『2018年「一寸先は闇の米国」をあえて占う 波乱の国内外情勢とトランプの「健康・精神」』(12/18日経ビジネスオンライン 高濱賛)について

12/19日経米大統領「中ロは競争勢力」 国家安保戦略を公表

【ワシントン=永沢毅】トランプ米大統領は18日、安全保障政策の指針となる「国家安全保障戦略」を発表した。中国とロシアを米国の国益や国際秩序に挑む「修正主義勢力」と断じ「強国同士の競争が再び戻ってきた」との危機感を表明。国防予算の拡大などを通じて「米軍の力を再建する」と明記した。中国などへの関与によって信頼関係を築けるとの前提に基づいた過去20年の安保政策は「見直しが必要」とも指摘した。

トランプ米大統領 「国家安全保障戦略」発表

トランプ米大統領は18日、安全保障政策の指針となる「国家安全保障戦略」を発表した。国防予算の拡大などを通じて「米軍の力を再建する」と明記。演説したトランプ氏は「米国は再び強くなる」と力説した。

トランプ大統領は同日の演説で「戦いに勝利する準備ができていない国家は、戦争を防ぐことができない」と述べ、軍事力の増強に努める方針を強調。中ロの台頭を念頭に「我々は新たな競争の時代のさなかにある」との認識を示した。そのうえで「このゲームで米国は勝利する」と語った。

国家安保戦略は具体的な安保政策の土台となる文書で、トランプ政権での公表は初めて。(1)米国民と国土の防衛(2)米国の繁栄促進(3)「力による平和」の堅持(4)米国の影響力拡大――の4つの分野で構成した。このほかインド太平洋や欧州、中東など地域別の項目を設けた。

この中で中国について米国は「中国の発展と戦後の国際秩序への統合に向けて支援」することが、中国の自由主義化をもたらすとの信念に基づき政策を進めてきたと指摘。ただ「我々の希望に反し、中国は他の主権国家を犠牲にその力を広げてきた」と批判した。

ロシアにも2014年のクリミア半島の併合やウクライナへの軍事介入を念頭に「強力な力を再び蓄積し、周辺に勢力圏を築こうとしている」と警戒感をあらわにした。

北朝鮮に関しては、同国が加速させている核や弾道ミサイル開発を「グローバルな対応が必要なグローバルな脅威」と非難。イランとともに「ならず者国家」と位置づけた。

テロ組織を含むこれらの脅威に対抗するため、米軍の増強や近代化を進める方針を表明。日本や北大西洋条約機構(NATO)といった同盟国との連携も重視する方針を打ち出した。

米国の繁栄促進に向けては、貿易不均衡の是正に取り組むと表明した。「強い経済が米国の力を増す」との認識に基づき「自由で公正、互恵的な経済関係を追求する」とうたった。米国土の防衛では国境管理を強化し、移民システムを改革する方針を明記した。

トランプ政権はこの国家安保戦略に基づき、核体制の見直しなど個別の戦略をまとめた文書を順次、公表する方針だ。>(以上)

高濱氏記事を読みますと、トランプは弾劾されることもなく、少なくとも4年の任期は全うしそうです。トランプの間にできることは総てやってほしい。北の非核も、他力本願と言われればそうですが、日本が実力行使できるようになるまでは出来ません。国民の意識が変わらなければ何もできません。日本の民主主義は衆愚を拡大再生産してきただけです。自国を守る国民の義務を憲法9条で破壊しておいて、戦後70数年ほったらかしにしてきたのですから。国の構成員の生命・財産を守るのが国家の役割でしょう。それを「国が守れなくて良い、守ってはダメ」という左翼の論理は外国の手先の考えとしか思えません。左翼は、自分たちが天下を取れば、真っ先に国民を弾圧する解放軍を作り、粛清するだけです。中共の人民解放軍、ソ連の赤軍の歴史が示しています。日本の学界・官界・経済界とも外国の手先となっています。「他人依存」を「平和主義」と言う美辞麗句で擦りかえられているのに気づかない愚かな人達です。

トランプの言う「アメリカ・ファースト」、「メイクアメリカグレイトアゲイン」と言うのは、米国が孤立主義に陥ることではなく、オバマ時代に国際ルールに従わなかった国々に対して容赦しないというだけです。国際ルールを決めて来たのは白人であったとしても、合理性の観点からそれ以外の人種でも従ってきたはずです。それを破る国はやはり力で抑えるしかありません。憲法9条なんて屁のツッパリにもなりません。中国の侵略行動を止めさせないと。

記事

年末年始の特別企画として、日経ビジネスオンラインの人気連載陣や記者に、それぞれの専門分野について2018年を予測してもらいました。はたして2018年はどんな年になるのでしょうか?

