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3/19JBプレス 古森義久『中国のアジア戦略が失速、日本への態度も軟化? 強硬な戦略がもたらした「不都合な結果」とは』について

中国が敵を作り過ぎたと考え、軌道修正してきているという記事です。でもいつも言っていますように「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という国柄ですから。短期的には軌道修正しても、長期的には油断させて覇権を握ろうと思っていはずです。騙されてはいけません。経済苦境にある中国を支援するなどもっての他です。手を緩めないことです。自由のない国に覇権を握らせたら、彼らの価値観で日本に容喙してくるのは必定です。というか属国扱いになるでしょう。日米豪印+台湾+ASEANでATO(Asian Treaty Organization)を作って中国封じ込めせねば。

中国が国連人権理事会(スイス・ジュネーブ)を舞台に反日活動を展開しているのは見え見えです。裏と表(各理事国に)で金を配っているのでしょう。本田悦朗大使が赴任しましたら、杉田水脈女史や山本優美子女史達の支援をしてほしい。CEDAWの林陽子委員長の皇室典範改正勧告もひどかったです。彼女は日本に関することは建前上、議論に参加できないという事ですが、普通に考えれば、日本の法律に詳しい人間なんてザラにはいません。日弁連出身のアカの林陽子が根回ししたと思われます。こんな人間を外務省が推薦しているのですから、売国外務省と思われても仕方がありません。慰安婦も国連人権理事会を舞台に戸塚悦朗弁護士を中心に福島瑞穂たちが振りまいてきた嘘です。

http://www.nichibenren.or.jp/activity/international/member/work/voice/interview3.html

中国は国連での日本貶めを世論戦と思って戦争を仕掛けてきているのです。武器なき戦いです。日本も戦争の一部と自覚する必要があります。

日教組が南京や慰安婦を記述した教科書を採択してきたことにより、勉強すればするほど刷込まれ、反日になるエリートが多くなるという事でしょう。中国に行って生活すれば、そんなことは嘘と分かります。嘘をつくことが許容されている社会というか生活の一部になっている国ですので、その一番上の政府が言うことが真実であるはずもありません。日弁連は左翼信奉者が多いのでしょうけど、実態を見て来いと言いたい。昨日TVで林修が「君子豹変す」の字義の解説をしていましたが、「君子は過ちを直すに憚ることをしない」と言う意味です。共産主義の人権抑圧の実態を見て宗旨替えしてほしいと思いますが、まあ無理でしょう。

3/21宮崎正弘氏メルマガには中国のリストラ(首切り前の賃金未払い)で暴動が頻発しているとありました。昨日の小生のブログで中央政府が失対で金を出しても中抜きされると言いましたが、その通りの展開になっているのでは。予算執行の時期の問題ではない気がします。上層部はリストラされるなら先ず自分の取り分をと思うでしょうから。世界平和のために、中国の崩壊を願っています。

http://melma.com/backnumber_45206_6344587/

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Philippino's protesting action in front of Chinese consulate-2

フィリピン・マニラの中国領事館前で、南シナ海の南沙諸島で中国が進める開発工事に抗議する人々(2015年4月17日撮影、資料写真)。(c)AFP/Jay DIRECTO〔AFPBB News

 中国の習近平政権は、米国への挑戦的な戦略を進めるとともにアジアでの勢力拡大にも努めてきた。しかし、ここに来てアジア戦略は壁にぶつかり、修正を試みるようになった。日本に対しても、この1年半ほど続けてきた安倍晋三首相「悪魔化」キャンペーンを減速させ、態度を軟化させる戦術を見せ始めた――。

 米国のベテラン中国研究者から、中国の対アジア戦略の現状がこのように明らかにされた。

アジアでの影響力発揮を最大限に試みてきた

 前回の当コラム(「中国の『欺瞞』外交にオバマもいよいよ我慢の限界」)で、ジョージ・ワシントン大学のロバート・サター教授による3月9日の講演の内容を紹介した。

 サター教授は米国務省、中央情報局(CIA)、国家情報会議などの中国専門官として30年以上を過ごし、中国の対外戦略研究では米国で有数の権威とされている。

 サター教授によると、表と裏を使い分ける中国の対米戦略に対して、オバマ大統領がついに正面から批判を表明するようになったという。サター教授はこの講演で、米中関係だけでなく、日本にとっても重要な意味を持つ中国のアジア戦略についても見解を語っていた。

 まず中国にとってアジアでの活動はどれほど重要なのか。サター教授は次の諸点を挙げる。

・中国の対外政策は、これまで一貫してアジア地域に主要な注意を向け、アジアでの影響力の行使を最大限に試みてきた。

・中国はアジアで安全保障と主権に関する様々な問題を抱えてきた。なかでも台湾問題を最も重視してきた。

・アジアでの経済活動は、中国の経済全体のなかで最大の比重を占めてきた。

・中国自身は、アジアで確固たる力の基盤を築いていないと他の地域でリーダーの役割を果たせないと判断している。

強引な戦略によって立場はかえって不利に

 サター教授は、以上のような中国のアジア戦略の特徴を挙げた上で、戦略の大きな目標は、米国に対抗し、アジアでの米国の力を後退させる「パワーシフト」だと説明する。

 そして、その戦略がこの2年ほどの間にどのような結果をもたらしたのかについて、以下の諸点を挙げていた。

・中国の強引な領有権主張、国内のナショナリズム、軍事力増強、一党独裁体制、一方通行の投資規制などが、アジア諸国のネガティブな反応を強めた。

・習近平主席の「新シルクロード構想」は計画どおりに進まず、パキスタンやインドネシアでの鉱山事業が失敗した。中東と北アフリカへの投資も莫大な損失を生じた。

・東南アジア諸国連合(ASEAN)各国との貿易と投資が伸び悩んでいる。

・韓国、オーストラリア、ミャンマー、台湾との貿易や投資は高い水準にあるが、中国の影響力の増大にはつながっていない。

・アジア諸国の多くが中国との有事を想定した軍事面での「ヘッジ(防御)」作戦を開始し、中国の影響力拡大にとってさらなる障害となってきた。

・オバマ政権の対アジア政策は欠陥もあるが、米国の開かれた国際経済システムやアジア諸国との軍事協力の強化が、中国の立場を不利にしつつある。

安倍首相「悪魔化」計画は頓挫?

 サター教授の見解によると、中国のアジア戦略には以上のような障害が立ち塞がっている。習近平政権は、アジア戦略のこうした「不都合な結果」を修正する必要があると判断し、これまでの大胆な政策や攻勢的な姿勢をある程度緩和させることを最近目指すようになったという。

習政権がアジア戦略をどの程度まで修正するのかは不明だが、中国がアジアでパワーシフトを遂行する能力は決して十分ではないことが、ほぼ立証されたというわけだ。

 そのうえでサター教授は、習近平政権が現在アジアで着手していると思われる修復措置を次のように列挙する。

・日本との距離を縮める。

・ベトナムとの緊張を緩める。

・北朝鮮との緊張の緩和を試みる。

・南シナ海での米国やその他の紛争当事国との緊張緩和を試みる。

 サター教授は、とくに中国の対日戦略について、「習政権はここ1年半ほど対日姿勢を硬化させ、とくに安倍首相に極端にネガティブなレッ テルを貼る『悪魔化』キャンペーンを展開してきた。しかし、その効果があまりないとみてか、安倍非難を減速させてきたようだ」と述べた。

 習近平主席の大胆で野心的な姿勢にもかかわらず、現在、中国の対アジア戦略はいくつもの壁にぶつかっている、というのがサター教授による総括である。

3/18日経ビジネスオンライン 北村豊『「ゾンビ企業」解体が招く“600万人失業” 「鉄鋼」「石炭」に対策費1000億元も焼け石に水か』について

西側諸国は、世界に悪を為す中国社会を世界経済に組み込んだことが大間違いだったことに気付くべきです。封じ込めていればここまで中国の問題が世界の問題としてクローズアップされることはなかったでしょう。如何に中国人の詐術が上手かったかという事ですが。日米ともにナイーブすぎです。世界的にダンピングの嵐が吹き付けることになります。

政治的には共産党一党独裁、経済的には似非市場経済(権銭交易)が根本原因であることは明らかです。でも両方とも既得権者の利益を侵すことになりますので非常に難しいでしょう。新たな革命が起きない限り無理と思われます。

今度のゾンビ企業の淘汰はそのキッカケになるかもしれません。600万の失業者を新たに雇用できる産業は出て来ないでしょう。中国経済が実質マイナス成長と言われている中で受け入れ先を見つけるのは難しいと思います。AIIBが外国に投資し、その労働力として使おうと言うのであれば別でしょうけど。ただ、その場合、現地の雇用が増えず、富の収奪と看做されますので、いくら現地国の要人に賄賂をばら撒いたとしても持続可能かどうか。

中国人の主張する民族的特質から言って、政府の方針に唯唯諾諾と従うとは思えません。やはり禁止されているデモに訴え、流血の惨事を引き起こし、それが全土に拡大し、共産党打倒の動きに繋がる可能性もあります。なにせ1000億元を失対基金として用意しても、役人が中抜きするでしょう。どの程度実効を上げるか疑問です。

日本のスタンスは「お手並み拝見」が正しい態度です。間違っても通貨スワップで助けることのないように。9条支持者は戦争反対なのでしょうから、政府がそのように動いたら「通貨スワップ」反対の声を上げないとおかしい。今中国の採っている南シナ海・東シナ海の行動は戦争誘発行為です。経済封鎖に近い行為で中国を締め上げ、戦争を諦めさせなければ。それを言わないとしたら、中共の手先or日共のシンパでしょう。

中国封じ込めのために、5/20に蔡英文氏が台湾総統に就任されますので、「台湾関係法」を日本も作れば良いと思います。一気に無理であれば、日米安保上、米国の「台湾関係法」発動時の日本の役割を日米台で擦り合わせしておく必要があります。

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Li Keqiang's speech

全人代で李克強はゾンビ企業の処理を重点活動に挙げたが、前途は厳しい(新華社/アフロ)

