2/23日経朝刊<誰も切望せぬ北朝鮮の消滅 本社コメンテーター 秋田浩之
あれほどまでに緊迫していた危機が一転、和らいだような空気が朝鮮半島で漂っている。何とか制裁網を切り崩そうと、北朝鮮が韓国にほほ笑みを投げかけているからにほかならない。
だが、北朝鮮に核ミサイルの開発をやめる気はなく、米国などもそれを黙認するつもりはない。平昌冬季五輪・パラリンピックが3月18日に幕を閉じれば、再び、緊張が高まってしまうだろう。
米国はまず、凍結されている韓国との合同軍事演習を4月にも再開するつもりだ。五輪開会式に出席したペンス米副大統領に対し、文在寅(ムン・ジェイン)韓国大統領もこれに反対しない意向を内々に伝えたという。
問題はその後である。北朝鮮は米本土に届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)の完成にまい進するにちがいない。それを阻む方法は、大きくいって2つしかない。
ひとつは軍事作戦によって核とミサイルを取り除くことだ。トランプ米政権はこの選択肢も排除しない姿勢をみせているが、極力、避けたいのが本心だろう。
だとすれば、もうひとつの道は「体制が崩れてしまう」と北朝鮮が感じるまで制裁を引き締め、核武装の断念を迫ることだ。昨年来、国連制裁は積み上がってきており、この路線は着々と成果が上がっているようにみえる。
しかし、北朝鮮を翻意させるまで制裁を強めるには、厚い壁が待ち構えている。その壁とは、国家としての北朝鮮がいま崩壊し、地上から消滅してしまうことを、実はどの国も切望していないという「不都合な現実」である。
制裁を浴びせた末、制御が効かない金正恩(キム・ジョンウン)政権が潰れ、少しは話が通じる政権に代わるなら、中国も含め、各国とも歓迎するだろう。だが、北朝鮮という国家まで消えるとなれば、話は別だ。朝鮮半島にいきなり「権力の空白」が生まれ、地政学上、予測がつかない大動乱が起きかねないからだ。
そんなシナリオを恐れている国のひとつが中国なのは疑いない。北朝鮮から多くの避難民が国境に押し寄せ、安定が脅かされる恐れがある。さらに地理的なバッファーを失い、米国の同盟国である韓国と国境を接してしまう。これを避けるため、中国は金正恩政権に見切りをつけたとしても、北朝鮮を存続させようとするだろう。
では、米国はどうだろうか。トランプ政権内には、ICBMの配備を阻むためなら金正恩政権を潰しても構わないという意見がある。だが、北朝鮮という国家を消滅させ、一気に半島統一にもっていくべきだという主張は少数派のようだ。内情を知る元米政府高官はこう打ち明ける。
「北朝鮮がいきなり潰れたら、混乱はイラクの比ではない。治安を立て直すどころか、テロが散発するかもしれない。3万人程度の在韓米軍ではとても対応できないし、米韓両軍が北緯38度線を越えて北上したら、中国軍が介入してくることも考えられる」
こうした本音を反映してか、ティラーソン国務長官は昨年来、北朝鮮が核放棄に応じることを前提に、次のような趣旨の方針を表明している。
▼北朝鮮の政権交代を求めることはない。
▼朝鮮半島の統一も急がない。
▼北緯38度線より北に米軍を派遣する口実を探さない。
▼仮に北朝鮮が崩壊し、核兵器を確保するために米軍が38度線を越えたとしても、状況が落ち着けば、韓国側に退く。
この方針は中国にも伝えたらしい。ティラーソン長官はトランプ大統領との不仲から、辞任説も流れた。だが、今年に入り、マティス国防長官らとの連携を通じ、影響力を回復しつつあるという。彼の発言は米政権の一部の立場を映しているといえるだろう。
米中だけでなく、日本にとっても、北朝鮮の消滅は必ずしも理想のシナリオとは言いがたい。半島が大動乱になれば、日本にも火の粉が降り注ぐ。仮に韓国主導の統一が実現したとしても、復興のために莫大な資金支援を日本は期待されるだろう。
