2/25日経朝刊<米、原油生産世界一へ シェール増産しやすく 18年、市場「ロシア抜く可能性」
米国は2018年に世界最大の原油生産国になる可能性が出てきた。17年はロシア、サウジアラビアに次いで3位だった。生産コストが下がり、今の原油価格で利益が出るようになったシェールオイルを増産。18年は平均で日量1000万バレルを超え、首位のロシアを抜く勢いだ。米国の原油増産は、石油輸出国機構(OPEC)を中心とした協調減産に影響を与え、国際市況を左右する。
「米原油生産は17年11月までの3カ月で日量84万6000バレルも増えた。間もなくサウジアラビアを抜くだろう」。国際エネルギー機関(IEA)は2月発表の石油月報で、米原油生産が勢いを増していると指摘した。
米国は統計としては最新の昨年11月に月間平均生産が日量1003万バレルとなり、47年ぶりに1000万バレルを超えた。米エネルギー情報局によると18年10~12月期には日量1104万バレルとなり、OPEC加盟国であるアルジェリアの日量に相当する約110万バレルがこの1年で増えると予測した。
実はシェール増産で米国は既に14年に世界第1位の石油生産国になったとの指摘がある。メジャー(国際石油資本)のBPによるとシェールガスの採掘過程で発生する天然ガソリンを含めた米国の石油生産は14年に日量約1178万バレルを記録。サウジの1151万バレル、ロシアの1084万バレルを超えた。これを契機に米国は安全保障上、禁止してきた原油輸出も15年末に解禁した。
より厳密なIEAの基準でも18年に米国はロシア、サウジ両国を上回り、45年ぶりに世界最大の原油生産国に返り咲く可能性が出てきたとの見方が市場に広がっている。
シェールオイルは今や日量約500万バレルに達し、米生産の半分を占める。米エネルギー情報局は18年に2割超増えると予想する。日本エネルギー経済研究所の小山堅常務理事は「シェール生産の平均コストが大幅に下がった影響が大きい」と指摘する。
小山氏らによれば、指標油種のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)が1バレル100ドル前後だった14年に、シェールの生産コストは1バレル70~80ドル。その後、原油価格は16年春までに30ドル台に急落。シェール採掘業者などはコストの削減を始め、17年の平均生産コストは同40~50ドルに改善した。OPECを中心とする協調減産で、原油価格は現在、60ドル台に戻し「結果的に米シェール増産につながった」(石油天然ガス・金属鉱物資源機構の野神隆之主席エコノミスト)。
シェールの開発も活発になってきた。シェール大手のパイオニア・ナチュラル・リソーシズは18年1~3月期に、米最大シェール鉱区での原油生産量を最大で16%増の日量約17万バレルに増やす計画。「26年には日量70万バレルまで増やす」(ドーブ最高経営責任者=CEO)と鼻息が荒い。
米原油生産の急拡大は、米国を主な輸出先としてきたOPEC加盟国に余波を広げる。世界の原油輸出市場(16年)は日量4200万バレルの規模。米国は直近の輸入量(17年11月)が日量762万バレルで、月間ピークの05年6月比で3割減った。OPECからの輸入量はピーク比で5割強減った。
米国は輸出にも拍車をかけている。17年11月は日量153万バレルと前年同月の2.5倍に増やした。貿易赤字削減の方針を掲げるトランプ政権下で米産原油の輸出拡大は続く公算が大きい。
OPECのバルキンド事務局長は12日、18年の原油需要が世界的な景気拡大を背景に増える一方で、OPECと一部の産油国が年内は減産を続けるため国際的な需給がすぐに崩れることはないと予想した。だが、米国産原油が輸出市場で攻勢をかけてくれば、サウジやロシアはシェアの維持を意識せざるを得ない。協調減産への姿勢にも影響を及ぼす。18年は原油市場の波乱を警戒する声が増えてきた。(松沢巌、ニューヨーク=稲井創一)>(以上)
ロシアとサウジがくっついたのはオバマの裏切りからでしょう。イランと勝手に核合意したので、サウジは「それなら」とロシアに近づいた経緯があります。トランプになってサウジの対米感情は持ち直しているのでは。エルサレムに米国大使館を移動させることに今は目立った反対はしていませんので。ムハンマド皇太子の強権の影響があるのかもしれませんが。ムハンマド皇太子とクシュナーは中東戦略について打合せした筈です。
2017/11/14JIIA(日本国際問題研究所=元外務省所管)<対イラン封じ込め連合の後景に追いやられたパレスチナ問題 貫井 万里>
https://www2.jiia.or.jp/RESR/column_page.php?id=274
