5/16産経ニュースは<日米印が6月に沖縄周辺で共同訓練し中国を牽制へ 米国は原子力空母も投入>
http://www.sankei.com/politics/news/160516/plt1605160004-n1.html
同じく5/16産経ニュース<オバマ大統領の広島訪問を喜んでばかりもいられない…中国は「核兵器の先行使用」を密かに決めていた!>
http://www.sankei.com/premium/news/160516/prm1605160004-n1.html
中国はオバマ米国の優柔不断に付け込み、好き勝手やってきました。トランプも愚かなことに中国の驕りを助長するような発言(在日米軍撤退、在韓米軍撤退、中国の行動をきっかけに米国が第3次大戦を始める考えはない等)をしています。コンドリーザ・ライスが副大統領になり、レクチャーを受ければ変わるかもしれませんが。上記産経の野口記者の書いている通り、中国の最大の敵国は米国で、その覇権をもぎ取ろうとしているということを理解しなければ。
野口氏の書いた「その南シナ海は、海上軍事基地で海上・航空優勢を押えれば、東部海域にSSBNを潜ませる「中国の聖海域」と成る危険を伴う。米本土を完全に射程内に収める将来の改良型潜水艦発射核ミサイルの最大の標的が、米国である危機をご存じないようだ。」というのは小原氏の言う「南シナ海を太平洋の出口とするために是非ともそこを軍事基地化しておきたい。東シナ海は日本と米軍の潜水艦に簡単に捕捉されるので。太平洋に出れれば今でも米大陸を射程8000kmのミサイル搭載の潜水艦から核攻撃できるようになる」ということです。米ロの潜水艦はお互いの海を自由に行き来しているのかもしれませんが、MAD(相互確証破壊)の論理が働いているのかもしれません。同じキリスト教でもあるし。毛沢東はポンピドーとの遣り取りで、『ポンピドー「ソ連からICBMを大量に輸入しているようだがアメリカと戦争する気ですか?」、毛沢東「戦争になったら私たちは水爆の使用も辞さない」、ポンピドー「そんなことしたら中国人もたくさん死にますよ」、毛沢東「人口が多いので二~三千万人ぐらい死んでも構わない」』と言った前科があるし、台湾有事にも米国に核を先制使用すると脅迫する有様ですから。殆どキチガイのレベルですが。やはり米国はどこかの段階で鉄槌を下す必要があるのでは。チエンバレンの宥和政策は不幸な結末を迎えました。大戦になる前に手を打たないと。先ず経済制裁、次には海上封鎖でしょう。
本の内容中、「「中国の夢」の本当の意味は、中国が世界のGDPの4分の1を占めることだという。これは、過去の中国の王朝が達成したものだともいう。彼は明示しなかったが、過去の王朝とは明朝のことだ。」とありますが、明朝でなく清朝ではないかと思われます。中国人は満州族の清朝より漢民族の明朝を誇りたいのでしょうけど、中国大陸で最大の版図を誇ったのは清朝ですから。(大元時代を除く)。人口と土地面積でGDPは決まるでしょうから。
http://matome.naver.jp/odai/2135484685815433301
http://shahr.exblog.jp/5258673
人民解放軍の歌舞団(北朝鮮の喜び組みたいなもの)は高級幹部の愛人を出しているというくだりがありますが、軍の研修施設の中には慰安婦が居て兵士の相手、或は一般人も相手することができるようになっています。改革開放で、軍が自由に商売に手を出せるようになり、腐敗も進みました。兵器の横流しもそうですし、職位と金の交換である権銭交易も盛んになりました。「張り子の虎」と言われる所以です。が、「悲観的に準備し、楽観的に対処」が危機管理の要諦です。防備はおさおさ怠りなく。
本の内容
P.37~45
中国人民解放軍が、2014年7月から行った演習では、8月15日までの間、上海や浙江省杭州など沿岸部を中心とする12ヵ所の空港で発着フライト数を25%削減するよう要求したことから、演習の規模が大きく、高度な内容を伴うものであったのではないかという分析もあった。 しかし、実際のところ、人民解放軍各部隊が行ったのは、地元を離れて別の訓練場に行って射撃等の訓練を行うというものであった。
射撃訓練自体は、基礎的な訓練である。決して難しい応用訓練を行ったわけではない。では何が重要だったのかというと、地元を離れるということだったのだ。それほど、人民解放軍の各部隊は土着化していたということである。各部隊が土着化してしまったのでは、各地域においてゲリラ戦を展開することはできるかもしれないが、他国から攻撃があった際に、中国本土防衛のために陸軍全体として対応することはできない。
さらに、土着化するということは、地方の有力者と癒着しやすくなるということでもある。 実際、習近平が潰した薄熙来は、2個集団軍を掌中に収めていると豪語していた。成都軍区には第13集団軍と第14集団軍の2個集団軍があるが、薄熙来は、成都軍区を掌握していると言っていたのである。薄熙来は、当時、重慶市党委員会書記、すなわち重慶市のトップであった。
