邱 海涛著『ついに中国で始まった大崩壊の真実』について

この本の著者邱海涛氏は上海近郊在住とのこと。ここまで書くと朱建栄のように拘束されないか心配になります。香港のコーズウエイベイの書店の5人が失踪したことを見ても、党・政府批判者はどこにいようとも(外国であっても)安全ではありません。

如何に中国の経済が弱ってきているか中国人の口から出てきました。生産年齢人口でいえば、中国は「未富先老」です。社会保障も未整備で、日本人と結婚して一族を優雅に過ごさせようと思っている中国人は沢山います。日本人男性は引っかからないように。

ア●兄弟で政治同盟を結ぶとは日本人には想像もできない発想です。流石中国人です。小生が中国に在勤していた時には聞いたことがなかったです。共産党の闇が深いという事でしょう。

日本にいる中国人は真理、歴史の真実にもっと目を向けるべき。そうでなければ日本の左翼・リベラルと同じく「知的誠実さに欠ける」と言われます。嘘つき共産党の刷り込みをまだ信じますかと問いたい。

でも、中国人は韓国人同様「息を吐くように嘘をつく」民族ですし、本文にあるよう非寛容です。謝罪しても許す訳がありません。独仏がEUを作れたのは仏の寛容があったからです。中国にそれを期待しても無理と言うもの。「話せば分かる」と言って射殺された日本の首相もいました。Seal’sや日本共産党、社民党、民主党は中国の軍事拡張、北朝鮮の核実験を止めさすように話ししに行くべき。日本は今、戦争を抑止する戦力を持とうとしているだけです。これをしなければ却って戦争が起きやすくなります。まあ、彼らの祖国は中国大陸か朝鮮半島なのでしょうけど。日本人のパスポートを返還して、祖国の人になったらよい。でなければスパイでしょう。日本人も彼らの言説にいつまでも惑っていたのではどうしようもない。既存のメデイアを読む・見るだけではデジタル・デバイドになります。特に左翼新聞は取らないことをお勧めします。

それと、本文にあります何建明の『南京大虐殺全記録』を調べて、中国の記憶遺産登録の反証としてはどうか。

内容

P.12~13

経済崩壊で好戦的気運が高まる中国

現在の中国経済の衰退ぶりは、想像を超えるほど深刻である。これまでなら考えられないような事態が頻発するようになっている。

上海株が2014年末ごろから2 015年6月までのわずか6カ月で9割近くも急上昇したかと思うと、6月10日からの3週間で3割近くも暴落、時価総額で約400兆円分が市場から消えるという、パニック状態に陥った。

だが、その予兆は実体経済に現れていた。

たとえば、国有企業の中国鉄道総公司では2015年の初めに社員の賃上げが実施されたが、4月に入ってから東北3省の鉄道を管轄する瀋陽鉄道局に本社からの緊急命令が突然下った。その内容は、全社員の賃上げは直ちに中止。以降も賃上げは無期限に見送り。そして、すでに支払われた3カ月の賃上げ分は即刻、本社に返却せよというものであった(「中国経常報」20 15年5月1:日付)。

瀋陽鉄道局は28万人もの社貝が働いており、賃上げストップによる家族生活への悪影響が必至 だと思われる。ちなみに、瀋陽鉄道局の社員の平均給与は320 0元(約6万円)である。

賃上げストップの最大の原因は鉄道経営の不振である。中国鉄道総公司の統計によると、20 15年1〜3月期の貨物輸送量は8億673 9万トンで、前年同期比8971万トン減、下げ幅は9.37%にも及んだ。

そのうち、石炭輸送量は5億3621万トンで6割以上を占めるが、前年同期比5290万トン減、下げ幅は8 .98%であった。専門家は、中国経済の衰退や自然環境の保全の進行につれて、 石炭の消費量や輪送量がさらに減少する、と語る。これから1年のうちに瀋陽鉄道局の約半分の社員が解雇されると予測している。

2015年に入り、 とくに黒竜江省、吉林省、遼寧省の東北3省は、急ブレーキがかかっている中国経済の中でも、真っ先に総崩れになっていることがよく報じられている。

これまで東北3省は毛沢東時代の重工業の発祥地かつ拠点であり、新中国を支えてきたもっと も重要な生産基地であった。そこが経済崩壊を起こしている主な原因は、経済改革がほとんど進 まず、現在も計画経済が主流だということである。

