12/18日経ビジネスオンライン 森英輔『日本は合気道の要領で中央アジアに目を向けよ』について

本年1/5の日経には『同盟国と対話、意思疎通を ジョシュア・ウォーカー氏

富士山会合で、民主党のヒラリー・クリントン前国務長官に近い米国のキーマンにもインタビューをしました。これからの日米関係を考える上で見逃せないキーワードの一部をご紹介しましょう。

 ジョシュア・ウォーカー氏(有力シンクタンク、GMF主任研究員)

 「米国はアジアに政策の軸足を置いています。ただし、米国人が言う『アジア』という言葉は、成長著しい中国とインドを指していることがあります。日本で育った私にとっても大変残念なことです」

 「昔の世代のリーダーは日本に重点を置けましたが、今は必ずしもそうではありません。一部には日本を二流国家と考える人々もいます。でもこれは間違いです」

 「私の世代の米国人が日本の専門家になったり、日本語を話せたりしなくてもいいと思います。ただ、日本の果たす役割を正しく認識し、理解する必要があります。両国を結ぶパイプが細くなっているという指摘について心配しているのは、交流や意思の疎通が一方通行になってしまうのではないかという点です。米国もアジアの同盟国、重要な国々と対話を大事にすべきです」』とありました。ヒラリーに近いという点でリベラルかと思ってしまいますが、やはりその色は拭えません。

価値観外交と言ってもご都合主義なだけでしょう。白人、特に西側世界が他の国を批判するときに使う手段でしょう。キリスト教国の世界分割(トルデシャリス条約)、帝国主義(植民地収奪)、黒人奴隷、インデイアン虐殺等、歴史上やってきたことを見れば「何を言うか」という気にもなりますが、現在の価値観で過去を批判しても仕方がありません。今、普遍的な価値観に近づいていない国に、近づいて貰う努力をして行かなければ。発展段階や伝統文化は尊重しますが、自国民を虐殺するような国は非難すべきです。チベット人やモンゴル人、ウイグル人を虐殺するような国に対し、国際社会は制裁すべきと思うのですが。英国のキャメロン首相はダライラマの面会でも中国の脅しに屈しました。ユダヤ陰謀論の人に、「ロスチャイルドは①イギリスを捨て、中国を取った②中国を立てているように見せて、太った豚を料理しようとしている」のか、聞いてみたいです。

ジョシュア・ウォーカーは何となくジョセフ・ナイに近い気がします。日本には「軍事力は強化せず、ソフトパワーだけを発揮せよ」という論調です。勿論今の日本人で外国に軍事力を使い、世界へ進出しようという風に考えている人は殆どいないでしょう。共同防衛はあり得ますと言うか、それはしっかりやっていかないと。

ジョシュア・ウォーカーの言う、ロシアと中央アジアは中国封じ込めのためには必須です。これにASEAN諸国も。第二次大戦の失敗は同盟国選びでした。今回は失敗しないように相手を選び、なおかつ友好国を増やしていくことが大切です。

記事

安倍晋三首相は、自由、民主主義をはじめとする「価値」に重きを置く「価値観外交」を標榜している。だが、米国と価値観を共有しているはずの英国が、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に率先して参加するなど、価値観外交には懸念すべき面もある。そこで、価値観外交に詳しいジョシュア・ウォーカー氏に話を聞いた。同氏は米ジャーマン・マーシャル・ファンドで主任研究員を務める。ウォーカー氏は11月、日米の政府関係者や専門家らが対話する「富士山会合」(日本経済研究センターと日本国際問題研究所が共催)第2回年次大会に参加した

—ウォーカーさんは価値観外交に関心を持たれていますね。

ウォーカー:はい。利益はどの国とでも、敵国とでさえ共有することができます。一方、価値を共有できるのは多くの場合、同盟国です。これが、私が「価値が大事」と考える理由です。価値は、同盟国を団結させる。価値と利益は異なるものなのです。

Joshua Walker

 

 

 

 

 

 

 

 

ジョシュア・ウォーカー氏 ジャーマン・マーシャル・ファンド主任研究員。クリントン国務長官のグローバル・パートナーシップ・イニシアチブのために中央アジアおよび北アフリカに関する上級顧問を務めた。国務省チーフエコノミスト室、駐アンカラ米国大使館などにも勤務。(写真:加藤 康、以下すべて)

—なるほど。価値と利益を分けて考える必要があるのですね。

 私は価値観を前面に出す価値観外交が真に機能するものなのか疑問に思っています。最近の英国の動向をみてください。政治面でも安全保障面でも英国は米国と価値を共有しています。しかし、中国が主導するアジアインフラ開発銀行(AIIB)への参加を先進国の中でいち早く決めました。韓国も同様です。政治面でも安全保障面でも米国と密接な関係にあります。しかし朴槿恵大統領は親中路線を取っています。この動きは特に経済面で顕著です。

ウォーカー:価値観外交はいろいろある外交手法の1つにすぎません。例えば経済的な利益を重視する商業外交があります。同盟関係に焦点を当てる安全保障外交もあります。価値観外交が単独で機能するわけではありません。

 森さんが例に挙げた米国と英国との関係はこの問題を考えるよい例ですね。米国と英国は非常に似た価値観を持っています。しかし、価値観を同じくしていることと、価値観外交を展開することは別ものです。英国は価値に基づく外交をしていません。中国がもたらす利益を重視して行動したのです。

 価値観外交について考える時、我々はどの地域について考えるのかに注意を払う必要があります。中東地域を考えるならば、米国と英国は依然として価値観外交を展開していると言えるでしょう。しかし、中国が力を持つ東アジアと、ロシアが力を持つユーラシアについて、私は確信を持つことはできません。

米豪が結ぶ堅い信頼の絆

—米国と価値観を共有している国は日本のほかにどこがありますか。

ウォーカー:オーストラリアです。米国と価値観を共有する国として世界で最もふさわしい例と言えます。

 オーストラリアは時の政権が保守派であろうとリベラル派であろうと関係なく、いつも米国と肩を組んで歩んできました。だからこそ米国は、オーストラリアとインテリジェンスを共有してきたのです。私が見るところ、これは米豪が価値観を共有しているからこそのことです。

 将来に目を向けると、候補がたくさんあります。例えばフィリピン。奇妙に聞こえるかもしれませんが、ベトナムやマレーシアの名前も挙げることができます。文字通り数十年の時間がかかるかもしれませんが。

価値観外交で日本ができること

—ウォーカーさんは、日米が共有する価値を広めるのに、日本の力が役に立つと主張していますね。日本にどんなことができるのでしょう。

ウォーカー:米国が抱えている課題の1つは、我々の価値観が時にコモディティなってしまうことです。例えばイラクとの戦争の時、我々はイラクに民主主義をもたらすと主張しました。しかし、それは大きな間違いでした。我々が民主主義や自由を声高に叫んだために、これらの言葉はネガティブなものになってしまった。米国が民主主義と自由を口にすると、みなが笑います。

 米国は自分のことを世界において依然として輝いている存在だと思いたい。しかし、米国は以前ほどのソフトパワーを持ってはいません。中東において、米国は信頼を持たれていません。石油のためにイラクに押しかけたと思われています。そして帝国主義の国だと。

 一方、日本はそのような失敗の歴史を持っていません。非常に強い独自の伝統と文化を持つ国です。日本はキリスト教を戴く西洋の国でもありません。日本の仏教や神道は他のすべての文化の価値を認めるよう説いています。そして、世界の多くの人々が、かつて米国に注いだのと同様のあこがれの視線を日本に向けているのです。

 日本は素晴らしい通商国家だと思われています。私は、日本はビジネスの分野でより重要な役割を果たすべきだと思います。トヨタや任天堂といったグローバル・ブランドは日本発です。かつてハリウッド映画やコカコーラ、リーバイスのジーンズが世界を席巻しました。同様の力をソフトバンクやユニクロといった新世代の日本企業が持つことに注目すべきです。

 日本と米国はビジネスの分野でより緊密に協力すべきです。競争相手が増えていますから。中国は鉄道システムの売り込みに長けています。日本はインドネシアの商戦で中国に敗退しました。中国が多くの政治的圧力を加えたからです。

 しかし、日本の製品は優れています。日本の良いところと米国の良いところを持ち寄り、そのブランドとソフトパワーを効果的に発揮すれば、世界のどの国も対抗することはできません。上海協力機構の加盟国であれ、ロシアが主導するユーラシア同盟の加盟国であれです。

 今の日米関係は、米国が日本に対して何をすべきかを伝えるだけの一方通行です。安倍首相が米国に「日本の役割は何か」と聞き、米政府が「次はこの課題です」と応じているように見えます。日本は「日本には実行すべき特別な役割がある。原発を開発しトルコやアラブ首長国連邦、湾岸諸国を支援する。鉄道を敷設することでバングラデシュやインドネシアを支援する」と主張すればよいのです。日本にはできるけれど、米国にはできないことがあるのです。

日本はロシアと対話できる数少ない国

 対ロシアでも日本の存在は重要です。もしロシアがクリミアやウクライナで行っているような方法で国際秩序に再び挑戦することがあれば、これは重大な脅威となります。ここで日本は、米国にはできない役割を果たすことができます。日本はプーチン大統領と会話ができる数少ないリーダーの1つですから。

 価値観を共有しているので、我々は日本のことを十分に信頼しています。ロシアと何を話す時も、日本は日米共通の利益を念頭において進めてくれると。

 もし日米の関係が利益だけに基づくものならば、我々はいつも日本の行動をチェックしなければなりません。「日本はロシアと何を話したんだ」とね。しかし我々は価値観を共有しており、結婚しているようなものです。奥さんが他の男性と夕食に行っても、信頼しているでしょう。しかし、付き合っているガールフレンドが他の男性と夕食に出かけたなら、疑いの念を持つのではないでしょうか。「君は何をしているの。浮気をしているの」と。

中央アジアはミッシング・リンク

—次の質問は中央アジアについてです。ウォーカーさんは日本は中国にばかり目を向けている。他の地域、なかでも中央アジアに向けるべきだと強調しています。

ウォーカー:その通りです。

 中国のことで頭がいっぱいになる事情は理解できます。しかし、日本が中国と向き合う際の最善の方法は中国を抑えようとすることではありません。中国を囲む周辺の国に目を向けることです。合気道では、誰かに殴られそうになった時、殴り返そうとはしません。相手の力を相手に向け直すでしょう。中国に対する時も同様にすればよいのです。

 そこで、目をむけるべきは中央アジアです。私が知る限り中国の最大の懸念は対外的な問題ではなく、内政の問題、すなわちウイグルです。毎日のように死に至る犠牲者が生じています。しかし、中国当局がそれを検閲しブロックしているため、それが世界に知らされることはありません。

 中央アジアの国々はウイグルで何が起きているかを知っています。私はこの地域をチュルク語世界と捉えています。この世界はアドリア海から始まり、トルコ、アゼルバイジャン、カザフスタン、ウズベキスタン、トルクメニスタンと広がっています。

 日本は既に台湾と良い関係を築いています。フィリピンと良い関係を築いています。インドやインドネシアとの関係も拡大させています。この輪において欠けているのが中央アジアです。

 もう1つのポイントは、中央アジアにおける日本の役割は、日本のためだけのものではないということです。もし日本が米国やインド、トルコと協力できるならば、これらの4カ国は東アジアにおける中国やロシアの影響に対して共同して対抗することができるようになります。

 以上のことから、私は、日本にとって中央アジアが重要であることを強調しているのです。

—遠交近攻というわけですね。

“弱み”こそ日本の強み

ウォーカー:そういうことです。

 私が日本の友人に話すと、彼らが一様に驚くことがあります。“弱さ”こそが日本が持つ強みだということです。

 日本は強い軍隊もインテリジェンスも持っていません。しかし、そのことが日本に多くの強みをもたらしているのです。中東の国々も中央アジアの国々も、日本が災厄をもたらすとは考えていません。日本から多くのものを得ようとも思っていません。

 だからこそ、日本は国際社会に対して、より多くの興味と協力する力を持っていることを示す必要があるのです。その範囲はビジネス上に限られるものではありません。地震など自然災害が起きた時の支援もあるでしょう。教育に関するサポートも可能でしょう。ODA(政府開発援助)も利用できるでしょう。

 例えば、教育分野において、中央アジアの国々を支援することができます。日本の大学は幸いなことに、米国や英国の大学と同等のレベルを備えています。中国の大学と比べても、より高いレベルにあります。真にグローバルな大学とは言い難いですが、それでも中央アジアの大学と比べれば、ずっと国際的です。

 日本はアフリカの国々に対して非常に効果的な戦略を実行しています。リーダーたちを東京に招き、会議をする。同時に、安倍首相がアフリカを訪れ会談する。こうした手法は中央アジアの国々に対してもとても効果的です。

 中央アジアの国々は、カザフスタンやウズベキスタンでさえ個別に見ればそれほど大きな国ではありません。しかし5カ国集れば重要です。チュルク語世界は2億人の人口を擁するのです。

 中東と異なり、この地域ではどの国も新参者です。ロシアの影響力が強く他の国は接することがありませんでした。そして今、中国が力をもって入り込もうとしています。これに対して、我々はなんの行動も起こしていません。だからこそ、安倍首相の訪問というささやかな意思表示であれ、日本が行動を起こすことは大きな意味を持つのです。

12/17産経ニュース 石平 『習主席アジア外交は惨敗』、12/18日経電子版『東南ア、対中包囲網いまだならず  アジア総局編集委員 村山宏』について

中国外交についての2つの異なった見方を挙げました。小生としては石平氏の言うようであってほしいと思っていますが、村山氏の言う部分も合っていると思いました。特に、「カンボジアが中国陣営に留まる限り、ASEANが対中包囲網でまとまることはない」というのはその通りです。南シナ海の領土問題で中国と争っているASEANメンバーはフィリピンとベトナムですが、ベトナムとカンボジアは歴史的に仲が良くありません。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%9C%E3%82%B8%E3%82%A2%E5%86%85%E6%88%A6

ただ、各国は強国に対抗するため、国益・歴史的経緯等を踏まえてでも纏まろうとします。カンボジアも中国の属国になるならいざしらず、独立を望むのであれば、日米寄りにスタンスを変えることもありかと。ミャンマーも中国寄りだったのが、中国の野心を感じ取ることにより、西側世界に近づきバランスを取るようになりました。日本も努力してASEAN諸国に中国の軍事膨張の危険性を説得しなければいけないと思います。

昨日(12/19)のTV「ウエークアップ!ぷらす」で熊谷亮丸が「中国は社会主義経済なので1~2年は持つが、3年後は200兆円の不良債権が出て、バブル崩壊する可能性がある。危ない。」、伊藤聡子も「中小企業で盛り上がっているのは、中国から如何に撤退するかという話題」と言っていました。TVでもドンドン中国経済の危険性についても述べられるようになってきました。ユニクロは将来中国に3000も店を出す(現在387店)と柳井社長が10月決算会見で述べたとのこと。(12/19日経)。売国奴の柳井氏がやる事ですから、自己責任でやればよい。困った時に政府に泣きつかないように。6000億円をCITICに投じた伊藤忠も同じです。ただ、駐在員が人質になる危険性があり、経営者の犠牲になるのは可哀想です。

石平記事

11月19日掲載の本欄で、南シナ海での中国の軍事拡張を封じ込めるために日米同盟を基軸とした「合従連衡」が形成される一方、中国はアジア諸国を個別に取り込む「連衡策」をもって対抗する、というアジア外交の構図を論じた。その前後の一連の動きを見れば、この「合従連衡」のゲームに敗れたのが中国の方であると分かる。

 11月5日から6日にかけての習近平主席のベトナム訪問はその一例である。5日にハノイに着いてから、習主席はベトナムの首脳たちと次から次へと会談をこなし、相手のことを「同志」とまで呼んで「関係の改善」を訴えた。

 しかし訪問中の6日、同じハノイにおいて、ベトナムのフン・クアン・タイン国防相は来訪中の日本の中谷元(げん)防衛相と会談し、南シナ海の要衝であるカムラン湾の海軍基地に海上自衛隊の艦船を寄港させることで合意した。

