『「THAAD」を逆手に取る中国、韓国を金縛りに 「南シナ海」でオバマの警告を無視した朴槿恵』『習近平の「シカト」に朴槿恵は耐えられるか 「米中板挟み」で国論分裂、保守からも中立論』(8/9・10日経ビジネスオンライン 鈴置高史)について

韓国が西側に戻らず、中国に寝返るのであれば、慰安婦合意の10億円も払う必要ないでしょう。中国の属国、手先にハッキリとなる訳ですから。「盗人に追い銭」です。金を払ったことで世界にまた証拠としてアピールするでしょう。通貨スワップも以ての外です。米国が何を言おうと救ってはなりません。恩義を感じない、自己中心の民族です。「困っているのでしたら、人民元のスワップがあるでしょう」と答えれば良いです。虫の良い話はなしにしないと。日本人の名誉を貶め、竹島も勝手に奪った国です。日本人はもっと怒った方良い。基本は「非韓3原則」ですが。

在韓米軍も縮小してきています(ブログ「日本と韓国は敵か?味方か?」より8/10「在韓米軍基地、80ヵ所のうち54ヵ所が韓国側に返還」)。戦時作戦統帥権もいざとなれば返すようにするかも。米軍が撤退すれば、核無しで北に統一されるシナリオが真実味を帯びます(8/8小生のブログで紹介しました8/5ZAKZAK記事)。また韓国人の心根には日本をやっつけたいという気持ちがどうしても拭えないようです。(ブログ「日本と韓国は敵か?味方か?」より8/10「韓国 『韓国に感謝しないアメリカを捨てて、中国と軍事同盟して日本を倒す』」)。まあ、勝手にほざいていれば良いだけの話。それであれば日本には泣きついてくるなと言いたい。乞食よりタチが悪い民族です。甘やかしてはいけません。日本人は韓国を敵国と認識しなければ。親中・親韓派政治家は選挙で落とすべきです。

http://blog.livedoor.jp/japan_and_korea/archives/64850266.html

http://blog.livedoor.jp/japan_and_korea/archives/64809257.html

8/10ZAKZAKには「尖閣で暴走する中国封じ 米空軍がグアムに“見えない爆撃機”を配備した狙い」という記事が載りました。

<日米両国が、暴走する中国の封じ込めに乗り出した。沖縄県・尖閣諸島周辺の領海に、中国海警局の公船や漁船が挑発的な侵入を繰り返していることを受け、外交・安保情報を共有するだけでなく、日米同盟の存在感をアピールしているのだ。こうしたなか、米戦略軍はグアムの空軍基地に、「見えない爆撃機」として恐れられるB2戦略爆撃機を緊急配備した。  「(尖閣は)日本の施政権下にある」「状況を注視している」  米国務省のトルドー報道部長は9日の記者会見で、こう語り、日米両政府が緊密に連携して対応する考えを示した。  尖閣周辺での中国公船の領海侵入は5日以降、継続している。海上保安庁によると、9日、接続水域を航行した公船は13隻で、うち4隻が領海に侵入した。近くには、海上民兵が乗り込んでいるとみられる約300隻もの漁船が集結している。  中国の暴走に対し、岸田文雄外相は同日、中国の程永華駐日大使を外務省に呼びつけた。8分間も待たせる“外交非礼”を意図的に演じ、強烈な抗議の意思を伝えた。さらに、中国公船の活動状況や、日本政府の対応に関する資料を外務省HPなどで公表し、国際世論にも訴えている。 中国は先月、ハーグの仲裁裁判所で、南シナ海における主権を全面否定される裁定を受けた。現在、習近平指導部が党長老と重要議題を協議する「北戴河会議」が行われているとみられる。習指導部は求心力を維持するため、無謀な挑発を仕掛けているようだ。

自衛隊は警戒態勢を敷いているが、同盟を組む米軍も黙ってはいない。

米戦略軍は9日、米領グアムのアンダーセン空軍基地に、B2戦略爆撃機3機を一時配備したと発表した。B2爆撃機は「全翼機」と呼ばれる特殊な形状を採用し、高いステルス性能を持つ。通常爆弾のほか、巡航ミサイルや核爆弾も搭載可能で、大ヒット中の映画「シン・ゴジラ」にも登場している。

