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10/8日経ビジネスオンライン 長尾賢『日米印航空共同演習が日本の重要性を上げる!』について
第二次大戦の日本の敗北は同盟相手国を間違えたことに尽きます。事情はあったにせよ、ドイツと手を結んだことは大間違いでした。ユダヤ人虐殺を平気でする国とですから、後から見れば何たるヘマをしたことかと思わざるを得ません。ユネスコは南京虐殺の記憶遺産申請を認めたとのこと。金で転ばせたのでしょう。事実は分かっていないことが多く、少なくとも中国のいう数字の30万人はデタラメでしょう。当時の南京の人口は20万しかいないのにどうして30万も殺せるのか、遺体処理をどうしたのか、中国人は説明責任があると思います。またまた無能の外務省のやらかしたことですが。昨日、天安門事件の記憶遺産申請に賛成しました。
外国が申請できるのかどうか分かりませんが、国際世論を巻き込むことは良いことでしょう。中国は三戦を使って日本と既に戦争を仕掛けているという事です。実際の戦闘行為ではなく、国際世論に「南京虐殺」(事実ではありませんが)を認めさせ、日本は道徳的に劣った民族と言うのを世界に刷り込もうとしている訳です。世論戦で日本は負けてばかり。外務省と中韓に味方するメデイア、それを購読するという形でサポートする国民と負ける条件が揃いすぎです。
インドと手を組むのは非常にいいことと思います。アフターブ・セット元駐日インド大使と飲んだ時にも「インドと日本は仲良くなれる。過去の歴史を見ても争ったことはないし」とのことでした。ラス・ビハリー・ボースやチャンドラ・ボースと日本との付き合いもありました。日本となじみの深い仏教発祥の国でもあります。何より、近い将来人口で中国を抜いて世界一になりますし、米国でのCEOやシリコンバレーで活躍するインド人は多いです。日本製の武器を使って貰って中国を牽制することができれば言うことなしです。飛行機だけでなく、潜水艦も日本製は優秀ですから、インド洋に出て来る中国海軍を牽制できるようになります。日米印での合同演習を早期に実現させたいです。
記事
9月末、日米印3カ国の外相会談が行われた。初めてのことだ。この10月には日米印海上共同演習も実施される。さらに、来年にはインドで日米豪印中韓ロとASEAN(東南アジア諸国連合)に加盟する10カ国すべてが参加する共同演習を実施する予定だ(注1)。それぞれ日本の海上自衛隊と、陸上自衛隊が関わる演習になる模様である。
こうなれば、次に注目されるのは航空自衛隊の動きだ。中国のメディアが、日印による航空共同演習の可能性を報じている(注2)。中国は気にしているようだ。これまで日印間では、航空自衛隊とインド空軍との間で輸送機部隊の交流、テストパイロットの交流などを実施することで合意している。もし日印間で航空共同演習が始まるなら、それはとても意義あるものになろう。
具体的にどのような意義があるのか、それは日本の国益にどうかかわるのだろうか。本稿で検証する。
(注1)“US, China to be part of Indian Army’s largest joint drill in Pune next year”, (The Economic Times, 27 Sep, 2015)
(注2)“Indo-Japan defence ties ‘dangerous’ for Asia: Chinese expert” (The Economic Times, (The Economic Times, 5 Aug 2015)
対中戦略上有効
日印で空軍連携することは日本にとってどのような利益があるのだろうか。少なくとも3つ考えられる。戦略上の利益と、戦術上の利益、そして武器輸出上の利益だ。
まず戦略上の利益について。日印が航空共同演習をすることは、特に対中戦略上の利益がある。中国を対象とした空軍のミリタリーバランスに、影響を与えるからだ。
最近の中国軍の動向をみると、海空戦力の近代化が中心になっている。そのため、中国軍の新型戦闘機の数は、2000年の125機から2015年の1000機弱にまで増加している(注3)。同じ定義に基づけば、日本は170機から300機弱になっただけだ。この数字からわかるのは、年々、日本だけで中国空軍と対峙するのは大変になりつつあること。そして、将来はもっと大変になることだ。
そうなるとまず、日米同盟の重要性が高まる。しかし、それだけでは不十分かもしれない。米国のランド研究所の分析では、中国は弾道ミサイルを使って沖縄の嘉手納基地を16〜43日の間、使用できない状態にすることができる(注4)。短期決戦なら、中国は米国の動きを封じることができるのだ。中国はこのようなミリタリーバランスを背景に、強気の外交を展開してくるだろう。
(注3) 本稿において「新型戦闘機」とは、主に1980年代以降に配備された戦闘機を指す。日本のF-15とF-2、中国のSu-27、Su-30、J-10、J-11、JH-7を対象としてInternational Institute for Strategic Studies, The Military Balanceを用いて数えた。
(注4)Eric Heginbotham, Michael Nixon, Forrest E. Morgan, Jacob Heim, Jeff Hagen, Sheng Li, Jeffrey Engstrom, Martin C. Libicki, Paul DeLuca, David A. Shlapak, David R. Frelinger, Burgess Laird, Kyle Brady, Lyle J. Morris, “Chinese Attacks on Air Bases in Asia: An Assessment of Relative Capabilities, 1996-2017” (Rand Cooperation, 2015)
そこで日印連携が重要になる。インドも中国空軍の近代化を懸念しており、中国との国境付近にある空軍基地を近代化し、新型戦闘機の配備を進めている。日印で連携して中国に当たれば、中国空軍は二方向に分割して対応せざるをえなくなる。日印双方にとって、ミリタリーバランス上の利益が大きい(参考記事:日印空軍連携で日本の航空戦力が変わる)。
しかもインドは経済発展しているから、将来は、より多くの新型戦闘機を展開することが可能だ。今後、中国の新型戦闘機の数がもっと増えていったとしても、インドの新型戦闘機も増えていく。日本にとって魅力ある連携先だ(図参照)。
図:インドの新型戦闘機飛行隊の配備位置
※青字に白い文字は配備済。白地に黒文字は計画中。インドは800機近い新型戦闘機を整備中で、結果、新規に戦闘機が配備される基地も増えつつあることがわかる。筆者作成。
(白地図:http://www.sekaichizu.jp/)
ロシア・中国機との戦い方を学ぶ
二つ目は戦術上の利益だ。航空自衛隊は米国で開発された戦闘機を主力にしている。一方インド側は旧ソ連・ロシアで開発された戦闘機が主力だ。だから日本とインドの戦闘機が共同演習をすれば、日本は、ロシアの戦闘機とどう戦うか、学ぶことができる。
中国の新型戦闘機もロシアで開発された戦闘機である。だから、ロシアの戦闘機との戦い方を学ぶ作業は、中国の戦闘機との戦い方を学ぶ作業でもある。
実はこの利点は、他の国も高く評価している。すでに米国も、英国も、フランスも、インドとの間で戦闘機を使った共同演習を継続して行っている。こうすることでロシア戦闘機とどう戦うか、技能を高めることができる利点があるのだ。ロシアはこのことを懸念していて、インドに、他の国との共同演習ではロシア製レーダーを使わないよう要請している。インドはその約束を守っているようだ。
しかし、レーダーだけ止めても、インドと共同演習した国は、ロシア機に関する情報をたくさん入手できる。実際に共同演習をすれば、近くで見て、パイロットから話を聞き、一緒に飛び、模擬空中戦をする。どのような条件の空で、どのような空中機動をみせることができるのか、整備がどれほど大変か、などなど、ロシア機の性能に関する情報がたくさん入ってくる。だから共同演習を行う戦術上の意義は大きい。
相手のニーズを把握し装備品を紹介できる
三つ目は武器輸出上の利益だ。今、日本とインドは、インド海軍向けに救難飛行艇を輸出する案件について協議を行っている。日印が連携を深めるには同じ装備を持つことが利益になるからだ。武器は高度なものなのに乱暴に扱わざるをえないから、すぐ壊れてしまう。専属の整備部隊が常に整備・修理して使うものだ。だから、一度装備を購入すると、継続的に修理部品を購入することになり、売り手と買い手の関係は長期的なものになる。そこで日本は救難飛行艇を輸出して日印間の連携を深めたいのだ。インドも、日本との関係を強化する観点から、防衛装備品の購入に熱心だ。
だが、日本はインドが他に何を必要としているか、十分把握できていない。日本では10月1日にようやく防衛装備庁が発足したばかりだ。日本の武器輸出はまだ始まったばかりという印象である。しかも、実はインドの方も、日本がどのような装備をもっているのか、十分把握できていない状況だ。
そこで、共同演習のような機会が必要となる。航空自衛隊とインド空軍が戦闘機などを使って共同演習をすれば、戦闘機そのものだけでなく、戦闘機を運用するための気象や航空管制、整備まで含めいろいろな支援組織も演習に関わる。いろいろな支援組織の装備も同時に演習に加えることが可能だ。インドで共同演習を行えば、インド空軍がどのような装備を必要としているか、ニーズがわかる。日本で行えば、提供可能な日本の装備をインド側に見てもらうことができる。武器輸出が成功して、日印連携が深まる近道になるのだ。
日米印で航空共同演習をしよう
上記のように、日印の航空共同演習は、対中戦略上、航空戦術上、武器輸出による連携強化の観点からも日本の国益になる。だから日本のためにやるべきだ。問題があるとすれば、それは、今回が初めてなので、いろいろわからないことが多い点だろう。航空自衛隊とインド空軍の間で戦闘機を使った連携があるかと問われれば、2004年に米国のアラスカで行われた米印合同軍事演習に参加するインド空軍の戦闘機が、急きょ、航空自衛隊の基地に着陸して給油した例があるくらいだ。あまり関係が深いとは言えない。
