『なぜトランプ人気は衰えないのか、中間選挙を前に考えてみた』(11/2ダイヤモンドオンライン 塚崎公義)、『中国から尖閣など離島奪還するのは愚の骨頂 3倍の兵力がいる奪還より防衛を優先すべし、そのための法整備を』(10/30JBプレス 森清勇)について

トランプのツイッターです。習近平と電話会談し、特に貿易問題と北朝鮮について話合ったとのこと。G20で継続協議するようです。11/2日経朝刊には上海の国際輸入博覧会に日系企業が一番多く出展、450にも上ると。いじましい商人根性としか感じませんが。そう言う立場で言うのは何ですが、トランプは米中冷戦を妥協することなく戦ってほしい。ウイグル人の強制収用や臓器摘出問題を見れば分かるように、中共は悪の帝国です。これが世界を牛耳る前に叩き潰しませんと。

11/1阿波羅新聞網<中南海路线斗争公开化 川普政府表态 中共高层军心大乱=中南海の路線闘争がオープンに トランプ政権の貿易戦争で中共の高層は大乱に>台湾メデイアの評論は、「毛沢東から鄧小平を経て今の習近平の時代に至るが、中共内部にはずっと経済で二方面での路線闘争があった。目下、習派(輸出モデル)と鄧派(市場経済)が争っている。鄧派が習派に妥協しているのは、トランプのボトムラインが読めず、代わりになるのがいないため」と。阿波羅新聞網のコメンテーターの王篤然は「トランプ政権で中共への要求のバーは高くはないが、ペンス演説は習に態度を改め、鄧の路線に戻るよう希望すると明言した。反習勢力は中共が鄧路線に戻って政権を維持することを希望している。但し、鄧の開放政策は国民の価値観を表したものでなく、実際は米国に取って代わるだけの力量を蓄積するためのものである」と。

ある分析によれば、「中国のBSを見れば、全債務を返済すれば、国の保有する企業の株式は全部失われる」と。

塚崎氏の記事は、中間選挙での共和党の勝利を予言したものと小生には映ります。米国メデイアも日本のメデイア(民主党支持の米国左翼メデイアの記事を翻訳・転電しているだけですから)も当てになりません。下院での勝利も願っています。

森氏の記事では、日本の役人のサラリーマン化、志の無さが浮き彫りになっているのでは。自衛隊や海保の現場が動きやすい環境を政治家を動かしてキャリア組は作らなければいけないのに、できていません。まさに「省益あって国益なし、局益あって省益なし」の状態では。タコツボにドップリ嵌まっている感じです。新人時代に国益の為に働くことを教えても、先輩や事務次官の姿(前川事務次官の買春等に対する自己弁護の酷さ)を見ると初心を忘れてしまうのでしょう。悲しいことです。日本は「法治国家」ならぬ「放置国家」になり果ててしまっています。

中国漁船に乗っている民兵は南京での便衣兵を思い起こさせます。国際法にうまく抵触しないように立ち回る訳です。南京虐殺は架空で、便衣兵が殺されただけでしょう。何せどんな汚い手を使ってでも勝てば良いという民族です。蒋介石が黄河花園口を決壊させ、日本軍の進軍を阻もうとしたときに、日本軍は溺れる中国人を救出しました。こういう事実を鑑みれば南京虐殺何てするかと思いませんか?日本人はもっと歴史を勉強して、常識を働かせて判断すべきです。民族性の違いを見たら分かりそうなもの。

「戦争を防ぐには抑止力が必要」というのが、GHQによって洗脳されたままの日本人の頭には理解できないようです。「戦争反対」を叫ぶ人は戦争を呼び込む人か、イザと言う時に戦わず奴隷への道を歩むと見て良いでしょう。中共に侵略を許せば、今のウイグル、チベット、モンゴルのようになります。強制収容所送りになって、闇の中で生きたまま臓器を取られる、こんな奴隷になりたいと思いますか?憲法改正しないで戦うことになれば、憲法は停止、超法規的に戦うしかありません。政治家はいつでもその覚悟をもって政治をしてほしい。憲法より国民の生存権の方が上位にあるはずです。

