3/10日経<北朝鮮ミサイル最接近 政府、迎撃態勢強化へ
北朝鮮が6日に4発同時に発射したミサイルのうちの1発が、石川県の能登半島の北北西約200キロの海域に落下したことが9日分かった。これまでの北朝鮮のミサイル発射で最も日本本土に接近したケースとみられる。政府は北朝鮮の核・ミサイル開発の進展を受け、弾道ミサイル防衛網の強化を急ぐ方針だ。
菅義偉官房長官は9日の記者会見で「北朝鮮のミサイルが現実の脅威となっている」と強調した。政府は今回のミサイルを「スカッドER」と推定している。スカッドERは移動式発射台での打ち上げが可能で、核弾頭も搭載できる。今回は4発ともほぼ同時に着水しており、南北に約80キロメートルの等間隔で落下しているもようだ。
海上自衛隊元海将の伊藤俊幸氏は「4発同時の着弾が重要な点だ。日本の迎撃能力を超える大量のミサイルを一度に発射する飽和攻撃の脅しだ」と話す。
現在の日本のミサイル防衛網はイージス艦の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)と地対空誘導弾パトリオットミサイル(PAC3)で撃ち落とす二段構え。政府内にはこれをさらに重層化するため、高度40~150キロメートル程度で迎撃する地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)を導入し、三段構えとする案もある。同時にイージス艦に搭載する迎撃システムを陸上に配備する「イージス・アショア」の本格導入も検討する方針だ。
いずれも厳しい日本の財政事情が立ちはだかり、導入までは紆余曲折(うよきょくせつ)がありそうだ。THAADは1基あたりの費用が1000億~2000億円とされ、日本全体をカバーするのは6~7基が必要。イージス・アショアは2基で全国をカバーでき1基あたり700億~800億円だ。THAAD配備などの動きが日本でも本格化すれば中国の強い反発が予想される。
ただミサイル防衛網を強化しても「百パーセント防衛できるとは言えない」(政府関係者)のが実情。相手国に攻撃される前に敵基地などを攻撃する能力を持つ選択肢もあるが、憲法との兼ね合いなどからハードルは高い。北朝鮮の挑発行為を自制させる外交努力が何より重要だ。>(以上)
3/9西村眞悟氏メルマガ<覚悟すべきことは爆撃、ええ加減にすべきことはレンホウと学術会議
今、覚悟すべきことと、ええ加減にすべきこと、
(1)対北朝鮮について覚悟すべきこと 三月六日に、北朝鮮がミサイル四発を日本海に向けて発射し、我が国の日本海における排他的経済水域に着弾させた。北朝鮮は、そのミサイルの発射には「在日米軍基地の打撃を担う部隊が参加した」と発表した。これに対して、我が国のマスコミは、翌七日と八日には森友学園と同じ比重で関心を示して大騒ぎしてTVでは北朝鮮発表のミサイル発射影像を繰り返し放映し、新聞では、一面に地球の地図を掲載して、そこに発射されたミサイルの弾道を矢印で明示し、さらにご丁寧に、日本列島の図の上に、北朝鮮が攻撃目標という在日アメリカ軍基地の位置をポイントで示している。 そして、日本政府は何をしているのかというと、いつもの通り、「会議」をしている、し、「情報収集」をしている。では、国会は、何を、・・・それが、「森友学園」のことを議論している。そこで、政府、国会の頭の中そしてマスコミの報道の中から、スッポリ抜けている盲点を指摘する。 即ち、それは、我が国は、核弾頭ミサイルによる攻撃に対する ①抑止力があるのか、 ②ミサイル発射前の先制攻撃で敵ミサイルと基地と独裁者を撃破できるのか ③発射されたミサイルを迎撃して破壊できるのか ①の抑止力は、相互確証破壊のことである。つまり、我が国も核弾頭ミサイルを保有しているかということ。北朝鮮の最高責任者がミサイルを打てば、彼を確実に殺す報復力を我が国が持っているかということである。つまり、我が国が北朝鮮の独裁者に「撃てばお前を確実に殺す」と言えるのか。 ②は、一九八一年(昭和五十六年)六月七日、イスラエルがイラクの原子炉をF16戦闘機八機で爆撃して破壊したバビロン作戦を我が国は北朝鮮に実施できるのかということだ。 ③は、日本海におけるイージス艦および地上のパトリオット(PAC3)による飛んでくるミサイルの撃破である。 以上の三つの内、マスコミが取り上げたのは③だけである。取り上げたと言っても、「専門家」がTV画面にでてきてイージス艦およびパトリオットは、ミサイルを迎撃できますと説明するだけで、 では、イージス艦およびパトリオットで、 今回のように、四発同時に発射されたミサイルを確実に総て撃墜できるのかとか、 パトリオットが空中で破壊したミサイルの核弾頭が市街地に落下してきたらどうする とかの議論はなかった。 従って、この機会に③の迎撃確実な体制を構築されるべきだというような真に必要な議論には進まない。 ③に対してもこの程度であるから、①は全く頭の中に入っていない。そして、②は見て見ぬふりをしている。 つまり、目をつぶれば世界はないと思い込んでいる。 さて、本日九日、既に北朝鮮のミサイル問題は、マスコミの主要関心から遠ざかり、世相も、政府も国会も、マスコミに従っていつも通りの「戦後」に覆われている。それ故、野党はマスコミに従って、 森友学園関係者の国会への参考人招致を要求している。
そこで言っておく。 アメリカは、北朝鮮のミサイル発射に対して、「執りうる総ての手段を行使する用意がある」と発表している。 それは、具体的には何か。 それは、②のバビロン作戦である。即ち、空爆によって北朝鮮の独裁者を除去することである。 アメリカの大統領はいまやオバマではなくトランプだ。ここにいたって我が国の内閣総理大臣は、トランプ大統領への電話で、無駄なこと、つまり、今まで通りの日米連携してとか、どうでもええこと、はしゃべるな。次の一言、これを言うだけで日米の連携は確固な同盟関係になる。 「バビロンに我らも行く。そのために 我が統合幕僚長から貴国の統合幕僚長に連絡させる」以上が、覚悟すべきことである。以下は、どうでもええことであるが、腹に据えかねるので、一言、ええ加減にせいと言っておく。
(2)レンホウを党首にして、えらそうな質問をするな マスコミでは外国人の名は漢字圏の国でもカタカナで表現するのでレンホウと書いたのだ。どう考えても、日本人の名ではないからなあ。台湾の民進党にあやかって民進党と名乗る我が国の野党よ、政治家にとって最も大切な忠誠の対象である祖国を、うやむやに誤魔化して我が国の国会議員や閣僚をしてきた人物を党代表にしている者が、森友学園を持ち出して、えらそうな顔をして、国会で質問するな。ましてをや、当のレンホウが質問をしている側で、よく座っておれるなあ。
(3)日本学術会議とはアホの集まりか 同会議のホームページには、日本学術会議は、科学が文化国家の基礎であるという確信の下、行政、産業および国民生活に科学を反映、浸透させることを目的として、昭和二十四年に内閣総理大臣の所管の下、政府から独立して職務を行う独立の機関として設立された、とある。この日本学術会議が、長年にわたって「科学者は軍事研究を行わない」とする声明を堅持してきて、この度、新しい声明を出して、旧来の声明を堅持し継承することを確認したという。では、何も「新しい」ことはないではないか。科学者はヒマなのか。 そこで、もう、一言で言う。 こいつら、アホか、もしくは、アホをよそおった左翼である。学術会議が、「行政、産業および国民生活に科学を反映、浸透させることを目的とする」ならば、まず第一に、「行政、産業および国民生活を守る科学」に取り組み、鋭意、その発展進歩に努めるべきではないか。では、その守る科学の発展進歩に努める「営み」を何というか。それを、世間では、世の中では、「軍事研究」と言うのだ。よって、日本学術会議の創設の志に戻り、学術会議は、国家と国民を守る科学研究即ち「軍事研究」に鋭意取り組み、以て、行政、産業および国民生活に科学を反映させそれを浸透させよ。>(以上)
日経記事を読みましたら、ミサイル防衛システムでは同時多発の核ミサイルは本当にカバーできるのかどうか疑わしいということです。西村氏のメルマガからもそれが窺われます。こういう国民の生命の安全の問題こそ国会でキチンと議論が為されるべきです。敵に襲われると駝鳥は砂の中に頭を突っ込んで怖いものは見ないと言われるところから“ostrich policy”と言う言葉ができましたが、今の日本人の状態そのものです。「平和」という念仏を唱えていれば「平和」は守られるという考えは科学的でも合理的でもありません。況してや憲法9条があればと言うのでは。
