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1/20日経ビジネスオンライン 趙章恩『台湾出身の16歳韓流アイドルが求められた「中国」』、1/22北村豊『16歳美少女「国旗事件」が民進党圧勝に貢献

趙章恩女史のプロフィールを見ますと

「ITジャーナリスト/KDDI総研特別研究員/東京大学学際情報学府博士課程

研究者、ジャーナリスト。ソウルで生まれ、小学校から高校卒業まで東京で育つ。韓国ソウルの梨花女子大学卒業。東京大学社会情報学修士号取得後、東京大学学際情報学府博士課程進学。

日本経済新聞「ネット時評」、日経パソコン「Korea on the web」、日経デジタルヘルスオンライン「韓国スマートヘルスケア最前線」、西日本新聞、BCN、夕刊フジなどにコラムを連載。

著書に「日本インターネットの収益モデルを脱がせ」(韓国ドナン出版)などがある。」とあります。

彼女に「慰安婦」についてどう考えているのか聞いてみたい。東京で育ったようですから韓国の偏向教育・報道の影響は少ないのではと思いますが。特に、朝日新聞の誤報・謝罪と韓国の対応についてどう考えているのか。呉善花拓大教授のように韓国社会からバッシングを受けても真理の追究をするのかどうか。そうでなければ東大(韓国から見た敵国の最高学府)で学ぶ意味はないのでは。真実をネグるのであれば学問する意味はないでしょう。金慶珠東海大准教授のように何を学生に教えているのか分からないような人は百害あって一利なしです。帰国して貰った方が良い。

韓国メデイアは「政治にツウィを利用しようとする台湾の蔡氏」と非難していますが、筋違いと言うもの。蔡次期総統は「金の力で16歳の女の子に圧力をかける中国のやり方が正当かどうか」を言っただけです。慰安婦であれだけ騒ぎ、女性の人権尊重を言うのであれば中国に対し断固として人権侵害と抗議すべきでしょう。結局日本のマスコミ同様腐っているという事です。言い易い所しか叩きません。今の世界で一番横暴なことをしているのは中国ではありませんか?他国の内政干渉はできないというのであれば、日本のことをとやかく言うなと言いたい。

趙章恩女史も「帝国の慰安婦」を書いた朴裕河世宗大教授のようになってほしいと願っています。どんなに政治的・社会的圧力があっても、学者はガリレイのように「それでも地球は回っている」(言っていないという説もありますが)と言えるのが学者としての良心でしょう。

趙記事

 韓国の新聞は1月18日、台湾出身の韓流アイドル「ツウィ(本名:周子瑜)」が起こした旗騒動が台湾の総統選挙に大きな影響を与えたと一斉に報じた。台湾出身で、韓国と中国で活躍する女性アイドルが、テレビ番組の収録中に台湾の旗を持っていた。その行為が中国、韓国、台湾を巻き込む大問題に発展している。

 ツウィは、新人韓流アイドルグループ「TWICE」のメンバーで、現在16歳。TWICE は、韓国の大手芸能プロダクションJYPが、中国市場で売り出すべく2015年秋に企画したユニットだ。

 韓国の地上波放送MBCが2015年11月に放映した番組「マイリトルテレビジョン」の収録前、番組スタッフが演出のため出演者らにそれぞれの出身国・地域の旗を手渡した。ツウィは台湾の旗を手にしていた。

 韓国では、ツウィは台湾出身だから台湾の旗を手に取るのが当たり前だと思われ、何事もなく番組は放映された。マイリトルテレビジョンは、インターネットで先行して放送。これを録画・編集した番組を2週間後にテレビで放送している。編集の過程で、ツウィが台湾の旗を手に持っている場面はカットされ、テレビには映らなかった。この編集は旗を問題にしたからではなく、単に放送時間を短くするためのものだった。

 ところが2016年1月8日、台湾が中国から独立することに反対する台湾の芸能人や中国のネットユーザーがインターネット上での放送に目を留めた。ツウィが台湾の旗を手に持つ場面をキャプチャーした画像に、「台湾の独立を支持するなら中国で活動するな」といった内容の文字が書きこまれたものがSNS経由で拡散した。そして、16歳のアイドルに「台湾の独立を支持する政治活動家」というレッテルが貼られることになってしまった。

 中国のネットユーザーは反発。TWICEはもちろん、JYPに所属する他のアイドルも中国での活動をやめるべきだと主張するようになった。韓国の芸能界にとって中国は莫大な額のギャラを払ってくれる大事な市場である。

誤った発言と行動をお詫び

 JYPは1月15日、自社のホームページや中国語のSNSに、ツウィが謝罪する動画を掲載した。ツウィは一人でカメラの前に立ち、「中国人として海外で活動しながら、誤った発言と行動を取り、会社と両岸(中国と台湾)のネットユーザーを傷つけてしまいました。申し訳ありません」「中国での活動を中断して反省します」「中国は一つ」「私は中国人であることを誇りに思います」などと謝罪の言葉を述べた。

 JYPの代表であるパク・ジンヨン氏も同日、「傷ついた中国のファンの皆さんに心から謝罪する」という内容の謝罪文を発表した。 「(台湾の旗を手にすることが)どれほど深刻なことなのか社内で誰も理解していなかった。申し訳ない」 「ツウィは13歳の時、親元を離れて韓国に来た。親代わりである私がよく教えるべきだった」 「韓国と中国の友好関係と両国の文化交流に寄与するため努力する。ツウィは反省している」 「この事件によって影響を与えてしまったパートナー会社との関係を上手く解決していきたい」。 などなど、中国ファンの機嫌を損ねないよう精いっぱい謝罪の言葉を書いた。

蔡英文が勝利会見で取り上げる

 この謝罪動画と謝罪文が、今度は韓国のネットユーザーに火をつけた。なぜ16歳の少女が台湾の旗を手にしたぐらいで謝罪しなければならないのか、彼女は反省する必要があるのか、JYPはなぜここまで中国に低姿勢なのか、などとJYPを非難した。ツウィは韓国のアイドルなのになぜ韓国人はツウィを守ってあげないのか、という意見もあった。

 この過程でJYPのホームページはハッカーからDDoS攻撃を受けてダウン。1月18日になってもホームページにアクセスできない状態が続いている。

 朝鮮日報や韓国日報、聯合ニュースなどによると、台湾・民進党の蔡英文主席は総統への当選が確実となった直後の記者会見で、ツウィについてふれた。 「この2日間、あるニュースが台湾社会を揺るがした。韓国で活動する16歳の台湾出身の女性芸能人が、中華民国の国旗を持ったせいで抑圧された。この事件は党派を超越して台湾人民の公憤を呼び起こした」 「この事件は私に、国家を強くし、外部に対して一致団結させるのが次期中華民国総統の最も重要な責務であるということを悟らせた」 「国家の国民が国旗を手にするのは誰もが尊重すべき正当な権利である」 「(中国の)抑圧は両岸の安定した関係を破壊する」

ツウィが出演する広告を“自粛”

 複数の韓国メディアは18日、次のように報道した。 「『ツウィがあまりにも不憫。台湾人のアイデンティティとプライドを傷つけられた』として中国に反感を持つ若者が増え、台湾の独立を支持する民進党への票が増えた。このため蔡氏は当選した」 「世論調査の結果、ツウィの謝罪動画を観て民進党に投票した台湾の若者は134万人以上、得票率が2%ほど上がった」

 韓国の通信キャリアであるLGU+は、ツウィが出演するオンライン広告の放映を中断した。LGU+は、中国で問題になっているアイドルを、同社が販売する中国メーカー製スマートフォンの広告には起用できないと判断し、一時中断すると発表した。この広告は華為技術(ファーウェイ)製のスマートフォン「Y6」を対象にしていた。ツウィを起用したことがある化粧品会社も、「ツウィは弊社の公式モデルではない」と中国のSNSに発表し、中国ネットユーザーの攻撃を回避しようとした。

ツウィに謝罪させたのは人権侵害

 一部の韓国メディアは一連の騒動を批判した。「ツウィの何気ない行動を政治問題にまで飛躍させた中国のネットユーザーも、自分の知名度を上げようとSNSでツウィを攻撃した台湾の芸能人も、政治にツウィを利用しようとする台湾の蔡氏も、ビジネスばかり考えすぐ中国に謝罪した韓国の芸能プロダクションも問題があるのではないか。ツウィを盾にして後ろに隠れたMBCの番組スタッフを批判する声も大きくなっている。もっと懸命に対処できないものか」。

 韓国の芸能プロダクションは韓流をアジアに広めるため、「現地化」という名目で中国や東南アジア出身の少年少女をスカウトして韓国でトレーニングし、韓流アイドルとしてデビューさせている。しかし韓国の芸能プロダクションは今まで、アジアでアイドルを売り込むことばかり考えていた。歴史や伝統文化を学び、その上でコンテンツを制作し、マーケティングすることを疎かにしていた。これはツウィではなく、韓国の番組制作スタッフや芸能プロダクションが無知を反省すべき騒動であった。

 韓国内の外国人労働者や国際結婚で韓国にやってきた外国人女性を支援する韓国多文化センターは1月18日、「16歳の少女に謝罪を強制したことは、人権侵害に当たる」としてJYP社とパク代表を国家人権委員会に提訴する方針であると発表した。同センターは、ツウィの騒動をきっかけに、韓国で働く未成年外国人アイドルの労働環境について調べるよう検察に要求するという。JYP社は、謝罪はツウィの両親と相談した上で行われたことだったと釈明している。ツウィは韓国内での芸能活動は続けている。

北村記事

1月16日に投開票が行われた台湾の“総統・副総統”並びに“立法委員(国会議員)”のダブル選挙では、野党の“民主進歩党”(略称:民進党)が与党の“中国国民党”(略称:国民党)を圧倒して勝利した。

投票への熱意は薄れた?

 総統選挙は、有権者数1878万2991人に対して投票者数1244万8302人で、投票率は66.27%で史上最低であった。総統選挙の投票率は、第1回(1996年):76.04%、第2回(2000年):82.69%、第3回(2004年):80.28%、第4回(2008年):76.33%、第5回(2012年):74.83%と推移して来た。第6回となる今回の投票率は前回の第5回よりも8.5%も下がったが、投票率は2000年以来回を重ねる毎に低下しているのが実情である。今回投票率が大きく下がった背景には、国民党の現職、“馬英九”総統による失政や中国への接近姿勢が国民党に対する国民の強い反発を呼び、民進党の圧倒的な優勢が早くから予想されていたことから、投票への熱意が薄れていたことも影響したかもしれない。

 今回の総統・副総統選挙では、民進党候補の“蔡英文”・“陳建仁”(得票数:689万4744票、得票率:56.12%)が、国民党候補の“朱立倫”・“王如玄”(得票数:381万3365票、得票率:31.04%)、“親民党”候補の“宋楚瑜”・“徐欣塋”(得票数:157万6861票、得票率:12.83%)に大差で勝利した。国民党候補と親民党候補の得票を合算しても539万票余りで、民進党候補の689万票余りとは150万票もの差があり、蔡英文・陳建仁の圧勝であった。

 また、立法委員選挙でも、民進党の躍進は目覚ましく、前回(2012年)の議席40を28議席増やして68議席とした。これに対して国民党は前回64議席を29議席減らして35議席に転落した。中国とのサービス貿易協定反対に端を発した“太陽花学運(学生ひまわり運動)”から派生した新党の“時代力量(時代の力)”は5議席を獲得、親民党は前回同様に3議席に留まった。党派別の得票率は、民進党:45%、国民党:39%、時代力量:3%、親民党:1%であり、民進党と国民党の差はわずか6%であったが、国民党は地方区で大敗したために、議席を大幅に減らしたのだった。<注1>

<注1>立法委員選挙は地方区と比例区に別れているが、比例区の議席は党派別の得票率で配分される。今回の議席配分は、民進党:18議席、国民党:11議席、時代力量:2議席、親民党:3議席であった。

さて、選挙前日の1月15日の夜、韓国の芸能事務所「JYPエンターテインメント」(以下「JYP」)が、同事務所所属の女性アイドルグループ「Twice」のメンバーである台湾出身の“周子瑜(チョウ・ツウィ)”の動画をYouTubeに配信した。Twiceは2015年5月に開始されたオーディション番組を通じて、同年7月に選出された9人で編成された女性アイドルグループで、韓国人5人、日本人3人(モモ、サナ、ミナ)と台湾出身の周子瑜(芸名:ツウィ<Tzuyu>)で構成されている。

 周子瑜は1999年6月14日生まれの16歳、出身は台湾の“台南市”。彼女は13歳で故郷の台南市を離れて韓国へ渡り、タレント養成所で学んだ後に、16歳でTwiceの最年少メンバーとして選抜されたのだった。また、周子瑜は米国の映画情報サイト「TC Candler」が発表した「2015世界で最も美しい顔100人」の第13位にランクされている。ちなみに、これにランクされている日本人は4人(石原さとみ、桐谷美玲、島崎遥香、佐々木希)で、その最高は第19位の石原さとみである。