ロシアとサウジを結びつける理由は、池田氏はイランと原油と述べています。OPECとロシアで減産協力できるかですが、2/25日経記事の通り、世界No1の石油産出国は米国になりましたので、相対的に両者の地位は下がったと思います。ただ単独より2・3位連合で米国にも言うことを聞かせるようになればとの思いがあるかもしれません。
米国も真の敵は中国と見極めて、ロシアとも協力して中国を封じ込めるような動きをしてほしい。中国は石油輸入国です。
記事
ロシアとサウジアラビアの接近ぶりが目立っている。ロシアは中東ではもともとイランに近く、シリア紛争でもアサド政権の後ろ盾となっている。そんなロシアはサウジアラビアの「敵対国」となるはずなのに、関係が良くなっているのはなぜか。
昨年10月、ロシアを初訪問したサウジのサルマン国王(左)とプーチン大統領(写真:AP/アフロ)
ロシアのプーチン大統領は2月14日、サウジアラビアのサルマン国王と電話会談した。ロシア大統領府によれば、両首脳はシリアやペルシャ湾情勢など国際問題のほか、「貿易・経済、軍事技術分野を中心にした2国間の協力」について幅広く協議したという。
両首脳の電話会談にあわせたかのように、ロシアの主要メディアはこぞって「サウジアラビア国営石油会社のサウジアラムコがロシアの民間ガス大手ノバテクの液化天然ガス(LNG)プロジェクトに参画へ」と報じた。
結局、サウジアラムコとノバテクが調印したのはLNG生産分野を含めた協力に関する覚書で、具体的なプロジェクトへの出資合意には至らなかった。とはいえ、ロシアのノバク・エネルギー相はメディアに報じられたような交渉が進行中とし、5月にロシア第2の都市サンクトペテルブルクで開かれる国際経済フォーラムの際に調印する「可能性がある」と表明している。
サウジアラムコが出資を検討しているとされるLNGプロジェクトとは何か。ノバテクが北極圏のギダン半島とヤマル半島で計画する新規のLNG事業で「アークティックLNG2」と呼ばれる。年産1900万~2000万トンのLNG施設の建設を予定しており、2019年に着工して2023年からの稼働をめざしている。総事業費はおよそ200億ドルに上るという。
ノバテクはすでに同じ北極圏のヤマル半島で「ヤマルLNG」開発事業を展開中で、昨年12月にLNG生産を開始したばかりだ。当初の年間生産量は550万トンで、2019年には3倍の1650万トンに増やす予定となっている。ヤマルLNGはノバテクが50.1%の権益を握り、フランスのトタルと中国の中国石油天然気集団(CNPC)が各20%、中国の国家ファンド「シルクロード基金」が9.9%を出資している。
ノバテクは「アークティックLNG2」についても同様に自らの出資比率を50.1%にとどめ、外資に幅広く参画を促す意向だ。すでにヤマルLNGと同様、仏トタルや中国CNPCの参画が取り沙汰されている。サウジアラムコが実際に投資するようなら20%程度を出資するのではないかとみられている。
サウジアラビアは世界有数の産油国で、天然ガスの埋蔵量も世界6位と豊富だ。しかし、国内では天然ガス需要が急増しており、ロシアを含めた世界の天然ガス開発投資に強い関心を持っている。実際、サウジアラムコ会長を兼務するファリハ・エネルギー産業鉱物資源相は昨年12月、極寒のヤマル半島で開かれた「ヤマルLNG」の生産開始を記念する式典にも参加している。
ロシアも世界で需要急増が見込めるLNG生産の拡大に注力している。ただし、国内でのLNG生産は三井物産、三菱商事が参画する極東の「サハリン2」に続き、ようやく「ヤマルLNG」が稼働したばかりだ。エネルギー省幹部は「2035年までに世界のLNG生産で15~20%程度のシェアを目指したい」としており、外資の資金力にも頼りながら生産基地を増やしていく意向だ。その意味で、ロシアのLNGに強い関心を示すサウジアラビアは有力な交渉相手となる。
サルマン国王のロシア訪問がきっかけ
こうした両国接近の直接的な契機となったのは2017年10月、サウジアラビアのサルマン国王が初めてロシアを訪問したことだ。プーチン大統領は2007年にサウジアラビアを訪問している。その返礼としての国王の訪ロが実現するまで、実に10年もの歳月を費やしたことになる。
「我々の招請を受け入れ、我が国を訪問して頂けたことを感謝します。サウジアラビアの国王がロシアを訪れるのは史上初めてです」。昨年10月、モスクワで開いたサルマン国王との首脳会談で、プーチン大統領は最大限の賛辞を国王に送った。さらに、初代アブドルアジズ国王が創設したサウジアラビア王国の前身となる国を1926年に初めて承認した国がソ連だったと述べ、両国の歴史的なつながりを強調した。
