櫻井よしこ×花田紀凱『「正義」の嘘』について

マスメデイアはすぐに「言論の自由」とか「表現の自由」とか言いますが、自分に都合が悪くなると頬かむり。朝日新聞なんてその最たるもの。昨年の8月の慰安婦誤報報道も開き直り、海外向けでの謝罪もしていません。『「正義」の嘘』は朝日が代表するメデイアの嘘を指します。今の日本のメデイアに「正義」の観念があるかどうか。理性的でなく、すぐに情緒的に大騒ぎする癖があります。貧困問題、安全保障問題、不法在留問題等現実を見据えて自ら合理的解決案を提示してみたらと言いたくなります。この点では民主党、社民党、共産党と同じく無責任であります。しかも平気で嘘をつくところも一緒。8/30国会周辺デモは主催者側発表12万人と言う数字を垂れ流して報道していますが、警察発表は3万人。60年安保の時は警察発表で13万人ですから、今回の数字は大したことがありません。どうせ共産党とかが動員したのでしょう。日本のメデイアは産経・読売を除き、中国と朝鮮半島の手先です。

朝日新聞は如何に戦争を煽っていたかが西尾氏の発言から分かります。戦後は手のひらを反してGHQに擦り寄り、共産中国や北朝鮮擁護に走りました。こんな変節新聞を、「日本の良識」と思って有難がって読んでいる人は、朝日新聞の過去をキッチリ理解した上で読んでほしい。でないと刷り込まれるだけです。金を払って、インチキ情報を頭にインプットしてるようなもので二重に悪いとしか言いようがありません。小生は日経を読んでいますが、富田メモに象徴されるように政治は偏向していますし、経済は中国進出を煽りに煽ってきましたので、その2点については眉に唾して読んでいます。でも、伊奈久喜、春原剛、鈴置高史、福島香織(フリー)の記事が読めます。

ドイツはひどいですね。ユダヤ人だけではないですね。第二次上海事変も一次と違い日本軍が苦しめられたのもドイツ軍事顧問団指導による要塞でした。中国とは裏で繋がってましたし、今でも経済的結びつきは強いです。ワイツゼッカーの謝罪は国家としての謝罪(=賠償)でなく、ユダヤ人虐殺に対してです。日本のメデイアは中国発なのでしょう。そういった事実には目を塞ぎます。

今の日本の社会は軍事には無関心。政治に無関心以上です。やはり日本が弱くないと困る国があるのでしょう。でも主権在民の国で、軍事に関心がなければ、平和を維持するのは難しくなります。隷従一直線です。(昔、小林よしのりの「東大一直線」という漫画がありましたが)。オバマを見ていると分かるでしょう。軍事嫌いが何を引き起こしたか。ウクライナや南沙・西沙、尖閣の問題、チエンバレンの宥和政策が何を齎したか。自分の頭で考えるためにはいろいろ調べることが必要です。今は幸いネットという強い味方があります。検索すればすぐに必要な情報が入ります。

内容

P.42~50

櫻井:私と花田さんが番組を持つ「言論テレビ」は、イン夕―ネットの動画コンテンツなので、若い人たちだけが見ていらっしゃるかと思ったら意外にそうではありません。実は言論テレビを毎週見て下さる正会員の中には若い世代と共に五〇代、六〇代、七〇代の方もたくさんいらっしゃいます。

花田:そうなのです。だからどちらかといえば、ネットの世論調査のほうが実は客観的なのではないかという気が私はしています。

櫻井:安倍総理の靖国参拝後の世論調査では、ネットでは八割が支持したという数字があったとも聞きました。

花田:ヤフーが行った意識調査で〈安倍首相の靖国神社参拝は妥当?〉という質問では、八割近くが妥当と回答していました。

櫻井:でも、彼らは都合が悪いので、それを書かない。

都合が悪くなると書かないということについては、ずいぶん古い事例なのですが こういう本を挙げておきます。

それは、『読んでびっくり朝日新聞の太平洋戦争記事』で、戦後五〇年が迫った一九九四年にリヨン社というところから出版された本です。すぐに朝日新聞が権利関係で法的手段をちらつかせてこれを絶版にさせました。その後、太田出版からほぼ同じ内容の『朝日新聞の戦争責任—東スポもびっくり!の戟争記事を徹底検証』が発行されています。