2015年1〜3月期の東北3省の各GDP成長率を見ると、遼寧省は1.9%で全国の省で最下位、黒竜江省は4 . 8%で下から4位、吉林省は5 . 8%で下から7位というありさまである。

P.16~17

2007年の成長率14.20%に対して、200 8年は9 .64%に急落。それ以降、2009年は 9 .21%、2010年は10.41%、2011年は 9.30%、2012 年は 7 .76%、201316 年は7 .75%、2014年は7 .36%という減速ぶりであった。

2010年は上海国際博覧会が開かれたため、景気が刺激されて経済がいくらか好転したように見えたが、まもなく坂道を転がるように下落を続けた。

GDPとは、平たく言えば、全国における企業と個人が1年間で稼いだ収入ということである。 GDPの成長率が低下するということは、収入が減ることを意味する。

2013年6月には、銀行の「資金不足」が起きて大きなパニック状態となった。この金融不安は日本でも大きく報じられた。

6月20日、上海の銀行間取引金利である「SHIBOR」(Shanghai Interbank Offered Rate) が13.44%、瞬間風速的に30%台にまで急騰するという、最悪の事態が起こった。銀行では日々の業務に必要な資金をまかなうために、銀行同士が互いに短期的に資金を融通し合う什組みがあるが、上海ではこのときに適用される金利を「SHIBOR」と呼ぶ。これが急騰したのだ。 このことは各銀行の資金が不足し、破綻リスクが高まったことを意味する。 この前代未聞の金融騒ぎは以降、半年も続いた。

いったい、お金はどこに消えたのだろうか。不良債権が膨らみ、融資した巨額の資金が回収できなくなったからである。

9月には、金融危機の重大さを知った中央政府が各地に調査団を派遺し、実態調査に乗りだした。金融危機への対応策を講じようとしていたが、いまだに不良債権の実態はわからないままである。

2014年に入っても、暗い経済ニユースばかりが伝えられていた。 中国では、外資企業を除き、中国経済の富の90%は民間企業が創出している。その民間企業が集中し、中国経済の鍵となっているのが、浙江省の温州市である。「温州が動けば中国が発展し、温州が冷え込むと中国が衰退する」とまで言われるほどだ。

しかし、この温州市が2013年に入ってから急変し始めた。不動産価格が暴落したのだ。わずか数カ月で価格が半値を割り込むという急落ぶりだ。その理由は、製造業が不況に見舞われ、資金繰りに苦しみ、多くの企業が投資で買い溜めしていた不動産を安値で叩き売ったからである。しかも、買値を大きく下回ったため、銀行ローンの返済を放棄して夜逃げした持ち主が続出した。その数は1万5000件にも上ると伝えられている。巨額の負債を抱え、蒸発した者もいれれば、夫婦で自殺を図った者もいた。もちろん、担保の不動産を差し押さえた銀行も、買い手がつかず、価格の下落が止まらないため、不良債権が膨らんだ。

2014年6月に、生活秀集団、騰旭服飾など、温州経済を代表する大手民間企業13社が倒産し、中国経済の行方はさらに不安なものになった。

また、中国東北部で最大規模の石炭会社、龍煤集団が経営難に陥り、やむをえず給料を45日 ずつ支給する制度への移行を強いられた。

P.20~21

40年前の生活水準に戻る中国

2014年に、中国社会科学院が2011~30年における中国の経済成長率の予測デー夕を発表したことがある。それによると—、

  • 2011〜15年 8.0〜8.7%
  • 2016〜19年 5.7〜6.6%
  • 2020〜30年 5.4〜6.3%

中国経済は高成長時代に別れを告げ、中低速成長に入った。これは「新常態」(ニユーノーマル)と呼ばれている。いま、中国で流行っている経済新語である。 前記の数字よりさらに厳しい予測デー夕もある。

