4/5ZAKZAK『習主席の親族が巨額の資産隠し? 韓国元大統領周辺の名も 衝撃の内部文書』、『習政権の“転覆”狙う地下組織“暗躍” 知識人、活動家に軍の一部が連携』、ケント・ギルバート『やっと自虐史観のアホらしさに気付いた日本人』について

ICIJやパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」にデータを流したのはアメリカでは?4/6日経に、プーチン大統領の報道官は「CIAの関与も仄めかし、『事実を捏造し、情報を操作している』と否定した」とありました。AIIB参加国が標的になっている気がします。英国・韓国・ロシア・中国と米国の言うことを聞かない国を標的にした感があります。英国のAIIB参加も、元々は米国が2010年FATCAを作り、2012年LIBORの不正操作でHSBCやバークレイズが槍玉に上げられ、罰金を米国に払った辺りが遠因ではないかと。租税回避ができなくなってシテイの地位が下がることを恐れ、人民元を採り入れて防ごうとしただけと思います。でもキャメロンにとっては痛手でしょう。亡父のパナマへの2000万$の投資ファンドの設立との記事が流れていますので。米国は次期首相の呼び声が高いオズボーン財務相の秘密も握っている可能性もあります。オズボーンはハニーが疑われるほどの親中派です。そうなれば、米中で暴露合戦をすれば面白くなります。

オバマの対中体たらくは今に始まったことではありません。2008年大統領選で選出されてからずっとです。最初からレームダックそのもの。でも選んだのは米国民です。その揺り戻しが今トランプとかサンダースに来ているのでしょう。習近平の暗殺やクーデターの危険が高まっているとのこと。ヒットラーを筆頭に独裁者は枕を高くしては眠れません。経済的に行き詰まり、政治的にも強権的であれば、政権打倒の動きは必ず出るでしょう。それを政権側が防ぐのは戦争しかありません。ただ、負けてしまえば政権維持にとって元も子もないので、それをどう判断するかです。中越戦争のようにすぐに鉾を収められるかどうかです。南シナ海には米海軍の「航行の自由作戦」の存在があり、東シナ海には日米同盟がありで、戦争をするといってもそんなに簡単ではありません。でも日本は油断大敵です。守りの備えは充分か、国民も危機意識を持たないと。

ケント・ギルバートの『やっと自虐史観のアホらしさに気付いた日本人』を読了しました。面白いと思った点を紹介します。

①カリフォルニア州弁護士会の政治活動を止めさせた方法・・・保守派の弁護士が集まり年間465$だった会費を州議会に働きかけ、200$まで下げさせて、会の財政を半ば破綻させ、資金的に本来の活動しかできなくした。(P.69)

②日弁連の会員から毎月14000円を強制徴収。年間60億円を超える財源を持つ。この金を使って国連人権理事会等での反日活動を展開してきた。歴代の会長の多くが共産党系(P.70、76)。日本の保守派の弁護士も会費を下げる運動をしてみては。

③スイスの『民間防衛』の紹介(P.110~111)

十分な軍事力を持たなかったウィグル、チペット、内モンゴルで、中華人民共和国(PRC)が行ったことを知っていれば、安易に「武器を捨てましょう」とは言えないはずですが、吉永さんや古舘さんは、「日本が積極的に武器を捨てたら、世界に平和が訪れる」と考えているらしい。

日本では初夏になると、ラーメン屋さんや中華料理屋さんが「冷やし中華はじめました」という貼り紙を表に出します。多くの日本人があれを見て「冷やし中華が食べたい!」という欲望を掻きたてられるわけですが、もし、宝石店や高級時計店が「警報装置はずしました」という貼り紙を出したら、多くの強盗が「この店に押し入りたい!」という欲望を搔きたてられても、仕方ありません。国家が同様に、「積極的に武器を捨てました」と宣言したら、「侵略してください」という催促だと敵国は受け取るでしょう。

こんな簡単な理屈が理解できない人には、冷戦時代にスイス政府がすべての家庭に配布したという『民間防衛』という書籍をご紹介します。原書房から日本語翻訳版が出版されていますが、そこには、「武力を使わない情報戦争」の手順が書かれています。これを「間接侵略」とも言います。

《第1段階》工作員を政府中枢に送り込む

《第2段階》宣伝工作。メディアを掌握し、大衆の意識を操作する

《第3段階》教育現場に入り込み、国民の「国家意識」を破壊する

《第4段階》抵抗意志を徐々に破壊し、「平和」や「人類愛」をプロパガンダに利用する

《第5段階》テレビなど宣伝メディアを利用し「自分で考える力」を国民から奪ってゆく

《最終段階》ターゲット国の民衆が無抵抗で腑抜けになったとき大量植民で国を乗っ取る

日本が今、どの段階にあるのかという判断は、読者の皆さんにお任せします。

④金泳三から始まった「自尊史観」と「反日」の暴走(P.125)

しかし、韓国は違いました。彼らの態度は、そこからがひどかったのです。 金泳三大統領の時代になり、「歴史の立て直し」政策が始まると、それまで以上の「自尊史観」と「反日」の暴走が始まったのです。そして、天皇陛下に対して「日王は謝罪しろ」と迫り、竹島に上陸した李明博大統領から、今の朴大統領に至るまでに、この凄まじい反日が、もはや韓国人の精神そのものになりかけているのです。

古田(注:古田博司)先生は、「韓国は『歴史に学ぼう』と唱えるだけあって、李朝の「搪塞」(ごまかし. 逃げ口上)の歴史を民族の行動パターンとして濃厚に引き継いでいる」とおっしやいます。つまり、相手にまず同情させておいて、その相手が「わかったよ」と一歩下がれば、今度は猛烈に攻撃してくる。

古田先生はその例として、「満洲族の清が馬をよこせといえば、分割払いにしてもらい、総頭数をごまかしたり、婚姻するから良家の子女を送れといわれれば、こっそり酒場女を集めて送ったりした。シナにやられてばかりの歴史ではないのだ」

⑤日韓両政府が「慰安婦問題」を前向きに解決する秘策(P.158~160)

こうして突き放すだけでは、韓国政府や韓国人は、すぐには泣きやまないと思うので、大きく振り上げた拳を下ろすことなく、言い換えれば彼らが何よりも大事にするメンツを潰されることなく、日韓両政府が、いわゆる「従軍慰安婦問題」を前向きに、しかも簡単に解決できる秘策を私が授けましょう。実は、ニ〇一四年八月から言っている話です。

それは朴槿惠大統領が安倍首相に、

「私たち韓国政府と無垢な韓国人は、朝日新聞が長年にわたって続けてきた虚偽の報道と、日弁連の高木健一弁護士による国連での『日本軍の慰安婦は性奴隸だった』という虚偽の証言、加えて、福島瑞穂参議院議員や村山富市元首相、河野洋平元官房長官らが主導した、韓国国内における元慰安婦への、『偽善的謝罪とサボート活動』に騙されたせいで、歴史上ありもしなかった『従軍慰安婦問題』を世界中に訴えつづけ、大恥をかいてしまった哀れな被害者です。日本政府は、私たち純粋な韓国人を騙すことで、世界中で騒ぎを起こさせ、その結果、日韓両国を貶め、大切な日韓関係の悪化を招いた『反日日本人』に対する、私たちの『報復活動』をサボートしてください」

と要請すれば良いのです。

さらに言えば、韓国政府だけでなく、マグロウヒル社、慰安婦像の設置を世界中で行ってきた韓国系反日団体、あるいは全米の歴史学者たちも、「朝日新聞や日弁連の活動家にまんまと騙された」ということにして、損害賠償や謝罪を求める訴訟を、日本国内で次々に起こせば良いのです。そうすれば、今まで間抜けな主張や活動を続けてきた彼らのメンツは保たれます。

従来との最大の違いは、韓国政府は嘘をゴリ押しすることで日本政府の妥協を引き出してお金を得るのではなく、ただひたすら真実を主張するだけで、日本の嘘つきたちから賠償金を得られる可能性がある点です。

もちろん日本政府は一切の妥協をする必要がありません。そのうえ、ここまでこじれた「従軍慰安婦問題」について、もっとも糾弾されるべき存在なのに、今まで物陰に隠れて、息を殺しながら知らぬ存ぜぬを決め込んできた連中を、白日の下に晒して懲らしめること ができます。

現時点で私に考えられる最高の解決法だと思うのですが、どなたかこの部分を韓国語に翻訳して、朴槿惠大統領に伝えてもらえませんか?

資産隠し記事

中国の習近平国家主席や、ロシアのプーチン大統領、韓国の盧泰愚(ノ・テウ)元大統領らの周辺の人物が、タックスヘイブン(租税回避地)の企業を使って、「巨額の資産隠し」を行っていた可能性があることが明らかになった。世界の報道機関で構成する「国際調査報道ジャーナリスト連合」(ICIJ)が、内部文書の検証結果として公表した。各国で大問題に発展しそうだ。  内部文書は、パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から独紙南ドイツ新聞が入手し、ICIJがともに分析した。結果、世界各国の現旧首脳12人を含む政界関係者ら約140人が租税回避地に法人を設立していたことが判明した。  ICIJや欧米メディアによると、中国共産党の最高指導部、政治局常務委員会の現旧メンバーの少なくとも8人の親族がこの事務所を通じて法人を設立。習氏の義兄1人が2009年に英領バージン諸島に設立した2法人も含まれる。  プーチン氏の旧友であるチェロ奏者のロルドゥギン氏は、バージン諸島に設立した法人などを経由させ、キプロスのロシア商業銀行から受けた融資を関係企業に移動するなどしており、その取引総額は約20億ドル(約2200億円)に上った。  また、盧氏の長男がバージン諸島に実体のない法人3社を設立していたとみられることを、ICIJに参加する韓国の独立系ニュースサイト「ニュース打破」が独自取材として報じた。  バージン諸島や中米パナマなどの租税回避地は、税金逃れやテロ・犯罪資金の秘匿に使われているとされ、国際的な対応が急務とされている。  文書には、ウクライナのポロシェンコ大統領や、サウジアラビアのサルマン国王、アイスランドのグンロイグソン首相、米国の制裁対象の北朝鮮企業、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラに関係する法人、サッカー界スターのメッシ選手、香港の俳優、ジャッキー・チェンらの名前も登場する。

習政権の“転覆”狙う記事

 オバマ米大統領が、中国の習近平国家主席に激怒している。ワシントンでの米中首脳会談で、南シナ海やサイバー、人権などの問題を提起したが、習氏は一歩も譲歩せず、米国の要求を突き返したのだ。強硬姿勢の背景には反体制派の存在があるという。中国国内に構築された「地下組織」の実態と、習政権が延命のために仕掛ける軍事危機とは。米国は警戒監視のため原子力空母「ジョン・C・ステニス」を南シナ海に展開させた。ジャーナリストの加賀孝英氏が緊急リポートする。  「(南シナ海での)『航行と飛行の自由』を口実に、中国の主権を侵害する行為は許さない」「それぞれの核心的利益を尊重すべきだ(=口出しするな)」  オバマ氏が、中国の国際法を無視した「南シナ海での岩礁の軍事基地化」という暴挙を批判すると、習氏は顔色を変え、オバマ氏をにらみ付けて、米軍の「航行の自由」作戦を批判した-。  注目された米中首脳会談は3月31日に行われた。両首脳は冒頭、北朝鮮の核実験やミサイル発射などの挑発行為を問題視し、連携を強めることで一致した。だが、その後は違った。オバマ氏は、習氏にすべてを拒絶された。米国にとって屈辱的な米中決裂だった。  旧知の米政府関係者は「残り任期が1年を切り、オバマ氏の『力』が落ちて中国になめられている」といい、続けた。  「それ以上に驚いたのは習氏の激変ぶりだ。これまでのソフトムードは皆無だった。米軍が、韓国に配備を予定している最新鋭地上配備型迎撃システム『高高度防衛ミサイル(THAAD)』について、習氏は『中国の安全に関する利益を損ねる(から止めろ)』と反対した。台湾についても『いかなる独立運動も許さない』といい、米国に『1つの中国』原則を厳守するよう求めた。すべて、けんか腰だった」

中国がGDP(国内総生産)世界第2位とはいえ、現時点では、米国には経済力でも軍事力でもかなわない。習氏の態度は一体何なのか。  米政府関係者も「オバマ氏を軽視するというより、習氏には悲壮感すら漂っていた」と明かした。  驚かないでいただきたい。ここに来て、習氏に対する暗殺テロ、習政権潰しのクーデターの動きが急激に高まっている。  以下、複数の日米情報当局関係者から得た衝撃情報だ。  「習政権の失政に怒った知識人らが中心となって、習政権転覆を狙う『地下組織』を結成した。世界の活動家たちと連携して行動を始めた。これに、国内の少数民族や、軍部の一部が接近しつつある。中国情報当局は数百人レベルの特殊チームを結成し、粛清に必死になっている」  新疆ウイグル自治区などが出資し、昨年秋に発足したニュースサイト「無界新聞ネット」に3月初め、「忠誠なる共産党員」を名乗る人物がメッセージを書き込んだ。経済低迷や言論弾圧、独裁、外交の失敗などを挙げ、「習氏には中国を未来に導く能力がない」と指摘し、共産党総書記の辞任を求めた。  習氏は激怒した。中国政府はパニック状態で、同サイトの閉鎖が決定された。そして、米中首脳会談直前の3月29日、今度はニュースサイト「明鏡新聞網」系ブログに「171人の中国共産党員」によるメッセージが掲載された。そこには、「習同志の独裁と個人崇拝が党内組織をひどい状態にした」とあり、共産党に「習同志を一切の職務から罷免し、党と党員を救済するよう要求する」と訴えた。  習政権にとっては、驚天動地、前代未聞の政府転覆の宣戦布告だ。情報では、こうした動きは「地下組織」と連動している。衝撃情報はさらに、以下のように続いている。

「中国国内に、過激組織『イスラム国』(IS)で戦闘訓練を受けた中国人が数百人規模で潜伏している。ISは、ウイグル自治区の住民を弾圧している習氏と政権に復讐(ふくしゅう)を宣言している。『その戦闘員と、現地で確保された数十人の自爆テロ要員が動き出した』という情報がある」  ご承知の通り、中国では一連の株価暴落で、約9000万人という個人投資家が甚大な損出を被った。この数は共産党員(約8000万人)よりも多い。飛び降り自殺(=跳楼)も急増している。今後、企業の倒産ラッシュ、経済破綻も予想され、人民の怒りは爆発寸前、暴動寸前だ。  日本の外事警察関係者に情報をぶつけると、「習氏は夜も眠れないはずだ。これまで、習氏は6回の暗殺テロを受けたとされる。犯人は反習一派の軍部だったが、今度は違う。中国の人民が相手だ。これに、政府転覆を狙う地下組織と軍部の一部が連携する。習政権発足以来、最大の危機だ」といい、続けた。  「追い詰められた習氏が、人民の不満を政権以外に向けさせようと、暴走するかもしれない。南シナ海や沖縄県・尖閣諸島がある東シナ海で軍事衝突を起こす危険性がある。安倍晋三政権が安全保障関連法の成立を急いだのも、こうした緊急事態にそなえるためだ」  声を大にしていう。日本は一瞬たりとも油断してはならない。  ■加賀孝英(かが・こうえい) ジャーナリスト。1957年生まれ。週刊文春、新潮社を経て独立。95年、第1回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム大賞受賞。週刊誌、月刊誌を舞台に幅広く活躍し、数々のスクープで知られている。

 

良ければ下にあります

を応援クリックよろしくお願いします。

4/4JBプレス 阿部純一『習近平はどこまで権力を手に入れたら気が済むのか?血眼で「辞任要求」の犯人探し、もはや裸の王様の習近平』、4/4ZAKZAK『米有力紙誌が中国に“死刑”宣告 1~3年以内の債務危機確率1位 韓国も…』について

腐敗は中国人の宿痾で上から下に至るまでやっていますので、正義の名を借りた政敵倒しの意味しか持ち得ません。小物の場合は配分先や配分額を間違えたときに逮捕されますが。文革の前に毛沢東は百花斉放・百家争鳴運動をして、学問・思想・文化・芸術などの各分野における自由な発言を奨励し、共産党批判も許しましたが、余りの多さに驚き、抑圧に転じて、反右派闘争として利用しました。ご都合主義です。

