『プーチン政権にくすぶるドーピング疑惑 平昌五輪の打撃は最小限に抑えたが……』(2/9日経ビジネスオンライン 池田元博)、『ゼロからわかるシリア情勢と米露「新冷戦」の危うい現在 アメリカがはまった袋小路』(2/8現代ビジネス 笠原敏彦)について

2/11Share News Japan<平昌五輪競技場に安倍首相登場 → アイドル並の大歓声! → 韓国人から握手や自撮りを求められる!>安倍首相が平昌で人気だったようです。でも成果はハナから期待できませんでした。やはり米国からの依頼で断り切れずと見るのが妥当なところでしょう。韓国に第二次朝鮮戦争の覚悟を求め、最後通牒と言うか引導を渡しにペンスと共に行ったというのであれば理解できますが。そうでなければやはり行くべきではなかったと思います。安倍首相の平昌での韓国人の人気も、彼らの情緒的対応を表しているだけです。すぐに変わるでしょう。根っこにあるのは反日教育ですから。

https://snjpn.net/archives/43156

続いて、平昌オリンピックの話題です。下の写真はFacebookからの戴きものですが、「モルゲッソヨ」(韓国語で「私は知らない」を意味するとのこと)と命名されたようです。慰安婦像と言い、男性性器型像と言い、両方とも反米の象徴且つ性を政治プロパガンダとして使う品性下劣な民族性が窺えます。芸術性のかけらもないのに、それをオープンにしてしまう所が凄いですが、世界の笑いものになっているのに気が付かないのでしょう。

http://www.huffingtonpost.jp/2018/02/09/idontknow-korea_a_23357274/

池田氏記事ではドーピングはプーチンの承認のもとに実行された可能性もあるとのこと。まあ、元共産国家でステイトアマが選手をしていた時代が長かったですから、勝つためには何でもありという風土は残っているのでは。柔道を学んでいるプーチンが認めたとは思いたくないですが、実際どうなのかは分かりません。小生にとって、IOCはロシアに厳しいペナルテイを課したのだから、オリンピックを政治利用する金と文の国に対しても厳しいことを言うべきではと思っています。

笠原氏の記事では米国のシリアへの関与はイラン牽制の意味で続けるとのことです。日本人の小生としては中東よりアジアに回帰し、本腰を入れて北と中国と向き合ってほしいのですが。でもBBCによればイランでも市民が少しずつ宗教政権に異議を唱えているようです。<イランでヒジャブを脱いで抗議 「革命通りの少女たち」>。イスラム国家はトルコのように世俗国家になることを望んでいます。テロリストを産まない国になってほしい。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52319

池田記事

韓国・平昌冬季五輪が開幕し、2月25日の閉会式まで世界のアスリートによる熱戦が繰り広げられる。南北の開会式同時入場や合同チームの結成など韓国と北朝鮮の関係に関心が集まるが、国際的にもうひとつ注目を集めそうなのが個人参加となるロシア選手の動向だ。

2016年のリオ五輪に選手団を送り出すプーチン大統領と、棒高跳びのイシンバエワ選手(写真:AP/アフロ)

1月31日、モスクワ郊外のノボ・オガリョボの大統領公邸。プーチン大統領は平昌五輪に参加するおよそ70人のロシア選手を招き、壮行会を開いた。「皆さんを守ることができずに申し訳ない」――。大統領は演説で選手たちに謝罪し、「どうか皆さんはスポーツの試合にだけ集中して欲しい」と訴えた。謝罪は当然、世界を騒がせたドーピング疑惑にかかわるものだ。

ただし、あくまでも「非常に困難な条件下での戦い」を選手に強要し、五輪に行けない選手も出してしまったことへの“謝罪”だった。ドーピング疑惑そのものは従来通り、米国に「政治利用」されたとの見方を強く示唆。「ロシアは過去も現在も将来も、あらゆる意味で清廉なスポーツ、ドーピングのない清潔なスポーツを常に支持している」と豪語した。