そこで、すでにインドと連携している第三国の力を得て実施することも検討課題に含めるべきだろう。米印空軍は2004年と2008年の2回、共同軍事演習を実施している。英国は4回、フランスも5回、インドと戦闘機同士の共同訓練をしている。これらの国を交えた3カ国で空軍演習できるのではないか。インド国内に空軍の施設を借りているシンガポール空軍との連携も考えられる(参照記事:シンガポールに学ぶインドとの防衛協力強化)。日本には連携できる友好国が多いのだから、利用しない手はない。
特に米国との連携が最も手軽と推測される。航空自衛隊はすでに米豪空軍と3カ国共同演習を実施しているからだ。次は米印空軍の共同演習に日本が加わる形での企画を考え、日本から積極的に米印に働きかけてもよいのではないか。日米印の連携を同時に深めることで日本は、現時点で世界最強の国(米国)との同盟関係を深めつつ、将来性のある大国(インド)とも連携を作れることになる。それは結局、世界における日本の重要性を上げることにつながるのである。
10/8日経ビジネスオンライン 森英輔『TPP合意を受け、中国は日中韓FTAを加速させる 中国経済の今後を占う9月の輸出統計』について
エリートと言うのは上の人間としか付き合わないから、下々の考え、行動が理解できないのではと思います。いつも言っていますように中国人の基本的価値観は「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」です。そういう社会で上に上り詰めるには何度も裏切りや過酷なことをしないとダメです。胡錦濤が鄧小平に見出されたのもチベット弾圧の技量を見込んでのことです。言って見れば、保身の才を身につけた知能犯のヤクザが上になっていると見た方が良い。下はもっと目に見えるように荒っぽい。小生は中国駐在8年間で下のそういう人たちと付き合ってきました。
李克強インデックスは時代に合わないと言いますが、では「信頼できる数字を出してくれ」と言いたい。信頼できる数字が出ないから、李克強インデックスを使って中国経済を評価しているのです。高橋洋一は李克強インデックスを使って、中国のGDPは▲3%と推定しました。投資判断するときに嘘の数字を基にはしないでしょう。自分のお金を預けるときにはより正確な数字を求めるハズです。瀬口氏の言い方は投資判断を誤らせます。以前の日経新聞と同じで、あれだけ中国進出を煽っていましたが、今は流石におとなしくなっています。それはそうでしょう。実体経済が悪くなっていますので。まあ、平気で嘘をつけるのが民族の特性なので、デタラメな数字を出すのは当り前なのでしょう。大躍進時に嘘の数字を上に出したため餓死者が数千万人単位で出たとのこと。こんなことが平気でできる国です。もっと歴史を勉強した方が良い。それと下々の人とも付き合うことです。
TPPは米国議会で批准されるかどうかですが、ヒラリーは「現時点では不支持」と言っています。選挙対策なのでしょうけど、「三百代言」の厭らしさが目につきます。米国はウイルソン大統領の推進していた国際連盟も批准しなかった前例がありますので、何とも言えませんが、TPPが中国の経済的封じ込めを目指すのであれば、共和党は乗るのではと思っています。日中韓のFTAなんて急いでやる必要はありません。騙されるのがオチです。今までもレアメタル(中国)や農水産物(韓国)で煮え湯を飲まされてきたではないですか。騙すのが国技の2ケ国と付き合っても碌なことにはなりません。「非中三原則」「非韓三原則」で行くべきです。
記事
5年にわたって協議が続けられてきたTPP(環太平洋経済連携協定)が10月5日、ついに大筋の合意に達した。これは中国にどのような意味を持つのか。6月の株価急落、8月の人民元安を経て、中国経済に対する懸念が高まっている。中国経済は今後、いかなる経過をたどるのか。長年、中国をウォッチしている、キヤノングローバル戦略研究所の瀬口清之・研究主幹に聞いた。
瀬口 清之(せぐち・きよゆき)氏
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
1982年、東京大学経済学部を卒業し、日本銀行に入行。2004年、米国ランド研究所に派遣(International Visiting Fellow)。2006年に北京事務所長、2008年に国際局企画役。2009年からキヤノングローバル戦略研究所研究主幹。2010年、アジアブリッジを設立し代表取締役。
—TPP交渉がついに大筋合意に達しました。中国はTPPをどのように見ているのでしょう。
瀬口:中国はこれを中国包囲網と見ています。それも単なる経済的な協定ではなく、安全保障にも関わる取り組みと見て危機感を高めています。中国が展開しようとしているアジアインフラ投資銀行(AIIB)や一帯一路構想はTPPに対抗するものと言えるでしょう。
—TPPが中国の安全保障にも関わるというのはどういう意味ですか。
瀬口:経済的な関係の強化が安全保障上の関係の深化につながるからです。例えば南シナ海で、中国はベトナムと領有権紛争を抱えて対立しています。しかし、両国間の貿易が増え、経済的な関係が強まれば、安全保障上の対立を緩和させることが期待できます。ところが、TPPによってベトナムと米国との経済関係が強くなると、こうした思惑が実現しづらくなる。
同様の思惑が米国にもあります。米国は西太平洋において日本やオーストラリアと安全保障上の強い関係を築いています。TPPによって経済関係を深めることで、この安全保障上の関係を補強したいと考えているのです。中国は、米国がTPPによって西太平洋の同盟国及びその予備軍、中国と紛争を抱える国々との経済関係を強め、それを安全保障上の関係強化につなげることに警戒を強めているわけです。
中国は、その一環として、日本がこれ以上、米国べったりにならないよう、日中関係を融和の方向に持っていこうとするでしょう。日米関係は今、オバマ政権が発足して以来、最高の状態にあります。安倍政権は4月に日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を改定。9月19日には、安全保障法制を成立させました。オバマ政権は安倍政権による一連の安全保障政策を非常に高く評価しています。そして今回、TPPで合意。安全保障と経済の両面での日米関係強化は、中国にとって大きな脅威になります。
中国は、TPPへの対抗策として、具体的には日中韓3カ国による自由貿易協定(FTA)交渉を加速させるでしょう。日中韓FTAは日韓関係の融和にもつながる。この意味においても、TPPの合意は大きな意味を持っています。
一帯一路構想はTPPへの対抗策
—一帯一路構想がTPPへの対抗策であるというのは、どういうことでしょう。
瀬口:TPPは太平洋を取り巻く米国主導の経済圏作りです。これに対して一帯一路構想は、中国から欧州に至るユーラシア地域に作る中国主導の経済圏だからです。中国は米国に対抗しうる大国になることを望んでいます。中国が主導して新たな世界秩序を打ち立てたい。この仲間作りを、経済関係をドライバーにして行うのが一帯一路構想だと言えます。中国は軍事的には米国と対抗できないことを分かっています。なので、経済関係を重視している面もあるでしょう。
—一帯一路構想がTPP対抗策であるなら、米国は中国をTPPに入れないつもりでしょうか。
瀬口:いえ、そうではありません。これは短期と中長期に分けて考える必要があります。短期的には、米国は中国を入れないつもりでしょう。国有企業の問題など中国が短期間で克服するのが難しい高いハードルを設けたのはこのためです。これは、先ほど触れたように、西太平洋地域を中心にアジア太平洋の国々との関係をより緊密なものにすることが狙いです。米国が主導する世界秩序形成を経済連携の面から固める。
しかし、中長期的には中国を受け入れるでしょう。中国の市場規模は無視できません。ただし、米国が主導して作ったTPPのルールに従うなら--という前提付きです。バラク・オバマ米大統領はTPPの大筋合意を受けて「中国のような国に世界経済のルールを作らせるわけにはいかない」と語りました。この発言が米国の考えを如実に表していると言えるでしょう。中国を名指しして、このような発言をしたことには驚きました。習近平国家主席との首脳会談からまだ10日しか経っていませんから。これは最近の米国国内における反中感情の厳しさを物語っていると思います。
将来は人民元を中国経済圏の基軸通貨に
—米国のルールメーカーとしての地位を支えるシステムの一つにドル基軸通貨体制があります。AIIBは、一帯一路構想が想定する中国経済圏において人民元を基軸通貨にするためのツールなのでしょうか。新興国のインフラ開発向けに人民元を融資して、人民元決済を増やしていく。
瀬口:すぐにそこまで進むことはないと思います。例えば人民元建てで入札を行っても、入札しづらい国や企業がある。そうなれば逆に、AIIBの地盤沈下につながってしまいます。
ただし、一帯一路構想が対象とする地域において人民元の利用が自然に増えることは望んでいると思います。最終的には地域内で人民元を基軸通貨的な存在にすることを思い描いているでしょう。
—中国はIMF(国際通貨基金)の準備資産であるSDR(特別引き出し権)を構成する通貨に、人民元を加えたいと考えています。これは将来、人民元を基軸通貨にするためのステップなのでしょうか。
瀬口:それは言えると思います。ただし、基軸通貨となるためには金利の完全な自由化、為替の完全な自由化、資本移動の完全な自由化の3つを進めることが不可欠です。中国はその方向を目指していますが、まだかなりの時間を要することでしょう。
6月の株価が暴落した時および8月に人民元が急落した際に、中国政府は市場実勢に逆らう形で大規模な市場介入を行いました。これを念頭に、世界の市場参加者は「中国政府は市場実勢を無視する形で再び大規模介入することがあるかも」と懸念しています。中国政府がこのような不信感を持たれているようでは人民元が基軸通貨の役割を果たすことはできません。中国共産党が一党独裁体制を維持している限り、この懸念を払拭することは難しいかもしれないですね。