2014年10月20日に、コンフアレンスボード(全米産業審議会)は2020年以降、中国の経済成長率はわずか4%しかないというショッキングな予測を公表した。コンフアレンスボードはアメリカの民間経済調査機関の1つであり、アメリカおよび世界の経済動向分析、予測などを行い、数々の実績がある。 この成長率4%が現実の話となれば、中国は大変な状態に陥ることになるだろう。 貯蓄、投資、物価、就職、財政収支、国際収支、人民元為替、貨幣供給、預金利率など想像する以上の恐ろしい変化が中国の人々に襲いかかると思われる。

成長率4%といえば、先進国では高い伸び率である。先進国の多くは成長率が4%以下なのだから中国はそんなに焦る必要はないという声も聞かれる。

だが、先進国にはすでに社会インフラがよく整備されており、巨額の富の蓄積があり、福祉と社会保障が充実しているため、成長率が緩やかであってもさほど問題はない。しかし、中国はそうはいかないのだ。GDPが相当に上がらないと、社会福祉も国民生活への保障なども消えてなくなってしまうからだ。

かつては、そのために必要なGDP成長率は8%といわれ、「保八(8%を維持する)」が絶対条件だとされていたが、もはやそれを唱える政府関係者や学者はいない。無理だからだ。

平たく言えば、工場からの製品出荷が鈍り、デパートには買い物客の姿が見られなくなるということである。 生産も消費も激減する。成長率4%とは、40年前の生活水準に逆戻りするということを意味する。

中国政府は、自分たちは開発途上国で、国民1人当たりのGDPはかなり低水準にあると、主張 してきたが、それは本当だろう。中国の1人当たり名目GDPは2014年時点で7589ドル、日本の5分の1程度だ。「先進国クラブ」といわれる経済協力開発機構(OECD)の最低水準が1万ドルだから、まだまだ先進国には遠い。にもかかわらず、時間はあと5年しかなく、大不況はあっという間にやってくる。

P.24~25

②労働人口減による激震リスク

2つ目の重大事件は、2015年から中国の生産年齢人口が急減し始めることである。毎年約400万近くの労働力が失われ、経済発展に大きな打撃を与える。人件費の高騰が予想され、成長率の失速が避けられそうもない。

一人っ子政策のつけが回ってきたのが原因であろう。2014年から一人っ子政策が見直されたが、もう遅すぎるのは明らかである。これから20年間は逆転の望みがまったくない。

ここでユニークな数字を挙げてみよう。中国は毎年、「全国教育事業発展統計公報」を出しているが、それによると、1995年には小学校が67万校あったが、2012年には23万校にまで減った。44万校が廃校になったのだ。毎年平均2万6000校が閉鎖されている。一方、小学校の生徒数は1995年に2531万人いたが、2012年には1714万人にまで減った。817万人も減り、毎年平均48万人の生徒が消えている。

中国の労働人口の急減によって、住宅、生産、消費、貯蓄、税収、外資導入などの事情に、深刻な影響が及ぶのは間違いないであろう。

いままで中国は安価な労働力に頼って、経済を発展させ、多くの富豪を輩出してきた。だが、格安の労働力が失われると、ローエンド製造業のグレードアップができなくなり、中国製品の多くは国際競争力を失い、主力の輸出産業が不振に陥り、企業の破産が相次ぎ、中国経済は立ち行かなくなるであろう。

しかし、若者の減少によって暴動件数は急減するかもしれない。

P.60~61

氾濫するニセの外資企業

すこし前まで、中国の経済開発区は繁栄を極め、急速に発展する中国経済の象徴となっていた。 外国人投資家たちは中国へ視察に来るたび、必ずと言っていいほど、現地の政府関係者に経済 開発区の見学に案内された。優遇政策があり、インフラ整備が整い、ペンキ塗りたての新しい工 場建物が建っていて、豊富な労働力が随時供給される。決心さえしてここに来れば、利益倍増の 夢が実る。こんなぴかぴかのビジネス世界が描かれた。

それでは、経済開発区は、いまなぜ没落していったのだろうか。

原因はいろいろあるが、やはりひどいGDP依存症にかかっているため、正常な経済活動に歪みが出ていることが大きい。実績を粉飾するのは当たり前になっており、将来性や持続性のない外資企業の導入が盲目的に行われていた。

