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3/7JBプレス 森清勇『中国の南シナ海要塞化を見逃す米国の凋落と歴史観 このままでは日本、台湾、ASEANとの同盟関係維持も困難に』、3/8西村眞悟メルマガ『平和を望むならば戦いに備えよ』について
藤岡信勝氏のFacebookより引用。日教組打倒のために非常に良いことです。広島の中学生の自殺も日教組が強いく教育そっちのけで政治活動をしているせいで起きた事件ではと思っています。
「検定中の教科書を教員など採択関係者に見せ、金品を渡していた事案につき、新しい歴史教科書をつくる会は、3月7日、教科書発行10社を東京地検特捜部に刑事告発した。この日、文部科学大臣に告発の報告と申し入れを行い、文科省記者クラブにおいて記者会見を行った。以下、つくる会のFAX通信から転載する。
【新しい歴史教科書をつくる会は、3月7日、一連の検定中教科書「贈収賄」事案について、東京地検特捜部に該当する教科書会社10社の社長を「贈賄」の罪で刑事告発しました。続けて、文部科学省において文科大臣宛に刑事告発の報告と併せて下記の申し入れを行い、その後記者会見を行いました。
申し入れ及び記者会見には、髙池勝彦会長、石原隆夫副会長、岡野俊昭副会長、藤岡信勝副会長、荒木田修理事が出席し、各々よりこの問題の重大性を説明しました。
平成28年3月7日
文部科学大臣 馳 浩 様
(一社)新しい歴史教科書をつくる会会長 高池 勝彦
検定中教科書「贈収賄」事案についての要望
この度、教科書発行各社が検定中教科書を教員らに見せ、金品などを謝礼に渡していた事実が明らかになりました。文部科学省は各社からの報告を公表し、さらに実際の教科書選定・採択への影響の有無を、全国都道府県教育委員会に3月中旬までに報告するよう指示されました。このことに私どもは謝意と敬意を表します。
今回の事案は、教科書業界と公務員である教育委員会・教師との間で起きた、下記の法律に抵触した重大な「犯罪行為」です。
・「刑法第197条(収賄、受託収賄及び事前収賄)及び198条(贈賄)」の違反
・「地方公務員法第29条(懲戒)」の違反
・「独占禁止法」の違反 (各法律については資料LinkIcon参照)
当会はまず上記の「刑法第198条」への違反について、本日3月7日、該当各教科書会社を東京地方検察庁に刑事告発したことをご報告いたします。
さらに本事案は独占禁止法に基づく規制(「教科書業における特定の不公正な取引方法」)にも逸脱しており、まさに教科書無償措置法の根幹を揺るがす未曾有の大不祥事です。本来、子供や生徒に対し、不正行為を否定する教育をすべき立場の教員や教科書業界の倫理感が疑われます。「子供たちに顔向けできるのか?羞恥心があるのか?」を問いたい思いです。
よって私どもは文部科学省に対し、教育行政の信用回復と再発防止のために、下記の6点について速やかな検討・実施を切に望みます。
(1)文部科学省は、今回指示した各都道府県教育委員会からの報告の結果を精査し、影響があったとされた教育委員会は「教育委員会名とその報告内容」を公表すること。また該当する教育委員会の採択地区については、採択の無効化とやり直しを検討すること。
(2)謝礼を受け取った当事者は全員氏名を公表し、処分を科すこと。
(3)教育現場で教育に関する不正行為を発見した者は、身分保障も含め安心して、文部科学省へ直接通報できるシステム(内部通報制度)を構築すること。
(4)1月20日の教科書発行各社からの報告にあたり、義家弘介文科副大臣は、「報告漏れが発覚した場合は指定の取り消しも含めて必要な措置を講じることも辞さない。徹底的な調査を行っていただきたい」との発言をされているが、各社より報告されたものは「氷山の一角」にすぎない可能性が極めて高い。これまでの膿を一切出し切るために、文部科学省主導で調査を続行すること。さらに、全国各教育委員会に対して、報告漏れの事案の有無について、既に退職している教育関係者への聞き取りなども含め徹底した調査を指示すること。
(5)その調査報告いかんでは、義家副大臣の発言通り、該当する発行会社を教科書発行停止などの厳罰に処すること。
(6)現行の制度では、無償措置法の趣旨により適った教科書採択が行われることを目的とした、現場教員などによる「調査研究制度」や「共同採択区制度」がある。しかしそれらの実態は、日教組等の教職員経験者による恣意的な運用などにより、本来の趣旨にそぐわないものとなっている。それが結果的に今回のような不祥事を生んでいる。
文部科学省はこれらの制度の問題点について早急に検討・見直しを行い、今後、国民にとってより透明性の高い公正な教科書採択が行われるよう改善をはかっていただきたい。
最後に、本事案発覚の経緯は、昨秋からの報道の追及と文科省からの指導によって隠しきれないと判断した各教科書会社が、言わば自首した形で行われたものです。2月24日には、該当教科書会社10社が文科大臣に謝罪をおこないました。
しかし、本件は大臣の厳重注意をもって一件落着として幕を引くような軽微な事案ではありません。当会は、文部科学省の本件の対応について、今後も引き続き注目して参る所存です。大臣に於かれましては、一層の指導力を発揮していただきたいと思います。(以上)】」
さて、本記事ですが台湾を含めたATO(Asian Treaty Organization)を早期に作って対応しなければ。米国の対応が遅いのはオバマのせいだけではなく、金に転んでいる要人が一杯いるためです。日本も米国とニュークリアシエアリングの交渉をして行かないと。その際、日米安保条約が破棄される場合、一部の核を日本に譲渡する内容で締結してはどうか。やがては破棄されなくても譲渡されるようになれば良い。オフショア・バランシングとか言うのなら日本にも核を持たせないと。
中国の全人代の李首相の発表で、後半ずっと汗をかいていたことがTVで話題になっていました。それはそうでしょう。自分の思い、考えと違うことを無理やり言わされたのですから。従来ですと、政治・外交は主席、経済は首相と分けていたのに、習が無理やり「財経小組」を作ってリーダーとなり、李克強から実権を奪いました。でも全人代で李に発表させたという事は、経済が立いかなくなったら(というかここまで債務が膨れ上がれば、誰がやっても回復できないでしょう)、李の首を斬ると言うのを中国全土にアピールしたのです。それで、李は汗をかいたというのが真相では。習の腹黒さが窺えます。こうでなければ中国のトップにはなれないのでしょう。「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という民族なので。
やはり、中国の経済を崩壊させるのが軍事膨張の野心を止めるのに一番良いと思います。財務省の通貨スワップの議論や外務省のODAは止めるべきです。こいつらは学力が高いだけで、世の中が見えてない連中です。支援をすればどういう結末を迎えるか分かりそうなもの。まあ、老後の天下り先の心配ばかりしている官僚たちですから、矜持を持って仕事せよと言っても難しいのかも知れませんが。保身ばかりが目立ちます。自己中心な日本人の典型です。
記事
フィリピン・マニラの中国領事館前で抗議活動を行うベトナム人とフィリピン人たち(2016年2月25日撮影、資料写真)〔AFPBB News〕
南シナ海における中国の傍若無人の行動を見るにつけ、アジア重視にピボットしてリバランスしたはずの米国に疑問が湧いてくる。
カリブ海と南シナ海では米国にとっての意味が異なることは分かる。しかし、ソ連がキューバにミサイルを持ち込んだ時の対応に比して、中国の南シナ海における行動に対しては余りにも対応が鈍い。
軍首脳たちは対応が遅れれば遅れるほど、大きな犠牲が伴うことを進言しているようであるが、2回ほど「航行の自由」作戦を行っただけである。「世界の警察官ではない」と宣言した大統領には別の思惑があるのかもしれない。そうした米国の対応を見越して、中国は急ピッチで南シナ海の軍事拠点化を進めている。
内向きのバラク・オバマ政権で、果たして日本の安全は保障されるのか。日本はどういう立ち位置で行動すればいいか、今一度真剣な考察が必要であろう。
台湾の政権交代を追い風に
台湾では先の総統選挙で親日的な蔡英文氏が大差で勝利し、5月に8年ぶりの政権交代が行われる。同時に行われた立法院選挙でも民進党が過半数を超す議席を確保し、与党による安定した議会運営が期待される。台湾の現状維持は日本のシーレーン維持のためにも不可欠である。
しかし、中国が主張するように南シナ海が中国領となり、内海化して対空ミサイルや戦闘機・戦闘爆撃機を配備し、さらに防空識別圏を設定すると、海上自衛隊や米第7艦隊は通りにくくなる。それはとりもなおさず台湾の孤立化であり、その先にあるのは台湾の香港化であろう。
その結果、台湾海峡とバシー海峡の自由航行が阻害されることになれば、南シナ海を通る日本のシーレーンは遮断され、ASEAN(東南アジア諸国連合)との通商は大きな打撃を受けることになる。
もちろん、中東からの原油輸送も南シナ海の航行ができなくなれば迂回が必要で、長大な航路となり、経済的損失は計り知れない。また、台湾を拠点に東シナ海における中国の活動は一段と加速され、尖閣諸島が大きな影響を受けることは必定である。
このように考えると、日本と価値観を同じくする台湾が健在することは、何よりも日本の安全保障にとって不可欠の要件である。
いまは台湾が頑張ってくれているから海峡通過が可能であるが、中国の影響下に入ったならば、万事休すである。中国は尖閣を自国領にして、台湾に影響を及ぼしたいと思っている。そうした意味で、尖閣諸島の重要性も浮かび上がってくる。
台湾の命運は日本の安全保障にもかかわる。リチャード・ニクソン政権(当時)の動きに慌てて、台湾をあっさり切り捨てた日本であるが、中国が国際社会の声を無視する形で南シナ海の内海化を図っていることに対応して、日本は対台湾関係で新たな施策を取るべき時ではなかろうか。
先の国会での安保法案が理解されにくかったのは、緊迫している国際情勢についての議論を野党が避けて憲法論議に持ち込んだからである。
南シナ海の現実に照らして、一段と法案の重要性が認識されなければならない現在である。破棄法案を提出する野党の無責任はいくら批判してもし過ぎることはないであろう。
日本の立ち位置
中西輝政・京都大学名誉教授は「愚かにも、ここ20~30年、日本では政府も国民も鄧小平以後の中国は平和志向に変わった、と妄想した」(『正論』2015年3月)と悔しがる。
日本が自国に都合がいいように妄想したこともあろう。しかし、日本が独自にとり得る中国に関する情報が少なく、米国がもたらす情報で行動せざるを得なかったということが大きい。
その米国には前科がある。戦前の米国は「日本帝国主義に痛めつけられた中国」という認識が強く、南京攻略戦を中国が南京大虐殺に仕立てるのに多大の協力もした。中国の報道はおかしいと米国民に呼びかけたラルフ・タウンゼント元上海副領事などは戦争中、フランクリン・ルーズベルト大統領によって牢獄につながれたほどである。
