何義麟著『台湾現代史』を読んで

3/17~20まで「士気の集い」の大先輩と台湾・阿里山に旅行に行きます。それでこの本を読もうと思ったのですが、一読して座標軸のズレを感じ、読むのが嫌になりました。台湾だからと思って手にしましたが見事に裏切られました。彼は①東大留学で左翼に染まったか(東大は左翼が多い)②外省人かと思わせるほどヒドイ本です。事実誤認を東大の看板を使って日本人(日本語で書かれていますので)に発信するのは止めてほしい。事情を知らない日本人は信じてしまうでしょう。

何義麟氏は下につけたアンデイ・チャン氏の考えとは全く別です。アンデイ・チャン氏も漸進主義ではないから台湾人も受け入れがたいと思っている人が多いのではと推測していますが。

事実誤認部分

(1)「台湾は戦勝国」P.50・・・韓国と主張が同じ。当時、台湾・韓国は日本の領土、領民だった。日本と一緒になって欧米と戦ったのに国民党と一緒と位置付けるのは卑怯者のやること。ドゴール程の政治力があれば別でしょうけど。勿論国民党に接収されたから戦勝国という意味なのでしょうが。敵対国の一員として戦ってきて、負けて別の国に移管されたからと言って戦勝国と言うのには違和感を感じます。

(2)「犬が去って豚が来た」P.84・・・と言うのを紹介していますが、そう言われた背景について突っ込み不足。意図的とも思える。日本の治世を良く書きたくないという心理が働いているのでは。左翼が帝国主義を嫌うのは分かりますが、「歴史には時代の制約が伴う」ということに鈍感では。現在の価値観で過去を裁くことはできません。それこそ事後法の適用になるのでは。

(3)「台湾人留学生は本質的には留学に名を借りた亡命者なのである」P.156・・・これは言い過ぎでは。金美齢が聞いたらどう思うか。感想を聞いてみたい。亡命目的で留学した人が多いとは思えません。外国に出て初めて真実を知り、危機感を持って独立運動に走ったと思います。韓国の金完燮も海外に出て初めて真実を知り、「親日派の弁明」を書きました。今や彼は社会的に抹殺されています。中国で留学生が今や多くいますが、中国で他国に亡命して共産党打倒を訴える人がどこにいますか。専制政治と言う意味では当時の台湾と今の共産中国は同じです。「留学に名を借りた亡命者なのである」と言うのは、体を張って戦ったこともない人間が使うにしては傲慢と感じますが。

(4)「日本政府は国府に非友好的なこの5原則(国交回復5原則)をほぼ完全に承諾した形で、中国と国交を結んだのであった」P.171・・・前段に「一九四九年以降、国府と対峙している中華人民共和国はもともと国際社会にとって無視できない存在であった。一九六六年、中国は核実験を成功させ、国際社会における存在感をさらに高めた。この時期、日中間の往来も次第に頻繁となっていった。一九七一年七月、公明党訪中団と中日友好協会の間で、「国交回復五原則」の声明が発表された。この内容によると、一、中華人民共和国は中国人民を代表する唯一の合法政府であること。ニ、台湾は中国の一つの省であり、中国領土の不可分の一部であること。三、日華平和条約は不法であり、廃棄しなければならない。 四、米国が台湾海峡を占領していることは侵略行為であり、武装を解除しなければならない。五、 国連の安全保障理事会理事国として中華人民共和国の合法的権利を回復し、蔣介石グループの代表を国連から追い出さなければならない」と書いてあります。

日中共同声明には(Wikiによると)

・日本国と中華人民共和国との間のこれまでの不正常な状態は、この共同声明が発出される日に終了する。

・日中国交正常化の実現。

・日本国政府は、中華人民共和国政府(共産党政権)が中国の唯一の合法政府であることを承認する。

・中華人民共和国政府は、台湾(=中華民国)が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。

・日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。

・中華人民共和国政府は、中日両国国民の友好のために、日本国に対する戦争賠償の請求を放棄することを宣言する。

・日本国政府及び中華人民共和国政府は、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の諸原則の基礎の上に両国間の恒久的な平和友好関係を確立することに合意する。

・両政府は、右の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、日本国及び中国が、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する。

・日中両国間の国交正常化は、第三国に対するものではない。両国のいずれも、アジア・太平洋地域において覇権を求めるべきではなく、このような覇権を確立しようとする他のいかなる国あるいは国の集団による試みにも反対する。

・日中平和友好条約の締結を目指す。

彼が書いているのは中共の主張であって、日本がそれを認めた訳ではありません。こんなものは調べればすぐに分かる事であって、意図的に捻じ曲げて書いているとしか思えません。不値得買です。

次はアンデイの記事です。

Andy Chang 228事件68周年に思うについて

2月28日は台湾の228事件記念日だった。台湾各地で228事件記念集会が行われ、アメリカ各地でも台湾人同郷会で記念集会、講演会などが行われた。

事件から68年経っても台湾人が受けた傷は癒えていない。国民党は228大虐殺のあと38年にわたる白色恐怖、戒厳令を敷いた。台湾人が受けた恐怖心は馬英九のお座なりの和解談話で済むものではない。

海外各地で行われた集会では大部分の参加者がそれぞれ家族、親戚、友人が虐殺された悲惨な過去を語り、悲憤慷慨していた。海外の集会と違って台湾各地の集会では、真相追究、真犯人は総帥蒋介石と国民党軍の兵隊であると指摘していた。

事件から68年経っても恨みは消えないばかりか、ヒマワリ学生運動のあとの台湾人意識の高揚で真相追及の声が盛んになった。怨恨が消えていないのは国民党、中国人の和解談話に反省、誠意がないからである。

  • 蒋介石が虐殺を命じた

史実研究では、228事件の本質とは国民党軍による台湾人民大屠殺である。国民党軍の兵士が見境なく人民を屠殺したのは蒋介石の命令による、つまり真犯人は蒋介石で執行者は国民党軍である。

国民党は今日に至っても228事件について原因、経過、虐殺の記録などを公開していない。今日に至っても殺害された人の総数やどのようにして殺害されたか、正確な記録がない。

民間の調査では殺害されたものの家族や事件の経験者などと元にたくさんの記録文書が発表されている。しかし国民党は一部分の記録しか公開していない。台湾人民は真相の究明を要求している。

  • 蒋介石の銅像

228当日、台湾各地で蒋介石の銅像に卵やペンキ入りの玉を投げるなどの抗議が相次いだ。報道によると台湾には今でも学校や公園に蒋介石の銅像があり、その数は300を越えると言う。銅像にペンキを投げて抗議するなど2年前までは出来なかったことだ。去年のヒマワリ運動で国民党の権威失墜が起きてから可能になった。

蒋介石の228大虐殺で大量の青年や知識人、エリートが抹消された。蒋介石は228事件の最高責任者である。それにも拘らず殺人魔王の銅像が被害を受けた土地に設置され、68年が経過した今でも撤去されていない。世界に類のない状況がいつまで続くのか。これが228記念集会で討論されたことである。228事件の傷が未だに癒えていない原因がここにある。

  • 虐殺か民族浄化か

集会では経験談や親族が殺害されたたくさんの悲惨な物語の他に、228事件は虐殺事件か、または民族浄化(Ethnic Cleansing)だったのかと言う疑問が出された。

蒋介石が国民党軍に命令して台湾で大虐殺があったのは確かである。虐殺は中国人の日常茶飯事である。蒋介石は過去において中国で派閥闘争や批判者、政敵を抹殺するため数多い闘争で数千、数万の敵を殺した。

陳炯明、呉佩孚、孫伝芳などとの闘争、北伐の戦いで蒋介石が勝てば数千人が殺された。更に毛沢東の8000里大逃亡、戦後は毛沢東に追われて台湾に亡命しても共産主義者の追殺はあった。この過去を見れば蒋介石の殺戮は単なる「虐殺」かもしれない。

しかし蒋介石や国民党軍が台湾で行った虐殺は無差別でなく、台湾人のエリート抹殺であった。有名人、資産家、教師、学者など知識人を選別的に逮捕し殺害したのである。この点から見れば蒋介石の殺戮は「民族浄化」である。

また、このことから明らかになるのは中国人は台湾人とは違う民族で中国人は台湾人を奴隷視し、今でも台湾人を蔑視していると言う事実である。

  • 毛沢東、トウ小平、蒋介石

言えることは、数千年の中国歴史にある殺戮は蒋介石のほかにも数多くあったことである。世界現代史の殺人魔王4人とは、(1)スターリン4200万人、(2)毛沢東3782万人、(3)ヒットラー2095万人、(4)蒋介石1021万人と言われている。世界史に掲載された殺人魔王のうち2人が中国人である。

今の中国ではチベットと東トルキスタンで数々の虐殺事件がおきている。中国人の性格から見れば民族浄化は漢民族にとっては何でもないことであり、いくら弱小民族を抹殺しても罪業を感じないのである。このほか中国では法輪功信者の殺戮が報道されている。

この事実でわかることは、残忍な中国人と温和な台湾人はまったく違う人種であることだ。中国人が台湾を統治している限り、台湾に平和はない。おまけに凶惨中国人は台湾を中国の領土と主張し、武力行使で併呑すると公言している。台湾が独立しなければ中国人による民族浄化は避けられないだろう。

  • 虐殺の被害者に「和解」を求めるな

228記念集会で馬英九は、228事件は「官逼民反」だったと言った。つまり戦後台湾を占領した台湾省行政長官・陳儀が台湾でひどい掠奪をしたため、飢餓や厄病などが起き、警察がタバコ売りを殴り殺したかため民衆の抗議がエスカレートして反乱がおきたと言うのだ。この説明は国民党の結論だが台湾人は絶対に承認しない。

掠奪や警察の横暴はあったが、228事件の原因はもっと深い原因があり、国民党は今でも真相を理解せず、後悔も謝罪もしない。馬英九は事件が既に68年も前のことであり、中国人と台湾人が「和解して平和な発展」を遂げることを望むと述べた。

台湾人は被害者である。事件から68年が経過しても改悛の意志もない加害者が、被害者に対し和解しろと要求するのは加害者の傲慢である。

「赦すことはできる、忘れてはならない」と言う人もいるが、反対者も多い。虐殺は許せるるが民族浄化は許せない。台湾人にとって228事件は筆舌で言い尽くせることではないのである。

3/10日経ビジネスオンライン 鈴置高史氏『「米大使襲撃」で進退極まった韓国 「二股外交の破綻」を韓国の識者に聞く』記事について

韓国は冷静に自分自身を見つめることのできない民族ですね。「火病」と言われるように、何でも自己中心に考え、事大主義の「弱きを挫き、強きに諂う」のがありありです。でも、アメリカと中国という大国の狭間にあって、今までのような「二股外交」は許されなくなりました。旗幟鮮明にしなければ両方から相手にされなくなります。アメリカへの軍事依存、中国への経済依存、どちらかのメリットを失います。国内市場を開拓してこなかったツケです。財閥優遇、輸出主導の経済の限界です。今や日本人の大多数は中国人と韓国人を嫌っていると思います。あれだけ世界で日本を貶めまくっているのに平然としていられる日本人は少ないでしょう。しかも事実でなく、殆ど嘘ですから。韓国から泣きつかれても相手にしないことです。閔妃や大院君のように裏切りが当たり前ですから。

日本が韓国から学ぶべきは他者依存では厳しい国際社会で生き延びれないという事です。経済はアベノミクス、東京オリンピックで明るくなってきています。国民が軍事にもっと関心を持ち、政府の後押しをしなければなりません。

記事

韓国の進退は極まった――。「米大使襲撃事件」を韓国の識者、Aさんに聞いた(注)。

(注)Aさんは韓国を冷静に語る人で「安倍首相の韓国語は失敗でした」などに登場している。

零下の街頭で踊る

A:韓国は窮地に陥りました。3月5日にリッパート(Mark W. Lippert)駐韓米大使への襲撃事件が起きたからです。「米国から見捨てられるかもしれない」と韓国人は首をすくめています。

 事件2日後の7日に市内の米国大使館の前を通ったら「大使を愛しています」などと書いたプラカードを掲げた人々が立っていました。

 負傷した大使の治癒を祈るつもりで、カネや太鼓で踊っている人々もいました。ろくに風をさえぎるものもない、下手すれば摂氏零度以下の場所で、です。

 この事件で韓国は米国に大きな借りができました。THAAD(サード=終末高高度防衛ミサイル)の在韓米軍基地への配備も、もう拒否できなくなるかもしれません。

 中国が進めるアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加も見合わせようとの空気が濃くなるかと思います。そもそも「AIIBには参加するな」と米国に強く止められていましたから(「米中星取表」参照)。