 2016年3月5日の午前9時、北京市の中心にある“天安門広場”の西側に位置する“人民大会堂”で、中国の国会に相当する「第12期全国人民代表大会第4回会議」(以下「全人代」)が、3月16日まで12日間の日程で開幕した。当日、全人代の開幕が宣言された直後に、最初の発言者として登壇した“国務院(日本の内閣に相当)”総理の“李克強”は、約2時間をかけて“政府工作報告(政府活動報告)”を読み上げた。その内容は、(1)“2015年工作回顧(2015年の活動の回顧)”、(2)“十三五(第13次5か年計画<2016~2020年>)”時期における主要目標と重点施策、(3)“2016年重点工作(2016年の重点活動)”の3項目で構成されていた。

「余剰生産」と「ゾンビ企業」に対処せよ

 李克強が発表した政府活動報告の中で、内外メディアが最も着目したのは“化解過剰産能(余剰生産能力の解消)”と“積極穏当処置僵屍企業(ゾンビ企業を積極的かつ穏当に処置する)”であった。それは、李克強が、上述した(3)2016年の重点活動の中で言及したもので、「今年重点的に取り組む8分野の活動」の2番目の分野として提起した「供給側の構造性改革を強化し、持続的成長エンジンを増強する」の中に次のように言及されていた。

 余剰生産能力の解消とコストの低減とその効果の増大に注力する。鉄鋼、石炭などの困難な業界の余剰生産能力を除去し、市場のひっ迫性、企業主体、地方の構成、中央の支持を堅持し、経済、法律、技術、環境保護、品質、安全などの手段を運用して、厳格に生産能力の新たな増大を抑制し、断固として後れた生産能力を淘汰し、整然と余剰生産能力を除去する。合併・再編、債務再建あるいは破産・清算などの措置を講じ、“僵屍企業(ゾンビ企業)”を積極的かつ穏当に処置する。財政、金融などの支援政策に万全を尽くし、中央財政は1000億元(約1兆8000億円)の特別奨励補助資金を手配し、その重点な用途を職員の配置転換に置く。総合的な措置を取り、企業取引、物流、財務、エネルギー使用などのコストを低減し、企業が関与する勝手な諸費用の徴収行為を断固止めさせる。

 さて、中国語の“僵屍(jiangshi)”とは「硬直した死体」を意味し、かつて香港映画で一世を風靡した「僵屍(キョンシー)」が飛び跳ねていたのは、彼らが硬直した死体でありながら、長い年月を経ても腐ることなく、動き回ることができた妖怪であったからにほかならない。キョンシーは、何らかの力で死体のまま蘇った人間の総称であるゾンビ(zombie)と似たような存在と言う事ができるので、メディアは“僵屍企業”を「ゾンビ企業」と名付けたのだった。

それでは、中国のゾンビ企業とは何を指すのか。1月29日付の“中国共産党新聞網(ニュースネット)”は『経済発展のがんであるゾンビ企業を断固えぐり取れ』と題する記事を掲載したが、同記事はゾンビ企業を次のように説明していた。

【1】ゾンビ企業とはすでに発展と競争の能力を喪失した企業を意味する。これらの企業は生産停止あるいは生産休止の状態にあり、庶民の呼び方では“半死不活(息も絶え絶え)”の企業である。全体的に見て、大部分のゾンビ企業は“国有企業”である。これら企業の生産と経営は市場の発展法則から著しく逸脱し、主として政府の輸血などの非市場要素に頼って生命を維持している。それはまぎれもなく、これらゾンビ企業の背後に財政資金の支援があるからである。たとえ生産能力が余剰な状況の下にあろうとも、彼らはゾンビのように息も絶え絶えの状態で生存している。今やゾンビ企業はありふれた存在であり、決して珍しいものではなく、程度の差はあるものの中国各地に存在する。

【2】市場経済の環境下では、市場があれば競争があり、競争があれば生死がある。この過程の中で、企業の生死存亡はごく当たり前のことである。ゾンビ企業の存在は市場の機能発揮に極大な損害をもたらすばかりか、国家資源の浪費、公平な競争の市場秩序を破壊し、市場メカニズムの正常な運行に深刻な影響を与え、政府に持続的な重荷をもたらす。また、長期的に見れば、ゾンビ企業は全国の経済構造調整に影響を与える障害物でもある。

鉄鋼、石炭、セメント、ガラス、造船

 ゾンビ企業の大部分が国有企業というのであれば、そこに含まれる業界は何なのか。それは、過大な余剰生産能力を持ち、膨大な在庫を抱え、すでに生産停止あるいは生産休止の状態にあり、連年の赤字にあえぎ、政府の補助金や銀行からの借入によって辛うじて経営を維持している業界であり、その主体は、鉄鋼、石炭、セメント、ガラス、造船などの業界である。

 これら業界のうちで余剰生産能力が最も深刻なのは、鉄鋼と石炭の2業界である。全人代の開幕に先立つこと1か月前の2月初旬、中国政府“国務院”は李克強総理の承認を得て、2つの意見書を配布した。それは、『鉄鋼業界の余剰生産能力を解消し、苦境を脱却して発展を実現することに関する意見』(以下「鉄鋼業界意見書」)と『石炭業界の余剰生産能力を解消し、苦境を脱却して発展を実現することに関する意見』(以下「石炭業界意見書」)であった。この2つの意見書を念頭に国務院総理の李克強は、3月5日の全人代開幕直後の「政府活動報告」の中で余剰生産能力の解消とゾンビ企業の処置に言及したのだった。

それでは2つの意見書には何が書かれていたのか。その要点は以下の通り。

(1)鉄鋼業界意見書:  2016年から開始し、ここ数年来推進して来ている後れた鉄鋼生産能力除去の基礎の上に、5年の期間内に粗鋼生産能力をさらに1億~1.5億トン削減する。また、5年の期間内に、鉄鋼業界の合併・再編を実現して実質的な進展を図り、産業構造の最適化、資源利用効率の向上、生産能力利用率の適正化、製品品質とハイエンド製品供給能力の向上、企業業績の好転、市場予測の好転を図る。  

(2)石炭業界意見書:  2016年から開始し、3~5年の期間内に、石炭業界は生産能力を5億トン前後削減し、再編により生産量を5億トン前後削減する。この比較的大幅な石炭生産能力の圧縮、石炭生産量の適度な削減により、石炭業界の過剰生産能力を効率よく解消させ、市場の需要・供給の基本的バランス、産業構造の最適化、構造転換とグレードアップの結合により実質的な進展を図る。

180万人の配置転換と不満解消に1000億元

 中国の公文書は、1つの文章の中で「読点(とうてん)」を多用することにより、いくつもの事柄をだらだらと羅列する傾向があり、日本語に翻訳する際には骨が折れる。上記意見書の原文もその類だが、その要点を端的に言えば、鉄鋼業界は5年以内に粗鋼生産能力を1億~1.5億トン削減するし、石炭業界は3~5年以内に過剰生産能力を5億トン前後削減し、産出量を5億トン前後削減するということである。

 全人代初日に行われた政府活動報告の中で、李克強総理が過剰生産能力の解消とゾンビ企業の処置に言及すると、国際ニュース通信社の「ロイター」は、中国共産党指導部に近い複数の情報筋から聴取した話を引用して、2~3年以内にゾンビ企業から500万~600万人の国有企業職員が削減されると報じた。一方、2月25日に記者会見を行った「中国工業・情報化部」副部長の“馮飛”は、中国政府が工業企業構造調整特別奨励補助資金の設立を決定し、2年間に1000億元を支出して、主として石炭と鉄鋼の過剰生産能力とゾンビ企業を処置すると述べた。また、「中国人力資源・社会保障部」は2月29日付で、国有企業の削減予定人数は180万人で、その内訳は石炭業界が130万人、鉄鋼業界が50万人であると発表した。

 “中国国家統計局”のデータによれば、中国の石炭業界と鉄鋼業界の合計職員数は1200万人であるから、180万人は全体の15%に相当する。180万人もの国有企業職員が人員整理で削減されれば、大量の失業者が発生することは否めない。そうなれば、人々はそれに反発して抗議デモを行うだろうし、不満のはけ口を暴力に求めて、社会不安が引き起こされる可能性は高い。そうした人々の不満を配置転換によって抑制するための資金が1000億元の特別奨励補助資金であり、それが全人代の「政府活動報告」の中で李克強が言及したものだった。

世界鉄鋼協会(World Steel Association、略称:worldsteel)の統計によれば、2015年の粗鋼生産量(Crude Steel Production)は、全世界の総計が16.23億トンであったのに対して、中国は8.04億トンで、全体の49.5%を占めて、世界一だった。中国の粗鋼生産量は2014年には8.23億トンだったから、2015年は2.3%減少したことになる<注1>。一方、中国の資料によれば、中国の2015年における粗鋼生産能力は11.7億トン、粗鋼生産量は8.05億トン、粗鋼見かけ消費量(生産+輸入-輸出)は7.04億トンであったから、粗鋼生産能力利用率は68.8%、粗鋼の過剰生産量は1.01億トンとなっている。なお、中国の粗鋼生産能力は2003年には約3億トンに過ぎなかったが、その後急拡大を続け、2012年には10億トンを突破したのだった。

<注1>2015年の粗鋼生産量の世界第2位はEUの1.66億トン、第3位は日本の1.05億トン。

 また、石炭に関する“中国科学院予測科学研究中心(研究センター)”の統計によれば、中国の石炭生産量は2013年の39.74億トンをピークに、2014年には38.74億トン、2015年には37.58億トン(予測)と減少しており、2016年には36億トンになると予測されている<注2>。中国では国内の景気低迷に加え、経済構造の転換および大気汚染防止の影響を受けて、2015年における国内の燃料炭市場は疲弊し、石炭価格は30%近く値下がりした。このため、石炭業界は大量の在庫を抱え、利潤は大幅に低下し、多数の石炭企業が苦境に陥り、現在に至っている。

