『マイナス成長危機と北戴河「習・李」戦争  編集委員 中沢克二』(8/17日経電子版)について

8/17 ZAKZAK尖閣で暴走する中国漁船の正体は“海上民兵”だった 訓練を受けた百人以上が乗船

沖縄県・尖閣諸島周辺海域に、中国海警局の公船とともに、約300隻もの漁船が連日のように押し寄せているが、この中に軍事訓練を受けた100人以上の海上民兵が乗り込んでいることが分かった。武装をしている可能性も高い。日本政府は、中国の暴走を防ぐためにも、万全の態勢を整える必要がありそうだ。  衝撃のニュースは、産経新聞が17日報じた。  海上民兵とは、退役軍人などで構成される準軍事組織で、警戒や軍の物資輸送、国境防衛、治安維持などの役割を担う。中国の軍事専門家によれば、現在の総勢は約30万人という。  他の漁民を束ねるとともに、周辺海域の地理的状況や日本側の巡回態勢に関する情報収集などの任務を担っている。海警局の公船などと連携を取りながら統一行動をとる。今回の行動のため、福建省や浙江省で海上民兵を動員して軍事訓練を重ねたとされる。  常万全国防相も出発前の7月末、浙江省の海上民兵の部隊を視察し、「海上における動員準備をしっかりせよ。海の人民戦争の威力を十分に発揮せよ」と激励した。

帰国後は政府から燃料の補助や、船の大きさと航行距離、貢献度に応じて数万~十数万元(数十万~200万円)の手当てがもらえるという。  中国・杭州では9月、習近平国家主席が議長を務めるG20(20カ国・地域)首脳会議が開かれる。ここで、南シナ海問題が議題にならないよう、尖閣問題とすり替えるために挑発を高めているとの指摘もある。  海上保安庁だけでなく、自衛隊の総力を結集して、尖閣強奪を許してはならない。>(以上)

8/17 ZAKZAK 南シナ海暴走で「G20から中国追放」論浮上 習主席の要請にあきれる参加国

中国の習近平国家主席が「失脚危機」に立たされている。浙江省杭州で来月、自身が議長を務めるG20(20カ国・地域)首脳会議が開かれるが、南シナ海での傍若無人ぶりにG7(主要国)から批判が噴出し、「G20からの中国追放」まで検討されているという。ジャーナリストの加賀孝英氏の衝撃リポート。  まず、米情報当局から得た極秘情報を報告しよう。  「習氏は最近、『私に恥をかかせるのか!』と、周囲に当たり散らしている。経済も外交も行き詰まり、荒れている」  中国は9月上旬、G20首脳会議を開催する。習氏にとって一世一代の晴れ舞台だ。だが、その裏で中国は参加国に対し、極秘裏に以下の要請をしている。  「G20では次の4つを議論したい。『構造改革』『貿易と投資の推進』『世界経済の成長維持』『国際金融の枠組みの強化』だ。南シナ海など安全保障問題は取り上げないでほしい」  この7月、オランダ・ハーグの仲裁裁判所は、南シナ海をめぐる中国の主張を「まったく根拠がない」と完全否定した。中国はこの裁定を「紙クズだ」と無視し、今も人工島の軍事基地化、南シナ海の強奪という暴走を続けている。国際法の順守を求める各国には、武力で恫喝した。許されざる無法国家ぶりだ。

もし、G20で南シナ海問題が取り上げられたら、中国は袋だたきになり、習氏のメンツが潰れる。晴れの舞台が「恥の舞台」になり、習氏の失脚にもつながる。前出の要請は、取り上げないでくれと、裏で泣きついているということだ。ふざけるな、だ。  南シナ海は世界有数のシーレーンだ。安全保障上も、世界経済的にも、G20の重要課題ではないか。それを自分勝手な理由で外すなら、中国に議長国の資格はない。外務省関係者がこういう。  「参加国の中から『南シナ海問題を議題にしないならG20の意味はない、中国を外してG19を開催すべきだ』という強硬意見が出ている」  当然だ。問題は南シナ海だけではない。中国は卑劣にも、わが国固有の領土、沖縄県・尖閣諸島も狙っている。  海警局の公船が、尖閣周辺の接続水域や領海に連日のように侵入し、果ては、海上民兵が乗り込んだとみられる約300隻もの中国漁船が集結、一時は「8月15日、尖閣上陸」情報まで流れた。はっきり言おう。中国は間違いなく尖閣奪取で暴走する。  G20では、南シナ海とともに、東シナ海での中国の暴走も、断固議題に乗せるべきだ。  ■加賀孝英(かが・こうえい) ジャーナリスト。1957年生まれ。週刊文春、新潮社を経て独立。95年、第1回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞受賞。週刊誌、月刊誌を舞台に幅広く活躍し、数々のスクープで知られている。>(以上)