また、中央が地方のトップを拘束する際、まずその地方の軍隊、武装警察等の指揮官や政治委員の首をすげ替えるが、これも地方の軍の部隊や警察が、その地方のボスに掌握されていることを示すものだ。中国中央の権威とはその程度のものなのだとも言える。
現在の中同人民解放軍陸軍全体は170万人、その内、戦闘部隊は155万人を擁し、85万人の機動部隊と70万人の地方守備部隊から構成される。中国陸軍は、仝体で18個の集団軍を有しており、これが、7大軍区にそれぞれ配置されているのである。集団軍は、歩兵、機甲、砲兵、高射、工兵、電子戦それぞれの部隊を有しており、第13集団軍の人員は4万5000人、 第14集団軍の人員は4万人とされる。
ちなみに、習近平は、軍事パレードにおけるスピーチの中で「人民解放軍の人員の30万人削減」を明らかにしたが、このほとんどが文職であると言われる。文職とは、戦闘には参加しない軍人で、歌や踊り、あるいは映画といった、主として文化や芸能活動に携わる軍人も含まれている。
中国には、各軍区にも、賓各をもてなすための「歌舞団」があり、歌手やダンサー、さらには雑技を行う人員を擁している。この中には、大童の美女も含まれていて、過去には、軍の高級幹部の愛人も多く輩出している。こう した文職について、習近平は、いち早く縮小するよう命じている。自身の夫人である彭麗媛.少将が、人民解放軍総政治部歌舞団団長であり、文職軍人の大ボスであるにもかかわらず、である。
習近平が、陸軍の土着化に危機感を抱いているのは、2015午の『国防白書』にも見て取れる。「陸軍は、小型化•機動化を進める」としているのだ。一般に、中国陸軍は精鋭化を進めると言われるが、それは、これからスリム化して、中国陸軍として中国全土で戦闘できる状態にする、という意味である。
中国人民解放軍には、具体的な計画もある。軍区の改編と合同作戦司令部の設立だ。これらの計画を最初に報じたのは日本のメディアである。2014年1月1日付の読売新聞は中国軍の制度改革案を報じている。現在の7大軍区を5大戦区に改変。さらに陸軍、海軍、空軍、第二砲兵部隊(戦略ミサイル部隊)の4軍種を統合する合同作戦司令部が設立されるとの内容だった。合同作戦司令部とは、統合作戦を指揮する司令部である。
中国国防部は中国英字紙『チヤイナデイリー』の取材に答え、合同作戦司令部設立を大筋で認めた。合同作戦司令部は情報時代に対応したもので、すでに試行業務に着手しているという。ただし正式な改組がいつになるかは未定だという。軍区から戦区への改変案についてはコメ トしていない。
しかし、この後、中国では、合同作戦司令部の設立計画を否定する報道も見られた。これらの記事によれば、2013年11月に北京で開催された中国共産党18期三中全会において、「軍隊の体制編制の調整改革を進化させなければならない」と公言されたことが、合同作戦司令部設立計画が取り沙汰される原因になったとされるが、実際に、統合作戦が重要であることは人民解放軍自身も認めている。
合同作戦司令部の設立や、7大軍区から4〜5戦区への改編については、土着化した人民解放軍各指揮官や各部隊から不満の声も上がるだろう。不満の声を表面上は抑え込んでも、不満は陸軍の中にたまり続ける。不満の圧力が高くなることは危険なのだ。習近平指導部は、部隊の不満を軽減しながら、陸軍の改編を進めなければならないのである。
中国はもちろん、米国の中国本土攻撃を想定して、装備品を調達し作戦計画を立てていると言うだろう。しかし、実際のところ、これまでの中国人民解放軍は、本気で戦争する気はなかったように見受けられる。各部隊は、自らの懐を肥やすことに邁進し、自らの権益を守るために、地方の権力者とそれぞれに結びついていたのだ。
中国人民解放軍という統一された名酋がありながら、各軍区や各部隊は、地方の権力者が向く方向に、同様に向いていたのだ。たとえ、党中央からの命令があったとしても、地方の権力者の意向に従ったのである。2006年に失脚した上海党委書記(上海のトップ)陳良宇や、 薄熙来の事案を見ても、中国共産党中央が、地元の軍や武装警察、警察等が、地方の権力者の意のままに動くことを警戒していたことがわかる。
そして、中国人民解放軍の改編がいよいよ実施される。習近平が、北京で2015年11月26日に閉幕した中央軍事委員会改革工作会議において、1949年の新中国成立以来初めてとなる軍の大規模改革に着手すると表明したのだ。米軍をモデルに、縦割りの弊害が指摘されていた命令系統を集約する「統合作戦指揮体制」を本格導入するという。
