『トランプ外交をよむ(2)東アジア関与継続 求めよ 米中の対峙回避、目配りを 川島真・東京大学教授』(2/24日経朝刊)、『米中戦争 そのとき日本は 渡部悦和著 軍事能力を分析し備えを提案』(2/12日経朝刊 川島真)について

渡部氏の『米中戦争 そのとき日本は』は日本国民全員必読の書です。戦争が嫌いだからと言って目をそむけるだけでは“ostrich policy”の持主になってしまいます。ハーバード大学ケネデイ・スクールのグラハム・アリソン教授は「トウキュデイデスの罠」に注目、「過去500年間の歴史の中で台頭する大国が既存の大国に挑戦する場合、16ケース中の12ケースで戦争になった。4ケースは戦争に至っていない。戦争は回避できないわけではないが、「トウキュデイデスの罠」から逃れるには大変な努力がいる。米中間の戦争は現時点で我々が認識するよりも蓋然性が高い」(P.21)と警告しています。ナバロはこれを読んで主張したのでは。

http://www.maesaka-toshiyuki.com/person/23117.html

読後の感想として大事なポイントと思った部分を列挙します。(順不同)

  • 中国の主張する第一列島線は日本全体だけでなく、カムチャッカ半島をもカバーしている。
  • 日中・米中で戦争が起きれば、在日中国人が必ず破壊工作をする。大陸に人質を取られているので嫌々でもやらなければと思う人もいる。「共謀罪」に反対している民進党や共産党は中国の手先でしょう。
  • 米日とも中国に先制攻撃はしない。(空手に先手なしと同じ。作戦行動に制約を受ける。中国を有利にするだけ)
  • 陸・海・空・サイバー・宇宙のドメイン全部での戦争になる。中国は超限戦を主張している。各ドメインでのKFSはC4ISR(指揮(Command)、統制(Control)、通信(Communication)、コンピューター(Computer)の4つのCと、情報(Intelligence)、監視(Surveillance)、偵察(Reconnaissance)のこと)。
  • 脅威=能力×意思÷距離。台湾海峡有事になった時に米軍は苦労する。嘉手納基地も米軍がいるので攻撃を受ける。南沙諸島は米軍有利。尖閣は日本の機雷敷設と潜水艦と戦闘機の能力で日本が有利。但し、POSOW(Paramilitary Operations Short Of War、準軍事組織による、戦争には至らない作戦)を中国は取ってくる可能性あり。今のままでは日米は警察・海保でしか対応できず。法的整備と警察・海保・自衛隊の縄張り争いをせずに連携して対応が必要。
  • 電磁レールガンとDEW(directed-energy weapon)の開発が核ミサイルを無力化?
  • 継戦能力。石油備蓄、装備の充実と消耗品の在庫。ACSAを多国間で締結。敵基地攻撃能力も。
  • バランスオブパワーこそが戦争の抑止になる。日米同盟の緊密化が必要。オバマは口先だけの男で中国の脅威を増大させて来ました。トランプを支援せねば。もうこれ以上時間の利益を中国に与えてはなりません。
  • レーニンは、資本家は自分の吊るされる縄を綯っていると喝破しました。日米で中国の軍事力拡大に手を貸してきました。中国経済を伸ばすために投資の形で支援してきました。ピルズベリーによれば軍事支援もしてきたとのこと。愚かです。日本の技術者も大陸に渡って技術支援しています。人質になる危険性もあるので帰った方が良いでしょう。日本企業も国内で高齢者と雖も雇用を増やすことを考えないと。
  • 中国はOTHレーダーを持っています。対抗して石垣島にTHAADを配備させるのはどうでしょう?

2/24の記事で川島氏は中国のいう「一つの政策」と日米のいう「一つの政策」の違いを的確に述べています。“recognize”と“acknowledge”の違いです。日本の平和も米中の出方次第で、破られる可能性が高いです。先ずは経済(金融)制裁から始まるでしょうけど。日本人も最悪の事態を想定して、準備をしていきませんと。地下に防空壕は必須でしょう。また、左翼リベラルメデイアの言説に惑わされないようにしてほしいです。

2/24記事

トランプ政権発足から1カ月がたち、対外政策の輪郭がおぼろげながらみえ始めた。対中政策についても習近平国家主席と電話会談をして、米国の「一つの中国」政策を引き続き尊重する旨を伝えた。米中関係や台湾問題の大枠には変更がないことを示している。日米間でも日米安保の重要性が確認され、東アジアの国際関係の枠組みは従来通りであるかにみえる。だが依然不透明な点が多く、現段階で見通しを立てるのは難しい。

