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5/18日経ビジネスオンライン 福島香織『中国は「亜文革」時代に突入した 50年前の「文革」と違うこと、変わらぬこと』について
「五十六朶花」をネットで調べると下記の写真が出てきました。全然垢抜けしていません。北朝鮮と何ら変わりません。所詮自由のない国のイベントです。プロレタリア芸術(芸術ではなくプロパガンダと呼んだ方が正確でしょうけど)とは底が浅いものです。

本記事の下の写真は50年前の文革の様子でしょう。今時「毛沢東語録」を翳す人はいないでしょうから。ただあの当時中国にカラーフィルムがあったのかと吃驚しましたが。
文革時代は親子であっても毛沢東思想を優先し、親が外れた行動をした場合、党に密告することを奨励していました。林彪事件もそうでした。人倫に悖る行為です。独裁国家だからできるのであって、こういう国を理想と思っている左翼の脳の中を見て見たいものです。座標軸が大きく狂っているとしか言いようがありません。
中国は歴史上いつでも権力闘争をしてきました。習と王岐山、習と李克強と敵は沢山います。また、軍の中にも利権にあずかれない不満分子は沢山います。習の暗殺orクーデターもあるかもしれません。日本は米豪印台+ASEANで中国共産党の崩壊に備えなければ。
記事

50年前の「文化大革命」と何が違い、何が変わらないのか(写真:Paolo KOCH/RAPHO/アフロ)
先日の5月16日は文化大革命が開始された、俗に言う5・16通知が政治局会議で可決した日である。この日をもって文化革命小組が改めて組織され、文化大革命という名の大衆を巻き込んだ権力闘争が開始された。ちょうど50年前のことである。
ところで、この50年前の出来事が、過ぎた歴史事件として笑い飛ばせない状況である。2014年10月に文芸工作座談会が行われて以来、習近平夫人の元軍属歌姫・彭麗媛が芸能界を牛耳るようになると、文化・芸能を通じた政治宣伝が活発化した。
とくに習近平の個人崇拝的なものが目立ちはじめ、たとえば今年の春節(旧正月)の大晦日に行われた中国版紅白歌合戦と称される「春節聯歓晩会」などは、もとは庶民の年末の娯楽番組に過ぎなかったのに、あからさまな習近平礼賛色番組になってしまった。
また有名な革命劇「白毛女」が彼女の演出で2015年、3D歌劇として復活上映されると、「紅頭文件(党内部通知文書)」で党幹部たち全員が見るように通達されたりもした。中国の一部知識層の間では2014年秋以降を、プチ文革(亜文革)、彭麗媛の江青(毛沢東夫人、文革を主導した一人)化などとささやかれている。
なので、5月2日に人民大会堂で行われた「五十六朶花」(56フラワーズ)という純国産少女アイドルグループによる“文革コンサート”も、習近平と彭麗媛の仕掛けるプチ文革現象の一端かと思った。だが、どうやら、もう少し複雑な背景がありそうである。
元軍属歌姫と、56フラワーズと
このコンサートの演出、選曲はすべて、文革時代を彷彿とさせるようなものだった。紅衛兵が毛沢東を礼賛するように少女たちが右手を掲げて、「社会主義好!」や「共産党が無ければ新中国はない」といった革命楽曲、「大海航行は舵手に任せよ」といった文革楽曲、果てには習近平総書記に捧げる「肉まん屋」「あなたを何とお呼びすればよいのか」といった楽曲を毛沢東のイラストや習近平の映るニュース映像などをバックに映し出した舞台でオーケストラに合わせて合唱し、踊ったのだから。
このグループ自体は、日本発のAKB48や、AKBをプロデュースした秋元康が手掛けた中国人少女アイドルグループSHN48などに対抗して、文化部傘下の東方文化芸術院宣伝部に属する民間芸能グループとして発足。解放軍芸術学院や中央民族大学付属高校などから16歳~23歳、身長175センチの少女50人以上を集めた世界最大の少女アイドルユニットという。お披露目記者会見のニュースでその姿を初めてみたとき、私もラジオ番組などで話題に取り上げたが、なんともあか抜けず、もっさりした印象を持っている。ちなみにプロデューサーも、入団には顔やスタイル、セクシーさは必要ない、と語っている。
ただ、彼女たちが歌う曲は、デビュー当初から普通のアイドル楽曲ではない。日本の少女アイドルグループと共通するのはミニスカの制服に似た舞台衣装と恋愛禁止、無断外泊禁止のルールぐらいで、歌うのは五星紅旗やオリンピックスタジアムや空母遼寧の映像をバッグにした舞台での革命歌、毛沢東礼賛歌や、彭麗媛の往年のヒット曲「希望の田野の上で」などの、いわゆる共産党礼賛歌ばかりだ。新譜も恋愛やいまどきの少女の気持ちを歌ったものではなく、「習大大(習おじさん)がもし私の家に来たのなら」など習近平や党への賛歌や中国の国威発揚がテーマだ。
一応、民間のグループ、ということになっているが、党の後ろ盾によって、党と国家の宣伝目的に生まれたグループなので、純粋な商業アイドルとは違う。
「文革再現」に非難殺到、主催団体は…
発足当初から、そういう存在であることは周知のはずだったが今年5月2日の人民大会堂コンサートは非難が殺到した。たぶん、「大海航海は舵手に任せよ」といった紅衛兵たちの愛唱歌を紅衛兵そっくりな彼女たちが歌ったことが、文革時代の迫害の凄まじさを覚えている人たちの神経を逆なでたのだろう。
この“文革コンサート”に対し声をあげて糾弾したのは、建国初期の労働相で元全国政治協商委員会・馬文瑞の娘、馬暁力だ。彼女は激怒して「この文革コンサートを誰がやらせたのか徹底調査すべきだ」と中央弁公庁主任の栗戦書に直接手紙を書いた。馬文瑞は習近平の父親の習仲勲と青年時代からの付き合いで陝甘寧辺区および中共中央西北区でともに戦った戦友。文革時期には二人とも厳しい迫害を受けた。
とにかく、紅二代と呼ばれる革命家の娘自身が批判の声をあげたものだから、誰がこんな演出や選曲を考えたのか、と慌ててその責任のなすり合いが起きた。
このコンサートは、中央宣伝部社会主義核心価値観宣伝教育弁公室(社宣弁)、中国国際文化交流センター、中国共産主義青年団中央中華未来の星全国組織委員会、中国歌劇舞劇院が共催となっている。
だが、中央宣伝部側は6日までに香港紙星島日報の取材に対し、社宣弁なんて組織は存在しない、そのようなコンサートに関知していない、と否定。中国歌劇舞劇院は6日、「“中央宣伝部社会主義核心価値宣伝教育弁公室”なるものは虚構で、ウソの情報を提供されてわが院の信用をだまし取られた」と声明を出した。同日、コンサート開催を批准した北京市西城区文化委員会は「コンサート開催を申請した時に決められていたのとは違う、虚構組織の社宣弁が主催団体に付け加えられていた」と発言。一方、56フラワーズ文工団の団長は、メディアに対して、社宣弁についての発言を拒否しつつ「演出に文革宣伝の意図はない」と訴えた。
本当に社宣弁という組織はないのか、というと存在の形跡はある。2015年12月29日に行われた「2016年名人名家迎新年聯歓会」を主催しており、中央政府機関や党委員会の幹部、書画家や著名な毛沢東役者、周恩来役者らが出席している、と中国の「捜狐」サイトにある。また2016年1月24日、「責任天下公益春晩」活動を主催し、新華社や光明ネットなどの公式メディアも宣伝に参加している。ただ、ネットに出回っている社宣弁の名前が付いた「紅頭文件」(党の通知文書)を見ると、社宣弁の所在地は、長安街のホテルになっており、そのホテルの従業員はその弁公室の存在を知らないという。
そうした話を総合すると、いかにも中央宣伝部傘下の機関風の名前を騙った組織が何者かによって作られ、こうした文革式習近平個人崇拝宣伝を狙ったイベントを仕掛けている、という見方もできる。香港明報によれば中央宣伝部下の常設機関ではないが、確かに中央宣伝部管轄下にあるという証言もある。チケット代が最高2000元以上と高額なので、何者かがコネを利用した営利目的組織というセンもある。
「ほめ殺し」で逆襲
