『米朝出直し、矛を収めた米国の「地政学」的事情 あいまいな米朝合意が導く「戦域核による抑止論」』(6/7日経ビジネスオンライン 森英輔)、『米国民は米朝首脳会談をどう見ているのか、日本人が知らない本音』(6/7ダイヤモンドオンライン 長野美穂)について

6/8看中国<中国罕见为金正恩新加坡派中国は稀なことであるがシンガポールへ向かう金正恩の為に編隊を組んで保護

法国国际广播电台报导,“川金会”于6月12日在新加坡举行,中国或在金正恩座机飞经中国领空时,派遣编队战机护航。有消息透露,金正恩专机老旧,有可能在中国福建稍停加油、技术安检后,在飞往新加坡。但也有分析认为,中方担心被边缘化,想尽方法提高对“川金会”的影响力。=仏・国際TV局は「米朝首脳会談は6/12に行われるが、中国は金の乗った飛行機が中国領空を通る時に編隊を組んで守る。情報通が明らかにするところでは「金の専用機は古く、福建省で降りて給油するだろう。技術の安全面が確認されたら、シンガポールに向けて飛び立つ。中国は朝鮮半島に関与できないのを恐れ、首脳会談への影響力を高めるためいろんな手段を尽くしたいと。>

昨日の本ブログの鈴置氏の話と繋がります。金の帰路に撃墜されないようにでしょう。

6/8看中国<蓬佩奥加入美中贸易论战 川金会后访华(图)=ポンペオは米中の貿易論戦に参加 米朝首脳会談の後に訪中>ロイターによれば、金は6/10にはシンガポールに着き、会談の準備をする。ポンペオもそれに出席するため、先に韓国で日米韓の外相会議を開く。FTによれば「米国の貿易交渉団は米国の貿易赤字削減と中国の構造改革を要求してきたが、米貿易団は方針が定まらず、中国はどう付き合ってよいか分からない。北の問題があるのでポンペオは貿易団に任せる訳にも行かなくなった。米中の体制の違いもあり、中国と協議達成しても、国内では反対の声が上がる。中国はこの数10年来言うだけで何もしてこなかったから。信用されていないので米国は中国を疑い、相手を倒す絶妙の手を放そうとはしない。中国の役人(劉鶴のこと?)は挫折感を漂わせて「引延しや絵に描いた餅等のドッグファイトは必要がない」と述べた。ポンペオは。首脳会談の準備に影響がある場合のみ、介入する」と。ブルームバーグ社は「WHは会談で、金が非核化のタイムテーブルを承認してほしいと願っている。WHは会談の成否は北の態度如何による。それはトランプが今までずっと聞いてきた意見は金に対し譲歩はしないと言うものであるからである」と報道。

https://www.secretchina.com/news/gb/2018/06/09/861133.html

6/8ビジネスジャーナル・渡邉哲也<米が中国スマホ大手に巨額罰金で制裁解除、「米国の法を守らなければ潰す」米中貿易戦争が幕開け>「今回の合意内容は、ZTEと中国政府にとって、非常に厳しいものであるといえる。罰金10億ドル(約1100億円)と供託金4億ドル(440億円)この額も巨額であるが、それ以上に厳しいといえるのは、経営陣の刷新と米国側が選任する新たなコンプライアンスチームを10年間にわたり設置するという条件である。これにより、たとえ、中国企業であっても米国と取引する以上、米国の法を守らなければ潰せることを世界に示したわけである。」とあり、経済のCVIDみたいなものを米国は作れたという事でしょうか?しかし中国人を良く知っている小生としては中国人はそれでも裏でいろいろ誤魔化しをするでしょう。共産党、政府・役人、取引先、従業員がグルとなって。まあ、米国も如何に中国人が嘘つきか、腐敗しているかをその目で見てみると良いです。大東亜戦争も違った目で見れるようになるかも。

https://news-vision.jp/intro/188420/

6/8ブルームバーグ社<FBやグーグルの公聴会目指す、中国メーカーとの関係で>国の安全の基幹となるIT産業が敵国・中国に取り込まれていたのでは話になりません。米議会は売国奴を締め上げてほしい。自分の利益だけ考えて、国の安全を危険に晒すような輩は監獄送りで良いと思います。日本もスパイ防止法を制定し、危険行為をする人間は最悪死刑に処すべきです。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2018-06-08/P9Z9OH6S972901

秋元氏も北の非核化を疑っています。上述の看中国の記事によれば、米国が非核化のタイムテーブルを出すようですから、金が呑むかどうかにかかります。しかしどこまで査察を許すかです。またトランプが北を中露から引き離す思惑もあるのではとの見方ですが、それができれば万万歳でしょう。でも虐殺好きな独裁者が残ってしまいます。北にクーデターが起きるのが一番良いのかと。また会談の成否とは別に、日本は米軍とのニュークリアシエアリングを進めていく必要があります。