塚崎記事

photo:The New York Times/Redux/AFLO

米中間選挙の劣勢が伝えられても依然人気の高いトランプ大統領

米国の中間選挙が迫っている。今回は、トランプ大統領の信任投票という性格を持った中間選挙だ。与党は若干の苦戦が予想されているようだが、米国の中間選挙で与党が不利なのは珍しいことではない。国民が、政権の暴走をけん制する役割を野党に求めるからだろう。

2年前の大統領選挙では、「史上最悪の大統領が選ばれてしまった」と嘆いた読者も多いかもしれないし、今でもトランプ大統領の問題点を挙げ始めればいくらでも原稿が書けそうだ。筆者も批判したいことは多い。

しかし米国では、依然としてトランプ大統領の支持者は多い。なぜ、数多くの問題点にもかかわらず、人気があるのか。

そこで本稿ではあえて発想を転換し、「米国の大統領として、優れたところが数多くあるはずだ。それを米国民が支持しているのだろう」と考えて、あえて米国民の視点からトランプ大統領を絶賛してみよう。

どこの国でも、景気がよければ政府は褒められる。トランプ大統領についても、まさに景気が好調である点が最大の絶賛ポイントだろう。

景気を誰にでも一目で理解してもらうためには、失業率の数字を引用するのが普通だ。そこで失業率を見てみると、直近はこの49年間で最低となる3.7%となっている。大統領就任時点で4.8%であったことを考えると、2年で1ポイント以上の低下をもたらしているのだ。

経済成長率については、大統領就任前年が1.6%だったのに対し、2018年は2%台後半が見込まれている。インフレ率も、エネルギー価格の変動などの影響はあるものの、おおむねFRB(米連邦準備制度理事会)が目標としている2%近辺で推移している。

株価についても、NYダウは選挙前に1万8000ドル近辺であったものが、最近では2万5000ドル近辺で推移している。株価が上がって悲しむ人はいないから、大統領として米国民に巨額の“プレゼント”をしていることになる。

経済の好調は大統領だけのおかげではないが、政府の最重要任務の1つがインフレなき経済成長であることを考えれば、実によくやっている政権だといえるだろう。

アメリカファーストは国民にとって悪いことではない

トランプ大統領の特徴は、国際協調よりも米国の利益を優先していることだ。これは一般論として、世界の利益に反する。米国に利益をもたらす一方で、他国には大きな不利益をもたらす場合が多いからだ。

例えばトランプ大統領は、世界各国が地球温暖化を阻止するために協力しようという「パリ協定」を離脱する意向を表明している。米国が離脱すれば、米国企業は温暖化ガスを自由に排出しながら利益を追求することができるが、それによって地球の温暖化が加速することになる。米国だけが利益を得て、他国が損失を被るわけだ。

仮に、米国の離脱を契機としてパリ協定が崩壊し、地球温暖化が進むようなことになれば、「結局、アメリカファーストは、米国の得にもならないからやめておこう」ということになりかねないが、トランプ大統領はそう考えない。

米国の視点に立てば、米国以外の国々は引き続き温暖化防止に努めるわけだから、米国にとっては最高の結果が得られると考えているのだ。これは、他国に何と言われようと米国民にとって悪い話ではない。

しかも、興味深い点もある。トランプ大統領は「パリ協定の内容が米国に著しく不利なので、内容の修正を求め、修正されなければ離脱する」と言っている。つまり、離脱を決めているのではなく、条件交渉をして、各国の負担割合が変更されれば復帰するというのだ。もしも交渉が成立すれば、温暖化は防止されることになる。米国と他国の負担割合が変わるだけの“ゼロサムゲーム”なのだ。

