『トランプ政権の評価は「良」、よくやっている 発足1周年、保守系シンクタンクのヘリテージ財団副所長に聞く』(1/19日経ビジネスオンライン 篠原匡)について

1/21アンデイチャン氏メルマガ<FBIと司法部の選挙介入>ヒラリー民主党がロシアゲートなるものをFBIと共にでっち上げたと言うもの。議会には資料が解除され、後に国民に解除されるようです。如何にヒラリーだけでなく民主党が腐っているかを表しているかです。でっち上げで作られた事件なので、これ以上の捜査は無意味でしょう。

http://melma.com/backnumber_53999_6636227/

1/19日経朝刊<トランプ減税、米100社超が賃上げ 260万人恩恵

【ワシントン=河浪武史、ニューヨーク=平野麻理子】2017年末に決まったトランプ米政権の大型税制改革を受け、米企業が国内投資と雇用増に一気に動き始めた。アップルは17日、300億ドル(約3兆3千億円)を米国内で投資すると表明。「トランプ減税」を契機に雇用増や賃上げを決めた企業は100社を超える。トランプ大統領は成果を強調するが、景気が過熱し、一段の金融の引き締めを招く可能性もある。

米連邦準備理事会(FRB)は17年12月、減税効果を見越し、18年の経済成長率予測を2.1%から2.5%に引き上げた。三井住友アセットマネジメントの試算によると、米国の税制改革が18~19年の成長率を0.4%分押し上げる。

与党・共和党のライアン下院議長は「賞与や賃上げ、米国内投資といった施策を公表した企業は160社を超す」と語った。賃上げなどの対象となる米労働者は既に260万人を超すという。

アップルが今回表明した投資計画は(1)米国内の人工知能(AI)などの事業に5年で300億ドル投資(2)雇用を2万人積み増し(3)先進製造業への投資基金も50億ドルに増額――が柱。低税率国に2500億ドルもため込んだ海外資金を原資とする。

米国の法人税率はこれまで35%と高く、海外で稼いだ利益も米国に戻した時点で35%を課税する仕組みだった。ただ、17年末に決まった税制改革では18年から法人税率を21%に下げ、さらに海外所得は米国に資金還流しても原則非課税とした。こうした措置が今回の巨額投資の決断を促したのは間違いない。

米国は05年にも時限立法で国内に還流する所得への税率を大幅に引き下げた。この結果、当時の米企業の海外内部留保額の3割にあたる2千億ドルが国内に戻ったとの推計もある。クレディ・アグリコル銀行の斎藤裕司外国為替部長は「数年かけて全体の1割程度の2千億ドル超が米国内に戻り、ドルを押し上げる要因になりうる」と指摘する。

減税で浮いた資金を従業員に還元する米企業も相次いでいる。米ウォルマート・ストアーズは最低賃金を時給10ドルから11ドルに引き上げ、最大1千ドルのボーナスも支給する。

日本企業ではトヨタ自動車の北米営業利益は全体の15%に相当し、減税の恩恵も大きくなりそうだ。設備投資が活発になれば産業機械の需要が増え、日本企業の業績を改善させる要因にもなる。

ただ、米経済は失業率が17年ぶりの水準となる4.1%まで下がり、完全雇用に近い。労働市場が一段と逼迫すればインフレにつながり、FRBは利上げを加速して逆に景気を冷やさなくてはならなくなる。

トランプ氏は「大型減税で成長率を3%に引き上げる」と主張する。ただ、米国に企業とカネが回帰すれば周辺国の空洞化を招き、各国との通商摩擦が激化するリスクもある。>(以上)

日経記事は米経済が過熱し、インフレ懸念でFBRが金利を上げるようになるのではとマイナスイメージで捉えています。強い米国の復活は歓迎すべきこと。日本もインフレ目標を2%に定めてずっとやってきましたが、なかなか目標に達しません。企業の投資と賃金上昇が少なく、内部留保にのみ金が退蔵されているからです。日本の企業経営者の責任は大きいです。

カラファノ氏の見方は正鵠を射ています。篠原氏もうまく質問して良い回答を引き出しています。故・筑紫哲也だったらこうはいかなかったでしょう。小生もオバマの8年間は弱腰で、中露に好き勝手やらせてきて評価がFというのも頷けます。いまのトランプ政権はオバマの尻拭いをし、立て直しを図っている所です。メデイアの偏向報道はやればやるほど信用を失うという事です。日本も同じです。

記事

2017年1月20日のドナルド・トランプ政権の誕生から1年。看板政策の頓挫や共和党議員との舌戦、税制改革の実現、腹心との絶縁など、トランプ政権はジェットコースターのように揺れ動いた。ツイッターでの奔放な発言を含めた一挙手一投足が話題となるが、この1年間の実績に米国の識者はどんな「通信簿」をつけるのか。保守系シンクタンクのヘリテージ財団、ジェームス・カラファノ副所長に聞いた。

(聞き手はニューヨーク支局、篠原匡)

—トランプ政権の1年をどう評価する?

ジェームス・カラファノ氏(以下、カラファノ):A(優)、B(良)、C(可)、D(落第寸前)、F(落第)の5段階で評価するとBだ。

外交政策については2つのカテゴリーに分けられる。一つは危機対応で突きつけられた状況への対応。もう一つは慎重に計画されたもので、意図的に実行している政策だ。危機対応に関してはかなりうまくできていると思う。

昨年4月、シリアによる化学兵器の使用があった時は政権を取ってそれほど時間がたっていなかったが、政権は明確な対応をした。北朝鮮が弾道ミサイル実験を始めた時もある程度の対処ができていた。

ジェームズ・カラファノ氏 ヘリテージ財団副所長。2003年にシニアリサーチフェローとしてヘリテージ財団に参加後、他の研究所を経て2012年に同財団の防衛・外交政策チームを率いる。外交・安全保障の専門家としてトランプ政権の政権移行チームに参画した。米軍に25年間の従軍歴がある。

その週に、大統領は中国の習近平・国家主席を含む3カ国の指導者と会合を持った。ティラーソン国務長官もロシアの大統領と初会談を開いている。こういったことは国家安全保障担当補佐官が交替したすぐ後のことだ。政権の危機対応能力を明確に示していると思う。

慎重に計画された政策という観点を見ても、政権は成果を出している。安全保障チームが選挙後に立ち上げられたということを考えればなおさらだろう。

北朝鮮に対する戦略を打ち立て、アフガニスタンへの増派という決定を下した。欧州の同盟国に米国のNATO(北大西洋条約機構)へのコミットメントを再確認してもらうために多くの時間も費やした。

また、トランプ大統領はイランが核合意を順守していないと批判したが、それも敵対強国としてのイランにどう対応するか、という戦略の第一歩だ。イスラム国(IS)やアルカイダに対する戦略、ロシアや中国に対する枠組みもある。政権は外国政策の重要な議題に対して、今後の戦略がどうあるべきかということを決断している。

—議会との連携、税制改革の成立で自信を深めた外交・安全保障政策の課題は?

カラファノ:課題があるとすれば政治任用職が完全に埋まっていないところだ。国防総省と国務省の両方で任命が遅れており、悪影響を及ぼしている。

他国は対話できる上級の窓口を必要としているが、現政権にはその窓口が不足している。誰もが国防長官や国務長官、大統領や副大統領と直接話せるわけではない。だからこそ、次官や次官補レベルの政治任用職は必要だ。政権の動きを制限する要因になっていると思う。

また、撤退するところと積極的に攻めるところのバランスが取れていない。政権はアジアや欧州、中東の平和と安定に焦点を当てており、積極的に関与する必要があると考えている。それは正しいことだと思う。問題は今の軍事力でそれが維持できるかどうかだ。

外交政策は問題ないと思っているが、米軍は20年間、乏しい予算の中で酷使され続けている。軍事力を維持できる水準まで防衛予算を増やす必要があるが、まだそれができていない。

—国内政策についてはどうか?

カラファノ:大統領にとっては政策を法案として実現させることが課題だった。率直に言えば、議会との関係という面ではうまくスタートが切れなかったと思う。大統領のアドバイザーが同じ方向を向いていなかったことが原因だが、大統領の経験不足も影響していた。もっとも、税制改革法案の成立によって政権は議会との連携で自信を深めたのではないか。

—あなたから見て政権のいいところと悪いところはどこか?

カラファノ:外交・安全保障政策という面でいえば、優れたシニアチームの存在だ。とくに国家安全保障会議のスタッフはとてもいい。マティス国防長官、ケリー首席補佐官、マクマスター国家安全保障補佐官はうまく協力して大統領の構想を支えている。

この政権は過去の2政権の間を取るという明確な構想があると思う。ブッシュ政権は重要な問題をすべて解決しようとしたためにアグレッシブになりすぎた。オバマ政権は逆に、引き下がろうとしたために競争相手に空白を与えてしまった。そういう見解を持っていると思う。

トランプ大統領は人気のない人々の中で最も人気がある人物

今の政権は世界の諸問題を解決し、民主主義を促進させるようなことはしないが、世界で不在になるわけではない。米国の利益を守りながら前進していくことになるだろう。

現に、トランプ政権は国益と米国の価値観のバランスを上手に取っている。米国は営々と培ってきた価値観を捨てたと批判されているが、(ミャンマーで迫害されている)ロヒンギャ問題を見れば分かるように、米国は毅然とした対応を取っている。北朝鮮をはじめ人権問題には引き続きタフだ。

正直言って、米国の外交政策は変更されたことよりも継続していることの方が多い。全体として、外交・安全保障政策は正しい方向に向かっている。

—それがなかなか認識されないのはなぜか?

カラファノ:怒りに満ちたレトリックのせいだ。それについてはトランプ政権にも野党と同じくらい責任がある。

大統領選では国民の怒りと分断を加速させるような言葉が行き交った。その状態を選挙後も維持しようと、大統領と野党は考えたのだろう。ある意味で、両者はそれぞれに対する国民の怒りを糧にしている。

大統領支持率が低いと言われるが、高い支持率を得ている人はどこにもいない。メディアも、政治家の大半も人気がない。トランプ大統領は人気のない人々の中で最も人気がある人物だと思う。

恐らく野党は怒りが政権の弱体化につながると考えたのだろう。それは政治的には成功するかもしれないが、コンセンサスの構築や外交政策へのサポートという点では事態を悪化させるだけだ。

レトリックと政策は別物

—怒りのレトリックによって実際の政策が見えづらくなっている、と。

カラファノ:レトリックと政策は別物だとみるべきだ。誰もが選挙中の公約やツイート、怒りに満ちた言葉に注目する傾向にあるが、米国の政策を理解するには実際に実行していることを考察する必要がある。実際、多くの場合でトランプ政権は保守で一貫している。

例外があるとすれば経済政策だろう。トランプ大統領は選挙中にクレージーなことを語っていたが、今のところまだ実行に移していない。NAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉の後にどうなるのか。これは現在進行形ということだろう。

—確かに、トランプ政権は選挙中のレトリックに比べれば現実路線にシフトしているように見えます。

カラファノ:私がこう言ったとしよう。「選挙中に話したことと実際に政権を運営する際に実行することは異なります」と。それを聞いた人は恐らくほぼ全員が「もちろん、それはそうでしょう」と言うだろう。日本や韓国、中国でさえも。

だが、米国人は執拗なまでに選挙中の言葉にこだわる。その理由はトランプ大統領がこれまでの政治家とは異なるからだろう。他の政治家であれば、それまでの長い実績があり、その政治家がどういう行動を取るか有権者は分かっている。

例えば、民主党の候補だったヒラリー・クリントン氏は選挙遊説で、私が思うにかなり馬鹿げたことを言っていた。ところが、誰も「オー・マイ・ゴッド」とは言わなかった。国務長官や上院議員、ホワイトハウスにおける彼女の経験をもとに判断しよう、と考えたわけだ。

トランプ大統領の場合はそういう前後関係がないため、人々は意味のない彼の言葉をそのまま受け取ってしまう。選挙後、米国人は相当な怒りを感じているので、大統領の意味のない言葉を無視できない。

これまでの外交政策を仔細に見ると、トランプ大統領の外交政策はブッシュ政権やオバマ政権よりもトラディショナルだということが分かる。

トランプ政権はUNESCO(国連教育科学文化機関)から脱退したが、過去を振り返れば、米国は脱退と再加盟を繰り返している。米国は国連の組織改革には関心を示すが、国連の馬鹿げた振る舞いには我慢できない。その傾向は共和党政権が強く、民主党政権は弱い。この浮き沈みが共和党と民主党の流れだ。

国連でトランプ大統領がやっているのはこの流れの中の話で、国際機関を軽視するというシフトではない。

—トランプ大統領は衝動的にものごとを決断しているという批判もある。外交・安全保障政策について、トランプ大統領の特徴や傾向はあるだろうか。

カラファノ:「アメリカ・ファースト」とたびたび語っているように、大統領が米国の利益を優先しているのは間違いない。米国の利益を守ることは大統領の重要な仕事だ。ただ、「アメリカ・ファースト」は「アメリカ・アローン」ではないとも述べている。

彼が平和と安定を重視しているのも事実だと思う。そして、世界で優先する3つの地域はアジア、中東、欧州で一貫している。そこで米国の存在感を高めたいという意識を持っているが、行きすぎたことはしたくない。また、他国の国家建設や紛争に巻き込まれるようなことも望んでいないが、孤立主義ということでもない。

ある程度の辛抱強さも見て取れる。アフガニスタンは好例だろう。

米国はアフガンに増派するという決断をした。容易な解決策がないということをアドバイザーは明確に示していた。撤退のスケジュールがあるわけでもない。丸8年間、駐留する可能性もある。だが、米国の利益を見据えた合理的な計画であれば前向きに実行すると大統領は語った。

大統領は極端に直線的でもない。一般的な方向で政策を選び、まず動いてみて、その後は反応を確認しながら進める。大統領の対処法には柔軟性と機敏性が見られる。

北朝鮮問題、時間とともに事態は好転に向かう

—北朝鮮は核・ミサイル開発をエスカレートさせている。現政権の北朝鮮対応をどう評価するか。

カラファノ:ある戦略に決めたと思う。それは「力強い封じ込め政策」とでも呼べるもので、核による抑止、ミサイル防衛、通常兵力による抑止、日本と韓国との強固な同盟関係、さらなる制裁のコンビネーションだ。

この戦略は北朝鮮を交渉の場に呼び戻すためのものでなく、彼らの兵器製造能力を阻止することを目的としている。大統領の過激な言葉の大部分は米国が自国を防衛するという意思表明であり警告だ。

時間がたてば事態は安定に向かうと思う。この戦略を継続させることで、核による北朝鮮の脅迫や同盟国への攻撃を阻止し、北朝鮮の兵器開発を遅らせることができる。北朝鮮からの攻撃を防ぐ米国の防衛力と北朝鮮の能力は差が広がっていくだろう。

実際には対立を激化させる道を歩んでいるのではなくむしろ逆。安定した未来への道を歩んでいる。

問題は、多くの人がこの危機を直線的に捉えているところだ。今日、怒りのツイートをすれば、明日はさらに激しいツイートが来る。そうこうしているうちに最終的に戦争になってしまう、と。

私は非直線的な危機だと考えている。北朝鮮の目標は体制の維持であって、戦争を始めればあの国は崩壊してしまう。韓国も多くの犠牲者が出るため戦争を望んでいない。中国も戦争を望んでいない。日本も同じだ。誰も戦争を望んでいない。

次のミサイル実験によって事態はさらに悪化すると誰もが予想しているが、先ほど述べた道のり、つまり制裁とミサイル防衛、核抑止、通常兵力による抑止を進めていけば、時間とともに事態は好転する。

—北朝鮮対応に関して、以前の政権との違いはどこにあると思うか?

カラファノ:違いは一貫性の欠如だと思う。米国が必要としているのは、北朝鮮の予測可能な行動パターンに対応できるだけの一貫性のある戦略だ。今まではそれがなかった。北朝鮮は従来のやり方を踏襲し、他国は北朝鮮をつついてみて、反応があればそれに対応するために様々な戦略を試した。それがこれまでのやり方だ。

—米国は北朝鮮に対する中国のさらなる圧力を期待しているが、中国は北朝鮮の崩壊を望んでいない。米国がすべきことは?

カラファノ:中国は米国との関係を悪化させない程度の最小限の協力をすることになる。米国からの圧力が増せばより協力するだろうし、米国が求めなければそれ以上の協力はしない。結局、米国は北朝鮮への圧力を継続することになる。

米国はこれまで、北朝鮮問題に関してどんな交換条件も出したことがない。米国は北朝鮮への圧力に関して中国に支援を求め、それを主張し、実際に中国の企業に対する制裁を始めた。その際に、「北朝鮮で協力してくれれば台湾については大目に見よう」、あるいは「南シナ海に関してクレームをつけるのはやめよう」などと提案したことはない。

米中の本質的な考え方はお互いは別々の道を進んでいるということだ。台湾の帰属、南シナの領有権、一帯一路、北朝鮮危機――。中国と協調し、対立を避ける方法を探すというより、中国との対立の根源を特定し、それを熟慮していく。お互いの意見が合わない場所を突き止め、そこを強調するわけだ。そうすれば、中国に米国の関心を認識させ、受け入れさせることができる。

対中国戦略、オバマ政権より視野は広い

実際のところ、米中関係は全体的に悪化していくと見ている。ただ、必ずしもエスカレートしていくとは限らない。中国を戦争に追い込むわけではなく、米国が身をひいて中国にやりたい放題させるわけでもない。米国は中国と競争し、利害がぶつかった場合には理解してもらい、米国の利益を守る。こうすることで、長期的に中国と安定した関係になる。

—北朝鮮だけでなく貿易赤字など米国と中国は別の課題も抱えている。トランプ政権はどのように中国と関わろうとしているのか。

カラファノ:先ほど話したように、こうした課題はそれぞれの道筋に沿って進む。それぞれに必ずしも強いつながりが出るとは思わない。北朝鮮にはすべきことをする。経済面では中国に圧力をかけるだろう。南シナ海では航行の自由を主張する。今後、南アジアとインド洋により多くの焦点を当てていくことになるだろう。

—中国に関して、オバマ政権とトランプ政権の間に違いはある?

カラファノ:2つある。オバマ政権の場合、中国により望ましい行動をさせるように対立を避けて中国に合わせるという方法を採っていた。だが、それはうまくいかなかった。この点がまず違う。

もう一つは、トランプ政権はオバマ政権よりも戦略的視野が広い。オバマ政権は中国への方向転換、あるいはアジアへのピボットを進めた。それはある意味で、北東アジアと太平洋で中国との共存を模索するような、視野の狭いデザインだった。

トランプ政権はインド・太平洋について発言している。このことからも、中国との関係を寄り広い概念で捉えていることが分かるだろう。背景には、米国が欧州、中東、アジアに関して慎重にならなければならないということがある。

実際、中国は全地域に影響力を及ぼそうとしており、米国はすべての地域に関与し、そこでの活動を管理する必要がある。インド・太平洋を認識しているということは、アジア地域への米国の関与について広い概念を持っているという証左だ。東アジアだけでなく、東南アジアと南アジアにおける米国の関心と行動を結びつける必要があるので、インド洋の重要性は高い。

—中国の拡大路線をどう見ている?

カラファノ:中国は自分たちの力を過大評価している。アグレッシブで拡張的なビジョンを進めることでアジア太平洋地域に多くの懸念を生み出している。結果として、国々は釣り合いを取るための対抗勢力として米国に関心を示している。

ご存じのように、米国の政策は「米国」を取るのか、「中国」を取るのかという二者択一ではない。ベトナムとタイに、米国の味方になるのか、敵になるのかという選択を迫ることはない。冷戦時代ではないからね。

米国も中国と関係を持っているように、どの国も中国と関係を持つようになると認識している。彼らは二者択一の関係を求めていないが、中国の要求によって主権を割譲するような状況も望んでいない。アジアとの関与を増やそうとしているトランプ政権のやり方はアジアの国々が求めていることに合致していると思う。

—-中東ではイランが影響力を高める一方、サウジアラビアではムハンマド・ビン・サルマン皇太子が権力を握り、湾岸諸国はカタールとの国交を断交した。中東の状況はどう見ているか?

カラファノ:米国が重視している3地域、アジア、中東、欧州の中で中東は最も困難な地域と言える。その困難の源は地域を不安定化させるイランの影響力と核拡散の脅威、そしてISとアルカイダ。つまり国境を越えるテロの脅威だけでなく、その地域の政府と人々に対する脅威、その地域を不安定化させる脅威だ。米国がすべきことは、この2つの課題に焦点を当てることだ。

このタイミングのエルサレム首都承認は疑問

トランプ大統領はイスラエルの米大使館をエルサレムに移すと発表した。賛否両論あるがこの点はどう見ている?

カラファノ:正直言って、私の中でも意見が割れている。イランの勢力を弱め、ISやアルカイダに対処することが米国の政策だとすれば、この地域での他の事項は後回しにすべきだ。エルサレムへの大使館移転という決断がその目標にどう貢献するのかということを考える必要がある。

ここには議論の余地がある。米国とイスラエルの関係を考えれば、米国がイスラエルの首都としてエルサレムを承認することに疑問を持つ人はいないだろう。また、イスラエルとパレスチナの和平プロセスにおいて、米国が真に中立的なパートナーだと信じている人は誰もいない。和平プロセスがうまくいくと思っている人もいない。したがって、大統領の決断が問題だとは思っていない。

ただ、疑問なのはなぜ今なのか。今回の決断によって米国は何ができるようになるのかという点だ。

今回の決断が、国内の政治的な目的を果たすためだというのは考えにくい。選挙中の公約を果たすためだとも思えない。米国とイスラエルの関係が良好だということを示すために、エルサレムを首都と承認する必要は全くない。

単に長年の宿題を片付けただけだという人もいる。誰もがいつかはするだろうと思っていたことだからね。和平プロセスに真剣に取り組むようパレスチナを脅したのかもしれない。間違いなく、衝動的な決断ではなかったと思うが、ここは議論の余地がある。

—イランに対抗するために、サウジアラビアとイスラエルが協力し合うという可能性は?

カラファノ:十分にある。イランが地域の大きな脅威ということはどの国も認識している。問題はどう対処するかだ。

サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は上から「アラブの春」を強要しようとしている。他国と同様に、サウジは人口の増加に対して富の分配が拡大できないという問題を抱えている。皇太子はそういった課題にトップダウンで対応すると同時に、イランの影響力拡大に対抗するために各国のパワーバランスをリセットしようとしていると思う。

戦略的な意見で日米首脳は一致している

—現在の日米関係をどう見ているか。安倍首相とトランプ大統領は良好な関係を築いているように見える。

カラファノ:効果的なパートナーシップを結んでいると思う。ある部分では2人の指導者のおかげだが、それだけでなく、アジア太平洋地域の平和と安定に関して、米国と日本の間に戦略的な意見の合致があるからだ。

日本とインドのパートナーシップが拡大していることと、米国とインドのパートナーシップが拡大しているのも同じ理由で、それぞれが世界を同じように見ているためだ。北朝鮮は当面の安全保障上の問題であり、対処しなければならない。中国の勢力拡大も地域の平和と安定を損ねる可能性がある。米国、日本、インドは同じ問題意識を共有している。

—トランプ大統領は日本に何を求めている?

カラファノ:その多くは既に日本がやっていることだ。もちろん、第一には安全保障における真の貢献者になってもらうことだろう。これは日本も前向きだと思う。米国、インド、オーストラリアとともにリーダーシップを発揮して、アジア太平洋地域で中国にうまく対処できるような安全保障の枠組みを作ること、これにも日本は前向きだと思う。

また、大統領は米国と日本で雇用を拡大させたいと思っているだろう。大統領は日本経済の悪化を望んでいない。お互いにとってウィン・ウィンとなるような経済機会を求めている。

—ロバート・モラー特別検察官が大統領選におけるトランプ陣営とロシアとの共謀について調べている。今後の展開をどう見ているか?

カラファノ:分からない。いろいろな声があるようだが、信頼できる予測はできないだろう。何が起きるのか、捜査の展開を待って見届けるしかない。恐らく、トランプ政権は何も悪いことはしていないと信じているのではないか。捜査が終わるのをひたすら待つ。それが彼らの方針だろう。

ロシア疑惑、大統領弾劾はあり得ない

弾劾はあり得ない。大統領を解任するプロセスは政治的なもので刑事上のプロセスは存在しない。そして、大統領を弾劾するだけの勢力を野党が得るような政治状況になることはないと思う。どう考えてもあり得ない。

—この捜査は政治的にダメージを与えると思うか?