彼らは人の弱みに付け込むのが非常にうまいです。ハニートラップなどはその最たるもの。また本人だけでなく、家族を人質にしていう事を聞かせることもします。2004年上海領事館の電信官とカラオケ小姐が付き合っていて、女性は買春容疑で逮捕、電信官は情報を出せと脅されて自殺したのも、女に危害を加えるとか脅迫されていたのかも知れません。でなければ、さっさと逃げて帰ってくれば良いわけですから。ただ総領事が『大地の咆哮』を書いた杉本信行ですから。戦わないチャイナスクールの一人でしたので。癌で死ぬときになって本を書くのでなく、日々の業務で日本の国益をもっと守れと言いたい。

中国人は自由を云々する前に、法治の概念がありませんから、政府・党は何でもありの自由なことができ、人民は恣意的に拘束されることも度々あります。これが世界第二位の経済大国と言うのですから。法は自分がやりたいことをやるために存在しているのであって、自分の意に反すれば簡単に引っ込めます。南沙・西沙や尖閣の問題だって国際法が自分にとって都合が悪ければ無視します。異形の大国です。ここまで経済的に大きくしたのは米国と日本です。フランケンシュタインを作り上げてしまいました。日米ともに製造物責任があり、中国経済を崩壊させる責任があります。

ZAKZAK記事では中国経済は持って1年くらいとのご託宣です。韓国の名前も挙がってきています。それで中韓とも日本に擦り寄ってきている訳です。通貨スワップ狙いでしょう。絶対に許してはなりません。反日国家を経済的にガタガタにできるいいチャンスです。助けたとしても忘恩の徒ですから、後々の反日活動の激化を招くのが必定です。韓国は昨年の「明治日本の産業革命遺産」の世界文化遺産登録時にも民間が虚偽の資料をユネスコに提出していたとのこと。官と民とで役割分担して日本貶めを図っています。左翼・共産党と朝鮮民族は「息を吐くように嘘を言い」と言うのが得意な連中です。反撃しなければ嘘が定着してしまうので、資料を以てユネスコに嘘であると日本政府は主張すべきです。今は情報戦と言う戦争を戦っていると認識せねば。

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20160404/frn1604041700009-n1.htm

JBプレス記事

Xi Jinping

中国の習近平国家主席。2012年に党総書記に就任して以来、メディアに対する統制を一段と強めている(2014年3月28日撮影、資料写真)。(c)AFP/JOHANNES EISELE〔AFPBB News

 今年(2016年)は中国で毛沢東が「プロレタリア文化大革命(文革)」を発動してから50周年であり、毛沢東の死去から40周年である。

 10年続いた文革が中国に与えたダメージは空前絶後と表現しても過大ではない。中国人民の誰も、子供が親を告発し、学生が教師を吊るし上げ、既成の価値観や秩序を崩壊させた文革の再来を望むものはいないはずだ。

 しかし、文革とは言わないまでも、毛沢東を崇拝し、その権威に近づくことを目標とする習近平にとって、中国人民が文革を連想せざるをえないような個人崇拝は「悪くない」選択肢なのかもしれない。

 2016年になって、地方指導者を中心に、習近平を中国政治における「核心」と位置づける発言が相次いだ。習近平の意思が働いた動きであることは間違いない。

 中国で「核心」という表現は、毛沢東や鄧小平といった誰もがその権威を認めざるをえないトップリーダーにだけ付与されてきた。その基準が変化したのが、鄧小平が江沢民に付与したときである。1989年6月の天安門事件で当時の党総書記であった趙紫陽が失脚すると、鄧小平は江沢民をその後任に抜擢し、政治実績のない江沢民をサポートするために「第三世代指導者の核心」として権威付けた。江沢民の後を継いだ胡錦濤については、最後まで「第四世代指導者の核心」と呼ばれることはなかった。

習近平は、2012年の第18回党大会で総書記となり、以来、数多の領導小組を作り、そのトップに座ることによって権力の集中を図ってきた。その権力の集中の度合いは、江沢民、胡錦濤といった前任者たちをはるかに凌駕しているといって間違いない。

狙いは後継者指名の権限確保?

 その習近平がいまさら江沢民をなぞるような「核心」に自らを位置づけようとする意図はよく分からない。ただ単純に、毛沢東、鄧小平と比肩しうる高みに立ったことを誇示したいのかもしれない。

 それでもあえて習近平にとって「核心」と呼ばれることを正当化しうる理由を想像すれば、習近平自身が後継者を擁立できる「キングメーカー」のポジションを目指しているということが想定できる。

 江沢民は「核心」と呼ばれはしたものの、鄧小平が、ポスト江沢民の指導者として胡錦濤を指名していたため、実際は自分に最も近かった曽慶紅を後継にしたかったがそれも叶わず、キングメーカーになりそこねた事実がある。

 胡錦濤もまた、キングメーカーになれなかった。意中の後継候補者・李克強は2007年の第17回党大会で政治局常務委員会入りを果たしたが、序列は7位であり、6位には習近平が入った。引退後も隠然たる影響力を持っていた江沢民が、胡錦濤による李克強の後継者指名を阻止するために当時上海市党委書記だった習近平を強引に押し込んだのである。

 そして習近平は、胡錦濤がトップになる前のポストであった中央書記処常務副書記となり、翌年3月の全人代で国家副主席となって、胡錦濤の後継者としての位置を確保することとなる。李克強は同じく全人代で国務院常務副総理となって、温家宝総理の後継者となった。

 こうして見ると、江沢民、胡錦濤の2代にわたるトップリーダーが後継者指名を行えなかった中で人事抗争が展開されてきたことになる。それを、自らも当事者として目の当たりにしてきた習近平が、後継者指名の権利獲得を目指したとしてもおかしくはない。

ポスト習近平の人事は今のところはとりあえず「白紙」であり、胡錦濤にとっての共産主義青年団(共青団)のような固有の人脈を持たない習近平が、自らの権威を高めることによって後継者指名の権限を確保したいがために、「核心」と呼ばれたいのであろう。

 あるいは、実現の可能性は見当がつかないが、将来的に党総書記を廃止し、党主席に戻そうとしているのかもしれない。自ら毛沢東と同じポストに就き、死ぬまでそのポストを守ろうという野心が絶対にないとは言い切れない。

江沢民に近い人物を次々に摘発

 とはいえ、習近平の個人的な威信を高めようとする行為は、現在の中国の政治スタイルから見て、「逆行」ないし「退行」と受け止められかねない。誰も毛沢東式の専制政治の再来など望んでいないからだ。

 しかし、中国政治の現状はその可能性を残している。習近平への権力集中が進んだ事実がそれを証明している。

 中国では1989年の天安門事件以降、政治民主化の議論はタブーとなり、いかに共産党による指導体制を堅持するかが政治的最重要課題となった。しかし、それでも経済の市場化が進展し、国民生活が豊かになり、人々の発言の自由度は増してきた。そうした流れの中で、胡錦濤時代の2002年から2012年まで、中国共産党は集団指導体制を標榜し、政治局常務委員はそれぞれの担当部署を代表する形態をとって、意思決定については合議の上で決定するという「党内民主」のやり方を取った。

「党内民主」化には、江沢民が「院制」を敷くに当たり政治局常務委員に自分の息のかかった人物を送り込み、多数派を形成し胡錦濤の台頭を抑えこむことを正当化するという意味もあった。しかし、その結果が、前政治局常務委員で政法部門のトップであった周永康の腐敗摘発である。人民解放軍においては、胡錦濤が権力を掌握しきれない中で利権を弄んだ徐才厚、郭伯雄という2人の前中央軍事委副主席もやはり腐敗の廉で摘発された。

 摘発されたのは、いずれも胡錦濤時代に「院制」さながらの権勢を揮った江沢民に近い人物であった。そのため、習近平の腐敗摘発は、江沢民派の殲滅を狙った権力闘争であるという解釈がなされるようになった。

周りに「正直な助言者」はいないのか?

 腐敗摘発そのものは中国人民の歓迎するものであったろう。しかし、反腐敗と同時に権力の集中を図った習近平のやり方は、功罪半ばする。

 腐敗汚職は江沢民、胡錦濤の時代から指摘されてきたが、習近平は聖域なき腐敗摘発に乗り出し、大きな成果を上げたことになる。しかし、すでに3年を超える反腐敗キャンペーンはエンドレスゲームの様相を呈し、人心を萎縮させ役人の不作為を招いている

 また、「党の絶対的指導」を強調し習近平への忠誠を誓わせるという「締め付け」は、人民解放軍の改革で顕著に見られたが、2月の春節明けに習近平が視察した新華社や人民日報社、中国中央テレビなどメディアに対しても行われた。習近平は「党を姓とすること」(党に帰属すること)を強調し、メディアに対して忠実な「党の喉舌」であることを強く要求した。

 まるで習近平は、周りが全てイエスマンでないと満足できないように見える。

 だが、皮肉なことに腐敗取り締まりの総本山である紀律検査委員会と監察部のホームページに、3月1日付けで「1000人のイエスマンは1人の正直な助言者に如かず(千人的諾諾、不如一士的諤諤)」という記事が掲載された。

 冒頭に、習近平の河北省党委員会での講話が紹介され、そこで習近平が「小さな問題は誰も気付かず、大きな問題は誰も批判しない。その結果、大きな過ちが引き起こされる。まさにいわゆる“1000人のイエスマンは1人の正直な助言者に如かず”ということだ」と述べたことが引用されている。

 記事は、習近平が引用した言葉の由来を歴史的に解説し、毛沢東の事例も上げて共産党が人民の幅広い意見を聞いて治世にあたっていることを縷々述べたものだ。

 習近平はこの自分の発言を覚えているのだろうか。あるいは、習近平を取り巻くブレーンに「正直な助言者」はいないのだろうか。

ネット上で公開された習近平辞職要求の書簡

 そうした中、全国政協、全人代の会議開催の直前にあたる3月4日、新疆ウイグル自治区政府などが出資する「無界新聞」というメディアサイトに、習近平を批判する挑発的な文章が掲載された。

「忠誠なる共産党員」の名で書かれた「習近平同志の党と国家の指導的職務からの辞職を求める公開書簡」(関于要求習近平同志辞去党和国家領導職務的公開信)である。

 その記事はすぐ削除されたが、香港メデイアなどを中心に原文が出回っており、現在でも読むことができる。

 内容はいたってまともであり、習近平の業績を評価しつつもその誤りを的確に指摘している。一節を紹介すると、「習近平同志、あなたはあらゆる権力をその手の内に収め、自分が直接政策決定するといったやり方を採ってきたため、政治経済や思想文化などの各領域で未曾有の問題と危機をもたらしたことを指摘せざるを得ない」といった率直かつ厳しい物言いである。

 中国の公安当局は現在、犯人探しに躍起になっている。著名なコラムニストである賈葭氏が北京空港で香港に向かうところを公安に拘束されたり(すでに解放)、「無界新聞」の関係者が取り調べを受けるなどしているが、真相はいまだ不明のようだ。

「無界新聞」に載った習近平辞職要求の公開書簡は、習近平がすでに「裸の王様」であることを示している。習近平は権力の過度の集中によって、自分がそうなってしまったことに気づかないのだろうか。

ZAKZAK記事

Obama VS Xi

オバマ米大統領(左端)と会談に臨む中国の習近平国家主席(右端)。安全保障と並び経済も深刻な懸念を抱える=3月31日、米ワシントン(AP)

タイムリミットはあと1年-。米経済誌フォーブス(電子版)で、「今後1~3年以内に債務危機に陥る確率が高い7カ国」が報じられ、1位が中国、4位に香港となり、5位には韓国が入った。米紙ウォールストリート・ジャーナルでは「資本流出にあと1年は耐えられない」と中国の通貨危機に言及するなど、欧米のメディアや研究者が中韓の連鎖危機に強い警戒心を抱いていることがうかがえる。  「債務危機に最も脆弱(ぜいじゃく)な7カ国」と題した記事をフォーブスに寄稿したのは、オーストラリア出身で英キングストン大教授のスティーブ・キーン氏。  国際決済銀行(BIS)のデータなどを用いて各国の債務状況などを分析したところ、1~3年以内に債務危機に陥る可能性が高い順に中国、オーストラリア、スウェーデン、香港、韓国、カナダ、ノルウェーを挙げた。  過去150年間の国家の債務危機に関する研究によると、民間債務が対国内総生産(GDP)比で150%を突破し、さらに過去5年で20%増加した場合、危機が頻繁に発生するとした。  前出の7カ国・地域の民間債務の対GDP比は、いずれも175%を超え、前年の民間債務の増加額がGDPの10%を上回っているという。  BISの統計をみると、2015年9月末時点で中国の民間債務の対GDP比は205%と、GDPの2倍を突破。1990年代の日本のバブル崩壊後の水準に近づいた。  オーストラリアも206%、スウェーデンが236%、香港が285%と高く、韓国が193%に達している。  ちなみに政府債務は多い日本だが、民間債務の対GDP比率は167%で、記事では全く言及されていない。

 キーン氏は、こうした国々が債務危機に陥る正確なタイミングについては、「民間部門が銀行から金を借りようとする意欲や、銀行部門の貸出意欲がいつ止まるか、さらには国の政策によって変わるため、正確に計ることはできない」とする。

 しかし、危機突入のサインは、貸出資金などの伸び率が低下に転じることだと説明、「中国のような景気刺激策で危機を永遠に回避することはできず、傷ついた経済のリストに名を連ねることになるだろう」と見通しを示している。

 一方、ウォールストリート・ジャーナルは「中国に迫り来る通貨危機」と題する寄稿を掲載した。中国の金融調査会社創業者と英資産運用会社最高投資責任者の2人が執筆したもので、「昨年の中国の資本流出額は約1兆ドル(約112兆円)で、うち外貨準備の取り崩し分は5126億6000万ドル(約57兆4000億円)。このペースの資本流出に1年は耐えられないだろう」と分析した。

 「中国には、資本不足時の経済運営について知識が乏しく、手立てもほとんどない。不動産価格は50%下落し、人々は職を失うことになるだろう」と警告。人民元の下落は避けられず、「中国の物語が幕を閉じるのは目前に迫っている」としている。

 中国などの債務危機と通貨危機を危惧する論考が相次いだが、2つの危機は連鎖していると解説するのは、週刊東洋経済元編集長の勝又壽良氏だ。

 「中国の債務は雪だるま式に増え続けているが、ここにきて上海など一部の都市で住宅バブルを再燃させるなど、新たな債務を増やそうとしている。こうした状況を警戒して資本流出が加速すると、通貨危機を招き、自国通貨建ての債務がさらに拡大する事態を招く。中国政府は介入で人民元相場を維持してきたが、もはや持ちこたえられない。債務危機と通貨危機は中国経済にとって死刑宣告のようなものだ」

良ければ下にあります

を応援クリックよろしくお願いします。

3/31日経ビジネスオンライン 関志雄『中国は不況ではない 野村資本市場研究所シニアフェロー、関志雄氏に聞く』について

中国は不況でないと関氏は言いますが、リストラに対する暴動の頻発の話を聞けば「違うのでは」と直感的に思います。中国のデータが信頼できないのは中国人だったら誰でも知っています。だから李克強指数なるものも生まれた訳です。中国の景気が悪いため、李克強指数は「サービス産業が増加している今の中国の産業の実態を表していない」という事を言いだし、日本のアホな評論家に言わせています。中国の下々の動きを見れば今中国で何が起きているのか分かるはずです。マクロで見れば、人件費高騰のため中国で生産し輸出する意味が薄れ、消費市場としても富の分配がうまく行っていないことや、偽物が氾濫し悪貨が良貨を駆逐、また30兆$の債務大国ということで借金が持続不可能な状態では成長は期待薄と言うものです。

習近平の経済政策は贅沢禁止令に近く、接待文化を否定しています。緊縮政策と同じです。中国人との付き合いは同じ卓を囲むことから始まるのに、この文化の否定は中国人の深層心理に怨みを抱かせるのではと思っています。何せ「机以外の四足は総て食べる」と言われる中国人の食に対する思い入れの強さを蔑ろにしていますので。「中国の歴史の中で飢饉が頻繁に起こり、食べれる時には高いものでも何でも食べておく」ということを1997年中国語の先生に聞いた覚えがあります。だから世界の三大料理の一つとして評価されている訳です。食への飽くなき追求と調理方法の研究が進みました。

習の経済政策や人権抑圧政策に反対するため「習辞任」を訴える書簡がネットに掲載されるようになり、速攻で削除されたようですが、今後不景気が続けば益々増えて行くでしょう。国民に経済的豊かさと言う蜜の味を覚えさせたからには逆戻りは出来ません。共産党統治の正統性に疑問符がつきつけられるからです。元々正統性がないので反日教育で目を逸らして来ただけなのですが。アホな日本の経営者は金に目が眩み、中国の経済成長の手助けをして来ましたが、思ったほどに儲かってはいませんでした。中国商人がそんなに簡単に儲けさせてくれるはずがないのです。ハニーや国賓に準じた特別接待でコロリと騙されて来ました。今は静かな中国撤退ブームになっているでしょう。

関氏は朱建栄や趙宏偉が中国内で拘束されたのを知っていますので、中国に不利なこと、不都合な真実は話せないと感じているでしょう。生きるためには平気で嘘がつける民族、「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という民族なので。中国人と付き合う場合はそう思っていた方が安全です。

記事

経済成長率の落ち込みや人民元相場・株式市場の乱高下、さらにはゾンビ企業の過剰設備まで、中国経済は徐々に輝きを失いつつあるかに見え、メディアでは「中国経済崩壊論」が語られることが珍しくなくなっている。

 直近では人民元相場も株式市場も落ち着いた状態を取り戻してはいるものの、今後、中国経済はどうなっていくのか。中国経済を分析し続けてきたベテランのエコノミスト、野村資本市場研究所のシニアフェロー、関志雄氏に中国経済の問題点と今後を聞いた。(聞き手は日経ビジネス、水野孝彦)

—昨年の夏以降、人民元相場は不安定な動きを示し、一部では「人民元の暴落」を予測する声もあります。この数週間の動きは安定していますが、人民元の暴落は回避されたのでしょうか?

