『トランプ政権の評価は「良」、よくやっている 発足1周年、保守系シンクタンクのヘリテージ財団副所長に聞く』(1/19日経ビジネスオンライン 篠原匡)について

1/21アンデイチャン氏メルマガ<FBIと司法部の選挙介入>ヒラリー民主党がロシアゲートなるものをFBIと共にでっち上げたと言うもの。議会には資料が解除され、後に国民に解除されるようです。如何にヒラリーだけでなく民主党が腐っているかを表しているかです。でっち上げで作られた事件なので、これ以上の捜査は無意味でしょう。

http://melma.com/backnumber_53999_6636227/

1/19日経朝刊<トランプ減税、米100社超が賃上げ 260万人恩恵

【ワシントン=河浪武史、ニューヨーク=平野麻理子】2017年末に決まったトランプ米政権の大型税制改革を受け、米企業が国内投資と雇用増に一気に動き始めた。アップルは17日、300億ドル(約3兆3千億円)を米国内で投資すると表明。「トランプ減税」を契機に雇用増や賃上げを決めた企業は100社を超える。トランプ大統領は成果を強調するが、景気が過熱し、一段の金融の引き締めを招く可能性もある。

米連邦準備理事会(FRB)は17年12月、減税効果を見越し、18年の経済成長率予測を2.1%から2.5%に引き上げた。三井住友アセットマネジメントの試算によると、米国の税制改革が18~19年の成長率を0.4%分押し上げる。

与党・共和党のライアン下院議長は「賞与や賃上げ、米国内投資といった施策を公表した企業は160社を超す」と語った。賃上げなどの対象となる米労働者は既に260万人を超すという。

アップルが今回表明した投資計画は(1)米国内の人工知能(AI)などの事業に5年で300億ドル投資(2)雇用を2万人積み増し(3)先進製造業への投資基金も50億ドルに増額――が柱。低税率国に2500億ドルもため込んだ海外資金を原資とする。

米国の法人税率はこれまで35%と高く、海外で稼いだ利益も米国に戻した時点で35%を課税する仕組みだった。ただ、17年末に決まった税制改革では18年から法人税率を21%に下げ、さらに海外所得は米国に資金還流しても原則非課税とした。こうした措置が今回の巨額投資の決断を促したのは間違いない。

米国は05年にも時限立法で国内に還流する所得への税率を大幅に引き下げた。この結果、当時の米企業の海外内部留保額の3割にあたる2千億ドルが国内に戻ったとの推計もある。クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司外国為替部長は「数年かけて全体の1割程度の2千億ドル超が米国内に戻り、ドルを押し上げる要因になりうる」と指摘する。

減税で浮いた資金を従業員に還元する米企業も相次いでいる。米ウォルマート・ストアーズは最低賃金を時給10ドルから11ドルに引き上げ、最大1千ドルのボーナスも支給する。

日本企業ではトヨタ自動車の北米営業利益は全体の15%に相当し、減税の恩恵も大きくなりそうだ。設備投資が活発になれば産業機械の需要が増え、日本企業の業績を改善させる要因にもなる。

ただ、米経済は失業率が17年ぶりの水準となる4.1%まで下がり、完全雇用に近い。労働市場が一段と逼迫すればインフレにつながり、FRBは利上げを加速して逆に景気を冷やさなくてはならなくなる。

トランプ氏は「大型減税で成長率を3%に引き上げる」と主張する。ただ、米国に企業とカネが回帰すれば周辺国の空洞化を招き、各国との通商摩擦が激化するリスクもある。>(以上)

日経記事は米経済が過熱し、インフレ懸念でFBRが金利を上げるようになるのではとマイナスイメージで捉えています。強い米国の復活は歓迎すべきこと。日本もインフレ目標を2%に定めてずっとやってきましたが、なかなか目標に達しません。企業の投資と賃金上昇が少なく、内部留保にのみ金が退蔵されているからです。日本の企業経営者の責任は大きいです。