『読んでびっくり朝日新聞の太平洋戦争記事』には、昭和ニ〇年八月一四日の朝日新聞の記事が挙げられています。翌ー五日に日本は降伏するわけですが、その前日の朝日新聞の社説〈敵の非道を撃つ〉にはこう書かれています。

〈われらはわれらに與へられた至上命令である航空機増産、食糧増産その他の刻下の急務にひたすら邁進すれば足る。敵の暴虐に対する報復の機は一にこの國民の胸底に内燃する信念が、黙々としてその職場に於て練り固めつつある火の玉が、一時に炸裂するときにある。

すでに幾多の同胞は戦災者となっても、その闘魂は微動だもせず、いかに敵が焦慮の新戦術を実施しようとも、一億の信念の凝り固まった火の玉を消すことはできない。

敵の謀略が激しければ激しいほど、その報復の大きいことを知るべきのみである〉 まだ戦え、戦えと奨励している。

終戦の前の日の社説ですよ。

私がこのことを本当に酷いと思うのには理由があります。終戦の五日前に当時の下村(宏)情報局総裁談話によって、「戦局は最悪の状態」との声明が発表された。そして、朝日新聞はこれを日本の敗戦を示唆した初めての政府声明だと受けとめたということですが、新聞人としては、敗戦を政府が発表したと受けとめたのならば、すぐに発表しなければならないわけでしよう。

にもかかわらず、そうしていない。先の書籍が細川隆元氏の著書『実録朝日新聞』を引用しながらどう書いているか。当時の朝日新聞の編集主幹たちが、新聞はむしろ知らぬ顔をして、従来の「国体護持、一億団結」を表に出していった方がよかろう、 と編集方針を定めたというのです。そして前の日の社説までイケイケドンドンを主張して、多くの死ななくていい人たちを戦場に送り込んでしまった。

急に編集方針を変えることができないから、徐々に書いていこうということだったようですが、それはつまり単に自分たちのメンツを守りたいということでしよう。

花田:メンツに捉われるから、報道が歪むんです。

櫻井:こういうメディアがいまや「日本の良識」などという。

花田:自社が戦時中に戦意高揚のためにどういう報道をしてきたかについてきちんと検証し、それを詫びるということをまずやらなくてはいけなかった。

櫻井:していないですね。

花田:それがもう根本的におかしいと思います。単なる誤報ではない。

櫻井:朝日はしかし「いや、我々はやりました」という主張だと思います。終戦直後の新聞にものすごく小さなスペースでちょっと反省文を書きました、と。しかし、これは朝日新聞の一面の真ん中よりちょっと下のところに小さく書いてあるだけです。 これをもって戦前戦中、戰争を煽ったことに対する謝罪だとは誰も考えないでしょう。

毎日や他の新聞も多かれ少なかれそうだと思うので、朝日だけを責めるのはどうかという意見もありますが・・・・。

花田:朝日は日本の新聞の一応、代表的存在ですから。

なぜ朝日新聞ばかりを標的にするのかとよく言われます。たとえば、ぼくは一九八八年から『週刊文春』の編集長を六年間やりましたが、その間に朝日について八〇数本もの記事で取り上げたそ、うです。『ダカーポ』編集部が調べてくれたのですが。

「なぜ朝日ばかり」と聞かれたら、朝日は日本の新聞の代表だからだと答えています。部数はたしかに読売の方が多いかもしれないけれども、やはり朝日新聞に対する読者の信頼感は高いものがあるわけで、日本の新聞の代表として取り上げている。別に朝日が憎くてやっているわけではありません、とこう言っています。