加賀氏の言うようにG20で南シナ海だけでなく、東シナ海も採り上げるように日本は行動すべきです。基本は「相手と同じことをする=同害報復」の考えです。相互主義が外交の基本でしょう。中国は日本の嫌がることをしているのですから、日本も同程度中国の嫌がることをすれば良いのです。ビビッては負けです。G20の議題の他に、尖閣付近に国際石油開発帝石にリグを建てさせ(政府負担であっても良い)、そこにXバンドレーダーを設置とか、米軍が中止している射爆場の再開、尖閣に公務員の配置、オスプレイ配備とか考えればいくらでもあるでしょう。勿論、米軍と一体となって活動しなければなりませんが。

中沢氏の記事で、経済政策だけを見れば、李首相の方が習主席より正しいと思っています。いくら社会主義市場経済(自家撞着の言葉ですが)と言っても、永遠に借金を続ける訳には行きません。昨日の小生のブログで触れたように、借金返済の方法は、徴税orインフレorリストラです。李首相は徴税&インフレは国民の反感が大きくなるし、此のまま成長戦略を続けても実需がないのでバブルが大きくなるだけと判断したのでしょう。中国経済が大きくなれば軍事予算もそれに連れて大きくなります。日本企業或は日本人が中国の経済を助けることは利敵行為です。尖閣がここまでやられても気づかないというか気付いても自分の利益の為だけでしか動かないというのであれば、情けないというか日本人を止めた方が良いのでは。在留邦人の人質化も考えられ、中国から撤退すべきです。

習近平は「遠華事件」にも関与したと言われています。中国共産党の要人で腐敗していない政治家は当然いません。福島香織氏の2011年の記事を載せます。(URLだけでは日経ビジネスオンライン会員にならないと見れませんので)。現在頼昌星は生きているのか死んでいるのか分かりません。獄中で暗殺され、生きていることにされているかもしれません。カナダ政府が中国に「死刑にしない」事を要求して送還に応じました。中国政府が約束を守るはずがありません。況してや習の腐敗を知っている人間であれば。カナダ政府は甘いとしか言いようがないでしょう。「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という国です。頼をカナダに留めておけばカードとして使えたでしょうに。

2011年7月27日 日経ビジネスオンライン 福島香織『汚職摘発は政争とセットになっている 頼昌星の中国送還、ターゲットは習近平か』について

頼昌星氏が中国に送還された。これが、どういう意味を持つのか、どういう影響を与えるのか。前国家主席の江沢民氏の死亡説や復活説が流れているこの最中に思い出したように持ち上がった彼の帰国劇なのでやはり政治的意味や影響を勘繰らざるを得ない。

頼昌星氏という名前をご存じない人もいるだろう。新中国建国後最大規模の汚職事件と言われた「遠華密輸事件」の主犯とされる人物で、カナダ・バンクーバーで難民申請をし、却下され続けている。

遠華とは彼が総裁を務めた企業集団「遠華集団」から取った名で、密輸事件はアモイを本拠地とするこの貿易会社が舞台となった。この会社は1994年に創設。不正に得た金額が96~99年にかけて少なくとも530億元(800億元という説も1000億元という説も)に上る官ぐるみの関税脱税事件である。

密輸といっても、酒やたばこみたいな可愛いものだけではない。外車や石油製品といった大物を軍艦に護送させ、ごっそり密輸するといったスケールだ。石油製品については、当時中国で使用される石油の25%がこのルートで国内に入って来たと言われ、この事件の摘発後にガソリンが値上がりした、というほどだった。