カラファノ氏の見方は正鵠を射ています。篠原氏もうまく質問して良い回答を引き出しています。故・筑紫哲也だったらこうはいかなかったでしょう。小生もオバマの8年間は弱腰で、中露に好き勝手やらせてきて評価がFというのも頷けます。いまのトランプ政権はオバマの尻拭いをし、立て直しを図っている所です。メデイアの偏向報道はやればやるほど信用を失うという事です。日本も同じです。

記事

2017年1月20日のドナルド・トランプ政権の誕生から1年。看板政策の頓挫や共和党議員との舌戦、税制改革の実現、腹心との絶縁など、トランプ政権はジェットコースターのように揺れ動いた。ツイッターでの奔放な発言を含めた一挙手一投足が話題となるが、この1年間の実績に米国の識者はどんな「通信簿」をつけるのか。保守系シンクタンクのヘリテージ財団、ジェームス・カラファノ副所長に聞いた。

(聞き手はニューヨーク支局、篠原匡)

—トランプ政権の1年をどう評価する?

ジェームス・カラファノ氏(以下、カラファノ):A(優)、B(良)、C(可)、D(落第寸前)、F(落第)の5段階で評価するとBだ。

外交政策については2つのカテゴリーに分けられる。一つは危機対応で突きつけられた状況への対応。もう一つは慎重に計画されたもので、意図的に実行している政策だ。危機対応に関してはかなりうまくできていると思う。

昨年4月、シリアによる化学兵器の使用があった時は政権を取ってそれほど時間がたっていなかったが、政権は明確な対応をした。北朝鮮が弾道ミサイル実験を始めた時もある程度の対処ができていた。

ジェームズ・カラファノ氏 ヘリテージ財団副所長。2003年にシニアリサーチフェローとしてヘリテージ財団に参加後、他の研究所を経て2012年に同財団の防衛・外交政策チームを率いる。外交・安全保障の専門家としてトランプ政権の政権移行チームに参画した。米軍に25年間の従軍歴がある。

その週に、大統領は中国の習近平・国家主席を含む3カ国の指導者と会合を持った。ティラーソン国務長官もロシアの大統領と初会談を開いている。こういったことは国家安全保障担当補佐官が交替したすぐ後のことだ。政権の危機対応能力を明確に示していると思う。

慎重に計画された政策という観点を見ても、政権は成果を出している。安全保障チームが選挙後に立ち上げられたということを考えればなおさらだろう。

北朝鮮に対する戦略を打ち立て、アフガニスタンへの増派という決定を下した。欧州の同盟国に米国のNATO(北大西洋条約機構)へのコミットメントを再確認してもらうために多くの時間も費やした。

また、トランプ大統領はイランが核合意を順守していないと批判したが、それも敵対強国としてのイランにどう対応するか、という戦略の第一歩だ。イスラム国(IS)やアルカイダに対する戦略、ロシアや中国に対する枠組みもある。政権は外国政策の重要な議題に対して、今後の戦略がどうあるべきかということを決断している。

—議会との連携、税制改革の成立で自信を深めた外交・安全保障政策の課題は?

カラファノ:課題があるとすれば政治任用職が完全に埋まっていないところだ。国防総省と国務省の両方で任命が遅れており、悪影響を及ぼしている。

他国は対話できる上級の窓口を必要としているが、現政権にはその窓口が不足している。誰もが国防長官や国務長官、大統領や副大統領と直接話せるわけではない。だからこそ、次官や次官補レベルの政治任用職は必要だ。政権の動きを制限する要因になっていると思う。

また、撤退するところと積極的に攻めるところのバランスが取れていない。政権はアジアや欧州、中東の平和と安定に焦点を当てており、積極的に関与する必要があると考えている。それは正しいことだと思う。問題は今の軍事力でそれが維持できるかどうかだ。

外交政策は問題ないと思っているが、米軍は20年間、乏しい予算の中で酷使され続けている。軍事力を維持できる水準まで防衛予算を増やす必要があるが、まだそれができていない。

—国内政策についてはどうか?