だが、普通に考えれば、これは権力闘争の文脈で考える方が腑に落ちる。というのも、今年に入ってから中央宣伝部がらみの奇妙な事件が相次いでいるからだ。
まず、2月19日に始まった習近平の「メディアの姓は党」キャンペーン、それを批判する王岐山の親友の不動産王、任志強に対するバッシング、王岐山の中央宣伝部に対するがさ入れとそれに伴う任志強バッシングの停止、俗にいう“十日文革”事件があった。
これに関してはこのコラム「習近平は『十日文革』で“友達”を失った」で書いたとおり、習近平、王岐山、中央宣伝部の間の複雑な権力闘争が起きていると見られる。任志強は結局、一年の観察処分を受けて現在、その発言は封印されている。
香港のゴシップ誌『内幕』などは、中央宣伝部内部から得た情報をもとに、習近平の中央宣伝部支配に、劉雲山(政治局常務委員、思想宣伝担当)や中央宣伝部長の劉奇葆は抵抗しており、この二人を排除するために中央宣伝部の全面整理を行うつもりでいる、という。これに対し劉雲山、劉奇葆は習近平の個人崇拝キャンペーンに乗ると見せかけて、過剰に習近平を礼賛することで、習近平のブラックな独裁イメージを文革の記憶生々しい国民に印象づける「ほめ殺し」作戦に出ている、と分析している。
こういう中央宣伝部の“陰謀”に気づいたので、もともと習近平が自分で気に入って流行らせた「習大大」(習ダディ)という愛称も急に使用禁止にしたのだという。4月に安徽省合肥市の視察先での知識人・労働模範・青年座談会、続く北京市でのネット安全と情報化工作座談会で、「知識人の意見に偏見があり正確でなくとも、言葉尻をとらえてプラカードを首から下げさせてはいけない」「国家政策に対する善意の批判は受け入れる」といった発言を繰り返したのも、中央宣伝部によるイメージダウンを回復するための発言とも考えられる。
独裁、個人崇拝に大衆踊らず
だが、一部で流れているように習近平は、本当は「個人崇拝」など望んでいないのであり、あたかも江沢民派や劉雲山による高度な情報戦にはまって、独裁者のように仕立てられている、というのもにわかに信じがたい話だ。むしろ、そういう陰謀論があるようにふるまうことで、習近平のやり方に批判的な体制内知識人を煙にまこうとしている可能性もあるだろうし、政敵の劉雲山や劉奇葆を罠にはめて失脚させようという魂胆があるかもしれない。とにかく、中国人は日本人にはついていけないような複雑で高度な情報戦によって自分に有利な世論形成を行うことに慣れている。
私の見立てでは、習近平はやはり独裁志向の強い人間で、自分の意志で、個人崇拝キャンペーンを進めていたのであろう、と考えている。当初は、メディアと記者コントロールを強化し、そのキャンペーンに動員し、大衆を巻き込んで支持を得て権力闘争を勝ち抜くつもりであった。最終的には香港・亜州週刊など一部で報じられているように、政治局常務委員会制度と定年制を廃止し、集団指導体制(寡頭独裁)から習近平独裁体制を打ち立てるつもりではないか。
だがある時点を境に、その個人崇拝キャンペーンに巻き込まれるはずの大衆がついてこなくなった。一つは経済の悪化により労働争議が頻発し、動労者といった基層民の習近平に対する支持がむしろ不満に変わってきた。習近平に漠然と「隠れ改革派」であることを期待していた知識人が、個人崇拝キャンペーンを見てついにその期待が叶わないことを悟りはじめた。習近平の盟友であったはずの王岐山も、さすがにうんざりしてきたので、「千人諾諾 不如一士諤諤」(千人がグダグダいうより直言の士の方がよい)と、習近平に批判を受け入れるよう諭す社説を中央規律検察委の機関紙に掲載したのではないだろうか。
そこを、中央宣伝部に狙われて、任志強バッシングや習近平の引退勧告文「倒習文」がオフィシャルニュースサイトに掲載される、といった事件が続いたのではないか。
50年後の大衆動員式権力闘争の行方
党中央は今年、いかなる文革に関するイベントも禁止することを通達しているので、この56フラワーズコンサートは、確かに規律違反と判断される可能性がある。すでに習近平の大番頭たる栗戦書が、中央宣伝部と文化部に真相の徹底調査を命じているという。だが、その調査結果によって、権力闘争の結果を知ることはできるが、真相は知ることができまい。
50年前に発動された文革のように、若者の武闘、批闘も、リンチ、虐殺も起きていないが、文芸やメディアを使い、キャンペーンによるイメージ操作で、世論を味方につけたり敵に回したりして政敵を失脚させていく大衆動員式権力闘争が展開されている、という意味で、やはり今の中国は「亜文革」と呼ぶべき時代に来ているのではないかと思う。
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5/18日経『アジア安保 台湾が変数に』、日経電子版 中沢克二『習主席悩ます台湾「天然独」』について
5/20本日は蔡英文台湾民進党党首の総統就任の日です。Facebookの記事からApple Dailyの記事がありましたので紹介します。蔡総統は元総統の陳水扁氏を国主催の宴(パーテイ)に招待しましたが、陳氏は妻の収賄で服役、自宅療養をしていて、結論は医療団の判断によるというもの。
逮捕・収監は中国人の中国国民党の嫌がらせですが(中国人は収賄は当り前)、陳氏は中国人と同じレベルまで下げる必要はありませんでした。

?#一個不要錢的擁抱阿扁勝過台灣魂千言萬語?保外就醫中的前總統陳水扁接獲蔡英文總統520國宴邀請函,昨引起能否參加爭議,不過今天陳致中又在臉書貼文,除感謝高雄市長陳菊受訪表示「邀請卸任總統出席國宴是很自然的事情」,也貼出今年6月4日凱達格蘭基金會將舉辦11周年阿扁總統感恩餐會,要寄送給陳菊的邀請函,邀請函上有大張陳水扁黑白照,顯示這場活動對陳水扁的重要性。事實上,昨陳水扁總統的醫療團隊就指出,與520國宴是蔡英文總統的主場,扁參加可能會有無法預期的壓力,下個月他一手創辦的凱達格蘭基金會,可説是阿扁總統的「主場」活動,若能親自出席面對眾多擁戴他的支持者,會對釋放他現有的創傷後壓力症候群更有幫助。
對是否參加凱達格蘭基金會周年感恩餐會,陳致中今受訪時説,「有關行程部分,作法上會由醫療團隊視醫療計劃來整體安排。」並強調醫療團隊都認為,「只要該活動的情境上有利於總統創傷壓力症候群等病情的恢復與治療,他們都贊成去參與。因為治療是全方位,不只是藥物,物理,復健,也包括社區互動,人際關係,情境治療等。」對台中監獄屢表反對意見,陳致中認為,「考量這件事情的點應該不是保外醫治的本身,因為醫療如何進行本來就應該尊重專業意見。」事實上現有法令也未規定保外就醫期間參加餐會等活動,會被取消保外資格。至於是否參加520國宴,陳致中説,今天稍晚與醫療團隊討論後才能決定。
Source #蘋果日報
次はレコードチャイナの記事。
http://www.recordchina.co.jp/a138939.html
中国の軍事膨張を許してきたのは間違いなくアメリカです。ソ連を敵と見て、敵の敵は味方とばかりに支援して「怪物」を作りました。経済を支援してきた日本も同罪です。中国は賄賂の配り方がスマートで、日米の政治家にはいろんな人に多額の金がばら撒かれていると思います。最たるものはキッシンジャーでしょう。ピルズベリーにも行っていたかも知れません。英国のオズボーンはハニーにかかったと小生は見ています。証拠はありませんが。証拠が残るようでは一流の工作とは言えません。橋龍やマードックの相手は二流なのでしょう。
蔡英文総統は「92共識(コンセンサス)」も「一中原則」も就任演説で認めることはないでしょう。「92共識(コンセンサス)」は国民党と中国共産党のでっち上げですし、「一中原則」は「一つの中国=中華人民共和国で台湾とは関係ない」というのであれば当然と言えば当然ですが、中国共産党と国民党の解釈は「中国は一つであることを認め、解釈は大陸、台湾それぞれがする」という、台湾は中国の一部という前提の代物。ルーツを辿れば、中国大陸から来た人は沢山いるでしょう。日本だって徐福伝説があるくらいですから。シンガポールの人口の8割は華僑です。彼らも中国の一部ですかと言いたい。フィリピンのドウテルテ新大統領も華僑の末裔です。何故中国と一緒にならないといけないのか理由が分かりません。それなら、チベットやウイグル、朝鮮族は違う民族なので領土は返すべきです。清国の版図は漢民族の版図と言うのも分かりにくい話です。当時「清国奴」(=清国の奴隷=漢人)で「チャンコロ」と言われていたくらいですから。