もう1つ興味深いのは、米国が実際に離脱するのは、次の大統領選挙の翌日だということだ。つまり、「トランプ大統領が次の大統領選挙で負ければ離脱しない」という可能性も米国には残っているのだ。

ハードネゴシエイトで有利な条件を引き出す商売人

筆者は、トランプ大統領の本質は“商売人”だと理解している。契約が成立しなければ双方の損なので最終的に契約は成立させるが、その条件をできるだけ自身に有利になるようハードネゴシエイトをするからだ。

その過程で「交渉決裂をほのめかす」というのは、1つの優れた戦略である。交渉を決裂させるつもりがないので、これは「ハッタリ戦略」と呼んでもいいだろう。

これは、ガキ大将が「オモチャをよこさないと殴るぞ」と弱虫を脅すようなもの。本当に殴ると自分の手も痛いので、殴らずにオモチャを奪うことが本当の目的なのだ。

また、トランプ大統領は日欧などからの自動車輸入に高率関税を課すと宣言した。これには世界中から「世界の貿易を縮小させる愚策だ」という批判が浴びせられたが、ふたを開けてみれば高率関税は課されていない。

日欧各国と、「関税ゼロなどを目指した大がかりな貿易交渉を行なう」ことで合意したというのが現状で、当然ながら「米国は少し輸入を増やし、日欧は大量に輸入を増やす」ことで決着するのだろう。

それにより、世界貿易は縮小ではなく拡大することになる。日欧にとっては不満は残るが、世界経済は発展し、その果実を主に得るのが米国だという結果が待っているわけだ。

これは、メキシコやカナダ、韓国などとの交渉も、本質は同じだと考えていいだろう。だとすると、トランプ大統領の通商政策は、米国に大きな利益をもたら素晴らしい政策だということになり、「トランプ大統領万歳」となるのだ。

米中冷戦は米国勝利の可能性大 歴史に名を残すかも

一方、米中貿易戦争は激しさを増しているが、これは日欧との関係などとは全く異なる。相手からオモチャを奪うのが目的ではなく、相手をたたきつぶすのが目的だからだ。

米国は、中国が安全保障上の脅威であると位置づけ、「中国をたたいておかないと米国が覇権争いに敗れてしまう」との危機感を抱いている。しかも、「中国の急速な成長が、米国などから技術を盗むといった不公正な行為によってもたらされている」との認識も広まっている。

米国は、敵が不正をしていると考えると、国内が一致団結して戦える国だ。しかも、自らの覇権がかかっているとなれば、真剣さが格段に違ってくる。つまり、米中は単なる貿易戦争ではなく冷戦なのであり、米国としては「肉を切らせて骨を断つ」戦いなのだ。

これは、トランプ大統領が単独で行っているのではなく、米国議会の多数の支持を受けてやっていることだから、仮に中間選挙で負けても大統領選で負けても、米中冷戦の大枠は変わらないと考えておいた方がよさそうだ。

そう考えるとトランプ大統領は、対中政策において弱腰だったこれまでの米国を、強気に転換させる原動力になったといえる。議会の姿勢が変化したとしても、やはり大統領がそれを推進するとすれば、それは大きなパワーとなる。

しかも、こうした米中冷戦は、米国の勝利に終わる可能性が高い。それを主導し、米国の覇権を守った功労者がトランプ大統領だったということになれば、彼は歴史に名を残す大統領だったといえる時代がくるのかもしれない。

冒頭でお伝えしたように、本稿はあえて米国民の視点に立って、トランプ大統領を礼賛するとどうなるかという“頭の体操”を試みたものだ。誤解のなきようにお願いしたい。

(久留米大学商学部教授 塚崎公義)

森記事

中国海軍の海上演習で、空母「遼寧」に駐機されたJ15戦闘機(2018年4月撮影)。(c)AFP PHOTO〔AFPBB News

国土交通省の分類では本州・北海道・四国・九州・沖縄本島の5島を除くすべてが離島である。日本には離島が6847あり、このうち有人は421で、ほとんど(6426)が無人離島である。