同軍のヘイニー司令官は「地域の安全保障体制を支援するという米軍の決意を示している」と強調しており、中国の暴走を軍事的に牽制しているのは間違いなさそうだ。>

岡崎久彦氏の言うアングロサクソンとの紐帯を深めるため、日米安保を強固なものにするのを基軸として、日英同盟も持ちかけるようにしてはどうでしょう。パンダハガーのキャメロン・オズボーンからテリーザ・メイ政権に変わりましたので。

ただ、稲田防衛大臣の言った「自分の国は自分で守る」のは当り前のこと。中国が尖閣を取りに来たら、直ぐに日本単独で奪い返さないといけません。それはルトワックも指摘しています。稲田発言を左翼リベラルは「軍国主義」とか言って騒いでいますが、その論理では世界の国々は総て軍国主義になります。民主主義国も共産主義国も。論理が破綻しているのに気が付かないor気付いても日本を弱体化してシナの属国にする意図が働いているとしか思えません。日本人はもっと世界の常識を意識せねば。

8/9記事

THHAD in S Korea

「THAAD」を巡る米中の駆け引きが韓国をすくませる(写真提供:U.S. Department of Defense, Missile Defense Agency/ロイター/アフロ)

前回から読む)

地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD=サード)の在韓米軍への配備を巡り、しのぎを削った米中。果たして中国は「負けた」のか。

結局は中国の属国に戻る

–中国は歯ぎしりしているでしょうね。韓国がTHAADの配備を認めました。これで「離米従中」に歯止めがかかるでしょうから。

鈴置:初めはそう見えました。韓国の親米保守の人々も胸をなでおろしました。前々回の見出し通り「中国陣営入り寸前で踏みとどまった」からです。でも、その後の展開を観察すると、話はそんなに簡単ではありません。

—配備が容易に進みそうにないからですか。

鈴置:それもあります。加えてこれを機に、むしろ韓国が中国側により傾く気配が出てきました。「結局は中国の属国に戻るのだ」と自嘲する親米派の識者もいます。

THAAD配備への容認を理由に、中国が報復を露骨に匂わせた。すると、それに怯えた韓国が、ますます中国の顔色を見るようになったのです。

つまり、中国は「THAAD」を逆手に取って韓国をコントロール――金縛りにし始めたのです。典型的なのが「南シナ海」問題です。

「法的に拘束」VS「留意」

THAAD配備決定の発表が7月8日。4日後の7月12日にオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所が、中国が主張する「南シナ海の主権」には国際法上の根拠が全くないとの仲裁判断――判決を下しました。

フィリピンが提訴した裁判です。周辺国の非難を無視し南シナ海を軍事拠点化してきた中国にとって、極めて不利な判決でした。

日米両国政府は直ちに「紛争当事国は判決に法的に拘束される」と指摘し、中国に受け入れを求めました。しかし韓国政府は翌13日になってようやく「平和的な解決を求める」との曖昧な外交部報道官談話を出してお茶を濁したのです。

判決に関しても「留意する」との表現に留めました。日米の「法的に有効である」との立場とはかけ離れています。「判決に拘束力はない」と言い張る中国の意に沿ったのです。

「中立」で中国のご機嫌取り

—「南シナ海」は「THAAD」とどう関係するのでしょうか。

鈴置:中央日報が本音を書いています。「あす『南シナ海判決』…もう一度試される『米中等距離外交』」(7月11日、日本語版)です。ポイントを引用します。

  • 南シナ海問題に詳しい外交当局者は10日「仲裁裁判所の判決結果に関係なく、南シナ海紛争に関する政府の従来の立場に変化はない」と述べた。
  • この当局者は「米国はやや不満かもしれないが、THAADを配備すると発表した後、韓中関係が急速に悪化している状況で米国の立場を後押しするのは難しい。米国もこうした点を了解するだろう」と述べた。

要は「THAAD配備決定で中国との関係が悪化した。それを言い訳にして南シナ海問題では米国側に立たない」ということです。

それどころか、南シナ海問題を利用して中国の怒りを解こうと韓国政府は考えたようです。記事は以下のように続きます。

  • 政府は、仲裁裁判所がフィリピンに友好的な判決を出す場合「韓国政府の中立的な立場」が今後の対中関係にプラスの影響を及ぼすと期待する雰囲気だ。中国政府が「判決自体を認めることも従うこともない」として強い拒否感を見せてきたからだ。