カラファノ:大統領にとっては政策を法案として実現させることが課題だった。率直に言えば、議会との関係という面ではうまくスタートが切れなかったと思う。大統領のアドバイザーが同じ方向を向いていなかったことが原因だが、大統領の経験不足も影響していた。もっとも、税制改革法案の成立によって政権は議会との連携で自信を深めたのではないか。

—あなたから見て政権のいいところと悪いところはどこか?

カラファノ:外交・安全保障政策という面でいえば、優れたシニアチームの存在だ。とくに国家安全保障会議のスタッフはとてもいい。マティス国防長官、ケリー首席補佐官、マクマスター国家安全保障補佐官はうまく協力して大統領の構想を支えている。

この政権は過去の2政権の間を取るという明確な構想があると思う。ブッシュ政権は重要な問題をすべて解決しようとしたためにアグレッシブになりすぎた。オバマ政権は逆に、引き下がろうとしたために競争相手に空白を与えてしまった。そういう見解を持っていると思う。

トランプ大統領は人気のない人々の中で最も人気がある人物

今の政権は世界の諸問題を解決し、民主主義を促進させるようなことはしないが、世界で不在になるわけではない。米国の利益を守りながら前進していくことになるだろう。

現に、トランプ政権は国益と米国の価値観のバランスを上手に取っている。米国は営々と培ってきた価値観を捨てたと批判されているが、(ミャンマーで迫害されている)ロヒンギャ問題を見れば分かるように、米国は毅然とした対応を取っている。北朝鮮をはじめ人権問題には引き続きタフだ。

正直言って、米国の外交政策は変更されたことよりも継続していることの方が多い。全体として、外交・安全保障政策は正しい方向に向かっている。

—それがなかなか認識されないのはなぜか?

カラファノ:怒りに満ちたレトリックのせいだ。それについてはトランプ政権にも野党と同じくらい責任がある。

大統領選では国民の怒りと分断を加速させるような言葉が行き交った。その状態を選挙後も維持しようと、大統領と野党は考えたのだろう。ある意味で、両者はそれぞれに対する国民の怒りを糧にしている。

大統領支持率が低いと言われるが、高い支持率を得ている人はどこにもいない。メディアも、政治家の大半も人気がない。トランプ大統領は人気のない人々の中で最も人気がある人物だと思う。

恐らく野党は怒りが政権の弱体化につながると考えたのだろう。それは政治的には成功するかもしれないが、コンセンサスの構築や外交政策へのサポートという点では事態を悪化させるだけだ。

レトリックと政策は別物

—怒りのレトリックによって実際の政策が見えづらくなっている、と。

カラファノ:レトリックと政策は別物だとみるべきだ。誰もが選挙中の公約やツイート、怒りに満ちた言葉に注目する傾向にあるが、米国の政策を理解するには実際に実行していることを考察する必要がある。実際、多くの場合でトランプ政権は保守で一貫している。

例外があるとすれば経済政策だろう。トランプ大統領は選挙中にクレージーなことを語っていたが、今のところまだ実行に移していない。NAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉の後にどうなるのか。これは現在進行形ということだろう。

—確かに、トランプ政権は選挙中のレトリックに比べれば現実路線にシフトしているように見えます。

カラファノ:私がこう言ったとしよう。「選挙中に話したことと実際に政権を運営する際に実行することは異なります」と。それを聞いた人は恐らくほぼ全員が「もちろん、それはそうでしょう」と言うだろう。日本や韓国、中国でさえも。

だが、米国人は執拗なまでに選挙中の言葉にこだわる。その理由はトランプ大統領がこれまでの政治家とは異なるからだろう。他の政治家であれば、それまでの長い実績があり、その政治家がどういう行動を取るか有権者は分かっている。

例えば、民主党の候補だったヒラリー・クリントン氏は選挙遊説で、私が思うにかなり馬鹿げたことを言っていた。ところが、誰も「オー・マイ・ゴッド」とは言わなかった。国務長官や上院議員、ホワイトハウスにおける彼女の経験をもとに判断しよう、と考えたわけだ。

