『中国人民解放軍の大改革に警戒せよ!東部戦区(東部戦域軍)の統合運用能力の向上に対処せよ』(4/7JBプレス 渡部悦和)について

トランプは習近平との会談終了間際にシリア攻撃を命じ、その旨伝えたとのこと。勿論日本を筆頭に主要国には事前連絡したようです。ロシアにも連絡してロシア軍に被害が出ないようにしたようです。敵国中国とは扱いが違って当然です。6/8TVで会談終了時の映像が映し出されましたが、習は言い淀んでいた印象があります。習近平の顔に泥を塗ったのは間違いありません。思い出すのは胡錦濤が米中会談の時に、本人が知らない内に、解放軍が勝手に兵を動かした事件です。(中国を訪問中のゲーツ国防長官が胡錦濤国家主席と会談した際、胡主席が中国軍の次世代ステルス戦闘機「殲20」の試験飛行を知らされていなかったことや2007年1月に行われた衛星破壊実験や、南シナ海で09年に中国の複数の艦船が米海軍の海洋調査船に嫌がらせをした事件についても胡錦濤主席に知らされていなかったこと)。今回は、人民解放軍ではなく、米国から袖にされたという事、而も中露分断を狙った可能性もあります。

http://www.asahi-net.or.jp/~VB7Y-TD/L3/230115.htm

本記事を読みますと、日本の自衛隊の統合化が進んでいないとのこと。米軍と自衛隊の統合化は進んでいるのに、自衛隊の内部で陸・空・海・サイバー・宇宙の統合、もっと言えば海保と警察との連携が重要です。警察は地方公務員ではなく国家公務員にして自治体の垣根を取り払うべきです。中国が尖閣を侵略してきたときに準軍事作戦(paramilitary operation)の時は、海保と警察が対応しなければなりません。自衛隊が出れないのに米軍が出られるわけがありません。自衛隊の統合作戦を進化させていかねば。また将来的には日米豪印、台湾、ASEAN、英仏で中国の海洋侵略を防ぐ合同演習をしていければと考えています。

トランプの今回のシリア攻撃で、北朝鮮の「斬首作戦」は近くなったと思います。習近平は江派と瀋陽軍を手なづけられていませんので、米国の要求にはゼロ回答だったと思います。5/9韓国大統領選までの間が一番危ないと思います。金正恩が打倒されて喜ぶのは江派と瀋陽軍か習近平かは分かりません。江派と瀋陽軍は習の追い落としを図る材料にするでしょうから。腐敗ができなくなった人民解放軍は習に対し物凄く恨んでいると思います。

記事

中国・北京の人民大会堂で握手する習近平国家主席(右)と米国のレックス・ティラーソン国務長官(2017年3月19日撮影)〔AFPBB News

習近平主席による人民解放軍の大改革

習近平主席は、2017年の秋に予想される中国共産党第19回全国代表大会に向けて、権力基盤を強化しているが、大きな要素は人民解放軍を自らの完全な統制下に置くことである。

習主席は、2015年12月31日、中国建国(1949年)以来、最大規模の人民解放軍の改革に着手した。この改革は、既存の組織を少しいじるだけの小さな改革ではなく、多岐にわたる根本的なものであり、しかも改革の目標年を2020年に設定するなど、彼の軍改革にかける執念を感じる内容になっている。

この大改革が成功すれば、人民解放軍は精強な軍隊になり、自国の防衛のみならず、世界で作戦を実施する手強い存在になる。我が国にとっても大きな脅威となるので、改革の動向を継続的に分析していく必要がある。

人民解放軍の改革開始から4月1日現在で1年3カ月が経過し、徐々に改革の実態が見えてきたので、本稿においては軍改革の概要を簡単に説明するとともに、日本および台湾に対する作戦を担当する最重要な東部戦区(東部戦域軍)の改革の現状について紹介したいと思う。