カラファノ:今のところはそうは見ていない。なぜかというと、今回の捜査が党派的に偏ったものだと誰もが思っているからだ。この捜査は既に怒っている人々をさらに怒らせているだけ。人々の大統領に対する見方を変えているわけではない。

—政権とメディアの対立も増している。

カラファノ:まず、米国のメディアは概して中道左派だ。それに、批判することで読者の注意を引こうとしているという面もある。大統領もメディアと戦うことで、支持者の信頼を深めている。お互いに利用し合っているだけだ。だが、結果としてメディアの正当性は失われつつある。事実、メディアへの信頼度は大統領よりも落ち込んでいる。

大統領が報道の自由を損ねていると批判する人もいるが、私はそうは思わない。みんな言いたいことが発言できており、憲法上の危機などということはない。馬鹿げている。

大統領はある面で報道のクレディビリティ(信頼性)を攻撃している。それについては2つのことが言える。報道が信頼性を失っているということが一つ、そうしなければ大統領の政治生命が危なくなるということがもう一つだ。大統領は従来型の政治体制から出てきた政治家ではない。大統領の人気は彼の個人的なネットワークが基になっている。

大統領はSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を通して、あるいはメディアとの衝突を通して、支持者とのつながりを維持している。大統領は自分を憎むメディアによって、支持者とのコミュニケーションにフィルターがかかるというようなことは望んでいない。支持者も大統領の言葉は直接聞きたいと思っている。メディアと大統領の衝突はお互いの目的に合致しており、両者ともに対立を鎮めようと思っていない。

—最後だが、オバマ政権の8年間をどう評価する?

カラファノ:過去8年間を思い出してみれば明らかだろう。米国人は分裂し、大きな怒りを感じている。これは選挙結果によるものではない。選挙前から既に分裂し、怒りを感じていた。

オバマ氏が選出された2007年も米国は怒りを感じていたが、オバマ氏が米国人を一つにまとめることはなかった。不況からの回復にも時間がかかった。彼が経済に素晴らしい貢献したとは言いがたい。外交政策についてもオバマ政権の8年間で米国は欧州や中東、アジアで地位を失った。オバマ氏が大統領を退いた時と就いた時を比べればテロ攻撃も増えている。

もちろん、米国とインドの関係のように過去3人の大統領を通じてうまくいっているところもあるが、概していえば米国は外交でも地位を失った。経済、外交、そして市民社会においても基盤を失ったということを考えれば、どう考えても成功を収めたとは言えない。

—オバマ政権に成績をつけるとすると?

カラファノ:外交政策は「F(落第)」だろうね。北朝鮮は一夜にして核保有国になったわけではない。ISのカリフはオバマ氏が就任した時には存在していなかった。アフガニスタンもオバマ氏が退陣した時はひどい状況だった。またオバマ政権は軍隊を酷使した。外交・安全保障にはいい点はつけられない。

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『髪凍る雲南の少年とあかぎれ留守児童の10年後 大人になっても都会に行ってもついて回る貧困の連鎖』(1/18日経ビジネスオンライン 山田泰司)、『「霧氷少年」が露わにした中国“留守児童”問題 親不在の農村児童が2300万人、改善資金は着服されて…』(1/19 北村豊)について

1/19看中国<外媒:中国数据造假无法反映经济复苏(图)>1/18中国国家統計局の発表した数字は地方政府の改竄数字を基にしているので経済が良くなっているとは言えないと外国メデイア(FTのこと)が報じた。2012~16年北部3地区では数字を水増しした実績がある。経済好転かどうかは石油・石炭・鉄鋼価格に基づいたCO2排出量の数年間のトレンドを見れば良い。BBCは中国経済の原動力は貿易と報道。まあ、嘘で塗り固められた社会ですから、何が真実かを見抜く目を持ちませんと。中共の発する言葉は総てプロパガンダと思えば間違いないです。お人好しの日本人は騙されないように。慰安婦や南京、正定事件等歴史を改竄するのも得意です。

https://www.secretchina.com/news/gb/2018/01/19/847502.html

1/19看中国<美国两党同批中国贪婪的贸易政策>NY州選出の民主党上院議員の チャック・シューマーは1/17上院で「広州汽車集団がデトロイトで発表した計画は中国の貿易規則が明らかに不公平なことを示している。貪欲な貿易政策の典型でもある」と述べた。中国車の米国輸入関税は2.5%に対し、逆は25%である。トランプは「我々は中国の経済建設を助けて来た。両国の貿易で中国を利した面が大きい。中国やその他の国では我が国の製品に50%関税を課しているが我々は何も取っていない。これは不公平だ」と。

https://www.secretchina.com/news/gb/2018/01/19/847499.html

雲南省は「四季如春」と言われて首府の昆明市で世界花博も開かれ、高山地帯(1892m)なので日本のマラソン選手も昆明市でトレーニングに励んだこともありました。また、雲南省にある玉龍雪山は5596mもありますので寒冷な地方もあると思います。山田氏や北村氏の写真の子供は雲南省魯甸県に住むとあります。地図で調べますと麗江と貴陽市(貴州の首府)の中間ぐらいです。上の地図では昭通の所。中国駐在時代、小生はちょくちょく雲南には旅行で行きました。玉龍雪山も見ましたけれど、主には南の方で、昆明、石林、虎跳峡、怒江、瀾滄江、大理、麗江、迪慶(英国人作家ジェームスヒルトンから桃源郷と称された香格里拉)、西双版納等です。西双版納ではタクシーと交渉して一日借切り回りました。少数民族が沢山いて、傣族もいましたから元々民族的にはタイの人ではないかと思われます。

本両記事の感想は、北村氏の「国営通信社の「新華社通信」が1月12日付で配信した記事の表題は、『中国の霧氷少年を見て、外国人はついに中国がどうして強大かを知った』であった。これを見て、筆者はあっけにとられ、中国がどうして脆弱なのかを知ったのだった。」という言葉に表わされています。中共の価値判断のおかしさをいみじくも象徴しています。結果の平等を追求する共産主義で格差がこのように広がり(北京大学の調査ではジニ係数は0.73)、貧しい人々に対する思いやりもなく、富は賄賂と軍拡に使われるだけ。こんなおかしなことが罷り通るのは一党独裁、為政者の勝手が許されるからです。今こそ農民工は共産党打倒の動きを見せないと。でも、習近平は弾圧で臨むでしょう。中国の歴史で徳のある政治家は神話時代の尭舜禹くらいしかいないのでは。後は私腹を肥やし、人民を苦しめるだけの政治が続いてきたような気がします。ですから中国人の性格が悪くなる訳です。「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」と。だから善意で寄付した金もくすねる輩が出る訳です。日本でも注意しないと。

山田記事

ネットで拡散した髪と眉が霜で覆われた中国雲南の小学生の写真(写真:Imaginechina/アフロ)

今月上旬、寒さで髪の毛と眉毛を霜で真っ白に凍らせて小学校に登校する中国人の8歳の男の子の写真が中国のネットに出回り拡散し、中国で改めて内陸部の農村に住む子供たちの貧困問題がクローズアップされた。その後、Yahoo!JAPANや英BBC、米ニューヨークタイムズ等、日本や欧米のメディアも相次いでこれを伝えたため、この少年の写真を見たという読者も少なくないことだろう。

報道をまとめると、話の概要はこうだ。この少年は雲南省魯甸県の農村に住む王福満くん。自宅から小学校まで片道4.5キロの山道を毎日歩いて通っている。写真が撮られた日の気温はマイナス9℃だったそうだが、写真に写る王くんは、ダウンジャケットどころか綿も入っていないような薄手のシャツジャケットに丸首のシャツという薄着。真冬なのに秋口のような服をまとっている王くんの出で立ちを見れば、彼が厳しい経済事情に置かれていることは容易に想像がつく。

冬になると冷え込む土地とは言え、髪の毛も眉毛も真っ白になるほど凍えることは珍しかったのだろうか、担任の先生が教室に入ってきた王くんを見るに見かねて写真を撮り、校長をはじめ何人かにこれを送って、現地の子供たちの窮状を訴えた。これがSNSやミニブログで転送やいいね!が繰り返され、これをきっかけに中国では、王くんのような厳しい暮らしを余儀なくされている子供たちの存在と、子供の貧困問題についての関心が高まりつつある。

王くんは祖母と姉の3人暮らし。父親は都会に出稼ぎに出ていて、年に数回しか王くんの住む自宅に戻ってこれない。母親は、王くんがもっと小さいころに家を出て行ったまま、帰ってこなくなったのだという。

霜少年も留守児童

中国では、王くんの父親のような農村からの出稼ぎ労働者を「農民工」、王くんのような農村の自宅で親の帰りを待つ子供たちを「留守児童」と呼ぶ。中国国家統計局が2017年4月に公表した統計によると、農民工は全国に約2億8000万人というから、中国の約5人に1人が農民工ということになる。一方、留守児童は、2010年に実施された最新の人口センサスで、全国に6102万人いるとされている。

子供を置いて働きに出ざるを得ない理由は大きく分けて2つある。1つは、出稼ぎ者たちの自宅がある農村部では現金を稼げる仕事がなく、子供を進学させることはおろか、着るもの履くものも満足に買うことができないこと。もう1つは、中国の戸籍制度により、農村で生まれた農村戸籍の子供たちは、戸籍地の高校からしか大学を受験できない、つまり親たちの働く都会で受けることができないためである。

では、都会に出れば十分な金が稼げるのかと言えばもちろんそんな保証はない。

2001年から上海に住んでいる私は、安徽省や河南省といった内陸の農村から上海に出てきて肉体労働やウェーター、物流倉庫等で働いている何人かの農民工と縁あって知り合い、友だち付き合いをしながら10年以上にわたって見てきた彼らの生活を『3億人の中国農民工 食いつめものブルース』として1冊にまとめた。なので、農民工たちの暮らしぶりについてはいささか知見があるのだが、例えば上海の場合、中卒などの学歴でも働けるビルの清掃の仕事の報酬は現状、月額3000元(1元=約17円)程度。上海の中心部でワンルームのアパートを借りようと思えばこの金額ではもはや無理だ。出稼ぎ先の上海で住まいを自前で借りるのであれば、夫婦共稼ぎで6000元の月収があってようやく幾ばくかの仕送りができる程度しか手元には残らない。母親がいなくなったという王くんの場合は稼ぎ手が父親だけ。上海で働く私の農民工の知人にも、田舎に残した1人娘を家政婦をして女手一つで育てているシングルマザーのチャオさんという女性がいるが、その彼女の境遇や、王くんの出で立ちから想像しても、王くん一家の経済的環境は困窮を極めているだろうと思う。

今まで誰も描くことのなかった中国版ヒルビリー・エレジー3億人の中国農民工 食いつめものブルース

この連載「中国生活「モノ」がたり~速写中国制造」が『3億人の中国農民工 食いつめものブルース』として単行本になりました。  各界の著名人から好意的なレビューをいただいています。

  • 中国が熱さを忘れつつある中で、中国に対する熱い思いに満ちた本と言えるだろう。さまざまな読み方、活用法がある本と思うが、私には何より著者、山田氏のその「熱さ」が魅力的だった。 (中国問題の研究家遠藤誉氏によるレビュー「執念の定点観測で切り取った、中国農民工の心?」より)
  • もうひとつの違いは、ロウソクの味がするパンしか食べられない貧しい農民工たちの心の豊かさだ。外国人である山田氏と友情を築いた彼らは、自分が食べていくことさえ困難なのに、必ず「ご飯を食べに来て」と招待する。そこに、ホロリとした。 (米国在住のエッセイスト渡辺由佳里氏によるレビュー「繁栄に取り残される中国の『ヒルビリー』とは?」より)
  • しかし、奇妙なことだが、同書を読後、陰鬱な印象かというと、実はそうでもない。同書には、絶望的な内容があふれてはいる。それなのに、なぜか一抹の希望を感じさせられる。おそらく、それはn=1の農民に愛情を込めて付き添ってきた著者の生き様に、読むものが感動を受けるからだ、と私は思う。 (調達・購買コンサルタント/講演家坂口孝則氏によるレビュー「年収3万の農民に未婚の母、中国貧民の向かう先」より)

あかぎれだらけの手

あかぎれで痛々しい少年の手(写真:Imaginechina/アフロ)

ネットに拡散した王くんの写真には、髪の毛と眉毛を霜で真っ白にしたカット以外のものも何枚かある。その1枚が、王くんの手をアップで撮った写真だ。

あかぎれだらけで赤黒く浮腫んだ、王くんの幼い手。

この写真を見て、私は2007年、ある若い農民工の手を写真に撮らせてもらった時のことを思い出した。10年前の彼は、王くんそっくりのあかぎれだらけの手をしていたのだ。あれから10年後のいま、彼はいったいどんな手をしているのだろうか。

彼の名前はチョウシュンという。安徽省農村出身の1991年生まれ。今年27歳になる一児の父親だ。高校受験に失敗した彼は、15歳で母親が働く上海に出てきて、親戚の紹介で花市場で働き始めた。彼の両親は1965年生まれの私とほぼ同世代だが、2人とも、小学校しか出ていない。15歳で花市場に就職したチョウシュンだったが、仕事の辛さに音を上げて2週間で辞め、父親が農業をして暮らす実家に帰った。その後、東北地方は遼寧省の瀋陽で親戚の子守、浙江省の海沿いの町・寧波の海鮮レストランでウエーター、再び上海に戻ってきて美容師と、職も住む土地も転々とした後、2012年に上海の浦東空港に近い物流倉庫で軽作業の仕事に就いた。給料は残業の度合いで変動したが、平均すると4000元にはなった。

その年、近所の電子機器組立工場で工員をしていたやはり安徽省の農村出身の17歳の少女と知り合い翌2013年に結婚、この年に娘も生まれた。妻の給料と合わせ世帯収入は当時7000元。「仕事でパソコンの操作も覚え、昇給もした。初めて仕事が面白いと思えるようになった」(チョウシュン)。ゆくゆくはマイカーも買って、娘をドライブに連れて行きたい、そのためにはまず免許だと、2015年には1万元をかけて自動車の免許も取得。一児の父親になり、仕事に手応えも感じ始めた。2015年の半ば頃までの2年あまり、すなわち22~24歳のチョウシュンは社会人になって初めて、生活に充実感を覚え、自分の将来に夢も描ける生活を送っていた。

ところが、3年あまり務めた物流倉庫が2015年に不景気で突然閉鎖になり、その後勤めた別の物流倉庫も不景気で半年でクビ、再度見つけた別の倉庫では、給料は前職の2800元から2500元に下がってしまった。過去4年、仕事は一貫して空港の物流倉庫だが、3年前の4500元をピークに下がる一方で、5年前の給料だった3000元になかなか届かないでいた。

チョウシュンは、彼に初めて出会った15歳の時からしばらくの間、いつ会っても赤黒く浮腫んだあかぎれだらけの手をしていた。実家にいたころは、上海で働いている母親の代わりに炊事洗濯など家事の一切を、蛇口からお湯の出ない自宅で15歳の彼が担っていたためであり、上海に出てきてからは、花市場、レストラン、美容師と冷たい水を扱う仕事をしていたためだろう。高校生活を謳歌しているはずの年齢の少年が頻繁に、痛む手をさすり顔をしかめる様子を目の当たりにした私は、農民工を取り巻く厳しい現実の象徴として、さらに何年か後、チョウシュンの状況が好転し「あのころはこんな手をして頑張って働いていたね」と笑って振り返ることができるようにとの願いを込めて、チョウシュンに手を撮らせてほしいと頼んだのだった。

手は白くなったけれど

2007年、上海で再び働き始めたあかぎれだらけの16歳のチョウシュンの手(上)と、26歳になった彼の手

今回、雲南の王くんの手の写真を見て、私はチョウシュンのあかぎれの手を久々に思い出した。そしていつの間にかチョウシュンの手に関心が行かなくなっていたことにも気付いた。おそらく彼の生活が軌道に乗り始めた2012年頃から手が荒れないような生活を送ることができるようになっていったのではないかと思う。ただ、先にも書いたとおり、彼の生活水準は下降線をたどっている。彼と最後に会ったのは去年の4月。チョウシュンは今、どんな手をしているのだろうか。

そう思った私は、雲南の王くんの手の写真を見た数日後の朝、チョウシュンのSNSに、「16歳だった君の手だよ。覚えているよね? できれば、今朝の君の手を写真に撮って見せてほしい」と頼んだ。するとすぐに、彼から写真が送られてきた。赤黒く浮腫んでいたあかぎれが痛々しかったのと同じ手とは思えない、細い指に結婚指輪をはめた白い手がそこにはあった。ピーク時に比べれば給料は減ったのだろうが、少なくとも、いつでも手が荒れていた10年前よりは体に優しい環境に身を置けているのだろう。

チョウシュンから送られてきた写真には、靴を履いた足が写っていた。だから私は、「出勤の途中で撮ってくれたの?」と尋ねた。

彼から帰ってきた返事は、予想だにしていないものだった。

「いま働いてないんだ。『腎積水』になって1カ月前に仕事を辞めて、いまは実家で療養してるんだ」

腎積水、腎臓疾患のネフローゼである。

突然の閉鎖で3年務めた物流倉庫の職を失ったチョウシュンは、それを機に下がり始めた収入を少しでも増やそうと、24時間3交替の倉庫ばかりを選んで働いてきたとのことだった。先週は昼勤、今週は前夜勤、来週は夜勤とすべてのシフトをこなさなければならないため体力的にはキツいが、昼勤のみよりも割がいいのだという。いったいいくら収入が増えるのかと尋ねると、「月額にして200元程度」だと、チョウシュンは答えた。日本円にして3400円である。

成人のネフローゼは、過労とストレスが原因になることが多いのだという。これから子供の教育にお金がかかり始めるというのに収入は20代半ばから減り続けているというストレスや、月額200元を余分に稼ぐために酷使した体がついに悲鳴を上げたのだろうか。収入減で食生活も切り詰めざるを得なかったのかもしれない。

一方で、私にはなかなか理解できない農民工の行動が、このチョウシュンのケースでも起きた。それは、実家で療養する夫に付き添うため、チョウシュンの妻も上海の仕事を辞めてしまったことである。実家にはチョウシュンの両親もいるのだし、妻1人だけでも働いて現金を稼ぐべきではないかと思うのだが、こういう時、彼ら農民工はあっさりと仕事を辞めてしまうことが多いのだ。その背景には、農村の実家には田畑があるため、食べるものは何かしらあるから飢えはしないし、ボロ屋だが住む家もある、という現実がある。ただそれをいいことに働かないと、子供に教育を受けさせるだけのお金は稼げない。結果、子供は進学をあきらめ、親と同じ道をたどる。すなわち貧困の連鎖が続いてしまう。ここに、中国の農村とその貧困を解決する問題の難しさがある。

ただチョウシュンが、手があかぎれてしまう生活を脱して、白い手になろうと懸命に働いてきたのは事実だ。雲南の王くんが大人になるころ、農村の貧困の負の連鎖を断ち切る道筋は見えているだろうか。

北村記事

頭髪が霧氷で真っ白になった王福満君の写真をきっかけに、“留守児童”問題への関心も高まることに(写真:Imaginechina/アフロ)

1月8日、雲南省東北部に位置する”昭通市”に属する“魯甸県”の“新街鎮”に住む小学3年生の“王福満”(8歳)は、同鎮内にある“転山包小学(転山包小学校)”で行われる期末試験に遅れないよう、朝7時50分に家を出た。当時の外気温は零下9℃、家から学校まで山道は4.5km。王福満は舗装されていない泥道を懸命に歩いた。普通なら42分で学校に到着するのだが、この日は非常に寒く、山道は凍って滑りやすく、転ばないように注意して歩いたので、王福満が学校に到着した時には家を出てから1時間が経過していた。

少年の頭髪には“氷花”が

まだ期末試験は始まっていないはずだがと、王福満が心配しながら教室の後ろのドアを開けて中に入ると、すでに着席していた級友たちが一斉に後ろを振り返り、彼を指さして笑い声を上げた。それもそのはずで、薄手の服を着た王福満の頭髪には“氷花(霧氷)”が付着して真っ白くなっていたのだ。頭髪のみならず、眉毛とまつ毛にも霧氷が付着して真っ白だったので、級友たちにはあたかも白髪の老人が突然教室へ入って来たように見えた。一方の王福満は、どうして級友たちが彼を見て笑うのか理由が分からなかった。王福満は学校への道を急いで必死に歩いたから、薄着であっても汗をかいた。頭から出た汗は水蒸気となって蒸発し、外気に当たった水蒸気が瞬時に氷結して頭髪に付着し、霧氷を形成した。少しでも早く学校に到着して期末試験の準備をしようとひたすら先を急いだ王福満には、頭が冷たいという感覚はあったものの、一度も頭に触れなかったため、頭髪に霧氷が付着しているとは思いもしなかった。

当時、教室は期末試験が始まる直前で、級友たちだけでなく、“班級老師(クラス担任の教師)”(以下「クラス担任」)もいた。霧氷を頭髪に付着させて白髪となった王福満を見たクラス担任は、極寒の中を必死で歩いて来たのだと感動を覚え、8時50分に持っていたスマートフォンで王福満の姿を撮影した。そして、クラス担任はその写真を校長の“付恒”に転送すると同時に、感動を分かち合いたいとして同写真に“氷花男孩(霧氷少年)”という題名を付けて、中国最大のSNSである“微信(Wecha)”に投稿したのだった。当該写真は微信ユーザーたちから注目を受け、盛んに転送されて中国全土に知られることとなった。この結果、霧氷少年の写真は中国メディアによって報じられることになり、さらには全世界で知られることになったのである。

“希望小学”に通う“留守児童”

中国メディアが報じた霧氷少年に関する記事の要点を取りまとめると、以下の通り。

【1】王福満の家は赤貧洗うが如しで、古くてボロボロの日干しレンガの家に住んでいる。父親は少しでもカネを稼ごうと省都の“昆明市”へ出稼ぎに行っていたし、赤貧を嫌った母親は家を出て行ってしまっていた。父親は数カ月に1回帰って来るだけなので、王福満は2歳上の姉である“王福美”(10歳)と年老いた祖母の3人暮らしである。“留守児童”<注1>である2人の姉弟は身体の悪い祖母を助けながら明るく日々を送っている。霧氷少年の写真の中の王福満は薄着であったが、それは3着しかないコートを王福満がずっと洗っていなくて汚かったからで、当日は薄い服2着を重ね着して学校へ行ったのだった。

<注1>“留守児童”とは、両親あるいは一方の親が出稼ぎに行き、家に残された学齢期の子供を意味する。

【2】王福満が通う「転山包小学校」は、元の名を“転山包力輝苗圃希望小学”と言い、山間部に建設された“希望小学(希望小学校)”<注2>の一つである。転山包小学校の“付恒”校長は次のように紹介した。すなわち、全校生徒は167人で、彼らの大部分が“留守児童”である。同校には宿舎はなく、全員が通学しており、最も近い生徒で徒歩10分、最も遠い生徒は徒歩で2時間近くかかる。王福満の家から学校までは4.5kmだが、学校まで彼より遠い生徒は30人以上いる。2013年から現在までに、転山包小学校は教室棟、運動場、食堂、実験室などを順次整備し、生徒1人当たり年間800元(約1万4000円)の給食を提供しているが、現状のところ、学校には暖房施設はない。但し、遠距離通学の生徒のための無料宿舎を建設するための寄付をずっと募って来ており、新校舎の建設が完成したので、2月の“春節(旧正月)”以降は学生に宿舎を無償で提供できる予定である。

<注2>“希望小学”は、“中国青年基金会”が貧困地区にいる学校に行けない子供たちを復学させることを目的に、社会大衆から集めた寄付を原資に小学校の新設や老朽校舎の改築を行った小学校。

【3】王福満は算数が得意で、期末試験の算数は99点だった。1月9日付の中国メディアは、付恒校長から提供を受けた、「霜焼けでひび割れ、赤黒く膨れ上がった王福満の両手が、99点を取った算数の答案用紙の上に置かれている写真」を報じたが、そこには日々の暮らしの過酷さや、寒さをしのぐ防寒服や手袋、帽子を持たない貧困児童の悲しい現実が明確に示されていた。一躍有名人となった王福満であるが、彼にはそんな自覚は全くなく、冬休みになったら昆明市へ行って遊ぶのが希望であり、もっと勉強して将来は全国大学統一試験を受けて北京にある大学へ行きたいと夢を語るのだった。

さて、1月9日の夜9時、“昭通市党委員会”副書記で、“昭通市長”でもある“郭大進”が「全市の市民に冬季の生産と生活の安全を保障するためのテレビ会議」を急きょ開催した。地元メディアが報じたその概要は以下の通り。