中国経済の将来を占う9月の輸出統計
—中国が8月にドル売り元買いの大幅介入を実施したのは、それだけ元安を恐れていたからでしょうか。
瀬口:その通りです。為替市場では元安期待が高まったので、今のうちに人民元をドルに替えておこうという思惑が広がりました。放っておけば、さらなる大幅かつ急速な人民元安を引き起こします。
—事の発端は、中国政府が8月11日に人民元の基準値の決め方を変更し、5%弱の元安を容認したことにありました。
瀬口:そうですね。中国は人民元の地位向上に不可欠である為替自由化の歩みを進める意図で基準値の決め方を変更したのだと思います。中国政府が恣意的に決める方法から、前日の終値に反映された市場実勢を尊重する形で当日の基準値を決定する方式に変えました。しかし、ちょうどこの時期、中国の輸出の伸び率が落ち込んでいました。加えて、基準値の決め方を変更した直後に公表された国内経済指標も予想以上に弱い数字だったので、「元安を誘導し輸出をてこ入れしなければならないほど中国経済は悪化している」との見方が広まってしまったのです。それが、さらなる元安を招いた。
中国が元安誘導で輸出の拡大を図ったという見方は間違っていると思います。この時の元安はわずか5%ほどです。この程度の元安で輸出を増やすことはできません。日本がアベノミクスの下で50%もの円安に誘導しても日本の輸出が今の状態にあることを考えれば、今回の元安の効果のほどは知れているでしょう。
私は今後の人民元、そして中国経済の展望を占うものとして、中国が発表する9月分の輸出統計に注目しています。万が一、ドル建ての輸出額が前年同期比で再び6~10%落ち込むようなことがあれば、中国の輸出の先行きに対する不安が高まり、元安の圧力が高まるでしょう。
そうなれば中国政府はドル売り元買い介入をし、人民元の買い支えを図ることになる。これは外貨準備高の低下につながります。仮に、現在3.5兆ドルある外貨準備高が2兆ドルを切るレベルにまで急速に減少するような事態になれば、中国は現行の管理フロート制をあきらめる道を選ぶかもしれません。
—人民元を買い支えきれなく可能性があるということですね。その先にあるのは、どのような事態でしょう。
瀬口:1つの選択肢として考えられるのは、為替を一気に完全自由化する道です。完全フロート制への移行ですね。そうなれば、人民元のさらなる大幅安が避けられないでしょう。例えば現在1ドル=6元の相場が1ドル=8元になれば、中国は厳しい輸入インフレに陥ります。部品を海外から輸入している製造業など、ローカルコンテンツへの依存度が低い産業は大打撃を受けます。中国と貿易をする外国にも影響が及びます。資源国の中国向け輸出が今以上に減少するでしょう。日本が謳歌している爆買いも影を潜めることになります。
—米国が利上げの時期をさぐっています。もし利上げがあれば、人民元相場にどのような影響があるでしょうか。
瀬口:さらなる人民元安を促すことになるでしょう。米国が量的緩和策の出口政策を年内に実施すれば、一段とドル高に向かうことが予想されます。これに対して人民元が対ドルレートを維持しようとすれば、人民元も連れ高になります。これは中国の輸出競争力をさらに低下させ、輸出の伸び悩みを深刻化させることが懸念されます。
そこで人民元の対ドルレートを切り下げざるを得ないとの見方が広がれば、人民元売り圧力が一段と高まる可能性があります。
—中国の9月の輸出の伸び率が大幅なマイナスだったら、米国は利上げを見送ることになるのでしょうか。米中は、対立要素を抱えつつ、経済関係を密にしています。米国も中国経済がさらに悪化する事態は望まないでしょう。
瀬口:このあたりの事情は非常に複雑です。まず、小売り大手の米ウォルマートなどの輸入産業は米利上げがもたらす元安を歓迎するでしょう。米国は中国から実に様々なものを輸入しています。元安は、輸入品の価格低下を意味し、米国の物価を安定させる要因になります。
ただし米国にもリスクがあります。元安で、生産拠点としての中国の魅力が高まると、シェール革命を機に米国内に回帰していた製造業が拠点を中国に移す動きを始めるかもしれないからです。中国からの輸入品の増加と相俟って、米国内の雇用に対するマイナスのインパクトが高まるのは避けられないでしょう。
中国経済が緩やかに成長する条件
—ここからは、中国の実態経済の将来について伺います。6月半ばに株価が暴落した後、8月半ばには元安が追い打ちをかけ、不安視する見方が強まっています。
瀬口:そうですね。株価が暴落して不安が拡大していた時期に人民元が切り下げられ、さらなる株価の下落を招きました。8月に発表された7月分の経済指標が芳しくなかったことも、これに拍車をかけました。
—でも、瀬口さんは、中国景気は今後、成長率が緩やかに回復していくと見ているのですよね。
瀬口:はい。これから挙げる3つの条件を満たせば、中国経済は落ち着きを取り戻すし、市場も安心すると考えています。第1の条件は、先ほどお話しした9月の輸出が前年同期比でプラスになることです。マイナスであっても、せいぜい1~2%減程度に収まること。第2の条件は、9月の経済指標で「工業生産」と「小売総額」、すなわち生産と消費の指標が8月の伸びを上回ることです。第3に、不動産投資の伸び率の低下傾向が年内に反転して回復に向かい始めることです。
投資の状況を表わす「固定資産投資累計」の伸び率が低下し続けても問題ありません。この伸び率の低下は過剰生産設備の処分が進んでいることを示すからです。
7~9月期のGDP伸び率について、市場では6.8%前後と見る向きが多いようです。ふたを開けて見なければ分かりませんが、十分にあり得る数字だと思います。しかし、「李克強インデックス」を基に、実態のGDP成長率は5%前後とする見方には私は与しません。このインデックスは中国経済の弱い部分にスポットを充てており、下方バイアスがかかっているからです。
李克強インデックスは中国経済の実態を表わさない
—李克強インデックスのどこに問題があるのですか。
瀬口:李克強インデックスは、中国の李克強首相が重視する電力消費量、鉄道輸送量、中長期新規貸出残高を合成して作る指標です。このうち、電力消費量と鉄道輸送量は、中国経済全体の実態を示すものとは言えなくなっているからです。理由は3つあります。
1つは、中国経済で第3次産業へのシフトが進んでいること。これら2つの指標は重厚長大型の製造業の活動と関係が深い数値で、第3次産業の動向を適切に表すとは言えません。しかも、ニューノーマル政策の下で中国政府は重工業分野を中心に過剰設備の削減を進めています。これが製造業の生産を低下させ、2つの指標を押し下げる方向に働いています。
第2の理由は中国で省エネが進んでいること。経済が成長するのに以前ほどの電力を必要としなくなっています。第3の理由は国内輸送手段が鉄道からトラックへと移っていることです。高速道路網が整備され、トラックでの輸送が便利になりました。納期も、鉄道よりもトラックの方が守れるようになっています。日本でも昭和30~40年代に同様の動きが起こりました。
—来年に向けて成長率をどう見ていますか。
瀬口:3つの成長ドライバーがあると考えています。地方政府による公共投資、不動産投資、そして第13次5カ年計画に伴う投資です。
—地方政府による公共投資と不動産投資は、今日の経済不振を招いた元凶です。これからも、それらに頼っていくのは適切なことなのでしょうか。
瀬口:ご懸念はもっともです。地方政府によるこれまでの投資は、炭鉱や鉄鋼業を中心に発展する都市に、立派な役所を建てたり、誰も来ない大きなショッピングモールやリゾート施設を作ったりする無駄なものが多く見られました。しかし中国はこれまでの失敗に学び、投資の中身を効率的で収益性の高いものに変えていく方針です。中央政府は金融機関に対し、実需を伴わない無駄な投資には融資しないよう指示を出しました。
もちろんこれまでもすべての投資が非効率だったわけではなく、実需を伴う投資として実を結ぶものもありました。例えばこの10月に、重慶と成都をつなぐ高速鉄道がサービスを始めます。これまで2時間かかっていた移動が1時間に短縮されます。これは重慶=成都間の経済圏を大幅に活発化させるでしょう。これに伴って、この地域の不動産投資も実需を伴って拡大していくことが見込まれます。
この高速鉄道は北の西安、南の昆明へとさらに伸びていく予定です。これが各地の産業集積の形成を促進し、西部地域の経済活性化に大きく貢献していくでしょう。さらに、同様のことが、新首都経済圏=北京・天津・河北省(京津冀)=でも進むとみられます。
—第13次5カ年計画では、どんな取り組みを進める予定なのですか。
瀬口:主要国家級プロジェクトとして、いま触れた新首都経済圏の構築、長江流域経済ベルトの確立、一帯一路構想の推進が挙げられます。現時点ではまだ具体的な開発案件は明らかになっていませんが、来年3月の全国人民代表大会(全人代)で批准される予定です。
—中国市場が緩やかに成長していく時、日本企業にはどんなビジネスチャンスがあるでしょう。
瀬口:今、注目されている「爆買い」を考えてみてください。そこにビジネスの芽が表われています。中国人が日本に来てまで買うものが中国国内で入手できるようになったら、買わないわけがありません。
先日、武漢を訪れました。武漢経済技術開発区では、イオンが武漢2号店を開く準備を進めていました。そしてイオンの進出に伴って、吉野家やニトリも進出しています。イオン1号店にテナントとして入っている吉野家では、2時間待ちの行列ができることも珍しくないと聞いています。
自動車もまだまだ期待できます。8月の統計で、トヨタの新車販売台数は前年同月比20%増、ホンダは50%増を記録しました。トヨタではカローラが人気を集めています。日本車の価格性能比の良さに中国の消費者が気付いたのでしょう。一方のホンダは武漢で第3工場の建設を続けています。こうした動向から今後のビジネスチャンスが読み取れるのではないでしょうか。
10/7日経ビジネスオンライン 福島香織『中国のスパイ取り締まり強化に怯むな 日本人を守るには、今こそ防牒強化を』について