 習主席を貴賓として迎えている最中に、ベトナムは中国に対抗するための日越軍事連携を堂々と進めた。中国に対する「配慮」の気持ちはみじんもないやり方である。このベトナムに翻弄され、恥をかいて帰国の途に就いたのは習主席の方だった。

 そして11月21日からマレーシア首都のクアラルンプールで、東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本、アメリカ、中国などの18カ国の首脳が一堂に会した「東アジアサミット」が開催されたが、それもまた、中国にとってのアジア外交惨敗の場となった。

 まずは21日、米国とASEAN諸国との首脳会議が開かれた。会議後の共同声明には「南シナ海における航行の自由を保障することの重要性」が明記された。22日の東アジア首脳会議では、「親中派」といわれるカンボジアとミャンマーを除く、すべての国々が、南シナ海における中国の埋め立て・人工島造成の問題を提起して、中国批判の声を次から次へと上げた。

 そして24日、東アジアサミットは首脳会議の結果を受けて議長声明を発表した。中国による人工島造成で緊張が続く南シナ海情勢について、声明は「航行の自由」の重要性を再確認するとともに、「一部首脳が表明した深刻な懸念に留意した」と中国の動きを強く牽制した。

 その結果、少なくとも南シナ海問題に関しては、アジアにおける中国の孤立は決定的なものとなった。今月に入ってからも、習政権にとっての衝撃的な出来事がアジアで次から次へと起きた。

 まずは7日、カーター米国防長官とシンガポールのウン・エンヘン国防相が会談し、防衛協力の拡大で合意した。同時に、米軍のP8対潜哨戒機を3カ月に1回程度の割合でシンガポールに配備することを決めた。

 米軍哨戒機の配備は当然、南シナ海における中国の動きを監視する目的である。中国からすれば、それは要するに、伝統的な友好国であったシンガポールが「寝返り」、アメリカの中国包囲網に加わることであった。習主席自身が11月にシンガポールを訪問したばかりなのに、中国政府の挫折感はさぞかし大きかったのではないか。

 そして8日、南シナ海問題とは関係がないが、韓国海軍が中国船に警告射撃を行う事件も起きた。今、中国ともっとも親密な関係にあるはずの韓国までが、習政権のメンツを丸潰れにする、このような行動を取ったのだ。

 ここまで来たら、アジアにおける中国の立場はもはや四面楚歌に近い状況であろう。それは、習政権が進めてきた覇権主義的拡張戦略の必然的な結果だ。

 中国の古典には、「得道多助、失道寡助=道義にかなった者には助けが多く、道義を失った者には支持が少ない」という有名な言葉がある。習主席はそれを暗唱でもしながら自らの行いを反省してみるべきではないか。

日経電子版記事

 11月後半に開かれた東アジア首脳会議では中国と周辺国との対立が深まる南シナ海問題について「懸念」が示された。これをもってASEAN(東南アジア諸国連合)の外交スタンスが中国配慮から日米寄りに傾いているとの見方が広がった。東南アジアではミャンマーの中国離れが進むなど、対中包囲網が強まっているように映る。だが、東南アジア各国の政治状況を子細に見ていくと、逆に中国が攻勢に転じている局面が浮かび上がる。

 11月8日のミャンマー総選挙でアウン・サン・スー・チーさんの率いる野党・国民民主連盟が圧勝したが、これは対中包囲網論者にとって朗報だろう。ミャンマー政権は民主派への弾圧から欧米の経済制裁を長く受け、経済は中国に頼らざるを得なかった。一方で中国企業のミャンマーへの怒とうの進出は現地住民の反発を呼んでいた。欧米とのパイプの太いスー・チーさんらの民主派政権が来春に誕生すれば、中国離れが進むとみられる。

 世論を意識してか、テイン・セイン現政権ですら昨年、中国・昆明からミャンマーを通ってインド洋に達する鉄道敷設を中止したほどだ。中国の海洋進出を抑えようと、日米は東南アジア諸国を中国の影響下から切り離し、対中包囲網を形成しようとしてきた。この流れに沿って日本もミャンマー南部のダウェー経済特区の開発に協力している。ミャンマーが日米陣営に近づけば、陸からインド洋に向かう中国の海洋進出に待ったがかかる。

 しかし、東南アジアでは中国に不利な出来事だけが起こっているわけではない。

筆者が注目した記事
・11月25日 AFP「中国に接近するタイ、初の空軍合同演習」
・11月24日 日本経済新聞朝刊5面「火力発電関連会社、中国に売却」
・11月17日 日本経済新聞朝刊7面「カンボジア野党党首、議員剥奪」
・10月17日 じゃかるた新聞ウェブ版「メガ氏 習主席と会談 海洋分野 協力関係強化で一致」

■中国寄りの政権も

 タイは昨年5月のクーデターで民主政権から軍事政権となり、米国との関係がぎくしゃくし始めた。プラユット首相らタイ軍政は代わりに中国との関係を深めている。中国から逃れてきたウイグル族を7月に中国に送還、11月にも中国の反政府活動家2人を送還した。中国からの潜水艦の購入計画が一時浮上したほか、11月には中国との初の空軍合同演習に踏み切った。高速鉄道の敷設では日本だけでなく、別路線で中国もパートナーに選んでいる。

 インドネシアも昨年10月に発足したジョコ・ウィドド政権が中国との関係を深めている。インドネシアの高速鉄道敷設では中国が日本に逆転勝利した。中国接近はジョコ大統領を支える与党、闘争民主党が中国寄りのためとされる。党首は元大統領のメガワティ氏。スカルノ初代大統領の娘だ。中国に近かったスカルノ大統領は1966年に軍内の反共グループの台頭で失脚したが、娘のメガワティ氏は父親の中国人脈を受け継いだようだ。

現地邦字紙、じゃかるた新聞によると、10月に中国を訪問したメガワティ氏は習近平国家主席と会談し、海洋協力の強化で一致した。メガワティ氏はさらに中国・深圳で「スカルノの家」の起工式にも出席したという。闘争民主党は与党だが、議会では少数派にとどまる。ジョコ大統領自身は親中でも反中でもないとされるが、ただでさえ難しい議会運営を乗り切るためには、メガワティ氏ら中国寄りの与党政治家に配慮しなければならない。

 マレーシアの態度も微妙だ。中国は11月の東アジア首脳会議のさなかに、資金繰りの悪化したマレーシアの国営投資会社、1MDBを救済する案を同国に持ちかけた。すぐさま中国の原子力発電会社、中国広核集団が1MDB傘下の火力発電会社を98億リンギ(約2800億円)で買収することで合意した。1MDBはナジブ首相に巨額の資金を送った疑惑が浮上しており、窮地に陥ったナジブ首相に中国は手を差し伸べたのだ。マレーシアは南シナ海問題で日米になびくとの観測もあっただけに、中国はすかさず阻止に動いた格好だ。

■カギ握るカンボジア、首相の強硬策

 東南アジア全体の対中姿勢を占ううえでカギを握るのはカンボジアの動向だ。フン・セン首相は親中派の筆頭格とされ、ASEANの重要会議では中国に不利な案件をつぶす役割を担ってきた。ただ、カンボジア国民は30年以上続く現政権に飽いている面もあり、18年の総選挙では野党・救国党の勝利も取り沙汰されていた。救国党のサム・ランシー党首はフランスに亡命していた経緯があり、欧米寄りに外交も転換するとの期待もあった。

 こうした情勢を見越し、フン・セン首相は強硬策に打って出た。11月にカンボジア国民議会はサム・ランシー氏の議員資格と不逮捕特権を剥奪すると発表し、同氏の国内での活動を封じた。サム・ランシー氏の個人的人気に支えられた野党の勢いをくじき、選挙を有利に進めようという与党側のもくろみだ。カンボジアが中国側にとどまるかぎり、ASEANが対中包囲網でまとまることはない。

 日米と中国による東南アジア各国の取り込み合戦は一進一退を続けており、どちらが有利とは一言ではいえない。グローバル経済の時代に地政学的な陣取り合戦をする是非はひとまず置くと

しても、対中包囲網と言うにはほど遠いのが実情だ。情報分析では「自らに有利になるように情報を取捨選択をしてはならない」という鉄則があるが、日本は東南アジア情勢になると自らに都合のよい情報に引かれがちだ。ここに挙げた関連記事は日本では大きく取り上げられていないが、日米と中国との力関係を考えるうえでいずれも見過ごせないものばかりだ。

12/18日経『韓国、裁判所に異例の善処要請 産経前支局長無罪 対日関係に配慮』について

加藤前支局長は『「当然の判決だ。感慨はない」、記事に公益性があることは明らかで、「検察は起訴すべきでなかった」、加藤氏の記事を韓国語に翻訳し、加藤氏と同様に名誉毀損で告発された韓国メディアに対する捜査は途中で立ち消えになったと指摘し、「日本の産経新聞記者である私を悪意を持って狙い撃ちにしたのではないか」と疑念を表明した。』とのこと。

当然のことです。駐米特派員がオバマ大統領の出生に絡む大統領資格への疑念について日本人向け日本語で報道したとして、それが名誉棄損だとしてオバマ大統領が訴えますか?男女の仲よりこちらの方が余程深刻でしょう。少し考えれば誰でも分かります。韓国は中国同様、法治国家でなく、人治国家だからできることです。なお、韓国では、『刑法312条1項・2項では、「308条(死者の名誉毀損)の罪は、告訴に基づいて公訴を提起することができる」、「307条(名誉毀損)と309条(出版物などによる名誉毀損)の罪は、被害者の明示した意思に反して、公訴を提起することができない」と、各々規定しており、名誉に関する罪を親告罪として規定している。』とありました。親告罪とすれば、朴大統領が公訴を認めなければ、検察も起訴できなかったはず。(九大法学103号(2011年)   (143) 韓国におけるメディアによる名誉毀損に関する研究― 政治家及び高位公職者に関する名誉毀損訴訟を中心に ―朴 容 淑 より)。如何にデタラメな法運用をしているかという事です。しかし、12/18ZAKZAKには「韓国では法律上、第三者が名誉毀損で告発できるためだ。朴大統領への名誉毀損で加藤前支局長を告発したのは右翼団体のリーダーらだった。日本を含む多くの国は、「被害者本人が告訴しなければ名誉毀損で起訴できない」という親告罪を適用している。」とありました。どうも親告罪ではないようです。でもどちらにしろ裏で朴の意思が働いていたと思います。

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20151218/frn1512181145004-n1.htm

小生としては、加藤前局長には申し訳ありませんが、有罪となり、入獄することにより韓国の異質さを国際社会にアピールして貰った方が良かったのではと思っています。彼の面構えからして、従容として赴くと思います。まあ、裏でアメリカの圧力があったのではと思っていますが。まだ控訴の道が検察には残っていますが、アメリカの圧力に負けたのであれば控訴は無いでしょう。

外務省も今回はまともに「慰安婦問題の立場は従来と変わらない」と言っています。その立場を是非堅持してほしい。そもそも、下の図にあるように問題は5つあって、その1つが解決したと思われる(控訴の可能性あり)だけです。▲10点だったのが▲8点になっただけ。まだ0点までに道が遠いです。従軍慰安婦・強制徴用問題は中国・北朝鮮・韓国と朝日新聞・日本共産党・日教組がタッグを組んで日本貶めのための陰謀と思っています。竹島問題はGHQ統治時代に日本が手を出せないのを見込んで、李承晩が火事場泥棒的に盗んだものです。水産物の輸入問題は、「東日本大震災をお祝いします」というような民族ですから、日本への嫌がらせでしょう。日本の暴力団には在日が多いと言われていますが、中国同様国家が暴力団です。靖国爆破犯は神をも恐れぬ所業です。宗教的テロリストと一緒です。また、横浜韓国領事館での在特会名義での糞入りギフトを送ったのも彼らの自作自演でしょう。(在特会は公式に否定)。日本には糞に拘る文化はありません。近代以降衛生観念が発達してそれに触れたくない気持ちの方が強いです。中朝韓独特の文化でしょう。2001年、中国の趙薇が中国のファッション誌「時装」のグラビア撮影で旧日本軍の旭日旗をデザインしたワンピースを着用した事で、公演中に観客から糞尿をかけられた事件を思い起こせさせます。

Korea's celebration for Japanese earthquake

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Zhao Wei

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

記事

【ソウル=峯岸博】産経新聞の加藤達也前ソウル支局長の17日の無罪判決に先立ち、韓国外務省は検察を通じて裁判所に日韓関係を考慮し善処を求める異例の要請をしていた。朴槿恵(パク・クネ)大統領がこだわる従軍慰安婦問題の早期妥結に向けて安倍晋三首相の決断を促す狙いがある。

South Korean issue

 「韓日関係改善の兆しがみえる。18日は韓日基本条約発効50周年であると勘案し、日本側の要請を真剣に考慮する必要がある」。ソウル中央地裁の裁判長は判決を下す前に韓国外務省から数日前に届いた公文を読みあげた。検察の求刑が懲役1年6月と厳しかっただけに、無罪判決に韓国でも驚きの声が上がった。

 検察が控訴するかはまだ決まっていないが、韓国外務省当局者は「負担が取り除かれたことで韓日関係改善の契機になると期待する」と語った。韓国メディアも判決結果を対日外交への影響から肯定的に伝えている。

 韓国政府はこの問題への対応次第で日韓修復が勢いづくか、逆戻りするかの分水嶺になるとみていた。4月に韓国政府による出国禁止措置が解除されて帰国した加藤氏を安倍首相が翌日に面会したことで首相の思い入れを感じとったためだ。米国内でも「報道の自由を制限している」との批判が韓国に向けられた。

 

 

Chief correspondent Kato

 

 

 

 

判決公判を終え、記者会見する産経新聞の加藤達也前ソウル支局長(17日、ソウル市内)=共同

 日本の有力議員は11月から韓国側に「宣告猶予」を働きかけてきたという。裁判所が有罪を認定したうえで刑の宣告を猶予し、2年間、別の件で有罪判決を受けなければ有罪判決自体が消滅する制度だ。フタをあけてみれば日本側の主張に沿った無罪判決だった。

 大統領府に近い専門家は「朴大統領は今年中に日韓関係を良くしたいとの気持ちが強い。政治の意思が入った判決だ」と話す。韓国は来年4月に総選挙を控え、年明け以降は歴史問題を処理しにくくなる事情がある。

12/16日経ビジネスオンライン 福島香織『盗みは人のためならず 中国庶民的泥棒「予防心得」十箇条』について

一昨日のNHKの7時のニュースで明年1月の台湾総統選についての報道があり、直近の世論調査によれば台湾人意識を持つ人は6割、中国人と思う人は3%という事でした。残りの人についての言及がなかったので、「中国人&台湾人」、「中国人でも台湾人でもない」「分からない」という選択肢があったのかどうか?でも純粋に中国人と思っている人が3%とすると、馬総統のように中国に擦り寄る政策は採れないでしょう。国民党の衰退の始まりです。もし、後々国民党が政権をとったら台湾も米国同様、総統弾劾制度を活用すれば良いと思います。

しかしNHKを始めとする日本のメデイアは狂っています。南三陸町病院の再建で台湾が総工費の4割近くを寄付して下さったのに何も触れないとは。多数の日本国民は知らないでしょうね。

Sumio Yamagiwa Taiwan's donation

日経夕刊に宮本雄二元中国大使の記事が載っていますが、彼は福島氏のような実態を知らず、綺麗ごとだけ書いているとしか思えません。読者をミスリードするのでは。エリートと言われる人間の弱さでしょう。一番大きく騙されているタイプです。12/15記事を下記に記しますので、福島氏の記事と比べて見て下さい。騙される方が馬鹿の典型と思えます。「中国の友人が崇拝してやまない西郷隆盛の言葉も「敬天愛人」である。」と書いて中国人の多数がそうと思わせる刷り込みをしている気がします。勿論友人という限定詞ではありますが。ただ友人と言えば相手もそれなりのエリートでしょう。中国で上へ行くには血脈と人脈と詐術が必要です。その友人はこの記事を読んでほくそ笑んでいるかもしれません。