人民元は暴落しない

関志雄氏(以下、関):人民元は長い間、通貨の価値が上がることはあっても下がることはないと考えられてきました。今は逆で、もう上がることはなく下がると思われているようです。経済現象には期待の自己実現的な部分があり、みんなが下がると思うと本当に下がってしまうことがあります。

 2014年後半に日本銀行とECB(欧州中央銀行)の金融緩和で円安とユーロ安が進みました。一方の中国の人民元は、ほぼドルペッグ(ドルとの価値を一定に保つこと)でしたから、昨年8月の人民元の切り下げまで、中国の実効為替レートは、1割くらい上昇してしまいました。最近は逆に円高やユーロ高の進行と人民元の対ドル切り下げを受けて、実効為替レートで見た人民元の割高感が薄れ、人民元の下落に賭けようという投資家は減っていると思います。

Guan Zhixiong

関 志雄(かん・しゆう) 野村資本市場研究所 シニアフェロー/経済学博士 1979年香港中文大学経済学科卒、1986年東京大学大学院経済学研究科博士課程修了、1996年に東京大学で経済学の博士号を取得。香港上海銀行、野村総合研究所などを経て2004年から野村資本市場研究所シニアフェローに就任

 また2014年6月のピーク時に中国の外貨準備高は約4兆ドルありましたが、その後、主に資本収支の悪化を反映して、多い月には1千億ドルも減るといったことが起こりました。しかし、BIS(国際決済銀行)も指摘しているように、中国において資本収支が悪化しているのは、外国の投資家が資金を引き揚げているからというより、中国の企業が人民元安を見越して外貨建ての借り入れを減らしているからという側面が強く、その調整は終わりつつあります。外貨準備の減少はやがてひと段落するでしょう。

 為替政策に関しては、中国は当局が為替取引の基準値となる中間レートを発表することや為替市場へ介入することを通じて、市場レートをコントロールしています。こうした仕組みは「管理変動相場制」と呼ばれていますが、実態は「変動」よりも「管理」という側面が強く、一種の固定相場制に近いといえます。

 しかし、固定相場を維持するのは、為替介入をし続けることが必要です。それにより金融政策の独立性が大幅に制限されるため、長い目で見れば、人民元も完全な変動相場制に移行することが避けられないと思っています。

固定相場制が採用される場合、人民元が割高だと判断される局面では、投資家が人民元を売りますから、これによって生じる人民元の下落圧力をかわすために、当局はドルを売って人民元を買い支えなければなりません。その結果、ベースマネー(現金+金融機関が中央銀行に預けている当座預金の合計)が市場から買い戻される人民元の分だけ縮小します。逆に人民元が上昇圧力にさらされる局面では、当局によるドル買い・人民元売り介入は、ベースマネーの拡大をもたらします。為替介入とベースマネーのリンクを断ち切るには、当局が原則として為替介入をしない完全な変動相場制へ移行するしかありません。

 固定相場制から変動相場制への移行は、自国通貨が緩やかな上昇基調にある時に実施することが望ましいとされていますから、中国政府は将来のそうしたタイミングで変動相場制への移行に踏み切るべきだと思います。

—中国の経済成長率が以前に比べて落ち込み、海外からは先行きを不安視されています。なぜ、2008年のリーマンショック後のような大規模な経済テコ入れ策に取り組まないのでしょうか?

大規模経済対策が不要な理由

関:中国の実質GDP(国内総生産)成長率は1979年から2010年までを平均すると年率10%に達しました。それに対して2011年以降の平均は7.8%、2015年に限れば6.9%と、成長率は大きく落ち込んでいます。

 私は成長率の低下が需要不足、つまり景気の悪化によるものではなく、労働力不足など、供給側の制約による潜在成長率の低下によるものであると考えています。

 中国では、長い間、労働力過剰であると言われてきましたが、ここにきて労働力不足に転じた理由は大きく分けて2つあります。1つは1980年代初頭に実施した「一人っ子政策」のツケで少子高齢化が進み、15歳から59歳の層が減っていることです。そしてもう1つ、よく1億5千万人に上ると言われていた農村部における余剰労働力が工業化と都市化によってほぼ完全に吸収され、中国はいわゆる「ルイス転換点」を通過したことです。

 実際、中国都市部の有効求人倍率は2008年のリーマンショックを受けて一時大幅に落ち込みましたが、その後上昇傾向をたどり、現在も高水準を維持しています(図1参照)。完全雇用がほぼ達成され、実際の成長率も潜在成長率に見合っているという意味で、中国の景気は決して悪くありません。

図1 経済成長率と都市部の求人倍率の推移

statistic bureau in China

(注)中国の都市部の求人倍率は、約100都市の公共就業サービス機構に登録されている求人数/求職者数によって計算される。 (出所)中国国家統計局、人力資源・社会保障部の統計より野村資本市場研究所作成

 したがって、今の中国は、経済対策で需要を喚起してまでテコ入れをする必要はなく、潜在成長率を高める「供給側改革」の方が必要な状況です。それは中国政府も分かっているので、リーマンショック後のような大規模な経済テコ入れ策が実施されないというわけです。

 なお、潜在成長率は「労働投入量」「資本投入量」「全要素生産性(TFP)」の3つの要素の寄与度に分解できますが、先述の労働市場の変化を反映して「労働投入量」の寄与度がマイナスになり、高齢化に伴って貯蓄率が低下することで「資本投入量」の寄与度も下がっています。こうした中で、潜在成長率の低下に歯止めをかけるために、全要素生産性を高めていかなければなりません。

—生産性を高めるために、具体的には何が必要ですか?

民間のイノベーションに期待

 必要なのは、「イノベーション」「産業の高度化」、そして「国有企業改革」です。

 成長分野で中国の民営企業がイノベーションを生み出して伸びていくことに私は楽観的です。例えば、中国で一番元気な分野であるインターネット通販で活躍するのは民営企業ばかり。そして、小売販売総額に占める電子商取引の金額は中国が6000億ドルで、米国の3500億ドルを大幅に上回っています。小売販売総額に占める電子商取引の比率でみても中国は米国を大きく上回っています(図2参照)。

図2 中国におけるインターネット通販の販売額の推移    -米国との比較-

U.S. Department of Commerce

(出所)U.S. Department of Commerce、中国国家統計局、中国インターネット情報センター(CNNIC)のデータより野村資本市場研究所作成

 また、最近、全人代における「政府活動報告」では、「ゾンビ企業」の処理が優先課題として挙げられています。その一環としてファンドを作り、労働力を鉄鋼や石炭といった衰退産業から成長産業に移すことを支援しようとしています。これにより、産業の高度化が促されるでしょう。

 一方で心配なのは、国有企業改革です。1999年に「国有経済の戦略的再編」という方針が決められ、それに従えば、一部の分野を例外として、大半の国有企業が民営化の対象になるはずでした。しかし実際その後、大型国有企業はほとんど手付かずで残っています。

 さらに習近平政権になってからは、国際競争力を高めるため国有企業を強化するという方針が示され、大型国有企業同士が統合し、より独占的な存在になっています。効率的な企業統治のためには、国有企業の民営化が望まれますが、その進展はなく、今後の国有企業改革に私は悲観的です。

 もっとも、国有企業改革が進むようであれば、中国経済の将来にその分、もっと楽観的になれます。逆に、民営企業に対して中国共産党が指導などの形で干渉を強めるようであれば、その分だけ悲観的にならざるを得ません。このように、中国経済の将来は、国有企業改革と民営企業の発展にかかっていると言えますます。

良ければ下にあります

を応援クリックよろしくお願いします。

3/31日経ビジネスオンライン 鈴置高史『韓国を無視して「パンドラの箱」を開ける米国 「米朝平和協定」で米・中・朝が取引』について

韓国の二股外交のツケが回ってきたという事でしょう。蝙蝠のように米中の間を行き来し、大国の鼻面を引き回すようなことをすれば、普通の感覚を持っていれば、どういう結果が生じるか予想されるでしょうに。桂・タフト協定やアチソン声明のような展開になるだけです。朝鮮半島の人々はニクソンの言った「朝鮮人は、北も南も感情的に衝動的な(emotionally impulsive)人たちです。私たちは、この衝動と闘争的態度が私たち(米中)両国を困らせるような事件を引き起こさないよう影響力を行使することが大切です」というのは至言です。

朴大統領も昨年末の慰安婦合意後、日本批判のトーンを抑制してきています。室谷克美氏によれば「おねだりの前兆」とのこと。韓国経済がうまく行ってないので「通貨スワップ」を日本に要請することを考えているのかもしれませんが、7月衆参同日選が控えていますので、少なくとも8月まで認めることはないでしょう。米国の圧力があれば躱すのは難しいかもしれませんが、慰安婦の嘘を世界に撒き散らした民族ですので助けるのは止めてほしい。北との戦いも勝手にやって、日本に応援を求めないでほしい。GSOMIA締結も反対です。韓国は中国同様、日本の敵国です。反日教育をしている国と友好関係など築くことはできません。反日教育を止めてから普通に付き合えば良い。それまではできるだけ関わらないことです。

オバマのレガシーで北との平和協定締結というのは金正恩体制のままでは難しいのでは。中国が米国の斬首作戦を認め、中国がその後傀儡政権を打ち立てるシナリオを描いていれば別でしょうけど。でも北も同じ朝鮮民族なので火病を起こしやすいので、下手に体制を変えると騒乱に次ぐ騒乱となり、旧満州にいる朝鮮族にも刺激を与え、それが瀋陽軍にも動揺を与える可能性もあります。リスクが高くなるので、このままズルズル、金が核開発して、小型化・長距離化を事実上、認めることになるのでは。イスラエルやインドも核を持っても戦争にならなかったというか、核を持ったが故に戦争にならなかったと考えるべきでしょう。日本も核を持つことを真剣に考えて行きませんと。中露北と核武装国に囲まれて安穏と暮らしている神経が理解できません。

記事

Wang Yi VS Kerry-2

米中は2月23日の外相会談で「米朝平和協定」も話し合う6カ国協議の開催に合意した。韓国は寝耳に水だったようだ(写真:AP/アフロ)

前回から読む)

 米国、中国と北朝鮮が「米朝平和協定」の締結を模索する。韓国は蚊帳の外だ。

激変する日本の安保環境

鈴置:朝鮮戦争(1950―1953年)に正式に終止符を打つ「平和協定」。これをテーマに米国と北朝鮮が話し合う可能性が出てきました。

 米朝がこの協定を結んで国交を樹立すれば朝鮮半島は、少しは安定するかもしれません。逆に、より不安定になるかもしれません。在韓米軍の削減・撤収につながるでしょうから(「朴槿恵外交は『暴走』から『迷走』へ」参照)。

 いずれにせよ、日本を取り巻く安全保障の環境が大きく変わります。動きを注視する必要があります。米朝平和協定は東アジアにとって「パンドラの箱」なのです。

韓国には参加資格がない

—韓国は平和協定に参加しないのですか。

鈴置:そこが微妙な点です。1953年に結んだ休戦協定により、朝鮮戦争は「中断」しました。協定に署名したのは米国と、中国・北朝鮮です。当時の李承晩(イ・スンマン)大統領があくまで統一を求め休戦に反対したため、韓国は署名に加わらなかったのです。

 北朝鮮は、一時的な休戦協定を恒久的な平和協定に置き換えることで地域の安定を増そう、とかねてから唱えてきました。米国との関係改善や在韓米軍の撤収が狙いです。

 実は「韓国に対する嫌がらせ」も北朝鮮の目的の1つなのです。「韓国は休戦協定に署名していないので、平和協定を議論する資格はない」と、交渉の場から排除できるからです。

 とは言っても現実には、韓国軍も北朝鮮軍と対峙しています。米朝だけが平和協定を結んでも実効性がありません。議論に韓国が加わるかは、駆け引きの材料として使われていくのでしょう。

乱れる米韓の足並み

—今回、韓国はどう対応しているのですか?

鈴置:動きがとれないでいます。そもそも当事者というのに韓国は、平和協定を交渉のテーブルに載せる動きを米国からちゃんと知らされていなかったフシがあります。

 2015年9月に中国が開いた天安門での軍事パレードに朴槿恵(パク・クンヘ)大統領が参加しました。それ以来、米国は韓国に肝心なことを教えてくれなくなった――と言う韓国の記者もいます。

 平和協定を巡る論議が韓国の“弱点”であることは米国も分かっています。だから、これまでは北朝鮮の誘いに安易に乗ることはなかった。

 特に、北朝鮮の核開発が問題になって以降は「北が核で何らかの譲歩を示して初めて平和協定を議論する」ことで米韓は足並みを揃えてきました。それが乱れ始めたのです。

 北の核問題が深刻になったため、対北政策に関しては米国は中国への依存を増しています。当然、韓国の意見には耳を貸さなくなります。

 韓国人は「米中が何か密約を結んだのではないか」「韓国は米国から裏切られるのではないか」と疑心暗鬼に陥りました。メディアにも、そんな心情を吐露する記事が載るようになりました。

米朝秘密交渉から米中合意へ

—「米朝が平和協定を巡り秘密交渉」と米国紙が報じたことがありましたね。

鈴置:2月21日にウォールストリートジャーナル(WSJ)が「4回目の核実験の少し前に、米朝が戦争の正式な終結――つまり、平和協定――に関し秘密交渉していた」と特ダネを書きました(「朴槿恵外交は『暴走』から『迷走』へ」参照)。

 「U.S. Agreed to North Korea Peace Talks before latest Nuclear Test」(英語版)という記事でして「4回目の核実験のため、米朝の秘密交渉は途絶えた」とも報じました。

 この部分を読んでほっとした韓国人もいたでしょう。でも、それはすぐに裏切られました。今度は米中が、平和協定を6カ国協議――朝鮮半島を巡る多国間協議で話し合うことで合意したのです。

 流れを追うと分かりやすい。「表・平和協定を巡る動き」をご覧下さい。北朝鮮は4回目の核実験の9日後の1月15日に米韓演習中断・平和協定締結と、核実験中断を取引しようと米国に提案しました。

 

平和協定を巡る動き(2016年)
1月6日 北朝鮮、4回目の核実験
1月15日 北、米韓演習中断と核実験中断・平和協定締結の取引を提案
2月7日 北朝鮮、長距離弾道ミサイル実験
2月17日 王毅外相「非核化と平和協定を同時に進める交渉を提案」
2月21日  
WSJ「4回目の核実験の前に米朝が平和協定に関し秘密交渉」
米国務省報道官、WSJ報道に関連「北が交渉を提案してきた」
2月23日  
ケリー国務長官「北が非核化を話し合う場に来れば平和協定も」
王毅外相「6カ国協議再開を通じ中国の当然の役割を果たす」
3月2日 国連安保理、対北朝鮮制裁案を採択
3月7日  
米韓合同軍事演習開始(4月30日まで)
洪磊・中国副報道局長「中国の玄関先での米韓演習に懸念」
3月8日 ソン・キム特別代表「韓国が知らない米中の秘密取引はない」
3月11日 リッパート駐韓大使「イラン、キューバ、ミャンマーと関係改善」
3月14日 尹炳世外相「韓米中3カ国協議は遠くない未来に稼働と期待」
3月15日 金正恩第1書記「早いうちに(次回の)核とミサイル実験を断行」
3月20日 オバマ大統領、キューバを訪問し21日にカストロ議長と会談
3月22日 ソン・キム代表と金烘均・本部長、3カ国協議推進で一致

 同日配信の朝鮮中央通信の記事「朝鮮外務省、敵対勢力らの反・共和国挑発行為を非難」(韓国語)の一節を以下に翻訳します。

  • 朝鮮半島と東北アジアの平和と安定のために、我々が示した「米国の合同軍事演習の中止」対「我々の核実験の中止提案」と「平和協定の締結提案」を含むすべての提案はいまだに有効である。

中国提案に乗った米国

—このニュースは初耳でした。

鈴置:ええ、日本でも韓国でも、ほとんど報じられませんでした。「北朝鮮のいつもの宣伝攻勢」と見なされたからです。ましてや、米国がそれに乗るとは想像しにくかった。

 なおこの記事で、北朝鮮は「平和協定の締結」を自らが米国に与える案件に数えています。実態は逆なのですが「平和協定を結んでほしい」と米国に頭を下げれば、舐められると考えたのでしょう。

—韓国が「日本が望むなら通貨スワップを結んでやってもいいぞ」と言ってくるのと、似ていますね。

鈴置:その通り、全く同じです。北も南も「見栄張り」なのです。話を平和協定に戻しますと、次に動いたのが中国です。王毅外相が2月17日に「非核化と平和協定を同時に進める交渉を提案する」と語りました。

 これも想定の範囲内の動きでした。米朝が平和協定を結べば、在韓米軍を追い出せるかもしれない。中国は北京の目と鼻の先の朝鮮半島に駐留する米軍が目障りでしょうがない。願ってもない話なのです。 

 だから多くの朝鮮半島観察者も、たぶん韓国政府も「中国がダメ元で言い始めたな」と見たわけです。

 でも、驚いたことにその6日後の2月23日、米国のケリー国務長官が「もし北朝鮮が非核化を話し合う場に来れば、朝鮮半島の未解決の問題を解決するための平和協定も最終的には可能だ」と述べたのです。中朝の「平和協定の締結を話し合おう」との提案を米国が受け入れたのです。

 米国務省の発表資料「Remarks With Chinese Foreign Minister Wang Yi」を見ると、ちゃんと「平和協定」(peace agreement)という単語を使っています。以下です。

  • it can actually ultimately have a peace agreement with the United States of America that resolves the unresolved issues of the Korean Peninsula, if it will come to the table and negotiate the denuclearization.