長野氏記事は米国人の草の根民主主義の強さを感じ取りました。都会はリベラルが多いのでしょうけど、地方は健全な魂を持った人が多いという事です。それでもトランプ支持を打ち出しにくいというのは左翼・リベラルが言論弾圧しているからです。日本も全く同じ構図ですが。

金が騙そうとしたら米国はEMPを使い、軍事行動に打って出てほしい。

森記事

トランプ米大統領が6月1日、一度は中止を表明した米朝首脳会談を当初の予定通り12日に実施すると発表した。北朝鮮の“泣き”を受け入れて開催を再度決めたにもかかわらず、米国は条件面で譲歩したように見える。その背景に何があるのか。地政学的視点の重要性を説く秋元千明・英国王立防衛安全保障研究所アジア本部所長に話を聞いた。

(聞き手 森 永輔)

金正恩委員長の側近、金英哲氏(左)をクルマまで送って出たトランプ米大統領(右から2人目)(写真:AP/アフロ)

—ドナルド・トランプ米大統領が6月1日、米朝首脳会談を当初の予定通り12日に実施すると発表しました。それは良いとして、その後の展開は不思議な様相を呈しています。米国が条件を緩和しているように見えるからです。トランプ大統領は訪米した金英哲(キム・ヨンチョル)氏に非核化は「ゆっくり進めてください」と発言。「『最大の圧力』という言葉はもう使いたくない」「対話が続いている間、追加制裁はしない」と語ったことも報じられています。
トランプ大統領は5月24日に同首脳会談の中止を表明。これに対して北朝鮮はわずか8時間後に反応。金桂官(キム・ゲグァン)第1外務次官が「わが方はいつでも、いかなる方式でも対座して問題を解決していく用意があることを米国側にいま一度明らかにする」(朝鮮中央通信5月25日)とまるで泣きを入れるような談話を発表しました。ここから12日開催に向けた再調整が始まりました。

秋元:北朝鮮の核問題は2つの軸で見る必要があります。1つは非核化そのものです。

この点について、米国の姿勢に変化はないと思います。「CVID(完全で検証可能かつ不可逆的な非核化=Complete, Verifiable, and Irreversible Dismantlement)」を求める意思にブレはありません。「一括」 での実現を求めていた非核化について、最近では時間をかけて実現するような表現をしていますが、そもそも非核化は短期間でできるものではありません。たった1回の会談で非核化に関する全ての事項に合意し、その実現のための行動計画でも合意するのは困難です。

非核化の実現にかかる期間をCIA(米中央情報局)は6カ月、国務省は2年程度としています。もっとも、これは北朝鮮がもし本気で非核化に応じればの話であり、私は懐疑的です。

秋元千明(あきもと・ちあき)氏
英国王立防衛安全保障研究所アジア本部(RUSI Japan)所長。 早稲田大学卒業後、NHKに入局。30年にわたって軍事・安全保障分野の報道に携わる。1992年、RUSIの客員研究員に。2009年に同アソシエイトフェローに指名された。2012年にNHKを退職し現職に就く。大阪大学大学院で招聘教授、拓殖大学大学院で非常勤講師を務める

通常の首脳会談なら、こうした点を詰めて合意できるとの確証を得てから、首脳会談の開催を決断します。しかし、今回の場合、3月8日に韓国の特使、鄭義溶(チョン・ウィヨン)大統領府国家安保室長がトランプ大統領と会談し、金委員長がトランプ大統領との会談を熱望していると伝えると、同大統領がその場で受け入れてしまいました。つまり詰めの作業が後回しになってしまったのです。この点を考え合わせれば重要な問題が未解決のまま先送りされることになる可能性は否定できないでしょう。

「『最大の圧力』という言葉はもう使いたくない」という発言は確かに腰が引けているように聞こえますが、1週間後に首脳会談が控えているのです。この段階で交渉相手を刺激するような発言をするのは賢明ではありません。

—朝鮮戦争の終結にも米国は触れていますね 。

秋元:これも象徴的な意味しかないと考えます。朝鮮戦争の終結は、休戦協定が結ばれた時から将来の目標としてずっと掲げられてきましたし、事実上戦争はずっと前に終わっています。ただし、在韓米軍の撤退の口実として使われないよう警戒する必要があります。

依然として続く大国間の綱引き

—もう1つの軸は何ですか。

秋元:東アジアの大国が朝鮮半島をめぐって織りなす勢力争いです。これは将来の東アジアの戦略地図に重大な影響を与えます。

中国・大連で5月7~8日 、2回目の中朝首脳会談が行われた後、北朝鮮の態度が急に硬化しました。中国が何を求めたのかは推測するしかありませんが、「安易な妥協はするな」という内容だったと思います。中国にとって、西側を核で脅し続ける北朝鮮が緩衝地帯として存在するのは必ずしも悪いことではありません。だから、北朝鮮の崩壊を望まないのです。