櫻井:朝日に期待するという部分が、逆説的にいえばあるのかしら。

花田:そういうこともあるかもしれませんね。いや、ないか(笑)。

櫻井:批判は、がんばるべきだと、がんばってほしいという気持ちでもあるということでしょう。

大メディアをよくする方法

花田:本当に安倍総理の靖国参拝と特定秘密保護法に対する朝日新聞などの報じ方を見ていて、ぼくはもうほとほと日本の大新聞に絶望しました。いくらやっても虚しいなという気さえしましたね。

櫻井:花田さんがそんなことを仰ると、メディアは困るじゃないですか(笑)。

花田:そう言いつつ大批判の特集を組むんですけどね(笑)。朝日新聞だけでなく、テレビもいい加減な報道をしていますね。

櫻井:私もテレビの無責任さにはいろいろな思いを抱いているのですが、テレビの検証は難しいのです。新聞はあとで読めますが、テレビでの発言はなかなか確認ができない。

花田:前から言ってるのですが、一度放送したものについては、たとえば研究者やジャーナリスト、あるいは他のメディアなどが希望したら、必ず放映済みの映像をDVDなどで提供するというシステムをつくるべきです–それは有料でもいいのですよ。そういうシステムをテレビ界自身がつくらなければテレビはよくならないでしょう。このままだと批評ができない。

何気なくテレビを見ていて、「あれ?変だな」と思っても、すぐに消えてしまうわけです。ニ四時間、録画したり、メモしているわけではないですしね。最近、ネット上にはウォッチャーがいて、テレビ朝日の『報道ステ—ション』やTBS日曜朝の 『サンデーモーニング』など問題番組はきちんとウオッチしていたりしますけれども、 批判にさらされなければ、テレビ界はよくなりませんよ。

櫻井:日本のメディアがこのままでいいはずはないわけですから、どうにかよくしていきたい。テレビに関してはいま花田さんが言われたこと、一度報道したニユースや 番組は要求があれば自動的に供給しなければならないというルールは非常にいいですね。是非、NHKをはじめ民放各社に取り組んでほしいものです。 新聞はどうですか?

花田:新聞はいまの大部数を維持しようということ、大部数神話が一番の問題だと思います。それによるいろんな無理がきている。それぞれの新聞社が自前の販売店を持って、そこに莫大なお金を投入しているわけです。しかし、戦時中のように合配制度をとれば、ある新聞店が朝日も読売も毎日も産経も配ることができる。軒並み配れるから能率もいいし、費用も少なくて済む。 ところがいまは各社がそれぞれに配っているわけでしょう。ものすごい無駄。 こういうところを改善すればいいと思うのですが、彼らがなぜやらないかというと、お互いに正確な部数がバレて新聞の優劣がハッキリしてしまうからです。

櫻井:朝日は嫌だから読売にするということも簡単にできてしまうようになりますしね。

花田:だから絶対にやらない。それにそもそも押し紙(売れないのに販売店に押しつける部数)してまで、八〇〇万部、一千万部の大部数である必要はないですよね。

櫻井:小さな新聞社でも、合配制度を使えば「クオリティーペーパー」を全国に配ることができる可能性があります。が、いまは単体の販売所を持たなければならないので、小さな新聞社ではどうしても体力的に無理な状況が続いています。

花田:アメリカは新聞の数は多いけれども、発行部数はそうでもない。電子版が好調のようですが、紙と電子を併せても「ニユーヨーク・タイムズ」で一五〇万くらいでしよう?「ウォール•ストリート•ジャーナル」も二〇〇万部くらいですよ。

櫻井:私がかつて勤めていた「クリスチャン•サイエンス・モニター」は、当時は 一八万部でした。

花田:けれど、すごく影響力はあるわけじゃないですか。言論界に大きな影響力がある。そういう新聞をつくっていかなければならないですよね。だからぼ<は今、東西で一六〇万部くらいの産経新聞には期待していて、日本のクオリティ—ペーパーは産経だ、あまり大きくならない方がいいと言っています。

櫻井:ハッハッ、それでも私は産経新聞の部数が增えてほしいと思います。とりわけ沖縄県では何とかもっともっと読まれてほしい。

P.118~127(西尾は西尾幹二)