「台湾独立支持者は閉め出せ」

 ところで、Twiceは結成された2015年7月から芸能活動を開始した。そうした活動の中で、あるテレビ局のバラエティ番組に出演した際に、周子瑜は自分が台湾出身であることを示す“中華民国”の国旗である“青天白日満地紅旗”と韓国の“大韓民国旗”の2本の小旗を手にして、小さく振りながら歌ったことがあった。当然ながら、その時、他のメンバーも大韓民国旗と日本国旗の小旗をそれぞれ手にしていたはずだが、この青天白日満地紅旗がいけなかった。

 2016年1月8日、台湾出身ながら現在は中国大陸で活躍する男性歌手“黄安”がインターネットの“微博(マイクロブログ)”に「テレビ番組の中で台湾の青天白日満地紅旗を打ち振る周子瑜は台湾独立支持者だ」と告発した。この告発を見た中国のネットユーザーたちは、台湾独立支持者はけしからんとして、そんな周子瑜がメンバーとなっているTwiceには中国で芸能活動をさせるなとか、Twiceを中国から閉め出せと騒ぎだしたのだった。

 こうした中国のネットユーザーの動きに慌てたのがJYPだった。大事な顧客である中国からTwiceが締め出されるようなことになれば、稼ぎが大幅に減る。それにはどうすればよいのか。Twiceのメンバーに出身国の国旗を持たせることは、恐らくJYPが考えたものだろうが、そんなことは構っていられなかった。そこで、わずか16歳の周子瑜に「言うことを聞かないならTwiceを辞めてもらうしかない」と因果を含ませて、周子瑜の動画を撮影したのだろう。

 事前の説明が長くなったが、その動画とはどのような内容なのか。画面には無造作にまとめた髪を左側に垂らし、黒色の丸首セーターを着た周子瑜の上半身が灰色の壁を背景に映し出される。周子瑜の表情は硬く、心労からかやつれ、美しいその顔は曇って見える。周子瑜はやおら口を開く。「皆さん、今日は。私は皆さんにお話しがあります」。こう言うと、周子瑜は正面のカメラに向かって深く頭を下げて一礼した。頭を上げた周子瑜は1枚の原稿を取り出すと、中国語で次のように読み上げたのだった。

タレントと社長が謝罪

 「皆さん、今日は。私は周子瑜です。すみませんでした。もっと早く謝らねばならなかったのですが、現在の状況にどう対処すればよいか分からず、今まで皆さんに直接対面する勇気がありませんでしたので、今になってしまいました。中国はただ1つであり、“海峡両岸(台湾海峡の両側)”は一体です。私は終始自分が1人の中国人であることに誇りを感じています。私は1人の中国人として国外で活動しているのに、私の言行上の過失により、会社ならびに“両岸(中国と台湾)”のネットユーザーの感情を傷つけてしまったことを、非常に申し訳なく思うと同時にとても恥じ入っています。私は当面中国における全ての活動を停止することを決定しました。真摯に反省します。改めて皆さんにお詫びします。ごめんなさい。」

 こう述べると周子瑜は再び頭を垂れてお辞儀をした。頭を上げた彼女はぐっと口元を引き締めていたが、そこには無念さがにじみ出ていたように思えたのは、筆者の思い込みか。

 これに続いて、JYP社長の“J.Y.Park(朴軫永)”が同社のミニブログに次のような中国語の文章を発表した。

 「皆さん、今日は。私はJ.Y.Parkです。

 先ず初めに、中国の友人たちを傷つけてしまったことに対して衷心よりお詫び致します。同時に、我が社の社員、ツウィ(周子瑜)および私自身が何も考えずに今回の事件を起こしてしまったことに対して重く、深く後悔しています。このことに対して私は再度深くお詫びいたします。

 今回の事件を通じて、私は1つの国家と協力するにはその国家の主権、文化、歴史および国民感情を尊重しなければならないことを深く体得しました。これら全ては我が社および我が社所属の芸人に非常に大きな教訓を与えました。今後、私たちはこの種の事件を決して発生させないことを固く誓います。

 私は改めて私、我が社および所属の芸人を一貫して支援いただいている中国のファンの皆さまに衷心からのお詫びを申し上げます。私たちは皆さまを失望させ、皆さまの心を傷つけました。皆さまを傷つけたことを挽回し、皆さまの支持に報いるため、我々が努力を続け、中韓の友好と両国間の文化交流に貢献する所存です。

 過去数日間、ツウィ自身も感じるところ多く、同時に反省しています。彼女は13歳で故郷を離れて韓国へ来ました。私および我々の会社がツウィの両親に代わって彼女を育成することができなかったことは、私と会社の大きな誤りでした。我々はツウィの中国での活動を当面停止し、今回の事件で影響を受けた全ての関係者と今後の事を適切に処理いたします。」

 上記から分かることは、JYPが事件の責任を全て周子瑜に押し付け、彼女を犠牲にすることで事件を引き起こした責任を免れようとしていることである。台湾と中国の複雑な関係に思いを至らせることなく、何も考えずに、周子瑜に青天白日満地紅旗を持たせたのは、他ならぬJYPのスタッフだったはずだが、厚顔にも周子瑜の教育を怠ったことに原因があったと述べるに至っては、開いた口が塞がらない。

飛行機でバイクで高速鉄道で急遽、投票へ

 さて、周子瑜の動画を知って怒ったのは台湾の人々であった。韓国のテレビ番組で台湾出身の周子瑜が祖国である中華民国の青天白日満地紅旗を手にすることが、どうしていけないことなのか。番組で周子瑜に青天白日満地紅旗を持たせたのはJYPのスタッフであるはずなのに、わずか16歳の周子瑜に全ての責任を負わせ、「中国はただ1つ」と言わしめた謝罪動画をYouTubeで配信するとは、周子瑜がかわいそうなだけでなく、台湾および台湾人を侮蔑した行為であると考えたのである。これは台湾の人々のナショナリズムを強く刺激した。

 本来ならば16日のダブル選挙には行かない積りだった人々が、周子瑜の動画を知って勇んで投票所へ駆けつけたのだった。彼らは誰もが中国と一線を画する民進党に投票した。

 日本に留学中のある学生は、動画を知ると早朝5時50分発の飛行機に飛び乗り“台北市”へ戻って投票を行ったという。また、台北市内に住む若者は、動画を見ると即座にオートバイで南部の実家へ向かい、本来予定していなかった投票を行った。台北市内の某氏は動画を知ると、投票するために実家のある“金門県”<注2>へ帰ろうとしたが、台北市からの飛行機チケットが取れなかったので、高速鉄道で南部の“高雄市”へ移動し、高雄市から飛行機で金門県へ帰り投票を行った。

<注2>中国福建省“厦門(アモイ)市”の対岸に所在し、台湾が管轄する金門島。台湾の行政区分では福建省金門県。

 これらは代表的な例に過ぎない。周子瑜の動画に関するニュースを知って、当初は投票を予定していなかったにもかかわらず、急きょ投票に出向いた人たちが、台湾全土にどれほどいたのかは分からない。しかし、それが民進党の勝利に大きく貢献したことは否めない事実のようである。

中国官営メディア「人民日報」海外版に属する“微信(ウィーチャット)”の「“侠客島”」は、1月17日付の「ネットユーザーが周子瑜を討伐するのは、ポピュリズムの狂喜」と題する文章を発信した。同文章は中国で初めて中国メディアが台湾芸人の周子瑜事件に絡み彼女の活動を禁止する措置を取ったことを認めたのである。すなわち、歌手の黄安が周子瑜を台湾独立支持者だと告発したのを受けて、中国メディアは一斉に反応した。周子瑜が出演した北京衛星テレビと安徽衛星テレビの番組は周子瑜の名前を削除したし、“華為(ファーウェイ)”ブランドの携帯電話を販売する韓国の代理店は、周子瑜とのCM契約を解除したのだった。また、同文章は同時に、周子瑜事件が発酵して大きなものとなった結果、多くの“神転折(奇跡的な転換)”が生じ、誇張なしで、民進党に50万票の増大をもたらしたと述べたのである。

「50万票」の意味

 1月17日付で“米国之音(Voice of America中国語)”が報じたところによれば、ニューヨーク台湾商業会議所の会長“李金標”は、台湾のダブル選挙で民進党が圧勝したことについてインタビューを受けて、周子瑜事件は民進党に50~100万票をもたらしたと述べた。李金標は、「中華民国の国旗を持てば、誰でも台湾独立支持者になるのか。周子瑜に対する謝罪の強要が、ネットを通じた投票の呼びかけを生み、台湾の若者たちの大量動員につながった。その根底にあるのは、反感である」と述べた。

 一方、1月17日付の中国メディアは、周子瑜事件はいずれかの政治勢力の挑発によるものであると論じ、周子瑜は「罪のない少女」であると報じた。また、国営テレビ“中央電視台(中央テレビ)”は周子瑜を含むTwiceの出演番組を放映した。Twiceの中国での活動が早々に解禁となったのは、JYPの戦略が功を奏したと言えるのだろうが、JYPが周子瑜の心に残した傷は深い。

 上述した周子瑜事件がダブル選挙において民進党の圧倒的勝利に大きく貢献したことは間違いのない事実であろう。但し、周子瑜事件が民進党にもたらしたという50~100万票を差し引いたとしても、民進党の得票数は国民党の得票数を大きく上回っていた。それほどに、台湾の有権者は過去4年間の馬英久総統および国民党による執政に大きな不満を感じていたのだ。周子瑜事件からも分かるように、次期総統となった蔡英文女史にとって対中関係の舵取りは極めて困難なものとなることが予想されるが、民主選挙で民意により圧倒的勝利を収めたことが、蔡英文総統にとって大きな心の支えとなることは間違いない。

1/17朝日新聞デジタル『日米にも「ドアは開き続けている」 AIIB総裁が会見』と1/18ZAKZAK 田村秀男『AIIBに参加すれば中国リスクに取り込まれる 韓国には「奉加帳」が回ってきた…』について

中国が如何に経済的に苦境にあるかを表す記事です。韓国も中国の尻馬に乗ったツケが回ってきたという事です。事大主義の国、蝙蝠人間ですから、米中共に信頼されないでしょう。愚かですからそこまで気が付きません。日本は中韓とは『非中韓三原則』を貫いた方が良いです。

金立群は安倍首相の「対話のドアは常に開いている」をもじってAIIBに日米が入ってほしいと訴えましたが、会計処理が不透明な銀行に出資するのは愚かの極みです。中国企業は財務諸表を3通りも作る国です。賄賂も当たり前。

いよいよ人民元の暴落が秒読みになって来たという所でしょう。FRBの利上げがあれば、キャピタルフライトが起きるでしょう。米国の覇権に中国は軍事・経済面で挑戦してきている訳ですから、米国は戦争をしないで相手を潰すことを考えるでしょう。中国の外貨準備高は「昨年末約3・3兆ドルだが、対外負債約4・4兆ドル」と記事にはあります。人民元が暴落すれば対外負債の人民元換算は増えることになります。

朝日記事

Jin Liqun talking about AIIB

就任後初の記者会見に臨む金立群・アジアインフラ投資銀行(AIIB)初代総裁=北京市内

 アジアインフラ投資銀行(AIIB)の金立群・初代総裁が17日、北京市内で就任後初めて記者会見した。透明性や開放性、独立性といった点で「最高基準の機関にする」と強調。「中国主導」の色が強くなりすぎることを避け、新銀行に距離を置く日米などにも参加を促す考えだ。  金氏は前日に始まったAIIBの設立総会で総裁に選ばれたばかり。「無駄がなく(lean)、清潔(clean)で、環境に優しい(green)」を掲げ、「実行力を伴う21世紀型の国際開発銀行にする」と語った。官僚的な組織の非効率さなどを指摘される既存の国際機関の欠点を乗り越えることで、存在感を発揮したい考えだ。  AIIBには日米などが参加を見送っている。金氏は「ドアは開き続けている」として、引き続き、参加を歓迎する考えを示した。国籍を問わず専門家をネットで公募し、「その採用責任者も中国籍ではない」と、開かれた機関であることをアピールした。