「性善説と性悪説 元駐中国大使 宮本雄二

小林陽太郎氏が亡くなられた。氏の人となりにかねがね敬意をいだいていた私は、その評伝に付された「『性善説』の経営者」というサブタイトルに納得した。人に対する信頼と期待を持ち続けた方だと感じていたからだ。最近、岡崎嘉平太氏のことを少し学ぶ機会があった。氏の言説には、公平なまなざしと相手に対する深い思いやりを感じた。その評伝のサブタイトルも「信はたていと 愛はよこ糸」であった。中国の友人が崇拝してやまない西郷隆盛の言葉も「敬天愛人」である。やはり人に対する慈しみに貫かれている性善説の世界なのだ。人間社会の現実は、醜くて汚い。しかし、それにもかかわらず人に対する信頼を持ち続けた、こういう先達たちの存在は、一服の清涼剤であり、希望を与えてくれる。

 だが性悪説が古くから多くの人たちに支持されてきたのも事実である。確かに人間はそういう側面を持つ。だから会計法規や安全保障の考え方は、人は悪いことをするという前提に立ち、それを予防するというものになる。ところが、人間に対する悲観的な見方ばかりが跋扈(ばっこ)したのでは、人類の未来は暗い。人間の悪い面を抑えこむことには成功するかもしれないが、良い面を引き出すことはできないからだ。つまり楽観的な未来を思い描くことは不可能となり、進歩への憧憬も消えてしまう。これでは困る。

 考えて見ればこの世に絶対的な悪人も絶対的な善人も普通はいない。一人の人間が両面を持ち合わせている。結局、人間社会をどう見るかの問題となる。先達にとり性善説かどうかは、つまるところ自分の生きざまの問題だったのではないだろうか。私自身迷いながら、そう思う、昨今である。」

何時も言ってますように、中国人の基本的価値観は「騙す方が賢く、騙される人が賢い」というのを福島氏の記事は裏付けます。愚かな日本人は人種差別とか言って騒ぎますが、実態を見ないで判断することこそ危険です。自分の目で確かめもせず、理念だけで偉そうに他人を批判する資格はありません。少なくとも今の時代、大手メデイアだけでなくネットで玉石混交ですがいろんな情報が取れますので。福島氏と宮本氏の記事を比較して読めばどちらが真実に近いかは一目瞭然でしょう。

記事

師走、北京に来てみると、ずいぶん治安が悪くなっていた。私の周辺で、かっぱらいやコソ泥に遭った人が続出している。昔から中国は小偸(コソ泥)が多かったが、それでも首都の北京は比較的安心して夜道を歩くことができた。だが、最近は北京も安心ではない、という。経済状況が9月ごろから肌身に感じるように悪化し、年末が近くなったからだ。

「歩きiPhone」「地下鉄X線検査」は要注意

 毎年、年末や春節前になると泥棒、強盗、空き巣、かっぱらいは増えるのだが、今年は本当に景気が悪いものだから、特に増えているとも聞く。iPhone6を耳に当てながら歩くなど、もってのほか。車道を走る車の窓から手を伸ばして、iPhoneをひったくられた、という知人もいた。

 あと気を付けるべきは、地下鉄のX線検査だという。北京市の地下鉄では、テロ予防を理由に、地下鉄での持ち物検査が厳しい。またPM2.5がひどいので、自動車のナンバープレート制限や高速道路封鎖などの影響もあって、地下鉄が混雑しやすい。X線検査のベルトコンベヤーに荷物を置いて、出口に回って取り上げようとすると、荷物が出てこない。後ろに並んでいた男がその荷物をかっさらって、混雑に紛れて逃げてしまっていた、といった被害に遭った人もいた。

 ちなみに、泥棒被害は、警察もあまり相手にしない。例えばかっぱらいに遭って、地元の派出所の警察官に、「カバンの中に1万元入っていた」と被害を訴えても、たぶん取り合ってくれない。その1万元はどこから来たのか、何か証明ができるものがないと、被害届すら受け付けてくれない。それどころか、なぜおまえのような貧乏人が1万元も持っている、と逆訊問にあって、面倒なことになることもあるとか。だから、代わりに民間の”探偵”や”調査事務所”、”セキュリティ会社”のようなものに頼むのだが、こういう人たちはむしろマフィアとつるんでいたりするので、やることがなかなか暴力的であったりする。

 では、そういう中国で泥棒犯罪を予防するにはどうすればよいか。そう問われたとき、私は『盗みは人のためならず』という小説を読むといいと勧めている。赤川次郎のミステリ本のことではない。中国当代きってのユーモア小説家・劉震雲の人気小説「我叫劉躍進」(俺は劉躍進)の邦訳が最近、友人の水野衛子さんの訳で彩流社から刊行され、その邦題が『盗みは人のためならず』なのである。この本を読めば、中国人の泥棒の生態、人を騙すときの情理が分かる。今回の当欄は、ちょっと書評風となる。

劉躍進とは、主人公の名前だが、毛沢東の「大躍進」があった1950年末から60年代初めに生まれた中国人に非常にありふれた名前であり、中国庶民を代表する名前と言っていい。日本風にいえば団塊の世代か。作者の劉震雲は1958年生まれ、まさしく大躍進時代生まれのこの世代を代表する作家で、実際、親族に同じ名前の人物がいるという。

こずるいようで、どこか抜けている庶民の情理

 原作は2007年に中国で出版され瞬く間にベストセラーとなりドラマ化、映画化された。なぜ大ヒットしたかというと、この小説こそ、中国人と中国社会というものが描けていると読者が思ったからだろう。

 簡単にあらすじをいえば、中国人の典型である、こずるいようで、どこか抜けている善良な河南省出身の工事現場のコック、庶民・劉躍進がうっかり大金と大事な借用書が入ったウェストポーチを小偸・楊志に盗まれる。楊志はそのあと、甘粛省の美人局グループに騙されて、劉躍進のウェストポーチを奪われる。楊志は奪った美人局グループの行方を負うのだが、訳あって、その過程で汚職高官の賄賂受け渡しと性接待の証拠画像が入っているUSBの入ったカバンを盗んでしまう。だが逃亡途中でそれを捨て、劉躍進が偶然拾う。このUSBを高官や賄賂を贈った実業家たちが取り戻そうと、泥棒組織、民間の調査員、警察を巻き込んでドタバタ喜劇が展開される。

 登場人物たちはほぼ全員、嘘つきで、自分勝手で、浅はかで、あるいは泥棒で、あるいは汚職官僚や悪徳実業家だ。借金は踏み倒すのが普通だし、厳しい取り立てに遭えば、嘘をつくし、経費をちょろまかす。だが彼らが悪人かというとそうではない。プロの泥棒たちにとっては、泥棒は立派な職業であり、縄張りがあり、秩序がある。嘘をつくのは悪意ではなく、見栄や調子に乗ってうっかりついてしまったり、つかざるを得ない事情がある。中国の低層社会をそれなりに知っていると、これこそ普通の中国人、と思うだろう。

 日本人が「中国人は嘘つきだ」「中国人は泥棒だ」というと「ヘイト表現」と批判されるかもしれないが、中国人自身が、中国の低層社会において、嘘つきであることも、泥棒であることも、それなりの理屈があり、それなりの正当性を持つ行為であり、一種の生態であることを理解している。数千元の金のために嘘をつき、泥棒をし、時に暴力を振るう下層社会のプロ泥棒たちも庶民も、そう悪く見えないのは、巨額の賄賂をやり取りし、それをもみ消すために、交通事故を装って殺人を犯す高級官僚の世界が平行してあるからだ。だが、コックの主人公が食材費をちょろまかして小銭を貯める行為も、高級官僚がその地位を利用して行う汚職も実は同じ情理で行われていることも、この小説は描き出している。

冒頭のテーマに戻るが、中国に来て、泥棒など小さな犯罪トラブルに巻き込まれないようにするための心得事として、低層社会の中国人の生態をよく理解しておくことが重要だろう。この小説の中からいくつかくみ取ってみよう。

劉震雲作品に学ぶ中国防犯十箇条

①路上で出会う「清純そうな女性」の売春はたいてい組織的美人局(強盗)である。本当に清純な女性は売春しない。

②泥棒には出身地別の集団や縄張り、特性がある。泥棒に盗まれたものは警察に届けても返ってくる可能性はほぼゼロだが、泥棒の行方や住処などは、その地域の集団の人脈を熟知している地元の調査会社ならば、たどり着くことがある。

③借金はよほどうまく取り立てないと返してもらえない。強引に取り立てると、逆切れされることもある。だが、催促しないと決して返ってこない。

④夫婦の間でも親子の間でも騙し合いやスパイ行為、裏切り行為がある。愛や信頼は金銭によって維持される。

⑤民間の調査会社調査員の中に警官が混じっていることがある。潜入捜査は普通にある。

⑥中国では人脈が大事だが、その人脈の維持には金と暴力が必要なことも多い。

⑦物事を順序立てて説明するのが苦手な人は、激高したり、その果てに失神したりすることが割とある。

⑧泥棒でも不倫でも被害者は同情されるより馬鹿にされる。騙される方が悪い。

⑨従業員の経費などの”中抜き”は、ずるいのではなく要領がいいということであり役得である。同じ理屈で官僚になると賄賂を受け取る。

⑩どんな善良な人間も、相手にスキがあったりチャンスに恵まれると、泥棒になることもあるし、ゆすりたかりを行うこともある。そして嘘をつくことは悪いことでもなんでもない。

以上のことは私自身が北京駐在時代にいろいろ経験したことと合致している。例えば、信頼していたビジネスパートナーから、出張中に会社を奪われた実業家が、泥棒・マフィアネットワークを使って相手を見つけ出し、警察ではらちが明かないと、部下に拉致監禁暴行させて盗まれた会社を取り返そうとしたところ、相手側の政治的なバックがより強大だったため、結局、拉致監禁傷害罪で刑務所に入ったケースを取材したことがある。

 本人に言わせれば、泥棒という犯罪者は相手で、自分は冤罪逮捕起訴された善良な市民だ。だが、彼はやはり、盗まれたものを取り返すために、その解決を警察に頼らず、暴力と金に頼ったのだ。日本なら彼は立派な犯罪者だが、中国ではそんなことはありがちであり、彼こそ普通の中国人であり、彼の逮捕は”災難”だ。

「本当に悪い奴ら」はもっと「上の方」に

 小説の結末は、タイトル通り、盗みは人のためならず、己のためにやるのだが、その報いもまた自分に返ってくる。だが、盗みをやらざるを得ない庶民の事情がある。フェアな司法ではなく、金と権力を持つ者が支配する社会で庶民はなけなしの知恵と人脈を使ってこずるく生き抜こうとした結果として、嘘をついたり、泥棒をしたり、ゆすりや詐欺を働いたりする。それがなぜ悪いのか。中国では嘘つきも泥棒もむしろ善良な市民の部類に入る。本当に悪い奴らはもっと、上の方にいて、小説の結末とは違って、なかなか成敗されないのだ。

 日本人がもし、中国に旅行や仕事に来るならば、まず、中国の低層社会で嘘や泥棒はさほど悪ではなく、被害に遭う方が脇が甘いと馬鹿にされるのだということは知っておくべきだろう。かばんの蓋をあけて財布やスマートフォンが見える状況で電車やバスに乗らないとか、見知らぬ美人が親し気に話しかけてきたら警戒するとか、そういう基本的な点は当然押さえてほしい。で、もし親しいと思っていた中国人に騙されたり嘘をつかれたら、中国社会のいびつさを思い描いて、なるほどこんな社会で生き抜くには、少々人も悪くなければ難しいだろう、と考えることだ。世界で、性善説で人と付き合うのは日本人ぐらいなのだ。

12/9JBプレス 古森義久『少しずつよい方向へ動き出した慰安婦問題 日本にとって事態が好転、その5つの根拠とは』について

「慰安婦問題で日韓局長会議を続けているが、朴大統領の要求した年内決着は無理」と言うのが12/16日経に載っていました。当たり前です。強制連行何て事実とも異なり、日韓基本条約で解決済の問題をグダグダ討議する方が余程おかしいです。日本の外交も椅子を蹴って退席してくるくらいの交渉をしなければダメでしょう。いつまでも甘やかすからつけあがるのです。ましてや相手が幻想・妄想で生きている民族となれば猶更でしょう。現実を見さしてやらねば。スマホ部材の輸出を止めれば韓国は一発で干上がります。日本の外務省は武器なし(というか戦う材料も探さない無能集団)で戦っているようなものでしょう。加藤産経ソウル支局長の裁判、靖国爆破事件の出国時検査の甘さ等突っ込みどころは一杯あるでしょう。テロ支援国家と国際世論に訴えるのが良いでしょうが、鼠男が国連事務総長をやっていて、ネポテイズムの塊の男なので期待できません。返す返すも日本の政治家はバカが多く残念という気がします。事務総長選の時に日本も推薦したのですから。翻ってそういう政治家を選んだ国民が悪いことになります。

古森氏の言われるように慰安婦問題について政府が褌を締めてかからないと、軍艦島の強制徴用の問題のように足元を掬われます。無能の外務省がネゴするのでとてつもなく心配です。今回の件も結局、政府が米国を動かしたというよりは民間が動かしたという事です。小生も目良浩一氏の訴訟にいくばくかの寄付をしております。本来、官房機密費はこういう時のために使うものでしょう。いくつかのフィルターを通して出所が分からないようにすれば良い。世界ではどこでもやっているでしょう。こういう所に役人の地頭(じあたま)の良さが問われるのに。

記事

慰安婦問題はいまどうなっているのか――。

 11月の日韓首脳会談で「日韓関係改善の最大の障害物」とされた慰安婦問題はその後、どうなったのか。この問題の背後で重要な役割を果たしてきた米国はどのように認識しているのか。私がふだん駐在する米国の首都ワシントンから見る限り、きわめて少しずつではあるが、慰安婦問題は日本側にとって有利な方向へ動き出している。

 以下では、事態が好転していることの根拠を5点ほど報告したい。

歴史学者たちの抗議声明に反論

 第1は、米国歴史学会(AHA)の機関誌『歴史展望』(Perspective on History)12月号に日本側の学者50人の反論が掲載されたことである。

『歴史展望』は今年3月号に、米国の歴史学者20人による「日本の歴史家に連帯して」と題する日本外務省への抗議声明を掲載していた。その抗議声明に対する反論である。

 米国側の歴史学者を主導したのは、慰安婦問題で長年日本を糾弾してきたことで知られるコネティカット大学のアレクシス・ダデン教授だった。ダデン教授らは、米マグロウヒル社の高校教科書の慰安婦記述の間違いを正そうとした日本外務省を非難していた。

その教科書には、慰安婦について「日本軍が強制連行」とか「20万人の性的奴隷」「天皇からの贈り物」などという根拠のない記述があった。日本外務省は当然のことながら、マグロウヒル社に訂正を求めた。だが、ダデン教授らは「米国の教科書の内容への日本政府の不当な干渉であり、検閲だ」と抗議したのである。

 それに対して日本側では、大阪市立大学の山下英次名誉教授や東京大学の小堀桂一郎名誉教授ら50人の学者がダデン教授らの主張を正面から否定する声明を『歴史展望』に送り、掲載を求めていた。『歴史展望』には当初その掲載を渋る様子もあった。だが、12月3日発行の最新号にようやく掲載した。反論の内容は「米国の歴史家は日本政府に対する抗議声明を出すよりも、米国の歴史教科書の内容の妥当性について、全面的な検討作業を開始するよう米国内で働きかけ、自分たちもその方向で行動すべきだ」という骨子だった。

 日本側の歴史学者たちが慰安婦問題について連名で反論を投稿し、米国の紙誌に堂々と掲載されたことはこれまで前例がない。米側の歴史学者全般にその反論が幅広く行き届くことが期待される。

韓国人学者の起訴に日米の学者が抗議

 第2は、韓国当局が慰安婦問題の書『帝国の慰安婦』の著者、世宗大学・朴裕河教授を名誉毀損罪で起訴したことに対して、米国や日本の学者54人が抗議声明を発表したことである。