<注2>中国の石炭生産量は世界一だが、世界第2位の米国の2015年の石炭生産量は約9億トンで、1986年以来の最低水準だった。

世界8位「武漢鉄鋼集団」も妙手なし

 さて、“武漢鉄鋼(集団)集団”(以下「武漢集団」)は、上述したworldsteelの「2014年主要鉄鋼企業生産量ランキング」で世界第8位(33億トン)にランクされる中国の国有企業であり、“中央企業”<注3>の1つである。その武漢集団の“董事長(理事長)”である“馬国強”は、3月10日午前中にニュースサイト“人民網(ネット)”が放映した『第13次5か年計画に頑張る新国有企業との対話』と題する番組の中で、「武漢集団は現在職員の配置転換を行っており、半数以上の職員は今後鉄鋼業務に従事することはない」と述べた。

<注3>“国務院国有資産監督管理委員会”が直接監督・管理する大規模国有企業。

 馬国強は、「生産能力を削減するという大前提の下、我々はすでに8万人の職員全員が製鉄や製鋼に従事することはできないという共通認識に達している。3万人の職員だけが製鉄、製鋼に従事できるというのであれば、4万人あるいは5万人の職員は別の活路を見出さねばならず、武漢集団は現在それをやっている」と述べた。

 馬国強の発言は、上述した2月の鉄鋼業界意見書、2月29日に中国人力資源・社会保障部が発表した、国有企業の削減予定人数は鉄鋼業界が50万人、さらに李克強も言及した1000億元の特別奨励補助資金を踏まえたものだった。1958年に操業を開始した武漢集団は、1949年の中華人民共和国成立後に建設された最初の大型鉄鋼企業で、長期雇用の労働者は7万~8万人で、最大時には10万人にも及んでいた。

番組のキャスターが「生産能力削減の過程の中で、どのように職員を配置するのか」と問いかけたのに対して、馬国強は次のように応じた。

 武漢集団は次のような方法で職員の配置転換を行おうとしている。

【1】法定退職年齢<注4>まで5年以内の職員は、もしその当人に労働能力が無い、あるいは働く意向が無いなら、職場を離れて退職を待っても良い。

<注4>法定退職年齢は、一般労働者:(男)満60歳、(女)満50歳、特殊環境下の肉体労働者及び身障者:(男)満55歳、(女)満45歳。

【2】武漢集団の傘下にはいくつかの非鉄鋼産業があるので、一部の職員を受け入れることが可能。

【3】地方政府と共に職員を雇用してくれそうな外部の企業に照会し、職員の新たな職場を探す。

 上記の【1】は法定退職年齢まで5年以内の職員で、労働能力が無い者と労働意欲の無い者には、最低水準の給与を払うから退職年齢になるまで自宅待機しろという意味かと思える。それにしても、鉄鋼生産量世界第8位である武漢集団の理事長たる馬国強が、4~5万人もの職員の配置転換に当たって、ありきたりの方法しか述べることができず、何らの具体策も提示できないとは、開いた口が塞がらない。これは恐らく、鉄鋼業界の他社も石炭業界の各社も推して知るべしと言えるのではないか。

切り捨て人員、ゾンビ化して反旗?

 こんな調子では、鉄鋼業界と石炭業界の180万人の配置転換が順調に行われるとは考えられないし、ましてや彼らを含むゾンビ企業から削減される500万~600万人の労働者にまともな配置転換がなされるとはなおさら考えられず、彼らは失業するしかない。そうだとすれば、特別奨励補助資金の1000億元は、彼らの生活費の一部に充当されるだけで、配置転換の目的に使われることはないだろう。

 中央政府の役人が机上で考えた過剰生産能力の削減とゾンビ企業の処置のしわ寄せをまともに受けるのは一般労働者である。切り捨てられた彼らがゾンビとして復活し、大挙して反旗を翻さない限り、中央政府の役人も企業の経営陣も、誰一人として政策の失敗を疑わないのが、中国の悪しき伝統なのである。

3/16JBプレス 古森義久『中国の「欺瞞」外交にオバマもいよいよ我慢の限界 口では協調を求め、裏では米国に大胆に挑戦』について

日本の民進党の英語名が“DIP=Democratic Innovation Party”だったのを急遽”DP=Democratic Party” と元の民主党と同じにしました。ネット上で、“DIP”の意味が名詞ですと「【名】〔物を〕下げる[沈める・浸す]こと。〔液体や容器に〕手を入れること◆物を取り出すために。軽く泳ぐこと、一泳ぎ◆【同】quick swim。〔価格などの一時的な〕下落、低下。〔地面などの〕くぼみ、へこみ。〔地面などの〕下り坂[斜面]《地学》〔地層の〕傾斜(角)◆【同】dip angle。《地学》〔地磁気の〕伏角◆【同】magnetic dip。《食》ディップ◆【同】dipping sauce。〔羊などの〕洗浄[消毒]液◆【参考】sheep-dip

〔芯を浸して作る〕ディップ・キャンドル◆【同】dip candle。〔平行棒の〕ディップ◆【同】parallel-bar dip。〈俗・軽蔑的〉ばか、間抜け。〈俗〉すり◆【同】pickpocket。〔アイスクリームなどの〕スクープ1杯分、ひとすくいの量◆【類】scoop。」(アルク調べ)で良い意味がなく馬鹿にされたため変えたのではと思われます。況してや“DIP=Democratic Innovation Party”ではなく“DIP=Democratic Innovative Party”ではないかという気がしますが。台湾の”DPP= Democratic Progressive Party”は流石に使えないと思ったのでしょう。日本の左翼・リベラル・売国政党と台湾の中国国民党からの独立を掲げ戦ってきた政党とを同じにしないでほしい。でも国民は看板の挿げ替えをしても中味はアカかピンクというのは見抜いています。鳩山・菅・野田政権による国政の混乱を挙げるまでもなく、最近の野党の国会質疑の質問のレベルの低さ、野合と言われても仕方のない選挙区での候補者調整(共産党の候補取り下げ、新潟での民主党候補の取り下げ)のやり方を見ていれば日本の民進党に政治を任せる訳には行かないと思うでしょう。国民は朝日が主導する左翼偏向メデイアには騙されません。今後呼ぶときは日本民進党と呼び、台湾民進党と区別しましょう。日本と付く政党名は日本共産党と同じく実態は反日の意味です。分かり易く反日共産党とか反日民進党とか名前を変えればよいのに。

岸田外相が4月に訪中するとのこと。外交儀礼では中国訪問の順なのに世界は日本が中国に叩頭外交しているように見るでしょう。チャイナスクールの入知恵なのでしょうが、岸田も扱い易い大臣と思われていることでしょう。こんな自分の考えを持たない人間は総理の器ではありません。中国からの注文を聞きに行くようなことは止めてほしい。放って置くのが一番です。間違っても通貨スワップを認めることのないように。

アルゼンチンは中国の漁船を撃沈しました。違法操業でこれが正しい実力行使です。日本の海での赤珊瑚盗掘を許したのは恥と思わねば。正義が実行されない、非法治国家という事です。国の大小は関係がありません。2012年にはパラオの中国船員の一人射殺、他は全員逮捕、船は中国人が放火という事件がありました。しかし、昨日安倍首相は首相として初めて海保学校の卒業式に参列したとのこと、良いことです。

自民党は東シナ海ガス田開発を国際仲裁裁判に提訴することを政府に求めました。中国のいう3戦の内の法律戦です。こんなことは遠慮せずにドンドンやればよい。中国は国際法に合わない国内法を作って好き勝手やって国民を誑かしています。比の南沙諸島の問題はハーグの国際司法裁判所に提訴しました。また越は西沙諸島・南沙諸島の領有権についてやはりハーグの国際司法裁判所に提訴準備中とのこと。中国は無視を決め込むでしょうが、国際的に中国のやっている非道を訴えられれば良い。別に受けることを目的にしなくても。世論戦を戦わねば。竹島もさっさと提訴すれば良いのに。

オバマは今頃中国の欺瞞に気付くのは遅すぎ。だからトランプのような大統領候補が出るようになってしまったのです。

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Xi Jingping & Peng Liyuan 

米シアトルのペインフィールドに到着し、出迎えの人々に手を振る中国の習近平国家主席(左)と彭麗媛夫人(2015年9月22日撮影)。(c)AFP/MARK RALSTON〔AFPBB News

 中国の習近平政権は、米国を後退させながら勢力を拡大する対米対決戦略をとりながら表面上は穏健で協調的な対米政策をアピールするという欺瞞作戦を進めている。それに対してオバマ大統領もついに中国への批判を正面から表明するようになった──。

 米国のベテラン専門家が、最近の米中関係の変質をこのように報告した。

協調路線から攻勢的外交へ転換

 米国ジョージワシントン大学のロバート・サター教授は3月9日の同大学での講演で、習近平外交の現況と米中関係の変質についての見解を発表した。

 サター氏は米国務省、中央情報局(CIA)、国家情報会議などの中国専門官として30年以上を過ごし、中国の対外戦略研究では米国で有数の権威とされている。

 サター氏はこう総括する。中国は胡錦濤政権下の2002年から2012年までの間、「米国との実利的な協力」外交を進めていた。しかし、2013年3月に習近平氏が国家元首となって以来その外交を止めて、「アジアその他の地域で米国に挑戦する、大胆で攻勢的な外交構想」へと転換した。

その具体的な例としては以下があるという。

・東シナ海や南シナ海で、軍事力を直接行使する寸前の多様な強制的手段を実行し、近隣諸国と米国の権益をはぎ取ろうとしている。

・巨額の外貨準備や工業生産能力の余剰分を利用して、自己中心的な「国際経済開発のプログラムや機関」を開設する。それは米国のリーダーシップを侵害するか、米国を排除することになる。

・アジア太平洋地域で、米国を主要な標的とする軍事態勢の強化を進めている。

・米国の官民に対するサイバー攻撃によって、経済資産の収奪、知的財産権違反、市場アクセスの障害、通貨レート操作などを実施し、米国に重大な損害をもたらす。

習近平主席は「新型大国関係」を推進すると言明

 サター氏は、こうした中国の攻勢を受けてオバマ大統領の対応が明らかに変化してきたことを強調する。

 オバマ大統領は就任してから6年以上の間、中国との協調的な関係の構築を求めてきた。中国側がそれに反する言動を見せても抑制された態度を保ち、中国の名を挙げて批判したり非難することは一切しなかった。だが、最近はその協調政策を変えてきている。最近、オバマ大統領は頻繁に中国の名を挙げて批判するようになったという。

