行き来して、韓国の俳優もすごく中国で人気があったりして。そこに日本だけいないんです。自分たちはそこに入るようなレベルじゃないと考えているみたいに。自分たちはカンヌやベネチアとか行くので、アジアはけっこうです、みたいな。自分たちは名誉白人、アジアではトップという感覚が、どうやっても壊せない。

山田:何かそう言われてみると、北野武のオフィス北野が中国の監督ジャ・ジャンクーの作品に協力したり、宮崎駿がアニメを描きたいと中国から来た人を、やってみろと事務所で働かせたりとか、この2人は違う気がします。

星野:彼らは世界を知っているからでしょうね。実際、マーケットの大きさを考えたら、賢い選択だと思います。

山田:本当ですね。あとはやっぱり中華料理はおいしいじゃないですか。そういうことに対する、リスペクトも中国に対してはちょっとなさすぎる。

星野:ギョーザとかラーメンが好きで、どうして中国を知ろうとしないのか。本当に理解に苦しむ。

山田:ある程度、好き嫌いで単純化しちゃうのは仕方ないとは思うけど。ただそればっかり過ぎる。そう思います。

星野:それと最近は急激に日本人が自信をなくしているように思います。転げ落ち方がすごく急だから、内にこもっている感じ。

山田:テレビ番組でも、「日本人、ここがすごい」みたいな番組が4~5年前から増えている。ようやくここに来て、少しそういう番組が多すぎるんじゃないかみたいな声が少し出てきたけど。

星野:観光客が今、急に増えてきていて、「やっぱりみんな日本が好きなんだ!」とか言うじゃないですか。実態は単に安いからだと思うんですよね。どうしてそこがそっちの発想になっちゃうのかなと憐れに思います。

ただ、中国の人も日本のことをやっぱりゆがんで知っているでしょう。だから、いいところも見てほしいし、すごく嫌な思いもするだろうけど、そういう経験を重ねて、日本を彼らの側からも理解してもらいたいなと思っています。

山田:口幅ったいことを言うと、ここ15年ほど、中国のこと嫌いという人が圧倒的に多くなってきた。ただ、そういう好きとか嫌いとかはいいから、いったん置いておいて、この人間の生き様を見てくれよというところで、今回の本も書いたつもりなんです。

星野:中国って、行くとその人たちを好きになりませんか?

山田:僕はなります。星野さんが中国人が好きっていうのは、どんなところですか?

星野:私は小さいころから、10代ぐらいから日本に対する違和感が強かったので、なぜ日本がこうなんだというのが不満だった。中国に行って、中国人の価値観を知ったことで、日本の息苦しさについて考えるようになったんです。

時代的なものもあるかもしれないですけど、日本は必死に生きているのがかっこ悪いみたいな感じでしたよね。学歴とか、どこの家の出身とか、親がどれだけお金を持っているとか、何かそういうことで威張っている子がいっぱいいた。だから、自分の才覚でどんなみっともない生き方をしても、お金を持ったやつが勝ちという香港人や中国人の価値観が自由に思えたんです。

山田:日本の自由とは違いますね。

星野:彼らの自由は、また一人ぼっちじゃだめ、寂しくて。家族のためとか、そういうのが絶対にある。孤独があんまり好きじゃない。

山田:でも最近の中国の物欲がぎらぎらしているのは苦手なんですよね。

星野:そうなんです。要はお金を持っている人たちが、買えるから買いたい、という欲望が、宙に渦巻いているのが好きじゃない。農民工の人たちが必死に働いてお金が欲しいとか、それとはまったく別物の欲望。農民工の人たちが持っているのは、欲望じゃなくて夢ですね。

山田:昔の中国は何が魅力的だったかというと、社会主義で全体的に貧しかったけれども、そういう中でお金儲けにむき出しの人がいたからということですよね。懸命とか必死とか。生身の人間が感じられるというのかな、

星野:自分たち日本人だって、戦後の焼け野原ではそうだったと思うんです。それはもう遠い昔になってしまって、私たちの時代は何か生存に一生懸命というのがあり得ないみたいな、しらけ方をしていたので。それを中国の人は教えてくれる、「生存というのはこうやるんだよ」と。そんなことは、日本では誰も教えてくれませんでした。

ウイグルにはもう一度行きたい

山田:最後にノンフィクション作家の星野さんに質問を。もし今、中国でネタを探しに行くとしたら、どんなことを取材しに行きたいですか。

星野:考えたことないですね(笑)。でも、ウイグルは行きたい。ウイグルって私のイメージする楽園だったので。

山田:どうしてですか?

星野:ウイグルには長い時間をかけた東西交渉の歴史があって、東と西の血が混じっていて、いろいろな顔をしていた。そして乾いた土地にブドウとメロンがたくさんなっていて、冷たい水のせせらぎがちょろちょろとあって、道行く子供たちがみんな、こうやって手を振ってくれて、牛乳とヨーグルトがおいしかった、本当にその通りだったんですね。

それがいまや、中国に弾圧されている。中国が本来持っている多様性をないがしろにしたら、いつかは墓穴を掘ることになる。私は1987年以来、ウイグルに行っていないので、今どうなっているのか見てみたい。

山田:本でも紹介しているけど、農村出身で今はウイグルで笛を勉強している青年がいるので、その際にはぜひ訪ねてください。

今日はありがとうございました。

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