3/30日経夕刊<中国、不透明さ増す国防費 軍民の境界あいまいに
中国の国防費が不透明さを増している。2018年の予算は前年比8.1%増の1兆1069億元(約18兆円)。米国に次ぎ世界2位だ。最新兵器の研究開発費や外国からの武器購入費は含まず、実際の軍事費は数倍とも指摘される。そこへ習近平(シー・ジンピン)国家主席が武器開発に民間企業を参入させる「軍民融合」を提唱した。軍民の境界が薄れ、実態はさらに見えにくくなっている。
昨年進水した中国初の国産空母(写真上、共同)と1月、人民解放軍を視察する習近平国家主席(左)(同下、新華社・共同)
「軍民融合へ努力し、軍事力強化という夢の実現を支えなくてはならない」。習氏は12日、国会に相当する全国人民代表大会(全人代)の会議で発破をかけた。「軍民融合」とは習氏が15年ごろから主張して力を入れてきた政策だ。軍事技術を民間に転用して経済の構造改革を進め、武器開発に民間技術を活用する。人工知能(AI)や航空・宇宙、サイバーなどを重点分野と位置づける。
代表例は16年に設立した中国航空発動機集団。航空エンジンを専門に手掛ける企業で空軍との関係が深い。アキレス腱(けん)である国産エンジンの弱さを克服する切り札だ。16年ごろから軍民融合産業の育成ファンドが相次ぎ誕生した。出資元に国有企業の名前がずらりと並ぶ。
こうした企業の資金は国防費に入らない。軍関連企業の上場は軍事費を市場から調達する仕組みのようだ。共産党・政府が軍民融合を推進する政策を出すと、株価がストップ高になることもある。
軍産複合体は米国にもある。日本では三菱重工業などが軍事産業に関わる。ただ、中国は大半が国有企業。事実上、共産党の指導下にある。海外の軍事筋が「軍民融合が国防費をより不透明にしている」と指摘するゆえんだ。
中国の国防費は人件費、訓練・維持費、装備費で構成され、おおむね3分の1ずつとされるが、内訳は不明。17年には軍人の給与を大幅に上げたが、国防費の伸び率は前年より低い。遠洋訓練が増え、兵器開発は活発なのに計算が合わない、との声がある。
欧米の専門家の多くは、中国が公表する「国防費」には先端装備の研究開発費や海外からの武器購入、治安維持を担う人民武装警察(武警)の経費を含まない、とみている。国産空母の建造費や、国産ステルス戦闘機「殲20」の開発費、ロシア製最新鋭戦闘機「スホイ35」の購入費などは、いずれも枠外とみられる。
こうした隠れ予算を含めた「軍事費」は公表される国防費の1.5~3倍といわれる。事実なら世界1位の米国(約72兆円)に迫る。21世紀半ばまでに「世界一流の軍隊」を造り上げるのが目標だ。
全人代の張業遂・報道官は「人口1人当たり国防費はどの主要国より低い」と話す。国防白書の作成に関わる陳舟・軍事科学院研究員は「隠れ軍事予算などない。中国は軍事支出の基礎データを国連に提供している」と強調する。国内に果敢な姿勢を示しながら海外の警戒は避けたい――。そんなジレンマが見える。
国家の対外的な脅威の大きさは「意思」と「能力」のかけ算で決まるといわれる。中国が南シナ海で進める軍事拠点化や頻繁な遠洋訓練を見れば、少なくとも西太平洋まで勢力圏を広げる意思は明らかだ。巨額な国防費は実態が不透明。すると周辺国も疑心暗鬼になり軍備拡張に動く。手の内を明かさないためとみられる中国の政策だが、自らの安全保障環境の悪化を招いている側面もある。>(以上)
モリカケをやっている野党国会議員に上記記事を読ませたいものです。日本の防衛をどう考えますかと。どうせ何も考えてなく、共産中国の属国になれば良いと言いだすのではと思っています。野党とメデイアは、類は友を呼び、平気で嘘をつき、捏造が当り前の世界です。こんな連中を国会に送り込む責任を国民は感じているのかどうか。「俺は投票していない」と言っても連帯責任になります。自治労が問題でしょう。中国の人権弾圧を自分の目で見てこいと言いたい。でも自分達は弾圧する側に回るから良いと思っているのかも知れませんが。
中国の軍拡を防ぐにはやはり輸出で稼がせないことです。トランプの貿易戦争は正しいです。それと味方を増やして封じ込めることが肝要かと。日米台印豪で封じ込めを行い、渡部悦和氏の言うように、第一列島線を突破させないようにすれば良いと思います。
北野氏の言う日本の抜け駆けでトランプが怒るというのは杞憂では。TPPの復活交渉の件もキチンと米国に仁義を切ってやったはず。戦争になるかもしれないときに米国に相談せずに安倍首相が動くとはとても思えません。角栄は仁義を切らず、キッシンジャーの怒りを買ったでしょうが、時代が違います。今米国に離反されて困るのは日本です。周りを核保有国に囲まれ、米軍が撤退すれば脅され、属国扱いにされるでしょう。今でも米国の属国と言われそうですが、悪辣さが違います。彼の国には人権はありませんから逮捕状無しで拘束、闇夜に紛れて処刑、而も臓器摘出までされてと言うのが考えられます。