 一方で、習近平主席は、今なお米国とは「新型大国関係」の構築を推進すると公式に言明し続けている。オバマ大統領の声明も含めた米国側の不満や非難に対して、中国側は閣僚級もしくはそれ以下の官僚に対応させ、簡潔に反論を述べるだけで済ませてきた。だから国家主席としては、あくまで米国との協調を求めるという態度は変えていないというわけだ。

だがその一方で、中国当局は米国の利益を侵害する行動を取り続けている。サター氏は、中国がこうして裏表を使い分ける態度を「欺瞞作戦(ダブルゲーム)」と特徴づけた。

日本にも向けられる外交の二面性

 サター氏は、習主席のこの新たな外交攻勢を「近隣諸国や米国に不利益をもたらす大胆な構想」であり、「『国力の回復』や『中国の夢』などという曖昧な自己陶酔の探求」だと描写する。

 そして、中国がこうした野望を抱くことになった土台として以下の要因を列記した。

・経済(過去30年にわたって毎年平均10%以上の経済成長を達成し、製造業、貿易、外貨保有などで世界一の地位を得た。また外国から巨額の投資を受けた)

・軍事(過去20年にわたって毎年平均10%以上軍事予算を増大させた。その結果、アジアで最大かつアジア地域で米軍に挑戦できるだけの能力を持つに至った)

・政治(アフリカやブラジルの最大貿易相手国となり政治的影響力を発揮するようになった。その他の地域でも政治的な役割が増大した)

 習近平政権は、こうした外交の二面性を米国だけでなく日本に対しても行使する可能性が十二分にある。日本も要注意ということだろう。

3/17日経ビジネスオンライン 鈴置高史『「中国に立ち向かう役は日本にやらせよう」 結局は、中国に連れ戻される韓国』について

3/18北はまた弾道ミサイルを発射したようです。そんなお金があればもっと国民を豊かにするようにすれば良いと思いますが、共産独裁国家は聞く耳を持たないでしょう。金正恩は毛沢東と同様の残忍さです。やがて米中談合でフセインやカダフィのような運命を辿るかも知れません。

もう一つの朝鮮半島の国家である韓国は二股外交の愚かさに気付いていないようです。他人を利用しようとするだけの発想しか持ちえない哀れな民族としか言いようがありません。新渡戸の書いた「武士道」の中でも、必須と思われます義”rectitude”を欠く国です。日本に受けた恩を忘れ、世界に言いつけ外交、慰安婦の嘘を広めて来ました。米国もホトホト相手にするのに難渋したと見えます。平気で嘘をつくわ、直ぐに言い逃れる、あまつさえ「火病」を起こすのを見れば誰でも嫌になります。ここはやはり1000年宗主国である中国の出番でしょう。中国も平気で嘘をつくし、人を騙すのが評価される国なのでお似合いです。韓国も自由主義諸国に入っていますが、加藤産経ソウル支局長の軟禁事件に象徴されるように自由のない国です。かつ元記事を書いた朝鮮日報はお咎めなしと言うのですからネポテイズムの極みでしょう。3/18日経にあります2015年の報道の自由度ランキングを見ますと韓国60位で日本が61位です。何故韓国より下に日本がいるかと言うと、政府の責任と言うよりはメデイアの記者クラブの存在が大きいでしょう。自由に取材させない仕組みでこれは新聞・TVで良く批判している談合と同じ性質のものでは。メデイアも少しは数字を上げる努力をしたらと思います。記者クラブを止めれば、はるか上に行くでしょう。

3/18日経記事<香港のメディア事情、年々強まる中国の統制 

フォームの終わり

 外交・防衛以外で幅広い自治を認める「一国二制度」の下、香港は中国本土では認められない報道の自由を享受している。地元紙の多くは自らの政治的立場を示し読者の獲得を競い合ってきた。だが、中国政府によるメディア統制は年々強まっている。

Ranking of freedom of report 2015

 国際ジャーナリスト組織、国境なき記者団(RSF、本部パリ)による2015年の「報道の自由度ランキング」で香港は70位だった。ピークの02年(18位)に比べ大幅に後退した。RSFは「中国当局によるメディア統制が強まり、多くの記者は『所属組織は北京と問題が生じるのを避けるため自己検閲している』と証言した」と指摘する。

 中国の電子商取引最大手、アリババ集団は有力英字紙、サウスチャイナ・モーニング・ポストを買収した。アリババの蔡崇信副会長は「欧米の主要メディアは特殊なレンズで中国を報道している」と批判。「中国政府の意に沿わない原稿は載りにくくなる」(同紙記者)との懸念が強まる。

 中国共産党の主張を代弁してきた親中国派の二大紙、大公報と文匯報も2月に経営統合し新メディアを準備中だ。李立峯・香港中文大学教授(40)は「中国政府は経営資源やスタッフを紙媒体からインターネットに再配置する思惑だろう」と指摘する。>

記事

Launching THHAD

韓国へのTHAAD配備を巡り、米中の駆け引きが続く(提供:U.S. Department of Defense, Missile Defense Agency/ロイター/アフロ)

前回から読む)

 「やっぱり、中国の言うことを聞こう」――。韓国人が弱気になってきた。中国から激しく脅されたうえ、米国からは見捨てられる気配を感じ取ったからだ。

腰が引けていた韓国

—前回の「朴槿恵外交は「暴走」から「迷走」へ」の結論は「韓国が米国側に戻ると見るのは、まだ早い」でした。

鈴置:北朝鮮が長距離弾道ミサイルを発射した2月7日、地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD=サード)の在韓米軍への配備について、韓国は米国の要求を正式にのみました。

 配備は中国が強く反対していたので、韓国の「離米従中」が止まったかに見えました。日本でそう言って回る韓国人もいます。

 でもよく観察すると、韓国の中国に対する姿勢は及び腰でした。配備容認を明らかにした記者会見でも、韓国国防部は「米国に強要され仕方なく認めた」というニュアンスを必死で醸し出していたのです。

 もちろん、中国の目を意識してのことです(「『THAADは核攻撃』の対象と韓国を脅す中国」)。

 そこで「本気で米国側に戻るつもりはないな」と読んだのです。実際、THAAD配備容認から1カ月も経たないうちに韓国では「配備の容認により中国を敵に回した朴槿恵(パク・クンヘ)」への批判が高まりました。

「国を滅ぼす朴槿恵」

 当然と言うべきか、真っ先に批判したのは左派系紙のハンギョレでした。ことに激しい表現で目を引いたのが、オ・テギュ論説委員室長のコラム「国を滅ぼす朴槿恵外交の3大失策」(2月29日、日本語版)です。

 3つの外交失策として挙げたのは日本に完敗した「慰安婦合意」、開城工業団地閉鎖による南北関係の断絶、そして3つの中でも「痛恨の失策」である、THAAD配備容認による中国との関係悪化――です。それに関する部分が以下です。

  • THAADに対する中国の猛反発に「国連制裁とは関係のない純粋な安保次元の決定」という論理を(韓国政府は)展開した。だが、米中が制裁を議論する過程で駆け引きの材料になった痕跡が歴然としている。
  • THAAD配備カードが、中国が強力な制裁案を受け入れるテコとして作用したことは認めるとしても、中国の感情を傷つけるだけ傷つけておき、韓国の境遇を「鶏を追いかけた犬、屋根を見つめる」(一生懸命やったことが虚しく終わるという意味)にした判断ミスは重い。

経済人に圧力

—要は、朴槿恵大統領は中国を敵に回してしまった、との批判ですね。

鈴置:その通りです。これに続いて、対中関係の悪化を問題視したのが中央日報でした。保守系紙の中では最も中国に近いと見なされる新聞です。ハンギョレと比べれば、かなり大人しい表現でしたが。

 3月4日の社説「THAAD外交、安保と国益のための最適な戦略の模索を」(韓国語版)のポイントを翻訳します。3月5日の日本語版でも読めます。

  • (3月4日に)韓米はTHAAD配備のための合同実務協議団を発足させた。問題は中国の激しい反発をどう乗り越えるかだ。中国はTHAAD配備阻止に向け、総力で外交戦に取り組んでいる。
  • 最近、訪韓した中国の武大偉・朝鮮半島問題特別代表は数人の経済人にも会った。それだけで韓国への大きな圧力となる。中国でビジネスをする経済人が、THAAD反対論を聞かされただけでどれだけの負担になるか、容易に想像できる。
  • THAADの必要性に最も早く言及したケリ―(John Kerry)米国務長官も「(配備に)汲々とはしない」と言い出している。配備に関し、考慮すべき点が増えたとの意味だろう。
  • 我々こそ熟慮が必要だ。米中の競争と葛藤の状況を細かく研究し、その隙間でどんな選択をするのが安保と国益を守る最も良い方法なのか、長期的視点で精巧に戦略を描かねばならぬ。

 はっきりと書いていませんが、中央日報の言いたいのはこういうことでしょう。

  • 北朝鮮の核・ミサイル実験に驚いてTHAAD配備を認めてしまい、中国との関係が一気に悪化した。だが、米中は「THAAD」を取引のカードとし、我々の知らぬところで談合し始めたようだ。
  • THAAD配備問題はいつの間にか雲散霧消するかもしれない。配備を認め続けると、米国からはさほど評価されない一方、中国からは憎まれる可能性が高い。

中国の脅迫で下がった韓国株

—中国からの経済的な圧迫も気にしているようですね。

鈴置:中央日報はサムスングループの創業者である李秉喆(イ・ビョンチョル)氏が作った新聞です。一般紙ながら、経済界の利益には関心が深いのです。

 実害も出ています。「中国大使の“脅迫”で株価が下がった」事件が発生しました。韓国経済新聞が「中国消費関連株、韓中外交摩擦が『飛び火』」(2月25日、韓国語版)で報じました。