首脳会談ではエネルギーと先端分野への投資を目的にした総額20億ドルの共同ファンド設立などを決めた。サウジアラムコによる「アークティックLNG2」への参画案もその際に浮上した。両国はさらに軍事技術協力にも前向きで、ロシア製の最新鋭地対空ミサイルシステム「S400」のサウジアラビアへの供給で基本合意したとされている。実現すれば契約額は30億ドル超に上り、ロシアにとっては中国、トルコに続く「S400」の供給先となるという。
興味深いのは、ロシアがイランに対しては旧式の地対空ミサイルシステム「S300」の供給契約を結んだのに、サウジアラビアとの間では最新鋭のシステムが供給対象になっている点だろう。
ロシアはもともと、中東ではイランとの関係のほうが深い。とくにロシアが2015年秋にシリアに軍事介入して以降、シリアのアサド政権を支援する立場でもロシアとイランの利害は一致する。
一方、イスラム教スンニ派の盟主サウジアラビアとシーア派の盟主イランの関係は悪く、2016年に国交関係を断絶した。シリア情勢をめぐっても反体制派を支持するサウジアラビアとアサド政権を擁護するイランは鋭く対立してきた。イランとの関係を踏まえると、本来ならサウジアラビアがロシアを「敵対国」とみなしても不思議ではないのに、互いに関係改善に努めているのはなぜか。
ひとつはサウジアラビアで内政・外交の実権を握りつつあるサルマン国王の息子、ムハンマド皇太子の影響力だろう。
ムハンマド氏は2015年6月、サンクトペテルブルクで開かれた国際経済フォーラムに参加し、プーチン大統領と会談した。ムハンマド氏は「ロシアは1926年、サウジアラビアを最初に承認してくれた外国国家だった」などと語り、両国関係の発展に期待を表明。エネルギー、原子力、宇宙開発、軍事技術など幅広い分野で協力を深めることで合意した。
プーチン大統領もそれ以降、折に触れてムハンマド氏と直接会ったり、電話会談をしたりしている。こうしたパイプづくりがサルマン国王の初の訪ロにもつながったようだ。
背景にはイランと原油
両国の接近には当然、それぞれの思惑もある。サウジアラビアにしてみれば、イランへのけん制に利用する狙いが大きいようだ。とくにシリア情勢をめぐっては、和平プロセスからイランを除外するようロシアに迫っているとされる。
ロシアにしてみれば、従来は米国一辺倒だったサウジアラビアに接近することで、中東での影響力拡大を狙う意図がうかがえる。もちろん、LNGを含めたエネルギーや原発、宇宙、軍事技術の供給先としての魅力もあろう。サウジアラビアはロシア製の兵器購入に関しては、「イランへのS300の輸出撤回」をロシア側に要求してきたものの、サウジアラビアには最新鋭のS400を供給することで双方が折り合いをつけつつあるようだ。
両国の接近にはもうひとつ、互いの利害に合致した決定的な要因があることを忘れてはならない。原油の国際市場価格を安定させるための協調減産合意だ。
サウジアラビアなど石油輸出国機構(OPEC)とロシアなど非加盟の主要産油国は2016年12月、15年ぶりの協調減産で合意した。市場価格を安定させるのが狙いで、この減産合意を機に原油価格の下落に歯止めがかかった。減産合意を主導したサウジアラビアもロシアも原油への依存度が高く、サウジアラビアにとってはサウジアラムコの新規株式公開(IPO)への負の影響を抑えたいという事情もあった。
当初、2017年1月から6カ月末までとされた減産期間はその後、2018年3月末まで延長された。2017年11月末には、減産期間をさらに9カ月間再延長して2018年末までとすることで合意した。こうした一連の減産合意とその期間延長をめぐっては、ロシアの政治日程との関係でとりざたされる説がある。ロシア大統領選との関連性だ。
プーチン大統領が再選をめざす大統領選の投票日は3月18日。ロシアの政権は大統領の選挙キャンペーン中、さらには次の任期当初に原油価格急落に伴う経済苦境や社会混乱が起きないように協調減産を主導したという見方だ。
ロシアがサウジアラビアなどに対し、事前に周到な根回しをしていたのではないかと思わせる事例がある。プーチン大統領は2017年10月初め、モスクワで開かれた国際エネルギーフォーラムで、減産合意の延長期間を「最低でも2018年末」と予測していたのだ。直近の減産延長で合意する2カ月も前のことだ。
再び、プーチン大統領とサルマン国王の2月14日の電話会談。両首脳は「世界のエネルギー市場発展のための調整を深める用意がある」との認識で一致したという。イデオロギーや政治的立場を二の次にし、互いの実利をひとまず優先するロシアとサウジアラビアの協調は、果たしてどこまで続くのだろうか。
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