キッシンジャーが中国を好きなのは、金を貰っているからです。独系ユダヤ人だけあって金には目がないのでしょう。ケナンとは違う所です。また自分が敷いてきた路線を変更することは自己否定に繋がるためなかなかできないと思います。でも、そのことが大きく米国の国益を損ねている訳です。やっと中国に騙されてきたことに米国人は気付いてきましたので、どこかで軌道修正しなければ。トランプ以外にできる人はいないでしょう。共和党主流派でも無理です。議会慣れしている人間には改革は出来ません。慣れが生じていますので。
常識的に考えれば、世界の覇権を握って来た米国が何の見返りもなく、その一部でも譲るのでしょうか?戦争をして奪われるのならまだしも。而も米軍の力はまだ中国より遙かに強いです。そんな国が台頭してきたとはいえ、あっさり中国の言うことを聞くとは思えません。それでトランプが貿易戦争を仕掛けているのだと思います。
米国の頭越し外交は当り前で各国に相談して反対されても困るでしょう。覇権国の強みです。オバマのようにシリア攻撃すると言って英国議会の反対に遭い、米国議会の判断に委ね、ロシアの斡旋もあり、ストップして世界の笑いものになった事例もあります。覇権国の強みを生かせなかった無能大統領です。
https://www.tkfd.or.jp/research/eurasia/a00752
また、対話をすることは問題ないでしょうが、圧力をかけ続けない限り、「非核化」は実現しません。それ以上に金がまた騙す可能性があります。日本にとって問題は、圧力をかけ続けることではなく、米国が妥協して北に中距離核ミサイル保有を許すことです。そうならないように日米首脳会談を行うのでしょう。北に一部保有を認めるのであれば、日本にも保有を認めるように安倍首相は交渉しませんと。キッシンジャーと周で「日本には核を持たせない」密約があったと言われていますが、中国が米国に敵対行動を取っている以上、ご破算です。
https://blogs.yahoo.co.jp/mitokosei/35020962.html
横山氏の記事で、ポンペオ長官が言った北朝鮮に内通者ができたような発言はどこまで信頼できるかです。デイスインフォメーションの可能性もあります。スーザンライスが北の核保有を認める発言をしたなら、彼女に「日本も核を持てますね?もし持てないとしたらその理由を聞きたい」と質問すれば良いです。横山氏によれば「金正恩は何かを恐れて受動的に態度を転換したのでなく、核保有国としての立場を背景に親北文政権との南北関係の改善および外交での実績を渇望する米ドナルド・トランプ政権との米朝関係の正常化交渉の好機と見て、能動的に態度を転換した、というもの」と考えているようですが、それだとトランプが首脳会談を即時受諾することを読んでいたことになります。やはり戦争の危機、生命の危機を恐れてと見るのが普通では。ただ金が敵対して来た習近平に会いに行ったことは単なる若造ではなく、狡猾さを兼ね備えた政治家だと言えるでしょうけど。
トランプにしてみれば、北を攻撃するのは選挙対策とNEOを考えた8月が最適で、もし本当に北が核放棄すればノーベル平和賞もので、どちらに転んでもトランプにプラスです。戦争になれば、日韓に被害は出るでしょうけど、トランプには痛みがありません。デイールとしてはトランプが有利なのでは。
北野記事
朝鮮半島情勢が大きく動いている。トランプ大統領が金正恩に会うと決定した直後、今度は安倍総理が日朝首脳会談に向けて動き出した。さらに中朝首脳会談が電撃開催され、南北首脳会談も予定されている。安倍総理は存在感を示したい誘惑にかられるだろうが、拙速に動けば、日米関係を破壊するかもしれない問題行動である。(国際関係アナリスト 北野幸伯)
日米関係を破壊しかねない 安倍総理の動向
昨年までの強硬路線から一転、対話に向けて動き出した金正恩。日本は「置き去りにされている」との焦燥感があふれているが、慎重に行動しなければトランプの怒りを買うかもしれない 写真:北朝鮮「労働新聞」より
北朝鮮問題が、「対話路線」で大きく動いている。金正恩は1月1日、韓国と対話する準備があると声明を出した。1月9日には、実際「南北会談」が再開された。その後、金は3月5日、訪朝した韓国特師団と会談。「4月末に板門店で南北首脳会談を開催する」ことで合意した。
3月8日、驚きのニュースが米国からもたらされる。なんと、トランプが「金正恩に会うことを決めた」というのだ。日本政府は大きな衝撃を受けた。事前に何の相談もなかったからだ。日本ではこの決定について、「頭越しに」「日本は蚊帳の外」といった嘆きの声が聞かれる。