西村氏のメルマカにある通り「学術会議」なんてあるだけ邪魔な存在です。こんな科学的でない組織を権威として有難がっているようでは日本人の民度は高くないと思ってしまいます。軍事や戦争について話すと「右翼」、「国粋主義者」のレッテルを貼って貶めようと風潮が残っています。中共に日本を占領させようとしている左翼メデイアの力がまだまだ大きいという事です。そのメデイアに洗脳された人が未だ多く残っているといえます。60代以上の既存のメデイアからしか情報を取れない老人にそういう傾向が強いです。こういう人は北のミサイルが現実に自分の頭上に落ちて来て初めて自覚できるのでしょう。普通の企業人であれば、問題発見→現状把握→対策→再発防止のサイクルを回すと思いますが、危機意識のない人は問題と思っていないから、何も手を打とうとも思わないでしょう。成熟した大人とは思えません。合理的行動を起こす人間ではないです。スウェーデンでは徴兵制を復活し、当然男女の区別なく、イザとなれば国の為に戦うことを義務付けられました。日本人の好きなノーベル賞を付与している国がですよ。日本は陸続きでないので、徴兵制は現実的でないし、デジタル化した近代戦では足手まといになるだけです。ただ日本国を守る気概は日本に暮らす以上国民全員が持たないと。破壊工作を防ぐ自警団を組織するのが大事な気がします。
福島氏の記事では、習近平と王岐山、栗戦書との間にも隙間風が吹いたとのこと。習は友達がいないかできない独裁者の運命をたどっているという事でしょう。必要なのは命令を忠実にこなす部下だけ。茶坊主になって出世したいと思っている人間で周りを固めているのでしょう。裸の王様です。恐怖政治は北朝鮮と同じくどこかで臨界点を迎える気がしますが。
李克強の演説をTVで見ましたが、昨年ほどではないにしろ額に汗をかいていました。習を「核心」と認めるのに内心抵抗があり、それで汗をかいているのではという印象を受けました。中国経済の数字はほとんど意味を成しません。作られた数字ですので。言ってる本人も信じてないし、大部分の中国人は嘘と理解しているでしょう。分かっていないのは中国以外の国だけです。宮崎正弘氏の3/9メルマガでは20億人の空家の在庫があるとのこと。実需を無視して造った咎めです。当然借金で作っていると思われますので、投資家や銀行が債務支払いに追われます。いつまで持つのか、どうなることやら。
http://melma.com/backnumber_45206_6497995/
記事
3月5日に全人代が開幕。政府活動報告から、錯綜する思惑や駆け引きが浮かび上がる(写真:ロイター/アフロ)
中国中央テレビ(CCTV)で放送中の歴史ドラマ「大秦帝国之崛起」が結構、人気なのだが、先日、両会(全国人民代表大会=全人代と中国人民政治協商会議=政協、中国の国会に相当)開幕直前に放送された第30回が、ちょっと話題になっている。秦国人が、趙国の“スパイ”を金で雇おうと、内奸(裏切者)のリストが書かれた竹製の書簡(小道具)を開くシーン(1分37秒あたり)で、なんと一番目立つところに習近平に似た名前が篆刻書体で書かれていた、という噂が広がった。
すわ、これはCCTVが発する“倒習信”(習近平打倒のメッセージ)か、と騒ぎになりかけたが、すぐにネットユーザーのコラージュによるいたずらであることが判明。昨年の両会のときは、新疆ウイグル自治区主管のネットメディア「無界新聞」に習近平引退勧告書簡がアップされたり、新華社通信に意味深な「誤字」があったりと、アンチ習近平のムードが体制内に存在することが明らかになったが、今年は、その空気が大衆にも伝播していたのかもしれない。
ちなみに、この“裏切者リスト”パロディに上がっている政治家の名前は習近平だけでなく、よくみると温家宝や李克強も載っているので、習近平だけをターゲットにしたというよりは、中国の今の政治全体への不満、批判が込められているともいえよう。いずれにしろ、中国社会の間には、漫然と政治に対する不満が漂っている。そういうムードの中で、開幕となった全人代の政府活動報告について、今回はとりあげたい。