安倍内閣になってから中国の言うことを聞かないものだから、中国はあらゆる手段を講じて日本に「嫌がらせ」してきています。毅然とした対応が必要です。暴力団国家と思えば良い。自民党でも福田康夫のように「相手の嫌がることはしない」という外交のイロハも分からない人間が首相を務めていました。簡単に人の言うことを聞く人間を中国人は内心馬鹿にするというのを知らないのでしょう。村山、河野、鳩山などはさしずめ3馬鹿トリオと言ったところです。
尖閣漁船拿捕事件の後、中国はWTO違反のレアメタルの輸出禁止やフジタ社員のスパイ容疑逮捕と西側自由主義国にはあるまじき手を打って来ました。これこそが中国です。西洋の価値観を認めないのは中国の歴史の教える所です。中華の意味は世界の中心という意味ですから、西洋なぞ何するものぞです。ここを押えていませんと中国のことを正しく理解できません。五・四運動やそれ以後の不買運動・焼き打ちなぞは中国の人口の多さで西洋諸国の契約概念を蹂躙するものです。
中国では黄巾、五斗米道、白蓮教、太平天国等宗教で政権が弱体化してきました。現在の法輪功やキリスト教の弾圧は共産党が如何に宗教の力を恐れているかを証明するものです。
中国の記者はスパイです。特に新華社はそうでしょう。彼らの発想は自分たちもするから相手も絶対やっていると思うことです。「南京虐殺」だって彼らが引き起こした「通州事件」の延長でデッチ上げただけです。日本人も相手が自分たちと同じ発想をすると思い込みますが、方向は逆です。日本人は簡単に人を信じますが、中国人は「騙す方が賢い」ので。駐在武官も広義のスパイ活動をしています。世界では当たり前のこと。日本では左翼に牛耳られたメデイアが、日本が普通の国になろうとするとすぐ大騒ぎします。日本の不健全なメデイアを購読することによって経営をサポートするのはやめてほしい。中国は民主主義国の制度に付け込み、日本ですぐ裁判を起こします。中国の裁判官は賄賂を取るのが当たり前、共産党の指示に反した判決は出せる訳もない。日本の裁判官も人権と言う発想だけでなく、世界の動静を見極めて判決を出してほしい。世界最大の「人権抑圧国家」は中国ですから。人口の規模と言い、逮捕状なしの拘引など。法輪功の信者は生きたまま臓器摘出され、臓器売買で医師団が儲けて来たという話もあります。
日本のメデイアは「特定秘密保護法」が成立するときにあれだけ安倍内閣をバッシングしましたが、中国の「反スパイ法」と比べて見て下さい。中国のは、国が怪しいと思えばどういう理由でも逮捕できるという法律です。近代法の原則の罪刑法定主義に反します。彼らの頭の中は中世で止まっているのでしょう。
中国人で、日本国内でスパイ活動をしている人間を逮捕しても、人の命の重さは中国と日本では非対称なので捕虜交換みたいにはいかないでしょう。「殺して貰って結構。中国は人口が多いから」と言うでしょうから。やはり日本人は中国に行かないことが一番安全です。
記事
5月から日本人3人が“スパイ容疑”で中国当局に逮捕されているという。私は日本政府が「スパイ活動をしていない」と言う言葉を信じよう。容疑者たちが中国当局に関与を認めているという「公安調査庁」自体、“インテリジェンス機関”と呼ぶに値する情報収集活動・能力はないと思っているので、この逮捕は誤認逮捕、あるいは冤罪逮捕だと見ている。日本政府は、誤認逮捕であると主張し、自白は強要されたものだとして、彼らの身柄の返還要求の交渉を続けてほしい。
習近平政権、“外国人スパイ”に敏感に
この事件を受けて、知人から「あなたも気を付けてね」と冗談のような本気のような声をかけられるが、実際、気を付けなければならないと自覚している。逮捕容疑には、「軍事施設周辺の撮影」などがあるが、これは結構やりがちだ。中国の軍事管制区というのは、別に鉄条網で区切られている場所だけではないし、うっかり入ってしまうことはよくあるし、知らずに写真を撮影することもあるだろう。
私も現役の北京特派員時代、友人が軍事管制区の中に住んでいたので、遊びにいけば、自然と軍事管制区の中に入る。演習の銃声が聞こえるようなところで、山をくりぬいて兵器倉庫や施設が作られてあるので、面白がって見に行ったりもした。また、戦車の演習場も比較的近くにあり、土煙をあげて走りまわる戦車もよく見かけた。こちらは、知人を訪ねるだけであり、やましいことは一切ないつもりだが、たまに、携帯電話がいきなり鳴って、「お前、どこにいる!」と見知らぬ男性から電話口で叱られることもあった。
考えてみれば、記者時代の携帯電話はGPSで当局から追跡されているはずなので、どこにいるかは丸わかりなのだ。だが、胡錦濤政権時代は、いきなり捕まえるのではなく、そういう警告をしてくれる親切な時代であった。
なので、今捕まっている日本人たちのことは人ごとではない。記者やライター稼業の好奇心旺盛な人たちが、国境や軍事施設に近づくことはしばしばある。それはあくまで媒体で発表する“報道”のためであってスパイ行為ではないのだが、中国側はそう納得してくれるとは限らない。中国では、日本と違って記者は情報工作員として任務を負うことが多いからだ。
特に習近平政権時代になって、今まで以上に、外国人が中国国内をあちこち動きまわることに対して敏感になっている。それは、なぜなのか。
日本人拘束報道をもう一度ふりかえる。デイリーNKサイトの情報が一番詳しいので参考にすると、捕まった一人は51歳の愛知県在住の元公務員男性で、浙江省の軍事施設周辺で写真撮影していたとのこと。もう一人は北朝鮮国境の遼寧省丹東市で拘束された神奈川県在住の54歳の元脱北日本人妻の子供らしい。三人目は元航空会社勤務、牧場経営者の北海道在住男性。元公務員と元脱北者は5月に拘束され、牧場経営者は6月に捕まったという。
彼らが中国当局に「公安調査庁に情報収集を依頼された」と話しているそうだが、公安調査庁側はこれを否定している。捕まっているのは日本人だけでなく、今年3月にビジネスツアーで広東省を訪問した米国女性企業家、昨年夏に遼寧省でカナダ人夫婦がスパイ容疑で逮捕されているとか。
中国人の取り締まりも強化
捕まっているのは“外国人スパイ”だけでない。“外国人スパイ”に情報提供したとして中国人も機密漏洩罪でかなり捕まっている。その代表格が2011年暮れから表舞台から姿を消している軍属歌手の湯燦だ。彼女については拙著『現代中国悪女列伝』(文春新書)でも取り上げている。
彼女は長らく、行方不明で元解放軍制服組トップの軍長老の徐才厚失脚に絡む権力闘争に巻き込まれて投獄されただの、秘密裡に処刑されただの言われていたが、その後、2012年5月、解放軍北京軍区軍事法院で「過失による機密漏洩」で懲役7年の判決を受けていたことが判明した。
その顛末は彼女が獄中から口述筆記でまとめ香港から出版された自伝『我的壮麗青春 湯燦獄自白』にまとめられている。この本を本物の湯燦告白本だとするなら、彼女は天津にある韓国企業のぺ・ヨンジュンに似た韓国人業務経理・李承俊に、“国家のハイレベル指導者に関する情報”を提供したことで、機密漏洩に問われたという。
李承俊とその上司の韓国資本の天津企業の美人副総裁ともども、中国当局はスパイと認定。李承俊を逮捕し、そのパソコンから大量に湯燦のプライベート写真が出てきて、問い詰めたところ、湯燦から情報提供を受けた、と自白したらしい。(この韓国人スパイ、と言うのは、あえて誤った表記でぼかしているのであって、本当は米国のCIA=米国中央情報局関係者である、という説もある。)
同書の中には、中国当局が当時、解放軍部上層部をターゲットにした韓国スパイ網が北京や天津に存在し、彼らは紅三代(建国に参与した革命一族の孫世代)が経営している企業関係者に、その肉体を使って接触し、懐に入り込んでいたという。湯燦は李承俊と、失脚した元総装備部副部長の谷俊山が北京のCBD(中央商務区)に構えている通称・将軍府と呼ばれる豪邸で出会い、湯燦から惚れて肉体関係を持っていたという。将軍府には、李承俊が贈った600年前の高麗末期の花瓶も飾ってあったとか。
「企業を隠れ蓑にした解放軍上層部をターゲットにした韓国人スパイ網」の存在が暴かれていた、というのは初耳でにわかに信じがたい部分もあるのだが、習近平政権になってから、確かに“スパイ”容疑、機密漏洩容疑を乱発して、中国人も外国人も拘束、逮捕するケースが増えているように思う。そういえば、CCTVのイケメン人気キャスター、芮成鋼もCIAに情報提供していたというスパイ容疑がかかっている。
地形も汚染も反スパイ法の対象
これは、習近平政権が外国のスパイ行為と情報漏えいに対し、それだけ敏感になっているということだと思われる。その証左が、昨年11月にわざわざ反スパイ法を制定したことである。こんな法律がなくとも、中国はこれまで防諜活動を滞りなく行っていたのだが、あえてこういう法整備をしたことが、習近平政権の特色といえる。
この法律によれば、中国の国家安全を脅かす活動を行うのがスパイ組織であり、そのスパイ組織に直接、間接的に参与したり、リクルートしたりするのもスパイ行為とみなされる。違法な国家の秘密情報を探ったり窃取したり金で買ったりしてもスパイ行為。だが、中国において違法な国家の秘密というのは、実にたわいないものも含まれていて、土壌汚染の数値など環境情報も国家機密、地形なども国家機密(中国の地図は国家機密を守るために、わざと誤差を作っている)。
なので、環境NGOが独自で環境データを測量したりするのも、下手をすると国家安全を脅かすスパイ行為として取り締まられるかもしれない。GPSを使って登山するのも、スパイ行為と認定されるかもしれない。かつて日本の首相は漢字が読めない、と日本メディアが面白がって報じていたが、中国なら、国家指導者の国語能力の低さを露呈することは国家安全を脅かす、といって情報漏えいに問われる可能性もあるわけだ。
西側の価値観を締め出せ
これとセットになる形で、今年7月1日に国家安全法が制定され、反テロ法、NGO統制法も予定され、国家の安全を守るという建前で、国内の異見論者や外国人への取り締まりを強化する方向性を打ち出している。中国にはFビザ(訪問ビザ)で、長期滞在してフリーランスの仕事をしたりしている外国人がかなりいるが、聞くところによると、こうしたFビザに対する審査もかなり厳しくなっている。