これを見ますと、モンゴルもシベリアの一部も入っていますから、奪いに行く可能性もあります。まず人民を入植することから始めるでしょう。日本も外国人(特に中華・小中華)の安易な入国や民泊を許してはなりません。日本の官僚は危機意識が低すぎます。
「天然独」=台湾就是台湾、台湾不是中国と言うのが当たり前という意味です。228事件を引き起こした国民党(外省人=中国人)が台湾の政治の土着化を嫌うのであれば、大陸に帰れば良いでしょう。日本の在日も朝鮮半島に帰れば良い。住んでいる土地を愛することができない外国人は祖国に帰って貰った方が良い。
蔡総統は就任演説で「米日との連携」、経済だけでなく安全保障面でもと考えています。
日経記事

アジアの地政学地図にとって、台湾が新たな「変数」になりそうだ。8年間にわたり中国に融和的な路線をとってきたが、今月20日、独立を志向する民進党政権に代わるからだ。安全保障におよぼす影響を、日米がじっと注視している。
米国防総省が毎年、発表している中国の軍事力に関する報告書。今月13日に公表した2016年版で、台湾の防衛力をめぐる記述が変わった。
「中国軍の侵攻を抑えるため、台湾がこれまで確保してきた多くの優位性が揺らぎ、崩れようとしている」
冒頭でまずこう警告し、中国軍の水陸両用作戦力がどれほど強まっているか、特集面を設けて解説した。
この報告書はホワイトハウスも草案を精査し、承認したという。中台の軍事バランスが中国側に傾いていることを、米政権全体が危惧していることの表れだ。
台湾は08年に発足した馬英九政権の下、対中融和を進めてきた。米国防総省によると、台湾の軍事予算はこの間、国内総生産(GDP)の約2%に下がり、中国との差は約14倍に広がった。
台湾を自国の一部とみなす中国は、台湾海峡を「内海」にするねらいだ。それを許せば、東シナ海や南シナ海にも影響がおよぶ。中国の反発を浴びながら、台湾の防衛力をテコ入れしてきた米国は、いら立ちを深める。
米国防総省の元高官は、米政府内の空気をこう明かす。「中国が軍拡しているのに、台湾は自助努力をしない。これでは助けようがない」
3月下旬、日米台、東南アジアの識者らが集まった非公開のシンポジウムでも、台湾の安保に悲観的な分析が相次いだ。特に、衝撃的だったのが、中国のサイバー戦に関する報告だった。
「中国は台湾専門の8つのサイバー部隊を設け、攻勢を強めている。台湾中枢部の情報もかなり、中国側に抜き取られている」
こうしたなか、民進党の蔡英文・次期政権が20日に発足する。蔡氏は中台の安定した共存をめざしているが、馬政権とは異なり、中国と距離を置くとみられる。
中国にのみ込まれないよう、軍事力の立て直しも急ぐ構えだ。蔡氏のブレーンは語る。「防衛予算をGDPの3%に増やす。国防産業の育成にも力を入れ、国産の潜水艦建造もめざす」
台湾が本気でこれを実行すれば、アジアの地政学地図も変わる。複数の日本の安保担当者は、こんな分析を示す。
台湾が対中融和の路線をとっていたため、中国軍は台湾海峡をまったく心配せず、東シナ海や南シナ海への進出に力を注げた。だが、台湾が防衛強化に動けば、こうした負の構図が改まる、という読みだ。
「蔡政権」になれば、ぎくしゃくしてきた日台の雪解けも進みそうだ。対中融和の馬政権は従軍慰安婦など歴史問題で、日本に厳しかった。台湾も領有権を主張する尖閣諸島問題では、中国と共闘するのでは、という観測すら流れた。
政権交代を控え、すでに民進党が多数派をしめる台湾の立法院(国会に相当)は今月6日、日本との交流を進める超党派議連を旗揚げした。蔡氏側近からは尖閣問題で、中国とは共闘しないとの声も聞かれる。
もっとも、台湾が独立路線に傾けば、中国が猛反発し、アジアの緊張は一気に高まる。日本は台湾に対中けん制の役目は期待しても、紛争の種をまいてほしくはない。そこは米国も同じだ。
米政府ブレーンによると、米国は蔡氏側近に対し、独立論をあおらず、「現状維持」に努めるよう、非公式なルートで働きかけている。
蔡氏もこの点は分かっており、過激な独立路線には走らない意向という。ただ「民進党支持者の独立論をどこまで抑えられるかはわからない」(民進党幹部)。
日本と目と鼻の先にある台湾の政権交代。これがアジアの安定につながるか、新たな「地雷」になるかは、蔡氏のかじ取りで変わる。
(編集委員 秋田浩之)
電子版記事
「習近平(中国国家)主席には、台湾問題は自分の得意分野だという自信があったのだろう。だからこそ油断が生まれ、うまくいかなかったのかもしれない」。中国共産党内から聞こえる声なき声である。
習近平は、30代前半から40代後半にかけて16年以上も台湾の対岸にある福建省で政治家としての経験を積んだ。いわば第2の故郷である。最後は省のナンバー2である省長として台湾資本を福建省に引き入れる仕事を担った。
■習と台湾企業の深い関係
その目標は遠大だ。中台統一への第一歩として、資金力とともに政治上の影響力を持つ「台商」(台湾の有力企業家ら)を福建省に招き入れる「統一戦線工作」である。その経験から、習は台湾問題には誰よりも詳しいと自負しているはずだ。
証拠が手元に残っている。1999年、代理省長に就いたばかりの習は、福建省で日本経済新聞などのインタビューに応じた。まだ46歳の若さだった。当時は、台湾総統だった李登輝が中国と台湾に関して「特殊な国と国の関係」とする「二国論」を提起した直後。中台関係は大揺れだった。

1999年、福建省で日本経済新聞などのインタビューに応じた当時の福建省長代理、習近平氏
習はまず、李登輝について「でたらめばかり」と激しく非難した。一方で「台湾からの投資者は既に福建省に相当な基礎を作った。彼らは統一を信じており、逆流させることなどできない」と言い切った。
今や、台湾経済は、世界第2位の経済大国になった中国にかなり依存している。中台融和へ道筋を付けるのに貢献したという自信があったからこそ、習は昨年11月、シンガポールで国民党の馬英九との歴史的な中台首脳会談にも踏み切った。
周囲がお膳立てしたのではない。一部にあった慎重論を抑えて、習が自ら主導したトップ会談である。その効果は中国の期待を大きく裏切るものだった。上手の手から水が漏る――。これが習の心境だろう。
「中国にすり寄り過ぎ」。台湾の人々が抱いた不安は、国民党離れを加速する。さらに、「天然独」と呼ばれる勢力を勢いづかせ、1月の総統選で中国と距離を置く民進党の蔡英文大勝をアシストする思わぬ結果になった。
当然、中国共産党の内部でも批判が出た。通常、中国共産党は対外政策、台湾政策などでは「一枚岩」という姿勢をとる。万が一にも敵を利することのないように、である。しかし、それは当然、表向きの話だ。今回の場合、内部での声なき批判が、思わぬところで表に出てしまった。
それが、先にこのコラムで紹介した中国のインターネット新聞「無界新聞」を巡る事件だ。習に党と国家の職務から辞任するよう要求する檄文(げきぶん)が、ネット上に掲載されてしまったという前代未聞の大事件である。そこでは習の“罪状”として台湾政策の失敗まで挙げられている。
「香港、マカオ、台湾問題の処理では、鄧小平同志の英明な『一国二制度』構想を尊重しなかったため、民進党が台湾の政権を得るのを許し、香港で独立勢力の台頭を招いた」
痛いところを突いている。まさに党内の「開放派」「開明派」が抱いている不満である。かくも中国の権力闘争は激しい。集権に成功した習だったが、台湾問題でこんなに悩むことになるとは思いも寄らなかっただろう。
■威圧効かない「天然独」