(「2018年を読む」記事一覧はこちらから)

就任式の後、昼食会に出席したトランプ大統領。来年もこのような笑顔を見せることができるだろうか(写真:ロイター/アフロ)

—トランプ米大統領が2017年1月に就任して以来、同氏の言動に振り回されて11カ月が経ちました。2018年は米国にとってどんな年になりそうですか。

高濱:何人かのワシントンの政界通に聞いたところ、みな「予測不可能」と答えました。まさに「一寸先は闇」です。

米国では11月に中間選挙があります。それと、ロシアゲート疑惑の追及がどうなるのか。目が離せません。そして、その結果次第では、トランプ大統領の処遇(弾劾か、解任か、強制的辞任か)がアジェンダに載るかもしれません。

もう一つ、新たに出てきたのが、トランプ大統領をめぐるセクハラ疑惑を究明する動きです。女性下院議員56人が12月11日、トランプ大統領のセクハラ疑惑について調査するよう下院の監視・政府改革委員会に正式に要請しました。全米に吹き荒れているセクハラ告発旋風がトランプ大統領にも迫ってきました。成り行きが注目されます。

外交面では北朝鮮問題、米中ロ関係、中東問題、グローバルな経済問題がどうなるかがポイントです。トランプ大統領は「独善的孤立主義の路線」を突っ走っていますが、どこへ向かおうとしているのか。これに北朝鮮や中国やロシア、中東諸国やイスラム教過激派がどう反応するのか。

予測が困難なのは、トランプ政治の方向性もさることながら、ご本人の健康・精神状態が安定していないからです。

同氏は飲酒や喫煙は一切しないのですが、ステーキやハンガーガーなどコレストロールや脂質の多いものを好んで食べ、野菜や果物はほとんどとらない偏食家です。医学関係者の間で「トランプ大統領は健康上問題がある」との見方が広がっています。

トランプ大統領がエルサレムをイスラエルの首都として承認すると宣言した12月7日の演説はテレビ中継されました。その時、同大統領の発音が極度に乱れたことから「健康不安」説が再燃しているのです。セラ・ハッカビー・サンダース大統領報道官は、年明けに健康診断を受け、結果を公表すると言っています。

(”Trump’s mental meltdown,” Joe Scarborough, Washington Post, 12/7/2017)

民主党が米議会を奪還できないこれだけの理由

—11月の中間選挙はどうなりそうですか。民主党が上院を奪還する可能性はあるのでしょうか。

高濱:ベテランの選挙予想専門家、数人(民主党系も含む)に聞いたところ、「民主党が、下院はもちろん、上院でも過半数を奪還するのは難しいだろう」と異口同音に指摘しています。理由は以下4つです。

<共和党は上下両院過半数の堅持に自信満々>

第1は、中間選挙に臨む共和党指導部の意気込みと気迫です(無論その裏付けには後述するいくつかの客観的要素があるのですが……)。トランプ氏の大統領らしからぬ言動や支持率の低さ(30%台を低迷)にもかかわらず、トランプ大統領は「共和党大統領」です。共和党が8年ぶりに政権与党に返り咲いたのはトランプ大統領のお陰です。その大統領を支えるべく上下両院で過半数を死守しようとするのは当然です。

それに比べて16年大統領選で敗れた民主党には、そうした覇気が感じられません。民主党は中間選挙戦を引っ張っていく「党首的リーダー」(民主党全国委員長にはトム・ペレス氏、上院にはチャック・シューマー、下院にはナンシー・ペロシ両院内総務がいますが、米国民はどの人物も「党首」とは見ていません)は現時点で現れていません。