見過ごされた大ニュース

—このニュースも見た覚えがありません。

鈴置:ワシントンで開かれた米中外相会談の後の記者会見で、この発言は出ました。当時、世界のメディアは「厳しい北朝鮮への制裁に中国が合意するか」と「南シナ海での米中対立」に関心を集めていましたから、平和協定に関する発言は見過ごされがちでした。

 会見には中国の王毅外相も出席していました。ケリー国務長官の「平和協定」発言に先立ち「朝鮮半島の非核化と、休戦協定を平和協定に転換する作業を並行して進めたい」と述べ、改めて中国の立場を強調しています。米国務省が発表した英文は以下です。

we want to pursue in parallel tracks the denuclearization of the Korean Peninsula and the replacement of the Korean armistice with a peace agreement.

 会見で米中は一緒になって「平和協定と引き換えに北の核問題を解決する」構想を打ち出したのです。外相会談1発で決まるものではないでしょうから、会談前に相当に煮詰めてあったと思われます。

手を打って喜ぶ?北朝鮮

—米中外相会談で中国が「従来にない強い対北制裁」に合意したのは、米国からミサイル防衛で譲歩を勝ち取ったからだ、との報道もありました。

鈴置:THAAD(サード=地上配備型ミサイル迎撃システム)の在韓米軍への配備問題ですね(「 米国から『ピエロ役』を押し付けられた朴槿恵」参照)。

 中国は配備に強硬に反対していましたし、この問題に関する米韓協議が遅れたことから考えて、米国はTHAADも取引材料に使ったのでしょう。

 ただ、それ以上に大きなカードとして米国が使ったのが「平和協定」だったのではないかと思います。中国にとって、THAAD配備中断よりも在韓米軍撤収に伏線を敷ける方が、はるかにありがたいはずです。

 そしてケリー長官は同じ会見で「(制裁の)目的は非核化を話し合う6カ国協議のテーブルに北朝鮮を引き戻すことだ」と述べました。6カ国協議とは南北朝鮮に米中日露が参加する話し合いの場です。

 王毅外相も「中国は6カ国協議の議長国として、その再開を通じ自らの当然の役割を果たす」と述べました。これで「休眠中の6カ国協議を再び開き、その中で平和協定も話し合う」流れがすっかり出来上がりました。

 韓国は相当に焦りました。平和協定は在韓米軍の撤収――米国の対韓防衛の約束破棄につながりかねない。それに交渉の過程で「お前は関係ない」と除け者にされる可能性があるからです。

 しかし韓国が反対しようにも、いつの間にか米中朝が協議に動き始めたのです。北朝鮮は自分の目論見通りに世の中が回り始めた、と手を打って喜んでいることでしょう。

半島では仲がいい米中

—米中は協力的ですね。両国は対立を強めていると思っていました。

鈴置:大枠で言えば対立を強めています。でも、朝鮮半島に関しては「仲がいい」のです。米中には「多大な人的損害を出した朝鮮戦争の失敗を2度と繰り返したくない」との共通認識があるからです。

 1972年にニクソン大統領が周恩来首相に語った、以下の言葉がその象徴です。『ニクソン訪中機密会談録』の100ページから引用します。原文は「Nixon’s Trip to China」の「Document 2」の17ページに出てきます。

  • 朝鮮人は、北も南も感情的に衝動的な(emotionally impulsive)人たちです。私たちは、この衝動と闘争的態度が私たち(米中)両国を困らせるような事件を引き起こさないよう影響力を行使することが大切です。

 まさに今、米中は「感情的に衝動的な朝鮮人が米中を困らせることがないよう」談合を始めたのです。

米朝の威嚇合戦

—現在、米朝は激しい威嚇合戦を繰り広げています。そんなに簡単に話し合いに移行できるものでしょうか。

鈴置:確かに、米韓は近年まれな大型の合同軍事演習を実施中です。3月7日に始まった米韓合同軍事演習「キー・リゾルブ」と「フォール・イーグル」は4月30日まで続きます。前者が図上演習、後者は野外機動訓練です。

 この中で、米韓は北朝鮮への侵攻を念頭に置いた上陸訓練を3月12日に韓国東海岸の浦項で実施しました。

 金正恩(キム・ジョンウン)第1書記を殺害する特殊作戦の訓練も実施する計画と韓国紙は報じています。もちろん4回目の核実験と、長距離弾道ミサイル実験を実施した北朝鮮への威嚇が目的です。

 一方、米韓演習に対抗し、北朝鮮も3月10日と18日、21日に弾道ミサイルを日本海に向け発射しました。

 3月9日には「核弾頭の小型化」に、3月15日には「弾頭の大気圏再突入」に成功したと発表するなど「核ミサイルの実戦配備も間近」とのイメージを打ち出しました。

「イラン合意」が雛型

—これを見ると、米韓が北朝鮮と激しく対決する構図です。

鈴置:でも「軍事的恫喝」や「経済制裁」では「出口」は見えません。米国を含め、軍事行動によって北の核を除去しようと考える国はありません。

 経済制裁のカギは中国が握ります。北朝鮮の貿易の90%は中国が相手だからです。ところが中国は、北朝鮮に核を放棄させるほどの厳しい制裁を実施するつもりはない。

 北が軍事的に暴発したり、あるいは経済が破綻して難民が中国に押し寄せたら大変だからです。下手に北朝鮮が消滅すれば、米軍が駐留する統一韓国と領土を接することになります。

 米国も、米中関係の悪化まで覚悟して中国に「厳しい対北制裁を実行しろ」と迫る気はありません。手詰まりに陥った米国は中国に歩み寄り「平和協定を北朝鮮と論議しろ」との主張を受け入れたのでしょう。

 表には出ていませんが細かな事実の断片をつなぎ合わせると、米中は「北朝鮮の核開発の進展を食い止めることに目標を置く。そのために中国もある程度厳しい制裁に同意する。一方、米国も北朝鮮の要求をある程度のむ」ことで合意したと思われます。

 根っこには「北に核を完全に放棄させるのは難しい。それならせめて核開発のテンポを遅らせよう」との発想があるのでしょう。2015年の「イラン核合意」と同じ考え方です。米中は国連の常任理事国としてこの合意を共に作った実績があります。

大手柄の3代目

—韓国以外は、平和協定を米朝が協議するメリットがあるのですね。

鈴置:ことに北朝鮮がそうです。米国と平和協定を結ぶことができれば、金正恩第1書記は権力基盤固めに使うでしょう。自分が米韓の間にクサビを打ち込んだと誇れますからね。

 さらに、協定をテコに在韓米軍の削減・撤収を実現できれば、祖父や父親も果たせなかった外交的な大勝利を3代目が実現することになります。

 それに激しい「威嚇合戦」には、米朝が自らのカードの値段を釣り上げる狙いも込められていると思えます。

 北朝鮮が今、実施している宣伝は弾頭の小型化にしろ、再突入技術の確立にしろ、すべて「核ミサイルの実用化に成功したぞ」との内容です。

 「表・朝鮮半島を巡る米、中朝のカード」で示したように、それらは交渉カードとなるのです。要は「俺の核は高いぞ」と協議の場でふっかける準備でもあるのです。

朝鮮半島を巡る米、中朝のカード
米国 中国・北朝鮮
THAAD配備留保 従来より強い対北朝鮮制裁容認
米韓合同軍事演習の中断と一部制裁の解除 北朝鮮の核・ミサイル実験の中断
米朝平和協定の締結  ・米朝国交正常化  ・在韓米地上軍撤収  ・在韓米軍撤収  ・米韓同盟廃棄 北朝鮮の核兵器廃棄  ・核弾頭の増産中断  ・弾頭再突入技術の開発中断  ・弾頭小型化技術の開発中断  ・保有核兵器の全廃
「朝鮮半島の非核化・中立化」の制度的保障

注)左右の項目は必ずしも連動しない

 反対に、米韓が繰り広げる久しぶりの大規模な合同軍事演習もそうです。この期間中、北朝鮮は準戦時体制をとらざるを得ません。例えば、鉄道も通常の体制では運行はできません。当然、経済活動に大きな支障が出ます。

 米国は大規模の演習をすることで「我々が軍事演習を中断しない限り、あんたは大損し続けるよ」と言い渡しているも同然なのです。

貧乏くじ引いた韓国

—今後、半島はどう動くのでしょうか。

鈴置:米韓合同軍事演習が終わる4月30日までは、米韓と北の間で威嚇合戦が続くでしょう。そして5月初めに北朝鮮労働党は36年振りの党大会を開きます。

 もし軍事的な衝突が起きなければ、党大会後に6カ国協議が開かれ、米朝間で平和協定に関して取引が始まる可能性があります。

—では、1人だけ貧乏くじを引いた韓国はどうするつもりでしょうか。

鈴置:どうすることもできません。

(次回に続く)

良ければ下にあります

を応援クリックよろしくお願いします。

3/30日経 中前忠『中国、その債務の大きさ』3/31日経『人民元安 綱渡りの中国(上)為替介入、市場は疑心 外貨準備、迫る限界』、『凍り付く油田の街・大慶 中国石油失速、現地を歩く 5万人一時解雇の観測も』について

中国の債務の大きさと人民元安、失業の記事です。どれをとっても中国経済の危うさについて触れられています。あれだけ日経は中国進出を煽ったのが様変わりです。身の丈にあった経済成長ができなかった、通貨発行をし過ぎて借金体質になり、期日までに借金が返せず、デフォルト・倒産の構図です。資本主義社会では、ハゲタカが現れ、資産を食い尽くすところでしょうけど、社会主義市場経済と言う自家撞着、畸形の資本主義なので、常識が通用しません。中国国内で経済が完結すれば良いのでしょうけど、不動産投資と純輸出で持っている国ですから、世界経済に与える影響は大きいです。

大慶油田に見られるように、リストラすれば当然失業者が増え、暴動の種となります。況してやマクロ経済で見れば消費へのインパクトは大きいものがあります。失業給付なんて雀の涙です。

http://www.clair.or.jp/j/forum/c_report/pdf/320.pdf

為政者もどこから手を付けて良いか分からないのでは。緊縮財政にすれば失業者増→暴動頻発→社会不安→共産党打倒革命、放漫財政にすれば、①人民元安→キャピタルフライト→外貨準備減少→輸入量減少→資本規制→新規投資減少や②人民元安→インフレ→国民生活困窮→暴動頻発→社会不安→共産党打倒革命の道を歩むのでは。人権意識など微塵も持ち合わせていない共産党幹部は第二の天安門事件を平気で起こすか、対外戦争の道を歩むのでは。1900年の義和団の乱のように大衆暴動を攘夷に使い、大使館や教会、学校を焼き打ちして戦争へ誘うことも考えられます。何せ常識が通用しない国、「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という国です。もし、そうなれば、米国はリアルタイムで中国で起きていることを衛星によりキャッチし、全世界に向けて発信すれば良い。中国は衛星をロケットで撃ち落とそうとするかもしれませんが、そうなると、ミサイル防衛で対抗できるかどうかは分かりません。

中国の軍事拡張を抑止するには、先ず経済的に中国を封じ込めることです。豊かにすれば軍事予算に注ぎこみ、世界制覇の野望を実現させてしまうことになります。習近平の言う「中国の夢」とは世界を牛耳り、富を共産党幹部で独占することを意味します。米国が総て正しいとは思いませんが、少なくとも自由の理念には共鳴できます。自由のない、人権のない共産中国をのさばらせたら世界は不幸になるに決まっています。日本企業も目先の利益のことだけ考えるのでなく、長期的な国益を考え、中国を利することのないような行動を取ってほしいです。

中前記事

バブルをもたらすのは債務の異常な増加である。これが限界を迎えるのは、収益見通しが悪化し、貸し手が投融資の拡大に不安を覚えてくるからだ。債務の増加が止まり、投資が落ちてくると、経済は急減速し、債務の過剰と不良化が表面化してくる。

 リーマン・ショック直後の2009年から15年第3四半期にかけて、国際決済銀行(BIS)の推計によると、中国の非金融企業の債務は6.2兆ドルから17.4兆ドルへと11.2兆ドル増えた。この間の名目国内総生産(GDP)の増加は5.4兆ドルである。GDPを1兆ドル増やすのに、企業部門だけで2兆ドル強の債務増を必要とした。

 これに対して、世界(BIS報告国全体)のGDPは11.7兆ドル、債務は12.4兆ドルの増加だ。中国は世界GDP増加の46%、企業部門債務増加の90%を占める。

 この企業部門による11兆ドルの債務増が不動産を含む設備の過剰を生んだ。問題は、設備稼働率が大きく下がり、在庫も増える中で不良債権が増加してきていることだ。生産者物価上昇率が前年比マイナス5.3%で、都市部の1人当たり可処分所得(賃金上昇率に近い)の伸びが6.8%という中では、大半の企業が赤字経営のはずだ。不良債権が増加する銀行の貸し出し余力の低下もあって、企業金融は急速に引き締まってくる。

 設備過剰もそうだが、債務の過剰は、その増加額でみても、GDP比でみても、1990年代の日本のバブルをはるかに上回っている。中国経済は明らかに長期停滞に入っている。原油価格などの反発はあっても、これが持続する条件はないのである。

 中国の工業化の終わりと共に、モノの世界の収縮は続いていかざるを得ないのだが、そのなかで金融市場の収縮もまた避けられそうにない。世界的な金融不安はこれからが本番なのではないか。

(中前国際経済研究所代表 中前忠)

3/31日経記事

中国の人民元に先安観測がくすぶっている。中国当局が急激な元安を食い止めるため為替介入を繰り返した結果、外貨準備高は2月末時点で3兆2023億ドル(約363兆円)と1年余りで約6千億ドル減少した。介入を続ければ外貨準備の水準が早晩限界に迫るとの見方もあり、市場の疑念は払拭されていない。資本規制の強化が必要との声も出ている。

money exchange in Shengzhen

 荷物を抱えた人々でごった返す広東省深圳市の福田口岸。橋を渡れば香港まで徒歩数分の距離だ。厳しい荷物検査はなく、中国税関はほぼフリーパスで渡航者を通す。このためカバンに人民元の札束を詰め、香港で米ドルなどに両替する運び屋の姿が後を絶たない。

