『AIIBは成功するのか?中国でも疑いの声 ADBと初の協調融資へ、それでも立ちはだかるアジアのリスク』(6/14日経ビジネスオンライン 姫田小夏)について

中国企業の海外でのM&Aは人民元暴落前に買えるだけ買っておこうとの腹積りではないかと思います。下記の日経の記事でピムコの創業者のコメントがいみじくも語っていますように「資金繰りに限界」がいずれやって来ます。ジャンプ、ジャンプ或は別の銀行・ノンバンク(融資平台)からの借換で当座はしのげるかもしれませんが、日本のバブル崩壊のように、誰かがいずれババを引き、連鎖倒産が起きて行くでしょう。3経済主体で30兆$もの債務は完全には返済できません。数字が大きすぎます。倒産→失業者増大→社会不安→暴動頻発→共産党打倒の流れとなるかどうかですが。しかし、日経もやっと中国の真実の姿を報道するようになりました。

<6/15日本経済新聞 電子版 シリコンバレーに映る中国マネーの明と暗  編集委員 梶原誠 

 米西海岸のサンフランシスコはシリコンバレーに近く、ハイテク企業を担当する投資銀行家が大勢集まっている。その一人で、30年以上の経験を持つエリック・エドモンドソン氏が興味深い話をしていた。「起業家たちは今、”BAT”に自社を買ってもらうのを目標にしつつある」と。

Keisuke Honda

本田圭祐選手も所属するセリエAのACミランの買い手にはアリババや百度がちらついた。写真はロイター

 「BAT」とは中国の百度、アリババ集団、騰訊控股(テンセント)の3社の頭文字でつくった言葉だ。急成長を遂げ、中国ハイテク企業の代名詞になった3社は豊富な資金力を使って世界で買収を繰り返す。最近もサッカーのイタリア1部リーグ(セリエA)のACミランの買収交渉を巡り、アリババや百度が買い手として取り沙汰されたばかりだ。

■「BAT」に買収される会社めざす起業家

 起業家たちは今、そんなBATに認められて買収の対象になるような会社をつくろうと励んでいる。

 自社株の売却は、株式公開と並んで「出口」と呼ばれる起業家の一里塚だ。株の買い手はこれまでマイクロソフト、オラクル、インテルなどの米大手企業が主に担ってきた。それに中国企業が加わろうとしている兆しは、世界企業の勢力図の変化を物語る。

Makoto Kajiwara

梶原誠(かじわら・まこと) 88年日本経済新聞社入社。東京、ソウル、ニューヨークで記者を歴任し、現在は香港が拠点。編集委員・論説委員としてアジアの窓から世界を見ている。興味分野は「市場に映るものすべて」

 BATら中国企業の動きは、買収によって自らのブランド力を高めたり、新たな技術や顧客基盤を得たりする攻めの戦略の一環だ。もっぱらアジアや欧州向けではあるが、海外企業の買収は「一帯一路(新シルクロード)構想」を担う中国の政策でもある。

 ただ、シリコンバレーを歩いてみると、それだけではない中国マネーの存在も聞こえてくる。

 「『ダム・マネー』(愚かなマネー)っていわれているんですよ」。30歳代の米国人の起業家の一人は、地元でこう陰口をたたかれる中国マネーの存在を明かす。

 もうかるかどうかがまだはっきりせず、米国のベンチャーキャピタルも避けて通るのに、気前よくお金を出してくれるお金の出し手だ。「ドット・コム」と社名につくだけで資金が集まった2000年までのハイテク株ブームを思い起こさせる投資判断である。

 「中国から逃げてきたマネー」。これが起業家の読みだった。

 世界の主な金融機関で構成する国際金融協会(IIF)によると、中国からは昨年、差し引き7000億ドル近い空前の規模の資本が流出した。ペースは落ちたとはいえ、今年も流出は続いている。

■中国からの逃避資金、投資判断は甘く

 これらのなかには中国経済の先行きを不安視し、その結果である人民元の先安観を嫌う中国の富裕層の逃避資金も含まれる。そんな中国マネーがシリコンバレーの出来たての企業にも流れ込んでいるのではないか。中国から離れるのが第一の目的なので、投資判断は自然と甘くなる。

