『中国が期待する米中蜜月関係』(日経ビジネス2016年11月28日号 The Economist)、『「大統領」狙う強権 習氏に死角 トランプ現象は中国でも 編集委員 中沢克二』(11/28日経朝刊)について

「エコノミスト」の記事は中国にまだ幻想を持っている記者が書いていると思われます。社会主義や共産主義が悪と言うのが分からないとすれば、知的誠実さを疑うし、そうでなければ単なる愚鈍なだけでしょう。「サルトル」は「マオイスト」だったと楊海英著『モンゴル人の民族自決と「対日協力」 いまなお続く中国文化大革命』の中にあります。日本でもサルトルを持ち上げていた時代がありますが、彼は毛沢東主義者=虐殺肯定派だったのでは。欧州知識人と言っても、現実を見ないで理想化したのでしょうけど。「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」というのが漢民族の基本的価値観と言うのが分かっていれば、少しは違ったかも知れませんが。況してや戦後何でも白人の言うことが善だと信じ込んだ日本人の程度も知れます。アカは、虐殺は不可避と考えます。スターリン、毛沢東、ポルポト、日本の連合赤軍、自国民を殺しまくったキチガイです。自分に逆らうものは全部殺戮してしまうというのは狂気以外の何物でもありません。

毛沢東は「百花斉放、百家争鳴」で民主派の批判が高くなったので慌ててブレーキをかけるために反右派闘争に切り替えたと一般的には言われていますが、楊氏の本の中では最初から敵(知識人、毛の批判者)を炙り出すための罠(陰謀ではなく陽謀)だったとありました。如何に毛沢東と言うのは狡猾、腹黒いかです。反右派闘争は文化大革命への嚆矢であって、而も漢人の敵を打倒してから少数民族へのジェノサイドを展開するよう考えていたというのですから。日本も五族協和何て考えていたのが如何に甘かったかという事です。

トランプが中国にどういう態度を取るかはまだ分かりません。言えることはオバマ以上に中国の横暴を許すことはないとだけ言えるのでは。軍事予算を増やすのは中国に対する牽制と読めます。ただ、ブッシュ(息子)も最初は中国に威勢が良かったですが、国務省辺りに騙されて、軌道修正していきました。中国は要人には金を配っているでしょうから。

トランプがAIIBや「一帯一路」を認めることは世界にとって最悪です。悪を世界に蔓延させることになります。そうならないことを祈ります。

中沢氏の記事では、中国は子供騙しの選挙をして見せたとのこと。事情が分かっている人は騙されないでしょうけど、TVだけでしか情報を取れない人は簡単に騙されるでしょう。中共はそれを狙っていると思います。でなければ香港の立法会選挙で揉めることもないでしょう。台湾こそが民主主義社会と言えます。悪の帝国・中共支配の国と台湾は全く別の国です。

The Economist記事

中国政府は、トランプ氏が大統領に就任すれば米中関係は好転すると見ているようだ。同氏が示す保護主義は実現しないと見る。中国は米国のインフラ投資を支援できるという。だが米中関係には不確定要素が多い。仮に蜜月が到来しても長く続くことを期待してはならない。

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中国の習近平国家主席(左)とトランプ氏は、同氏が米大統領に就任した後の首脳会談でどんな話をするのだろうか(写真=2点:ロイター/アフロ)

2016年の政治は、大きな番狂わせが相次いだ。さらに、ここにもう一つ思いがけない予想がある。「中国は、米中関係がこれから黄金期を迎えると考える」というのだ。これは、最近現実となったいくつかの予想外の出来事と同じくらいとっぴな考えだ。だが、それほど的を外したものとは言えないだろう。

米国の成長に中国は不可欠

ドナルド・トランプ氏は選挙期間中、中国を名指しでこう非難していた。「赤ん坊からキャンディーを取り上げる」ように米国から雇用とビジネスを奪い取った主犯であると。さらに同氏は、貿易戦争に臨む姿勢もにおわせた。大統領に就任したら即日、中国を為替操作国に認定し、中国からの輸入品に45%の懲罰的関税を科すと公言した。