 11月26日に公表されたこの抗議声明には、日本の大江健三郎氏、上野千鶴子氏らのほか慰安婦問題に関する日本政府の主張に反対してきたハーバード大学のアンドリュー・ゴードン教授やジョージ・ワシントン大学のマイク・モチヅキ教授も名を連ねた。

『帝国の慰安婦』は慰安婦問題に関して日本政府を非難しながらも、「日本軍と慰安婦たちは同志的な関係にあった」などと書き、日本軍の強制連行も朝鮮半島においてはなかったという立場を示していた。韓国政府は、その内容が韓国側の当事者らの名誉を傷つけたなどとして刑事訴追の措置をとった。

年来の日本糾弾の急先鋒のダデン教授らは、韓国政府を非難する声明には加わっていない。だが、「日本軍による集団連行はなかった」という立場をとる韓国人学者を擁護する声明が米国で出てきたことは、慰安問題についての米国側の事実認識にヒビが入ってきたことを意味するといえる。

日本糾弾の主張から消えた「強制連行」という言葉

 第3は、朝日新聞の大誤報訂正に象徴される慰安婦問題の虚構部分が、米国の専門家たちにボディブローのように伝わり始めたことである。

 米国の“左翼系”歴史学者たちは長年「日本軍が組織的に約20万人の女性を強制連行し、性的奴隷にしたことが慰安婦問題の核心だ」と主張してきた。「慰安婦」というのは、日本の軍隊が政策として一般女性を強制的に徴募して自国将兵たちのための売春行為を強要した国家的犯罪だと断じていたのだ。

 だが、その「国家犯罪」部分の主張が、朝日新聞の記事撤回や、秦郁彦氏ら日本の歴史学者たちの事実提示により虚構だと証明された。「日本軍による強制連行」も「20万人」も「性的奴隷」も証拠がないことが明らかになった。

 そのように事実が明らかになることで、米国の学者たちは主張を変えていかざるをえなくなった。長年、日本叩きの先頭に立ってきた前述のダデン教授でさえも、最近では「強制連行」などの虚構キーワードを使わなくなった。その代わりに「女性の人権弾圧」「女性たち本人の意思に反した」「日本軍の関与」といった表現を使うようになった。日本叩きの主張が後退しているのである。

 ダデン教授が音頭をとって米国、欧州、日本などの学者、活動家の総計500人ほどの署名を集めた安倍政権への圧力文書にも、「強制連行」という言葉は出てこなかった。

米国の裁判や国連で日本側が正面から反論

 第4は、米国や国連の第一線で慰安婦の真実を知らせる日本側の努力が少しずつ米国の国民や国際社会へ伝わり始めたことである。

 全米で最初に慰安婦像が建てられたカリフォルニア州のグレンデール市では、地元在住の日本人、目良浩一氏らにより同市に対する抗議の訴訟が起こされた。訴訟は昨年から今年にかけて連邦裁判所と州裁判所に相次いで出された。いずれも原告側に不利な裁決が出たものの、日本側の主張は米国のメディアでも報じられ幅広く知られることとなった。米国ではそれまで、公式の場で日本側が慰安婦問題について正面から反論することはまったくなかったのだ。

 2015年7月には、国連の女子差別撤廃委員会の準備会合で、慰安婦問題の虚構を正す日本女性の団体「なでしこアクション」の山本優美子代表らが「慰安婦問題は強制連行の事実はなく、反日の政治宣伝に使われている」と報告した。国連の場で日本側がこれほど明確に事実を報告した前例はない。同撤廃委員会の委員長らは「慰安婦問題で異なった主張があることを初めて知った」と述べていたという。

 また、日本国内で2015年10月から口頭弁論が初めて開かれた朝日新聞に対する集団訴訟では、従来の「日本軍による強制連行20万人」という虚構を打破するために在米の日本人100人近くが原告に加わっている。

オバマ政権が韓国に日本との関係改善を要望

 第5は、日本糾弾を執拗に繰り返す韓国にオバマ政権が批判的な姿勢を示し始めたことである。 

 これまで朴大統領は安倍首相との日韓首脳会談開催の前提として「日本がまず慰安婦問題で誠意ある措置をとる」という条件を突きつけていた。そのことに対して今年春頃から、オバマ政権のウェンディ・シャーマン国務次官らが「日韓両国間の安全保障協力を優先すべきだ」という意向を伝え始めた。

 オバマ政権はそれ以前は、慰安婦問題などの歴史認識について日本よりも韓国側の主張に同調する傾向が見られた。だが、それが少しずつ変わってきた。

 その背景には、中国の南シナ海などでの軍事攻勢や理不尽な行動がある。穏健な対中国政策を続けてきたオバマ政権も、ついに対中姿勢を硬化させるようになった。そうなると、東アジアの同盟国である日本および韓国との安全保障面での協力強化が必要となる。日韓両国があまりに距離を置いたままという状況では困るのだ。

 このため、今年に入ってオバマ政権は韓国政府に対して、慰安婦問題などの歴史案件にこだわることなく日本との関係改善に着手することを促すようになった。その新政策を朴大統領に通知する最初の使者がシャーマン次官だったというわけだ。

オバマ政権のこの優先順位の修正に対して、韓国のメディアは激しく反発した。明らかに韓国政府の意向を受けての抗議である。だが韓国政府にとって、自国の安全を保障する米国の意向は大きい。結果的に朴大統領は年来の前提条件を引っ込めて、安倍首相との会談に臨むことになった。この点も、慰安婦問題を好転させる大きな潮流の変化だといえよう。

事態を逆戻りさせてはいけない

 以上のように、慰安婦問題に関して日本にとって有利に見える要因が拡大しているが、米国ではその後も各地で慰安婦の像や碑を建てる動きが続いている。慰安婦像の設置や日本の「残虐行為」を示す博物館などの開設には、韓国系だけでなく、むしろ中国系の「世界抗日戦争史実維護連合会」がより大きな役割を果たすようになった。中国政府と直結した在米中国系組織である。

 米国の歴史学者たちの多くも、朝日新聞の誤報訂正や秦郁彦氏らの指摘を無視するような態度は変えていない。国連でも、虚偽の「クマラスワミ報告」が修正されたり撤回されるという気配はまだない。

 しかし、それでも、米国の学者や中韓両国政府からの「日本軍による強制連行20万人」という虚構の糾弾になんの反論もしなかった数年前までの状況が大きく変化してきたことは間違いない。

 前述したように、今や「強制連行20万」という非難を正面から叫ぶ声はほぼ皆無となった。その代わりに論点をシフトさせた日本非難が述べられるようになった。日本糾弾のこうした質的変質の意味は決して小さくない。攻守が入れ替わったといっても過言ではない。だからこそ今後も日本の官民が一体となって、強制連行などなかったことを主張し続けることが重要である。

 その点で危険なのは、今後の日本政府の韓国に対する対応だろう。慰安婦問題の核心部分について、これまでの外務省のように相手の虚構を決して突かず、「慰安婦問題は解決済み」との主張だけで事態収拾を図ろうとすれば、事態は逆戻りしかねない。そんな危険な陥穽が大きな口を開けているのである。

【訂正】米国『歴史展望』誌に反論を掲載した日本側の学者の名前に一部誤りがあり修正しました。(2015年12月9日)

12/10日経ビジネスオンライン 鈴置高史『核武装して“奴隷根性”を捨てよう 親米派も「今度こそ、米国の脅しは聞かない」』について

朝鮮半島人は被害妄想と誇大妄想とを併せ持った民族でしょう。まあ、ウリジナルを主張しない北の方が南よりマシかも知れません。「事大主義」もそこから出て来るのでしょう。魯迅の阿Qみたいなものでしょう。すぐに他人を羨みますが、自分の心の中でそれらを侮蔑することによってしか心の安寧を得られないタイプです。哀れと言えば哀れですが、韓国は中国同様「息を吐くように嘘をつく」民族だから、世界に悪を為している国と思った方が良い。

「核武装は韓国人の奴隷根性と事大主義を克服する」とか言っていますが、彼らにそんな技術があるのかどうか?自前で衛星を打ち上げられず、原発部品は偽物仕様、兵器はすぐ壊れる等、枚挙に暇はありません。開発中に爆発でも起こしたら、放射能が偏西風に乗って日本にやって来ます。

極悪な連中に取り囲まれている日本こそが核武装しなければならないと思っています。「国と国とにあるのは友情ではなくて、国益のみ」です(英首相パーマストンの『わが英国にとって、永遠の同盟もなければ永遠の敵もない。あるのはただ一つ、永遠の英国の国益のみ』より)。米国との同盟でも、日英同盟が破綻したように、破綻することもありうるからです。サウジがイザとなったらパキスタンから核爆弾を入手できるようにしていると言われていますが、それと同じように日本もインドから入手できるようにしておけばよいと思います。新幹線の1兆4000億円の借款はそれでチャラにしても安全が買えるなら、それで良しとすべきでは。また一方では、米国の関与を深めるためにも「ニュークリアシエアリング」の話を進めて行くべきです。

記事

前回から読む)

 奴隷根性を捨てるためにも核兵器を持とう――。韓国の核武装派は主張する。

北東アジアに恐怖の均衡

前回前々回は、朝鮮日報という韓国の最大手紙が核武装を呼び掛けているとの話でした。

鈴置:この新聞の核武装論には年季が入っています。2013年2月12日に北朝鮮が3回目の核実験をしました。

 その直前に、保守論壇の大御所である金大中(キム・デジュン)朝鮮日報顧問が「北の核実験、見学するだけなのか」(2013年2月5日、韓国語版)を書いています。ポイントは以下です。

  • 北朝鮮が核兵器を放棄することはあり得なくなった。世界も北の核を既成事実として認める方向に向かっている。
  • 可能な対応策は3つしかない。まず、米国など西側が北朝鮮との関係を正常化して国際社会に引き出すことだ。ただ、これは不確かな方法だ。
  • それが難しい場合、一定の国際ルールの下で韓国が核保有することにより、北朝鮮の核の効果と意味を相殺する方法がある。北東アジアを「核の恐怖の均衡地帯」にするということだ。
  • 最終的には「北の核」ではなく「北の体制」を変える発想に立って根源的に解決する道がある。金氏体制の崩壊と統一がそれである。

米日中ロに通告

—北の核武装に対抗するための案は3つあるけれど、1番目と3番目は実現が難しい、ということですね。

鈴置:ええ。従って、直ちにとり得る道は2番目の「韓国も核武装すること」だと金大中顧問は主張しているのです。

 その20日後になりますが、朝鮮日報は朴槿恵(パク・クンヘ)大統領が就任した2013年2月25日の社説「北の核を超える新たな国家戦略が必須だ」(韓国語版)でも、以下のように主張したのです。

  • 北朝鮮から「最終的な破壊」と核兵器で脅迫されている韓国としては、国際協力とは別次元の軍事的・政治的な対処方法を独自に模索するしかない。
  • 国家と国民の保護という厳粛な課題を大統領が実践しようとするなら米日中ロに対し、我々の切迫した必要を満たしてくれない場合には我々自らが解決策をとるしかないということをはっきりと伝えなければならない。

核武装に向け国民大会

—「核武装しよう」と露骨に書いてはいませんね。

鈴置:社説ではっきりと核武装を主張すれば、世界から韓国も北朝鮮と同じ存在と見られ、北に対する核放棄圧力が弱まりかねない。そこで「核武装」との単語は使わなかったのでしょう。

 でも、韓国人が読めば「核武装の勧め」であることはすぐに分かります(「今度こそ本気の韓国の『核武装論』」参照)。社説はともかく、少し前に大物記者が署名記事でそう書いているのですし。

 在野の保守運動指導者、趙甲済(チョ・カプチェ)氏も同じ時期に――北朝鮮の3回目の核実験の日に「韓国も核を持とう」と自分のサイトを通じ国民に呼びかけています。

 その記事は日本語にも訳されました。統一日報のサイトで読むことができます。「国家生存の次元で自衛のための核武装を決断せよ!」(2013年2月12日)です。

 趙甲済氏は国民の強い意思を世界に見せつければ、核は持てると強調しています。その部分を要約します。

核武装すれば国際社会から経済制裁をされると憂慮する人もいる。だが、安保のためには経済的損害を甘受する必要がある。ただ、合理的な論理と法理で世界を説得すれば、制裁は受けない。

北が核を廃棄すれば我々も廃棄することを明確にしたうえ、米国と中国の圧迫に対応できる外交力を強化していくことが奴隷根性や事大主義を克服する道だ。

自衛のための核武装運動は韓国人の奴隷根性と事大主義を克服する絶好の機会だ。我々の生存は我々が決定するとの姿勢で固く団結すれば、韓国社会の弊害のかなりの部分を解決できる。

ソウル市の中心部で数十万人が集まる「核武装要求国民大会」を持続的に開くべきだ。

韓国の核コンプレックス

—核武装と奴隷根性や事大主義が関係するのですか?

鈴置:1970年代に朴正煕(パク・チョンヒ)政権が秘密裏に核開発に動きました。しかし、米国の圧力に屈し計画を放棄させられました。

 今度こそは、大国の命じたままに動く「奴隷根性や事大主義」から脱し、核武装を実現しようということでしょう。

 逆に、核武装さえすれば大国の言いなりになる「奴隷根性や事大主義」を捨て去ることができる、との主張でもあります。

 韓国には日本のような「核アレルギー」は存在しません。被爆国ではないからです。しかし、核を持とうとしてもどうせ大国に脅されるから持てるはずはない、という別の意味の「核コンプレックス」があります。

 約40年前に脅された実体験があるからです。「朴正煕大統領が暗殺されたのは核開発に動いたからだ」との俗説さえ韓国にはあるのです。

もう、米国の言いなりにはならない

 朝鮮日報の金大中顧問も先に引用した「北の核実験、見学するだけなのか」で、以下のように「大国の横暴」を批判しています。

  • 強大国の優越意識丸出しの思考に異議を唱えたい。弱小国や途上国が核を持とうとすると、強大国は「危険性」とともに「核の効率的管理の不在」を指摘した。自分たちは管理できるが私たちには難しいとの理屈だ。

 金大中顧問も趙甲済氏も韓国では親米保守の代表的人物とみなされてきました。金大中顧問は2013年に「二股外交」というコラムを書くなど、一時は米中等距離論を打ち出しました(「保守派も『米中二股外交』を唱え始めた韓国」参照)。が、今では再び、米国との関係が最も大事だと説いています。

 趙甲済氏は「自由と民主主義の理念を共有する米国と手を組むほかない」との主張で一貫しています。

 しかし2人とも、北朝鮮が核武装するというのに韓国には許さないというのなら「今度こそは米国の言いなりにはならないぞ」と宣言したのです。

中国への過剰な期待

—では、2013年の北の3回目の核実験の後に、韓国で核武装要求運動は起きたのですか?

鈴置:いいえ、そんな運動は起きませんでした。韓国では常に大事件が起きていまして、北の核実験もすぐに忘れ去られてしまった感があります。

 趙甲済氏は別の説明――中国説を唱えています。これも当たっていると思います。日本語に翻訳された彼の著書『韓国の自衛的核武装論』の19ページを要約しつつ引用します。

  • 2013年初めから韓国で本格化した自衛的核武装論を米国と中国は真剣に受け止め、韓国政府もこれをカードとした。
  • ところが中国の北韓(北朝鮮)への態度が変わりつつあるとの希望的観測が韓国メディアを通じて広まると、同年夏からは(韓国内の)核武装論への関心が弱まった。

—中国が助けてくれると韓国人は本当に思ったのですか?

