6/29渡部亮次郎メルマガ Andy Chang『迫った台湾の総統選挙』について

Andy Changも以前は選挙で台湾は独立できないようなことを言っていた(国民党の買収工作に本省人が引っかかるため)が、環境変化①中国の横暴な正体が目に見えるようになったこと②米国の中国に対する不信③馬総統の急な中国との統一路線驀進、が重なり合ったため、持論を変えたという所でしょう。今後米中が昔に戻ることはありません。疑いなく中国は米国の覇権に挑戦してきますので、衝突はどこかの時点で必ず起こります。時間の利益を中国に与えれば与えるほど、米国には不利になることを米国は理解しなければなりません。

米国が蔡英文を支援するのがはっきりしましたので、国民党は没落することは間違いないでしょう。今までは民進党が勝つと米国が支援してくれない不安があり、そうなれば中国が攻めてくるかもしれないと思って国民党に投票してきた部分があると思います。今後外省人は肩身の狭い思いをするようになっていくと思います。香港か欧米に移民するようになるかも知れません。その前に中国に軍事機密を売る輩が出ないとも限りませんが。外省人とはいえ、何せ元々中国人ですから。

台湾が中国に取られたら、南シナ海は中国の内海になります。九段線は間違いなく中国の実質的領海と同じ扱いになり、内海での他国の自由な航行はできなくなります。今まで出来てたことがなぜできなくなるのか中国には説明責任がありますが、中国人の常で「何千年前から中国のものだったのを今までは使わしてやっていた」という反論ぐらいしか返ってこないでしょう。「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」と言う世界ですので。「法の支配」とは無縁の世界、「法」とは為政者が勝手に被統治民を弾圧できる道具なだけです。台湾は目覚めつつありますが、日本を見ますと国会、特に野党、マスメデイア、沖縄県に危機意識が足りないのは「ゆでガエル」状態、現状認識が誤っているからです。日本国民も企業で働けば真剣に問題の解決について考えるのに、世界のことには頭が回らないのは残念です。

記事

来年1月に台湾の総統と立法委員(国会議員)の選挙が行われる。昨年11月の市町村選挙で国民党が大敗して以来、台湾人の本土意識が高まり、中国と共に台湾統一を推進していた国民党政権はすっかり落ち込んでしまった。

来年の総統選挙に勝ち目はないと言われ、国民党の候補者選びは難航したが、ようやく洪秀柱・立法院副議長に決まるらしい。民意調査では彼女は負けると言う。負けたら国民党は没落するだろう。

戦後70年、台湾の政治は一貫して国民党独裁、外省人の天下だったが来年の選挙で総統と国会が台湾人優勢となり、強力な台湾人政権が誕生するかもしれない。外国関係、米中関係の冷え込みと中国の経済衰退が台湾の選挙に大きく影響する。

  • 米台関係の変遷

これまでアメリカは一貫して「現状維持」を要求し、国民党を支持してきた。ところが馬英九が政権を取って統一路線を取りはじめ、中国の南シナ海の岩礁埋め立てなどでアメリカはようやく中国に強い警戒心を持ち、台湾の政治に対する態度が変わってきた。

アメリカが本気で警戒心を抱いたのは南シナ海ではなく、中国がアメリカに仕掛けた大規模なサイバー攻撃である。ホワイトハウスや国務省、国防省やほとんどの政府部門が中国のハッカー攻撃にやられた。しかもオバマは防御も反撃もできない。中国は最悪な敵であるという認識がオバマにはなかったのだ。

だから今年春の蔡英文の米国訪問は、ホワイトハウスや国務省で歓待を受け、TIMEマガジンが雑誌の表面に出して蔡英文特集を組んで、米国が台湾人政党を支持する気配が出てきた。

米国の国際戦略が大きく修正されたのだ。2012年の台湾総統選挙ではダグラス・パールを派遣して投票2日前に馬英九支持を発表したアメリカは、あの時から4年後に蔡英文を支持する政策に切り替えたのだ。

米国の「現状維持」政策とは動乱が起きない穏やかな変遷を続けることだ。だから間違った政策はなかなか改善されない。戦後からこれまでアメリカは蒋介石の反共を支持してきた。

やがて反共から台湾海峡の平和維持に変わった。台湾は第一列島線の中央に位置し、中国が台湾を併呑すれば米国はアジアの覇権を失い、中国の太平洋進出を防ぐことができなくなる。