高汚染、高工ネルギー消費、かつ本国で禁止された生産品目を扱う外資企業が続々と中国に進 出してきた。結局、そのつけが回ってきて、やむをえず閉鎖や破産に追い込まれたのである。

加えて、ニセの外資企業が氾濫したことが大きい。たとえば、厦門のある民間企業は、もともと中国国内で汚水処理の設備を生産していたが、利益をあげられなかった。そこで、経営者は香港で会社を設立し、一夜にして香港商人に変身した。続いて、厦門にある.元の会社と新しい合弁会社を作り、開発区に入居した。こうして外資企業の身分になったことにより、工業用地、納税、銀行融資など、さまざまな優遇が受けられ、業務上の便宜も図られた。

それによりコスト減につながり、しばらくは儲かっていた。しかし、技術革新が進んでいなかったので、結局、市場競争に敗れて会社は破産した。

一方で、役人腐敗が深刻化しており、企業の正常な生産活動が脅かされているのも事実である。 1部の役人は企業に賄賂を強要し、あの手この手で企業から利益を吸い取った。

大連市にある某経済開発区に進出したある民間企業の話だが、2000万元で15へク夕―ルの土地使用権を取得した。しかし、そのためのコストは高くついた。役所の各部署の役人に400 万元を渡し、銀行から8000万元の融資を受け、さらに闇の金融組織から高い利息で2000 万元を借りた。

毎年の利息は1200万元で、政府関係者たちとの交際費を含めた支出は最低300万元もかかっていた。にもかかわらず、工場稼働から4年目になっても、年間売り上げは400万元にも 達していなかった。

社長は困りはてる毎日だが、将来いつ開発区が転売されて商業用地になるときに、土地がいい値段で売れれば……と僥倖をあてにしている。

地方の長官はこうした現状を知らないはずはないが、まったく対策がとられない。見て見ぬふりをしている者が多いのだ。自分の任期が終われば、厄介なところからさっさと脱出しようという、いいかげんな人間も多い。

P.114~115

中国での教育費は、普通の大学まで行かせる場合で約100万元(約1800万円)かかる。 夫婦の年収を12万元としても、その約8年分だ。日本に当てはめて考えれば、年収400万円の一般家庭で教育費が3200万円もかかることになる。

また、医療費については、中国では、「風邪くらいなら生活費を切りつめれば薬が買える。盲腸を手術するくらいの病気になると、親戚や知人から借金し治療費にあてるが、一生返済し続けなければならない。がん、糖尿病、肝臓病などの長期治療の必要のある重病にかかったら、医療費は絶対に払えないから自殺したほうが家族のためだ」という言葉がある。

2012年4月、河北省の農民が、病気で壊死しかかった右足をのこぎりで自力で切断するという事件があった。貧乏のため病院で手術する金がなかったからだ。このニュースに、国民の多くがショックを受けた。

国民の多くは二重の苦しみをなめさせられているのである。

このような状態にもかかわらず、絶対主義といわれる中国共産党の最高指導部が、なぜ国有企 業のずさんな経営に監督・管理を行わないのかといえば、中国の政治は既得利益集団の政治であり、それぞれの国有企業の裏には、必ず権力を笠に着る太子党や既得利益集団の存在があるからだ。

2014年12月に汚職容疑で逮捕された中国共産党中央委員会政治局元常務委員の周永康は石油業界を牛耳っていた影のボスであった。

彼は北京石油学院を卒業し、国内の油田の石油技師などを務めた後、1996年に巨大国有企業の中国石油天然気集団公司の前身である中国石油天然気総公司の社長となり、石油閥の中心的存在として巨大な利権を握っていた。

後に江沢民元国家主席に抜擢されて、党中央政法委員会書記として中国の公安・司法部門の頂 点にも立つなど、絶大な権力を手にしていた。彼が誰かに「死ね」と言えば、実際に、言われた者の命は翌日までもたないほどであった。

筆者の中国生活の体験からも、周永康は非常に恐ろしい存在で、彼が拘束されたというニユー スが正式に発表されるまで、誰もが彼のことについてはロを噤んでいた。うっかり悪口を言ったら、それが周永康や周囲の人間にどう伝わるかわからないからだ。その意味では、中国では恐怖政治がまだまだはびこっているのである。