米中星取表~「米中対立案件」で韓国はどちらの要求をのんだか

(○は要求をのませた国、―はまだ勝負がつかない案件、△は現時点での優勢を示す。2015年3月9日現在)

案件 米国 中国 状況
日本の集団的自衛権 の行使容認 2014年7月の会談で朴大統領は習近平主席と「各国が憂慮」で意見が一致
米国主導の MDへの参加 中国の威嚇に屈し参加せず。代わりに「韓国型MD」を採用へ
在韓米軍への THAAD配備 韓国国防相は一度は賛成したが、中国の反対で後退
日韓軍事情報保護協定 中国の圧力で署名直前に拒否。米も入り「北朝鮮の核・ミサイル」に限定したうえ覚書に格下げ
米韓合同軍事演習 の中断 中国が公式の場で中断を要求したが、予定通り実施
CICAへの 正式参加(注1) 正式会員として上海会議に参加。朴大統領は習主席に「成功をお祝い」
CICAでの 反米宣言支持 2014年の上海会議では賛同せず。米国の圧力の結果か
AIIBへの 加盟 (注2) 米国の反対で2014年7月の中韓首脳会談では表明見送り、継続協議に
FTAAP (注3) 2014年のAPECで朴大統領「積極的に支持」

(注1)中国はCICA(アジア信頼醸成措置会議)を、米国をアジアから締め出す組織として活用。

(注2)中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)を、米国と日本が力を持つADB(アジア開発銀行)への対抗馬として育てる計画。

(注3)米国が主導するTPP(環太平洋経済連携協定)を牽制するため、中国が掲げる。

 いずれにせよ、この事件は尾を引くと思います。単なる大使傷害事件ではないのです。米国が韓国に対し「中国側に行くつもりか」と警戒する最中に起きた事件だったからです。

 ことに2月27日、米国のシャーマン(Wendy R. Sherman)国務次官がワシントンで「 Remarks on Northeast Asia 」と題して演説し「中国とスクラムを組んで日本を叩く韓国」を牽制した直後でした。

 そして米国務次官に対し、韓国紙が一斉に「日本の味方をするのか」「発言を取り消せ」と反撃する最中でもありました。

「いわゆる慰安婦」にも激怒

鈴置:犯人は「オバマはなぜ変わったのか」と言いながら米大使を襲ったと報じられています。

 一方、ワシントンでのシャーマン国務次官の演説に対し、韓国各紙は「慰安婦などに対する米国の姿勢が変わった」と非難していました。

 例えば、朝鮮日報の3月3日社説「米国務次官の誤った過去史発言、これは見過ごせない 」(韓国語版)が典型です。日本語版の見出しは「看過できない米国務次官の『韓中日共同責任論』 」です。

  • シャーマン国務次官は「民族感情は悪用されかねず、政治指導者が過去の敵を非難し、安っぽい拍手を受けることは容易なことだ。しかし、そんな挑発は発展ではなくマヒをもたらす」と述べた。
  • この部分は暗に韓国を指したと思われる。しかし日本に対しては、一言も謝罪と反省を求めなかった。
  • シャーマン国務次官は今回、外交的には使ってはならない不適切極まりない表現を遠慮なく使った。オバマ(Barack Obama)大統領が2014年4月に訪韓した際には、慰安婦問題に関し「実にひどい人権侵害だ」と述べている。何が米政府の公式の立場なのかはっきりさせる必要がある。

 なお、講演の中でシャーマン国務次官は「いわゆる慰安婦」(so-called comfort women)という、日本批判を避けるような呼称を使いました。

「性奴隷」(sex slave)という単語を使ってほしい韓国人の癇に相当に障ったようで、この言葉使いにもメディアは怒りをぶつけました。

犯人は左派の民族主義者

 さて、犯人が「オバマが変わった」と批判したところを見ると、やはりシャーマン演説に触発されて米大使を襲撃した、ということでしょうか。

 事件直後の5日午後の国会・外交統一委員会で、ある議員も「シャーマン発言に対し我が国がちゃんと(強く)対応しなかったことが襲撃事件の素地となった」と政府を批判しています。

A:犯人の断片的な言動だけでは、事件と米国務次官の発言との関連は判断できません。ただ襲撃犯は「我が庭 独島の守り」なる民族主義的な組織の代表です。

鈴置:この人は北朝鮮との関係改善を求める左派でもありますよね。左派でかつ、民族派の反日・反米運動家――という日本人には理解しにくい人です。

A:いずれにせよ、反米活動家です。鈴置さんの表現を借りれば「韓国が離米従中し始めた」と米国が神経を尖らせる中、この反米運動家が米大使を刃渡り25センチのナイフで襲ったのです。

 大使はほほや腕に傷を負い、80針も縫いました。あと2センチずれていれば頸動脈を切っていたといいます。

 米国が「韓国の真意」を疑うのは当然です。そして疑われた韓国人は「裏切り者と見なされ、米国に見捨てられないか」と恐れ始めたのです。

テロリストに執行猶予

鈴置:シャーマン国務次官にすれば「だから私が言ったでしょ」と、韓国に文句のひとつでもつけたいでしょうね。

 韓国政府が「安っぽい拍手を得ようと、安易に民族主義を煽っていたら」――日本大使への暴力事件を起こした民族主義者を野放しにしていたら、同じ男に今度は米国大使が襲われてしまった――のです。国務次官の警告がすぐさま現実になったわけです。

 米大使襲撃犯の金基宗(キム・キジョン)代表は2010年7月に日本大使を襲った人物です。ソウルで講演中の重家俊範・駐韓大使(当時)にコンクリート片を投げつけ、横にいた日本大使館員が負傷しました。

 裁判では懲役2年の判決でしたが、3年の執行猶予が付きました。今となっては「テロリストに執行猶予など付けるから、いい気になって米大使を襲撃したのだ」と韓国人は言い始めました。

 しかし日本大使襲撃直後の韓国メディアは犯人を英雄扱いし、インタビューまでしました。現場にいた記者によると、警察も現場にすぐには駆けつけなかったそうです。事件化すべきかどうか、上の判断を仰いでいたと思われます。

 犯人は2014年になっても国会議員の紹介で、国会図書館の講堂を借りて集会を開いていた――と韓国紙は報じています。

黒幕を探せ

A:今回の事件で、左派系紙は政府の警備ミスを追及しています。左派の活動家が犯人だったので、自分たちへの風当たりを少しでも減らす目的です。

鈴置:一方、保守系紙は犯人と北朝鮮とのつながりを疑う紙面を作っていますね。この機会に左派を攻撃しようということなのでしょうけれど、責任転嫁の臭いもします。

 韓国保守派の謝罪デモの光景をネットで見ました。北朝鮮の国旗を燃やし、金日成(キム・イルソン)、金正日(キム・ジョンイル)、金正恩(キム・ジョンウン)の3代指導者の写真にバツを付けて掲げる――。もう、北朝鮮が主犯の扱いです。

 朴槿恵(パク・クンヘ)大統領も「黒幕を探せ」と指示しています。政権としては何とかして「北朝鮮の仕業」にしたいところでしょう。

 事件の背景に「安っぽい民族感情の悪用」があると米国に見なされたら、韓国政府がもろに責任をかぶることになってしまうのです。

A:今、韓国紙は必死で「韓米関係に悪影響なし」と書いています。もちろん多くの人が悪影響を懸念しているからです。

 日本でもライシャワー(Edwin O. Reischauer)米国大使が襲撃されました。確か、昭和39年(1964年)でした。日本の新聞は日米関係を懸念しましたか?

51年前のライシャワー事件

鈴置:私も今回の事件をライシャワー刺傷事件と比べようと、当時の日本の新聞をいくつか読みました。もちろん、各紙とも米国の反応を大きく報じるなど、悪影響に気を使った紙面づくりでした。

 ただ、それは翌日付の紙面ぐらい。現在の韓国メディアが事件後連日、米韓関係に焦点を当てるのとは明らかに異なります。

 ライシャワー事件の頃、日米関係は良好だったし、犯人はその時の新聞の表現によれば「異常性格」(1964年3月24日の日経夕刊1面)だったからです。

 それでも日本政府は直ちに池田首相が親書を送るなど遺憾の意を示したうえ、国家公安委員長を辞任させました。

 ジョンソン(Lyndon Johnson)大統領も「両国間の深い友好と理解には全く関係ない」との返書を、時差があるとはいえ何と事件当日の24日に送っています。

 今回の韓国の事件は「政治テロ」と韓国メディアが表現する性質のものです。偶発的な要素が濃く、尾を引かなかった「ライシャワー事件」とは単純に比べられないと思います。

すぐに謝る日本人

 ちなみに事件翌日の1964年3月25日の社説の見出しは以下です。

  • 日経「遺憾なライシャワー大使の遭難」
  • 読売「遺憾な米大使傷害事件」
  • 朝日「ラ大使と米国民にわびる」

A:「わびる」ですか。本当に謝るのが好きですね、日本人は。何かあると、とにかく謝ってしまう。

鈴置:逆の意味で、韓国紙の社説には驚きました。事件の翌日、3月6日付の各紙の社説の見出しは以下でした。

  • 中央日報「米大使へのテロは大韓民国へのテロだ」「今回のテロによる米韓同盟への逆風を防げ」
  • 朝鮮日報「駐韓米大使テロにあたり、韓米同盟の決意を見せねば」
  • 東亜日報「襲われても『ともに歩もう』という米大使、韓米同盟の底力を見せた」

 「わびの言葉」が見出しに一切ないのです。

A:簡単にはわびないのが韓国人です。というか、日本人が簡単に謝り過ぎるのです。

韓国こそ被害者だ!

鈴置:もう1つ驚いたのが、中央日報の「大韓民国へのテロだ」です。朴槿恵大統領も「韓米同盟へのテロ」と語りましたが、韓国はいつの間にか被害者になっています。

A:それが韓国人です。

鈴置:実利的にも、被害者になりすましておかないと「危険な民族主義を放置した加害国」になってしまうからでしょうね。

 ここで質問です。お話の冒頭で「この事件により、韓国は米軍のTHAAD配備を受け入れることになるかもしれない」と仰いました。米国は大人ですから、要求に事件を露骨には絡めないと思うのですが……。

A:米国が言及しなくとも、委縮した韓国側が先に言い出すかもしれません。それほどに韓国人は米国の怒りを恐れているのです。

 新聞も「米国は怒っていない」との報道をしつこいほど繰り返しています。「本当は怒っているのではないか」と韓国人が悩んでいるからです。

鈴置:ライシャワー事件とは異なって「怒っていないから安心しろ」との米大統領の親書が届いていませんしね。

 ご指摘のように、普通の人や外交当局は「ここでは米国に恭順の意を見せておこう」と考えるかもしれません。でも、朴槿恵大統領がそう考えるでしょうか。

米国には甘えても大丈夫

A:確かに韓国はもう、米国側に戻れないかもしれません。中国側に行き過ぎていて、そんなことをすれば、中国からどんなイジメに遭うか分からないからです。

 韓国は引き返すことも前に進むこともできない――進退極まったのです。「米中二股」などという小賢しい外交を展開し、韓国は自分の首を絞めたのです。

鈴置:米国はすでに――2013年秋から「二股の韓国」あるいは「離米従中の韓国」に本気で怒り出していました。なぜ韓国人はそれに神経を配らなかったのでしょうか(「天動説で四面楚歌に陥った韓国」参照)。

A:「米中二股派」や「親中派」は米国の意向など気にしない。一方、いまだ残る「親米派」は「少々甘えても米国は怒らない」と信じ込んでいる。結局、だれも真剣に米国の変化を見つめていなかったのです。

 真田幸光教授との対談「『人民元で生きる決意』を固めた韓国」を非常に面白く読みました。ことに米国が日本に「韓国とスワップを結ぶな」と指示するくだりです。

 韓国人は米国の恐ろしさを分かっていない。通貨危機の1997年当時も、米国の韓国に対する姿勢の変化を見落とし、国際通貨基金(IMF)による救済という大恥をかいたのです。

 すぐに拳骨を振り回す中国の顔色は不必要なほどに見るというのに。日本の外務省のホームページに関してもそうです。

ブレーキ役が消えた韓国

鈴置:3月以降、ホームページの韓国の項目から「自由と民主主義、市場経済という基本的な価値を共有する国」という表現が消えた“事件”ですね。

A:ええ、それに韓国人は驚いたのです。日本人が韓国をどう見ているかに全く無頓着だったからです。

鈴置:1990年代までは、金鍾泌(キム・ジョンピル)という知日派の大物政治家が現役で活躍していました。

 韓国の日本批判が一定の限度を超えると「さすがに日本人も怒り出すぞ。これぐらいでやめておけ」などと、ブレーキをかけたものです。が、今は知日派もいなければ、日本に神経を使おうという空気もない。