 中国政府が個人に認めた両替枠は年5万ドルまで。福田口岸は規制をかいくぐるのに格好の場所だ。国営新華社によると、当局は2015年に海外に不正送金する「地下銀行」を60行以上摘発、違法取引額は摘発された分だけで1兆元(約17兆円)を超えた。昨夏以来、人民元や中国株式の相場が不安定になっていることが背景にある。

 「正常化してきた」。中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は12日、全国人民代表大会(全人代、国会に相当)の期間中に開かれた記者会見で人民元の安定に自信を見せた。米連邦準備理事会(FRB)が16日、年内の利上げ回数2回を示唆したことで人民元は対ドルでやや安定を取り戻したが、その背後にはやはり人民銀の存在がある。

 「また為替介入したようだ」。中国・上海外国為替市場。中国人ディーラーが電話越しに人民銀の動向を噂し合う。最近目立つのは単純な元買い・ドル売りではない。

 人民銀は金融派生商品を駆使し始めた。相手先にドルの現金を渡すのは数カ月先の契約満期を迎えてから。その間、人民銀はドルを温存し外貨準備を減らさずに済む。「外貨準備のドルを消費せずに、元を下支えできる」(市場関係者)

 中国の外貨準備は1月まで毎月1千億ドル規模で減少。外貨準備枯渇への不安がさらなる元安を呼ぶ悪循環を招いていた。介入効果もあり2月の減り幅は前月比286億ドルと市場予想を下回った。

 しかし「人民銀が結んだ契約の満期が来れば外貨準備は大幅に減るはず」(仏ソシエテ・ジェネラルの中国担当エコノミスト、姚煒氏)。国際通貨基金(IMF)の指針では中国の外貨準備の必要水準は2兆8千億ドル程度。これまでの勢いで減ると早晩到達する。

 貿易黒字国の中国で人民元に強い下落圧力がかかるのはなぜか。英バークレイズは「中国の資本流出の最大の要因は緩和的な金融政策にある」と根本的な理由を指摘する。08年に国内総生産(GDP)の1.5倍だった中国の通貨供給量は15年には2倍を超えた。

 人民銀は成長下支えで膨大な量のマネーを発行してきた。全人代財政経済委員会の尹中卿副主任は「あふれ出た資金が株式や不動産などに流れ込み、市場の変動を大きくさせてきた」と金融緩和が過大だったと評する。

 中国は過度な元安を容認しない方針を鮮明にしている。ただ元安阻止に外貨準備を使い続ければいずれ資本規制を課さざるを得ない。半面、金融を引き締めすぎれば経済に打撃を与える。中国は通貨政策を巡りジレンマに直面している。

『凍り付く油田の街・大慶 中国石油失速、現地を歩く 5万人一時解雇の観測も』記事

成長に急ブレーキがかかった中国石油天然気(ペトロチャイナ)など中国国有石油大手。膨張するエネルギー需要をまかなおうと各社が掘り進めてきた中国国内の油田に異変が起きている。その代表格が中国東北部の黒竜江省大慶市に広がる「大慶油田」だ。3月中旬、現地を訪れると、稼働を止めた石油掘削機が「墓標」のように並び、人々は不況の影におびえていた。

oil rig in Daqing

動きを止めた無数の石油掘削機が点在する(黒竜江省大慶市)

 ススキ野原の向こうに音もなく静かにたたずむ石油掘削機が見えた。1年前まではモーター音を響かせ地下から石油をくみ上げていた大慶経済の屋台骨。地元住民の張さん(39)がつぶやく。「あいつら、間もなく取り壊されるんだ」

 数万基の石油掘削機が点在する大慶市。今ではその半分近くが稼働を止めている。「習大大(習おじさん)が来てからすべてがおかしくなった」。張さんが声を潜めて言う。

 習近平国家主席が中国東北部を視察に訪れたのは昨年7月。黒竜江省幹部との会議で習氏はこう発言したという。「そんなに多くの掘削機を動かしても電気の無駄遣いだ」。景気減速で原油需要が細り価格も下がっている。それでも原油をくみ上げ続ける大慶油田の非合理性を習氏は指摘した。

Daqing in Heilongjiang

 それから急激な変化が大慶市を襲う。市内の掘削機が次々に緊急停止し、油井が閉められていく。2015年の大慶油田の生産量は3838万トンとピーク時から3割減った。油田運営会社の売上高は964億元(約1兆6700億円)と前年比で半減。同社を傘下に持つペトロチャイナの業績悪化の主因にもなった。

 大慶市は域内総生産(GDP)の6割を油田に頼る。270万人の人口の1割が油田運営会社の社員で、その家族や関連産業も含めれば、石油に携わる人たちは人口の半分に達する。原油減産が地元経済に与えるインパクトは計り知れない。

domestic production of crude oil in China

 「去年の今ごろは月に80~90台は売れていた。それが今は半分だ」。日産自動車系の「東風日産大慶易嘉店」の営業担当者が顔を曇らせる。油田関係者が現金一括払いで新車を買う例も珍しくなかったが、昨夏以降は客足がぱったり止まった。

 市中心部で威容を誇る市政府ビル。「政府は我々の生活を保障しろ」。3月中旬、40人以上のタクシー運転手が大声を張り上げていた。不景気でタクシーを利用する人が急減。その不満のはけ口を政府に求めた。一時は武装警察が出動する騒ぎになったという。

 市内最大級の商業施設に入店する米系コーヒーチェーン「スターバックス」では連日苦情が絶えない。「コーヒー1杯22元は高すぎる。こんな時なんだから、安くすべきだ」。収入が減った市民が訴える。

oil rig in Daqing-2

大慶市は270万人の人口のうち半分が石油に携わる

 市政府も手をこまぬいていたわけではない。1年半前にはスウェーデンの高級車大手ボルボ・カーの乗用車工場が本格稼働。売れ筋のSUV(多目的スポーツ車)などを生産し、部品メーカーの誘致も活発だ。それでも新たに生んだ雇用は1千人程度にすぎない。

 「市民の半分が不眠症にさいなまれている」。21日付の地元紙「大慶晩報」はこう報じた。仕事のストレスが原因という。不安に拍車をかけるのが、大慶油田が今夏に実施するという5万人規模のレイオフ(一時解雇)計画だ。

 「あと3年で定年なんだ……」。寒空の下、油井の改修にあたるベテラン作業員(52)に出会った。プレハブに泊まり込み、昼夜問わず働いてきたという。だが今、周囲に連なる石油化学工場で煙を出しているのは半数程度。「何とか30年やってきたんだがね」。あきらめにも似た表情でそうつぶやくのがやっとだった。

 ▼大慶油田 1959年に発見された中国最大の油田。ロシアに接する黒竜江省のハルビンとチチハルの間に位置する。海外技術に頼らず中国独自に開発をなし遂げた模範職場として、かつて「工業は大慶に学べ」とのスローガンが全国で流行した。最盛期には日本の原油輸入量の3割に相当する年5千万トン以上の生産量を誇った。失脚した共産党の元最高指導部メンバー、周永康氏ら「石油閥」の出身母体としても有名だ。

良ければ下にあります

を応援クリックよろしくお願いします。

3/30NEWSWEEK ルーシー・ウェストコット『中国有力紙の編集者が抗議の辞任、痛烈な辞職届をネットに公開』、3/30産経ニュース『中国の“モノ言う新聞”編集者が抗議の辞職 「共産党の代弁できぬ」 香港紙報道』について

人権抑圧国家が国連人権理事会の裏で、日本の左翼弁護士等を使い、日本について非難させることをやっているのはお笑い種としか言いようがありません。裏で理事国の委員とか左翼弁護士に金を握らせていると思います。

共産主義は一党独裁で、三権分立していませんから、党や行政機関をチエックする仕組みが存在しません。司法も行政機構の一部、メデイアも党の「喉と舌」で党の指導を受けなければなりません。日本の記者クラブ内のインナーサークルという安全地帯で政府を批判していれば高給が食める国とは違います。投獄や死刑覚悟で政府や党に逆らいます。日本の左翼リベラルにはその覚悟は微塵も感じられません。

3/11小生のブログで南方都市報の党との戦いぶりを書きました。

http://dwellerinkashiwa.net/?p=3469

習が改革(改悪?)を進めれば進めるほど、摩擦は大きくなります。経済的に豊かになれば、党がいくら押えようとも、真実に近づく道は沢山出てきます。秋瑾とか汪兆銘が中国でどのように評価されていたとしても、共産党が崩壊したら評価は180度変わるでしょうから。秋瑾の磔刑の時には中国人は饅頭を持って彼女の血を吸いに行ったという本を読んだ記憶がありましたが、定かではありません。また、汪兆銘は墓を爆破されたという日本人にはとてもついていけないレベルの話があります。

中国人・朝鮮人とは距離を置いて付き合うべきです。

NEWSWEEK記事

Chinese Editor Resigns over Communist Party’s Media Crackdown

メディア規制が強化される中、「南方都市報」編集者が挑戦的な辞職届をネットに公開

Xi reviewed PLA

強まる言論統制 習近平に辞職を求める公開書簡がネットに表れたた3月上旬には、20人以上が逮捕された David W Cerny-REUTERS

 中国の有力紙の編集者が中国共産党のメディア規制に反発して辞職した。29日、広東省にある「南方都市報」の文化面編集者である余少鐳(ユィ・シャオレイ)が、マイクロブログの新浪微博(シンランウェイボー)に自らの辞職届を撮影して投稿。辞職の理由欄には「あなたたちの姓は名乗れない」と書かれていた。

 これは2月に習近平(シー・チンピン)国家主席が、中国メディアの「姓は”党”である」と言ったことを指している。すなわち、親である共産党に忠誠を尽くし、その意向に従えという意味だ。

 余少鐳の投稿は2時間ほどで消去されたが、BBCがそのウェブ魚拓(キャッシュとして保存されたもの)にリンクを張っている。BBCによると、余は投稿の中で「私も年をとった。長年(党に)跪いてきたが、これ以上は膝が持たない」と書いていた。

Yu Shaorei

【参考記事】党を批判したとして編集担当者を解雇――中国「南方都市報」

 余の投稿には微博の検閲に関する言及もあった。「私の微博を監視し、どの投稿を消すかを上司に報告している人へ。もう安心していい。この数年、心労をかけてしまっていたのなら申し訳ない。あなたの新しい仕事がうまくいきますように」

神経をとがらせる当局

 広州の地方紙である「南方都市報」は、南方日報グループの発行。共産党に許容され得るギリギリのラインを見極めながら報道を続けてきた同グループは、中国で「有数の挑戦的な媒体をいくつも抱えている」とニューヨーク・タイムズは評している。アジャンス・フランス・プレスによれば、余少鐳はこの新聞で16年勤務してきた。

【参考記事】公開状「習近平は下野せよ」嫌疑で拘束か?――中国のコラムニスト

 中国ではこのところ、当局が神経をとがらせ、メディア規制を強化している。3月上旬、全人代(全国人民代表大会)の前日に、「習近平は辞職せよ」と勧告する謎の書簡が「無界新聞」に掲載された。無界新聞は新疆ウイグル自治区主管のニュースサイトだ。この書簡を誰が書いたかはわかっていないが、「忠実な共産党員」と署名し、習を独裁者と呼んで、経済運営の失敗を批判していた。この件で20人以上が逮捕され、その家族も身柄を拘束されている。

米NPOのジャーナリスト保護委員会によれば、中国では49人のジャーナリストが投獄されており、昨年は世界最多だった。また、キューバや北朝鮮、イランと並んで、ジャーナリスト保護委員会の選ぶ「最も検閲が厳しい国10カ国」にもランクインしている(8位)。

 27日には、ドイツ在住の中国人ジャーナリスト、長平が自身の弟2人と妹1人が四川省で身柄を拘束されたことを発表した。ジャーナリストの逮捕と家族の拘束は、今年も続いている。

産経記事

【上海=河崎真澄】中国広東省をベースに調査報道を手がけるなど「モノを言う新聞」として知られる南方都市報の編集者が、習近平指導部によるメディア統制の強化に抗議して新たに辞職したと、香港紙、東方日報などが30日報じた。

 習氏は2月、北京で中国国営中央テレビなど3大メディアを視察した際に「全てのメディアの姓(ファミリーネーム)は中国共産党であるべきだ」などと強調し、共産党の宣伝工作に絶対服従するよう指示していた。これに対し、南方都市報の編集者は、「あなたたちの姓など名乗れない」と書いた自身の辞職届を撮影してネット上に掲載。共産党の代弁はできぬ、と習指導部に対して抗議した。

 同紙では、3大メディア視察時の習氏の指示、「中国共産党を代弁する」について報じた際、その見出しのすぐ下に、改革派の地元企業トップが葬儀の後で海に散骨されたとの記事を掲載。「(改革の)魂が海に帰る」とする見出しを上下に並べたことが、習氏に対する皮肉だと判断され、複数の編集幹部が処分を受けた経緯がある。新たに辞職した編集者は、そうした当局側の締め付けにも反発したものとみられている。

良ければ下にあります

を応援クリックよろしくお願いします。

3/30日経ビジネスオンライン 篠原匡『“トランプ大統領”のディールとゼロサム 在日米軍撤退発言の背後にある思考パターン』、3/31日経『トランプ氏「日本、自衛か負担増を」 駐留米軍巡り』について

トランプはタフネゴシエーターというだけで、歴史観や世界観を持ち合わせていないタイプでしょう。ヘタな考えがないから白地のカンバスに絵を描くように周りが支えれば大化けする可能性もあります。日本の核武装についても言及していますが、パンダハガーのキッシンジャーでさえも2007年くらいから「日本の核武装は見たくはないが驚きもしない」とずっと言ってきたくらいですから。非核三原則は法律ではなく政策レベルの話なので、いつでも変えることができます。国是とか言って、国が無くなったら国是も意味を成しません。後は国民の覚悟の問題です。日本共産党は中国の核保有、しかも保有数量も明らかにしない国に抗議もしていません。中国の金で暴力革命を下心として持っているとしか思えません。

トランプに言われるまでもなく、日本は防衛に真剣に取り組み、米軍基地は縮小していくべきと思っています。自衛隊に米軍の肩代わりをさせていくべきです。ただ、日本単独で中国の脅威に対抗は出来ません。ATO(Asian Treaty Organization)を米国中心に、日豪印台+ASEANで作って、中国を封じ込めるのが肝要かと。ロシアは中立か味方に引き入れて包囲網を完成させないと、中国は暴発するでしょう。沖縄の米軍基地は地政学上の戦略要地です。半径2000Kmの円を描けば、アジアのメインの都市が入ります。尖閣・石垣を守るためには米軍基地の存在は大事です。比がスービック基地を米軍再貸与するのと同じです。

http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM19H14_Z10C16A3NNE000/

circle in a radius of 2000km from Okinawa

共和党主流派もあれほど嫌っていたクルーズを後押しし出しました。トランプの楽勝になるかと思っていましたが、まだまだ先が読めません。

日経ビジネスオンライン記事

“不動産王”が投下した爆弾が波紋を広げている。

 米大統領選における共和党候補指名争いで首位を快走しているドナルド・トランプ氏。「メキシコ国境に壁を作れ」など過激な言動で知られるが、3月26日に米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)で掲載されたインタビューで、日米関係の礎である日米安全保障条約の見直しについて持論を展開した。

Trump mentioned about withdrawal of US forces in Japan

トランプ氏は、日本が駐留経費負担を大幅に増やさない限り、在日米軍を撤退させる可能性を示唆した(写真:AP/アフロ)

 「米国が攻撃を受けても日本は何もしないが、日本が攻撃を受ければ米国は全力で駆けつけなければならない。これはかなり片務的な条約だ」。さらに、大統領に就任した際には、日本が駐留経費負担を大幅に増やさない限り、在日米軍を撤退させる可能性を示唆した。また、「日本が核武装することはそれほど悪いことではない」と、日本の核保有についても容認する姿勢を見せている。

日米安保に爆弾を投下したトランプ氏

 これまでトランプ氏は安保条約の不公平感については言及していたが、安全保障や対日外交について具体的に述べたことはあまりない。米軍撤退に触れたのも初めて。それだけに、日本政府関係者に衝撃が走った。菅義偉官房長官は「政府としてコメントを控える」と述べた上で、「日米安保体制を中核とする日米同盟は我が国の基軸。米国と緊密に連携していくことに変わりない」とコメントしている。

 トランプ氏がスーパーチューズデーで大勝を収めた直後、ワシントンの日系企業関係者と同氏の対日戦略について議論したことがある。結論から言えば、政策と言えるような政策を提示しておらず、経済面や外交面で日本に対してどういうスタンスを取るのか、材料がなさ過ぎて判断できないという話に終わった。ただ、その時に企業関係者が分析したトランプ氏の“思考パターン”が今回の見直し発言の底流にあるように思う。それは「ディール」と「ゼロサム」だ。