(1)会議の冒頭で郭大進が「霧氷少年」に関する状況報告を行い、次のように述べた。すなわち、1月7日の夜から強い寒冷気流に襲われた影響で、昭通市は今冬最高の気温低下を来し、多数の県がある高海抜地区では普遍的に“小雪(1日の積雪量が2.5mm以下)”や“中雪(同2.5~5mm)”が降った。調査によれば、霧氷少年は魯甸県新街鎮にある転山包小学校の3年生で、自宅は学校から4.5km離れている。1月8日当日の気温は比較的低く、徒歩で通学した少年が教室に到着した時には、頭髪や眉毛が全て霧氷に覆われていた。その時の写真は8時50分にクラス担任が撮影したもので、学校長に転送された後にネット上に投稿された。当該写真はネットユーザーたちの注目を集め、各メディアによって報じられた。霧氷少年に関心を寄せてくれたメディアと社会各層に対し感謝を表明する。

(2)副市長の“呉静”は、8日当日に現場となった転山包小学校へ出向き、その後に霧氷少年の家を訪問したことを報告し、転山包小学校の在校生全員と留守児童が冬を安全に暖かく過ごせるよう必要な措置を講じるよう指示を出したと述べた。また、魯甸県県長の“馬洪旗”は、副県長の“梁浩波”と共に迅速に転山包小学校と霧氷少年の家に赴き実情を把握したと述べ、市政府から受けた指示を着実に実行中である旨を表明した。

(3)“習近平”総書記の「“以人民為中心的(人民を中心とする)”発展思想」を貫徹し、必要な措置を採り、市民の冬季における生産と生活の安全を保障し、とりわけ、優秀な学生や留守児童が暖かく安全に冬を過ごせるようにする。市の各部門は寒冷地区の学校に対し暖房設備や校舎の整備、医療班による霜焼け治療、道路の安全通行措置などを行うことを決議した。

「寄付横取り」「貧困放置」に抗議の声

一方、霧氷少年の写真を見たネットユーザーが霧氷少年に対する寄付を呼びかけたところ、1月8日だけで20万元(約340万円)を突破する勢いで寄付金が集まった。ところが、このニュースを知った地元の昭通市政府は、「寄付金の受け取りは“中国青年基金会”の傘下にある雲南省および昭通市の“青年基金会”が統一的に行い、当地にいる多数の貧困学生の援助に当てる」との通達を出し、ネット上の寄付呼びかけに歯止めをかけた。

この通達が出されるや、これに反発する抗議の声がネットユーザーのみならず多数の知識人から巻き起こった。知識人2人の発言を例に挙げると以下の通り。

【A】この種の組織は一般的には“清水衛門(甘い汁を吸えない組織)”と言われるが、そこで働く多くの職員は凶悪で、他人の寄付を見れば願ってもないことだと思って私腹を肥やす。君たちは彼らが寄付金の全てを貧困学生に供与すると思いますか。たとえ供与するとしても、それは大幅に減額されるだろう。

【B】地元の政府は霧氷少年を利用して外部から寄付を集めようとし、しかも寄付は青年基金会という組織を通じて行うよう要請した。このニュースを知って、私は真から悪態をつきたいと思った。子供が凍傷になった時、これら政府機関は一体何をしていたのか。王福満の状況は国外では基本的に発生せず、もし発生したなら一大スキャンダルで、地元の県長は引責辞任し、当該県政府は瓦解する。霧氷少年の事件が発生したことについて、政府は長年にわたる人々の生活に対する政策の誤りを反省しなければならない。メディアも今回の事件について貧困という問題の根本原因を追究せず、王福満が将来大学に行きたいと希望しているという美談に方向を転じようとしているが、彼が大学に進学できる可能性があるというのか。

中国農村に留守児童2300万人

ニュースサイト“網易新聞”の“数読(Data Blog)”欄は2017年8月1日付で「中国に留守児童は2300万人」という記事を掲載した。その概要は以下の通り。

(1)最近、公益組織“上学路上(勉学途上)”は『2017年中国留守児童精神状況白書』を発表した。同白書によれば、中国の義務教育段階にある農村の小中学生総数を4000万人と推定して、父母の一方あるいは父母双方が出稼ぎに出ている農村学生の数を計算すると、中国の農村には合計2300万人の留守児童がいることになる。

(2)中国における留守児童の具体的な数は推計方式によって相違が大きい。2013年に“全国婦女聯合会”が、2010年に実施された“第六次人口普査(第6回国勢調査)”のデータに基づき推計した結果は、農村留守児童の総数は6103万人であった。2016年に政府の多部門が連合して展開した「農村留守児童徹底調査」による統計では、全国の16歳未満で、父母双方が出稼ぎにでている農村留守児童の数は902万人であった。

(3)同白書は全国17の省・直轄市・自治区の一部学生に対してアンケート調査を行ったもので、有効回答1万4868部中の82.8%が農村の学校から提出されたものだった。農村学生の中で父母双方が出稼ぎにでている“完全留守状態”にある学生の比率は26.1%を占め、これに父母の一方が出稼ぎに出ている学生を加えると、留守児童の比率は58.1%に達している。

(4)農村地区における完全留守児童の多くは年老いた祖父母の世話を受けたり、親戚に預けられたりして、家庭の温かみを感じることが難しい。10%以上の農村留守児童が1年に1度も父母に会えておらず、3.9%の父親、8.5%の母親がそれぞれ1年に1度も子供と連絡を取っていない。

霧氷少年として一躍有名になった王福満とその姉の王福美には、昆明市へ出稼ぎに行っている父親しかいないが、母親は家を出たので、彼らは完全留守児童である。但し、彼らは決して特別な存在ではなく、上述した白書に基づけば、全国の農村地区には父母双方不在の完全留守児童が1000万人、父母の一方不在の留守児童が1300万人いる計算になる。こうした実情を勘案すれば、昭通市政府が王福満に対する寄付の受け入れ窓口を青年基金会に一本化し、集まった寄付金を王福満だけに限定せず、昭通市内の貧困学生のために使おうとするのは決して間違ったことではない。しかし、人々は感動を与えてくれた王福満のために寄付をするのであり、それは彼を含めた転山包小学校の全校生徒のために使われるべきである。そればかりか、人々は寄付に青年基金会のような公的組織が介在すると、寄付金額が大幅に目減りし、実際の受贈者には微々たる金額しか届かないことを過去の経験から知っている。だからこそ、人々は昭通市政府が出した通達に激しく反発したのだが、この決定が覆ることはないだろう。

“国家級貧困県”にはびこる不正

ところで、王福満が暮らす昭通市の魯甸県は、全国に564カ所ある“国家級貧困県”の1つである。“国家級貧困県”は“国家扶貧工作重点県”とも言い、「国家が資金を供与して貧困人口の救済と自立支援を行う重点県」を意味する。魯甸県は2014年8月3日にマグニチュード6.5の地震により大きな被害を受け、死者617人を出した。当時の統計によれば、魯甸県の人口は41万人で、その中の15万人以上が貧困人口であったが、地震の被害により貧困人口は増大したものと思われる。当然ながら、王福満の家族はこの貧困人口の中に含まれる。

中国政府が国家級貧困県に提供する資金を“扶貧資金”と言うが、この扶貧資金にも不正が確認されている。“国家審計署(日本の会計監査院に相当)”が発表した2018年の第1号公告には、監査結果で問題が発見された34件の状況報告が記載されているが、その中に2012年から2015年の間に雲南省の“硯山県”、“麻栗坡県”など11県の“扶貧辦公室(事務所)”が680万元(約1億1600万円)の扶貧資金を騙し取っていたことが判明し、29人の責任者が処罰されるとあった。

しかし、これは氷山の一角に過ぎない。1月9日付の中国メディアは次のように報じた。すなわち、国家審計署が2016年と2017年の2年間に374カ所の国家級貧困県を抽出して監査を行い、1万8200戸の貧困家庭を訪問して調査を行った結果、これら貧困県に供与された総額738億元(約1兆3310億円)の扶貧資金の中、70億元(約1190億円)以上の資金に問題のあることが判明し、各地に命じて回収などの方式で改善を促している。昨年10月末までに32億元(約544億円)を改善し、970人が責任を追及されている。

国家級貧困県の改善を支援するための扶貧資金が、資金の受け入れ窓口として実務を行う扶貧事務所の人々によって騙し取られていては、貧困人口が削減できるはずがない。本来なら中国メディアは霧氷少年を報じると同時に、留守児童と貧困人口に関する問題を論じるべきだが、国営通信社の「新華社通信」が1月12日付で配信した記事の表題は、『中国の霧氷少年を見て、外国人はついに中国がどうして強大かを知った』であった。これを見て、筆者はあっけにとられ、中国がどうして脆弱なのかを知ったのだった。

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『中国はなぜ「2020年、台湾武力統一」を目指すか 外資企業に“踏み絵”、一気に狭める包囲網』(1/17日経ビジネスオンライン 福島香織)について

1/18ロイター<インタビュー:米大統領、北朝鮮問題でロシア非難 中国に罰金も>米国が中国の知財侵害に対して巨額の罰金を課そうとしていますが、中国は米国債の購入停止を目論んで対抗しようとしています。その時は日本が引き受ければ良いのでは。担保は中国大陸にだけ届く核ミサイルのシエアリング(実質日本の意思で発射できる)密約を結ぶことです。1/15虎ノ門ニュースで、青山繁晴氏は、中国は日本の人口30万人以上の都市に核ミサイルの照準を合わせているとのこと。小生の住む柏市も当然入ります。以前から10大都市に向けて照準を合わせているとは聞いていましたが、やはり日本を敵国としているという事でしょう。「一帯一路」に協力するのはもっての他です。福島氏が言うように日本企業も良く考えませんと。レーニンの言った「資本家は利益の為には、自分の首を吊るす縄さえも売っている」ことにもなりかねません。

https://jp.reuters.com/article/usa-trump-trade-idJPKBN1F700L

http://kukkuri.jpn.org/boyakikukkuri2/log/eid2142.html#sequel

1/19日経朝刊<勢い増す中国、最大のリスクに イアン・ブレマー氏 米ユーラシア・グループ社長

中国共産党の習近平(シー・ジンピン)総書記(国家主席)は2017年10月、第19回党大会の活動報告で、中国は世界の先頭に立つ国家になるという演説をした。ゴルバチョフ・ソ連大統領(当時)が1991年12月、(自らの辞任に伴う)ソ連の消滅を認めて以来最も重要な演説で、世界的な意味を持つ。

Ian Bremmer 世界の政治リスク分析に定評。著書に「スーパーパワー――Gゼロ時代のアメリカの選択」など。48歳。ツイッター@ianbremmer

5年の任期の2期目に入った習氏は国内の権力基盤を固め、中国の対外環境を再定義し、国内の新しいルールを設定できるようにもなった。政治的な攻撃にさらされ本来の職務に集中できないトランプ米大統領が、伝統的な同盟国や同盟関係への関与を縮小するなか、中国は前に歩み出している。中国には、米国が自ら作り出した力の空白を埋める用意がある。

欧米の指導者は長年、中国の指導者はいずれ新たな中間層の要求に屈し、政治の自由化を余儀なくされると考えてきた。だが今では、包囲されているのは欧米の民主主義のようにみえる。欧米の市民は、グローバリズムが自分たちの生活に及ぼした負の影響に怒り、変化を求めている。政府は求めに対応できないでいる。既成政党や公開情報などへの一般市民の信頼感が薄れ、民主主義そのものが脅威にさらされている。

対照的に中国の指導者は、国内を繁栄させ、世界における中国の重要性を着実に高めた。抑圧や検閲、汚職、公害といった昔からの問題はまだ残っている。しかし生活の多くの分野でかなりの進歩があったことから、中国の人々は、欧米がなくしてしまった指導者への信頼感を失っていない。

こうした流れは、世界にとってどのような意味を持つだろうか。中国は今では、以前ほど抵抗を受けずに国際標準を設定できるようになった。

まず貿易・投資では、中国は世界戦略を持つ唯一といえる国だ。中国は広域経済圏構想「一帯一路」を掲げ、政治的な前提条件を設けずにあらゆる地域の途上国へ進んで投資することにより、野心を強めている。欧州は欧州地域の問題にかかりきりで、米国では、「貿易」が政治における否定的な言葉になってしまっている。アジアや中南米、アフリカ、中東の政府は、中国と連携する可能性が高まっている。

第2に、世界ではテクノロジーを巡る攻防が繰り広げられ、とりわけ米国と中国が人工知能(AI)への投資を競い合っている。米国ではAI分野は民間部門が主導しているようにみえるが、中国では国家が主導し、有力企業や機関に対し国家の利益にかなうようなやり方を指示しているといえる。貿易・投資戦略と同様、国内の社会不安を最も恐れる国々は、中国の発展モデルを魅力的と感じるだろう。小国などのハイテク部門は、中国や中国企業の求める技術標準と連携することになりそうだ。

最後に、価値観の問題がある。中国の魅力はイデオロギーではない。中国の輸出する政治的な価値観は、他国への不干渉という原則だ。経済援助と引き換えに政治・経済改革を要求する欧米に慣れている他国の政府にとっては、魅力的だ。欧州の首脳が多くの問題を抱え、トランプ氏が「米国第一」主義の外交政策を掲げる中、欧米的な価値観に基づかない中国の経済や外交へのアプローチに対抗するものは何もない。

もっとも、中国の国際的アピールに限界があるのは明らかだ。中国の周辺国は、自国付近での中国の軍事力の誇示に懸念を深めている。だが中国が米国のような軍事力を世界に展開できるようになるには、まだ数十年かかる。中国は地域大国にとどまり、米国との軍事支出の格差も縮まっていない。

ただグローバル化が進んだ世界では、経済的な影響力という武器やサイバー空間での不明瞭な勢力バランスが、国家の安全保障の脅威になっている。国際的な影響力の行使について、従来型の軍事力は今までほど重要でない。

18年以降の世界的な事業環境について、中国企業は国内だけでなく存在感を強める。中国政府が影響力を拡大する国においては、中国が推進する新たなルールや標準、慣行に従わねばならなくなるだろう。

中国のアジア太平洋地域における勢力拡大を制限するために日本とインド、オーストラリア、韓国が協力を強めることが予想される。摩擦や紛争のリスクが生まれる。米中関係の状況によっては、トランプ政権がアジア太平洋での活動を活発化させるかもしれない。中国が内外で不名誉な挫折に直面するようなことがあれば、壮大な野心を抱く習氏が、共産党内のライバルから攻撃を受けやすくなる可能性もある。

世界は18年、中国に注目し、中国と欧米のモデルを比較するだろう。欧米にとって、中国のシステムはほとんど魅力がない。ほかの地域の大多数の国に対しては、中国のモデルはもっともらしい、欧米に代わる選択肢を提供する。習氏が選択肢を進んで提供する準備ができていることが、18年の世界最大の地政学リスクだ。>(以上)

共産主義が世界に広がるのは悪夢としか言いようがありません。毛沢東が目指した世界永久革命の名を借りて、習は中華の復興をしようとしているのでは。而も武力だけでなく資本の象徴であるお金の力を借りて。これから見ても結果の平等を目指す共産主義は名ばかりで、中国人が世界制覇して資源を独り占めしようとしているのが分かります。これを防ぐには中国経済を崩壊させる必要があります。渡邉哲也氏が言う金融制裁と海上封鎖で貿易できなくすることです。中国の富の大部分は米国への輸出ですから、それをできなくして軍拡原資を無くすことです。習の反腐敗運動で軍の粛清が続けられ、軍内部には習に対する不満が募り、昨年末には習の9回目の暗殺が企てられたとの話もあります。(1/14ZAKZAK 習近平氏 9回目の暗殺未遂にショックを受け一時入院か)。クーデターが起きるように、軍に金が回らないように、かつ石油も手に入らないように締め上げれば良いのでは。イアン・ブレマー氏の見立てでは習の昨年の党大会の活動報告は世界史的な意味を持つとしていますが、一種の警告だと思います。自由世界に住む人々が中国の陣地取りを許して良いのかどうか、やはり国際ルールと違った行動をする中国は仲間はずれにしなければ。要人に裏で賄賂を贈るかハニーで誑かして、中国に有利な契約を結ぶのはスリランカやパキスタンでも見られました。世界は悪に靡こうとしています。もっと危機感を持って中国と対峙しなければ。

https://www.zakzak.co.jp/soc/news/180114/soc1801140007-n1.html

記事

米国系大手ホテルチェーン・マリオットインターナショナルは、台湾を「国扱い」したことを中国に謝罪した(写真:AP/アフロ)

習近平政権がいよいよ台湾統一にむけた攻勢を強化してきた。たとえば、年明けから中国に進出する外資系企業に対する“踏み絵”を踏ませている。マリオットホテル、米デルタ空港、スペインのアパレル大手ZARAなど、中国に大きな市場をもつ外資系企業に対し、台湾、香港、チベットを「国扱い」していることに対して、謝罪を要求し、今後国扱いさせないことを確約させているのだ。台湾と中国の統一世論を国際社会に誘導させようというのが狙いだが、巨大市場を失いたくない中国進出企業は次々と、中国の狙いどおり、謝罪し、「中国の分裂を支持しない」ことを表明。年初に香港英字紙サウスチャイナモーニングポスト上で、華人政治評論家の鄧聿文が、中国に2020年に武力統一を実現する計画があることを指摘しているが、その目標にむかって、国際環境を整えに入っているという見方もある。

「国扱い」で謝罪も「イイネ」で再炎上

1月9日、中国のSNS微博で、米国系大手ホテルチェーン・マリオットインターナショナルが会員向けに出しているメールによるアンケートの選択肢で、香港、マカオ、台湾、チベットを国扱いしている、と中国人会員が告発し抗議した。このことが中国のネットで炎上、「人民の金で儲けているのに、中国を分裂させようとしている!」と不買運動を呼びかけるまでに広がった。

マリオット側は微博公式アカウントですぐさま「深くお詫びいたします。マリオットの中国会員を失望させる過ちを犯したと思い至りました」と謝罪。さらに、上海に所在するマリオットの大中華区責任者が、マリオットの行為が「サイバーセキュリティ法」および「広告法」違反として、上海市黄浦区の市場監督管理当局から立件調査を受ける事態にまでなった。マリオットインターナショナルはすぐさま自主的にサイトおよびアプリケーションソフト上で発表したすべての情報精査を約束し、台湾やチベットを国扱いした記述をすべて消去、アプリも更新し、全面的に謝罪した。

だがその翌日の1月10日、チベット独立支持のNGO「フレンズ オブ チベット」のツイッターオフィシャルアカウントが「マリオットインターナショナルが、チベットを香港、台湾とともに国扱いしてくれたことを祝う」とツイートしたのに対し、マリオットの公式アカウントがイイネ(Like)を押していたことが、やはり中国人ユーザーに見つかり、またもやネットで炎上。マリオット公式アカウントはまたもや「我々は中国の領土や主権を損なういかなる勢力も絶対に支持しません。さらなる誤解をまねく行動については深刻に謝罪いたします」と平謝りさせられた。マリオットはこの一週間の間、実に5回も謝罪させられた。

同じように12日、米デルタ航空のサイトおよびアプリで、チベット、台湾を国家扱いして表記していたことが中国人ネットユーザーに告発されネットで炎上、それに対してデルタ航空が謝罪させられただけでなく、中国の民航局は、中国便をもつすべての外国の航空会社に対してサイトおよびアプリ上でチベット・台湾を国扱いしてないか調査を要求、その結果、ユナイテッド航空、KLMオランダ航空、エアフランス、アエロフロートなど24航空がチベット・台湾・香港などを国扱いしており、記述の変更が命じられた。

サイト上やアプリ上でチベット・台湾を国扱いしたとして中国人ネットユーザーから難癖をつけられ謝罪に追い込まれた中国進出外資企業はほかにも、米メドトロニック、スペインのZARA、仏シャネル、伊ブルガリなど20社以上にのぼったが、ほとんどが謝罪し、記述を国・地域に変更するなどに追い込まれた。

クイズ番組の「三択」でも炎上

また、中国大手ネットライブ配信アプリ花椒直播がクイズ番組で、カナダと並べて台湾、香港の名前を放送したことも、ネットユーザーからの抗議で炎上。「ジョイ・ウォン(台湾人女優)が住んでいるのはどこの国?」という問題の三択の答えに「香港、台湾、カナダ」と並べたことが問題視され、ネット情報管理弁法、ネットライブサービス管理規定に違反したとして番組の全面改正を命じられた。

中国に進出している企業において、顧客アンケートの選択肢などで、中国と台湾を同列の国家扱いで並べて表記することは実際よく見られることで、これまでは、中国は一国二制度や「一つの中国」原則などを打ち出してはいるものの、外国企業に対してはそこまで厳密な取り締まりはしていなかった。またおそらくは外資系企業も、あえて中国の政策に抵抗するというよりは、事実上、中国と台湾が、政治制度も文化も異なる“国”として分ける方が、企業が必要とする顧客資料、データとしては意味があるというところだろう。

だが、習近平政権になって、こうした細かい部分を見逃さなくなってきた。ささいな記述の差であるが、いわゆる“ネット紅衛兵”と呼ばれる愛国的ネットユーザーたちをけしかけることで、主だった企業のこうした“過ち”を見つけ出しては、謝罪させ、他の企業の見せしめとすることで、国際世論に強いメッセージを出している。

中国外交部は定例記者会見で、「香港、マカオ、台湾、チベットが中国の一部であることは客観的事実であり国際社会の共通認識。北京は外国企業の対中投資を歓迎しているが、中国に進出する外国企業は当然、中国の主権と領土の保全を尊重し、中国の法律、民族の感情を尊重してもらわねばならない」と改めて企業に対するイデオロギーチェックの必要性を強く打ち出した。

バチカンと関係修復、戦闘機侵入は倍増

中国がネットなどを通じて大衆をけしかけて、不買運動や抗議活動を起こさせることは依然からちょくちょくあり、たとえば、2017年、THAADミサイルの配備問題で、韓国のロッテ系列のスーパー約80店舗を閉店に追い込んだり、2012年の尖閣諸島国有化で、日系企業への焼き討ち暴動を扇動したりした。一見、民衆の怒りが爆発したようにみえるが、こうした動きは、実際のところ、当局の世論誘導によるものである。これは当局が大衆の言論や暴力を外交圧力に利用しようという政治的意図と同時に、大衆のガス抜き効果も兼ねていた。

だが、習近平政権二期目に入って、韓国や日本との関係改善の必要性が迫られてくると、こうした世論のガス抜きの矛先も、韓国や日本にばかり向けてもいられない。同時に、第19回党大会で強く打ち出した「偉大なる中華民族の復興」の今世紀半ばまでの実現へのファーストステップは、台湾統一に照準を定めるとみられている。

企業などに対する踏み絵だけでなく、その他の外交攻勢も強化されている。中国は目下、台湾と国交があり中国と断交中のバチカン市国との関係修復を模索しており、3月には双方が40点ずつ美術品を交換して展示ツアーを行う美術外交が計画されている。もし、バチカン市国が万一にでも中国と国交を結ぶことがあれば、台湾は最も影響力を持つ国との外交関係を失うことになる。

また解放軍の台湾に対する圧力自体も高まっている。2017年、中国戦闘機が台湾海峡の中間線を越えてきたのは少なくとも20回、2016年の8回の倍以上。また今年になって、中国の民間航空局は、台湾との事前協議なしに、一方的に台湾海峡の中間線より7.8キロしか離れていない民間航空路線の使用を開始、これは明らかに台湾に対する威嚇でもある。昨年は、台湾人NGO職員李明哲が政府転覆容疑で逮捕された事件もあった。

中国の民間シンクタンクに所属する政治評論家で、元中央党校機関紙・学習時報編集者の鄧聿文による論文が1月3日のサウスチャイナモーニングポストに掲載されたが、それによれば、中国は2020年に台湾を武力で統一する可能性がある、と改めて指摘している。

「手ごろな戦争」の現実味は

いわく、これまで曖昧模糊としてきた台湾統一のタイムスケジュールは、第19回党大会の“新時代”目標の一つとして“祖国統一”の実現が打ち出されたことではっきりしてきた。習近平の計画では2050年ごろまでに中華民族の偉大なる復興を実現するということだが、そのためには遅くとも、次の台湾総統選が行われる2020年までに台湾をコントロール下に置かねばならない。台湾統一以前に、“復興”などありえないからだ、という。

さらに、習近平政権は武力統一計画を進めるつもりだという。その要因は、台湾独立派のパワーが以前より高まってきたこと。この数年、経済を切り札に台湾人を取り込もうとしてきたが、むしろ両岸関係は悪化し、台湾人の中国に対するアイデンティティはむしろ淡化の傾向にある。また、たとえ国民党が再び政権に返り咲いたとしても、中台統一を指導するだけの力量はなく、中国人自身が台湾に対する武力統一を望みはじめたこと。政権は表面上、平和統一をスローガンとしているが、事実上、すでにこの理念は放棄している、と指摘している。