A:その通りです。こんなことをしているうちに日本からは見限られ、米国からは見捨てられるでしょう。体力が衰えた米国がいつまで大陸に橋頭堡を確保しようと思うか、分かりません。

 と言うのにTHAADやAIIBでは中国の顔色を見てばかり。米国が国務次官のスピーチを通じて韓国に警告を発すれば、メディアは逆切れする。挙句の果ては駐韓米大使への襲撃です。

 鈴置さんの『「三面楚歌」にようやく気づいた韓国』を読みました。エピローグに「韓国の将来の3つのシナリオ」があります。

 朝鮮半島をよく研究した、面白い予想です。でも、どれも当たらないと思います。なぜなら、韓国は中国側の国となってしまう可能性が高いからです。

死に体の韓国は中国傘下に

鈴置:「シナリオ2」はまさに「中国化」コースを予想しているのですが……。

A:そのシナリオは、形式的には法的な中立化が保障される――との前提付きです。私はこのままでは実質だけではなく、名分でも中国の傘下に入るのではないか、と悲観しているのです。

 これから韓国が正念場を迎えるというのに、大統領は任期を3年も残してレームダック(死に体)。「一時は20%台に落ちた支持率が、30%台に戻った」などと、前向きにとらえる向きもあります。

 しかし肝心なのは不支持率です。過半数の国民からそっぽを向かれたら、大統領は何もできない。

鈴置:2015年が明けて以降、保守系紙でさえ大統領が何かやれば批判し、何もしないと言ってまた批判するようになりました。

A:そして不支持率はその頃からずっと50%を超え、時に60%台に乗るのです。韓国は今、米大使襲撃事件で大騒ぎ。でもうわべの騒ぎだけではなく、この国の奥深くでものごとがどう動くか、じっくりと見るべきでしょう。

3/10宮崎正弘氏メルマガ『中国の「大国幻想」が世界のメディアにファンタジー的仮説を溢れさせている  人民元は米ドルに替わる基軸通貨? 中国の金備蓄が三万トン?』記事について

3/9分の真田幸光氏の記事の解説にも書きましたが、人民元はまだハードカレンシーにもなっていないのに、基軸通貨など百年早いと思われます。習近平の焦りの為せる業でしょう。南京虐殺・従軍慰安婦同様プロパガンダです。企業が良くやるペイドパブのようなものです。人を騙すのが天才的な民族を豊かにすれば、こうなることは見えています。

AIIBには経済の主役たる日米欧は入らないでしょう。アジアのインフラ投資ですから。しかもADBもあることですし。韓国が入りそうですが、今度のリッパート事件でアメリカがどう出るかです。「二股外交」の矛盾が極限まできた感じです。朝鮮半島が中国の属国になれば、アメリカも「慰安婦問題」で日本を非難してきましたが、沙汰やみとなり、アジアの主役として復活させるような気がします。地政学的に言って、中国から地図を見ると日本と台湾は太平洋進出時の障碍物になります。日本は正しく「不沈空母」です。沖縄基地は第二次大戦時のアメリカの戦利品とも言われ、那覇市を中心に半径2000Kmの円を描くと東アジアの主要都市は網羅されます。地政学的に最重要戦略拠点をそんなに簡単にアメリカが手放すハズはありません。(その分日本の自立化が遅れるので痛し痒しですが。現実の中国の脅威を考えますとルトワックの言う多国間で同盟し、中国を封じ込めるしかない。それでも日本はもっと軍事予算を増やし、中国に対抗していかなければなりません。抑止力としての核も持つ必要があります)

記事

プラウダ(英語版)によれば、米ドルに替わって世界通貨の位置を狙う中国は、通貨スワップ取引を通じて人民元の市場を拡大してきたが、最近では英国が人民元建て国債を発行し、またマクドナルドが人民元建て社債をだして話題を呼んだように、「いよいよ米ドルに代替し、世界通貨となる事態が近い」と吠えた(2015年3月6日付け)。

 人民元取引を認めた市場は香港、シンガポールからフランクフルト、ルクセンブルグ、ロンドンと増え続けている。

世界の基軸通貨は80-100年周期でおこり、米ドルの基軸通貨体制の嚆矢は1921年から。

したがって「そろそろ時期的にも米ドル時代は終わり、つぎは人民元が世界通貨だ」と中国の儚い夢の応援団をプラウダが自ら買って出た。

 この幻想は【歴史の終わり】の文明観と酷似したファンタジーである。

 実態はと言えば、物々交換に近い貿易を人民元と相手国通貨との交換にしているだけ、中国国債は人民元建てだが、香港市場いがい本格的市場は成立していない。

いや、そもそも原油ガス、レアメタルから穀物相場、金銀銅マンガンに到るまで米ドル建てである。

米ドルが基軸通貨としてのサイクルの終焉が近づいている兆候さえない。いやいや、中国の富裕層はゴミ同然の人民元を一刻も早く米ドルかユーロなどの基軸通貨と切り替えて海外に逃がしている現状を、プラウダは意図的に無視している。

 さても面妖なるトピックはまだ続くのだ。

  ▼中国の金備蓄が3万トンを越えた??

世界的なゴールド・アナリストとして有名だというアラスデア・マクデルドは「2014年度までに中国は3万トンもの金備蓄をしている」と推定した(多維新聞網、3月6日付け)。

 同紙に拠れば1882年から2003年までに中国は25000トンの金備蓄をなし、次の11年でさらに5000トン増やして、3万トンを突破していると大胆な推測を述べた。

 世界の金備蓄ランキングで中国の国家備蓄は1054トンであり、過去十年の猛烈な民間の金が年平均500トンである。合計しても5000トン前後と見積もられる。

仮に後者の数字が正しいにせよ、中国の備蓄量は米国、ドイツに次ぎ、日本は740トンしかない。

金備蓄が大きいと、その国の通貨の信任が得られ、あるいは世界の通貨が金本位に復帰したときに価値が躍進する通貨となりうる。

 だが、どのような資料を捜しても、中国の金備蓄が30000トンというデータはない。人民元の世界通貨入りキャンペーンの一環として外国人を駆使してプロパガンダではないか、と思われる。

 そのうえ、中国の金の延べ棒は国際水準の99・99%(フォウナイン)ではなく、99・9(スリーナイン)である。つい四半世紀前までは96%で、これを「純金」として売られていたし、民間備蓄は延べ棒ではなくアクセサリーが主力である。

 まして国際的ウォッチャーの常識では、中国流の金備蓄とはミサイルの半分がセメントを流し込んだだけの囮であるように、クロームに金メッキをしたシロモノが多いのではないかと推定されている。

 いずれにしても中国の「大国幻像」が、面妖な仮説の洪水をもたらしているのではないか。 

3/5ウエッジ石平『習近平、反対派と手打ち』記事について

1/28AFPの「人民日報(People’s Daily)はインスタントメッセージアプリ「微信(ウェイシン、英語名WeChat)」のアカウントで、終戦70周年を記念する軍事パレードが今年行われると報じた香港紙を引用した。記事によると、パレード開催の理由の一つは「日本を震え上がらせ、戦後の世界秩序を維持する中国の断固とした決意を世界に向けて宣言すること」だという。」という記事や、3/8王毅は「「70年前、日本は戦争に負けた。70年後、今度は良識に負けてはならない」と述べた。」という全人代での記者会見とか、いよいよ中国は日本に対し牙を向けてきました。以前から準備してきて今だったら(日本国民がボーッとしている間かつアメリカがオバマ大統領のときに)チャンスと思いだしているのかも知れません。内部の権力争いで最後は外敵に目を向けるのは常套手段。中韓ともです。王毅は宮崎正弘氏によれば部下が取り調べを受けて我が身が危なくなってきたので、習にゴマスリのため反日の強硬意見を言ったとのこと。汚い連中です。日本を巻き込むなと言いたい。南シナ海にはベトナム、フィリピンとの係争地に軍事基地を着々と整備しています。尖閣は外務省が中国の1969年の地図に日本領と明記してあるものをHPに掲載するようです。こういうのをドンドン外国語でアピールすることが大切です。また中国に言いがかりをつけられないようにしないと。ヤクザそのものですから。日本のマスメデイアはヤクザを支援しているようなものです。

記事

2015年2月17日、中国共産党中央委員会の機関紙である人民日報が注目すべき記事を1面トップで掲載した。「中央指導者が老同志を訪ねる」と題するこの記事は、19日から始まる中国の旧正月を目前に、習近平主席など現役の「中央指導者」らが、既に引退した江沢民や胡錦濤などの元指導者(老同志)を訪ねて新年のご挨拶を行ったという内容である。

注目すべきなのは、訪ねられた「老同志」全員の名簿を、人民日報記事が丁寧に掲載して公表した点である。

それは、たとえば2014年の旧正月の対応とは全然違う。2014年1月29日に同じタイトルと内容の記事が人民日報に掲載されたが、その時、記事が名前を挙げた「老同志」は江沢民と胡錦濤の2名だけで、全員の名簿の発表はなかった。

それでは一体どうして、今年は「老同志」全員の名簿を発表するに至ったのか。その背後にあるのは、習近平指導部が進めている「腐敗撲滅運動」の変調ではなかろうか。

人民日報記事が彼ら「老同志」全員の名簿を公表したのは今後、曽慶紅・郭伯雄両氏を含めた彼ら「老同志」全員に「腐敗摘発」の手が及ばないことを暗示しているのではないかと理解できよう。

腐敗摘発運動は、少なくとも党の上層部の範囲内ではすでに収束を迎えており、今後は「大物トラ」の摘発はもはやないと見ることもできるのではないかと思う。

*腐敗摘発運動に対する「三つの“誤った議論”」

習近平国家主席に腐敗摘発運動の無制限な推進を思い止まらせたもう一つの要因は、やはり中国共産党党内で腐敗摘発運動の展開に対する反対機運が派閥を超えて高まっていることにあろう。

つまり今の共産党政権内では、指導部の進める腐敗撲滅運動に対し、「もううんざりだ」という気分が一般的に広がっているのだ、ということである。

実はそれは、同じ人民日報が今年1月13日に掲載した1本のコラムを読めばすぐに分かる。

「反腐敗運動推進のために打ち破るべき3つの“誤った議論”」と題するこのコラムは、習近平指導部の推進する腐敗運動に対して3つの「誤った議論」が出回っていることを取り上げたものであるが、この文面からは逆に、今の中国国内(とくに共産党政権内)で習近平指導部の腐敗撲滅運に対する批判の声がかなり広がっている現状が窺えるのである。

コラムは「3つの誤った議論」をそれぞれ、「腐敗摘発やり過ぎ論」、「腐敗摘発泥塗り論」、「腐敗摘発無意味論」と名付けている。

「腐敗摘発やり過ぎ論」とはその名称通り、「今の腐敗摘発は厳しすぎる。摘発された幹部が多すぎる。いい加減手を緩めるべきだ」との意見である。

「腐敗摘発泥塗り論」とは要するに、共産党の大幹部たちの驚くべき腐敗の実態を暴露した腐敗摘発運動は、逆に共産党の顔に泥を塗ることとなって党のイメージタウンに繋がるのではないかとの論である。

「腐敗摘発無意味論」とは、「政権内で腐敗は既に徹底的に浸透しているから、いくら摘発してもただの氷山の一角にすぎないので腐敗を根絶することは到底出来ない、だからやっても無意味だ」という論である。

習近平指導部が進めている現在の腐敗摘発運動は党内からの反発に遭遇して民間の一部からも冷ややかな目で見られていることが前述の人民日報コラムから窺える。さらにこういった批判的な声が無視できるほどの少数派意見でないことも、人民日報がわざわざそれを取り上げて批判していることからも分かる。

*「一過性のキャンペーン」と思っていたが……

習近平指導部が腐敗摘発運動を開始した当初、共産党幹部の大半はそれが「一過性のキャンペーン」だと割り切って、身を構えて過ぎ去るのをじっと待っていれば良いと考えていたに違いない。

しかしこの一過性のはずの「嵐」がいっこうに去らず、習近平指導部がどこまでも執拗に腐敗摘発を進めていくのであれば、話が違ってくるのだろう。

腐敗撲滅運動が継続していけば、幹部たちは命同然の「腐敗利権」を失うだけでなく、今までこの腐敗利権を貪った分、今後は誰でも摘発される危険にさらされることになるのである。

もし習近平氏の政治に不満をもつ江沢民派や胡錦濤派の大物幹部たちが先頭に立ち、幹部集団の「反腐敗摘発運動」の声を吸収してそれを組織的な反対運動へと拡大させていけば、習近平政権の土台を根底から揺るがすような大政変が起きてくる可能性もある。