周永康の失脚後、彼の腹心や徒党が100人以上も逮捕された。

P.196~199

個人塾すら開けない政治システム

このように、中国には役所も役人も多すぎるという現状だが、もちろん、これほどの役人がいなければ社会機能や経済活動が停止してしまうわけではない。逆に、役人たちが仕事を奪い合う現象が現れているのだ。

これは中国の社会システムを理解するうえで、非常に重要なポイントである。中国が「多頭管理社会」(管理•監督者が多い社会)だと呼ばれているのも、そのためである。

つまり、会社であろうが個人であろうが、団体であろうが、何か1つやろうとする場合必ず複数の管理部門の役人がやってくる。彼らにそれぞれ許可を取り、彼らの指導監督を受けなければならない。

筆者が遭遇したことはその一例だ。自分は文章を書くのが好きなのでこの特長を生かして家の近くで作文教室を開こうと思った。中国の大学入試科目には作文試験があり、それを苦手とする受験生が非常に多い。だから、商売として諸条件が整っているはずだと考えた。

しかし、実際に教室を開くための手続きの流れを調べたら、そう簡単には事業を立ち上げられないことがわかった。次のような3つの部門の許認可が必要だからである。

①民政局の許可。複数の人が集まるから、団体資格の審査が待っている。

②工商管理局の許可。ビジネス活動だから、会社の資本金などが調査される。

③教育局の許可。作文を受験生に教えるという仕事だから、教師の資格か問われる。

結局、作文教室の話はまもなく流れた。中国では基本的に、民間人経営の塾は認められないことになっている。日本では自営業として塾をやる場合、とくに手続きはいらない。毎年、収入の確定申告をすれば済む。

資本主義義の自由経済システムでは、きちんと納税すれば何をやるかはまったく個人の自由である。これに対して、社会主義の「権力者経済」システムでは、役人の顔色がビジネスの可否を決 める。

筆者はつくづく思うが、1民間人の塾までもが厳禁される国に、いったい「経済大国」と呼ばれる資格があるのだろうか。教育の範囲が制限されれば、人材の育成などできるはずがないではないか。おかしくてたまらない。

しかし、逆に考えてみれば、ある種の筋は通っている。それは経済が本当に自由化したら、役人たちはみな失業してしまう、ということだ。だから彼らにとって、「社会主義市場経済」は絶対に維持しなければならないのだ。

「多頭管理社会」は非常に害が多い。効率が悪いし、誰も責任をとらない。中国の発展が阻まれ る体制上の大きな欠陥の1つである。

中国語には、「中央指令不出中南海」という、非常によく知られた政治的言葉がある。中央政府の重大決定は紙上にとどまるだけで、人が中南海(共産党本部のこと)の会議室を出たら決定が直ちに無効となる、という意味の言葉である。要するに、誰も責任をもって決定事項を履行しようとしない、ということだ。

しかし、悪いのは下級の幹部たちではなく、この政府による管理体制そのものである。 先の塾開業の話を例にしてみよう。中央政府が民間に塾の経営を開放しようと決議したとする。 決定が「民政部j「国家工商行政管理総局「教育部」に伝わるが、3つの官庁とも何もしない日々が続く。リーダーがいないからである。3つの官庁とも同級の部門なので、誰が誰を指導するということはないのである。責任不明の状態が続いていれば、結局、ことはうやむやになってしまう。

これは1つの例だが、中国では基本的にこういう結果になることが多い。 また、このような状態で積極的に動けば、自分で自分の首を絞めることになる。いくら自分1 人で奮闘しても、他が動かなければ失敗は目に見えている。そして、その失敗の責任だけを押しつけられるからだ。だから、誰もが中央政府の決定に従おうとしない。現実はこの通りなのである。

P.234~237

中国ならではの「公共情婦」

中国腐敗役人のセックスパ夕―ンにはもう1つ、世界的に類を見ない特徴がある。それは「公共情婦」の存在である。

公共情婦とは何か。平たく言えば、腐敗役人の一味が1人の美人を共同で囲うということである。

腐敗役人たちは困っていない。むしろ金が多すぎて、どう使うか困っているほどだ。金で女を買いたければ美人がいくらでもいるが、彼らはなぜ公共情嫌が好きなのだろうか。その理由は、政治同盟を結成するためである。