—なるほど「中立を打ち出して中国のご機嫌を取る」作戦ですね。

鈴置:そんな見え透いたご機嫌取りに中国が騙されるとも思えません。が、韓国は中国の報復がとにかく怖い。そこで、THAAD以外の問題で中国の意向に沿うことに全力を挙げ始めたのです。

47%が「中国が最重要」

—なるほど。確かに、中国は制裁をちらつかせることで韓国を身動きできなくしてしまっていますね。

鈴置:THAAD問題では配備が決まったので、中国が負けたと考える人が多い。でも、それは戦術面の話。南シナ海も含め、戦略的には中国が勝ったと私は見ています。

—「中立的な立場」――つまり、中国に金縛りになったことに対し、韓国内で批判は出ませんか。

鈴置:そんな声を上げる人はほとんどいません。私が読んだ限りでは、趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムに「ヴァンダービルド」の匿名を使って論陣を張る外交・安保専門家ぐらいでした。

この人は「フィリピンやベトナムと比べても恥ずかしい卑屈な態度」と自分の国を嘆きました(「韓国は『唐と戦った新羅』になれるか」参照)。

しかし、ヴァンダービルド氏のように米韓同盟の堅持を訴える「腰の据わった親米派」は減り続けています。韓国という国は時に反発しながらも、中国の勢力圏で生きる決意を固めている最中なのです。

韓国の東アジア研究院が2016年6月から7月にかけて韓国人に「最も重要な国」を聞いたところ、1位は中国で47.1%。米国は39.8%で2位でした(グラフ参照)。韓国はもはや、親中国家と呼ぶべきです。

Important nation for Korea-2

「怖い」から従う

—でも「中国は嫌い」と言う韓国人もいます。

鈴置:確かに中国嫌いの韓国人が多い。今回の「報復するぞ」との威嚇で、韓国の嫌中感情はますます高まるでしょう。でも、嫌い――正確に言えば「怖い」から中国に従うしかない、と韓国人は考えるものなのです。

—「我々は中国に怯んでいない」と言ってくる韓国人もいます。

鈴置:韓国人はそう思いたいのです。どう公平に見ても「南シナ海」では対中批判に加わらず事実上、中国支持に回りました。が、韓国紙は「中立だ」と書くのです。「中国に怯んだ」ことを認めたくないのです。

韓国政府も奇妙な言い訳を用意しました。「南シナ海で米国を支持できないのは日本のせい」です。

外交部が記者クラブを相手にレクチャーしたようで、各紙が一斉に「日本のせいだ」と書きました。ハンギョレの「韓国政府、『南シナ海判決』 16時間後に短く曖昧な声明」(7月13日、日本語版)から関連部分を引用します。

「弱腰」は日本のせいだ

  • 政府のこうした慎重で曖昧な反応には、米中軋轢の間でバランスを取るだけでなく、今回の裁判結果が日本の独島挑発を刺激しかねないという憂慮も作用したものと見られる。
  • 「竹島(独島)を韓国が不法に占拠している」と主張してきた日本政府が、独島問題を仲裁裁判所に提訴する可能性を排除できないためだ。

今回の仲裁裁判所の判決を明確に支持しないのは「日本が韓国を『竹島』で訴え勝訴した際、受け入れなければならなくなるから」との説明です。

でも、韓国は「竹島」と「南シナ海」は無関係、と言い張る手があります。国際紛争ではダブルスタンダードが当たり前。ことに韓国は、それを恥ずかしいと思う国ではありません。そもそも日本が裁判に持ち込む可能性は今のところ低い。相当に苦しい言い訳です。

—韓国では「なんでも日本が悪い」のですね。

鈴置:ええ、それが常套手段です。こう説明すれば「中国に弱腰」との批判をそらせると外交部は考えたのでしょう。実際、先ほど述べたように、政府に対する「弱腰批判」は表面化していません。

もっとも、この「『独島裁判』で負けた時に受け入れねばなくならなるから」との説明は自爆攻撃です。韓国は常々「独島は我が国固有の領土」「日本の領有権主張は妄言」と主張しています。

「裁判が怖いとは、よほど領有に法的自信がないのですね」と突っ込まれてしまいます。実際、韓国の国際法専門家の中には「日本と裁判になったら負ける」と内心、考えている人が結構います。