結論的に言えば、人民解放軍改革は、多くの問題を抱えながらも徐々に「戦う軍隊」になりつつあると評価する。しかし、習近平が目標としている2020年までの改革の完成は無理であると断言できる。

なぜなら、組織を再編成して新しい組織の形(ハード)はできたとしても、組織が効果的に機能を発揮するために実施しなければいけないこと(作戦構想の確立、作戦構想に基づく訓練の実施、その成果のフィードバックなど)は多く、とても2016年から2020年までの4年間で完成しないからだ。2020年以降も改革の継続が必要となろう。

日本の防衛に大きな影響を及ぼす東部戦区(東部戦域軍)については、艦艇や戦闘機の性能は向上し、陸・海・空・ロケット軍による統合作戦能力も徐々に向上するであろう。

実は、自衛隊には大きな部隊レベルにおける陸・海・空の統合部隊が存在しない。自衛隊よりも先に、中国の統合部隊が、戦区レベルで戦域軍として誕生した意味は大きい。東部戦区(東部戦域軍)に対峙する自衛隊や海上保安庁をはじめとする組織の対処能力の向上が急務である。

・人民解放軍改革の目的

改革の最大の目的は、人民解放軍を「戦って、勝つ」軍隊にすることだ。習主席は、改革を公表した2015年の時点の評価として、「人民解放軍は戦えないし、戦っても勝てない軍隊だ」と考えていた。そして、戦って勝てる軍隊にするためにはどうしたらいいかを考えて出した結論が、以下の諸点である。

(1)統合運用などの米軍方式を努めて取り入れ、真に戦い勝利する現代軍にする。

今回の軍改革の大きな特徴は60年以上続いてきた旧ソ連軍方式から米軍方式への転換である。なぜ、米軍方式なのか。世界一の軍隊である米軍の長所を吸収するためである。

現代戦は、5個の作戦領域(陸・海・空・宇宙・サイバー空間)をすべて使い、各軍種(陸・海・空・海兵隊など)が密接に連携した統合作戦により遂行される。統合作戦能力を向上することは、結果的に人民解放軍の伝統であった陸軍優先の伝統を排除することにつながる。

人民解放軍改革の試みは、中国版ゴールドウォーター・ニコルス(Goldwater-Nichols)だと形容されることがある。米国のゴールドウォーター・ニコルス法は、1986年に制定され、米軍の統合運用の根拠となった法律である。

米軍は、1986年から30年以上かけて統合作戦能力の向上を図ってきたが、いまだに問題点が指摘されることがある。ましてや共産党の軍隊である人民解放軍が統合運用をマスターするためには米軍以上の年月が必要であろう。

なぜなら、統合運用のためには柔軟性や創造性が不可欠なのだ。共産党の軍隊である人民解放軍に米軍の様な柔軟性や創造性があるとは思えない。

しかし、後述する戦区(戦域軍)の創設により、戦域軍司令官がすべての軍種から提供される部隊を戦力化して統合運用する「仕かけ」はできた。今後、その「仕かけ」を使い、米軍の太平洋軍などと同等のレベルの統合作戦を実行するには特段の努力が必要である。

(2)人民解放軍内における陸軍優先主義を排除し、中央軍事委員会の影響力を強化する。結果として軍の腐敗を根絶する。

参謀組織の変更*1により、陸軍が支配していた4総部(総参謀部、総政治部、総後勤部、総装備部)を改編し陸軍優先主義を排除するとともに、中央軍事委員会の影響力を強化し、結果的に習主席の権力基盤の強化にも直結する。

4総部の中でも総参謀部(General Staff Department)は陸軍司令部も兼ねていたために、海軍司令部と空軍司令部の上位に位置し、陸軍が他の軍種を支配する形であった。それを解消したことは特筆すべきである。

また、陸・海・空・ロケット軍の統合組織である戦区(戦域軍)の司令官のポストを、陸軍だけではなく他の軍種出身者にも開放することにより陸軍優先を排除する仕組みにした。実際に、南シナ海を担当する南部戦区(南部戦域軍)では、海軍の袁誉柏中将が司令官に就いている。