トランプ大統領の場合はそういう前後関係がないため、人々は意味のない彼の言葉をそのまま受け取ってしまう。選挙後、米国人は相当な怒りを感じているので、大統領の意味のない言葉を無視できない。

これまでの外交政策を仔細に見ると、トランプ大統領の外交政策はブッシュ政権やオバマ政権よりもトラディショナルだということが分かる。

トランプ政権はUNESCO(国連教育科学文化機関)から脱退したが、過去を振り返れば、米国は脱退と再加盟を繰り返している。米国は国連の組織改革には関心を示すが、国連の馬鹿げた振る舞いには我慢できない。その傾向は共和党政権が強く、民主党政権は弱い。この浮き沈みが共和党と民主党の流れだ。

国連でトランプ大統領がやっているのはこの流れの中の話で、国際機関を軽視するというシフトではない。

—トランプ大統領は衝動的にものごとを決断しているという批判もある。外交・安全保障政策について、トランプ大統領の特徴や傾向はあるだろうか。

カラファノ:「アメリカ・ファースト」とたびたび語っているように、大統領が米国の利益を優先しているのは間違いない。米国の利益を守ることは大統領の重要な仕事だ。ただ、「アメリカ・ファースト」は「アメリカ・アローン」ではないとも述べている。

彼が平和と安定を重視しているのも事実だと思う。そして、世界で優先する3つの地域はアジア、中東、欧州で一貫している。そこで米国の存在感を高めたいという意識を持っているが、行きすぎたことはしたくない。また、他国の国家建設や紛争に巻き込まれるようなことも望んでいないが、孤立主義ということでもない。

ある程度の辛抱強さも見て取れる。アフガニスタンは好例だろう。

米国はアフガンに増派するという決断をした。容易な解決策がないということをアドバイザーは明確に示していた。撤退のスケジュールがあるわけでもない。丸8年間、駐留する可能性もある。だが、米国の利益を見据えた合理的な計画であれば前向きに実行すると大統領は語った。

大統領は極端に直線的でもない。一般的な方向で政策を選び、まず動いてみて、その後は反応を確認しながら進める。大統領の対処法には柔軟性と機敏性が見られる。

北朝鮮問題、時間とともに事態は好転に向かう

—北朝鮮は核・ミサイル開発をエスカレートさせている。現政権の北朝鮮対応をどう評価するか。

カラファノ:ある戦略に決めたと思う。それは「力強い封じ込め政策」とでも呼べるもので、核による抑止、ミサイル防衛、通常兵力による抑止、日本と韓国との強固な同盟関係、さらなる制裁のコンビネーションだ。

この戦略は北朝鮮を交渉の場に呼び戻すためのものでなく、彼らの兵器製造能力を阻止することを目的としている。大統領の過激な言葉の大部分は米国が自国を防衛するという意思表明であり警告だ。

時間がたてば事態は安定に向かうと思う。この戦略を継続させることで、核による北朝鮮の脅迫や同盟国への攻撃を阻止し、北朝鮮の兵器開発を遅らせることができる。北朝鮮からの攻撃を防ぐ米国の防衛力と北朝鮮の能力は差が広がっていくだろう。

実際には対立を激化させる道を歩んでいるのではなくむしろ逆。安定した未来への道を歩んでいる。

問題は、多くの人がこの危機を直線的に捉えているところだ。今日、怒りのツイートをすれば、明日はさらに激しいツイートが来る。そうこうしているうちに最終的に戦争になってしまう、と。

私は非直線的な危機だと考えている。北朝鮮の目標は体制の維持であって、戦争を始めればあの国は崩壊してしまう。韓国も多くの犠牲者が出るため戦争を望んでいない。中国も戦争を望んでいない。日本も同じだ。誰も戦争を望んでいない。

次のミサイル実験によって事態はさらに悪化すると誰もが予想しているが、先ほど述べた道のり、つまり制裁とミサイル防衛、核抑止、通常兵力による抑止を進めていけば、時間とともに事態は好転する。

—北朝鮮対応に関して、以前の政権との違いはどこにあると思うか?