いや、むしろ党内の幹部たちの大半は心の中ではその日の到来を待ち望んでいるのではないだろうか。

*残されたカードは「反日」か

こうして見ると、今年の旧正月に習近平指導部の面々が「老同志」たちを訪ねた後にその全員の名簿を丁寧に発表したことの真意がよく分かってくる。要するに、ある程度の政治的影響力を持つ彼ら「老同志」たちを慰撫することよって彼らを安心させ、彼らを基軸にして党内の反対運動が広がることを未然に防ぎたかったわけである。

そしてそのために、彼ら「老同志」たちの今までの腐敗問題を今後一切追及しないとの暗黙の約束を交わしたのかもしれない。

今後、国民に対して自らの「反腐敗」の決意を示し続けていくためには、習近平指導部は当然、下っ端や中間の共産党幹部たちを断続的に摘発していくこととなろうが、「大物トラ」をやっつけるような腐敗摘発はおそらくもうこれ以上やらないであろう。

そして共産党幹部集団全体に対して、習近平指導部は今後ある程度の妥協も強いられるのであろう。

いずれにしても、過去2年間、習近平指導部の進めてきた鳴り物入りの「腐敗摘発運動」は、その転換点を迎えようとしていることは確実である。そして「腐敗摘発」という最大の政治看板を半ば降ろしていくこととなると、習近平政権が今後一体どう動くのかが次の問題である。

場合によっては、経済の衰退が続く中で腐敗摘発運動もうまくいかなくなると、習近平政権に残された最後の1枚の政治カードは、すなわち「反日」を唱えて国民の視線を外に向かわせることであるが、日本にとってそれは、まったく不本意な大問題である。

3/5日経ビジネスオンライン 真田幸光『「人民元圏で生きる決意」を固めた韓国 「日韓スワップ終了」を真田幸光教授と考える』記事について

田村秀男産経記者によると「IMFは人民元をハードカレンシーにする」(2/25【国際政治経済学入門】いずれ霧散 危ういチャイナマネー)とのこと。リッパート大使襲撃事件で韓国がどういう態度を取るのか。米中の狭間にあって身動きがとれない様子がありありです。アメリカを外す行動を取れば間違いなく駐韓米軍は撤退、日本・グアムに兵力配置されるでしょう。中国人民元がハードカレンシーになったとしても、世界各国が人民元で貿易決済するとは思えません。今まで、$とユーロで決済してきた国が人民元に替えるインセンテイブがあるかどうかです。確かに中国との貿易は人民元でも良いのでしょうが、アメリカ・欧州は人民元にせず、自国通貨(含むユーロ)のままと思います。アフリカはどう出るかは分かりません。中東は$かユーロでしょう。

先述のとおり、中国が韓国にスワップを大きくして信用供与すればAIIB加入は必至でしょう。完全に中国の属国となり、先祖返りとなります。アメリカはこの時点で裏切り行為とみなすでしょう。韓国防衛の必要性はなくなります。

中国・韓国とも一歩一歩破滅に近づいているように小生には見えるのですが。

記事

日本のドルに恋々とするな

真田 幸光(さなだ・ゆきみつ)

愛知淑徳大学ビジネス学部・研究科教授(学部長・研究科長)/1957年東京生まれ。慶応義塾大学法学部卒。81年、東京銀行入行。韓国・延世大学留学を経てソウル、香港に勤務。97年にドレスナー銀行、98年に愛知淑徳大学に移った。97年のアジア通貨危機当時はソウルと東京で活躍。2008年の韓国の通貨危機の際には、97年危機の経験と欧米金融界に豊富な人脈を生かし「米国のスワップだけでウォン売りは止まらない」といち早く見切った。

—日韓の2国間スワップが2月23日をもってすべて終了しました(「『目下の日本』からドルは借りない」参照)。

真田:韓国は金融面でも中国頼みで生き残ることを決意したと思います。少なくとも国際金融界はそう見なしたでしょう。

—韓国の2国間スワップの相手から日本が消えたうえ、中国とのスワップが総枠の70%を占めるようになりました(表参照)。中国頼みとの判断は、ここからですか?

韓国の通貨スワップ(2015年2月現在)
相手国 規模 締結・ 延長日 満期
中国 3600億元/64兆ウォン(約560億ドル) 2014年 10月11日 2017年 10月10日
UAE 200億デイロルハム/5.8兆ウォン(約54億ドル) 2013年 10月13日 2016年 10月12日
マレーシア 150億リングット/5兆ウォン(約47億ドル) 2013年 10月20日 2016年 10月19日
豪州 50億豪ドル/5兆ウォン(約45億ドル) 2014年 2月23日 2017年 2月22日
インドネシア 115兆ルピア/10.7兆ウォン(約100億ドル) 2014年 3月6日 2017年 3月5日
CMI<注> 384億ドル 2014年 7月17日  

<注>CMI(チェンマイ・イニシアティブ)はIMF融資とリンクしない場合は20%まで。 資料:ソウル新聞「韓国の経済体力は十分」(2015年2月17日)

真田:そうです。ことに問題は、韓国が「お前のドルなんか借りないよ」と日本にケンカを売る形でスワップを終了させたことです。最後の2国間スワップとなったのは、チェンマイ・イニシアティブ(CMI)の枠組みの中の100億ドルでした。

 CMIは1997年の通貨危機に苦しんだアジア各国がつくったセーフティネット。アジア協力の象徴なのです。各国が見守る中、韓国は協力の枠組みの一部である、日本からの100億ドルを蹴り飛ばしてみせたのです。

鈴置:韓国各紙は「日本など相手にするな。欧米と結べばよい」と書いています。例えば、朝鮮日報(韓国語版)の2月18日付社説の見出しは「韓日通貨スワップ、恋々とせずに米・EUチャネルを開け」でした。

仲間外れの韓国

—「恋々とするな」とは?

鈴置:韓国の金融界は日本とのスワップを続けたかったのでしょう。でも、今の韓国社会は「日本ごときに頭を下げられない」との空気が支配しています。当然、「卑日」路線の朴槿恵(パク・クンヘ)政権も延長を要請しなかったわけです。

 そこで朝鮮日報は金融界など「恋々とする勢力」に対し「米・EU」という代案を提示したうえ「日本、日本と未練がましいことを言うな」と叱ったのでしょう。

真田:「米・EU」が韓国を助けるかは甚だ疑問です。韓国は外貨不足の国ですから、国際金融市場では常にドルの借り手です。超短期のドル資金の融通――1日間で決済するので「オーバーナイト」と呼びます。ギリシャ問題などを抱える欧州の金融機関には、この「オーバーナイト」のドルを韓国に貸す余裕はありません。

 一方、米国。その余裕があったとしても、韓国の現在のリスク要因を考えれば、簡単に貸すとは思えません。

 韓国は日常的な取引でさえ仲間外れにされているのに、いざという時の信用供与を「米・EU」に頼めるのか――。韓国紙の主張は絵に描いた餅に終わる可能性が大です。

スポンサーは中国しかいない

—では、オーバーナイトのドルを誰が韓国に貸しているのですか?

真田:邦銀――つまり日本が中心となっていると思われます。その日本に韓国はケンカを売った。そこで国際金融筋は「韓国はいざという時に助けてくれる“スポンサー”を日本以外に確保したな」と見なしたのです。

 もちろん新たなスポンサーは、先ほど申し上げたように「米・EU」ではありません。それは中国しかありえないのです。

 今後、韓国の金融機関が外貨不足で困った時は、中国の銀行が貸すことになるのでしょう。あるいは国全体がピンチに陥った時には、中国政府にスワップを発動して助けてもらうことになるでしょう。

 その過程で、韓国は次第に人民元経済圏に組み込まれていくと思います。そもそも韓国の貿易総額の25%は中国との取引が占めます。

 この実態に金融が追い付く形で、貿易はドルではなく人民元で決済されるようになっていくと見られます。

「次の危機」を待つ中国

鈴置:中韓の間ではすでに、通貨スワップを生かして人民元と韓国ウォンで貿易決済する仕組み――つまり米ドルを使わずに取引する仕組みができています。民間企業も活用し始めました(「通貨の命綱を中国に託した韓国」参照)。

 それに韓国が困った時、中国は「助けてほしいのなら、アジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加しろ」と要求する可能性が極めて高い。

 AIIBは、日本と米国が主導するアジア開発銀行(ADB)に対抗して中国が計画したものです。米国は中国のアジア支配の道具として警戒し、韓国に参加しないよう強く求めています(「日本の無力化狙う韓国の『衛星外交』」)。

 中国は韓国を米国から引きはがして自分の陣営に取り込むべく「韓国の次の危機」を待っているでしょう。

真田:私も、韓国が困った際には中国はAIIB加盟を救済の条件に付けると思います。今でさえ、相当強力に要求しているのです。いざという時に韓国が「NO」と言うのは難しい。

韓国の歴史認識は誤りだ

—日韓スワップの終了とは「日韓」を超え「米中」の問題なのですね。

真田:その通りです。このコラムがずうっと指摘してきたように韓国は米国から離れ、どんどん中国陣営に引き込まれています。今回の事件はその一幕なのです(「米中星取表」参照)。

米中星取表~「米中対立案件」で韓国はどちらの要求をのんだか

(○は要求をのませた国、―はまだ勝負がつかない案件、△は現時点での優勢を示す。2015年3月4日現在)

案件 米国 中国 状況
日本の集団的自衛権 の行使容認 2014年7月の会談で朴大統領は習近平主席と「各国が憂慮」で意見が一致
米国主導の MDへの参加 中国の威嚇に屈し参加せず。代わりに「韓国型MD」を採用へ
在韓米軍への THAAD配備 韓国国防相は一度は賛成したが、中国の反対で後退
日韓軍事情報保護協定 中国の圧力で署名直前に拒否。米も入り「北朝鮮の核・ミサイル」に限定したうえ覚書に格下げ
米韓合同軍事演習 の中断 中国が公式の場で中断を要求したが、予定通り実施
CICAへの 正式参加(注1) 正式会員として上海会議に参加。朴大統領は習主席に「成功をお祝い」
CICAでの 反米宣言支持 2014年の上海会議では賛同せず。米国の圧力の結果か
AIIBへの 加盟 (注2) 米国の反対で2014年7月の中韓首脳会談では表明見送り、継続協議に
FTAAP (注3) 2014年のAPECで朴大統領「積極的に支持」

(注1)中国はCICA(アジア信頼醸成措置会議)を、米国をアジアから締め出す組織として活用。 (注2)中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)を、米国と日本が力を持つADB(アジア開発銀行)への対抗馬として育てる計画。 (注3)米国が主導するTPP(環太平洋経済連携協定)を牽制するため、中国が掲げる。

鈴置さんが小説『朝鮮半島201Z年』で予測した通り、韓国は日本よりも先に中国と自由貿易協定(FTA)を結びました。そして、これまた予言通りに日本とのスワップは打ち切って中国頼みになりました。

韓国はミサイル防衛(MD)に関しても、中国から睨まれると動けなくなっています。貿易→金融→軍事の順に着々と中国に取り込まれているのです。

—今後、韓国が金融面で困った時に日本は助けないのですか?

真田:容易には助けないと思います。日本の金融界には「恩を仇で返された」との思いが強いからです。韓国人は、あるいは韓国メディアは「1997年の通貨危機は日本のために起きた」と主張します。

 でも、それは全くの誤りです。あの時は、欧米の金融機関が韓国から撤収する中、最後まで邦銀がドルを貸し続けたのです。韓国の歴史認識は完全に誤っています。

恩を仇で返す国は助けない

鈴置:当時、真田先生は東京三菱銀行で韓国を担当しておられました。私も日経新聞のデスクとしてアジアをカバーしていました。

 あの頃は、韓国人の中でも分かった人は「日本は最後まで面倒を見てくれた」と語っていました。1998年と思いますが、危機の原因を追及した韓国国会でも、それを前提にした質問があったそうです。

 でも今やそんなことを語る人はいない。韓国では日本が悪者でなければならないからです。当時をよく知るはずの記者も「日本の貸しはがしが危機の引き金となった」と書きます。

真田:米欧が貸しはがす中、我々は最後まで引かなかった。「日本が引き金になった」とは言いがかりも甚だしい。これだけは記録に留めていただきたい。邦銀の担当者は本店を説得し、欧米が逃げた後も最後まで韓国にドルをつないだのです。

 韓国が国際通貨基金(IMF)に救済を申請した後でも、KDB(韓国産業銀行)とIBK(中小企業銀行)へは日本輸出入銀行がドルを融資しました。我々、邦銀の韓国担当者が走り回った結果です。

 それなのに「我が国の通貨危機は日本が起こした」と世界で吹聴する韓国。そんな国を助ける気になるでしょうか?