その上、トランプ氏は、バラク・オバマ大統領と中国の習近平国家主席が9月に署名した地球温暖化対策を巡る合意も破棄すると明言した*1。この合意は、米中関係における数少ない外交的な成果だったのだが。

*1=パリ協定を指す。米中が同協定に署名したのは2016年4月。両国は同協定を9月に批准した

加えて、トランプ氏の政権移行チームが混乱の渦中にある中、対中政策担当者として取りざたされている名前を見てみるといい。中国首脳は安心などできないはずだ。

国務長官の候補として、元ニューヨーク市長のルドルフ・ジュリアーニ氏と、国連大使を務めたジョン・ボルトン氏の名前が挙がっている*2。ジュリアーニ氏は対中外交の経験がほとんどない。ボルトン氏はタカ派で、対中強硬派だ。

*2=両者に加えてミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事の名前も挙がる

それでも中国は明るい面に目を向け始めている。中国政府内で楽観論が高まりつつある背景には次の推測がある。「米国の雇用と成長を本気で考えるなら、トランプ氏は最終的に中国への関与*3と貿易を重視するだろう」。

*3=米中関係では、「中国包囲」の対義語として用いられる

要するに、保護主義は「米国を再び偉大な国にする」というスローガンと整合しないのだ。ここから、トランプ氏が選挙期間中に繰り返した威嚇的な発言は基本的にこけおどしである、という結論が導かれる。少なくとも中国政府はそう期待している。

確かに、トランプ氏が中国を為替操作国に正式に認定する可能性は高い。しかし、そこから調査を開始し、結果を公表できるのは1年後だ。さらに、結果が出ても、ただちに影響が生じることはまずないだろう。

加えて、中国首脳はトランプ氏の中に、自分たちと同じ特性が潜んでいることを見抜いているかもしれない。民主主義の美点には敏感でなく、何より発展と成長に関心を抱いている点だ。

トランプ氏と習氏は11月14日に電話で初めて会談した。中国共産党機関紙・人民日報系の「環球時報」は、通常は米国に対して批判的な姿勢を示すが、この電話会談は高く評価し、次のように報じた。協調を求めた習氏に対してトランプ氏は、「外交的に申し分のない」言葉を返した。これにより、両大国間の今後4年間の関係に対する「楽観」が強まった。

同紙はさらに、トランプ氏こそが「恐らく、大国間の関係を現実的な手法で作り直していく米国の指導者だ」と評価した。同氏が「事業家の視点や草の根的な視点」を持っており、「ワシントンの政治エリートに取り込まれていない」ことを理由に挙げた。

米国のインフラ建設支援か?

中国のタカ派が主張する楽観論は、明らかに別の推測に基づいている。トランプ政権は結局混乱して機能せず、米国の力を損なうというものだ。この事態は米中が演じる長期的な勝負の中で中国に有利に働き、米国は没落し、中国は興隆していくというわけだ。

環球時報は、ほんの1週間前には「トランプ氏がどのような混乱をもたらすかを見ていよう」と書いていた。

中国の首脳は、オバマ大統領の任期満了を歓迎している。同大統領が進めるアジアへの「ピボット」(アジア重視)政策を嫌っているからだ。

中国政府はオバマ氏の姿勢を次のように辛辣に批判する。習氏は2013年、両国間の「ウィンウィン」の協調を含む「新型大国関係」という素晴らしい提案をした。ところがオバマ氏は米中関係を「どちらかが勝ち、どちらかが負けるゼロサムの関係」と捉え、この提案を受けいれることができないというのだ。

オバマ氏は、この新たな関係は詰まるところ東アジアの覇権を中国に譲り渡すことだと考えている。どうしてそのように考えられるのだろうか、と。

従って、トランプ氏が大統領に就任して最初の米中首脳会談で何が話し合われるのか、想像するのは難しくない。“建設長官”を自認する同氏は大統領選の勝利演説の中で、「高速道路、橋、トンネル、空港、学校、病院」など多くの公共事業に取り組むと約束した。

習氏は、公共事業について自身も相当な専門家であることをアピールするだろう。総延長1万8400kmを超える高速鉄道が走る広大な国を率いているのだから、同氏がそうした専門知識を持ち合わせていても不思議ではない。