戦後の米国は「可哀そうな中国」ではないが、しっかり支援してやれば米国に応えてくれるといった認識から同盟国である日本と天秤にかけ、時には中国に肩入れして日本敵視政策をとる状況もあった。
日本人の中国専門家、もっと広く国際問題専門家と言われる人たちの講演をいくつか聞いたが、米国は中国をこう見ているという話が主体で、日本も米国と同じ視線で中国を見ておれば大丈夫だろうと言った論評がほとんど。独自に10年後、20年後を語る話はあまり聞けなかったように思料する。
中国の政治的状況や軍政関係など、内部からしか得られないような内容の話をすれば、自国民でさえ容赦なく逮捕する国への入出国が難しくなることもあり得よう。そうした配慮から話を控えているのかも知れないと惻隠の情で聞いていたが、根本的な情報が欠落しているというのが実態のようであった。
そうしたところに、米国から次々に対中警戒の声が上がってくると、日本の報道機関はそうだったのか、それほどまでに中国の傍若無人ぶりが増大して危険な状況になりつつあるのかとびっくりし、慌てて報道し始める仕儀である。
日本は独自の核抑止力を欠いているので、米国に強く言えない。あるいは米国の対中政策と違った行動をとり得ない、あえて行動しようとすると圧力がかかるなどの目に見えない同盟の枷がかけられていることもあろう。
先の北朝鮮のミサイル発射に関連して自衛隊が対処行動をとったことに関し、某氏はこの態勢をそのまま維持して、対中布陣としてはどうかという意見を出していた。対北朝鮮対処だけでなく、いや北朝鮮対処以上に中国対処が日本にとっては重要であることが忘れられているように思えるがいかがであろうか。
いまは日本の立ち位置が定かでないように思える。
中国の詭弁に寛容すぎる
南シナ海では「(中国の)軍事拠点化の進展を示す証拠が日々、浮上している。深刻な懸念対象だ」(「産経新聞」平成28年2月19日)とジョン・ケリー米国務長官が非難した。これは昨秋訪米した習近平主席がオバマ大統領と記者会見に臨んだ時、「南シナ海を軍事拠点化にしない」と語ったことを念頭に述べたものである。
3000メートル級の滑走路が何本も完成し、戦闘機の配備が明らかになり、また対空ミサイルの配備も明らかになると、中国は意味不明な「防衛体制は昔から存在する」「主権国家の自衛権に合致する」などと反論するようになってきた。
尖閣諸島の帰属や南シナ海について、以前は「古代から中国のものであった」などと国際法を無視して何の根拠にもならない発言を繰り返してきた。中国流の詭弁でしかないが、こうした詭弁は今に始まったことではない。
中国と1969年以来かかわり、米政府への助言もしてきたマイケル・ピルズベリー氏が「騙されてきた」と近著『China 2049 秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」』で告白している。
正確には「騙されていた」と言うよりも、「信じようとしないままずるずるときた」ということであろう。
なぜなら、彼はビル・クリントン政権時代の国防総省とCIA(米中央情報局)から「中国のアメリカを欺く能力と、それに該当する行動について調べよ」と命じられ、中国が隠していた秘密を調べており、「(中国の)タカ派が、北京の指導者を通じてアメリカの政策決定者を操作し、情報や軍事的、技術的、経済的支援を得てきたシナリオ」を発見していたからである。
そのシナリオこそ「100年マラソン」と呼ばれるもので、「過去100年に及ぶ屈辱に復讐すべく、中国共産党革命100周年にあたる2049年までに、世界の経済・軍事・政治のリーダーの地位をアメリカから奪取する」というものだったと述べる。
ピルズベリーは中国がどうなるとみていたかを、「間違っていた前提」として5つにまとめている。
(1)つながりを持てば完全な協力がもたらされる。 (2)中国は民主化への道を歩んでいる。 (3)はかない花、中国(と思てきた)。 (4)中国はアメリカのようになることを望み、実際、その道を歩んでいる。 (5)中国のタカ派は弱い。
いま分かったことは、すべての前提が間違っていたということである。
どうしてこうなるのか、孫子の兵法に見るように、中国の戦略は「戦わずして勝つ」のを最上の策としており、そのために謀略をめぐらし、相手の謀略に打ち勝つことを奨めている。こうして力がつくまでは「平和的台頭」を信じ込ませてきたのだ。
日本が防衛白書などで「中国の軍事力増強は不透明である」と警鐘を鳴らしても、中国は常に「平和的台頭」であり「覇権国になることはない」と繰り返すばかりであった。南シナ海での埋め立てや滑走路などの敷設に対して、「軍事化を意味しない」と言ってきたのと同類である。
オンショア・バランシングの米国へ
オバマ大統領が「米国は世界の警察官ではない」と語ったのは、シリアで化学兵器が使われた疑惑が持ち上がり、米国の対応が問われた2013年9月10日である。
これは「9.11」の12周年を迎える前日のことであった。それを発火点にしたかのように、シリア情勢は一段と混乱し、ロシアはクリミア半島を侵略した。
「オバマ大統領のホワイトハウスが現在関心を持っている世界情勢は、ロシア・ウクライナ問題、そして中東とそれに関連した国際テロが依然として大きなウェートを占めている」(『正論』2015年3月)と田久保忠衛氏は述べ、「中国の台頭、ひいては危険で野心的な膨張主義は、アジアに局面を限れば目立ってきたと感じている程度だと言わざるを得ません」とみていた通りであった。
第1期オバマ政権は中国閉じ込めの色彩が強かったが、第2期になると、アジアへ回帰してリバランスの宣言をしたにもかかわらず、「オフショア・バランシングに変わってきたのではないか。中国と直接対峙するのは日本など同盟国や友好国で、アメリカはそれらをオフショア(沖合)、つまり後方から支援し、対抗行動をとるという戦略」(同上)で、なかなか動こうとしなかった。
米国は昨2015年7月、4年ぶりに「国家軍事戦略」を公表した。
中国の南シナ海における人工島造成が国際的な海上交通路にまたがり、中国軍の兵力配置を許すことや、ロシアはウクライナ軍事介入で武力行使も厭わないなどと分析しているが、「米国と同盟・友好国のネットワークは世界の安全と安定の礎となる類まれな強さがある」とし、「集団的な軍事力を高めることなどにより、侵略を阻止する」(「産経新聞」平成27年7月3日)と強調するだけで、米国が指導力を発揮するような文言はない。
こうした米国の動きにリアリストたちが危機感を抱き声を上げ始めた。
ピルズベリーの上記著書やジョン・ミアシャイマーの『大国政治の悲劇―米中は必ず衝突する』、さらにはアーロン・フリードバーグの『支配への競争―米中対立の構図とアジアの将来』などが相次いで出版される。
これらの著書は『孫子』『春秋左氏伝』『三国志演義』などの古典、あるいは鄧小平が語っていた「韜光養晦、有所作為」(才能を隠して控えめに振る舞い、成すべき事は成すという意味)などの用語を多用して論述している。カギは中国の古典にあり、中国の計略にはまったという印象を強く醸し出そうとしていることが分かる。
米国が今後も我関せずのような態度を続ければ、中国が地域覇権国になることは必定であろう。しかし、米国が地域覇権国となって以降、米国は他の国が地域覇権国となることを許したことはない。その流れからすると、米国は台頭する中国を抑えなければならない。
そのことをミアシャイマーは自著で、「現地の国々(筆者注:日本やベトナム・フィリッピンなど)が潜在覇権国(注:中国)を自分たちの力で閉じ込められない場合には、沖合に位置しているオフショア・バランサー(注:米国)というのは、実質的にオンショア、つまり岸に上がらなければならなくなる」と述べている。
米国の日本理解
他方で、米国の行動を見ると、世界の警察官でないどころか、同盟国の警察官でもないように見受けられるというのは言いすぎであろうか。
米国には、もともとモンロー主義という考えがあり、最小限アメリカ大陸にだけは敵性国家を近づけないし、いざというときには引き籠ればいいという考え方である。キューバ危機はそうした意識の顕現であった。
南シナ海については「航行の自由」を主張しながら、中国の軍事拠点化にさしたる異議申し立ても行動もとろうとしない。米国の力を期待していたASEANの国々は米国を見限りつつあるのではないだろうか。
南シナ海では中国が数年前から人工島を築き作業していたことが分かっていた。昨年は飛行場の完成、そして民間機の飛来、その後は戦闘機の発着である。今年になると対空ミサイルの搬入が明らかになった。それにもかかわらず、米国は中国の行動を抑制させるまでには至っていない。キューバの時と大違いである。
こうした米国の動きを見ていると、日米同盟で日本の安全はどこまで保証されるのか、理解が困難になる。米国務長官や国防長官は「尖閣は日米安保5条の適用を受ける」としばしば発言していたが、米国が本当に守ってくれるのか心配でならなかった。
そこへ、国賓として迎えたオバマ大統領が同様の発言をしたことで、これ以上の保証はないと言わんばかりに日本はすっかり安心した。
過去の歴史や米軍占領後の尖閣を射爆場として使っていたことなどからして、「領有権」は明確であるように思えるが、あえて「領有権は日中両国の問題」と突き放す。
こうしたことから、「安保条約の範囲内」の意味については、有識者の間でも意見が分かれている。ざっくり言って、米国が最大限の関与、すなわち戦争に訴えてでも日本の味方をしてくれるという意見から、リップサービスで中国を牽制するだけで、実際に中国が動き抑止が破綻すれば関わりを放棄するという意見まである。
西尾幹二氏は「アメリカの対外政策をみていると、ことごとくまるで絵に描いたようなご都合主義で、私たちはアメリカを本当に信じることができるかどうかわからないという局面に、身を置いている。(中略)アメリカ人は余りにも他国を理解しようとしない。そしていまはオバマ政権の軽率かつ臆病な判断によって世界最大の軍事大国が外交的失敗を繰り返している」(『正論』2016年3月号)と書いている。
中国発の情報の間違いと日本発の正しさを米国民に伝え続けたタウンゼントに対する米国の仕打ち、戦後の米国の行状を見ただけでも、米国の国益次第で日本は翻弄されかねない。
おわりに
台湾は日本へのシーレーンを扼する戦略的要衝である。親中政権から親日政権に代わるのを好機と捉え、日台友好を深めると同時に、経済的深化を強める必要がある。
日本単独の中国進出は危険が伴うことが多いが、台湾は中国での損失が少ないと聞く。このことは、日中の関係に台湾を噛ませることで損失の少ないルーチンを築く機会でもある。
中国は法の支配を守らない、民主主義を否定する、IS(イスラム国)を批判しないなど、従来確立されていた国際秩序を破壊する行動を平然と行っている。
また、中国や半島の国々の要人や広報官の声明などを聞いていると、あたかも詭弁術の講義のようである。これが国際政治の現実という理解も必要であろう。
他方、米国はいま中国のこうした詐術に気づいたかのように主張するが、それも詭弁であるように思える。米国はとっくに中国の言行を知っていたはずである。ただ、自信過剰が災いしたとは言えよう。
いま米国の地域覇権が脅かされそうになり、日本やASEANの結束を呼びかけているが、米国益絡みの思惑で一蓮托生にされてはかなわない。