Bill Gross

債券王ビル・グロス氏は「中国の危うさは中国の人々が知っている」と指摘する

 中国からのマネー逃避を中国経済への警告ととらえる投資家が、カリフォルニア州南部の海沿いの街、ニューポートビーチにいた。「債券王」の異名を持つビル・グロス氏だ。ピムコを創業し、世界的な機関投資家に育てた同氏は今、米運用会社ジャナスのポートフォリオ・マネジャーだ。

 同氏の警戒は,国内総生産(GDP)の150%を超えたとの試算もある民間企業の過大な債務に向いている。

 「企業はもうけを借金返済や利払いに回すのに精いっぱいで、生産的な投資どころではなくなる」。そしてこう締めくくるのだ。「中国は利下げなどで問題が露呈するまでの時間を稼げる。だがこのままだといつか資金繰りに限界が来ることは、中国の人々自身が知っている」。高級住宅やリゾートが密集するニューポートビーチにも、中国マネーが押し寄せているのだ。

 世界にあふれ出した中国の巨大マネー。そこには攻めと守りという、2種類のマネーが混在している。>(以上)

本記事はAIIBも問題含みと言うものです。パキスタンのグワダル港は明らかに軍事目的です。マラッカ海峡が封鎖されても中東からの原油の輸入を可能にするためと思われます。「中国はここを「中パ経済回廊」の起点に位置づけ、内陸部の新疆のカシュガルからグワダルまでの約3000キロの陸路開通にも乗り出している」とありますが、地図で見ますと、カシュガルからグワダルまで一直線で、高速道路でも作るのかもしれません。パキスタンもそこまで中国に認めるかどうかです。普通に考えればいくら中国のお金とはいえ、中国兵を高速で派兵できるような道路を作らせることは考えにくいです。戦争になればミサイルかジェット機で道路は簡単に崩壊・陥没させられるでしょうけど。新疆もウイグル族の土地ですので、有事の際は安全とはなりません。

AIIBは審査能力が低いので、ADBの力を借りねばならず、そうすれば当然中国の思いのままの融資にはなりません。単独で融資すれば焦げ付きが増えるだけでしょう。AIIBの参加国が100国になったとして、銀行の実力とは無関係です。株主の多い民間銀行がそれだけで評価されることがないことと同じです。どれだけ利益・付加価値を上げられるかが勝負です。アフリカと同じで中東にも部族問題があり、一筋縄では行かないでしょう。中国の在庫処分・失業者派遣を図ろうとしても民族感情の問題があり、うまく行かないでしょう。

記事

Renminbi

中国主導の国際金融機関「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」への参加国が100近くに達する見込みだという(写真はイメージ)(c)AFP〔AFPBB News

 中国の主導で設立された国際金融機関「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」の参加国数が、2016年末までに100近くに拡大する見通しだという。実現すればその規模は、日本と米国が主導する「アジア開発銀行(ADB)」(67カ国と地域が参加)をしのぐ。

 また6月10日には、AIIBとADBの初めての協調融資が発表された。パキスタンの高速道路建設に対して、AIIBとADBがそれぞれ1億ドルを融資するという。これは中国の勝利を意味するのだろうか。

 AIIBは、中国が提唱する「一帯一路」構想を金融面で支え推進する役割を担う。一帯一路とは、アジアと欧州をつなぐ陸と海の巨大な“シルクロード経済圏”構想だ。

Joe Hockey

「AIIB」の設立協定に署名するオーストラリアのジョー・ホッキー財務相(2015年6月29日撮影)。(c)AFP/WANG ZHAO〔AFPBB News

「『一帯一路』構想はかつての欧米列強のやり方に着想を得たものだ」──こう語るのは、中国経済と60年近く向き合うベテラン研究者の1人だ。

 19世紀半ば、英国は清国をアヘン貿易の恰好の市場ととらえ、大量のアヘンを清国に売りつけた。アヘンの密輸をやめさせようとする清国と英国は衝突し、アヘン戦争(1840~1842年)が勃発する。戦争で清国が敗れると、英国は南京条約により上海、広州などを開港させた。