実業家のトランプ氏は1970年代以降、トランプタワーをはじめとするマンハッタンの再開発やカジノ建設などのビッグディールをいくつも実現させてきた。その一端は、1987年に出版した『The Art of Deal』に詳しい。これは、トランプ氏のビジネスにおける鉄則や成功の裏側をつまびらかにした自伝で、彼が数々の不動産取引をいかに成功に導いてきたのかが描かれている。

“優れたディールメーカー”の本質

 トランプ氏自身、今回の指名レースで自身を偉大なるディールメーカー(取引交渉者)と位置づけ、自分であれば米国を再び偉大な国にできると喧伝している。だが、ディールという言葉を突き詰めればいかに有利な条件でビジネスを展開するかという話であり、優れたディールメーカーとは、押したり引いたり駆け引きを駆使して最も有利な条件でビジネスを進められる人間のことだ。

 今回の在日米軍の撤退についても「ディール」という切り口で捉えることができる。在日米軍は米国のアジア戦略の要であり、負担の多寡で存在意義を語るべきではないが、物事を交渉と捉えてなるべく有利な条件を引き出そうとする彼の考え方が色濃く表われているように見える。

 もう一つのゼロサムは、失ったものを取り返すという思想だ。

トランプ氏が商標登録している選挙スローガン、“Make America Great Again”は米国を再び偉大な国にするという彼の強烈なメッセージである。だが、足元を見れば、米国が偉大な国に返り咲く材料はあまりない。

「パイの奪い合い」の結果としての偉大な米国

 シェール革命で米国は原油自給の道を切り開いたが、足元の原油安でシェール関連企業は死屍累々の山を築いている。財政悪化も頭痛の種で、世界の警察官として影響力を行使したのも昔の話だ。そもそも米国民自体が政府に、外交面で影響力を行使することよりも、経済など国内問題を解決することを望んでいる。

 その状況下で、偉大な米国を取り戻そうと思えば、どうしてもパイの奪い合いにならざるを得ない。奪われた雇用をメキシコや中国から取り戻せ、巨額の貿易黒字を中国や日本から取り戻せ--。その発想は、貿易を通じてウィンウィンを追求するというよりもゼロサムに近い。ウィンウィンという発想そのものに疑問が呈されているという面もあるのだが…。

 「トランプ氏が大統領になれば、ギブアンドテイクの面が強まるだろう。日本にとっていいことはほとんどないと思う」と先の企業関係者は語っていた。今回の在日米軍撤退発言にどれだけ深い意図があるのかは分からないが、ディールメーカー、トランプ氏が大統領になれば、この手の牽制球が続くのかもしれない。

日経記事

【ワシントン=川合智之】米大統領選の指名を争う共和党候補者の対話集会が29日開かれ、不動産王ドナルド・トランプ氏(69)は日本が北朝鮮の脅威に対抗するため核武装するのは「時間の問題だ」と述べた。日本が駐留米軍の費用負担を大幅に増やさなければ米軍は撤退するとして「日本が我々に金を払うか、自衛するかだ」と迫った。

 トランプ氏は「北朝鮮はすでに核兵器を持っている。我々が(日韓核武装の)引き金を引きたいのではない」と主張。核保有国を増やさない政策は「変えなければならない時が来るだろう」と述べた。

 トランプ氏は米国は軍事費などによる巨額の財政赤字国だとして、アジアや欧州を米が防衛することは「米国が破産するほどの大きな利益ではない。もはやそんな余裕はない」と指摘。「日本が自衛すれば我々は裕福になる」と強調した。

 トランプ氏は自身の選対責任者が女性記者の腕をつかんで暴行した疑いで29日訴追されたことについては「彼女の方が私を2度つかんだ」と反論した。米CNNテレビによると、監視カメラには選対責任者が女性記者の腕をつかむ様子が映っており、トランプ氏の説明は虚偽だとしている。

 29日には米大統領選の共和党候補指名争いから撤退したウィスコンシン州のスコット・ウォーカー知事(48)が、保守強硬派のテッド・クルーズ上院議員(45)への支持を表明した。党内はトランプ氏の指名阻止で結束する動きを加速しており、これまで共和主流派と敵対していたクルーズ氏をあえて支持する異例の事態となっている。

 クルーズ氏への支持を表明した主流派は2012年大統領選で共和候補だったミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事や、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事ら。トランプ氏を支持するのはニュージャージー州のクリス・クリスティー知事ら一部にとどまる。

 一方、トランプ氏は昨年9月、共和候補に誰が選ばれても結果を支持するとの誓約書を共和党全国委員会に提出したが、対話集会では「支持しない」と表明。お互いの妻を批判するなど対立が過熱しているクルーズ氏への対抗心をあらわにした。

下は3/31日経『米大統領選が映すもの(上) 共和党、原理・価値観の危機 国際秩序、揺らぐ恐れ 久保文明 東京大学教授』記事より

Republican candidates

良ければ下にあります

を応援クリックよろしくお願いします。

3/30日経ビジネスオンライン 福島香織『習近平は「十日文革」で“友達”を失った 「鬼平」「軍師」「大番頭」が消え、揺らぐ足元』、3/29ZAKZAK『AIIB、早くも“機能不全” 格付け問題未解決 中国政府内で内紛も』について

3/28小生ブログで石平氏の「王岐山が習近平より上と言うのはwishful thinking」と言いましたが、福島氏記事を読みますと中国内ではいろんな見方がされているという事です。王>習ではないものの習は寂しき王様になっていることが分かります。中国も集団指導体制になり、毛沢東や鄧小平のような建軍時代のカリスマは現れなくなりました。まあ、共産軍は日中戦争時逃げ回っていただけですが。

中国人は「散沙の民」とか「一人の時は龍、三人寄れば豚になる」と言われるだけあって、日本人と違い団結するのが苦手です。自己犠牲の精神が薄く、「俺が俺が」となります。自己主張する民族ですから。

共産党内部が分裂するのは良いことです。このまま友人がいなくなれば、習近平も暗殺されるかも知れません。強権政治の結果が、哀れな末路となって終結するかもしれません。習の代わりに誰がリーダーになっても中国経済の立て直しはできないでしょう。3経済主体で30兆$もの債務を負ってデフォルトの連鎖になるだけでしょう。ハイパーインフレにして国民生活を犠牲にして借金を減らすかと言うとこれも暴動→再革命となって怖くて共産党は出来ないでしょう。中国所有の不動産を外国に売却していけば、借金返済は可能かもしれませんが、生産手段の公有を目的とした共産党統治の否定に繋がります。人権抑圧をしている共産党が潰れることは理想ですが。

ADBはAIIBを助けることはありません。敵に塩を送ることができるのは相手が日本人の時だけです。世界は忘恩の徒で成り立っていると考えた方が良い。軍事膨張主義の中国を経済的に助けることは、やがてブーメランのように日本に跳ね返ってきます。日本共産党や反日民進党は3/29「戦争法案反対」デモを国会周辺でやっていましたが愚かです。「戦争反対」なら日本政府でなく、中国政府に向けて北京でやって見ろと言いたい。偏向マスコミも喜んでデモの様子を映すから始末が悪い。深く考えない人は日本政府が悪いと脳内に刷り込まれてしまいます。マスコミ、野党はどこが戦争法案なのか、国際政治動向(中国の東シナ海や南シナ海での動き)を踏まえて説明する責任があります。煽情的に念仏を唱えorレッテル貼りをして他者を悪者にするのは左翼の常套手段です。騙されないように。

福島記

Wang & Xi

写真は2015年3月の王岐山(左)と習近平。今年2月に起きた「任志強バッシング事件」をきっかけに、2人の関係に亀裂が?(写真:ロイター/アフロ)

習近平と王岐山の関係に亀裂が走っている、という話を聞いた。“十日文革”と揶揄される任志強バッシングがそのきっかけだという。任志強は王岐山の幼馴染にして今なお深夜に電話で話し込むような大親友関係であり、2月以降に盛り上がった任志強バッシング報道は実は王岐山バッシングであったことは誰もが感じとっていたことだろう。私は劉雲山VS王岐山・習近平の戦いの文脈でこの事件を読んでいたのだが、現地の中国の政治ウォッチャーたちが読み解く権力闘争構図はそう単純ではないようだ。

 任志強がどういう人物か、簡単に説明しておこう。

 父親は元商業部副部長まで務めた高級官僚・任泉生。本人は不動産大手・華遠集団総裁を務めたことのある太子党の不動産王である。2014年に企業家から足を洗っているが、中国不動産協会副会長など役職を務める不動産業界のドンであることは変わりなく、また北京市政治協商委員(市議に相当)、北京市西城区人民代表(区議に相当)という役職にも就いている。

「中国のトランプ」を一斉にバッシング

 本人がその回顧録でも明らかにしているように、中央規律検査委員会トップの王岐山と幼馴染で、その親密な関係を隠しもしていない。王岐山は言うまでもなく、習近平政権の反腐敗キャンペーンを指揮する“中国汚職改筆頭”の“鬼平”であり、官僚・企業家たちから蛇蠍のごとく嫌われ恐れられている人物であるが、その王岐山の親友であることを背景に、任志強は“中国のドナルド・トランプ”のあだ名がつくほどの放言癖がある。

 中国の大手メディアが足並み揃えて一斉に“任志強バッシング”を始めたきっかけは2月19日。習近平が党総書記としてCCTV、人民日報、新華社を視察に訪れたとき、CCTVが習近平に忠誠を誓っていることをアピールするために、テレビ画面に大きく「CCTVの姓は党、絶対忠誠を誓います。どうぞ検閲してください」と卑屈な標語を掲げたことに対して、任志強が「人民の政府はいつ党の政府になった?」「すべてのメディアの姓が党になって人民の利益を代表しないようになったら、人民は忘れ去られて片隅においやられるんだ!」といった批判をネットの微博上でつぶやいた。

 この発言は、ネットユーザーらのみならず、体制内知識人にも大いに受けた。任志強は党中央メディアの卑屈な習近平擦り寄りぶりを批判しているのだが、その本質は個人崇拝をメディアを通じて仕掛けている習近平自身に対する批判でもある。

これに対し22日、中国の大手ネットメディアらは「任志強は西側憲政民主の拡声器だ」「任志強は民衆の代弁者のふりをして、民衆の反党反政府の憤怒の情緒を扇動している」などとバッシングを開始した。これは、あたかも、文革のつるし上げの様相であった。

 2月28日には、大手ポータルサイト新浪と騰訊の任志強のアカウントも国家インターネット情報弁公室の命令で閉鎖させられた。

「山を隔てて牛を打つ」権謀術数の只中で

 だが中国メディアおよび中央宣伝部がかくも威勢よく任志強バッシングを展開した本当の狙いは、別に習近平への忠誠心からではなく、任志強の発言が反党・反政府的であったからでもない、と見られている。

 任志強バッシングを最初に開始した「千龍ネット」(北京市党委宣伝部主管のニュースサイト)が掲げた「誰が任志強を“反党”的にさせたか」という一文では「任志強が夜中に頻繁に電話する指導者」(王岐山を指す)を挙げており、要するに任志強が恐れることなく習近平政権批判めいたことを言える黒幕は王岐山だ、ということをほのめかしている。

 「指桑罵槐」というか「山を隔てて牛を打つ」というか、権力闘争や権謀術数の激しい中国では往々にして、このようなけんかのやり方をする。つまり、中国メディアと中央宣伝部が任志強バッシングで本当に矛先を向けているのは王岐山だった。あるいは、習近平に忠誠を誓うふりをしながら、習近平と王岐山の中を割こうとする中央宣伝部の画策かもしれない。

 中央宣伝部は中国メディアを統括する党中央機関。新華社、CCTV、人民日報は中央宣伝部直属のメディアである。中央宣伝部を指導する党中央政治局常務委員はもともと江沢民派に属し、目下習近平とは微妙に対立関係にある劉雲山であり、中央宣伝部部長は胡錦濤派に属し、やはり習近平とは微妙に対立関係にある劉奇葆。劉雲山も劉奇葆も汚職の噂が絶えず、いつ王岐山率いる中央規律検査委の取り調べ対象となっても不思議はない。彼らが任志強バッシングの体を借りて王岐山攻撃を始めた、あるいは習近平と王岐山の間に亀裂を入れようとしている、というのが中国政治ウォッチャーの見立てであった。

この任志強バッシングを受けて北京市西城区党委員会は、任志強に対して党籍剥奪処分などを行おうとしたのだが、王岐山は2月28日、汚職Gメンこと中央規律検査委員会巡視隊を中央宣伝部に派遣し突然の“ガサ入れ”を行って、中央宣伝部およびメディアを黙らせるとともに、3月1日に中央規律検査委機関紙「中央規律検査監察報」上に「千人が唯々諾々と語るより一人の士の諤々とした発言の方がまさる(千人之諾々、不如一士之諤々)」と題した原稿を発表させる。

 タイトルにある“一士”が任志強を指していることは間違いなく、中央規律検査委、つまり、王岐山は習近平礼賛メディアを批判する任志強を表立って擁護したことになる。ちなみに、その直後に前回のコラムで取り上げた「無界新聞・習近平引退勧告公開書簡事件」が起きたのだ。この件については、習近平が激怒して犯人探しが猛烈な勢いで行われているところだという。新疆ウイグル自治区主管の新興ニュースサイト・無界新聞は閉鎖が決まり、この件に関与した疑いで著名コラムニスト賈葭ほか30人前後が、身柄を拘束され取り調べを受けている。私の聞いている範囲では、身柄拘束された人たちのほとんどが事件に無関係の“冤罪”らしいが、取り調べがあまりに厳しいので、あることないこと“自白”してしまい、それが権力闘争に利用される可能性もありそうだとか。

その時、習近平が止めなかったゆえに

 この事件の真相はまだ不明であり、任志強バッシング事件とのつながりがあるかどうかも分からないのだが、一つ言えるのは、主だったメディアは“党への忠誠”を声高に叫んではいるが、彼らの言う党への忠誠は必ずしも習近平への忠誠ではない、ということである。3月3日の人民日報は「ある指導者はメンツを失うのを恐れ、群衆の批判の言葉を聞こうとしない」という題の論説を掲載。この“ある指導者”が習近平を指すとしたら、中央規律検査委巡視隊の進駐を受けて、中央宣伝部が王岐山批判から習近平批判に転じた、という見方もできる。

 3月23日、新浪微博のあるアカウントが「北京市西城区の規律検査委員会で、ほらふき任(志強)の党籍剥奪が決定された」というコメントを発信。すぐさま削除され、これは習近平と王岐山の対立を煽るための「デマである」との見方が一部消息筋の間で伝えられたが、その一方で、習近平は本気で任志強潰しに動き始めている、という情報もやはり一部消息筋に出回っている。習近平は実はメディアが自分を礼賛しすぎるのを苦々しく思っており、メディアが任志強バッシングを始めた時、自らやめるように指示した、という情報も大紀元など体制外華字メディアで報じられているが、同時に、任志強・王岐山バッシングの時、習近平はメディアを止めようとしなかったので、王岐山と習近平の亀裂はもはや決定的となった、という話も耳に入っている。私はどちらかというと後者の情報を重視している。

実際のところ、政権のメディア・言論統制のひどさ、習近平政権の経済政策や外交政策の危うさに対する不満は、体制内知識人たちや官僚の間に高まっており、歴史学者でコラムニストの章立凡や中央党校教授の蔡霞、独立派の経済学者・茅予軾、上海財経大学教授の蒋洪らが任志強を表立って擁護することで、習近平政権の政策の過ちへの批判姿勢を示している。

“文革”勝ち抜き、王朝滅亡の分析本を推薦

 任志強バッシング事件は、中央宣伝部が習近平と王岐山の間に亀裂を入れようという狙いで仕掛けたのは事実かもしれないが、私の観察したところ、王岐山が習近平との関係を修復するために、任志強に批判をやめさせるように働き掛けた形跡はない。結果的に十日文革が、習近平と王岐山の権力闘争の形となったのは否めない。

 3月8日の任志強の誕生日の写真を人民公安大学教授の黎津平が微博に流していたが、その時の任志強は紙でできた赤い王冠をかぶり、手にバースデーケーキを持って花束やご馳走に囲まれており、その表情は“文革”を勝ち抜いた自信に溢れていた。3月23日には、公式ブログで推薦図書として清朝が滅亡した理由を分析した「帝国的潰敗」(張鳴著)などを紹介しており、ネットユーザーたちはこれを共産党王朝を滅亡に導こうとしている習近平政権への批判、皮肉と受け取っている。