西尾:結局どうなるのか。朝日が生きていくためには、読売、産経に近づくのか。私はそれを期待しますが、読売、産経に近づいてしまったら、ひょっとすると、産経より右なったりするかもしれませんよ。なにせ、ペティ•ジャステイスですから。「右がジャスティスだ」となったら、「右向け右」となってしまう。朝日新聞とは、そういう会社なのですよ。だって、戦争中がそうだったのですから。

花田:今度は右に暴走すると(笑)。

西尾:私は花田さんも知っての通り、『GHQ焚書図書開封』(1-10、徳間書店、二〇〇八年〜)という仕事をしています。GHQ焚書図書とは、戦後アメリカの連合国軍総司令部(GHQが没収した戦前、戦中の七〇〇〇冊以上の図書のことですが、この中で朝日新聞社から刊行された書物は一四一点ほどで一番多いのです。

花田:いかに戦争協力に熱心だったかということですね。

西尾:そうです。いかに戦時プロパガンダで生きた新聞だったかということです。ベストスリーは朝日新聞、講談社(八三点)、毎日新聞(八一点)の順です。この3社こそ、その後は戦後民主主義、白虐史観で生きようとしてきた会社です。私はしみじみ考えるのですが、なぜ朝日がこうなったかということは、罪の意識でそうなったのではなく、戦争.にとことん打ちのめされると打ちのめした相手の神を自らの神として、それにすり寄っていくことで生きようとする。こういう心理構造だと思うのです。

戦後日本はだいたいそういう傾向があったのですが、だんだん国民がまともになってきて、極端な自己否定の間違いに気がつき、敗者にも正義があることを知るようになり、今までの硬直した生き方を少しずつ捨てようとしています。国民がまともになっていく中で、今まで全面敗北主義でいちばん突出した世界が真っ先におかしくなる。朝日新聞の問題は、そういう事件だとみているのです。

ドイツの凄まじい管理売春

花田:ドイツの慰安婦問題については昔から発言されていますね。

西尾:慰安婦問題について、ドイツ人自身はほとんど考えていません。知られていない。なぜならば、先に述べたようにナチスのことで頭がいっぱいですから、彼らが慰安婦について考えている余裕はないのです。

一般のドイツ人は、自分たちに慰安婦の問題などないとずっと思っていました。

二〇年ほど前、日韓で騒いでいる話がドイツにも伝わってきて、そういえばナチス時代にもあった、あれはどうだったのかとドイツの左翼が騒ぎ出したのです。日本でも翻訳書がニ、三点出ていますが、それ以前の一九七〇年代に、軍事衛生問題研究家のフランツ•ザイドラー著『売春・同性愛・自己毀損—ドイツ衛生指導の緒問題 一九三九—四五年』(一九七七年)という本が出ています。翻訳はされていません。

この本の中で、ドイツで行われていたことが事細かに研究されていますが、それは軍事問題というよりも「衛生問題」でした。というのも、第一次世界大戦のとき、ドイツは約二〇〇万人の性病患者を出して、兵力が落ちたからです。

花田:どの国の軍隊にとっても大問題ですよね。日本軍が慰安婦の検診をするようになったのもそれが原因です。

西尾:その教訓から、第二次世界大戦ではいろいろな知恵を絞って、徹底した管理売春を行ったのです。まず売春の方法としては、司令部、司令官がすべてを取り仕切る。

花田:そういう施設は軍が作ったのですか。

西尾:ふた通りあって、西ヨーロツバ、つまりフランスやオランダでは公娼制度が熟成していたため、ドイツ国防軍は軍の専属施設としてこれを利用し、いわゆる女郎屋の女主人が売春婦の確保に努め、その代わり収入の半分を手にしました。