国営新華社通信は、習近平が24日から開かれた同会議において、「軍の最高指揮権は共産党 中央、軍事委員会に集中させる」と強調するとともに、「統合作戦指揮体制の構築を進め、戦闘力を高めるため部隊の規模.編成を見直し、量から質の重視へ転換する」と述べたと報じた。また、習主席が、これを「革命的な改革だ」とし、「2020年までに改革を反映した体制も 確立させる方針を示した」とも報じている。
地方の指導者との癒着の原因ともなっていた、軍区の再編にも取り組む。中国では、2015年に入ってから、人民解放軍の改革に関わる噂が多く聞かれた。先述の中央軍事委員会改革工作会議における「重要講話」において習近平は、「(軍区に替えて)新たに戦区を設定し、戦区統合作戦指揮機構を構築する」と述べたのである。
作戦指揮系統は大きく変わる。「中央軍事委員会—戦区-部隊の作戦指揮体系と政治委員—軍種(陸・海・空・ロケット軍)-部隊の指導管理体系」という指揮系統だ。中央軍事委員会は、総参謀部を通さず、戦区を直接指揮する。また、戦区の作戦は統合作戦になる。戦区統合作戦指揮機構は、いわゆる、統合作戦司令部であろう。人民解放軍全体に対する統合作戦司令部ではなく、戦区ごとに統合作戦が行われ、それぞれの戦区は、中央軍事委員会が直接指揮するのだ。その中央軍事委員会の主席が習近平である。
中央軍事委員会が、2016年1月1日に公表した、「国防と軍隊改革の深化に関する意見」 によれば、人民解放軍改革の原則は、「中央軍事委員会がすべてを管理し、戦区は戦闘し、軍種は建設する」であるという。自衛隊でも採用されている、フォース・ユーザーとフォース・プロバイダの明確化である。フォース・ユーザーとは、部隊(力)を使用する、すなわち作戦指揮の系統であり、戦闘の指揮系統でもある。フォース•プロバイダとは、戦闘能力を有した部隊(力)を建設(人員、武器装備)して、フォース・ユーザーに提供するものだ。陸、海、空、 ロケット軍(新設)の4軍種は、主として部隊建設を担い、原則として作戦指揮の系統には入らないということである。
一方で、7大軍区をいくつの戦区に改編するのかは、2016年1月10日現在、まだ明確に示されていない。2015年に飛び交った情報では「4戦区になる」と言われていたが、同年 12月には、「4戦区の予定であったが、国防の観点から5戦区の区分が最良とされた」という報道等も出始めた。国防の観点もさることながら、戦区の区分が、これまでの既得権益と衝突するために、難航しているのかもしれない。
さらに、総参謀部、総政治部、総後勤部、総装備部の4総部の統廃合も行われる。人民解放軍の中でも、腐敗の温床となっていたのが、装備部と後勤部、特に、不動産を扱う後勤部である。4総部の権限を制限し、党中央および中央軍事委員会の管理を強化して、人民解放軍の腐敗を根絶しようというのだ。人民解放軍の改革により、4総部は廃止され、中国中央軍事委員会の言う「実行多部門制」に移行する。4総部が持っていたそれぞれの機能は、いくつもの部門に細分化され、純粋に参謀組織として中央軍事委員会を補佐することになる。4総部が持っていた権限は、すべて中央軍事委員会に吸い上げられるのだ。
こうした改編が実施されれば、中国人民解放軍の運用が効率化され作戦能力が向上する可能 性がある。また、これまで、不満や反発を恐れて実施されてこなかった改編が行われるということ自体、習近平の軍の掌握が進んでいることを示すものでもある。
P.49~52
海軍は、「『近海防御』から『近海防御と遠海保護の結合型』への転換」が求められている。近海防御は、1980年代から、中国海軍の父とも呼ばれる劉華清が指示してきたものだ。中国海軍の定義によれば、近海とは、第1列島線内外までの海域を指している。この海域には、西太平洋の一部も含まれる。中国の本土防衛に直接関わる部分だ。
一方の遠海保護は、中国の経済活動の拡大に伴って、社会経済の発展を保障するために、世 界規模で戦略的任務を遂行するものである。こちらは主として軍事プレゼンスによるものだ。すでに、中国海軍は、ソマリア沖アデン湾において、海賊対処活動に参加し、これを足掛かりに、ヨーロッバ諸国に親善訪問を実施し、地中海において中ロ海軍共同演習も実施している。
海軍運用の二分化が、国防白書にも明記された形である。中国の本土防衛とともに世界各地に空母戦闘群を展開するために、引き続き、多くの予算が配分されることになる。ちなみに、米海軍では空母戦闘群と呼ぶのを止め、空母打撃群と呼んでいるが、中国では未だ空母戦闘群という呼称が用いられることもある。
この海軍運用の二分化は、中国の海洋に対する認識に、矛盾を引き起こしているように見受けられる。中国は、本土防衛のために、南シナ海で見られるような海域の囲い込みを行い、「海洋領土」という表現さえ用いる。開かれた海洋の利用こそ国益である海洋国家なら用いない表現である。しかし、一方で、中国は経済活動を世界に広げ、これを保護するために海軍の活動も拡大している。中国は、「航行の自由」の重要性を理解しつつあるのだ。