その後、ロシアも5月31日、ラブロフ外相を北朝鮮に派遣しました。中国と似たような立場で北朝鮮に接したのだと思います。北朝鮮を抱え込んでいたかった。

こうした展開の中で、トランプ大統領はCVIDを重視しつつ、それにこだわりすぎて北朝鮮を中ロの側に追いやってはならないとも考えたのでしょう。ここで首脳会談を蹴飛ばしてしまえば、北朝鮮は完全に中ロの側に寄る可能性があります。同大統領が譲歩したように見えるのはそうした思惑が働いているからだと思います。

もし、トランプ大統領がこう考えたとしたら、分からなくもありません 。北朝鮮を米国側に取り込むことができれば、たとえ今、すぐの非核化を実現することができなくても、近い将来できるかもしれない。一方、北朝鮮との関係がさらに悪化すれば、非核化の実現には戦争しか手段がなくなります。あくまで即時の非核化に過度にこだわることが米国の安全保障に寄与するのかどうか、慎重に判断する必要があります。秋に中間選挙を控え、戦争へ進む道が支持率を上げるのか、それとも、短期的でも外交的な成果を上げる方が支持率を上げるのか、そのへんの読みだと思います。

北朝鮮に内部分裂の可能性

こうして、大国が北朝鮮を自身の側につけようと綱引きをする中でカギとなるのは北朝鮮の考えです。

—そもそも、中国が韓国と国交正常化を進めたことが、北朝鮮が核開発を進めた理由の1つと言われます。

秋元:そうですね。北朝鮮の生存を保証できるのは米国だけです。だから、トランプ大統領が首脳会談の中止を表明すると、金第1外務次官が「トランプ大統領がこれまでどの大統領も下すことができなかった勇断を下し、首脳対面という重要な出来事をもたらすために努力したことについて、ずっと内心は高く評価してきた」 との談話を出したわけです。これほど低姿勢な北朝鮮の声明に接したことがありません。

もしかすると、北朝鮮の中で意見が2つに割れているのかもしれません。中ロに寄り添うべきだと考える勢力と、米国との融和を優先すべきだと考える勢力です。この2つの勢力のバランスが変化した時に、北朝鮮が方針を突然転換したかのように見えるのではないでしょうか。

先ほど触れた、金第1外務次官の談話はこの例と言えるでしょう。金委員長と習近平(シー・ジンピン)国家主席の第2回会談を受けて親中派が勢いを得て、崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官が米国を挑発した。「米国がわれわれの善意を冒涜(ぼうとく)して非道に振る舞うなら、朝米首脳会談の再考を金正恩(キム・ジョンウン)委員長に提起する」 という5月24日の発言です。

トランプ大統領が同日、これに反発して会談の中止を表明すると、金第1外務次官が翌25日「ずっと内心は高く評価してきた」と言い訳にも聞こえる談話を出し、態度を一変させた。普通の北朝鮮ならあり得ないことです。政権内で「お前があんなこと言うからこんなことになったんだ」といった責任のなすり合いがあったのかもしれませんね。

このあたりのことは、金委員長がどれだけの力を持っているかによります。真の実力者としてすべてを統制しているのか。それとも、政権内に複数のグループがあり、その上で調整役を演じているのか。後者の見方はこれまであまりされたことはありませんでしたが、可能性は捨てきれません。

そして同じ過ちを繰り返す

—以上の話を踏まえて考えると、6月12日の米朝首脳会談ではどのような合意が成されるでしょう。

秋元:非核化に向けた具体的なプロセスについての明確な合意は難しいと思います。将来に向けた努力目標を列挙するあいまいな合意に留まるかもしれません。

もし、そうなら、この合意は必ず批判にさらされるでしょうね。「何の成果も生まない」と。トランプ大統領は「会談のための会談はしない」と言い続けて来ました。しかし、まさにその会談のための会談になるわけですから。

—身内である共和党からも批判されそうです。

秋元:避けられないでしょうね。

朝鮮半島をめぐる地政学的な綱引きという視点から見れば、必ずしも意味のない会談ではありません。問題は、このような曖昧な合意が北朝鮮に誤ったメッセージを送る危険があることです。もし、北朝鮮のこれまでの行動を米国が認めたなどと誤解すれば、さらに核とミサイルの開発を続けるでしょう。そもそも、現在の北朝鮮の突然の融和姿勢は、核やミサイルの開発が最後の仕上げ段階に入って、そのための時間稼ぎをする戦術に過ぎないと私は思うからです。