役人や軍人を接待する場所として通称「紅楼」と呼ばれた赤茶色の7階建のビルが用意された。その中で、党の幹部や高級官僚や軍人は選りすぐりの美女の“特別接待”を受け、その美女らとのあられもない姿を盗撮し、協力要請を引き出す材料にしていたと言われる。

帰国すれば死刑にされるか、殺害される

この事件発覚後、1000人以上の福建省、アモイ市、中央、軍の高官らが関わったとして取り調べを受け、うち20人が死刑、または執行猶予付き死刑判決を受けた。事件捜査の指揮をしていた李紀周・公安次官を筆頭にアモイ市党委副書記、アモイ税関長、アモイ副市長などアモイ市幹部(いずれも当時)など、軒並み死刑か執行猶予付きの判決を受けた。

一方、主犯の頼氏は香港パスポートを持っており香港から家族とともにバンクーバーに逃げおおせた。中国はカナダに彼を引き渡せと言い続けてきたが、カナダ政府は引き渡せば彼が死刑は免れないと思うと、なかなか引き渡せずにいた。頼は帰国すれば死刑にされるかあるいは獄中で殺害されるとして、難民申請を続けてきた。

私が北京に記者として赴任した2002年は、カナダで移民法違反で逮捕された頼氏が中国に送還されるのか、されないのか、一番もめていた頃である。当時のクレティエン首相は人道的立場もあって、送還拒否の姿勢を示したが、その後何度か送還問題が蒸し返されている。

問題が蒸し返されるときは決まって、胡錦濤氏と上海閥との権力闘争が激化したときである。例えば、胡氏が上海閥のプリンスと呼ばれた陳良宇・前上海市党委書記を汚職の名のもとに潰した時期の2006年秋ごろである。

確実に失脚する人間は10人以上いる

頼氏が12年もカナダにいられたのは、彼が中国に送還してくれるなとカナダ政府に申請し続けたこともあるが、中国にも頼氏に帰って来てほしくない人たちが結構いるからだ。頼氏が中国で再度取り調べを受けて、知っていることを洗いざらい吐いてしまえば、中央委員クラス以上で確実に失脚する人間は10人以上いる、と言われている。

その1人が政治局常務委員の賈慶林・全国政治協商会議主席だ。

賈慶林氏は元福建省党委書記。96年、陳希同事件(江沢民氏の政治闘争を背景とする汚職事件で、当時の陳希同・北京市長が免職、有罪となった)で空白となった北京市長の椅子に、江沢民氏に引っ張られて座った。

その妻の林幼芳氏は元福建省外国貿易局党委書記で、北京に来てからは北京の不動産業界の顔役でもある。遠華事件発覚当時、この賈慶林夫妻が事件の黒幕、との噂もあったが、江氏がもみ消した、と言われていた。

遠華事件では、軍部が深く関与していたことが暴露され、当時の軍の重鎮であった劉華清氏らの力を削ぐことになり、江氏の軍掌握に利用されたという。汚職摘発は政争とセットになっているものなのだ。

江沢民氏の政治的命数が完全に尽きた

遠華事件がまさに進行していた当時、福建省副書記を務めていたのは、来年秋には胡錦濤氏の後をついで党中央総書記および国家主席の地位に就くと言われている習近平氏である。党中央紀律委員会書記の政治局常務委員、賀国強氏は97年から福建省長を務めていた。いずれも江氏の腹心の上海閥メンバーである。

主要関係者が死刑になった今なお事件の真相を知り、その証拠も持っているのが頼氏だ。この人物が帰国し証言すれば、この3人は何らかの影響を受けるはずだと言われている。江沢民氏はじめ上海閥にとっては、本音のところでは、頼氏が秘密を守ってくれるのであれば、永遠にカナダにとどまってもらって一向に構わないはずである。

逆に頼氏に戻ってきてほしいのは、江氏の政敵である。陳良宇事件で徹底的に上海閥をつぶそうとしたにも関わらず、徹底しきれなかった胡氏は、だから2006年にカナダ政府に水面下で働き掛けて頼氏送還話を蒸し返した、と当時は言われていた。しかし、司法の元締めである周永康氏、賀国強氏ともに江沢民派であり、胡錦濤氏も状況を思うままには動かせなかった、ということになる。