一言で言えば、習近平政権は基本的に外国(西側諸国)を敵視しているのである。その傾向は、ニューヨーク・タイムズがスクープした習近平政権のイデオロギー統制秘密文書9号文件にも表れている。要するに西側の価値観、秩序が国内に浸透することを非常に恐れている。
この9号文件を外国メディアに漏らしたという機密漏洩罪で中国人ジャーナリスト高瑜は懲役7年の判決を受けた。9号文件の中身はすでに香港メディア界隈には流れており、これは冤罪である。だが、外国人記者たちの間で人気の高いジャーナリストを見せしめとしてひっとらえることで、外国人記者や人権活動家たちの取材活動がかなり制限される効果は当然あった。実際、中国の知識人は外国人記者らと接触することに従来以上に慎重になっているし、こちらとて政治的に敏感なテーマについて意見を聞くことすら、注意を払うようになった。
習近平政権がこれほどまでに外国および外国人を敵視し警戒している一つの理由は、それだけ習近平政権が安定していないことの裏返しではないかと思われる。重慶市公安局長の王立軍が国家機密情報をもって成都の米総領事館に駆け込んだ事件をはじめ、権力闘争に米国を利用するやり方が習近平政権になってあからさまになってきた。
米メディアが習近平ファミリーの蓄財ぶりを報道したそのネタ元が習近平の政敵であったと言われているように、あるいは習近平に失脚させられた官僚・令計画の弟が、国家機密情報をもって米国に逃げ込んだと伝えられているように、あるいは失脚前の元政治局常務委員の周永康が北朝鮮に機密情報を土産に亡命を画策したと言われているように、今や国家機密を外国に渡すことが権力闘争の駆け引きの手段として定着している。もともと、権力闘争はあくまで内政問題で、どんなに激しい権力闘争も共産党体制や国家の安全を犠牲にしてまではやらない、という暗黙の了解があった。だが、そういう暗黙のルールを破りもともとあった共産党秩序を崩してしまったのはほかならぬ習近平である。
日本は怯まず防諜強化を
もう一つは、台湾のひまわり運動や香港の雨傘革命に米国の影を感じているということも関係あろう。中東のカラー革命に米国が絡んでいるという「陰謀説」は中国でも広く信じられており、習近平政権は非常に西側諸国のメディアおよびNGOの動きに敏感になっている。外国人排斥の方向性は、中国でカラー革命を絶対起させまい、という意志表示とも言える。逆に言えば、中国でも中東で起こったような混乱が起きうる社会・政治情勢がある。
こういう状況なので、いつ誰が、スパイ容疑で捕まっても不思議ではないのである。
ワシントン・ポストによれば、在中国の米国公館に配属されているCIA関係者は一斉に引き上げているとか。ハッキングによってその名簿が中国サイドに流れたためらしいが、とにかく今の中国は、心当たりのある者にとっては非常に危険だということだろう。そして、全く心あたりのない者も、当局にとって気に食わないと思われれば、スパイ容疑の冤罪をかぶせられることがあるやもしれない。
こういう状況で日本政府がやれることは限られているのだが、一つ言えることは、スパイ行為、情報収集行為は、きちんとしたインテリジェンス機関を持つ国ならばどこの国もやっていることである。それをやることは、実はある種の国際常識なのだ。だが、それを防ぐのも国家としての当たり前の責任だ。中国にいる日本人の身を守るには、中国のこうした態度に恐れをなして、情報収集に消極的になるよりも、むしろ日本国内における防諜により力を入れて、こうした日本人の誤認逮捕が起きたときに、彼らの返還を要求できるだけの駆け引き材料を手に入れておくことが何より重要ではないかと思う。
10/5 Sankei Biz 渡辺哲也『中国が資金流出に規制 海外のショッピング制限、爆買いに陰り?』10/6石平メルマガ『崩壊へ向かう中国経済』について
国際収支の面で見れば、経常収支+資本収支+外貨準備増減+誤差脱漏=0でこの外貨準備増減の累積が外貨準備高になります。確かに資本収支で自国内に金を呼込めばプラスになりますので、借入であっても外貨準備は増加することになります。中国に貸している金は、アメリカが利上げすれば、安全資産である$に切り替えられる可能性大です。人民元の利子は1.75%(1年物定期2015年8月26日~)で米国の利子は0.4%(1年物定期2015年10月2日、じぶん銀行)です。小生だったら、23兆$も国全体で借金を負っている人民元で預金する気はありません。
外貨準備が潤沢であれば、外貨持出で制限をかけることはないでしょう。日本も戦後から1978年まで持出が制限されていました。外貨準備が少なかったためです。中国が公表3.46兆$も外貨準備があるなら制限しなくても良いでしょう。数字を誤魔化しているとしか思えません。
石平氏の記事では消費、特に大衆の飲み物であるビールの消費が今年上半期で▲6%と言うのは凄い落ち込み方です。青島ビール小壜卸価格で2元(40円程度、www.1688.com調べ)ですから、それが飲まれなくなったという事はGDPもかなり下がっていると思います。不動産投資も振るわず、純輸出も振るわない中、消費に期待を寄せる中でです。そもそも中国は数字の誤魔化しは当り前で、▲6%と言うのも怪しいかも知れません。2005年当時で大壜の小売価格は1.5元~2元(30円弱)くらいでした。「世界のビール消費量 2013年 キリンビール調べ」によれば、中国は4631万KLで世界一、日本は549万KL(発泡酒・第三を含む)で第7位です。中国が下半期も▲6%で推移するとすれば年間で278万KL減る事になります。日本のビールメーカーが2社はなくなる計算です。経済面で、中国に期待することは止めた方が良いでしょう。TPPを活用することを考えた方が良いです。
渡辺哲也記事
中国のバブル崩壊が話題になっているが、その陰で中国の外貨準備に対する懸念が生まれ始めている。中国の外貨準備は約3兆4600億ドル(約415兆円、8月末)と減少傾向が続くが、額面上は世界最高水準であり、何の心配もいらない。しかし、この中身と実際に使用できる額に懸念が生じているのである。
外貨準備とはキャピタルフライト(資金流出)に対する備えであり、通貨価値を維持するための保険のようなものである。国内から資金が流出する場合、自国通貨が売られ、ドルなど他国通貨に両替される。これが大規模に起きた場合、通貨の暴落が発生する。これを抑制するのが外貨準備であり、中央銀行などが他国通貨を売り、自国通貨を買うことで通貨の暴落を防ぐという仕組みである。
では、中国の外貨準備の何が問題なのかということになるわけだが、中国の場合、外貨準備における米国債の割合が非常に低いのである。中国の保有する米国債の額は約1兆2400億ドル(7月末)であり、外貨準備総額の約3分の1しかない。日本の場合、外貨準備約1兆2400億ドル(8月末)に対して、そのほとんどが米国債であり、中国の状況はこれと大きく異なる。
また、日本の外貨準備は政府と中央銀行の純資産であり、全額介入に使うことができるが、中国の場合、国有銀行保有分なども含まれているとされており、企業などが預けている決済用資金も含まれている可能性が高く、実際にどの程度使えるかが分からないのだ。外貨準備とはあくまでも外貨をいくら保有しているかであり、借り入れであろうがその性質を問うものではない。
この懸念を証明するかのように、中国当局は外貨流出阻止に躍起になっている。まずは通貨先物取引を規制し、そして、ついに中国人観光客が海外で使う外貨にも規制をかけ始めた。中国の場合、個人の両替は年間5万ドルまでとなっているが、実はこの規制は、中国で大きなシェアを持つ銀聯カードを利用することで回避できた。
銀聯カードは厳密に言えば、クレジットカードではなくデビットカードと呼ばれるもので、利用時に即時に銀行口座から引き落とされる仕組みになっている。このため、銀行口座の残額が限度額のようなものであり、中国国内の銀行口座にお金があれば、海外で自由に外貨を引き出せたのであった。このため、中国国内の両替規制は有名無実化していた。
ついに10月1日、中国は銀聯カードを使った両替に対して、年間10万元(約190万円)という規制(移行措置として10月から12月までは5万元)をかけた。なおショッピングは無制限だが、今後、ショッピングも規制する可能性が高いとされる。バブル崩壊と両替規制強化により、今後、中国人の海外での爆買いは徐々に減少すると思われ、日本の観光業やサービス業への影響も懸念される。
石平記事
今年8月と9月に公表された、中国経済関連の一連の統計数字は、現在のこの国の実体経済の深刻さを如実に語っている。
たとえば、中国自動車工業協会が8月11日に公表した数字によると、7月における全国の自動車生産台数は151・8万台で、前年同期比では約11%減、前月比では何と約18%減となった。まさしく地滑り的な落ち込みである。
生産台数激減の最大の理由は販売台数の減少にある。7月の全国自動車販売台数は前年同期比で約7%減、前月比では約17%の減少となった。これはまた、中国全体における個人消費の急速な冷え込みぶりを示している。
消費の冷え込みは自動車市場だけの話ではない。8月20日に米調査会社が発表した、今年4~6月期の中国市場スマートフォン販売台数は、前年同期比で約4%減少、四半期ベースで初めて前年を下回った。
国家工業と情報化部(省)が9月7日に公表した数字によると、全国の移動電話の通話量は今年7月までにすでに連続7カ月間のマイナス成長となったという。
同じ9月7日の国家統計局の発表では、今年上半期において全国のビール消費量は前年同期比で約6%減となって、ここ20年来で初のマイナス成長である。
このように、ビールの消費量からスマートフォンや自動車の販売台数まで、中国の消費市場は急速に縮まっているといえよう。そして、自動車販売台数の激減が直ちに生産台数の激減につながったのと同じように、消費の冷え込みは当然、製造業全体の不況をもたらしている。
英調査会社マークイットが8月21日に発表した同月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)速報値は驚きの47・1となった。