かって、金丸信(副総理、自民党副総裁、幹事長を歴任)という政治家がいました。党内では不人気だった総裁候補(少数派閥の領袖だった中曽根康弘氏)を「おんぼろ神輿」と言いながらも支持したことがあります。今の共和党幹部はトランプ大統領をまさに「おんぼろ神輿」と見ているのですね(笑)。それでも担ぐのです。

景気、雇用、通商などの情況はオバマ政権の時よりも好転している。税制改革をはじめトランプ政権が推し進める経済・財政政策を共和党支持の富裕層は高く評価しています。少なくとも白人を中心とする共和党支持層は中間選挙でも共和党を支持するに決まっているという自信があるのですね。

<各州の州知事、州議会議員は共和党天下>

各州の情況に目を向けると、共和党は知事の数(共和党34人、民主党15人、無党派1人)や、州議会議員の数(共和党56%、民主党43%、残りは無党派か第三政党)で大きくリードしています。共和党が過半数を占める州議会は67(民主党は32)です。

中間選挙において、各州知事や州議会議員はまさに「足腰」の役割を果たす。彼らが提供する物心両面の支援が中間選挙での勝敗のカギを握ります。それに下院選挙区の区割りを決めるのは連邦政府ではなく州政府です。共和党に有利な区割りが定着してきたのは党の「地方パワー」のお陰です。

(”Partisan composition of state houses,” Ballotpedia. 12/9/2017)

<威力を発揮する共和党のゲリマンダー戦略>

共和党は「地方パワー」を「武器」に過去十年の間に各州で「ゲリマンダー*」を進めてきました。つまり共和党は、選挙を有利に進めるために各州、特に南部や中西部で共和党支持層が特定の選挙区に集中するよう選挙区を割り、共和党候補が勝てる下地を作ってきたのです。顕著な具体例として、下院のメリーランド第3区、ペンシルバニア第7区、テキサス第33区などがあります。

(”Here are the most obscenely gerrymandered congressional districts in America,” Chris Cillizza, CNN Politics, 10/4/2017)

*:ゲリマンダーとは、特定の政党や候補者に有利に働くよう選挙区の区割りをすること。1812年、マサチューセッツ州知事(のちに副大統領)のエルブリッジ・ジェリー氏(当時の「民主・共和党」)が与党に有利になるように選挙区の区割りを始めた。

<「スーパーPAC」で潤う共和党候補>

共和党は、選挙資金を集める制度として合法化された「スーパーPAC」(特別政治行動委員会)*をフル活用して「キャンペーン力」において民主党に差をつけました。保守派の億万長者が「スーパーPAC」に巨額の政治献金を注ぎ込み、共和党候補者の支援広告や民主党候補者へのネガティブキャンペーンに使い始めたからです。中間選挙でも「スーパーPAC」が威力を発揮するのは間違いありません。

*:スーパーPACによって、選挙運動とは独立した活動であれば、上限なく献金を集められるようになった。従来のPACの個人献金は1人・1年間5000ドルまでの上限が定められている。

<上院の改選議席、民主は26人、共和は8人>

18年の中間選挙における上院の改選議員数は民主党と共和党で大きく異なります。再選を目指す民主党系の現職が26人(うち2人はバーニー・サンダーズ氏とアンガス・キング氏で、どちらも無所属)もいるのに対して、共和党現職は8人。民主党が上院を奪還するにはこの26+2議席を取らねばなりません。

(”2018 Senate Election Interactive Map,” www.270towin.com., 12/15/2017)

(”2018 Senate Overview: The Pro-GOP Landscape Is Turning Blue.” Ed Kilgore, New York Magazine, 11/30/2017)

一方、下院(全議席数435)について、米バージニア大学政治研究所が発表した当落予想(11月30日時点)によると、共和党は「安全圏入り」「有力」「優勢」を合わせて224議席、民主党は191議席となっています。民主党が過半数(218)をとるには「接戦」区(20議席)+7議席で勝たねばなりません。厳しい情勢といえます。

(”House 2018: Less than a year out, race for control is a coin flip,” Kyle Kondik, Sabato’s Crystal Ball, 11/30/2017)

ロシアゲート捜査はトカゲのしっぽ切りで終わる?