日本自身の立ち位置をしっかり確立することが求められているようである。
メルマガ記事
中共の首脳は、全人代で、「海洋強国」を建設すると宣言し、 東シナ海・南シナ海そして西太平洋に覇権を拡げて「中国の海」とするための「軍事闘争への備えを統一的に推進する」国防費を提示した。 その額、日本円で約十六兆七千億円であり我が国の国防費の三・三倍である。 しかし、この公表された国防費は総額の二分の一に過ぎないと指摘されている。これは経済の失速のなかでも断じて軍事拡張を止めない姿勢を示したものである。
産経新聞社説は、この状況に関して 「自ら敵を増やすつもりか」 という強烈な題名を与えて異常性を強調した上で、 「習主席は異常な軍拡を思いとどまり、各国と手を携える道を探らなければならない。 経済の回復にも国際協調は不可欠だ」と結んでいる(二十八年三月六日)。この社説の終わり方に、じょ、じょ、冗談言うな、となった。さんざん相手の異常性を強調しておいて、 なんやこれは、異常な相手に、国際協調を勧めても聞き入れるはずがないではないか。そもそも、異常、なんやから。
よって、産経新聞の社説の結論とは逆に、この相手に、国際協調を勧めるのはもう止めようと強く訴えたい。何故なら、軍拡を続ける独裁権力に対する「宥和」こそ、戦争の引き金になる「最も危険な錯誤!」であると歴史が教えているからである(チャーチルの第二次世界大戦回顧)。第二次世界大戦勃発の直前まで、つまりドイツのポーランド進撃直前まで、イギリスもフランスも、ヒトラーに国際協調を勧めていたことを忘れてはいけない。
すなわち、我々は、頭から対中宥和思考を排除した上で、相手の「実態」を把握し、如何にして相手を抑止するか決断し実行に移さねばならないときがきている。その決断が、本稿の表題「平和を望むならば戦いに備えよ」である。
この観点から眺めるならば、現在、韓国では、アメリカ軍と韓国軍が大規模軍事演習を展開し、 南シナ海には、アメリカの原子力空母ジョン・ステニスを中心とする空母打撃群が展開している。
また、我が国においても、 昨日三月七日、秘匿性に優れた最新鋭潜水艦「じんりゅう」が三菱重工神戸造船所から就役して「そうりゅう型潜水艦」が次々と生まれており、フィリピン海域の海底に我が潜水艦が遊弋していると聞いている。いうまでもなく、秘匿性の高い潜水艦は、一発で空母を撃沈できる。
これらを総合すれば、中共の全人代で喋っている連中と中共の軍隊は、海洋においてかなりの圧力を受けて抑止されており、八十年前の昔に、何の圧力も受けずにラインラントに進駐できて 舞い上がったヒトラーの状況とは違うと思われる。
アメリカ国内は、現在、不動産王と上昇志向が化粧をして歩いているような二人による内向きの大統領選の最中だが、軍事行動に消極的でアメリカの威信と国際的信頼感を失墜させたオバマ政権末期を迎え、オバマに辟易した国防長官と軍が、歴史の教訓に忠実な、きっちりとした行動を始めたと評価する。
さて、原子力空母ジョン・ステニスの空母打撃群の周りには、「見たこともないほどの中国人民の艦船が来ている」ということだ。 この情報に接して、思い出したのは、日中条約締結前の福田赳夫内閣の時、突如、尖閣周辺海域に百隻を超える中共の武装漁船が群れた情景である。之を見た福田内閣は驚き腰を抜かす。そして、そのタイミングを計っていた鄧小平の「尖閣棚上げ」提案に飛びつく。つまり、この時、我が内閣は、「自国の領土を他国に棚に上げてもらってホッとする」、 という馬鹿よりもひどい痴呆を演じるのである。そして、この武装漁船の「船員」達は、リストラにあった元人民解放軍の兵士であったというわけだ。
そこで現在、中共では、「軍の近代化」のために大リストラが行われているのだが、アメリカ空母打撃群の周りにいる「見たこともないほどの中国人民の艦船」は、福田赳夫内閣を慌てさせて「尖閣棚上げ」効果を獲得した例に倣って、中共首脳が、ひょっとして「スプラットリー諸島棚上げ」が転がり込むかも知れないと思って、リストラ兵士を繰り出しているかも知れないと思う次第だ。何れにしても、アメリカ空母打撃群の周辺に出てきた「見たこともないほどの中国人民の艦船」は、アメリカ軍の行動が、中共に効いている証拠である。
なるほど、中共(中国共産党)は、軍備を増強して海洋に進出している。しかし、そのカラダの内部は、ガン細胞が増殖を続けている。その内蔵が腐れば生体は維持できない。従って、脆弱である。いたずらに、中共の軍備増強を怖れる必要はない。対中軍事行動は、明らかに平和を確保する。対中宥和は、中共を増長させ危険な軍事的冒険を誘発させる。よって、我が国は、「平和のための戦略」を確立し、軍備の充実に邁進する時に至っている。
その「平和のための戦略」の大きな柱は、台湾そしてフィリピンからインドネシアというアセアン諸国との連携である。この中共を取り巻く「海洋の輪」が機能すれば、中共の「海洋強国」は停止する。陸上から飛び立ってイギリスの太平洋艦隊の旗艦である戦艦プリンス・オブ・ウェールズと巡洋戦艦レパルスを撃沈した戦訓を思い起こすべきである。この「海洋の輪」が機能すれば、東アジアの海を乗っ取ろうとする中共の野望は必ず破綻する。
最後に、最も警戒すべきことを記す。それは、中共の「対日工作」を見くびってはならないということである。冒頭に示した産経新聞の社説でも、中身は中共の「異常性」を説きながら、締めくくりは「中共に国際協調を勧めよう」というまことにしおらしい結論で終わるではないか。血に飢えた猛獣が平和の鳩になると本当に思っているのか。
昨年に延々と続けられた国会における安保法制の議論の中で、「中共による南シナ海の埋め立てと軍事基地化工事の脅威」については民主党からはもちろん、自民公明の与党からも質問は出なかった。南シナ海に関する質問は、「日本のこころ」からだけであった。この国会は、明らかに中共に「配慮」していた。これを「異常」だと思わねばならない。反対から言えば「異常」と思っていないことが「異常」なんだ。すなわち、中共の工作活動が国会すなわち政府与党と野党に及んでいる。 つまり、我が国国会は、中共に協力していたのである。一部は意識して、一部は無意識に。
かつて、ソビエトのKGBのスパイであるレフチェンコは、「日本の世論をソビエトに有利になるように仕向ける」任務を受けて日本に来て、我が国の政界、官界、財界、マスコミ界等のエージェントと接触し工作活動を展開した。そして、アメリカに亡命して次の通り証言した(一九八二年)。「日本人はソビエトに協力しているという意識なく協力してくれた。日本はスパイ天国である。」ソビエト無き今、我が国において、この「スパイ天国」を満喫しているのは何処の誰か。中共の工作員ではないか。彼らは現在進行形で言うだろう。「日本人は中共に協力しているという意識なく協力している。 日本はスパイ天国である。」まさに、レフチェンコの証言通りのことが、昨年の国会で起こっていたのである。それどころか、昨年起こっていたことは、今も各所で起こり続けている!
そこで、痛恨、無念の思いを以て言っておく。昨日、田母神俊雄元航空幕僚長の事務所等を東京地検特捜部が家宅捜索した。その容疑は、「勇気ある内部告発者」の告白に基づく政治資金の業務上横領であると発表され、マスコミはその通り官に「言われるままの疑惑」を流している。これによって、全国津々浦々の日本国民に、我が国を取り巻く中共の軍事的脅威を権威を以て伝達できる軍事専門家が沈黙させられるのだ。
これを喜ぶのは、何処の誰だ。喜ぶのは国内と国外にいる。都知事選挙から二年以上も経過したこの時期に、突然為された検察特捜部による田母神俊雄事務所家宅捜索が、「スパイ天国」における中共の工作活動と無縁の公明正大なもの、すなわち、社会正義の実現、であると、言い切る材料はない。
つまり、政界における中共の工作に影響された国策捜査ではないと言い切れないということだ。
3/8JBプレス 横地光明『習近平がヒトラーに変貌する日への備えは万全か 「ミュンヘンの宥和」が大惨事に発展したことを忘れるな』について
横地氏の論理展開は至極当然と思いますが、一番問題なのは国民レベルで危機の認識が共有されていないことです。左翼・リベラルに偏ったメデイアと学会(含む日教組)、傍観を決め込む経済界と悪条件が重なっています。国民はこのままでは「奴隷の平和」という事態になることを想像できないのでしょう。左翼は共産党支配を受けたいと思っていますので、確信犯でしょうけど。
自民党の責任は大きいです。マスコミのバッシングを恐れるあまり、長期的戦略を持たず、その場を糊塗してきて、左翼・リベラルに譲歩してきたためです。でもネットの発達により少しずつ情勢は変わってきました。朝日新聞のリストラ(OBへの新聞無料配布取りやめ、賃金カット)は、その表れでしょう。朝日新聞社員・配達員の不祥事も相次いで起きています。駅や電車内で女性に暴行、救急車への唾吐き等。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160305/k10010432541000.html
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160305-00000554-san-soci
逮捕されても、傲慢としか言いようがない言いぐさです。こんな新聞がクオリテイペーパー扱いされてきたことが日本の不幸です。日教組が受験対策で勧めてきたのが大きいのでしょうけど。朝日は日本共産党・中国共産党・朝鮮労働党の「喉と舌」です。日本国民のことは全然考えていません。戦前も尾崎秀美(大阪朝日記者)のスパイ事件で日本を誤導してきました。不買でドンドン売り上げを下げる必要があります。また「押し紙」問題もありますので、こういう不正をしながら「社会の木鐸」を標榜するのはチャンチャラおかしいと思います。公取に糾弾した方が良い。
3/8には朝日新聞から電話で「新紙面になったので一定期間無料で配達できます」と言うので「即座に「要りません」と断りました。相当の焦りがあるものと見受けられます。でも何故自宅の電話番号を知ったのでしょう。大事な個人情報ではありませんか。言っていることとやっていることが違いすぎます。どうせなら思想調査をすれば、勧誘の電話はなかったでしょうけど。
自民党は自分でPRするTVチャンネルを持てば良いでしょう。既存のTV放送局には入札制を入れず、安くしか電波利用料を取っていないので、同じようにすれば良い。週1回限られた時間でも良いでしょう。憲法改正の必要性を党として国民にもっと説明しなければ、国民投票で支持は得られないでしょう。既存のメデイアは憲法改正反対なので。横地氏の仰っています「自分の国は自分で守る」ことも丁寧に説明していかなければ、メデイアの「戦争反対」のアピールに負けてしまいます。
記事
仏パリ(Paris)西部のムードン(Meudon)で行われたハッキングのコンテスト「ステリア・ハッキング・チャレンジ(Steria Hacking Challenge)」に参加する学生〔AFPBB News〕
米紙の衝撃的報道