台湾政局のキーワードとなっている「天然独」とはなにか。生まれながらの独立派。台湾は自然に独立しており、改めて言う必要さえない、と考える若い世代を指す。年齢層としては、30歳未満が主流だ。2014年、経済面での中国への過度の依存に反対して、立法院(国会に相当)を占拠した「ひまわり学生運動」の主役らである。
彼らは中国の武力行使を招きかねない「独立」を声高に叫ぶのではなく、台湾の現状を追認する。新思考の“穏健派”でもある。とはいえ生まれ育った台湾への愛着は強く、信念は固い。中国共産党は、はるかに遠い存在だ。

2015年10月の訪日時には蔡英文氏と安倍晋三首相の「密会」が取り沙汰された(自民党本部で)
だからこそ、旧来型の発想しかない中国は対処に困っている。結局、「一つの中国」という共通認識を得たと中国が主張する「92年コンセンサス」を認めるよう新総統、蔡英文に迫るぐらいしか手がない。
「認めないのなら、両岸(中台)関係は基礎が崩れ、地が動き、山が揺れる」
習もかつてこう述べたことがある。台湾への武力行使まで臭わせる脅しだ。トップ自ら威圧の言葉を吐いたにもかかわらず、「天然独」への圧力にはならず、かえって逆効果だった。
台湾政界では、既に「天然独」を直接のバックとする新政党「時代力量」が台頭している。先の立法委員(国会議員に相当)選挙では5議席を獲て、民進党、国民党に続く勢力に躍り出た。
「今後の台湾政局のカギを握るのは、ひまわり学生運動を担った『天然独』世代の動きであり、その勢いを吸収し重要な存在になっているのは、黄國昌氏が率いる新政党『時代力量』だろう」
台湾政治、中台関係に詳しい中央研究院(台湾総統府傘下の有力シンクタンク)の林泉忠は分析する。「天然独」は5月20日の蔡英文・新総統就任式の隠れた主役である。
今回の総統選で民進党躍進の原動力にもなった「天然独」が、今後の選挙でどんな行動をするのかは読めない。蔡英文も対中関係を考える際、「天然独」の動向を常に気にすることになる。
■「雨傘」と「ひまわり」の落差
ここで問題となるのが香港の現状である。2014年、香港のトップを選ぶ直接選挙の手法を巡って盛り上がった学生中心の「雨傘運動」。それは中国によって事実上、潰された。台湾の「ひまわり学生運動」が既に政治的な力を得たのとは対照的だ。

中国との過度な接近を警戒する学生たちが立法院(国会に相当)を占拠した「ひまわり学生運動」(2014年4月6日、台北市)=AP
その経緯をつぶさに見てきた台湾の「天然独」は、中国が台湾統一に向けて口にする「一国二制度」を信じるはずがない。中国の強権的なイメージが「天然独」の広がりを後押しするという皮肉な結果を生んでいる。これは今後の中台関係、そしてそれが跳ね返る形で米台関係にも影響する。
「天然独」の存在は、日台関係にも無関係ではない。蔡英文は昨秋の訪日の際、あえて首相の安倍晋三との密会が流布されるような行動を取り、その故郷、山口県まで訪れた。安倍政権、日本との近さを演出する戦略は、先の台湾総統選でも一定の効果があった。
現状を分析するなら「天然独」は、日本に比較的、よいイメージを抱いている。しかし、これから先もそうなのかは不明だ。
台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業がシャープを買収するなど日台の経済関係は強まりつつある。経済を軸に日台関係を一段と進化させるには、日本も「天然独」の動向を注視する必要がある。(敬称略)
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小原 凡司著『世界を威嚇する軍事大国・中国の正体』、5/16日経電子版 高坂哲郎『戦時にはひとたまりもない南シナ海の中国「人工島」』について
5/16産経ニュースは<日米印が6月に沖縄周辺で共同訓練し中国を牽制へ 米国は原子力空母も投入>
http://www.sankei.com/politics/news/160516/plt1605160004-n1.html
同じく5/16産経ニュース<オバマ大統領の広島訪問を喜んでばかりもいられない…中国は「核兵器の先行使用」を密かに決めていた!>
http://www.sankei.com/premium/news/160516/prm1605160004-n1.html
中国はオバマ米国の優柔不断に付け込み、好き勝手やってきました。トランプも愚かなことに中国の驕りを助長するような発言(在日米軍撤退、在韓米軍撤退、中国の行動をきっかけに米国が第3次大戦を始める考えはない等)をしています。コンドリーザ・ライスが副大統領になり、レクチャーを受ければ変わるかもしれませんが。上記産経の野口記者の書いている通り、中国の最大の敵国は米国で、その覇権をもぎ取ろうとしているということを理解しなければ。
野口氏の書いた「その南シナ海は、海上軍事基地で海上・航空優勢を押えれば、東部海域にSSBNを潜ませる「中国の聖海域」と成る危険を伴う。米本土を完全に射程内に収める将来の改良型潜水艦発射核ミサイルの最大の標的が、米国である危機をご存じないようだ。」というのは小原氏の言う「南シナ海を太平洋の出口とするために是非ともそこを軍事基地化しておきたい。東シナ海は日本と米軍の潜水艦に簡単に捕捉されるので。太平洋に出れれば今でも米大陸を射程8000kmのミサイル搭載の潜水艦から核攻撃できるようになる」ということです。米ロの潜水艦はお互いの海を自由に行き来しているのかもしれませんが、MAD(相互確証破壊)の論理が働いているのかもしれません。同じキリスト教でもあるし。毛沢東はポンピドーとの遣り取りで、『ポンピドー「ソ連からICBMを大量に輸入しているようだがアメリカと戦争する気ですか?」、毛沢東「戦争になったら私たちは水爆の使用も辞さない」、ポンピドー「そんなことしたら中国人もたくさん死にますよ」、毛沢東「人口が多いので二~三千万人ぐらい死んでも構わない」』と言った前科があるし、台湾有事にも米国に核を先制使用すると脅迫する有様ですから。殆どキチガイのレベルですが。やはり米国はどこかの段階で鉄槌を下す必要があるのでは。チエンバレンの宥和政策は不幸な結末を迎えました。大戦になる前に手を打たないと。先ず経済制裁、次には海上封鎖でしょう。
本の内容中、「「中国の夢」の本当の意味は、中国が世界のGDPの4分の1を占めることだという。これは、過去の中国の王朝が達成したものだともいう。彼は明示しなかったが、過去の王朝とは明朝のことだ。」とありますが、明朝でなく清朝ではないかと思われます。中国人は満州族の清朝より漢民族の明朝を誇りたいのでしょうけど、中国大陸で最大の版図を誇ったのは清朝ですから。(大元時代を除く)。人口と土地面積でGDPは決まるでしょうから。
http://matome.naver.jp/odai/2135484685815433301
http://shahr.exblog.jp/5258673
人民解放軍の歌舞団(北朝鮮の喜び組みたいなもの)は高級幹部の愛人を出しているというくだりがありますが、軍の研修施設の中には慰安婦が居て兵士の相手、或は一般人も相手することができるようになっています。改革開放で、軍が自由に商売に手を出せるようになり、腐敗も進みました。兵器の横流しもそうですし、職位と金の交換である権銭交易も盛んになりました。「張り子の虎」と言われる所以です。が、「悲観的に準備し、楽観的に対処」が危機管理の要諦です。防備はおさおさ怠りなく。
本の内容
P.37~45
- 習近平は人民解放軍の土着化を恐れている
中国人民解放軍が、2014年7月から行った演習では、8月15日までの間、上海や浙江省杭州など沿岸部を中心とする12ヵ所の空港で発着フライト数を25%削減するよう要求したことから、演習の規模が大きく、高度な内容を伴うものであったのではないかという分析もあった。 しかし、実際のところ、人民解放軍各部隊が行ったのは、地元を離れて別の訓練場に行って射撃等の訓練を行うというものであった。