政権発足前の著作だが、国家通商会議議長のピーター・ナバロ氏の「米中もし戦わば」(Crouching Tiger: What China’s Militarism Means for the World)は米中間の覇権交代の可能性を前提に議論を進める。また大統領選の投票日直前に米誌フォーリン・ポリシーに掲載されたナバロ氏とトランプ陣営の上級政策顧問だったアレキサンダー・グレイ氏のアジア・太平洋政策に関する共同論文は、レーガン政権に倣い、軍事力の拡大に基づく「力による平和」を実現するとしている。

2つの著作からは中国に厳しく対峙する米国の姿が想定されるが、これらが政策として現実になるかは未知数だ。

まず比較のためオバマ前政権の政策を確認したい。東アジアに対して進めたリバランス政策は、同盟国との関係強化と経済貿易政策としての環太平洋経済連携協定(TPP)の両輪から構成されていた。また東南アジア諸国連合(ASEAN)を重視し、東アジアの多国間枠組みにも積極的に関与した。戦略的には中国を意識していたのだろう。

そして米中2国間関係では当初「G2論」を提起したものの、次第にその姿勢を厳しくし、南シナ海で航行の自由作戦などを展開した。

だがオバマ政権期には米中が相互に相手を尊重する関係が築かれた。さらに米中間には多様で多層な対話の枠組みが形成された。その政策の基調は対話路線にあり、安全保障面でもヘッジ(回避)の一方で、常にエンゲージ(関与)を維持してきた。航行の自由作戦を展開しつつ、米中合同軍事演習を実施し、環太平洋合同演習(リムパック)にも招待したのがその好例だ。

それだけにオバマ政権の対中政策は中国に極めて融和的に映っていただろう。中国を適切にシェイプ(形づくる)するという政策の意図も中国側に届いていたか疑わしい。一方で、オバマ政権が進めた同盟国間のネットワーク形成は中国には脅威に映ったのではないか。

現時点で判断は難しいが、トランプ政権の安全保障面での対中政策は前政権に比べて厳しくなるとみられる。だがそれほど事態は単純でない。

第1に「力による平和」政策での同盟国の位置づけが依然判然としない。日米同盟については首脳会談で重要性が確認されたが、韓国やオーストラリアとのネットワーク形成推進については不明確だ。

第2にTPPからの米国の撤退だ。中国は今年5月に「一帯一路サミット」の開催を予定している。経済金融面でのルールづくり、公共財の提供という場から米国が撤退・後退すれば、中国にとっては好機となる。世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)での習近平氏の発言もこうした状況を踏まえている。

第3にASEANを起点とする国際協力や東アジアサミットへの関与の減退だ。トランプ政権は明確に多国間枠組みに対して消極的だ。南シナ海で航行の自由作戦を維持するにしても、東南アジアへの関与が減れば、米国の影響力は漸減していくだろうし、中国からみて戦略的好機が到来する。日豪がいかに事態に対処するかが課題になろう。

とはいえ政権発足後1カ月間の東アジア政策は比較的オーソドックス(正統)だ。まずは「一つの中国」政策の原則的維持である。米中首脳の電話会談で同政策の基本的な維持について言及がなされた。1972年、78年、82年の米中共同声明、79年の台湾関係法などを骨子とするのが米国の「一つの中国」政策だ。

しかしこれを維持することは、中国の「一つの中国」原則を受け入れることとは異なる。外交関係を持つ以上、中華人民共和国政府を中国政府と認めることは確かではあるが、中国は一つであるとか、台湾が中国の領土の不可分の一部分であるといった点について米国は「認識(acknowledge)」しかしていない。

米中電話会談を経てトランプ氏は安倍晋三首相と首脳会談に臨み、日米安保の重要性を確認し、また朝鮮半島問題にも言及した。つまりトランプ政権は同盟国との関係を維持しつつ、台湾海峡、朝鮮半島に関する立場も維持するという姿勢を示したのである。

トランプ政権の対中政策の当面の焦点は経済問題だろう。米国の貿易赤字の最大の相手は中国だし、大統領が最も固執する雇用創出の面からみても米中経済問題の解決は重要だ。また選挙期間中に為替操作国として中国を批判したことも記憶に新しい。

2月17日のムニューシン米財務長官と中国の汪洋副首相や周小川・中国人民銀行総裁らとの電話会談で、均衡のとれた米中経済関係を築いていくことで合意したという。米国政府の為替、貿易を巡る中国問題の位置づけを示す報告書が今後作成されるだろう。

米国は経済問題で中国の現状維持を認めるわけでなく、必ず何かしらの譲歩を引き出そうとするとみられる。その際に中国が一定の譲歩に応じるかどうか、粘り強い交渉が続けられるかが焦点となる。