国際オリンピック委員会(IOC)は2017年12月、ロシアが国ぐるみでドーピング不正に手を染めていたとの世界反ドーピング機関(WADA)の調査報告などを受け、平昌五輪へのロシア選手団の参加禁止を決めた。一方で、一定の条件を満たして潔白が証明された選手は個人資格での参加を認めた。参加条件は「ロシアからの五輪選手」とし、ロシア国旗や国歌は認められない。IOCはこの基準に基づき、169人の選手の参加を認定した。

というわけでプーチン大統領が開いた壮行会も、厳密にいえば個人参加するロシア選手たちを招いたものだ。壮行会に集まった選手たちのユニホームも上下ともグレーか赤の単色で、「ロシア」の国名もなし。胸元に小さく「ロシアからの五輪選手」というマークが貼られているだけだった。

それでも選手からは「メダルを祖国にもたらすよう全力を尽くす」「我々が世界で最も強いスポーツ大国であることを示さないといけない」といった強い決意表明が相次いだ。プーチン大統領も最後に選手らから「ロシアは我が心に」と記されたアイスホッケーチームのシャツを贈られ、ご満悦の様子だった。

リオ五輪の苦い思い出

ドーピング問題を巡っては、プーチン大統領には過去に苦い思い出がある。2016年7月、ブラジルでのリオデジャネイロ夏季五輪に参加するロシア選手団をクレムリンに招き、壮行会を開いた時のことだ。

「実質的に露骨な差別であり、決して容認できない」。大統領はドーピング疑惑を理由に、リオ五輪からロシアの陸上選手団を除外するとした決定に強い不満を示した。

壮行会にはそのロシア陸上界を代表する女子棒高跳びのエレーナ・イシンバエワ選手も参加していた。大統領演説後、同選手は選手団の代表の1人として演壇に立った。

「私たちは五輪競技に参加する権利を主張し、闘う機会も与えられませんでした。もちろん悔しいですし、不愉快です。なぜなら、今回の五輪が多くの選手にとって、あるいは初めての出場、あるいは選手生活の最後を飾ることになっていたからです」。リオが最後の五輪と公言していたイシンバエワ選手は、参加を認められなかった悲しみを吐露した。

「リオの会場でロシア国歌がいつも聴かれるよう、皆さんの成功を祈ります」。イシンバエワ選手は、最後は出場する選手たちにエールを送り、プーチン大統領には不当に迫害を受けるスポーツ選手たちを守ってほしいと涙ながらに訴えた。その涙にしばし返す言葉を失った大統領は、「我々はもっと強くならなければならない。我々は皆さんを信じ、成功を祈る」と述べるのがやっとだった。

リオ五輪は結局、陸上競技以外は原則としてロシア選手団の参加が認められ、国旗の掲揚や国歌の斉唱もOKだった。対して平昌五輪のロシアへの対応は格段に厳しくなった。しかもその決定は、プーチン大統領が「ロシアの政治日程に合わせた」米国の政治的な陰謀だと主張しているように、3月18日投票のロシア大統領選を視野に入れたかのようなタイミングで下された。平昌五輪の開催期間はちょうど、選挙戦が佳境を迎える時期と重なる。

もちろん、再選をめざすプーチン大統領には平昌五輪への参加をボイコットし、米国の圧力に屈しない「強いロシア」を誇示する選択肢もあった。

だが、ボイコットしなかったのは、今年6月に開幕するサッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会の開催に影響しないよう配慮したほか、国家の威信よりも五輪をめざす選手の希望、ロシア選手の活躍を心待ちにする国民の意思を尊重したほうが得策と結論づけたからだろう。リオよりも厳しいとはいえ、ドーピング問題で潔白を証明された選手はどの競技種目であっても出場が認められる点も評価したようだ。イシンバエワ選手のような悔し涙は、もう見たくないという思いがあったのかもしれない。