「離米従中」がしやすくなった

—韓国の金縛り現象は「南シナ海」以外に広がりますか。

鈴置:そう思います。韓国各紙は政府の南シナ海に関する姿勢を「米中等距離」と書いています。しかし、先ほど指摘したように実質的には「中国側に立った」のです。

米国は韓国に「南シナ海での中国の軍事基地化に批判の声を上げよ」と要求してきました。2015年10月の米韓首脳会談の後の共同会見では、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領を横に置いてオバマ(Barack Obama)大統領が以下のように述べました(「蟻地獄の中でもがく韓国」参照)。

  • 朴大統領にも伝えたのだが、1つだけ中国に言い続けねばならないことがある。それは中国が国際的な規範とルールに従うことだ。もし中国がそうしない時には、韓国が我々と同様にしっかりと声を上げて批判することを望む。

韓国が今「しっかりと声を上げて中国を批判している」とは誰もが思わないでしょう。ことに、仲裁裁判所が「中国のルール破り」を明確に認めた後なのです。

米国がそんなにはっきりと釘を刺していた「南シナ海」でさえ、韓国は自称「中立」、実際は中国支持に回ったのです。他の米中対立案件で今後、どんどん中国側にすり寄る可能性が極めて高い。

「THAAD問題で中国から脅されている」と言えば、少々のことをしても米は怒らないだろう。「離米従中」がやりやすくなった――と韓国は考え始めたのです。

それにオバマ政権の任期は2017年1月まで。仮に、レームダックになった大統領に怒られても怖くない。米中二股外交は、次の大統領の顔色を見ながら加減すればよい――と思っているのでしょう。

「政治家への制裁」が威力

—米国に対する甘えですね。

鈴置:「米国は中国ほどに無茶苦茶なイジメはして来ない」と韓国は信じていますからつい、米国に甘えるのです。

—それにしても、中国の脅しはよく効きますね。

鈴置:全くです。韓国は制裁される前から縮み上がって、中国の言いなりになってしまった。今後、注目すべきは「政治家への制裁」です。

表は「環球時報が中国政府に建議した『5つの対韓制裁』」です。韓国紙はなぜか、経済制裁ばかり気にしています。しかし、実際には2番目の「政治家への制裁」が威力を発揮してくると思います。

■環球時報が中国政府に建議した「5つの対韓制裁」

(1)THAAD関連企業の製品の輸入禁止 (2)配備に賛成した政治家の入国禁止と、そのファミリービジネスの中国展開の禁止 (3)THAADにミサイルの照準を合わせるなどの軍事的対応 (4)対北朝鮮制裁の再検討 (5)ロシアとの共同の反撃

注)環球時報の英語版「Global Times」では「China can Counter THAAD Deployment」(7月9日)で読める。

こちらの方がはるかに深刻な影響を及ぼします。それは次回に詳しく説明します。

8/10記事

Xi Jingping-2

THAAD配備に怒る中国。うろたえる韓国は国論が分裂した(写真:ロイター/アフロ)

前回から読む)

米中板挟みに苦しむ韓国。ついに米韓同盟を破棄し、中立化しようとの声が上がった。それも、保守の大御所からだ。

朴槿恵も中国入国禁止?

前回は「韓国の政治家に対する制裁」に注目すべきだ、というところで話が終わりました。

鈴置:表の「環球時報が中国政府に建議した『5つの対韓制裁』」をご覧下さい。注目すべきは2番目の「配備に賛成した政治家の入国禁止」です。

■環球時報が中国政府に建議した「5つの対韓制裁」

(1)THAAD関連企業の製品の輸入禁止 (2)配備に賛成した政治家の入国禁止と、そのファミリービジネスの中国展開の禁止 (3)THAADにミサイルの照準を合わせるなどの軍事的対応 (4)対北朝鮮制裁の再検討 (5)ロシアとの共同の反撃

注)環球時報の英語版「Global Times」では「China can Counter THAAD Deployment」(7月9日)で読める。

これを適用すれば、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領は訪中できないことになります。この人こそが中国を怒らせた「地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD=サード)配備容認」の最終的な責任者なのですから。

—朴槿恵大統領は今後、一切、中国に入れないというのですか?