こうした認識の矛盾は、中国の経済活動等がさらに国際化するにつれて解消していく可能性もある。中国が米海軍に対抗できる十分な海軍力を持ったとき、中国は、米国同様、「航行の自由」を声高に主張するようになるかもしれない。
P.174~176
中国の、米国および周辺諸国に対する態度を見ると、中国はオフエンシブ•リアリズム(攻撃的現実主義)の信奉者なのではないかと思われる。中国は、真剣に、米国が中国に対して武カ行使するのではないかと恐れているからだ。オフエンシブ・リアリズムの視点に立てば、急速な経済発展を続ける潜在覇権国たる中国に対して、既存の覇権国たる米国は、中国がアジア地域における覇権国となるのを阻止しようとしていると見える。だから中国は自らの安全を保障するために軍事力を増強して地域覇権国を目指す。自らの生存確率を最大にする手段が、自ら覇権国になることだからだ。
台頭する大国は、その政治指導者の意図に関わらず、自然に覇権を目指すことになる。中国が急速に国防費を増加し、人民解放軍装備品の近代化を進める状況は、この論理を裏付けるものである。そして、中国は、米国を唯一のラィバルと見做し、米国に対して「新型大国関係」の構築を働きかけている。簡単に言えば、米中間に権益の対立があっても軍事衝突しない関係、それが「新型大国関係」である。国際社会のシステムが大国同士の衝突を促すように大国を動かすとしても、米中両国は、少なくとも現段階で軍事衝突することが国益にかなわないと認識している。特に、中国は、米国と戦争しても勝てないのであるから、何が何でも米国との軍事衝突は避けなければならない。
中国の関心は国内にあるのだ。中国指導部の最大の関心は、共産党による長期の安定した統治であり、経済発展によって社会を安定させなければならない。中国の経済活動拡大は、主として西を向いている。習近平指導部が進める「一帯一路」イニシアティブがそれである。「一帯一路」とは、陸上のシルクロード経済べルト(帯)および21世紀海上シルクロード(路) という二つのシルクロードを建設し、その周辺地域に巨大な経済圏を創出しようとするものだ。 「帯」と「路」と述べているところに意味がある。陸上に建設しようとしているのは、単なる路ではない。陸上の経済ベルトの範囲は、ロシアまで含め、極めて広い。中国が創造したいのは、物理的な路ではなく、お金の流れなのである。
「一帯一路」の基は、2012年に北京大学の王緝思教授が提唱した「西進」戦略にある。この「西進」戟略の発想は、中国国内の経済発展、特に内陸部の経済発展に大きく関係しており、中国の西側の国々が有する豊富なエネルギー資源等を中国国内に導くための輪送路として新たなシルクロードの建設が必要であるとするものである。この「西進」戦略の実践が、習近平指導部による「一帯一路」イニシアティブの提唱と展開なのである。
中国の対外活動拡大の目的は、経済発展にある。中国の研究者によれば、「中国の夢」の本当の意味は、中国が世界のGDPの4分の1を占めることだという。これは、過去の中国の王朝が達成したものだともいう。彼は明示しなかったが、過去の王朝とは明朝のことだ。数字もさることながら、中国では、異民族に支配された時代より、漢族の王朝が支配した時代を正統な王朝として懐かしむ傾向があるからだ。しかし、世界経済が中国の経済発展と同様の速度で発展しない限り、中国の経済発展は他同の経済権益を損ねることになる。
中国は、欧米先進国の経済権益が既存のルールで保護されていると認識している。だから中国がより多くの経済権益を獲得するためには、既存のものとは異なる枠組みやルールが必要とされるのだ。
台頭する国家は、国内で消費しきれなくなった余剰の資源(資金や産品などを含む)を海外に移転し、さらに新たなビジネスを展開しなければならない。過去には、これが植民地獲得という手段によって実現されてきた。現在では、植民地獲得ではなく、経済協力や直接投資といった形で展開されている。
P.181~187
- 参対米核抑止の観点からも中国は南シナ海の領有を譲らない
中国海軍の作戦海域の拡大は、中国の経済発展を保障するものだけではない。中国は、自国 に対する最大の脅威は、米国の中国本土に対する攻撃であると認識している。すべての国家に とって、最大の脅威は、他国による自国領土への侵攻である。
米中間には太平洋があり、双方にとって、相手の陸上兵力が国境を越えて侵攻してくるという圧力は低いものの、中国は、米軍は空母や強襲揚陸艦を以て、中国本土に攻撃することができると考える。さらに中国は、米国が、3つのC字型の島の鎖(アラスカ、アリユーシャン列島、朝鮮半島から日本〈南西諸島を含む〉を経てフィリピンなどの東南アジアに伸びる第1列島線。日本の小笠原諸島からマリアナ群島を経てオーストラリアに伸びる第2列島線。ハワイ、 ミッドウエー島、ウエーク島を結ぶ第3列島線)に米国および同盟国の基地を展開し、中国を軍事的に封じ込めていると認識している。