射撃訓練自体は、基礎的な訓練である。決して難しい応用訓練を行ったわけではない。では何が重要だったのかというと、地元を離れるということだったのだ。それほど、人民解放軍の各部隊は土着化していたということである。各部隊が土着化してしまったのでは、各地域においてゲリラ戦を展開することはできるかもしれないが、他国から攻撃があった際に、中国本土防衛のために陸軍全体として対応することはできない。
さらに、土着化するということは、地方の有力者と癒着しやすくなるということでもある。 実際、習近平が潰した薄熙来は、2個集団軍を掌中に収めていると豪語していた。成都軍区には第13集団軍と第14集団軍の2個集団軍があるが、薄熙来は、成都軍区を掌握していると言っていたのである。薄熙来は、当時、重慶市党委員会書記、すなわち重慶市のトップであった。
また、中央が地方のトップを拘束する際、まずその地方の軍隊、武装警察等の指揮官や政治委員の首をすげ替えるが、これも地方の軍の部隊や警察が、その地方のボスに掌握されていることを示すものだ。中国中央の権威とはその程度のものなのだとも言える。
- 人民解放軍30万人削減のほとんどが文職
現在の中同人民解放軍陸軍全体は170万人、その内、戦闘部隊は155万人を擁し、85万人の機動部隊と70万人の地方守備部隊から構成される。中国陸軍は、仝体で18個の集団軍を有しており、これが、7大軍区にそれぞれ配置されているのである。集団軍は、歩兵、機甲、砲兵、高射、工兵、電子戦それぞれの部隊を有しており、第13集団軍の人員は4万5000人、 第14集団軍の人員は4万人とされる。
ちなみに、習近平は、軍事パレードにおけるスピーチの中で「人民解放軍の人員の30万人削減」を明らかにしたが、このほとんどが文職であると言われる。文職とは、戦闘には参加しない軍人で、歌や踊り、あるいは映画といった、主として文化や芸能活動に携わる軍人も含まれている。
中国には、各軍区にも、賓各をもてなすための「歌舞団」があり、歌手やダンサー、さらには雑技を行う人員を擁している。この中には、大童の美女も含まれていて、過去には、軍の高級幹部の愛人も多く輩出している。こう した文職について、習近平は、いち早く縮小するよう命じている。自身の夫人である彭麗媛.少将が、人民解放軍総政治部歌舞団団長であり、文職軍人の大ボスであるにもかかわらず、である。
習近平が、陸軍の土着化に危機感を抱いているのは、2015午の『国防白書』にも見て取れる。「陸軍は、小型化•機動化を進める」としているのだ。一般に、中国陸軍は精鋭化を進めると言われるが、それは、これからスリム化して、中国陸軍として中国全土で戦闘できる状態にする、という意味である。
- 7大軍区の統廃合と合同作戦司令部の設立
中国人民解放軍には、具体的な計画もある。軍区の改編と合同作戦司令部の設立だ。これらの計画を最初に報じたのは日本のメディアである。2014年1月1日付の読売新聞は中国軍の制度改革案を報じている。現在の7大軍区を5大戦区に改変。さらに陸軍、海軍、空軍、第二砲兵部隊(戦略ミサイル部隊)の4軍種を統合する合同作戦司令部が設立されるとの内容だった。合同作戦司令部とは、統合作戦を指揮する司令部である。
中国国防部は中国英字紙『チヤイナデイリー』の取材に答え、合同作戦司令部設立を大筋で認めた。合同作戦司令部は情報時代に対応したもので、すでに試行業務に着手しているという。ただし正式な改組がいつになるかは未定だという。軍区から戦区への改変案についてはコメ トしていない。
しかし、この後、中国では、合同作戦司令部の設立計画を否定する報道も見られた。これらの記事によれば、2013年11月に北京で開催された中国共産党18期三中全会において、「軍隊の体制編制の調整改革を進化させなければならない」と公言されたことが、合同作戦司令部設立計画が取り沙汰される原因になったとされるが、実際に、統合作戦が重要であることは人民解放軍自身も認めている。
合同作戦司令部の設立や、7大軍区から4〜5戦区への改編については、土着化した人民解放軍各指揮官や各部隊から不満の声も上がるだろう。不満の声を表面上は抑え込んでも、不満は陸軍の中にたまり続ける。不満の圧力が高くなることは危険なのだ。習近平指導部は、部隊の不満を軽減しながら、陸軍の改編を進めなければならないのである。
中国はもちろん、米国の中国本土攻撃を想定して、装備品を調達し作戦計画を立てていると言うだろう。しかし、実際のところ、これまでの中国人民解放軍は、本気で戦争する気はなかったように見受けられる。各部隊は、自らの懐を肥やすことに邁進し、自らの権益を守るために、地方の権力者とそれぞれに結びついていたのだ。
中国人民解放軍という統一された名酋がありながら、各軍区や各部隊は、地方の権力者が向く方向に、同様に向いていたのだ。たとえ、党中央からの命令があったとしても、地方の権力者の意向に従ったのである。2006年に失脚した上海党委書記(上海のトップ)陳良宇や、 薄熙来の事案を見ても、中国共産党中央が、地元の軍や武装警察、警察等が、地方の権力者の意のままに動くことを警戒していたことがわかる。
そして、中国人民解放軍の改編がいよいよ実施される。習近平が、北京で2015年11月26日に閉幕した中央軍事委員会改革工作会議において、1949年の新中国成立以来初めてとなる軍の大規模改革に着手すると表明したのだ。米軍をモデルに、縦割りの弊害が指摘されていた命令系統を集約する「統合作戦指揮体制」を本格導入するという。
国営新華社通信は、習近平が24日から開かれた同会議において、「軍の最高指揮権は共産党 中央、軍事委員会に集中させる」と強調するとともに、「統合作戦指揮体制の構築を進め、戦闘力を高めるため部隊の規模.編成を見直し、量から質の重視へ転換する」と述べたと報じた。また、習主席が、これを「革命的な改革だ」とし、「2020年までに改革を反映した体制も 確立させる方針を示した」とも報じている。
地方の指導者との癒着の原因ともなっていた、軍区の再編にも取り組む。中国では、2015年に入ってから、人民解放軍の改革に関わる噂が多く聞かれた。先述の中央軍事委員会改革工作会議における「重要講話」において習近平は、「(軍区に替えて)新たに戦区を設定し、戦区統合作戦指揮機構を構築する」と述べたのである。
作戦指揮系統は大きく変わる。「中央軍事委員会—戦区-部隊の作戦指揮体系と政治委員—軍種(陸・海・空・ロケット軍)-部隊の指導管理体系」という指揮系統だ。中央軍事委員会は、総参謀部を通さず、戦区を直接指揮する。また、戦区の作戦は統合作戦になる。戦区統合作戦指揮機構は、いわゆる、統合作戦司令部であろう。人民解放軍全体に対する統合作戦司令部ではなく、戦区ごとに統合作戦が行われ、それぞれの戦区は、中央軍事委員会が直接指揮するのだ。その中央軍事委員会の主席が習近平である。
中央軍事委員会が、2016年1月1日に公表した、「国防と軍隊改革の深化に関する意見」 によれば、人民解放軍改革の原則は、「中央軍事委員会がすべてを管理し、戦区は戦闘し、軍種は建設する」であるという。自衛隊でも採用されている、フォース・ユーザーとフォース・プロバイダの明確化である。フォース・ユーザーとは、部隊(力)を使用する、すなわち作戦指揮の系統であり、戦闘の指揮系統でもある。フォース•プロバイダとは、戦闘能力を有した部隊(力)を建設(人員、武器装備)して、フォース・ユーザーに提供するものだ。陸、海、空、 ロケット軍(新設)の4軍種は、主として部隊建設を担い、原則として作戦指揮の系統には入らないということである。
一方で、7大軍区をいくつの戦区に改編するのかは、2016年1月10日現在、まだ明確に示されていない。2015年に飛び交った情報では「4戦区になる」と言われていたが、同年 12月には、「4戦区の予定であったが、国防の観点から5戦区の区分が最良とされた」という報道等も出始めた。国防の観点もさることながら、戦区の区分が、これまでの既得権益と衝突するために、難航しているのかもしれない。