そうなれば、トランプ大統領の選択は第2次世界大戦前夜、英国のチェンバレン首相がドイツの軍備増強を許し、結果として戦争を招来させた宥和政策になぞらえて、“第2のチェンバレン合意”とよばれることになるでしょう。脅威との対決を避けるために解決を先に送ると、結局はさらに強大な危機に直面するということです。

ですから、6月12日の会談が単に北朝鮮の時間稼ぎに協力するだけの会談に終われば、戦争はいっきに現実味を帯びてくると思います。

中距離戦域核による抑止を考える

—優秀なディールメーカーを自称するトランプ大統領としては恥ずかしい結果になりかねないわけですね。
米朝首脳会談があいまいな合意とその反故に進むとすると、日本はいかに備えれば良いのでしょう。秋元さんは中距離戦域核による抑止に注目されていますね。

秋元:ええ。米国が最近発表した核戦略の中で指摘しているように、遅かれ早かれ米海軍の艦艇に核弾頭搭載のミサイルを配備することが検討課題となってくると考えています。

これは欧州で1980年代に起きた危機から得られる教訓です。当時のソ連は西欧を射程に収める中距離核ミサイル「SS20」を配備しました。これは西欧諸国の脅威となるものの米国の脅威とはならない。ソ連による分断策(デカップリング)を恐れた西欧諸国は米国に中距離核を配備するよう働きかけ、米国は弾道ミサイル、パーシングIIとGLCM(地上発射巡航ミサイル)を西欧に配備しました。この中距離核の配備は抑止力として機能し、東西冷戦終結のきっかけとなりました。

中距離核の配備には全面核戦争の敷居を高めるという狙いもありました。SS20に対して、米国が保有する戦略核兵器で対抗すれば、欧州の紛争が地球規模の戦争に一挙にエスカレートしかねません。

北朝鮮の核ミサイルの開発をこのまま容認すれば、近い将来、北朝鮮が保有する核に対して、欧州の中距離核と同じような地域配備の核抑止力を東アジアにも配備すべきだという意見が強まるでしょう。それは日本のいわゆる非核三原則にも影響を与えるでしょう。

だから、北朝鮮が持つ中距離核ミサイルもしくは中距離ミサイルを、米国を狙うICBM(大陸間弾道ミサイル)と並行して廃棄させることにも取り組む必要があるわけです。

中国が北朝鮮による統一を支援すれば後ろから刺される

—大国間の覇権争いについて伺います。確かに第1次世界大戦や第2次世界大戦の前は各国が覇を争っていました。現代の覇権争いはどのようなものなのでしょう。

秋元:現代の世界は第1次世界大戦前の世界と似ています。それまでの大国が力を失い始めると、その力の空白を埋めようと新興の大国が覇権を拡大する。しかし、旧覇権国はただ黙って見ているわけにはいきませんから、そこで軋轢が生じる。現代の世界と同じですね。

当時は英国やロシア、オスマン帝国など大国の力に陰りが見え始め、その機に乗じて、ドイツが台頭した。現代は20世紀の覇者、米国の影響力が下がる一方で、中国が台頭している。

国家同士の連帯にきしみが生じているのも似ています。英国のEU(欧州連合)離脱をきっかけとしたEU域内の動揺もそうだし、NATOの連帯にかげりが見えているのも事実です。2011年に起きたリビア内戦にNATO(北大西洋条約機構)が軍事介入した際には、参加国が途中からどんどん離脱しました。NATOが共通目標とする国防費の最低値(GDPの2%)を満たす国は2018年、28カ国中8カ国にとどまる見通しです。

ただ、現代では勢力争いのツールは軍事力だけではありません。戦略的な構図は変わっていないけど、それを実現するための戦術が変わってきている。経済支援やPKO(平和維持活動)の派遣によって対象国の抱き込みを図ることができます。軍事力を行使しなくても、誰がやったかわからないサイバー攻撃や対象国の世論を誘導するハイブリッド戦を仕掛けることもできます。

中国が進める一帯一路構想は経済というツールを使った世界覇権確立のための野望です。日本が取り組んでいる太平洋・島サミットやアフリカ開発会議もこれに対抗するツールの一例と言えるでしょう。

朝鮮半島をめぐる米ロ中の動きもこうした視点から見る必要があります。中国はあわよくば韓国まで手中に取り込もうとしているように見えます。ただし、韓国の外交姿勢には一貫した戦略があるようには見えません。常に場当たり的で変化しやすいので、中国が韓国を抱き込むのは容易なことではないでしょう。