JBpressは最近立て続けに尖閣諸島をめぐる日中交戦に関し、「衝撃のシミュレーション『中国は5日で日本に勝利』」(1.27部谷直亮氏)、「オバマ政権最期の今年、中国は尖閣を攻撃する」(2.3古森義久氏)なる驚くべき記事を報じた。
前者は米ランド研究所のデヴィッド・シラパク氏の尖閣事態シミュレ―ション公開リポートの紹介である。
「日本の右翼が尖閣に上陸すると中国海警が逮捕し海警と海保が衝突、日中の艦艇・軍用機が展開し中国艦の空自機への発砲から日中交戦が始まり、米潜水艦が中国艦を撃沈すると中国は米国西部をサイバー攻撃、また対艦ミサイルで海自艦艇を撃沈、中距離ミサイルで日本本土を攻撃。米国は日本の空母参戦と中国本土基地攻撃要請を拒否し、中国は5日間で尖閣を占領」とその内容を伝えた。
後者は28.1.25付ウォール・ストリート・ジャーナルに掲載された米ハドソン研究所のルイス・リビー氏らの論文『北京の次の先制行動は東シナ海だ』(Beijing’s Next Gambit, the East China Sea ;By Arthur Herman and Lewis Libby)に関するもの。
「中国は日本と密接な関係を持ちながらも突然尖閣に軍事行動を開始し両国の軍事衝突になる。オバマ政権は日米安保発動の日本の強い要請を抑え日本は引き下がり外交的解決を求めるが、国際調停で中国の主張がより支持され尖閣領有権主張が日中対等に扱われることになる」との主張とそれへのコメント記事。
これに対し、元航空自衛隊空将の織田邦男氏は、ランド研究所のリポートについて「あまりにも稚拙なシミュレーション」と批判(本誌2.4)する。
「そんな前提はあり得ない。米が潜水艦を参戦さても中国が軍事行動を停止せず、米国がサイバー攻撃で大きな社会混乱を起こされても参戦しないはずがない。近代戦を支配する航空戦に少しの配慮もなく話にならない。これらは米政府にあまり深入りするなとの警告を促すものであり、あるいは中国の思惑を入れての仕業(コミットメント・パラドックス)である」と主張し大方の賛同を得ているようだ。
確かにその可能性も高い。しかし、中国が米空母2隻の行動でミサイル発射を中止(1996年:台湾総統選挙)したのはまだ対艦ミサイルを十分保有しなかった時代のことで、現在の米中の相対的力関係とは著しく違っている。中国の軍事力を少しでも過小評価するようなことは危険である。
前者が海自の撤退収容で終わるのは、あたかもベトナム戦争の最期を見るようだし、後者には、アドルフ・ヒトラーによるチェコスロバキアのズデーテン地方割譲要求を認めた「ミュヘン宥和」の歴史的愚挙を想起させられた。
こうした歴史を振り返れば、中国が日本と通常の関係を保ちながらも突然短期局部的軍事行動を仕かけることは十分考えられる。
米国はその尖閣攻撃事態発生に対し、大統領を含む政府高官が「尖閣は安保5条の適用範囲で米国は日本を必ず護る」としばしば公約している。しかし、実際にはミュンヘン宥和のような事態が発生する恐れはないだろうか。
もし、尖閣諸島が中国から攻撃された場合、米国は自らの国際的信頼性が一気に地に落ちることを承知で、日本の要請を抑えて中立を守り、日本本土が中国の中距離ミサイルで大被害を受けても、空母を大西洋に逃がしたり、国際調停で中国の尖閣領有権の主張を認めたりする可能性は否定できない。
現実問題として、中国が尖閣諸島に対して本格的侵攻を行う危険性はそれほど高くはないかもしれない。しかし、前者のシミュレーションは地位の確立した専門家のものであり、後者の論文はブッシュ政権の国防次官補らによる論文で「最善を期待し最悪に備える」べき安全保障の原則からして軽々しく扱ったり無視していいものではない。
米国は尖閣諸島防衛を公約していても軍事支援を発動しないことがある。国家防衛に強い意志と能力を欠くものは見捨てられるという国際政治の非情さを忘れてはならない。
政府も国民も等しく短期的局部的な中国の軍事行動はいつでもあり得ることを覚悟し「自分の国は自分で守らなければならない」現実に目覚め、その指摘する日本の安全保障上の根本的欠陥是正の警鐘を真剣に受け止め、すみやかにこれらを改善しなければならない。
尖閣防衛には何が必要か、彼らの警告
政府は尖閣事態に対する米国の公約履行の確証を高めるべく施策するとともに、防衛省・自衛隊は尖閣事態に対しこれを抑止・対処するため、南西方面を防衛努力の焦点としてその対応を急いでいる。
例えば陸上自衛隊では、島嶼奪還部隊のための水陸両用部隊の整備、与那国島への沿岸監視隊、石垣島への対艦・対空ミサイル部隊と警備部隊の配置、奄美大島への対艦・対空部隊配置、「オスプレイ」の導入、作戦部隊の軽快な輸送展開のための師団・旅団の軽量化を進めている。
海上自衛隊はイージス艦2隻の迎撃ミサイル「SM-3」の装備化と2隻の新造、潜水艦6隻の増加を図る計画である。また航空自衛隊は既に九州から1個飛行群を那覇に移し第82航空隊の部隊と合わせ第9航空団を新設し「F-15」を倍増し40機体制とした。
海上保安庁も保安官・巡視船を増加し石垣島に尖閣海域監視専任部隊を設けた。
しかし彼らが指摘しているのは、そのような戦術レベル次元を超えて戦略レベルあるいは国家安全保障レベルの欠陥なのである。
すなわちこの論文とシミュレーションが指摘する最大の問題は、再言するが中国は予期しない時に突然軍事攻撃を仕かけることがあり、その場合米国は予ての国家公約(オバマ大統領や国防長官や軍高官の発言)にもかかわらず尖閣事態に軍事支援を避けることがありうるという深刻な問題だ。
第2次世界大戦を誘発してしまった「ミュンヘン宥和」が尖閣諸島を舞台に再現されないと誰が断言できるだろうか。中国の習近平国家主席がヒトラーのような野望を抱いていないと確信できるのだろうか。
日本がもっぱら米軍に期待している抑止力を欠き、我が国本土までが一方的に中国のミサイル攻撃に晒され、またそのサイバー攻撃によって社会インフラ、政官軍経のシステムが機能を失う危険性は常に念頭に置いておかなければならない。
またこれらのリポートは、作戦部隊の作戦輸送展開と戦力発揮のためこれを支援さるための兵站的支援確保に信頼性が乏しく、加えて航空基地などに掩体(えんたい=敵の砲弾から身を守る土嚢などの装備)が全くなく甚だ脆弱であることも指摘している。
中国が容易に兵を動かすのは、国境における短期的攻撃がインド(1959、62)、ソ連(69)とベトナム(79)の例でも知られる。インドとソ連の両国は敢然と戦いこれを阻止したが、ベトナムは海上戦力が弱く西沙諸島では固有領土の島嶼を軍事占領された。
中国は核大国のソ連とさえダマンスキー島で戦い半分を領有化(1969)した。決して油断できる相手ではない。
日本が尖閣諸島を絶対に守り抜く強い意志と現実的態勢を示し中国に乗ずる隙を与えず、またいかに日米安全保障条約の信憑性を確立するかが問題である。しかし今日までの施策ではその保証は薄弱で抜本的見直しが必要である。そして諸々の形骸的防衛政策を刷新することも不可避である。
日米安保条約信憑性の確立
中国が尖閣に武力攻撃をすれば、米国は日本の救援に必ず必要な武力を行使する姿勢が確信されれば、核大国同志の米中の戦いは最終的には核戦にも繋がる恐れがあり、ともに国家の存非のリスクを懸ける決意しなければならないので、両者の武力対決は強く抑止されよう。
したがって平素からいかに米国が日本に対する中国の武力使用に対して、不退転の決意で日本防衛に参戦する不動の意図をコミットするばかりでなく、日米の現実の関係と軍の態勢と活動を示すことによって中国に誤解を生じさせないかが肝要になる。
しかし、この論文などが示すように日米は、いまだ真の運命共同体ではない。一般米国民の世論のみならず政権当事者も、無人の岩礁の日中の争いになぜ米国の青年の血を流さなければならないかと考えるのは当然だ。
そして、仮に中国がアジア・西太平洋を支配しても、ハワイ以東を支配できれば米国の安全は保障され経済繁栄に支障はないとの意見もある。米国の国力の相対的衰退と現在進行中の大統領予備選挙からも米国政治の内向き傾向がさらに強まることが容易に観察できる。
日米同盟信憑性の確立は容易でない。しかしやらなければならない。
第1は尖閣諸島の持つ日本・ASEAN(東南アジア諸国連合)・米国にとっての至高な戦略的価値と安全保障上の象徴性を米国政府と国民に一層認識させる努力だ。
第2には日本自身が米国にとって失い得ない国際戦略上の大きな価値を持つことだ。強い経済力・外交力に加え強い防衛力を構築し、アジア・太平洋の安全保障にしぶしぶ関与するのではなく、覚悟を持って積極的に先導し、米国を巻き込みASEAN・豪・ニュージー-ランド・印と共に中国の国際法侵害対処に行動しなければならない。
これはちょうどヒトラーの修正主義の領土拡大の野望を前にし、英国が米国を巻き込み現状維持派の諸国に訴え国際情勢を指導したのに似ている。
抑止目的達成のための政策の刷新
我が国の防衛政策の第1はもちろん抑止である。しかしながらその実態は抑止のための能力を整備しないばかりか愚かにもそれを機能しないような政策ばかりを進めている。
具体的に示そう。古くは鳩山一郎総理の時代から「我が国に対して誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とは考えられない。――(したがってその)誘導弾等の基地を叩くことは法理的に自衛の範囲に含まれる」(衆院内閣委S31.2.29)との一貫した立場を取りながら、「我が国防衛力は周辺諸国に脅威を与えてならない」とし「専守防衛」を政策の基本にしている。
この「専守防衛」なる軍事用語は世界にないが、「侵攻を受けたら立ち上がり、防衛力の行使を発動し日本を防衛するとするものである」とされる。このため戦闘機の行動半径を抑えるため態々その空中給油装置を外したたり、対地攻撃能力の保有を禁止し、ミサイルの射程を厳しく制限してきた。
このため、日本への侵略を考える周辺国は日本の持つ防衛力に脅威を感ずれば感ずるだけその企図が封ぜられ即ち抑止されるのに、その脅威をなくし、加えて不意急襲的第一撃で自衛隊の各基地の航空機、護衛艦が一挙に壊滅させられる公算を大きくし、かえって相手を侵攻の誘惑に駆り立てる危険性を高めている。
したがって、抑止を政策の基本とするならば、敵に乗ぜられない隙のない強靭な防衛力を備え周辺に無言に厳然たる脅威を与え、特に強力なサイバー能力を整備するとともに、我が国を攻撃する基地を破壊できるよう航空機の對地攻撃能力を整備し、かつ中国や北朝鮮の中距離弾道弾攻撃基地を叩き得る誘導弾を整備しなければならない。
こうした論議に対して、日本が中距離誘導弾(弾道あるいは巡航)を持っても、奥地からさらに長い射程のミサイルで国家中枢を狙われ、その攻撃の意図を封ずることはできない。したがって中国の中距離ミサイルに対抗せんとするのは誤りであるとする説がある。
しかしその考え方は、戦争はいつどんな場合でも無限界に全面戦争に拡大するとして、戦争にあるラダ―(ladder:堺域)の存在を無視するものである。
また中国はミサイルの射程を増大すればするだけ、ますます日・米・豪・インドなどが結束してその対抗施策を講ずることを危惧し、中国が最近、ミサイル開発を抑えようとしているとする主張がある。
しかしそれは自説の合理性を裏づけようとする一方的理屈ではないのか?