さらに日本は地政学上、難しい環境に向き合うことになるかもしれない。新たに出現する「統一国家」は、より反日色が濃くなる可能性があるからだ。日本政府の安全保障ブレーンは予測する。
「南北が統一されれば、反日イデオロギーの教育を受けてきた旧北朝鮮の人々もやがて有権者となり、投票するだろう。そうして生まれる新国家が、今より親日的になるとは考えづらい」
この点、ロシアは半島が統一すれば、米中いずれかの影響力が強まりかねないと警戒する。
では、最後に残った韓国はどうだろうか。文在寅政権は北朝鮮との融和に熱心だが、皆がいますぐ南北統一を実現したいと願っているわけではないようだ。昨年春に韓国政府の研究機関が実施した世論調査によると、統一は「必要」と答えたのは57.8%にとどまった。20代では「必要ない」との回答が6割を占めた。
こうした構図が正しいとすれば、日米韓中は北朝鮮に制裁を浴びせ、核を放棄させたいものの、少なくとも現時点では、国家が消えるまで追い込むつもりはないということになる。
北朝鮮は各国のそんな本音に気づいているのかもしれない。北朝鮮が抱える巨大な地政学リスクが彼らの一助になっているとすれば、極めて皮肉というほかない。>(以上)
まあ、北と南以外、誰も朝鮮半島の統一を願っていないという事でしょう。被害妄想の激しい南の人種は「日本が妨害するからだ」と言うのでしょうけど。何でも他人のせいにせず、少しは自分で頭の上の蠅を追ったらどうか。日本が一進会等の要請を受け韓国を併合し、文明化したことを恨むのだから、それは筋違いと言うもの。まあ、核放棄しない金正恩は無事にはすまないと思いますが。
2/22ZAKZAK<イバンカ氏の五輪閉会式出席で文大統領を追試 ジャーナリスト・潮匡人氏「米は与正氏と比較」>2/25オリンピック閉会式に合わせ、2/23からイバンカが訪韓するとのこと。文との面談で要求するのは①米韓合同演習の予定通りの実施②北や中国に甘い顔を見せ、日米韓3か国の同盟にひびを入れる行動を取るなら、同盟国の扱いはしない③鉄鋼・アルミの輸入関税も53%となる④北の核保有をストップできないのであれば、日本に北に届く核ミサイルを保有させる⑤戦争が起きたときに、被害がどうなろうとも米国の関知する所ではない ⑥竹島は日本の領土と米国の証拠着きで国際司法裁判所に提訴させる⑦慰安婦問題も米軍の調査結果を発表するくらいは言ってほしい。中国と北に漏れる前提で。
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/180222/soc1802220005-n1.html?ownedref=not%20set_not%20set_newsList
2/23ZAKZAK<韓国閣僚、国連で「性奴隷」発言 河野外相が批判「事実に反する」>
国連女子差別撤廃委員会での韓国閣僚の「性奴隷発言」について河野大臣が「事実と反する」と言ったそうな。相手が約束を破っているのに、日本でいくら言っても効果はないでしょう。すぐ国連・ジュネーブに電話して「反論の機会を」と申し出なければ。外相専用機もそういうクイックレスポンスすれば実現できるかも。
https://www.zakzak.co.jp/soc/news/180223/soc1802230019-n1.html
2/21ZAKZAK<米、退避命令出さず3月に『電撃的奇襲攻撃』「裏切り者」韓国には一切通知せず>今までもNEOをしないで開戦して来たとのこと、そう(敵を無力化できるの)であるならば早くやった方がよい。
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/180221/soc1802210004-n1.html
2/23ZAKZAK<マクマスター補佐官が辞任か…CNN報道、トランプ大統領と不仲>マクマスターはテイラーソン、マテイスと違い主戦論者と聞いていましたが、もし官邸との不和と言うのであればトランプは攻撃に慎重になった?