それでも、安倍総理はトランプの決断を支持した。
<10日の別のツイートでトランプ大統領は、安倍晋三(ShinzoAbe)首相は米朝首脳会談に「とても熱狂的」だったと述べた>(読売新聞3月9日)
しかし、総理は直後に、トランプに嫌われても仕方ない決断をする。「トランプが金正恩と会談するなら、俺も会談する」と、日朝首脳会談実現に向けて動き出したのだ。
<日本政府、北朝鮮との首脳会談を模索へ=政府関係者
ロイター 3/13(火) 22:28配信
[東京 13日 ロイター] – 南北会談と米朝会談が開かれる見通しになったことを受け、日本政府も北朝鮮との間で首脳会談を模索する考えであることがわかった>
その後、金は25~28日の日程で中国を訪問し、26日には習近平と初めて会談を行ったが、これも日本政府にとっては想定外で、「日本は置き去りにされているのでは」との疑念が渦巻いている。
安倍総理が日朝首脳会談を成功させ、しっかりと存在感を示したいと焦るのも理解できる状況にはなっている。しかし、実をいうと、これは日米関係を破壊しかねない大問題なのだ。
自己顕示欲が強いトランプは安倍総理の抜け駆けを許さないはず
まず、トランプのキャラから考えてみよう。
トランプは、権力、お金、美女が大好きである。そして、自己顕示欲が強く、常に手柄を自分のものにしたがる。また、「独断型」で、「調整」とか「根回し」の必要性をまったく考えていないように見える。「TPP離脱」「パリ協定離脱」「エルサレムをイスラエルの首都と認定」「金正恩との会談を、誰にも相談せず即決」「ツイッターでティラーソン国務長官を解任」などの事実が、彼の性格をよく表している。
さて、米国の現職大統領はこれまで、北朝鮮のトップと会談したことが一度もない。実現すれば「歴史的事件」だ。そして会談の結果、「非核化」が大きく前進すれば、それこそ「ノーベル平和賞モノ」だろう。
「俺はこの問題を解決して歴史に名を残す!」とワクワクしているであろう彼に、同盟国日本から不穏な情報が入る。なんと、「安倍総理も北との首脳会談を模索している」というのだ。トランプの性格から、安倍総理の決断を彼がどう感じるかは、容易に想像できる。
「シンゾーは、俺を出し抜こうとしている」
「シンゾーが、俺の手柄を横取りしようとしている」
中国だって米国を出し抜いたじゃないか、という意見もあるだろうが、伝統的に北朝鮮と親密な関係を築いてきた国であり、日本とは歴史的背景が違う。かつ、日本は米国の「同盟国」。米国は日本に対しては、足並みを揃えて従うことを当然のように要求してくるだろう。
「ジャップは裏切り者!」と絶叫したキッシンジャー
実をいうと、日本は46年前、米国を激怒させた前例がある。
冷戦時代の初期、米国は共産党の一党独裁国家・中華人民共和国を敵視していた。しかし1970年代初め、強大化するソ連に対抗するため、中国との和解を決断する。
71年、時の大統領ニクソンは「中国から訪問要請があり、それを了承した」と発表。このときも米政府は日本に何の相談もせず、日本側が発表内容を知らされたのは、発表の15分前だった。当然、日本政府は大きな衝撃を受けた。
ニクソンは72年2月、歴史的な訪中を果たした。一方、日本では同年7月、田中角栄が総理大臣に就任した。彼は、同年9月に訪中。「アッ」という間に「日中国交正常化」を成し遂げてしまう。ちなみに米中国交正常化が実現したのは、7年後の79年だ。
米中和解を主導してきたキッシンジャー大統領補佐官は、米国を「出し抜いた」日本に激怒。
「ジャップは最悪の裏切り者!」
と絶叫したことが、明らかになっている。共同通信2006年5月26日から。(太線筆者、以下同)
<「ジャップは最悪の裏切り者」(解禁された米公文書より)72年にキッシンジャー氏
【ワシントン26日共同】ニクソン米大統領の中国訪問など1970年代の米外交政策を主導したキッシンジャー大統領補佐官(後に国務長官)が72年夏、田中角栄首相が訪中して日中国交正常化を図る計画を知り
「ジャップ(日本人への蔑称(べっしょう)」
との表現を使って日本を「最悪の裏切り者」と非難していたことが、26日までに解禁された米公文書で分かった>
キッシンジャーは今も嫌日一方で中国のことは大好き
キッシンジャーは、この時の恨みをその後も忘れていなかったようだ。米国在住の政治アナリスト・伊藤貫氏の名著『中国の「核」が世界を制す』には、キッシンジャーと直接会った時の感想が記されている。
<キッシンジャーは、日本人に対して鋭い敵意と嫌悪感を抱いている。>(116~117p)