鈴置:韓国人は中国に過剰な期待感を抱きます。米国と同盟関係にある韓国の苦境を、中国がタダで救ってくれるわけもないのに。

 中国とすれば、核を失った北朝鮮を米韓が圧迫し崩壊させるリスクも考えねばなりません。下手すれば米軍が軍事境界線を越えて北上し、中国との国境まで来かねないのです。

またしても事大主義

—なぜ韓国人は、そんな過剰な期待を中国に抱くのでしょうか。

鈴置:それに関し、趙甲済氏は続けて以下のように記しています。

  • 長年の事大主義の影響が残って親中的な韓国のメディアと政界は、北の核問題の解決を中国に頼んで解決しようとした。

—またしても事大主義ですか。

鈴置:今度は中国への「事大」ですけれどね。韓国、ことにその外交を分析する時にはこの「事大主義」や、その背景にある冊封体制の歴史を考慮に入れないと、大きく読み違えます。

 例えば、韓国がなぜこれほどまでに中国にすり寄るのか、理解できない米国の外交関係者が多い。彼らは国際政治や外交史を学んではいますが西洋中心で、東洋の国際政治――冊封体制に関する知識は乏しいのです。

 話を戻すと、もちろん中国は「事大主義」に裏打ちされた韓国の過剰な期待に応えてくれませんでした。

 2013年の、朴槿恵政権にとって初の中韓首脳会談でもそうでしたが、中国はことあるごとに「朝鮮半島の非核化」を唱えます。文言が「北朝鮮の非核化」ではないことに注目下さい。

 中国は「北朝鮮の核はなくすべきだ」と言いつつ「北が核を放棄した時には南も核の傘から出るべきだ」つまり、米韓同盟の破棄を暗に要求し続けているのです。

 逆に言えば、韓国が米韓同盟を打ち切る姿勢を見せない限り、本気で北朝鮮の核問題の解決には乗り出さないぞ、ということなのです。

核開発に向け着々

—朝鮮日報が核武装の旗を振っているのはよく分かりました。肝心の韓国軍はどう考えているのでしょうか。

鈴置:軍はこれに関し一切、発言していません。しかし、世界の軍人や安保専門家の間では「韓国の国軍が核武装を検討しない方がおかしい」と言う人が多い。敵国である北朝鮮が露骨に核武装に乗り出しているのですから(「米国も今度は許す?韓国の核武装」参照)。

 ある日本の専門家も「歴代の政権の意思とは関係なく、韓国軍は核武装の夢を捨てていないだろう」と言います。

 1980年代に韓国の国立研究所が国際原子力機関(IAEA)の規約に違反し、申告せずにウラン濃縮の前工程である「ウラン転換」と、核燃料からのプルトニウム精製・抽出をしたことが判明しています。

 2000年にはこれまた未申告で、ウラン濃縮も実施しました。量は微量だったとされていますが、核兵器に使えるほどの濃度だったと報じられました。

 いずれも2004年に明らかになり、日本でも大騒ぎになりました。しかし、IAEAの規約違反に関する国連安保理での論議は避けられ、韓国に対する処分は見送られました。

 当時の国際社会は北朝鮮の核開発阻止に全力を挙げており、それへの悪影響が懸念されたためと見られます。

 一方、核ミサイルを発射できる垂直発射管を備えた大型潜水艦の建造計画が、2013年ごろから韓国で報じられるようになりました。

 例えば、聯合ニュースの「韓国海軍 3千トン級潜水艦9隻を戦力化へ」(2013年8月4日、日本語版)です。なお、韓国の安保専門家の間では少なくとも2000年代から、この計画が語られていたそうです。

歴史への罪

—本当に、核開発に向け着々、という感じですね。

鈴置:米韓原子力協定の改定交渉に関連、やはり韓国は核武装するつもりだな、と専門家から見なされました。ウラン濃縮と使用済み核燃料の再処理の権利獲得に異様にこだわったからです。いずれも核兵器の製造に必須の工程です。

 この協定は1974年に結ばれ、2014年に期限が切れました。2013年になっても韓国の執拗な要求により、改定交渉が進みませんでした。

 そこで2年間、協定の期間を延長して交渉を続け、2015年4月22日に新しい協定の仮署名に漕ぎつけました。そして11月25日に発効しました。

 交渉途中の2014年10月16日に突然、違和感を覚えるコラムが朝鮮日報に載りました。書いたのは楊相勲(ヤン・サンフン)論説主幹です。

 楊相勲主幹は政治部長、編集局長を歴任したエース記者で、常に冷静な記事を書くことで定評があります。金大中顧問が保守論壇の大御所なら、そのプリンスといったところです。

日本は許されたのに

 彼のコラム「韓米原子力協定、歴史に罪を犯すな」(韓国語版)のポイントは以下です。

  • 現在、交渉が最終段階にある韓米原子力協定は、このままでは子孫に足かせをはめることになる。使用済み核燃料の安全な再処理と保管、原子力発電所の輸出に対する規制に加え、原発燃料の安全な確保(ウラン低濃縮)までも新たに規制するというのが米国の立場だ。
  • 米国は日本とは濃縮・再処理のすべてを許す協定を結んでいる。一方、韓国に対してはIAEAが保障した濃縮・再処理の権限まで封鎖しようというのだ。過去、核爆弾を作ろうとしたからと言うが、40年も前の話だ。
  • 我々は米国の政治・経済・軍事の力に対し過度に委縮している。この陥穽から抜け出る意思もなく、米国に道理を説く時間もないのなら協定に署名すべきではない。急ぐ理由はない。歴史に罪を残すな。

無理筋で強引な交渉

—この記事も「米国に委縮するな」と訴えているのですね。

鈴置:楊相勲主幹も親米保守ですが、国の生存がかかった問題だけに絶対に米国と妥協するな、と国民に呼び掛けたのでしょう。

 それにしても楊相勲主幹らしからぬ強引な論理です。米国が日本に濃縮・再処理を認めたのは、協定の締結前から日本がその能力を持っていたからです。

 韓国がIAEA規約に違反しウラン濃縮したのは、この記事が書かれた2014年から見て14年前のことです。40年前ではありません。

 韓国政府はメディアに「我が国は差別されている」と書かせて反米感情を煽り、交渉圧力に活用しようとしました。が、韓国の専門家の中にも「無理筋の交渉テクニック」と評する声がありました。

 というのに楊相勲主幹は「子孫に罪を犯す」との情緒的な表現まで使って、交渉に警鐘を鳴らしたのです。濃縮・再処理の権利をここで得ておかないと、国益を大きく毀損するとの危機感があったに違いありません。

 「一歩踏み出した韓国の核武装論」でも引用したようにこの後、楊相勲主幹は「金正恩も恐れさせてこそ平和を守る」(2015年5月21日、韓国語版)で核武装の必要性を説きました。11月5日には「釜山沖で考えた生存の一撃」(韓国語版)を書いて、原子力潜水艦の保有を訴えました。

軍と保守勢力がタッグ

—何だか、軍と朝鮮日報がタッグを組んでいるみたいですね。

鈴置:証拠は一切ありませんが、心証ではそうです。軍の意向を受けた保守勢力の一部が、核武装に向けコンセンサス作りに乗り出したかに見えます。メディアでは朝鮮日報だけでなく、趙甲済氏ら保守指導者が彼らのサイトで核武装を呼び掛けています。

—結局、新たな米韓原子力協定は楊相勲主幹の願い通りに結ばれたのですか?

鈴置:楊相勲主幹が満足したかは分かりませんが、2015年に結び直した新協定では、韓国は制限付きながら、濃縮と再処理を認められました。

 ウラン濃縮は「条件が整えば」との前提で20%まで可能になりました。案件ごとに米国の同意が必要だった使用済み核燃料の再処理は、一部の工程だけですが既存の研究所で実施するなら同意が不要になりました。

 「新協定で核兵器開発が直ちに可能になるわけではない。しかし、核武装への道を開いたことは確かだ」というのが原子力専門家の一致した見方です。

—今後、韓国の核武装論者はどうやってそれを実現するつもりでしょうか? 米国は認めるのですか? 国民の核コンプレックスは乗り越えられるのですか?

鈴置:それは次回に詳しく分析します。

12/11ZAKZAK 田村秀男『中国が抱える“巨大債務爆弾” たった1年で600兆円も膨れ上がっていた』について、12/9日経ビジネスオンライン 福島香織『人民元「悲願のSDR加入」後のシナリオ 「暴落回避」のための道が、中国を変えるか』について

12/9日経ビジネスオンライン 熊谷亮丸『中国の「バブル」崩壊に備えよ 「メルトダウンシナリオ」の衝撃度は?』の中で、中国は後1~2年は持つとありましたが、そこまで持つかです。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/110879/120400169/

1年間に日本のGDP以上の債務が増えるのは財務の脆弱性を物語っています。企業債務が2000兆円もあると言うのは国際金融資本の謀略の気がします。どう考えても、キャピタルフライトを起こし、元安、中国の債務を増やして、企業を乗っ取るor中国の不動産を取得(共産党が認めるかどうかですが)可能性が高いのでは。ただ中国の会社法には「董事全員一致条項」がありますので、これを変えさせる必要があります。

福島氏の言う「人民元も毛沢東もない元に」というのは共産党統治がなくなるという風に解せますが、それはそんなに早く来ないでしょう。ただ債務が膨大になった時(今でも膨大ですが)、いつデフォルトになって、どのように決着させるかです。戦争になるのか、人民解放軍の資産接収をするのか全く分かりません。

田村記事

Chinese company's debt

米連邦準備制度理事会(FRB)が今月16、17日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利の利上げを決定する。昨年秋の量的緩和打ち止めに続き、2008年9月のリーマン・ショック後から7年間続けてきた事実上のゼロ金利政策を終了する。その対外的衝撃はどうか。  日本の株式市場は「織り込み済み」との見方が強いが、新興国市場のほうでは不安がくすぶっている。特に、あおりを大きく受けそうなのが中国である。  中国の株式市場は6月下旬の大暴落以降、当局による強権によって相場の底抜けを何とか食い止めてきた。FRBは9月にも利上げする予定だったが、中国など新興国市場の動揺を考慮して決定を先送りしたが、米景気の堅調ぶりからみてゼロ金利を続けるわけにいかなくなった。  中国のほうは、習近平国家主席が執念を燃やしてきた人民元の国際通貨基金(IMF)特別引き出し権(SDR)構成通貨入りが実現した。その条件は元の変動幅拡大や株式など金融市場の自由化だが、外国為替制度は当面、元をドルに連動させる管理変動相場制を続ける。これだと米利上げとともに試練に直面する。  米利上げでドル高に向かう。ドル高はすなわち元高となり、中国にはデフレ圧力が加わる。それを避けるためには、元を切り下げる必要があるが、するとワシントンから制裁を受ける恐れが高まる。  共和党の大統領有力候補、ドナルド・トランプ氏は「中国は為替操作国」だとすでに非難しているし、大統領選と同時に行われる議会総選挙を控え、議員の多くが反発しよう。

北京のほうも、元切り下げをためらわざるをえない事情を抱えている。元安となると、巨額の資本逃避が起きる恐れがあるからだ。現に、8月に中国人民銀行が人民元切り下げに踏み切ると、大量の資金が流出した。

 グラフは、中国企業(金融機関を除く)の債務と、企業向け平均貸し出し金利から製品出荷価格の増減率を差し引いた実質金利負担の対比である。最近では、名目の貸し出し金利は4%台半ばで、1年前の6%に比べて下がったものの、製品値下がりのために実質的な金利負担は急上昇してきた。今の平均実質金利は11~12%にも及ぶ。鉄鉱、家電、自動車、建設関連など中国の過剰生産能力はすさまじく、製品価格は12年4月以降、前年比マイナスが続き、しかも減少幅は拡大する一途である。

 支払いが困難になっている企業は、金融機関に債務返済を繰り延べてもらうほか、追加融資を受けている。さらに社債など債務証券を発行して資金調達している。

 この結果、債務は雪だるま式に膨れ上がっている。日本円換算でみると、14年3月に約1500兆円だった債務残高は15年3月には600兆円以上増えた。外貨建て借り入れも増えており、元を切り下げると、その分債務負担がかさむ。

 まさに巨大な債務爆弾である。「国際通貨元」は中身ぼろぼろの「悪貨」なのである。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

福島記事

いよいよ人民元がIMFのSDR(特別引出権)構成通貨に入ることになった。SDRとは世界の主要通貨が構成する仮想の準備通貨であり、IMF加盟国が経済危機に直面した際、加盟国に配分されたこの準備通貨と引き換えにSDRを構成する通貨を融通してもらうことができる。このSDRの価値を決めるのが通貨バスケットだが、2016年10月から人民元は構成比率において米ドル、ユーロに続いて三番目に通貨バスケットに組み入れられることになった。SDR構成通貨は5年ごとに見直されてきた。2010年の段階では、人民元はSDR入りの二つの条件のうちの一つである「輸出額の大きさ」は十分満たしていたが、もう一つの「通貨が自由に取引できる」という条件は満たしていないと判断され、見送りになっていた。2015年の今回、ようやくその悲願が達成されたわけだ。今なお、人民元が自由に取引できるようになったとは到底言い難い状況であるにも関わらず、SDR入りを果たした人民元。これによって、中国経済、そして世界経済はどのような影響を受けるのだろうか。

 主に、中国のエコノミストたちが、どのように考えているかを中心に、考えてみたい。

覇権通貨への道か、ハゲタカの餌食か

 一般に日本メディアでは、人民元SDR加入後のシナリオは二通りが報じられている。一つは人民元が円を超える国際通貨となり、人民元決済や元建て債権が急速に広がり、不安視されていたAIIBの資金調達も順調となり、人民元は世界に拡大。中国は各国への投資を人民元で行い、人民元経済圏が急速に拡大、中国政府は人民元を刷りまくり、その流通量はドルをもしのぎ、やがて米国のドル基軸に挑戦する覇権通貨となる、という予想。

 もう一つは、人民元の変動為替相場制への移行の圧力となり、中国の金融市場の完全なる自由化時代が到来する。ドルにペッグされ、実際の経済実力に比して元高に誘導されていた人民元は自由化が進むにつれて下落し、人民元資産の流出が加速し、中国経済の空洞化が進む。中国政府は、さらに大量の人民元を刷るだろうが、それがさらに元安を誘発し、人民元の価値は地に落ち、ドル建てや香港建ての債務を抱えている中国企業はいよいよ追い込まれ、欧米ハゲタカ金融に骨の髄までしゃぶられる。

 いずれのシナリオであっても、隣国日本の経済にとっては相当の衝撃がありそうだが、では中国のエコノミストたちは、どのように見ているのだろうか。主なものを要約してみた。

まず肯定派の意見から。

「金融大国から金融強国へ新たなスタート」

 「中長期的には、人民元はSDR入りすることで国際化が進むという象徴的意義は非常に大きい。中国は2010年ですでに世界第二位の経済体であり、人民元のSDR入りで、SDR自身が一層のグローバル性と公正性を備えることになる。またSDRに五番目の通貨が加わることは、SDRの安定性にも寄与する。さらに加盟国にとっては外貨準備資産の選択性を増やし、多様な要求を満足させることになるだろう。世界ですでに50以上の中央銀行が人民元を外貨準備に持っている。加えて、SDRの魅力が増せば、人民元も国際通貨発行特権の収益分配にあずかれるかもしれない。  人民元のSDR加入は、それが終点ではなく、中国が金融大国から金融強国になるための新たなスタートラインである。さらに中国自身が金融システム改革と金融市場の効率化を後押しする効果もある。将来、中国は人民元SDR加入を契機に、積極的に外貨準備高の資産バランスを調整し、“一帯一路(中国の陸と海のシルクロード周辺国一体化政策)”と“走出去(対外投資戦略)”のプラットフォームとして、有効かつグローバルな人民元投資貿易決算システム、信用評価システムと金融安全保障システムを打ち立て、中国の国際金融における発言権とグローバル金融に対する影響力を全面的に高めていくことになるだろう」(中国国際経済交流センター 張茉楠副研究員)

 「SDR加入は人民元国際化プロセスの一つの重要な標識である。人民元の為替変動は安定し、リスクも低い。かつ、IMFを満足させるだけの”自由化条件”が進み、世界各国の豊富な外貨準備高を人民元が構成するようになれば、世界の金融リスク軽減に積極的な貢献ができるだろう」  「中国について言えば、対外貿易輸出企業が人民元決済できることによって、為替変動による損失をさけることができるし、また個人の出国時の利便性も向上する。つまり中国は貨幣金融領域において対外開放の突破口を開くことができ、世界の主要経済体に認められるようになるのだ」(中国社会科学院財経戦略研究院 楊志勇研究員)