「党内不協和音」響く開幕式
5日に全人代の開幕式があり、恒例の首相による政府活動報告読み上げが行われた。昨年の李克強は、ものすごいしゃがれ声で、健康状態が悪そうだったが、今年もやはり、読み間違い、読み飛ばしが多く、彼はこの秋で引退するかもしれない、と思わされる調子の悪さだった。そして、ひな壇席でそれを聞く習近平は、昨年と同じく、ずっと憮然とした表情で、相変わらず拍手もほとんどしなければ、李克強がひな壇に戻るときに、握手もしなかった。党内不協和音が聞こえてくるようである。
その政府活動報告の中身だが、注目点は大きく分けて五つある。
まず、今年の経済成長目標は6.5%に引き下げられた。政府活動報告にあげられる成長目標は中国の実際を無視したフィクションの数字ではあるが、党内政府内のある種の空気を伝える役目はある。
昨年の全人代で目標値を6.5~7%と幅を持たせたのは、7%成長を維持しないと2020年所得倍増計画の青写真が崩れるから無理やり7%の数字を入れたのだったが、今年はその建前を捨てざるを得ないほど経済が悪くなりそうだ、と党と政府も認めているということだ。
救いはトランプ政権の登場で、今年、中国経済が悪くなるのは、(共産党政治のせいではなくて)トランプのせい、という言い訳ができる。だからこそ、トランプ政権があれほどドラゴンスレイヤー(対中強硬派)ぞろいの布陣にもかかわらず、中国がそこはかとなくトランプに好意的なのだろう。
実際のところは、中国経済の悪化の最大の要因は、党の経済活動に対する関与・管理によって、フェアで公正な競争や合理的な経済活動が阻害され、市場や企業の信用が失われているせいであり、外圧要因などむしろ小さいほうであろう。
「民衆の極度の不満」の存在を認める
二つ目は、政府活動報告において、初めて、“民衆の不満の感情はすでに非常に深刻で重大”と、大衆の極度の不満の存在を認めた。つまり、政府活動報告にそう盛り込まずにはすまされないほど、中国の社会不満は深刻であり、この不満の矛先が党と政府にむかっていることを認識したうえで、解決に決意を示したわけだ。
本来、政策の大方針を打ち出す政府活動報告で、あえて携帯電話のローミング料金、長距離料金廃止といった庶民受けを狙った具体策を盛り込んだのも、こうした社会不満をなんとか緩和し、党から乖離しかけている大衆の支持をつなぎとめようと必死であるということの裏返しかもしれない。
ちなみに、この携帯電話料政策が読み上げられた時が、一番長い拍手が起きた。政府活動報告では、民衆の不満の要因を貧困問題にまとめていたが、貧困だけともいえない。貧困対策と銘打った強制移民も、環境問題も不満の温床だ。ある程度の知識層にすれば、報道の自由や思想・教育の自由に対する締め付けや、密告制度奨励や市民格付制度の導入などの管理社会化に対する息苦しさなども不満の大きな要因になっており、それが後述する「党の権威」問題につながっている。
三つ目は、初めて、「習近平を核心とする党中央」という表現が政府活動報告に盛り込まれた。習近平自身は、昨年の政府活動報告で盛り込みたかったらしかったのだが、昨年2月に起きた“十日文革”で、習近平のあからさまな個人崇拝キャンペーンに対する党内の抵抗感が強まったため、昨年の全人代の政府活動報告には盛り込むことができなかった。
ちなみに昨年2月の“十日文革”(任志強事件)で、習近平と王岐山の関係が冷え込んだとされるが、その後、葉剣英の二男、葉選寧の葬式(7月)の際、長男・葉選平の立ち合いで、関係修復に同意したと伝えられている。もっとも、周辺筋によれば、その関係修復はあくまで太子党内部のメンツを重んじた表面上のものにすぎない、という見方もある。王岐山が秋の党大会で引退するか留任するかが、習近平政権の長期化(三期以上続く)を占うと見られており、最近、外国メディアに対して王岐山が留任に同意しているといったリークがさかんに流されているのは、習近平筋による印象操作で、王岐山自身はまだ留任の意思を固めていないという説もある。
側近との信頼関係にも揺らぎ?