中国腐敗役人にとって同じ女性と寝ることは、男たちが固い信頼関係を築き、心を1つに束ねるのにもっとも有効な手段となる。そのとき、セックスは単なる性的な快楽ではなく、ヤクザ世界の血の契りのようなものになるからである。

彼らは結束力を強め、互いに利用し合い、庇い合い、結託しながら政敵に立ち向かって戦い、 そして権力のネットワークを駆使して、政治上かつ経済上の最大利益を獲得しようとしているのである。だから、腐敗役人は「陰道党」(女性の陰部でつながった悪党グループ)とも呼ばれている。

李薇という美人がいた。公共情婦の第1号といわれているが、出身は不明だ。元ベトナム難民の子女という説もあれば、昆明市に戸籍がある女だという説もあった。だが、頭の回転が速く、気の強い男勝りの性格で、男の色欲を利用して自分が夢見る巨富の財を手に入れられることを誰よりもよくわかっていた。わずか10年で、普通の女から複数の中央政府の汚職高官が寵愛する公共情婦になった。

李薇を抱いた男には、周永康、薄熙来のほか、杜世成(元青島市長)、李嘉廷(元雲南省長)、 陳同海(元中国石油化工集団公司社長)、劉志華(元北京市長)、黄松有(元最高法院副院長)、 王益(元国家開発銀行副行長)、鄭少東 (元公安部部長助理)、金人慶(元財政部長)などの名があった。中国政界の腐敗ぶりが鮮明に露呈している。

李薇は2006年に逮捕されたが、起訴されずに2010年に突然、釈放された。そしてまもなく出国までも許され、以降は完全に姿を消した。周永康の極秘指令が出たためだと囁かれたが、腐敗役人の秘密を知りつくした女を海外へ逃がし、永遠に祖国に戻らせないほうが得策だったのだろう。

有名な公共情婦はほかにもたくさんいる。たとえば、湖南省某国有企業社長、蒋艶萍(湖南省籍、19 99年逮捕)、軍属歌手、湯燦(湖南省籍、2011年逮捕)、山西省某市委副書記、張秀萍(山省籍、2014年逮捕)、および山西省某市長、楊暁波(山西省籍、2014年逮捕)などだ。彼女たちは肉体を男に売ることによって、金と権力を手に入れた。

公共情婦として複数の高官の間を行き来している女は、連絡係のような存在だ。汚職役人の一味は、公の場で連絡し合うのは都合が悪いので、代わりに女が重要な情報を男のベッドまで届け たのである。

どこどこで重要な会議が開かれたとか、役人の誰々が中央政府の監督部門に目をつけられたと か、何々の話は絶対に口外してはならないとか、誰々の動きは警戒しなければならないとか、秘 密情報員の女を通して男たちが共同作戦の歩調を揃えるようにする。

また、彼女たちはいかに男を虜にするのかをよく心得ている。一言だけですぐに男の歓心を買うことができる。それは、「貴方とセックスするのが一番の楽しみだ。ほかの男とはうまくいかない」という一言だ。これだけで十二分に功を奏するといわれている。

汚職役人の多くは贅沢三味な生活のために栄養が過剰で、血圧、血中脂質、コレステロールなどの健康指数が異常だ。これらの血管系疾患が進んでいくと、セックスパワーが目立って弱まり、 勃起不全など性的不能につながることが多い。そこで、そればかりを気にする男が多い。だから 女からご褒美の言菜をもらうと嬉しくなる。嘘とは知らずに、自分の一物は他の男よりかなり優秀だと勘違いしてしまうのだ。

P.246~250

「南京大虐殺追悼日」に殺到する批判

中国政府は、2014年から毎年12月13日を「国家公祭日」とすることを発表した。 国家公祭日とは南京大虐殺にちなんだ国家哀悼の日であり、正式名称は「南京大虐殺犠牲者国家追悼日」である。1949年の建国以来、初めて定められた国家級の追悼記念日である。この日は、盛大な追悼行事が行われる。