陸軍優先主義の排除は、結果として陸軍を中心とした腐敗を根絶することになるし、統合作戦の実施においてもプラスである。

しかし、最も腐敗した組織の1つである中国軍の改革は困難を極める。下の組織になればなるほど腐敗体質の改善は難しい。習主席は今回の軍改革の一環として軍のビジネスの大半を禁止した*2。甘い汁の源泉を失った陸軍がいかなる抵抗を示すかが注目される。

「上に政策があれば下に対策がある」と言われるしたたかな中国社会において、習主席の改革がどこまで達成されるかは習主席が何時まで軍の最高指揮官でいられるかにかかっている。

(3)軍内の反習近平派に対する権力闘争に勝利し、自らの権力基盤をより確実にする。

習主席は、自分の息のかかった軍人を要職に就けることにより、自らの権力基盤の強化を図っている。当然ながら抵抗も強い。特に、大きな影響力を削がれる陸軍を筆頭に既得権益を守りたいグループの根強い抵抗があると報じられている。

習主席は、その抵抗に対して、反腐敗闘争をスローガンに譲らない姿勢を見せている。習主席の意に沿わない多くの将官が退官を余儀なくされている。

図1「軍改革後の人民解放軍の組織図」。出典:China’s Goldwater-Nichols? Assessing PLA Organizational Reforms

●軍種レベルの変更

人民解放軍は、2015年12月31日以前には、陸軍、海軍、空軍の3軍種と第2砲兵(2nd Artillery Corps)*3で編成されていた。しかし、今回の軍改革により、図1に示すように軍種レベルの変更がなされ、陸軍司令部、ロケット軍、戦略支援部隊*4が新設された。

今回の改革において第2砲兵がロケット軍となり、図1が示す通り、陸・海・空軍と同列の軍種となった。習近平主席は、ロケット軍について、「中国の戦略抑止の中核であり、国防の礎である」と発言している。新設されたロケット軍は、すべて(地上発射、海上・海中発射、空中発射)の核および通常弾頭の戦略ミサイルを担当する。

新たに新設された戦略支援部隊は要注目であり、現代戦に不可欠なサイバー戦、電子戦、宇宙戦、兵站を担当する部隊であるという見方が多い。

戦略支援部隊は、第2砲兵と同様に独立した職種であり、陸・海・空軍・ロケット軍と同列の軍種ではなく、中央軍事委員会の直轄で戦区(戦域軍)を直接支援する部隊である。

一部の専門家の解釈では、陸軍、海軍、空軍、ロケット軍、戦略支援部隊を総称して5大軍種としているが、戦略支援部隊は、陸軍、海軍、空軍、ロケット軍の4軍種とは違う位置づけであり、5大軍種という表現は適切ではない。

*1=渡部悦和、「米中戦争そのとき日本は」、講談社新書、P59~P60

*2=Bringing an end to the People’s Liberation Army中国軍 Inc. , South China Morning Post, 14 April, 2016

*3=第2砲兵は、陸・海・空軍と同列の軍種ではなく、軍種の中の職種(例えば歩兵など)の扱いであった。

*4=Strategic Support Force

  • 7「軍区」から5「戦区」への変更

習主席は、腐敗の温床である軍区制度の変更に関する発表を2016年2月1日に実施した。軍区は、かつて7個(瀋陽、北京、蘭州、成都、南京、広州、済南)存在していたが、7軍区を5個の戦区(東部、南部、西部、北部、中部)に改編することになった(図2参照)。

今までの7軍区は、地理的な担当地域の意味合いが強かった。軍区司令官は、担当する軍区に所在する陸軍以外の海軍・空軍・第2砲兵に対する平時からの指揮統制の権限を持っていなかった。

そのため、軍区司令官が平時において陸・海・空・第2砲兵の部隊を訓練すること、つまり統合訓練を実施する権限を持っていなかった。軍区司令官は、有事においては陸・海・空・第2砲兵の部隊を指揮する権限を持っていた。