PMIというのは好不況の分かれ目の数値で、50以下であれば不況となるが、中国のPMIはこれで6カ月連続で50を割っただけでなく、8月の47・1という数値はリーマン・ショック後の2009年3月以来、約6年半ぶりの低水準、まさに大不況の到来を示す数値であったからだ。
製造業が沈没していれば、それと一蓮托生(いちれんたくしょう)の関係にある金融業も当然、苦境に立たされる。
8月31日に中国国内メディアが伝えたところによると、不良債権の増大・業績不振などが原因で、
中国工商銀行などの「中国四大銀行」で「賃下げラッシュ」が始まったという。50%程度の賃下げを断行した銀行もあるというから、金融業の苦しさがよく分かる。
こうした中で、今までは「中国経済の支柱」のひとつとして高度成長を支えてきた不動産開発業も大変な不況に陥っている。
今年上半期、中国全国の「不動産開発用地」の供給面積が、前年同期比で約38%も激減したことは、現在の「不動産不況」の深刻さを示している。莫大(ばくだい)な在庫を抱える多くの開発業者が不動産をそれ以上抱えることをしなくなったので開発用地の供給が大幅に減ったわけである。
実際、2014年1月から今年の8月まで、中国全土の不動産投資の伸び率は連続20カ月間下落している。
また、今年6月中旬から今月中旬まで、上海株が連続的な大暴落を経験したことは周知の通りである。
以上のように、今の中国では、消費・生産・金融、そして不動産や株市場、経済のありとあらゆる領域において大不況の冷たい風が吹き荒れている。国民経済を支えてきた「支柱」の一つ一つが傾いたり、崩れかけたりするような無残な光景があちこちで見られているのである。
中国経済はただ今、壮大なる崩壊へ向かっている最中である。
9/25日経ビジネスオンライン 石黒千賀子『第3回 中国の国家資本主義の考案者は世界銀行 経済力、軍事力を増す中国の戦略を『China 2049』のピルズベリーが明かす』10/2 石黒千賀子『第4回習近平vsオバマ会談は中国の圧勝だった 中国の大国への野望を明らかにした『China 2049』のピルズベリー氏に聞く』について
見逃していました記事です。ピルズベリーは日米のメデイアと違い、米中首脳会談を冷静に見ています。米国が習を冷遇したのは間違いないですけれども、習は譲歩しなかったと評価しています。それはそうでしょう。譲歩したら剛腕の習と雖も主席の座は保てないでしょう。「政権は銃口から生まれる」国ですので。解放軍の中には習を快く思っていないのはたくさんいます。況してや、毛・鄧のように軍の経験がなければなおさらです。
米軍も中国の質問で自軍の弱点を教えるというのは余りにナイーブ、脇が甘すぎです。油断があったのでしょうけど。第二次大戦時に黄色人種が飛行機を操縦できないという思い込みがあったのと同じ人種差別の見方が根底にあったのでしょう。空母同士で実際戦ったことがあるのは日米だけですが。米国人にすれば中国は第二次大戦の連合国側との思い込みがあったにせよ、ソ連の扱いとは違います。騙すことについては天才的かつ賄賂やハニートラップを得意とする民族ですので、米国の中国に対する甘さが、世界に混乱を招くことになりかねません。中国は遅れて来た帝国主義国です。
世銀が如何に中国を応援してきたかは、世銀の前総裁はパンダハガーのゼーリックでしたし、現総裁は韓国系米国人のキム博士と言うことを考えれば、分かり易いでしょう。まあ、米国には日本を戦後支援して民主化に成功したという思い込みがあったのでは。日本は開国を迫られて、議会制民主主義の道を歩んできたのを米国は忘れているのでは。中国と日本では国の進歩の仕方が違うというのが全然分かっていません。でも世銀の指導で国営企業に力を与えた結果、TPPには参加できませんが。
日高義樹氏の『中国敗れたり』によれば、ピルズリーの主張同様、中国軍の装備は政治的プロパガンダで張り子の虎とのこと。過大評価しないことが大切です。A2/ADも空母迎撃用ミサイルの速度が遅くて簡単に撃ち落せるとのこと。それより中国沿岸に、衛星から指示を受けない魚雷入り自動浮上する機雷を敷設すれば、海上封鎖の効果を齎します。中国は海路が使えなくなりますので、陸路で貿易することになります。コストが上がるようになります。況してやアメリカに逆らって中国と貿易することはアメリカと貿易できなくなる可能性もあります。TPPで中国を経済的に封じ込め、ロシアと米国が和解を進め、軍事的にも日米印豪+露で封じ込めるのが世界平和にとって有益です。韓国は臍をかむことになるでしょうが、自業自得です。日本国民は中国の手先になって世界に慰安婦の嘘を撒き散らした韓国民を許すことはないでしょう。
ピルズリーの言うように、一党独裁は続くと思います。軍区のどこかが独立しないと連邦制にはいかない=民主制に移行することはないと考えています。チャイナハンズが望むようにはいかないでしょう。日本とは違う国柄ですので。
9/25記事
—中国が『自分たちを常に実力より低く見せて、注意深く動く』ことで、「米国に追いつけ、追い越せ」の戦略が最も成功したのが経済分野だと本で指摘されました。中国の経済戦略についてあらためてお聞かせください。
ピルズベリー:中国が米国に接近し始めた1969年時点で、中国の経済規模は米国の10分の1に過ぎませんでした。その中国が、今や経済規模では米国とほぼ肩を並べるまでに成長したというのは、ある意味奇跡とも言えるでしょう。
では、中国はどうやって、ここまで成長できる経済システムを生み出したのでしょうか――。この点については、実は世界銀行が大いなる力を発揮しました。私は多くの世銀の極秘資料を持っており、中国がいかに世銀をうまく活用したかが、その資料を読むとよく分かります。
—世銀が指南役となった?
ピルズベリー:そうです。1972年2月のリチャード・ニクソン大統領による訪中後、75年のジェラルド・フォード大統領の訪中、77年のジミー・カーター大統領の訪中などを経て、78年12月、中国はついに米国との国交正常化にこぎ着けます。そして、この国交正常化とほぼ同時期に最高指導者*1に上り詰めた鄧小平は、82年、83年と様々な改革に着手したものの、改革のスピードが十分でないことに危機感を強めていたようです。そこで彼が目をつけたのが世銀でした。
*1 1976年9月毛沢東死去
1983年、当時、世銀の総裁だった米国人のA・W・クラウセンは中国を訪れ、鄧小平に会いました。先ほどの世銀の資料に書いてありますが、この時、鄧小平は「私たちは米国を超えたい。どうしたら実現できるか教えてほしい」「私たちを助けていただけますか」と発言しています。これに対し、クラウセンは「世銀のエコノミストチームが、20年先を見据えて中国の経済について研究し、どうすれば中国が米国に追いつけるか助言しましょう」と密かに約束しました。
その時、世銀のスタッフは、「低い経済水準から先進国に追いつき、追い越した国が過去に一カ国だけある。その国は、国民一人当たりの所得が毎年5.5%成長した。だから中国も毎年5.5%成長する必要がある。でなければ、1000年経っても先進国に追いつくことはできない」と指摘しました。
中国側は「その国はどこですか」と聞いた。どこの国か分かりますよね…。
—日本…
ピルズベリー:米国でもドイツでもなく、日本です。以来、中国は日本がどう経済成長を達成していったのかについても大いに研究しました。一方、世銀は中国に対して、複数のレポートでこんなことを指摘しています。
「世銀は、基本的に自由市場経済重視の原則で動いている。しかし、中国の経済を民間企業や市場に任せていたのでは、最高のスピードで経済成長を達成することはできない。中国が先進国に追いつくには、5.5%よりももっと高い伸び率で毎年、経済成長することが必要だ。実は、それだけ早く成長する方法があるかもしれない」
1990年には世銀の北京事務所は世界最大規模に
—どういう意味でしょうか。
ピルズベリー:世銀は、中国の各産業分野においてトップクラスの企業を国有のまま育成すればいいと助言しました。それらの企業に対して優先的に補助金を与え、低利で融資を行い、海外から投資させればいい、と。
また、1985年から20年の間に輸出の構成を変え、特にハイテク製品分野の育成に力を入れること、外国から過剰な借金をしないこと、外国による直接投資は先進技術と経営近代化の手法だけに限ること、貿易会社の関与を段階的に減らして、国有企業が独自に外国と貿易するようにすること、といった提言も出しました。
—つまり、民間に任せていたら、産業の育成に時間がかかりすぎるので、国有企業を育成して政府が直接、資金を提供すればいい、と…
ピルズベリー:そうです。1990年には北京にある世銀のオフィスは世界最大規模となっていました。それほど大人数のスタッフを世銀は北京に送り込んだということです。つまり、世銀が中国のために、全く新しい経済モデルを考え出したのです。
これは後で知ったことですが、ソ連崩壊後の数年間、実は中国のエコノミストたちの間では経済成長戦略を巡って、世銀の進める戦略で行くのか、市場経済に向けて動き出したロシアや東欧の例に倣うのかを巡って、かなり議論をしたと聞きます。ロシアや東欧では国有企業がすぐ民営化され、価格の自由化も図られました。当時、中国の改革志向派の政治家の中には、ロシアや東欧の民営化・市場化の動きに倣おうとする人々もいたのです。つまり、自由市場と私有財産を認める方向に向かって進むべきか、あるいは政府がコントロールできる国有企業を沢山作って、米国などの先進国から技術支援を受け、もらえないものは盗み取ってでも習得し、とにかく米国に追いつくべきではないかという重要な議論でした。
結局、周小川氏などの強硬派が勝利を収め、中国のマラソン戦略を支援する世銀と組む方針を維持することになった。周小川はご存じの通り、2003年以降、現在も中国人民銀行(中央銀行)総裁を務めている人物です。
周氏は、民営化や政治改革を拒み、代わりに協力的な世銀のエコノミストらと共に、中国共産党による支配のもと、国有企業の収益性を向上させる戦略を推進しました。周氏と世銀中国支部長だったピーター・ハロルド氏は、非効率で、組織構造も経営状態もお粗末だった中国の国有企業を変えるべく独自の戦略を描きました。当時、国有企業はどこも赤字で、国営銀行からの借入金で赤字を埋めていました。こうした時代遅れの国有企業を世界に誇れるチャンピオン企業に変えるという大胆な挑戦でした。その支援には、ゴールドマン・サックスといった米国の大手投資銀行なども大いに手を貸したようです。