鈴置:中国で開く国際会議に参加するのは許すでしょう。認めなければ「国際的なルールも守れない」と、今以上に世界から馬鹿にされてしまいます。

しかし、中韓首脳会談には応じないと思います。中国ではもちろん、それ以外の場所でも。今、首脳会談を実施すれば、中国はメンツを失います。

習近平主席が直接、朴槿恵大統領に「THAAD配備は認めるな」と要求していたからです(「『THAADは核攻撃の対象』と韓国を脅す中国」参照)。

「安倍以下」の存在に

—中国は朴大統領を無視……シカトする必要があるのですね。

鈴置:「シカト作戦」はすでに始まっています。7月15、16日の両日、モンゴルの首都、ウランバートルでアジア欧州会議(ASEM)首脳会議が開かれました。

15日、李克強首相は安倍晋三首相と会談しました。が、朴槿恵大統領とは会いませんでした。「朴は安倍以下に扱う」と宣言したのも同然です。

「朴槿恵大統領は中国と史上最高の関係を築いたのに、安倍は中国に嫌われている」「韓国は日本以上に重要な存在と中国から認められている」と韓国人は信じています。

その韓国人が「安倍以下」を知ったら、さぞかしショックだったでしょう。そのせいか、「日中首脳会談は開かれたが『中韓』はなかった」との視点で報じた韓国メディアは、私が見た限りありませんでした。

さらに、李克強首相、7月15日の夕食会で同席したにもかかわらず、朴槿恵大統領と会話を交わしませんでした。徹底的な無視作戦です。

中央日報の「朴大統領、EUと『FTA改定』…安倍首相とは『北核連携を強化』」(7月16日、日本語版)がチラリと――「同じテーブルに座ったが特に対話はなかった、と青瓦台(大統領府)関係者は伝えた」と報じています。

「南シナ海」で恩を売る

—韓国政府は中国との首脳会談を望んでいたのですか?

鈴置:もちろんです。「THAAD」で入ったヒビを修復するためです。我が国は「南シナ海」問題で米国の要求に逆らい、対中非難に加わらなかった。これを評価してもらえば首脳会談も可能――と期待したようです。

中央日報が「あす『南シナ海判決』…もう一度試される『米中等距離外交』」(7月11日、日本語版)で、以下のように書いています。文章を整えて引用します。

  • 仲裁裁判所の判決の後の韓国の中立的な立場が、アジア欧州首脳会議での朴槿恵大統領と李克強中国首相の会談実現につながるとも政府は見ている。
  • 会談が実現するか否かが、THAAD配備で悪化した韓中関係が少しでも進展局面に入るかのバロメーターになる。

人民日報がタブーを破った

—でも、韓国の期待は「シカト作戦」の前に空振り……。

鈴置:そうこうしているうちに、韓国では「人民日報が朴槿恵大統領を名指しで批判した」と騒ぎになりました。

朝鮮日報の「『THAAD固守』を明かした翌日…党機関紙が朴大統領を標的に脅す」(8月4日、韓国語版)を翻訳します。

  • 人民日報が3日まで連続4日間、オピニオン欄にTHAAD放棄を要求する社説や寄稿を載せた。ことに8月3日の社説は、朴槿恵大統領を真正面から狙い撃ちした点で、強度がこれまでとは異なった。

「大統領を狙い撃ちした」という人民日報の社説は「鍾声」というコラム。人民網・日本語版でも読めます。見出しは「中国の安全保障上の利益が損なわれてはならない」(8月3日)です。

—韓国のTHAAD配備容認を批判する記事で、韓国の大統領が名指しされるのは当然でしょう?

鈴置:韓国人は「我々の大統領は習近平主席と極めて親しい。そんなことはあり得ない」と、なぜか信じていたのです。前述の朝鮮日報の記事は以下のように続きます。

  • 昨年9月、中国の戦勝70周年の軍事パレードに朴槿恵大統領が出席し習近平主席と天安門の上で並び立って以降、朴大統領への批判は(中国メディアで)一種のタブーだった。だが、そのタブーが破られたのだ。

日本は化外の民

—本当に朴槿恵批判は中国でタブーだったのですか。

鈴置:韓国人の思い込み、あるいは希望的観測です。しかし、それだけにショックが大きかった。

—ここに至って、さすがに韓国人も「シカト作戦」に気づき始めたでしょうね。

鈴置:そのようです。もっとも、中国の「シカト」に韓国の大統領がどこまで耐えられるかは疑問です。これは中国もよく分かっています。

「THAAD配備を拒否するまで、朴槿恵とは会ってやらないぞ」と暗黙裡に脅し続けることでしょう。

—「どうぞご勝手に」と中国に言い返せば済む話ではないですか。わざわざ言わなくとも、知らん顔しておけばいい。

鈴置:韓国には中韓首脳会談が必要なのです。それを拒否された大統領は、国を危うくする指導者と国民に見なされ、支持を失っていくでしょう。

昔から、韓国人は宗主国との距離で自分の国の地位を確認してきました。中華帝国の中で「上から何番目の朝貢国か」が極めて重要だったのです。中国から「国家承認」を得られない王様は国民の支持を失います。