それが事実であれば、中国のアジア西太平洋から米国勢力を駆逐せんとする意図を放棄した明確な証左や、南シナ海における領有権争いのある岩礁を埋め立てて造成した軍事基地を放棄するなどの確たる事実でこれが証明されなければならない。
しかもリスクが高い侵害ほど発生の蓋然性は少なく、その大きい蓋然性のあるリスクに備えることに合理性が有り、日本が中距離ミサイルを保有する大きなメリットを忘れてはならない。
この中距離ミサイルを、我が国で独自に開発国産化するには、相当の期間と経費を投入しなければならない。しかるに幸にも、米海軍にはトマホーク巡航ミサイル(射程1250、1650、2500、3000キロの各種、価格1億円前後)があり、海自艦はその発射装置VLS(MK41)を既に装備しておりミサイルの購入と計画飛行制御装置の導入だけで済む。
仮に対中国用に1000発、北朝鮮用に200発の計1200発を整備したとしても費用は1200億円程度であり、これはいずも級大型護衛艦の建造費に相当するが、何年間かに分けて整備すれば何隻かの耐用艦齢の延長によって、費用の捻出が可能でありその防衛効果は絶大である。
サイバーセキリティ能力の抜本的強化
サイバー戦争は第5の戦いの空間として、平戦両時に、しかも瞬時に、国家・軍事機能が全面的に麻痺混乱喪失させ得る特殊な脅威を有する。サイバー攻撃は兵器開発の詳細な図面も容易に知らない間に盗み取られ、その危険性は往時の暗号文傍受解読の比ではない。
ロシアは世界最強のサイバー戦能力を有すると言われるが、中国が絶えず米国日本に陰に陽にサイバー攻撃を仕掛けていることは公然たる事実だ。そのため中国が強力な該軍事組織(61398部隊等)を持ち、加えて民間に膨大(800万人とも)な専門家集団を養成していることはよく知られているところである。
中国が開発中といわれる第5世代ステルス戦闘機「J-20」が米国などが開発し、空自が導入を図っている「F-35」と外形がそっくりであるが、これもサイバー戦の重大な一面として認識しなければならないであろう。
このため、米軍は大将を長とする数千人規模の統合軍を設け、韓国もサイバーコマンドを保有(公表6800人)し国防費の3%を振り当てていると言われる。
翻って、我が防衛省・自衛隊のそれを見ると地位と名は立派な統合部隊だが前者に比べれば真に貧弱な憐れな憂うべき存在でしかない。
防衛省は速やかに民間のホワイトハッカーを急募し、少なくとも現情報本部位の態勢を整備しサイバー戦の攻防兼備の能力のある部隊に画期的に強化し、政府も特命大臣を置きサイバーセキリティに国を挙げて取り組まなくてはならない。
自衛隊を戦い得る体制への緊急措置
自衛隊は形は何とか揃っているが、よく観察すれば実戦能力に乏しく瞬発力を発揮できても、人的物的に縦深性を欠いていることを認めざるを得ない。
陸上自衛隊の部隊は米国が32万10個師団の整備を求めたのに18万で13個師団を編成したから、師団と称しても人員も装備も少なく、国内戦を理由に兵站機能を極端に絞り、戦闘員も多くの任を兼務するから少しの損害発生で全部隊の機能が大きく失われる宿命的脆弱性を持っている。
しかも財務省は、定員に対してさらに充足率を課しているから初めから本来の能力を発揮できない。もとより自衛隊の装備・弾薬・燃料・部品の備蓄は甚だ乏しいうえ、これを必要方面に移動する十分な手段が準備されていない。
陸上自衛隊は南西方面の事態に対応するため、1個機甲師団、3個機動師団、4個機動旅団を整備しようとしているが、これらの南西諸島への部隊・装備の緊急輸送も陸自および空自の航空輸送力は大きな限界があり、海上自衛隊も輸送艦は僅か3隻しか持たず、民間ヘリーなどの庸船を前提としている。
だが、果たして業務に就いている船の緊急確保が可能なのか、何より危険な業務につく多くの船員の協力が得られるかの保証は全くなく、それには国家的な法的準備がなければ不可能である。
参考に記しておくが、1個作戦師団の必要輸送所要は40万トンとされるのが常識である。陸自の師団は規模が小さく軽いからその4分の1、旅団は規模が師団の2分の1であるから8分の1、機甲師団を2分の1として計算しても所要合計は実に70万トンにも上る。
この所要を容易に確保可能できるだろうか。最近北朝鮮のミサイル発射実験に備え、イージス艦(SM-3Aは射高300キロ・射程数100キロ位)とPAC-3部隊(射程20キロ程度)が展開したが、日本のBMD (弾道ミサイル防衛)は層が薄く、防護空域が限定され過ぎる。PAC―3は本来陸軍の野戦の拠点防空用のものだ。
したがって速やかにSM-3B(射程、射高は1000キロが期待される)を開発装備化するとともに空自各高射隊はそれぞれPAC-3の半分をTHAAD(射高約150キロほど)に換装することが必要だ。
陸・海自使用の対艦ミサイルの射程は短か過ぎるし、中国海警にはフリゲート艦の転用船があり更に軍艦仕様の超大型巡視船を建造中と報ぜられるが、そんな船に体当たりされては商船仕様の海保の巡視船はひとたまりもない。
戦時所要の大きく拡大が予想される予備役自衛官は、我が国の社会制度と特殊な社会環境から質量ともに致命的な欠陥を持っている。
新しい防衛計画では統合機動防衛力整備の名の下に、北海道以外の師団・旅団から戦闘力の骨幹である戦車と火砲を外すそうであるが、これでは作戦部隊でなく、警備師団(旧陸軍の後方警備にに任じた独立混成旅団)に過ぎなくなる。
「国防力の相対的優劣は国際関係に影響を及ぼす」(「国際政治」モーゲンソー)と言われるが、最近力信奉のロシアが対日姿勢を強硬にしているのは、これが反映しているのかもしれない。
まとめ
ある高名な国際政治学者は、国際情勢が不安定になったのは、「米国が弱くなり中露が強くなったのでもなく、中露が地域覇権を模索しながらもバラク・オバマ政権が軍事介入に消極的になったからだ。しかし次の政権が戦う姿勢になれば世界の不安定さは加速するだろう」と言っている。
立派な国際政治学者の御託宣であればそういう公算が高いのであろう。しかし核大国の米ソが対立した冷戦時代は安定し、その終焉とともに世界は一挙に不安定不確実の情勢に陥り、世界の誰もが不安に悩ませられたのも否定し難いものがある。
したがって、米国の次期政権がその第一流の国力と軍事力を背景に、国際秩序を侵すことは軍事力使用してもこれを許さないとの厳然たる政策を採用すれば、かえって世界情勢は安定するのではなかろうか。
思うに、日本が世界最大の長期負債を抱え、少子化で人口問題が危機的状態に陥り、自国の防衛が形骸化の姿にあるのは「環境に適応できない種は生き残れない」(ダーウィン)のに世界の情勢変化に目をつぶる国民におもねり、政権がその維持にまた政治家が票を求めることを優先し、国家の長期的基本問題を放棄してきたからである。
万一の場合に備え、国防の象徴尖閣防衛を事態的に確実にするためには早急に警察官僚が警察原理で作った国防政策と自衛隊を軍事原理で刷新することが現下日本の国家的緊急課題である。
3/5ZAKZAK『中国、400兆円巨額損失も 米「空売り王」予言 600万人リストラ地獄…』、3/6日経『中国5カ年計画、成長持続へ投資 交通網に年34兆円超』・『中国経済 続く難局 5カ年計画「年6.5%以上の成長」』について
経済的に中国の打つ手は何もない、と言うか、あるにはありますが、総て現状を悪くする、傷を深くするだけです。G20でお墨付きを貰った財政出動も、ゾンビ企業を生き延びさせ、過剰債務を増やすだけです。金融政策としての緩和政策はキャピタル・フライトを招くのでこれは採れないでしょう。外貨準備高がドンドン減っていき、中国と雖も数字の誤魔化しが効かなくなります。
黒田日銀総裁がアホなことに中国に助け舟を出した資本規制は、元のSDR入りで普通に考えたらやれないと思うのですが、何せ「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という民族ですから、ラガルドの面子を潰すことなど何とも思わないでしょう。それでも、中国からの資金が出るのを防ぐだけで、プラス面はありません。逆に新たな資金の流入を防ぐでしょう。誰も引き出せない銀行に預金しようとは思わないでしょうから。経済成長は資本の投入量増大+労働力の投入量増大+生産性上昇で表せます。この面から見れば資本規制は明らかに経済を停滞させます。
減税は経済成長しない限り、やはり債務を増やします。構造改革は言うは易く、行うは難しです。何せ、中国で蔓延ってきた利権を引き剥がすことになりますので。習近平の暗殺かクーデターを引き起こすことになります。それは剛腕・習と雖もやれないでしょう。結局、口先だけ、数字を誤魔化してデフォルトの連鎖、ハードクラッシュするだけでは。
構造改革で、李国強は空港建設や高速道路、高速鉄道建設を考えているようですが、需要もないのに債務を増やすだけです。B/Cの概念は社会主義経済には無いようです。産業の高度化は中国人には無理でしょう。自由な発想を妨げる共産党支配が続く限りは。また真面目に研究開発することより、パクリや盗みで安易に稼ごうとする中国人のDNAがある限り無理でしょう。
過剰設備を廃棄した場合のGDPへの影響ですが、総務省統計局のHPには「生産物の価値である国内生産額から中間投入の合計を差し引いたものは粗付加価値と呼ばれ,その合計が国内総生産(GDP)である(ただし,SNAでは家計外消費は中間投入とする)。粗付加価値は,雇用者所得(SNAでは雇用者報酬),営業余剰(SNAでは営業余剰・混合所得),資本減耗引当(SNAでは固定資本減耗),間接税,補助金からなる。雇用者報酬は,被用者への報酬であるが,賞与などを含む現金給与の他にも,社会保険への雇主負担,退職金,食事・通勤定期券などの現物給与などが含まれる。固定資本減耗は,減価償却費に資本偶発損を加えたものである。減価償却費は固定資産の更新に備えて積み立てられる資金を指し,企業会計上の概念と同じである。資本偶発損とは,事故や災害などによって通常予想される損害に対応するものである。」とありました。これだけでは固定資産廃棄損をGDPでどう算入するのか分かりません。未償却残高全部を減価償却費として計上するのか(これだとGDPは増えることになります)、廃棄するので資産(ストック)が無価値になるので何もしない(会計上、減価償却費は発生せず廃棄損を計上。GDP上は中立、±0とするのか)なのか、良く分かりません。
どちらにせよ中国のGDP数字はインチキ数字です。昨年はマイナス3%くらいが妥当な数字でしょう。GDPに限らず中国の発表する数字はデタラメです。企業の発表する財務諸表も。合理的精神が欠落している中国人のメンタリテイのせいです。このメンタリテイがある限り、法治の概念が根付くのは難しい。たとえ共産党統治が無くなったとしても。
ZAKZAK記事
中国経済の先行きに警戒感が強まるなか、5日に全国人民代表大会(全人代=国会)が開幕した。習近平指導部で初めて独自に経済政策「第13次5カ年計画」を策定するが、財政、金融ともに景気対策で打てる手は限られ、企業の過剰債務や銀行の不良債権に欧米の投資家や格付け会社は強い懸念を示す。さらに最大600万人のリストラなど、習指導部が抱える課題は山積している。 16日までとみられる会期中には、今年の国内総生産(GDP)成長率目標が打ち出される。2015年の成長率は6・9%と政府目標の7%は未達で、今年は「6・5~7・0%」など幅を持たせた目標が全人代で確認される可能性もある。 ただ、中国のGDP統計をまともに信じる向きは少なく、市場関係者の関心は景気失速や株・為替市場の混乱を止められるのか、習指導部の次の一手に集まっている。 まず注目なのが積極的な財政支出だ。20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議閉幕後の記者会見で、楼継偉財政相は「債務増大による財政出動の余地がある」と強調している。 しかし、第一生命経済研究所主席エコノミストの西濱徹氏は、「過去の財政依存が過剰設備や過剰債務問題を招いたこともあり、財政出動にはあまり期待できない。減税や企業のコストを減らす施策が中心となるだろう」とみる。
財政支出と並ぶ景気対策である金融緩和については、中国人民銀行は1日付で預金準備率の引き下げを行ったが、西濱氏は「過度な緩和は人民元安を招くのでやりにくい。通貨安や資本流出を防ぐために資本規制を導入すべきだという声もあるが、人民元の国際通貨化を強調してきた政権のメンツがまるつぶれになってしまう」と指摘する。財政、金融政策ともに手段が限られ、その効果も不透明のようだ。