—綱引きの一方の雄である中国にとって、北朝鮮がどのような状態にあることが好ましいのでしょう。

秋元:中国にとって、北朝鮮は常に西側との緩衝地帯でなくてはなりません。国境を接した北朝鮮が親米政権になるなど悪夢です。つまり、中国は北朝鮮が今のような状態でいるのが好都合と考えているでしょう。北朝鮮は中国にとって不愉快な国であるかもしれませんが、北朝鮮との一定の関係を保っていれば、西側に対する外交カードとしてこれを使うことができます。

ですから、もし、北朝鮮と韓国が将来、統一に向けて動き出したら、これは中国にとって悪いシナリオです。米国と韓国が主導して朝鮮半島を統一すれば中国の国境に接して西側の自由陣営が生まれることになります。かといって、もし、そうした動きが朝鮮半島で始まった場合、中国はそれを阻止することはできないでしょう。朝鮮半島に手を出せば背後から刺されかねません。

—後ろから刺されるのですか?

秋元:香港の民主化を求める勢力、チベット、ウイグルなどの民族の独立を目指す勢力にです。中国の軍事的能力のほとんどは海外に対してではなく、国内を掌握するために向けられています。もし、その能力を海外への進出に使おうとすれば国内を掌握する能力が相対的に弱まります。それは体制の危機を招きかねません。

—そのような国がどうして海洋進出をしたりするのでしょうか。

秋元:中国は自国の安全を維持するための緩衝地帯を自国の周囲に作りたいのです。南シナ海などの海洋進出にもそうした側面があります。

民主主義国と独裁国家とでは発想が異なります。民主主義国はその特性として、理念を共有する国同士が仲間を作り、増やし、安全保障に関わる役割分担、つまり同盟を作る習性を持っています。一方、独裁国家同士にはそれがありません。したがって、利用し合う関係はあっても、運命共同体としての真の同盟は存在しない。その結果、自分の国は常に自分で守らなくてはならず、そのために国家の周辺に緩衝地帯を置きます。これは中国やロシアのようないわゆるランドパワーの特性でもあります。

中国が南シナ海の環礁を埋め立て軍事拠点化し、緩衝地帯を築くのは、南シナ海を足場に将来、外国へ進出しようというものではなく、自国の周辺に友好国や同盟国が存在しないから、安全地帯を作っておきたいのです。北朝鮮に対してもそうです。友好国ではなくても、緩衝地帯として自らの勢力圏に置くことが中国にとっての利益なのです。

長野記事

トランプと金正恩に翻弄され、予測不能な米朝首脳会談の行方を、当の米国民はいったいどう見ているのか。現地で日本人が知らない本音に迫った Photo by Keiko Hiromi/Photo:「労働新聞」より

米国と北朝鮮の両トップが史上初めて顔を合わせる6月12日の米朝首脳会談(トランプ・キム・サミット)。世界が注目するこのイベントを前に、北朝鮮と距離が近く利害関係が強い日本人・韓国人の「期待」や「不安」の声は、日々報じられている。一方、 地理的に北の脅威を日韓ほどは身近に感じていないと思われる米国人の本音は、日本ではあまり報道されない。とはいえ、そもそも北の核開発は世界最大の核武力を持つ米国に自国の存在を示すのが主目的だった。ツイッターで金正恩を「ロケットマン」と呼んで非難したかと思えば、「北朝鮮の繁栄を強く信じている」と綴るトランプ大統領の予測がつかない外交姿勢を受け、「世紀の対談」を前に米国民たちはいったい何を思うのか。現地で彼らの本音に迫った。(取材・文・撮影/ジャーナリスト 長野美穂、文中敬称略)

世紀の首脳会談は6月12日に開催 気炎を上げるトランプ支持者たち

「私はトランプの交渉術に、大いに期待しているわよ」

そう語るのは、ミシガン州在住のジュディ・シュワルバック。ミシガン湖のほとりの人口1万2000人のエスカナバ市で、夫と共にキッチン・キャビネットを販売する店を営む63歳の女性だ。

彼女が住む北ミシガンは、大自然が広がり、狩猟やアウトドアスポーツの盛んな地域だ。地理的に半島の上部に位置することから「Upper Peninsula」の頭文字を取って「ユーピー」と呼ばれる。その住民たちは自らを「ユーパー」と呼ぶ。ジュディは2002年に同市の市長に立候補し、5年半の間、地元政治の現場も経験してきた。

「トランプには、キム(金正恩)と直接会って、北朝鮮に核ミサイル廃絶を約束させてほしい。世界平和のために。もし、一気に核兵器を手放させるのは無理でも、トランプなら何らかの取引を成立させるはず。北朝鮮で逮捕され拘束されていた3人の米国市民を、最近、釈放させたようにね」

ジュディの夫は、毎日どこへ行くにも「メイク・アメリカ・グレイト・アゲイン」というスローガンが縫い込まれた帽子を被って歩く、筋金入りのトランプ支持者だ。だが彼女本人は、大統領選挙前はトランプ支持ではなかった。