 麻生太郎財務相が2014年10月に「韓国から申し出があれば、スワップの延長を検討する」と国会で答弁したのも、恩を仇で返す国への不信感が背景にあったと思います。

米国が禁じた日韓スワップ

—結局、1997年の危機で最後には邦銀も韓国から引きました。なぜですか?

真田:米国です。日本には永田町(政界)を含め「韓国を助けよう」という合意があった。欧米のヘッジファンドがウォンを売り浴びせる中でも、です。

 でも「韓国救済は国際的なスキームの中でやる」という米国の指示に従わざるを得なかったのです。「国際的なスキーム」とは要はIMFによる救済です。

鈴置:韓国のドル不足がどうしようもなくなってIMFに救済を申請したのが1997年11月21日。その直前のある日、私は朝刊番デスクでした。

 夕方「韓国銀行から日本銀行に対し、ドルを貸してくれ、と要請があった」との情報に接しました。スワップです。

 もちろん日本は応じるつもりでした。あの頃は、旧植民地の韓国が困ったら助けるのが当然、というのが永田町に限らず、日本の空気だったのです。

グリーンスパンの“嘘”

 しかしその晩、いくらたっても「日銀がスワップに応諾した」との確報が回ってこないのです。変だなと思って担当部に聞きにいったところ「日銀が米国に報告したら『スワップはダメだ』との厳しい回答だった」。

 驚きました。要は「韓国はIMFに行かせるつもりだ。日本は余計なことをするんじゃない」とのお達しなのですから。

 米連邦準備委員会(FRB)議長だったアラン・グリーンスパン(Alan Greenspan)氏の回顧録『波乱の時代(上)』の274ページに以下の記述があります。

  • 11月、日本銀行の幹部から電話があり「韓国経済が崩壊しかねない」と警告された。日本の銀行が韓国への信認を失い、数百億ドルの融資の更新を撤回しようとしているとの説明だった。

 私の体験に照らせば、グリーンスパン元議長は半分しか語っていません。「韓国危機に関し日本から報告があった」とは書いても「米国が日本の対韓スワップを止めた」というくだりはないのです。止めたのはFRBではなく、米財務省なのかもしれませんが。

真田:本当に止めたのは、ペンタゴン(国防総省)、あるいはホワイトハウスかもしれません。米韓関係は相当に悪化していましたから。

「打ち切り」を米国には報告したか

鈴置:そうでした。北朝鮮の核開発にどう対応するかで米韓は対立していました。貿易摩擦も深化していました。

 金泳三(キム・ヨンサム)政権(1993―1998年)は日本との関係も悪かったのですが、クリントン政権(1993―2001年)からも睨まれていました。

 もっとも、米国を怒らせているのに当時の韓国紙は「極めて良好な韓米関係」と書いていました。今と同じです。

さてその米国に関連、質問です。今回の日韓スワップ打ち切りについて、日本は米国に事前に説明していたのでしょうか。

真田:韓国のドル離れ、米国離れにつながる極めて重要な案件ですから、報告していたと思います。ただ「打ち切る」ではなく「韓国の求めがあれば続ける」といった表現だったろうと想像します。

鈴置:それに対し、米国は何と答えたのでしょうか。

真田:何か言ったとしたら、韓国に対してだったでしょう。もっとも「日本とのスワップを続けろ」と米国が要求したとしても、韓国は米国の“警告”を無視したわけですが

チキンゲームを戦う米韓

—韓国は強気ですね。

真田:韓国は米国に対しては「中国カード」を使えると考えているフシがあります。いざという時は「中国に人民元スワップを発動してもらう」と言えば、米国がドルを貸してくれる、と計算していると思います。

鈴置:そこの、米韓の心理的なすれ違いに注目すべきですね。韓国は「中国側に行くぞ」と脅せば米国が言うことを聞くと考えている。なぜなら「米国は自分を手放せないはずだから」です。

 一方、米国は「そんなに中国が好きなら、そっちへ行け」と放り出せば、韓国は戻ってくると信じている。「韓国は自力で国を守れないから」です。

 先生が指摘されたMD、ことに終末高高度防衛ミサイル(THAAD=サード)の韓国配備の問題でもそうですが、米韓はチキンゲームを始めています。

 中国の怒りを避けようと韓国は「配備計画など米国から聞かされていない」と言い張る。「THAADで追い詰められた韓国が中国側に行ったら大変」と米国が思うはず、と考えているからです。

 これに対し米国は「もう、韓国と相談を始めている」などと“勇み足の発言”をしては「米中どちらの味方なのか」はっきりするよう、韓国に迫っています。

金融を武器にする米国

真田:そこが分析のポイントです。ただ、米国のハラが読みづらい。韓国を脅せば戻ってくると計算しているのか、あるいは「戻ってくればよし、戻ってこなくてもよし」と達観しているのか――。

 レームダック化したこともあり、オバマ政権は朝鮮半島に関し思考停止した感があります。問題は肝心の、米国を本当に動かしている金融と軍事の2つのパワーセクターが、この半島をどうしようとしているのか、迷っているように見えることです。

鈴置:ことに米国の金融界がどう動くかが注目ですね。ウクライナ問題でもそうですが、最近の米国は軍事力での勝負を避け、金融力で相手を圧倒しようとします。

 そして仮に米国が「朝鮮半島を捨てる」時も、単に捨てるのではなく中国と交渉するための「カード」にするのだろうと思います。

—近未来小説『朝鮮半島201Z年』では米中が話し合って、半島全体を中立化しました。

鈴置:厳密には、米国が中国に騙されたふりをして中立化をのむ――という展開読みです。『中国という蟻地獄に落ちた韓国』のエピローグに、架空の日米首脳会談を入れました。ここに種明かしがしてあります。

中韓密約で逆転ホームラン?

真田:『朝鮮半島201Z年』は、日本にとってワーストシナリオです。そうなっては困りますが、今やそうなってもおかしくないと思います。

 以下は国際金融界に流れている噂です。習近平―朴槿恵の密約説、ともいうべき話です。証拠は全くないのですけれど。

  • 習近平主席は「南北首脳会談を強力に後押しする」と朴槿恵大統領に約束した。南北和解という大金星を挙げたい朴槿恵政権は、外交常識を超えて中国の言うことを聞くようになった……。

 内政でも失点続き、外交でもその迷走が次第に批判され始めた朴槿恵政権は、ここで逆転満塁ホームランを打つ必要があります。もし南北首脳会談を開いたうえ、核問題で何らかの進展があれば、指導力は一気に浮揚します。

父親も演じた和解劇

鈴置:確かに韓国でも、そうした噂を信じる人が増えています。北朝鮮に核を放棄させるには、在韓米軍撤収や米韓同盟の破棄など、韓国側の相当に思い切った、国の針路を変えるほどの譲歩が必要でしょう。そうした超大型の取引はトップ交渉するしかありません。

 大統領の父親の朴正煕(パク・チョンヒ)大統領も、北朝鮮との秘密交渉の末1972年に南北の和解をうたった「7・4声明」を発表しました。当時は米中が和解に動いていまして、大状況は今と反対の方向でした。

 しかし、朝鮮半島に限れば構造は似ています。ベトナム戦争の手じまいを急ぐ米国が、韓国からも軍を引き始めていたのです。

 「7・4声明」は米国から見捨てられるとの国民の不安を解消するために朴正煕政権が打った、大興業だったのです。

 もっとも、現実には南北の対立は解けませんでした。それどころか南北の政権ともに「非常時」を名分として独裁体制を強化したのです。

 朴槿恵大統領がそうするかはともかく、国民は「安全保障をめぐる環境は1972年と似てきた。お父さんと同じように、南北和解劇を演じるかもしれない」と考えるものです。朴槿恵大統領も「統一は大当たりだ」などと唐突に、思わせぶりな発言をしたりしますしね。

 それに中国とすれば、首脳会談という南北の和解劇が実現しなくとも、その期待を朴槿恵政権に持たせる間は韓国を金縛りにできる。

米国も韓国から離れたい

真田:「中韓密約」は米国にとっても必ずしも悪い話ではありません。米国も韓国を泳がせつつ、裏で中国と大きな絵を描いている可能性があると私は思うのです。

鈴置:1971年のニクソンショック――突然の米中和解がそうでした。韓国だけではなく日本も寝耳に水でした。

 そして今後、米国が「カード」として使うであろう在韓米軍の撤収など安い代価です。北朝鮮の核問題解決に向け何らかのメドが立つのですから。代価というか、そもそも米国だって在韓米軍を撤収したいのです。

—大きな見取り図で読むと面白いですね。話を戻します。「離米従中」の引き金となる「韓国の次の通貨危機」つまり、ウォンの売り浴びせは起きるのでしょうか。

鈴置:韓国は外貨準備を世界7位の3600億ドルにまで増やしたと豪語しています。1997年の通貨危機当時と比べ約18倍です(グラフ参照)。

korea foreign currency

 

 

 

 

 

 

 

 

韓国の外貨準備はあてにならない

真田:少々の外貨準備では防波堤になりません。ロシアだって韓国以上の外貨準備を持っていましたが2014年、通貨ルーブルは価値が半値になるまで売り込まれたのです。

 投機をする側にとって中途半端な外貨準備は、売り浴びせたローカル通貨を買い取ってくれる宝の山にしか見えないのです。

 基本的な問題は韓国がまだドル不足の国であり、ホットマネーが大量に入り込んでいることです。何らかの拍子にこれが一気に流れ出る懸念が常にあるのです。

 ギリシャ危機はとりあえず遠のきましたが、いつ再発するか分かりません。米国の金融緩和もいずれ終了します。それが韓国にとって、そして北東アジアにとって大きな節目になるかもしれません。

 本当は、今こそ日韓は協力すべきなのです。日本にとって韓国はけしからん国になりました。でも、ケンカをしても得にはなりません。韓国だって同じことです。極東の安定のためには日韓がいい関係を維持する必要があります。

 ただ、こうは言っても日韓関係が良くなることはまず、ないでしょうね。韓国人は本質的に日本が嫌いなのですから。

 

 

 

 

3/2日経ビジネスオンライン 倉都康行『中国経済に吹く怪しげな風 社債、外貨準備そして地方都市の「変」』記事について

中国経済の数字は本当に信用できません。国も企業もですが。全人代で李克強は「製造業は中国が強みとする産業」「高付加価値型産業への移行を促す」と言ってますが、日本のように技術の蓄積もなく、強い中小企業がある訳でもありません。一朝一夕にできるものではありません。またインフラ投資で経済の数字を稼ごうとするのでは。固定資産投資がGDPの半分を占めていて実需がないというのに。

FTMデイリー(Follow the Money)に次の記事があります。「中国は2008年の債務が15.4兆$だったのに今は24兆$に増え、毎年借金が30%ずつ増えている。これは世界の歴史の中で、前例のない規模。また本記事は記者に報道させず、金利はいずれ暴騰するだろう。また熱銭(=外資)はキャピタルフライトしていて、監視強化かTARP(Troubled Asset Relief Program)が採られるだろうが、中国と世界は無傷ではいられない」という内容です。

http://ftmdaily.com/daily-briefing/011014/

それを裏付ける記事が2/2宮崎正弘氏メルマガ記事にありますので紹介します。

『「李嘉誠の「脱香入欧」(香港を捨てて欧州へ投資)が本格化   今度は英国通信大手「02」社買収へ動く」

香港最大財閥(世界富豪ランキングでも14位)の李嘉誠は旗艦の長江実業と和記を統合し、本社をケイマンへ移籍することは既報の通りだが、とりわけ英国ロンドンへの投資が勢いを増し、中核の不動産開発ビジネスから、つぎは移動通信事業への本格進出を果たそうとしている。

150億米ドル(邦貨換算1兆8000億円)を投下して、通信王手の「02」に買収をかけた。「02」社は英国最大の通信網を誇り、2006年にスペイン企業が買収した。その後、現金フローが悪く、有利子負債がかさんで経営状態が思わしくなくなり、身売り話が持ち上がっていた。現在ロンドンの当該管轄機構(日本で言う公正取引委員会)が審査を開始し、この買収が適当かどうかの判断を下す。

李嘉誠グループはすでに英国で「英国電力網洛」(英国で30%の電力供給)、「THREE電信」(顧客800万台)、「ノースアンブライン」(下水処理企業)などを買収しており、今回の「02」は移動通信企業として2400万台を抱える大手だ。

このように李嘉誠は、江沢民と親しかった政治的条件を利用して香港ばかりか、中国大陸で幅広くビジネスを展開してきたが、新しい梁震英・香港行政長官と折り合いが悪く、同時に江沢民の影響力低下にともなって大陸でのビジネスに見切りをつけた。

大陸内に保有してきた物件をほぼ売りはらい、もてあますキャッシュをカナダと英国の企業買収ならびにロンドンでの不動産開発プロジェクトに投資してきた。』

金や銀、土地等の裏付けもなく札を刷り、信用膨張させる仕組みが持続可能かどうかです。どういう幕切れになるのか?