 企業名の前には業種を示すなど、韓国の産業に疎い読者にも理解しやすい形で翻訳しました。この記事は中央日報の日本語版にも翻訳、掲載されています。

昨年、証券市場を牽引した中国消費関連株がTHAAD配備問題で揺れている。

2月24日、化粧品メーカーのアモーレ・パシフィックは前日比1.80%安で引けた。2月に入り14.23%下落した。中国に工場を持つ化粧品の受託開発・製造会社、コスマックスも前日比0.41%安で引け、月初と比べ55.19%の値下がりとなった。

この日は化粧品・家庭用品のLG生活健康(マイナス2.35%)、製菓のオリオン(マイナス0.54%)、ホテル新羅(マイナス4.40%)などの中国関連株も一斉に下げた。

中国景気の減速に加え、THAAD配備に絡む韓中外交摩擦への懸念が高まったからだ。前日の取引終了後の邱国洪・駐韓中国大使の発言が影響した。

袁世凱に擬せられた中国大使

—中国大使に脅された、と韓国人が悲鳴を上げた事件でしたね。

鈴置:2月23日に邱国洪・駐韓大使がTHAAD配備に関連し「中国の安全保障上の利益が毀損されれば、両国(中韓)関係は避けようもなく被害を受けるだろう」と語ったことで、韓国はちょっとした騒ぎになりました(「『中国大使に脅された』とうろたえる韓国人」参照)。

 邱国洪・駐韓大使は、朝鮮朝末期に清朝から事実上の「朝鮮総督」として派遣された袁世凱に例えられるほど、韓国人の怒りの対象となりました。

 朝鮮日報の金基哲(キム・ギチョル)文化部長は「130年前の袁世凱を思い出した理由」(3月12日、韓国語版)なんて見出しの記事を書いて、「中国の圧政」に抗議したのです。

 発言1つで韓国株まで下げて見せるのですから、駐韓中国大使は今や、袁世凱以上の権力を持つのかもしれません。当時の朝鮮朝に株式市場はありませんでしたから、比べようはありませんが。

 2月28日から5日間も韓国に滞在した武大偉・特別代表は、駐日大使(2001-2004年)を務めた外交官です。その前には駐韓大使(1998-2001年)でしたから、言わば里帰りです。旧知の経済人に会ったほか、多くのメディアの個別のインタビューも受けました。

 邱国洪・駐韓大使のような威嚇的な発言はしなかったようで、韓国紙の反応も悪くなかった。現職大使が「悪い警官」、元の大使が「良い警官」の役割を分担し、韓国人を脅したり、すかしたりしている感じです。

一時は強気を見せた東亜日報も……

—ほかのメディアは「THAADで悪化した中国との関係」をどう評しているのですか。

鈴置:多くの新聞が懸念し始めました。中でも、東亜日報の変節が興味深いのです。

 東亜日報はTHAAD配備のための米韓合同実務協議団が発足した翌日の3月5日の社説「北の核先制攻撃の脅威……THAAD含む緊急対応が必要だ」(3月5日、韓国語版)で、諸手を上げて賛成しました。

 日本語版でも「金正恩氏の核恐喝にTHAAD含む対応が必要だ」(3月5日)で読めます。中国に対しても、以下のように強気でした。韓国語版を翻訳します。

  • 中国が頑なに反対したため、韓米の実務団発足に関する協議がしばらく停滞した。THAADが困ると言うのなら、中国は金正恩を説得するなり、圧迫するなりして核を放棄させれば済むことだ。

 中国の顔色をうかがう中央日報と比べ、気合いが入っているなあと感心したのですが、それは4日後に裏切られてしまいました。

 社説「独自制裁に出た韓国、米中の水面下の駆け引きに不覚を取ってはならない」(3月9日、日本語版)で、東亜日報は大きく軌道修正したからです。ポイントは以下です。

米中の本心を見落とし不覚

  • 米国務省のカービー(John Kirby)報道官は3月7日「米国は6カ国協議の再開を望み、完全かつ検証可能な非核化を望む」と強調した。THAAD配備に関しても「韓国との協議の必要がなくなる可能性もある」と述べた。
  • 米中が安保理決議と配備の保留を巡って、ある種の戦略的駆け引きをしており、非核化会談再開の方向へ局面転換を模索しているようだ。中国の「非核化・平和協定の並行」提案に米国は以前と異なって柔軟だ。
  • 制裁と圧迫だけで金正恩第1書記に核とミサイルを放棄させられるかは不確実だ。特に、北朝鮮政策の目標を金正恩政権の交代と崩壊、統一まで見通す圧迫に置くのかについては、韓米間に意見の相違があり得る。
  • 米中の本心を看破できず不覚を取ることがないよう、出口戦略も考慮し戦略、戦術的柔軟性を発揮しなければならない。

 東亜日報も米中の談合に警戒してはいたのです(「朴槿恵外交は『暴走』から『迷走』へ」参照)。

 でも、3月4日にTHAAD配備に向け実務協議が始まったので、米韓の結束は固いと読み誤り、翌日の社説で中国に「俺の後ろには米国がいるぞ」と凄んでみせてしまったと思われます。

 そこに3月7日のカービー報道官の発言。「米国がスクラムを組んでいるのは自分ではなく、中国だった」と気がついて、慌てて論調を変えたのでしょう。

韓国人の本音

—最大手紙の朝鮮日報は「THAAD」に関し、何か意見を表明しているのですか。

鈴置:3月5日の社説「準備せずに『統一の夢』は実現できない」でチラリと触れました。

  • 民族と国の運命を決める「北の核」の解決は、我々独自の意思だけでは限界があると痛感する。結局、国連が前に出ねばならず、米国と中国の取引を通じ、対北制裁とTHAAD配備問題が処理される過程を見守らねばならないのだ。

 現状認識を述べただけです。この問題で韓国が具体的にどう動くべきだとは主張してはいません。でも、同紙のシニア記者は署名記事で「米中間の立ち位置」に関し言及し始めました。

 3月9日、鮮于鉦(ソンウ・ジョン)論説委員が「活火山の火口役は避けるべきだ」(韓国語版)を書きました。韓国人の本音を吐露した記事なので、長くなりますがポイントを翻訳します。

ずる賢さが必要だ

  • 韓国にとって米国は「血盟」だ。3万6574人の米軍将兵が朝鮮半島で命を落とした。北朝鮮との軍備競争を避け、繁栄を享受できるのも在韓米軍のおかげだ。借りを返すにはほど遠い。とはいえ、いざこざの身代わりまで買って出ることはできない。
  • 同盟の限界はどこにあるのだろうか。韓米同盟の本質から明確にすべきだ。米国が、中ロを相手にする際に「パートナー」と規定している国は日本だ。韓国は北朝鮮を抑える「地域パートナー」との立場を越えたことはない。従って、アジアで米中間のいざこざの身代わりを進んで買って出る資格と責任は、日本にある。
  • 3月8日、韓国政府が北朝鮮制裁を発表した。開城工業団地の稼働中止を含め、取り得る圧迫手段はすべて動員した。残るはしっかりと履行することだけだ。
  • 同時に、韓国政府の対策の中に、過剰反応な部分がないかもチェックしなければならない。表に出さず静かにやるべき重要な課題も選別し、推し進めなければならない。
  • 指導者には、時としてずる賢さも必要になる。それでこそ「活火山の火口」役を避けることができる。

 米韓同盟を「対北朝鮮用」に明確に限定すればよい、との主張です。THAAD問題を期に韓国は中国からの圧迫と、米国から見捨てられる危険性に同時にさらされました。

 いずれからも逃れるには同盟の範囲を限って「中国を敵にしない」と宣言するしかない、との論理です。これは朴槿恵政権が当初から目指していたことです。米中間で迷走を始めた政権に、原点回帰を訴えているとも言えます。

 なお「過剰反応をチェック」とは、THAAD配備容認の見直しを含め、対中関係の改善に動こう――ということと思われます。「表に出さず処理する課題」とは、核武装の準備を密かに進めよう、との意味に受け取れます。

「やっつけられる日本」を見たい

—「中国に立ち向かう役割は日本にやらせよう」とも言っていますね。

鈴置:自分が中国に敵対しないだけではなく、日本を中国に敵対させる。そうすれば、より確実に中国との良好な関係を維持できる――との計算です。

 国際政治の常道として、隣国が強力になり脅威を感じた際に採る道は2つあります。強大な隣国に立ち向かうか、あるいはその侵略の方向を自分以外の国に向けさせるかです。

 ナチス・ドイツが台頭した時、フランスとソ連はお互いをドイツと仲違いさせようとしました。ドイツの自分への怒りを逸らそうとしたのです(「コリア・アズ・No.1」参照)。鮮于鉦・論説委員はまさに、この手を使おう、と言っているのです。

 感情的にも「日本をして中国に立ち向かわせる」作戦は、韓国人にとって心躍るものがあります。要は「中国が日本を攻撃するのを高みから見物しよう」ということですから。

 尖閣で中国が日本を圧迫するニュースを報じる時の韓国メディアは、実に楽しそうです。憎い日本がやっつけられるのを見るのは、韓国人にとって最高のショーなのです。それが将来、どんな不幸となって自分にやってこようと、です(「『尖閣で中国完勝』と読んだ韓国の誤算」参照)。

ずうずうしい韓国に嫌気する米国

—結局、韓国の新聞は左派系紙から保守系紙まで、米中等距離外交への回帰を訴え始めた、ということですね。

鈴置:その通りです。

—等距離外交はそんなに上手くいくものでしょうか。

鈴置:難しいと思います。「等距離」を語るのは簡単ですが、よほどハラを据えないと――中国に立ち向かう覚悟を固めないと、どんどん「怖い中国」の言いなりになってしまいます。過去3年間の朴槿恵外交がまさにそれを証明しています。

 そのうえ、米国から見捨てられる可能性も出てきました。中国に立ち向かわない韓国の面倒を、米国は見なくなるでしょう。もう米国は「困った人がいたら助けに行く世界の警察官」ではないのです。

