5月の「防人と歩む会」は5/26(土)15:00~17:00、高田馬場FI(エフアイ)ビル8階にて産経の阿比留瑠比先生を招いての講演です。詳しくは本ブログのトップページをご覧ください。
4/24ロイター<金正恩氏が中国大使館訪問、中国人死亡のバス事故受け>影武者を謝りに行かせたのでは。
https://jp.reuters.com/article/kim-jong-un-idJPKBN1HU2XU
4/24レコードチャイナ<北朝鮮専門家、開城工業団地の年内再開の可能性に言及=「核廃棄の宣言もしていないのに、もう工業団地再開の議論か」―韓国ネット>
http://www.recordchina.co.jp/b594055-s0-c10.html
記事が長いのでコメントは短くします。上のレコードチャイナの記事も鈴置氏の言う米中VS南北の構図で捉えれば分かり易いのでは。鈴置氏と小此木氏では全然見方が違います。①朝鮮半島以外の情報を取っているかどうか②朝鮮半島ファーストの思いが強すぎるかどうかが二人の見方を分けていると思います。小此木氏は武貞氏同様南北統一に思いを入れ過ぎています。目が曇っているとしか言いようがない。鈴置氏の論説によれば戦争は必至です。トランプは最後通牒を言い渡しに行くのですから。やるのは米軍の準備と夏休みという事でNEOができる8月かと。中間選挙対策ともなりますし。一昨日、本ブログで紹介しました下平氏のEMP武器のチャンプを是非米軍は使って、日本へのミサイル飛来を防いでほしい。
鈴置記事
20日に平壌で開催された北朝鮮の朝鮮労働党中央委員会第7期第3回総会に出席する金正恩委員長(写真:KCNA/UPI/アフロ)
- 北朝鮮の非核化を巡る動き(2018年)
1月1日 | 金正恩「平昌五輪に参加する」 |
1月4日 | 米韓、合同軍事演習の延期決定 |
2月8日 | 北朝鮮、建軍節の軍事パレード |
2月9日 | 北朝鮮、平昌五輪に選手団派遣 |
3月5日 | 韓国、南北首脳会談開催を発表 |
3月8日 | トランプ、米朝首脳会談を受諾 |
3月26日 | 金正恩訪中、習近平と会談 |
4月1日頃 | ポンペオ訪朝、金正恩と会談 |
4月17―18日 | 日米首脳会談 |
4月21日 | 北朝鮮、核・ミサイル実験の中断と核実験場廃棄を表明 |
4月27日 | 南北首脳会談 |
5月末から6月 | 米朝首脳会談 |
米朝首脳会談の後 習近平、訪朝か |
(前回から読む)
北朝鮮と韓国が激しく動く。だが、よく見ると米中の掌の上で踊っているに過ぎない。
世界を欺くペテン劇
—北朝鮮が核・ミサイル実験の中断を表明しました。
鈴置: 4月20日、朝鮮労働党が中央委員会総会を開き採択しました。もちろん、ペテン――世界を欺く偽装平和攻勢です。
総会ではまず、金正恩(キム・ジョンウン)委員長が「我が党の課題について」を報告。討議を経て「決定書」が採択されました。そのうち、核に関連する項目は4つです。
北朝鮮のサイト「我が民族同士」の「金正恩委員長の指導の下に朝鮮労働党中央委員会第7期第3回総会が行われる」(4月21日、日本語版)から要約して引用します。
- 核兵器開発を完了したと宣言する。
- 核実験とICBM(大陸間弾道弾)の発射実験を2018年4月21日以降は中止し、核実験場を廃棄する。
- 世界的な核軍縮のために、核実験の全面中止の国際的な努力に合流する。
- 威嚇されない限り核兵器を絶対に使用しないし、いかなる場合も核兵器・技術を移転しない。
②の「核・ミサイル実験の中止」はニュースではありません。米国が対話開始の条件として要求した案件です。北朝鮮は訪韓した韓国特使の口を通じ、すでにその受け入れを表明しています(「『文在寅の仲人口』を危ぶむ韓国の保守」参照)。
3月6日、青瓦台(韓国大統領府)は「鄭義溶首席特使の訪朝結果 言論発表」で以下のように発表しています。
・対話が続く間は、北側は追加の核実験と弾道ミサイルの試射など戦略的な挑発の再開はしないことを明らかにした。同時に核兵器はもちろん、在来型の兵器も南側に使わないことを確約した。
核保有国クラブに入りたい
②の「核実験場の廃棄」は完全なペテンです。新たな核実験場を別のところに作るのは容易です。北朝鮮が廃棄すると表明したのは豊渓里(プンゲリ)の実験場と思われますが、相次ぐ核実験で坑道が崩落し、使えなくなったと言われています。廃棄せざるを得ない実験場でしょう。
前例があります。2008年6月27日、北朝鮮は老朽化した寧辺(ニョンビョン)の原子炉の冷却塔を自ら爆破しました。2006年10月の1回目の核実験で世界のまなざしが厳しくなった後のことです。
米国務省の北朝鮮担当者とともに現場に招待された米CNNや日本のTBS、韓国のMBCなどは、その光景を動画で報じ、北朝鮮が平和路線に転換したかの印象を世界に拡散しました。
この原子炉はプルトニウムの抽出用でした。北朝鮮は核兵器の素材をプルトニウムからウラニウムに替えており、この原子炉は不要になったと見る専門家もいます。今回の「核実験場の廃棄」宣言も同じ手口――不要品の廃棄を宣伝に使う――です。