ロシア国民の多くは五輪参加を望んでいる

独立系の世論調査会社レバダ・センターが1月下旬に実施した調査によれば、どういう形であってもロシア選手が五輪に参加して欲しいという回答が71%を占めた。逆にすべてのロシア選手は五輪参加を拒否すべきだという意見は20%にとどまっている。一時、平昌五輪のテレビ中継中止を検討していたロシア国営テレビも結局、放映することを決めた。同センターの調査では、回答者の62%が五輪中継をテレビで観戦するとしている。

平昌五輪には、フィギュアスケート女子のエフゲニア・メドベージェワ、アリーナ・ザギトワ両選手らメダル獲得が確実視される選手も多く出場する。たとえ「ロシアからの五輪選手」で、金メダルに輝いても国歌斉唱や国旗掲揚がなくても、多くの国民がロシア選手の活躍に一喜一憂するだろう。ナショナリズムも高揚するはずで、結果的にプーチン大統領の選挙戦にマイナスに響く可能性はほとんどないと判断した面もあるようだ。

プーチン大統領もドーピングを認識か?

しかもここにきて、プーチン政権への追い風も吹いている。ソチ五輪の再検査でIOCからドーピング違反として五輪永久追放処分を受け、それを不服とした42人のロシア選手がスポーツ仲裁裁判所(CAS)に訴えていた件だ。CASは今月初めにこのうち39人について裁定を下し、11人は違反を認める一方で、28人の選手は「違反を裏付ける証拠が不十分」として処分を無効としたのだ。

プーチン大統領はさっそく、「CASの裁定を歓迎しないわけにはいかない。我が(ロシアの)スポーツ選手たちの圧倒的多数が潔白であることが確認された」と表明した。プーチン政権は従来、禁止薬物を摂取したロシア選手の存在は認める一方で、国家ぐるみの犯行説を強く否定するとともに、ロシアだけを標的にした厳しい処分を「差別的で行き過ぎだ」と鋭く批判してきた。そうしたロシア側の主張が一部にせよ認められたことになる。

CASの裁定は結果的に、プーチン大統領が標榜する「大国ロシア」の面目維持にも貢献した。今回、ドーピング違反による永久追放処分は無効とされ名誉を回復した28人にはソチ五輪でのメダル獲得選手も多く含まれており、今回の裁定により金メダル2個、銀メダル6個、銅メダル1個が復活した。

ソチ五輪のメダル獲得数

プーチン大統領の肝煎りで実現した2014年のソチ五輪は、自国開催ということもあってロシア選手の活躍が目立った。ロシアはメダルをはく奪される前は、金13、銀11、銅9個を獲得し、国別のメダル獲得数で1位に輝いていた。当然、ナショナリズムは高揚し、プーチン政権はその勢いでウクライナ領クリミア半島の併合まで突き進んだともいわれている。

それはともかく、ソチ五輪で世界にみせつけた「スポーツ大国」の威信は、ドーピング問題の発覚によって大きく揺らいだ。ロシア選手のメダル剝奪も相次いでいた。今回の28選手に対する処分無効の裁定がなければ、ソチ五輪のメダル獲得数で1位の座から転落し、ノルウェーやカナダに抜かれていた。CASの裁定によって、政権への打撃はかなり抑えられたといえるだろう。

ただし、大統領にとっては今後も気の抜けない状況が続く。ソチ五輪時にモスクワのドーピング検査機関の所長を務め、その後、米国に亡命してロシアのドーピングの“実態”を暴露してきたグリゴリー・ロドチェンコフ氏が最近、組織的なドーピングを「プーチン大統領も認識していた」と明かしたからだ。

元所長はこれまで、ソチ五輪時に検査場の壁の穴を使ってロシア選手の尿検体をすり替えていたとし、隠蔽作業にはロシア治安機関の連邦保安庁(FSB)も加担していたなどと証言してきた。今回はさらに、「FSBを動員できるのは大統領だけだ」と述べ、プーチン大統領が組織的なドーピングを指示していたとの見方すら示唆したのだ。