しかし東方、つまり東ヨーロツバからソ連にかけては、公娼制度がなかったため前線司令官の命令で、人さらいのような「強制連行」が少なからず行われました。

花田:軍が強制的に集めたりしていたと。

西尾:そうです。ザイドラーの前述の本には、例えば次のように書かれています。 〈若い娘で、労働力投入への呼びかけに応じてドイツに行くのはいやだといって拒んだ者は、二者択一として、国防軍売春宿にしばらく勤務する以外に選択の余地はなかった。ユダヤ女性に対してさえもこの二者択一が提案された。「やるべきことをちゃんとやれば」釈放が保証されるといって強制収容所で募集された女たちが、東部占領地区の売春宿に連れて行かれたか、それとも、ラーヴエンスブリュツク強制収容所で売春婦に仕立てられていった女性在監者と同じような運命を辿って、ドイツ国内で使役されるにいたったか、そこははっきりしていない。ただ、彼女らが美人で使いものにさえなれば、アーリア人であろうとセム人であろうと、たいして問題ではなかったのだ〉

強制連行は当たり前に行われていたのですが、へルケ・ザンダーとパーバラ・ヨールが書いた別の本、これは翻訳があり、『1945年・ベルリン解放の真実—戦争・強姦・子ども』(現代書館、一九九六年)にはこう書かれています。

<連合軍が押収して一九四六年にニュルンべルク裁判に提出されたドイツの記録文書、恐怖をあおるためにドイツ人征服者が組織的に強姦したことを立証している。ポーランド、ユダヤ、ロシアの女たちが強姦され、多くの場合、むごたらしく殺された。情容赦なく何百人もの少女や女性が迫害され、軍用娼家へ追い込まれそこで強制売春に使役された。いわゆる「慰安勤務」である。それが管理的に行われた大量殺人の前段階だったこともしばしばだった〉

こういう凄まじいことが行われたのです。

花田:ザイドラーの本には、西尾さんが著書『歴史を裁く愚かさ新しい歴史教科書のために』 (PHP研究所、一九九七年)に出された訳文によると、パリ大隊本部司令官の衛生指導将校がドイツ兵に対し、「性病にどう立ち向かうか」と通達した書類も紹介されています。これがまたすごいですね。

〈常軌を逸した房事に耽けらぬよう注意せよ!それはあなたの職務能力を引き下げ、あなたの健康にも良くない。

性病にかかった軍人は勤務不能である。自らの責任で勤務不能になることは、ドイツ軍人たるにふさわしくない!

それゆえ軍管理外の軽佻浮薄な女性との交際は避けよ。彼女らはたいてい性病持ちである!

アルコールは「性病の父」である。……〉

西尾:つまり、第1次大戦の失敗から、兵士を街で遊ばせると危ない、完全に管理したほうがいいということになったのです。特に東ヨーロツバではそうでした。

ドイツは合理的といえば合理的ですが、表も裏もない国です。これが日本だったら、売春婦を買ったといった話は隠れて言ったり、亡くなった小野田寛郎さんが書き残されていたように「ピー」という隠語で呼んだり、あるいは売春婦と結構仲よくなったり、人間的なのですね。

ところがドイツでは、性行為そのものが徹底的に監視されていました。不能も、中断も、全部監視され、記録されていたのです。だからそれは女性の悲劇だけでなく、男性の悲劇でもあるのです。

「強制連行」したドイツ軍

花田:そうすると、ドイツの場合の軍の慰安婦こそ、強制連行し、完全に軍の管理の下にあり、統制性のあるものだったのですね。

西尾:そうです。売春宿は五〇〇もありました。例えば、南イタリアの慰安所は終戦と同時にドイツの慰安所から米軍の慰安所へひっくり返った。そして女性もろともアメリカへ移ったそうです。そんな愉快な話もあります。

だから、どこの国もやっていたのです。どうか朝日新聞、調べて欲しいですね。 大いに研究して欲しい。朝日新聞に期待しますよ。世界中の戦時慰安婦がいかにひどく、いかに日本は微笑ましかったかということが、きっと分かるでしょう。