—トランプ政権のアキレス腱になっているロシアゲート疑惑の捜査は越年しそうですね。ロバート・モラー特別検察官 が率いる捜査チームは来年、どう動くのでしょうか。劇的な展開はありそうですか。

高濱:「劇的な展開」と呼べるのは、トランプ大統領が訴追された場合でしょう。主要メディアが訴追と書き立てていますが、「そこまではいくまい」といった見方が一般国民(知識層と言われる人たちを含む)の間で支配的です。

確かにモラー特別検察官は「ワイルドカード」(切り札)です。マイケル・フリン前大統領補佐官(国家安全保障担当)、ポール・マナフォート元選挙対策本部長、トランプ・ジュニア氏あたりまでは訴追するでしょう。ひょっとすると娘婿のジャレッド・クシュナー上級顧問まで引っくくるかもしれません。

しかし、それより上(つまりジェフ・セッションズ司法長官など閣僚)は、モラー氏としても政治的判断を取らざるを得ないでしょう。フリン氏らを捕らえるなど、トカゲのしっぽ切りでお茶を濁すのか、どうか。トランプ大統領弾劾の弾劾を発議する権限を持つ下院司法委員会などの顔色を窺いながら決めるのではないでしょうか。

来年も続きそうな米朝の緊張したにらみ合い

—北朝鮮問題はどうなるでしょうか。

高濱:いろいろな推測が出ています。米国の歴代政権(民主・共和の両方)の太平洋東アジア政策に一定の影響力を与えてきた元米国務高官はこう予測しています。

「トランプ政権による北朝鮮対応の最大の欠陥は、北朝鮮の核・ミサイルに関する正確な情報を把握していないことだ。さらに北朝鮮を攻撃する場合に米軍が使用するミサイル、通常兵器の正確な能力についても完全には掌握してはいない」

「これらが掌握できない限りトランプ大統領は、軍事行動をとると口ではうそぶいても、実際には動けない。だとすれば、2018年になっても、トランプ政権にできるのは経済的圧力をさらに強化すること以外にない。対北朝鮮に対して軍事行動を取る可能性は低いと言わざるを得ない」

「一つだけはっきりしていることがある。トランプ政権は、北朝鮮が米国領土を核攻撃できる能力を持つ『核保有国』になることだけは容認しない。この基本姿勢は不変だ。万一、そのような事態が生じたら、同盟国や中ロが反対しようともトランプ政権は軍事行動に出るだろう」

—北朝鮮とのにらみ合いが2018年も続くということですね。

高濱:そうです。米軍事専門家の中にこう断定する人もいます。「北朝鮮の核・ミサイル能力が飛躍的に増強されたことを除けば、米国の軍事オプションはジョージ・W・ブッシュ政権が03年時点に直面していた事態とさほど変わっていない」(ミラ・ラップ・フーパー博士=センター・フォア・ニュー・アメリカン・セキュリティ研究員)

「韓国の文在寅大統領は、『我々の許可がない限り、米国は先制攻撃できないとコミットしている』と公言。日本は『北朝鮮が日本を攻撃しない限り、参戦しない』とほのめかしている。オーストラリアは先制攻撃には反対だ。日韓豪の3同盟国が参戦しない情況で、米国は北朝鮮をどう攻撃できるというのか。状況は03年と変わっていない」

(”The North Korea Debate Sounds Eerily Familiar,” Kori Schake, The Atlantic, 12/8/2017)

北朝鮮は02年の暮れから03年の初頭にかけて核施設の凍結を解除し、国際原子力機関(IAEA)の査察官を強制的に退去させました。そして「米国の脅威と、(北朝鮮に対する)米国の『敵対政策』に対する抑止力を持つためだ」と主張。これに対してブッシュ政権は「北朝鮮が核開発計画を、完全かつ検証可能な形で、復元不可能なまでに放棄することが米朝直接対話の前提だ」と反論しました。この基本スタンスは現在も変わっていません。

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