ZAKZAK記事

日米不参加のままアジアインフラ投資銀行(AIIB)が開業した。日本では昨年前半、朝日新聞や日経新聞などメディアの多くが「バスに乗り遅れるな」とばかりに参加論の大合唱だったが、今では静まり返っている。バスに乗ると中国リスクに取り込まれることが、明らかなのだ。  好例が韓国である。中国市場シェアほしさのあまり、米国の反対を押し切って参加したのだが、中国のバブル崩壊と安値輸出攻勢のあおりで韓国産業が痛んでいるばかりではない。AIIBは当面、15億ドル以上の融資を計画しているが、原資が要る。アジア開発銀行のように、債券を国際市場で発行するのだが、米国の債券格付け機関はジャンク(くず)債並みの信用度しか認めないので、北京のメンツ丸つぶれである。そこで、AIIBは縁故債引き受けを韓国に要請している。  AIIB出資比率ではインド、ロシア、ドイツが韓国を上回るし、欧州最大の国際金融センターを持つ英国もメンバーだ。だが、各国はプロジェクトこそ欲しいものの、返済リスクの大きい融資に応じるのは、割に合わないから、拒否しているのだろう。  AIIB最筆頭株主の中国はどうか。事実、金立群AIIB総裁は以前に、「中国国内で200億~300億ドルを低金利で調達できる」と断言した。ならば、韓国に「奉加帳」を回さなくてもよい。韓国は外貨準備に不安を抱え、日韓通貨スワップ協定の復活を水面下で働き掛けている。  実は中国自体、それどころではない。人民元安とともに巨額の資金流出が加速している。外準は昨年末約3・3兆ドルだが、対外負債約4・4兆ドルを下回り、中国から外資が一斉に引き揚げると底を突く。

残る手段は人民元の活用だが、株式など金融市場はがんじがらめに規制され、公安当局が情報統制するので、中国人ですら元建ての資金や資産に投資したがらない。最後の一手は、習近平指導部による強権の対外発動だ。東南アジア各国などに元建て融資を受け入れさせ、中国企業がインフラを受注する。その結果、起きるのは乱開発と環境破壊だ。アジアは元経済圏に組み込まれ、対中依存が強まり、外交・安全保障上でも立場が弱体化する。

 欠陥だらけのバスは党の強権で何とか始動しても、必ず暴走する。制止に向け日本は米国と結束すべきだ。

1/18、19、20日経『総統選後の台湾』について

「台湾人意識」は高まっていますが、本文中にありますように、経済がうまく行かなければ、「やはり中国とくっついていた方が良かった」となりかねません。ただ、中国経済は低迷と言うか崩壊寸前です。中国に擦り寄ってもいいことはないでしょう。資源国経済がガタガタとなり、中韓が日本と通貨スワップを協議するくらいですから。中韓の経済がうまく行っていればスワップの話は出て来ないでしょう。日本政府は敵国を助けないように。交渉ではバーを高くして纏まらないようにすれば良い。それこそがタフネゴシエイターでしょう。

TPPに反対する人はどこにでもいます。米国でも日本でも。大きく捉えれば、関税をできるだけ低くして国際分業した方が効率的だし、一国の富も増えます。win-winの関係になります。経済制裁を受けている(た)北朝鮮やイランが貧しいのは貿易ができない(かった)ためです。ただ食糧安全保障の観点から、対策は必要でしょう。

これからは台湾国民の成熟度が試されると思います。中国に隙を見せれば乗っ取られます。何せ南シナ海や東シナ海に領土的野心を持ち、またギリシャのピレウス港も買収しました。経済面だけでなく、軍港として使うつもりです。世界を中国の害毒に塗れさせようと言う魂胆です。やはり、敬して遠ざける方が賢明かと。台湾は自由主義諸国と共に手を携えて、一緒に発展していければ良いと思います。

記事

1/18記事『高まる「台湾人意識」』 

台湾独立志向を持つ民進党が16日の総統・立法院(国会)選挙で大勝し、5月に蔡英文政権が発足することになった。8年ぶりの政権奪回を実現した背景には、若者を中心に広がった中国への警戒感がある。ただ、台湾住民も中国との対立は望んでいない。中国との対話継続や台湾経済の活性化など、課題に挑む蔡次期政権を展望する。

台湾北部、新竹市の清華大学に通う頼郁棻さん(20)は16日、民進党の蔡氏に投票した一人。「投票できる日がほんとに待ち遠しかった」と笑顔で語る。

 2年近く前の2014年3月。頼さんは台北市中心部の立法院に立てこもっていた。中国とのサービス貿易協定の発効に反対する「ヒマワリ学生運動」は立法院への乱入騒ぎに発展し、3週間あまりにわたり立法院を占拠した。事件は台湾世論にも大きな影響を与え、中国への警戒感が高まるきっかけになった。

 頼さんは「台湾は中国とは別の国。国民党のやり方では経済的にのみ込まれてしまう」と話す。

 投票日直前、台湾の若者の意識を逆なでする事件が起きた。台湾人アイドル、周子瑜さん(16)が韓国のテレビ番組で(台湾当局が名乗る中華民国の)「国旗」を振り、中国のネットで「台湾独立派だ」との批判が強まった。中国での芸能活動への影響を懸念した周さんは15日、「私は中国人であることに誇りを持っている」との釈明に追い込まれた。

 自分は中国人でなく台湾人――。政治大学が15年7月に発表した調査では、自分が「台湾人」だと思う人が59%と過去最高水準だった。「台湾人であり中国人」は33.7%、「中国人」は3.3%まで減った。

Opinion poll about Taiwanese-2

 台湾では戦前からの台湾住民とその子孫を指す「本省人」と、国民党と共に戦後、台湾に逃れた中国大陸出身者とその子孫である「外省人」の対立が長く続いたが、若者世代には「台湾人」という意識が強まっている。初の総統直接選挙から20年。有権者にも民主体制で生まれ育った世代が増え続けている。

 

 

 

Lin Shaochi

街頭で支持を訴える「時代力量」の候補者、林少馳氏(台北市)

 今回の選挙ではヒマワリ学生運動のリーダーらが設立した新政党「時代力量(時代の力)」が立法院選で5議席を得た。

 同党は民進党よりも独立志向が強く、台湾の主体性を重んじる。台北市で出馬した林少馳さん(34)は、航空会社に勤務していた香港で民主化デモの挫折を目の当たりにし「きょうの香港はあすの台湾だ」との危機感を強めたという。自身は落選したものの「既存政党と違った声を上げられた」と手応えを語る。

 蔡氏は16日の記者会見で「我々は民主的な選挙を通じ、世界に民主国家の誇りと台湾人の栄誉を再び示した」と語る一方で、「両岸(中台)関係の平和で安定した現状を維持する」との現実路線を改めて強調した。

 台湾独立を党綱領に掲げる民進党に対し、中国は「中国と台湾は不可分の領土である」ことを意味する「一つの中国」を認めるようけん制を続けている。台湾住民の対中警戒感が強まるなかで、どう中国と折り合い、現実的な関係を形作っていくか。蔡次期総統に課された大きな課題になる。

1/19記事『米は、現状維持望む』

maneuver of attack agaist Taiwan 中国の国営中央テレビが2015年7月初めに放送した軍事演習の特集。番組が始まって約4分後のことだった。内モンゴル自治区の訓練基地で、土ぼこりの中を前進する歩兵の左前方に一瞬、台湾の総統府にうり二つの建物が映った。

「選挙へ圧力か」

 「総統選挙への圧力ではないか」。番組内容は台湾でも大きく報道され、改めて台湾住民の対中警戒感を呼び覚ます結果となった。

 中国が08年以降、融和的な国民党・馬英九政権の下で台湾との交流を深めてきたのは、将来の統一につなげる環境づくりが狙いだ。蔡英文次期総統が、民進党が党綱領に掲げる通りに台湾独立に動けば、武力統一する選択肢を捨ててはいない。

 しかし、中国が直ちに強攻策に転じるとの見方は少ない。呉釧昼・民進党秘書長(幹事長)は「中国の習近平国家主席の台湾政策には柔軟性がある」とみる。根拠は中国は総統選が事実上始まった15年春以降も、台湾との様々な協定の協議を続けたことだ。

 15年11月には習氏自らが初の中台首脳会談に応じる積極性をみせた。対中政策の担当閣僚の経験もある呉氏は「交流のある学者などを通じ、習指導部と意思疎通したい」と意欲を見せる。

 中国社会科学院台湾研究所の彰維学所長助理も、習氏の台湾政策を「(台湾は中国の一部だとする)『一つの中国』の立場は決して揺るがないが、一方で包容力がある」と表現する。個別の選挙に一喜一憂せず、長期戦を覚悟し、硬軟両様で台湾統一を目指す構えだ。

 台湾は「海洋強国」を目指す中国が太平洋に進出するルートのど真ん中に位置し、つばぜり合いを続ける米中のはざまで地政学的な重要性を増している。台湾を巡るオバマ政権の本音は2つの動きに象徴される。

 「台湾海峡の平和と安定は米国の基本的な利益で、緊張緩和と関係改善の動きを歓迎する」。アーネスト米大統領報道官は昨年11月、中台首脳会談が固まった直後の記者会見でこう表明した。

 そのわずか1カ月半後。オバマ政権は「台湾が十分な自衛能力を維持することを支援する」(アーネスト報道官)として、4年ぶりとなる台湾への武器売却を決めた。台湾が求めていた「F16C/D」戦闘機など新型の軍用機や兵器は見送るなど中国への一定の配慮を見せながらも、総統選前の武器売却を決めた米国。中台融和を評価するものの、統一は支持しておらず、「現状維持」を望んでいる。

限られる選択

 蔡氏は18日、台北市内の民進党本部を訪れた米国のバーンズ前国務副長官と会談した。「オバマ政権の特使」(台湾紙)とされるバーンズ氏に、蔡氏は「米国とは緊密な友好関係を維持したい」「地域の平和と安定を維持する責任を果たす」と強調した。中台関係が念頭にあるのは明らかだ。

 蔡次期政権が中国と対立すれば、台湾海峡は再び緊張し、東アジアの安全保障体制にも大きな影響が及ぶ。「現状維持」を打ち出した蔡氏が、米中のはざまで選択できる道は限られている。

1/20記事『経済「脱・中国依存」を模索 TPP参加、課題山積み』

台湾有数の観光地である東部の花蓮県。2015年12月下旬、中国人観光客の急増で潤っていたはずの観光スポットは静まりかえっていた。

Cai's speech about TPP

蔡主席(中)は「TPP参加は急務だ」と主張してきた(16日、台北)

 

 

 

export from Taiwan「12月は中国人がぐっと減った。売り上げも4割減」。花蓮駅前のあん入り餅屋の店員、李鈺婷さん(21)は不安げに語る。玉石(宝石)博物館も見学者は11月の半分。「総統選挙前だからしかたない」。受付の男性はあきらめ顔だ。

 馬英九現政権は中国の成長力を取り込もうと、08年の就任直後に中国人の台湾観光を解禁した。15年1~11月は前年同期比2%増の316万人となり、台湾を訪れる観光客の47%を占めた。

中国向け4割に

 観光業に欠かせなくなった中国人観光客は、12年の総統選直前にも急減したことがある。「国民を民主主義に触れさせたくないためだ」というのが台湾側の見方だが、「中国政府の出方次第で観光業が左右される」との不安も強まっている。

 台湾と中国の経済的な結びつきが強まったのは、実は民進党政権時代の00年代だ。台湾の輸出額に占める中国(香港含む)の比率は07年に初めて40%を超えた後も、40%前後で推移しており「中国がくしゃみをすれば台湾が風邪をひく」傾向が強まっている。

 実際、15年は中国の景気減速や中国企業との競争激化から対中輸出額は前年比12.3%減となり、15年の域内総生産(GDP)成長率は6年ぶりの低水準となる1%前後になったもようだ。

 5月に総統に就任する民進党の蔡英文主席は「脱・中国依存」の切り札として、「台湾経済にとって環太平洋経済連携協定(TPP)参加は急務だ」と何度も主張してきた。台湾は中国と実質的な自由貿易協定を締結したものの、多国間の枠組みには交渉にさえ参加できていない。TPP参加をテコに中国以外の国との貿易を拡大するのが狙いだ。

 しかし、道のりは平たんでない。

 「成長促進剤(ラクトパミン)を使った米国産豚肉の輸入解禁には絶対反対だ」。台湾南部の屏東県養豚協会の鍾乃先・副理事長(66)は約1500頭がひしめく豚舎の前でまくしたてた。

新産業育成急ぐ

 台湾は豚肉に平均12.5%の関税を課しているうえ、ラクトパミンを使った豚肉の輸入を禁じている。米政府はラクトパミンを使った豚肉の輸入解禁を強く求めており、台湾のTPP参加の「絶対条件」ともされる。食の安全に対しては消費者の関心も高く、調整は容易ではない。

 主力だったIT(情報技術)産業に陰りが出るなか、新産業の育成も喫緊の課題になる。蔡氏が掲げるのは精密機械やバイオテクノロジーなど5分野を戦略的に育成する計画。海外からの投資も幅広く呼び込みたい考えだが、25年の「原発ゼロ」を掲げる蔡氏に対し、産業界からは電力不足を懸念する声もあがる。

 今回の総統選で蔡氏が大勝したのは、対中警戒感の高まりとともに、低迷する経済に不満が強まっていたことが大きい。早期に成長率を押し上げる青写真を描けなければ、政権交代の熱気は不満に変わる。

 山田周平、吉野直也、山下和成が担当しました。

邱 海涛著『ついに中国で始まった大崩壊の真実』について

この本の著者邱海涛氏は上海近郊在住とのこと。ここまで書くと朱建栄のように拘束されないか心配になります。香港のコーズウエイベイの書店の5人が失踪したことを見ても、党・政府批判者はどこにいようとも(外国であっても)安全ではありません。

如何に中国の経済が弱ってきているか中国人の口から出てきました。生産年齢人口でいえば、中国は「未富先老」です。社会保障も未整備で、日本人と結婚して一族を優雅に過ごさせようと思っている中国人は沢山います。日本人男性は引っかからないように。

ア●兄弟で政治同盟を結ぶとは日本人には想像もできない発想です。流石中国人です。小生が中国に在勤していた時には聞いたことがなかったです。共産党の闇が深いという事でしょう。

日本にいる中国人は真理、歴史の真実にもっと目を向けるべき。そうでなければ日本の左翼・リベラルと同じく「知的誠実さに欠ける」と言われます。嘘つき共産党の刷り込みをまだ信じますかと問いたい。

でも、中国人は韓国人同様「息を吐くように嘘をつく」民族ですし、本文にあるよう非寛容です。謝罪しても許す訳がありません。独仏がEUを作れたのは仏の寛容があったからです。中国にそれを期待しても無理と言うもの。「話せば分かる」と言って射殺された日本の首相もいました。Seal’sや日本共産党、社民党、民主党は中国の軍事拡張、北朝鮮の核実験を止めさすように話ししに行くべき。日本は今、戦争を抑止する戦力を持とうとしているだけです。これをしなければ却って戦争が起きやすくなります。まあ、彼らの祖国は中国大陸か朝鮮半島なのでしょうけど。日本人のパスポートを返還して、祖国の人になったらよい。でなければスパイでしょう。日本人も彼らの言説にいつまでも惑っていたのではどうしようもない。既存のメデイアを読む・見るだけではデジタル・デバイドになります。特に左翼新聞は取らないことをお勧めします。

それと、本文にあります何建明の『南京大虐殺全記録』を調べて、中国の記憶遺産登録の反証としてはどうか。

内容

P.12~13

経済崩壊で好戦的気運が高まる中国

現在の中国経済の衰退ぶりは、想像を超えるほど深刻である。これまでなら考えられないような事態が頻発するようになっている。

上海株が2014年末ごろから2 015年6月までのわずか6カ月で9割近くも急上昇したかと思うと、6月10日からの3週間で3割近くも暴落、時価総額で約400兆円分が市場から消えるという、パニック状態に陥った。

だが、その予兆は実体経済に現れていた。

たとえば、国有企業の中国鉄道総公司では2015年の初めに社員の賃上げが実施されたが、4月に入ってから東北3省の鉄道を管轄する瀋陽鉄道局に本社からの緊急命令が突然下った。その内容は、全社員の賃上げは直ちに中止。以降も賃上げは無期限に見送り。そして、すでに支払われた3カ月の賃上げ分は即刻、本社に返却せよというものであった(「中国経常報」20 15年5月1:日付)。

瀋陽鉄道局は28万人もの社貝が働いており、賃上げストップによる家族生活への悪影響が必至 だと思われる。ちなみに、瀋陽鉄道局の社員の平均給与は320 0元(約6万円)である。

賃上げストップの最大の原因は鉄道経営の不振である。中国鉄道総公司の統計によると、20 15年1〜3月期の貨物輸送量は8億673 9万トンで、前年同期比8971万トン減、下げ幅は9.37%にも及んだ。

そのうち、石炭輸送量は5億3621万トンで6割以上を占めるが、前年同期比5290万トン減、下げ幅は8 .98%であった。専門家は、中国経済の衰退や自然環境の保全の進行につれて、 石炭の消費量や輪送量がさらに減少する、と語る。これから1年のうちに瀋陽鉄道局の約半分の社員が解雇されると予測している。

2015年に入り、 とくに黒竜江省、吉林省、遼寧省の東北3省は、急ブレーキがかかっている中国経済の中でも、真っ先に総崩れになっていることがよく報じられている。

これまで東北3省は毛沢東時代の重工業の発祥地かつ拠点であり、新中国を支えてきたもっと も重要な生産基地であった。そこが経済崩壊を起こしている主な原因は、経済改革がほとんど進 まず、現在も計画経済が主流だということである。

2015年1〜3月期の東北3省の各GDP成長率を見ると、遼寧省は1.9%で全国の省で最下位、黒竜江省は4 . 8%で下から4位、吉林省は5 . 8%で下から7位というありさまである。

P.16~17

2007年の成長率14.20%に対して、200 8年は9 .64%に急落。それ以降、2009年は 9 .21%、2010年は10.41%、2011年は 9.30%、2012 年は 7 .76%、201316 年は7 .75%、2014年は7 .36%という減速ぶりであった。

2010年は上海国際博覧会が開かれたため、景気が刺激されて経済がいくらか好転したように見えたが、まもなく坂道を転がるように下落を続けた。

GDPとは、平たく言えば、全国における企業と個人が1年間で稼いだ収入ということである。 GDPの成長率が低下するということは、収入が減ることを意味する。

2013年6月には、銀行の「資金不足」が起きて大きなパニック状態となった。この金融不安は日本でも大きく報じられた。

6月20日、上海の銀行間取引金利である「SHIBOR」(Shanghai Interbank Offered Rate) が13.44%、瞬間風速的に30%台にまで急騰するという、最悪の事態が起こった。銀行では日々の業務に必要な資金をまかなうために、銀行同士が互いに短期的に資金を融通し合う什組みがあるが、上海ではこのときに適用される金利を「SHIBOR」と呼ぶ。これが急騰したのだ。 このことは各銀行の資金が不足し、破綻リスクが高まったことを意味する。 この前代未聞の金融騒ぎは以降、半年も続いた。

いったい、お金はどこに消えたのだろうか。不良債権が膨らみ、融資した巨額の資金が回収できなくなったからである。

9月には、金融危機の重大さを知った中央政府が各地に調査団を派遺し、実態調査に乗りだした。金融危機への対応策を講じようとしていたが、いまだに不良債権の実態はわからないままである。

2014年に入っても、暗い経済ニユースばかりが伝えられていた。 中国では、外資企業を除き、中国経済の富の90%は民間企業が創出している。その民間企業が集中し、中国経済の鍵となっているのが、浙江省の温州市である。「温州が動けば中国が発展し、温州が冷え込むと中国が衰退する」とまで言われるほどだ。

しかし、この温州市が2013年に入ってから急変し始めた。不動産価格が暴落したのだ。わずか数カ月で価格が半値を割り込むという急落ぶりだ。その理由は、製造業が不況に見舞われ、資金繰りに苦しみ、多くの企業が投資で買い溜めしていた不動産を安値で叩き売ったからである。しかも、買値を大きく下回ったため、銀行ローンの返済を放棄して夜逃げした持ち主が続出した。その数は1万5000件にも上ると伝えられている。巨額の負債を抱え、蒸発した者もいれれば、夫婦で自殺を図った者もいた。もちろん、担保の不動産を差し押さえた銀行も、買い手がつかず、価格の下落が止まらないため、不良債権が膨らんだ。

2014年6月に、生活秀集団、騰旭服飾など、温州経済を代表する大手民間企業13社が倒産し、中国経済の行方はさらに不安なものになった。

また、中国東北部で最大規模の石炭会社、龍煤集団が経営難に陥り、やむをえず給料を45日 ずつ支給する制度への移行を強いられた。

P.20~21

40年前の生活水準に戻る中国

2014年に、中国社会科学院が2011~30年における中国の経済成長率の予測デー夕を発表したことがある。それによると—、

  • 2011〜15年 8.0〜8.7%
  • 2016〜19年 5.7〜6.6%
  • 2020〜30年 5.4〜6.3%

中国経済は高成長時代に別れを告げ、中低速成長に入った。これは「新常態」(ニユーノーマル)と呼ばれている。いま、中国で流行っている経済新語である。 前記の数字よりさらに厳しい予測デー夕もある。

2014年10月20日に、コンフアレンスボード(全米産業審議会)は2020年以降、中国の経済成長率はわずか4%しかないというショッキングな予測を公表した。コンフアレンスボードはアメリカの民間経済調査機関の1つであり、アメリカおよび世界の経済動向分析、予測などを行い、数々の実績がある。 この成長率4%が現実の話となれば、中国は大変な状態に陥ることになるだろう。 貯蓄、投資、物価、就職、財政収支、国際収支、人民元為替、貨幣供給、預金利率など想像する以上の恐ろしい変化が中国の人々に襲いかかると思われる。

成長率4%といえば、先進国では高い伸び率である。先進国の多くは成長率が4%以下なのだから中国はそんなに焦る必要はないという声も聞かれる。

だが、先進国にはすでに社会インフラがよく整備されており、巨額の富の蓄積があり、福祉と社会保障が充実しているため、成長率が緩やかであってもさほど問題はない。しかし、中国はそうはいかないのだ。GDPが相当に上がらないと、社会福祉も国民生活への保障なども消えてなくなってしまうからだ。

かつては、そのために必要なGDP成長率は8%といわれ、「保八(8%を維持する)」が絶対条件だとされていたが、もはやそれを唱える政府関係者や学者はいない。無理だからだ。

平たく言えば、工場からの製品出荷が鈍り、デパートには買い物客の姿が見られなくなるということである。 生産も消費も激減する。成長率4%とは、40年前の生活水準に逆戻りするということを意味する。

中国政府は、自分たちは開発途上国で、国民1人当たりのGDPはかなり低水準にあると、主張 してきたが、それは本当だろう。中国の1人当たり名目GDPは2014年時点で7589ドル、日本の5分の1程度だ。「先進国クラブ」といわれる経済協力開発機構(OECD)の最低水準が1万ドルだから、まだまだ先進国には遠い。にもかかわらず、時間はあと5年しかなく、大不況はあっという間にやってくる。

P.24~25

②労働人口減による激震リスク

2つ目の重大事件は、2015年から中国の生産年齢人口が急減し始めることである。毎年約400万近くの労働力が失われ、経済発展に大きな打撃を与える。人件費の高騰が予想され、成長率の失速が避けられそうもない。

一人っ子政策のつけが回ってきたのが原因であろう。2014年から一人っ子政策が見直されたが、もう遅すぎるのは明らかである。これから20年間は逆転の望みがまったくない。

ここでユニークな数字を挙げてみよう。中国は毎年、「全国教育事業発展統計公報」を出しているが、それによると、1995年には小学校が67万校あったが、2012年には23万校にまで減った。44万校が廃校になったのだ。毎年平均2万6000校が閉鎖されている。一方、小学校の生徒数は1995年に2531万人いたが、2012年には1714万人にまで減った。817万人も減り、毎年平均48万人の生徒が消えている。

中国の労働人口の急減によって、住宅、生産、消費、貯蓄、税収、外資導入などの事情に、深刻な影響が及ぶのは間違いないであろう。

いままで中国は安価な労働力に頼って、経済を発展させ、多くの富豪を輩出してきた。だが、格安の労働力が失われると、ローエンド製造業のグレードアップができなくなり、中国製品の多くは国際競争力を失い、主力の輸出産業が不振に陥り、企業の破産が相次ぎ、中国経済は立ち行かなくなるであろう。

しかし、若者の減少によって暴動件数は急減するかもしれない。

P.60~61

氾濫するニセの外資企業

すこし前まで、中国の経済開発区は繁栄を極め、急速に発展する中国経済の象徴となっていた。 外国人投資家たちは中国へ視察に来るたび、必ずと言っていいほど、現地の政府関係者に経済 開発区の見学に案内された。優遇政策があり、インフラ整備が整い、ペンキ塗りたての新しい工 場建物が建っていて、豊富な労働力が随時供給される。決心さえしてここに来れば、利益倍増の 夢が実る。こんなぴかぴかのビジネス世界が描かれた。

それでは、経済開発区は、いまなぜ没落していったのだろうか。

原因はいろいろあるが、やはりひどいGDP依存症にかかっているため、正常な経済活動に歪みが出ていることが大きい。実績を粉飾するのは当たり前になっており、将来性や持続性のない外資企業の導入が盲目的に行われていた。

高汚染、高工ネルギー消費、かつ本国で禁止された生産品目を扱う外資企業が続々と中国に進 出してきた。結局、そのつけが回ってきて、やむをえず閉鎖や破産に追い込まれたのである。

加えて、ニセの外資企業が氾濫したことが大きい。たとえば、厦門のある民間企業は、もともと中国国内で汚水処理の設備を生産していたが、利益をあげられなかった。そこで、経営者は香港で会社を設立し、一夜にして香港商人に変身した。続いて、厦門にある.元の会社と新しい合弁会社を作り、開発区に入居した。こうして外資企業の身分になったことにより、工業用地、納税、銀行融資など、さまざまな優遇が受けられ、業務上の便宜も図られた。

それによりコスト減につながり、しばらくは儲かっていた。しかし、技術革新が進んでいなかったので、結局、市場競争に敗れて会社は破産した。

一方で、役人腐敗が深刻化しており、企業の正常な生産活動が脅かされているのも事実である。 1部の役人は企業に賄賂を強要し、あの手この手で企業から利益を吸い取った。

大連市にある某経済開発区に進出したある民間企業の話だが、2000万元で15へク夕―ルの土地使用権を取得した。しかし、そのためのコストは高くついた。役所の各部署の役人に400 万元を渡し、銀行から8000万元の融資を受け、さらに闇の金融組織から高い利息で2000 万元を借りた。

毎年の利息は1200万元で、政府関係者たちとの交際費を含めた支出は最低300万元もかかっていた。にもかかわらず、工場稼働から4年目になっても、年間売り上げは400万元にも 達していなかった。

社長は困りはてる毎日だが、将来いつ開発区が転売されて商業用地になるときに、土地がいい値段で売れれば……と僥倖をあてにしている。

地方の長官はこうした現状を知らないはずはないが、まったく対策がとられない。見て見ぬふりをしている者が多いのだ。自分の任期が終われば、厄介なところからさっさと脱出しようという、いいかげんな人間も多い。

P.114~115

中国での教育費は、普通の大学まで行かせる場合で約100万元(約1800万円)かかる。 夫婦の年収を12万元としても、その約8年分だ。日本に当てはめて考えれば、年収400万円の一般家庭で教育費が3200万円もかかることになる。

また、医療費については、中国では、「風邪くらいなら生活費を切りつめれば薬が買える。盲腸を手術するくらいの病気になると、親戚や知人から借金し治療費にあてるが、一生返済し続けなければならない。がん、糖尿病、肝臓病などの長期治療の必要のある重病にかかったら、医療費は絶対に払えないから自殺したほうが家族のためだ」という言葉がある。

2012年4月、河北省の農民が、病気で壊死しかかった右足をのこぎりで自力で切断するという事件があった。貧乏のため病院で手術する金がなかったからだ。このニュースに、国民の多くがショックを受けた。

国民の多くは二重の苦しみをなめさせられているのである。

このような状態にもかかわらず、絶対主義といわれる中国共産党の最高指導部が、なぜ国有企 業のずさんな経営に監督・管理を行わないのかといえば、中国の政治は既得利益集団の政治であり、それぞれの国有企業の裏には、必ず権力を笠に着る太子党や既得利益集団の存在があるからだ。

2014年12月に汚職容疑で逮捕された中国共産党中央委員会政治局元常務委員の周永康は石油業界を牛耳っていた影のボスであった。

彼は北京石油学院を卒業し、国内の油田の石油技師などを務めた後、1996年に巨大国有企業の中国石油天然気集団公司の前身である中国石油天然気総公司の社長となり、石油閥の中心的存在として巨大な利権を握っていた。

後に江沢民元国家主席に抜擢されて、党中央政法委員会書記として中国の公安・司法部門の頂 点にも立つなど、絶大な権力を手にしていた。彼が誰かに「死ね」と言えば、実際に、言われた者の命は翌日までもたないほどであった。

筆者の中国生活の体験からも、周永康は非常に恐ろしい存在で、彼が拘束されたというニユー スが正式に発表されるまで、誰もが彼のことについてはロを噤んでいた。うっかり悪口を言ったら、それが周永康や周囲の人間にどう伝わるかわからないからだ。その意味では、中国では恐怖政治がまだまだはびこっているのである。

周永康の失脚後、彼の腹心や徒党が100人以上も逮捕された。

P.196~199

個人塾すら開けない政治システム

このように、中国には役所も役人も多すぎるという現状だが、もちろん、これほどの役人がいなければ社会機能や経済活動が停止してしまうわけではない。逆に、役人たちが仕事を奪い合う現象が現れているのだ。

これは中国の社会システムを理解するうえで、非常に重要なポイントである。中国が「多頭管理社会」(管理•監督者が多い社会)だと呼ばれているのも、そのためである。

つまり、会社であろうが個人であろうが、団体であろうが、何か1つやろうとする場合必ず複数の管理部門の役人がやってくる。彼らにそれぞれ許可を取り、彼らの指導監督を受けなければならない。

筆者が遭遇したことはその一例だ。自分は文章を書くのが好きなのでこの特長を生かして家の近くで作文教室を開こうと思った。中国の大学入試科目には作文試験があり、それを苦手とする受験生が非常に多い。だから、商売として諸条件が整っているはずだと考えた。

しかし、実際に教室を開くための手続きの流れを調べたら、そう簡単には事業を立ち上げられないことがわかった。次のような3つの部門の許認可が必要だからである。

①民政局の許可。複数の人が集まるから、団体資格の審査が待っている。

②工商管理局の許可。ビジネス活動だから、会社の資本金などが調査される。

③教育局の許可。作文を受験生に教えるという仕事だから、教師の資格か問われる。

結局、作文教室の話はまもなく流れた。中国では基本的に、民間人経営の塾は認められないことになっている。日本では自営業として塾をやる場合、とくに手続きはいらない。毎年、収入の確定申告をすれば済む。

資本主義義の自由経済システムでは、きちんと納税すれば何をやるかはまったく個人の自由である。これに対して、社会主義の「権力者経済」システムでは、役人の顔色がビジネスの可否を決 める。

筆者はつくづく思うが、1民間人の塾までもが厳禁される国に、いったい「経済大国」と呼ばれる資格があるのだろうか。教育の範囲が制限されれば、人材の育成などできるはずがないではないか。おかしくてたまらない。

しかし、逆に考えてみれば、ある種の筋は通っている。それは経済が本当に自由化したら、役人たちはみな失業してしまう、ということだ。だから彼らにとって、「社会主義市場経済」は絶対に維持しなければならないのだ。

「多頭管理社会」は非常に害が多い。効率が悪いし、誰も責任をとらない。中国の発展が阻まれ る体制上の大きな欠陥の1つである。

中国語には、「中央指令不出中南海」という、非常によく知られた政治的言葉がある。中央政府の重大決定は紙上にとどまるだけで、人が中南海(共産党本部のこと)の会議室を出たら決定が直ちに無効となる、という意味の言葉である。要するに、誰も責任をもって決定事項を履行しようとしない、ということだ。

しかし、悪いのは下級の幹部たちではなく、この政府による管理体制そのものである。 先の塾開業の話を例にしてみよう。中央政府が民間に塾の経営を開放しようと決議したとする。 決定が「民政部j「国家工商行政管理総局「教育部」に伝わるが、3つの官庁とも何もしない日々が続く。リーダーがいないからである。3つの官庁とも同級の部門なので、誰が誰を指導するということはないのである。責任不明の状態が続いていれば、結局、ことはうやむやになってしまう。

これは1つの例だが、中国では基本的にこういう結果になることが多い。 また、このような状態で積極的に動けば、自分で自分の首を絞めることになる。いくら自分1 人で奮闘しても、他が動かなければ失敗は目に見えている。そして、その失敗の責任だけを押しつけられるからだ。だから、誰もが中央政府の決定に従おうとしない。現実はこの通りなのである。

P.234~237

中国ならではの「公共情婦」

中国腐敗役人のセックスパ夕―ンにはもう1つ、世界的に類を見ない特徴がある。それは「公共情婦」の存在である。

公共情婦とは何か。平たく言えば、腐敗役人の一味が1人の美人を共同で囲うということである。

腐敗役人たちは困っていない。むしろ金が多すぎて、どう使うか困っているほどだ。金で女を買いたければ美人がいくらでもいるが、彼らはなぜ公共情嫌が好きなのだろうか。その理由は、政治同盟を結成するためである。

中国腐敗役人にとって同じ女性と寝ることは、男たちが固い信頼関係を築き、心を1つに束ねるのにもっとも有効な手段となる。そのとき、セックスは単なる性的な快楽ではなく、ヤクザ世界の血の契りのようなものになるからである。

彼らは結束力を強め、互いに利用し合い、庇い合い、結託しながら政敵に立ち向かって戦い、 そして権力のネットワークを駆使して、政治上かつ経済上の最大利益を獲得しようとしているのである。だから、腐敗役人は「陰道党」(女性の陰部でつながった悪党グループ)とも呼ばれている。

李薇という美人がいた。公共情婦の第1号といわれているが、出身は不明だ。元ベトナム難民の子女という説もあれば、昆明市に戸籍がある女だという説もあった。だが、頭の回転が速く、気の強い男勝りの性格で、男の色欲を利用して自分が夢見る巨富の財を手に入れられることを誰よりもよくわかっていた。わずか10年で、普通の女から複数の中央政府の汚職高官が寵愛する公共情婦になった。

李薇を抱いた男には、周永康、薄熙来のほか、杜世成(元青島市長)、李嘉廷(元雲南省長)、 陳同海(元中国石油化工集団公司社長)、劉志華(元北京市長)、黄松有(元最高法院副院長)、 王益(元国家開発銀行副行長)、鄭少東 (元公安部部長助理)、金人慶(元財政部長)などの名があった。中国政界の腐敗ぶりが鮮明に露呈している。

李薇は2006年に逮捕されたが、起訴されずに2010年に突然、釈放された。そしてまもなく出国までも許され、以降は完全に姿を消した。周永康の極秘指令が出たためだと囁かれたが、腐敗役人の秘密を知りつくした女を海外へ逃がし、永遠に祖国に戻らせないほうが得策だったのだろう。

有名な公共情婦はほかにもたくさんいる。たとえば、湖南省某国有企業社長、蒋艶萍(湖南省籍、19 99年逮捕)、軍属歌手、湯燦(湖南省籍、2011年逮捕)、山西省某市委副書記、張秀萍(山省籍、2014年逮捕)、および山西省某市長、楊暁波(山西省籍、2014年逮捕)などだ。彼女たちは肉体を男に売ることによって、金と権力を手に入れた。

公共情婦として複数の高官の間を行き来している女は、連絡係のような存在だ。汚職役人の一味は、公の場で連絡し合うのは都合が悪いので、代わりに女が重要な情報を男のベッドまで届け たのである。

どこどこで重要な会議が開かれたとか、役人の誰々が中央政府の監督部門に目をつけられたと か、何々の話は絶対に口外してはならないとか、誰々の動きは警戒しなければならないとか、秘 密情報員の女を通して男たちが共同作戦の歩調を揃えるようにする。

また、彼女たちはいかに男を虜にするのかをよく心得ている。一言だけですぐに男の歓心を買うことができる。それは、「貴方とセックスするのが一番の楽しみだ。ほかの男とはうまくいかない」という一言だ。これだけで十二分に功を奏するといわれている。

汚職役人の多くは贅沢三味な生活のために栄養が過剰で、血圧、血中脂質、コレステロールなどの健康指数が異常だ。これらの血管系疾患が進んでいくと、セックスパワーが目立って弱まり、 勃起不全など性的不能につながることが多い。そこで、そればかりを気にする男が多い。だから 女からご褒美の言菜をもらうと嬉しくなる。嘘とは知らずに、自分の一物は他の男よりかなり優秀だと勘違いしてしまうのだ。

P.246~250

「南京大虐殺追悼日」に殺到する批判

中国政府は、2014年から毎年12月13日を「国家公祭日」とすることを発表した。 国家公祭日とは南京大虐殺にちなんだ国家哀悼の日であり、正式名称は「南京大虐殺犠牲者国家追悼日」である。1949年の建国以来、初めて定められた国家級の追悼記念日である。この日は、盛大な追悼行事が行われる。

筆者は、2014年の第1回「国家公祭日」が終わった後、2つのことを思った。 1つ目は、なぜ建国後65年も経ったいま、このような公祭日を設立したのかという疑問である。いままでなかった理由は何なのだろうか。どのような政治的な企みがあるのだろうか。 2つ目は、言論の自由の空気が、すこしずつだが広まっていることを感じた。というのは最高級の国家公祭日が南京大虐殺記念館で厳かに行われた翌日、直ちに国家公祭日の設立に対する疑念や不信を込めた投稿や反発の声が、中国のネット上を駆けめぐったからである。 中国では、ネット上でも自由な発言はできない。ネット規制がかなり厳しいため、不都合な言論はどんどん削除される。

ある若者は、ネットでの投稿でこう語った。

「昨日、ある大学教師の家を訪問した。ちょうどテレビが抗日劇を放送しているところだった。僕が、いま中国の経済実力は日本をはるかに超えているから、中日戦争はもう起こらないだろうと言ったら、先生は、それは違う、戦争の勝負は軍事力より人心のまとまる力のほうがよほど重要だ。中国の現状を見てみろ。役人腐敗が氾濫し、人心がばらばらで、敵と戦うどころではない、と言った。先生の話は正しいと思う。『国家公祭日』が設立されたが、人心を結束させて敵に立ち向かわせることはできないと思う。戦争は昔の話だからだ。いまの中国を考えてみよう。腐敗した権力者は国民に何をもたらしたのか。国民の多くは、むしろ自国の腐敗役人を大変憎んでいるのではないだろうか」

引用がすこし長くなったが、この若者の考えは、多くの人の思いを代表しているだろう。

反日の話になると必ずと言っていいほど出て来る南京大虐殺館は1985年に開館したが、筆者の友人の1人は、1993年に初めてここを訪ねた感想を、こう語った。

—定期保守が施されていないのか、道路の状況は非常に悪く、雨の中、バスに揺られながら着いた記念館は、まるで田舎にある展示館レベルだった。印象に残るものは少ない。

ちなみに、南京の住民が友人などの来訪者をこの記念館の見学に案内することは、まずないそ うだ。

実は、もう1つ不可解なことがある。それは、2004年までの約20年間、中国で最大級の「愛国主義教育基地」に指定されているこの記念館の参観が有料だったということである。そのために見学者が少なかった。国民の間には、重要な国家記念館が金儲けをしているのはおかしい、 という声が絶えなかった。2004年から無料開放となって、ようやく見学者が増えたのである。

南京大虐殺について、日本では「実際にあった」と認める説から、「まったくの噓だ」という説、ある.いは「あったが中国の主張する犠牲者数は多すぎる。もっと少ないはずだ」という説まで議論が分かれている。もちろん、中国では「犠牲者30万人」が公式見解だ。

ところで、2014年11月、国家公祭日の実施直前に1冊の本が出版され、私を含め読者に大きな衝撃を与えた。その書名は『南京大虐殺全記録』で、著者は中国作家協会副主席の何建明である。中国では部長級の高官である。

内容は書名通り日本軍が南京で虐殺を行ったことを記録し、日本の侵略行為への批判を展開したものであるが、いままでに知られていない真相や、夕ブー視されてきた真実も多く書かかれていた。非常に珍しい本である。

著者は本の中で多くのページを使って、当時の南京を守備する元中国軍兵士の証言を紹介して いる。当時、中国の主力軍は国民党軍だった。そこで述べられていたのは、驚くことに、真っ先 に中国人に銃口を向けたのは、日本軍ではなく中国軍だった、ということである。多くの中国人にとって信じられない話だが、動かぬ事実なのである。

当時、中国軍は15万人いたが、2万人が戦死したものの、残りの13万人は戦わずに逃げ回った。 指揮官たちが真っ先に逃げてしまったため、指揮命令系統が完全に麻痺状態となり、撤退命令を 受けていない兵士と、受けたという兵士の間で、激戦が繰り広げられたのである。戦場は唯一の 通行ロである城門だった。ここでは5000人以上の兵士と平民が命を落とした。

人々は命からがら別の場所から逃げ出して、ようやく揚子江のあたりまでたどり着いたが、対岸まで運ぶ船は2、3隻しかなかった。そこでまた、熾烈な血まみれの奪い合いが始まったのだ。 他人を船から川に突き落とす者、川に落ちて上がれず船の縁をつかむ者、定員オーバーのため 船が転覆して大声で助けを求める者、机や椅子などにつかまりながら川の中であがく者など、死を恐れる人たちは手段を選ばずに必死に避難している。

もっとも残忍なのは、船に乗れなかった兵士たちが、離れていく船上の人たちを狂った野獣のように機関銃で掃射し、夥しい人を死なせたことである。川一面に死体が浮かび、血の海と化した。死者の数は数万人に上ると推測される。

この血腥い中国人同士の殺し合いをどう解釈すればいいのか、筆者には分からない。困惑と怒りを感じるだけだ。

日本と中国の間では南京大虐殺の事実をめぐっての議論が絶えないが、最大の焦点となるのは 犠牲者の人数だ。前述のように、日本ではさまざまな説があるが、中国側は犠牲者30万人という これまでの主張を変えようとしない。 ある中国人作家は、自身のブログで、この問題についてこう語る。

「当時の南京住民の戸籍管理はめちゃくちゃで、正確な人口の数字がなかった。警察庁の公式書 類には、20万人と記載するものもあれば、50万人と記載するものもある。真相は闇のままである。 1945年以降、国民党政府、共産党政府、また各民間組織は『南京大虐殺』の事実を調べていたが、お粗末なものが多く、信憑性が薄い」

彼はさらに言う。

「30万人という死者の数字は大きいものである。しかし、被害者の名前、住所などは私たちにわかっていない。日本の広島、長崎では被害者の情報が正確に統計されているが、対照的に中国の状況は汗顔の至りである」

P.266~268

寛容の心がない中国人

まさに問題は、中国が「赦しのモデル」であるフランスのように行動できるかどうかにかかっているわけだが、それは可能だろうか。

中国人は基本的に恨みを根に持つ民族である。なかなか相手のことを許さない。寛容の心がない。だから、民族性がばらばらで大きな束にならない。 ここで例として、中国で謝罪するA氏と、謝罪されるB氏のやり取りを見てみよう。

1日目

A氏:「×××の件については非常にご迷惑をかけました。心からお詫びします」

B氏:「いやいや、大したことはありません。私たちはいい友達ですからね」

A氏はB氏の寛大な態度に感動し、謝罪がすんだと思ってうれしい。

3日目

不快な表情を顔に浮かべるB氏が、A氏に言う。

B氏:「あなたはいけませんね。お詫びしたものの、その後、誠意も何も行動に表れていないではないですか」

A氏が困惑した表情で言う。

A氏:「誠意って、私はどうすればいいんでしょうか」

怒るB氏。

B氏:「自分はなぜいけないのか、その原因を反省しなければならないのではないでしようか。 原因がわからなければ、これからも同じ誤りが繰り返されるでしょう」

A氏は驚いて、顔面蒼白になった。

5日目

A氏:「よく考え抜いたのですが、X X X X Xが原因で誤りを犯したことを心から反省します」

A氏の再度の謝罪に、B氏は「んんん」と一応満足そうな様子である。

7日目

B氏:「あなたは原因を探していたが、その一歩前進した姿勢は評価したいです。しかし、原因は別のところにあり、もっと深刻に考えるべきだと思いますよ。しっかりと考えてみなさい」

そう言われたA氏は、愕然として言葉が出なかった……。

これは架空の話だが、読者の周りに中国人の知り合いがいたら、ぜひこのやり取りについて確 認してみてほしい。中国人に謝罪すると、こんなふうになるということに誰もが同意するだろうと思う。

謝罪に対してきりのない悪循環が続くのが、中国人の特徴だろう。だから、中国人はたとえ自分に落ち度があっても、謝罪しないことが多い。

繰り返すが、国と国の関係は国家の名誉や国際的信用にかかわる外交関係なので、すべての問 題は正式な外交文書を交わして解決するのが正しい筋道である。道義上の問題を外交問題に持ち込むことは、国交の正常化に悪影響をもたらす結果としかならない。

1/18日経ビジネスオンライン 福島香織『台湾総統選“圧勝”蔡英文の「真の敵」 大陸の圧力と誘惑と空の国庫と、いかに戦うか』、白壁・安藤『台湾総統選、民進党の「未来像」なき圧勝』、武田安恵『進化する台湾人、蔡英文の実力 新台湾総統の素顔に迫る』について

1/15石平氏Twitter 「フォロワーの皆様にお願いします。中国大使館が在日中国人たち全員に登録を求めた一件、場合によって日本の国防上に重大な意味を持つ動きであるかもしれませんが、マスメデイアはいっさい報じていません。是非皆様のお力でこの情報の拡散をお願いします。」

日本への戦争準備か?テロ防止につき、ゆめ怠りなく。在日中国人に対する監視を強め、心理的圧迫を加えるつもりなのでしょうけど。

1/16渡邉哲也Twitter「民進党過半数 国民党単独3分の1割れで、馬総統弾劾の可能性が出ています。中国寄りの親民党がキーマンに」とありました。今般の立法委選挙は任期満了解散なので本年2/1に交替すると思います。

Wiki「・正副総統罷免案提案権(憲法増修条文2条9項):立法委員総数4分の1以上の発議、同3分の2以上で可決したときは、罷免案の国民投票を実施できる。

・正副総統弾劾案議決権(憲法増修条文4条7項、2条10項):立法委員総数2分の1以上の発議、同3分の2以上で可決したときは、司法院大法官(憲法裁判所の大法廷に相当)に弾劾審理を要請できる。」とあります。(民進党68+時代力量党5)/113議席=64.46%、そこに親民党の3議席を入れると67.25%。弾劾審理が可能となります。総統就任は5/20でその間、中共と国民党は悪さをするやも知れませんので牽制のために弾劾の動きをした方が良いのでは。

今般の総統選+立法委員選で「周子瑜」(韓国のアイドルグループ”twice”のメンバー、福島氏の言うツゥイ)の与えた影響はそれ程大きくはなかったのでは。やはり、馬英九の中国擦り寄りのマイナス効果が大きかったのでは。「我是台湾人、不是中国人」と思うようにさせたのは馬英九効果でしょう。国民としての自覚を与えたという意味では彼もそれなりの役割を果たしたと言うことです。

でもまだ3割の人が「我是台湾人、還是中国人(台湾人でもあり、中国人でもある)」と思っているので。国民党の刷り込みが効いているのでしょう。日本も平和ボケの人数を減らしていかなければなりません。1/18日経に池上彰が「日本では民主主義は戦後に米国から与えられた部分がある。民主主義を勝ち取ったとは言い切れない部分が影響しているのかも」とありました。流石に元NHKです。非常に違和感があります。帝国憲法公布、帝国議会、大正デモクラシーの歴史的事実を全否定するものです。このようなリベラルの言動が日本を悪くします。騙されないように。

Opinion poll about Taiwanese

 

 

 

 

 

(12/17NHK番組『台湾総統選まで1か月~強まる「台湾人意識」、若者の選択は~』より)

本記事にありますように「感情だけで飯は食えない」です。一時の勝利の興奮から醒めたときこそが勝負です。親日国台湾をサポートするのは日本の安全保障上から考えても大事なことです。蔡英文の言う「産業同盟」をしっかりしたものにするため、日本の経済界も中国の顔色を窺うことなく手を差し伸べてほしい。でないと中国から金かハニーで籠絡されていると思われますよ。

福島記事

ちょうど台北にいるので、台湾の総統選について報告しよう。

華人国家において、初の女性総統が登場した。民進党候補の蔡英文が689万4744票を得て、国民党候補・朱立倫381万3365票をダブルスコアで制した。

 300万票という台湾史上最大票差での大勝の背景は、現馬英九国民党政権の失政、ひまわり学運で再燃した「台湾アイデンティティ」の盛り上がり、朱立倫国民党候補のやる気のなさ、そして中国側が本格的な妨害工作をしなかったことなどがある。

 さらに言えば、投票日に問題になった韓国アイドルグループTWICEの台湾出身メンバー、ツゥイこと周子瑜の公開謝罪ビデオ事件が、決定的な追い風となった。ひょっとして韓国の芸能事務所は、ひそかに台湾民進党を応援していたか、と疑うほどの絶妙なタイミングだった。

 立法院(国会)選挙については民進党単独過半数は難しいのではないか、という下馬評だったが蓋をあけてみると、民進党は113議席中、68議席、国民党35議席とあわやこちらもダブルスコアになりそうな勢いで緑(民進党カラー)が圧勝。しかも、ひまわり学運の参加者らが結成した新党「時代力量」が5議席獲得、親中派政党で宋楚瑜総統候補率いる「親民党」の3議席を抑えて、第3党に躍り出た。建党30年足らずの圧倒的多数の与党に、昨年結党したばかりの生まれたて政党の第3党躍進と、台湾国会の様相が大きく変わった。

蔡英文とはどういう人物か

 この民進党を圧勝に導いた蔡英文とはどういう人物なのか。私が彼女の姿を最初に生で見たのは2001年、大陸委員会主任委員(閣僚)時代の記者会見に出席したときだと思う。流暢な英語を話す女性エリート官僚然としたクールな印象を持った。

 1956年8月、台湾屏東県の客家の名家の血筋に生まれる。出生地は台北市中山区だ。祖母はパイワン族の末裔という。彼女の生まれたころは、まだ台湾の大金持ちは一夫多妻(側室)の風習が残り、兄弟姉妹は11人。うち兄の1人は日本国籍を取得し日本で暮らすとか。末っ子の蔡英文は、お嬢様として大事に育てられ、台湾大学法律学部生時代はマイカーで通学していた2人の学生のうち1人だったという。1980年に米国コーネル大学ロースクールで学位を取り、続いて英国ロンドン政治経済学院に留学し、「不平等貿易の実践とセーフガード」をテーマに研究。1984年に博士学位を取り、米国の弁護士資格と中華民国の弁護士資格を取った。

 大学教授時代を経て、李登輝政権時代、請われて行政啓三国際経済組織の主席法律顧問となったのが政界に足を踏み入れるきっかけとなった。GATTとWTOの台湾加入交渉に関わったほか、李登輝とともに台湾と中国が特殊な国と国の関係であるとする「一辺一国論」の起草にも関わる。

 陳水扁政権1期目の2000年から2004年は行政院大陸委員会主任委員となり、この時の世論調査では最も満足度の高い閣僚として評価された。この時「小三通」と呼ばれる、中国台湾間の春節時期の直行便を含む中台直接交流が大きく進んだ。

 陳水扁政権2期目の2004年から民進党に入党し、立法委員(国会議員)に比例6位で当選。2006年から行政院副院長(副首相)となり、この時の仕事ぶりも世論調査で高い評価を得た。

敗北から4年、生真面目に「団結」

 2008年の総統選で代理党主席の謝長廷候補が惨敗すると、世論の評価の高い蔡英文が台湾初の女性党主席となる。だが、党員歴の短い若き女性党主席は台湾特有の儒教的女性蔑視、年少者蔑視もあって、長らく党内分裂状態に悩まされる。

 それでも2012年の総統選では初の女性総統候補として健闘。80万票差で現職・馬英九総統に惜敗する。この時の敗因は、中国の後方援護と米国の投票日直前になっての馬英九政権支持表明が大きかったと言われている。事前の世論調査での支持率はずっと民進党がリードしていただけに、国民党の底力を見せつけた格好だった。蔡英文は敗戦の責任をとって、党主席を辞任した。

 この敗北から4年、蔡英文にとっては、空中分解しかけていた党内団結に腐心する日々であったという。

 こうした来歴から見ると、彼女は非常に頭脳明晰な学者肌に近い官僚肌の実務向き人物である。また、バランス感覚もよい。だが政治家に求められる”オーラ”に欠けるとも言われてきた。また、あまりにクリーンで生真面目なため、台湾政界を渡っていくためにある程度必要な腹黒さや駆け引き、米国への媚の売り方が足りないとも言われていた。2012年の総統選は明らかに、米国に気にいられなかったことが重要敗因の1つだと分析されてきた。だが、この敗戦後の4年間、彼女はやはり生真面目に、対米関係を研究し、党内の年上の政治家たちにも気を使い、演説テクニックも目をみはるほど向上している。

 2014年になって馬英九政権に対する失望、反感が若者を中心にますます広がっていった。3月18日から24日間にわたって立法院を学生たちが占拠したひまわり学運が、台湾政治の潮目を決定的に変えた。このひまわり学運が求める台湾の方向性とは、中台急速接近の阻止、国会の機能回復、そして何より「台湾アイデンティティ」の再度の盛り上がりだろう。

「ツゥイ公開謝罪」と台湾アイデンティティ

 この頃から党内でも、「一辺一国論」起草者の蔡英文しかいない、という待望論が盛り上がってきた。5月の民進党主席選挙で93%以上の圧倒的な得票率で蔡英文は党主席に返り咲き、総統候補となった。

 台湾アイデンティティとは「私は台湾人であって中国人ではない」という意識であり、台湾の核心的価値は民主である、という意識である。

 投票日に明らかになった、ツゥイの公開謝罪問題は、まさしくこの台湾人アイデンティティ問題にからむ。ツゥイは韓国美少女アイドルグループTWICEのメンバーだが、韓国のテレビ番組で、彼女が台湾出身をアピールするため中華民国旗(青天白日旗)を持ったシーンが、大陸のファンからものすごい反発を買った。大陸ネットユーザーを中心にTWICE不買運動、中国テレビ出演反対が呼びかけられ、所属事務所の株が急落、65億ウォン相当が蒸発した、と報道された。そして事務所の判断か、中国当局の圧力かは分からないが、選挙投票日当日、この騒動の責任をとる形でツゥイの公開謝罪ビデオが流された。

 ビデオでツゥイは憔悴した表情で「中国はただ1つだけです。(台湾)海峡の両岸は一体です。わたしは終始、自分が中国人であることに誇りを感じています。1人の中国人として外国で活動しているとき、行いの間違いによって、両岸のネットユーザーの感情を傷つけました。とってもとっても申し訳ないと感じています。そして恥じ、やましさを感じています。私は中国での一切の活動を休止することを決めました。真剣に反省しています。もう一度、もう一度みなさんに謝ります。ごめんなさい」と頭を下げたのだった。

 このビデオは投票日当日、何度も台湾のテレビで流され続け、投票者に「中国の脅威」と「台湾アイデンティティ」を再認識させた。そして「青天白日旗」は国民党徽章の入った中華民国旗であるが、なぜか票は緑の民進党に流れた。それは馬英九国民党政権があまりに親中的だったからだ。

 このことからも分かるのは、民進党が本当のライバルとして戦っていたのは国民党ではなく、中国であったということだろう。蔡英文は当選後の勝利演説でもこの事件に触れて「私が総統になった日には、誰一人として自分のアイデンティティを理由に謝罪をする必要がないようにします」と訴えていた。「台湾を団結した国家にする責任がある!」という宣言に表現されるように、彼女が目指し、台湾有権者が望むのは、政党や派閥による内政のいざこざではなく、国家としての団結であり、それは中国に対する危機感から発するという見立ては間違ってはいない。

 ひまわり学運から発した時代力量が5議席を取り第3党に踊り出たことも注目する必要があるだろう。日本でも人気のあるヘビィメタルミュージシャン、フレディ・リムが創設に関わったことでも知られるが、フレディ自身はかなりはっきりした独立派である。ただ、時代力量は独立という言葉ではなく建国と言う言葉を好んで使う。それは、台湾は一度も中国の属国になった覚えはない、という理論武装らしい。党主席の黄國昌、フレディら5人も国会に送り込まれたということが、今の台湾の若者の気持ちを反映しているといえるだろう。

習近平の強権と空の国庫、どう対処?

 そういう意味で、これから総統となった蔡英文が戦わねばならない敵は非常に強大ということになる。有権者としては、中国の経済的政治的影響から脱出してほしいという希望がある一方で、すでに台湾経済で圧倒的存在感を誇る中国の影響力から台湾が距離をとろうとすることは口で言うほど簡単ではない。しかも、習近平政権は胡錦濤政権ほど甘くない。胡錦濤政権は台湾統一という言葉を発せず、ただひたすら中台経済関係強化に努めた。だが、習近平政権は台湾総統府にそっくりな建物を攻略する軍事訓練を堂々と行う。今後、どのような圧力(あるいは誘惑)を台湾にしかけ、それに蔡英文政権はどう対応するか。

 さらに言えば、馬英九政権時代にすでに台湾財政は破綻寸前で、国庫は空の状態で政権を引き渡されると言われている。中国経済もクラッシュ寸前なので、台湾に流れた大量の中国マネーが一気に引き揚げられると、台湾バブルも崩壊する。世界同時不況と言われる中で蔡英文が台湾経済を軟着陸させることができるかどうか。

 経済が悪化し、有権者の生活が明らかに苦しくなれば、次の選挙では今回の選挙の裏返しのような形で惨敗しかねない。

 日本にとっては、地政学的にも、台湾に国家としてのアイデンティティを持ち続けてもらえれば、アジアにおける中国覇権の野望にブレーキをかけるという意味で、韓国よりもよいパートナーになれるだろう。蔡英文政権の台湾ならば、日本が経済関係と外交関係を強化していく選択に迷う必要はないと思うのだが、どうだろうか。

白壁・安藤記事

President Cai

今後について冷静に語る民進党の蔡英文主席(右)

 1月16日、台湾総統選挙の投票が締め切られた午後4時。最大野党の民主進歩党(民進党)の本部近くに設営された野外の大規模集会場では、用意された席は既に支持者らで埋め尽くされて会場外の道路にまで人があふれていた。

 巨大なモニターには開票状況が映し出され、事前の予想を超える勢いで民進党の候補者である蔡英文主席がリードするもようが伝えられている。

私は台湾人」というメッセージをことあるごとに全員で叫ぶ

 総統選は与党・国民党の朱立倫主席との事実上の一騎打ち。その朱氏に、ダブルスコアの差をつけて蔡氏の獲得票数が伸びていく。100万票、200万票、300万票――。票数が大台に乗るたびに会場は盛り上がる。そして会場中の人々が大型モニターに映し出された言葉を叫ぶ。

I'm a Taiwanese

 「我是台湾人(私は台湾人だ)!!」

 

 

 

 

 

 

 

The supporter of DPP

 

当選確実の報を見て喜ぶ民進党支持者

 8年ぶりの政権交代。加えて民進党は、初めて立法院(日本の国会に相当)でも過半数(定数108に対して68の議席を獲得)を獲得した。その支持層が最も力を入れて叫ぶ言葉が「我是台湾人」の五文字だったことは、この選挙戦が、「中国」との関係にまつわるアイデンティティの闘争だったことをよく物語っている。

 会場で中国系のメディアを見つけると一斉にブーイング。そして親中派の与党候補であった朱氏が敗北を宣言し、頭を下げる姿がモニターに映し出されると、「どうだ!」と言わんばかりに中国系メディアの記者に対して中指を立てる。

 新政権の描いた未来像に沸くというよりも、前政権が進めた親中路線に「NO」を突きつけ、対中融和の流れを食い止めたことに沸いているような印象を受けた。肯定よりも、否定の歓喜に見えた。

「感情だけでは飯は食えない」

 前政権の政策に対する否定という「過去」はいいとして、民進党圧勝の先に、どんな「未来」が待っているのか。ボランティアとして民進党の選挙戦をサポートした大学生は不安を打ち明けた。

 「はっきり言って、(勝利を)素直には喜べない。台湾人として『ここは中国ではない』ということを示したに過ぎない。この選択が経済環境を良くするきっかけになるんだろうか。このままでは自分の働き口すら見つからないかもしれない。感情だけでは飯は食えないから」

 台湾の民意は、国民党政権が進めた親中路線に歯止めをかけた。だが、問題はこれからの台湾をどう創っていくかだろう。

 中国は台湾にとって最大の輸出国だ。輸出額の4分の1は中国が占め、香港を入れると4割近くに相当する。

The child's  message for Cai

蔡氏へのメッセージを掲げる子供

 現職の馬英九総統は2008年に民進党から国民党へ政権を奪還して以降、経済成長著しい中国の「恩恵」に預かるべく、対中融和路線を進めてきた。低迷する台湾経済の浮揚がその狙いだった。

 だが、拙速な対中接近は反発も招いた。2013年、中国と台湾で金融や通信、医療、旅行などのサービス関連市場を相互に開放する中台サービス貿易協定を締結。立法院での審議を「時間切れ」として一方的に中断し、強引に批准作業を進めるなどの姿勢に台湾の人々は反発し、「ひまわり運動」と呼ばれる学生の議会占拠にまで問題は発展した。

 

The Independence of Taiwan Party

台湾独立を訴える政党も

 それでも馬氏は昨年11月、中国の習近平国家主席と1949年の中台分断後、初のトップ会談を強行するなど、親中路線を突き進んだ。

 中国への輸出額は馬氏の就任時に比べて1.3倍にまで膨らんだ。

民進党に投票した中小企業経営者の声

 新北市で金属加工業を営む50代の男性は、かつて馬氏を支持して国民党に投票した一人だ。

 「中国向けでもっと仕事が増えると思ったけれど、全然増えない。俺たちの仕事が増えるわけではない。むしろ、減っているのが現状だ。馬(氏)は中国に魂を売ったにもかかわらず、何も得られなかったんだよ」

 彼は今回、民進党に票を投じた。

 馬氏は台湾の人々の感情を逆なでしただけでなく、経済環境も改善も実現できなかった。2015年の実質GDP(国内総生産)成長率は、7~9月期に6年ぶりにマイナス成長(マイナス1.01%)を記録するなど輸出の不振が続いている。2015年通期で同成長率が1%にも満たないのではないかとの見方も出ている。さらに、馬政権が公約に掲げた「失業率3%未満」も達成できなかった。

 対中接近したにも関わらず、経済が好転しない。であればなぜ、政治・経済のシステムや国家観が大きく異なる中国と融和しなければならないのか。こうした反発が民進党の躍進を後押しした。