少子化の影響もあって、対馬に見るように有人離島でも人口減少が続いている。しかも振興策の不備などから外国勢力によって占拠されるかもしれないという不安に晒されている。

領土・領海・領空を守るために海上保安庁や自衛隊は日夜努力しているが、不毛な論戦に明け暮れる政治の不作為から、領域保全に必要な議論が行われず、各種法制の不備が指摘されている。

そうした結果、現場に関わる海上保安庁や自衛隊の努力だけではいかんともし難い状況が現出する。

離島防衛に関わる自衛隊の専門部隊として、平成30(2018)年3月27日に水陸機動団(約2100人)が編成された。

10月14日に朝霞駐屯地で行われた「自衛隊観閲式」では、最新鋭のステルス戦闘機「F-35A」のデモフライトとともに、特に注目を浴びたのが水陸機動団に関わる「V-22オスプレイ」や水陸両用車「AAV7」などであった。

最高指揮官の訓示

観閲式に参加した自衛隊員約4000人を前に、最高指揮官の安倍晋三首相は「24時間、365日。国民の命と平和を守るため、極度の緊張感の中、最前線で警戒監視にあたり、スクランブル発進を行う隊員たちが、今、この瞬間も日本の広大な海と空を守っています」と訓示して、任務を称えた。

「領土・領海・領空、そして国民の生命・財産を守り抜く。政府の最も重要な責務です。安全保障政策の根幹は、自らが行う継続的な努力であり、立ち止まることは許されません」

これは「国を守る大切さ」の国民へのメッセージであり、同時に「国民の協力が不可欠」という要請でもある。

「この冬に策定する新たな防衛大綱では、これまでの延長線上ではない、数十年先の未来の礎となる、防衛力の在るべき姿を示します」

「日々刻々と変化する、国際情勢や技術の動向に目を凝らし、これまでのやり方や考え方に安住せず、それぞれの持ち場で、在るべき姿に向かって、不断の努力を重ねていってください」と述べた。

首相が節目ごとに強調してきた日本を〝真ん中″に据えて共生する国際社会の建設に尽力するという意思表明であり、その中での自衛隊への期待を示したものと理解できる。

最後は不甲斐ない政治によって「厳しい目で見られ」てきた自衛隊(隊員)が「強い誇りを持って任務を全うできる環境を整える」と述べ、「これは、今を生きる政治家の責任であります。私はその責任をしっかり果たしていく」と、自衛隊の違憲性を解消する決意を示した。

国民の9割以上が自衛隊の存在を認めているとされながらも、違憲とする学者もいる。また、「軍隊」でないことから国際法や慣習上の権利に疑義が挟まれ、PKO活動や外国軍隊との共同訓練・演習などにおいて共同歩調が取れない現実も散見されてきたからである。

以下では、水陸機動団とグレーゾーン事態対処などについて言及する。

なぜ「離島奪還」なのか

最近のマスコミ報道では、「離島奪還」という用語が多用されている。

「離島奪還 初の訓練場」「離島奪還を想定した訓練」「離島奪還 陸海空の連携急務」「離島奪還へ万全」などである。

離島防衛の専門部隊である「水陸機動団」の任務も、「島嶼侵攻を許した場合、奪還作戦の先陣を切る役割を担う」とされ、ここでも侵攻を許した場合の「奪還」である。

オスプレイや輸送ヘリが運んでくる機動団の隊員が予定地に降着できるように、航空攻撃や艦砲射撃で進攻者に砲撃を加えて援護する。

同時に、輸送艦(本来は強襲揚陸艦であるが自衛隊は装備していない)で運ばれて来た隊員が水陸両用車やボート、エアー・クッション・ヴィークルなどで上陸し、侵攻者を掃討するというものである。