 ことに韓国に対しては、米国のアジア専門家の多くが嫌気しています。65年前に一度、わが身を犠牲にして助けたら「血盟の関係だ」と勝手に言い出してすがりついてくる。最近に至っては、米国を裏切りながら「助けてくれて当然だ」と色々と要求してくるのです。

 鮮于鉦・論説委員の記事への読者の書き込みにも「卓説だ」との評価がある一方で、観念論だとの趣旨の批判が多々ありました。

 例えば、米中が南シナ海で対立した際「米国との同盟は北朝鮮専用ですから私は関係ありません」と言い張って米中間で中立を維持できるのか、との指摘です。そんな虫のいいことを言えば、米国から見捨てられるだろう、と懸念を表明した人もいました。

「足抜け」が始まる

—今後、米国はどう動くと思いますか。

鈴置:韓国を助けないどころか「米韓同盟の希薄化」カードを少しずつ切っていく可能性が高い。その見返りに、中国に「北朝鮮の核」を抑制させる作戦です(「朝鮮半島を巡る米中のカード」参照)。

朝鮮半島を巡る米中のカード
米国 中国
THAAD配備留保 従来より強い対北朝鮮制裁容認
米韓合同軍事演習の中断と一部制裁の解除 北朝鮮の核・ミサイル実験の中断
米朝平和協定(不可侵協定)の締結  ・米朝国交正常化  ・在韓米地上軍撤収  ・在韓米軍撤収  ・米韓同盟廃棄 北朝鮮の核兵器廃棄  ・核弾頭の増産中断  ・弾頭再突入技術の開発中断  ・弾頭小型化技術の開発中断  ・保有核兵器の全廃
「朝鮮半島の非核化・中立化」の制度的保障

注)左右の項目は必ずしも連動しない

 米国は、面倒な朝鮮半島から足抜けしていく方向にあります。もちろん一気に米韓同盟の破棄までは行きません。でも、中国と駆け引きを繰り返しながら「半島離れ」を進めていくでしょう。

 東亜日報の3月9日の「不覚をとるな」と訴えた社説。あれは「今から米国の足抜けが始まる」との悲鳴だったのです。

(次回に続く)

3/16JBプレス 堀田佳男『トランプ圧勝は確実、しかし本選はヒラリーの理由 党内の結束力に大きな差、経済の安定も強い追い風に』、3/16ZAKZAK『日本は「トランプ大統領」に備えた方がいい 快進撃の構図と底流』、3/17日経ビジネスオンライン 篠原匡『主流派が党大会に仕込む“トランプ抹殺”の策略』、3/17日経ビジネスオンライン 高濱賛『「トランプ」よりも「共和党」を守る可能性も 党保守本流が推した若手ルビオはついに撤退』について

①トランプは共和党の大統領候補になれるのか②本選でトランプVSヒラリーになった場合、トランプは勝てるのか、が本4記事の解説です。

①について・・・日経ビジネスオンラインの両記事は、共和党保守派はトランプ追い落としをいろんな手を使って図ろうとしているという事です。高濱氏は、指名推薦人が党大会でトランプ以外の候補に投票、党大会の場で指名に関する党規約を修正、対抗馬をクルーズに一本化する方法等、篠原氏は「トランプ氏が党大会までに過半数に到達しなければ、決選投票を繰り返す中で主流派が推す候補、例えばケーシック氏が過半数を得る場面が訪れるかもしれない。あるいは、2回目以降は予備選を戦わなかった人間も参加できるようになるため、待望論の強いライアン下院議長が名乗りを上げるというシナリオも囁かれる」という方法を考えているようです。でも民意から外れることをすれば、共和党から離脱する市民が増え、共和党自体の基盤が弱まると思いますので、そこまでしないのでは。

②について・・・堀田氏はヒラリーの勝利、ZAKZAKはトランプにも勝機があるとの立場です。ヒラリーとトランプではトランプの方がまだマシな気がします。ルトワックがWSJで言ったように選挙が終われば、普通の保守政治家に変わる可能性があるからです。ヒラリーは中国との裏の付き合いが見えて対峙できないでしょう。トランプであれば習近平に反対する中国人の人気も高く、かつプーチンともうまくやっていけそうで、中国包囲網を敷くには彼の方が向いています。しかし3/17日経で

<トランプ氏躍進、日本政府に危機感 パイプ乏しく

 米大統領選で共和党のドナルド・トランプ氏が指名獲得へ前進したことを受け、日本政府は危機感を強めている。政府内には大統領選では民主党のヒラリー・クリントン前国務長官が有利との見方が多いが、トランプ氏が大統領になれば日米関係に大きな影響を与えるのは必至。トランプ氏とのパイプも乏しい中、情報収集と分析を急ぐ。

 菅義偉官房長官は16日の記者会見で「米大統領選は日本をはじめ世界に大きな影響を与える選挙だ。結果は当然注視している」と述べた。政府が懸念するのは、トランプ氏が安倍政権の重視する政策に否定的な言動を繰り返していることだ。

 首相官邸は外務省に、トランプ氏に政策を助言するブレーンが誰かを探るよう指示しているが、現時点ではっきりした人物は見えない。実業家時代や最近の発言などを集めてトランプ氏の対日政策を分析しているのが実情だ。

 政府内のトランプ氏への評価は「実際に大統領になれば、実業家らしく現実路線にカジを切るだろう」「30年前から主張を変えない筋金入りの対日強硬派だ」などと定まっていない。>

とありました。外務省は不断から人脈作りしていないという事です。

JBプレス記事

Trump-1

いまだに米大統領候補ドナルド・トランプの化けの皮は剥がれない。それどころか皮の厚さが増して、本物の皮膚に変化しつつあるほどだ。

 国内外でトランプが大統領になった場合の憂慮が真剣に語られ始めている。本当にトランプは大統領になるチャンスがあるのだろうか。

 筆者は昨年末から、活字・放送メディアを通して共和党ではトランプが代表候補になると述べてきた。大統領ではなく、あくまで共和党代表という立場である。

 3月15日に行われるミニ・スーパーチューズデー(5州)では、トランプが共和党候補マルコ・ルビオの地元フロリダ州で勝利すると思われる。と言うのも14日現在、トランプは各種世論調査でルビオに約20ポイントのリードを保っているからだ。「敵地」で圧勝する流れなのだ。

もはや勝ったも同然のトランプ

 さらにジョン・ケーシックが知事を務めるオハイオ州でも勝つ可能性がある。そうなるとルビオ、ケーシックの2人は早晩、選挙戦から撤退していくことになる。

 今後トランプが獲得する代議員数をシミュレーションすると、5月下旬からカリフォルニア州の予備選がある6月7日には、共和党の代表候補に決まるだろう。

 ここまでの予備選結果を眺めると、トランプは38%の得票率を得ており、今後この数字が大幅に下降するようには見えない。逆に2位につけているテッド・クルーズの得票率は約22%で、様々な観点から分析しても、トランプを逆転するのは極めて難しい状勢である。

 ましてや15日のミニ・スーパーチューズデーは、フロリダ州やイリノイ州、オハイオ州といった代議員の総取りとなる州が多く、「もう間に合わない」のだ。クルーズは15日の予備選では全州で、トランプの支持率に負けている。

 ヒラリー・クリントンも15日の予備選では圧勝してくるだろう。となると、11月8日の本選挙はトランプ対ヒラリーという戦いが見えてくる。

 ここからはトランプとクリントンが共和・民主両党の代表候補になったと仮定し、11月の本選挙でどちらが勝つ可能性がより高いかを記したい。

現時点での予想には多少の無理があるが、一言で述べると「クリントンに勝算あり」である。

 理由はいくつもある。過去数十年間の大統領選で勝敗を大きく左右する要因は経済と党内のまとまり、資金力、選対の組織力などで、ほとんどの要因でクリントンが優勢だからだ。

 今年は経済問題が大きな争点にならない珍しい選挙である。米国の失業率はいま5%を切り、インフレ率も1月に1%台に乗ったが依然として低率だ。

 失業率とインフレ率を合わせた数値を痛苦指数(ミゼリー・インデックス)と言い、数値が10%を超えると現職大統領であれば再選できないと言われている。現在は6%台で、バラク・オバマの再選はもうないが、政権党である民主党の候補が再びホワイトハウスに入る可能性はある。

党内が団結、経済も追い風

 2008年のように、米国経済が恐慌の一歩手前という状況であれば、クリントンにほとんどチャンスはなかっただろう。今年の討論会では財政再建策や経済刺激策が話し合われず、不法移民や安全保障問題に関心が注がれている。

 次の指標として、党内がどれほどまとまっているかも重要である。党が分裂状態にあると、11月の選挙で勝てる可能性は下がる。

 特に共和党はトランプが代表候補になった場合、党の首脳部をはじめとしてトランプの言動を容認しない党員たちが少なからずいる。しかも党内の亀裂はいま深くなっている。首脳部がトランプに代わる候補を推してくることさえ考えられる。

 実は1968年にそうした事態が起きた。民主党はリンドン・ジョンソン大統領が再選を求めず、上院議員のユージーン・マッカーシーとロバート・ケネディが代表争いをしていた。

 だがケネディが暗殺されてマッカーシーが有力視されると、民主党首脳部は予備選を全く戦わなかった副大統領のヒューバート・ハンフリーを党大会で代表にしてしまう。

 党大会は暴徒化した党員などで荒れに荒れる。結局、ハンフリーは本選挙で共和党ニクソンに敗れるのだ。

いまの共和党首脳部がトランプを阻止するためのウルトラCを考えているとしたら、1968年のシナリオが頭にあるかもしれない。そうなるとトランプは黙っていないだろうし、共和党は分裂してしまい、最終的には11月にクリントンに負けるという流れができてしまう。

 さらに選挙に勝つために必要なのが選挙対策本部の組織力だ。いくら候補に人間的な魅力があっても、全米レベルで効率的なキャンペーンが運営できないと勝ち目はない。

 この点で今年のトランプは例外中の例外だ。クリントンの選対には給料が支払われるスタッフだけで350人はいるが、トランプの選対はほぼ10分の1である。しかも専属の世論調査員やプロの献金担当者はおらず、政策立案者も最近まで採用していなかった。