2020年というのは、中国が二つの100年計画の一つ「小康社会の全面的実現」目標の期限である建党100周年の2021年より一年前であり、もしこの時点で台湾統一が実現できれば、習近平政権にとっては長期独裁を全党および人民に納得させるだけの効果を持つ歴史的偉業となる。さらに、今は中国に比較的融和的にみえる米トランプ政権だが、昨年末に中国とロシアに対する定義を「戦略的ライバル」とする国家安全戦略を公布し、台湾との緊密関係を維持する姿勢を改めて打ち出したことを受けて、中国としては武力を使ってでも早期に台湾統一計画を実現する必要がある、と考えたかもしれない。

執政党としての正統性や軍の求心力がゆらぐ習近平政権が、そのパワーを回復するために“手ごろな戦争”を行う可能性はかねてから指摘されていたが、米国が北朝鮮問題で中国の協力を要請しているうちに、台湾統一を一気に進めるという考えは十分にありえる。そもそも、北朝鮮の核武装自体、江沢民政権が関与していたと見られているが、その動機は米国と台湾問題で駆け引きに使うためであったという説がある。こうした武力統一論を盛り上げることで、台湾を威嚇する一方で、国際世論の圧力を利用して台湾に“無血開城”させようということかもしれない。

ここで、問われるのは、日本と日本企業の姿勢だろう。

「次は日本だ」の覚悟を

日本では新版広辞苑が掲載地図で台湾を「台湾省」と表記し、台湾当局から強い抗議を受けたが、もともと親中派の岩波書店は記述に誤りはない、と開き直った。日本の場合、台湾の表記に関しては、必要以上に中国寄りになっている企業の方が多いかもしれない。その一方で、台湾シンパの日本人も多く、2020年の東京五輪で台湾をチャイニーズ・タイペイではなく、台湾という正名で参加を求める日本人による署名運動が民間で徐々に拡大している。どういう姿勢をとるかは、個々の歴史に対する理解、解釈とビジネス上の利益との兼ね合いの問題かもしれない。

だが、台湾が“平和統一”であれ“無血開城”であれ“武力統一”であれ、中国の一部となってしまうと、次に脅かされるのが日本の領土、尖閣であり沖縄である、という事は忘れてはならないだろう。価値観を共有する台湾の“民主主義国家”としての存在が、日本の安全保障に不可欠であるということも。

日本企業は、中国を刺激、挑発するような言動をする必要はないが、少なくとも世論が台湾の人々の意に反して中台統一の外交圧力に利用されるような状況に加担するような真似をしないことが、単なるビジネス上の利益以上に、切実な日本人にとっての利益であることを忘れないでほしい。

良ければ下にあります

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『「五輪外交で主導権を握った」と小躍りする韓国 知米派は「豹変するトランプ」を警戒』(1/17日経ビジネスオンライン 鈴置高史)について

1/18首相官邸と自民党に「首相の平昌オリンピック出席反対の件」としてメール送付しました。内容は、「自民党・公明党が首相の平昌オリンピック出席を促しているように見えますが、1/15読売新聞世論調査で「韓国の追加要求拒否、支持83%」、同じく1/15JNN世論調査で「日韓合意での韓国側対応「理解できない」が85%」とありました。日本国民の大多数が韓国の対応はおかしいと考えている証左です。そういう時に、韓国の招聘があるからと言って首相がオリンピックに出席すれば、韓国に誤ったメッセージを送ることになり、益々韓国を増長させるだけです。所謂従軍慰安婦は朝日新聞の誤報が元になっているので、それをキチンと国際的に謝罪させないとこの問題は永遠に続くだけです。自公両党は「出席の努力をしている」アリバイ作りをしているだけでしたら良いのですが。次の選挙のことを考えれば、上記の数字を見る限り出席はあり得ないと思います。」と。

首相官邸

https://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken_ssl.html

自民党 ご意見

https://www.jimin.jp/voice/

1/15レコードチャイナ<日本人の83%が「韓国の慰安婦追加要求を拒否すべき」、調査結果に韓国ネットが落胆「日本人たちの良心はどこへ?」「許しを得られる機会なのに」>

http://www.recordchina.co.jp/b253995-s0-c10.html

反日教育で洗脳された頭では批判精神が持ちうる訳がありません。韓国は「反日有理」「反日無罪」の国で反日であれば何でも許されると思いこんでいる反近代のおぞましい国家です。こんな国民と無理して付き合う必要はありません。『非韓三原則』で行くべきです。反共の橋頭堡としての役割も放棄してレッドチーム入りしている訳ですから。

まあ、韓国民が北と一緒になり、自分が虐殺される段になって初めて共産主義の恐ろしさに気付くのでしょうけど。後の祭りです。ルトワックの言う通り、自業自得です。日本も民進党と希望の党の合流話が壊れましたが、民進党と立憲民主党は合流する可能性があります。先の選挙で何故分かれて戦ったのかの説明もなく、選挙民を愚弄しています。彼らは左翼で、選挙で勝つことだけを念じて離れたりくっついたりします。中共・韓国と同じく平気で嘘がつけるのが特徴です。日本も選挙と言う民主的手続きを経て民主党を政権につけて如何に国益を損ねたか体験したにも拘わらず、まだまだ左翼議員が多すぎます。そんなに左翼がいいという人は是非中国人か北朝鮮人になってほしい。思想・信条に忠実であればそうすべきです。その勇気がない人は、左翼政党の微笑路線に騙されているのでしょう。もっと自覚を持って投票所に行かないと。

記事

1月9日の南北閣僚級会談実現で韓国は「主導権を握った」と胸を張るが…(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

前回から読む)

韓国人の「妄想」が激しくなってきた。

米中の支持で「運転席」に

鈴置:韓国人が「平昌(ピョンチャン)冬季五輪をテコに、我が国が朝鮮半島の主導権を握った」と大喜びしています。

聯合ニュースの「米中、文大統領を『運転席』に座らせる……南北をつなぐ北の核外交が始動」(1月11日、韓国語版)が典型です。書き出しを訳します。

南北対話を呼び水に北朝鮮の核問題を解決しようとする文在寅(ムン・ジェイン)大統領に対し、米中両国の首脳が確かな応援に乗り出した。

朝鮮半島周辺の力の秩序を導くG2(主要2カ国)である米国と中国が支持する中で、文在寅大統領の「朝鮮半島運転席論」が力強さを増している。

(この政権で)南北初の閣僚級会談を開いた翌日の1月10日、文大統領はトランプ(Donald Trump)大統領と電話で協議した。これに続き翌11日午後には習近平主席と通話、南北閣僚級会談の結果を説明したうえ今後の対応に関し協議した。

金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮労働党委員長と「間接対話」をした後に連日、米中首脳とその結果を迅速に共有し、対応を協議したと言える。

「五輪休戦」で一挙に挽回

—すごい喜びようですね。

鈴置:韓国人は、朝鮮半島の行方を決める時でさえ、自分たちは蚊帳の外に置かれてきたとの不満を持っています。

米韓首脳会談(2017年6月)を終えた文在寅大統領は「我々が対話を通じ朝鮮半島問題で主導的に動くことへの支持を取り付けた」と説明しました。

トランプ大統領を説得し、ついに運転席に座った、と誇ったのです(「早くも空回り、文在寅の『民族ファースト』」参照)

ところがその後、韓国は「運転席に座る」どころか、北朝鮮はもちろん、米中からもまともなプレーヤー扱いされませんでした。そこで韓国では「文大統領が座る運転席にはハンドルが付いていない」といった自嘲の声があふれました。

でも今、韓国は「五輪休戦」を唱えることで、自分中心に世界が回り始めたと考えています。これまでの「ふがいない韓国像」を一気に覆す快挙です(「『五輪休戦』で金正恩の窮地を救う文在寅」参照)。

北朝鮮が平昌冬季五輪に参加を表明。それをテコに韓国は米国に合同演習の延期を飲ませました(「五輪休戦を巡る動き」参照)。

  • 五輪休戦を巡る動き
2017年
11月29日 北朝鮮、ICBM「火星15」試射、「核武装を完成」
12月19日 文在寅大統領、米NBCに「五輪期間中は合同演習を中断するよう米国に提案した」
2018年
1月1日 金正恩委員長、新年の辞で「平昌五輪に代表団派遣の用意ある。核のボタンは常に私の机の上にある」
1月2日 文在寅大統領、南北対話の速やかな実施を指示。韓国、北朝鮮に「閣僚級会談の1月9日開催」を提案
1月3日 北朝鮮、南北連絡チャネルを再開、五輪参加を協議と発表
1月4日 米韓首脳、電話協議で合同軍事演習の延期に合意
1月5日 北朝鮮、閣僚級会談の開催を受諾
1月6日 トランプ大統領、会見で「いつも(北朝鮮との)対話を望んでいる」「(無条件での対話は)しない。それは彼(金正恩)も分かっている」
1月9日 板門店で南北閣僚級会談
1月10日 文在寅大統領、新年記者会見
1月10日 米韓首脳、電話で南北会談に関し意見交換
1月10日 トランプ大統領、会見で「南北対話が世界のためになることを期待する。今後、数週間、数カ月の間に起こることを見守ろう」
1月11日 中韓首脳、電話で南北会談に関し意見交換
1月11日 トランプ大統領、WSJに「金正恩とはたぶんいい関係がある」
1月15日 南北、五輪に関する局長級実務協議
★   ★   ★
2月9-25日 平昌冬季五輪
3月9-18日 平昌冬季パラリンピック

注)トランプ大統領はWSJ報道の「いい関係がある」との発言は「いい関係になるだろう」を誤って報じたと1月14日、ツイッターで主張

さらに、南北閣僚級会談の開催にこぎつけた文在寅大統領は、米中首脳にその結果を説明する快感を味わいました。それを見た韓国人は「やはり我々は運転席に座っていたのだ!」と小躍りしたのです。

韓国の顔色を見る日本

いつもは冷静な筆致の中央日報のコラムニスト、チョン・ヨンギ記者も「中国と日本が韓国の顔色をうかがうようになった」と文在寅外交を褒めたたえました。「『平昌開幕式』の夢のような場面」(1月8日、日本語版)から引用します。

文在寅大統領は金正恩が新年の辞で差し出した平昌五輪の出席カードを握って、トランプ大統領に電話をかけ韓米合同軍事演習の延期を確定させた。

驚くべき機敏で大胆な行動だ。中国と日本も戸惑い、朝鮮半島のハンドルを握った文大統領の顔色をうかがっている。

韓国語の元記事を読むと「顔色をうかがう」部分は、やや上から目線の翻訳で「様子をうかがう」くらいのニュアンスと思います。が、いずれにせよ韓国人の高揚感が伝わってきます。

韓国の通信社、NEWSISも1月15日「日本、南北対話の進展で『日本外し』を憂慮」(韓国語)を報じました。

南北対話が進み始めたうえ、米国もこれに理解を示している。このため日本政府が「外される」と恐れていると東京の外交筋が明かした、との内容です。

安倍は五輪を拒否できない

文在寅外交の勢いに押され、安倍晋三首相も平昌五輪に出席せざるを得ないだろう、と書くメディアも出てきました。聯合ニュースの「『謝罪不可』を繰り返した安倍……2年連続で新年早々『慰安婦挑発』」(1月11日、韓国語版)です。

配信先のメディアでは今も読めますが、記事が差し変わったようで現在、聯合ニュースのサイトにこの記事は見当たりません。そこで韓国日報のサイトから引用、翻訳します。

平昌五輪を控え南北間の対話ムードが造成されたうえ、トランプ大統領も対話を支持する立場を明らかにするなど、状況が変わった。

南北対話局面が続く状況で韓日関係が悪化すれば、日米同盟を通じ対北圧迫路線に重点を置いていた自分の立場が弱まる可能性があると懸念せざるを得ないだろう。

少し説明が要るかと思います。韓国人は今「周辺国のトップが1人も平昌五輪に出席しないのではないか」と心配しています。

安倍首相も来る雰囲気にはない。1月9日に発表した「従軍慰安婦に関する日韓合意への新方針」で韓国政府は「日本の謝罪が不十分」と主張したからです。日本政府は同日、この蒸し返しに対し「合意で『不可逆的に解決』と約束したではないか」と抗議しました。

翌10日に記者会見した文在寅大統領は「日本に対し慰安婦問題の真実と正義に立脚した解決を求めるということだ」と述べ、明確に追加措置を求めました。この発言は朝鮮日報の「質疑応答全文・文大統領の新年記者会見」(1月10日、韓国語版)で読めます。

こうした状況から、聯合の記事も「安倍は来ないだろう」とまずは書きました。しかしその後に「だが、我々の肩をトランプが持った。これまで米国と組んで強腰だった日本も変わらざるを得ない。安倍が来る可能性が出てきた」と気を取り直したのです。

同じノリで「安倍の五輪出席」を要求する韓国の外交関係者が目立ちます。「トランプを味方に付けた。日本には強く出られる」との気分が国全体に広がっているのでしょう。

トランプは冷血漢だ

—しょげかえっていた韓国人が突然、舞い上がったのですね。

鈴置:「舞い上がる韓国人」に危機感を抱く韓国人もわずかながらいます。知米派です。朝鮮日報の趙儀俊(チョウ・ウィジュン)ワシントン特派員は「豹変するトランプに気を付けろ」と書きました。 「トランプの南北対話に関する本音」(1月8日、韓国語版)を訳します。

トランプ大統領はNYT(ニューヨーク・タイムズ)やWP(ワシントン・ポスト)を「フェイクニュース・メディア」と激しく攻撃する。が、一方でその記者に対しては優しく名前を呼び、時には直接電話で自らの考えを伝えたりするという。目的の達成に必要なら、いつでも敵と同衾できるのだ。

あるシンクタンクに属する専門家は「トランプ大統領は実業家出身。プラス思考で、勝つのは自分の側と考える性格だ」としたうえ「平昌五輪をテコに使うため今は対話派の手を上げているが、結果が気に入らなければ一瞬にして強硬派に力を与えるだろう」と予想している。

青瓦台(大統領府)は平昌五輪を通じ、北朝鮮を対話の場に引き出し、それにトランプ大統領の支持を得たと喜んでいるのかもしれない。しかしトランプ大統領は朝鮮半島の非核化という目標に集中するだけで、必要なら手段をいつでも変えられる冷血漢だ。

青瓦台による対話の推進が結果的に平和の定着どころか、逆に米国の軍事行動を早める結果をもたらす恐れさえある。

数カ月は見守る

—「逆に軍事行動を早める」とは?

鈴置:文在寅大統領はトランプ大統領に「合同演習を延期すれば北朝鮮は対話に出てくる。その場を使い、非核化を話し合う米朝対話を実現するよう努力する」と説いて、延期を受け入れてもらったと思われます。

もちろん、米政府は文在寅政権を信用していません。北朝鮮の言いなりになり、国連制裁を破ってカネやモノを渡したり、あるいは南北対話を引き延ばして北朝鮮に核開発の時間稼ぎをさせるのではないかと疑っています。

1月4日の米韓電話協議で合同軍事演習の延期を決めた後、ホワイトハウスはそれに関する発表文で「過去の過ちを繰り返さぬため、北朝鮮に対する最大限の圧力を続けることで両首脳は合意した」とクギを刺しています。

The two leaders agreed to continue the campaign of maximum pressure against North Korea and to not repeat mistakes of the past.

これだけ念を押されているのです。もし「文在寅の裏切り」が明らかになれば、トランプ大統領が突如、北朝鮮の空爆に出かねない――と、趙儀俊特派員ならずとも考えます。

なお米国は「米朝対話」、あるいは「非核化要求」に対する「回答期限」を、パラリンピックが終わる3月18日頃に設定しているフシがあります。

トランプ大統領が1月10日、記者団に「数カ月待つ」と語ったからです。ロイターの「Trump, on possibility of North Korea talks, says: ‘Who knows where it leads?’」から引用します。

Hopefully it will lead to success for the world, not just for our country, but for the world. And we’ll be seeing over the next number of weeks and months what happens.

南北閣僚級会談の結果に関し、文在寅大統領と電話で話し合った直後の会見です。記者の質問は当然、南北会談が米朝会談につながるのか、に集中しました。

トランプ大統領は「それが世界のために成功することを望む。今後、数週間――数カ月の間に何が起こるか見守ろう」と答えたのです。

早くも裏切り

—韓国が裏切る兆しはあるのですか?

鈴置:あります。1月9日の南北閣僚級会談で韓国側が「非核化に関する対話」を提案したところ、北朝鮮側は強い不満を表明し、無視しました。

韓国側は「非核化」をそれ以上強く推しませんでした。それどころか米韓合同軍事演習の中断の布石となる合意も交わしました。

「南北閣僚級会談・共同報道文の骨子」の③「南北関係で提起されるすべての問題を、我が民族が朝鮮半島問題の当事者であるとの立場で対話と交渉を通じ解決する」です。

南北閣僚級会談・共同報道文の骨子

  1. 平昌冬季五輪・パラリンピックが成功裏に進展し、民族の地位を高める契機となるよう積極的に協力する
  2. 軍事的緊張状態を緩和し、朝鮮半島の平和的な環境を醸成し、民族の和解と団結を図るために共に努力する。緊張状態を解決するため、軍事当局者会談を開催する
  3. 南北関係で提起されるすべての問題を、我が民族が朝鮮半島問題の当事者であるとの立場で対話と交渉を通じ解決する。関係改善のための南北閣僚級会談と各分野の協議も開催する

米国の目には、南北が裏でつるんで米国を騙しているように映ったはずです。というか、実際そうなのですが。

翌1月10日の文在寅大統領の会見は異様でした。「南北関係の改善とともに北の核問題を解決せねばならぬ」「この2つは別々に処理できる問題ではない」「核問題解決に誠意を見せない場合は、国際社会は制裁、圧迫を続けることだろう」と「非核化」をしつこいほどに強調したのです。米国から相当の圧力がかかったのでしょう。

韓国メディアも驚きました。「親北」の文在寅大統領がせっかく南北対話を実現したのに、北朝鮮を怒らせる「非核化」をこれほどしつこく持ち出すのは意外だったのです。

中央日報系のテレビ局、JTBCの「文大統領『会談自体が目標ではあり得ない』……『非核化』を強調」(1月10日、韓国語、動画付き)は、「大統領は『北朝鮮の核』『非核化』に23回も言及した」と切り出しました。

親米保守派は米国に配慮した大統領の発言に安堵しました。中央日報の社説「会見で確認された文大統領の現実的な対北朝鮮認識」(1月11日、韓国語版)はこう書きました。

非核化が抜けた対話は北朝鮮・米国の葛藤と同盟の離間を煽り、北朝鮮に核武装の時間だけ与える最悪の手だ。

「審判の時」が来る

この社説も「豹変するトランプ」を警戒するよう呼び掛けました。その部分を訳します。

トランプ大統領は韓米合同演習を延期したうえ、南北対話を100%支持すると表明し、文大統領が久しぶりに「運転席」に座るよう力を尽くしてくれた。

しかし、南北対話が非核化に進めず、北朝鮮に時間稼ぎする舞台に転落すれば、米国の態度は急変し得る。南北対話が北・米対話につながらなければ、今年の半ばに「審判の時間」が来る、との海外メディアの警告を聞き流してはならない。

—「審判の時間が来る」とは?

鈴置:WSJ(ウォールストリート・ジャーナル)の「Amid Signs of a Thaw in North Korea, Tensions Bubble Up」(1月9日)を指すと思われます。

記事の最後に「外交的な展望が開けるか否かによって、2018年の半ばに審判の時(a time of reckoning)が来る」とあります。

—今年7月には米国は軍事行動に出る、というのですね。

鈴置:北朝鮮が核を放棄しなければ、です。一応、韓国に交渉させ、国連制裁の効果も見る。しかし、あまりに時間をかけると北朝鮮が米国まで届くICBM(大陸間弾道弾)を完成して空爆がやりにくくなる。7月が限界だろう、との根拠でしょう。

韓国は自業自得

—7月まで待てるのですか?

鈴置:「今すぐ攻撃せよ」と主張する人もいます。「手をこまねいていれば手遅れになる」との理由です。

その1人が日本でも戦略家として有名になった、米CSIS(戦略国際問題研究所)シニア・アドヴァイザーのルトワック(Edward Luttwak )氏です。Foreign Policyの「It’s Time to Bomb North Korea」(1月8日)で「即時空爆」を主張しました。

完訳ではありませんが、ニューズウイーク日本版の「南北会談で油断するな 『アメリカは手遅れになる前に北を空爆せよ』」(1月9日)でも読めます。

韓国人が読んだら気が滅入る内容です。「北朝鮮が韓国に対しロケット砲で反撃するだろうが、それは気にするな」と書いています。

—なぜ「気にするな」なのでしょうか。

鈴置:韓国の自業自得だからです。ルトワック氏は「ソウルは北朝鮮の攻撃に脆弱だから官公庁を南方に後退させ、民間企業にも移動のインセンティブを与えよ、と米国は前々からアドバイスしてきた。しかし韓国政府は耳を貸さなかった。ミサイル防衛網を作るべき予算も、日本を攻撃するための戦闘爆撃機につぎ込んできた」と説明しています。

見抜かれた「離米従中」

—「韓国は捨て駒」ということですね。

鈴置:その通りです。ルトワック氏は韓国が「離米従中」の国になった、とも書いています。同盟国をいとも簡単に裏切る国の安全を、米国が考慮する必要はないのです。

米国人は韓国人が考えるほど馬鹿ではありません。韓国の「離米従中」に外交関係者はとっくに気がついている。ルトワック氏のようにはっきりと言う人が少ないに過ぎません。

米国が「五輪休戦」に合意したのだって、韓国を疑いながらも北朝鮮に核を捨てるよう呼びかける最後のチャンスを与えたのです。

「必要なら手段をいつでも変えられる冷血漢」はトランプ大統領だけではないのです。国の安全に責任を持つ人は皆、そうです。

そこを勘違いして「トランプの力添えを得た。文在寅外交の大勝利だ」と韓国人同士でハイタッチ。日本人に対しては「俺の後ろにはトランプがいるぞ。恐れ入ったか。安倍を五輪に送れ」と肩をいからす――。

「根拠なき有頂天」を懸念する韓国人も、いるにはいるのですが、さて、どうなることやら。

(次回に続く)

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『金正恩氏はトランプ氏に「尊敬の念」を伝えた? 「『平昌冬季五輪休戦』は『ニューヨーク・チャンネル』で実現」説が浮上』(1/16日経ビジネスオンライン 高濱賛)、『世界中が呆れるトランプを辞めさせられない理由 大統領弾劾はほとんど不可能と民主党が判断』(1/16JBプレス 堀田佳男)について

1/13ロイター<焦点:消えぬ米朝戦争懸念、トランプ政権にくすぶる先制攻撃論>

https://jp.reuters.com/article/northkorea-missiles-usa-idJPKBN1F10L5

1/18NHKニュース12:04<米国防長官「北朝鮮との戦争計画ある」と発言>「日米外交筋によりますと、アメリカのマティス国防長官は、カナダで開かれた北朝鮮問題をめぐる関係国の外相会合に先立つ夕食会で、「北朝鮮との戦争計画もある」という趣旨の発言をしたということです。一方でマティス長官は、外交努力による平和的な解決を優先させるべきだという従来の立場も併せて示したということです。

北朝鮮問題をめぐる関係国の外相会合は、日本時間の17日未明からカナダのバンクーバーでアメリカとカナダの共催で開かれ、日本や韓国など合わせて20か国の外相らが出席し、北朝鮮が非核化に向けた意思を示すまで圧力をかけ続ける方針を確認しました。

これに先立って日本時間の16日には、アメリカのティラーソン国務長官やマティス国防長官、日本の河野外務大臣らが出席して夕食会が開かれ、日米外交筋によりますと、この席でマティス長官は「アメリカには北朝鮮との戦争計画もある」という趣旨の発言をしたということです。

一方でマティス長官は「外交努力がうまくいかない場合は、国防相会合を開くことになる。そうならないように外交で頑張ってほしい」と述べ、外交努力による平和的な解決を優先させるべきだという従来の立場も示したということです。

官房長官「コメントすべきではない」

菅官房長官は、午前の記者会見で、「具体的な内容について承知しているわけではないので、政府としてコメントすべきでない」と述べました。

そのうえで、菅官房長官は「今回の会合を通じて、北朝鮮の核保有は決して受け入れられず、国際社会が一致結束して圧力を最大限まで強めていくというメッセージを全体で発出できたことは極めて有意義だった」と述べました。」(以上)