一方、米国に長大な高速鉄道網は存在しない。長江の三峡ダムは、米国のフーバーダムと高さはほぼ同じだが、幅は6倍ある。

習氏はトランプ氏に、米国のインフラ建設のため資金と専門技術を提供すると申し出て、米国の雇用創出に中国が貢献できると強調するに違いない。

トランプ氏がお返しに好意を示すことは容易だろう。例えば、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加しないというオバマ大統領の方針を撤回することが考えられる。

あるいは、習氏が提唱する「一帯一路」構想を、もう一歩踏み込んで支持することもできる。この構想はアジアと欧州を結ぶインフラを建設するもの。トランプ氏の政策顧問は、こうしたカードを切る可能性を既に示唆している。

米中の将来は見通せない

こうなれば、ほとんど誰も予想することのなかった米中の蜜月関係が到来する。中国は間違いなくそれを望んでいる。

習氏は今、対外関係を平穏に保つことが極めて重要な時期にある。これから1年をかけて、党の指導部を全面的に刷新する考えだ。同氏は権力基盤を固め、後継者選びを主導したいのだ。このためには、国内に意識を集中する必要がある。

ただし、米中蜜月が長く続くと考えるのは間違いだ。まず、中国はトランプ氏が身につけている商売人としての本能の強さを恐らく過小評価している。また、仮にドル高が続き、中国の通貨管理が難しくなった場合、中国政府は対米政策を見直すかもしれない。

米国の友好国はトランプ氏が当選したのを受けて慌てふためき、米ニューヨーク・タイムズ紙の表現を借りれば、「まもなく自由主義世界の指導者となる人物に連絡を付けようと、トランプタワーに闇雲に電話を入れた」。

とはいえトランプ氏は、東アジアの同盟関係に対する保障を同氏流のやり方で高めている。第2次世界大戦後の東アジアにおける米国の影響力が、この同盟関係によって強化されてきたのは事実だ(本誌=英エコノミスト=が印刷に回される時点で、日本の安倍晋三首相が外国の首脳として初めて、次期大統領となるトランプ氏と会談しようとしている。安倍首相は、日本が自国防衛において果たす役割を拡大すると約束するものと見られる*4)。そして中国はこの同盟関係に対して敵意を抱いている。

*4=安倍首相とトランプ氏は11月17日に会談した。話し合いの詳細は明らかにされていない。ただし同首相は「信頼関係を築いていくことができると確信した」と発言

世界で最も重要な2国間関係、すなわち米中関係は、何によってかき乱されるか予断を許さない。2001年には中国の戦闘機と米国の偵察機が空中で衝突し、米中関係が緊張した。最近は、両国首脳を脅かすこうした危機は発生していない。しかし、論争の絶えない南シナ海や東シナ海で同様の事件が起こることは十分に考えられる。

このようなレベルの外交危機に対処する能力が一切試されていないのは、トランプ氏だけではない。これを忘れてはならない。この点では習氏とて同じなのだ。

©2016 The Economist Newspaper Limited Nov. 19-25, 2016 All rights reserved.

日経記事

英国の欧州連合(EU)離脱、米国のトランプ旋風、そして別格の指導者を指す「核心」の地位をつかんだ中国国家主席の習近平。今年の3つの動きのキーワードは、グローバル化の反動である地域優先主義と、強権主義だ。中国の変化はわかりにくい。だが、それは今後、アジアと世界に大きな影響を及ぼす。

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習が得た「核心」の地位の本質は何か。中国のネット空間では今、勝手な解釈が自動的に削除されている。その微妙な問題の解釈を一人だけ許された人物がいる。習が心を許す側近で、来年、最高指導部入りも噂される栗戦書だ。彼は、習が建国の立役者の毛沢東、経済大国への道を引いた鄧小平に並び立つとした。

前任の胡錦濤が10年かかっても手が届かなかった地位を習は4年で得た。それは必ずしも権力の盤石さを意味しない。既得権を持つ共産党が一党独裁を続けるにはひとまず習を「核心」とし、締め付けるしかないと判断したのだ。統治の危機はそこまで来ている。