 2月19日の習近平のCCTVなど3大中央メディア訪問を機に始まった三大メディアによる習近平礼賛報道は、一種の“文化大革命”の発動であったと捉えられている。メディアを使って習近平個人崇拝を展開し、一気に習近平は毛沢東的な絶対権威の地位を築く腹積もりだった。毛沢東の文革は10年続いたが、だが習近平の“文革”は、任志強(あるいはそのバックの王岐山)に阻まれ、10日で終わった。だから一部知識人や体制外メディアでは任志強事件は「習近平の十日文革」と皮肉られているわけだ。

 この十日文革によって習近平と王岐山の関係に決定的亀裂が入ったかどうかはひとまず置いておくとして、最近、習近平は友達がずいぶん減ってしまった、というのは事実のようである。

話は少し遡るが、劉少奇の息子で解放軍上将であり、習近平の“軍師”の立ち位置にあった親友・劉源が2015年暮れ、軍制改革を前に完全引退を表明したのは、実は劉源自身が習近平と距離を置きたかったためだという。習近平は軍制改革の中で新たに設立する中央軍事紀律検査委員会書記(中央軍事委副主席兼務)のポストに劉源を迎え、彼に軍内汚職の徹底摘発を行わせることで軍を掌握するつもりであったが、それを劉源は辞退した。なぜか。

 太子党の大ボス・曾慶紅にこう諭されたという。「軍の汚職摘発の筆頭がどれほど危険かをよく考えないといけない。官僚相手の汚職摘発を行う王岐山ですら何度も暗殺の危機にさらされている。軍の汚職摘発は相手が武器と部隊を持っているのだから、命がいくつあっても足りない。習近平のために、そこまで泥をかぶる必要があるのか」。こう説得されて、劉源は習近平と友達であり続けるのが怖くなったのだという。

「習近平のために泥をかぶる者は、もういない」

 もう一人、習近平と友達をやめたそうな動きをしているのが栗戦書だ。栗戦書は習近平が河北省時代から交流を持ち、今は中央弁公庁主任という立場で“習近平の大番頭”とも呼ばれている側近だ。だが、彼は最近、習近平と距離を置こうとしているらしい。聞くところによると、全人代で、栗戦書が「習近平を核心とする党中央」(いわゆる習核心キャンペーン)を提言するシナリオがあった。だが、十日文革の顛末を見た栗戦書は、習近平の求心力が意外に小さいことに気づき、全人代で習核心キャンペーンを打ち出すのをやめたという。

 今、共産党中央で何が起きているのかは、外からは非常に分かりにくい。博訊や明鏡といった体制外華字ネットニュースの報じる内容は、参考にはなるが、いざ体制内の情報通に話を聞いてみるとかなり解釈が違ったりする。

 一つだけ、はっきりしているのは、習近平政権の経済、外交、軍政そしてイデオロギー政策については、官僚や共産主義青年団派だけでなく、太子党内にも不満が広がっているということ。「習近平のために泥をかぶって仕事しようという政治家も官僚はもういない。あの王岐山ですら愛想を尽かしている」。現地の情報通はこうささやく。

 来年の第19回党大会までに、さまざまな権力闘争が展開されるのだろうが、従来のような胡錦濤・李克強派(共産主義青年団)VS習近平派という単純な構図ではなく、習近平派の中から、習近平に引導を渡そうという人物が出てくる可能性も少し頭に入れておく必要がある。

ZAKZAK記事

中国主導で昨年末に設立したアジアインフラ投資銀行(AIIB)が大誤算を重ねている。参加国数の数を誇るが、実態は日米や欧州との協調融資に頼り、独自の資金調達は先が見えないという羊頭狗肉。さらに習近平政権肝いりの別組織との内紛も生じかねない状況だ。  AIIBには創設メンバーとして57カ国が参加したが、中国出身の金立群総裁は、報道各社のインタビューでさらに30~40カ国が参加に関心を示していることを明らかにした。一部は打診レベルだとしながらも「多くの国が参加することになるだろう」と述べている。  規模の上では、日本と米国が主導するアジア開発銀行(ADB)に加盟する67カ国・地域を超える可能性が高まったことを誇りたいようだが、まだ中身は伴っていない。  大きな懸念材料である格付け問題は未解決だ。開発銀行は通常、融資資金を調達するために債券を発行するが、最大の出資国である中国の格付けが反映されるAIIBは、ADBのように「トリプルA」格を取得するのは困難で、当面、無格付けで債券を発行する方針とみられる。  先行して中国とブラジル、ロシア、インド、南アフリカ共和国のBRICS5カ国が設立した「新開発銀行」も、債券発行で「トリプルA格」を取得したのは、中国国内の2つの金融機関だけというお手盛りぶりだ。  米格付け大手のムーディーズ・インベスターズ・サービスは今月に入って、中国の信用格付け見通しを引き下げている。

金総裁は「われわれは既存の国際金融機関のコピーにはならない」と強調し、効率とスピードを重視した「革新的な」新組織を目指すとしているが、確かに開発銀行としてのハイリスクぶりは前例がない。  融資資金を利率の高い借り入れで調達するにせよ、参加国からの出資金でまかなうにせよ限界がある。ADBや欧州復興開発銀行(EBRD)との協調融資で、先進国の助け舟を受けるしかないのが実情だ。  組織運営でも中国のもくろみ違いが生じていると指摘するのは、『米中経済戦争 AIIB対TPP』(東洋経済新報社)の著書がある週刊東洋経済編集長代理の西村豪太氏。  「欧州諸国が雪崩を打ってAIIBに参加したことは中国にとっては“うれしい誤算”。うるさ型の先進国がメンバーとなったことでAIIBのステータスは上がったものの、中国のペースで運営することには限界が出てしまった」と語る。  中国のための銀行だとの批判をかわすために体裁を取り繕ったところ、身動きが取りづらくなっているというのだ。  こうしたなか、AIIBと、中国が別に設置したファンド「シルクロード基金」のさや当てが生じかねないという。西村氏はこう分析する。  「中国政府はストレートに国益を実現する投資はシルクロード基金に任せ、AIIBは国際協調路線の象徴とするという役割分担を考えているのではないか。ただ、AIIBは財政部、シルクロード基金は人民銀行が主導しており、両者は犬猿の仲。きれいなすみ分けが可能かは流動的な要素が残る」  習政権のメンツと野望にまみれた資金が世界を混乱させるのか。

良ければ左上にあります

blog ranking mark

を応援クリックよろしくお願いします。

3/29日経ビジネスオンライン 高濱賛『トランプの外交ブレーンに知日派おらず クルーズ陣営には「ネオコン」が結集』について

トランプが大統領になれば、ゴルバチョフのように米国の世界覇権は崩壊すると言うのが北野幸伯氏の見立てです。勿論トランプの今の発言通りの政策展開をすればという前提ですが。ルトワックが言うようにレーガンの前例もありますから、トランプが大統領になれば現実主義に転換する可能性も勿論あります。

http://archives.mag2.com/0000012950/20160329000000000.html

トランプはモンローイズムを徹底させ、内向きになるのでしょうか?モンローは米大陸への欧州の不当な干渉には徹底的に戦うとしましたが、後には米大陸の西漸金運動に繋がりました。先人たちが営々と築いてきた利権を簡単に放棄することは考えにくい。でも今のスタッフはアジアを知っている人が少ないという事で不安です。また露骨な人種差別が見え、日本人は日系人の強制収容所送りをしたFDRとイメージがダブります。如何に大化けするとしても・・・・。ただ中国から金を貰っていたヒラリーを大統領にするならトランプの方がマシかと。

ジェブ・ブッシュはクルーズを応援とのこと。ネオコンがスタッフと言うのがチト気になりますが。ネオコンは元々のルーツは左翼リベラルなので。でも対中強硬派なので、彼が現時点では一番良いかと。ブッシュ(息子)やレーガンの時のスタッフが多いと言うので。

ヒラリーのスタッフは知日派が多いと言ってもキャンベルを筆頭に日本弱体派です。ビンの蓋論で自主防衛させないと考えている連中です。中国よりも日本を心の中で敵視していると思われます。民主党は日本の旧民主党同様、碌でもありません。

記事

Cruz's staff

—アリゾナとユタの西部2州の予備選、党員集会ではドナルド・トランプ氏とテッド・クルーズ上院議員とが星を分け合いました。

クルーズ氏の外交ブレーンにはネオコンの面々が名を連ねる(写真:AP/アフロ)

高濱:アリゾナ州は得票率1位の候補が全ての代議員を獲得する「勝者総取り」でしたからトランプ氏は58人を全部取りました。これで獲得代議員数は739人。指名に必要な代議員数は1237人ですからあと498人です。(3月22日現在)

 一方ユタ州は「比例配分」です。しかし、今回から1位の得票率が50%を超えた場合には、「総取り」する例外規定が導入されたため、クルーズ氏が代議員40人を制しました。これで獲得代議員数は465人となりました。 (”Live March 22 Election results,” Lily Mihalik, Los Angeles Times, 3/22/2016)

 すでに予備選から撤退した保守穏健派のジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事が23日、クルーズ氏を支持すると公言しました。同氏は共和党保守本流から圧倒的な支持を得て、いわゆるスーパー代議員数を一時は最も多く確保していた。ブッシュ氏がクルーズ氏についたことで、ブッシュ氏の「指名推薦人」がクルーズ氏に大量に流れることが予想されます。「ストップ・ザ・トランプ」の動きに拍車がかかる可能性があるわけです。

予備選をベルギー連続爆破テロが直撃

—ところで22日の予備選の最中に外交面でいくつもの大事件がありました――オバマ大統領の歴史的なキューバ訪問、ベルギーでの連続テロ、北朝鮮のミサイル実験。各候補者はこうした国際情勢にどう反応したのでしょうか。

高濱:これまで予備選では景気や雇用問題、それに不法移民問題など米国民にとって身近な事案が焦点でした。ところがここにきて米国民にも関わり合いのある国際的な出来事が相次いで起こりました。

 ベルギーの連続爆破テロは、すでに過激派組織「イスラム国」(IS= Islamic State)が犯行声明を出しており、ISへの対応をめぐって各候補が発言しています。

 トランプ氏はISのテロについて、「拘束したテロ容疑者から情報を得るために水責めなどの厳しい尋問をするべきだ」と発言しました。これに対し、マイケル・ヘイデン元CIA(中央情報局)長官が反論すると、「三軍の最高司令官が命じたら軍は従うべきだ」と制した。しかし、「拷問」が国際法(国連拷問等禁止条約=1987年採択)に違反していることを指摘されると、渋々撤回しました。

 ベルギーの連続爆破テロが起こると、「(法が許すなら)水責め以上のことをやる。(テロリスト容疑者から)情報を引き出す必要がある」と言い出しました。朝令暮改の繰り返し、です。

 民主党の指名を狙うヒラリー・クリントン候補は、さすが国務長官を経験しているだけに「水責めのような拷問に頼るべきではない。テロとの戦いは他の同盟国と一致協力して行うべきだ」とトランプ氏を批判しています。

 米主要シンクタンクの上級研究員の一人は筆者にこうコメントしました。「予備選の最中に大きな外交事案が出てくるのは良いことだ。各候補者のステーツマンとしての力量が白日の下にさらされるからだ。このトランプという男の発言は、外交が未経験であるというだけではない。何か大事件があるとすぐ感情的に反応する一般大衆を代弁している、いや、彼自身がその一般大衆の典型的な一人にすぎない」。

—共和党の保守強硬派のクルーズ氏はどのような反応を示していますか。

高濱:クルーズ氏は「もし自分の住んでいる街に(イスラム過激派分子のような)不穏な行動をとる可能性が大きいグループがいるなら、治安当局による監視を一層強めるべきだ」と述べています。これはイスラム教徒が密集して住んでいる地域に対する警察の監視・警戒態勢を強化することを意味しています。具体的には電話・インターネットの盗聴から警官による24時間パトロール体制を考えているようです。

 これに対しオバマ大統領は、訪問先のアルゼンチンで記者会見し、「こうした提案(クルーズ氏の提案)は間違いであり非米国的だ。米国が行ってきたイスラム教過激派対策を弱体化させるだけだ」と激しく批判しています。

 クリントン氏も23日、スタンフォード大学で行った演説で、イスラム教徒密集地域で監視・警戒態勢を強化することに真っ向から反対しました。返す刀でトランプ氏が主張しているイスラム教徒の米国入国禁止案や「水責め」実施に反対し、「口先のレトリックで我々の共有する価値や安全を強化することはできない」とトランプ、クルーズ両氏の主張を退けています。

 テロ対策をめぐる民主、共和両党の意見の食い違いは、本選挙での一つの大きな争点になりそうです。 (”Clinton at Stanford: Global alliances key to ending terrorism,” Clifton B. Parker, Stanford News, 3/23/2016)

 指名に向けて一歩一歩前進しているクリントン氏は、ここにきて、対抗馬のバーニー・サンダース上院議員との論争ではなく、本選挙をにらんだ方向に戦術転換を図っています。

キューバとの関係改善支持するトランプ

—オバマ大統領のキューバ政策について各候補はどのような反応を示していますか。

高濱:クリントン氏は08年の大統領選では対キューバ禁輸解除に反対の姿勢をとっていました。しかしその後「禁輸は目的達成には役立たない」との理由から賛成に回りました。

 今回は「共和党の対キューバ政策は、この国を冷戦のレンズで見ているようなものだ。対キューバ禁輸は今直ちに解除すべきだ」と主張しています。

 そして「もし私が大統領になった時に米議会が禁輸解除に反対していたら、私は大統領令を発動して解除する」とまで言い切っています。

 トランプ氏は対キューバ関係を改善することに賛成です。ただキューバの人権抑圧政策を厳しく批判しており、「関係改善はいいことだが、私ならオバマ大統領よりももっといい取引をしただろう」と述べています。

 オバマ大統領の今回のキューバ訪問は大々的に報道されているものの、政治体制や人権をめぐる首脳同士の違いを埋めるに至っていません。国交正常化も時間をかけてやるということで画期的な成果があったわけではありません。オバマ大統領は米議会に対して対キューバ禁輸の解除を求めることになりますが、大統領選後の民主、共和両党の対決懸案の一つになることは必至です。

 キューバとの関係改善について共和党内にはいろいろ議論があります。真っ向から反対しているのは、トランプ氏を急追しているクルーズ氏です。父がキューバ移民で反カストロ派です。

 クルーズ氏の主張は単純明快です。「オバマ大統領のアプローチはカストロが望んでいる経済援助と国際社会での合法性をくれてやるようなものだ。カストロと交渉するときには反カストロ派を参加させるべきだ。禁輸解除は人権抑圧を完全にやめさせるが前提となる」。 (”Cuba: Campaign 2016, The Candidates & the World,” Council on Foreign Relations, 2016)

クルーズは徹底した反中・嫌中

—今月31日には習近平・国家主席が核サミット出席のため、ワシントンを訪れます。各候補者たちの対中姿勢はどのようなものでしょうか。

高濱:クリントン氏は第1期オバマ政権の国務長官として、対中交渉を第一線で担った経験がありますから、今のオバマ対中外交をそのまま継承するでしょう。つまり「米中関係は友でもなければライバルでもない。対北朝鮮問題から温暖化まで国際的なチャレンジを克服するために不可欠な関係」との位置づけです。そのために相互信頼と協力精神を引き続き保たねばならないと考えています。

 むろん中国の軍事力増強、南シナ海・東シナ海における海洋権益拡大や軍事進出、さらには中国国内で行われている人権抑圧には厳しい姿勢を終始とっています。

 中国に対して最も強硬なのはクルーズ氏です。とくに中国の軍事力増強を警戒しており、台湾にF16戦闘機を供与するようオバマ政権に強く要求しました。また中国のサイバー攻撃に対するオバマ政権の対応を批判し続けています。

 クルーズ氏はレーガン政権の「力による平和」という対ソ連政策を高く評価し、「この方式を対中にも適用すべきだ」と主張しています。

 15年10月、習近平国家主席が訪米した際には、「在ワシントン中国大使館前の広場を『劉暁波広場』と命名しようではないか」と他の上院議員に呼びかけたりしました。劉暁波・元北京師範大学講師はノーベル平和賞を受賞した人権活動家。クルーズ氏は、中国政府が同氏を投獄したことに抗議したのです。

トランプは日中の為替操作を批判

—北朝鮮のミサイル実験についてはどうですか。

高濱:各候補者は北朝鮮による挑発行為を厳しく批判しています。しかしながら、クリントン氏がより一層厳しい経済制裁措置をとるよう提案している以外、他の候補の発言に具体的なものはありません。