さらに、総参謀部、総政治部、総後勤部、総装備部の4総部の統廃合も行われる。人民解放軍の中でも、腐敗の温床となっていたのが、装備部と後勤部、特に、不動産を扱う後勤部である。4総部の権限を制限し、党中央および中央軍事委員会の管理を強化して、人民解放軍の腐敗を根絶しようというのだ。人民解放軍の改革により、4総部は廃止され、中国中央軍事委員会の言う「実行多部門制」に移行する。4総部が持っていたそれぞれの機能は、いくつもの部門に細分化され、純粋に参謀組織として中央軍事委員会を補佐することになる。4総部が持っていた権限は、すべて中央軍事委員会に吸い上げられるのだ。
こうした改編が実施されれば、中国人民解放軍の運用が効率化され作戦能力が向上する可能 性がある。また、これまで、不満や反発を恐れて実施されてこなかった改編が行われるということ自体、習近平の軍の掌握が進んでいることを示すものでもある。

P.49~52
- 中国海軍はどのような戦略的目標で動いているのか
海軍は、「『近海防御』から『近海防御と遠海保護の結合型』への転換」が求められている。近海防御は、1980年代から、中国海軍の父とも呼ばれる劉華清が指示してきたものだ。中国海軍の定義によれば、近海とは、第1列島線内外までの海域を指している。この海域には、西太平洋の一部も含まれる。中国の本土防衛に直接関わる部分だ。
一方の遠海保護は、中国の経済活動の拡大に伴って、社会経済の発展を保障するために、世 界規模で戦略的任務を遂行するものである。こちらは主として軍事プレゼンスによるものだ。すでに、中国海軍は、ソマリア沖アデン湾において、海賊対処活動に参加し、これを足掛かりに、ヨーロッバ諸国に親善訪問を実施し、地中海において中ロ海軍共同演習も実施している。
海軍運用の二分化が、国防白書にも明記された形である。中国の本土防衛とともに世界各地に空母戦闘群を展開するために、引き続き、多くの予算が配分されることになる。ちなみに、米海軍では空母戦闘群と呼ぶのを止め、空母打撃群と呼んでいるが、中国では未だ空母戦闘群という呼称が用いられることもある。
この海軍運用の二分化は、中国の海洋に対する認識に、矛盾を引き起こしているように見受けられる。中国は、本土防衛のために、南シナ海で見られるような海域の囲い込みを行い、「海洋領土」という表現さえ用いる。開かれた海洋の利用こそ国益である海洋国家なら用いない表現である。しかし、一方で、中国は経済活動を世界に広げ、これを保護するために海軍の活動も拡大している。中国は、「航行の自由」の重要性を理解しつつあるのだ。
こうした認識の矛盾は、中国の経済活動等がさらに国際化するにつれて解消していく可能性もある。中国が米海軍に対抗できる十分な海軍力を持ったとき、中国は、米国同様、「航行の自由」を声高に主張するようになるかもしれない。
P.174~176
- 中国軍は才フエンシブ・リアリズムの信奉者
中国の、米国および周辺諸国に対する態度を見ると、中国はオフエンシブ•リアリズム(攻撃的現実主義)の信奉者なのではないかと思われる。中国は、真剣に、米国が中国に対して武カ行使するのではないかと恐れているからだ。オフエンシブ・リアリズムの視点に立てば、急速な経済発展を続ける潜在覇権国たる中国に対して、既存の覇権国たる米国は、中国がアジア地域における覇権国となるのを阻止しようとしていると見える。だから中国は自らの安全を保障するために軍事力を増強して地域覇権国を目指す。自らの生存確率を最大にする手段が、自ら覇権国になることだからだ。
台頭する大国は、その政治指導者の意図に関わらず、自然に覇権を目指すことになる。中国が急速に国防費を増加し、人民解放軍装備品の近代化を進める状況は、この論理を裏付けるものである。そして、中国は、米国を唯一のラィバルと見做し、米国に対して「新型大国関係」の構築を働きかけている。簡単に言えば、米中間に権益の対立があっても軍事衝突しない関係、それが「新型大国関係」である。国際社会のシステムが大国同士の衝突を促すように大国を動かすとしても、米中両国は、少なくとも現段階で軍事衝突することが国益にかなわないと認識している。特に、中国は、米国と戦争しても勝てないのであるから、何が何でも米国との軍事衝突は避けなければならない。
中国の関心は国内にあるのだ。中国指導部の最大の関心は、共産党による長期の安定した統治であり、経済発展によって社会を安定させなければならない。中国の経済活動拡大は、主として西を向いている。習近平指導部が進める「一帯一路」イニシアティブがそれである。「一帯一路」とは、陸上のシルクロード経済べルト(帯)および21世紀海上シルクロード(路) という二つのシルクロードを建設し、その周辺地域に巨大な経済圏を創出しようとするものだ。 「帯」と「路」と述べているところに意味がある。陸上に建設しようとしているのは、単なる路ではない。陸上の経済ベルトの範囲は、ロシアまで含め、極めて広い。中国が創造したいのは、物理的な路ではなく、お金の流れなのである。
- 「一帯一路」構想と密接に関係する中国の海軍戦略
「一帯一路」の基は、2012年に北京大学の王緝思教授が提唱した「西進」戦略にある。この「西進」戟略の発想は、中国国内の経済発展、特に内陸部の経済発展に大きく関係しており、中国の西側の国々が有する豊富なエネルギー資源等を中国国内に導くための輪送路として新たなシルクロードの建設が必要であるとするものである。この「西進」戦略の実践が、習近平指導部による「一帯一路」イニシアティブの提唱と展開なのである。
中国の対外活動拡大の目的は、経済発展にある。中国の研究者によれば、「中国の夢」の本当の意味は、中国が世界のGDPの4分の1を占めることだという。これは、過去の中国の王朝が達成したものだともいう。彼は明示しなかったが、過去の王朝とは明朝のことだ。数字もさることながら、中国では、異民族に支配された時代より、漢族の王朝が支配した時代を正統な王朝として懐かしむ傾向があるからだ。しかし、世界経済が中国の経済発展と同様の速度で発展しない限り、中国の経済発展は他同の経済権益を損ねることになる。
中国は、欧米先進国の経済権益が既存のルールで保護されていると認識している。だから中国がより多くの経済権益を獲得するためには、既存のものとは異なる枠組みやルールが必要とされるのだ。
台頭する国家は、国内で消費しきれなくなった余剰の資源(資金や産品などを含む)を海外に移転し、さらに新たなビジネスを展開しなければならない。過去には、これが植民地獲得という手段によって実現されてきた。現在では、植民地獲得ではなく、経済協力や直接投資といった形で展開されている。
P.181~187
- 参対米核抑止の観点からも中国は南シナ海の領有を譲らない
中国海軍の作戦海域の拡大は、中国の経済発展を保障するものだけではない。中国は、自国 に対する最大の脅威は、米国の中国本土に対する攻撃であると認識している。すべての国家に とって、最大の脅威は、他国による自国領土への侵攻である。
米中間には太平洋があり、双方にとって、相手の陸上兵力が国境を越えて侵攻してくるという圧力は低いものの、中国は、米軍は空母や強襲揚陸艦を以て、中国本土に攻撃することができると考える。さらに中国は、米国が、3つのC字型の島の鎖(アラスカ、アリユーシャン列島、朝鮮半島から日本〈南西諸島を含む〉を経てフィリピンなどの東南アジアに伸びる第1列島線。日本の小笠原諸島からマリアナ群島を経てオーストラリアに伸びる第2列島線。ハワイ、 ミッドウエー島、ウエーク島を結ぶ第3列島線)に米国および同盟国の基地を展開し、中国を軍事的に封じ込めていると認識している。
中国海軍は、2010年前後から「遠洋航海訓練の常態化」を目指し、さらに、列島線の突破を明言するようになった。中国は、できるだけ本土から離れた太平洋上で、米軍の中国侵攻を阻止したいと考えている。中国海軍は、列島線を越えて、台湾以東の西太平洋が米軍との戦場になると考えて、演習を重ねているのだ。中国は、能力を付けたから太平洋に出たいと考えるようになった訳ではない。反対に、中国は、常に太平洋で米国に対抗できる力を持ちたいと考えてきた。艦隊による海戦では、米海軍に勝ち目がないと考える中国は、対艦弾道ミサイルや巡航ミサイルの開発に力を注いできたのである。