<キッシンジャーからは不快なものを感じた。
彼が、日本人をほとんど生理的に嫌悪・軽蔑していることが感じられたからである>(同前117p)
なにはともあれ、田中総理は米国を出し抜いた。それで、キッシンジャーは激怒した。そのキッシンジャーは今、トランプ大統領の顧問的立場にある。安倍総理が金正恩に会うことを模索していることを知ったとき、彼の脳内では、46年前の憤怒がまざまざと蘇ったに違いない。
ちなみに、キッシンジャーは、米国を代表する「親中派」で、「G2論者」である。「G2」とは、「米国と中国で世界を共同統治しよう」という発想だ。米国の著名な戦略家ルトワック氏は「G2」の意味について、こう解説している。
<「G2」が実現すれば、中国は米国の関係だけを考えていれば良い。
それ以外の他国のことは無視できる。
「G2で決めた通りにやれ」と言えば済む―――
彼らはこう思い込んだのである。
「G2」ですべてを決められるのであれば、中国は日本と煩わしい対応をしなくてもよくなり、フィリピンやベトナムも解消される、と>
(「中国4.0」エドワード・ルトワック、100~101p)
これはつまり、「中国が尖閣、沖縄を支配したければ、日本ではなく米国とだけ交渉すればいい」ということである。
安倍総理が日朝首脳会談を急いで米政府を不快にさせれば、日米関係に亀裂が走るだけでなく、米中関係を強固にするという、いわば「敵に塩を送る」がごとくの間抜けな状況になる危険性があるのだ。
日本だけでなく中国、ロシア韓国も「頭越し」されている
では、米国が日本の「頭越し」に米朝会談を決めたこと、日本が「蚊帳の外」にいる問題は、どうすればいいのだろうか?
「頭越しの決定」については、トランプは金正恩と会談する件について、「誰にも相談せず、その場で即決した」ことが明らかになっている。つまり、米国内では、トランプの補佐官も顧問も、国務省も国防総省も相談されていなかった。さらに、この問題に関わる中国、ロシア、韓国、北朝鮮、すべての国々にとって、トランプの決定は驚きであり、やはり「頭越し」であった。
日本だけが「特別冷遇されたポジション」にいるわけでないのだ。しかし、日本だけは「頭越し」と騒いでいる。
次に理解しなければならないのは、トランプが米朝首脳会談を決めたのは「論理的に当然だった」ということだ。
北朝鮮問題については、「前提条件なしの対話」を主張する中国、ロシアと、「前提条件ありの対話」を目指す日本、米国に分かれていた。中ロの立場を「対話派」、日米の立場を「圧力派」という。
では、「圧力派」の目的は何だったのか?そう、北朝鮮を「前提条件ありの対話に同意させること」だ。「前提条件」とは、北が「核兵器の放棄」(=非核化)に合意することである。
金正恩は、「対話」の条件である「非核化」に同意したのだろうか?毎日新聞3月9日から。
< 韓国大統領の特使として訪朝した鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長は8日、ホワイトハウスで記者会見し、トランプ米大統領が北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の訪朝要請を受け入れ、5月までに米朝首脳会談に応じる意向を示したと明らかにした。
ホワイトハウスは時期や場所は未定とし、「2、3カ月以内」に会談すると説明した。
金委員長は韓国政府の特使団に対して「非核化の意思」を示し、核・ミサイル実験の「凍結」を約束したという>
金正恩は、「非核化」に同意した。このことは、「圧力派が目的を達した」ことを意味する。だから次の段階に進む、すなわち「対話」を開始するのは当然の流れだ。
いまだに「圧力、圧力」と繰り返している人たちは、「圧力の目的」を忘れているのではないだろうか?繰り返すが、「圧力の目的」は、「非核化に同意させて、それを前提にした対話を開始すること」だったはずだ。
「圧力派」を意味なく続ければ日本は必ず世界から孤立する
もう1つ、「日本は蚊帳の外」という意見もある。
日本が「蚊帳の外」に置かれるとすれば、圧力に固執した結果であり、これは「日本自身の責任」である。日本の圧力派は「圧力強化により、非核化前提の対話を開始すること目指す」という当初の目的を忘れている。忘れていなければ、金が「非核化」に合意した時点で「我々は1つの目標に到達した」と喜ぶはずだ。
世界から見ると、「金正恩は非核化に合意したのに、なぜ日本は圧力、圧力と繰り返しているのか?日本はいったい何を目指しているのか?」と、理解不能である。
「圧力派」は言う。「だまされるから対話するな!」と。では、「結局戦争しかない」と言いたいのだろうか?