中国海軍は、2010年前後から「遠洋航海訓練の常態化」を目指し、さらに、列島線の突破を明言するようになった。中国は、できるだけ本土から離れた太平洋上で、米軍の中国侵攻を阻止したいと考えている。中国海軍は、列島線を越えて、台湾以東の西太平洋が米軍との戦場になると考えて、演習を重ねているのだ。中国は、能力を付けたから太平洋に出たいと考えるようになった訳ではない。反対に、中国は、常に太平洋で米国に対抗できる力を持ちたいと考えてきた。艦隊による海戦では、米海軍に勝ち目がないと考える中国は、対艦弾道ミサイルや巡航ミサイルの開発に力を注いできたのである。
しかし、中国の領土防衛に必要なのは、太平洋での米海軍との直接戦闘だけではない。中国は、核兵器による抑止カが、米国の中国に対する軍事行動を思いとどまらせる最後の保障になると考えている。南シナ海問題は、中国にとっては対米核抑止にも関係しているのだ。
中国にとって、南シナ海のコントロールは死活的に重要である。2014年8月のAPEC外相会議において、王毅中国外交部長が提唱した「双軌」思考は、「領土紛争等の問題」と「平和と協力の問題」を分離して、それぞれ二国間および多国間(中国とASEAN)で対話するというものである。この「双軌」思考は、同年11月のAPEC首脳会議において、李克強首相によっても提唱され、中国メディアによって「双軌」モデルとも呼ばれるようになった。この報道では、「平和と協力の問題」とは、東南アジアの経済の一体化の問題であるとしている。 「双軌」思考の提唱は、「一帯一路」イニシアティブを展開する上で、外交上の方針としている周辺諸国との良好な関係構築の努力と軌を一にするものだ。しかし、一方で、領土紛争において、中国が譲歩する意図がないことを示すものでもある。
中国にとって南シナ海が:重要な理由は、大きく三つある。第一は、海底資源である。第二は海上輸送路の安全の確保である。中国は、マラッカ海峡のチヨーク•ポイントで米国が中国の海上輪送を妨害する可能性を恐れ、複数の代替ルートを建設しつつも、国境を跨がずに大量の物資を輸送できる海上輪送をあきらめることはない。
そして、第三が戦略的軍事的な理由なのである。中国は、米国が中国の経済発展を妨害することを恐れている。米国が採る手段の中には、軍事力が含まれている。中国は、米国が中国本土に対して軍事攻撃をしかける可能性も検討している。その中には、核攻撃も含まれる。
中国は、現状では米国との戦争に勝利することは難しいと考え、軍事衝突を回避することが重要であると認識している。そのために核抑止は不可欠である。核抑止を確実にするためには米国の核先制攻撃を生き残る核兵器が必要である。最終的な核報復攻撃の保障たり得るのが、核弾頭搭載弾道ミサイルを発射可能な原子カ潜水艦、戦略原潜である。中国の戦略原潜が搭載する弾道ミサイルJL-2の射程は8000キロメートル前後であるとされるが、この射程では、 戦略原潜は太平洋に展開しなければ、アラスカなどの一部を除く米国全土を攻撃することはできない。
そのため、中国海軍は太平洋において戦略原潜の戦略パトロールを実施しなければならない。
中国海軍は、以前は、戦略原潜を北海艦隊に配備し、東シナ海から太平洋に入り、戦略パトロールを実施しようと考えていたが、海上自衛隊および米海軍に探知されるため、隠密裏に東シナ海から太平洋に入ることは難しい。いったん探知されてしまえば、核報復攻撃の保障にはならない。米海軍の攻撃型原潜に追尾されてしまうからである。
2000年代半ば、中国海軍は、南海艦隊に属する海南島の海軍基地を拡大し、094型「晋」 級戦略原潜および093型「商」級攻撃型原潜を配備している。東シナ海に比べて南シナ海は水深が深く、潜航深度を変更できるという潜水艦の利点を活かすことができる。
潜水艦は、航空機と同様、三次元の運動をするのだ。水中の音波伝搬は、水温の分布等の影響で複雑に変化し、水深によって潜水艦を探知できる距離に差が生じる。潜航深度を変えられるということは、水上艦艇や航空機による探知を避けたい潜水艦にとって、非常に重要なことなのだ。
さらに南シナ海を取り巻く各国の海軍力、特に対潜能力は、日本に比してはるかに低い。中国の戦略原潜が、探知されずに太平洋に出られる可能性が高いのである。米海軍といえども、 いったん太平洋に出てしまった潜水艦を探知するのは不可能に近い。それゆえ中国が、南シナ海のコントロールをあきらめることはないのだ。
中国が建設している南シナ海の人工島は不沈空母だとよく言われる。しかし、この問いに対する答えは「YES」でもあるし、「No」でもある。中国が埋め立てている人工島には、本土から土砂を運んで地盤の強化を図っているとする分析もあるが、人工島建設の様子から、少なくともそのほとんどは、海底のサンゴを浚渫して積み上げている。それをコンクリートで固めているのだ。