筆者は、2014年の第1回「国家公祭日」が終わった後、2つのことを思った。 1つ目は、なぜ建国後65年も経ったいま、このような公祭日を設立したのかという疑問である。いままでなかった理由は何なのだろうか。どのような政治的な企みがあるのだろうか。 2つ目は、言論の自由の空気が、すこしずつだが広まっていることを感じた。というのは最高級の国家公祭日が南京大虐殺記念館で厳かに行われた翌日、直ちに国家公祭日の設立に対する疑念や不信を込めた投稿や反発の声が、中国のネット上を駆けめぐったからである。 中国では、ネット上でも自由な発言はできない。ネット規制がかなり厳しいため、不都合な言論はどんどん削除される。

ある若者は、ネットでの投稿でこう語った。

「昨日、ある大学教師の家を訪問した。ちょうどテレビが抗日劇を放送しているところだった。僕が、いま中国の経済実力は日本をはるかに超えているから、中日戦争はもう起こらないだろうと言ったら、先生は、それは違う、戦争の勝負は軍事力より人心のまとまる力のほうがよほど重要だ。中国の現状を見てみろ。役人腐敗が氾濫し、人心がばらばらで、敵と戦うどころではない、と言った。先生の話は正しいと思う。『国家公祭日』が設立されたが、人心を結束させて敵に立ち向かわせることはできないと思う。戦争は昔の話だからだ。いまの中国を考えてみよう。腐敗した権力者は国民に何をもたらしたのか。国民の多くは、むしろ自国の腐敗役人を大変憎んでいるのではないだろうか」

引用がすこし長くなったが、この若者の考えは、多くの人の思いを代表しているだろう。

反日の話になると必ずと言っていいほど出て来る南京大虐殺館は1985年に開館したが、筆者の友人の1人は、1993年に初めてここを訪ねた感想を、こう語った。

—定期保守が施されていないのか、道路の状況は非常に悪く、雨の中、バスに揺られながら着いた記念館は、まるで田舎にある展示館レベルだった。印象に残るものは少ない。

ちなみに、南京の住民が友人などの来訪者をこの記念館の見学に案内することは、まずないそ うだ。

実は、もう1つ不可解なことがある。それは、2004年までの約20年間、中国で最大級の「愛国主義教育基地」に指定されているこの記念館の参観が有料だったということである。そのために見学者が少なかった。国民の間には、重要な国家記念館が金儲けをしているのはおかしい、 という声が絶えなかった。2004年から無料開放となって、ようやく見学者が増えたのである。

南京大虐殺について、日本では「実際にあった」と認める説から、「まったくの噓だ」という説、ある.いは「あったが中国の主張する犠牲者数は多すぎる。もっと少ないはずだ」という説まで議論が分かれている。もちろん、中国では「犠牲者30万人」が公式見解だ。

ところで、2014年11月、国家公祭日の実施直前に1冊の本が出版され、私を含め読者に大きな衝撃を与えた。その書名は『南京大虐殺全記録』で、著者は中国作家協会副主席の何建明である。中国では部長級の高官である。

内容は書名通り日本軍が南京で虐殺を行ったことを記録し、日本の侵略行為への批判を展開したものであるが、いままでに知られていない真相や、夕ブー視されてきた真実も多く書かかれていた。非常に珍しい本である。

著者は本の中で多くのページを使って、当時の南京を守備する元中国軍兵士の証言を紹介して いる。当時、中国の主力軍は国民党軍だった。そこで述べられていたのは、驚くことに、真っ先 に中国人に銃口を向けたのは、日本軍ではなく中国軍だった、ということである。多くの中国人にとって信じられない話だが、動かぬ事実なのである。

当時、中国軍は15万人いたが、2万人が戦死したものの、残りの13万人は戦わずに逃げ回った。 指揮官たちが真っ先に逃げてしまったため、指揮命令系統が完全に麻痺状態となり、撤退命令を 受けていない兵士と、受けたという兵士の間で、激戦が繰り広げられたのである。戦場は唯一の 通行ロである城門だった。ここでは5000人以上の兵士と平民が命を落とした。