今や米フォーチュンの世界上位500社の95社が中国企業
1990年代初め、欧米人が知っている中国企業と言えば「青島ビール」くらいでした。米誌「フォーチュン」は毎年、時価総額で世界上位500社を紹介しています。当然、中国企業は当時、1社も入っていませんでした。「世界上位500社に入る企業を育成したければ、世銀の助言に従えばいい」と聞いた中国は、世銀の助言をすべて実践しました。その結果、ゼロからスタートして、20社、30社と増えていき、今や世界最大の石油化学会社である中国石油化工集団(シノペック、2014年は3位)を筆頭に、中国石油天然気(同4位)、国家電網(同7位)、中国工商銀行(同25位)など2014年には中国企業が実に95社もランクインしています。
—国(共産党)が戦略的国有企業と位置づければ、集中的にその企業に資金を投入でき、効率よく成長させられる…
ピルズベリー:資金だけではありません。上位100社の国有企業の経営者は共産党の中央委員会が決めます。多くは国の諜報機関か軍の出身者で、そのつながりは経営者に就任した以降も生きるわけです。だから一部のCEO(経営最高責任者)を務める者たちは、いろいろな意味で閣僚よりも重要な存在です。
—まさに中国が国家資本主義と言われるゆえんですね
ピルズベリー:そうです。中国は半分だけが市場経済です。規模の小さな企業については、ある意味、市場原理で動いているが、規模の大きい国有企業は政府の方針が優先されるということです。
ここまで経済分野の説明をしましたが、私がより深刻な問題だと捉えているのは軍事面における中国の動きです。
「米国の弱点を突く」形で軍事力も増強
—年々、軍事力を増強しており、脅威に感じているのは日米だけではありません。
ピルズベリー:中国は「どうしたら米国を怒らせないで、中国を守る軍事力をつけられるか」について様々な検討を重ねてきました。その中で彼らがかねて考えてきたのは「米国の弱点をまず探し出すべきだ。そしてその弱点を突く形で軍事力を増強すればいい」と。その中国が米国の弱点を理解するに至ったのは、1990年代になってからでした。なぜか。それは、米国が自ら大きな過ちを犯し始めたのです。
—どういうことでしょうか。
ピルズベリー:米軍が自分たちのことについて論文を書くようになったのです。まず1991年のイラク戦争後のことです。こんな論文が出てしまった。「米軍がなぜイラクであのような攻撃をできたかというと、米軍は、ターゲットを定めて攻撃するタイプの武器も、通信手段、機密情報のやりとりなども含め、攻撃の90%をわずか数個の衛星を経由して行っている」と。
中国側はこれらの論文を読んで、「空母を11隻も抱え、何千発ものミサイルを抱えている大国である米国の実力は、数個の衛星にすべてかかっている」という事実を把握してしまいました。以来、米国の軍事力の研究を深めた中国側がある日、私にこう聞いてきました。
「米ソはどうして互いに相手の衛星を撃ち落とそうとしなかったのか」と。
米ソ間では、相手の衛星を撃ち落とさないという約束をしていたからだと答えました。そんなことをすれば二国とも大混乱に陥り、自爆行為に等しいと理解していたからです。だから衛星だけは守る必要があるということで合意していたのです。
ところが2007年1月、米紙「ニューヨーク・タイムズ」は中国が秘密裏に自分たちの気象衛星を撃ち落として、通信を遮断する実験を行ったと報じました(Flexing Muscle, China Destroys Satellite in Test)。多くの米国の軍事関係者はその10年前には、軍事雑誌などに「中国に衛星を撃ち落とすことなどできない」と書いてあなどっていた。しかし、撃ち落とした実績があるということは、米国の衛星も撃ち落とそうと思えばできるということです。
米軍は自国の空母の弱点を中国に明かしていた
—中国が「秘密裏に行った」というのがなおさら気になります。
ピルズベリー:秘密裏に、というのは各国に事前通告もしなければ、撃ち落とした意図についても一切説明をしていない、ということです。この気象衛星を撃ち落としたことについては話したいことがありますが、その前に米軍の由々しき事態をもう一つお話しましょう。
中国軍の人たちが、米海軍との交流の一環で米空母を訪問した時のことです。その時、米軍側は「米国の空母はどれも4つの原子炉で動いていて、時速30ノッチと非常に速いスピードで進む。100機の飛行機を搭載できるので、どこへでも行けて、爆撃しようと思えばいかなる国、場所に対しても攻撃することができる」と説明しました。
すると、空母内を案内されていた中国軍の将校が「素晴らしいですね。私たち中国軍には決してこんなものを造ることはできないでしょう」と言ったうえで、「ただ、もしこの空母にあえて弱点があるとすれば、何でしょうか」と聞いてきた。
これに対し、米軍将校は「問題はあります。空母の側面は非常に厚みがあるので、いかなる攻撃にも耐えられるが、底が薄い。私たちの空母は、爆弾をすべて底に保管しています。空母には5000人近くの乗員がいるため、そのスタッフから少しでも距離を置くためです」と回答したというのです。
その後、中国はロシアが「船跡追尾魚雷」という特殊な魚雷を造っていること突き止めたといいます。これは発射されると、空母が通った跡の波である船跡を感知して、その空母の下に入ってから上に向きを変え、攻撃するという魚雷です。
—今の話が何年前のことだったのか分かりませんが、中国は旧ソ連製の空母を購入し、これを改修して2012年に「遼寧」と名付けて配備しただけでなく、同年、上海の造船所で国産空母の建造にも着手し、2020年までに就役させる計画といいます。軍事的脅威は高まるばかりです。
ピルズベリー:確かに米国でも中国軍に対する認識は変わりつつあります。特に今年、中国からの数度にわたる大規模なサイバー攻撃により一般米国民の間でも、警戒感が出てきています。
ハリウッド映画にまで影響を与え始めた中国
—6月と7月の米人事管理局(OPM)へのサイバー攻撃では、計2500万人の連邦政府職員(退職した職員も含む)の社会保障番号などの個人情報が盗まれたと報道されました。
ピルズベリー:私の情報も流出したということです。さて、先ほど中国が気象衛星を撃ち落とした件について話しておきたいことがあります。
あの実験により、3000片を超える破片が発生し、それが今後何十年も低い軌道上を周回する、と言われています。2013年に公開された映画『ゼロ・グラビティ』をご覧になりましたか。あの映画では、ロシアが用済みになった衛星をミサイルで爆破し、そのために生じた大量の破片がジョージ・クルーニーらが演じる宇宙飛行士の乗ったスペースシャトルにぶつかったという設定になっています。おまけに、最後、サンドラ・ブロックが演じる女性宇宙飛行士は中国の無人宇宙ステーションに保管されていた補助燃料タンクを借りてなんとか地球に帰還するというストーリーになっていて、ロシアが「悪者」、中国が「英雄扱い」されています。
しかし、ロシアが自国の衛星にミサイルを撃ち込んだことは過去、一度もありません。あの映画の脚本家たちは、宇宙で起きたことと起こり得ることをあえて歪めた、ということです。なぜか。世界一の人口を有する中国では、莫大な数の人が映画を観て、それがハリウッドの映画会社に巨利をもたらす。ビジネスならば当然なのかもしれませんが、こういうケースが蓄積していくことに懸念を覚えます。
—米国のビジネス界では中国の市場の大きさゆえに、中国にマイナスになることを控える自主規制が働いているということでしょうか。しかし、こういう話が増える、あるいは今回のピルズベリーさんの本を多くの人が読めば、たとえそれがピルズベリーさんの意図ではないにせよ、反中の思いを深める人や反中国に転じる人はますます増えることになります。それは決して何かの解決に結びつくとは思えません。どうすればいいのでしょうか。
ピルズベリー:本に米国が取るべき12の方針を書きました。その多くは日本にも参考になります。それについては次回、お話しましょう。(第4回に続く)
10/2記事
–先週の金曜日、9月25日にワシントンで習近平国家主席とオバマ大統領の首脳会談が行われました。どうご覧になりましたか。
ピルズベリー:中国にとっては成功、米国が得たものはゼロだった。中国は首脳会談前から指摘されていた南シナ海や東シナ海の問題、あるいはサイバー攻撃問題などについて、何かを確約するということをうまく逃れた。
ビジネス面を見ても、米中2国間投資協定の締結には至らなかった。首脳会談で最終合意できるようこの数カ月、両国間で相当な努力がなされていた。だが、この投資協定は中国政府が中国国有企業を優遇することを禁じている。首脳会談でどんな話があったのかは明かされないので理由は分からないが、中国は投資協定においても譲歩しなかったということだ。
—しかし、サイバー攻撃の問題については、今後、閣僚級の協議を新たに設置することで合意したと報道されています。
ピルズベリー:いつかね。
—いや、年内にも初会合が開かれる、という報道を目にしました。
ピルズベリー:いつ開始するかといった具体的な時期は決まっていない。今回の首脳会談の特徴は、文書での合意は何もないということだ。首脳会談後、ワシントンで随分沢山の記者と話したが、メディアも今週になって、その事実に気づき始めた。
通常、2つの大国の首脳が会談すれば、複数の事項について何らかの最終合意にこぎ着け、両者が合意文書に署名し、それが会談後に発表されるものだ。だから記者たちは週が明けた今週の月曜日、ホワイトハウスに連絡して、サイバー攻撃の問題を扱う閣僚級協議新設など一連の合意事項に関する合意文書のコピーを欲しいと要請したが、ホワイトハウスは「渡せるような文書になったものは何もない」と回答している。それは、ホワイトハウスのウェブサイトを見てみれば明白だ。そこにはオバマ大統領と習近平国家主席の共同記者会見での発言しか上がっていない。
—合意文書が全くない?