もちろん、北朝鮮が日米をだます可能性は大いにある。実際、彼らはこれまでウソをつき続けてきた。それでも、「非核化に同意した」のであれば、「対話」に移行するしかない。「だまされるから対話するな」ではなく、「だまされないように対話しよう」というのが正しい態度だろう。
むろん、非核化がすんなり進むかどうかは未知数だ。交渉が決裂して、戦争になる可能性もある。だが、「交渉が決裂して戦争になる」のと、「北が非核化に賛成したのに、交渉もせず戦争になった」のでは、大違いだ。
日本政府が、「圧力派は目的を達したので対話派になる」という世界の流れを理解すれば、日本は「蚊帳の外」にはならない。米国、中国、ロシア、北朝鮮、韓国が「対話派」になっているのに、日本だけ目的がはっきりしない「圧力派」を続ければ、「日本はわざわざ戦争を願っている」と解釈されても仕方がない。その結果、世界から孤立して「蚊帳の外」に置かれるのだ。
安倍総理は、トランプの米朝首脳会談を大いに歓迎し、「金が非核化に合意したのは、あなた(トランプ)が圧力路線を主導してきたからだ」と祝福すべきだ。日本にとって重要な拉致被害者問題や、短・中距離弾道ミサイル放棄を、米国がどこまで重要視してくれるかは未知数だが、これまで見てきたように、米国が「日本は裏切り者だ」と激怒するような勝手な行動をすれば、大きな代償を払うことになるだろう。
冷静に考えれば、トランプが勝手に金との首脳会談を決めたことは、(失礼ではあるが)まったく問題ではない。仮に「頭越し」でも、日本が「蚊帳の外」でも、トランプが「北朝鮮の非核化」という目標を忘れなければいいのだ。
しかし、日本がパニクって、「米国に頭越しされないように、日本の存在感を発揮しよう」と躍起になることで、「米国を出し抜こうとしているのでは」と勘繰られてしまえば、これは大問題に発展するだろう。トランプとキッシンジャーは「ジャップは、やはり裏切り者!」と叫び、日米同盟は危機にさらされる。中国は喜々として、まず尖閣を、次に沖縄を奪うだろう。
世界には深刻な問題が山ほどある。その一方で、問題でないことを「大問題」と勘違いし、墓穴を掘ることもある。安倍総理は歴史の教訓から学び、田中角栄の失敗を繰り返すことなく、現在の内外の危機を乗り切っていただきたい。
横山記事
北朝鮮・平壌で韓国特使団の団長である鄭義溶氏(中央)と握手を交わす、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長。朝鮮中央通信提供(2018年3月5日撮影、資料写真)。(c)AFP PHOTO / KCNA VIA KNS〔AFPBB News〕
北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が1月1日、平昌冬季五輪への参加に前向きな意向を示し、対話姿勢に転じて以来、わずか2カ月余りで南北首脳会談、米朝首脳会談の開催が立て続けに決まった。
北朝鮮は、国際社会の警告を無視して核実験やミサイル発射を強行してきた。新型弾道ミサイル「火星15」型の発射成功を発表した2017年11月29日の声明の中で、金委員長は、米国本土全域が攻撃可能だと主張し、「核武力完成」を宣言した。
その金委員長は、韓国の文在寅大統領の特使団に対して、北朝鮮への軍事的脅威が解消されて体制が保証されれば、「核を保有する理由がない」との考えを明言し、非核化や関係改善に向けて米国と「虚心坦懐に対話する用意がある」とした。
サイコパスはハイリスク・ハイリターンを好む
そのうえで、米朝対話が継続する間は新たな核実験や弾道ミサイル発射などの軍事挑発をやめる方針を明確にした。また、韓国側に軍事行動を起こさないことも確約した。
金委員長があれほど強硬な態度を転換した理由について、経済制裁が功を奏したとする「見立て」が一般的だが、ほかにも米軍の武力攻撃を恐れた(辺真一氏)、中国の北朝鮮への軍事介入を恐れた(寺島実郎氏)などの見立てがある。
どの見立てが当たっているかは金委員長本人に聞かなければ分からないが、いずれの見立ても大きな間違いを起こしていることを筆者は指摘したい。