以上のように、トランプ大統領は選挙期間中に述べていた「一つの中国」政策の見直しの可能性、為替操作国指定、中国製品への高関税付与といった一連の発言をいったん取り下げた格好になっている。これは日本に対する防衛費負担問題などに関する批判を取り下げたこととも重なる。結果的には対東アジア・北アジア外交では、比較的オーソドックスな政策が採用されており、国際政治上での「取引(ディール)」の兆候は具体的にはいまだみられない。

むしろ選挙期間中も含めたトランプ発言による「揺さぶり」を利用して、従来通りの路線を採用して相手を落ち着かせ、外交成果を上げるというのがトランプ外交のスタイルでさえあるかのようだ。

東アジアからみた場合、米中間の争点となるのはインド洋から東南アジアに至る空間だと考えられる(図参照)。トランプ政権はインド洋にいかに関与するのかまだ不明確だが、ASEANを基軸とした国際協力枠組みとは一定の距離をとるだろう。また同盟国との2国間関係には関心を払っても、同盟国間のネットワークという多国間枠組みへの関心も判然としない。

これに対して中国は、ブルネイ、スリランカなどで港湾建設、経営に関わり「一帯一路」政策の下に、経済活動とジブチの海軍基地へと至る海軍の世界展開を結びつけている。また米国がこの地域から後退すれば、ASEANを中心とした枠組みでの中国の発言権は一層増すだろう。

それでも中国が東アジアで国際主義を採っているうちはまだよいとの見方もある。最悪のシナリオは、中国が「チャイナファースト」となり、東アジアでの多国間主義を放棄し、トランプ政権に対峙する事態かもしれない。日本はそうならぬよう米国にこの地域への関与継続を求めつつ、豪州や韓国と連携し、中国とともに多国間主義を支える姿勢を示してもよいだろう。

ポイント ○対中安全保障政策は前政権よりも厳しく ○政権発足後の東アジア政策は比較的正統 ○「中国第一主義」に走らぬよう働き掛けを

かわしま・しん 68年生まれ。東京大博士(文学)。専門はアジア政治外交史

2/12日経記事

本書は、元陸上自衛隊東部方面総監である著者が、米中それぞれの軍事能力、戦略を客観的に、専門的に考察し、米中衝突のシナリオとその展開の予測、日本の果たすべき役割について記した著作である。米中戦争など起きる筈(はず)はないなどというのはまさに「思考停止」であり、最悪の事態を想定して万全の備えをすべきだと著者はいう。

(講談社現代新書・840円 ※書籍の価格は税抜きで表記しています)

著者は、中国について、特に1996年以降着実に軍事能力を上げつつ、習近平の下で軍事改革を進めていると見る。中国は、あらゆる限界を超えて作戦を遂行する「超限戦」を想定し、陸・海・空・宇宙・サイバーの各ドメインでアメリカに学びながら着実に差を縮めているという。その能力は衛星攻撃やサイバーなどの面で躍進しているが、まだ弱点も少なくなく、たとえA2/AD戦略でアメリカのエア・シーバトルに対峙しても、総合力では簡単に米軍に追いつかないという。時間軸から見れば今後5年から15年はこのままで推移するものの、次第に米軍の支配空間は小さくなり、東アジアは将来的に中国の影響下に入る可能性があるとも示唆する。

本書の分析には幾つかの特徴がある。第1に、脅威について一般に「意思と能力」で判断するが、対象までの「距離」を重視すべきだという。東シナ海、台湾海峡、南シナ海など、米中衝突の可能性のある場所まで、それぞれの基地や拠点からどれだけの距離があるかを本書は重視する。これは説得的である。第2に、これは著者からすれば当然だろうが、電磁レールガンなどの新たな軍事技術など、アメリカ側の軍事技術の開発も考慮している点だ。その上でおこなわれるスコアカードというシミュレーションも読者には新鮮だろう。それにより、アメリカは依然として優勢だが、その優位性が次第に失われてきていることにも気づかされる。

本書は米中の双方を「等身大」に捉えながら、客観的、かつ具体的に軍事力と戦略を見据えて、米中戦争の可能性と結果を見定め、とかく偏りがちな日本の安全保障に関する言論を諌(いさ)めていることがわかる。その日本について著者は、大災害などが複合的に生じる「同時に生起する複合事態」への警戒が必要としつつ、安全保障については自己規制を解き、一方で自力で国土防衛する能力とともに、他方で日米により統合作戦を実施する能力を高めるべきだと提案する。尖閣諸島周辺での衝突に際してのシミュレーションもなされ、国土防衛の具体像が示される点も考える材料になるだろう。

(東京大学教授 川島 真)

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