http://www.zakzak.co.jp/soc/news/180223/soc1802230020-n1.html?ownedref=not%20set_not%20set_newsList
2/23の朝鮮総連襲撃は右翼が銃を使って襲ったとの話ですが、銃の保持から見て純正右翼ではなく、単なる暴力団でしょう。メデイアはすぐ右翼のイメージダウンを図ります。左翼の暴力には無頓着で報道しないくせに。まあ、右翼が暴力団の金に負けて近づいたのもありますが。
鈴置氏の記事では、米国が韓国を同盟国からはずそうというのが露骨になったと言うもの。韓国の日本に対する裏切り(「竹島」、「南京」、「慰安婦」やら)を米国が放置し、甘やかしてきた政策がいよいよ限界を露呈してきたと言う所でしょう。安保と通商の2トラック作戦何て米国が受け入れる訳もありません。日本だって歴史と経済の2トラック作戦を受け入れず、通貨スワップ協議は宙に浮いたままではないですか。一つの行動をすれば相手国がどんな反応を見せるのか考えてから走れば良いのにパリパリ・ケンチャナヨ精神で熟考出来ない民族です。韓国人の言うことは無視するに限ります。勿論事実と違うことを言ったら即座に日本側が反論はしますが。相手の要求は聞く必要なし。
米国の代替市場何て簡単に見つかるはずもありません。アフリカ等白人が進出したがらない土地に中国が進取の気性で進出していますが、その中国ですら米国市場を閉ざされないように必死なのに。北と一緒になって2500万の人口増になったとしても、欧米から韓国製品の締め出しを食らう方が恐ろしいでしょう。財閥を憎み、金日成崇拝しかしない文在寅政権では経済のことはさっぱり分からないのでしょうけど。文在寅政権は経済が困窮すれば共産主義支持者が増えると真剣に思っているのでしょうか?まあ、自分達で選んだ大統領を蝋燭デモで倒したことを自慢げに語るレベルの民族ですから分かりませんが。普通は一度豊かさを知れば共産主義には靡かないと思うのですが。日本の左翼何て似非左翼ばかりです。革命を起こす勇気もない連中が左翼を気取っているだけ。でもそういう連中の言説に誑かされている日本人が多いことは残念です。
記事
2月9日の平昌五輪開会式で、金与正氏に握手を求める文大統領、それを振り返って見る安倍首相、無視するペンス副大統領(写真:ロイター/アフロ)
(前回から読む)
米国と日本の制止を振り切って北朝鮮を助ける韓国。米国がお仕置きに乗り出した。
同盟国なのに「狙い撃ち」
鈴置:韓国で「米国の報復が始まった。文在寅(ムン・ジェイン)政権が北朝鮮の言いなりになったからだ」と騒ぎになっています。
2月16日、鉄鋼とアルミニウムの輸入増加が安全保障上の脅威になっているとして、米商務省がトランプ(Donald Trump)大統領に輸入制限を提案しました。
日本を含む世界では、中国を標的とした輸入規制と見なされました。が、韓国人は自分たちが米国に狙い撃ちされたと考えたのです。保守系各紙は文在寅政権の北朝鮮への幇助政策が、通商分野での報復をもたらしたと怒気を込めて指摘しました。
東亜日報の社説「米、今度は鉄鋼関税爆弾……いつまで遅れて対応するのか」(2月19日、日本語版)の骨子が以下です。
米商務省の案は、すべての国の鉄鋼製品に一律に少なくとも24%の関税を追加するか、韓国、中国を含む12カ国に対して少なくとも53%の関税を追加で課す案など、3つの案が含まれている。トランプ大統領はこれをもとに、4月11日までに決定を下す。
選択肢の1つとして示された特定国への制裁案で、対米鉄鋼輸出首位のカナダと隣接国のメキシコ、友邦である日本やドイツなどが除外される一方、韓国が含まれたことに注目する必要がある。
韓国の鉄鋼メーカーが中国製鋼板を加工し、米国に安価で輸出したという米企業の認識が反映されているのかもしれない。韓米FTA(自由貿易協定)の改正交渉で有利な立場を占めたい米国の戦略かもしれない。
しかし、外交安保分野の韓米対立が経済報復につながっているとの見方もある。トランプ大統領は1月11日、WSJ(ウォールストリート・ジャーナル)とのインタビューで「北朝鮮があなたと文在寅大統領との間を仲たがいさせようとしているのではないか」という質問に「我々はいわば貿易という手段を持っている。これはかなり強い交渉チップ(chip)だ」と、韓国への経済圧力を示唆している。
韓国への「お仕置き」
トランプ大統領は英語では何と言ったのですか?