つまり、平時には統合訓練はできないが、有事には統合部隊を編成し指揮しなさいと言うことであった。平時に訓練する必要がないから、金もうけのための商売に精を出すことになる。

特に軍区司令官などの階級が高い者は各省の役人と結託して軍所有の土地を商売(マンション建設など)用に提供するなどして利益を得ていたという。結果として訓練をしない弱い軍隊と腐敗が蔓延する人民解放軍になっていた。

習近平は、このような状況に危機感を持ち、腐敗を根絶し、統合作戦能力を強化するために軍区の代わりに戦区を導入した。戦区司令官は、平時でも有事でも戦区に所在する陸・海・空・ロケット軍を統合して訓練し指揮することになった。平時においても訓練をしなければいけないから、金もうけのための商売に精を出すことができなくなった。

図2「中国軍の5戦区」 出典:Wikipedia , “The PLA’s New Organizational Structure”*5

  • 人民解放軍改革の本質から判断して、「戦区」ではなく「戦区(戦域軍)」が適切

ここで問題なのが戦区という呼び方である。人民解放軍は、軍区の代わりだから地域的・空間的な意味合いの強い戦区という呼び方をするが、軍改革の本質を理解しない呼び方である。

中国語の戦区を英語にするとTheater Commandだという。素直に訳すと「戦域軍」が適切である。つまり、米軍のCentral Commandが中央軍であり、Pacific Commandが太平洋軍と呼ばれるのと同じである。

米軍の中央軍も太平洋軍も陸・海・空・海兵隊の部隊を統合運用する統合軍なのだ。軍改革の本質論から言えば、ただ単に空間を示す「戦区」ではなくて統合指揮の側面を重視した「戦域軍(theater command)」と呼称すべきである。過去の経緯もあり当面は「戦区」を「戦区(戦域軍)」と表記することにした。

戦区(戦域軍)司令官は、米軍の太平洋軍司令官と同様に、担当地域内(戦区内)の陸・海・空軍とロケット軍に対し、より直接的な指揮権を保持することになった*6。つまり、米軍の統合組織を真似た戦区(戦域軍)を新編することにより戦区(戦域軍)レベルでの統合作戦を追求したのである。

統合作戦を指揮する部署が戦区(戦域軍)と中央軍事委の直属中央組織の両方に設置されれば、統合作戦の面で大きな前進となるが、本当に統合作戦指揮機構が上手く機能するか否かが注目される。

*5=Kenneth W. Allen, Dennis J. Blasko, John F. Corbett, Jr.、The 中国軍’s New Organizational Structure: What is Known, Unknown and Speculation, Parts 1 & 2

*6=Jeremy Page、Wall Street Journal, April 27, 2016

人民解放軍の30万人削減と陸軍の削減

習近平主席は、2015年9月の「抗日勝利70周年記念」の軍事パレードにおいて、人民解放軍を2017年末までに30万人削減し、200万にすると宣言した。この30万人削減は宣言通りに2017年中に達成されるであろうが、削減される彼らの大部分には再就職先がなく、社会不安定の要因になると予想する専門家もいる。

30万人削減の最優先のターゲットとなるのは文化面を担当する非戦闘員(例えば雑技団、舞踊団、合唱隊、オーケストラ、テレビに従事する者など)の削減であり、次いでその他の非戦闘員(事務職のシビリアンなど)であり、その多くは陸軍からの削減である。それでも足りない場合は陸軍の軍人を削減することになるのであろう。

30万人の削減以外にも陸軍を縮小する動きがある。例えば、陸軍から他の軍種(海軍、空軍、ロケット軍)への要員の配置替えが大規模に行われるであろう。

例えば、海軍陸戦隊(英語でMarine Corpsと表現しているから海兵隊とも訳されている)を現在の2個旅団2万人(司令部は広東省湛江)から5倍の10万人(6個旅団)に増員する予定で、その増員は陸軍からの配置替えで達成される。