習近平核心キャンペーンを一昨年から水面下で行ってきたのは、習近平の側近と呼ばれる党中央弁公庁主任の栗戦書だが、習近平と栗戦書との関係も昨年11月あたりから、微妙になってきたという噂が流れている。
根拠は昨年11月14日付けの人民日報に栗戦書が実名で寄稿した論文「党中央の権威を断固維持しよう」だ。これは、党中央の権威を維持するために、習近平総書記を核心としよう、党中央の権威維持と習近平総書記の核心地位維持は統一的問題だ、といった内容の習近平礼賛論文である。
だが、この論文に違和感を持つ党内人士が多かった。そもそも栗戦書は習近平の“半径5メートルに寄り添う”懐刀として水面下で習近平核心キャンペーンを仕掛けてきた人物だが、それがなぜ、人民日報で全面的に習近平を礼賛を叫ばねばならないのか、ということに引っ掛かりを持つのである。ふつう、側近は自分で礼賛をするのではなく、周辺に礼賛させるように働きかけるのが仕事である。ふつう、身内が表だって礼賛すると、逆効果なのだ。
だから、栗戦書がこんな風に表立って礼賛せねばならない理由を共産党政治学的な観点から想像すると二つ思いつく。習近平の栗戦書に対する信頼が何かの理由で揺らぎ、栗戦書としては急きょ、習近平に対する忠誠をアピールする必要があった。あるいは、ほめ殺しの手法で習近平の評判を落としたい。
なので一部党内人士の間では、習近平と栗戦書の信頼関係が揺らいでいるのではないか、と噂が立った。栗戦書は秋の党大会で、政治局常務委員会入りしたいので、習近平に阿っているのだ、という人もいるが、普通なら、栗戦書ぐらい習近平に貢献していれば、別に阿らずとも、忠誠をアピールせずとも、政治局常務委入りを果たすことができるはずだ。この想像が当たっていれば、習近平は王岐山との関係修復も中途半端で、側近の栗戦書との信頼関係も揺らいでいる中での、“核心”呼びということになる。
去年の政府活動報告には抵抗が多くて盛り込めなかった習近平核心呼びの文言を今年は盛り込むことができ、しかも李克強がこの部分を読み上げるときは、特に声に力を込めて強調していた。
数えてみると「核心」という言葉は11回、「習近平」の名前は8回読み上げており、李克強がこんなに習近平の名を連呼したのは、おそらく初めてではないかという勢いだ。素直に考えれば、習近平は昨年までの抵抗勢力を抑えて、核心的地位を確立し、政敵の李克強にも認めさせたので、習近平の権力基盤は強化され、独裁化、長期政権化への道が開かれた証拠、というふうに分析できるかもしれない。
だが、前述のような事情も漏れ伝え聞いているので、私としては香港に拠点を置くラジオ・フリーアジアが伝えた、河北省出身の独立系評論家、朱欣欣のコメントを支持したい。
「党が力を入れて宣伝することは、はからずも党が必要としていること、欠けているものを示している。李克強が政府活動報告で、習近平の核心地位を強調したということは、習近平には核心地位としての威信、権威が欠乏していることを物語っている。権威には権力だけではなく、信望も必要だが、習近平にはこの一点が欠落している。習近平の核心呼びが強調されるほどに、中国共産党は現在、そういう(信望を得うる)魂を持った人物が欠乏しており、本当の意味での精神的支柱がない。すなわち泥の足を持つ巨人のように、表向きは強大だが、実際は非常に脆弱なのだ」
「香港独立派」言及の深謀