当時は売春宿のおかみがドイツ軍当局に対し、売春宿についての報告を全部、記録して提出しなければならなかったため、そうした書類も残されています。

花田:この書類を見ますと、売春宿が誰によって設立されたかをはじめ、安全保安対策は誰によってなされているか、娼妓の数、年齢、娼妓への報酬、誰が護を検査するのか、客の訪問時間は時間的に制限されているかなど、全部答えなければならなかったのですね。

西尾:売春宿の内規もありました。前線司令官の署名があります。 〈この宿は前線司令官の軍事的かつ警察的監督下に置かれる。許されるものは、軽い地酒のワイン、ビール、ミネラルウォーター、果汁ジュースに限られる。前線司令官の命令に反する騒音、暴行ならびに違反諸行為は、罰せられる。 この売春宿の女主人(または、その代理)は、緊急時に警察や軍隊の助力を求めるこ とが義務づけられている〉

ですから、売春婦をことごとく「キープ」したのです。これこそまさに、軍が管理 し、軍が「人さらい」までやった慰安所なのです。特にポ—ランド、ルーマニア、ウクライナの女性は被害者でした。拉致されたのですから。

ところが、驚くべきことはその先にありました。特に東ヨーロッパからソ連地域で大きな問題だったのですが、そこまでやっても性病を防ぎきれなかったのです。 しかも、南ウクライナでは、軍が建てた売春宿が、性病の発生源だということが分かって軍当局はほとほと困り果てたのです。そこで何を考えたかというと、売春宿を軍が管理しても駄目だということで、一般の女性にやらせろと。

花田:え?

西尾:一般の女性に性行為をさせろと。

花田:そんな通達が出たのですか。

西尾:はっきりそれが書けないから、軍事刑罰法典を改定して、被占領地域において強姦を犯したドイツ軍人の処罰が寛大に扱われるよう改められた、とザイドラーは指摘しています。

花田:よく、ソ連の兵士は「強姦型」というか、ドイツへ侵攻したら必ず女性たちを強姦していったと言われていますが、ドイツはそれに近いひどさですね。

西尾:だから、ドイツはベルリンでソ連に復讐されたのです。 話を戻すと、ドイツ軍人に対しては、次のように改められたのです。 〈ドイツ帝国と帝国併合地域の外部に動員されたSS親衛隊ならびに各種警護部隊の構成員に有罪の判決を下すに際しては、強姦罪の量刑に当っては、つねに特別の事情が考慮されなければならない。彼らは特別の事情の下に勤務を果たしているからである〉

戦争がある限りなくならない問題

西尾:さらには、次のような条文もありました。〈よしんば、強姦犯罪が武器の脅しで行われた場合があったにしても、ただそれだけでは、それは一九三九年十二月五日付の暴力犯罪法規定の、あるいはまた、戦時特別処罰法規定第五条(a)の適用をそのまま正当化するものではない。兵たる者は職業上武器を携行し操作する者であり、強姦犯罪に際しそれを使用したからといって—西尾註/「それ」とは「武器」ですよ—それだけでは彼が暴力犯罪者であるとの烙印をただちに捺されるいわれはない〉

ポーランドやルーマニア、ウクライナ、ロシアの女性をドイツ兵が武器で威嚇して手籠めにし、強姦行為を果たしても、まあ大目に見てやってほしいという公式文書です。このような文書があれば、ドイツ軍事法廷は「運用」次第で、たいていのドイツ兵の性犯罪を無罪放免としてしまったと考えられます。

P.182~186(古谷は古谷経衡)

無人機の時代に『徴兵制』から出ない朝日

花田:そこで、ぜひおうかがいしたいのは、集団的自衛権のことです。朝日新聞や東京新聞は、集団的自衛権の行使容認について、いますぐ戦争になる、または、徴兵制になるといったことを書きます。それについて古谷さんは「最新の軍事を知らない。おかしい」と発言されています。