しかし、中国の領土防衛に必要なのは、太平洋での米海軍との直接戦闘だけではない。中国は、核兵器による抑止カが、米国の中国に対する軍事行動を思いとどまらせる最後の保障になると考えている。南シナ海問題は、中国にとっては対米核抑止にも関係しているのだ。
中国にとって、南シナ海のコントロールは死活的に重要である。2014年8月のAPEC外相会議において、王毅中国外交部長が提唱した「双軌」思考は、「領土紛争等の問題」と「平和と協力の問題」を分離して、それぞれ二国間および多国間(中国とASEAN)で対話するというものである。この「双軌」思考は、同年11月のAPEC首脳会議において、李克強首相によっても提唱され、中国メディアによって「双軌」モデルとも呼ばれるようになった。この報道では、「平和と協力の問題」とは、東南アジアの経済の一体化の問題であるとしている。 「双軌」思考の提唱は、「一帯一路」イニシアティブを展開する上で、外交上の方針としている周辺諸国との良好な関係構築の努力と軌を一にするものだ。しかし、一方で、領土紛争において、中国が譲歩する意図がないことを示すものでもある。
中国にとって南シナ海が:重要な理由は、大きく三つある。第一は、海底資源である。第二は海上輸送路の安全の確保である。中国は、マラッカ海峡のチヨーク•ポイントで米国が中国の海上輪送を妨害する可能性を恐れ、複数の代替ルートを建設しつつも、国境を跨がずに大量の物資を輸送できる海上輪送をあきらめることはない。
そして、第三が戦略的軍事的な理由なのである。中国は、米国が中国の経済発展を妨害することを恐れている。米国が採る手段の中には、軍事力が含まれている。中国は、米国が中国本土に対して軍事攻撃をしかける可能性も検討している。その中には、核攻撃も含まれる。
中国は、現状では米国との戦争に勝利することは難しいと考え、軍事衝突を回避することが重要であると認識している。そのために核抑止は不可欠である。核抑止を確実にするためには米国の核先制攻撃を生き残る核兵器が必要である。最終的な核報復攻撃の保障たり得るのが、核弾頭搭載弾道ミサイルを発射可能な原子カ潜水艦、戦略原潜である。中国の戦略原潜が搭載する弾道ミサイルJL-2の射程は8000キロメートル前後であるとされるが、この射程では、 戦略原潜は太平洋に展開しなければ、アラスカなどの一部を除く米国全土を攻撃することはできない。
そのため、中国海軍は太平洋において戦略原潜の戦略パトロールを実施しなければならない。
中国海軍は、以前は、戦略原潜を北海艦隊に配備し、東シナ海から太平洋に入り、戦略パトロールを実施しようと考えていたが、海上自衛隊および米海軍に探知されるため、隠密裏に東シナ海から太平洋に入ることは難しい。いったん探知されてしまえば、核報復攻撃の保障にはならない。米海軍の攻撃型原潜に追尾されてしまうからである。
2000年代半ば、中国海軍は、南海艦隊に属する海南島の海軍基地を拡大し、094型「晋」 級戦略原潜および093型「商」級攻撃型原潜を配備している。東シナ海に比べて南シナ海は水深が深く、潜航深度を変更できるという潜水艦の利点を活かすことができる。
潜水艦は、航空機と同様、三次元の運動をするのだ。水中の音波伝搬は、水温の分布等の影響で複雑に変化し、水深によって潜水艦を探知できる距離に差が生じる。潜航深度を変えられるということは、水上艦艇や航空機による探知を避けたい潜水艦にとって、非常に重要なことなのだ。
さらに南シナ海を取り巻く各国の海軍力、特に対潜能力は、日本に比してはるかに低い。中国の戦略原潜が、探知されずに太平洋に出られる可能性が高いのである。米海軍といえども、 いったん太平洋に出てしまった潜水艦を探知するのは不可能に近い。それゆえ中国が、南シナ海のコントロールをあきらめることはないのだ。
- 南シナ海の人工島は不沈空母になる?
中国が建設している南シナ海の人工島は不沈空母だとよく言われる。しかし、この問いに対する答えは「YES」でもあるし、「No」でもある。中国が埋め立てている人工島には、本土から土砂を運んで地盤の強化を図っているとする分析もあるが、人工島建設の様子から、少なくともそのほとんどは、海底のサンゴを浚渫して積み上げている。それをコンクリートで固めているのだ。
中国が南シナ海に建設している人工島の滑走路については、地盤の弱さから、その強度を問題視することが多い。重量の大きい航空機が離発着する滑走路にかかる応力は非常に大きい。十分に地盤を固めていないと、滑走路は変形してしまう。また、人工島には水がないため、搭乗員や整備員を常駐させるとすると、これら人員のための真水を蓄えておく必要もある。こうした設備を建設できるかどうかは疑問だ。他国が何も手を出さなくとも、人工島の滑走路は近い将来、使いものにならなくなる可能性もあるということだ。 人工島は「不沈」なのかというと、そうではない。万が一、巨大な燃料タンクや弾薬車の建設を含め、中国がこれら人工島の軍事施設化に成功したとしても、これらのような小さな島を防御することはほぼ不可能である。本物の空母のように、自らの位置を変えることはできず また、自然の島のように、地下に要塞を掘ることもできない。人工島の上の防御部隊は、それを防護するものも、掩蔽するものもない。
むき出しの火薬庫が、いくつも海の上に並ぶのと同じ状況である。たとえ中国が各人工島に戦闘機部隊を配備して、本土も含めて相互支援ができる状態にしたとしても、米海軍が攻撃すれば、これを食い止めることはできない。対等であっても航空攻撃を完全に排除することはできないのに、米海軍空母艦載機部隊と中国空軍力の間には、戦闘能力に圧倒的な差がある。米海軍が本気で攻撃すれば、中国の人工島は簡単に破壊されてしまうだろう。
人工島は、「不沈空母」には成り得ないのである。にもかかわらず、中国が人工島建設に血道をあげるのはなぜか?その目的は、少なくとも米国との軍事衝突ではない。しかし、単に南シナ海における海底資源や漁業資源の囲い込みでもない。
中国は、米国との軍事衝突は避けつつ、同時に、米海軍の行動を制限しようとしているのである。中国が人工島を自らの領土とし、そこから艦船や航空機を運用できるようになれば、南シナ海における平時の勢力は、中国の方が圧倒的に強くなる。戦闘しない限り数に勝る中国が、米国の活動を妨害しやすいからだ。米国に対する「コスト強要」であるとも言える。 軍事衝突すれば、米海軍に簡単に破壊されてしまう人工島であっても、米国に軍事力行使理由を与えない限り、中国は南シナ海における優勢を保てるということでもある。逆説的であるが、平時であれば、中国は人工島を「不沈空母」として利用できるということだ。
中国が、南シナ海のほぼ全域に主権を主張し、中国の領海法に従って、他国海軍が中国の領海(中国は公式に「領海」とは言わないが)である南シナ海を航行する際に中国の許可を求めるようになれば、米海軍の行動にも支障を生じかねない。米国はもちろん、中国の要求に応じることはないが、それでも日本を出港した米海軍の第7艦隊が中東に展開する場合などに、南シナ海において、中国海軍あるいは海警局に対応する可能性を考慮しなければならなくなる。
本来、何の問題もなく、自由に航行して、航行の目的である中東での活動に集中できるはずが、途上の南シナ海で、余分なコストを強いられることになるのだ。しかし、中国が実際に軍事的手段に訴えない限り、米国としても軍事力を行使するのは難しい。中国の人工島は、そこに存在するだけで、米海軍の活動に圧迫感を与えるものになる可能性があるのだ。
P.198~199
中国が思い描く国際社会は、戦後、米国が主導して構築してきた国際社会とは異なるものだということだ。中国は本来、戦勝国であって、戦後の国際秩序形成に影響を及ぼすべきであったという権利意識が非常に強い。経済発展し、能力をつけつつある現在、中国は自らの経済発展のために、国際秩序を変更することを公言し始めた。