記事

年初来、ウクライナ東部を巡る政府軍と親露派の戦闘激化や、ギリシアの新政権に拠る支援条件修正闘争など、ソブリン危機を想起させるニュースが市場の懸念材料とされてきた。昨年から引き摺る原油安も、ベネズエラをはじめとする産油国の財政や米国の新興エネルギー開発企業の資金繰りに重くのしかかっている。

 但し、株式市場では日経平均やナスダックが「今世紀最高の水準」を更新するなど、明るい兆しが見えている。懸案であった米国の利上げも、1月FOMC議事録では多くの委員が慎重な姿勢を示すなど先送りの可能性が囁かれ始めており、日欧が量的緩和を続ける中で、金融相場の継続を期待する向きも増えているようだ。

 だが、世界経済の成長ペースはいま一つ冴えない状況だ。加えて、独り勝ちと言われてきた米国経済にも利上げを躊躇させる状況が見えてきたとなれば、投資にも慎重さが要求されるのは当然だろう。高値圏で推移する株だけでなく、高利回りの債券にもデフォルト・リスクへの注意が必要な時期が近づいている。

 高利回り債券といえば、ジャンク債や新興国債が代表例だ。ジャンク債の隆盛は、金融緩和に加えて規制強化で銀行の融資姿勢が慎重になったという環境が支えてきた。また新興国債への資金流入は、ゴールドマンが掲げた「BRICs」という金看板と金融危機後の先進各国の中銀による量的緩和が、それぞれ投資家の背中を押したものである。

 こうした「高金利債券」への資金流入ペースを一層加速させているのが、先進国の債券市場における超低金利だ。欧州では約2兆ドルの国債がマイナス金利となり、スイスフランに至っては社債の世界にまでマイナス金利が押し寄せている。昨秋の日銀による追加緩和に続き、本年早々にはECBも遂に量的緩和に踏み込んだことで、世界中の投資家による「金利探しバブル」の勢いは強まる一方である。

 原油価格急落を受けて、エネルギー関連企業の発行残高が全体の17%を占める米国のジャンク債市場では、一部銘柄に売りが殺到しているが、超低金利が蔓延(はびこ)る債券市場では「高利回り商品人気」はまだ衰える気配がない。

 だが成長鈍化が企業業績を圧迫して経営破綻するケースが出て来れば、高利回り債券にも「調整局面」がやってくる可能性はある。特に新興国のドル建て社債は、ドル高という逆風にも揺さぶられて、リスクが表面化することも想定される。

社債大国中国が発した警戒シグナル

 OECDに拠れば、2013年における新興国企業の社債発行額は、2000年比約15倍4670億ドルに上った、という。2014年は恐らく2013年を上回る発行量があったものと思われ、BNPパリバはドルやユーロなどの非自国通貨建ての新興国社債発行残高は既に2兆ドルを超えている、と推計している。

 新興国の中でも大多数を占めるのが中国、ロシア、ブラジル、インドそしてメキシコの5カ国の新興国である。特にその半分近くのシェアを持つ中国企業の発行額は、2010年の236億ドルから2014年には1171億ドルと約5倍に急増するなど、その増加ペースには目を見張るものがある。

投資家が競うように新興国社債を購入してきた背景は、「新興国企業への高い評価」というよりも、前述したように低金利に喘ぎながらの「消去法としての投資」というニュアンスが強い。つまり、慎重な信用分析に基づいて健全なペースで社債発行が増えた結果とは言い難い。

 超低金利下に置かれた投資家は、いまやリスクに見合わぬリターンでも受容せねばならなくなっている。新興国社債投資の昨年のリターンは約5%とまずまずの水準を維持したが、実体経済を見れば成長率はペースダウンが鮮明であり、原油相場急落や地政学リスクそしてデフォルト率の増加懸念といった逆風が吹いていることを考えれば、合理的な投資水準としては10%前後の期待リターンが求められて然るべきだろう。

 だがそうしたレベルは超低金利下ではもはや現実的ではなく、割高だと思いながらもやむなく新興国社債を購入することになり、それが「新たな資産バブル」を生んでしまう。怖いのは、非合理的な水準に目が慣れて、潜在リスクへの感覚が鈍ってしまうことである(この点では、日本国債にも似たようなところがある)。

 そんな新興国社債に最初の警戒シグナルを発したのは、いまや社債大国ともいうべき中国市場であった。年初に、中国の不動産企業である佳兆業集団(Kaisa Group)が債務返済不能に陥ったと報じられたのである。

 銀行融資の返済と社債の利払いの双方で遅延を起こした同社は、事後的に100億ドル以上の債務を抱えていたことが判明したが、そのバランスシートの詳細は不明瞭でライバル企業への身売り案もまだ最終的に固まっていない。不動産業界が習主席の腐敗撲滅運動のターゲットになっていることも、市場不安を強めている。

 こうした企業のデフォルト懸念は、中国リスクの氷山の一角に過ぎない。また、為替がドル高に動けば、不動産業界でなくても外貨建て債務の返済に苦しむ企業が増えることは容易に想像できる。それは後述するように、人民銀行の「通貨政策」に微妙な影響を与えている。

超ハイペースで増加する中国の企業債務

 とはいえ、中国の金融システムに改善の兆候が見えるのも事実である。一昨年来、中国経済の時限爆弾とまで言われた「シャドー・バンキング」において、2014年の新規融資は前年比6%減少し、無節操な拡大にブレーキが掛かっているのはその表れだろう。こうした努力は評価されて良い。

 問題視されてきた理財商品の代替商品として、銀行の優良債権を組み入れたCLO(証券化商品)が急増していることも、金融健全化の証左とも言える。現時点では、鉄道などインフラ向け融資や優良企業向け貸出を原資産とする証券化商品として、健全な市場育成が図られているようだ。

 だが、金融商品開発には常に魔性が伴うことも忘れてはなるまい。投資家の強い需要を背景に、銀行のバランスシートに積み上がった危険な融資が証券化商品にこっそりと紛れ込むことを防げるかどうか、定かではない。

 特に現時点では、中国の銀行のバランスシートに「表面上は優良債権だが実質的には破綻債権」といった貸出が積み上がっているのは公然の秘密である。高格付けのCLOにそうした債権が入り込むこともあるかもしれない。

また、銀行融資であれ社債発行であれ、企業債務が超ハイペースで増え続けている構図に変わりはない。ゴールドマンに拠れば、同国債務残高の対GDP比は2008年の150%から2014年には250%と6年間で100%増となったが、その殆どが企業債務の増加によるものだ、という。

 日本のバブル期における負債増加も壮絶であったが、その企業債務の対GDP比は1980年の100%から10年後の1990年に130%まで上昇したに過ぎない。中国の企業債務増ペースは、半端ではない。

 中国政府は銀行の不良資産増を埋めるだけの体力は備えている、というのが中国専門家らのコンセンサスのようだが、ここ数年間に激増した社債の潜在的デフォルトのマグニチュードをどれほど織り込んでいるのか、判然としない。

国際資本も中国離れ

 中国経済のリスクを眺めれば、不動産や社債、銀行などの市場以外にも幾つかの点で怪しげな風が吹いていることが判る。同国への資本流入の急速なペースダウンはその一つであろう。それは、外貨準備の推移である程度推量することが出来る。

 急激な増加傾向にあった同国外貨準備高は、2013年末時点では3兆8800億ドルまで膨らんでいた。だが2014年には完全に伸びが止まり、昨年12月末時点では3兆8400億ドルと前年比僅かながら減少している。中国の米国債保有残高も、昨年末時点で1兆2443億ドルと前年末比で258億ドルの減少となっている。

 それは市場の人民元買い圧力が減少したことの表れであるが、その背景にあるのは輸出と投機資金流入の双方における鈍化であろう。特に後者に関しては、中国経済の先行き不安と密接な関係がありそうだ。

 2014年の公式統計では中国のGDP成長率は7.4%と発表されているが、機関投資家は殆どその水準を信用していない。7.7%成長であった2013年に7.5%の伸びを示していた全国電力消費量は、2014年には3.8%の増加に止まっている。それで7.4%の成長という数字はどう見ても整合性に欠ける。

 また昨年1-11月の国内鉄道貨物輸送量は前年同期比3.2%減少、鉄鋼生産量も2009年以来の低水準に止まっており、7%台の成長は明らかに「誇大広告」と言えそうだ。HSBCの製造業PMIも直近は2カ月連続で50を割り込んでおり、本年の成長率も実態的には5%程度との見方が増えつつある。

 日本企業が人件費上昇や日中関係の悪化などの影響から中国撤退を進めているのは周知の通りだが、国際資本も同様に中国離れを起こし始めている。中国もまた「新興国経済の失速」という点で例外ではない、との見方が大勢になってきたからだろう。

 それは、従来の「人民元先高観」という景色をすっかり変えてしまった。中国がドルペッグを撤廃した2005年以降、昨年1月までに対ドルで約37%上昇した人民元の相場は、そのピークであった対ドル6.0から現在は6.25前後まで減価しているのである。

 米財務省は「中国は昨年7月以来人民元安誘導の介入を止めている」との認識を示しつつ、逆に人民元の買い支えを行い始めた可能性を示唆している。昨今の奇妙な日中の値動きは、確かに逆介入の可能性を示しているように見える。人民元安の加速で企業の対外債務返済が苦境に陥ることを、人民銀行も警戒しているはずだ。

 中国には、急速な通貨安が資本流出加速を招くという警戒感もあるかもしれない。昨今のドル高や低金利の状況は、これまで積み上げ過ぎたドルと米国債を処分する良い機会ではあろうが、中国が「成長失速・企業破綻・資本流出」という最大の政治経済リスクに直面し始めたことは事実だろう。

歳入減の中で歳出を増やす地方政府

 そして、地方経済にも奇妙な風が吹き始めている。地方自治体は従来のGDP拡大一辺倒の方針転換を余儀なくされており、上海市のように、実際に成長率目標の提示を取り止めたところもある。

 だが地方政府は不動産市況の低迷で税収の激減に見舞われ、地方経済は不動産開発プロジェクトが行き詰まって、ともに苦境に陥っている。中央政府が謳う「投資から消費への成長モデル転換」など、すぐに達成できるはずもない。

 FT紙に拠れば、湖南省、河北省、陝西省の三省が今年の固定資産投資を2兆元超の規模に設定することを発表した、という。その金額は、河南省で前年比18%増、河北省は同19%増、陝西省では同20%と、いずれも前年の伸び率を上回っている。歳入減の状況が続く中で歳出は増加し、既に膨れ上がったその債務はさらに拡大方向へと向かいかねない。

 中央政府は昨年、地方自治体による借金増の隠れ蓑となっている融資平台(LGFV)への規制導入に動いたが、全面禁止になった訳ではなく一定の猶予期間が与えられている、と言われる。地方政府に「今のうちに出来るだけ借金しておこう」という動機が働いているのかもしれない。

 依然として投資がGDPの50%以上を占める中国経済において、さらに投資に依存する傾向が強まり、リターンを生まない負債額が膨張することになれば、7%成長という「張子の虎」の脆弱性は、益々顕になるだけである。

「実状が見えにくい社債」に警戒を

 もっとも、新興国問題は中国だけではない。ウクライナ停戦合意はもはや風前の灯であり、戦闘泥沼化に伴う同国の経済危機は目前に迫っている。欧米諸国が対露制裁の強化に向かえば、ロシア経済の困窮化にも拍車が掛かるだろう。また事実上の経済破綻国であるベネズエラがデフォルトする可能性は高い。当面のハードルをクリアしたギリシアも、国内での政治的不安が再燃するおそれがある。

 だがマグニチュードの大きさを考えれば、中国で危機が発生した時のインパクトほど深刻なものはないだろう。特に「情報が乏しく実状が見えにくい社債」は、これまで中国経済への懸念材料とされてきた「成長ペース失速」「不動産バブル崩壊」「銀行不良債権増加」「シャドー・バンキング不安」「地方財政赤字増大」といったキーワードと並べておく必要がありそうだ。

 社債問題が一国の経済を揺さぶるというのはピンとこないかもしれない。中国金融のレバレッジが飛びぬけて高い訳でもない。だが2005-6年頃、米国のサブプライム・ローンの証券化商品に懸念する声を殆どの人々が無視していたことを思えば、その教訓として中国の社債問題に一定の警戒感を抱いておくことは、決して無駄ではないだろう。