 トランプ氏は「北朝鮮をコントロールしているのは中国だ。北朝鮮は中国なしには飯も食えない。北朝鮮の行動をやめさせるのは中国の責任だ」と批判。クルーズ氏は「北朝鮮に核武装させたのはオバマ政権だ。クリントンとオバマは対北朝鮮外交で過去に何度も失敗をおかしてきた」とこき下ろしています。

トランプの時代錯誤な対日批判に米識者も辟易

—対日政策ではトランプ氏が抜きんでて強い対日批判を繰り返しているようですね。

高濱:その通りです。トランプ氏の対日批判について米ニューヨーク・タイムズ(3月7日付)が「トランプ、80年代の対日通商の長広舌を持ち出して日本を手ひどく批判」という見出しで報じています。 (”Donald Trump Laces Into Japan With a Trade Tirade From the ’80s,” Jonathan Soble and Keith Bradsher, New York Times, 3/7/2016)

 記事は、米通商代表部(USTR)の副代表だったグレン・フクシマ氏の次の発言を引用しています。「トランプ氏の対日発言は70年代後半から90年代中葉、卓越した米国の経済力を脅かすライバルと日本が見られた時期を思い出させる。日本経済が20年にわたる不況に見舞われたにもかかわらず、米国の雇用を掠め取る経済的ライバルとしてよみがえっていると考えていること自体、興味深い」。

 トランプ氏は日米安保体制の在り方についても「もし日本が敵に攻撃されたら米軍は応援にいくのに、米国が攻撃されたときに日本は支援しない、というのは片務的だ」と言い出しています。さらに、中東から日本に原油を輸送するタンカーを守っているのは米軍だとして「そのカネは日本が払うべきだ」とも言っています。

 まさに70年代から80年代に米国を席巻した「ジャパン・バッシング」(日本叩き)を21世紀中葉になって持ち出しているわけです。

 たまりかねたゼーリック前世銀総裁など100人の共和党系外交・安全保障問題専門家が3月3日に共同書簡を発表して、「トランプ氏の日本へ対する防衛対価要求はゆすり以外の何物でもない」と厳しくいさめています。

 トランプ氏の時代錯誤な対日批判に共和党系の学識経験者も辟易としているのです。

—なぜ、トランプ氏はこんな発言をするのでしょうか。

高濱:トランプ氏は日米安保体制や通商問題について詳しいわけではありません。

 不動産ビジネスの経営者として耳にしたことやビジネス関係者たちとの話しの中で出てきた「対日不満」をストレートにぶちまけているだけです。それを、中学生でもわかるような表現でアジ演説するので、愛国心に燃えた比較的教育程度の低い一般大衆には受けるわけです。

 大統領になったときに日米同盟関係をどう堅持、強化していくのか、といったステーツマンとしての自覚など今の段階ではないということなのでしょう。

 しかしトランプ氏もやっと外交ブレーンを集めたようですから、今後はもっと冷静で理路整然とした対日政策を打ち出すことを期待したいところです。

トランプ外交ブレーンはテロやエネルギーの専門家

—外交・安全保障、通商問題が予備選中盤に入ってにわかにクローズアップされてきました。各候補者にアドバイスしているブレーンにはどんな人たちがいますか。

高濱:トランプ氏の外交ブレーンを総括しているのはアラバマ州選出のジェフ・セッションズ上院議員です。

 外交チームのメンバーは、まずレバノン生まれで米国に帰化したウォリッド・ファレス博士。反イスラム教でキリスト教信者です。それから米メリルリンチのパートナー、カーター・ページ氏。石油エネルギーの専門家、ジョージ・パパドポウリス氏。元国務省査察官のジョー・シュミット氏、それからケネス・ケロッグ米空軍退役中将らです。

 対日、対アジア政策の専門家は今のところ見当たりません。 (”Donald Trump names foreign policy advisors,” Philip Rucker and Robert Costa, the Washington Post, 3/2/2016)

クルーズ陣営には「イラン・コントラ事件」関係者が復活

 クルーズ氏の外交ブレーンは、レーガン政権やジョージ・W・ブッシュ政権で外交安保政策を担当したネオコン(新保守主義派)のメンバーが名を連ねます。徹底したイスラム教嫌い、オバマ嫌いの保守強硬派の人たちです。

 超保守派シンクタンクの米センター・フォア・セキュリティ・ポリシーを創設したフランク・ガフニー氏がその中心。さらに、エリオット・アブラムス外交問題評議会研究員、フレッド・フレイツ元CIA分析官、アンドリュー・マッカーシー「センター・フォア・ロー&カウンターテロリズム」理事長たちが名を連ねます。

 アブラムス氏は、レーガン政権の時、イラン・コントラ事件に直接関与した人物の一人です。イラン・コントラ事件とは、国家安全保障会議(NSC)がイランに対し、85年夏から86年秋にかけてイスラエル経由で対戦車ミサイルや対空ミサイルを秘密裏に輸出し、その代金の一部をニカラグアの反政府右派ゲリラ「コントラ」への援助に流用していた事件です。米国は当時、イランを「テロ支援国家」リストに載せており、武器の輸出は法的に禁じられていました。この事件は、高い人気を誇ったレーガン大統領の統治能力の欠如を浮き彫りにしたものでした。 (”Here Are Five of Ted Cruz’s Most Fanatical Foreign Policy Advisors,” Sara Lazare, Alternet, 3/17/2016)

クリントンは東アジア政策にキャンベル元国務次官補

—国務長官を務めたクリントン氏の外交チームは、大統領候補者の中では一番規模が大きく、充実しているそうですね。

高濱:その通りです。総括者はオバマ政権で国家安全保障担当大統領副補佐官を務めたジェイク・サリバン元プリンストン大学教授です。ヒラリー・クリントン大統領が誕生すれば、国家安全保障担当大統領補佐官になると噂されています。

 同氏を軸にシニア・グループがあり、そのメンバーはレオン・パネッタ元国防長官、トム・デニロン元国家安全保障担当大統領補佐官、ミシェル・フロノイ元国防次官(政策担当)、マデレーン・オルブライト元国務長官たちです。

 その下に、国・地域別、政策別などに分かれたサブ・ブループがあります。アジア、欧州、中東などから人権問題、テロ、サイバーなど、国務省さながらに細分化されています。

 対日、対中政策ではクリントン国務長官の下でアジア政策を取り仕切ったカート・キャンベル国務次官補(東アジア・太平洋担当)が控えています。ということはクリントン政権の東アジア政策はオバマ政権を踏襲することを意味しますね。

 関係者の一人は筆者に「サブ・グループは現在進行形のベトナム選挙からベルギーの連続テロまで最新情報を入手して分析している。その結果がクリントン候補の演説や記者会見にも反映している」と指摘しました。

 一方、対抗馬であるサンダース候補の外交ブレーンには、ローレンス・コーブ氏やレイ・テケイ博士らが名を連ねています。コーブ氏は、リベラル派シンクタンクの「センター・フォア・アメリカン・プログレス」の研究者。テケイ博士は、外交問題評議会に籍を置く、イラン系米国人の中東専門家です。

 クリントン氏の外交チームに比べると規模的にも質的にもちょっと見劣りがします。 (”Inside Hillary Clinton’s Massive Foreign-Policy Brain Trust,” John Hudson, Foreign Policy, 2/10/2016)

昨日より「国際政治・外交人気ブログランキング」にエントリーしました。良ければ左上にありますblog ranking mark

を応援クリックよろしくお願いします。

3/26JBプレス 古森義久『悪評ふんぷん、またやらかした国連事務総長 武装勢力を擁護してモロッコ政府を怒らせる』について

韓国人を国際機関のリーダーにするとヒドイ目に遭うという典型例です。と言っても国連事務総長(韓国では世界大統領と呼んで自己満足していますが)なんてP5の間を取り持つだけ、ガリも反米ということで2期目はなくなりました。潘基文は無能の方が長くできると言う例証のようなものでしょう。日本も潘が事務総長として立候補した時に推薦したのですから何をか言わんやです。次期韓国大統領になる(何故世界大統領が韓国大統領に格落ち立候補するのか頭の中が分かりませんが)ため、中国の戦後90周年抗日記念行事に朴とともに参加しました。公平性を考えず、自分のメリットしか考えない小中華の典型的な人間です。朝鮮人をまともに相手しても穢れるだけですが、降りかかる火の粉は払わなければなりません。慰安婦問題だって、吉田清治の捏造、朝日新聞の誤報、河野の強制を認める発言等、左翼リベラルがタッグを組んで、裏で中国や北が糸を引く日本貶めに参画した構図です。でもその後、自民党がずっと放置してきたことが問題です。自民党政治家も金かハニーで買収されていたと思われます。野中に代表されるような旧田中派の政治家はダメです。日本人ももっと国際問題に関心を持たないと、左翼リベラルの好き勝手にされます。

3/27日経電子版にはトランプの記事が。<トランプ氏、日本の核兵器保有を容認 米紙に語る

 【ワシントン=吉野直也】米大統領選の共和党候補指名争いで首位を走る不動産王ドナルド・トランプ氏(69)は大統領に就任した場合、日本の核兵器保有を容認する考えを示した。日本が在日米軍の駐留経費負担を増額しなければ撤退させる方針も明らかにした。日米安全保障条約の見直しにも言及した。これまで日米安保を「不公平」とは述べてきたが、米軍撤退に触れたのは初めて。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)が26日に掲載したインタビューで語った。トランプ氏は「米国は世界の警察官はできない。米国が国力衰退の道を進めば、日韓の核兵器の保有はあり得る」と述べ、北朝鮮や中国への抑止力として日韓の核保有を認めた。

 「核の傘」は核保有国の抑止機能を非核保有国にも及ぼす状態を指す。日本の安保政策は米国が提供する「核の傘」のもとに成り立っており、日本の核保有論はその根本的な転換となる。米軍が矛(敵地攻撃)、自衛隊が盾(専守防衛)という役割を定めた日米安保や日本の憲法との整合性の問題も出てくる。

 日本は唯一の被爆国として核兵器の廃絶を訴えている。トランプ氏の発言は日米同盟関係だけでなく、アジアや世界の安保秩序に直結する問題をはらんでおり、波紋を広げそうだ。

 トランプ氏は在日米軍に関して「米国には巨額の資金を日本の防衛に費やす余裕はない」と説明。在日米軍の駐留経費の大幅な増額を拒んだときには米軍を撤退させるのかとの質問には「喜んでというわけではないが、答えはイエスだ」と答えた。

 米国主導で進める中東の過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討を巡っては「サウジアラビアなどアラブ諸国が地上軍を派遣してIS壊滅に取り組まない限り、原油購入を見合わせることもあり得る」と表明した。

 現在、米軍は特殊部隊は送っているものの、大規模な地上軍は派遣していない。空爆中心のIS掃討の効果は限定的との見方が多い。トランプ氏はそうした分析を背景にサウジなどに圧力をかけるのが主眼とみられる。共和党の指名争いでトップを維持していることから最近、外交・安保に関する発言が増えている。>

外交にトウシロの大統領候補としか思えません。外国に米軍基地を置いているのは米国にもメリットがあるから置いてきたわけで「アメリカを再び偉大に」と言っているのと矛盾するのでは。日本と台湾の地政学的重要性、特に沖縄米軍基地の存在の重要性について認識していません。米海軍の思いは、沖縄は第二次大戦の戦利品ですので。

ただ、日韓に核保有を認めると言うのは良いことです。NPTの複雑さについても吹っ飛ばす発言です。何せNPTは日本を監視するための条約ですから。韓国の戦時作戦統制権もすぐ韓国に返したらよい。日本は何が起ころうとも傍観しているだけ。日本の核配備の憲法問題はありません。この記者は分かっていて、さも問題があるように書いていますが。捏造と同じ。あの福田康夫内閣官房長官でも「法理論的には持てる。持っていけないとの理屈にはならない」と言っています。『横畠裕介内閣法制局長官は18日の参院予算委員会で、核兵器の使用は憲法違反に当たるのかとの質問に対し「わが国を防衛するための必要最小限度のものに限られるが、憲法上あらゆる種類の核兵器の使用がおよそ禁止されているとは考えてない」との見解を表明した。同時に「海外での武力行使は必要最小限度を一般的に超えると解している」と述べ、現実的ではないとの見方も示した。』とありました。

http://www.daily.co.jp/society/main/2016/03/18/0008903964.shtml

問題は国民の核アレルギーです。ミサイルが飛んで来ないと気が付かないのかもしれませんが、それでは遅すぎます。P5だけが核の独占使用を認められるというのは合理的・論理的ではありません。単に戦勝国というだけです。中共、ロシアは戦勝国継承国ですが。

記事

Ban Kimoon

今年末に退任する韓国出身の潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が、米国のメディア上で「無能、軽率で不公正だ」と非難され、その言動が国連憲章に違反すると糾弾された。

 最近、潘総長は、モロッコが実効統治している西サハラ地域でモロッコと対立する武装組織に肩入れをする言動をとり、モロッコ政府の反発を招いた。そうした言動をはじめとする潘総長の数々の失敗を明らかにした記事が「ニューヨーク・タイムズ」に大きく掲載された。日本に対して公正さを欠く言動をとってきた潘総長は、国際的にも悪評のようである。

潘総長が重ねてきたいくつもの失敗

 ニューヨーク・タイムズ(3月21日付)は、「国連の軽率なリーダーがモロッコでまたまたやらかす」という見出しの寄稿記事を掲載した。副見出しは「潘基文は分離主義の反乱勢力を激励し、国連憲章をまたも裏切った」とあり、潘総長を厳しく非難する記事だった。

 記事の筆者は米国主体の外交政策機関「大西洋評議会」の役員で、モロッコの雑誌発行者のアハメド・チャライ氏である。チャライ氏はこの記事で、潘総長は「国連の低い基準でみても非常に無能で不正に満ちた時代を画した」と断じる。そして、潘総長は2006年に現職に就いてから、制度的にも個人的にもいくつもの失敗を重ねてきたと評した。

そうした失敗の実例としてチャライ氏は以下を挙げる。

・国連が中央アフリカ共和国へ送った平和維持部隊が、ここ2年ほどの間、性的暴力を続け、地元では信頼よりも恐怖を広めている。

・アフリカのエボラ出血熱が国連機関の対応の不備によってさらに拡大した。

・2010年にハイチでコレラが発生した際、潘総長は対処の責任を負うことから逃げ、国連の専門家5人から非難された。

・国連職員を不当に縁故採用したとして、2011年に国連の監査機関から非難された。

・2016年1月に、パレスチナのテロ組織の殺傷行為に理解を示す言動をとり、結果的に現地の紛争をあおった。

・シリアのアサド政権が内戦で自国民50万を殺した際も、ロシアのプーチン大統領がウクライナのクリミアを奪取した際も、またリビアの内戦で国家が事実上崩壊した際も、いつも「中立」の名の下に効果的な措置をとらなかった。

国連憲章を裏切った西サハラ地区での言動

 さらにチャライ氏は、潘総長の西サハラ地区での言動が「国連憲章を裏切った」と批判する。

 潘総長は3月上旬、モロッコ政府が実効支配している西サハラ地区を国連代表として訪れた。その際、モロッコの実効支配を「占領」と呼び、モロッコ政府に戦いを挑む武装組織「ポリサリオ戦線」の主張を全面的に認める形での「平和的解決」を促した。

 ポリサリオ戦線は、元々西サハラ地区に住んでいた原住民が独立を求めて立ち上げた組織である。西サハラ地区の主権を主張し、同地区でサハラ・アラブ民主共和国の独立を宣言している。しかし、欧米諸国も日本も国家とは認めず、国連も加盟を許していない。

 チャライ氏は、中立のはずの国連事務総長がポリサリオ戦線の主張を支持するような発言をしたことは国連代表としてまったく不当であると糾弾した。

 モロッコ政府も当然、潘総長の発言に猛反発した。西サハラ地区に駐留している国連平和維持軍の撤退を求め、同維持部隊からモロッコ軍の要員を一方的に引き揚げた。モロッコ国内では潘総長の言動を非難する激しい抗議運動が続いているという。

 潘総長は日本に対しても、韓国政府の意向を汲み取るかのような発言が多い。とくに慰安婦問題では韓国の主張を全面的に支持して、日本を非難してきた。また、2015年9月には、北京で開かれた抗日勝利式典に国連代表として参加し、日本側から「公正を欠く」という批判を受けている。

 日本もこの際、潘総長の偏向した言動を退任前にまとめて公表し、国連事務総長としていかに不適任であったかを明らかにしてみてはどうだろうか。