第二次朝鮮戦争のための大義名分作りで20ケ国の外相が集まり、河野外相は「二度目はない」と断言し、またマテイス長官が「次は国防相会議を開催」と言ったとのことですが、米軍が攻撃するのであれば機密が漏れるので単独行動とするのでは。勿論韓国には連絡せず、ロジや在日米軍の活用があるので日本とは緊密に連絡を取り合うと思います。

この高濱氏の記事にもあるとおり、米朝ともオリンピックとは関係なく、着々と軍事的な意味を持った行動を重ねています。オリンピックだからといって、日本が浮かれて準備を怠ってしまうことが無いよう注意しておかないと。

1/18日経ビジネスオンライン The economist<トランプ政権ではびこるロビー活動 公約とは真逆、透明性は失われる一方だ>1/17の本ブログでも紹介しましたように、ロビー活動は請願権の一種であり、総てが悪ではありません。悪と思うのは、政治や行政と企業が癒着してきたからなのでしょうけど。でもグリシャムの『陪審評決』には、たばこ企業(被告)と癌患者の遺族(原告)の両方の弁護士が陪審員を買収しようという場面が出てきます。民主主義先進国と言われる米国の司法ですらこんな現状です。やはり国民の監視、特にメデイアは事件をでっち上げるのではなく、事実に基づいて三権を監視しなくては。

http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/224217/011600147/?n_cid=nbpnbo_mlpus

2017/3/1まぐまぐニュース<在米日本人作家が警告する、トランプ・リスク「最悪のケース」 冷泉彰彦『冷泉彰彦のプリンストン通信』>1年近く前の記事ですが、今回の堀田氏の記事や昨年12/21本ブログで紹介しました高濱氏の記事とは真逆です。如何にリベラルが“wishful thinking ”で判断しているかです。彼らにしてみれば気に入らない大統領、言うことを聞かない大統領は政治的に抹殺を図ろうと考えているかが分かろうと言うもの。事実に基づかず、世論を盛り上げて追い落とし・、倒閣を図ろうとするのは日本も同じで、朝日が捏造した「モリカケ」騒動はその典型でしょう。こんな記事を読んで有難がっているようでは、おれおれ詐欺の被害者を笑えないでしょう。

http://www.mag2.com/p/news/241285

http://dwellerinkashiwa.net/?p=7855

高濱記事

北朝鮮に対する姿勢が定まらないトランプ米大統領(写真:AFP/アフロ)

—金正恩朝鮮労働党委員長が「平昌冬季五輪」を軸についに動きましたね。朝鮮半島での軍事対決の危険性は急速に和らいできた感がしますが、米国は一連の動きをどう見ていますか。ドナルド・トランプ大統領はどう出るのでしょうか。

高濱:金正恩委員長が元旦に演説して以降、トランプ大統領の言動は微妙に揺れ動いています。というより支離滅裂で本心が奈辺にあるのか分かりません。

 ワシントンの政治問題専門家の一人は、筆者に「トランプ大統領が何を考えているかは精神科医か心理学者にしかわからない」とメールしてきました。(笑)

 これは金正恩委員長についても言えることかもしれません。もっとも同委員長の目標は「国体護持」(つまり「金王朝存続」)という点ではっきりしています。その点、トランプ大統領の方は何をしたいのか、いっそうわかりませんけど。(笑)

 同委員長は、「新年の辞」で韓国との関係改善に意欲を示しました。その一方で米国に対しては「核のボタンが机の上にいつも置かれている」と表明。硬軟両様というか、真意はどちらにあるのか。米朝ともに相手の真意を探り合いです。

 トランプ大統領は2日、この金演説に対してツイッターにこう書き込みました。  「ロケットマン(金正恩委員長のこと)は韓国と話がしたいと初めて言い始めた。これはよいニュースかもしれないし、そうではないかもしれない。様子を見てみよう。制裁やそのほかの手段による圧力は北朝鮮に大きな影響を及ぼし始めている」

 「北朝鮮は疲弊して食糧も底をついているか。私も核のボタンを持っていることを、彼(金正恩委員長)の政権の誰かが彼に知らせてくれないだろうか。しかも私のボタンは彼のものよりもはるかに大きく、より強力で、実際に機能するということを」

—つまりトランプ大統領は、北朝鮮が変化したのは経済制裁と軍事的圧力の結果だと言いたいわけですね。なにも文在寅韓国大統領の「宥和政策」が功を奏したわけではない、と言いたげですね。

トランプ「俺がいなければ閣僚級会談は実現せず」

高濱:それから8日後、トランプ大統領は文在寅大統領と電話会談。

 トランプ大統領は、同日開かれた閣議の冒頭で南北閣僚級会談に触れ、こう述べています。「世界にとっての成功になるよう期待する。今後数週間、数か月に何が起こるか注視する。われわれの(強い)姿勢がなければ、(南北閣僚級)会談は決して実現しなかった」

—その一方でトランプ大統領は「金正恩委員長とはおそらく、いい関係にある」と北朝鮮との対話を受け入れる用意があるような発言をしていますね。

高濱:トランプ大統領の朝令暮改的な発言は今に始まったことではありません。この発言については後程、詳しく見てみたいと思います。

 北朝鮮の動きを米国が今どう見ているのか。これまで長年、朝鮮半島問題に関わりを持ってきた国務省元高官は以下のように分析しています。「おそらく金正恩委員長は、対話を開始するタイミングとして去年から『平昌冬季五輪』に的を絞っていたのだろう。五輪にアスリートを参加させることで北朝鮮の『ヒューマン・フェイス』(まともな人面)を世界中にみせ、ミサイルと核で近隣諸国を脅す『ならず者国家』とのイメージを払拭したいにちがいない。返す刀で朝鮮民族主義を鼓舞することで南北統一を韓国民に訴える筋書きだ。それにはオリンピックは最適の場だ」

 「五輪休戦中に、これまで行ってきたミサイル・核実験の結果を総点検し、次に備えるつもりだろう。今は厳寒の候でミサイル発射実験もままならない。未確認情報だが、2017年9月3日に核実験を行なった際に地下施設が損害を受け、科学者数人が犠牲になったともいわれている」

 「外交的には、ミサイル・核実験を一時中止することで、これまで北朝鮮を説得し続けてきた中国の顔を立てることができる。また、これまで終始一貫して宥和政策をとってきた文在寅大統領の『本気度』を試すこともできるだろう。文在寅大統領が、対北朝鮮経済制裁措置や軍事的圧力を弱めさせるよう米国に真剣に働きかけられるかどうか、その判断材料になりうる」

米国は「朝鮮民族ナショナリスト・文在寅」に懐疑的

—米国は文在寅・韓国大統領の宥和政策をどう見ているのですか

高濱:リベラル派の中には、文在寅大統領が進める対北朝鮮路線に理解を示す者もいます。しかし、この路線では北朝鮮にミサイル・核を放棄させるのは難しいとみる米専門家が大半です。一部には、文在寅大統領に懐疑的な専門家もいます。 (“North Korea Is Walking Back War–And Pundits Are Strangely Disappointed,” John Feffer, Foreign Policy in Focus, 1/10/2018)

 その理由として、中国の顔色を窺って高高度防衛ミサイル(THAAD配備)を延期したり、平昌冬季五輪が終わるまで米韓合同軍事演習を延期することを提案したりしている文在寅大統領の政治スタンスが挙げられます。合同演習の中止は中国とロシアがこれまでずっと主張してきたアジェンダでもあります。

 ウラジミール・プーチン ロシア大統領が金正恩委員長を「成熟した政治家」と称賛し、一連の動きについて「北朝鮮が勝った」と言っているのもそのためでしょう。つまり、これまで米国が頑強に突っぱねてきた合同演習の中止を、一時的であるにせよ実現させたのですから。プーチン氏にとっては、「金正恩よ、でかした」ということになるんじゃないですか。

 米韓首脳は、直接会っても電話で話し合っても、そのあとの記者発表はどこかしっくりしていません。例えば、10日に行った電話会談の後も、韓国側は「トランプ氏は南北対話が行われている間、いかなる軍事的行動もしないと述べた」と発表していますが、米側はその点について一切言及しませんでした。

トランプ「俺が金正恩だったら米韓間に楔打つ」

 トランプ大統領は11日行われたウォール・ストリート・ジャーナルとのインタビューで「米韓合同軍事演習の中止」に言及しました。しかし「南北対話が行われている間」とは言っていません。“Transcript of Donald Trump Interview with The Wall Street Journal,”1/12/2018)

—そのインタビューで、トランプ大統領は「俺が金正恩だったら同じことをやっただろう」と発言していますね。

高濱:そうです。北朝鮮の対韓アプローチについてのくだりで出てきたものです。

 「北朝鮮が米韓関係を分断しようとしているのは分かっている。もし私が北朝鮮の人間だったら同じことをやっていただろう。だが、私は米国の大統領だ。それに私はウェッジ(楔)について、この地上に住む誰よりもよく知っているよ」

—ウェッジについて自分が一番熟知しているとは、どういう意味ですか。

高濱:一種のジョーク、掛詞です。トランプ氏の言っている「ウェッジ」とは、頭部がクサビ形のゴルフクラブのこと。グリーン手前からオンを狙うときによく使うクラブです。プロ並みの腕前だと自負するトランプ氏がクラブ捌きと楔を打つこととをひっかけたのでしょうが、あまりうまい掛詞とは言えませんね(笑)

米国も北朝鮮も軍事的準備は怠らず

—もう一つ。先ほども出ましたが、トランプ大統領は「金正恩委員長とのとてもよい関係」についてことさら強調しました。直接対話したかどうかについては言葉を濁しましたが……

高濱:金正恩委員長(あるいは同委員長の意を受けた北朝鮮政府高官)とトランプ大統領(あるいは同大統領の意を受けた米政府高官)との間になんらかの接触があったかどうか、です。

 トランプ大統領を嫌う米主要紙の国務省担当記者は冗談めかして筆者にこうコメントしています。「北朝鮮と接触する者がいるとすれば、ジョセフ・ユン北朝鮮担当特別代表(国務次官補)しかいない。お相手は、北朝鮮国連本部のパク・ソンイル米国担当大使だ。パク大使が『金正恩委員長は<非凡な才能を持ったトランプ大統領>*に敬意を表したい』とかなんとかユン特別代表に言い、それがトランプ大統領の耳に入ったのかもしれないね。トランプ大統領は褒められるのが大好きだから。それで『平昌冬季五輪休戦』につながったのだろう」

*:マイケル・ウルフ氏がホワイトハウスの内幕を描いた暴露本『Fire and Fury』(炎と怒り)の中で、側近たちがトランプ大統領は「大統領不適格者だ」と噂しているくだりがある。トランプ大統領はこれに対して「俺は非凡な才能を持った腰の据わった人間だ」(I am very stable genius)と反論した。

 ユン特別代表とパク大使との定期的な接触は、通称「ニューヨーク・チャンネル」と呼ばれる米朝間の非公式外交チャンネルです。

—金正恩委員長による「平昌冬季五輪」攻勢で緊張緩和ムードが漂っています。米国はすべての軍事的デモンストレーションは控えているのですか。

高濱:とは言えません。米太平洋軍は10日、グアムのアンダーセン空軍基地に核兵器搭載可能、かつレーダーに捉えられにくいB2ステルス戦略爆撃機3機と200人の要員を派遣したと発表しています。派遣の時期については公表していません。

 一方、北朝鮮もミサイル・核開発を中止したわけではありません。米ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院の米韓研究所は11日、人工衛星からの画像に基づき、北朝鮮北東部・豊渓里にある核実験場の西側坑道で掘削作業が活発化していると分析しています。

堀田記事

米首都ワシントンにあるトランプ・インターナショナル・ホテルに映し出された「shithole(シットホール)」の文字。(c)Sorane Yamahira / Bellvisuals.com 〔AFPBB News

 ドナルド・トランプ大統領(以下トランプ)は1月20日で就任1年を迎える。目の前にはいくつもの難題が待ち受けている。

 北朝鮮問題や中間選挙もあるが、政治生命にかかわる最大の問題は何と言ってもロシア疑惑である。トランプ本人が訴追される可能性が消えていないばかりか、連邦議会での「弾劾」という言葉はいまでも米国で飛び交っている。

 筆者は昨年、当欄で何度か「トランプ弾劾」の可能性について記した。ロシア政府による2016年の大統領選介入はすでに確定的であり、トランプ陣営との共謀が疑われている。

弾劾される可能性はほとんどゼロ

 同時に、ジェームズ・コミー前FBI長官を解任したことが司法妨害にあたる疑いもある。

 ところが年明けに関係者を取材すると、少なくとも短中期的にトランプが弾劾される可能性はほとんどないことが分かってきた。どういうことなのか。

 まず明確にすべきことがある。それは大統領を起訴する動きと弾劾の動きは別である点だ。起訴はトランプ本人が明らかに違法な行為をしたことで、刑事訴追されるということだ。

 現在、元FBI長官のロバート・モラー特別検察官がトランプの周辺を洗っている。司法妨害を含め、ロシア政府との違法な共謀の有無が捜査されている。

 モラー氏の下には16人の検察官がおり、最近新たにコンピューター犯罪を専門にする検察官が加わったばかりだ。

捜査の内容は公表されていないし、簡単に漏れ出ない。しかし、ロシア側のサイバー攻撃との関連性がここにきて精査されており、新たな事実が浮上してくる可能性はある。

 ところが米大統領は刑事事件からの免責特権を持っている。大統領の任期中は公判から逃れられるのだ。しかし裁判所の判断によっては、任期中であっても出廷が求められることもある。

 検察チームによる捜査で、ロシア政府とトランプ陣営と間に共謀がなかったとの結論に至る可能性もある。

上院は多数決ではなく弾劾裁判に

 検察側が「トランプに違法行為はなかった」と結論づければ、トランプ政権は4年間続くだろう。いずれにしても、ロシア疑惑の進展次第でトランプの政治生命は大きく変わってくる。

 次に弾劾について述べたい。

 弾劾は現職の大統領や副大統領を罷免するための手続きで、連邦議会で行われる。議員が弾劾法案を提出するところから始まるため、検察官による起訴とは違う。

 弾劾プロセス、連邦下院(定数435人)で過半数の議員が弾劾への賛成票を投じて進行させる。大統領が犯罪行為をしていなくとも、非行や職務怠慢などでも弾劾の対象になる。ここが刑事裁判とは違うところだ。

 下院で過半数の議員が弾劾に賛成した時は、法案は上院に行く。上院では多数決ではなく弾劾裁判になる。

最高裁判所長官(現在はジョン・ロバーツ氏)が裁判長になり、上院議員(100人)が陪審員となって裁判を行う。そして3分2以上の議員が弾劾に賛成すれば大統領は職を奪われる。

 実は昨年、連邦下院には弾劾法案が何度か提出されている。だが成立していない。つまり現時点で、過半数の下院議員は「トランプは弾劾に値しない」との考えでまとまっているのだ。なぜなのか。

 まずは下院の人数構成を眺めたい。トランプの政党である共和党は、定数435人中239人を占めている。民主党議員は193人で空席が3だ。民主党議員が全員弾劾へと動いても、共和党から多くの造反議員が出ない限り法案は成立しない。

党議拘束のない米国

 米議会には日本の国会のような党議拘束がないため、共和党議員でもトンラプ弾劾に票を入れる議員がいても不思議ではない。

 ましてや中間選挙が近くなり、不人気のトランプと距離を置こうとする議員が増えてくれば、弾劾に賛成する議員もでてくるだろう。

 昨年5月、ジェームズ・コミー前FBI長官がトランプに解任された時、連邦議員の中には解任の理不尽さを説く者が大勢いた。同長官は当時、マイケル・フリン大統領補佐官のロシアとの関係を調査していたからだ。

 解任直後から、民主党議員の間でトランプ弾劾の機運が高まり、7月(法案HR438)、11月(HR621)、12月(HR646)と3回、下院で弾劾法案が提出されている。

 米議会では弾劾法案に限らず、法案が提出されるとまず、担当する委員会に法案が回される。外交問題であれば外交委員会、今回であれば司法委員会で審議・採決される。

ただ委員会の採決段階で否決されると本会議場まで至らない。7月と11月は委員会レベルで潰されていた。だが12月に提出された法案は本会議場で採決さている。結果は364対58で「弾劾の必要なし」との判断だった。

 トランプに反旗を翻しているはずの民主党議員も、100人以上が弾劾に反対したことになる。日本であれば安倍内閣不信任案の採決で、野党でありながら自民党側に寄りそったということになる。

 なぜなのか。

今年11月の中間選挙が試金石

 ワシントンへの取材で見えてきたのは、冷静な民主党執行部の判断があったからだった。現在の勢力図では、下院で弾劾法案を成立させることは最初から無理で、弾劾に動く時期ではないという考えなのだ。

 共和党から造反議員を多数動員しなくては法案の成立はない。現時点では、共和党の牙城を崩すことはできない。山が動くとすれば、今年11月の中間選挙で民主党が上下両院で多数党となった後である。

 それでも弾劾には難しさがある。中間選挙後に新たな弾劾法案が提出され、下院で可決されて法案が上院にいったとしても上院で3分の2以上の票を集めることは多難である。そこまで共和党と民主党の議席数が開くことはなさそうなのだ。

 ワシントンの知人ロビイストは「上院で弾劾裁判が行われ、賛成票が3分の2に届かなかった場合、再び弾劾裁判が行われることはまずないです。だから民主党は慎重に時期を見極めないといけない」と説明した。

 しかも米政治史上、2度開かれた弾劾裁判ではいずれも大統領を罷免できていない。法制上、弾劾というシステムを組み入れたことは民主国家として真っ当であるが、簡単に大統領を辞めさせることもできないのだ。

今月12日、トランプはホワイトハウスで行われた連邦議員との会合で、ハイチやアフリカ諸国を指して「Shithole(野外便所)のように汚い国」と発言した。

 名指しされた国だけでなく、この言葉を聞いた方は「やはりトランプは差別主義者だった」との思いを抱いたはずだ。この発言だけからも、大統領としての資質に欠ける人物であるとの見方がさらに広がった。

 だが実は、Shitholeの件については誤訳なのである。日本の特派員を含めて、多くの国の記者は「shit(糞)hole(穴)」を直訳してトイレ・便所とした。

 だが米国では口語で「汚い場所」という意味で使う。だから野外便所という意味ではない。汚い場所と言っただけでも差別的ではあるが、ニュアンスが違う。

 いずれにしても、「トランプ弾劾」の動きは確実に広がりつつあるが、実際にはほとんど無理というのが現実なのである。

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『「習近平新時代」の中国は経済発展しても自由は限られる』(1/16ダイヤモンドオンライン 加藤嘉一)について

1/14看中国<贸易额大幅下降 北京对朝动真格?(组图)>1/12中国税関の発表では、2017年対朝貿易は50.6億$、前年比▲10.5%、輸出超過が16.2億$で2.2倍に拡大。12月だけ見ると前年比で▲81.6%で5434万$であった。これは2014年1月以来最低の数字である。11月以降石油供給はなく、朝鮮企業や料理店も閉店させた。しかし、中国船籍の船が石油を密輸していたのがばれた。習の心配は金正恩がコントロールできなくなり朝鮮政府が瓦解すること、もう一つは米中の貿易問題が日増しに高まっていることである。まあ、中国のことですから平気で二枚舌を使っているだけでは。制裁しているフリをして朝鮮を助けていると思います。中国では、上の許可なくして何もできないはずです。それが習の決裁かは別にして。

https://www.secretchina.com/news/gb/2018/01/14/846937.html

1/14看中国<官方操控无处不在!华人被迫放弃“踩界”(图)>カナダのアムネステイ・インターナショナルの調査に依れば、北京はカナダの対中異議申立者に対し、脅迫の段階を上げて直接脅すようになった。ウイグル族、独立思想を持ったチベット人、台湾人、民主主義唱道者、中でも重いのが法輪功信者である。国家安全部の人間は「カナダのメデイアで中国政府を批判するのを止めなければ、中国にいる親戚が酷い目に遭うだろう。どんなことが起きようともそれはあなたの責任」と言ったとのこと。流石ヤクザ国家のやることは違います。これを映像にとって全世界に流せば、流石に金儲けのことで頭が一杯の国や企業も少しは考え直すのでは。

https://www.secretchina.com/news/gb/2018/01/14/846984.html

1/15阿波羅新聞網<驚人消息:中共快玩不下去了 ——銀監會聲明坐實中共恐懼難解的金融風險>何清漣が言うには「中国経済発展は貨幣発行の膨張にある。17年6月に中国経済体制改革研究会の前副会長の石小敏をインタビューした時に彼は「発行した金は不動産に流れて、債務がドンドン増えていくだけ。もう遊べない所まで来た。この2年で債務はGDPと同じまで伸びた」」と。また人大財経委副主任の吳曉霊が言うには、中国は日本、米国、欧州の貨幣供給量を超えて世界最大の貨幣印刷機となったと。去年の11月までに地方債務は170,000億人民元となり、債務の大部分はシャドウバンクでゾンビ企業を生き延びらせ、債務破綻の危険性が大きいとのこと。資本主義だったらとっくにバブル崩壊しているのでしょうが、債務の飛ばしをやって別の所に移し替えているのでしょう。言ってみれば中国は全部国営と思ってよいので(私企業の自由はない)、国がぐるぐる債務を回しているのだと思います。それが何時まで可能か?外資が撤退すれば面白いのですが、資金の流出規制をする国ですから。

http://twent.aboluowang.com/2018/0115/1055117.html

加藤氏の記事は何時も思うのですが上っ面を撫ぜているだけ。深みがありません。単なる翻訳マシーンに化しているだけとの印象を持ちます。普通に考えたら習の言ってることとやっていることの違い、都市市民だけでなく農民工にインタビューしたらと思います。北京の大興区の追い出し事件等は彼の眼中には無いのでしょう。結果の平等を追求する共産主義が何故こんなに経済格差が生じるのか、何故自由がないのか、根本的に考えたらと思ってしまいます。小生は為政者の我儘が総て通る独裁政治に原因があると思っていますが。

記事

習近平による毎年恒例の新年挨拶

2018年の本連載は、習近平中共中央総書記・国家主席・中央軍事委員会主席(以下敬称略)が行う毎年恒例の新年の挨拶をレビューするところから始めたいと思う。

昨年末に行われた挨拶の冒頭で、2017年に中国共産党の第19回大会を開催し、「全面的に社会主義現代化国家を建設するための新たな道のりが始まった」と述べた習近平は、2017年に中国共産党が収めた成果を羅列的に紹介した。

・国内総生産が80兆元の大台に達した ・都市部で新たに増加した就業人口が1300万人を越えた ・社会養老保険が9億人以上を網羅するに至った ・基本医療保険が13.5億人を網羅するに至った ・1000万人以上の農村貧困人口が貧困からの脱却を実現した

「各民生事業が加速的に発展し、生態環境が徐々に改善し、人民群衆はより多くの獲得感、幸福感、安心感を得るようになっている。我々は全面的に小康社会の建設を実現するという目標にまた一歩近づいた」

小康社会とは大まかには「少しゆとりのある社会」を指し、1970年代末から80年代初にかけて、鄧小平が中国経済社会の発展のためのロードマップを描く過程で提起した概念である。中国共産党は「全面的に小康社会を建設すること」を“2つの100年目標”のうちの第一段階、すなわち中国共産党結党百周年に当たる2021年に実現すると目標を定めている。

中国はXX周年という儀式を歴史的に重んじ、政治的に利用する国であると感じてきたが、習近平政権ではそれを高度に重視し、国威発揚につなげようとしている姿勢が見て取れる。習近平は3つの儀式を紹介している。

「我々は朱日和連合訓練基地で軍事パレードを行い、中国人民解放軍建軍90周年を記念した。香港返還20周年の際、私は香港へ行き、祖国が強い後ろ盾となるなか香港が長期的に繁栄し、安定している状況をこの目で見てきた。明日はより良くなるのは必至であろう。我々は全民族抗日戦争勃発80周年の儀式と南京大虐殺死亡者国家公祭儀式を行い、歴史を刻み、平和を祈った」

習近平外交の特徴は“お友達外交”

ここから習近平は外交に話を移していく。私から見て“習近平外交”たるものが仮に存在するとすれば、その第一の特徴は“お友達外交”、すなわち中国の政治体制、イデオロギー、発展モデルを理解・尊重し、中国の国際貢献や外交努力を賞賛し、中国の核心的利益を“承認”してくれる“お友達”を増やしていくための外交である。

そのためのツールは投資や援助を中心とした経済であることが多いが、“習近平外交”のもう一つの特徴は、中国自らプラットフォームを構築し、議論のアジェンダを設定し、可能な限り自国でそれを主催し、かつ習近平自らが司会するというものである。そんな特徴を洗い出すかのように、習近平は次のように語っている。