北海道では多くの山林やレジャー施設が主として中国系資本に買収されている。買収地の多くがアンタッチャブルな状態に置かれ、しかも水源なども豊富なところから衣食住を賄え、自己完結型の生活ができる。

他方で、留学や技能実習で来日した外国人のうち5万人超が不法滞在の状況で、その中の8割は中国人が占めているとされる。

無人離島では国民の目がほとんど届かず、場合によっては上記のような不法滞在の外国人も含めた勢力に占拠されて、陣地化や要塞化しているかもしれない。

占拠ではなかったが、昨年11月、北海道の無人島、松前小島には北朝鮮の漁船員が漂着し仮住まいをしていた。

相手が武力をもって占拠した場合、当然のことながら、奪還が必要となる。近年の「奪還」は尖閣諸島を対象にした”隠語″のように聞こえなくもない。

尖閣諸島は本来日本の領土であるが、1970年代から中国が自国領と主張し、90年代に入り領海法を制定して自国領に組み込み、習近平政権になると台湾などと同様に「核心的利益」を有するとした。

爾來、中国は同島を係争地として、日本を協議の場に引き摺り込もうと画策し、公船や軍用艦艇などを接続水域に侵入させ、時には領海を侵犯してきた。

ちなみに、有人島の対馬も過疎化の進行で「島が危ない」と叫ばれてから久しく、その後も韓国系資本による土地などの買収が進んでいる。

こうした経緯を踏まえ、本来日本の領土であり島であるが、何らかの事情によって普段の警戒・監視や防衛が思うに任せず、占拠を許す結果をもたらしかねない。

そこで、訓練や演習では「占拠された離島を奪還する」という名目で訓練などが行われることになる。

グレーゾーン事態とは何か

そもそも、「奪還作戦」をせざるを得ない状況に追い込まれるのは、偏に海保や管轄する地方自治体で対応できないにもかかわらず、海自を含めた防衛力が十分に機能しないからである。

いや機能できない法体制になっていると言った方が適切であろう。そうした状況をもたらす最大の事案がグレーゾーン事態である。

英国では沿岸警備隊は不法侵入船に対して、監視・通報の権限のみを有し、実際の取り締まりは通報を受けた海軍が担当している。

東シナ海でのEEZ(排他的経済水域)の中間線をめぐる日中間の摩擦や、尖閣諸島を核心的利益とする中国は、警備にあたる海警局の公船を大型化し、また倍増するなどしてきた。

それでも係争は海保と中国国家海警局が管轄する警察権に基づく水準にとどまっていた。

ところが、「海洋強国」を目指す中国は、フリゲート艦や情報収集艦などの軍艦による違反も稀ではなくなってきた。

同時に領海警備等を担当する海警局が中国軍を指揮する中央軍事委員会の指揮下にある中国人民武装警察部隊(武警)に編入され、「(武警)海警総隊」(対外呼称は中国海警局)となった。

「軍隊の一部に変貌し、人民解放軍や民兵と一体化して戦う組織に変わった」(「産経新聞」10月24日付、山田吉彦「防衛力持つ『海洋警備隊』創設を」)のである。

また尖閣諸島に最も近い浙江省温州には、海警局艦船の係留のための大型基地が建設されているという。

尖閣諸島に多数押し寄せる漁船には、民兵が同乗することも多く、彼らの拠点は東シナ海及び南シナ海に面した浙江省、福建省、広東省、海南省の海岸沿いに点在し、10万人以上とみられている。

軍事的訓練を受けた民兵と特殊GPS搭載の漁船による海上ゲリラ行動などに加え、海警局の公船の武装強化、さらには組織改編によって、日本側は警察機能としての海保だけではとても対応できない状況になっている。

こうして自衛隊が防衛出動する有事には当たらないが、警察や海上保安庁だけでは対処が難しい「隙間」の事態があり得るし、昨今の状況からは、生起の可能性が高いケースとさえみられている。