習は力学を読みつつ、長くトップにとどまろうとするだろう。現憲法は国家主席の任期を2期10年までとする。党トップの総書記の任期に明文規定はないが、国家主席の規定に準じてきた。68歳になれば引退する内規も定着している。

3選禁止を破る手は色々ある。習に近いとされる学者らが観測気球を上げるのが「総統制」の導入だ。「国家主席に代わる総統を創設し、習主席が2022年の次々回の共産党大会以降、中華人民共和国第1代総統に就けばよい」。こんな声がじわり広がる。

集団指導を形骸化する総統制は形ばかりの選挙を経る。とはいえ米大統領制とは全く違い、一党独裁が前提だ。今も国営メディアは国家主席の英訳に「プレジデント」を使う。憲法改正で国家主席を総統に変えても大差ない。米国との対等さを気にする中国の新制度として見栄えも良い。

「あれはその予行演習だよ」。北京の識者が指摘したのは、習が恭しく一票を投じる姿を報じた16日の中国各紙のトップ記事だ。

党推薦候補から区の人民代表を選ぶ投票箱は、執務地の「中南海」に置かれた。いかにも中国的だ。立候補の自由さえない仕組みは小学校の学級委員選挙にも劣る。だが米大統領選の直後に中国でも選挙があると宣伝する意味はあった。

面白いことに抵抗勢力が現れた。投票用紙には印刷済みの推薦候補名にない名を書ける空欄がある。不満分子はトランプの名を書いたという。形だけの選挙への静かな抵抗だった。

共産党を取り巻く情勢は厳しい。米国では上位1%の層が全米所得の2割弱を占める実態に白人労働者層の不満が爆発し、トランプ旋風を生んだ。富の偏在は中国でも目立つ。なにせ将軍、人民代表の地位まで巨費で取引されていたのだ。

中国の巨大格差はいつ生じたのか。1999年、福建省代理省長だった若き習は本紙のインタビューで焦点の世界貿易機関(WTO)加盟について「利が弊より大きいなら入る」と語った。2001年の加盟後、約10年間、中国は2ケタ成長に沸く。グローバル化を進めるWTO体制の世界最大の受益者になったのだ。

本来、競争は経済の自由化を促す。だが、共産党は巧みに阻止した。グローバル化は外づらだけ。逆に市場を占める国有企業の一人勝ちとなり、幹部の給与も不当に跳ね上がった。

自由貿易と民主主義の親和性を信じる人々には想定外だった。「中国の特色ある市場経済」ならぬ、中途半端に開かれた中国だけの「権力市場経済」が、格差と汚職を生む元凶だった。

WTO加盟から15年を経た今、習はツケを払わされている。中国の国有企業は共産党内の定期人事異動体制の中にある。党組織が強い国有企業群を本気で潰せば独裁体制は弱まる。本当の改革は土台、無理だ。

一方、習は苛烈な汚職撲滅運動に踏み切った。それは権力固めにも使える利器だ。とはいえ他党や独立組織の監視機能がない以上、「反腐敗」は定着しない。習は新たな監督体制の導入を探るが、極めて難しい。格差を是正できないなら、いずれ不満が爆発する。

もう一つの問題は地域優先主義だ。来年、返還20年を迎える香港では議会選で中国からの独立を唱える「本土派」が躍進した。台湾では中国と距離を置く蔡英文政権が誕生し、独立を口にする新世代政党「時代力量」の台頭も著しい。

主役は10~20代の若者だ。これは今後、竹のカーテンで仕切られてきた中国大陸内にも影響を及ぼす。EUの揺らぎ、トランプ現象は他人ごとではない。

中国経済は、習の側近が認めたように当面「L字型」で推移する。習体制は低成長の下、民衆の不満、地域優先主義の2大潮流に対処する必要がある。「核心」の地位をふりかざす強権だけで、その流れに抗するのは時代錯誤である。

ペルーでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)で習は微妙な軌道修正を迫られた。敵視する台湾の蔡英文が送った野党党首の宋楚瑜、不人気の香港トップ、梁振英、南シナ海問題でやりあった日本の首相、安倍晋三と次々会ったのだ。近隣の面々とあえて地球の裏で話す「全方位接触」には、強権への道を歩む習の悩みが透ける。

(敬称略)

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