来年秋に第18回党大会を控え、次期中央指導者の人事がこれから佳境を迎えようとしている時期に、頼氏が送還されたことは、まず1つのことを示しているだろう。江沢民氏の政治的命数が完全に尽きているという点だ。そして、その結果、習近平氏の地位が盤石でなくなってきたかもしれない、という指摘もある。

香港の蘋果日報紙は、北京筋の話として、胡錦濤氏は4月に江沢民氏が危篤になったという情報を受けて、早くもカナダ政府に対し、頼氏の送還について、死刑にしないことを約束した上で、水面下で働き掛けていた、と報じた。さらに頼氏の帰国によって行った犯罪の全貌が明かされれば、「習近平氏は少なくとも政治責任を問われることになるだろう」と論評している。

“山を叩いて虎を震えさせる”作用

在米の華人政治評論家である陳破空氏は、「胡錦濤氏にとっては少なくとも“山を叩いて虎を震えさせる”作用がある」と語り、政治的駆け引きの材料だと見ている。

おそらくは頼氏は、送還されたなら死刑を回避してもらった代償に、賈慶林氏らに上海閥に不利な証言を胡錦濤氏側に提供するかもしれない。だが、それは公開されずに、次期中央指導者グループの人選や序列を決める上での切り札の1つとなるだろう。

以前に陳氏が米国筋からの情報として私に語ったところによれば、習近平氏が浙江省党委書記に昇進した時、致命的な汚職関与の証拠は見つからなかった、と判断が下されていたという。つまり、胡氏は習氏については今のところ、その弱点を握っていないとか。

習氏は慎重な人物らしく、事件後は慎ましやかな暮らしをアピールし、党内の人間関係においても敵を作らないように心がけてきた。しかし、中国の地方官僚機構の性質を鑑みると、遠華事件ほどの大規模汚職について当時の省幹部がまったく認知していなかったとは考えにくい。賈氏と習氏が福建省時代、非常に緊密な関係であったことは周知の事実だ。

頼氏が何らかの情報をもっていれば、それを切り札に、習氏に揺さぶりをかけることができるし、たとえ頼氏も何も証拠を持っていなくても、持っているふりをすることで駆け引きができる。「ターゲットは習近平氏だ」と陳氏は見る。

もっとも江沢民派の本当の実力者は、「太子党」(2世政治家集団)の代表であり、現役を引退しながらも政界・経済界に太いパイプを持つ曾慶紅氏だとも言われる。だから、江氏の影響力が衰えても、習氏を立場を変えることは難しい、という意見もある。だが、例えば、胡錦濤氏が目をかけている内モンゴル自治区党委書記の胡春華氏を習近平氏の後継ポジションにつけさせるかどうかくらいの駆け引きはできるのではないだろうか。

14人は権力闘争の生贄

中国では官僚汚職というのは、ある意味、常態である。庶民の味方として根強い人気のある温家宝首相でさえ、その息子や妻の汚職問題は公然の秘密としてささやかれてきた。比較的クリーンと言われてきた胡錦濤国家主席も、その息子の胡海峰氏が経営する企業がある種の利権にあずかっていることは否定できない。

また、「打黒唱紅」という汚職撲滅と毛沢東礼賛をセットにした政治キャンペーンで最近、存在感をにわかに高めている薄煕来・重慶市党委書記も、大連市党委書記や遼寧省省長時代に汚職の噂があった。

中国官僚が当然の権利のようにあずかるこれら利権は、日本の司法の基準で言えば、すべて汚職と言っていいが、中国の高級官僚の汚職が事件として表面化するのは、司法が健全に働いた結果ではなく権力闘争が背景にある。

そう考えると、遠華事件で死刑が執行された14人は、法に裁かれた犯罪者というよりは権力闘争の生贄と言うべきか。この事件の主犯の頼氏が、中央指導者らの命運を握る情報を切り札に生き抜いてきたのを見れば、一番罪深い人間ではあるが、ある意味あっぱれと思わずにはいられない。

ここまで生き抜いたのだから、あとは中国で不自然な獄中死などしないように、願うばかりである。>(以上)