そもそも今回の「決定書」で北朝鮮は米国に核武装を認めろと迫ったのです。①で「核兵器を保有した」と宣言したうえ、③④で核不拡散条約の加盟国と同様に核実験や核の拡散はしないと表明。要は、核保有国の仲間に入れてくれ、と言ったのです。
—北朝鮮が譲歩したのかと勘違いしていました。
鈴置:そう思ってしまった人が多い。例えば「NHK NEWS WEB」に載った4月21日の昼のニュースの見出しは「北朝鮮 核実験とICBM発射実験中止 核実験場も廃棄と発表」(4月21日12時01分)。
この記事も前文でちゃんと「ただ、核保有の立場に変わりはなく、核やICBMの実験を再開する余地も残しています」と指摘しています。が、見出しだけ見ると北朝鮮が改心してまっとうな国になったかと思ってしまいます。
朝鮮半島の春が大股で近づく
—北朝鮮は核保有国の仲間に入れろと要求しながら「いい子になった」と宣伝する……。
鈴置:もう、それしか手がないのです。金正恩氏が生き残るには4月27日の南北首脳会談を利用して米国に体制の存続を認めさせるしかない。
それには韓国の世論を軟化させる必要があります。文在寅(ムン・ジェイン)政権は北朝鮮に好意的――はっきり言えば言いなりです(「米朝首脳会談は本当に開かれるのか」参照)。
しかし、保守派は北朝鮮のペテンを見抜いています。そこで韓国の世論を手なずけるために「核・ミサイル実験の中止」や「核実験場の廃棄」を言い出したのでしょう。
—そんなペテンに引っ掛かるのでしょうか、韓国人は。
鈴置:保守政党や保守系メディアは「偽装平和攻勢だ」と批判しました。一方、青瓦台(韓国大統領府)は北朝鮮の表明を直ちに歓迎しました。
これを受け、聯合ニュースは「北朝鮮の自発的な核実験場廃棄に韓・米が歓迎…『朝鮮半島の春』が大股で近づく」(4月21日、韓国語版)と極めて前向きの見出しで報じました。聯合ニュースは文在寅政権寄りの報道ぶりで有名です。
左派系紙ハンギョレも社説「朝鮮半島の運命がかかる歴史的な首脳会談への期待」(4月22日、韓国語版)で、北朝鮮の表明を手放しで――何の疑いもなく、称賛しました。
事実がどうであれ、半島の春――平和共存時代の到来を信じたい韓国人も多いのです。首脳会談で南北が「朝鮮戦争の終結」を宣言すれば「北朝鮮が核を捨て経済重視に転換すると言いだしたのだから、経済制裁を緩和すべきだ」との声が高まるでしょう。
ハンギョレの社説は先回りして「北朝鮮の体制を保証すれば、中国やベトナムのように経済開放への道を開いてやれる」「北朝鮮が核から経済へと路線を転換したことにより、経済建設への世界の支援と協力を受ける名分ができた」と書きました。北朝鮮は大笑いしていることでしょう。
「対話のワナ」にはまった金正恩
—北朝鮮は米国を交渉相手と見なし、韓国は無視していました。
鈴置:金正恩委員長はトランプ(Donald Trump)大統領の仕掛けた「対話のワナ」にはまった。これから脱するには、韓国を踏み台にするしかないのです。
北朝鮮は「米朝首脳会談に応じる」と韓国を通じ、間接的な形ながら表明してしまった(「『時間稼ぎ』の金正恩に『助け舟』出した文在寅」参照)。
米朝首脳会談の場でトランプ大統領が「直ちに核を廃棄するのかしないのか」と迫るのは間違いありません。
金正恩委員長が「イエス」と答えれば、トランプ大統領は米国や国連の査察機関をすぐさま送りこんで、本当に核施設が廃棄されたのか確かめると言い出すでしょう。リビアを非核化したやり方です(「米朝首脳会談は本当に開かれるのか」参照)。
「NO」と答えれば、トランプ大統領は世界に経済制裁を強化するよう呼びかけるでしょうし、空爆など実力行使に出る可能性もある。ある専門家の言葉を借りれば、米朝首脳会談は無条件降伏――「ポツダム宣言」を言い渡す場になるのです。
だから北朝鮮の「核実験などの中止」宣言というペテンに対しても、トランプ大統領は「歓迎する」とツイートしたのです。
北朝鮮はいまだ、正式には米朝首脳会談に応じるとは表明していません。ペテンだろうと偽装平和だろうと「ポツダム宣言」通告の場である首脳会談の開催に北朝鮮が前向きの姿勢を示せば、米国が大歓迎するのは当たり前なのです。
会談を拒否すれば……
—「究極の2択」を避けるため、北朝鮮は米国との首脳会談に応じないのではありませんか。
鈴置:その際は米国からの圧迫が続きます。トランプ大統領は安倍晋三首相との4月17日の会談後に、以下のように語りました。ホワイトハウスのサイトから引用します。
・ It’s possible things won’t go well and we won’t have the meetings, and we’ll just continue to go along this very strong path that we’ve taken. But we will see what happens.
