『中国の国際貨物列車、ロンドンへ18日で走破』(2/17日経ビジネスオンライン 北村豊)について

小生が中国に初めて赴任しました1997年頃には、山賊がいて列車を襲い、物を掠奪すると言われていました。本記事にありますように、百円ショップで売られるようなものであれば、襲う値打ちもないでしょう。今の中国は2001年のWTO加盟により、経済的に豊かになりましたので。

イギリスも中国から安い物が入ってくると喜んでいて良いのでしょうか?そのうち英国産業が傾くことになり、雇用にも甚大な被害を及ぼすのではと心配になります。英国がEU離脱したのは移民問題・外国人労働者問題での自主決定権の回復と関税自主権の回復があったと思います。EU内の競争相手でなく、今度は中国が競争相手になるのでは。価格面では、中国は鉄鋼に代表されるように大量生産・過剰生産しますので、英国には勝ち目はないと思います。

中国はアヘン戦争の恨みを晴らそうと思っているハズです。英国は日本ほどヤワではありませんので黙って仕返ししようと思っているでしょう。ただ、ロスチャイルドがどう動くかです。金にしか忠誠心が無いのは中国人と一緒でしょう。気が合うのかも知れません。注視しておく必要があります。

鉄道輸送が海運より高いとすれば普通に考えれば、百円ショップで売られるようなものは海運にするのでは。中国人お得意の一帯一路の宣伝の為でしょう。昔、モルトケが育てたドイツ参謀本部は鉄道を使い、兵士の迅速・大量輸送をして戦争に勝ちましたが、今は簡単に空から線路を爆破できます。海外の線路の軍事利用はなかなか難しいでしょう。国内の反乱分子の鎮圧には威力を発揮すると思います。

記事

1月18日、中国・浙江省から遠路、ロンドンに到着した貨物列車(写真:ロイター/アフロ)

1月18日午後1時、英国のロンドン東部(イーストロンドン)のバーキング駅(Barking)にゆっくりと姿を現したのは、中国の浙江省“義烏市”から古(いにしえ)のシルクロードを経由して遠路はるばる英国へ到着した貨物列車だった。バーキング駅には、「“First freight train from China to UK  Yiwu(義烏) to London(倫敦) January 2017(中国義烏から英国ロンドンへの最初の貨物列車 2017年1月)”」と書かれた横断幕が掲げられ、多数の鉄道ファンや英国・中国の政府関係者および鉄道関係者、メディアの記者が待ちわびる中、貨物列車がバーキング駅に到着すると観衆から万雷の拍手が巻き起こった。

68個のコンテナに「百円商品」を積んで

2017年の年が明けた1月1日の午前0時、合計700トンの輸出商品が詰まった68個のコンテナを積んだ列車番号X8024/X8065の中国・欧州直通国際貨物列車(義烏-倫敦)(以下「義・倫国際貨物列車」)が始発駅である義烏西駅から終着地の英国ロンドンへ向けて出発した。その貨物について、1月19日付の英紙「ザ・サン(The Sun)」は100万足の靴下と報じたが、そこには靴下だけでなく各種各様の日用雑貨が含まれていた。義烏市は“金華市”が管轄する“県級市(県クラスの市)”で、世界最大の“小商品批発市場(日用雑貨卸売市場)”として名高く、日本の百円ショップで販売されている商品の故郷として知られており、今では遠くアフリカ、中東からも多数の商人が押しかけている。世界のクリスマス用品の60%は義烏から出荷されていると言っても過言ではないほどである。

今回、義・倫国際貨物列車に積み込まれたのは、“杭州海関(杭州税関)”が新たに拡張した「義烏鉄道税関検査所」で2016年11月16日に税関検査を終了した貨物で、最初の義・倫国際貨物列車ということで出発の1か月半も前に万全を期して税関検査をすませたのだった。1月1日午前0時、義烏西駅を出発した義・倫国際貨物列車は34両の車両に68個のコンテナを積んで一路英国のロンドンを目指した。列車は湖北省“武漢”、陝西省“西安”、新疆ウイグル自治区“ウルムチ”を経て隣国カザフスタンとの国境の町である新疆ウイグル自治区“阿拉山口”の税関を通過してカザフスタンへ入り、その後、ロシア、ベラルーシ、ポーランド、ドイツ、フランスに到り、英仏海峡(ドーバー海峡)トンネルを抜けて英国のケント州フォークストンに到着、さらに北西に向かって走り、1月18日午後1時にロンドン東部のバーキング駅に到着したのだった。

義・倫国際貨物列車が走破した距離は1万2451km、所要日数は18日間、実質的には17日と13時間であった。伝統的な海上輸送であれば、義烏から英国の港までは35日間を必要とするが、義・倫国際貨物列車はこれを半分の17.5日間に短縮したのである。貨物到着までの所要時間を考えれば航空輸送(3~5日)の方が速いのは当然だが、列車輸送はその運賃が航空輸送の20%前後に抑えられる。なお、この17.5日間に国毎に異なるレール幅の関係から台車を3回交換していたのであり、義・倫国際貨物列車は国毎に鉄道規則が異なる中を驚異的な速度で貨物を義烏からロンドンまで運んだのである。