カラファノ:違いは一貫性の欠如だと思う。米国が必要としているのは、北朝鮮の予測可能な行動パターンに対応できるだけの一貫性のある戦略だ。今まではそれがなかった。北朝鮮は従来のやり方を踏襲し、他国は北朝鮮をつついてみて、反応があればそれに対応するために様々な戦略を試した。それがこれまでのやり方だ。

—米国は北朝鮮に対する中国のさらなる圧力を期待しているが、中国は北朝鮮の崩壊を望んでいない。米国がすべきことは?

カラファノ:中国は米国との関係を悪化させない程度の最小限の協力をすることになる。米国からの圧力が増せばより協力するだろうし、米国が求めなければそれ以上の協力はしない。結局、米国は北朝鮮への圧力を継続することになる。

米国はこれまで、北朝鮮問題に関してどんな交換条件も出したことがない。米国は北朝鮮への圧力に関して中国に支援を求め、それを主張し、実際に中国の企業に対する制裁を始めた。その際に、「北朝鮮で協力してくれれば台湾については大目に見よう」、あるいは「南シナ海に関してクレームをつけるのはやめよう」などと提案したことはない。

米中の本質的な考え方はお互いは別々の道を進んでいるということだ。台湾の帰属、南シナの領有権、一帯一路、北朝鮮危機――。中国と協調し、対立を避ける方法を探すというより、中国との対立の根源を特定し、それを熟慮していく。お互いの意見が合わない場所を突き止め、そこを強調するわけだ。そうすれば、中国に米国の関心を認識させ、受け入れさせることができる。

対中国戦略、オバマ政権より視野は広い

実際のところ、米中関係は全体的に悪化していくと見ている。ただ、必ずしもエスカレートしていくとは限らない。中国を戦争に追い込むわけではなく、米国が身をひいて中国にやりたい放題させるわけでもない。米国は中国と競争し、利害がぶつかった場合には理解してもらい、米国の利益を守る。こうすることで、長期的に中国と安定した関係になる。

—北朝鮮だけでなく貿易赤字など米国と中国は別の課題も抱えている。トランプ政権はどのように中国と関わろうとしているのか。

カラファノ:先ほど話したように、こうした課題はそれぞれの道筋に沿って進む。それぞれに必ずしも強いつながりが出るとは思わない。北朝鮮にはすべきことをする。経済面では中国に圧力をかけるだろう。南シナ海では航行の自由を主張する。今後、南アジアとインド洋により多くの焦点を当てていくことになるだろう。

—中国に関して、オバマ政権とトランプ政権の間に違いはある?

カラファノ:2つある。オバマ政権の場合、中国により望ましい行動をさせるように対立を避けて中国に合わせるという方法を採っていた。だが、それはうまくいかなかった。この点がまず違う。

もう一つは、トランプ政権はオバマ政権よりも戦略的視野が広い。オバマ政権は中国への方向転換、あるいはアジアへのピボットを進めた。それはある意味で、北東アジアと太平洋で中国との共存を模索するような、視野の狭いデザインだった。

トランプ政権はインド・太平洋について発言している。このことからも、中国との関係を寄り広い概念で捉えていることが分かるだろう。背景には、米国が欧州、中東、アジアに関して慎重にならなければならないということがある。

実際、中国は全地域に影響力を及ぼそうとしており、米国はすべての地域に関与し、そこでの活動を管理する必要がある。インド・太平洋を認識しているということは、アジア地域への米国の関与について広い概念を持っているという証左だ。東アジアだけでなく、東南アジアと南アジアにおける米国の関心と行動を結びつける必要があるので、インド洋の重要性は高い。

—中国の拡大路線をどう見ている?