地方政府や企業が抱える過剰債務問題への懸念も大きい。米格付け大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスは1日、中国の信用格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ(弱含み)」に引き下げた。格付けは「Aa3」(ダブルAマイナスに相当)に据え置いたが、引き下げも視野に入れる。政府債務の増大や、資本流出による外貨準備高の減少、構造改革の不透明さなどを理由に挙げた。
金融機関の過剰融資に伴う不良債権を警戒するのは英格付け大手のフィッチ・レーティングス。借り入れ比率がすでに高い状況で、中国の銀行が再び急速な融資拡大を持続することを危惧する。
全人代では構造改革も強調するとみられるが、欧米の市場関係者からは疑いの目で見られているようだ。
ブルームバーグによると、米サブプライム危機を事前に予測し、大もうけしたことで知られ、「空売り王」と呼ばれるヘッジファンドマネジャー、カイル・バス氏は、中国の銀行システムが不良債権で資産10%を失えば、中国の銀行の損失額が約3兆5000億ドル(約400兆円)になると予測した。リーマン・ショック時に米国の銀行が抱えた損失の4倍余りになるという。
日経記事
【北京=小高航】中国の第12期全国人民代表大会(全人代、国会に相当)第4回会議が5日、北京で開幕し、李克強首相は2016年の実質経済成長率の目標を15年の7%前後から6.5~7%に引き下げると表明した。16~20年の第13次5カ年計画も同日発表し、年平均6.5%以上とする成長目標を示した。構造改革を進める一方で交通網整備に年2兆元(約34兆円)超を投じるなど、インフラ投資で景気を下支えする。
李首相は所信表明演説に当たる政府活動報告で「長年蓄積した矛盾とリスクが顕在化し、経済の下押し圧力が増している」と述べた。鉄鋼や石炭などの産業で利益を出せない「ゾンビ企業」を淘汰し、構造改革を徹底すると強調した。
一方、世界で中国の経済減速への警戒が強まるなか、財政支出や民間資本を活用したインフラ投資により経済の失速を防ぐ方針も鮮明にした。16年に鉄道投資に8千億元以上、道路の建設に1兆6500億元をさく。現在全国に200強ある空港についても、20年までに50カ所新設する。
高速鉄道では北京と香港を結ぶ路線を新設するなど、総延長を20年までに現在の1.5倍の3万キロメートルに延ばす。中国メディアによると新5カ年計画期間中の鉄道投資総額は最大3兆8千億元(年平均7600億元)を見込む。10年に8400億元だったピークには及ばないが、高水準の投資を続ける。
中国では鉄鋼やセメントの余剰設備解消が大きな課題となっている。中国政府は不振企業の淘汰・再編を徹底するとしているが、失業増や賃金減で個人消費への悪影響も懸念される。高速鉄道などインフラ投資を通じて鉄やセメントの需要を生み出すと同時に、雇用を維持する狙いもある。
ただ、事業採算性を度外視したインフラ投資を繰り返せば、関連企業の財務悪化や新たな余剰設備を生む恐れがある。
一方、李首相は技術革新(イノベーション)を通じた産業の高度化を「国家の発展の中核に据える」と述べ、成長戦略に重点を置く姿勢を示した。人件費上昇で中国の製造業の国際競争力は低下しており、産業の高度化を進めなければ目標とする経済成長率は達成できないとの焦りもにじむ。
【北京=大越匡洋】中国の習近平指導部は5日開幕した全国人民代表大会(国会に相当)で、2020年まで年平均6.5%以上の「中高速成長」を保つ目標を正式に表明した。世界が中国リスクを強く意識するなか、設備過剰の解消など「供給サイドの改革」を通じて経済の効率を高める道筋を描く。経済の停滞回避に向けた難局は長期化が避けられず、雇用の悪化なども懸念される。
「『新経済』の発展を加速する」。李克強首相は5日の政府活動報告で、技術開発や新産業の創出を後押しし、新たな成長のけん引役とする構想を訴えた。だが現状は「新経済」の育成どころか、景気の足を引っ張る「古い経済」の後始末のメドがついていない。
ゾンビ企業淘汰
製造業の設備過剰や利益を出せない「ゾンビ企業」が「古い経済」の代表格だ。08年のリーマン・ショック後の4兆元の景気対策で、多くの産業が3~4割の余剰設備を抱えた。効率の悪い企業が温存され、消費者がほしい商品やサービスを提供できない。それが経済成長を鈍らせている。
習指導部が唱えたのが、減税などで企業負担を軽くする一方で「古い経済」にメスを入れる「供給サイドの改革」だ。李首相は鉄鋼や石炭の設備過剰の解消や「ゾンビ企業」の淘汰を明言した。長く意識された構造問題の解決に重い腰を上げた格好だ。
だが道は険しい。
河南省の国有炭鉱で働く40歳代の男性は最近、月に1、2日しか出勤していない。石炭価格の下落で会社の業績が悪化。国有企業ではすぐに解雇されないが、今後、こうした「隠れ失業」があぶり出される。中国政府でさえ、石炭・鉄鋼業だけで180万人の余剰人員が生じるとみている。
改革意識乏しく
地方政府が景気を下押しする構造調整にどれだけ本気で取り組むかという課題もある。沿岸部の広東省と内陸の重慶市は全人代の直前、相次いで「供給サイド改革案」を公表した。広東は最低賃金の上昇を抑えて企業負担を減らし、重慶は200社の「ゾンビ企業」を整理すると表明した。
もっとも、広東、重慶のトップは胡春華、孫政才の両氏。次期最高指導部入りをめざす両氏が習氏への「忠誠」をいち早く表明した色合いが濃く、地方に広く改革意識が浸透したとは言い難い。
習指導部が今回公表した20年までの第13次5カ年計画は、産業の高度化などで年平均6.5%以上の成長を保つ未来を描く。ただこの想定も、20年に国内総生産(GDP)を10年比で倍増する目標の実現に必要な成長率を逆算した結果で、「実現は簡単ではない」(清華大学の白重恩教授)。
李首相は今年、財政・金融政策で景気の下支えを強め、6.5~7%の成長をめざすとした。一方で、貿易額の伸びの数値目標は示せなかった。国内外の不確実性が増し、習政権の経済運営に重くのしかかっている。
▼中国の5カ年計画と政府活動報告 中国共産党が5年間にわたる経済・社会の運営方針や目標を盛るのが5カ年計画。今回の第13次(2016~20年)計画は習近平指導部が初めて立案した。この中期計画を踏まえ、毎年の施政方針を深掘りして示すのが政府活動報告。首相が経済成長率の目標や財政、金融政策などの具体策を表明する。
専門家の見方
成長目標に幅、妥協の産物 丸川知雄・東京大教授
2016年の成長率目標を6.5~7%と幅を持たせたのは、改革推進と景気対策の間の妥協の産物といえる。
6.5%という数字は景気を冷やしてでも過剰生産能力や過剰債務の解消を推し進めるという意味合いがある。もともとこの数字が既定路線だったが、人民元相場や株価の急落で景気刺激を求める声が強まり、7%まで幅を持たせて景気を悪化させないというメッセージも込めたのだろう。
中国はすでに高速鉄道や道路の整備がある程度進んでいて、今後インフラなど公共投資を増やしても、景気刺激効果が上がるか、疑問が残る。
減税効果、目標達成のカギ 伊藤信悟・みずほ総合研究所アジア調査部中国室長
新5カ年計画などからは、中国が金融不安や雇用不安を生じない範囲で構造改革を進めていく姿勢がうかがえる。経済成長率の目標は予想通りだ。成長率の目標はいわば公約で、中国がどういう手段で目標を達成するかを注視すべきだ。
3/4日経ビジネスオンライン 北村豊『元最高指導者「華国鋒」の銅像に取り壊し命令 サッカー場14個分の陵墓、銅像完工から21日目に』について
3/5池内紀氏の『カント 永遠平和のために ~私が歩んだ戦後70年~』講演会に参加しました。予想通り、岩波・朝日文化人の反権力を標榜するリベラル(自由人)です。戦争は儲かるからやるとの話、それはそうで赤字になるなら誰もしないでしょう。領土奪取・賠償金というメリットがなければ。米国のイラク侵攻も石油と$の基軸通貨維持のためと言われています。日本の戦前のアジア進出も資源確保のためです。物事が起きるのには動機が必要です。それが経済or名誉or倫理なのか千差万別です。石川明人氏の『戦争は人間的な営みである』の中では、確か総力戦となる近代戦では、利益のためだけでは戦えなく、友のためにと言う大義が必要とあったと思います。本の紹介には「戦争は「純然たる悪意」のみの産物ではない。むしろ、愛や、希望や、真心や、正義感があるからこそ、人は命をかけて戦うことができ、戦争を正当化できてしまう」とあります。物の見方は一様でないという事です。自由な国に生まれて良かったという事。中韓のような国でなくて本当に良かったと思います。
プラハの春の時に池内氏はチエコにいて、20年後民主化が実現したことで言論の力を感じたとのこと。言論で共産党支配の状況が変わった訳ではなく、レーガンのSDI計画でソ連の国防費が肥大化して、衛星国の面倒が見られなくなったためです。歴史解釈が現実を見てなく、都合の良い解釈=脳内お花畑になっています。理想で解釈するのではなく、現実(経済的利益面をも考慮)で判断しないと、間違うのでは。マルクス経済学だって「下部構造が上部構造を規定する」と言っているではないですか。そもそもチエコはZB26軽機関銃を開発したことで有名な国です。日本の九六式軽機関銃はそれを模倣して作られました。それだけ東欧諸国の中では技術先進国です。軍事技術が民生技術をリードしてきたのは、インターネットや飛行機を上げるまでもなく、便利な社会を築いてきました。戦争が人類の進歩にも貢献してきた部分もあります。でなければ戦争は国際法違反として禁止されるべきでは。自衛戦争は許容されると言いますが、線引きできないでしょう。中国に言わせれば、南シナ海も東シナ海も自衛だと言い張るでしょう。
ワイツゼッカーの話もドイツは国として謝罪したわけでなく、全部ヒットラーのせいにして言い逃れしている事実についても触れませんでした。ワイマール憲法下で独国民にヒットラーは選ばれたことを今の独国民はどう思っているのか。
難民の受け入れでメルケルの決断を褒めていますが、100万人も受け入れして大きな問題を抱えたため、支持率は極端に下がったことには触れていません。「独メルケル連立政権の支持率が13年以来最低に=ビルト紙
[ベルリン1月19日 ロイター] – 日刊紙ビルト紙が世論調査会社INSAに委託した調査で、ドイツのメルケル首相(キリスト教民主同盟)率いる、保守大連立政権の支持率が2.5%下がり、2013年9月の総選挙以来最低水準の32.5%になった。同紙が19日伝えた。(ロイター)」とあります。
全般的に理念先行型の発想で、その理想を現実のものにするプロセス構築が弱いと感じました。現実把握が正しくできていないせいと思います。また反権力を貫くためには反共でなければならないことを分かっているかどうかです。でないと銅鑼湾書店メンバーのように拉致されますよと言いたい。民主主義と自由は表裏一体で、自由の中には精神の自由だけでなく、経済的自由も含まれるという事です。
本記事のように為政者の一存で物事が簡単にひっくり返る国でなくて良かったと本当に思います。この自由な国を守るためには、ありとあらゆる手段を使う必要があります。世論戦にも負けないような国際広報も考えて行かないと。ATO(Asian Treaty organization)も発足させたい。なお、周も鄧も、後世墓を暴かれるのを恐れて散骨したと言われています。
記事
華国鋒(右)と毛沢東(写真:AFLO)
2月18日、山西省“交城県”では3万人以上の県民たちが“県城(県政府所在地)”から北へ約3kmに位置する“呂梁人民英雄広場”に建てられた“華国鋒(かこくほう)”の銅像を取り囲むように集まり、当該銅像の取り壊し反対を唱えて気勢を上げた。高さ約10mの銅像は、2月16日が華国鋒の生誕95周年記念日であることから、交城県の県民たちが資金を出し合って建設したもので、1月27日に完成した。しかし、記念日翌日の2月17日に、地元の“交城県政府”は銅像が建設に必要な申請・承認の手続きを経ていないとして取り壊しを命じた。このため、関係当局は銅像を赤い布で覆い、その周囲には取り壊し作業用の足場を組んで、取り壊し作業を今にも開始しようとした。
遺言を残した毛沢東の座像と同じ理由で