 開港した5つの港では自由な貿易ができるようになり、英国人は家屋を賃借したり、賃借した土地に家屋を建てることができるようになった。物資が集積する港には住宅のほか倉庫や店舗が建ち並び、街として繁栄する。清国は外交上の主権を失ったが、経済的には潤うことができた。

 そして21世紀の今、中国が19世紀の欧米列強と同じことをしようとしていると、この研究者は指摘する。つまり、中国がAIIBによってアジアの新興国を“開港”させ、中国の過剰在庫という“アヘン”を売りつけようとしているというわけだ。

中国が世界で港の建設に続々と出資

 新興国にとってインフラ建設は最重要課題だが、膨大な建設費がかかる。港湾行政に詳しい専門家は「新興国は自国だけでは予算を確保できないため、日本も多くの円借款などを提供しています」と語る。

 新興国では、インフラ建設に必要な技術も人材も不足している。「日本はアジア、アフリカに技術者を派遣したり、国内に毎年多くの研修生の受け入れるなどサポートしています」(同)。

 日本はODAを通じて、これまで多くの国にインフラ建設の支援をしてきた。しかし近年は、各国の港湾建設において中国のプレゼンスが高まっている。

 中国は現在、アジアを中心に港の建設に乗り出している。パキスタンのグワダル港、アフリカのジブチ港、イエメンのアデン港、バングラデシュのチッタゴン港、スリランカのコロンボ港、モルジブ港、ミャンマーのチャウピュー港、ギリシャのピレウス港など、中国の出資によって建設される港は枚挙にいとまがない。

中でも注目を集めるのがパキスタン南西部のグワダル港である。2013年、中国は同港の港湾管理権を取得し、2015年には同港の経済特区について43年の運営権を取得した。

 グワダル港は西はアラビア海、東はインド洋を結ぶ海上の要衝である。中国はここを「中パ経済回廊」の起点に位置づけ、内陸部の新疆のカシュガルからグワダルまでの約3000キロの陸路開通にも乗り出している。グワダル港の開発を急ぐ背景には、米国の中東における主導的地位を覆し、エネルギーや軍事面での安全保障を強化しようという狙いがある。

Gwadar

印のついた場所がパキスタン・グワダル港。中国は自国からグワダルまでの陸路開通も目指している。(Googleマップ)

国内でも「AIIBの枠組みは前途多難」の声

 中国政府は「一帯一路」によって「互聯互通(fulian futong)」が実現するという。互聯互通とは、アジア諸国が互いに「連結」することである。

 だが、中国では「本当に連結できるのか?」という懐疑的な声もある。

「上海経済評論」(東方早報、2015年9月発行)は、AIIBという枠組みの構築は前途多難であり楽観できないとする論評を掲載した。その理由の1つに次のような指摘がある。

「アジアの政治制度や経済体制、発展水準や文化教育、宗教はみな違う。国によっては政治的に不安定で、部族間の分裂や内乱が発生しているところもある。アジアの多くの国家では賄賂が横行し、法律は十分に機能しない。領土問題を抱える国もある」

その論評は、インフラ建設の資金を必要としている国ほど問題を抱えていることを指摘している。

 パキスタンのグワダル港にしても、建設地のバローチスタン州は政情が不安定な地域である。ここで生活するのは遊牧民のイラン系バローチ族で、国の6割の人口を占めるパンジャブ族とは反目する関係にある。パキスタン政府とも対立し、テロリストも潜伏すると言われている。米シンクタンクによれば、バローチ族は、中国やシンガポールなど外部の勢力が入ってくることを警戒し、国際的な港湾や輸送センターが建設されることに抵抗しているという。

 港の開発とともに闇の土地取引は盛んになり、土地を追われるバローチ族も後を絶たない。グワダル港が晴れて輸送上のハブとなったとしても、恨みを買った部族に襲われる可能性は否定できない。

 いかにAIIBが「互恵互利」を掲げたとしても、中国だけが参加国の利権を貪るという構図では、地元の反発は避けられない。また、経済効果を“エサ”にして参加国を増やしても、参加国同士の利害は対立し、連携は深められないだろう。

 AIIBの設立当初、中国は豊富な資金力で押し切れると思ったのかもしれない。しかし、“アジア連結”のリスクを低く見積もり過ぎていたのではないだろうか。

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