「米朝会談はうまくいかないかもしれないし、開かれないかもしれない。そんな時はこれまで採ってきた強力な方向を続けるだけだ」と言ったのです。
文在寅政権は、米国から圧迫を受ける金正恩政権を助けるつもりで、結果的にワナにはめてしまったのです。一方、米国からすれば、裏切り者の文在寅政権を使って金正恩氏を対話の場に引き出すことに成功したのです。
韓国とは別に、米国も独自ルートで北朝鮮に首脳会談を呼びかけていた。ただ、韓国に米朝首脳会談を仲介する形をとらせれば、北朝鮮は応じる可能性が増します。韓国を味方に付けて米国との交渉に臨めると北が考えるからです。
タッグを組んだ米中
—米国VS南北朝鮮の構図ですね。
鈴置:より正確に言えば、米中VS南北の構図です。米中はタッグを組んでいるのです。
「米中が北朝鮮包囲網を作ったな」と関係者が実感したのが2017年12月12日のティラーソン(Rex Tillerson)国務長官(当時)のアトランティック・カウンシルでの演説でした。
司会者から「『圧力をかけ過ぎると北朝鮮が崩壊し、難民が押しかけて来る』と中国は懸念していないか」と聞かれたティラーソン長官は「その問題に関しては、米中の外相と国防相ら高官協議の場で緊密に連絡を採っている」と答えました。
・And one of the real values of these new high-level dialogues and the diplomatic and strategic dialogue that Secretary Mattis and I chair with our counterparts, and we actually have included Joint Chief of Staff Chairman Dunford, General Dunford, and his counterparts from China as well.
さらに「中国は難民問題への準備を進めており、上手に処理するだろう」と語った後、驚くべき発言が飛び出したのです。以下です。
・ We have had conversations that if something happened and we had to go across a line, we have given the Chinese assurances we would go back and retreat back to the south of the 38th parallel when whatever the conditions that caused that to happen. That is our commitment we made to them.
「何かが起きた時、我々(米軍)は南北の軍事境界線を越えざるを得ない。これに関しては中国と話し合い済みであり、我々は状況により38度線の南に引き上げると中国に保証している」と語ったのです。
「金正恩後」を堂々と話し合う
—米中は金正恩体制崩壊後の軍事行動について密約を交わしているのですね。
鈴置:その通りです。当然、翌日の中国外交部の会見で「北朝鮮崩壊後に関する米中密約」に関し質問が出ました。
何と、中国の報道官はティラーソン発言を否定しませんでした。肯定もしませんでしたが、否定しなかったことで暗に肯定したと受け止められたのです。
「Foreign Ministry Spokesperson Lu Kang’s Regular Press Conference on December 13, 2017」(12月13日、英語)で報道官は以下のように答えました。
・ I have no idea about what was referred to by the US side, but I would like to reiterate that China’s position on the Korean Peninsula nuclear issue remains unequivocal.