古谷:全く噴飯ものですね。朝日新間も、以前はもう少し知識があったような気がするのですが、いまはひどい。

花田:だいたい、世界の国は徴兵制をどんどんやめていますよね。

古谷:やめています。朝日などの「戦争になる」論に関連して、無料通信アプリ「LIINE (ライン)」では、テイ―ンの間で次のようなチェーンツイートが出回りました。

〈集団的自衛権ができたら子供は最低でも2年、自衛隊の訓練をしないといけなくなる!もしこの訓練期間中に戦争があったら戦場に行かないといけないんだって!〉 このデマは、朝日新聞的には肯定したい内容でしょうが、まず集団的自衛権は「できたら」と言うものではなくて、法概念ですので、できるも何もない。これをテイーンの一部でも信じているということが本当であれは、ずいぶんレベルが落ちていると言えます。

というのも、これは伝聞ですよね。こういうテイーンに流れるデマは昔からありました。例えば一九七〇年代、八〇年代には「ロ裂け女」ブームや「人面犬」ブームがありました。

花田:そのレベルですか、集団的自衛権が。

古谷:実はそのレベルでさえないのです。ロ裂け女は「隣の中学校の隣の隣の友達が見たって」といった伝聞でしたが、検証はできない。本当はいるかもしれない。分からないのです。

それに対して、集団的自衛権の話はすぐに検証できる。あり得ないのですから。検証可能なデマが流されているという意味では、テイーンのうわさ話の歴史上、最も低俗な部類です。本当に信じているのならば、レベルが落ちています。

次に、徴兵制についてですが、朝日は社説で「徴兵制につながる」と書いています。そんなトンデモな論調で大丈夫なのでしょうか。朝日的イデオロギーの人でも、 本当に分かっている人は何も言わないのですが。

こうした反応はやはり、近代戦の発想から抜け切れていないからです。社民党のポスターも同じ雰囲気ですが、ある日突然、「赤紙」が外部から来る。外部のまがまがしい悪意に無辜の人民が引っ張られて、三八式歩兵銃を担がせられて突撃する。こういうイメージ。そこから一歩も出ていないのでしよう。

いまの現代戦はUAV (unmanned Air vehicle)、無人機の時代なのです。自衛隊も二〇一五年、無人偵察機「グローパルホーク」を導入する見通しで、これは偵察機なので攻撃する能力はありません。ただ、最新のX47B「ペガサス」という無人攻撃機 は、一三年七月、史上初めて空母への着艦に成功しました。無人機がですよ。あの大東亜戦争のときは、それでさんざん訓練して、死者も出たことが、無人でできる段階までで来ているのです。

ペガサスはまだ実戦には投入されていないようですが、「プレデター」という無人機はすでにアフガニス夕ンやパキスタンで使われています。これは米国本土のネバダやフロリダ、ペンタゴン(国防総省)で、フライトシミュレー夕―のような装置にセンサー要員と操縦士の二人が乗る。センサー要員がモニターを確認して、例えばこれが本当にタリバンの幹部かどうかを伝えて、OKならば撃つ。それをデー夕リンクという衛星の通信システムで操作するのですが、こうしたシステムがほぼ主力になりつつある。無人機がなぜいいかというと、安いのです。

花田:安いのですか。

古谷:プレデター一機が、為替によりますが四億円くらいです。戦闘機一機は一〇〇億円、ニ〇〇億円するのに対してです。維持費も、有人機なら撃墜された搭乗員を救助しなければならないし、搭乗員の医療費もかかる。給料も払わないといけないし、住居費も軍が責任を持たなければならない。

無人機はそれらが一切ありません。一説には、無人機の全体の維持費は有人機の5%程度だと言われます。 ニ〇分の一です。やはり世界の趨勢はそちらになっていく。

地上から無人機を操る操縦員も、一朝一夕で養成できるわけではなく、「ゲームみたいにできる」と言われてもそんなに簡単なものではない。一年くらい訓練が必要らしい。つまり、徴兵制を敷いて、「お前、あしたから無人機を操縦しろ」「強襲揚陸しろ」などと言われても、できるわけがない。こうした専門要員を育てるためにアメリカへ行っている時代なのに、徴兵制という発想自体がまずおかしいのです。

花田:軍事の現状を何も知らないのですね。

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