過去にも幾つかの事例が起きている。

(1)1997年2月、下甑島(鹿児島県)に中国人密航者が漂着し、山中に逃亡した。住民は緊張に包まれ、島内所在のレーダーサイトで勤務する自衛隊員も捜索に加わった。

しかし、密航者の捜索は防衛出動でも治安出動などの対象でもない。そのため、隊員は「調査・研究」の名目で出ている。早速「自衛隊法違反ではないか」という指摘がなされて政治問題化した。

(2)2012年7月、五島列島(長崎県)の荒川漁港に「台風からの避難」の理由で中国漁船100隻以上が押し寄せた。

中国は民兵としての教育を受けた乗組員の乗った漁船をまず送り込み、その保護を口実に漁船監視船や海軍艦艇が出動し実効支配を確立していくとみられていることから、「中国による尖閣諸島攻撃の予行演習ではないか」と疑問視された。

ざっくり言って、尖閣諸島が現在のような状況になっているのは、日本が自国を守る軍隊を有せず、「国有化」はしたが、住民を住まわせ、事業を起こし、自衛隊を堂々と派遣できないできたからである。

「自分の国は自分で守る」ということを言う人が多くなっているが、「守る」力の実在としての「軍隊」が日本にはない。解釈改憲でやってきたが、無理を重ねた矛盾が今日のグレーゾーン事案となっている。

グレーゾーン事態に対処するために

(1)平時において最も重要な活動である「警戒・監視」を自衛隊法の自衛隊の行動として規定

(2)グレーゾ-ン事態における新たな権限を自衛隊に付与する法制の検討

などが民間の防衛関係団体からも提議されている。しかし、法的整備や運用面での改善には時間がかかるとみられる。

問題点があると分かっていながらも、国民の理解が進まなければ法の制定や改定は進まない。

そうこうしているうちに、相手が尖閣に上陸し施政権を主張しないとも限らない。日本は「日本の施政権下にある」としながらも、上陸を許す最悪の状況しか想定できないのだ。

そのために、本来であれば事前に準備できる「離島防衛」のはずが、無人で放置して置かざるを得ない。上陸を許す結果は「奪還」しかあり得ない。マスコミなどで報道される「離島〝奪還″」は、こうした考えからである。

国家の安全に関わる重要事で、生起する事案によって過不足なく円滑かつ段階的に対応できる仕組みが必要であるが、省庁の権限をめぐる縦割り意識が根底にある。

縦割り行政が国益を毀損する

2018年1月6日、上海沖合300キロの東シナ海でパナマ籍タンカー・サンチ号(8万5000トン)が香港籍のバラ積み船CFクリスタル号(4万トン)に衝突され、炎上した。

衝突場所は、日中中間線の西方の中国側であったが、サンチ号は中国が開発を進めている油ガス田の近くを炎上したまま漂流し、14日に中間線東方の日本側の海底に沈没した。

事故対処にあたっては外交的配慮が必要であることは言うまでもないが、この事故は人命救助、海洋環境、海運・海上交通、漁業資源、EEZ・大陸棚の境界画定など様々な問題と関連しており、海上保安庁・環境省・運輸省・農林水産省・外務省などの官庁が絡んでくる。

日本は、かねて日中間の大陸棚の境界を中間線であると主張してきた。サンチ号の沈没場所は、日本の大陸棚上でもあるので、排他的管轄権を行使できたはずであるが、日本はそのように行動しなかった。

髙井晋氏は「日中間で大陸棚の範囲や境界を争っているのであれば、日本は積極的にサンチ号事件に対する関心を表明し、同号のサルベージを積極的に推進し、沈没場所が日本の大陸棚であることを国際的にアピールするべき」(JBpress2018.9.18「中国にまたしてもやられた日本政府 日中境界線付近でのタンカー『サンチ』沈没事件で問われる日本外交」)であったと述べる。