中国が南シナ海に建設している人工島の滑走路については、地盤の弱さから、その強度を問題視することが多い。重量の大きい航空機が離発着する滑走路にかかる応力は非常に大きい。十分に地盤を固めていないと、滑走路は変形してしまう。また、人工島には水がないため、搭乗員や整備員を常駐させるとすると、これら人員のための真水を蓄えておく必要もある。こうした設備を建設できるかどうかは疑問だ。他国が何も手を出さなくとも、人工島の滑走路は近い将来、使いものにならなくなる可能性もあるということだ。 人工島は「不沈」なのかというと、そうではない。万が一、巨大な燃料タンクや弾薬車の建設を含め、中国がこれら人工島の軍事施設化に成功したとしても、これらのような小さな島を防御することはほぼ不可能である。本物の空母のように、自らの位置を変えることはできず また、自然の島のように、地下に要塞を掘ることもできない。人工島の上の防御部隊は、それを防護するものも、掩蔽するものもない。
むき出しの火薬庫が、いくつも海の上に並ぶのと同じ状況である。たとえ中国が各人工島に戦闘機部隊を配備して、本土も含めて相互支援ができる状態にしたとしても、米海軍が攻撃すれば、これを食い止めることはできない。対等であっても航空攻撃を完全に排除することはできないのに、米海軍空母艦載機部隊と中国空軍力の間には、戦闘能力に圧倒的な差がある。米海軍が本気で攻撃すれば、中国の人工島は簡単に破壊されてしまうだろう。
人工島は、「不沈空母」には成り得ないのである。にもかかわらず、中国が人工島建設に血道をあげるのはなぜか?その目的は、少なくとも米国との軍事衝突ではない。しかし、単に南シナ海における海底資源や漁業資源の囲い込みでもない。
中国は、米国との軍事衝突は避けつつ、同時に、米海軍の行動を制限しようとしているのである。中国が人工島を自らの領土とし、そこから艦船や航空機を運用できるようになれば、南シナ海における平時の勢力は、中国の方が圧倒的に強くなる。戦闘しない限り数に勝る中国が、米国の活動を妨害しやすいからだ。米国に対する「コスト強要」であるとも言える。 軍事衝突すれば、米海軍に簡単に破壊されてしまう人工島であっても、米国に軍事力行使理由を与えない限り、中国は南シナ海における優勢を保てるということでもある。逆説的であるが、平時であれば、中国は人工島を「不沈空母」として利用できるということだ。
中国が、南シナ海のほぼ全域に主権を主張し、中国の領海法に従って、他国海軍が中国の領海(中国は公式に「領海」とは言わないが)である南シナ海を航行する際に中国の許可を求めるようになれば、米海軍の行動にも支障を生じかねない。米国はもちろん、中国の要求に応じることはないが、それでも日本を出港した米海軍の第7艦隊が中東に展開する場合などに、南シナ海において、中国海軍あるいは海警局に対応する可能性を考慮しなければならなくなる。
本来、何の問題もなく、自由に航行して、航行の目的である中東での活動に集中できるはずが、途上の南シナ海で、余分なコストを強いられることになるのだ。しかし、中国が実際に軍事的手段に訴えない限り、米国としても軍事力を行使するのは難しい。中国の人工島は、そこに存在するだけで、米海軍の活動に圧迫感を与えるものになる可能性があるのだ。
P.198~199
中国が思い描く国際社会は、戦後、米国が主導して構築してきた国際社会とは異なるものだということだ。中国は本来、戦勝国であって、戦後の国際秩序形成に影響を及ぼすべきであったという権利意識が非常に強い。経済発展し、能力をつけつつある現在、中国は自らの経済発展のために、国際秩序を変更することを公言し始めた。
中国は、国際社会に対して、軍事力をもって新しい国際秩序を押し付けようとしている訳ではない。基本的には、各国への投資や中国の巨大な市場といった経済的影響力によって、各国の支持を得ようとしている。しかし、この新しい秩序自体が、これまで米国が主導してきた国際社会の価値観と相容れない部分があるのだ。
だからこそ、中国も、米国が中国の国際規範変更の試みを妨害すると認識するのである。日本は、これまで米国が主導してきた、「自由、民主主義、市場経済」といった価値観を共有する国際社会の中で恩恵を得てきた。一方で、すべての国家が、同様の価値観を共有していないことも事実である。
中国は、まず、こうした国を取り込んで、中国が考える国際規範を広めていこうと考えている。しかし、米国が主導してきた国際社会の価値観を否定し、これに挑戦することはしない。中国は、各国がそれぞれの利益に応じて、それぞれの規範に従えば良いと考えている。
しかし、それでも米国と利害が衝突すれば、双方ともに、各国の支持を得るために各国を囲い込む行動に出やすい。現に、東南アジア地域では、日本•米国と中国の間で、支援合戦が展開され、支持の獲得競争が行われている。