鈴置:以下です。「Transcript of Donald Trump Interview With The Wall Street Journal」で読めます。
we also have a thing called trade. And South Korea—brilliantly makes—we have a trade deficit with South Korea of $31 billion a year. That’s a pretty strong bargaining chip to me.
韓国人は被害者意識が強く、自分だけがいじめられていると思い込む傾向にあります。でも、このトランプ発言からすると、北朝鮮になびく韓国を米国が通商カードで脅すという見方を邪推と決めつけられません。
韓国経済新聞は「韓国へのお仕置き」という表現を使いました。社説「通商圧力を通じ米国は韓国への『お仕置き』に本腰」(2月19日、韓国語版)から翻訳します。
北朝鮮への制裁などを巡り、文在寅政権と微妙な葛藤を繰り広げてきた米国が、通商を通じ『韓国に対するお仕置き』を始めたとの分析も出ている。
「その他大勢」の扱いに
—「お仕置き」ですか!
鈴置:韓国人は「米国が韓国に対し鼻血作戦に乗り出した」とも言い合っています。保守系サイト、趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムに、ヴァンダービルダーのペンネームで論陣を張る外交安保専門家が「断想 米国から見た時、韓国は今やその他大勢の扱い」(2月18日、韓国語)を載せました。
ヴァンダービルド氏も東亜日報の社説と同様「韓国は米国から同盟国の扱いをされなくなった」と指摘しましたが、表現はもっと過激です。結論部分を訳します。
米国の目には、すでに韓国が(対米鉄鋼輸出が多いうえ、米国と同盟関係にないか、あっても結びつきが弱い)中国、ロシア、タイ、南ア共和国、コスタリカ、エジプト、マレーシアと同様に分類されるようになったという傍証だ。
もう米国の同盟国ではなく、その他大勢の扱いになったということだ。やはり、世の中は自分でまいた種は自分で刈り取らなければならぬ。因果応報、すべての過ちは必ず正しい道理に帰する法則が強く働くのである。
「鼻血作戦」が言及されたのは、この記事のコメント欄です。ある読者が「『韓国がまず鼻血を流すことになる』との指摘が着々と現実になってきましたね」と書き込みました。これに対し、ヴァンダービルド氏は「その表現は(先に)ほかの方が書かれています」と答えたのです。
「鼻血作戦」は対北朝鮮用の威嚇戦術を指します。ミサイルの発射台などを限定的に攻撃することで米国の本気度を示し、北に核・ミサイル開発を放棄させる狙いです(「次の焦点は平昌五輪前日の軍事パレード」参照)。
米政府当局者が直接言及したことはありませんが、2017年末に英メディアが「米政府が鼻血作戦を検討し始めた」と報じて以来、すっかり有名になりました(「2018年『北の核』は軍事攻撃か体制崩壊で決着」参照)。
因果応報の韓国
—米国にとって、韓国は北朝鮮よりも先にやっつける対象になった、ということですね。
鈴置:その通りです。韓国に対しては軍事力ではなく、経済力でダメージを与えるという違いはありますが。ヴァンダービルド氏が言うように、因果応報です。
文在寅政権は平昌(ピョンチャン)冬季五輪を名分にやりたい放題。五輪に参加した北朝鮮選手団らの費用、28億6000万ウォン(約3億円)を韓国政府が持つことにしました。
北朝鮮にカネが流れないよう日米が世界各国に協力を要請し、追い詰めてきたというのに、韓国が金融包囲網に風穴を開けたのです。
韓国は、国連の渡航禁止対象に指定されている崔輝(チェ・フィ)国家体育指導委員長の受け入れも画策。五輪の成功を理由に入国を認めるよう国連に要請し結局、許可を得ました。
米韓合同軍事演習も米国に頼み込んで、五輪・パラリンピック期間(2月9日から3月18日)の後にずらしてもらった。これにより、北朝鮮は安心して2月8日に軍事パレードを開けたのです(「次の焦点は平昌五輪前日の軍事パレード」参照)。