また、サンチ号の海難事故を報道したのは、第10管区海上保安本部と地方紙主体で、政府が官邸の危機管理センターに情報連絡室を設置したのは、ようやく2月2日のことであったという。

サンチ号事件における日本政府の対応は当初から消極的で、事故の経過に関する発信は透明性に欠け限定的であったともいう。

こうしたことから高井氏は「縦割り行政の弊害以外の何者でもなく、各行政機関も専ら海上保安庁の対応に任せてきた印象を受ける。サンチ号事件などの海洋問題は、主権や国益が直接絡む多くの問題を含んでいることに留意しなければならない」と述べている。

さらに、次のように危惧する。

「中国が日本の了解を得ずしてサルベージを行ったのであれば、そして日本が何も抗議していなければ、国際社会は、沈没場所が中国の大陸棚であると認識することになるのではないか」

「今後、日本が中間線以東の大陸棚を自国の大陸棚であるといくら主張しても、サンチ号事件に対する日本の消極的な対応と中国の積極的な対処活動の印象から、国際社会が中国に軍配を上げる可能性は否めない」

日本は「尖閣諸島の領有権とそれに伴う日中中間線以東の周辺海域のEEZおよび大陸棚を自国のものと主張しているので、このことを諸外国に発信し賛同の輪を広げるためには、一つひとつの行動が常に外交の一貫性に沿ったものでなければならない」と注文する。

自衛艦の活用は?

北方領土が占領される以前の話である。日本の管轄下にあった海域にロシアの漁民が侵入して密漁し、また日本の漁民を脅して獲物や金品を略奪することがあった。

ロシアの漁民ともめ事を起こしているまさにその時、日本の軍艦がはるか向こうに姿を見せるだけで、件のロシア人たちは何事もなかったかのように、「さーっ」と消えていったそうである。

中国は節目ごとに市民や漁民を動員してくることが知られている。

昭和47(1972)年に日中が国交を回復し、条約の締結交渉を重ねていた。交渉が山場に差しかかっていた昭和53(1978)年、尖閣諸島の日本領海に200隻を超える中国漁船が殺到し、数日後に一隻残らず姿を消した。

中国側は「漁船が魚を追っているうちに潮に流された」と説明したそうである。

平成26(2014)年には小笠原諸島や伊豆諸島周辺に200隻を超す中国のサンゴ密漁船が集結した。台風で一時去ったが、再度結集してきた。

時あたかも日中首脳会談の実現をめぐって虚々実々の駆け引きが展開されているさなかであった。

小笠原の赤サンゴが荒らされ、漁民に莫大な損失をもたらしたことから政府は重い腰を上げ、違法操業の取り締まり強化や罰金引き上げなどを検討するが、日本の対応が甘いことに変わりはない。

「産経抄」(平成26年11月8日付)が提案したのは、尖閣沖で奮闘している海保が小笠原沖などで200隻以上の漁船を相手にする余力はないだろうから、自衛艦が悠悠と漁船の脇を通るのは如何だろかという歴史の教訓であった。

平成28(2016)年8月5日以降、中国は海警局の公船を尖閣諸島海域に派遣し、漁船400隻、公船15隻を動員した。漁船には民兵が乗船していたことも判明した。

日本の漁船が他国の領海で違法操業したら拿捕されるばかりでなく、いきなり銃撃されることも頻繁であった。

しかし、日本は、自衛艦を遊弋させるというような「軍事的圧力」と思わせる行動をとることはなかった。もっと活用してもいいのではないだろうか。

攻撃に要する兵力は防御の3倍

軍事の常識として、防御は地形などを利用することができるために、攻撃(離島奪還もその一つ)の3分の1の兵力で済む。従って、可能な範囲で攻撃ではなく、防衛(戦術的には防御)で地域を守ることが大切である。

もっとも、敵の攻撃できる経路がいくつもある場合は、防御兵力が各径路に分散されるために、各々の経路に分散配置が必要となり、全体的には防御兵力が多く必要となりかねない。