河南省の“通許県”では、地元の人々の資金で建設された高さ36.6mの巨大な“毛沢東”座像が、同様に必要な申請・承認の手続きを経ていないことを理由に、竣工を間近に控えた1月7日に取り壊された<注1>。メディアの報道を通じてこの毛沢東座像の取り壊し事件を知る交城県の県民たちは、銅像の取り壊し作業が開始されようとしていることに焦りの色を隠せず、交城県は緊迫した空気に包まれた。県民たちは居ても立ってもいられぬ気持ちで、何としても銅像の取り壊しを阻止しようと、大挙して呂梁人民英雄広場へ集まったのだった。
<注1>毛沢東座像の取り壊し事件については、1月29日付の本リポート「なぜ完成直前の毛沢東座像は壊されたのか」参照。
交城県は、山西省中西部に位置する“呂梁市”の管轄下にあり、黄河を挟んで陝西省と隣接する。交城県の面積は1821km2で日本の香川県(1877km2)とほぼ同じ、人口は約23万人で香川県(98万人)の4分の1に過ぎない。また、同県はこれといった特産品のない平凡な農村地帯だが、中国の重要仏教寺院の一つである“中玄寺”が存在していることで知られる。中玄寺は中国に伝来した浄土宗がその教えを広める起点となったところで、日本の浄土宗や浄土真宗とも関係が深く、日本の仏教界でもその名は広く知られている。
さて、その交城県が誇りとするもう一つの事柄がある。それは交城県がかつて中国の最高指導者であった華国鋒の出身地であるということである。華国鋒は1976年9月9日に逝去した“毛沢東”の後継者として、1949年の中華人民共和国成立以来で唯一、“中国共産党中央委員会”主席、“国務院”総理、“中国共産党中央軍事委員会”主席を兼任して「党」・「政」・「軍」の最高指導者となった人物である。華国鋒は死に瀕した毛沢東が彼に残したとされる「“你辦事,我放心(貴方がやれば、私は安心だ)”」と書かれた遺言を根拠に毛沢東が定めた後継者であると名乗り出て最高指導者の地位を得た。彼は“葉剣英”(当時は国防部長)などの古参軍人の支援を受け、当時権勢を誇っていた「四人組」<注2>を逮捕して、毛沢東が主導した“文化大革命”を終結させた。
<注2>「四人組」とは、文化大革命の中で実権を握った中国共産党中央政治局委員4人(王洪文、張春橋、江青<毛沢東夫人>、姚文元)を指す。
華国鋒は1976年10月7日から約5年にわたり中国共産党中央委員会主席として最高指導者の地位にあったが、「毛沢東が決めた政策を絶対に擁護し、毛沢東の指示に従う」という通称“両個凡是”と呼ばれる方針に固執し、毛沢東に対する個人崇拝を継続し、鄧小平を始めとする“老幹部”の復活を妨害し、経済政策を急ぎ過ぎたなどと批判され、1981年6月28日に党中央委員会主席の職を辞した。その後は党中央委員会委員の職に形式的に留まったが、ほとんど表面に出ることはなく、趣味の書道に没頭する日々を続け、2008年8月20日に北京市で死去した、享年87歳。
但し、伝えられるところによれば、華国鋒は2000年頃に中国共産党を脱退しており、その脱退声明には、「現在の共産党は過去の国民党と区別がない。当時の中国共産党は腐敗反対、専制反対のスローガンを唱えて国民党政府を打倒したが、中国共産党が政権を執ってから50年以上にわたる、一党独裁の堅持、人権の抑圧、国民の自由のはく奪、汚職腐敗、司法の濫用などは当時の国民党政府の比ではない」と述べられていたとされる。
孫文をしのぐ陵墓に非難轟々
それはさておき、華国鋒の葬儀は2008年8月31日に北京市“八宝山革命公墓”<注3>で元国家指導者としての体面を保つ形でしめやかに行われた。華国鋒の遺体は荼毘に付された後、その遺骨は八宝山革命公墓に預けられた。一方、華国鋒は生まれ故郷の山西省交城県に埋葬されることを望んでいたことから、華国鋒の遺族は交城県当局と交渉を重ね、中国政府当局の承認を得て、交城県の景勝地である“卦山(かいざん)”に“陵園(陵墓を中心とした林園)”を作ることを決定した。
<注3>“司局級(局長クラス)”以上の幹部が埋葬される資格を持ち、一般大衆用の“八宝山人民公墓”とは区別される。
2009年に工事を開始した“陵園”は完工を間近に控えた2011年4月に、メディアの記者に公開されたが、その規模は度肝を抜くものだった。華国鋒の陵墓は卦山の南側半分を占め、敷地面積は10ha(=10万m2:標準のサッカー場14個分)と広く、江蘇省“南京市”の“紫金山”にある“孫文(別名:孫中山)”の陵墓“中山陵(敷地面積8万m2以上)”に匹敵する規模だったのである。孫文は台湾では“国父”と呼ばれるが、中国では“中国偉大的民主革命開拓者(中国の偉大な民主革命の開拓者)”と定義付けられ、革命の先駆者として尊敬されている。華国鋒の陵墓はその孫文の陵墓をしのぐ規模であるばかりか、その総投資額は1億元(約18億円)を上回ると、中国メディアは一斉に批判的な記事を報じた。
後に、交城県当局の関係者は、華国鋒墓陵、華国鋒記念館および華国鋒広場の総工事費は2500万元(約4億5000万円)前後であったと述べたが、当時一般大衆の華国鋒陵墓に対する反発は激しいものがあった。このため、交城県政府は華国鋒墓陵を一時的に閉鎖し、当初予定していた“華国鋒広場”の名称を呂梁市に因んで“呂梁人民英雄広場”に、“華国鋒記念館”を“晋綏革命歴史記念館”<注4>に各々変更すると同時に、華国鋒墓陵は呂梁人民英雄広場の一部分とすることを決めた。交城県政府はこれら変更によって華国鋒墓陵に対する世論の反発を躱し、墓陵の一時閉鎖によって嵐の過ぎ行くのを待つ作戦に出たのだった。
<注4>“晋綏”とは「晋(山西省)」+「綏(綏遠省;現内モンゴル自治区の一部)」を指す。
郷土の誇りを、新たな台座に
それから半年後の2011年11月初旬、北京市の八宝山革命公墓から移送された華国鋒の遺骨は、華国鋒墓陵内の石室に収められた。本来は逝去3周年当日に当たる8月20日に納骨式を挙行する予定であったが、庶民の反発により2か月延期されたものだった。こうして華国鋒は、1921年2月16日に出生し、少年時代を過ごし、青年時代は日本軍に対するゲリラ戦を展開した故郷の交城県へ戻ったのだった。彼の墓陵の前に置かれた石碑を兼ねた台座は、彼の名前“華国鋒(Hua Guofeng)”の頭文字であるアルファベットの大文字「H」の形状で、彼が国家の最高指導者となった時の年齢である55歳に因んで5.5mの高さだった。本来、台座の上には高さ10mの華国鋒の銅像が据え付けられる計画だったが、庶民の反発を恐れた交城県政府は銅像の据付を取り止め、すでに完成していた銅像は倉庫内に放置された。
このような状況に心痛めた交城県の県民たちは、郷土の誇りである華国鋒の銅像を本来なら「華国鋒広場」と呼ばれるべき「呂梁人民英雄広場」に建てたいという思いを募らせた。そこで、県民たちは、墓陵前の台座に銅像を据え付けることがいけないなら、呂梁人民英雄広場に新たに台座を作り、その上に放置されたままになっている華国鋒の銅像を据え付ければよいという結論に至った。華国鋒の生誕95周年に当たる2月16日以前に銅像の据付を完成させることを目標に、華国鋒の親友たちが中心となって地元に商人たちの支援を受けて資金集めを行い、呂梁人民英雄広場の中心に台座を建設した。こうして1月27日、呂梁人民英雄広場に新たに建設された台座の上に華国鋒の銅像が据え付けられた。県民たちはその威風堂々たる華国鋒の銅像を目にして、郷土の偉人に対する尊敬の念をより深いものとしたのだった。
ところが、上述したように、交城県政府は建設に必要な申請・承認の手続きを踏んでいないという理由で、2月17日に華国鋒の銅像の取り壊しを命じたのだった。
取り壊し反対の声は「削除」
これを知った県民たち1万人以上が「華国鋒の銅像を守れ」の合言葉の下、交城県の県城内のデモ行進を行った上で、呂梁人民英雄広場に集まって「取り壊し反対」の集会を開いた。翌18日には早朝から3万人もの県民たちが呂梁人民英雄広場に集まって「反対」の気勢を上げた。県民たちの一部は当局によって派遣された警察部隊と衝突し、双方に負傷者を出すに至った。同日午後、“交城県党委員会”副書記の“李義祥”は県民の安全を考えて、18日中の取り壊しは行わないと表明した。また、その後、交城県政府は文書を公布して、県民に対して銅像は必要な手続きを経ていないため取り壊さざるを得ない旨の説明を行った。李義祥は、「銅像取り壊しの命令は上部からの指令であり、交城県党委員会ならびに交城県政府は何も言えない立場にある。上部の説明は銅像の建設には手続きが必要であると述べただけだった」とメディアに語ったという。
2月19日を境に、華国鋒の銅像の取り壊しに関する報道もネット上の書き込みも一切見当たらず、その後の銅像の状況については何も分かっていない。恐らく報道管制が敷かれ、ネットも規制されて、書き込みは削除されているものと思われる。銅像取り壊しが上部からの指令である以上は、たとえどんなに交城県の県民たちが取り壊しに反対を唱えようとも、最終的には銅像は力ずくで取り壊されたと考えざるを得ない。当初、華国鋒の遺族が交城県に陵墓の建設を相談した際に出した条件は、「農地を占用せず、古跡を破壊せず、環境を破壊せず、住民と土地を争わず」の原則で、荒地に埋葬すれば良いというものだったにもかかわらず、交城県が墓陵の規模を必要以上に巨大化したことが、その後に発生した全ての問題の出発点となったのだった。
それなら、華国鋒の銅像が取り壊された真の理由として考えられるのは何か。
習近平以外には考えられない
【1】華国鋒銅像の取り壊しを命じたのは、河南省通許県の毛沢東座像と同様に「上部」であった。華国鋒は毛沢東と同様にかつての国家最高指導者であり、その銅像の撤去を命じることができるのは、現在の最高指導者である中国共産党総書記の“習近平”以外には考えられない。しかも、華国鋒銅像は毛沢東の様に全国各地に多数の像が建てられているのと違い、恐らく交城県の銅像が唯一の物と思われるのに、その像すらも建てることを認めないのはどうしてなのか。
【2】上述したように、生前の華国鋒が中国共産党を脱退していたという事も、一つの要因と言えるのかもしれない。中国共産党を脱退し、その際に中国共産党を批判する声明を発表したことが事実ならば、華国鋒を賛美する象徴となるような銅像を建てることを認めるわけには行かない。
【3】華国鋒には隠された秘密があると言われている。それは彼が毛沢東の隠し子であったという噂である。毛沢東が女癖の悪い人物であったことはすでに周知の事実となっているが、1920年に毛沢東が湖南省“長沙市”に滞在中に知り合った“姚”姓の女性もそのうちの1人であった。この女性は山西省交城県から長沙市へ来ていた「たばこ商人」の娘で、1921年に故郷の交城県で毛沢東の子供を出産した。それが華国鋒であったという。華国鋒は、中華人民共和国成立直後の1951年には毛沢東の故郷である湖南省“湘潭県”の党委員会書記に任命されたのを皮切りに出世階段を駆け上ることとなる。なお、華国鋒の湘潭県党委員会書記在任中に、毛沢東は都合9回湖南省を訪れたが、その度に華国鋒との面会を手配させたという。
【4】これなら、毛沢東が上述した遺言を華国鋒に残した理由が説明できる。また、2002年12月26日、華国鋒が毛沢東の娘たちと共に北京の天安門広場にある“毛沢東記念館”を訪れて、毛沢東の冥福を祈った際に、彼が持参した花輪には「忠実な息子国鋒哀悼」と書かれていたという。花輪はその後すぐに撤去された。
【5】華国鋒が毛沢東の私生児だったとすれば、毛沢東が華国鋒に残した遺言は父から子への政権の世襲を意味することになり、北朝鮮の世襲統治に異を唱える立場の中国にとっては極めて都合が悪い話である。さらに、中国にとって毛沢東は革命の指導者であり、国家の偉人であり、神に等しい存在である。そんな人物なのに、女癖が悪いばかりか、非嫡出子までいたとなっては、国家の体面にも関わる問題となる。それなら、華国鋒には静かに交城県の墓陵で眠ってもらい、人々の目に触れる銅像などは建てないに越したことはないという結論に達するのである。
なお、話のついでに、中国の国家指導者の死後について述べると以下の通り。
【毛沢東】中国の指導者の中で最初に火葬を推奨したのは毛沢東だったが、その本人の遺体は永久保存処理を施されて毛沢東記念館の中に安置されている。皮肉以外の何物でもない。
【周恩来】生前の遺言「遺骨は保存せず、まき散らせ」に従い、遺骨は4分割され、北京市や天津市など4地点の上空からまかれた。
【鄧小平】生前の遺言「角膜は寄贈、遺体は解剖、遺骨は保管せず、海へまく」に従い、遺骨はその希望である“回帰大海(海に帰る)”を実現して海にまかれた。
3/3日経ビジネスオンライン 山田泰司『中国経済異変!昼の町に立ち始めた夜の女たち 城壁廃止議論の中、路地裏文化の勃興か不景気の顕在化か』について