というのに平昌五輪に合わせ、韓国を訪問した金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長の妹の金与正(キム・ヨジョン)党第1副部長に対し、文在寅大統領は非核化を一切要求しなかった。
韓国政府は「五輪休戦」により外交の主導権を握ったと考えました。北朝鮮は合同演習も延期ではなく完全廃止を要求していますから、南北首脳会談の開催を名分に韓国が米国に再延期を要求する可能性があります。
井戸の周りでお焦げを探す
—米国は「これ以上甘やかすともっと付け上がる」と考えた……。
鈴置:平昌五輪の開会式の貴賓席の写真が象徴的でした。金与正・第1副部長に、文在寅大統領が握手を求めて手を差し出す。それを安倍晋三首相がいぶかしげに見つめ、ペンス(Mike Pence)副大統領はあらぬ方向を見たまま……。
南北の和解劇というか、やりたい放題を米国がどう見ているか、よく分かる光景でした。ペンス副大統領は開会式直前のレセプションにも5分間、顔を出しただけ。用意された晩餐の席に座りもしませんでした。
韓国の保守も「そろそろ米国が怒り出すぞ」と首をすくめていた。そこに鉄鋼の輸入制限案の発表。「ついに米国が報復に乗り出してきた」と悲鳴をあげたのです。
—「鼻血作戦」に韓国政府はどう対応しましたか。
鈴置:とりあえずは低姿勢を見せました。米商務省の発表の翌2月17日、文在寅大統領が「南北首脳会談は急がない」と語りました。平昌五輪プレスセンターで記者からの質問に答えました。
中央日報の「文大統領『南北首脳会談の可能性、少し性急なようだ』」(2月18日、日本語版)から、大統領の発言を拾います。
(南北首脳会談は)井戸の周りでお焦げを探すようなもの(せっかちを諌める韓国のことわざ)。多くを期待しているが性急なようだ。
米朝間でも対話が必要だという共感が少しずつ高まっている。いま進められている南北対話が米朝間の非核化対話につながることを待っている。
2月10日、金与正・第1副部長の口頭での訪朝要請に対し、文在寅大統領は「これから条件を整えて実現していきましょう」と答えています。それと比べやや、後退した感じです。
裏では北朝鮮と交渉
—左派政権とはいえ、米国の経済制裁は恐ろしいのですね。
鈴置:景気が失速したら支持層の左派からも不満が噴出するでしょう。一方、米国との関係悪化を恐れる保守はほっとしたようです。
文在寅発言を論じた東亜日報の2月19日の社説。「『井戸でお焦げ』 南北首脳会談を焦るなと警戒した文大統領」(韓国語版)という見出しからして安堵感が漂いました。結論部分では以下のように主張し「首脳会談に走るな」と念を押しましたが。
文大統領は対北特使などの適切な方法を通じ、北朝鮮と米国の対話なしに、南北対話を期待することは「井戸でお焦げを求める」ことだと金正恩にはっきりと伝えねばならぬ。
朝鮮日報はもう少し疑り深かった。同じ2月19日の社説「文大統領『南北首脳会談は井戸でお焦げ探しと同じ』」で、まずは「現状に変化がない限り、南北首脳会談は時期尚早との考えを明確にした」と大統領の発言を評価しました。
しかし「文大統領の周辺の多くは異なる考えを持っているようだ。裏で国家情報院を使って北と首脳会談に関する交渉をしながら、表面では文大統領が『速度調節』発言をしているとの観測も一部にある」と牽制しました。
一転、対米強硬策に
—南北首脳会談は開かれるのですか?
鈴置:まだ、分かりません。ただ、注目すべき動きがありました。2月19日、前日の発言から一転して文在寅大統領が米国に強気で臨む姿勢を打ち出しました。
「米国の輸入制限案に対しWTO(世界貿易機関)への提訴など決然と対応する」と述べたのです。聯合ニュースの「米の輸入制限に決然と対応 WTO提訴も=文大統領」(2月19日、日本語版)などが報じました。
聯合ニュースの「青瓦台『安保と通商の論理は異なる……韓米FTAに積極対応を示唆』」(2月19日、韓国語版)によると、青瓦台(大統領府)高官が「安保問題と通商交渉は切り離して処理する、というのが文大統領の考え」と説明しました。
文在寅政権の「決然とした対応」と「安保と通商の分離」に、韓国の保守からは不安の声があがりました。
—なぜでしょう?