ピルズベリー:そう、全くない。習近平氏はオバマ大統領と並んで共同記者会見を開くことさえ嫌がっていたと聞いている。だが、共同会見は中国側が譲歩して実現した。
確かに、共同会見で彼らは「米中はサイバーセキュリティーについては協力していく」と語り、メディアの報道ではpromise(約束)とかpledge(誓約)という言葉が使われた。だが、それは飛躍というものだ。合意して署名に至った文書は一枚たりとも存在していない。
安全保障に関わるテーマはすべてはねつけた
今回の首脳会談で何より顕著だったのは、中国側が次の5つの点について、徹底して自らの主張と立場を押し通した点だ。第1は、「両国はサイバー犯罪がこれ以上起きないように協力して戦うという重要な合意に達した」と習近平氏は会見でこそ述べたが、米国が昨年、米企業へのサイバー攻撃に関与したとして起訴した中国人民解放軍(PLA)の当局者5人の米国への引き渡しを拒否した。
第2は、中国は過去に自国の人工衛星を撃ち落とすことに成功し、他国には脅威になっているが、宇宙における中国の衛星攻撃を禁じる話や中国が宇宙スペースで進めている軍事増強に関する議論について議論することも拒否した。
第3に、米国が求めた軍事交流の拡大も、限られたものしか受け入れないとの姿勢を貫いた。
第4に、台湾向けミサイル配備に関する議論も拒否した。中国は過去10年間で、台湾向けに1000発以上のミサイルを配備してきたが、直近でも毎年200発以上増強している。この話題についても議論を拒否した。
第5に、冒頭でも話したが、南シナ海における埋め立て工事については、他国から一切の制約、制限は受けないと主張した。共同会見でも習主席は「南シナ海における島々は古来、中国の領土だった」と発言。これに対してオバマ大統領は、何のコメントも反応もしなかった。
実は、首脳会談前に私は、かねてつきあいのある中国の軍部の将校から、中国がこうした反応をするであろうということを聞いていた。情報源は国防大学などで教えている将校クラスの学者たちだ。人民解放軍には、あまり知られていないがGeneral Political Department(総合政策部)と呼ばれるチームがある。タカ派の彼らは通常、どちらかというハト派の外交部の方針と衝突するものの、政策決定に強い影響力があり、今回の習近平氏の訪米を巡る中国側の方針を決める上でも重要な役割を果たしたと考えられる。
彼らが出した方針とは、安全保障に関わるテーマは徹底してはねつける、というものだったという。
「新興国は時の覇権国を刺激してはいけない」という方針を今回も徹底
—外交面においても人民解放軍のGeneral Political Departmentが力を持っているということですか。
ピルズベリー:今回、習近平氏や中国代表団とオバマ大統領が一緒に撮影した記念写真には、将校は一人も写っていない。しかし、彼らこそが今回の訪米における外交方針を決めるのに重要な役割を果たしている。
軍部は習近平氏に、私が著書『China 2049』でも書いた「100年マラソン戦略」に基づいた助言をし、習近平氏はその通り行動した。この連載の第2回でも触れたが、100年マラソンで最も重要なのは、「新興国は時の覇権国を刺激してはいけない」ということだ。だから中国は、衝突することが確実な安全保障に関する問題の議論はことごとく避け、とにかく「危険な国の指導者だ」との印象を与えないよう腐心したわけだ。
習近平氏は最初に訪問したシアトルでのスピーチで、米国式の心温まる言葉を並べ、「私は、若かった頃には、アレキサンダー・ハミルトン*1の『ザ・フェデラリスト』*2やトーマス・ペインの『コモン・センス』を読みました」などと語った。こんな話を聞けば米国人は、少なからず習近平氏に好感を抱くだろう。
*1 政治家であり、憲法思想家であり、アメリカ合衆国の建国の父の1人とされる。
*2 アメリカ合衆国憲法の批准を推進するために書かれた85編からなる論文で、「比類のなき憲法の解説で、米国人によって書かれた政治学の古典」とされ、ハミルトンはこの論文の3分の2を書いたとされる
—中国や習近平氏にとって今回の訪米は、大成功だった…
ピルズベリー:中国では大成功と受け止められているようだ。北京に送られた今回の習近平氏訪米に関する報道をいくつか見たが、どれも彼を強い指導者であると書いていた。中国では今回の訪米で、米国から大きな圧力をかけられ、様々な譲歩を迫られるのではないかとの懸念もあったようだ。それだけに、習近平氏が一歩も譲歩しなかったことが高く評価されている。ホワイトハウスで米国の指導者と一歩も引かず対等にわたりあった強い指導者である、と。
—すると、習近平氏は反腐敗運動を追求しすぎて政敵が増え、権力基盤が盤石ではないのではないかといった見方が一部で浮上していますが、そんなことはない?
ピルズベリー:中国における彼の人気は高い。今回の訪米成功で、その人気と、指導者としての評価はさらに高まっているように思う。私は彼の権力基盤は盤石だと見ている。
中国の成長率を見るときは西側諸国とまず比較すべき
—しかし、中国は6月以降、株の暴落に見舞われています。8月の元の切り下げ以降はさらなる株価暴落に直面し、政府による必死のてこ入れ策も効果が出ない。経済の減速も深刻です。一部に、この経済のつまずきで、中国は弱体化が進むのではないかとの見方も浮上しています。
ピルズベリー:経済成長率が7%に鈍化した、あるいは7%の達成も危ういといって多くの人が騒ぐが、昨年の米国のGDP(国内総生産)は2.4%、日本に至っては1%にも満たない。世界第2位の経済大国である中国の成長率が仮に6%にとどまっても日本の6倍のスピードで成長している。
中国自身も、かつての2ケタ成長から、1ケタの持続的な成長を目指す「新状態(ニューノーマル)」の時代を迎えたと言っている。彼らは間違いから学習することを知っており、政策運営でも着実に力をつけてきている。先進国は何かというと中国の問題を深刻に捉えようとしたがるが、まず自分たちの国の成長率と比べてどうなのか、という点にもっと目を向けるべきだ。
私は、西側諸国の関心が中国経済ばかりに集中し、中国が軍事支出を拡大し続けていることへの注意がそれで削がれてしまうことの方が問題だと思う。
中国を過大評価することが最も危険
—今回の習近平の訪米でも、米国企業はIT(情報技術)系を中心に、中国に熱い秋波を送っていました。経済的な存在感のみならず、軍事的にも脅威を増す中国と、日本はどのように向き合っていけばいいのでしょうか。
ピルズベリー:詳しくは本を読んでほしいが、日本を含め私たちがなすべきことをここでは3つ紹介したい。
まず最もやってはいけないのは、中国を「過大評価する」こと。米国防次官補で、国際政治学者として知られるハーバード大学のジョセフ・ナイ氏も「我々の最大の危険は、中国を過大評価し、中国に自ら過大評価させ、うぬぼれさせることだ」と指摘している。
私はさらにナポレオン・ボナパルトの有名な言葉を忘れてはいけないと考えている。「敵が間違いを犯している時は、邪魔するな」だ。長い目で見れば、中国が傲慢で攻撃的な態度で近隣諸国を挑発し、同様のスタンスの国々と連携していることは国際社会に多くの敵をつくることになり、私から言わせれば、結果的に米国を手助けしていることになる。尖閣諸島の領海侵犯を何度も犯せば、それだけ日本を怒らせることになる。それは決して中国のためにはならないからだ。
安倍政権はもっと中国語で生の情報を読み込べきだ
第2は、日本も私のように「中国語の生の資料を読んでいる」という人材を早急にもっと増やすべきだ。特に安倍晋三首相の補佐官たちに強調したいのは、中国で書かれた中国語の生の資料をもっと入手し、それらを読み込むべきだ、ということ。生の資料とは、本連載の第2回で触れた中国でベストセラーになった『中国の夢』や『戦略学(2013年版)』や『Study of US Strategies』といった中国政府の内部資料のことだ。
『中国の夢』は英訳されているが、全体の一部にすぎず、原書を中国語で読まないと真意はつかめない。『Study of US Strategies』はそのタイトルが示す通り、内容は中国による米国の軍事戦略の分析で、幸いなことに英語で書かれている。中国は同様に日本の軍事戦略も研究し、日本版もつくっているので、日本政府は読むべきだろう。
—まず彼らの考えていることを知ることが大事だということですね。
ピルズベリー:その通りだ。
第3のポイントは、中国国内の改革派を支援していくことだ。ただし、タカ派かハト派を見分けることは極めて難しいことを覚悟しなければならない。
天安門事件後、中国共産党の改革派の指導者だった趙紫陽が終生の自宅軟禁に置かれた。その20年後、コロンビア大学の政治学者アンドリュー・ネイサン氏が、秘密裏に趙氏の回想録を入手し、出版した。その回想録には、当時私たちが知らなかった圧倒的な不利な状況の中で、彼がいかに強硬派に立ち向かい、真の改革を実現しようと苦闘したかが書かれている。
当時、私を含め当時の政権の多くの中国関係者は、趙紫陽の軟禁は改革の一時的な後退にすぎないと楽観的に見過ぎていた。今も強く悔やまれる出来事だ。同じ過ちを繰り返してはならない。
—最後に中国共産党による一党独裁は今後も続くとみていらっしゃるか、その点をお聞かせください。
ピルズベリー:よく聞かれる質問だ。私は以前も話したが、中国共産党には間違いを犯したら「学ぶ」力がある。だから私は、中国共産党には持続性があると思うし、今後も一党独裁が続くとみている。