習・李どちらが勝っても、人民解放軍にブレーキはかけられないでしょう。抑えるには予算を削るしかありませんが、高橋是清のように暗殺される可能性もあります。そこまで踏み込めないでしょう。という事は中国と戦争状態がずっと続くという事です。今は戦闘状態にありませんが、何時火を噴くか分かりませんし、中国は韓国を手先に使い、日本に歴史戦・世論戦を仕掛けている状況ですから。これが理解できない日本人は平和ボケとしか言えないでしょう。とくに政・官・財のリーダー達は「中国は敵国」と言うのを心に刻み、そのように行動すべきです。

記事

どこまでも広がる中国東北部の緑のトウモロコシ畑を抜けるといきなりスモッグに包まれた街に入った。遼寧省の鉄鋼の街、鞍山市である。32度を超す暑さなのに太陽さえ見えない。今、この街は中央政府が旗を振る産業構造改革に伴う鉄鋼の生産能力減産で大揺れに揺れている。

■遼寧省の落ち込み

遼寧省鞍山市の中央国有企業、鞍山鋼鉄集団公司の2015年の粗鋼生産量は世界鉄鋼協会によると3250万トンで、世界第7位である。

中国政府が示す20年までの鉄鋼生産能力の削減目標は1億~1.5億トン。そのうち今年の目標は4500万トン減としている。日本の粗鋼生産の半分弱というとてつもない大きさの削減である。これを達成するには、東北の主力重工業地帯、遼寧省だけでも数百万トンも削る必要がある。

Anshan steel

重工業に頼る遼寧省の経済はマイナス成長に(減産を迫られる鞍山市の鞍山鋼鉄)

既に削減は始まっている。鞍山鋼鉄の関連会社で働く40代の男性は「首を切られず、前より少なくても給与をもらえれば良しとしなければならない」と苦笑いする。鞍山市の商店街も空き店舗が目立つ。

遼寧省の省都、瀋陽でも新しいオフィスビルがなお建設中だが、完成しても借り手は極めて少ない。それは経済統計からみても当然だった。

16年1~3月の遼寧省の実質経済成長率は前年同期比でマイナス1.3%――。

遼寧省が他の省より遅れて発表した数字は衝撃的だった。全国では6.7%の成長率なのに東北経済の中心地、遼寧省はマイナス成長になったのだ。1~6月でみても1%強のマイナスだという。

既にその兆候は昨年から表れていた。石炭、マグネサイトなど鉱産品の出荷に頼ってきた遼寧省の一部地域は、マイナス10~20%という信じがたい数字になっている。

8月上旬、日本記者クラブ取材団の一員として中国を訪れた。遼寧省新聞弁公室副主任の張紹瑞は、記者団の質問に「石炭1トンでアイスクリームひとつの利益もない。撫順(の炭田)は既に減産を進めてきた」と紹介。一方で「遼寧省経済は下半期から回復基調が見込まれる。来年、再来年はさらに楽になる」と自信を示した。

おかしい。生産能力の削減は今年、ピークを迎えるはずだ。鉄鋼の生産能力の削減を巡っては中央政府の指示を忠実に実行するなら、年後半から回復するというのは信じがたい。

もし、本当に底を打つなら、2つの可能性がある。1つは中央の目標を無視し、実際には生産を削減していないか、逆に拡大している場合だ。もう1つは確かに生産を削減したが、統計上はプラスになるよう数字操作をするか、である。

■「李克強指数」は遼寧省での経験から

遼寧省は統計数字ではいわくつきの場所だ。首相の李克強は就任前、中国の国内総生産(GDP)統計について「人為的」と明かしている。当時の駐中国米大使に語った内容だ。そして自らは電力消費量、鉄道輸送量、中長期新規貸出残高の3つの経済指標だけを信頼している、と述べている。

Hangzhou

G20前の好況に沸く浙江省杭州市

後に「李克強指数」として有名になる数値は、彼が遼寧省トップだった時代の経験を踏まえた発言だ。遼寧省でなお「かさ上げ」が常態化しているなら、発表数字を真面目に分析しても意味がない、という結論になる。

中国は広い。東北地域の経済の落ち込みが全てを代表しているわけではない。例えば、9月に20カ国・地域(G20)首脳会議を開く浙江省の杭州市は、なお好況に沸いている。

新興住宅地のマンションは1平方メートル4万~5万元(65万~80万円)。瀋陽の4~5倍で、中国で最も高い北京の郊外にある住宅地並みだ。100平方メートル強の平均的な杭州の住宅なら日本円で1億円を超す。これは東京の都心部と変わらない。