「我々は国内でいくつかの多国間外交活動を主催した。第1回“一帯一路”国際協力ハイレベルフォーラム、BRICS国家指導者厦門会議、中国共産党・世界政党ハイレベル対話などである。また、私は世界における重要ないくつかの多国間会議にも参加した。今年の年初、世界経済フォーラムの年次総会に出席し、国連ジュネーブ本部でも談話を行った。その後20ヵ国集団指導者サミット、アジア太平洋経済協力会議などにも出席した。これらの異なる場面において、私は各方面と深く意見交換をしたが、皆共同で人類運命共同体の構築を推進し、世界各国の人民に恩恵をもたらそうという私の意見に賛同してくれた」

“人類運命共同体”とは、“新型国際関係”と並んで習近平が世界に向かって掲げる世界観であり、外交目標であるとも言えるが、そこには第2次世界大戦後米国を中心に西側諸国が主導してきた国際秩序への一定の不満がにじみ出ており、“より合理的で公平な、国の大小にかかわらず平等に恩恵を受ける”国際秩序の構築を渇望するだけでなく、構築プロセスを中国が中心となり、“お友達”を引き連れる形で引っ張っていく意思、そして野心を示していると言える。

2018年は改革開放40周年“無産階級”に寄り添う

2018年は習近平第2次政権スタートの年であると同時に、改革開放40周年に当たる。習近平は「改革開放は当代中国が発展・進歩する上で、中国の夢を実現する上で避けては通れない道である」と主張し、同時に40周年を祝うことを契機としながら「改革をとことん進めていく」と宣言した。

昨年末に開催された中央政治局会議や中央経済工作会議を通じて2018年度の政策目標に掲げられたのが「ターゲットを絞った貧困撲滅」である。習近平は2020年までに貧困人口をゼロにするという目標を掲げてきた。

自らを「労働者階級の先鋒」と定義する中国共産党であるが、習近平はとりわけこの意識が強く、農民や工場労働者をはじめとした“無産階級”に寄り添う政策が顕著に見受けられる。

「2020年まであと3年しかない。全社会が行動しなければならない…3年後予定通りに貧困撲滅という闘いに打ち勝つことができれば、これは中華民族の数千年の歴史の発展において初めて全体的に絶対貧困現象を解消することになる。この中華民族や人類全体にとって重大な意義を持つ偉業を皆で一緒に達成しようではないか」と呼びかけた。

最後の2段落は、習近平第2次政権下の中国共産党が対外・対内戦略・政策を打ち出していく背後で何を考えているかという問題の一端を垣間見られる内容となっている。

まずは対外関係から見ていこう。習近平は次のように主張する。

「現在、各国は人類の平和と発展の将来に期待もあれば懸念もある、中国が立場や態度を表明することを期待している。天下は家族のようなものである。中国は責任を負う大国として、言っていかなければならないこともある。中国は国連の権威と地位を断固として守り、国際義務と責任を積極的に履行していく。グローバル気候変動に対応する約束を守り、“一帯一路”の共同建設を前向きに推し進めていく。首尾一貫して世界平和の建設者、グローバル発展の貢献者、国際秩序の保護者を演じていく。中国人民は各国人民と手を携えて人類のより繁栄した、安寧な、素晴らしい未来を切り開いていくことを望んでいる」

中国が国際社会においてこれまでよりも積極的に発言し、行動していく意思が見受けられる。特に中国自身の発案である“一帯一路”を国際社会全体が共同で推進すべき公共財であるように謳っている事実から、中国が国際秩序やルールの構築、より厳密に言えば再構築に強い関心を示し、積極的にコミットしていきたいと考えている戦略的意図を抽出することが可能である。

建設者・貢献者・保護者の部分は、もちろん国際社会からすれば歓迎であるが、中国が実際のところどのように行動するか、および他国と価値観や利害関係をどう調整していくかといった問題が我々の前に立ちはだかるのは必至であるように思われる。

「知る権利」や「表現の自由」を改善していく意思や予定は見られない

最後に対内関係であるが、習近平が放った次の言葉は私から見て意味深長である。

「私は人民群衆が最も関心を持っているのは教育、就業、収入、社会保障、医療、養老、居住、環境などの分野であることを承知している。皆さんは多くの収穫を得ているが、心配事や煩わしい事も少なくないだろう。我々の民生に関わる仕事には人民の要望を満足させられていない部分が少なくない。これは我々が使命感と責任感を強化し、人民の幸福に叶う事に真の意味で、地に足をつけて取り組んでいくことを要求している」

習近平が掲げた分野を見てほしい。確かにこれらは中国人民が近年最も関心を持ち、自らの生活や将来に関わる問題として党や政府に改善や推進を求めている分野であるといえる。

一方でここには「人権」や「自由」といった概念は見られない。全社会・全分野における共産党の領導を強化するという基調の下、特に言論や知識といった分野で上からの締め付けが強化されている状況下で、「知る権利」や「表現の自由」といった分野を提供・改善していく意思や予定は共産党指導部にはないのだろう。

これも習近平政権の特色である。

問題は人民がそれを求めているか、求めていくかどうかであろう。

私は現在四川省成都市で本稿を執筆している。現地で交流した20代後半の女性(文化事業従事)と男性(メディア関係者)の言葉が印象的だった。

成都の発展の状況を聞いてみると、女性は笑顔で生き生きと語った。

「成都の近年の発展は本当に素晴らしい。しかもとても住みやすい。状況はとても良い方向に動いている」

彼女の表情や言葉からは、上記で言及した上からの締め付けに対する不満は微塵も感じられない。「自由」や「人権」を求める気配も感じられない。

男性と習近平政権の政治について議論していると、異常なほど落ち着いた表情と口調で彼はこう言った。

「自分と関係ないことは考えないようにするのが中国人の生き方だ」

習近平による政治や政策が人民の生活に関係しないことはあり得ないが、この男性が指摘する「自分と関係ないこと」というのは「自分がどう足掻こうがどうにも変わらないこと」という意味であると私は解釈した。

どれだけ渇望しても変わらない、そのためにどれだけ行動しても変わらない、それを切実に知っているからこそ、「自分とは関係ない」と割り切って、そんなものははなから存在しないものなのだと自分に言い聞かせて、生活を営んでいくのであろう。

私の観察と感覚によれば、9割以上の中国人民はそういう生き方に納得している。少なくとも、受け入れた上で人生と向き合っている。

(国際コラムニスト 加藤嘉一)

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『ある女性ロビイストの憂鬱 なぜ米国は「ロビーの国」になったのか』(1/15日経ビジネスオンライン 池松由香)について

1/15読売新聞<韓国の追加要求拒否、支持83%…読売世論調査>

http://www.yomiuri.co.jp/politics/20180114-OYT1T50121.html?from=ytop_main3

1/15TBS<JNN世論調査、日韓合意での韓国側対応「理解できない」が85%>

http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3264213.html?from_newsr

やっと国民も韓国のおかしさに気付いて来たと言う所でしょうか?所謂従軍慰安婦問題は、そもそもで言えば、中国が一番奥の奥にいて、北を動かし、韓国の挺対協、朝日新聞や反日日本人を動かして捏造した事件です。慰安婦なぞどこにでもいるではないですか。客の後を追っていくのが商売女です。米国のフッカー将軍は南北戦争時の北軍の将軍でしたが、戦場に女を侍らし、それで売春婦のことをフッカーと呼ぶようになったとか言われていますが、真偽の程は分かりません。問題は慰安婦にするのに銃剣突き付けたか(強制性)どうかです。20万人も拉致されて黙っている筈がないでしょう。南京の30万と同じく信憑性がありません。挙証責任は原告にあります。

日本にもロビイストと言う名前ではありませんが、業界団体や個別企業が政治家に陳情しています。請願権ですから民主主義の根幹を為す権利と思っています。ただ、日本では米国のようにロビイストとして役人が退職後に圧力団体として存在することはありません。米国ではロビイストの他にもいろんなシンクタンクやコンサルタントがいて金が流れる仕組みがあり、ロビイストだけが問題ではないような気がしますが。キッシンジャーなんて中国からコンサルタント料を受け取り、米国の為ではなく、中国の為だけに動いているのでは。こちらの方が余程問題です。

請願権については、小生もオバマ政権にメールで請願したことが数回あります。数が集まらないと請願しても無効になりますが、ちゃんと返事のメールは送って貰いました。外国人でも大丈夫です。

http://okfn.jp/2013/02/12/we-the-people/

“If you are not at the table, you are on the menu”という言葉を日本人は良く噛みしめませんと。謙譲の美徳が通じるのは日本人の間だけ、外国人には通用しません。中国・韓国の捏造に大人ぶって反駁しない限り、国際社会では相手の言い分を認めたと解釈されます。朝日新聞を始め左翼は日本人のお人好しの性格と国際社会に無知なのに乗じて、反駁しないように誘導してきました。反論すれば「右翼」「国粋主義者」「人種差別主義者」等のレッテルを貼って。而も新聞だけではなく、洗脳された愛読者から言わせるように仕向けました。洗脳されて自分の頭で考えない方も考えない方ですが。今の日本の知的水準を表していると言えます。中共や韓国のように平気で嘘がつける朝日、岩波を有難がっているようでは。

記事

2017年末、1月29日号特集の取材で米国ワシントンに出張した。テーマは「ロビー活動」。実質3日間で13人の現役ロビイストを取材するという過酷スケジュールだったが、おかげで「ワシントン」という独特な地域について理解できるようになった。

米国の国会議事堂(Capitol)

シリコンバレーにベンチャーキャピタリストや起業家などが構成する独特のエコシステムがあるように、ワシントンにも全く形の異なるそれがある。その中で重要な役割を果たしているのがロビイストたちだ。

ワシントンには無数のロビー事務所があり、そこにロビーを生業とするプロのロビイストたちが所属している。米国内はもちろん世界中の名だたる企業が彼らを雇い、自社や自社の属する業界が米国でバッシングされたり、不利な法案を成立されたりするのを防ぐ(逆に自社に有利な法案の成立を促す場合もある)活動を展開しているのだ。

ロビイストの多くは「元政府職員」

そんなロビイストのほとんどは、ホワイトハウスや関連省庁に勤務していた元職員、あるいは大統領候補や知事候補の選挙を手伝っていた元スタッフ。前職の人脈をフル活用して現職の懐に入るので、国のトップである大統領からはあまりよく思われていない。

前大統領のバラク・オバマ氏もそうだったが、現大統領のドナルド・トランプ氏もまた「強烈なワシントン嫌い」として知られている。トランプ氏が大統領に就任した直後の17年1月28日、同氏は「政府職員は離職後5年間のロビー活動を禁止する。外国政府のためのロビー活動は期限なしで禁止する」との大統領令に署名した。

奇想天外な発言を繰り返すトランプ氏(写真:UPI/amanaimages)

ワシントンで取材して一番驚いたのは、ロビイストたちのトランプ氏を見る目が日本のそれとは全く異なることだった。記者が日本からトランプ氏を見ていた時は、「よっぽどの世間知らずか、よっぽど計算高い策士か……」などと漠然と予想していた。ワシントンの地を踏んで、あやふやだった「トランプ像」がよりリアルに見えてきた。

その実像は特集に取っておくこととして(ぜひお読みください!)、ここでは記者が取材したロビイストの中でも特に印象に残った、ある女性ロビイストについて取り上げたい。

ロビーをすることは「恥」なのか?

彼女はトランプ氏が大統領選を戦っていた時、彼のスピーチのゴーストライターを務めていた人物だ。取材中も言葉(ワード)の選び方が秀逸で、それだけでも書き手としての能力の高さがうかがえた。

話が「なぜ米国でロビー活動が普及したか」について及ぶと、彼女は思い立ったようにこんな話を始めた。

「あたながもしアメリカで街行く人に『ロビイストのことをどう思う?』と聞いたら、きっとこんな反応が返ってくるでしょう。『(眉間にしわを寄せて)ウーム』」

ネガティブなイメージを持たれているということだ。同様のイメージを持たれている職業として彼女は、「自動車の営業マン」「弁護士」「政治家」を挙げた(これらの職業そのものが悪いわけではなく、あくまで一般人の持つイメージだ)。

日本でも、ロビー活動と聞くと、「どうせ政治家と癒着して自社の利益のためにズルしてるんでしょう?」と受け取られがちだ。同じような風潮がロビー先進国として知られる米国にもあるようだった。

「でもね」。彼女は、これだけは言わせてほしいとばかりに語気を強めた。

「私はロビイストという職業に誇りを持っているの」

米国からロビーがなくならない理由

そこで彼女が持ち出したのが「First Amendment(アメリカ合衆国憲法修正第1条)」だった。1791年に採択された憲法修正(権利章典)に出てくる最初の条項で、米国議会に「宗教の自由」「表現の自由」「報道の自由」「平和的集会の権利」「政府へ懇願する権利(請願権)」を妨げる法律の制定を禁じている。記者も米国の大学でジャーナリズムを専攻していた時に授業で習ってから、大好きになった法律だ。彼女は言った。

「この何年もロビイストのスキャンダルばかりが報道されて、すっかり『卑怯な人たち』のイメージが付いてしまった。(あえて個人名は言わずに)現行の大統領も選挙戦の間は特に、ロビイストをあたかもワシントンの悪の象徴であるかのように言ってきた。個人的には、必要以上にロビイストという職業が汚されているように感じています」

そんな彼のゴーストライターをしていたのだから、さぞ心の葛藤があっただろう。彼女は一気に続けた。

「でも、それは本当のロビイストの姿ではない。本来はFirst Amendmentに保証されている基本的人権を守る専門職なんです。請願権は、アメリカのデモクラシー(民主主義)を構成する重要な要素。私が言うとちょっと偏った意見になってしまうけれど、強く信じているのは、私たちのFirst Amendmentの一部である以上、請願権(right to petition)が無くなることはこれからも絶対にないということなんです」

「請願のやり方は、時代と共に変わるかもしれない。でも、権利そのものはあり続ける。決して消えることはありません」

同じ言葉を繰り返しながら懸命に訴える彼女を見ていて、目頭が熱くなってしまった。

米国民にも忘れられかけている

というのも記者は、この取材の直前、少しだけ時間が空いていたのでキャピトルヒル近くの「Newseum」という博物館に立ち寄っていた。報道(News)をテーマにしたワシントンらしい博物館(Museum)だ。

記者が訪問中、ちょうど子どもたちが見学に来ていた

見学の子どもたちに混じって館内を歩いていると、First Amendmentに関する展示に出くわした。そこでは街頭インタビューの映像が流れていた。「First Amendmentの権利を全部、言えますか?」とインタビュアが聞くと、大抵の人が「宗教の自由」「報道の自由」までは出てくるのだが、「請願権」まで答えられる人はほぼいなかった。

First Amendmentの文面

博物館には「Fake News」(ウソのニュース)とメディアを痛烈に批判するトランプ氏に関する展示もあった。

言うべきことを言わない方が恥ずかしい

こうした展示を見た直後の取材だったので、彼女の発言には重みを感じた。First Amendmentが200年以上も前に成立し、「国民が議会に物を言う権利」と共に歩んできた米国。ロビー活動は、本来は悪の象徴ではなく、基本的人権であり、民主主義を支える礎なのだ。だが、米国でビジネスを展開する日本の企業はもちろん、当の米国民ですら、その権利をないがしろにしつつある。それを彼女は記者に伝えたかったのだ。

ワシントンの比喩としてよく使われる言葉にこんなものがある。

“If you are not at the table, you are on the menu”

(発言のテーブルに着かなければ、食われるだけ)

ロビーをする(言うべきことを言う)ことは、何も恥ずかしいことではない。逆に言うべきことを言わないことを恥じるべきなのだ。

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『ロシアが北朝鮮情勢を注視する真の理由 米国のミサイル防衛網配備に懸念』(1/12日経ビジネスオンライン 池田元博)について

1/13看中国<俄游客心脏病发 大陆民众竟然围观嘲笑(图)>「自由アジアTVによれば、南シベリアネットニュースの記事を引用して、中国海南島を旅行中のロシア(クラスノヤルスク)人が突然心臓発作起こし、死亡したのは、中国の救急制度のレベルが低かったからと報道。三亜空港が熱暑の為であるが、妻が言うのには「ロシアだったらすぐ救急車が来るのに、ここでは待つこと30分、その間中国人が周りを取り囲み、大声で笑っていた。救急隊員のレベルも低く、顔を見れば直ぐに心臓病と分かりそうなものだが、ゆっくり血圧を測り、病院へ搬送することにしたが途中渋滞で30分もかかった」と。診察に数十万ルーブルかかり、ガイドや他の旅行客からかき集めて払った。また遺体をロシアに送るのに百万ルーブルかかるとのこと」。まあ、別にロシア人を差別して笑ったわけでなく、中国人は人の不幸を笑いものにする道徳最低な民族(韓国も同じですが)と思った方が良いでしょう。

https://www.secretchina.com/news/gb/2018/01/13/846857.html

1/14宮崎正弘氏メルマガの書評から<木村汎『プーチンとロシア人』(産経新聞出版)

一気に読める本である。そのうえ面白い。その活力ある筆致と簡潔な比喩、人間の描写が生き生きとしている。

プーチンが柔道をこよなく愛しているから日本のことが好きだと日本のロシア分析が飛躍するのは暴論のたぐい、プーチンが柔道に励んだ動機は、彼の幼少のころ、「いじめられっ子」だったからだと木村氏は言う。

プーチンの闘争の哲学は、このところに原点がある。

兄二人が夭折したため、母親が41歳で生んだプーチンは溺愛され、それゆえにサンクトペテルブルグの『通り』でよくイジメられた。『通り』というのは不良少年のたまり場である。

いじめっ子より強くなれば良い、こう結論したプーチンは猛烈に体を鍛える。環境が強い意志をはぐくんだことになるが、短距離出世を狙ってKGBにはいるという直線的な人間でもある。

つまり、この人生への強い姿勢こそロシア人の基本の掟である。

「力が正義」なのである。

「強くなる意志を一貫して抱き」続け、「相手を徹底的にたたく」。そうした人間がロシアでは英雄である。

ロシア人との交渉事で、妥協は禁物である。そもそも「ロシア語」には「妥協」というボキャブラリーはない。交渉事で、論理が一貫しなくても、ロシア人は気にしない。倫理をまったく重視しないし、交渉においては友情も交友関係も過去の貢献もまったく度外視される。

つまり「交渉は闘争」であり「交渉は戦争」であり、そして「交渉は武器」なのである。

なんだか中国人と似ている。ロシアのチェスも中国の将棋にも、そういえば捕虜駒がない。妥協の発想がないという一点に関しては、中ロは二卵性双生児かもしれない。

「『インテリゲンツィア』という言葉は、日本語における『青白きインテリ』という用法から想像される内容のものではない。必ずしも人間の出自、教育、職業に直目する概念ではなかった。ロシアにおいて「インテリゲンツィア」とは、その人間が自身の高い理想や使命感を抱くとともに、その使命の実現のためには全生命を賭けて戦う準備や姿勢を持ち、かつ闘いを実践中の知識人を意味する言葉だった」(62p)。

どうしてロシア人がこういう性格を形成してきたのかといえば、第一に気候、天然資源、寒さ、そしてあまりにも広大な土地が原因であると木村教授は言う。

ロシア人が二律背反を気にしないのも、論理的思考をしないからである。領土は戦争で奪うものであり、政府が何をしていようが、個人レベルでのロシア人はほとんど気にも留めない。

あれほど凶暴な謀略をめぐらし政敵を粛正しても、ロシア人がスターリンを好きなのは、かれが「大祖国戦争」に勝ったからである。ゴルバチョフに人気がないのは彼が西側に屈服したと感じているからである。

「ロシア人は、外部の世界に劣等感を抱いている。外国の列強諸国は、隙さえあればじぶんたちに襲いかかろうとする。頭からこう信じている。彼らは外部の世界を疑い、恐れおののいているのだ。(中略)彼らは善意によって差し伸べられた友好の手をいうものを信じようとしない。そこには、何か巧妙な落とし穴のようなものが隠されているのではないかと、疑る。この世に純粋な好意など存在するはずがなく、あるのは闘いのみだ」(178p)

このようなロシア人気質を了解するならプーチンの謎を解くカギが読める。

プーチンは強いもの、力を信奉する政治家を好むから、優柔不断で人権と民主とか、浮ついたことを主張したオバマを軽蔑し、短絡的なトランプが好きなのである。三木武夫を嫌い、田中角栄がすきな日本人と、この点は似ているのかもしれない。

とどのつまり民主政治をロシアに期待するのは無理な注文であり、ロシア人は準独裁、強い指導者が好きなのだ。

だからシリアへの空爆で、もやもやしたロシアの脆弱政治を吹き飛ばしたプーチンに89%ものロシア国民は賛同し、クリミア併合でも83%が賛成し、西側の制裁なんぞどこ吹く風である。

すなわち「プーチン外交には、必ずしも確固とした原則や戦略など存在しない。時々の国際状況、とりわけ、『力の相関関係』の変化、そして主要プレーヤーや相手方の出方などを注意深く観察する。その隙間を縫って自国ロシアの影響力の拡大、ひいてはプーチン自身のサバイバルを図ろうとする。すぐれて状況主義的、機械主義的、便宜主義的な行動様式を採る」(143p)

プーチンは過去18年間、事実上ロシアの命運を左右し、そして次の六年間も最高権力を掌握するだろう。合計24年におよぶロシアの最高権力者は、ピョートル大帝を尊敬しているという。したがってトリックを用いて、自国を実力以上に見せる戦いを続ける。

プーチンは「勝利をもたらし、ロシア人の不安を吹き飛ばすために,『小さな戦争』を好む」だろう。

繰り返すが、一気に読了した。快作である。>(以上)

『小さな戦争』が日本相手にならないことを祈ります。まあ、日本が相手であれば『小さな戦争』とはならないでしょうけど。池田氏記事によりますと、ロシアは「米国とその同盟国が北の脅威を防ぐためと言って、ミサイル防衛システムを配備して、中露を包囲するつもりではと思っていると。日本のイージスアショアもその一部」と考えているとのこと。話があべこべでしょう。中露は北の脅威を拡大させ、米国一極の世界を打破し、多極化世界にしようと目論んだのでは。そのために核ミサイルの技術支援やら財政支援してきたのでは。米国と同盟国が脅威に晒されるのを黙って見ている筈がないのは当り前の話。それが嫌であれば、北を飼ってきたのが両国なのであるから、餌を与えない(=国連決議遵守は勿論、石油供給の全面停止等核ミサイルの開発ができない)ようにすれば良いのでは。

1/11JBプレス 榎本 裕洋<ロシアに新経済制裁、米国が検討中 ルーブル下落と金利の急上昇、外貨準備急減の再来も経済制裁、特にロシアのルーブル建て国債取引の禁止をしても、ロシアの経済成長を下げる可能性があるだけで、致命傷にはならないとのこと。米国も大国過ぎて真の敵が中国であることに気付かないのでしょうか。北朝鮮が日米韓の離間を図るように、少なくとも中露の離間を図るような動きをしてみたらと思います。このようにロシア制裁を強化すれば、中露の結びつきを強めるだけでしょう。米国は中国にこそ制裁を課すべきです。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/52045

記事

「ロシアは北朝鮮を核保有国とは決して認めない」。プーチン大統領は北朝鮮の核問題の対話による解決を主張しつつも、圧力を強めて核放棄を促そうとする国際社会と協調する姿勢は崩していない。ロシアが北朝鮮情勢を注視する真の理由は別にある。

ロシアが昨年12月にウラジオストクでも運用を開始した地対空ミサイルシステム「S-400」(写真:AP/アフロ)

ロシアメディアは昨年12月下旬、ロシア軍が最新鋭の地対空ミサイルシステム「S-400」の運用を極東のウラジオストクで開始したと報じた。戦闘機や巡航ミサイル、弾道ミサイルを撃墜できる能力を飛躍的に高めるのが狙いだ。

ロシア軍がS-400を極東に展開すると表明したのは2009年。軍幹部は当時、その理由として「北朝鮮によるロケット発射が失敗し、その破片がロシア領に落下するのを防ぐためだ」と説明していた。

その北朝鮮は当時の金正日(キム・ジョンイル)体制から3男の息子、金正恩(キム・ジョンウン)体制に変わったが、ミサイルの発射回数は増える一方だ。昨年は1年間で合計15回(総数は20発)も弾道ミサイルの発射を強行し、昨年9月には大規模な地下核実験も実施した。

しかも極東のウラジオストクから北朝鮮との国境までは、およそ100キロメートルしか離れていない。ロシア軍がS-400の運用を開始したのは当然、北朝鮮の核やミサイルの挑発におびえる地域住民の不安に対処したためと考えがちだ。しかし、実態は必ずしもそうではないようだ。