上海では街並みを見るときに「弄」という文字を良く見かけました。「中国上海市长宁区古北路60弄2号501室 200051」=” 2-501, 60 Gubei Road Changning 200051 SHANGHAI P.R. CHINA”と表記されます。200051は邮政编码(郵便番号)です。「弄」はさしずめ日本で言う「丁目」に相当すると思います。上海には「魯迅公園」もあり、「内山完造」も住んでいました。日本と中国が仲が良かった古き良き時代です。
魯迅旧居
内山書店跡
また「社区」というのもあり、本記事にあるようにそこで生活が完結できるような仕組みもありました。監視社会を徹底させるためだと思いますが。
街娼は中国では床屋が多く、近くを通ると女性が呼び込みしていました。当時は10元くらいだったような気がします。汚いので近づかないようにした方が良いでしょう。またホテル(外資系でも)のロビーにそれらしき人が屯しておりました。この人たち以外を外から持ち込むと、通報され、公安による逮捕、パスポートに破廉恥を意味する「恥」のスタンプが押されるという話を聞いたことがありますが、見たことはありませんので真偽のほどは分かりません。
中韓とも今現在売春婦がこれだけたくさんいるのに70年以上の日本の慰安婦を非難します。キチンと反論しなければ汚名を雪ぐことはできません。米軍の7年に亘る調査結果や朝日新聞の誤報で強制性を裏付けるものはない=強制性はなかったことをもっと強烈に主張すべき。従軍慰安婦の概念で言えば、解放軍施設の中に一杯慰安婦はいます。
記事
上海の一般的な住宅。通りに面してごく小さな入り口があり、その奥に住居が広がっている。通りからは奥にこれほどの広がりのあるスペースがあるとは想像できない(上海市内)
日本文学史に残るそうそうたる作家たちが書き残した日本以外の国の町、という点で、上海は他の町を圧倒しているのではないだろうか。
ロンドンに船で留学に向かう途中に寄航した夏目漱石が、新聞社の視察員として訪れた芥川龍之介が、父の赴任先を訪れた当時17歳の永井荷風が、杭州に駐留する火野葦平に芥川賞を授ける使命を帯びてやってきた小林秀雄が、愛人に傾く妻の気持ちを再び自分に向かせるために夫婦で旅立った金子光晴が、日記、エッセー、小説とスタイルはさまざまだが、当時の上海を記録している。金子光晴が、じっと何かを考え込んで1時間も動かない魯迅を見かけた横浜という名前の橋や、永井荷風が庭園の壮麗さに打たれた豫園など、当時の面影を今も残す場所は少なくない。
これら作品の収録された文庫本や電子書籍の入ったスマホをガイドブック代わりに散歩するのに、上海は格好の町である。残念なことに最近は、PM2.5等の大気汚染がひどすぎない日ならば、という条件付きだが。
中国には路地裏が存在しない
ただ、上海、そして中国の町歩きでもの足らないなと思うこともある。それは、裏通りや路地裏、横町を歩く楽しみがないことだ。中国には表通りしかなく、裏通りや路地裏が存在しないのである。
こう言うと、上海や北京を知っている人の中には、「何を寝ぼけたことを。裏通りや路地裏ならそこらじゅうにあるじゃないか」「北京の胡同こそ裏通りではないのか」と指摘する向きもあろう。しかし、中国の都会にある道路は、道幅が広いか狭いかの違いだけですべてが表通り。上海や北京にも裏通りや路地裏があるという人が頭の中に思い浮かべているのは、ただ道幅が狭いというだけで、表通りに過ぎない。
中国の町に路地裏や裏通りが存在しない理由は、住宅の構造にある。
中国は古来、囲う文化である。町全体を城壁で囲い、一族や共同体の住む複数の住居を壁で囲う。町を城壁で囲うことで外の世界と遮断し、住宅の四周を壁で囲むことで、一族以外の人間や、通りがかりの見知らぬ人物の侵入を防いできた。住宅の中に入るにはいったん、通りに面した門をくぐって囲いの中に入り、中庭などを通ってようやく自分の家の玄関にたどり着くというスタイルである。
高層の集合住宅の入り口と、中庭の様子。四方を囲む形にして外部と遮断し通り抜けできないようなスタイルにしている(上海市内)
町造りや住居造りにおけるこのような精神やスタイルは、現代に至るまで脈々と受け継がれてきた。こうした住宅群の中には数百戸、数千戸が入居する大規模なものもあるため、囲いの中に学校、スーパー、病院、銭湯、美容院、レストランなど生活に必要なものがそろっていて、壁の外に出なくても最低限の用が足りるようになっている所もある。
こうした居住区の中にある小さな路地が、壁で囲う文化のない都市における路地裏、裏通り、横丁に相当するものなのだろう。ただ、囲いの中の路地には、閉鎖された他人の空間に入っていくような居心地の悪さと、あくまで壁で守られた生活の空間という予定調和の空気が流れている。無防備に外界にさらされている場所に自然発生的に形成された路地や裏通り、横丁で感じる危うさやスリル、ドキドキ感やワクワク観が、囲いの中には欠如しているのだ。
城壁文化廃止の論争
さて、住居群を壁で囲って住人以外の出入りを制限する居住区を形成することで困るのは、誰でもが通行でき利用できる一般道の数が少なくなることである。壁や壁代わりの商店で四周を囲った四角い積み木のような居住区をすき間無く敷き詰めた結果、行けども行けども次の道との交差点にたどり着かない町が出来上がってしまったというわけだ。
その中国で今、壁で四周を取り囲むスタイルの居住区――中国語では「封閉式小区」と呼ぶ――を禁止しようという動きが持ち上がっている。
提案しているのは中国共産党中央と中国政府だ。今年の2月下旬、これから新たに開発する住宅については壁を設けず、居住区の敷地内を通る道路も、クルマと人の往来を自由にさせようというのがその内容。さらに、既にある居住区についても、段階的に壁を取り払って誰でも自由に通り抜けできるようにしていくことを目指すという。
当局が理由として挙げているのは、誰でも通れる一般道を増やすことによる交通渋滞の緩和。なかなか解決の糸口がつかめないPM2.5をはじめとする深刻な大気汚染も、交通渋滞が元凶の1つだから、理由としてはごくまっとうなものだと言える。
上海市内の住宅。中央の通りを挟んで右側と左側は別の団地。だが、塀と門で遮り、中央の道を一般車両や住民以外の通り抜けをできないようにしている(上海市内)
ただ、中国の庶民は当局の説明を額面通りに受け止めてはいない。当局の真の目的は土地に課税することにこそあるというのである。それはこういうことだ。現在、壁で囲っているがために公共の場所扱いになっている花壇などの公共スペースを、壁を取り払うことで個人に分け与える。そこを私有財産と見なして課税し税収を増やすことにこそ真の目的がある、というわけである。
また、人やクルマの通り抜けを認めることで事故の確率が増すなど安全が確保されなくなると反対する声も上がっている。
壁撤廃の議論は始まったばかりであり、当面見送りとされたり、強い反発に遭って廃案になったりする可能性だってある。ただ、町ごとすっぽり取り囲む城壁は取り壊しても、住居を囲うことだけは頑なに守ってきた中国で、これが撤廃されることになれば、それはやはりエポックメイキングなことだと言えるだろう。自分の周囲を囲うことで培い積み上げてきた文化や思想、習慣にも変化が生じるかもしれない。なにより、壁の撤廃により、路地裏や裏通りの文化が中国に出現するかもしれないのだ。
昼日中の都心に大量出現した街娼の衝撃
これはなかなか面白いことになってきたと1人興奮した私は最近、壁で取り囲む居住空間を改めて観察してみようと、時間を見つけては地下鉄に乗り、いくつかの住宅を見て回っている。
そうした最中である。さる都心部の居住区で目を疑う光景を目の当たりにしたのは。日曜日の昼下がり、上海の中心部の住宅街に、街娼が立っているのを見つけたのである。それが1人や2人だったなら恐らく気付かなかっただろうし、その程度の人数なら、高級ホテルの入り口付近で見かけたこともあった。ところがその居住区では、この通りに4~5人、隣の通りに7~8人、その隣りにまた4~5人と、一目でそれと分かるほどの人数が立っていたのだった。
街頭で客引きする女性ら(上海市内)
その後、彼女らの立つ通りを歩いてみたところ、何人かが「遊んでいかない?」と声をかけてきた。料金は最低50元(約850円)から、とのことだった。あまりの安さに衝撃を受けた。年齢は20代と思しき人もいたが、40代前後が最も多いように見えた。
そこは、再開発が決まって住民の立ち退きが始まり、一部では取り壊しが既に始まっている集合住宅の集まる居住区だった。元々はそこも四周が壁で囲まれていたようだが、囲いの中に出入りするための門が取り払われていた。建物と建物の間の道が人が2人すれ違うのがやっとというほど狭いのでクルマは進入できないが、人は自由に往来し通り抜けているようだった。私はここに2日通ったのだが、2日目には立ち退きを渋る住民を追い出しに来たと思しき目つきの鋭い若者たちが20人ほどたむろしていた。
それらの光景を見て私はまず、取り壊しのどさくさでこの居住区に不法組織が入り込み、彼らの仕切りで女性たちを立たせて商売させているのではないかと考えた。
地上げ屋の仕切りではない
ただ、待てよ、である。
住宅の解体業者で働く友人がいることもあり、私はこれまで、取り壊しが決まって住民が立ち退きを始めた居住区をいくつも見てきた。しかし、そこに街娼が白昼堂々、1人や2人でなく10数人、しかも都心部と言っていいエリアに出現するなど、少なくとも私は初めて見たし、そのような現象が起きたということも寡聞にして知らない。そして、地上げの若者たちが滞在していた2時間ほどの間、街娼たちはどこかに姿を消し、彼らが立ち去ると再び町角に立った。これを見ても、地上げの若者らの組織が街娼たちを仕切っているのではなさそうだ。
さらに、取り壊しの居住区からワンブロックほど離れた通りで、建物の影に隠れるようにして立ち客を引く何人かの街娼の姿も認められた。そこは、路線バスが通るような大きな通りに面した場所だ。
共産党が厳しく統制している国という印象のある中国、そして上海にも、もちろん(と言うのが適当なのかどうかはさておき)、風俗店はある。日本のように公然と風俗店を名乗ってはいないが、ナイトクラブやカラオケ、サウナ、足裏マッサージ店の看板を掲げている店の中には性風俗のサービスを提供する店がごまんとある。また、中国語圏では一部の床屋が風俗店の役割を果たしていて、町中に点在している。店の外に漏れる照明が薄暗かったり紫色など怪しい色だったり、店の中の様子をのぞけるように入り口のドアの磨りガラスが一部だけ素通しになっていたりするので、風俗床屋だということは一目で分かる。
アフリカ出稼ぎと街娼の共通点
調べてみたところ、街娼が立っていた居住区からさほど離れていない場所に、風俗店が比較的多いことで知られるスラム街があることが分かった。ただそれらが営業するのは店の中、建物の中でのこと。繰り返すが、上海の都心で昼日中、何十人もの街娼が立つなどということはこれまでに無かった。性風俗に携わる彼女らが、表に出てきたのはなぜか。そうした現象を発生させる何らかの変化が起きているのではないか。
すると、アフリカで働く中国人のことを調べている研究者からこんな話を聞いた。アフリカで働く中国人の出稼ぎ男性を相手に性のサービスを提供するためにアフリカに渡る中国の女性たちが存在するのだが、半年ほど前から渡航する数が、男性、女性とも増え始めているようだと。そして、その中心がアラフォー世代だということ。そして、増加している背景には、不景気があるようだということだった。
中国では、高卒や専門卒、あるいはそれ以下の学歴の人たちは、35歳を過ぎると途端に仕事が見つからなくなる。アパレルや飲食店の店員にも採用されない。男性であれば50歳を過ぎると警備員でもなかなかなれない。そうした女性たちの選択肢の1つに家政婦があるのだが、不景気の影響でここ2~3カ月、家政婦の口が減り始めているということは、前々回のこのコラムで書いた。
囲いが取り払われた居住区の路地に突如として出現した大勢の街娼たち。その姿はまるで、中国経済の軋みでできた城壁のひび割れから押し出されたかのようだが、家政婦の仕事を見つけるのも困難になった女性たちが、ある人は上海の町角に立ち、ある人はアフリカに渡る決断をしているということの現れであり、景気が確実に悪くなり始めていることを示すものなのだろう。さらに、囲いがなくなり往来が自由になると、このような光景の路地裏が中国の他の居住区にも誕生するだろうということを予見させるものでもある。