それは、いずれの見立ても金委員長が何かを恐れて態度を転換したとしていることである。
経済制裁が功を奏したという見立てにしても、つまるところ経済制裁を受け困窮した民衆や軍部の反乱・抵抗を金委員長が恐れているということであろう。
ちなみに筆者の見立ては、何かを恐れて受動的に態度を転換したのでなく、核保有国としての立場を背景に親北文政権との南北関係の改善および外交での実績を渇望する米ドナルド・トランプ政権との米朝関係の正常化交渉の好機と見て、能動的に態度を転換した、というものである。
脳科学者の中野信子氏の著書『サイコパス』には、「サイコパスには、感情を伴う共感はない、恐怖・不安を感じにくい、ハイリスク・ハイリターンを好む」などのサイコパスの特徴が記載されている。
金委員長のこれまでの言動・行為を見れば、金委員長がサイコパスの典型であることは自明である。金委員長が、ウサマ・ビンラディンの殺害作戦のような斬首作戦を警戒しているのかもしれないが、恐れてはいない。
かつてNHKが放映した「ハノイ対話」の中で、ベトナム戦争当時国防長官だったマクナマラ氏は、北爆を続ければ、北ベトナム政府は多数の犠牲者に耐えきれず交渉に応じると思っていたが、かえって抵抗が強くなったという主旨のことを語っていたと筆者は記憶している。
情報分析に際して留意すべきことは、「相手(ここでは金委員長)が我々と同じ考え方をするのであろうか」という疑問を自分自身に投げかけることである。
ここで「北朝鮮に対する米軍の武力攻撃」について述べてみたい。
東京とソウルで210万人が被害に
日本・韓国も、ある意味で米軍の北朝鮮への武力攻撃を恐れている。トランプ米大統領の行動は予測できない。トランプ大統領は、米議会に諮らず、日本・韓国の同意を得ずに、いきなり北朝鮮を攻撃しかねない。
その結果、北朝鮮の反撃により日本・韓国が大きな被害をこうむることになる。
昨年10月に米ジョンズ・ホプキンス大の北朝鮮分析サイト「38ノース」が公表した予測では、北朝鮮が核ミサイルで反撃したら「東京とソウルで計210万人が死亡」というものだった。この被害の大きさが、北朝鮮に対する最大限の圧力を弱める要因ともなっている。
さて、金委員長が豹変した狙いは何であるか。それを探るには様々な方面(情報源)から得られるジグソーパズルのピースをつなぎ合わせて真相にたどりつく作業が必要となる。
筆者が接することができる情報は公刊情報(オープンソース)だけに限られている。公刊情報だけでどれだけ真相に近づけるかということはあろうが、批判覚悟で、この課題に取り組んでみたい。以下、いくつかのピースを述べる。
2018年1月23日、ワシントン市内の政策研究機関「アメリカン・エンタープライズ政策研究所」で講演した米中央情報局(CIA)のポンペオ長官(当時)は北朝鮮の金正恩体制による核・弾道ミサイル開発の目的について、米国からの抑止力確保や体制維持にとどまらず、「自らの主導による朝鮮半島の再統一(原文ではreunification)という究極の目標に向けて核兵器を活用しようとしている」との認識を明らかにした。
この情報は、諜報に接することができない筆者には極めて貴重なものである。
また、同長官は、米情報機関による北朝鮮関連の情報収集能力がこの1年間で大幅に向上していると強調した。これは、上記の情報が北朝鮮内部からもたらされた可能性を示唆している。
- 北朝鮮は草の根を食べることになっても、核プログラムを中断しない。
北朝鮮の「朝鮮中央通信」は、2016年1月8日、国際社会の圧力で核開発を放棄したイラクのフセイン政権とリビアのカダフィ政権について「制度転覆を企図する米国と西側の圧力に屈し、あちこち引きずられ核開発の土台を完全に潰され、自ら核を放棄したため破滅の運命を避けることができなかった」と言及した。