ちなみに、韓国人の日本に対する軽侮は、日本が中国に朝貢しなかったことから来ています。日本人は「中国の属国になるなんてとんでもない」と思います。一方、韓国人は心の底で日本人を「冊封体制に入れてもらえなかった野蛮な、化外の民」と見ているのです。

—そう言えば、天安門の軍事パレードでも韓国人は序列を異様に気にしました。

鈴置:ええ、「プーチン大統領に次いで2番目に習近平主席に近い席を我が国の大統領は与えられた」と韓国メディアは大喜びしました。大統領の支持率はなんと、一挙に5ポイントも上昇したのです(「統一は中国とスクラム組んで」参照)。

—次の大統領は中国が決める?

中国に揺さぶられると、朴槿恵大統領がTHAAD拒否に転じる可能性があるということですね。

鈴置:配備賛成派はまさに、それを恐れています。大統領はもともと配備に消極的でした。容認に転じたのは中国への失意から、との見方が韓国では一般的です。

多くの韓国の識者が「(2016年1月6日の)北朝鮮の4回目の核実験の直後、朴槿恵大統領が接触を求めたのに習近平主席から無視されたことが大きい」と説明します。

だから中国から脅されるだけではなく、逆に習近平主席から優しい顔を見せられたら、朴槿恵大統領が態度を急変させるのではないか――と懸念する人もいます。

—韓国をもてあそんでいますね、中国は。

鈴置:韓国にとってもっと大きな問題は、現職だけではなく次期大統領選挙も中国の「金縛り」にされるであろうことです。

2017年12月投票の大統領選挙では「THAAD配備」が争点となる可能性が高い。当然、中国と首脳会談もできず、制裁も防げない大統領候補――つまり、賛成派はかなり不利になります。

選挙戦の最中に中国が韓国への報復を発動すれば、THAAD反対派を大きく後押しできます。中国は韓国の次の大統領の「任命権」を持ったと言えるのです。

中国の皇帝は、高麗や朝鮮など朝貢国の王を任命する権利を持っていました。その冊封体制が今、よみがえってきた感じです。

平和を守る中国人

—各大統領候補のTHAADへの態度は?

鈴置:出馬すると見られているのは、保守から国連事務総長の潘基文(バン・キムン)氏。左派、中道から文在寅(ムン・ジェイン)共に民主党・前代表と安哲秀(アン・チョルス)国民の党共同代表です。

THAAD配備に関し、左派・中道の2人は否定的です。潘基文氏は態度を明かしていませんが、中国に「弱い」人であるのは確かです。

潘基文氏は2015年の天安門の軍事パレードを参観しました。その際、会談した習近平主席に「この行事によって、平和を守るという中国の人々の願いが存分に示された。中国は長年にわたって国際平和・開発事業に積極的に尽力してきた」と称賛したのです(「『中国の尻馬』にしがみつく韓国」参照)。

3人の有力候補すべてが「THAAD反対派」ということになるかもしれません。賛成すれば「私が大統領になっても、5年間の任期中に中国との首脳会談は一度もできません」と国民に言っているのも同然ですから。

配備時期が2017年12月と、次期大統領が決まる頃に設定されたのも、米国の意向が働いたようにも見えます。配備後に次の大統領から「撤去しろ」と言われたらかないませんからね。

二股のツケを払う時

—韓国は「THAAD」という踏み絵を、米中双方から突きつけられてしまいました。

鈴置:二股外交のツケを払う時が来たのです。米中の間を立ち回って米国には自らを守らせ、中国は市場として活用する。米中両大国の力を背景に日本と北朝鮮を叩く――という朴槿恵外交はついに、にっちもさっちもいかなくなったのです。

—なぜ、韓国外交が破綻したのでしょう。

鈴置:最後の引き金は「THAAD」なり「南シナ海」なり、米中対立の激化でした。でもそもそも韓国には、二股をかけられるほどの国力も外交環境もなかったのです。

東南アジアの国なら米中二股は可能でしょう。中国とは空間的に離れていて、それによる軍事的な脅威は小さい。そして例えば、マレーシアには「北マレーシア」がないからです。