ウラジオストクの海洋国立大学で北朝鮮問題を専門にするアナスタシア・バランニコワ研究員によると、「地元のロシア市民たちは北朝鮮の弾道ミサイル発射にほとんど反応しない。核実験があった時も社会に緊張感はなく極めて平静だった。市民たちが北朝鮮に抗議することもない」と話す。北朝鮮が敵視するのは所詮、米国とその同盟国であり、ロシアの脅威にはならないという意識が根強くあるのかもしれない。

北朝鮮に近いウラジオストクですらそういう状況だけに、ロシア全体でみると、北朝鮮の核・ミサイル問題に対する関心はさらに薄くなる。

北朝鮮の核よりシリア問題

独立系の世論調査会社レバダ・センターが昨年12月、ロシア市民を対象に「2017年の最も重要な出来事」は何だったかを問う世論調査を実施したところ、過激派組織「イスラム国」(IS)との戦いやロシア軍の撤退宣言などを含め、圧倒的なトップがシリアでの戦闘だった。

続いて2位がロシアのスポーツ界を揺るがすドーピング・スキャンダル。国際オリンピック委員会(IOC)が平昌冬季五輪へのロシア選手団の参加を禁止する一方で、潔白な選手は「ロシアからの五輪選手」として個人参加を認める方針を決めたことが高い関心を呼んだ。そして3位はプーチン大統領の次期大統領選への出馬表明。半面、北朝鮮の核実験や北朝鮮をめぐる紛争は、ロシア革命(十月革命)から100年と並んで10位にとどまった。

日本と違ってロシア社会では、北朝鮮の核・ミサイル開発はさほど深刻な脅威とは受け止められていないようだ。では、ロシア軍がS-400の運用を開始するなど、北朝鮮との国境防衛強化に乗り出しているのは米国と北朝鮮の軍事衝突を警戒するためなのだろうか。

プーチン大統領の側近のニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記は昨年末、ロシア紙「論拠と事実」のインタビューで、「米政権は韓国に25万人の米国人がいるという現実を考慮せざるを得ない。仮に朝鮮半島で大規模な軍事行動が起きれば数万人の米国市民が犠牲になる」と述べ、トランプ政権が軍事オプションを選択する可能性は極めて低いとの見通しを示した。

ミサイル配備は韓国の米軍の動きに対処したもの

興味深いのはむしろ、パトルシェフ書記の次の発言だ。「もはや誰にとっても秘密ではないが、北朝鮮の核・ミサイル問題は、ロシアと中国を抑止するため、アジア太平洋地域の軍事化を続ける口実に使われている。米国は世界的なミサイル防衛(MD)システムの要素をこの地域の国々に次々と配備して計画を実現している。北朝鮮情勢の緊張は多分に、米国の戦略的な目標実現に寄与しているという側面を見逃してはならない」というのだ。

パトルシェフ書記の主張を踏まえれば、ウラジオストクでのS-400の運用開始は緊迫する北朝鮮情勢に対処するというよりも、米国主導の中ロを標的にしたMDシステム配備の動きに対抗するのが真の狙いとみることができるだろう。

ロシアは実際、自国の安全保障を脅かすとして、米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の在韓米軍への配備に強硬に反発。プーチン大統領は昨年7月に中国の習近平国家主席が訪ロした際、北朝鮮問題に関する中ロの「共同声明」をまとめ、在韓米軍へのTHAAD配備の即時中止を求めた経緯もある。

THAAD配備について米韓両国は、北朝鮮の弾道ミサイルの脅威に対抗するのが目的と説明するが、中ロは高性能レーダーによって自国のミサイル基地が監視されると警戒している。とくに中国は韓国企業を標的にした事実上の「経済報復」まで実施し、中韓関係は大きく悪化した。韓国はTHAADの追加配備をしないといった約束をしてようやく文在寅(ムン・ジェイン)大統領の昨年末の訪中を実現したものの、THAADを巡る対立は解消していない。

日本の「イージス・アショア」を警戒

中国ほどあからさまではないとはいえ、在韓米軍に配備されたTHAADへの警戒感はロシアでも根強い。さらにここに来て、ロシア軍幹部や安全保障関係者が注視し警戒を強めているのが日本の動向だ。日本政府は昨年、北朝鮮の弾道ミサイル発射に備えて、地上配備型の迎撃システム「イージス・アショア」の導入を決めた。ロシアはこれを「中ロを標的にした米国の世界的なMDシステム構築」の一環とみなしているのだ。

「イージス・アショア」の導入問題は昨年11月、河野太郎外相がモスクワを訪問し、ラブロフ外相と会談した際に主要議題の一つとなった。

ラブロフ外相は日ロ外相会談後の共同記者会見で、「世界的なミサイル防衛(MD)システムの要素を実際に展開しつつある米国の計画は懸念せざるをえず、アジア太平洋地域の安全保障に極めてマイナスの影響を与える」と指摘。THAADを配備した韓国と同様、日本も米国のMDシステムの一部が配備される地域になるのではないかと強く心配していると表明した。

米国はかつて、北大西洋条約機構(NATO)のMDシステム構築の理由を「イランのミサイル攻撃の脅威から欧州を守るため」と説明していた。しかし、とくにウクライナ危機後はロシアの軍事的な脅威に対抗する狙いが浮き彫りになっている。ラブロフ外相は「アジアでは北朝鮮の脅威を口実にしているが、地図を見ると分かるように、米国のMDシステムが絶妙な形でロシアと中国を包囲するのは明白だ」とも非難している。

ロシア側の懸念は昨年12月、ロシア軍のヴァレリー・ゲラシモフ参謀総長が来日した際にも日本側に伝えられた。ウクライナ危機の影響などで長らく延期されていた制服組トップの来日がようやく実現し、北朝鮮の核問題を含めたアジア地域での軍事・安全保障協力の強化を期待した日本側にとっては、想像以上に厳しい会談となったようだ。

ロシアからはさらに、脅しともいえるような気がかりな発言まで飛び出している。イーゴリ・モルグロフ外務次官が「日本政府がイージス・アショアの導入を決めたことはロ日関係、とりわけ平和条約の締結作業に否定的な影響を与える」とロシアの通信社に語っているのだ。

モルグロフ次官は北方領土での日ロ共同経済活動を始め、領土問題を含めた平和条約締結交渉の直接の担当者だ。ロシアが今後、北方領土問題の解決を先延ばしする言い訳に使う懸念は否定できない。

昨年12月、国連安全保障理事会は北朝鮮に対する追加制裁決議案を全会一致で採択した。新決議は北朝鮮向けの石油精製品の輸出の9割削減、海外で働く北朝鮮労働者の2年以内の送還などを打ち出した。

米国と中国の間で事前にすりあわされた決議案は採択の直前、ロシアの要求で修正が加えられた。当初案では北朝鮮労働者の送還時期が1年以内だったが、それに難色を示したのだ。ロシアには現在、約3万5000人の北朝鮮労働者がいるとされ、「全員送還させるのに2年はかかる」というのが理由だったという。人件費が安く重宝する労働力を失う経済的な不利益を先延ばしする思惑とみられ、北朝鮮の核問題で主導権を握ろうとしたわけではない。

ロシアは軍事的な選択肢もちらつかせる米国の姿勢を批判し、北朝鮮の核問題の平和的解決に向けた対話の仲介役にも意欲を示す。ただ、北朝鮮への影響力は極めて限定的だ。かつ北朝鮮の核の脅威に対する認識も日米ほど高くはない。ロシアが北朝鮮の核問題を注視し懸念するのは、核拡散の脅威や朝鮮半島有事への警戒よりも、アジアでの米国のMD網構築の行方に重心が置かれているとみるべきだろう。

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『「湿地回復」へ改良ポプラ300万本を全量伐採 中国にはびこる上意下達の画一処理モデル』(1/12日経ビジネスオンライン 北村豊)について

1/13看中国<任意抓人 赴中国旅游需“提高警觉”(组图)>「中共当局は、旅行中の米国人やカナダ人を拘束、出国禁止や逆に追放とかをする。スマホ等で中共を批判しただけでも、国の安全と言う名目で」。中国への旅行は危険です。最も危ないのは麻薬をスーツケース等に忍び込まされて逮捕されること。最悪死刑です。罪をでっち上げることは、中共は得意ですから。日本人は平和ボケしていてそんなことは起こりえないと思っているでしょうけど、腹黒い連中ですから、何が起きても不思議ではありません。リチャードギアの映画「北京の二人(レッドコーナー)」を見れば、嵌められる怖さが分かります。

https://www.secretchina.com/news/gb/2018/01/13/846851.html

1/13看中国<衛星發射殘骸墜廣西 火光四射傳出巨響(組圖)>「中国の人工衛星が広西省で打ち上げられたが失敗、残骸が落下。地方政府の発表ではケガや死亡した人はいないとのことだが、疑問との話です」。天空1号が地球に落下、中国は没問題と言っていますが、制御不能で落ちて来るのですから、日本にも落下の可能性があり、有問題でしょう。中国の言っていることが嘘でないことを祈ります。

https://www.secretchina.com/news/gb/2018/01/13/846850.html

https://www.excite.co.jp/News/chn_soc/20180108/Recordchina_20180108013.html

http://www.sankei.com/world/news/171013/wor1710130069-n1.html

1/13NHKニュース21時37分<中国の歴史教科書 「文化大革命」を大幅縮小へ 批判高まる

中国の中学生の歴史教科書が改訂され、中国を混乱に陥れた政治運動「文化大革命」を扱う内容が大幅に縮小される見通しとなったことから、インターネット上で、共産党は歴史の教訓を十分に伝えるべきだという批判の声が高まっています。

改訂されるのは、中国の教育省が監修し、ことし3月から中学2年生が使用する歴史教科書です。 香港メディアによりますと、新たな教科書では、1960年代から70年代にかけて、中国を混乱に陥れ多数の犠牲者を出した文化大革命を扱う内容が大幅に縮小される見通しです。これまでの教科書では「文化大革命の10年」と題した項目がありましたが、この項目がなくなり、「毛沢東が誤った認識をしていた」という表現や「動乱と災難」という見出しなども削除されているということです。 新しい教科書とされるものはインターネット上に流出していて、教科書の出版社は文化大革命が巨大な損失を与えたことなどを十分に紹介していると釈明しています。しかしインターネット上では、「歴史を直視しなければ未来はない」とか「歴史教科書の問題は重要で、アジアの隣国も見ている」といったコメントが相次ぎ、共産党は政策の誤りに向き合い歴史の教訓を十分に伝えるべきだという批判の声が高まっています。>(以上)

中国や韓国が日本の歴史教科書に容喙して来るのは内政干渉です。宮澤喜一というリベラル政治家が近隣諸国条項なるものを定めたからです。文科省は外国の言うことなぞ聞く必要はないでしょう。今回の中国の歴史教科書で共産党に都合の悪い事実は消してしまう訳ですから。日本は逆に事実でないもの(慰安婦や南京)も採り上げています。採り上げるならきっぱり否定しませんと。事実が外国の政治的圧力で歪められることになります。まあ、前川喜平が事務次官をやるような三流官庁の文科省では無理でしょう。隠れ左翼が多い日本は滅びるかも。教育や政治に無関心では一党独裁の中国の侵略を防げません。

1/14日経<データ資源、米中攻防 経済覇権狙い囲い込み

インターネット上の閲覧や買い物の履歴など「データ資源」をめぐる米中の攻防が激しい。経済のデジタル化が進むなかで、データは消費者の嗜好分析やマクロ予測まで経済活動の基礎となる宝の山。その質と量が競争力を左右する。大きな消費市場と巨大なネット企業を抱える米中は、データ資源で優位を築く覇権争いを繰り広げる。政権の安定へネット統制を正当化する中国にデータの門戸を開くのか主要国は難しい選択も迫られている。

中国のネット通販最大手、アリババ集団傘下のアント・フィナンシャルは2日、米マネーグラムの買収を断念すると発表した。電子決済サービス「支付宝(アリペイ)」との相乗効果を狙い、世界200カ国超で送金サービスを提供する国際送金大手のマネー社を約12億ドル(約1330億円)で買収する計画だった。

ところが、外資による企業買収を安全保障上の観点から審査する対米外国投資委員会(CFIUS)が待ったをかけた。米国人の資産や送金情報など「マネー社の個人データ流出を懸念した」(米国法弁護士)とみられる。

米国では「個人情報の扱いに信頼性がない」として中国企業による買収阻止は当然との見方が多い。中国国営の新華社通信は「CFIUSの審査はブラックボックスだ」と批判。「(中国企業を過度に警戒する)『過敏症』を改めるべきだ」とけん制した。

その直後、中国でアントのずさんな個人情報管理が露見。アリペイの利用者が2017年の利用履歴を閲覧すると、ほぼ自動的に「個人情報を第三者に提供する」との条項に同意したことになる仕組みが発覚した。謝罪しシステムを変えたが、中国の情報管理への懸念が米国の過敏症でないことを浮き彫りにした。

一連の動きは、データ資源をめぐる米中の攻防を象徴する。米国はグーグルなどネットの巨人5社が世界中で日々、膨大なデータを蓄積する。一方、14億人の巨大市場を抱える中国では、5億人が使うスマートフォン(スマホ)決済のアリペイは毎秒2千件もの決済情報をサーバーに蓄積する。世界のデータ生成量は25年に163兆ギガ(ギガは10億)バイトとなり、16年の10倍に膨らむとされる。データを集めれば、それだけ人工知能(AI)の性能を高められる。「膨大なデータは現代の石油になる」(アリババの馬雲会長)。こんな認識が米中を突き動かす。

米国がデータ資源で中国を仮想敵とする大きな理由は、ネットに対する管理・統制を「国家主権の問題」として正当化していることだ。チャットの会話内容や移動の履歴も含めた個人のデータを国民監視や治安維持の道具にも使っていると指摘される。

中国は17年6月に「インターネット安全法」を施行。外資による中国内のデータの持ち出しを厳しく制限した。各国に批判されても、国家の安全を優先する姿勢を崩さない。米アップルが中国のクラウド事業を地元企業に移管すると発表するなど海外勢は対応に苦慮している。中国の広域経済圏構想「一帯一路」で経済支援する東南アジアやアフリカ諸国を中心に、中国発のネット統制が世界に拡散する恐れも強まっている。

米国市民の機微情報を渡さない――。米議会の超党派議員は17年11月、CFIUSの機能を強化する改正案を議会に提出した。肝は個人情報や遺伝子情報など米国市民に関する「機微情報」が、外国政府や外国企業に渡らないよう厳格に審査するルールだ。

CFIUSの従来の審査対象は、軍事や半導体など安全保障に直結する案件が中心。法案が原案通り成立すれば、米国民の個人データを持つ企業の買収は厳しく審査される可能性が高い。米下院公聴会では、CFIUSに関わった元政府高官が証言。中国政府の経営関与を疑われる中国企業が、AIやビッグデータなど先端分野の技術や情報を持つ米企業を続々と買収していることに危機感を示した。法案は事実上、中国企業の買収阻止を狙っているといえる。

個人情報保護に厳しい欧州連合(EU)も18年5月に、EU域外へのデータ移転を厳しく制限する「一般データ保護規則(GDPR)」を全面的に施行する予定だ。欧州の制度は情報の流通をただ制限するだけではない。「十分な保護水準がある」とした国や地域は、個別に許可をとらなくても個人情報の域外移転ができる仕組みも併せて備える。データという資源を保護する一方で、ビジネスへの活用との両立を図る狙いだ。

データの非資源国である日本は、自由な流通を掲げる。18年春にEUとの間で、EU並みの保護水準を確保して日欧間でデータを移転しやすくする新たな枠組みで合意する見通し。日本はアジア太平洋経済協力会議(APEC)が定めた個人情報の越境移転ルールに米国、カナダ、メキシコ、韓国とともに加わり中国にも採用を求めている。

データは21世紀の経済に不可欠な資源になった。世界経済の発展には、安全保障や人権を大義名分に自国で囲い込むのではなく、各国・地域で共有することが欠かせない。データを求めて動き始めた中国。ネット上の言論統制や国民監視など、民主主義とは相いれにくい動きを強める中国にデータの取得を許すのか。主要国には難しい判断が待ち構えている。(上海=小高航、ワシントン=鳳山太成、八十島綾平)>(以上)

日本も中国に対して買収(企業だけでなく土地や建物も)防止策を打たないと。それとスパイ防止法を早く成立させてほしい。日本には外国のスパイがうようよいるのに罰する法律がないため、スパイ天国と言われています。また日本人のスパイも相当数いる筈です。利敵行為をする人間は断罪されねば。

北村氏の記事で思い起こされるのは、1999年から始まった「退耕環林」プロジェクトでしょう。「退耕環林」の説明には「連作障害などで収量の減った土地での耕作をやめ、代わりにポプラなどを植えて林業へ転換して環境への負荷を減らし、収益も上げようという政策。参加した農民には、8年間分の補助金と苗木が支給される。苗木が育てば、森林法の範囲内で伐採・利用が可能。しかし、灌水・除草や柵のメンテナンスなど育生・管理コストは農民の自己負担であるため、ほとんどの土地が植栽後の管理をされておらず、植栽苗の生育は芳しくない。同様の政策で、退牧環草政策がある。牧草地利用を止め、草原を回復するという政策で、同様に補助金が支給されるが、こちらも補助金を食いつぶした後の展望がない点では同様。」とあります。 農民が手入れをすることがないのは農薬を大量散布して手をかけず毒野菜とする心理と一緒でしょうか?

また生態系に悪影響があると言われていたにも拘わらず、李鵬が賄賂を取るため、三峡ダム建設を強行しました。中国駐在時代、1998年に三峡川下りをして白帝城に行きました。劉備玄徳と諸葛孔明の人形が展示されていて、劉備の死に際し「息子の劉禅が蜀の皇帝の器量がなければあなたが代わりになってくれ」と言ったとのことでした。そこも今は水没して浮島になったとのこと、中共は人権だけでなく歴史も尊重しない賄賂塗れの悪逆非道の連中です。

記事

植樹も伐採も“極端な処理”が中国流

民間の社会団体である“中国環境保護協会”は、そのウェブサイトに2016年11月29日付で「“西洞庭湖”で生態の殺し屋“欧美黒楊”を徹底処理」と題する記事を掲載した。“洞庭湖”は、湖南省北東部にある淡水湖で、通常の面積は2820km²で琵琶湖4つ分に相当するが、増水期には2万km²に拡大して四国の面積(1万8800km²)を上回る規模となる。洞庭湖は、先端を少し短くした「J」の様な形状で、東、南、西に3地区に分けられ、それぞれ“東洞庭湖”、“南洞庭湖”、西洞庭湖と呼ばれる。

“欧美黒楊(学名:Populus xeuroamericana)”とは、「改良ポプラ」と呼ばれるもので、欧州・北米原産のポプラを欧州各地で交配して生まれた品種である。上述の記事には伐採されて、短く切り分けられた改良ポプラの木材を載せた運搬船が運河を進む写真が掲載され、下記のような説明が書かれていた。

改良ポプラのあだ名は湿地の“抽水機(吸い上げポンプ)”であり、改良ポプラは湖岸湿地の乾燥化を早めて“生態殺手(生態の殺し屋)”となる。洞庭湖保護区内の改良ポプラは出来るだけ早く徹底処理すべきで、今年7月末に中央政府の「環境保護監督査察チーム」が湖南省政府に提起した意見の中で整理改革を要求する突出した問題となった。目下、西洞庭湖にある国家級自然保護区の中心地区内の改良ポプラ5万ムー(畝)<注1>余りはすでに伐採が完了しており、南洞庭湖にある自然保護区の改良ポプラ2万ムー余りの伐採作業が進行中である。

<注1>1ムー(畝)は約667m²。1万ムーは6.67km²。5万ムー(33.35km²)は東京の杉並区の面積(34.1km²)に近く、2万ムー(13.3km²)は墨田区の面積(13.8km²)に近い。

狂ったように植えた300万本を全て伐採

さて、2018年1月2日付の全国紙「経済参考報」は、「洞庭湖の改良ポプラ300万本が全て伐採された:往時は狂ったように植樹」と題する記事を掲載した。その概要は以下の通り。

【1】300万本近い改良ポプラが切り倒された。2017年12月31日、これは中央政府の環境保護監督査察チームが湖南省政府に対して要求した洞庭湖湿地の改良ポプラ9万ムー以上<注2>を全て伐採する期限であった。往年は行政命令で“瘋狂植樹(狂ったように植樹)”したものを、今は惜しげもなく“全面砍樹(全面伐採)”している。発展と保護という相反する2つの力を反映し、“長江之腎(揚子江の腎臓)<注3>という称号を持つ洞庭湖でまたしても発展か保護かの綱引きが行われている。植林して造林するという過激な“大躍進”<注4>運動は、自然を救済して原点に戻ることで収束することになるが、これは地方政府の“非糧(食糧以外の)”産業の育成を反映しており、行政による衝動的な動きを抑制することは難しい。そして、それがもたらす産業の苦痛には深く反省させられるものがあるが、洞庭湖地区産業の持続的発展という難題の解明が待たれる。

<注2>9万ムーは60km²で、東京都大田区の面積(60.7km²)に相当する。

<注3>洞庭湖は長江の水を調節する機能を果たしていることから「長江の腎臓」と呼ばれる。

<注4>“大躍進”とは、1958年から始まった中国の第2次5か年計画の初年度に行われた農工業の大増段を図った政策であったが、非科学的であったことからわずか1年で失敗して終結した。

【2】2017年7月末に中央政府の環境保護監督査察チームが湖南省政府に提起した意見は、「洞庭湖地区に植えられている製紙用経済林である改良パルプの面積は39万ムーであり、その中核区域は9万ムー、周辺区域は21万ムーである。これらの改良ポプラは洞庭湖の生態安全に深刻な脅威をもたらすので、2017年の年末までに洞庭湖保護区中核区域内の改良ポプラを全て伐採することを要求する」というものだった。湖南省政府から命令を受けた人々は、否応なく改良パルプの伐採に応じた。2010年から改良ポプラの植林事業に参画した地元出身の企業家は4000ムー以上の植林を行っていたが、生態保護という名目には抗し難く、止む無くポプラを全て伐採した。“漢寿県”の西洞庭湖自然保護区で“造林模範”と呼ばれた“余青山”はチームを組織して10日間かけて長年育てた改良ポプラの樹を泣きの涙で全量伐採した。彼らには何らの補償金も出ないから、その損失は甚大なものがある。

草も生えず、鳥の影もない

【3】湖北省と湖南省の間に横たわる中国第2の淡水湖である洞庭湖は、長江の重要な調整湖で、“魚米之郷(土地が肥沃で物産が豊な土地)”として知られている。その地理的優位性から洞庭湖は中国で最初に『“国際湿地公約(ラムサール条約)”』に登録された7つの湿地の1つで、世界的にまれな巨大な「種の遺伝子」の宝庫と呼ばれている。その洞庭湖に改良ポプラが導入されたのは2000年の初めだった。当時は食糧を植えても利益が薄く、一方で製紙工場の“楊樹(ポプラの樹)”に対する需要が急増していた。洞庭湖地区では水田にポプラの苗木を植えるところが出現したため、「新華社」が2003年に「良田にポプラを植える風潮に警戒せよ」と報じ、これを政府が問題視すると同時に世間が注視するようになった。すると、ポプラの植樹は⽔⽥から離れ、堤防を越えて洞庭湖の⽔際へと移って行った。水際の荒地が大量に請負われて改良ポプラの植林場と化したことにより、湿地保護区の中核地区でさえもその被害を免れることはできなかった。

【4】請負人は勝手気ままに水際を変貌させ、原生の葦(あし)を刈り払ったり、直接に排水を行った上で改良ポプラを植えた。甚だしい場合は水際にコンクリートの枠を組んで土地を囲い込み、排水した上で改良ポプラを植えた。「湿地の吸い上げポンプ」というあだ名を持つ改良ポプラが自然保護区に大量に植えられたことによる損害は甚大で、湿地は日に日に陸地化が進んだ。改良ポプラの成長に有利なように、植林の請負人たちは、油圧ショベルで溝を掘り、掘った土で湿地を埋め立てて土壌に変えた。また、ポプラはカミキリムシの食害に遭いやすいことから、殺虫剤も多用されたため、土壌汚染も進んだ。改良ポプラが密集する地域では、渡り鳥の姿もなく、地元の人々は、「樹の下には草も生えず、樹の上には鳥の影もない」と嘆いた。