また、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領は、2017年9月5日、記者会見の中で、「北朝鮮は草の根を食べることになっても体制が安全だと感じられない限り、核プログラムを中断することはないだろう」、「北朝鮮が、このこと(フセイン政権とカダフィ政権の悲惨な最期)をよく知っている状況で、いかなる制裁も効果がなく非効率的」であると述べた。
儒教の影響が強い北朝鮮では、先代の指導者が残した遺訓を徹底して貫徹することを、後継者や継承者の最高の徳目としている。
金日成、金正日が残した最大の遺訓は、北朝鮮主導による祖国統一である。そして、北朝鮮は,「在韓米軍」が朝鮮半島の統一に対する最大の障害であると見ている。
一方、韓国にとって統一は「民族の悲願」である。
文氏は、かつて金大中氏の命日である8月18日に演説し、「なぜ、金大中氏の目指した南北朝鮮の連邦政府は実現していないのか。私は絶対に実現させて御意志に応えます」と述べた。
元駐日韓国大使館公使の洪ヒョン氏は、政務職はもちろん、中央省庁の局長・課長級に該当する秘書官とその他の行政官のほとんどは金日成主義である「主体思想」を学習した者であり、彼らは、「韓国そのものを平壌に捧げよう」という強い信念を持つ親北勢力であると述べている。
また、文政権は、金大中、盧武鉉政府の対北朝鮮政策(太陽政策と対北朝鮮抱擁政策)を継承することを明言している。
トランプ政権は「核・ミサイル開発の放棄」を対話の前提条件としているが、現・元政府高官からはこれと異なる発言がなされている。
レックス・ティラーソン前国務長官は昨年12月12日、ワシントンでの講演で「前提条件なしで北朝鮮との最初の会議を開く用意がある」と述べた。この発言は直ちに取り消されたが、北朝鮮の核武装を容認するとも取れる発言である。
また、米バラク・オバマ政権で大統領補佐官をつとめたスーザン・ライス氏は、昨年8月10日付米ニューヨーク・タイムズ紙への寄稿で「必要であれば、我々は北朝鮮の核兵器を容認できる」「歴史的に見れば、冷戦時代に旧ソ連の何千という核兵器の脅威を容認したのと同様だ」と述べた。
さらに、「金正恩氏が政権存続のために不可欠と考えていることから、北朝鮮が保有する兵器を放棄する見込みはほとんどない」と記述している。
2018年1月11日、ロシアのプーチン大統領は、金委員長について「やり手の成熟した政治家」であると、ロシアの記者団との会合で語った。
また、龍谷大学社会学部の李相哲教授は、金体制を支える側近の存在について次のように述べている。
「北朝鮮の外交現場で働く実務者はここ30~40年、顔ぶれがほとんど変わっていない。これは、金委員長が外交ラインを粛清していないためで、トランプ大統領の発言や中国の動向なども、その真意は何かということが彼らには手に取るように分かる」
「大国に対して先手を打つような外交ができるのである。外交素人のトランプ大統領や韓国の文大統領などに比べて、北朝鮮が最もうまく立ち回れているのはこのためである」
- トランプ大統領の「ディール外交」は北朝鮮に通用しない。
トランプ大統領が展開する交渉術は「相手のペースを乱し不安に陥れ、自分を強者であると印象づける」ことであると言われる。
トランプ大統領は貿易相手の日本や中国などに対しては独特な外交術を駆使してきた。ところが北朝鮮は厄介な相手である。
なぜなら、北朝鮮は対外経済規模が小さいうえに米国との貿易は皆無である。さらに、1990年代の北朝鮮は未曽有のエネルギー難、食糧難に陥ったが、それに打ち勝った歴史を持っているように、北朝鮮は「制裁慣れ」している。
これまでのところ、トランプ大統領の「ディール外交」は北朝鮮に通用していないようである。
- 北朝鮮の「非核化」などの約束は裏切りの歴史である。
歴史は繰り返すという。情報分析に際して留意すべきことは、「歴史は繰り返すのか」とい疑問を自分自身に投げかけることである。
1992年、北朝鮮は韓国との間で「朝鮮半島の非核化に関する共同宣言」に署名し、核兵器を保有しないことを確認した。
しかし、北朝鮮は翌年に核開発を疑った国際原子力機関(IAEA)による特別査察を拒否し、核拡散防止条約(NPT)脱退を表明した。
1994年10月の米朝枠組み合意では、北朝鮮が核施設を凍結・解体することを約束したが、2002年10月、ウラン濃縮による核開発を秘密裏に進めていることを認めて、同合意を破棄した。
2012年2月、食糧支援と引き換えに核実験と長距離弾道ミサイル発射、ウラン濃縮活動をオバマ政権と合意したが、2か月後に人工衛星と称してミサイル発射を強行などして一方的に合意を破棄した。
我が国においても、拉致問題に関して、これまで北朝鮮には何度も煮え湯を飲まされてきた歴史がある。
次に、金委員長が豹変した“狙い”を推定する。上記のピース(断片情報)から次のことが推測される。
- 金委員長の究極の目標は核を保有した北朝鮮主導による南北統一である。従って、今回の事象は南北統一に向かっての環境整備である。
- 北朝鮮に宥和的である文氏が政権にある今がチャンスである。
- 米韓同盟(米韓相互防衛条約)が存在する限り、文政権の政策選択の自由度は制約される。従って、米朝の関係正常化を図り、米国の朝鮮半島への関与を弱めさせる。
米朝の緊張関係が改善すれば、南北統一は内政問題であると主張することにより米国をはじめ諸外国の介入を阻止することができる。
- 歴代の大統領の中で最低の支持率を記録し、国民に不人気なトランプ大統領は、11月の中間選挙を控え、実績を作りたいと躍起である。そこで、金委員長はトランプ大統領に「非核化」という餌を与えれば簡単に食いついてくると考え、今回の会談を仕かけた。
また、北朝鮮は、米国内の北朝鮮に対する非核化政策が一枚岩でないことに乗じて、自国が核保有国であるという立場を主張し、非核化交渉を北朝鮮の思惑通りに進める。例えば、米国に届く弾道ミサイルの破棄というレベルで合意する。
- 南北関係の改善、米朝関係の正常化が達成したとしても、48倍もの経済格差のある韓国に対し、民主的なプロセスによる北朝鮮主導による南北統一は困難である。
従って、武力(核兵器を含む)による威嚇やサイバー攻撃(SNSによるプロパガンダを含む)、工作員による破壊活動などにより韓国社会の混乱を作為し、北朝鮮に優位な立場を構築しつつ、統一プロセスを有利に進める。
以上の推測から金委員長の狙いを推定すれば、「韓国との関係改善と米国との関係正常化を図り、その先に核を保有した北朝鮮主導の祖国統一を目指している」ということである。
筆者の全くの憶測であるが、金委員長の目論む統一プロセスとは次のようなものであろう。
初めに、2つの体制を当分の間維持したまま「高麗連邦共和国」創設のための2つの政府代表からなる最高民族委員会を組織する。
次に最高民族委員会を北朝鮮の支配下に置く。そして、連邦国家でなく一気に「高麗共和国」という単一国家を創設するのである。元首は当然金正恩ということになる。
日本とって最悪なシナリオは核を保有した統一朝鮮の出現である。北朝鮮の核保有が「朝鮮半島の統一が目的」であるとすれば、北朝鮮は統一まで核を決して放棄しないであろう。
そして、統一を達成した後に、統一朝鮮に核放棄の圧力をかける米・中国・ロシアのような強大国がいなければ統一朝鮮が核を放棄する可能性は極めて少ない。
核を保有した統一朝鮮は、日本にとって大きな軍事的脅威であるとともに、国内外に日本の核武装を巡る議論が巻き起こり、国論が二分される可能性が極めて大きい。
現時点においては、日本政府には朝鮮半島からすべての核兵器(核弾頭・弾道ミサイル)の破棄をトランプ政権に頼るしかすべがない。しかし、トランプ政権の閣僚の辞任・罷免が後を絶たずその政権運営は不安定である。
このため、トランプ政権が北朝鮮の核武装容認を前提とした対話に転じる可能性や日本の同意なしで先制攻撃に踏み切る可能性も否定できない。
それゆえ、日本は米国と協力し、時には米国を粘り強く説得し朝鮮半島の「完全かつ検証可能、そして不可逆的な非核化」を求めていく外交を成功させなければならない。
今まさに日本外交の真価が問われているのである。
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