米中が、それぞれに勢力圏を作ろうとするのは、良い傾向ではない。現状では考えにくいが、 異なる規範で行動する複数の勢力が国際社会の中に存在することは、国際社会の協力態勢を弱 体化させることになり、国際社会の内外からやってくる種々の脅威に対して、有効に対処できなくなる可能性もあるからである。
P.209~213
米国は、これまで中国の「力による現状変更」に強く対応しなかったことが誤りであると認識している。その間に、中国は南シナ海の7力所の岩礁などにおいて、8平方キロメ ―トルにも及ぶ埋め立てを行い、軍事利用可能な施設を建設してしまった。
米国は、実力を行使しなければ、中国の意図を挫くことはできないと理解した。ここで言う実力行使は、フィリピンやベトナムと一緒に、中国に占領されたサンゴ礁を奪還することではない。中国の「南シナ海全域に主権が及ぶ」という主張を否定するための行動を採ることである。
米海軍艦艇および航空機の南シナ海におけるパトロールは、「南シナ海はグローバル・コモンズ(公海)である。したがって、米軍は自由に活動を行う」という米国の主張を、行動を以て示すものだ。
現在、米中両国を含め、誰も米軍の活動を南シナ海から排除することも、中国の人工島建設を止めることもできない。こうなると、一種のチキン・レースである。米国は、万が一、中国が軍事的な対抗手段をとってもかまわないのだ。
そして米国が、中国との軍事衝突も辞さないという姿勢を示した。2015年10月27日、 海軍のイージス駆逐艦「ラッセン」が、中国が建設した人エ島から12カイリ以内の海域を航行したのだ。このオペレーションは、「航行の自由」作戦と名付けられ、中国の南シナ海に対する権利の主張を根本から否定するものである。また、米国との軍事衝突を避けたい中国を追いつめる、軍事衝突も辞さない米国の決意を示すものでもある。
米海軍艦艇が進入したのは、南シナ海に存在する南沙諸島(スプラトリー諸島)のスビ礁だ。スピ礁は、かつてベトナムが実効支配していた暗礁であるが、1988年に生起した海戦の末、現在に至るまで中国が実効支配している。1980年代末の、東南アジア地域に発生した「力の真空」を利用したのだ。
中国はこの暗礁を埋め立て、人工島を建設している。国連海洋法の規定によれば、高潮時にその一部が海面上に出ていなければ、島または岩として認められず、領土とはならない。暗礁に領海は存在しない、ということである。ちなみに、島と岩の区別は曖昧である。人が住めるのが島、住めないのが岩、といった程度の区別しかない。しかし、それぞれに発生する権利 は大きな違いがある。島にはEEZ (排他的経済水域)が認められ、岩には認められないのである。まして暗礁は、岩でさえない。
実は、南シナ海について、中国は「領海」という言葉を使わない。中国外交部は、「南沙諸島および付近の海域に議論の余地のない主権を有する」と言う。主権が及ぶ海域は領海であるはずなのだが、中国は「付近の海域」とあいまいにする。それは、中国が、「九段線」で囲まれる南シナ海のほとんどの海域を自分のものにしたいからなのだ。中国外交部の主張は、中国の南シナ海に対する権利の根拠が、南沙諸島の領有にあることを示している。 しかし、海上に建設された人工建造物には、領海は存在しない。この、国連海洋法条約の規定に基づいて、米国は、中国が埋め立てた人工島は、暗礁の上に建設された人工建造物であるから領海は存在しない、と主張するのだ。人工島から12カイリ以内であっても、公海であるという意味だ。さらに、公海であるのだから、米海軍の艦艇や航空機は、自由に活動できるということでもある。
中国が「島」だと主張する人エ島から12カイリ以内の海域に、そこが公海であること^示すために、海軍の艦艇を送り込んだのだ。中国が主張するように、もし、人工島が領土であれば領海に当たる海域である。中国は、自国の「領海法」で、中国領海における他国の軍艦の無害通航権を認めていないのだから、米海軍艦艇の領海内航行には、何らかの対処をせざるを得ない。領海から米国の活動を排除しようと強気に出たのが、ひとたび米国が「やってみろ」という態度に出れば、困るのは中国の方だ。中国は、「領海法」という自ら作った法律で自分自身が追い込まれているのだ。
米国が送り込んだのは、イージス駆逐艦1隻である。米国が示したいのは、米海軍が南シナ海において自由に活動できる、ということだ。1隻でも十分に目的を達成できる。さらに、艦隊を送り込めば、米国が中国に対して攻撃の意図があるという誤ったシグナルを送る可能性もある。また、空母は艦艇としての戦闘力が高い訳ではなく、目標に近づけて使う艦ではない。 米海軍の空母は、もちろん南シナ海を自由に航行しているが、わざわざ危険に晒す必要はなく、目標が搭載している航空機の作戦半径に入りさえすれば良いのだ。
一方で、イージス駆逐艦は、対空戦、対水上戦、対潜戦すべてに高いレベルで対応できる。 米国は、中国が軍事的対抗措置をとっても、単艦で対応できる艦艇を送り込んだのだ。米国が、中国が軍事的対抗措置を採ることも想定して艦艇を送ったのは、中国との軍事衝突も辞さない、 という米国の決意の表れである。