人民元下落の可能性については楽観的な意見が多い。

「大幅な元安を心配する必要はない」

 「人民元はSDR加入後も、大幅な元安を心配する必要はない。中国の中高速成長は今後も維持されるし、SDRに入った後も、基本、為替制度は変更されない。我が国は比較的貿易黒字であり、外貨準備高も十分であり、人民元が下落し続ける要因はない」  「中国は貨幣政策についてさらに配慮し、規律を厳しくして執行するだろう。つまり人民元はさらに安定し、世界の信用をさらに得る。結果、我々の財布の金が(元安で)目減りするという圧力は減少するだろう。むしろ将来、個人が世界各地を旅行したり、留学したりするうえで、人民元での買い物はさらに便利になるだろう。企業にとっても人民元による対外投資が便利になる」  「短期的には影響はあまりないが、時間が経過すると、人民元のSDR入りの深い意義をさらに感じるようになり、庶民の生活にプラスになることもわかってくるだろう。中国庶民にとってだけでなく、世界の人々にとっても、利点は大きい。東南アジアなど”一帯一路”沿線国家の人々にとっては、人民元の使用がより便利になり、人民元が安定することで貿易にしろ、投資にしろ、皆にさらに多くの経済利益をもたらすことになる」(国家外為管理局長 易網)

 「中国のこれからの為替政策の重点は人民元を相対的に安定させることに置かれるのでSDRに入ったからといってすぐさま、資本の大幅流入が起こり人民元が上昇することもないが、すぐさま大幅に下落することもない」  「株式投資に関しては、短期的には人民元の大幅下落の可能性は大きくないが、一部の中国企業および市民にはパニック性の人民元売りのリスクがあるので、それが株式市場に悪影響を与える可能性もある。今後3-6カ月はネガティブな影響はあるかもしれないが、長期的にはポジティブにとらえられる」  「債権市場については、米国の利上げのタイミングにより、投資家の間では人民元に対し、一層、人民元暴落の懸念があるだろう。国内の違約事件などもあって、海外の投資家の中国市場に対する投資機会は妨害されてきたが、長期的に見れば、中国の債権市場の開放が進むにつれて、海外投資家の人民元建て債券への期待は高まっていくだろう。中国債権市場はグローバルな投資機関の資金流入増加の恩恵を受ける。中国の政治が相対的に安定しているとの予測の下、人民元の国際化プロセスにおいてその長期的価値は高まり、人民元建て資産への投資の吸引力となるだろう」(瑞銀証券中国チーフエコノミスト 汪濤)

 つまり、人民元下落に対する楽観論は、人民銀行(中央銀行)の介入・コントロール能力への自信に裏付けられているようである。

一方、ネガティブな意見には、こういうものがある。

「自宅のプールで浮き輪で泳ぐのとは訳が違う」

 「人民元のSDRは諸刃の剣のようなものだ。人民元が国際化すれば、国際市場ルールに従わざるを得ない。人民元の底値が一体どのくらいになるのか、私には予想がつかない。人民元は長らく国際市場から隔離され、その価値は深刻なまでに捻じ曲げられている。SDR入り後、人民元が再び暴落する可能性は排除できず、また国際投資銀行などが集団で人民元の空売りを行えば、半年で米ドル・人民元は6.80ドル(12月7日現在、6.36)くらいになるだろう。来年一年のうちに中米の貨幣政策の”巨大分化”の圧力を人民元は受けるようになる。年明けには1元6.40-6.50ドルに推移し、2016年には6.60ドル、2017年-2019年には6.80ドルと落ちていくのではないか。  さらに人民元SDR加入後は、悪意の攻撃を受けるだろう。SDR入りは、大海原に飛び込んで泳いでいくのに似たようなもので、自宅のプールで、浮き輪で泳ぐのとわけが違う。左右から波風が押し寄せるだけでなく、資本の大鰐の悪意の攻撃にも立ち向かわねばならない。もし人民元が安定しなければ、国内経済は巨大な損害を被る。もちろん我々には戦う気力もある。すなわち3兆元の外貨準備高がある。一方、アキレス腱もある。それは、金融人材が空洞化していることだ。中国は力技で戦える金融人材を欠いており、しかも先の中国株価乱高下の”株災”で、信頼を全く失った状態である。為替と株は全く同じではない。株は株を持っている人にしか影響しないが、為替の損失は中国人全体の問題となる。  SDRが吉となるか凶となるか、一口では答えられない。成功の結果ばかりが喧伝される裏で、何か都合の悪いことを隠しているということも排除できない。やはり自らに対し厳しくしなければならない。閉鎖的に保護された人民元が国際競争に飛び込むには、基本的な生存技術を学ばねばならない。人民元の背後にあるものは、国内経済の低空飛行、銀行の不良債権、企業の過剰生産、深刻な不動産バブル。引火しやすい爆発物はたくさんある。むかしのミッドウェー海戦のようなもので、日本の戦闘機が爆弾を搭載したまま空母の甲板にあるところに、米国の戦闘機が飛んでくる…といった状況も想定される」(銀庫金融副総裁 斉俊傑)

 このほかにも論評は多く出ているのだが、代表的な論調はこんな感じだろうか。

個人的には、南シナ海で中国との対立案件を抱え、AIIBの成立にあれほど鼻白んだ米国が、なぜ人民元のSDR入りを断固拒否しなかったのか、その本音が知りたいところだ。やはり人民元を国際通貨戦争の渦中に引きずりこみ、よいカモにすることが狙いなのだろうか。うまく離陸すれば、人民元も国際金融市場で戦える通貨になり、やがてはドル基軸に挑戦する通貨となるかもしれないが、その離陸をすんなりさせるつもりはないということか。

「人民」も「毛沢東」もない「元」に?

 なので、目下、人民元資産をしこたま持っている友人たちは、結構悲壮だ。人民元暴落シナリオを予想して、懸命に人民元を海外通貨に換えて国外に持ち出そうにも、中国もキャピタルフライト阻止のために兌換制限をいよいよ厳しくしている。

 もっとも、私はそこまで人民元に対して悲観していない。為替は下がった後は上がるものである。この通貨戦争を人民元が生き延びることができたとしたら、国際通貨の戦場で鍛え上げられた強い人民元が台頭するシナリオにも期待したい。

 もっとも、そのときの中国の通貨の呼び名は”人民元”ではなくて、ただの”元”になっていて、ひょっとすると毛沢東も印刷されていないかもしれない。どう考えたって金融市場の自由化に社会主義国家の看板はそぐわない。国際社会が期待するシナリオの本当の結末は、そのあたりにあるかもしれない。

12/13日経 『中国 対テロに乗じる民族政策 新疆の炭鉱殺害「容疑者を射殺」 パリ事件翌日ネットに』について

12/13日経 半歩遅れの読書術 渡辺利夫『陸奥宗光のリアリズム 危機下の指導者の苦悩』についての記事が掲載されていました。

Toshio Watanabe

「日清戦争外交の全局を指導した外務大臣•陸奥宗光の凜たる漢語調の回顧録が『新訂蹇蹇録』(岩波文庫)である。「日清戦争外交秘録」というサブタイトルをもつ本書ほど、危機における指導者の行動をあからさまに描いた著作を私は他に知らない。

日清戦争とは、日本が清国と戦った近代初の対外戦争である。「定遠」「鎮遠」など世界最強の装甲艦を擁する清国に比して日本の劣勢は明らかだった。にもかかわらず、清国を宗主国、自らを属領とする「清韓宗属関係」を切断して朝鮮を「独立自主」の国としなけれぱ日本の「自衛の道」はないと陸奥は判断した。

李朝末期の朝鮮は政争と内乱を繰り返し、その度に清兵が半島に派される状況を目の当たりにして陸奥は危機感を募らせた。気が付けば世界最大の陸軍国家ロシアも朝鮮をうかがっているではないか。

日本が清国に挑んでこれに勝利する術は「機略」以外にはない。この時期、日本が外務大臣に陸奥を戴いたのは天の采配のごとくであった。戦う以上は勝たねばならないが、勝利してなお列強の反発は避けられない。自らを「被動者」、清国を「主動者」とし余儀なく戦わざるをえない戦争だと装うことに陸奥は努めた。

清国がのむとも考えにくい朝鮮内政の共同改革案を提示し、清国がこれを拒否したことをもって開戦の大義とした。弱者が強者に挑んで勝利するには敵の機先を制するより他ない。戦局のことごとくで日本軍はこの戦法に徹し勝利を手にした。そして日本は日清講和条約において清国に「朝鮮国ノ完全無欠ナル独立自主ノ国タルコト」を確認させるに至った。

しかし、条約蹄結の直後にロシアが独仏を誘って「三国干渉」の圧力を加え、 日本は重要な「戦利品」たる遼東半島を清国に還付せざるをえなかった。『蹇蹇録』の最後にこうある。「畢竟我にありてはその進むを得べき地に進みその止まらざるを得ざる所に止まりたるものなり。余は当時何人を以てこの局に当らしむるもまた決して他策なかりしを信ぜんと欲す」

言い訳ではない。「兵力の後援なき外交は如何なる正理に根拠するも、その終極に至りて失敗を免れざることあり」と記す。「臥薪嘗胆」の10年を経て日露戦争勝利に日本を導いたのも、陸奥の三国干渉受諾の決断だったといっても過言ではない。時代背景を論じた著作に岡崎久彦著『陸奥 宗光とその時代』(PHP文 庫)がある。 外務省庁舎のゲートを入って右手に進み、突き当たりを左へ少し歩いたところに陸奥の銅像が立つ。長いこと酸性雨に当てられたからだろう、数条の緑色の筋が顔に流れて陸奥の凄みを際立たせている。(経済学者)」

明治時代の外務省は国の命運を賭けて戦いましたが、大正デモクラシーの時代を経て劣化していき、昭和、平成とダメになりました。昭和には重光葵のような気骨のある外交官もいましたが、幣原のような意志薄弱な外交官もいました。平成に至っては平和ボケばかり。前述赤字の陸奥の言葉を拳拳服膺すべきでは。中国と言う「今そこにある危機」を回避するには、中国包囲網を友好国と築かなければなりません。それが中韓と言う敵国の「南京」「慰安婦」でやられ放し。少しは武器なき戦いで勝利するところを見せてはどうか。

日経もやっと「テロに名を借りた中国のウイグル族に対する弾圧」を記事にするようになりました。世界的にはとっくに報道されていましたし、ネットの世界では有名な話です。チベットも南モンゴルも同じように弾圧されていますが。チベットにはダライ・ラマがいますが、ラビア・カーデイル女史は日本ではまだ有名ではないような気がします。このように中国の暴虐を大手メデイアがどんどん報道するようにしないと。ネットを読んでいる人はとっくに中国の悪について理解していますが、メデイアの「ネットは悪」の宣伝を鵜呑みにしてネットから情報を取ろうとしない人がまだまだ沢山います。デジタル・デバイド(情報格差)が広がるというのが自覚されていません。

新聞がリベラルの立場を主張するのであれば、中国の人権弾圧にもっと声を上げねば、「ご都合主義」、「二重基準」の謗りを免れません。日本は世界の中でも人権が良く守られていると思います。それを中韓の尻馬に乗って、日本政府を非難することだけではおかしいでしょう。米大統領候補でレイシストのトランプが今でも人気が落ちないのは、米・白人の心の裡を表していると見て良いのでは。

欧州の移民受け入れは植民地を持った宗主国の道義的義務があるからですが、受け入れが失敗だったのはホームグロウンテロで明らかです。勿論人口は経済的にプラスと考えてのことでしょうが。日本は台湾、朝鮮半島、満州を統治しましたが、植民地(colony)ではなく、併合(annexation)ですので道義的責任は負いません。日経が主張している経済面のみを考えた安易な移民受け入れは失敗します。安全保障の方が大事です。靖国の爆弾事件はテロです。韓国はテロ支援国家と国際的に非難しなければ。外務省は何をしているのかと言いたい。フランスの地域選挙の第一回投票ではマリーヌ・ル・ペン率いる国民戦線(FN)が13地域中、6地域で第一党と勝利し、安全を願う国民が増えているという事です。マリーヌ・ル・ペンはレイシストとも言われていますが、それでこんなにも勝利するのでしょうか?やはり安易な難民受け入れはしたくないという国民の気持ちが働いたのでしょう。

記事

「56日におよぶ追跡のすえ、テロリストの射殺に成功した」。中国公安省がネットにこんな書き込みをしたのは11月14日、パリ同時テロの翌日だったという。詳細は明らかにされず、書き込みもやがて削除されたそうだ。それでも、中国情勢に関心を持つ向きには十分に意味のある情報だった。

Wang Yi-2

Rabiye Qadir中国の王毅外相は最近、新疆の過激派対策は世界規模の「テロとの戦い」の重要な一環だ、と表明した=ロイター

記者会見する「世界ウイグル会議」のラビア・カーディル主席(10月、東京・有楽町の日本外国特派員協会)

 キーワードは「56日」だ。9月18日に新疆ウイグル自治区アクス地区の炭鉱で50人が殺害されたとされる事件の、容疑者たちを掃討したのだろう――。そう推測するのは自然だった。

 炭鉱の事件について中国の当局やメディアは当時「公式発表」を一切していなかったが、米国の自由アジア放送(RFA)というメディアなどが早くに伝えていたからだ。

 思わせぶりな公安省の書き込みについて、またもRFAが詳しく報じたのは、3日後のこと。4人の女性と3人の子どもを含む17人の容疑者が隠れていた洞窟を当局が爆破し、全員を殺害した凄惨な出来事だった、と。

米報道を後追い

 これを受けて、というべきか。RFAの報道から3日後、新疆の共産党委員会の機関紙である「新疆日報」が9月18日の事件も含めた「公式発表」を掲載した。

 それによると、炭鉱の事件での犠牲者は16人。2カ月近い追跡のすえ最終的に「テロリスト」たちを掃討したのは11月12日で、射殺した「テロリスト」は28人だった。ただ、女性や子どもが含まれていたかどうかには触れなかった。「テロリスト」たちは「海外の過激派組織の指揮」を受けていた、とも新疆日報は指摘した。

 さらに3日後には、人民解放軍の機関紙である「解放軍報」が11月12日の掃討作戦を紹介した。火炎放射器を使って容疑者たちを洞窟からあぶり出し、刀を手にして向かってくるのをすべて射殺した、と。

 一連の経緯からは、RFAの報道が迅速で、かなり正確でもあることがわかる。

 たとえば、9月18日の炭鉱の事件について真っ先に報じた。あるいは、最後の「テロリスト」掃討作戦は洞窟が舞台だったと伝えた。いずれも後になって「公式発表」が認めている。すると当然、「公式発表」が触れない部分やRFAと食い違う部分には疑問が浮かぶ。

 当局が射殺した「テロリスト」のなかに女性や子どもは含まれていたのか。洞窟を爆破したのか、それとも火炎放射器を用いたのか。9月18日の炭鉱の事件の背景は何なのか。本当に「海外の過激派組織の指揮」を受けていたのか。こうした疑問点の解明を国際的な人権団体などが訴えているのは、当然だろう。

共産党内に異論

 実は共産党政権は足元で、新疆の民族政策や対テロ政策をめぐって党内の異論の封じ込めに追われている。たとえば11月はじめ、新疆日報の元編集長だった趙新尉氏を「民族政策などで異論を公言した」といった理由で党から除名した。「異論」の詳細は不明だが、高圧的な民族政策に対する不信が共産党の内側でも広がっている可能性がうかがえる。

 同月下旬には、党の規律問題に関わる部門の機関紙が「テロを支持したりテロに加わっている幹部がいる」とまで指摘して、思想統制の強化を訴える論文を掲載した。深刻なのは「海外の過激派」よりも党内の動揺の方ではないか、という疑念さえ浮かぶ。

 かりに「公式発表」が真実だとしても、「刀を手に」向かってきた容疑者たちをすべて射殺するという対処は適切だったのか、議論の余地があろう。足などを撃って動けなくするだけで十分だったのではないか、と。火炎放射器の使用も同様だ。