四つ目は、初めて、「港独(香港独立派)」という言葉が政府活動報告に盛り込まれた。李克強は「港独は以前は存在しなかったが、今はこれに言及せざるをえない」「港独に前途はない」と、訴えた。香港独立派、あるいは香港本土派、香港自決派とも呼ばれる、「香港は中国ではない」という若者は、雨傘革命の挫折以降、台頭してきており、少数派ながら政治勢力としての存在感を持ち始めている。3月26日に予定されている香港行政長官選挙を控え、香港市民に対する警告の意味もあって、この文言を盛り込んだのだろう。
政府報告書では、香港の一国二制度維持や高度の自治にも言及しているのだが、この港独という言葉には、香港アイデンティティを掲げる香港人に対して、チベット独立派(蔵独)やウイグル独立派(疆独)と同列に扱うという強烈なメッセージが込められているともいえる。つまり、香港の自決を叫んで中国に逆らう“港独”は、国家分裂を画策するテロリスト扱いするぞ、ということである。
香港の政治評論家、林和立がラジオ・フリーアジアに次のようにコメントしていた。
「目下、香港には国家分裂や国家安全に対する脅威を排除する法律はない。だが、この政府活動報告で正式に港独に言及したとなると、その意味は非常に重大だ。行政長官選挙後、香港基本法第23条に従って、国家安全条例を制定するつもりではないだろうか」
国家安全条例は2003年に胡錦濤政権が制定しようとして、香港市民50万人デモの抵抗にあって挫折したいわゆる治安維持法だ。当時総書記の胡錦濤は、金融都市香港の安定を優先して、国家安全条例制定を棚上げしたのだ。それを習近平政権は再び、制定しようしている。すでに法律などお構いなしに、香港から中国に都合の悪い人物を拉致して拘束するようなことをしている習近平政権だが、この条例が制定されれば、香港の一国二制度は完全に粉砕されることになる。
五つ目の注目点は、「いかなる形式、いかなる名義でもってしても台湾を祖国から分裂させることは絶対許さない。祖国の平和統一プロセスを断固移さず推進する」と台湾に対する強い牽制をかけたこと。「両岸一家親」といった親しみを込めた台湾への呼びかけは今年はなく、李克強の読み上げる政府活動報告の中では、過去一番、厳しい表現による台湾への牽制といえる。それだけ、蔡英文政権の登場と、トランプ政権の「一中政策」をカードにした揺さぶりに習近平政権が狼狽させられたということだろう。
自信のなさか、ほめ殺しか
香港、台湾に対する、これまでにない厳しい言及は実際、どのような急展開を見せるかわからない部分がある。福建省や浙江省の指導者を経験し、台湾統一への執着は人一倍強いといわれている習近平だけに、焦って軍事アクションをとる可能性は完全否定できないからだ。政府活動報告の中で、庶民が大喜びした唯一の話題といっていい、携帯電話のローミング無料化も、台湾や香港を国内扱いして既成事実を創ることも狙いかもしれない。
総じて今年の全人代政府活動報告が浮き彫りにするのは、習近平政権の脆弱さや、それを自覚しての焦りやコンプレックスではないかと思う。そもそも“核心”呼びなど、政府活動報告に一か所盛り込めば十分な言葉なのに、11回も繰り返している。もしそれが、習近平の要求ならば、自信のなさの表れであるし、もし李克強からの提案であれば、いわゆるほめ殺しか嫌みであろう。そういう脆弱な政権だからこそ、追い込まれると焦って何をしだすかわからない。今後も、中国の政治の動きは一時も目が離せないのである。
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