人々は命からがら別の場所から逃げ出して、ようやく揚子江のあたりまでたどり着いたが、対岸まで運ぶ船は2、3隻しかなかった。そこでまた、熾烈な血まみれの奪い合いが始まったのだ。 他人を船から川に突き落とす者、川に落ちて上がれず船の縁をつかむ者、定員オーバーのため 船が転覆して大声で助けを求める者、机や椅子などにつかまりながら川の中であがく者など、死を恐れる人たちは手段を選ばずに必死に避難している。

もっとも残忍なのは、船に乗れなかった兵士たちが、離れていく船上の人たちを狂った野獣のように機関銃で掃射し、夥しい人を死なせたことである。川一面に死体が浮かび、血の海と化した。死者の数は数万人に上ると推測される。

この血腥い中国人同士の殺し合いをどう解釈すればいいのか、筆者には分からない。困惑と怒りを感じるだけだ。

日本と中国の間では南京大虐殺の事実をめぐっての議論が絶えないが、最大の焦点となるのは 犠牲者の人数だ。前述のように、日本ではさまざまな説があるが、中国側は犠牲者30万人という これまでの主張を変えようとしない。 ある中国人作家は、自身のブログで、この問題についてこう語る。

「当時の南京住民の戸籍管理はめちゃくちゃで、正確な人口の数字がなかった。警察庁の公式書 類には、20万人と記載するものもあれば、50万人と記載するものもある。真相は闇のままである。 1945年以降、国民党政府、共産党政府、また各民間組織は『南京大虐殺』の事実を調べていたが、お粗末なものが多く、信憑性が薄い」

彼はさらに言う。

「30万人という死者の数字は大きいものである。しかし、被害者の名前、住所などは私たちにわかっていない。日本の広島、長崎では被害者の情報が正確に統計されているが、対照的に中国の状況は汗顔の至りである」

P.266~268

寛容の心がない中国人

まさに問題は、中国が「赦しのモデル」であるフランスのように行動できるかどうかにかかっているわけだが、それは可能だろうか。

中国人は基本的に恨みを根に持つ民族である。なかなか相手のことを許さない。寛容の心がない。だから、民族性がばらばらで大きな束にならない。 ここで例として、中国で謝罪するA氏と、謝罪されるB氏のやり取りを見てみよう。

1日目

A氏:「×××の件については非常にご迷惑をかけました。心からお詫びします」

B氏:「いやいや、大したことはありません。私たちはいい友達ですからね」

A氏はB氏の寛大な態度に感動し、謝罪がすんだと思ってうれしい。

3日目

不快な表情を顔に浮かべるB氏が、A氏に言う。

B氏:「あなたはいけませんね。お詫びしたものの、その後、誠意も何も行動に表れていないではないですか」

A氏が困惑した表情で言う。

A氏:「誠意って、私はどうすればいいんでしょうか」

怒るB氏。

B氏:「自分はなぜいけないのか、その原因を反省しなければならないのではないでしようか。 原因がわからなければ、これからも同じ誤りが繰り返されるでしょう」

A氏は驚いて、顔面蒼白になった。

5日目

A氏:「よく考え抜いたのですが、X X X X Xが原因で誤りを犯したことを心から反省します」

A氏の再度の謝罪に、B氏は「んんん」と一応満足そうな様子である。

7日目

B氏:「あなたは原因を探していたが、その一歩前進した姿勢は評価したいです。しかし、原因は別のところにあり、もっと深刻に考えるべきだと思いますよ。しっかりと考えてみなさい」

そう言われたA氏は、愕然として言葉が出なかった……。

これは架空の話だが、読者の周りに中国人の知り合いがいたら、ぜひこのやり取りについて確 認してみてほしい。中国人に謝罪すると、こんなふうになるということに誰もが同意するだろうと思う。

謝罪に対してきりのない悪循環が続くのが、中国人の特徴だろう。だから、中国人はたとえ自分に落ち度があっても、謝罪しないことが多い。

繰り返すが、国と国の関係は国家の名誉や国際的信用にかかわる外交関係なので、すべての問 題は正式な外交文書を交わして解決するのが正しい筋道である。道義上の問題を外交問題に持ち込むことは、国交の正常化に悪影響をもたらす結果としかならない。

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