 中国当局は「反テロ」の名の下に暴力をエスカレートさせている――。海外に亡命したウイグル人たちの集まりである世界ウイグル会議(WUC)がこんな懸念を表明しているのは、理解できる。

 WUCは、共産党政権が「パリ同時テロ」に乗じて新疆のウイグル人への弾圧を強めている、とも非難している。実際、公安省が「テロリストの射殺に成功」と書き込んだのがパリ同時テロの翌日というタイミングだったのは、不気味だ。

 王毅外相は最近、国際会議に出席するために外遊した先で、新疆の過激派対策は世界規模の「テロとの戦い」の重要な一環だ、と表明している。

 「(米同時)テロは米国にとって悲劇だったが、中国の発展にはとても有益だった」。こんな言葉をこのコラムで紹介したのは、4年あまり前だ。語ったのは国際関係論の専門家として知られる金燦栄・中国人民大学教授だが、共産党政権の本音に近いだろう、と指摘した。パリ同時テロについても彼らは同じように受け止めているのではないか。そんな疑念を禁じ得ない。(編集委員 飯野克彦)

ケントギルバート『まだGHQの洗脳に縛られている日本人』について

アメリカ人であっても、真実に真摯に向き合う姿勢があれば、正当な結論を出すことができるという事です。これこそが、知的誠実性と言うものでしょう。自分でいろいろ調べ、自分の頭で考え、自分で結論を出すプロセスを大事にします。中国人・韓国人がそうできないのは、基本的人権の自由がないからでしょう。政府の流すプロパガンダに付和雷同して、事実でないことを声高に叫んでカタルシスを覚えると言うのでは、真理追求の姿勢からは程遠い。

今のマスメデイアはGHQの残滓を色濃くまだ持っているという話です。確かに①~㉚まで当て嵌まるのが多い気がします。特に戦争を煽り、販売部数を伸ばした朝日新聞は戦後左翼に擦り寄り、日本を誤導してきました。不買こそが国民一人ひとりにできる「日本を取り戻す」道です。

また国連を日本人は有難がりますが、事務総長の潘基文を見ていれば如何に薄汚れているか分かるでしょう。FIFAの腐敗、世界陸上のドーピング等枚挙に暇がありません。日本は「脱退」しないなら、もっと声を上げなければ。世界を良くするためには戦う(=主張する)ことが必要です。

内容

P.18~20

若者に大量の血を流させるようなことはしないでしよう。

これは、逆の立場になればわかることです。もし日本と仲の良い国、たとえば台湾やフィリピン、ベトナムなどが第三国から攻撃を受けた際に、当事者にもかかわらず、戦うことをいっさい放棄したそれらの国の人々が、「私たちの国を守るために、日本の自衛隊の若者だけが血を流すのは当たり前だ」と考えていたら、皆さんはどのように感じるでしょうか。当然、「冗談ではないーなぜあなた方の国を守るために、日本人だけが死ななければならないのだ!」と考え、快く思わないでしよう。しかしこんな当たり前のことさえ、戦後の日本では論理的に通用しなくなっているのです。

繰り返しになりますが、最初に日本人の精神的武装解除を計画したのは、たしかにGHQです。しかし、GHQが去った後、よりいっそう真面目に、かつ真剣に精神的武装解除のための「精神の奴隸化」政策を継続したのは、日本の政治家と教育界、そして左傾化したマスコミです。 この三者の罪は本当に重いと思います。そして今こそ、こんな洗脳状態から日本国民は目覚めるべきなのです。

徹底的な反日工作に対抗できる知識と勇気と愛国心を

近年、韓同やPRC (中華人民共和国”Peoples Republic of Chinaの略称。私が「中国」と書かない理由は後で触れます)による反日工作が、凄まじい勢いで日本に襲いかかっています。恥ずかしながら、私もつい最近までは、南京大虐殺や従軍慰安婦なるものについて、なんとなく「あったのだろう」と考えていました。そして、「日本人も過去のことなんだから旱く罪を認めて謝ってしまえばいいのに」などと思っていました。

しかし、あるときから自分なりに資料を集めて勉強してみた結果、それらがとんでもない捏造のオンパレードであり、悪質なプロパガンダにすぎないことを確信するようになりました。そして、ふと日本人を見つめたとき、そんな嘘のプロパガンダに晒されつづけた多くの人々から「愛国心」というものがほとんど完全に抜き取られ、日本人としての自信や誇りが失われていると気がついたのです。

そんなふうにやられっぱなしでありつづける日本の姿を見て、私は怒りを覚えました。そして中韓両国に対し、「いい加減にしろ!あなたたちに何を言う権利があるのだ」と思ったのです。

この本を手に取ってくださる日本の読者の皆さんに、私が自信を持って言えることがあります。それは、「愛国心」さえ取り戻すことができれば、日本は名実ともに、世界で一番幸せな国になるということです。そしてそんな日本こそが、アジアの、そして世界のリーダーとしての尊敬を一身に集め、初めて本当の意味での世界平和に貢献できるようになるだろうということです。

日本という素晴らしい国を愛し、将来を案じている1人のアメリカ人として、私は次のことを皆さんに言いたい。一方的な「嘘」や「プロパガンダ」に負けないでください。そして、今こそ人としての「愛国心」と「誇り」を取り戻してください。そのために必要な「知識」を学び、それを堂々と主張できる「勇気」を持ってください。

P.24~29

GHQが定めた三〇項目の報道規制

終戦直後の昭和二十年(一九四五)九月に定められた、正式名称「日本に与うる新聞遵則」、通称「プレス・コード」に規定された三〇項目を、手元にある資料『日本人を狂わせた洗脳工作–いまなお続く占領軍の心理作戦』(関野通夫著、自由社)から引用してみましょう。

①SCAP  (連合国軍最高司令官もしくは総司令部)に対する批判

②極東国際軍亊裁判批判

③GHQが日本国憲法を起草したことに対する批判

④検閲制度への言及

⑤アメリカ合衆国への批判

⑥ロシア(ソ連邦)への批判

⑦英国への批判

⑧朝鮮人への批判

⑨中国への批判

⑩その他連合国への批判

⑪連合国一般への批判(国を特定しなくても)

⑫満洲における日本人の取り扱いについての批判

⑬連合国の戦前の政策に対する批判

⑭第三次世界大戦への言及

⑮冷戦に関する言及

⑯戦争擁護の宣伝

⑰神国日本の宣伝

⑱軍国主義の宣伝

⑲ナショナリズムの宣伝

⑳大東亜共栄圏の宣伝

㉑その他の宣伝

㉒戦争犯罪人の正当化および擁護

㉓占領軍兵士と日本女性との交渉

㉔闇市の状況

㉕占領軍軍隊に対する批判

㉖飢餓の誇張

㉗暴力と不穩の行動の扇動

㉘虚偽の報道

㉙GHQまたは地方軍政部に対する不適切な言及

㉚解禁されていない報道の公表

この決まりに違反した新聞は発禁などの処分を受けます。ちなみに朝日新聞は一度、業務停止処分を受けています。これらの項目を見ると、日本のマスコミが終戦直後から、ありとあらゆるものに対する「批判」を禁止されたことがよくわかります。見たかぎり禁止されなかったものは「日本政府に対する批判」くらいでしようか。だから日本のマスコミは、今でも政府批判ばかりやっているのですね。

また、日本を褒めてはいけなかったこともわかります。森喜朗元首相が「日本は神の国」と発言したときのマスコミの大騒ぎは、「⑰神国日本の宣伝」の禁止に原因があったわけです。「⑱軍国主義の宣伝」の禁止は、マスコミが軍事力や国防の重要性を報道しない原因であり、「⑲ナショナリズムの宣伝」の禁止は、愛国心の大切さに触れない原因だと言えます。日本人が民族的な優秀性に自信を持ったり、一致団結して本領を発揮するのは困ると考えたわけです。

そして「⑳大東亜共栄圏の宣伝」の禁止があるせいで、終戦まで日本人の誰もが正式名称である「大東亜戦争」と呼んでいた先の戦争を、突然「太平洋戦争」と報道するようになったのです。日本のマスコミはこの項目⑳を今日に至るまで頑なに守っていますから、洗脳工作を継続しているわけです。だから私は「太平洋戦争」という言葉を使わずに「大東亜戦争」と書いています。

興味深いことに、「㉘虚偽の報道」の禁止だけは、もはやまったく守っていないマスコミが多いのですが、そもそもGHQの意向に従って、散々、虚偽の報道を行ってきたわけですから、実はGHQによる占領統治時代から、大半のマスコミは何も変化していないということです。

そして、この三〇項目を読み返したことで、私が本書に書く内容は、これらの規制項目にことごとく抵触する内容であることを、再認識することができました。

私が韓国とPRC (中華人民共和国)を批判する理由

ありとあらゆるものに対する批判を日本のメディアに禁止したGHQの政策の恩恵を、最大限に受けた国があります。大韓民国(韓国)、中華人民共和国(PRC)、そして朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の三カ国です。「特定アジア」や「特亜三国」などとも呼ばれるこれらの国が、戦後の日本に行った所業は、調べれば調べるほど酷いものなのですが、先に挙げた⑧と⑨によって、日本のマスコミは朝鮮人と中国(当時は中華民国)に対する批判を禁止されてしまいました。

ですから、中国で起きた複数の日本人虐殺事件や、終戦直後に日本各地で起きた朝鮮人による暴動の事実を知る日本人は、現代でもかなり少数派です。「通州事件」や「通化事件」、あるいは「生田警察署襲撃事件」「富坂警察署襲撃事件」などの言葉をネット検索してみてください。これ らの事実を知ると、戦後七十年目の現在でも、日本の大手マスコミの大半は、GHQのプレス・コードを頑なに守っているとしか思えません。現在進行形で行われている犯罪者のいわゆる「通名(外国籍の者が日本国内で使用する通称名)報道」も、プレス・コードの⑧と⑨に端を発したものかもしれません。

北朝鮮は、国際社会で最初から相手にされていないので本書ではあまり触れませんが、韓国とPRCは国連をはじめとする国際社会や、アメリカ国内におけるロビー活動を通じて、日本を狙い撃ちにした「デイスカウント.ジヤパン」運動をしつこく続けています。ところが日本はごく最近まで、一方的にやられっぱなしで、ほとんど反論することができませんでした。

日本人が日本を擁護する発言や行動を取ると、それを最も批判するのは日本のマスコミです。彼らの正体がマゾヒスティック(自虐的)な性癖を持つ日本人なのか、サディスティック(残虐的)な性癖を持つ外国人なのか、日本人だけどサディスティックな外国人と通じたスパイやパペットなのか、私にはわかりません。いずれにしても彼らは、日本の国益のことなどいっさい考えていません。

第二次安倍政権になってから、やっと日本の国益を真剣に考えた国際社会への発信が行われるようになりました。しかし、昨今は政府や政治家だけでなく、一般人であってもインターネットを通じて「ディスカゥント・ジャパン」のプロパガンダと戦うことが可能です。韓国やPRCがまったく信用に値しない国であり、いかに日本の批判などできない存在であるのかを調べて伝えることが可能です。WGIP(ウオーギルトインフォメーションプログラム)によって嘘を真実だと信じ込まされた人たちを、皆さんの力で覚醒させることが可能です。その行動に役立つと思われる、私がこれまでに調べた情報を、可能なかぎり提供したいと思います。

P.36~37

この事実を知ったとき、私は本当にびっくりしました。海外では、慰安婦は「性奴隷」と表現されていますが、「陸軍大将の何倍もの金を稼ぐ人間のどこが奴隸なのだ!」と思うのは当然ですよね。しかし、このような報道は主要メディアではほとんどなされないのです。しかも、この女性は朝鮮の売春婦であった「キーセン」出身だったのです。

この種のバカらしい話を含めて、そもそも一九八〇年代の後半まで、ほとんど話題にも問題にもならなかったことが、ある日突然スクープとして発掘され、国際問題になるなど通常はありえないわけですが、これ一つ取ってみても、朝日新聞がどれだけ巨大な力を持っていたかがわかります。

朝日新聞はニユーョーク•夕イムズとつるんでこんな大嘘を世界中に喧伝する役割を果たしました。その賁任は、とくに公正中立であるべき言論機関としては非常に重い。自らを「報道機関」と名乗ることすら慎むべきです。GHQに協力してプロパガンダばかり流しているあいだに、報道機関としての良心が破壊されたのでしょうか。いや、戦時中の朝日新聞は、最後の最後まで日本人の戦意を煽っていました。極右から極左にポールシフトしただけで、昔から「誤報道機関」でした。

ところで、女子挺身隊と慰安婦を同一視するような勘違いが、これだけ発達した情報社会である七十年後の今日においてもそのまま通用しているということ自体が、韓国社会の情報処理や事 実認識に対するいい加減さを証明していると言えます。日本人なら、間違いに気づいた段階ですでに名称を変更して、すべてのあり方を改善しているでしょう。

また、こんな大嘘に乗っかって、いろいろな報告書を出した国際連合も日本に謝罪すべきです。私自身は以前から、国際連合ほどの巨大な茶番はないと考えていますが、日本人は国際連合を地球上に必要不可欠なありがたいものだと考えているように見える。信用や期待をしすぎだと思います。

黄 文雄『それでもなぜ、反日大国の中国人、韓国人は日本に憧れるのか?』について

中国が如何に歴史的に大虐殺をしてきたかという事です。「洗回」とは回教徒の洗浄(=ethnic cleansing )を意味します。大清帝国の満州への漢人の入境を認めたことが、満州人の没落の始まりです。日本統治のお蔭で治安が良くなり、安心して漢人が入ってきました。そういう歴史を中国は認めません。

一帯一路構想も漢人の世界規模での進出を図っています。軍事力ではなくマンパワーを送り込むようにしてその国の政治・経済に影響を与えて乗っ取ろうと考えています。東南アジアの経済が華僑に乗っ取られているのは皆知っています。それが世界的規模で行われようとしているのですから、日本人は注意しておかないと。

中韓の人達は「生まれ変わったら別の国で生まれたい」と言うのが2/3も占める(2006年と調査は古いでしょうが傾向は変わらないでしょう)のは、如何にその国の統治がおかしいかという事です。「日本人が生まれ変われるなら、日本or外国で生まれたいか?」(2013年調査)との問いに83%が日本と答えています。メデイアや日教組が如何に日本を貶めようとも日本人は国民レベルで日本を愛していることが分かります。それに引き換え、日本を口汚く罵る両国は国民から信用されていないという事です。日本が余りに素晴らしいので嫉妬、羨みの気持ちが働き、他人の足を引っ張ることで安心感を得ようとしているのでしょう。下種な劣情の持主です。彼らには近づかないことです。

http://www.ism.ac.jp/kokuminsei/table/data/html/ss9/9_22c/9_22c_all.htm

http://www.j-cast.com/2014/10/31219779.html

http://www.all-nationz.com/archives/1046629175.html

内容

P.47~51

中国からのヒ卜とカネの 大脱走が止まらない

こうして中国から人が噴出するようになった

19世紀末の清朝イスラム教徒の反乱(回乱)後には、大きな国是国策の大変化があった。 それは、文革以後の改革開放と似ていて、清は先に開放をやって、その後に戊戌維新や立憲運動に続く。ことに20世紀に入ってから清は「改革開放」に湧き、「黄金の10年」と もいわれ、経済•社会の大繁栄によって、逆に辛亥革命で帝国が滅びた。

アヘン戦争後の太平天国の乱と回乱は、文革に似ている。

人類史上最大の反乱といわれる「太平天国の乱」によって人口の5分の1が失われ、回乱の後には、「洗回」(イスラム教徒皆殺)運動が20世紀までも続く。イスラム教徒の約2000万から4000万人が殺された。イギリスのインド植民地化は、満州人の中国植民地化に似ていることが少なくない。清帝国の崩壊後に、中国はインド植民地のようにインドとハキスタンが分離独立しなかったのは、この「洗回」に関係が深い。

インドとパキスタンの分離独立は、ヒンズー教徒とイスラム教徒の対立が、精神的•思想的な根本的対立からくるということは、もはや「常識」となっているが、現在のチべット問題やウイグル問題の背後には、「孔子と釈迦」と「孔子とモハメド」との思想的対立が根源的だということまで見る者は、それほど多くはない。