「私、トランプをクレイジーだと思っていたの。彼がヒラリーを犯罪者と呼んだのはまあいいとしても、共和党候補者のジェブ・ブッシュ(編集部注:ジョージ・W・ブッシュ元大統領の弟)を『エネルギーに乏しい男』って非難したから。あれはひどいわ。私、ジョージ・ブッシュ大統領時代にホワイトハウスのパーティーに招かれたから、ブッシュ一家には親しみを持ってるし」

そんな彼女だが、共和党大会で直接トランプのスピーチを聞き、彼の娘・イヴァンカ主催の会合に出るうちに、実業家としてのトランプの交渉力に一目置くようになったという。

「トランプが金正恩を『ロケットマン』と呼んだのは、子どもじみた喧嘩のよう。でも、あれもトランプなりのプレッシャーのかけ方ね。口は悪くても、直接交渉でいい結果を引き出せればいい。オバマは世界平和を唱えていたけど、平和をどうつくり出すかの具体策に欠けていた」

今回、一度はシンガポールでの米朝トップ会談をキャンセルすると宣言したトランプ。それと同時に、北朝鮮側は核実験場を爆破したと発表し、その映像を公開した。一連の動きをどう思うかを聞くと、ジュディは爆笑した。

「あんな核実験場爆破なんて茶番を、米国側が信じると思っているとしたら、相当おめでたいわよね。国民を飢えさせても、多額の資金を核兵器開発に注ぎ込んできた北朝鮮が、そう簡単に成果を諦めるわけがない。キムの交渉ゲームよ。当然、現地で検証すべきでしょ」

日本や韓国は米国が守る  世界最強の核兵器で

朝鮮半島から遠く離れた北ミシガンに住むジュディやその家族にとって、核ミサイルの脅威は身近なものではない。だが、日本や韓国やハワイがその脅威に晒されるとすれば、黙ってはいられないという。

「同盟国を守るのは私たち米国の役目だから。日本や韓国は何としても米軍が守るわよ。万一、キムが日本に核ミサイルを発射しようものなら、彼は自国を破壊することになる。そのためにも、米国は世界最強の核兵器を持っているんだから」

ジュディの家の周辺には野生の狼が出没し、飼い犬を襲って食べてしまうため、彼女は銃を携帯し、射撃の訓練も欠かさない。

「自分の武器を管理し自衛することは、幼い頃からハンターだった父から叩き込まれてきた。私だけじゃなく、ユーパーは皆そうよ。だから北朝鮮のキムがいくら独裁者でも、自国を自衛するための軍隊まで取り上げるつもりはない。核兵器はダメだけどね」

彼女はまた、トランプがツイッターで「北朝鮮の国民が今後、経済的に繁栄することを希望する」と綴ったことも評価した。

「北朝鮮が核兵器を諦めると約束すれば、米国には小麦やとうもろこしが余ってるんだから、北朝鮮の国民に大量に援助できる。何の罪もない国民が飢えているのはかわいそうすぎる。彼らはたまたま独裁者の支配する北朝鮮に生まれたってだけで、私と何も変わらない同じ人間なのに」

ジュディは、金正恩が核兵器廃絶を実行すれば、「キムをマー・ア・ラゴ(トランプ氏のフロリダの別荘)に招待してゴルフしてもいいかもね。ノーベル平和賞なんかより、そっちの方が写真映えするかも」と笑う。「その前に、キムはヘアスタイリストつけた方がいいと思うけど」とジョークも飛ばした。

トランプは自分が「お膳立て」をしたように振る舞っているだけ

核廃棄物問題をレクチャーするエンジニアのレイ・ルッツさん

「今回、トランプは、韓国と北朝鮮のトップ同士が歩み寄って、核兵器廃絶の方向に動き出したのに乗っかり、さも自分が『ディール』をまとめたかのように振る舞っているだけ」

そう語るのは、エンジニアで核廃棄物処理に詳しいレイ・ルッツだ。彼は、市民団体「シチズンズ・オーバーサイト」の代表者で、カリフォルニア州のサンオノフレ原子力発電所が、高濃度核廃棄物を津波の可能性のある海岸線からわずか数十メートルの距離に保管している危険性を指摘して、裁判所に訴えた。その結果、サンオノフレ原発を運営する電力会社は、核廃棄物を他所へ移すことを確約した。

ルッツは、平昌オリンピックに金正恩の妹が出席したり、北朝鮮のホッケー選手が参加したりしたこと、また北朝鮮と韓国の両トップが板門店で満面の笑顔で会談したことなどは、「あくまで2国間の関係の進展であり、特にトランプの外交手腕ではない」と断言する。