杭州の庶民の所得水準は、一部の優良企業の従業員や経営者を除けば、なお先進国に追い付いていない。土地の公有制を前提とする中国では、マンションを買っても期限付きの土地使用権を持つだけだ。恒久的な財産としての価値にも疑問符が付く。それでも高値になるのは、転売益を期待するバブルの臭いがする。

Shenyang

マイナス成長の遼寧省の中心、瀋陽では繁華街の娯楽施設も次々閉鎖に

中国のネット通販最大手、アリババ集団の本部も杭州にある。中国では日用品を中心とする消費市場は極めて好調だ。庶民はネットを使ってほぼ全ての買い物をする。その波に乗ってアリババは業容を拡大中だ。

確かに浙江省は中国でも比較的、活力のある民営企業が多く、過剰設備も問題は限られる。一方、長く重工業基地だった遼寧省など東北地方、内陸都市は、生産能力の削減で四苦八苦している。

面白いのは国家主席、習近平が、00年代半ばに浙江省のトップを務め、李克強はほぼ同じ時期に遼寧省のトップだった経歴である。ライバル2人が足跡を残した地域の経済は今、明暗が分かれている。

しかも遼寧省の方は今年3月、トップだった王珉が汚職で摘発されるという不名誉な事件まで起きた。「遼寧省は今、政治的に標的にされている」。そんな声も現地では聞かれた。

遼寧省のGDP発表は1~3月、4~6月とも他の地域に比べ遅れた。これを中央の共産党系メディアが批判的に伝えている。さらに遼寧省の数字が著しく悪い点についてこうも指摘した。「東北振興という政策を10年以上も実施し、国が巨額の資金を投入して新産業を支えたにもかかわらず、底をはっている。考えなければいけない地域だ」

■好況、浙江省の習近平VS苦境、遼寧省の李克強

一般に政府批判が許されない中国でここまで書かれるのは、政治的な意味がある。過去のリーダーを批判しているのだ。

標的は、既に無期懲役となったかつての遼寧省長、薄熙来。そして元遼寧省党委員会書記、李克強である。だが、薄熙来は省長というナンバー2の地位にすぎなかった。李克強はナンバー1だった。現首相への「含み」があることは想像に難くない。

習近平と李克強の2人は今、経済政策づくりの主導権を巡ってなお闘っている。8月上旬、河北省の保養地で開かれていた「北戴河会議」でも、下押し圧力の強い中国経済のかじ取りをどうするのかが焦点の一つだったとみられる。

Xi & Li

習近平国家主席(左)は、経済の司令塔であるはずの李克強首相から主導権を奪う構え(3月、北京)=小高顕記者撮影

「習近平は見た目は温厚そうでも自分で全てを決めたいタイプの人間だ」

地方指導者だった時代の習近平を知る人物の分析である。党中央に各テーマを扱う「小組」を次々につくったのもそのためだ。9月には、かつての過ごした杭州でのG20も控える。主役の習近平としては、ここで広範囲なリーダーシップを改めて確立したい。

李克強も負けていない。7月初旬、国有企業改革を巡る2人の指示が真っ向から対立。困った国営の中国中央テレビ、中国政府ネットなどは、仕方なく2人の指示を並列して伝えた。

見出しは「習近平と李克強はそれぞれ国有企業改革を巡る指示を出した」。そして「習主席は強く優れた大きな国有企業を、と。李首相は市場規律を守る細身の国有企業にするため、劣った生産能力の淘汰を進めよ、と」。2人が主導権を競っているだけではなく、方向性が違うのには驚く。

公式報道だけに、これを聞いたり見たりしたネットユーザーの間でも「違い」が話題になった。ネット上では、それを揶揄(やゆ)する書き込みもみられた。かつてない事態だ。これでは「習・李」の争いが一般国民にも分かってしまう。

習近平VS李克強。2人の勝負の帰趨(きすう)を決めるのは、現在の深刻な景気減速の責任と今後の処方箋をどう考えるかである。そこには長老らの思惑も大きく影響する。純粋な経済問題ではないだけに結果はまったく予想できない。(敬称略)

良ければ下にあります

を応援クリックよろしくお願いします

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください