『トランプとの対決姿勢を鮮明にしたメルケル 祝辞に埋め込まれた“毒矢”』(11/14日経ビジネスオンライン 熊谷徹)、『トランプ勝利の衝撃、一番ヤバイのはEUだ』(11/14日経ビジネスオンライン 蛯谷敏)について

熊谷氏の記事の書き方は完全に日本人離れし、ドイツ人になり切った感じがします。26年も住んでいれば愛着が湧くことは理解できますが、安倍首相の祝辞を揶揄するのは戴けません。ドイツに帰化したら良いと思います。国の内外を問わず、メデイア人は往々にして日本を批判しますが、先ずは良く日本を理解した上で批判せよと言いたい。中韓のプロパガンダに乗せられ、日本を貶めるのはジェラシーそのものでしょう。日本ほど良い国はないと思っています。何と言っても治安が良く、米国や中国とは違います。またおいしい料理や世界各国の料理もリーズナブルな値段で食べることができます。況してや、日本の通貨は当局が円安を望んでいても、安全資産として買われ続けています。1000兆円の借金があると財務省は宣伝に余念がありませんが、負債だけでなく資産もあることを意図的に隠しています。それを他の国の人は理解しているので円を買う訳です。ドイチエ銀行が破綻しても、米国も日本も助けないでしょう。況してや財政破綻を来している中国も。

確かに、基本的人権や、自由、民主主義、法治は大切な理念です。それを踏みにじっているのは中国や朝鮮半島ではありませんか。ドイツ人はそれを無視して、経済的利益を追求するだけです。おかしな話です。難民の話でも欧州の侵略の歴史の復讐を受けていると考えれば分かり易いです。原田伊織の『官賊と幕臣たち』の中に、「英国は伝統的に反体制運動を支援してきた。薩長に肩入れしたのもそれが為」とありました。今は米国が跡を継ぎ、アラブの春を引き起こしたりしています。前述の理念には普遍的価値を持つものとして全面的に賛同しますが、グローバリズムには反対します。モノや金、情報の自由な移動は良いですが、ヒトは物質ではありません。言葉も違えば、育った環境も違います。相手をお互いに尊敬することで、棲み分けするのが正しい道と信じます。左翼・リベラルが良く使う多文化共生ではなく、多文化尊重です。多文化共生と言う言葉は中韓の侵略のツールとして使われています。気を付けませんと。

熊谷記事

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メルケル首相はトランプ氏に厳しい態度で臨む(写真:ロイター/アフロ)

11月9日にドナルド・トランプ氏が米大統領選挙で勝利した時、各国首脳は外交儀礼に基づいて同氏に祝いの言葉を贈った。ドイツのアンゲラ・メルケル首相、そして日本の安倍晋三首相が発表した祝辞は、トランプ氏に対する両国の態度の違いを浮き彫りにした。

安倍首相が当たり障りのない表面的な祝辞を送ったのに対し、メルケル首相は祝辞の中にトランプ氏に対する「毒矢」を埋め込んだ。

トランプに示した協力の「条件」

メルケル首相は祝辞の中で、まるで学校の教師が生徒を教え諭すように、ドイツが重んじる価値を並べ上げた。「ドイツにとって、EU以外の国の中で、米国ほど共通の価値によって緊密に結ばれている国はありません。その共通の価値とは、民主主義、自由、権利の尊重、全ての個人の尊厳を重んじることです。人権と尊厳は、出身地、肌の色、宗教、性別、性的な嗜好、政治思想を問うことなく守られなくてはなりません」。  メルケル首相がこれらの言葉によって、わざわざ「性別、宗教や肌の色、同性愛者か否かで人間を差別してはならない」と指摘したのは、トランプ次期大統領が選挙運動の期間中に、女性、メキシコ人、イスラム教徒、同性愛者を蔑むかのような発言を繰り返してきたことに対する、暗黙の批判である。

メルケル首相の最も鋭い「毒矢」はその次に飛んできた。それは、「Auf der Basis dieser Werte(これらの価値の前提の下に)」というわずか5つの言葉だった。彼女は、こう言った。「トランプ氏がこれらの価値を我々と共有するならば、私はトランプ氏とともに働く準備があります」。

つまりメルケル首相は、「トランプ氏がこれまでのヘイト・スピーチで示してきた、女性や外国人、イスラム教徒、同性愛者に対する差別的な態度を改めないのならば、ドイツ政府はトランプ氏と協力する気はない」というメッセージを送ったのだ。同盟国の首相が、次期大統領に「あなたと協力するかどうかは、あなたが一定の条件を満たすかどうかにかかっている」と宣言するのは、極めて異例である。メルケル首相は「あなたとともに働くのを楽しみにしています」という、彼女がこの種の祝辞でしばしば使う言葉も、あえて避けた。

来年トランプ大統領が誕生した後、日米同盟がどうなるかは、未知数である。それにもかかわらず、安倍首相は祝辞の中で日米同盟を「希望の同盟」と持ち上げた。さらに同首相は、「トランプ次期大統領と緊密に協力し、日米同盟の絆を一層強固にするとともに、アジア太平洋地域の平和と繁栄を確保するために、日米両国で主導的役割を果たしていくことを、心から楽しみにしています」と述べ、トランプ氏と無条件で協力すると宣言している。そこには、メルケル首相が埋め込んだような、トランプ氏のヘイト・スピーチへの批判は込められていない。

私はメルケル首相の祝辞を聞いて、政治が「言葉の芸術」であること、そして我々日本人とは異なり、歯に衣を着せずに思ったことを言うドイツ人の国民性を強く感じた。ドイツでは、日本よりも個人主義、そして発言の自由が尊重されている。たとえ発言を向ける相手が、世界最強の国の次期大統領であってもだ。

大半のドイツ人はトランプを嫌っている

トランプ氏を批判したのは、メルケル首相だけではない。ドイツのヨアヒム・ガウック連邦大統領が報道機関に向けて出したコメントにも、トランプ氏に対する懸念が込められていた。米国大統領選挙の投票日つまりトランプ氏が大統領にえらばれた日は、11月9日だった。ガウック大統領はコメントの最初で、この日付がドイツでは特別の意味を持っていることに言及した。

ドイツで11月9日は、歴史に残る大事件が起きる特異な日と見なされている。1923年のこの日には、ヒトラーがミュンヘンでクーデターを試みた。1938年には、ナチス政権が全国でユダヤ教会を破壊し、多数のユダヤ人を殺害・逮捕した「帝国水晶の夜」事件が起きた。1989年にベルリンの壁が崩壊したのも11月9日だった。つまり、この「特異日」に起きた一連の出来事に、政界のアウトサイダーが大統領として米国で最高権力を握るという「椿事」が加わったのだ。

ガウック大統領は「米国で大統領選挙が行われている間、世界の多くの人々が不安を感じた」と述べ、彼がトランプ氏の言動について懸念を抱いていることを示唆した。もちろんガウック大統領は、トランプ氏の勝利をナチスの台頭と同列に並べたわけではない。しかし彼のコメントの底に、一抹の疑念が横たわっていることは明らかだ。

ドイツではトランプ氏の勝利は「想定し得る最悪の事態」と受け止められている。大半のドイツ人は、トランプ氏ではなくヒラリー・クリントン元国務長官が大統領になることを願っていた。彼らにとって、トランプ氏が大統領になることは、隣国フランスで、右派ポピュリスト政党「国民戦線(FN)」のマリーヌ・ルペン党首が大統領になるのと同じことだ。

「ポピュリスト・インターナショナルの急先鋒」

メルケル政権の閣僚たちによるトランプ批判は、首相や大統領よりもさらに露骨だった。同政権で副首相を務める、ジグマー・ガブリエル経済エネルギー大臣は「トランプ氏の勝利は、我々ドイツ人にとっての警告である。彼は所得格差や社会の分裂に対する人々の失望を利用して票を集めた」と述べ、トランプ氏が取るポピュリスト的な姿勢を批判。

ガブリエル副首相は、「現在、世界各国の右派ポピュリストたちが強権的政治家のインターナショナル(国際戦線)を形成しつつある」と考えている。このポピュリスト・インターナショナルにはロシアのウラジミール・プーチン大統領、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領、フランスのFNのルペン党首などが属している。ガブリエル副首相は「トランプ氏は、このポピュリスト・インターナショナルの先頭に立つ人物だ」と指摘した。

さらに同副首相は「トランプ氏が属する共和党は、時計の針を、旧態依然とした悪い時代に戻そうとしている。彼らは、女性は台所とベッドにいればよいと考えている。彼らは同性愛者を刑務所に押し込め、労働組合を冷遇しようとしている。口を開いたものは、公の場で攻撃される」と舌鋒鋭く批判した。

現在ドイツの政界やメディアは、「欧州で拡大しつつある右派ポピュリズム勢力にとって、トランプ氏の勝利が追い風となる」との懸念を高めている。ドイツでも反イスラム、反EUの旗を掲げる右派ポピュリスト政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が、州議会選挙で連戦連勝を続けている。その支持率は10%を超えている。旧東ドイツの一部の地域では、有権者の3人に1人がこの党を選んでいる。

特に大きな不安の種は、西欧諸国との対決姿勢を強めるロシアのプーチン大統領が、トランプ氏に好意的な姿勢を示していることだ。米国大統領選挙の選挙運動の期間中に、暴露ポータル「ウィキリークス」が民主党の電子メール約2万通を公開し、米国の政治関係者に衝撃を与えた。ドイツ政府部内では「ロシアの諜報機関が民主党のサーバーからメールを盗み出し、クリントン候補を不利な立場に陥れるために、ウィキリークスに情報を提供したのではないか」という見方が強まっている。プーチン大統領は、トランプ次期大統領にいち早く祝辞を贈っている。

来年9月には、ドイツ連邦議会選挙が行われる。メルケル首相は「ロシアがサイバー攻撃によってこの選挙結果を左右しようとする危険がある」と述べている。

同盟関係への亀裂に重大な懸念

またドイツ政府のフランク・ヴァルター・シュタインマイヤー外務大臣は今年8月、トランプ氏を「ヘイト・スピーチの伝道師(Hassprediger)」と呼んでいた。シュタインマイヤー外相は、トランプ氏が勝利した後「この投票結果は、多くのドイツ人が願っていたものではない。トランプ氏が大統領になることで、多くの事が難しくなるだろう」と強い懸念を表明。

トランプ氏は、選挙運動の期間中に「米国は友人を必要としない。北大西洋条約機構(NATO)は役に立たない」と発言している。NATOは、米国に率いられて、第二次世界大戦後、ソ連の脅威から西欧を守ってきた軍事同盟である。その同盟を率いる最高司令官となるトランプ氏が、欧州防衛の要であるNATOの必要性を疑問視しているのだ。これは、欧州の安全保障にとって重大な脅威である。シュタインマイヤー外相は、次期大統領のこの言動について、「今後は米国の外交政策について、先を見通すことが難しくなる。国際関係における大きな混乱が起きないことを望む」とコメントした。

ドイツ国防省のウルズラ・フォン・デア・ライエン大臣も、次期大統領が提唱する防衛政策に対する疑問を隠さなかった。彼女は「トランプ氏はNATO加盟国に対し、『あなたたちは軍事同盟にどのような貢献をしているのか?』と問うてくるだろう。だが我々も米国に対し、『あなたたちは、NATOの将来をどう考えているのか』と問うつもりだ」とコメントしている。

ドイツでは、トランプ次期政権が同盟国に対し軍事的な貢献を増大するよう求めてくることは不可避という見方が強い。これまでNATOでは、ある加盟国が軍事攻撃を受けた場合、他の加盟国はそれを自国への攻撃と同等と考えて反撃する義務を負った。いわゆる集団的自衛の原則である。だがトランプ氏は選挙運動の期間中に、「米国などNATO加盟国が反撃するのは、攻撃された国がNATOに対して十分な貢献を行っていた場合に限るべきだ」と主張した。

米国はこれまで他のNATO加盟国に対し、防衛予算を少なくとも国内総生産(GDP)の2%に増やすよう求めてきた。2015年の時点で29あるNATO加盟国のうち、米国(3.33%)を除くと、2%を超えているのはギリシャ(2.38%)、ポーランド(2.23%)、英国(2.09%)、エストニア(2.07%)の4カ国だけだ。ドイツの防衛費の対GDP比率は1.19%であり、米国の要求にはほど遠い。

政治の経験がゼロで、ビジネスマンであるトランプ氏は、歴代の大統領よりも、安全保障政策の上でコスト・パフォーマンスを重視するだろう。「外国の防衛ただ乗りは御免だ」という態度は、米国の庶民にもわかりやすい。今後米国が、同盟国に防衛支出の拡大を迫る可能性が強い。

ナチス時代への反省が国是

戦後の西ドイツ、そして今日のドイツ政府は、ナチス・ドイツが1930年代から1945年まで欧州で人種差別や他民族の迫害を繰り返したことに強い反省の意を示している。人間の尊厳を踏みにじったナチスの行為を二度と繰り返してはならないという決意は、ドイツの国是である。

ドイツの憲法に相当する基本法は、「人間の尊厳は絶対に侵してはならない。政府は、人間の尊厳を守る義務がある」という一文で始まっている。メルケル首相や閣僚たちがトランプ次期大統領に拒否反応を示すのは、トランプ氏が選挙期間中に行った言動に、人種や宗教に基づく差別的な態度を感じ取っているからだ。

例えばトランプ氏は選挙期間中に、大統領に就任した場合、米国に不法に滞在している約1100万人の外国人を国外退去させる方針を明らかにしていた。この問題について、欧米のメディアはしばしば「deportation(移送)」という言葉を使う。これはナチスがユダヤ人を強制収容所へ移送した事実をも示す言葉であり、ドイツ人やユダヤ人にとっては、戦慄すべきイメージを伴っている。

もちろんドイツは、超大国である米国を無視することはできない。米国はドイツにとって重要な貿易相手国であり、ドイツは米国に防衛面でも大きく依存している。したがって、ドイツが今後トランプ政権との対話の道を探ることは確実だ(実際、メルケル首相は11月11日にはトランプ氏と初の電話会談を行っている)。しかしドイツ人が、トランプ次期大統領の全ての政策を無条件に受け入れることはない。人権、そして人間の尊厳の擁護は、ドイツにとって越えてはならないレッド・ラインだ。

ドイツ人は、過去のナチスによる犯罪に対する反省に基づき、この一線だけは譲らないだろう。トランプ氏がメキシコ人、イスラム教徒、同性愛者などに対して差別的な政策を取った場合、ドイツ人たちは、トランプ氏をはっきりと批判するだろう。

これが、ドイツと同じく米国と同盟関係にある日本政府との、大きな違いだ。私はドイツに26年前から住んでいる一市民として、ドイツ政府が11月9日に見せた毅然たる態度を、誇りに思う。

蛯谷記事

ドナルド・トランプ氏が第45代米大統領への就任を決めた。この衝撃は大きく、週が明けた今も落ち着く気配がない。世界各国の政府はトランプ政権との付き合い方を模索している。

中でも大きなショックが広がっているのがEU(欧州連合)加盟国だ。米国との経済的な結びつきが深いだけでなく、NATO(北大西洋条約機構)の運営など安全保障面にも影響が及ぶ可能性がある。そのインパクトを、大和総研ロンドンリサーチセンターの菅野泰夫シニアエコノミストに聞いた。

(聞き手は蛯谷 敏)

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ドイツのベルリンでも反トランプを呼びかける運動が広がったが…(今年9月)。(写真:ロイター/アフロ)


 

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菅野泰夫(すげの・やすお)氏 1999年大和総研入社。年金運用コンサルティング部、企業財務戦略部、資本市場調査部(現金融調査部)を経て2013年からロンドンリサーチセンター長兼シニアエコノミスト。研究・専門分野は欧州経済・金融市場、年金運用など。執筆したリポートはこちら

菅野:トランプ氏が大統領に正式に就任するまでまだ3カ月ほどありますから現時点では精緻な分析をするのは難しいですが、英国への影響とEU加盟国への影響を考えてみましょう。

まず英国です。報道を見ていると、テリーザ・メイ英首相とトランプ氏の関係は良好とは言えないようです。トランプ氏は大統領選が終了した後、日本や韓国など各国の首脳と次々に電話会談をしています。メイ首相と会話をしたのは選挙の2日後で、10番目前後だったと報道されています。メイ首相はトランプ氏の過去の発言を否定的に捉えていると言われており、個人としての考え方は決して近くはないと思います。

一方で、互いの国が置かれた状況は、とても似てきました。いずれも自国の経済を優先する保護主義的な色合いを強めています。英国が国民投票でEU離脱を決めた一方で、トランプ氏はNAFTA(北米自由貿易協定)やWTO(国際貿易機関)などの国際的な枠組みからの脱退を示唆しています。

他国に縛られることなく自国の国益を優先するのがその狙いです。ただし、今後、英国と米国の利害が一致すれば、貿易などの交渉はスピーディーに進む可能性があります。トランプ氏は個人的に英国のEU離脱を支持していました。自身の躍進が米国に与える影響を「Brexit Plus Plus Plus」と連呼してもいました。

—オバマ大統領は英国がEU離脱を決定する前、「離脱すれば、米国との貿易交渉で最後列に並ぶことになる」と警告しました。これに対してトランプ氏は「離脱したら、貿易交渉を真っ先に始めたい」と述べていました。

菅野:そのため、今後、両国が接近する可能性はあると思います。メイ首相も、電話会談の中で、両国の関係をかつてのレーガン・サッチャー時代になぞらえて語りました。

むしろ、心配しているのは、EUへの影響です。トランプ大統領の誕生は、ただでさえ揺れているEUの結束を、さらに弱体化させる可能性があります。

—どのような影響がありますか。

菅野:ポイントは、2つあります。

1つは、NATO(北大西洋条約機構)の枠組みの将来です。トランプ氏は過去の発言の中で、「NATOは時代遅れの存在」と度々批判してきました。NATO加盟国は、GDP(国内総生産)比で2%を国防費として負担する目標が課されています。米国は自国の防衛費の拠出は増やす方針ですが、NATOへの貢献を減らす可能性が指摘されています。米国はNATOの柱と言える存在で、これがなくなれば、NATOの抑止力は著しく低下します。

—そうなれば、EUにおいて、テロ組織やロシアの脅威が拡大しかねないというわけですね。

菅野:ロシアのプーチン大統領とトランプ氏の関係が今後どうなるかは分かりませんが、仮に米国がNATOから遠ざかれば、ロシアの脅威が増すのは間違いないでしょう。もちろん、NATO加盟国もそうした事態にならないよう、トランプ氏がロシアに接近する動きを阻止するでしょうし、トランプ氏も政策方針を変える可能性は十分にあります。

—「反ユーロ」「反EU」政党を完全に勢いづかせた

トランプ氏の勝利がEUに与えるもう1つの影響は、「反ユーロ」や「反EU」を掲げる極右政党をさらに勢いづかせたことです。トランプ氏が、Brexitを主導したUKIP(英国国民党)のナイジェル・ファラージ元党首と親密な関係にあるのは有名です。今回の結果を、欧州各国の極右政党が歓迎しています。

フランスの極右政党である、国民戦線のマリーヌ・ルペン氏はツイッターでトランプ氏に賛辞を送りました。オランダの極右政党である自由党のヘルト・ウィルダース党首も「トランプ氏の当選は我々にも追い風」とメディアに語っています。フランス、オランダ両国とも来年に選挙を控えており、これらの極右政党の躍進が予想されています。

特に、フランスの大統領選に出馬すると言われているルペン氏は、これまで絶対に勝利することはないとみられてきました。しかし、「トランプ大統領」が現実になった今、その可能性を絶対にないとは言い切れなくなっています。

他にも、今年12月に実施されるイタリアでの国民投票、オーストリアでのやり直し大統領選など、トランプ氏の勝利によってその流れが分からなくなりそうな選挙が無数にあります。EUの結束が再び大きく揺さぶられることになるでしょう。

—EUは今後どうなっていきますか。

菅野:一言で言えば、内向きになるでしょう。EU各国の国内政治が不安定になりますから、EUとして統一歩調を取ることは難しくなるでしょう。仏オランド大統領、伊レンツィ首相、そして独メルケル首相もみな、国内政治を安定させることに手いっぱいになり、EUとしての全体最適よりも部分最適を優先するでしょう。

具体的に言えば、これまで推進してきたFTA(自由貿易協定)などの活動は停滞する可能性が高い。10月30日、EUはカナダとのFTAに署名しました。最後までベルギーの国内調整が難航し、やっとの思いで署名にたどり着いた。今回はなんとかまとまりましたが、EUが今後もこうした結束を維持できるかは、非常に疑わしい。

加盟国は次第に、EUに加盟していること自体を足かせと感じるようになっていくでしょう。今後、米国や英国は、緊縮財政から財政出動に政策を転換する。その結果、仮に経済が上向くことになれば、緊縮財政を強いるEUに対する不満がさらに高まるでしょう。

こうした苦しい状況の中、中東から流入する難民がさらに増え続けています。米国がNATOへの関与を弱めれば、中東紛争の解決はさらに遠のくからです。難民の増加は、EUの結束をさらに困難にするでしょう。

—世界の主要国が内向きになっていくと。

1930年代のブロック経済に似てきた

菅野:1930年代にブロック経済が広がりました。この状況に似ていくと思います。拡大を続けてきたEUも、当面はEUという枠組みをどう維持するかが最大の課題となるでしょう。

もちろん、EUがすぐに解体してしまうとは思いません。しかし、その結束がかつてないほど揺らいでいるのは間違いありません。その行方を占ううえでも、来年の欧州各国での選挙は注視しておく必要があります。

—EU離脱を決めた英国は懸命だった?

菅野:結果的に、英国のEU離脱決定は時代の流れを映し出していると言えるかもしれません。もちろん、離脱した英国も課題が山積していますから、英国の判断が正しかったとは言い切れませんが、これからの時代を象徴する変化であることは間違いないでしょう。

保護主義が世界的に広がる今、多くの国の政府が姿勢を大きく変化させています。最優先すべきは自国民である、自国の経済である。自国のことは自国で守り、利害関係が一致する相手とは個別に交渉する。そんな潮流が当面は主流になるでしょう。

そこには、大国や巨大な連合の傘の下で守られたセーフゾーンはありません。私は、この変化を「ニューノーマル」と呼んでいます。グローバル化の時代から次のフェーズに完全に移ったと言えるかもしれません。

こうした時代の中でどう立ち振る舞うか、日本も自ら考えなければならないと思います。

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