そこで偵察・監視により主力が接近してくる経路を判断し、配備の重点を絞ることが重要になってくる。

いくつもの攻撃ルートがあるような場合は、1つに集約させるために、他のルートには兵力に代わる接近阻止(または拒否)装置などが必要となる。

以前は地雷などがそうした役割を担い、敵の行動を制約していた。しかし、今は人道上から国際条約で破棄することになっており、現実に日本はすでに破棄して装備していない(条約無視をする近隣国は定かでないが、多分保有しているに違いない)。

ともあれ、離島の奪還は攻撃の一種で、相手の3倍の兵力が最小限必要というのが戦術の原則である。

この原則に照らしても、基本的に「奪還」ではなく、占拠されるのを阻止する「防衛(または防御)」に注力すべきである。あるいは、上陸戦闘を許さないための接近拒否戦略が望ましい。

防衛白書(29年版)は水陸機動団について、「(敵の」攻撃に対応するためには、安全保障環境に即した部隊の配置とともに、自衛隊による平素からの常時継続的な情報収集、警戒監視などにより、兆候を早期に察知し、海上優勢・航空優勢を獲得・維持することが重要」と強調している。

そして、「(敵の侵攻の)兆候を得たならば、侵攻が予想される地域に、陸・海・空自が一体となった統合運用により、敵に先んじて部隊を展開・集中し、敵の侵攻を阻止・排除する」としている。先述の接近阻止であり、または「防御」ありきである。

続けて、こうした対応が取れず万一「島嶼への侵攻があった場合には、航空機や艦艇による対地射撃により敵を制圧した後、陸自部隊を着上陸させるなど島嶼奪回の作戦を行う」と白書は述べている。

このように、「奪回」は起死回生の手段である。

水陸機動団が「離島奪還」作戦を練り、訓練し、演習しているからと言って、日本が離島などの防衛を疎かにしてはならない。

最も厳しい状況下の訓練(すなわち奪還訓練)を行うことで、部隊の練度を最高に高めることにより、低烈度の状況対応は容易となるからである。

おわりに

尖閣諸島が国有化されたのは野田佳彦政権の2012年9月のことであった。その2年前の2010年9月には、尖閣諸島を巡視している海保の巡視船が中国の漁船に追突される事件が起きた。

国有化される前は島の近傍まで行き清掃し、時には上陸して国旗を持ち込むなどの行為も見られたが、今では海保の警備が厳しく、海保の警戒線より内側に近づくことはできないとのことである。

他方、海保の統制を受けない中国の漁船は海保の警告を無視して悠然と島の近傍を遊弋する逆転現象が起きていると仄聞した。これでは国有化が仇になっているとしか言いようがない。

実のところ、国家主席になりたての習近平は権力固めに、就任直後の2012年末から2013年初めにかけて、尖閣諸島の奪取を本気で考えていたという(矢板明夫著『習近平の悲劇』)。

この時期の事象を振り返ってみると、公船の領海侵犯は頻繁に起きていたが、2012年12月13日、国家海洋局所属のプロペラ機が初めて尖閣諸島上空で領空侵犯した(なお、この日は日本が南京で大虐殺をしたとする南京攻略の75周年記念日でもあった)。

2013年1月になると、19日と30日の2度にわたり、東シナ海で中国海軍のフリゲート艦が海上自衛隊の護衛艦に火器管制レーダーを照射する。戦闘準備完了さえ示唆する行動で、何時戦闘開始になってもおかしくない態勢を意味する。

いずれにしても、安倍政権が過激に反応しなかったため、中国は口実を見つけることができなかったようだ。

当時はホットラインもできていなかったが、政権の冷静沈着な行動が、大事を防いだということができよう。

法律がなければ行動できない自衛隊である。グレーゾーンなどと称して放置できない認識が必要だ。

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