カラファノ:中国は自分たちの力を過大評価している。アグレッシブで拡張的なビジョンを進めることでアジア太平洋地域に多くの懸念を生み出している。結果として、国々は釣り合いを取るための対抗勢力として米国に関心を示している。

ご存じのように、米国の政策は「米国」を取るのか、「中国」を取るのかという二者択一ではない。ベトナムとタイに、米国の味方になるのか、敵になるのかという選択を迫ることはない。冷戦時代ではないからね。

米国も中国と関係を持っているように、どの国も中国と関係を持つようになると認識している。彼らは二者択一の関係を求めていないが、中国の要求によって主権を割譲するような状況も望んでいない。アジアとの関与を増やそうとしているトランプ政権のやり方はアジアの国々が求めていることに合致していると思う。

—-中東ではイランが影響力を高める一方、サウジアラビアではムハンマド・ビン・サルマン皇太子が権力を握り、湾岸諸国はカタールとの国交を断交した。中東の状況はどう見ているか?

カラファノ:米国が重視している3地域、アジア、中東、欧州の中で中東は最も困難な地域と言える。その困難の源は地域を不安定化させるイランの影響力と核拡散の脅威、そしてISとアルカイダ。つまり国境を越えるテロの脅威だけでなく、その地域の政府と人々に対する脅威、その地域を不安定化させる脅威だ。米国がすべきことは、この2つの課題に焦点を当てることだ。

このタイミングのエルサレム首都承認は疑問

トランプ大統領はイスラエルの米大使館をエルサレムに移すと発表した。賛否両論あるがこの点はどう見ている?

カラファノ:正直言って、私の中でも意見が割れている。イランの勢力を弱め、ISやアルカイダに対処することが米国の政策だとすれば、この地域での他の事項は後回しにすべきだ。エルサレムへの大使館移転という決断がその目標にどう貢献するのかということを考える必要がある。

ここには議論の余地がある。米国とイスラエルの関係を考えれば、米国がイスラエルの首都としてエルサレムを承認することに疑問を持つ人はいないだろう。また、イスラエルとパレスチナの和平プロセスにおいて、米国が真に中立的なパートナーだと信じている人は誰もいない。和平プロセスがうまくいくと思っている人もいない。したがって、大統領の決断が問題だとは思っていない。

ただ、疑問なのはなぜ今なのか。今回の決断によって米国は何ができるようになるのかという点だ。

今回の決断が、国内の政治的な目的を果たすためだというのは考えにくい。選挙中の公約を果たすためだとも思えない。米国とイスラエルの関係が良好だということを示すために、エルサレムを首都と承認する必要は全くない。

単に長年の宿題を片付けただけだという人もいる。誰もがいつかはするだろうと思っていたことだからね。和平プロセスに真剣に取り組むようパレスチナを脅したのかもしれない。間違いなく、衝動的な決断ではなかったと思うが、ここは議論の余地がある。

—イランに対抗するために、サウジアラビアとイスラエルが協力し合うという可能性は?

カラファノ:十分にある。イランが地域の大きな脅威ということはどの国も認識している。問題はどう対処するかだ。

サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は上から「アラブの春」を強要しようとしている。他国と同様に、サウジは人口の増加に対して富の分配が拡大できないという問題を抱えている。皇太子はそういった課題にトップダウンで対応すると同時に、イランの影響力拡大に対抗するために各国のパワーバランスをリセットしようとしていると思う。

戦略的な意見で日米首脳は一致している

—現在の日米関係をどう見ているか。安倍首相とトランプ大統領は良好な関係を築いているように見える。

カラファノ:効果的なパートナーシップを結んでいると思う。ある部分では2人の指導者のおかげだが、それだけでなく、アジア太平洋地域の平和と安定に関して、米国と日本の間に戦略的な意見の合致があるからだ。

日本とインドのパートナーシップが拡大していることと、米国とインドのパートナーシップが拡大しているのも同じ理由で、それぞれが世界を同じように見ているためだ。北朝鮮は当面の安全保障上の問題であり、対処しなければならない。中国の勢力拡大も地域の平和と安定を損ねる可能性がある。米国、日本、インドは同じ問題意識を共有している。

—トランプ大統領は日本に何を求めている?