鈴置:米国と全面衝突しかねないからです。平時なら通商面で米国と対立しても問題はない。しかし安保面で米国と関係が相当に悪化している今、通商で強硬策に出れば、米国も安保、通商両面で強い手を打ってくるだろう、との懸念です。
虫のいい「安保・通商」分離案
—だから「安保と通商を切り離す」のではないですか?
鈴置:それは韓国の勝手な理屈です。米国が「切り離し」に応じる保証はありません。朝鮮日報の趙儀俊(チョウ・ウィジュン)ワシントン特派員とアン・ジュンヨン記者は「青瓦台は『安保と通商は別物』と言うが……米国もそう考えるだろうか」(2月20日、韓国語版)で、その点を追及しました。
韓米通商摩擦が朝鮮半島を巡る安全保障問題に燃え移るとの懸念が高まる。大統領府は「安保と通商は別物」という考えだ。
だが、韓国の北朝鮮政策に対する米国の懸念に、通商摩擦によるしこりが加わり、両国の安全保障問題にも何らかの形でダメージを受けるしかないとの観測である。
日本に対しても韓国はしばしば「歴史問題と経済協力の分離」を主張します。「慰安婦問題では日本が言うことを聞け。経済面では両国が協力して通貨スワップを結ぼう――要は、ドルを貸せ」という理屈です。
しかし、外交音痴の日本だって――少なくとも安倍政権は、そんな虫のいい話には応じないではないですか。
本音では歓迎の「韓国切り捨て」
—どんなダメージが出るというのですか。
鈴置:この記事は、米国が以下のような対応に出る可能性があると指摘しました。
南北首脳会談の開催に難色を示す。
防衛分担費の大幅増額を求めてくる。
(韓国が米朝間で板挟みになっている)米韓合同軍事演習の再延期に応じない。
韓国に十分な準備がないまま、戦時作戦統制権を早期に返還すると言い出す。
この4点は一見、ばらばらの話です。が、まとめて言えば米国が「同盟を続けたいのなら言うことを聞け。それが嫌なら今すぐに見捨てるぞ」と踏み絵を迫って来る、ということです。
—文在寅大統領はどうするのでしょう?
鈴置:「米国が同盟を打ち切る」と言い出したら「渡りに舟」と乗る可能性があります。そもそもこの政権は「親北反米」政権なのです。大統領以下、政権の中枢部は「米国との同盟は民族の団結を阻害する邪魔物」と考えている。(「『米帝と戦え』と文在寅を焚きつけた習近平」参照)。
ただ、まだ韓国には親米派が残っています。彼らの死に物狂いの抵抗を考えれば、自分からは同盟打ち切りを言い出しにくい。もし米国が「同盟を打ち切る」方向に動き出せば、願ったりかなったりでしょう。
米国の代替市場を探せ
—文在寅大統領は本当に、米韓同盟がなくなってもいいと考えているのでしょうか。
鈴置:聯合ニュースの「文大統領『不合理な保護貿易措置に堂々と、決然と対応』」(2月19日、韓国語版)に興味深いくだりがあります。大統領の発言です。
我が国企業の輸出競争力を増すために(中略)新北方政策と新南方政策の積極的な推進によって、輸出を多様化する機会にせねばならない。
米国市場から締め出された際の代替市場を準備せよ、との指示です。でも今や、多くの発展途上国が高炉を建設し鉄鋼を国産化。そのうえ、能力増強に動いています。
輸出先の多角化は口で言うほど簡単ではありません。韓国の製鉄会社だって、必死で販路開拓に取り組んできたのです。
「平昌」は半島の転換点
—では、どこに輸出せよ、というのでしょうか。
鈴置:世界で唯一の手つかずの市場が北朝鮮です。南北関係を改善すれば、貿易でも援助の形でも韓国の鉄鋼製品を独占的に流し込める場ができます。
青瓦台の参謀は「米国市場にこだわらなくても、同族が団結すれば鉄鋼問題など解決できる」と大統領に進言しているのではないかと思われます。
韓国は米国との同盟を大事にするか、北朝鮮との和解を重視するか、の岐路に立ちました。これまで先鋭化してこなかったこの問題が、一気に表面化したのです。
—平昌五輪が朝鮮半島の転換点になるということですね。
鈴置:ええ。「平昌で『米日』VS南北の戦いが始まる」という記事の見出し通りになりそうです。
(次回に続く)
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