選挙期間中は思いのほか静か

 投票前に台湾へ入り、政権交代の熱気に沸く街を想像していたが、どうも記者の期待は大きすぎたのか、やや盛り上がりには欠けているように見えた。選挙期間中、街を歩くと台湾ならではの光景が目に留まる。太鼓を叩くトラックが先導し、その後に候補者の名前や政党名を掲げたトラックが続く。太鼓の音で街行く人に自らの存在を知らせるのだ。

campaign car

太鼓を叩いて選挙カーの到来を告げる、台湾ならではの選挙の光景

 早朝や深夜でも爆竹を鳴らすなど、過度な演出もあると聞いたが、今回は申し訳ない程度の音の太鼓を叩く車列にいくつか遭遇しただけだ。投票前夜の集会には雨天にもかかわらず多くの支持者が駆けつけるなど盛り上がりを見せたが、街中の人々に話を聞くと、民進党を支持する人からも、未来に向けて新たな希望が誕生するような躍動する感情はあまり伝わってこなかった。

 

 

 

Cai's novelty

蔡氏のグッズを売る露店も登場

 選挙前から野党・民進党の優勢は伝えられており、政権交代が確実視されていたからかもしれない。ただ最大の要因は、今回の選挙そのものが、新たな台湾を築くという前向きなものというよりも、急速に距離が縮まりつつある中台関係に待ったをかけるというのが第一にあったからではないか。対中融和策を改めたとしても、経済的に中国に頼らざるを得ない部分がある「現実問題」も理解している。政権交代を実現しても、今の台湾は、独自で大国を相手にできるほどの経済的、政治的な力を持ち合わせていない。そう考える人が台湾でも多数を占めるだろう。

 

 

 

 

Cai's Dharma doll

蔡氏向けに日本から送られた必勝祈願のダルマも飾られていた

 2000年に総統選挙で勝利した前後は、民進党は台湾「独立」の志向を鮮明に打ち出していた。だが、民進党は2008年に支持を失って下野。蔡英文主席は、急進的な独立論を抑え、対中関係は「独立を求めないが、拙速な融和も進めない」という「現状維持」を打ち出して、急進的な独立派以外の支持を集めた。同じ民進党による政権奪還だが、まだ中台の力が拮抗していた2000年前後に「独立」の未来に熱狂したのと、今回、中国が台頭する中で、かろうじて対中融和の速度を抑える選択をしたのとでは、盛り上がりが異なるのは当然と言えるかもしれない。

 中国は今後も、台湾との距離を縮めてくるだろう。台湾と海を隔てた先にある中国の福建省で長く官僚を務めた経験のある習近平国家主席は、「1つの中国」に向けた道筋を自らの任期中に作りたい野望があるとされる。昨年の中台トップ会談もその布石だろう。

 にじり寄る中国をいかにしてけん制し、経済を立て直すか。選挙期間、蔡氏は「経済的にも強い台湾を再興し、中国と対等に渡り合って妥協点を見いだしたい」と演説したが、その具体策は見えてこない。

経済再生のサポート役は日本か

Taiwanese hope

蔡氏は台湾の人々の期待に応えられるだろうか

 アジアでは昨年末に東南アジア諸国連合(ASEAN)が域内での人・モノ・カネの動きを自由化させるアセアン経済共同体(AEC)を発足させた。米国主導のTPP(環太平洋経済連携協定)といった枠組みも固まりつつあり、中国主導の国際金融機関であるアジアインフラ 投資銀行(AIIB)も誕生した。周囲の国々が様々な枠組みに参加して自国の競争力を培う中で、台湾は取り残される危機にある。蔡氏はTPPへの参加も前向きに検討中だ。

 選挙後の会見で蔡氏は、経済再生の実現に向けて必要なサポート役として「日本」の名前を複数回挙げている。選挙集会では、記者が日本人と分かると、「日本の助けが必要だ」と手を握って話しかけてきた台湾人男性もいた。

 日本政府・与党は台湾総統選での民進党の蔡氏の勝利を歓迎している。中国に接近して歴史認識や沖縄県尖閣諸島などを巡って中台で対日共闘を強めていた馬英九総統とは異なり、蔡氏が日本との関係を重視しているためだ。

 東シナ海や南シナ海への海洋進出を図り、経済的影響力を強める中国をにらみ、台湾との関係を重視する安倍晋三首相は自民党の野党時代に台湾で蔡氏と会談。昨年10月には来日した蔡氏と密かに都内のホテルで接触するなど布石を打ってきた。TPPに関しても台湾の交渉参加を後押しする検討を進めており、台湾経済の中国への傾斜にくさびを打ち込む考えだ。

 果たして、台湾は蔡氏の下で経済再生を果たすことができるだろうか。

 感情では飯を食えない――。

 前出の学生の本音が、台湾の人々の不安の根底にある。蔡氏はその不安に応える未来を描けるか。初の女性総統の手腕が問われる。

武田記事

「捲土重来」。1月16日に実施された台湾総統選挙を一言で表した時、これほどしっくり来る言葉はほかにないのではないだろうか。4年前の2012年1月14日、同じ総統選挙で蔡英文率いる民主進歩党(民進党)は、国民党が支持する馬英九に敗れた。降りしきる雨の中、大勢の支持者は顔を流れる雫が涙なのか雨なのか分からない状態で、蔡英文の演説――敗北宣言を聞いたのだった。

 当時、支持者に対して「可以哭泣,不要放棄」(泣いてもいい、しかし諦めてはいけない)と励ましながら、「有一天我們會再回來」(いつの日か、我々は再び戻ってくる)と呼びかけた蔡英文は、見事に約束を果たした。

 前回の総統選挙は馬英九が689万1139票、蔡英文が609万3578票と約80万票の差だった。今回は16日午後10時時点の集計では蔡英文689万票、国民党候補の朱立倫381万票と300万の差をつけた。

 多くの台湾人が、中国と台湾にある政治的な隔たりを、「経済交流」という形で埋めようと試みた馬英九のこれまでの政策に「NO」を突きつけた。その民衆の不満をすくい上げるかのように成長してきたのが蔡英文だ。この4年間、庶民の暮らしを理解しようと台湾各地を演説して回った。その泥臭さ、地味さに親近感を覚え、今まで民進党支持者でなかった層のファンを増やしたとも言われている。

「私は政治家向きではない」と漏らした過去

 「私は政治家向きではない」蔡英文は周囲にこう漏らしたことがあるという。かつての彼女は台湾語で言うところの「口才」(トークのうまさ)もないし、情に訴えるようなことを言う性格でもなかった。

 彼女の経歴を見てもそれは明らかだ。実業家の父のもと、裕福な家庭の上に生まれた。11人兄弟のうち「誰も法律を学んでいないから」と父に勧められ、台湾大学で法律を学ぶ。その後米国コーネル大学で修士、英国ロンドン大政経学院で法学博士を取得、29歳の時に台湾に戻り、大学教授の職に就く。「私は父の期待通りの人生を歩んでいたわ」。メディアの取材に対し、蔡英文はこう答えている。

 「象牙の塔」にいた彼女がなぜ政治家になったのだろうか。

 転機は李登輝政権下の1990年代だった。大学教授の職をこなしながら、台湾政府経済部の顧問として貿易交渉のテーブルに着いた。当時台湾は、米国から輸入される農作物や肉類などの関税を引き下げることによって受ける台湾域内の産業のダメージを最小限に抑えるべく、米国との間で交渉を続けていた。蔡英文はこの時、最初は通訳などを務めていたが、その才能を見込まれ一気に国際経済組織首席法律顧問へと上り詰めた。彼女の活躍に、当時総統だった李登輝も一目置いていたという。

 貿易交渉での経験は、彼女にとって、台湾が置かれている国際的な状況を深く知る機会になったと言われている。その後、経済部貿易調査委員会委員、対中関係を管轄する行政院大陸委員会委員などを務めた。1999年に李登輝が発表した中台関係の新定義、二国論(特殊な国と国との関係)の起草にも大きく関わったと言われている。

 この経歴が買われ、民進党が政権を取った2000年、当時の陳水扁総統のもとで大陸委員会主任委員(閣僚)に抜擢された。彼女はここで初めて「政治」というものを経験することになる。立法院(日本の国会に相当)の委員会答弁の場に初めて出ることになるわけだが、民進党の一挙一動に揚げ足を取り、批判してくる国民党議員の猛攻撃に最初は顔を固くして、何も答えることができなかった。

 当時、初めて政権を取った民進党はそのブレーンにと多くの学者や専門家を起用していたが、彼らの多くは論理や平静さをとはかけ離れた台湾立法院の壮絶な論戦、批判の応酬に耐え切れず、立法院を去っていた。しかし蔡英文はそこで多くを学び、論戦に耐えられるだけの話術と度胸を身につけたのだった。この経験は、政治家になった後も彼女を支え続けている。

民進党を立て直すために民衆に近づいた

 「故郷に戻り、親の面倒を見たいと思っています」。大陸委員会の任期が満了を迎えた際、蔡英文はメディアの取材に対しこう答えている。蔡英文の父親は、彼女がこれ以上政治の道を歩むことを望んでいなかったし、彼女自身もそれは避けたいと考えていた。

 しかし、長年、野党として国民党との闘争に明け暮れることに終始していた熱情的で喧嘩っ早い民進党の議員とは対照的に、常に冷静で論理的、理知的な蔡英文は弱冠40代でありながら「民進党には数少ないバランス感覚を持った人」として、必要不可欠な存在になっていた。

 「運命のいたずらとでもいうのでしょうか。周りが蔡英文を必要としていたのです。時代が蔡英文を『政治家』にしたのです」。蔡英文を良く知る評論家で元台湾総統府国策顧問の金美齢はこう語る。

 2004年に民進党に入党した蔡英文は、行政院副院長(副首相)などを務めわずか4年後の2008年には史上最年少で民進党主席になっていた。当時の民進党は、馬英九はじめとする国民党に政権を奪還された上、陳水扁およびその周辺が起こした汚職事件の騒動の渦中にあり、立て直しを迫られていた。自分より年上の党員が多い中、若い彼女が民進党をまとめられるのかと疑問視する党員も少なくなく、「最も党首に似合わない軟弱な人」と、同じ民進党の議員から揶揄されることもあった。

 汚職事件による混乱で結束力を失った民進党を再び一枚岩にするために蔡英文がしたことは、「自分が最も民進党の人間らしくふるまう」ことだった。

 民進党は今、病人のような状態になっている。病人が外に出て太陽の光を浴びて療養するのと同じように、自分も積極的に外に出て、民進党の姿を人々に知ってもらうことが、立て直しの一番の近道である。そのためには、事務所にこもって考えるのではなく、民衆に近づき、訴えなければならない。彼女はこう考えたのだ。

 この頃から彼女は、立法院の論戦で培った話術に磨きをかけ、民衆に訴えかけるために台湾各地の市場や繁華街を回って自分の顔を露出することに務めた。自分が民進党の「顔」であることを皆に知らしめるための戦略だった。この行為自体が、党内における自分の立場を強めることにもつながることを、彼女は知っていたのである。「台湾は主権国家である」「一辺一国」など、これまでの民進党の急進的な主張を引っ込め、現実的なそれを打ち出すようになったのもこの頃からだ。

 「党の事務所は冷房が効きすぎていてね。外にいるほうが楽よ」。各地を行脚する蔡英文にメディアが「慣れない仕事で大変ですね」と皮肉を投げかけた際、彼女はこう言い返している。ウィットに富んだ切り返しもできるようになっていた。

「現状維持」だけで不満は解消されない

 「学者」「官僚」としてのこれまでの自分を脱ぎ捨て、恐ろしいほどの順応力を持って党内立て直しをはかった蔡英文だったが、2012年の総統選では僅差で敗れた。それは冒頭で述べた通りだ。だが彼女が地道にやってきた「民衆に耳を傾ける」運動が決して間違いではなかったことを今回の選挙は証明した。

 勝利の女神は彼女にチャンスを与えた。馬英九は2008年から不調に陥っている台湾経済を「中台接近」という形で打開しようとしたが、失敗に終わった。足元の台湾の失業率は3.9%。2008年当時より高まっている。人々の本当の不満は「中台接近」ではなく「中台接近によって強まった経済悪化」である。これ以上の中台接近を阻止し、いくら現状維持を貫いたとしても、悪化する経済や雇用情勢を解決できなければ意味がない。

 台湾市民が抱えている根本的な不満に対し、どこまで蔡英文が近づけられるのか、その腕力が問われている。 

 2000年に「象牙の塔」から降り立ち、2004年に政治家に転身してからわずか10年余り。蔡英文のめまぐるしく変わる人生は、台湾で初めて総統直接選挙を実施し「台湾民主化の父」とも言われる李登輝とも似ている。彼もまた、台湾大学で教鞭を取る傍ら、農政問題をきっかけに政治に関わり始めた身であった。誰がこの時、彼が総統になると考えただろうか。

 台湾の将来は、蔡英文の「無限の可能性」にかかっていると言ってよいだろう。