【5】改良ポプラの価格は2000年前後がピークで、改良ポプラ1ムー当たりの木材価格は5000元(約8万7000円)以上であったが、伐採する前3年間は樹の周囲で野菜の栽培が可能で、別途1ムー当たり1000元(約1万7400円)の収入を得ることができた。ところが、改良ポプラの1ムー当たりの木材価格は2003年頃から急激に下降し、2014年には2000元(約3万4800円)前後に落ち込んだ。

【6】2014年4月、『洞庭湖生態経済区計画』が中央政府“国務院”で承認され、これに加えて「長江経済ベルト建設」が国家戦略になると、洞庭湖地区は新たな歴史的転機を迎えることになった。しかし、洞庭湖の生態悪化は明白で、洞庭湖地区の生態環境は深刻な状況にあった。中央政府の環境保護監督査察チームが湖南省政府に意見を提起した時には、“一針見血(ずばり急所を突いて)”次のように指摘した。すなわち、洞庭湖のⅢ類水質<注5>は2013年には36.4%あったものが、2016年にはゼロに低下し、出口部分の総リン濃度は97.9%に上昇しており、形勢は楽観できないものとなっている。洞庭湖周辺の人々は、“靠湖吃湖(湖に頼って生活)”しながら、洞庭湖の生態保護など一顧だにせず、長年にわたって慣れと依頼によって洞庭湖をむしばんで来た。その縮図の最たるものが改良ポプラの植林なのである。

<注5>中国の水質基準(地表水)はⅠ類が水源水、Ⅱ~Ⅲ類が生活飲用水、Ⅳ類は工業用水、Ⅴ類は農業用水。

残る21万ムーも全て伐採へ

こうした状況下で、2017年7月末に中央政府の環境保護監督査察チームが湖南省政府に要求したのが、12月末までに洞庭湖湿地の中核地区に植えられた9万ムーの改良ポプラを全て伐採して根絶することだったのである。この9万ムーに植えられていた改良ポプラの総数は何と300万本、それを8月から12月末までの5カ月間で全て伐採することが至上命令として中央政府から湖南省政府に下され、湖南省政府はそれに応えて12月末を待たずに300万本の改良パルプの全量伐採を完了させたのだった。

2000年頃から始まった改良ポプラの植林は、地方政府にとって利益を生む、うま味のある事業であったことから、洞庭湖周辺の市政府や県政府が挙って詳細な「改良ポプラ発展計画」を策定し、政府出資の奨励策や企業誘致などを行って大々的に改良ポプラ植林事業を展開した。“郷”や“鎮”の幹部が植林事業に不熱心であると、その怠慢の責任を追及されたという。

改良ポプラを植林したことにより、洞庭湖の湿地は乾燥して土壌となり、改良ポプラが密集する地域では太陽光がポプラにさえぎられて、周辺の植物は壊滅の危機に瀕した。また、改良ポプラは魚類の繁殖地や鳥の生息地をも破壊した。さらに、湿地が土壌に変わったことにより、洪水期には水の円滑な流れが阻害され、洪水防止にも影響を与えた。確かに改良ポプラの植林は地元の政府や企業に利益をもたらしたが、ラムサール条約に登録されている洞庭湖の湿地を破壊し、その貴重な生態系に甚大な損害を与えたのである。

上述したように、洞庭湖地区における改良ポプラの植林面積は30万ムーであり、2017年12月末までに伐採されたのは、そのうちの中核区域の9万ムーに過ぎない。残る21万ムーは引き続き伐採されることになるが、改良ポプラの数量は9万ムーの密集地域で300万本であったから、密集度が多少低い21万ムーでは恐らく500万本前後になるだろう。今後何カ月かけて21万ムーの伐採が完了するかは分からないが、伐採によって作られる改良ポプラの木材が膨大な量であることは間違いない。

全てお上のご意向に沿って“一刀切”で

1月3日付の北京紙「新京報」は、環境研究者である“于平”の「300万本の改良ポプラを植林して伐採し、洞庭湖を痛めつけた責任は誰が負うのか」と題する所見を掲載した。于平はこの事件の経緯を説明した上で、専門家や業界人が絶えず植林事業に異議を申し立てたにもかかわらず、目先の利益に目がくらんだ地元政府の役人は耳を傾けることなく無視を決め込んだため、植林狂騒はますますひどいものとなったと苦言を呈し、文末で次のように述べている。

過去数十年間、勝手に湿地を占拠してでたらめな開発を行うことは、全国各地で普遍的に行われて来た。利益を得るために、一部の地方役人はそれをはばかることなく行っているが、湿地保護の法的執行力が脆弱なだけでなく、責任を追及する体制ができていない。指導幹部の環境に対する「離任審査」や「責任の終身追及」制度はすでに明確になっているが、目下のところ、地方政府の主要幹部が湿地破壊により責任を追及された例はない。環境破壊を行いながら昇進した役人に対して遡って処罰しないのであれば、誰もが湿地開発に手を伸ばすのではないか。湿地を野蛮な開発の犠牲にしないためには、法律の完備と事後の責任追及が伴わなければならない。

これは正論であり、湿地破壊に止まらず、“形象工程”と呼ばれる「指導者個人のイメージアップや指導者とその仲間の利益獲得を目的とした、実際には必要ないのに、権力を濫用して国民の財産・労力を浪費する工事」などにも当てはまる。そうした無用な工事が業績として評価された者は党の高級幹部や高級官僚に昇進し、無用な工事の後処理を背負わされた後任者が貧乏くじを引くことになるのだ。改良ポプラの植林を推進して地方財政を潤すことに成功した官僚たちは昇進を果たしただろうが、後処理の伐採作業を強制させられた後任者たちこそいい面の皮と言えよう。

ところで、中国語に“一刀切”という言葉がある。これは「(実情を無視して)物事を画一的に処理する」ことを意味する。上述した改良ポプラの植林も伐採も全てお上のご意向に沿って“一刀切”で行われたものであり、中国共産党主導の中国では異議を唱えることは許されない。改良ポプラを例にとれば、改良ポプラが湿地の“抽水機(吸い上げポンプ)”であることを科学的に検証していれば、貴重な洞庭湖の湿地を破壊するであろうことは事前に分かったはずである。しかし、科学的な検証を怠り、目先の利益だけを追求した結果が、改良ポプラの植林による湿地の破壊であり、今回の30万ムーの改良ポプラの全量伐採である。改良ポプラを全量伐採したとしても、根っこまで掘り出すわけではなく、短期間に元の湿地に戻るわけではない。科学的検証を経て、湿地に回復する最善の方策を究明した上で改良ポプラの伐採を行うのならまだしも、単に伐採すればよいと“一刀切”で動くのはいかがなものか。

繰り返される「非科学的技術とずさんな管理」

1958年に毛沢東主導で開始された“大躍進”政策では、農工業の大増産により数年で経済的に米国や英国を追い越すことを目標としたが、非科学的技術とずさんな管理により数千万人の餓死者を出して失敗し、1959年に毛沢東は責任を取って国家主席を辞任した。この時も科学的検証に基づき毛沢東をいさめる人がいれば、数千万人の餓死者を出す悲劇は起こらなかったはずだが、全国民が毛沢東の指示に妄信的に従い“一刀切”で動いたことが甚大な損害と悲劇を導いた。当初の政策決定が非科学的であり、目先の短期的利益を追求するものであれば、後日必ずその後遺症が現れる。それは大躍進により発生した数千万人の餓死者であり、改良ポプラの植林によって破壊された洞庭湖の湿地であった。

2017年11月18日に北京市“大興区”の“聚福禄公寓(アパート)”で発生した火災を契機として北京市が開始した“低端人口(低級人口)”を北京市内から駆逐する動きは、“一刀切”でいかなる例外も認めない形で進められている。地方から出稼ぎに来た人々に借家・借室から数日以内に立ち退くよう要求し、拒めば住居の取り壊しや電気・水の供給停止を行い、立ち退きを強制している。彼らが北京市内から去った後は、家政婦、子守、トラック運転手、宅配便の配達員、各種の店員や作業員などの低賃金労働者が不足し、物価上昇や都市の機能不全が発生している。北京市ではこれと同時進行で、大気汚染を減らすための“煤改気(石炭を天然ガスに換える)”や都市景観を整えるための「ビル屋上・壁面から広告・看板標識の撤去」<注6>が強制的に“一刀切”で行われた。

<注6>“煤改気”および広告・看板標識の撤去の詳細は、本リポートの2017年12月15日付『1000万人が凍える中国「暖房変換政策」の失態』および12月22日付『北京に吹き荒れた「看板・広告撤去騒動」の顛末』参照。

2017年12月17日に“北京大学”講堂で開催された第19回「北京大学光華新年フォーラム」に登壇した教育企業“新東方教育科技集団”会長の“兪敏洪”は講演の中で、北京市で行われている低級人口の駆逐、“煤改気”、広告・看板の撤去に言及し、「私が特に怖いのは、中国で出現している各種各様の“一刀切”モデルである。中国の官僚主義は上位下達の管理モデルで、下部が執行する時に現実の状況を考慮しないばかりか、庶民感情も考慮せず、盲目的に指示に従う対応を引き起こす」と述べて、事前に事態を十分に検討することの必要性を訴えた。このように“一刀切”の問題点を公式の場で堂々と指摘する人物もいるのだが、こうした意見が取り入れられて“一刀切”モデルが見直されるのはいつの日か。

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『中国「北朝鮮フェイク文書」はなぜ流布したか 偽造犯は米国逃亡中の元スパイ?』(1/10日経ビジネスオンライン 福島香織)について

1/13現代ビジネス<中国「大物政治家」のスキャンダルを暴露し続けた大富豪の狙い 民主化の星か、中国版籠池氏か… 安田 峰俊>

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/54113

1/11ZAKZAK<中国共産党が恐れる郭文貴を直撃 「宿敵・王岐山を絶対潰す」>

https://www.zakzak.co.jp/soc/news/180111/soc1801110012-n1.html

郭文貴が未だ生き延びられているのは、彼の持っている金のお蔭か、彼の持っている中共にとって都合の悪い資料を米国が守るため安全を保証しているためかは分かりません。両方かも知れません。『毛沢東の私生活』を書いた李志綏は米国移民して本の出版3ケ月後、シカゴの自宅浴室で遺体となって発見されました。1995年2月のことで、心臓発作が原因との発表でしたが、江沢民が殺したとの噂がありました。タイミングが良すぎましたので。

また、先日慰安婦像の寄贈を受けたリー・サンフランシスコ市長も中共のスパイ容疑でFBIの調査が入る前日に、中共が暗殺したとの噂がたちました。死因は同じく心臓発作です。朝日新聞の若宮啓文元主筆も北京のホテルで病死しました。中共は用済みになれば無慈悲に処分するという事でしょう。「ザ・レイプ・オブ・ナンキン」を書いたアイリス・チャンの自殺も中共の関与があってもおかしくないと思っています。

https://youtu.be/yQsXoPvwZVI

郭文貴はデータを小出しにしていると、いつ暗殺されるか分からないから、手持ち資料を全部出した方が良いのでは。CIAには渡しているのかもしれませんが。米中衝突のタイミングを見ているのかもしれません。アサンジやスノーデンはロシアが支援していると1/12宮崎正弘氏メルマガにありました。米露で暴露合戦をすれば国民を犠牲に悪に手を染めているのが白日の下に晒されるから良いと思いますが。

http://melma.com/backnumber_45206_6632369/

1/12日経電子版<中国、17年の対米黒字最高 米経済好調で輸出拡大>

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO25601980S8A110C1MM0000/

これで益々トランプは中国に厳しい政策を採るようになるでしょう。1/11ロイターの記事“China opposes U.S. pro-Taiwan bills welcomed by Taipei”のように中国の嫌がることを米議会でも始めています。

1/13宮崎正弘氏メルマガ<『広辞苑』こと『嘘辞苑』は開き直り、岩波の本性を暴露したが  デルタもマリオットも「台湾は独立国」ばかりか、チベットも主権国家だ、と>では、

「中国に乗り入れている米国のデルタ航空はウェブサイトにおいて「台湾、チベット、マカオ、香港」を独立国家として扱ってきた。

同様に最大のホテルチャーン「マリオット」、服飾の「ZARA」、そして医療メーカーの「エドロニクス」などは自社のウェッブサイトにおける表現で「台湾、チベット」は独立国家と記述してきた。」とありました。日本は中国に弱腰すぎます。在米の民主派を価値観を共有するとして支援、南京や慰安婦は中共の息のかかった在米反日組織の「世界抗日戦争史実維護連合会」(世界史維会)のプロパガンダと主張して貰えば良いでしょう。

記事

“犯人”は郭文貴?(写真:ロイター/アフロ)

先週のネットの話題でなかなか興味深かったのは、中央弁公庁の“絶密文書”を米国のニュースサイト・ワシントンフリービーコンが入手した、というものだった。この“絶密文書”は、中国党中央として、下部組織に、国連の対北朝鮮制裁決議は象徴的に実施するにとどめとけ、とか、北朝鮮が核実験をやめてくれれば、中国としては体制維持を保障し、北朝鮮の国防建設や民生インフラ建設への投資を拡大して、中距離弾道ミサイルなんかも供与する、とか、北朝鮮にすぐさま核兵器を廃絶させる必要性は中国にはない、とか結構スゴイことを通達していた。本物の絶密文書であれば、超一級特ダネであり、とりあえず日本の毎日新聞だとか産経新聞だとか、それなりの大手メディアも転電していた。

だが、この絶密文書、コピー写真が同ニュースサイトで公開されていて、それをよくよくみれば、なんか偽物っぽい。1月2日に公開されて、3日に日本や英米メディアが転電したりしたが、4日はおおむねの人が「フェイクニュース」と断定するにいたった。しかしながら、時期的にも、北朝鮮が南北対話を受け入れるというタイミングで、さらにトランプ政権の暴露本『炎と怒り』出版もかさなり、米中はいったい北朝鮮問題をどうするつもりなんだというところに投下された、この“フェイクニュース”は、誰が何のために、作り上げたのだろうか、と興味をそそられることだろう。ちょっと勝手な推理をしてみようか。

「核問題解決を深化させるための決定」

まず、文書の中身をもう一度、詳しく紹介しよう。

タイトルは「我が国と朝鮮民主主義人民共和国が当該国の核問題解決をさらに一歩深化させるためのコミュニケーション協調工作に関する中央弁公庁の決定」。2017年9月15日発行の日付と中央弁公庁印がついてある。党中央の外交マターを担う中央対外連絡部に決定を通達する文書であるが、9月19日には全人代、国務院、中央軍事委員会にも回された、という。

内容は「朝鮮(北朝鮮)は我が国の西側敵対勢力に抵抗するための重要な軍事緩衝区であり、わが党が指導する中国の特色ある社会主義制度としても、朝鮮の持つ政治的戦略的地位の重要性は何物にも代えがたい。このため、わが党、国家は一切の代価を惜しまずに朝鮮の主権とその領土の保全を守り、そして朝鮮政権の安定と継続を切実に保障する必要性がある」

「手をこまねいて傍観することはない」

「党中央および国務院の北朝鮮問題対応にかかわる関連部署および中央国家安全委員会のこれまでの会議の中で処理してきた北朝鮮にかかわる問題の指導的精神にかんがみ、朝鮮執政当局と当該国の核問題について交渉協力工作を行う関連部署に対しては、以下のように具体的な要求を通達する」

「中共中央を代表し、朝鮮サイドに対してはわが方は朝鮮政権の防衛の決心を一層強調する」

「朝鮮政権の崩壊及びこれにより引き起こされる米国を始めとする西側敵対勢力が朝鮮半島において引き起こすであろう直接的軍事対峙(原文では対持と誤記)を防ぐため、わが国とロシアなどの国家は外交斡旋と軍事牽制など一切の手段を駆使して、必ずや朝鮮半島の平和安定を保障し、戦乱が生じることを防止すると決心しており、これはわが方とロシアなどが共通して堅持する立場である」

「同時にもし米国が対朝鮮戦争を発動した場合、アジア太平洋地域および全世界の政治経済の枠組みが巨大な影響と衝撃を受けうることを十分考慮し、わが方とロシア方面は絶対に朝鮮半島の混乱情勢を手をこまねいて傍観することはない」

「国連の対北朝鮮制裁決議については、我が国は朝鮮内の内需を十分に保障する前提のもと、象徴的に処理して懲罰すればよい」

「中国で開設されている朝鮮企業は閉鎖されたが、わが方は対北朝鮮貿易仲介機関および第三国(地区)を経由して引き続き関連貿易活動を展開することをしばらくは制限しない」

「朝鮮民生と基礎インフラ建設に対する援助は、2018年度は、2017度比で一回当たり15%増とする。今後5年の間、年平均で前年同期比10%増をくだらないようにする」

「わが方の朝鮮と関連する銀行業務は一時的に停止する規定があるが、これは中央直属の国有銀行および一部地方銀行に限定することになるだろう」

「北朝鮮の防御的軍事建設に対する投資は増加させ、わが国の先進的中短離弾道ミサイルやクラスター爆弾などハイレベル軍事科学技術を提供する」

「厳正に朝鮮当局に核問題における自制を警告すると同時、目下、わが方に強制的にすぐさま朝鮮の完全核兵器廃棄を要求する必要性は存在せず、そのかわり北朝鮮に自制を求め、将来若干の条件が成熟したときに、徐々に改革を行い、最終的に朝鮮半島の非核化要求に到達すればよい」…。

要するに、中国は北朝鮮がこれ以上の核実験を行わないでいてくれるなら、ロシアとともに核兵器保有を容認する、国連の制裁決議も象徴的な実施にとどめるし、何なら北朝鮮の国防のために中距離ミサイルやクラスター爆弾をあげてもいいよ、という話であり、中国が国連の対北朝鮮制裁決議に賛成したり、米国と足並みをそろえて北朝鮮に圧力をかけるというのは完全な見せかけである、という内容である。本当ならば中国の嘘の大暴露である。

作ったのは、逃亡中の郭文貴?

だが残念ながら(?)、この文書がフェイクであることも、ほぼ間違いない。中国外交部は捏造と一蹴しているし、確かに見る人が見れば、変である。

具体的にいえば、今時の公文書には公文書QRコードがつけられる規定になっているが、そのQRコードが見当たらない。「直接的軍事的対峙」とあるべきところが「直接的軍事的対持」というありえない誤字がある。そもそも、絶密文書というのは幹部に回した後、持ち帰ることも許されず、読んだあとはすぐ回収されるので普通はコピーも不可能。コピーすれば画面がつぶれる特殊な紙でできている。用語も党中央とすべきところを中共中央と表示していたり、党中央の文書として不自然な言葉遣いが散見される。ただ、全くのド素人が作ったものとするほど幼稚でもない。(コピーして黒くつぶれたものを特殊な光を当てて読み取ったかのような不鮮明なコピー写真をわざわざ作っている)。それなりに党中央内部に通じた人間が作ったものとみられる。

では、誰が作ったのか、という話だが、一般に噂されているのは「闇の政商」として北京五輪プロジェクトにかかわったビジネスマンで、習近平政権に汚職容疑で失脚させられるとみて、政権スキャンダルの証拠をにぎったまま現在米国に逃亡中の郭文貴である。このコラムでも何度か取り上げた。彼は自分自身でも告白しているが国家安全部17局に所属してビジネスマンの肩書を使って諜報・特務工作に従事していたことがある。つまり、スパイである。文書の偽造などはお手のものではあろう。

ではネタ元が郭文貴だと仮定し、なぜ彼がこのようなこった文書を捏造し、フリービーコンという新興保守ネットニュースメディアに報道させたのか。

郭文貴といえば、昨年から王岐山および中央規律検査委員会のあることないことを含めたスキャンダルをネットを通じて暴露し続け、習近平政権を揺さぶり続けているが、なぜ急に北朝鮮がらみのフェイクの絶密文書を持ち出したのか。自分の身を守るための習近平政権に向けた駆け引き材料としてのフェイクニュース投下なら、習近平や王岐山の蓄財や下半身スキャンダルの方が裏がとりにくい分、長持ちするだろうに。

わかっていても転電したくなる

一つには、この文書がフェイクでありながら、文書の中身がじつのところまんざらフェイクばかりともいえないものを含んでおり、外国メディアがフェイクとわかっていても転電したくなるようなものであるという点だろう。

実際のところ、中国共産党内に北朝鮮擁護派が依然存在しており、金正恩の体制維持は絶対である、という主張はまだ根強い。そういう親北勢力を抑えながら、習近平は少なくとも表向き、対北朝鮮制裁を強化する姿勢を示した。しかしながら、トランプ政権は中国の対北朝鮮制裁の本気度を疑っており、中国の石油タンカーが海上で北朝鮮に原油を提供していることが、米監視衛星の写真などで判明したこともあって、米中の北朝鮮問題をめぐる共闘関係も揺れている。そういうなかで、なんとか南北対話が行われることになったのだが、果たしてこれに素直に期待を寄せてよいのかどうか、不安が募る。

一方、中国の民主化を願う華人活動家や、米国の反中保守派は、北朝鮮問題における米中融和・協力体制が進むこと自体に強い懸念を感じている。というのも、解放軍が実際に北朝鮮の核兵器排除のために米国の要請にしたがって軍事行動を行えば、半島における中国の軍事プレゼンスが強化され、韓国のTHAADミサイルの撤退、ともすれば在韓米軍の撤退などにもつながりかねず、極東アジアの米中パワーバランスは中国が圧倒的に有利になるやもしれない。これは習近平政権の独裁確立シナリオを補強することになり、共産党政権の崩壊を願う華人民主化活動家からすれば、避けたい未来なのだ。

華人民主化活動家たちは、むしろ米中対立が激化し、トランプ政権が中国共産党体制を弱体化させてくれればいい、と思っている。だから、中国の人権問題では真逆の立場にあるスティーブ・バノンを持ち上げたりするのである。バノンは「米国にとって真の敵は中国」といってはばからないトランプ側近の中の反中派の筆頭で、すでにトランプ政権からは追い出されているのだが、華人民主化活動家たちは依然トランプ政権になんらかの影響力を持つと思って働きかけている。トランプ政権が妙に対中融和的な動きをしていることに懸念している在米華人活動家たちは、バノンを通じてトランプ政権をもう一度選挙前に見せたような対中強硬路線にひき戻したい、と考えている。

このバノンと郭文貴は10回以上面会し、郭文貴は独自のメディア・プラットフォームを創るために、ブライトバードニュース会長のバノンにアドバイスを求めていることをAFPのインタビューで明らかにしている。郭文貴はこのインタビューで、自分の活動の目的が中国の体制転換、つまり民主化であるとしている。どこまで本気かは知らないが、少なくとも郭文貴は、自分の生き残り策を、米国で華人民主化活動家たちに協力することで切り開こうとしている。

とりあえず現状に楔を

郭文貴は、華人民主化活動家、バノンら米国政治の反中保守派勢力と共闘関係を構築しようとする中で、こうした米中間の疑心暗鬼を引き起こすようなフェイクニュースを投下した、ということになる。その狙いを想像するに、民主化活動家たちの期待に応えて米中間に不信を引き起こすこと。絶密文書という、めったに手に入らない情報を入手できる自分の価値をバノンや保守派政治家たちにアピールし、その庇護を求めること。さらに言えば、王岐山や党中央指導部の個人スキャンダルレベルでは、米国を含む外国メディアは反応しなくなってきた。もっと、外国メディアが食いつきやすいネタ、それが北朝鮮問題であったということだ。

北朝鮮に対する姿勢は、おそらくまだ党内で完全には一本化されていない。習近平がトランプと対北朝鮮政策でなんらかの合意をもっている一方で、金正恩とも密約があっても不思議ではない、と誰もが思っている。また、北朝鮮核問題の落としどころが、北朝鮮の核保有容認とならざるを得ないということは、中国の専門家の意見にもある。文書自体はフェイクだろうが、中身はこれまで内部での専門家たちの議論が反映されているので、ある種の説得力があるのだ。

だから私はフリービーコンやそれを転電した保守系メディアは、文書の真贋の裏を取らずに、とりあえず米中融和の現状に楔を入れたいという意図もあって、わざと郭文貴のフェイクニュースに乗ったのではないか、とも疑っている。

昨年から「フェイクニュース」という言葉が一つの流行語となっているが、フェイクニュースというのはなかなか面白い。ニュースの受け手自身も、それが事実であるかどうかより、その言説が流布することでどういう影響を政権や国際情勢に与えるかということを優先して信じたり騙されたりする。安倍政権を打倒するという目的で流れるフェイクニュース、トランプ政権を揺るがすフェイクニュース、そして習近平政権を揺るがすフェイクニュースがほとんど同時に世界に流れるのも偶然の一致だろうか。

個人的にいえば、このフェイク北朝鮮文書ニュースに関しては、私もちょっと騙されたふりをしたい気分だ。実際、南北対話なんて、そちらのほうがよほどフェイクな気がする。

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