義烏から8路線、中国から38路線

さて、義烏から欧州へ向けて国際貨物列車が運行されたのは今回が初めてではない。これらの列車は「“義新欧”国際貨物列車」と統一的に命名され、上述した英国ロンドンを終着地とする「義・倫国際貨物列車」を含めて都合8路線が運航されている。その内訳は<表1>の通り。

<表1> 義新欧国際貨物列車の運行状況

(出所)浙江省交通運輸庁統計から作者作成

英国は義烏市にとって欧州で最大の貿易相手国である。統計によれば、2016年1~10月の義烏市の対英国輸出入総額は5.69億ドルで前年比10%増であった。このうち、対英国輸出額は5.63億ドルで前年比9.4%増、対英国輸入額は564万ドルで前年比172.8%増であった。義烏市は義・倫国際貨物列車の運行を成功させたことにより、欧州最大の貿易相手国である英国との鉄道輸送ルートを確立したのであった。

ところで、中国にとって最初の“中欧班列(中国・欧州国際貨物列車)”(以下「中・欧国際貨物列車」)は、2011年3月19日に重慶市からドイツ西部のデュースブルク(Duisburg)を終着地として運行された。この成功を契機として、四川省“成都市”、湖北省“武漢市”、河南省“鄭州市”、江蘇省“蘇州市”、広東省“広州市”、浙江省“義烏市”などの諸都市が次々と中・欧国際貨物列車の隊列に加わり、ポーランドのウッチ(Lodz)、ドイツのデュースブルグやハンブルグ、スペインのマドリードなどの欧州諸都市との間でコンテナの鉄道輸送を開始した。今回のロンドンは中・欧国際貨物列車の15番目の都市になったのだった。中・欧国際貨物列車の運行回数は2014年に100回、2015年に156回、2016年には200回に達し、累計運行回数は1700回に及んでいる。また、中国から欧州諸都市への運行路線は38本に上っている。

中国メディアが報じた中・欧国際貨物列車の欧州諸都市までの所要日数は<表2>の通り。

<表2>  中・欧国際貨物列車の所要日数

義烏市と時を同じくして2017年の1月1日午前0時に、四川省の省都“成都市”からもポーランド第3の都市「ウッチ」に向けて中・欧国際貨物列車、通称“蓉欧快鉄”<注1>が発車した。蓉欧快鉄は成都市からウッチまでの9965kmを14日間で走破するが、今回の蓉欧快鉄には、中国家電メーカー“TCL集団”製のテレビが満載されていたほかに、成都市“温江区”で栽培された生花が積み込まれていた。TCL集団の生産拠点は広東省の沿海都市“恵州市”だが、彼らはテレビの生産ラインを成都市へ移して、成都市で生産されたテレビを蓉欧快鉄で欧州へ出荷しているのである。

<注1> “快鉄”は“快速鉄路(快速鉄道)”の略。“蓉欧”の“蓉”は成都がかつて“芙蓉城(芙蓉の都市)”と呼ばれたことにちなむ。

現状のところ、蓉欧快鉄はポーランド、トルコ、ロシアの3路線あり、成都-ウッチ(ポーランド)の中央ライン、成都-イスタンブール(トルコ)の南ライン、成都-モスクワ(ロシア)の北ラインで構成されている。蓉欧快鉄にとって2017年の目標は3路線のさらなる拡大であり、2017年は芙欧快鉄を1000回運行することを予定しているという。

「一帯一路」の一翼に

2013年9月7日、カザフサタンを訪問していた中国国家主席の“習近平”は首都アスタナにあるナザルバエフ大学で講演し、「シルクロード経済ベルト」の共同建設を提案した。また、習近平は同年10月にブルネイのバンダルスリブガワンで開催された東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議に出席した際、「21世紀海上シルクロード」の戦略構想を提起した。これは古代に中国と地中海世界とを結ぶ交易路「シルクロード」を構成した北方の「草原の道」と南方の「海の道」を現代に復活させて関係諸国による一大経済圏を建設する構想である。この両者を統合させたものが“一帯一路(The Belt and Road、略称:B&R)”経済圏構想であり、中国がさらなる発展を目指すための国家的最重要戦略なのである。2014年11月に北京市で開催されたアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議で、習近平は正式に“一帯一路”経済圏構想を提起して、関係諸国に支持と参加を呼び掛けた。