 にもかかわらず、トランプは共和党の代表候補になりつつある。これまでの大統領選の常識を破りながら快進撃を続けている点で、例外的な候補だ。

トランプ30億にヒラリー211億円

 選挙資金にしてもそうである。過去30年間の大統領選を眺めるだけでも、ほぼ例外なくより多くの選挙資金を集めた候補が勝利を収めてきた。多額の選挙資金を集めることで、テレビやラジオの政治CMに多額の資金をつぎ込めるからだ。

 正比例ではないが、選挙資金と選挙結果には強い相関関係がある。クリントンは3月7日現在、約211億円(スーパーPAC*1を含む)を集金。バーニー・サンダース(約110億円)の集金額に100億円も差をつけている。

 しかしトランプは約30億円しか集金しておらず、自己資金を約50億円使っていたとしても大変効率よく戦っている。

 9月になると、勝者はかなり微細に見えてくる。考慮すべき指標はいくつもある。経済成長率、国民の実質所得、失業率、インフレ率、候補の支持率、選対の組織力、選挙資金額、党内の結束等を総合的に判断することで、勝者が浮かび上がる。

 米政治学者の中には当選予想モデルを考案している人たちが何人もおり、過去ほとんどハズレがないほど高い確率で当選者を言い当てている人もいる。

 しかし、今年の選挙はドナルド・トランプという「これまでの常識」が通用しない人物がいるため、本選挙でも波乱が起きる可能性がある。それでもトランプとクリントンであれば、現時点ではクリントン有利と記しておく。

*1=PACはpolitical action committee(政治行動委員会)の略。スーパーPACは特別行動委員会と呼ばれ、無制限に資金を集めることが許されている。

ZAKZAK記事

11月の米大統領選で共和党の不動産王、ドナルド・トランプ氏(69)は民主党のヒラリー・クリントン前国務長官(68)に勝てるのか? トランプ氏が「スーパーチューズデー」に勝利したことで、米国では早くも本選に目が向かっている。結論を先にいうと、選挙戦の構図からみて打ち負かすことは十分に可能だ。 ■実際には自国批判  暴言王、トランプ氏の発言で誤解されている点は、日本、中国、メキシコを名指ししていることが「他国批判」をしていると受け止められていることだ。  日本人として、米軍による日本防衛のためのカネを払わせろというトランプ氏の主張は非常に不愉快だが、そうした言動の一つ一つが「自国批判」であることに気づけなければ、トランプ現象を見誤る。単なるヘイトスピーチで大衆の心をつかむことはできない。  たとえとして安倍晋三首相(61)について語った昨年8月の南部アラバマ州での演説を挙げる。  「日本は復活した。日本にはアベがいる。彼は本当に賢い。一度会ったことがあるが、頭が切れる人物だった」  中国との貿易不均衡に関する話の流れで日本に触れたトランプ氏はまず安倍首相を持ち上げ、矛先をキャロライン・ケネディ駐日米大使(58)に向ける。  「ケネディ氏はアベたちによってワインに夕食、それから朝食、昼食で接待漬けにされ、彼ら(日本人)の望むことは何でもやるようになった」  もちろん日本企業が米国内に製造拠点を置き、多くの雇用を創出していることや、日本政府が米軍の駐留経費を負担していることなど自らの主張に都合の悪い事実には触れない。トランプ氏の「ビジネスの能力も仕事を成し遂げたこともない人物を使っている」との大使攻撃はオバマ政権のせいで国益を損なっているというメッセージを送ることに主眼が置かれている。

■熱いムーブメント

 トランプ氏が圧勝したネバダ州党員集会の前日、1万人近くを集めた大規模演説会がラスベガスで開かれた。トランプ陣営は外国メディアに取材許可を出さないことが多く、テーマパークのアトラクション待ちのような長蛇の列に並んで会場に入った。トランプ氏がいう「ムーブメント」を実感させられる。

 トランプ氏の支持者で、「Hillary Clinton For Prison」(クリントンを刑務所に)とプリントされたTシャツを着たゲイリー・ウィルソンさん(43)に話を聞いた。「For President」(大統領に)のもじりで、ネット通販で手に入れたのだという。

 「エスタブリッシュメント(主流派)を打ち破れるのはトランプ氏しかいない。不満は中央政府が大きくなり、個人の自由が脅かされていることで、クリントン氏にこの路線を続けさせてはならない。トランプ氏が日本を批判しているって? 米国は世界の警察官ではないのだから、日本も軍を強くして自らを守ったらどうだ」

■アウトサイダーの強み

 オバマ政権の7年間で、共和党支持層3分の2に当たる66%は暮らし向きが良くなっていないと感じている。民主党支持層の71%が良くなったと答えたのとは対照的だ。米ギャラップ社が1月に実施した調査による。

 医療保険制度改革(オバマケア)による中小企業の負担増、不法移民問題、同性婚や人工妊娠中絶などの社会問題…。保守系草の根運動「ティーパーティー」(茶会)に後押しされた共和党の非主流派はオバマ政権を攻撃すると同時に主流派の「弱腰」をたたいてきた。共和、民主両党の二極化は「暮らし向き」をめぐる認識の差として表れている。

 同時に共和党内も主流派、非主流派に二分されたが、2014年中間選挙で上下両院ともに過半数を握りながら、公約したオバマケア廃止などをいまだに実現できていないことに対する支持者の怒りは非主流派のテッド・クルーズ氏(45)にも向けられている。

 ワシントン経験のない完全なアウトサイダーであるトランプ氏の「Make America Great Again」(アメリカを再び偉大にする)というコピーに支持者が飛びつくのは自然な流れだった。

 米国政治は今、小泉構造改革をめぐって自民党が党内抗争を繰り広げた結果、09年衆院選で有権者に民主党の「政権交代」という主張ともいえない言葉が受け入れられた状況と似てきている。この流れは典型的なインサイダーのクリントン氏にはマイナスだ。

 日本として「トランプ大統領」に備えた方がいい。

 (ワシントン支局 加納宏幸)

篠原匡記事

今回の米大統領選において、「3・15」はスーパーチューズデーとして知られる「3・1」以上に重要な一日だった。

 米大統領選における共和党の指名候補として着々と代議員数を積み上げている億万長者の不動産王、ドナルド・トランプ氏。3月14日時点で獲得した代議員は全体の20%に満たないが、15日以降、得票率トップの候補がすべての代議員を得る「勝者総取り方式」の州やそれに準ずる州が相次ぐため、これまでのペースで勝利を重ねれば7月の党大会までに過半数を超えることは確実だ。

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共和党の指名レースでトップを走るドナルド・トランプ氏。オハイオ州は落としたが、フロリダ州はしっかりとキープした(写真:AP/アフロ)

 一方、トランプ氏の指名を是が非でも避けたい共和党主流派にしてみれば、勝者総取り方式の州で対抗馬が勝利しない限り、トランプ氏の過半数獲得を防ぐ手立てはない。それだけに、フロリダ州(代議員数99人)やオハイオ州(同66人)など代議員の数が多い州で勝者総取り方式の予備選が開かれる「3・15」は、共和党主流派にとって剣が峰の一戦に位置づけられた。

 結果はどうだったかと言えば、オハイオ州知事ジョン・ケーシック氏がオハイオ州でトランプ氏に勝利し66人の代議員を獲得した半面、マルコ・ルビオ上院議員は地元フロリダで敗北、トランプ氏に99人の総取りを許した。

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オハイオ州知事のジョン・ケーシック氏は地元での人気を生かして勝利を収めた(写真:AP/アフロ)

 ケーシック氏はこれまでの獲得代議員数では最下位だが、2014年に州知事に再選された際に88郡中86郡で勝利を収めたように地元では抜群の人気を誇る。加えて、保守穏健的な立ち位置や、州知事や下院議員、州議会議員を40年近く務めた経験は共和党主流派にとって理想的なキャリアだ。予備選では低空飛行を続けていたが、オハイオ州の勝利でトランプ氏に対する対抗馬として生き残った。

自身のホームグラウンドであえなく敗退

 一方、主流派の期待を集めたルビオ氏は地元フロリダ州での敗北で「終戦」を迎えた。

 上院議員に当選した2010年以降、大統領選を見据えて若きリーダーというブランドを築き上げたルビオ氏。特に、予備選が始まってからはトランプ氏の独走を止める唯一の存在として共和党主流派の期待を一身に集めた。だが、ディベートで経験不足を露呈した上に、自ら中傷合戦を仕掛けてトランプ氏に叩きのめされるなど最後は自滅した感が強い。全国での遊説を重視して地元フロリダ州を軽視したツケだが、自身のホームグラウンドで政治的に引導を渡された恥辱は想像するに余りある。

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一時は主流派の期待を集めたマルコ・ルビオ上院議員だが、地元での敗北で引導を渡された格好(写真:AP/アフロ)

 最終的に、トランプ氏はオハイオ州でこそ敗北したが、同日予備選が開催されたイリノイ州、ノースカロライナ州、米自治領北マリアナ諸島で勝利、代議員数を積み増した(3月16日午前4時時点)。それでもオハイオ州での勝利を阻止し、トランプ氏の過半数阻止に希望をつないだという意味では、主流派も首の皮一枚でつながっている。

 なぜ共和党主流派がそこまで過半数阻止に血道を上げるのか。それは過半数を阻止しなければ、予備選におけるトランプ氏の勝利を“無効”にする奥の手が使えないからだ。

トランプ氏が7月18日から開催される共和党の全国党大会までに過半数を獲得すれば、トランプ氏は自動的に共和党の大統領候補に指名される。「(誰がなっても支持するという)私の立場は変わっていない」とポール・ライアン下院議長(共和党主流派)が明言しているように、指名獲得や党大会のルールを変えない限り、過半数に達したトランプ氏の指名を阻止することはできない。