「トランプは『米国の核兵器のボタンの方が北朝鮮の核ボタンより大きい』と豪語して、金正恩と意地を張り合い、一触即発のムードをつくった。スタートレックの映画じゃあるまいし。そもそもフォックスニュースの司会者のアドバイスを真剣に聞いているトランプに、まともな平和交渉などできるのか」と懐疑的だ。

だが、クリントン、ブッシュ、オバマなど歴代大統領が誰も実現させていない米朝トップの直接会談をトランプが実現させることについては、「史上初なのは確か。交渉の方が一方的な経済封鎖よりマシだ」と認める。

北の核兵器を廃絶させたあと金正恩の身を守れるのか

彼がいちばんひっかかるという点は、次のことだ。

「トランプはいったいどうやって、北朝鮮に核兵器の縮小や廃絶を約束させるのか。キムの立場からすれば、自分が核兵器を捨てたらこれまで抑圧してきた国民に蜂起されてしまう恐れだってある。リビアのカダフィのように。そんなとき、トランプはキムの身の安全をいったいどう確約するのか?」

たとえば、今後20年ほどかけて北朝鮮が段階的に核兵器を減らすとしても、その際にはトランプはとっくに大統領ではなくなっている。

またルッツは、今後自分が生きている間は「トランプに限らず誰がアメリカ大統領になろうと、米国が自国の核兵器を廃絶することは決してないだろう」と言う。

「第二次世界大戦で広島と長崎に落とした原爆を、米国はずっと正当化してきた。私個人は、原爆を落とす必要はなかったと思っている」

米国が戦後、多くの原子力発電所の建設に政府の資金を導入したのも、「将来、新しい核ミサイルが必要になるときを見越して、核関連の科学者の仕事場を常に確保しておきたかったのも一因だ」と彼は言う。

「トランプ本人は米朝会談を成功させ、ノーベル平和賞を受賞して、大統領として再選される――というシナリオを描いているようだが、トランプ・キム会談の結果がどう転んでも、トランプが再選されることはあり得ないと思う。民主党が黙ってはいない」

米朝会談に密かにエールを贈るハリウッドの隠れトランプ支持者

ティーパーティー運動を象徴する旗を持つリンダ・カルペッパーさん(左の女性)

そんなトランプ再選の可能性を否定する意見に、「それは、アメリカ全土に生息するサイレント・トランプ支持層の幅広さを知らないだけ」と語るのは、カリフォルニア州ハリウッド在住のリンダ・カルペッパーだ。

ディズニーやワーナー・ブラザーズ関連のエンタテインメント系企業のスタッフとして35年ほど勤務する傍ら、映画やテレビ業界でフリーランスの脚本家としても働いてきた彼女は、大統領選期間中にトランプ支持者になった。

「ハリウッドのどの職場でも、トランプ支持者や保守派は実はたくさんいる。職を失うのを恐れて、みんなあえて声を上げないだけ。人事権を握るスタジオの上層部やショーのプロデューサーは反トランプ派が多く、万一バレたらキャリアを失う可能性もあるから」

ヒラリー・クリントンとほぼ同年代であるリンダは、もともとテキサスの上院議員で保守派のテッド・クルーズを支持していた。クルーズを徹底批判したトランプには懐疑的だったが、大統領選におけるヒラリーとトランプの3回のディベートを全て見て、気が変わった。

「何度見ても、ヒラリーよりトランプの主張に共感してしまった。彼が当選してからもじっくり観察してきたけど、トランプは選挙の公約を実行してきたと思う。ビジネス減税や彼のアメリカファーストの姿勢を、私は全面的に支持する」

たとえノーベル賞を受賞しても金正恩を米国に招かないでほしい

北朝鮮との交渉で、彼女がトランプに期待するのは「とことんタフな交渉姿勢」だ。

「金正恩は世界にとって危険な存在。核兵器を持ち、自国民をとことん抑圧し、飢えさせてきた。でも、キムが今回トランプとの会談を切望しているところを見ると、自分で自分を袋小路に追い詰めた感じがする。北朝鮮の核兵器に対して、国連の対応はジョークでしかない。『そもそもどうやって核廃絶させるのか』という点は私も疑問を感じるけど、ワイルドカードのトランプだからこそ、思い切った交渉が期待できるはず」

彼女のようにハリウッドで働くトランプ支持者たちは、「見た目では決してそうだとは周囲からはわからない」とリンダは言う。

「私たちは、トランプTシャツも着ないし、トランプ帽も被らない。若い世代も多いし、ウーバーで移動して映画業界で働いている。人種も皮膚の色もさまざま」

オバマ時代、アメリカが社会主義の方向に向かうのではないかと危惧していたという彼女は、2008年頃にはロサンゼルス郊外のティーパーティー(編集部注:主に「大きな政府」やその政策に反対する保守派のポピュリスト運動)の活動にも参加していた。