「米国側が言及したことに何の意見もない」と言い放ったのです。これを読んだ北朝鮮はすくみあがったことでしょう。
米中が「金正恩後」を話し合うのは予想されたことです。米国のランド研究所(Rand Corporation)は米中による北朝鮮の分割占領を研究し、地図まで公表しています(「米中ロがうごめく『金正恩後の北朝鮮』分割案」参照)。
ランド研究所の「北朝鮮2分割占領案」
しかし、米国の国務長官が堂々と「米中密約」を語り、中国の外交部がそれを事実上、肯定するようになったのです。北朝鮮が米国との首脳会談を受け入れたのも、米中包囲網の締め付けを意識したためと思います。
トランプこそが対話派
—ティラーソン演説の「米中密約」は話題になりませんでした。
鈴置:この演説の全く異なる部分が注目されてしまったからです。米国メディアは、トランプ大統領とティラーソン国務長官の対立の証拠として報じました(「米国務長官演説は『ハル・ノート』だ」参照)。
北朝鮮への強硬策を検討するトランプ大統領に抗し、ティラーソン国務長官が対話を主張している――と、ピンボケの分析をNYT(ニューヨーク・タイムズ)など米国メディアが一斉に開陳したのです。
その結果、金正恩後に関する米中談合は見過ごされてしまいました。日本の外務省は勘違いして「米国が対話路線に転じたのか」と右往左往しました。
「転じる」も何も、初めからトランプ政権は対話路線なのです。だからトランプ大統領は韓国から米朝首脳会談を持ちかけられた瞬間、それに乗ったのです。
4月18日に大統領自らが、ポンペオ(Mike Pompeo)CIA長官の極秘訪朝と金正恩委員長との会談をツイッターで公表したのも対話を熱望する証拠です。
米国が首脳会談に熱心であるとの姿勢を世界に示せば、北朝鮮は断りにくくなります。トランプ大統領こそが対話派なのです。
ただし、その対話の目的は譲歩を念頭に置いた話し合いではなく、ハル・ノートあるいはポツダム宣言を突きつけることにあるのですが。
核実験場を確保する人民解放軍
—2018年初めに中国が朝鮮半島有事を想定した大規模な軍事演習を実施しました。
鈴置:日経の中沢克二編集委員が「米朝戦争への備え、中国軍が異例の全軍訓練」(1月9日)で報じ、関係者の間で大きな話題になりました。
1月3日、習近平主席の指揮のもと人民解放軍は全軍が臨戦態勢に入る極めて大規模な訓練を実施しました。中沢克二編集委員は異例の演習の目的を以下のように解説しました。
・米軍が中国の反対を押し切って北朝鮮領内に踏み込むなら、中国は権益確保へ軍を動かす覚悟が要る。
・万一、戦いが始まるなら中国軍は68年前の米軍と同様に、朝鮮半島の西海岸に上陸する手がある。平壌は目の前だ。米軍と直接、戦わないにしろ、平壌付近を押さえれば優位に立てる。
・一方、陸から北朝鮮に踏み込む中国軍には、別の任務がある。中朝国境から北朝鮮に百キロほど入れば、豊渓里の核実験場を含む核関連施設を押さえ込める。
—また、「豊渓里」が出てきました。
鈴置:トランプ大統領が軍事行動を決意した場合、米海空軍は北朝鮮の核施設を空爆します。ただ、核弾頭の確保と核技術者の拘束は空からはできません。
陸上部隊を派遣するにせよ、大兵力は送れない。そこで中国人民解放軍との協同が不可欠となるのです。その際には、米中両軍の衝突を避けるため、作戦区域の調整が必要です。
ティラーソン演説も「もっとも重要なことは核兵器の確保だ」「我々は中国とそれをどう実現するか話し合ってきた」と明かしています。
・the most important thing to us would be securing those nuclear weapons they’ve already developed and ensuring that they – that nothing falls into the hands of people we would not want to have it. We’ve had conversations with the Chinese about how might that be done.
在韓米軍の撤収が射程に
—米中両軍が朝鮮半島に同時に侵攻するのですね。
鈴置:まだ決まったわけではありません。なお、近未来小説『朝鮮半島201Z年』では中国軍だけが侵攻します。中国は単独で汗をかく代わりに、半島の支配権を米国から認められるのです。
軍事行動には至らないにせよ、朝鮮半島で構造変化が起きる可能性が極めて高い。米国が北朝鮮への軍事攻撃を覚悟したからです。すると中国も対応措置をとらざるを得ない。
もともと中国も北朝鮮を見限り始めていた。米国も中国や北朝鮮側になびく韓国との同盟が続くのか、疑問に思っていた。米中は核問題を解決するのを機に、安全保障の枠組みも変更する方向に動いているのです。
4月17日に安倍首相と会談した後のトランプ大統領の発言が興味深い。「南北首脳会談で朝鮮戦争を(正式に)終結させることができるかもしれない。それを祝福する」と語ったのです。
・South Korea is meeting, and has plans to meet, with North Korea to see if they can end the war. And they have my blessing on that.