一方、韓国はすぐ隣が中国。北朝鮮という敵国もあって、核武装を進めている。今こそ、同盟国の米国が重要な時です。というのに朴槿恵政権は米国を中国との天秤にかけたのです。

笑いをこらえる日本

朝鮮日報の金大中(キム・デジュン)顧問が「大韓民国の素顔」(7月19日、韓国語版)で、THAADで国論が分裂する韓国を以下のように評しました。要約しつつ翻訳します。

  • 周辺国の中で、韓国を見て一番喜んでいるのは北朝鮮のはずだ。THAAD配備問題1つで社会が割れたからだ。
  • 中国は、自分の鼻息1つで台風に直撃されたかのように大騒ぎしている韓国を見て笑っているだろう。
  • 笑いをこらえるのは日本だ。「自由奔放を自慢する韓国だが、実は安保と国防で奔放どころか迷走している」と。
  • 最も深刻なのは米国の反応だ。韓国でTHAADに「拒否権」を発動する動きを見て「こんな国を守ってやる理由はあるのか」と考えているかもしれない。

—日本が「笑いをこらえている」とは思えませんが。

鈴置:ええ、日本は「ますます攻撃的になってくる中国にどう立ち向かうか」に神経を張っています。韓国に注意を払う人はあまりいません。

金大中顧問は、韓国の置かれた際どい状況を強調するため「笑いをこらえる日本」を入れたのでしょう。韓国人は自意識過剰な人たちなのです。さて、このくだりの後に、結論が来ます。

  • 自ら戦争をする(国を守る)決意もなく、周辺国が韓国を見下す状況では、韓国はどんな戦争にも勝てない。それなら有利な側に確実に立って受動的、従属的に暮らし、延命を図るのが次善ではないのか。

同盟破棄で分裂を回避

—金大中顧問は「二股外交」を言い出した人ではありませんでしたか? なのに「有利な側に立つ」と言うのですか。

鈴置:ええ、確かに「二股」の提唱者です。しかし、それには朴槿恵政権がものの見事に失敗。そこで「米中を操るなんて難しいことはあきらめ、どちらかの大国の衛星国になるしかない」と、次善の策を訴えたのです。

—米中どちらの衛星国になるつもりでしょうか。

鈴置:それは書いてありません。金大中顧問はこのくだりの次に、もう1つの策を提案し、筆を置いています。以下です。

  • さもなければ「中立」を宣言するなどして、最小限の安全を確保するのも1つの方策であろう。北朝鮮のミサイルを阻止するのにさほど効率的でもないTHAAD問題で、我々の素顔があまりにはっきりとしてしまった。

これが本心と思います。「受動的、従属的に暮らす」衛星国案を本気で主張しているとは思えません。最後に語る「中立案」を引き立てるための伏線と思います。

—中立とは米韓同盟を破棄するということですね。

鈴置:はっきりとは書いていませんが、そういうことです。この同盟があるからこそ「THAAD」や「南シナ海」で板挟みとなり、国が分裂するとの認識からでしょう。

もちろん、少数派となりつつある親米派がこうした意見を聞いたら「板挟み」の原因は米韓同盟ではなく「二股」にあると怒り出すでしょうけれど。

「中立」を担保する自前の核

—金大中顧問とは、どんな人なのですか?

鈴置:同姓同名の大統領もいましたが、この政治家は左派。一方、朝鮮日報で長い間、論説を書いてきた金大中顧問は親米保守を代表する有名な記者でした。この人の意見を「保守の声」としてチェックするのが韓国研究者の常道だったのです。

その金大中顧問が2013年4月に「米国よりも台頭する中国の方が韓国への影響が大きくなる」との理由を掲げ、堂々と「二股外交」を呼び掛けました。外国の研究者も韓国人も、あっと驚いたものです(「保守派も『米中二股外交』を唱え始めた韓国」参照)。

ただ、その時はまだ、米国との同盟は維持するとの前提でした。しかし3年後の今、米韓同盟の打ち切りを示唆するに至りました。「笑いをこらえる」どころか、時代の移り変わりのあまりの速さに恐ろしささえ感じます。

—米韓同盟を打ち切った韓国は、北朝鮮の核にどう対抗するつもりなのでしょうか。

鈴置:自分も核武装するつもりでしょう。

(次回に続く)

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