ロシア大統領府は当然、「誹謗(ひぼう)中傷だ」と反論。プーチン大統領も過去に犯罪歴があり、今は米特殊機関の下で働く元所長の証言は「果たして信頼できるのか」などと述べ、火消しに躍起となっている。元所長の発言が直ちに大統領選に響くことはなさそうだが、次の任期に入ってもドーピング疑惑の火種はくすぶり続け、折に触れてプーチン政権を悩ませそうな雲行きだ。

笠原記事

トランプが言及しなかったこと

好調な経済、大型減税の実施……。トランプ米大統領が就任1年目の“実績”を自画自賛した先月30日の一般教書演説は、理想主義を失った「コーポレート・アメリカ(アメリカ株式会社)」の祝勝会のように見えた。

このコラムでは、演説で語られたことではなく、語られなかったことから見えてくる世界の在り方について考えてみたい。

〔PHOTO〕gettyimages

一般教書演説は、アメリカの大統領が今後の内政・外交の優先課題を示すものだ。逆に言えば、演説で触れられなかった外交・安全保障の課題は優先度が低い、もしくは、関心が薄いということである。

外交・安全保障とは国益に基づく優先順位の問題であるが、超大国の誤った優先順位は世界を混迷に導きかねない。

その例としては、イラク戦争を挙げるだけで十分だろう。

こう指摘した上で、トランプ大統領が一般教書演説で触れた外交・安全保障分野の課題をすべて拾ってみると、次の7つである。

・中国、ロシアとのライバル関係

・核兵器を中心とする軍事力強化

・過激組織「イスラム国(IS)」掃討など対テロ戦争

・対外援助を親米国だけに限定する法律の制定

・イラン問題

・独裁的なキューバ、ベネズエラへの対応

・北朝鮮核問題

核ミサイル開発を進める北朝鮮問題に重点が置かれたことは報道の通りだが、指摘したいのは、重大な局面にあるシリア内戦への言及がなかったことだ。

2011年の内戦突入から7年を迎えるシリア。死者50万人、国民の2人に1人に当たる1100万人超が難民・国内避難民となり、第二次大戦後最悪の人道危機とされる内戦は、「イスラム国(IS)」掃討後をめぐり岐路にある。

この問題に全く触れないというのはどういうことなのだろうか。

筆者には、語られなかったことが逆に多くのことを物語っているように思える。

シリアの現状から順を追ってみていきたい。

シリア内戦の「いま」

トランプ大統領は一般教書演説で「我々はIS支配地域をほぼ100%解放しつつある」と語った。

しかし、シリア情勢は一層混沌としているのが現状である。

ロシアやアメリカ、イラン、トルコ、イスラエルなどがそれぞれの思惑から手を突っ込むシリア情勢は、まさに21世紀前半の地政学の縮図である。

シリア情勢の全体像を把握するのは容易ではないが、紛争の概略から簡単に抑えていきたい。

混迷への流れはざっとこうである。

「アラブの春」に触発された民主化運動をアサド政権が弾圧したことが内戦へと発展し、そこにイラクとシリアにまたがる国家建設を目指すISなどのイスラム過激組織が加わり、アサド政権、反政府組織、イスラム過激派の「三つ巴」の展開になる。

アメリカは2014年9月にシリアのIS支配地域への空爆を始める。アメリカはアサド退陣を求めて反政府勢力を支援してきたが、軍事介入の目的はあくまでIS掃討であるとした。

これに対し、劣勢だったアサド政権側ではイランに加え、ロシアが2015年9月から後ろ盾となって参戦し、ISと反政府勢力から失地を次々と回復。一時は絶体絶命と見られたアサド大統領だが、現在は国土と人口の半分ほどまで支配を回復している。