 ただ、過半数に満たなければ様々な“策略”が可能になる。

「トランプ氏の成功を骨抜きにする準備している」

 7月の党大会で、大半の代議員は予備選や党員集会の結果に応じて割り当てられた候補者に投票しなければならない。例えば、トランプ氏が1000人の代議員を獲得していたとすれば、その1000人は党大会でトランプ氏に投票する。ただ、この縛りがあるのは1回目の投票だけという州が多く、そういう州の代議員は2回目以降、自由に候補者を選ぶことができるようになる。

 また、誰が州の代議員を決めるのかというところもポイントだ。オハイオ州のように予備選の勝者が代議員のリストを作成する州がある一方で、トランプ氏が50人の代議員を総取りしたサウスカロライナ州は既に代議員が決まっており、名簿づくりにトランプ氏が関与する余地がない。

フロリダ州に反トランプのテレビCMを大量投下したが、トランプ氏を止めることはできなかった。上はいかにトランプ氏が大統領としての品位に欠けるかを表現したCM。放送禁止用語の連続でピー音しか聞こえない

 同様に、党の州組織は主流派が強く、代議員選出プロセスで影響力を行使することが可能だ。「事実、各州の共和党のリーダーは、代議員の選定を通して予備選におけるトランプ氏の成功を骨抜きにする準備を始めている」。最先端のIT(情報技術)やデータ解析、行動心理学などが活用されている選挙の裏側を描いた『The Victory Lab』の著者でコラムニストのサーシャ・イッセンバーグ氏はこう指摘する。

仮にトランプ氏が党大会までに過半数に到達しなければ、決選投票を繰り返す中で主流派が推す候補、例えばケーシック氏が過半数を得る場面が訪れるかもしれない。あるいは、2回目以降は予備選を戦わなかった人間も参加できるようになるため、待望論の強いライアン下院議長が名乗りを上げるというシナリオも囁かれる。

 そうなった時に、指名候補者争いの先頭を走り続けたトランプ氏とその支持者がおとなしく引き下がるかどうかは現時点では分からない。ただ過半数に達していないとはいえ、それに近い数字を得ているであろう候補者をある種の謀議で抹消すれば、共和党も無傷では済まないだろう。ワシントンに対する国民の怒りが深いだけになおさらだ。

11月にトランプ、ヒラリーが消える恐れも

 鉄板と思われていたヒラリー・クリントン前国務長官は、格差解消と政治革命を掲げるバーニー・サンダース上院議員の粘り腰の前に苦戦している。しかも、国務長官時代に機密情報を私的メールサーバーで管理していた問題がいまだ尾を引いており、FBI(米連邦捜査局)に起訴される可能性も残る。現在、トップを走る2人が秋には姿を消しているという事態もジョークではない。

 混沌としている各党の候補者選び。まだまだ波乱が起きそうだ。

高濱賛記事

—大票田フロリダをはじめとする5州で同時に予備選が行われた「ミニ・スーパー・チューズデー」(3月15日)でもトランプ旋風は収まりませんでしたね。

高濱:共和党の候補は5州で367人の代議員数を争いました。これは指名に必要な1237人の約30%に当たります。

 ドナルド・トランプ氏は5戦で3勝1敗(ミズーリ州は16日東部時間午前3時現在で互角)。「勝者総取り方式」をとっているフロリダでは99人を一気に獲得しました。これでトランプ氏が予備選で獲得した代議員数は16日東部時間午前3時現在、621人となり、指名に必要な1237人にあと616人となりました。 (”live March 15 Election Results,” Lily Mihalik, Los Angeles Times, 3/16/2016)

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フロリダ州で勝利を手にし、記者会見に臨んだトランプ氏(写真:ロイター/アフロ)

 共和党保守本流が推してきたマルコ・ルビオ上院議員は必勝を期した地元フロリダでも27%しか得票できず。ミズーリ、ノースカロライナ、オハイオ、イリノイでは、ジョン・ケーシック・オハイオ州知事にも敗れてしまいました。ケーシック氏はもう一人の穏健派で共和党保守本流が推している人物です。ルビオ氏は開票と同時に、予備選から撤退することを表明しました。

 ケーシック氏は地元オハイオで初勝利しました。同州も「勝者総取り方式」を適用しているので代議員66人がすべて同氏の手に入りました。「これで選挙資金が入ってくる。次は(手ごたえを感じている)ペンシルベニア(4月28日)での勝利を目指す」とインタビューに答えています。

 超保守派のテッド・クルーズ上院議員は事前の調査ではミズーリ(代議員数52人)、ノースカロライナ(同72人)、イリノイ(69人)でトランプ氏に迫る勢いでしたが、16日東部時間午前3時現在、互角のミズーリを除いてはトランプ氏の軍門に下りました。しかしクルーズ氏が「ストップ・ザ・トランプ」を実現できる事実上唯一の対抗馬であることに変わりはありません。

トランプに不利に働く「指名推薦人」制度

 共和党保守本流は今後どのように対応するのか。それを占ううえで、重要なのが「Endorsement Primary」(指名推薦人)の動向です。

 これまで紹介した獲得代議員は、一般党員による投票で選ばれた代議員です。ところが、前回お話しした通り、共和党にも「特別代議員」がいます。共和党では「指名推薦人」と呼ばれます。彼らは予備選での投票結果とは関係なく、自分が推薦する候補者に党大会で一票を投ずることができるのです。指名推薦人になるのは党所属の上下両院議員、州知事たちです。

 ニューヨーク・タイムズの選挙予測・分析サイト、「FiveThirtyEight」は候補ごとの「指名推薦人」獲得状況をポイント制で評価して紹介しています。他の代議員に対する影響力か強い上院議員は1人5ポイント、下院議員は1人1ポイント、知事は1人10ポイントで計算します。

 ミニ・スーパー・チューズデー直前までの結果は以下のようでした。  ルビオ上院議員     168ポイント  クルーズ上院議員    50ポイント  ケーシック知事     32ポイント  トランプ氏       29ポイント

 予備選では快進撃を続けるトランプ氏も、獲得した指名推薦人は上院議員が1人、下院議員が4人、知事が2人に留まっています。

 この調査ではルビオ氏がダントツでした。2位はクルーズ氏、3位はケーシック氏。トランプ氏は最下位なのです。

 ところがルビオ氏が撤退して以後、以下のように変わりました。  クルーズ上院議員    52ポイント  ケーシック知事     32ポイント  トランプ氏       29ポイント

 ルビオ氏を推薦していた指名推薦人はなくなり、そのうちの2人がクルーズ氏に回ったようです。ケーシック、トランプ両氏を支持する推薦人の数はまだ変わっていません。 (”The Endorsment Primary,” Aaron Bycoffe, FiveThirtyEight, 3/15/2016)

依然として指名に影響力を持つ党エリートたち

—なぜ、「指名推薦人」のポイントを獲得することが重要なのでしょうか。

高濱:民主、共和の両党とも、大統領候補を指名するプロセスで上下両院議員や知事が強い影響力を持ってきました。一般党員による予備選や党員集会での投票が党外やメディアでも注目されるようになり、一定の力を持ち始めたのは60年代に入ってからのことです。80年以降、党エリートたちの影響力は弱まりましたが、それでも党エリートたちの指名権限は強く、今回も予備選が始まる前から非公開の会合などで特定の候補を推薦する動きがありました。

 党大会までに指名争いの決着がつかなかった場合、党大会が開かれている最中に、党エリートたちが舞台裏で密談して一人の候補に絞り込むわけです。ここでは一般党員はいかんともすることができません。メディアはこれを「Smoke-filled room machinations」(タバコの煙が立ち込める密室での謀議)などと呼んでいます。 (”The Party Decides.” Marty Cohen, David Karol, University of Chicago Press, 2008)

トランプよりも「共和党ブランド」を守る?

—党エリートたちは徹底的にトランプ氏を嫌っていますが、このままいくと、トランプ氏を指名することが一般党員の投票で決まってしまうのではないですか。共和党保守本流はどうしようとしているのですか。

高濱:二つのシナリオが考えられます。

 一つは、トランプ氏の動向にかかわらず、ケーシックとクルーズの両氏らに撤退させず、党大会が開かれる7月18日まで頑張ってもらうという手です。そして党大会の場で指名に関する党規約を修正してしまう。

—そんなことをしたら、「非民主的だ」との理由で一般の米国民の顰蹙を買って、本選挙で民主党候補に負けてしまうのではないでしょうか。

高濱:その公算は大です。しかし、今回は大統領選に負けても、共和党のブランドを守ることの方が長期的には大事と思っている党エリートがいるようです。

 もう一つのシナリオは、目下、第2位のクルーズ氏に一本化することです。ケーシック氏には途中で降りてもらう。そして、クルーズ氏には3月22日のアリゾナ(代議員数58人)、ユタ(同40人)の予備選で圧勝してもらう。

 党保守主流系の「スーパーPAC」は今回のフロリダ州予備選だけで1億5700万ドルを使って、テレビやラジオ、インターネットで「反トランプ」広告を流しました。しかし望む結果は得られませんでした。こうした反トランプ・キャンペーンは今後も続くようです。 (”Why this day changes everything for GOP,” Buck Sexron, CNN, 3/15/2016)

護衛にかかるコストは史上最高

—トランプ氏の発言に猛反対する非共和党員が演説会場に押し寄せて抗議する動きが出ていますね。こうした動きは今後の予備選に影響は与えるのでしょうか。

高濱:オバマ大統領は15日、トランプ氏が行く先々で抗議デモに遭い、抗議する市民と支持者とのいざこざが常態化していることを憂慮し、「トランプ氏のレトリックは下品であり、国を分裂させる以外のなにものでもない」と厳しく批判しています。こうした混乱を招いているのはトランプ氏にあるという見方です。

 米国土安全保障省は、トランプ氏をはじめとするすべての候補者の身辺を警護するため護衛官を派遣しています。今年の警護費用は米大統領選挙史上最高額と言われており、同省は米議会に追加予算を要求しています。予備選が進む中でこれから候補者に何が起こるかわかりません。ある新聞記者は「これもトランプという候補者が出現し、怒りと対立を増幅させているからだ」とコメントしています。