このため米国は台湾の国民党政権を支持してきたが、やがて2009年に馬英九が中国接近をはじめた。

オバマは中台関係に姑息な態度を取り、2012年の総統選挙ではダグラス・パールが蔡英文不支持を表明したのだ。

そして去年のヒマワリ運動と11月の市町村選挙で国民党が大敗し、台湾人の反中国、反統一が明確になって、アメリカは国民党を捨てて台湾人政党支持に切り替えた。米国の国際戦略が、反共→中華民国断交→国民党支持→台湾人政党支持と変化しているのがわかる。

  • 中台関係の変遷

このような国際情勢の変遷で、台湾の中華民国政権も蒋介石の反攻大陸から反共、李登輝の特殊な二国関係、陳水扁の台湾中国一辺一国、馬英九の中国接近統一路線に変った。そして米国はこれまでの国民党支持から台湾本土路線に賛同したとみられる。これが本当なら台湾人は大歓迎である。

米国は中国の台湾併呑に反対だが中華民国が台湾にある限りは併呑されないと思っていた。だから中華民国を認めていたが情勢がだんだんと変わり、1978年に中華民国と断交した。この時に台湾をどうするかという問題が起き、米国国会は「台湾関係法」を制定した。

台湾関係法の第15条には、米国は中華民国を認めないから、今後の米台関係において、「台湾(TAIWAN)とは台湾統治当局」と定義し、台湾当局が中華民国政権の続行でも、中華民国政権に代わる新政権が出来ても支持すると定義した。

つまり米国の台湾政策は、蒋介石支持から中華民国支持に変わり、中華民国と断交して「台湾当局」と名称を変えた国民党支持となり、国民党政権から台湾人政権になっても一貫して「台湾の存在」を支持するようになっている。

  • 台湾内部の変遷

終戦から70年たった。台湾は終戦後まもなく蒋介石が大陸から追い出されて台湾で中華民国を維持してきた。アメリカは反共の立場から中華民国を支持したが、中華民国は中国人の外来政権である。中華民国は外省人の貴族階級が台湾人を統治する独裁である。

人種差別とは中華民族の特徴と言える。中国人と台湾人は違う。だから少数の中国人が多数の台湾人に同化することはない。中国人は台湾統一を主張する、だが台湾人は中国に併呑されることを拒否し独立を主張する。中国は台湾併呑で太平洋に進出したい。アメリカは中国の野心を知りながら台湾独立を援助せず現状維持である。

台湾独立は台湾人政権を樹立すること、台湾人の夢である。だがその方法論にいろいろな違いがある。大まかに言って二つのグループ、現行の中華民国体制を修正して正名制憲で台湾国を樹立する「体制内派」と、中華民国体制を打倒して台湾政権を樹立する「体制外派」だが、双方の派閥の中にもいろいろ違った方法論があり、相互批判や攻撃でなかなか合作する気配がない。

  • 台湾人の夢

台湾独立運動はすでに40年以上の歴史があるが、少しも進展していない。理由は簡単、中国も米国も台湾独立を支持しないからだ。陳水扁が総統になった時、アメリカは陳水扁に「四歩一没有(独立せず、国名変更せず、両国論で憲法改正せず、統一、独立を公民投票にせず、など)」を押し付けて独立意識をシャットアウトした。つまり米国はこれまで台湾独立を拒否してきたのである。

このため独立運動は進展していなかった。体制内派(修正派)も体制外派(革命派)も米国の支持を得られなかったのである。もちろん中国は初めから独立に反対だから、どんな理論、方法論でも中米両国が反対すれば独立出来るはずがない。

米国の国際戦略が変化の兆しを見せたので、来年の選挙で台湾人総統と国会で台湾人多数となれば台湾の政治に大変化が起きる。もちろん数年で台湾独立を実現することはない。米国が反対せず、中国の衰退、米中関係の悪化が独立に有利な展開となる。

一部の体制外派の人たちは選挙に勝っても中華民国体制は変わらないと悲観的な主張をしている。ある人は投票に行くなと言い、あまつさえ蔡英文批判をするが、こんな言論は国民党を援助するだけ、国民党が勝てばもっと悲惨である。

選挙も一法、革命も一法、台湾のためになるなら構わない。米国の国際戦略の変化が台湾独立に有利となるなら選挙で政権を取るのも応援すべきである。

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