ここが潮時と見たプーチン大統領は昨年12月、シリアを電撃訪問してロシア軍部隊の撤収開始を表明することで事実上の「勝利宣言」を行い、和平プロセスのイニシアチブを握ろうとしている。

ここまでが紛争の大きな流れである。

シリアを電撃訪問したプーチン大統領。左隣に立つのがシリアのアサド大統領〔PHOTO〕gettyimages

しかし、この経過の中で、シリア内戦がより深刻な地域紛争に拡大しかねない新たな混迷の種がまかれていたのである。

アメリカがIS掃討のためにシリア国内のクルド人民兵組織「人民防衛隊」(YPG)を連携相手として選び、軍事訓練や武器供与などを行ってきたことだ。

これは地域事情を無視した仁義なき選択である。

なぜか?

クルド人はシリア、イラク、トルコなどの国境地域に住む「国家を持たない最大の民族」とされ、国境を越えて独立、自治拡大運動を続けている。

その中心的組織がトルコで武装闘争を続ける「クルド労働者党(PKK)」であり、YPGとの密接な関係が知られている。

一方で、トルコはアメリカを盟主とする北大西洋条約機構(NATO)のメンバーであり、アメリカの中東政策において戦略的に重要な国である。

つまり、アメリカは自らの首を絞めるかのように、同盟国トルコの「敵」を武装強化してきたのである。

NATOの集団的自衛権の観点から言えば、矛盾に満ちた政策であることがわかるだろう。

そして、IS掃討作戦が一段落したことにより、この矛盾が弾ける。

トルコの堪忍袋の緒が切れた!

トルコは1月20日、YPG支配下のシリア北西部アフリンへの空爆と地上部隊による侵攻に踏み切った。

その直前、アメリカはIS復活阻止を名目にYPGを中心に3万人規模の新たな「国境警備部隊」を結成することを表明していた。トルコの軍事作戦は、この動きに堪忍袋の緒が切れたものだろう。

YPGの政治母体「民主統一党」(PYD)はユーフラテス川以東のシリア北東部を実効支配し、すでに自治を施行。この地域には、アメリカ軍が数ヵ所の基地を設け、米兵約2000人を駐留させている

アフリンはYPG支配地域の飛び地である。

トルコのエルドアン首相はすでに「クルド人自治」区域への攻撃拡大を宣言。トルコ軍とアメリカ軍の衝突が懸念される事態に発展したのである。

同盟国同士の武力衝突が危惧される事態とは、まさに錯綜した地政学的カオスそのものではないだろうか。

ちなみに、両国は、アメリカがトルコ南部インジルリク空軍基地に核兵器まで配備する同盟関係を維持してきた。

トランプ大統領とエルドアン首相は1月24日に電話会談を行ったが、経緯が経緯だけに、トランプ大統領も強い姿勢には出られないようだ。

ホワイトハウスの発表によると、トランプ大統領はトルコの「正当な懸念」を認めた上で、軍事行動の「縮小」と「両国軍の衝突のリスクを回避するよう」求めるに止まったという。