韓国では、文在寅大統領と金正恩委員長が「朝鮮戦争は終結した」と宣言すると予想する人が増えている。そして保守派はこれを警戒しています。
「戦争終結」を南北が宣言すれば、在韓国連軍は存在理由を失う。在韓米軍が国連軍としての資格を失えば、有事の際の在日米軍基地によるバックアップを期待しにくくなります。
すると米軍が韓国に駐留するのは難しくなって、米韓同盟自体が希薄化します。つまり、終戦宣言は米韓同盟を弱体化する。だから韓国の保守は警戒するのです。
ところがトランプ大統領はそれに対し「いいね!」と言い出したのです。もう韓国との同盟にこだわってはいないとのサインです。もちろん、習近平主席に向けての意思表示です。
「北朝鮮の核問題が解決したら、中国が望んでいた在韓米軍の撤収や米韓同盟の破棄の方向に動くから、中国も北朝鮮に圧力をかけ続けてね」ということでしょう。
半島は中国の勢力圏に
—トランプ大統領は「韓国は中国の一部だった」と語っていました。
鈴置:「習近平主席から中韓関係について聞いた」として「韓国は事実上、中国の一部だった」と、WSJ(ウォールストリート・ジャーナル)との会見で述べたのです(「『韓国は中国の一部だった』と言うトランプ」参照)。
・He then went into the history of China and Korea. Not North Korea, Korea. And you know, you’re talking about thousands of years …and many wars. And Korea actually used to be a part of China.
「WSJ Trump Interview Excerpts: China, North Korea, Ex-Im Bank, Obamacare, Bannon, More」(2017年4月12日)です。
はっきり言えば「韓国は中国の属国であった」ということです。習近平主席は歴史的な経緯から韓国は中国の勢力圏であると主張し、トランプ大統領も習近平主席の主張を公に語ることでそれを受け入れたのです。
米中の「協同」に対してはもちろん、南北朝鮮も手を組んで動きます。1972年の「南北共同声明」もそうでした。現在、半島で起きている様々の出来事は「米中VS南北」として読み解くと、分かりやすいのです。
(次回に続く)
ダイヤモンドオンライン記事
写真:首相官邸HPより
朝鮮半島の将来をめぐるトップ外交が、中朝に続き先週の日米会談、今週の南北首脳会談を経て米朝首脳会談で山場を迎える。なぜ今、トップ外交が急展開したのか。米朝会談で何が決められるのか――。朝鮮半島問題の専門家で日韓歴史共同研究 委員会委員も務めた小此木政夫・慶応大名誉教授は「北の金正恩労働党委員長は本気、南北が“共同提案”する『非核化』にトランプ大統領も応じるだろう」と歴史的転換を予想する。(聞き手・ダイヤモンド・オンライン特任編集委員 西井泰之)
「先南後米」政策に転換した北朝鮮 もう後戻りはできない
小此木政夫・慶応大名誉教授
――北朝鮮の平昌五輪参加を機に朝鮮半島をめぐる動きが急展開です。何が起きているのでしょうか。
一連のトップ外交は、北朝鮮が「先南後米」と呼ばれる外交政策に転換したことが引き金になりました。
北はこれまで、朝鮮半島の安定や核問題で自分たちが相手にするのは米国だということでやってきたわけですが、まず先に南(韓国)との関係を緊密にして、米朝対話の環境を整える政策に転換したのです。
だから正恩氏は、平昌五輪に南北統一チームで参加したり、妹の与正氏を訪韓させたりと、南との対話ムードの醸成、もっと言えば南を抱き込むことを懸命にやりました。
「先南後米」政策はとにかく南を味方にしなければ、成立しないからです。日本では「微笑外交」と受け止められましたが、実際は南へのしがみつき政策といったほうがいいでしょう。それが米朝首脳会談という新しい局面を作りつつあるのです。
北がなぜこのタイミングで動いたかは、二つの文脈があります。
一つは、昨年秋以降、国連で厳しい経済制裁が決議されたことがあるでしょう。400万バレルの原油を例外として、北朝鮮のほとんどの輸出入、外貨を稼ぐ労働者の派遣を絶とうというのですから、事実上の「経済封鎖」です。
ただ制裁が現在、大きな効果を上げているというよりも、効果はこれから出てくる。それが今後、2年も3年も続けば、お手上げだという読みがあったと思います。
それとは別の大きな文脈として、父親の正日氏の時から、米国を念頭に約20年かけてやってきた核・ミサイル開発が最後の段階に近づいたことがありました。
北の指導者は軍事力を抑止力だけではなく、外交力だと考えています。
実際に軍事挑発が行われるのは2年前からですが、首脳会談などの大きなイベントがあるたびに、ミサイルや核実験によって、技術革新と軍事挑発を結合する形で瀬戸際政策を展開してきました。瀬戸際政策というのは外交政策です。
それが昨年9月の6回目の核実験や11月にICBM(大陸間弾道ミサイル)の火星15号の実験をした後、「国家核戦力の完成」を宣言 し、突然、今年になって手のひらを返したわけです。
これは明らかに計画的なものです。
米本土に到達する核ミサイルが完成し、それを外交手段として米国と交渉するという判断があったと思います。 事態が急展開した背景には、制裁によって強要された面があるにしても、もともと自分たちが計画的にやろうと考えていたという側面がありました。
その両方が合わさったために情勢が急展開し、北朝鮮はもう後戻りはできない。このまま前へ進むしかないのです。これは重要なポイントです。
南北関係は民族主義で動く 「統一ナショナリズム」が推進力に
――対北対話路線を掲げる韓国の文在寅政権が触媒役になったのでしょうか。
左派の文政権が誕生して、北が「先南後米」をやりやすくなったことは確かですが、それは計画的なものではなく、幸運だったということです。
朴・前大統領が弾劾されず保守政権が続いていたら、北への対決姿勢をとっていたでしょうから、今のような展開になったかは疑問です。
もともと韓国では左派は民族主義ですし、南北間の対話や交流を重視するのが基本姿勢です。
しかも、文政権は、雀順実事件や財閥との癒着など、朴政権の不正に反発した人々の「ろうそくデモ」をきっかけに誕生しました。そのこともあって文政権は自分たちは、半分、“革命政権”だと思っています。民主化勢力であり統一勢力だとも。逆に保守勢力は軍事勢力であり、北との関係では分断勢力になります。
南北関係もこの違いをわかっていないと、理解できないところがあります。南北関係は民族主義で動いているのです。
日本には、北が文政権を手玉にとって米国との折衝に利用しているとの見方もありますが、実際には半々でしょう。南が主導権をとっているとまでは言えないにしても、北は南の協力なしには、米朝首脳会談は成立しないのです。
――南北の人たちの同胞意識、民族意識はそれほど強いのですか。
第2次大戦後、独立した時も分断されていて、統一した近代国家の経験がない。分断は、冷戦による米ソ両大国の綱引きの結果であり、外から与えられたものだと考えます。
南北が近代国家として統一されてこそ独立が達成されるという「統一ナショナリズム」が根底にあります。特に年配の人たちには、統一しないと、本当の独立ではないという意識が強いのです。同じ分断の歴史があっても、近代国家としての経験があるドイツと違うところです。
ただ今回の場合、南北を急接近させたのは「戦争の恐怖」です。トランプ大統領が「軍事的選択を排除しない」と言い、安倍首相がその政策を100%支持すれば、南北は接近するしかありません。
南北会談はトランプ大統領を喜ばすための「作戦会議」
――27日の南北首脳会談では何が話し合われるのでしょうか。
一連の首脳会談は、5月から6月上旬に開催されるとされる米朝会談を軸にして、そこからさかのぼる形で行われていることを理解する必要があります。
3月に電撃的に中朝首脳会談が行われたのも、南北だけならともかく米朝会談まで実現しそうになったので、習近平国家主席が割り込んできたというのが真相でしょう。朝鮮半島の非核化から将来のことまで、中国が関与しないまま決まりそうなことに危機感を抱きました。
金正恩委員長としても、米朝会談を前に「後ろ盾」が欲しかったのです。
結論から言えば、南北首脳会談は成功するでしょう。というのは 、南北会談は米朝会談を成功させるための会談だからです。
つまり、米国が求める「非核化」という“商品”をどう 売り込むかを話し合う南北の作戦会議なのです。
トランプ大統領を喜ばせないといけない、そのためには何が肝心かということを話し合うのです。
米朝首脳会談は、時間をかけて合意を積み上げていく通常の外交とは違います。相手が何を望んでいるか、その代わりこちらは何を得るかと考える。トップ同士の「取引(ディール)」なのです。
そもそも米朝首脳会談は通常の外交ルートで合意されたわけではありません。
韓国側特使がピョンヤンを訪問し、正恩氏のメッセージをトランプ大統領に伝えて、大統領の「OK」を引き出しました。しかしその過程で作動したのは、米国務省・韓国外務省の外交チャンネルでも、双方の大統領安保担当補佐官・室長の安保チャンネルでもありませんでした。
米国側で動いたのは、今度、国務長官に指名されたポンペオ長官のCIA(中央情報局)であり、韓国側は、徐薫院長の国家情報院でした。情報機関のチャンネルで、で「話が進められました。
韓国側が説明した時、ティラーソン米国務長官はアフリカ訪問中であり、マクマスター安保担当特別補佐官は首脳会談に反対したと伝えられています。その後、2人とも更迭されました。
「非核化で包括的合意」を提案 ICBM廃棄の代償に関係正常化求める
――南北首脳会談でまず「非核化」が合意され、米朝会談で提案されるということですか。
トランプ大統領とポンペオ長官が優先的に求めているのは、まず「米国が安全になる」こと、つまりICBMの破棄です。非核化については「包括的に合意」し、段階的に実施するしかありません。
北朝鮮としては、ICBM廃棄と非核化の包括合意の代償として、米国との関係正常化を求めるでしょう。それが南北が考えるシナリオだと思います。
これまで北が何のために軍事挑発や瀬戸際外交をやってきたかといえば、朝鮮戦争で戦争状態にある米国との関係を正常化させ、北の「体制の安全」を確保するためでした。関係が正常化されれば北朝鮮は安全なのかと、不思議に思うかもしれません。しかしそうなれば、金正恩委員長は北朝鮮を「親米国家」に変身させるでしょう。中国はそれが心配なのです。
他方、米国が一番、欲しがっているのは、ICBMの火星14号、15号の廃棄だからです。
ポンペオ長官は1月のテレビのインタビューで、「北が米国 本土に到達する核・ミサイルを完成させるまでにあと数ヵ月しかない」と、それが最大の脅威だと言っています。
それを取り除くのが、トランプ大統領に対する最大のプレゼントだと、金正恩氏は考えるのではないでしょうか。
日本国内には、北がICBMを放棄するはずはないという固定観念がありますが、そうではありません。今、それを最も高値で売ろうとしているということじゃないでしょうか。
米朝関係が正常化されるのなら、北朝鮮にとって米国はもう「敵国」ではなくなります。在韓米軍についても、いたければいてもいいということでしょう。THAAD(高高度ミサイル防衛システム)の在韓米軍への配備も同じです。そのほうが、中国に対してにらみが利くと考えるかもしれません。
米朝会談は成功の可能性高い 二人の“ディーラー ”が「取引」に賭けた
――北の思惑がそうだとして、米国は南北の提案をのむのでしょうか。
トランプ大統領は秋の中間選挙を考えています。
ICBMの廃棄と包括的な非核化が合意されれば、トランプ大統領は首脳間の「取引」が成功したと、国民に向かって言えるでしょう。華々しい外交の成果ということになります。
米国第一主義で、ホワイトハウスによるトランプ型取引外交が成功したとも強調できます。
だから、米朝会談は成功する可能性のほうが高いのです。
IRBM(中距離弾道ミサイル)などのほかのミサイルや、核兵器や核施設の申告、検証、解体などの手順や方法などは、包括合意の後、通常の外交ルートに戻して話し合うということになるのでしょう。
中国の役割も大事なので、6者協議のような枠組みが復活すると思います。
――トランプ政権は更迭した国務長官や安全保障担当補佐官の後任に、ポンペオ氏やボルトン元国連大使といった強硬派が就任することになります。北朝鮮との交渉で柔軟性がなくなる恐れはありませんか。
確かに強硬派の色彩が強くなりましたが、強硬派と穏健派という区別ではなく、大統領に異を唱える人か、そうでないか、の基準の方が重要ですし、それで考えるほうが、政権の動向が正確に見えると思います。
もっと言えば大統領と気が合うか、肌合いが合うかということが重要になり、大統領に異を唱えない人が増えたということです。大統領のフリーハンドが強まったわけで、むしろ個人外交がやりやすい体制になったのではないでしょうか。
トランプ氏と金正恩氏という、従来の指導者とは個性や発想の違う、出方が読めない二人が会うわけですから、何が起きるかはわからない面もあります。失敗のリスクも小さくありません。
私は北朝鮮の立場はそれほど弱くないと考えています。まだ核ミサイルは廃棄されていなし、通常兵器による抑止も強大です。
トランプ大統領が、北朝鮮は圧力に屈したと考えて、武装解除のようなことを要求すれば、金正恩委員長は「北朝鮮に帰って臨戦態勢を敷く」と反発するかもしれません。
「取引」に失敗すれば、南北の「共同提案」を拒絶するということになるのですから、米国は軍事介入のほかに選択肢を失います。
それは米国には大きな犠牲を伴う選択です。軍事的な選択ということになれば、米韓同盟も破綻しかねません。韓国軍の協力なしに、米国は北朝鮮と戦えるのでしょうか。
今回の首脳会談は、個性の強い二人がやると決断しないと成立しませんでした。個人外交を得意とする二人、いわば「ディーラー」同士がこれはいけると思って成立する会談です。
だから成功するでしょうと言うしかないのです。
1回の会談で合意まで行くずに、延長戦はあるかもしれませんが、失敗を宣言するということは大変なことになりますから、その可能性は少ないと思います。
日本は安倍首相がピョンヤン に飛ぶしかない
――事態が急展開する中で日本は出遅れました。米朝が頭越しに関係正常化を進める可能性も出てきて、安倍首相も急きょ、訪米しトランプ大統領と会談しました 。
首脳同士が会談して、非核化問題でディールをしながら事態を動かすという予想を超えた形になり、サミットシリーズが始まってしまいました。
きっかけを作ったのは、金正恩委員長とトランプ大統領ですが、他の首脳も米朝会談が成功しそうだというので賭けに参加し始めたわけです。プーチン大統領も、いずれ加わってくるでしょう。
トランプ大統領が首脳同士でしかできないディール外交を始めたので、各国とも、外務省がその後を追うような展開になっています。日本も朝鮮半島問題で何かを目指そうとすれば、安倍首相が米韓と話をするだけでなく、ピョンヤン に飛んで金正恩氏と会談するほかないのです。
――米朝合意が現実になった場合、日本への影響をどう考えますか。
日本が直面する問題は二つあります。一つは安全保障の面で、北のICBMは廃棄されても、射程は短いけれど日本を射程範囲としてカバーする「ノドン」や「北極星2」スカッドERなどのミサイルをどうするかという問題があります。
核兵器だけでなく、これらのミサイルの廃棄もトランプ大統領に代わって交渉してもらえばいいという簡単な話にはなりません。日本が北と交渉するしかありません。
もう一つは、日朝首脳会談をやるとなれば、拉致問題の最終的な解決を図らなければなりません。拉致被害者家族会が声を上げているように、これが最後のチャンスでしょう。
この二つの問題の解決が、米朝会談の後に日本には課題になってきます。
戦後外交の「総決算」になる 北も生き残るため日本に期待
――問題解決の展望はあるのでしょうか。
一方で北朝鮮は、二つの問題を解決する代償として、日本に国交正常化を要求してくるでしょう。
日本が植民地支配の過去をきちんと清算し、日朝国交正常化を実現し、核・ミサイルや拉致問題と一括解決することが交渉内容になります。
今まで日本は、国交正常化は拉致問題や核・ミサイル問題を解決してからだと主張してきましたが、北朝鮮側は、国際情勢が変化し始めたのだから、日本が首脳会談を求めるなら、米朝首脳会談と同じく、国交正常化の話をしようと言ってくるでしょう。
安倍首相や外務省には大変、難しい交渉になりますが、南北、米朝、中朝など、朝鮮半島の関係国が動き始めていますから、日本はやらざるを得ない状況です。そうしなければ、新しい北東アジアの形成から除外され、「妨害者」になってしまいます。
ただ事態がここまで来たら、焦らないで米朝会談の結果を見極めてから、戦後の朝鮮半島問題のいわば総決算をするつもりで、腹をくくって取り組むことです。
北朝鮮との関係正常化は、戦後外交の残された課題です。
ミサイルや拉致問題のほかにも、北に残留している日本人や北に渡った日本人妻の問題や、過去の清算に伴う経済協力、いわば「賠償」の問題など、二国間のあらゆる問題を解決しなければいけないのです。
1960年代の日韓国交正常化に似たような交渉を立ち上げるのだから大変です。しかも傍らでは、非核化プロセスが進むわけで、それも確実にしなければなりませんし、これはこれで容易ではないプロセスです。
――北朝鮮は日朝関係改善でも本気なのでしょうか。
北朝鮮にとっても、米朝会談の後、日本と交渉することが不可欠です。金正恩氏は南にだけでなく、米中両国に非核化を約束しました。いまだに約束だけですが、それでも後戻りできません。前に進んで、生き残りのための条件を整えようとしているのです。
今後、何十年間も、 指導者としてやっていくための条件づくりは、核・ミサイル開発が最終段階にある「今」しかできません。
金正恩時代になってから、恐怖政治の面が強調されていますが、明らかに脱イデオロギーが進展し、軍重視の姿勢が後退しています。党機構が前に出て、制度・手続きを重視する傾向も確認できます。金正恩氏は北朝鮮をまず「普通の社会主義国」にしようとしているように見えます。
米朝関係が正常化され、南北が「共存」する枠組みができても、経済復興のためには、日本からの経済協力でインフラなどを整えなければなりません。それがないと、生き残り計画が完結しません。
だから日本は慌てる必要はないのですが、北朝鮮との関係正常化は北東アジア全体の平和と安定にかかわってきます。逃げられないし、ある種の覚悟が必要です。
関係国の動きの中で追い込まれてやらざるを得ないということではなく、自ら北東アジアの全体像を構想して決断していかないと、足をすくわれることになります。
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