また、ロケット軍や戦略支援部隊の構成員の大部分は陸軍に所属していた部隊の編制替えであり、統計上は陸軍所属人員が減少することになる。

図3「人民解放軍陸軍の軍団の削減」 出典:South China Morning Post  また、陸軍の定員の削減に伴い、陸軍の軍団(corps)が削減されるという。図3を見てもらいたい。人民解放軍改革の影響で、陸軍の18コ軍団のなんと25%が廃止になると報道されている*7

戦区別に見ると中部戦区の2コ軍団(第20軍団、第27軍団)、西部戦区の1コ軍団(第47軍団)、南部戦区の1コ軍団(第14軍団)が廃止になり、北部戦区の2コ軍団(第16軍団、第40軍団)も廃止の可能性があるという。唯一軍団の廃止がないのが東部戦区(戦域軍)のみで、第1軍団、第12軍団、第31軍団は温存される予定だ。

*7=“China to disband over a quarter of its army corps, sources say”South China Morning Post, 18 March

東部戦区(東部戦域軍 ETC:Eastern Theater Command)*8

我が国にとって東部戦区(東部戦域軍)は5つの戦区(戦域軍)の中で最も重要である。なぜなら、東部戦区(東部戦域軍)は、台湾と日本を担当しているからである。

台湾に関しては、一中政策(一つの中国政策)を主張する中国にとって死活的に重要な利益であり、東部戦区(東部戦域軍)は台湾の独立を抑止する戦力として極めて重要な役割を果たしている。台湾が独立の動きを示せば、東部戦域軍を使って独立の動きを阻止する可能性が極めて高い。

また、我が国に対しても、東部戦区(東部戦域軍)は、尖閣諸島の問題や南西諸島の防衛に対し直接的に影響を与えることのできる部隊だ。また、中国が一方的に設定したADIZ(防空識別区)を見ても分かる通り、我が国の航空機(軍用機のみならず民航機も)の運航に大きな影響を及ぼすのが東部戦区(東部戦域軍)である。

中国に対する脅威は、歴史的には北部および西部から侵入してくる地上戦力であったが、1980年代のロシアとの国境を巡る協定のためにこれらの脅威が薄れ、海上および航空戦力主体の東からの脅威が認識され始めた。

特に1995~1996年の第3次台湾海峡危機に際して、米軍の空母2隻により人民解放軍の台湾に対する軍事侵攻が完全に抑止された。その衝撃を受けて人民解放軍における軍事力の現代化が急速な勢いで進んできた。

図4「東部戦区(東部戦域軍)」 出典:Peter Wood

  • 東部戦区(東部戦域軍)の特徴

図4を見てもらいたい。東部戦区の地形は、北部の平野と南部および西部の山岳地帯に特徴があり、3億1900万人の人口、中国の10大港のうち上海港、寧波港、廈門港を有している。特に長江が形成する三角州は、人民解放軍の「軍事戦略の科学」により「重心所在(centers of gravity)」と評価される重要な地域だ。

第1集団軍(1st GA:司令部は湖州)は、中国の中央海岸を防衛する部隊であり、河川や湖沼での作戦を実施する部隊が存在し、これらの部隊は台湾シナリオにおいて活躍する部隊だ。

その北の第12集団軍(12th GA:司令部は徐州)は、機械化旅団をもって南京と江蘇を防護している。第3戦闘機師団が東部戦区の中枢を防護している。

第31集団軍が所在する東部戦区の南部地域は山が多く、人民解放軍誕生の地でもあり、現在も人民解放軍陸軍の司令部が福州(Fuzhou)に所在する。福州や厦門(Xiamen)には台湾紛争に備えた数多くの部隊(両用戦部隊や特殊作戦部隊など)が所在する。