トランプ大統領の低姿勢の背景には、中東地域のパワーバランスでキャスティングボードを握るトルコが近年、ロシア寄りの姿勢を強めていることが見逃せない。

イラク戦争の後始末

一般教書演説でIS掃討を誇ったトランプ大統領だが、現地の情勢を見ると、かくも危なっかしい綱渡りが続いているのである。

そして、この実情は二つのことを示しているように思える。

まずは、シェール革命で世界最大級の産油国となったアメリカにとって中東の重要性が低下していることである。

これは、イスラエルの首都としてエルサレムを認定するという冒険主義的政策を可能としている背景でもあろう。

二つ目は、アメリカの中東政策がイラク戦争の「大失敗」の後始末に追われ、平和と安定を模索するようなイニシアチブを示せないというということだ。

ISはイラク戦争の混乱から生まれた過激組織であり、IS掃討もイラク戦争の後始末なのである。

トランプ政権の中東政策で明確なのは、IS掃討を除けば、イラン敵視政策ぐらいである。今後もシリアに関与しようとする理由も、実はこの目的のためである。

だから、トランプ大統領の一般教書演説では、IS掃討とイラン敵視政策には触れても、シリア和平については一切語らなかったのである。

さりげない政策転換

この流れの中で、ティラーソン米国務長官は1月17日に演説を行い、さりげなくシリア問題での政策転換を発表していた。

「シリアに関しアメリカが今後進む道」と題した演説のポイントは、シリアへの米軍派遣(現在約2000人)について期限を設けずに継続するというものだ。

アメリカは従来、IS掃討作戦が終われば米軍を撤退させる方針を示していただけに大幅な軌道修正である。

ティラーソン米国務長官〔PHOTO〕gettyimages

その理由として、ティラーソン長官はIS復活阻止とともにイラン対策を挙げ、次のように述べている。

「アメリカがシリアから撤退すれば、イランがシリアでの影響力を一層強めるだろう。イランは中東の支配を目指し、我々の同盟国であるイスラエルを破壊しようとしている」

イランが同国からレバノン、地中海に至る支配圏「シーア派の三日月の弧」の構築を狙っていることへの対決姿勢を示したものだ。

長官はシリアをイランの「属国」とまで言い放っている。

一方で、シリアの和平については、国連主導の政治プロセスで解決し、アサド大統領を排除した「統一シリア」を目指すと述べるに止まり、全く筋道を示せないのが実情である。

アメリカは内戦当初、シリアへの地上部隊派遣を否定していたが、オバマ前政権の2015年秋に特殊部隊50人を派遣したのを皮切りに徐々に拡大。今や、米軍のシリア駐留は明確なゴール設定もなきまま、長期化が必至の情勢となっている。

米ロ「新冷戦」のシワ寄せは?

シリア内戦をめぐっては、アメリカとロシアの代理戦争の様相を呈し、両国が主導権争いをするような時期もあった。

しかし、オバマ政権はアサド政権の化学兵器使用への軍事制裁を見送るなど「世界の警察官ではない」という姿勢を強めた。

その「力の空白」を突くかのようにプーチン大統領が2015年にアサド政権擁護の姿勢を明確にして参戦。その結果、ロシアがシリア問題でのイニシアチブを握ったという経緯がある。

アメリカはシリアにおいてロシアに外交的敗北を喫したのである。

シリア和平に向けては、ロシアがトルコ、イランを巻き込んで協議の場を設けるなど外交攻勢を仕掛けている。

ロシアは自らに有利な状況を作った上で、国連のジュネーブ・プロセスに持ち込みたい思惑のようだ。

プーチン大統領は、アサド大統領を説得し、シリアを連邦制に近い政体へ移行させることで政治的決着を図りたい意向だとの報道もある。

しかし、国連の推定で2500憶ドルともされる巨額の復興資金は欧米諸国などに頼らざるを得ないのが実情であり、アサド大統領が政権に居座る限り、欧米諸国には受け入れがたいだろう。

トランプ政権は2月2日、新たな「核態勢の見直し(NPR)」を発表し、ロシアへの対抗意識をむき出しにした。

「新冷戦」が実態を伴い始める中、米ロ両国がシリア問題で協調する余地が益々狭まっていくとしたら、そのシワ寄せがいくのはシリアの人々である。

このコラム欄でも何度か指摘したが、アメリカ一国に多大な責任を押し付けるのはフェアではないだろう。

しかし、必要のない戦争だったイラク戦争を強引に推し進めて中東を大混乱に陥れながら、超大国のリーダーシップが必要とされるときに、その存在感が見えないアメリカの外交・安保政策はどう評価されるべきなのか。

中東の人々にとって、「アメリカ第一主義」の景況で悦に入っているアメリカの姿はどう映るのだろうか。

同盟国の日本にとっても、その評価は決して他人事ではないだろう。

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