日経記事
南シナ海を舞台に、「中国包囲網」の構築が進んでいる。同海域内で人工島を次々に造成して軍事拠点化する中国に対し、米国は日本やオーストラリア、フィリピンなどと共同で南シナ海でのパトロール活動を開始する構えだ。中国への対抗を意識した安全保障面での二国間の協力関係の網の目も密になりつつある。
■中国の人工島、米の軍事介入躊躇させる狙い
ベトナムのカムラン湾に初めて入港した海上自衛隊の護衛艦「ありあけ」(左)と「せとぎり」(4月12日)
「この海域に米空母が展開するのは新しい話ではない。新しいのは、この海域に緊張が存在し、我々がそれを減らそうとしようとしていることだ」。AP通信によると、カーター米国防長官は4月15日、南シナ海に展開中の空母ステニスに降り立ち、こう語った。
米比両国はこのほど、今後は共同で南シナ海をパトロール活動することで合意した。さらに2014年に締結した協定に基づいて、米軍が南シナ海沿岸を含むフィリピン各地の同国軍基地を使う形で約20年ぶりに再駐留を開始する。
日本の動きも活発だ。日本は16年2月、米英豪仏印に続いてフィリピンとも「防衛装備品・技術移転協定」を締結し、将来のフィリピンに向けた武器輸出の足場を整えた。
海上自衛隊の護衛艦「ありあけ」「せとぎり」の2隻は、4月3日にフィリピンのスービック港に寄港した後、同12日には南シナ海を横断してベトナム南部のカムラン軍港に海上自衛隊の艦艇として初めて寄港した。
3日後の15日には、海自の潜水艦「はくりゅう」が共同訓練に参加するため、豪州のシドニー港に自衛隊の潜水艦として初めて寄港。日本は豪州に同じタイプの潜水艦を売り込んだ。受注競争では仏政府系造船会社に敗れたものの、中国をにらんだ日米豪3か国の防衛協力強化は引き続き強化したい考えだ。
こうした動きに中国も対抗の動きを隠さない。カーター長官の空母ステニス訪問と同じ4月15日、中国国防省は范長龍・中央軍事委員会副主席(軍制服組トップ)がこのほど南シナ海中部のスプラトリー(南沙)諸島内の人工島を視察したと発表。人工島造成の動きをやめる意思がないことを強調した。
中国は、人工島造成などを通じて南シナ海を米軍の立ち入れない「聖域」にしたうえで、最終的に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を配備し、米国に東アジアへの軍事介入を躊躇(ちゅうちょ)させることを意図している。冷戦時代のソ連が、日本の北に位置するオホーツク海を聖域化し、そこにSLBMを配備して米国をけん制したことを南シナ海で再現しようというわけだ。
ただ、中国にとって情勢は厳しい。冷戦時代のオホーツク海は、南西部(日本の北海道)を除くすべての方面をソ連が占有する「ソ連の湖」だった。南シナ海の場合、中国領は北部の中国本土と海南島のみ。それ以外は台湾、フィリピン、マレーシア、ベトナムなど外国に囲まれる。
■当面は軍事衝突避けながら存在感強める戦略か
しばしば、中国にとっての南シナ海は、国益上の重要さなどから「米国にとってのカリブ海」にたとえられる。だが、実態は「ロシアにとってのバルト海」、つまりドイツやデンマークなど北大西洋条約機構(NATO)6か国と、NATO入りの機会をうかがうスウェーデン、フィンランドに囲まれている状況に近い。
人工島は「島」である以上、空母のように動かすことができない。仮に米中間の軍事衝突が起きた場合、人工島は真っ先に米軍の攻撃型原子力潜水艦の発射する巡航ミサイルなどの標的となって使用不能になり、中国が人工島造成に費やした巨額の投資も無駄になる。
潜水艦の最大の敵は潜水艦だ。中国軍が人工島を守り抜くには、米軍に対抗しうる優れた潜水艦部隊を持つことが欠かせない。しかし、当面はこの分野で米日豪の「潜水連合艦隊」が中国を抑え込む展開が続きそうだ。
このため、中国としては、米軍などとの直接的な軍事衝突を慎重に避けながら「平時」のうちにじわじわと南シナ海の軍事的プレゼンスを強めるという現在のアプローチを続けるのが上策となる。
先々は、戦闘に持ち込まない範囲で、人工島から発進した中国軍戦闘機が他国の航空機に過剰接近したり、人工島を拠点とする海軍艦艇が他国の艦船にミサイル攻撃の前段階であるレーダー照射をしたりして威圧する事件も起きそうだ。こうした事態が起きて沿岸国が萎縮し、南シナ海の航行を自粛するようになれば、中国の思惑通りになる。米日豪やフィリピン、ベトナムなどは、連携を強めて中国包囲網を構築し、有事の際だけでなく「平時の優勢」も確保しようと努める展開が続きそうだ。
→Nikkei Asian Reviewに掲載の英文はこちら
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