3/2産経ニュース 野口裕之氏『来日目的が観光から「敢行」に変わる日』記事について

一党独裁の共産中国の恐ろしさを書いた記事です。「観光客がたくさん来てくれて嬉しい」なんて思っていると痛い目に遭いますよということです。国防動員法はそれだけパンチがあります。大陸に残した家族を人質に取られるなら、刷り込まれている憎っくき日本人をやっつけた方が良いと思うのは道理です。中国にいる日本人もスパイ容疑で拘引されるでしょう。

日本人は人が良いので他人の悪巧みを想像できません。国際化の時代にあって、大きな欠点と思います。それと、主張すべきは即座に主張する姿勢が大事です。「和」の精神が通用するのは日本人の間だけ。言わなければ相手の言い分を認めたことになります。でも小生が2005年に中国から帰って来た時に、中国の実態を話した時のリアクションとは隔世の感があります。「人種差別主義者」「国粋主義者」とか言われましたが、今小生が中国について話しても誰もそういうことを言わないでしょう。10年かかりましたが、確実に日本人も変わりました。中国人の本質が理解できてきているからです。

敵の思惑を挫く予防措置と抑止力こそが大切です。敵国を持ち上げる日本のマスメデイア、親中・親韓の政治家に打撃を与えないと。マスメデイアは不買・受信料不払い、親中・親韓の政治家は落選させることです。

記事

2月24日までの1週間、中国の旧正月休み・春節を利用して雲霞のごとき中国人観光客が来日した。カジュアルな服装で札ビラを切る中国人が、小欄には肩章や襟章を付けた中国人民解放軍将兵と二重写しになった。

観光客には、休暇中の現役兵や予備役、民兵らが間違いなく存在しようが、わが国の法律と治安を守る限り入国を拒む理由はない。ただ「観光」目的が一転「敢行」目的に豹変するのなら、断固排除しなくてはなるまい。

国防動員法の恐ろしさ

殺到した中国人を目の当たりにして、2010年7月に施行された《中国・国防動員法》の条文を改めて点検した。法の上位に君臨する中国共産党の凶暴性が憑依したつもりで、法文・法理も「共産党好み」にウラ読みしなければ、国防動員法の恐ろしさは実感できない。

法律は、情勢次第で、観光客も、留学生も、研修生も、永住者も、日本を含め海外にいる中国人は騒擾・内乱を起こす侵略の先兵となれと、本国が発する司令を事実上担保する。

中国は平和の祭典・北京五輪を前に、長野市での聖火リレーで、チベット人大虐殺に対する世界の人々の抗議を嫌い、留学生ら3000~5000人(1万人説アリ)を大動員。「聖火護衛」と抗議ムードを薄め歓迎ムードを盛り上げる「サクラ」に仕立てた。国防動員法施行前の08年でこの動員力。日本に住む中国人は70万人、観光客は昨年240万人に達した。

中国人が善良であろうとなかろうと、動員は施行後、強制・義務となり、従わねば罰せられる。中国には親・兄弟が「人質」に捕らえられてもいる。春節期間中、世界の中華街で鳴り響いた爆竹を爆弾に替えられる法律。それが国防動員法が持つ裏の顔である。

法律の目的は《国防建設を強化し、国防動員制度を完全にし、動員業務の順調な進行を保障し、国家の主権、統一、領土の完全性や安全を守るため=第1条》。ということは、台湾が《統一》に反して独立を目指すのなら、法律の発動要件となる。台湾有事は日本に死活的影響をもたらすが、尖閣諸島(沖縄県石垣市)はじめ日本に対する直接侵攻もにらんでいる。

《国防勤務を担わなければならない》公民は《満18歳~満60歳までの男性/満18歳~満55歳までの女性=第49条》だが、後段が有る。

《次に該当する公民は国防勤務を免除する》として(1)託児所/幼稚園/孤児院/老人ホーム/障害者リハビリ施設など社会福祉機関に従事(2)義務教育課程の学校に従事(3)妊娠・授乳期間中の女性(4)勤務が遂行できぬ罹患者(5)労働能力喪失(6)国連など国際機関に勤務(7)県レベル以上の政府が免除-を列記する。

随分と“人道的”な条項で気味が悪い。日本の安全標語が《気をつけよう、甘い言葉と暗い道》と警告するように、中国が《甘い言葉》を発信しているときは「秘匿すべき“何か”」を埋め込んでいる。

「潜在力」に化ける観光客

国防動員法施行の4カ月前、6000強の無人島に網をかぶせた《海島保護法》を、中国が施行した背景も胡乱であった。表看板は島嶼の乱開発制限=生態系保護を掲げる“環境反故国”にしては珍種に属する法律。確かに開発で樹木が乱伐され、無謀な採石で「中国らしい」島が急増している。

ところが実態は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に生物圏保存地域=エコパーク登録された島にさえ軍事基地を造成。複数の国々が領有権を主張している島嶼も“保護下”に取り込み→海洋行政警察当局の警戒海域に指定→領域拡張=資源確保が強化された。

では、国防動員法における「秘匿すべき“何か”」とは何か。前述した海外に居る中国人に関する免除規定が《国際機関勤務》者以外、見当たらない点が気に掛かる。

半面、法律は第16・19・42条で《国防動員潜在力》の掌握・準備・維持を訴える。観光客/留学生/研修生/永住者の一部は《潜在力》へと化けるのではないか。

しかも《動員実施決定後、予備役要員は許可なく登録地を離れてはならない》が《既に離れている者は、兵役機関からの通知後(直ちに戻れぬなら)指定場所に出頭しなければならない=第32条》とある。

条文にハッとした。2013年11月、駐日中国大使館は在日中国人に「重大な緊急事態」に備えて連絡先を登録する旨通達した。法律のいう《指定場所》には大使館も含まれる…。大使館は海外における《潜在》戦力の掌握と、イザというとき、本国の命に基づき動員命令を発布する司令塔だと、小欄は観る。

ありえぬ「リマ症候群」

冒頭で触れた尖閣諸島はじめ南西諸島への侵攻緒戦では《潜在》戦力を動員。九州や沖縄本島での情報収集や騒擾、通信・金融・交通・医療インフラ破壊を狙うサイバー攻撃を仕掛ける戦法は効果的だ。

もっとも、大動員ではないだろう。専門性を伴う局地的隠密行動の上、敵地での専門家の非常呼集には限りが有る。実際、第49条は《特殊専門技術者は年齢制限を受けない》と徴用枠を広げている。第8条も《領土の完全性や安全が脅かされれば全国総動員》に加え《部分動員を決定する》と、別立てでわざわざ断る。

しかし、中国が法の施行主体であるから不気味なのであって、危機に備える安全保障体制自体が欠落するわが国は学習の必要があろう。例えば、国防動員法はヒト・モノ・カネを統制・徴用。《交通・運輸/郵政/電信/医薬・衛生/食品・食糧供給/建設/エネルギー・化学工学/水利/民生用原子力/メディア/国防用の研究・生産などの関連組織は、国防勤務を担わなければならない=第51条》とある。一党独裁の強制力とはいえ、羨ましい限り。

一方、この条文と前述の免除規定と併せ読むと、中国内の日本人も適用範囲に入る。人民解放軍高官は「国防動員法が発令されれば、外資や合弁会社にも適用される」と言い切っている。従わなければ、中国人同様に罰則を科せられるはずだ。

日本人はそれでも、中国市場にしがみつく。誘拐・監禁事件で、犯人と長時間過ごした被害者が犯人に次第に魅せられていく《ストックホルム症候群》を発症したかのように。逆に、監禁者が被監禁者に親近感を持ち、攻撃的姿勢を和らげるパターンを《リマ症候群》と呼ぶ。

言っておくが、中国はリマ症候群を患うほどヤワではない。

3/4日経 『米高官発言、韓国で波紋 「旧敵国中傷は停滞もたらす」』について

アメリカも韓国に手を焼いている様子がありありです。これで米軍相手の元慰安婦が米国で訴訟を起こせば面白いのに。どうしてアメリカでの日本軍の“いわゆる従軍慰安婦”だけ訴えるのか、理由が分からんと言うか、取りやすい所から取るという下種な考えからでしょう。法が予定している「正義の実現」には程遠い。それはそうでしょう。朝日新聞ですら誤報を認めたことに対してでも訴訟を起こすというのですから。事実認定の段階でアウトです。政府はキチンと否定する談話を出さないとダメです。それにしても福島みずほは何故米軍慰安婦をアメリカで訴訟するよう指導しないのですかね?戸塚悦朗、高木健一弁護士はどうして動かない?朴大統領の父の承認の下、国家管理で売春させたものです。これこそ、従軍慰安婦と言ってよい。韓国は小中華と言われるだけあって中国とやり方は同じ。自分がやってきたことを他人に押し付けます。

アメリカもいい加減見切ったらどうですか。アチソンのように朝鮮半島は防衛ラインでないと思った方がいいでしょう。韓国の米中二股外交、蝙蝠外交について国防総省は相当頭に来ているはず。普通の頭を持っていれば分かるはずなのに韓国の指導者にはそれが見えないようです。アメリカが手を引けば北朝鮮は待ってましたとばかりに南に侵攻するでしょう。同じ民族同士でやりあってほしい。他国を巻き込まないでほしい。

朝鮮人というのは集団でしつこく圧力をかけるのが得意です。中国の朝鮮族とつきあってそれが分かりました。組合のストが長期化するのもそのせいです。ヤクザとやり方は同じ。Blackmailです。圧力に屈してはなりません。時事通信OBの杉浦氏のシャーマン発言の解説がありましたのでそれも併せて掲載します。

リッパート駐韓米国大使の刃傷事件は間違いなくテロです。警察も黙認してやらせたのでしょう。シャーマン発言への意趣返しでしょう。安重根というテロリストが英雄になる国ですから。アメリカもよくよく考えた方が良いでしょう。こういう国と付き合うと碌なことがないと。

杉浦正章氏解説 『洞ヶ峠に厳しいけん制球』

慰安婦像を米国内にいくら建てようと、米外交までは左右できないというのが、米国務次官シャーマン発言によって証明された。韓国政府やマスコミに大きな衝撃を与えている発言は、中央日報が「米国の公式な立場と断定するには無理がある」と期待感を込めた分析をしているが、筆者の判断ではシャーマンの発言は韓国で言う「決心発言」、日本語では「確信的発言」だ。背景には、オバマ以下日韓関係改善に腐心をしてきた米国が、依然慰安婦問題など歴史認識を盾に日韓首脳会談に応じない大統領・朴槿恵にしびれを切らした事があるのだろう。中国台頭へのリバランス(再均衡)政策を展開する米国にとって、過去より極東の現実を重視することの方が格段に優先順位が高いのである。家康が洞ヶ峠を決め込む小早川秀秋に向けて発砲を命じて寝返らせたのと同じように、米国は慰安婦一点張りの朴に対するきついけん制球を投げたのだ。

 2月27日、国務省序列3位の次官・ウェンディ・シャーマンはカーネギー財団で戦後70年をテーマに講演した。そのポイントは「愛国的な感情が政治的に利用されている。政治家たちにとって、かつての敵をあしざまに言うことで、国民の歓心を買うことは簡単だが、そうした挑発は機能停止を招くだけだ」という点。次いで沖縄県・尖閣諸島を巡る日中間の緊張や日中韓の歴史認識に関する問題などについては「理解できるが、もどかしくもある」と述べた2点だ。まず発言にある「政治家」とは誰に当たるかだが、シャーマンは複数形で述べており、朴槿恵と中国国家主席・習近平を指すことは間違いない。しかし発言の流れを分析すればより朴に対する発言である比重が大きいことが分かる。「もどかしい」は、もういいかげんにせよといういら立ちの表現だ。韓国政界やマスコミもまるで驚天動地の反応だ。2日の国会外交統一委員会では野党議員が「大変驚いた。多くの国民が憤慨している。政府に適切な措置を求める」と発言。韓国最大手紙の朝鮮日報は3日付で「看過できない米国務次官の韓中日共同責任論」と題する社説を掲載。「米国の同盟国の指導者に対する無礼であり、中国に対する挑発だ」と怒りまくっている。

 傑作なのは中央日報だ。「発言のあちこちから『日本はそれなりに努力しているのに韓国・中国が国内の政治的理由でこれを受け入れない』という形の日本側論理が見られる」と強調。これだけは正鵠(せいこく)を得ている。揚げ句の果てに「日本はワシントンに韓米関係に溝を開けることを専門担当とする外交官がいるほどだという」と噴飯物の分析をしている。シャーマン次官発言が確信的である証拠は、きわめてセンシティブな問題に繊細な言葉遣いをしていることであろう。例えば慰安婦を「いわゆる慰安婦(so called comfort women)」と発言してクリントンの「性奴隷(sex slaver)」発言の表現をとるのを控えた。さらにシャーマンは「歴史教科書の内容をめぐってもお互いに意見の相違(disagreement)がある」と表現した。これは明らかに日韓の主張の相違を客観的に述べただけで日本に対する外交的配慮が見られる。従ってシャーマン発言は練りに練ったものであり、その基本は日韓関係悪化の主因は韓国側にあるという判断がある。