イスラム教徒の反乱後民間の武力集団が「洗回」に夢中になっているが、政府は古代に「西域」と称されたウイグルの地に「新疆」省を新設、新たに内地化した以外には、満州など従来の「封禁の地」を開放する。アヘン戦争後に五つの港湾都市を開港はしたものの開国はしなかった渡海禁止令を廃止したのは1885年で、台湾への渡航を解禁したものの、10年後、日清戦争の結果、日本の地となった。

この大きな人流の大変動の時代には台湾を永久割譲。数千年来、南に向き、漢人の民族大移動か初めて北へ向き、万里の長城を越え、モンゴル草原を満州平原へこの「平和的浸透力」は逆流し、満鉄を大動脈として、20世紀に入っても年間平均l00万人以上が北流していった。

人民共和国の時代に入ってから、農村戸籍と都市戸籍を二分し、農村では一時「人民公社」中に縛りつけても、自然や社会の変動のたびに人流は奔流にもなって、北上だけでなく、「生産建設兵団」として、新疆ウイグルに流入し、そしてチベット高原に登っていく。 資源と人口のバランス調整のために、政治的だけでなく生態学的理由からも、ことに改革開放後には、地上資源が枯渇するにつれて、地下資源も喰い尽くされ、中国の流民は地球資源まで鯨飲しながら、祖国から大脱走して、陸路だけでなく、海路からも、空路からも、地球的規模の噴出が起こっていく。

改革開放後、国内農村の「人民公社」が廃止されただけでなく、竹のカーテンまでが開かれた。開かれた農村の産業予備軍は、1億、2億、3億へと増え続け、盲流(農民が都市に大量に流れる現象)として沿岸開放都市に押し寄せただけでなく、内陸の都市も辺境も埋め尽くしていった。人口がすでに億を超えるホームグラウンドの河南以外にことに湖南や四川省からの流出者が多い。それらは以前から人口過密の地だったので、噴出し続けている。

四川省の産業予備軍は「川軍」とも呼ばれ、ずっと人口過密の地だった。毛沢東はかつて、「四川はタイとほぼ同面積で、人口はタイの倍もある。そんな不公平な存在は、許されるのだろうか。『不公平是正』のため、タイを解放して、四川から大量移民をしたい」とまで語ったことがある。しかし、「世界革命・人類解放」は文革を最後に、ソ連・東欧改革開放後、中国の沿海都市、辺境さえも流民に埋め尽くされたので、盲流(民工)に限らず、裸官や青年エンジニアに至るまでが祖国大脱走の潮流となっている。

ヒ卜.カネの大脱走は、これからも続く

20世紀以後の中国人祖国大脱走史を見ると、時代とともに質的変化がはっきりと見られる。

20世紀前半は戦争難民と飢餓から生まれた生態学的流民が主だったが、戦後に国共内戦が再燃した結果、海外流出したのは主に政治難民だった。たとえば人民共和国の成立とともに台湾に流入した政治難民だけでも200万人と推定される。陸路や海路を用いて、東南アジアへ逃げ延びた者も少なくない。

竹のカーテンが開かれた後、主流は徐々に「経済難民」に代わり、蛇頭に率いられて、日米欧など先進国をめざして留学やらさまざまな名目で脱出していく。祖国からの大脱走を阻止するのに万策が尽きた後、「走出走」(出て行く)と奨励策へと変わらざるをえなかった。

中国は「社会主義」国家から「權貴資本主義」といわれる体制になり、国是国策の変化によって、格差は拡大し、富が政府高官に集中していく。国富も私富に変えられ、そこから「裸官」が生まれてくる。GDPの十数パーセントから4分の1、さらに半分が不正所得となり、汚職追放の負け組に兆円や千億円単位の不正所得があったことが世に知られるようになる。

一人が国内で国民の金を絞り上げ、家族が海外で暮らすといわれる裸官の数字については、習近平など国家指導者だけでなく、2012年の第一七期党中央委員会委員204人のうち91パーセントに当たる委貢の家族が欧米で暮らしている,国家指導者の家族は先に国外へと逃げ、その後に続くのが「裸官」たちである。

もちろん時代とともに流出するものは、経済難民から環境難民へと変わっていく中国は経済成長とともに、徐々に環境が悪化、黄泉の国へと沈んでいく。

裸官の祖国大脱走の条件は誰と比べても優位であるが、めざす国によっては、社会階層も異なる。

P.56~58

2006年9月4日から、中国のインターネット上の三大ポータ’ルサイトのひとつ「網易」で、興味深いアンケート調査が行われた。それは「もし生まれ変わったら、もう一度 中国人になりたいか」というものだったが、回答は1万1271件のうち、65.1パーセン トの人が「生まれ変わっても、中国人にはなりたくない」と答えている。これは全回答者のおよそ3分の2にあたる。中には「豚に生まれ変わる方がまし」という回答まであった。 もちろん調査対象は「憤青」ではないにしても、回答者は老人ではなくネット世代である。不特定のネットユーザーで、ネットウヨクを排除してはいない。

中国政府はこの結果に激怒した。アンケートは削除されて、編集者は即座に解雇されてしまった。

その調査結果をもとにした、『来世不做中国人』(邦訳すると「来世は中国人として生まれたくない」、鍾祖康著)という本が中国以外の地で出版されている。著者(北欧に移住した香港人)によると、「中国社会は情報が閉ざされているから、もし全人民が情報公開をされたなら、99パーセントが『来世では中国人になりたくない』と答えるだろう」とまで言っている。

もちろん、それは決して過言ではない。「中国人の誇り」を押し売りするプロの愛国者でさえ、チャンスがあれば自分が真っ先に中国から逃げ去ってしまうに違いないのだ。実際に、蒋介石を筆頭とする四大家族の前例だけでなく、習近平主席を始め、鄧小平以降も それ以前の国家指導者の家族も、すでに家族が逃げ去った後の、「裸官」といわれる(権貴)政府高官も、党の高級幹部も、祖国大脱走の「予備軍」として待機しているのだとみなされる。

中国人に生まれ変わりたくない理由

では、「中国人になりたくない」と答えたネットユーザーたちの理由とは何なのか。「中国人は人間としての尊厳を欠く」という答えが37.6パーセントでトップ。中には、「前世で悪いことをしたから中国人に生まれ変わったのだ」という答えがあって、来世どころか「いますぐにでも、中国人以外になりたい」という人が多い。

なぜ中国を愛さないのかという理由については、「いくら探しても、中国を愛する理由が見当たらない。もしあなたが中国を愛する理由があれば教えてくれ」「奴隸になりたくないというのが、人間の本音だから」という回答がある。

もちろん、3分の1にあたる35パーセントの人は、「また中国人になりたい」と回答したのだが、その理由は以下である。「祖国を愛しているだけで、別の理由はない」が18パ-セント。若干似ているのは、中国人とは、「鬼神を信じない」極めて世俗化した民族でありながら、それでも漠然として「天」や「鬼」(祖先)を信じている。「中国には悠久の歴史と偉大な文化があるから」は6.6パーセントである。それが中華思想であろう。本当に歴史文化を知っているかどうか、もう少し世界史や文化•文明の「常識」を知れば、 もっと歴史観も世界観も変わるだろう。

P100~102

自然史から見ると、李朝の時代に入ってからは、徐々に原始社会に先祖返りしつつある。モンゴル人は人類史上初めて、紙幣(交鈔)の発行・使用に成功した通商帝国で、資本主義の元祖とまでいわれる。そして、100年以上も高麗を支配したので、朝鮮半島のオリジナルの文化の多くは、モンゴル文化がベースとなっている。

それなのに、李朝時代にも白銅貨や葉銭があったが使用は限定的で、日韓合邦まで褒負商(行商人)とそのギルド(組合)しかなく、貨幣経済も商品経済も発達せず、早市ではなく午後の定期市しかなかった。

そこにあったのは「貨幣」の代わりに、米・布・人参・器物などで物々交換する原始社会だった。市場も形成できなかった。日本の江戸時代と比べれば、まさしく対照的というより対照的な格差である。少なくとも、税金はなおも布によって払われた。

1885年12月から翌年2月にかけて、ソウルからシベリアまでを踏破したベ・エム・ジェロトケヴィチの 『朝鮮旅行記』によれば、「植生皆無」。 なぜ独立開化派の甲申改革が三日天下になったのか、これは原始社会の「文明開化」は絶対不可能という視点からも見るべきだ。なぜ初代朝鮮総督の寺内正毅大将が「治山治水」の綠化政策によって崩壊した山河を甦らせようという執念をもって朝鮮経営をスタートしたのか、その視点が見逃されたら、何も語ることはできない。

李朝末期には、王室はすでに100年以上にわたって財政赤字を抱え、両班階級が3分の2の国富を私富にして、産業資本の原初的蓄積さえできていなかった。山野は火田民(焼畑農民)に焼き尽くされ、京城には土幕民(流民)があふれ、世界一不潔な都ともいわれる。李朝は19世紀末になると、実際、すでに:国家破産しており、町中には土幕民が溢れ、餓死者が路頭に捨てられた。この国の生民をどう救出するか、列強が無理やりに日韓合邦を押し付けた歴史背景をも見なければならない。 清の盛世が過ぎてから、白蓮教の乱をきっかけに、戦乱と天災、流民の生き地獄落ちとなった大陸とほぼ同時期に、「枯死国」(新渡戸稲造は「枯死国朝鮮」と書いた)に閉じ込められた朝鮮人は家族連れで、厳しい国禁を破り、移動•移住断禁の号牌法もなんのその。 すでにシベリアや満州で密墾、密猟、密採をし始めていた。 それは李朝の時代の人流の一大潮流である。

日韓合邦後、「強制連行」どころか、朝鮮人の日本列島への密入国をどう阻止するか、政府は朝鮮総督府と協議を繰り返し、治安当局にとっての頭痛問題の一つであった。むしろ半島のほうが、市民・労働組合の万人集会で「阻止には法的根拠がない」と抗議していた。だから強制連行は、時代条件から考えるとほとんど存在した可能性がない。この一言に尽きる。

P.135~137

なぜ韓国人は国を捨てたいのか?

韓国人も67%が「韓国人に生まれ変わりたくない」

中国の大手ニユースサイト「網易」が2006年9月4日から「生まれ変わっても中国人になりたいか?」という調査を行った。同じ年の8月31日、韓国の「ゴーニユース」がポータルサイトの「デイーシー•インサイド」で、韓国ネチズン(ネットユーザー)を対象として、「生まれ変わるなら、また韓国人として生まれ変わりたいか?」というアンケート調査(参加者8406人)を行った。

その結果は次のようだった。

回答者の67.8パーセント(5696人)が、「韓国人に生まれ変わりたくない」、24.5パーセント(2058人)が「もういちど韓国人に生まれ変わりたい」と答えている。 中国と数字だけを比べてみると、「中国人に生まれ変わりたくない」と答えた中国人の割合65.1パーセントよりも、「韓国人に生まれ変わりたくないと答えたネチズンの割合の方が数パーセント高くはあるが、「また中国人に生まれ変わりたい」と答えた中国人が 35パーセントであったのに対し、「また韓国人に生まれ変わりたい」と答えたネチズンがたった24.5パーセントだけなのは、意外に少ないとやや驚くのである。

中国は同じ年の9月に入ってからの調査だから、韓国からの刺激でそうなったのではとも考えられるが、同じことは前にもあった。1919年の三・一独立運動の直後、北京では五・.四運動が起こった。ウィルソン米大統領の「民族自決」からの影響で、あっという間にアジアまで火がついたという国際政治のグローバル化とも考えられる現象である。

中国はプロレタリア独裁国家として、「人権」よりも「生存権」が大事と主張する。言論の自由がないどころか、ますます統制強化を強めている国である。

OECDの加盟国である韓国では、「約70パーセントに近い」韓国人が、「生まれ変わったら、韓国人になりたくない」と答えていて、想像の域をはるかに超える。驚くどころではない。

何か理由があるに違いない。

さらに驚くべきことは、20〜30代の男女を対象として行われた、2003年9月17日)。この国政監査の調査資料を見ると、その72.1パーセントが「移民を考慮している」と答えているのだ。同調査ではその理由として、「将来の子どもの教育問題」が42.3パーセント、「国内の政治的・社会的混乱」19.7パーセントとなっている(『朝鮮日報』2003年9月17日)。この国はOECD加盟国であるだけでなく、「愛国心が世界一」と自画自賛をする国でもある。それなのに生まれ育った社会、故国に住みたくないといぅのは、「何かのウソがある」に違いないと誰でも連想するだろう。

興味深いのは、「脱北者」よりも「脱南者」が断トツに多いことである。移民先は主にアメリカ、そしてカナダである。才—ストラリア、ニユージランドも多い。

P.190~191

神代から続いている日本については、戦後の反日日本人からぼろくそにいわれ、貶められてきた。しかし、戦後のいわゆる「進歩的文化人」の日本観とは違って、「いちばん天国に近い国」という説に同感共鳴するのは決して私一人だけではあるまい。

ユートピアというものは、地上にはなかなか実在しえないもので、いくら空想的ではなく科学的だと謳っても、実際、人類最大の実験だった社会主義型地上の楽園は、すでに幻想として消えてしまった。中国人と韓国人は、どちらかというと極めて世俗的にして実利的な民族である。地上で一番天国に近いのはやはり日本しかない。

いくら反日を建前にしても、中国人と韓国人はその色眼鏡を外さなければならない。中国からの密入国者、オーバー•スティをはじめ、さまざまな犯罪者が数多く日本の刑務所に収容されている。喰ったり寝たりしているだけでぶくぶく肥えて、牢屋を「天国」 だと思い、祖国に帰りたくないので、さまざまな手で日本の牢屋という天国にしがみつきたがる。

あるとき、防衛大のある教官が私に、「一人の中国人犯罪者の一食の食事代だけでも、日本の自衛隊員より200円高い。そういう日本という国家の存在はおかしいのではないか。いくら公文書で抗議提言しても、政府と官僚は聞く耳をもたない。なんとかできないのか」と語った。

中国人犯罪者だけでなく、韓国のスリ団にとっても、平和ボケの日本はじつに「仕事」をしやすい天国である。

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中国は、時代とともに言論統制が強くなり、人権や人間の尊厳が消えていく国家である。韓国は軍事独裁からOECDにまで加盟した国家である。国の「かたち」も社会のシステムも違う。

しかしそれでも、多くの共通点がある。以下に、そのいくつかを取り上げてみる。

①国是国策としてつくられた反日国家、反日教育と反日メディアが旗振り役になって、反日しないと政権は安定できない。

②反日世代は老人よりも簡体字かハングル世代、そしてネット世代が主役で、日本を知 らないほど反日意識が強い。

③生まれ変わったら中国人•韓国人になりたくない者が3分の2以上で、中国人の富裕層は64パーセントが外国に移住したい。韓国はさらに多く、90パーセント以上にのぼる。実際、中韓ともあの手この手で、祖国大脱走が加速的に昂進中の国である。

④儒教文化の伝統と中華思想が強く、大中華と小中華の差があっても、ともに国自慢に必死で、とくに小中華は近年ウリジナルで知られている。

中国と韓国は政治に限らず、あらゆる分野で一つになるのが極めて難しい国である。いくら国是国策として、反日•仇日運動を断行しても、「全民運動」になるのは難しく、全員一致とまではなかなかいかない。

それは自然の摂理と社会の仕組みからくるものだから、漢の武帝の時代から「儒教独尊」 をしても、実際そうはいかなかった。だから表面は儒教、背後は法家の刑罰という、「陽儒陰法」やら「外儒内法」とまでいわれたのである。

実際、歴史を見ると、「仏教」に対しては、「三武一宗」の廃仏毀釈、義和団の「キリスト教徒の皆殺運動」としての「扶清滅洋」という皆殺反乱、長期にわたる「洗回」というイスラム教徒の皆殺し運動が見られる。朝鮮半島の歴史を見ても、李朝の「崇儒斥仏」運 動から「衛正斥邪」運動がないと、一つにはなれなかった。