「オバマ派は『民主党圧勝のカリフォルニアでティーパーティー運動?』と冷笑していた。でも、あの頃のネットワークが、結局トランプの当選を後押ししたと思う」

もし北朝鮮から核兵器廃絶の確約が取れ、トランプがノーベル平和賞を受賞したとしても、「トランプには金正恩をマー・ア・ラゴに招待してほしくない。独裁者を米国に入国させるのは、やっぱり危なすぎるから」とリンダは言う。

「北が米国との会談を切望するのは窮地に陥っているから」は見当違い

北朝鮮問題の専門家、デイビッド・カング教授

ここまで立場の異なる3人のアメリカ国民の本音を紹介してきたが、北朝鮮問題を専門に研究してきた識者は、トランプの北朝鮮外交をどう見ているのだろうか。南カリフォルニア大学 コリアン・スタディーズ・インスティチュートのディレクター、デイビッド・カング教授はこう語る。

「トランプはこれまでのどの歴代米大統領とも違い、北朝鮮と直接対話しようとしている。その点は評価できる。米国はこれまで『北朝鮮と直接対話なんてとんでもない』という態度を通してきたのだから」

さらにカング教授は「『金正恩がトランプとの会談を切望するのは、キムが窮地に立たされているからだ』という意見は、全くの見当違いだ」と断言する。

「金正恩は『長年の計画だったICBM(大陸間弾道ミサイル)の完成を実行する』と2017年元旦のスピーチで宣言し、15発のミサイルテストを行った。当然、米国がパニックになり、脅しと制裁措置で対処して来ることは想定していた。激しい制裁措置に耐えられると判断したからこそ、ミサイルテストを実行したわけだ。そして2018年の元旦には、核兵器の設備が完成したことを宣言し、『これからは国の繁栄に向けて進む』と方向転換を発表した。その後、ミサイル実験の停止を宣言したり、平昌オリンピックに参加したりして、外交の下地をつくってきた」

つまり、「トランプが大統領になるずっと以前から、ヒラリーとトランプのどちらが当選しようと、核兵器のミサイル開発を2018年までに完了させることは、北朝鮮の国策として決定済みで、核兵器が完成した際にはそれをレバレッジとして使い、米国と強気の国際交渉をすると決めていたのだ」と教授は言う。

「だからこそ、金正恩は韓国の大統領と笑顔で握手する姿を見せるなど、今までと違った“外交する”姿をメディアで披露し、5月のホワイトハウスの突然の会談キャンセル宣言にも騒がずに、丁重に粘り強く対応した。世界は金正恩を確実に6ヵ月前とは違った目で見始めていることを、北朝鮮側は当然熟知している」

ただし、「トランプと会談し、核兵器廃絶への道を北朝鮮が探るからと言って、急に北朝鮮の体制が変わるわけではない」と教授は言う。

米国人の多数派は「制裁より対話」 会談を経て見えてくる未来図は?

「金正恩が独裁者として国民を抑圧する方法に、今後も変わりはないはず。中国と米国の間に過去数十年間、貿易や商取引があるからと言って、中国国内の人権問題が全て解決されたわけではないのと同じ。それでも、これまでのように北朝鮮に対して経済制裁だけで対処するより、直接対話をする方が少しでも変化を起こさせるのに有効なのは確か。これまで米国はさんざん制裁措置で対処してきて、良い結果を得られなかったわけだから」

制裁措置よりも直接対話――。これについては、今回取材したトランプ派と反トランプ派3人の米国人も全員、同意見だった。

「米国では、トランプの悪口をいくら言っても言論の自由は保証されているけど、北朝鮮ではキムの悪口を公言したら、翌朝その人の命はないはず。独裁しか統治方法を知らないキムが、トランプのニューヨーク仕込みでパンチのある交渉術を目の当たりにして、どう対抗できるか見もの」(ジュディ・シュワルバック)

「会談の場であるシンガポールの超モダンな繁栄ぶりをその目で見れば、ひょっとしたらキムも、自国を科学技術が進んだクールな場所にしたい、と刺激を受けるかもね」(レイ・ルッツ)

「トランプは、実は個人的にかなり慈善事業もやっているから、飢えて苦しむ北朝鮮国民に気前よく援助を約束すると思う」(リンダ・カルペッパー)

6月12日、今度こそ確実に行なわれることになったはずの「世紀の首脳会談」を目前に、今回話を聞いた米国民たちは、こんな風に想像力をたくましくしていた。また、20ドルで売り出された米朝会談記念コインを、北朝鮮問題の専門家であるカング教授も思わず記念に買ってしまったという。

これまで米国民が賛否両論を唱えてきたトランプ大統領の「アメリカファースト」外交の力が、核と北朝鮮をめぐってアジアで試されるときが、もうすぐやってくる。

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