 米国にしてみれば、集団的自衛権の行使や日米ガイドラインの改正など安倍政権の日米同盟重視の姿勢は、オバマのリバランスにとって何物にも代えがたいものであろう。そのオバマが昨年斡旋して日米韓3か国首脳会談に持ち込んだ。米国としてはこれを契機に両国関係が改善すると期待したのであろう。しかし、朴の偏執狂的なまでに執拗な慰安婦問題執着で、日韓関係は進展しない。最新鋭の迎撃システムである「高高度防衛ミサイル(THAAD、サード)」の韓国配備も、朴は習近平のけん制を受けて態度が決まらない。アジア全体を見回せば、安倍の活発な外交で、中国包囲網が形成されつつある。簡単に言えば日本と韓国のどっちをとるかと言えば、極東の要は日本なのである。脆弱な半島国家より島国で「不沈空母」(中曽根康弘)を確保するのが米戦略のイロハのイなのだ。おまけに国家の力量から言っても経済力、軍事力ともに比較にならない。この認識がシャーマン発言の根底にあるのだ。

 韓国は外務省がホームページから「我が国と、自由と民主主義、市場経済等の基本的価値を共有する」との表現を削除したことについて4日、「日本政府が説明しなければならない」とのコメントを出したが、日本の韓国大使館は一体何をしていたのだろうか。この部分は安倍の施政方針演説で、とっくに外しているのであり、これを見逃して今頃クレームを入れても遅いのだ。産経のソウル支局長が在宅起訴されたいきさつを見れば、言論の自由を重視する民主主義国家としての韓国の有り様が疑われても仕方がない。従って価値観を共有できないのだ。「重要な隣国」が残っているだけでも有り難いと思わなければなるまい。そもそも朴の外交姿勢自体が見直されるべき時だ。朴は就任早々訪米してオバマの歓待、米議会での演説、クリントンの「性奴隷」発言、オバマの「ぞっとする人権侵害」発言などで、米国が自分を全面支持してくれているような錯覚をしてしまったのだ。今こそ外交の現実に目を向けるべきであろう。前大統領李明博も「歴代の韓国の大統領は任期後半になると、『反日』を使いながら支持率を上げようとする繰り返しだった。私はそういうことはしたくない」と述べておきながら、レイムダック化すると竹島上陸だ。朴にいたっては就任早々から「反日」を、シャーマンの言う「国民の歓心を買うこと」に使っているが、国民は馬鹿ではない。支持率は一時20%台まで落ち込んだ。

シャーマン発言を頂門の一針と心得、そろそろ自らが置かれた状況に気付くべきだ。

記事

【ワシントン=吉野直也、ソウル=小倉健太郎】シャーマン米国務次官がアジアの政治指導者らに対し、「旧敵国」を安易に中傷すべきでないという考えを示したことが波紋を広げている。韓国側が「日本への肩入れだ」と反発する一方、米側はその反応に「驚く」といった応酬が続いている。一連のやり取りは米韓両国の微妙な関係を映し出しているともいえる。

 「特定の国や指導者に向けられたものではなく、少々驚いている」。米国務省のハーフ副報道官は2日の記者会見で、シャーマン氏の発言を巡る韓国側の批判に反論した。さらに「日韓の建設的関係が地域の平和と繁栄に役立つ。歴史問題などを巡る米政府の立場に変化はない」と強調した。

 シャーマン氏は2月27日、戦後70年をテーマにしたワシントン市内での講演で「政治指導者が旧敵国をけなすことで安っぽい称賛を得るのは簡単だが、そのような挑発は前進ではなく停滞をもたらす」と述べた。

 このシャーマン氏の発言に韓国側は騒然となった。歴史問題において「日本の肩を持つ」(聯合ニュース)内容だと受け止められたからだ。2日の国会外交統一委員会では野党議員が「大変驚いた。多くの国民が憤慨している」と、政府に「適切な措置」を要求した。

 韓国外務省の趙太庸(チョ・テヨン)第1次官は「厳重な姿勢で対処する。(日韓の歴史問題に対する)米国の立場に変化がないことは確認済みだが、より具体的な説明を求めた」として一両日中にも米側から回答が来るとの見通しを示した。

 韓国最大手紙の朝鮮日報は3日付で「米国務次官の誤った歴史発言、このまま放置はできない」という社説を掲載。同盟国である韓国に「無礼」であり、中国には「挑発」になると主張した。米国に「公式の立場を明らかにする必要がある」と求めると同時に、米韓関係は韓国政府の言うような最上の関係ではないとも指摘した。その上で韓国政府に対応を促した。

 シャーマン氏の発言は米側の韓国側への不満を代弁しているとの見方が一般的だ。対北朝鮮や対中国を見据え、米側は日韓を含めた3カ国の連携を基軸に置いている。それにもかかわらず韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領は安倍晋三首相の首脳会談の呼びかけに応じていないからだ。首脳会談そのものを駆け引きの材料にする韓国側の姿勢にはかねて批判的だ。

 安倍首相が4月下旬に米国を訪問し、その際に米議会で演説をする構想に反対する韓国系米国人らが米議会関係者に見直しを働きかけていることも米側は快く思っていない。シャーマン氏の発言を巡り韓国側が米側への非難をさらに強めれば、微妙な米韓関係が一段と揺らぐ可能性もある。

3/2産経ニュース 櫻井よしこ氏の『「日本の歴史的蛮行」は中国自身の伝統的行動であることを世界に発信せよ』記事について

昨日の藤岡氏の記事の基になった櫻井氏の記事です。中国が如何に歴史を改竄・捏造してきたかです。中国の歴史は易姓革命の連続ですから「前王朝が如何に悪かったか」を記述しないといけない。そうなると嘘で塗り固める必要も出てきます。元々歴史と言う言葉は日本語から中国に伝わったという説もあります。勿論、「歴」と「史」という言葉は中国発ですが。漢和辞典で調べると「歴」は「順序良く次々と足で歩いて通る事」、「史」は「記録を記した竹札を筒に入れて立てている記録役の姿」とあります。日本発、中国発いずれにせよ中国の歴史に対する感覚は日本のように実証主義でなく政治闘争の道具と言うことです。それを日本人は良く理解しないと。

中国人の言う嘘に日本は断固として反撃に転じなければ、名誉は末代まで汚されたままです。戦後のいい加減な左翼リベラルの言に惑わされたツケが回っています。敵は十数か国語でないことないこと報道しています。貧しい国に寄付してCCTVの報道を見せつけ、日本の悪口を吹きまくっています。日本の地道な援助だけでは追いつきません。外務省から広報部門を切り離し、国際報道をする部署=広報省(NHKを傘下に置くのはダメです。左翼が多すぎ)を置いたらどうでしょう。当面は英・西・独・仏・露・中・亜の7カ国語で良いのでは。

しかし、村山や河野等のインチキ政治家のなした罪は大きい。売国奴です。罪万死に値するものです。両人ともその自覚がない所が恐ろしい。でも選んだのは国民です。彼らを否定する政治家を選んで日本の名誉回復を果たしましょう。

記事

戦後70年、中国が対日世論戦を激化させている。日本をファシスト国家と決めつけ歴史問題で攻勢をかける。

日本の最善の対処は中国の歴史を古代から現代に至るまでしっかりたどり、中国が直接間接に糾弾する「日本の歴史的蛮行」の数々が中国自身の伝統的行動に他ならないことを世界に発信することだ。

慰安婦問題に関して国際社会が日本非難の土台としている文書のひとつに、国連人権委員会特別報告者のクマラスワミ氏の報告書がある。

1996年2月に同委員会に提出された報告書には数々の「日本軍の蛮行」が列挙されている。実はそれらこそ中国人の所業であることを中国の歴史書が教えてくれる。

クマラスワミ氏が95年7月に朝鮮半島の慰安婦16人から聞いたという被害証言の中に北朝鮮のチョン・オクスン氏のものもある。チョン氏の証言は北朝鮮側から受け取った記録であり、クマラスワミ氏はチョン氏に会っていない。つまり、伝聞なのだが、その背景に、色濃い中国の影が見てとれる。チョン氏は次のように語っている。

 (1)反抗的な態度をとった慰安婦の少女を日本兵が裸にして手足を縛り、くぎの突き出た板の上で転がして血だらけにし、最後に首を切り落とした。その遺体を煮て、泣き叫んでいた他の慰安婦に食べさせると言った。

 (2)池を掘って水を張り、蛇でいっぱいにして慰安婦40人を裸にして突き落とし、蛇にかませて死なせ、最後に池を埋めた。こうして部隊にいた少女の半数以上が殺された。

氏は一連の証言を基に慰安婦問題はジェノサイド(大虐殺)と見なすべきだとの見解を打ち出している。

日本人は誰しも、これらは絶対に日本人の行為ではないと即座に断定するだろう。ここに描かれているのは私たちの文明には全くそぐわない。

一方、政敵や民衆に対してこのような苛酷な罰をいつも与えていたのが中国だったことが中国の歴史書、資治通鑑に書かれている。

前述の(1)くぎの板による無残な罰は、五代十国時代の閩の国の軍使、薛文傑が考え出した刑罰から始まっていた。罪人をくぎの突き出た狭い箱に入れて揺らして死にいたらしめる刑である。また人肉食、罪人も幼子も殺して食べる事例は数限りなくといえるほど、資治通鑑に記されている。

(2)の蛇の池の罰も五代十国時代の南漢という国の帝が考案した罰で、「水獄」と呼ばれていた。

慰安婦問題で日本批判の戦略戦術を立てているのは、実は、中国なのである。一方で、中国の実態は、現在習近平主席が挑戦する想像を絶する不正蓄財も、実は何千年来の中国の悪しき伝統であることが、資治通鑑によって明らかである。

クマラスワミ氏が報告した人間らしからぬ悪魔的所業は日本人の行為ではなく、中国人の伝統的手法だと、国際社会に証明するにはここに引用した資治通鑑をはじめ、中国の歴史書を忠実に英訳し、世界に紹介していくのがよい。敵を知り、その実態を広く知らせることが、私たちが直面させられている歴史戦に対処する基本である。

実は私はこの資治通鑑の内容を麻生川静男氏の『本当に残酷な中国史 大著「資治通鑑」を読み解く』(角川SSC新書)で学んだ。資治通鑑は司馬光が編んだ中国の史書で、紀元前5世紀から紀元1000年までの約1500年間の中国史を、全294巻1万ページで描いた大著である。毛沢東が17回読み返したという同史書の随所にクマラスワミ報告の世界が広がっている。

クマラスワミ報告の中の蛮行は、中国人の伝統であるのみならず、冊封国家として中国に従属し中華文明の影響を受けた朝鮮民族の行動様式でもあろうか。

私たちはさらに中国政府がチベット人、ウイグル人、モンゴル人をどのように痛めつけ虐殺しているかについても、そこから思いを致すことができる。

日本人はクマラスワミ報告をどのようにして読むのだろうか。外務省の和訳は公表されていない。そこで何人かは、村山富市氏が理事長を務めた「女性のためのアジア平和国民基金」の訳を見ているのではないかと思う。

だがその訳から、「蛇の池」の事例がスッポリ抜け落ちている。同基金は、2007年3月に活動を停止しており、省略理由を問うことはできなかった。

以下は私自身の推測だが、「蛇の池」は日本人にとってあまりにも荒唐無稽で、こんな話を入れればクマラスワミ報告への信頼が失われてしまいかねないと、彼ら(彼女ら)は恐れたのではないか。

アジア女性平和国民基金をはじめ、慰安婦問題で日本を糾弾する人々にとってさえ、報告書はそれほど信頼できないものだということか。

それにしても外務省はなぜ当時、反論しなかったのか。雑誌『正論』が昨年の6~7月号で掲載した外務省の反論書は立派にスジが通っている。それを、一旦、 人権委員会に配布した後、取り下げた。

村山富市首相がその前年に戦後50年の談話を 出しており、時の政権の意向が働いたにしても、外交官の誰一人、立ち上がって反論しなかったのは限りなく情けない。

首相も状況も変わったいま、私たちは中国研究を進め、中国文明の巨悪と、その対極にあるに違いない善なる側面も、見ていきたいものだ。中国研究を介し て「敵」をよりよく知り、日本の不名誉を晴らす大目的を実現するときである。