2015年3月28日、中国政府の“国家発展改革委員会”、“外交部”、“商務部”は連名で『シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロードを共同で建設するためのビジョンと行動』を発表し、具体的な一帯一路の方向性を示した。中国政府が提唱して2015年12月25日に発足したアジアインフラ投資銀行(Asian Infrastructure Investment Bank、略称:AIIB)は、創設メンバー57か国、資本金1000億ドルで、2016年1月16日に開業式典を挙行した。AIIBは一帯一路経済圏の建設を促進することにより、不振を極める中国経済を活性化させると同時に、同経済圏における中国の覇権を確固たるものとすることを目的としたものだった。

その一帯一路の一翼を担っているのが、上述した中・欧国際貨物列車なのである。古代、絹を主体とする中国産品を西域や中東へ運ぶ隊商がラクダを連ねて砂漠を踏み越え遥々と往来したシルクロードを、今では機関車に牽引された数十両のコンテナを載せた台車がラクダと比べものにならない速度で疾走している。これこそは中国と欧州がユーラシア大陸でつながっていることの証であり、中国の経済力を示すデモンストレーションに他ならない。

BBCが実況、270万人が注目

1月18日、英国放送協会(BBC)は義・倫国際貨物列車のバーキング駅到着をテレビで実況放送し、それを270万人の英国民が見たという。英国の総人口は約6400万人であるから24人に1人が実況放送を見た勘定になる。それほどまでに中国東部にある義烏市から遠路遥々1万2451kmをわずか18日間で走破した中国の国際貨物列車に対する英国民の興味は大きかったと言える。

英国では鉄道は元来国営事業であったが、1980年代のサッチャー首相時代に民営化された。このため、鉄道は多数の民営企業により複雑に分割され、運賃が値上がりしたばかりか、各民営鉄道相互間の制約が多く、英国全土の鉄道を統一的に運行することは困難となっている。従い、多くの英国人は中国から多くの国々を横断してロンドンまで18日間で到着した義・倫国際貨物列車に対し驚くと同時に強い羨望を感じたのだった。英国の或るネットユーザーは、「中国人は全長1万2000kmの鉄道を整然と秩序立てて運行できるが、英国政府と民営の鉄道会社は恐らく数百kmの鉄道もまともに運行できないだろう」と述べた。また、別のネットユーザーは、「中国の列車は中国からロンドンまで運行できたが、我々の北部鉄道ならソルフォード(Salford)からバースカフ(Burscough)までの52km、所要時間50分さえも正常に運行できないだろう」と辛らつな書き込みを行った。

こうしてみると、義・倫国際貨物列車が18日間で順調にロンドンへ到着したことは、中国の底力を見せる意味で非常に大きな意味を持っていたと言える。但し、中国は今回の国際貨物列車のロンドン乗り入れで、欧州連合(EU)の金融の中心であるロンドンに貨物を届けることにより、EU諸国への中国商品の販売を促したいというのが本来の心積もりだった。それが2016年6月の国民投票で英国のEU離脱が決定したことで、既定方針の変更を余儀なくされた。

「鼠一匹」の恐れも

1月17日付のウエブサイト“海運圏商務網(ネット)”は「理性分析:中国の“一帯一路”政策は海運貿易に影響しない」と題する記事を掲載した。その概要は以下の通り。

(1)“中国鉄路総公司(中国鉄道総公司)”は、衣類や小包などの物品を満載して、東部の浙江省義烏市を発車した貨物列車が、カザフスタン、ロシア、ドイツを経由して1万2000kmを走行し、18日間でロンドンに到着する予定であると対外的に宣伝している。ロンドンは習近平総書記が“一帯一路”計画を提起してから第15番目の中国・欧州直通列車の終着都市になる。

(2)中国から欧州までは、列車輸送は15~19日間で、海上輸送の所要時間(33~38日間)の半分だが、航空輸送(3~5日間)に比べれば遅い。英国海事調査機関DrewryのチーフアナリストMr. Victor Waiは次のように述べた。すなわち、海上輸送のコストは列車輸送のコストに比べ顕著な優勢を保っている。特に、現在のコンテナ船の建造は節約型となっているから尚更である。これ以外に、貴重なあるいは急を要する物品は速度が速い運輸サービスを受けることが必要だが、普通の商品はその必要がない。従い、海上輸送が列車輸送に取って代わられる可能性はなく、極東から中央アジアを経て欧州へ到る貿易の中で、列車輸送が輸送市場全体に占める比率は非常に小さい。

義・倫国際貨物列車のロンドン到着は中国と英国のみならず世界中で華々しく報じられたが、専門家の目から見れば、上述したように海上輸送が列車輸送に取って変わられる可能性はないばかりか、列車輸送が輸送市場全体に占める比率は小さいという。成都市から出荷される生花のように輸送時間を短縮する必要があるものは列車輸送が必要となるが、義・倫国際貨物列車で運ばれた靴下や日用雑貨は、敢えて列車輸送にして無駄に高い輸送コストを費やす必要なないということになる。これでは“一帯一路”も「大山鳴動して鼠一匹」と言われかねない。

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