カラファノ:その多くは既に日本がやっていることだ。もちろん、第一には安全保障における真の貢献者になってもらうことだろう。これは日本も前向きだと思う。米国、インド、オーストラリアとともにリーダーシップを発揮して、アジア太平洋地域で中国にうまく対処できるような安全保障の枠組みを作ること、これにも日本は前向きだと思う。

また、大統領は米国と日本で雇用を拡大させたいと思っているだろう。大統領は日本経済の悪化を望んでいない。お互いにとってウィン・ウィンとなるような経済機会を求めている。

—ロバート・モラー特別検察官が大統領選におけるトランプ陣営とロシアとの共謀について調べている。今後の展開をどう見ているか?

カラファノ:分からない。いろいろな声があるようだが、信頼できる予測はできないだろう。何が起きるのか、捜査の展開を待って見届けるしかない。恐らく、トランプ政権は何も悪いことはしていないと信じているのではないか。捜査が終わるのをひたすら待つ。それが彼らの方針だろう。

ロシア疑惑、大統領弾劾はあり得ない

弾劾はあり得ない。大統領を解任するプロセスは政治的なもので刑事上のプロセスは存在しない。そして、大統領を弾劾するだけの勢力を野党が得るような政治状況になることはないと思う。どう考えてもあり得ない。

—この捜査は政治的にダメージを与えると思うか?

カラファノ:今のところはそうは見ていない。なぜかというと、今回の捜査が党派的に偏ったものだと誰もが思っているからだ。この捜査は既に怒っている人々をさらに怒らせているだけ。人々の大統領に対する見方を変えているわけではない。

—政権とメディアの対立も増している。

カラファノ:まず、米国のメディアは概して中道左派だ。それに、批判することで読者の注意を引こうとしているという面もある。大統領もメディアと戦うことで、支持者の信頼を深めている。お互いに利用し合っているだけだ。だが、結果としてメディアの正当性は失われつつある。事実、メディアへの信頼度は大統領よりも落ち込んでいる。

大統領が報道の自由を損ねていると批判する人もいるが、私はそうは思わない。みんな言いたいことが発言できており、憲法上の危機などということはない。馬鹿げている。

大統領はある面で報道のクレディビリティ(信頼性)を攻撃している。それについては2つのことが言える。報道が信頼性を失っているということが一つ、そうしなければ大統領の政治生命が危なくなるということがもう一つだ。大統領は従来型の政治体制から出てきた政治家ではない。大統領の人気は彼の個人的なネットワークが基になっている。

大統領はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通して、あるいはメディアとの衝突を通して、支持者とのつながりを維持している。大統領は自分を憎むメディアによって、支持者とのコミュニケーションにフィルターがかかるというようなことは望んでいない。支持者も大統領の言葉は直接聞きたいと思っている。メディアと大統領の衝突はお互いの目的に合致しており、両者ともに対立を鎮めようと思っていない。

—最後だが、オバマ政権の8年間をどう評価する?

カラファノ:過去8年間を思い出してみれば明らかだろう。米国人は分裂し、大きな怒りを感じている。これは選挙結果によるものではない。選挙前から既に分裂し、怒りを感じていた。

オバマ氏が選出された2007年も米国は怒りを感じていたが、オバマ氏が米国人を一つにまとめることはなかった。不況からの回復にも時間がかかった。彼が経済に素晴らしい貢献したとは言いがたい。外交政策についてもオバマ政権の8年間で米国は欧州や中東、アジアで地位を失った。オバマ氏が大統領を退いた時と就いた時を比べればテロ攻撃も増えている。

もちろん、米国とインドの関係のように過去3人の大統領を通じてうまくいっているところもあるが、概していえば米国は外交でも地位を失った。経済、外交、そして市民社会においても基盤を失ったということを考えれば、どう考えても成功を収めたとは言えない。

—オバマ政権に成績をつけるとすると?

カラファノ:外交政策は「F(落第)」だろうね。北朝鮮は一夜にして核保有国になったわけではない。ISのカリフはオバマ氏が就任した時には存在していなかった。アフガニスタンもオバマ氏が退陣した時はひどい状況だった。またオバマ政権は軍隊を酷使した。外交・安全保障にはいい点はつけられない。

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