ロケット軍の発射旅団が江西省(Jiangxi)や安徽省(Anhui)の複雑な地形の中に隠れるように所在している。

東海艦隊は、寧波に司令部がある重要な艦隊で、海軍航空隊が台湾から本土の間の台湾海峡を担当している。

*8=Peter Wood,“China’s Eastern Theater Command”,China Brief 17

  • 統合作戦

東部戦区(東部戦域軍)の司令官は、「戦区(戦域軍)の創設は、統合作戦を可能にする鍵となる組織である」と明言している。統合作戦は、東部戦区(東部戦域軍)の中で完結できれば良いが、できない場合には他の戦区(戦域軍)との調整が重要である。

例えば、上陸作戦において海兵旅団と上陸用舟艇部隊は協同すべきである。しかし、中国の2個海兵旅団は広東省の湛江市に所在するが、上陸用舟艇部隊は上海に基地がある。つまり東部戦区(東部戦域軍)と南部戦区(南部戦域軍)との調整が必要になる。

また、東部戦区(東部戦域軍)と中部戦区(中部戦域軍)との統合訓練、例えば、防空部隊を中部戦区(中部戦域軍)から東部戦区の福州に移動させるなどの訓練もなされている。

さらに、人民解放軍は、台湾シナリオにおいて必要な各種演習、例えば着上陸作戦、長距離移動作戦、海上作戦なども行っている。具体的には、空母遼寧は海上での対艦艇実射訓練を実施したり、空軍と協同して台湾周辺で長距離パトロールを実施し、逐次に統合作戦能力の向上に努めている。

つまり、戦区(戦域軍)という仕かけが徐々に機能し、人民解放軍の統合作戦能力の向上が徐々に進んでいるということだ。

  • ロケット軍と戦略支援部隊

東部戦区(東部戦域軍)のロケット軍は、台湾にとって大きな脅威であり、各種ミサイル(短距離・中距離弾道弾や巡航ミサイル)1200発が台湾に向けられている。これらのミサイルは、日本にとっても脅威であり、在日米軍基地(特に在沖縄米軍基地)、日本の空港や港などの重要インフラを迅速に打撃することができる。

特に、短距離弾道ミサイルDF-16には、「沖縄エクスプレス」というニックネームまでつけられ、「いつでも沖縄を攻撃できるのだぞ」という脅しになっている。

戦略支援部隊は、サイバー戦、電子戦、宇宙戦などを担当すると記述をしてきたが、それらを別の観点から表現すると、最新のICT技術を活用したネットワーク戦(「ネットワークを活用した作戦」)を実施する部隊だ。

戦略支援部隊隷下のネットワーク戦部隊は、東部戦区の作戦において重要な役割を果たすことになる。ロケット軍の部隊は戦略支援部隊と連携して、台湾や沖縄をめぐる紛争において、C4ISR(指揮・統制・情報・監視・偵察)インフラに対する攻撃を主導するであろう。

結言

習近平主席が進める人民解放軍改革の成否は日本の安全保障にも重大な影響を及ぼす。2016年初から始めて2020年を完成の目標年としている。人民解放軍史上最大の改革が4年で完成するとは思わないが、ある程度の形はできると思う。

特に注目すべきは戦区(戦域軍)の導入である。統合運用能力の観点から分析した時に、戦区(戦域軍)が平素の訓練の段階から統合運用を積み重ねていき、その能力を向上させていくと手強い相手になる。警戒が必要である。しかし、米軍や自衛隊の経験から判断して、簡単に統合運用能力が画期的に向上するとも思えない。

また、改革の進展に伴い、腐敗で有名だった人民解放軍から腐敗が一掃されれば、これも人民解放軍の精強化にはプラスである。問題は、腐敗が一掃されるか否かである。

確かに、腐敗の温床になっていたビジネスの多くは禁止されたが、部隊の末端まで腐敗一掃を徹底するのは難しいと思う。改革の成否は、習近平主席がいつまでトップにいるかにかかっている。

いずれにしろ、人民解放軍の大改革は推進中であり、今後ともその動向を注視しなければいけないが、自衛隊には統合運用能力の向上をはじめとする真剣な防衛努力を期待する。

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