中国は、国際社会に対して、軍事力をもって新しい国際秩序を押し付けようとしている訳ではない。基本的には、各国への投資や中国の巨大な市場といった経済的影響力によって、各国の支持を得ようとしている。しかし、この新しい秩序自体が、これまで米国が主導してきた国際社会の価値観と相容れない部分があるのだ。
だからこそ、中国も、米国が中国の国際規範変更の試みを妨害すると認識するのである。日本は、これまで米国が主導してきた、「自由、民主主義、市場経済」といった価値観を共有する国際社会の中で恩恵を得てきた。一方で、すべての国家が、同様の価値観を共有していないことも事実である。
中国は、まず、こうした国を取り込んで、中国が考える国際規範を広めていこうと考えている。しかし、米国が主導してきた国際社会の価値観を否定し、これに挑戦することはしない。中国は、各国がそれぞれの利益に応じて、それぞれの規範に従えば良いと考えている。
しかし、それでも米国と利害が衝突すれば、双方ともに、各国の支持を得るために各国を囲い込む行動に出やすい。現に、東南アジア地域では、日本•米国と中国の間で、支援合戦が展開され、支持の獲得競争が行われている。
米中が、それぞれに勢力圏を作ろうとするのは、良い傾向ではない。現状では考えにくいが、 異なる規範で行動する複数の勢力が国際社会の中に存在することは、国際社会の協力態勢を弱 体化させることになり、国際社会の内外からやってくる種々の脅威に対して、有効に対処できなくなる可能性もあるからである。
P.209~213
- アメリカによる南シナ海の「航行の自由」作戦
米国は、これまで中国の「力による現状変更」に強く対応しなかったことが誤りであると認識している。その間に、中国は南シナ海の7力所の岩礁などにおいて、8平方キロメ ―トルにも及ぶ埋め立てを行い、軍事利用可能な施設を建設してしまった。
米国は、実力を行使しなければ、中国の意図を挫くことはできないと理解した。ここで言う実力行使は、フィリピンやベトナムと一緒に、中国に占領されたサンゴ礁を奪還することではない。中国の「南シナ海全域に主権が及ぶ」という主張を否定するための行動を採ることである。
米海軍艦艇および航空機の南シナ海におけるパトロールは、「南シナ海はグローバル・コモンズ(公海)である。したがって、米軍は自由に活動を行う」という米国の主張を、行動を以て示すものだ。
現在、米中両国を含め、誰も米軍の活動を南シナ海から排除することも、中国の人工島建設を止めることもできない。こうなると、一種のチキン・レースである。米国は、万が一、中国が軍事的な対抗手段をとってもかまわないのだ。
そして米国が、中国との軍事衝突も辞さないという姿勢を示した。2015年10月27日、 海軍のイージス駆逐艦「ラッセン」が、中国が建設した人エ島から12カイリ以内の海域を航行したのだ。このオペレーションは、「航行の自由」作戦と名付けられ、中国の南シナ海に対する権利の主張を根本から否定するものである。また、米国との軍事衝突を避けたい中国を追いつめる、軍事衝突も辞さない米国の決意を示すものでもある。
米海軍艦艇が進入したのは、南シナ海に存在する南沙諸島(スプラトリー諸島)のスビ礁だ。スピ礁は、かつてベトナムが実効支配していた暗礁であるが、1988年に生起した海戦の末、現在に至るまで中国が実効支配している。1980年代末の、東南アジア地域に発生した「力の真空」を利用したのだ。
中国はこの暗礁を埋め立て、人工島を建設している。国連海洋法の規定によれば、高潮時にその一部が海面上に出ていなければ、島または岩として認められず、領土とはならない。暗礁に領海は存在しない、ということである。ちなみに、島と岩の区別は曖昧である。人が住めるのが島、住めないのが岩、といった程度の区別しかない。しかし、それぞれに発生する権利 は大きな違いがある。島にはEEZ (排他的経済水域)が認められ、岩には認められないのである。まして暗礁は、岩でさえない。
実は、南シナ海について、中国は「領海」という言葉を使わない。中国外交部は、「南沙諸島および付近の海域に議論の余地のない主権を有する」と言う。主権が及ぶ海域は領海であるはずなのだが、中国は「付近の海域」とあいまいにする。それは、中国が、「九段線」で囲まれる南シナ海のほとんどの海域を自分のものにしたいからなのだ。中国外交部の主張は、中国の南シナ海に対する権利の根拠が、南沙諸島の領有にあることを示している。 しかし、海上に建設された人工建造物には、領海は存在しない。この、国連海洋法条約の規定に基づいて、米国は、中国が埋め立てた人工島は、暗礁の上に建設された人工建造物であるから領海は存在しない、と主張するのだ。人工島から12カイリ以内であっても、公海であるという意味だ。さらに、公海であるのだから、米海軍の艦艇や航空機は、自由に活動できるということでもある。
中国が「島」だと主張する人エ島から12カイリ以内の海域に、そこが公海であること^示すために、海軍の艦艇を送り込んだのだ。中国が主張するように、もし、人工島が領土であれば領海に当たる海域である。中国は、自国の「領海法」で、中国領海における他国の軍艦の無害通航権を認めていないのだから、米海軍艦艇の領海内航行には、何らかの対処をせざるを得ない。領海から米国の活動を排除しようと強気に出たのが、ひとたび米国が「やってみろ」という態度に出れば、困るのは中国の方だ。中国は、「領海法」という自ら作った法律で自分自身が追い込まれているのだ。
米国が送り込んだのは、イージス駆逐艦1隻である。米国が示したいのは、米海軍が南シナ海において自由に活動できる、ということだ。1隻でも十分に目的を達成できる。さらに、艦隊を送り込めば、米国が中国に対して攻撃の意図があるという誤ったシグナルを送る可能性もある。また、空母は艦艇としての戦闘力が高い訳ではなく、目標に近づけて使う艦ではない。 米海軍の空母は、もちろん南シナ海を自由に航行しているが、わざわざ危険に晒す必要はなく、目標が搭載している航空機の作戦半径に入りさえすれば良いのだ。
一方で、イージス駆逐艦は、対空戦、対水上戦、対潜戦すべてに高いレベルで対応できる。 米国は、中国が軍事的対抗措置をとっても、単艦で対応できる艦艇を送り込んだのだ。米国が、中国が軍事的対抗措置を採ることも想定して艦艇を送ったのは、中国との軍事衝突も辞さない、 という米国の決意の表れである。
日経記事
南シナ海を舞台に、「中国包囲網」の構築が進んでいる。同海域内で人工島を次々に造成して軍事拠点化する中国に対し、米国は日本やオーストラリア、フィリピンなどと共同で南シナ海でのパトロール活動を開始する構えだ。中国への対抗を意識した安全保障面での二国間の協力関係の網の目も密になりつつある。
■中国の人工島、米の軍事介入躊躇させる狙い

ベトナムのカムラン湾に初めて入港した海上自衛隊の護衛艦「ありあけ」(左)と「せとぎり」(4月12日)
「この海域に米空母が展開するのは新しい話ではない。新しいのは、この海域に緊張が存在し、我々がそれを減らそうとしようとしていることだ」。AP通信によると、カーター米国防長官は4月15日、南シナ海に展開中の空母ステニスに降り立ち、こう語った。
米比両国はこのほど、今後は共同で南シナ海をパトロール活動することで合意した。さらに2014年に締結した協定に基づいて、米軍が南シナ海沿岸を含むフィリピン各地の同国軍基地を使う形で約20年ぶりに再駐留を開始する。
日本の動きも活発だ。日本は16年2月、米英豪仏印に続いてフィリピンとも「防衛装備品・技術移転協定」を締結し、将来のフィリピンに向けた武器輸出の足場を整えた。
海上自衛隊の護衛艦「ありあけ」「せとぎり」の2隻は、4月3日にフィリピンのスービック港に寄港した後、同12日には南シナ海を横断してベトナム南部のカムラン軍港に海上自衛隊の艦艇として初めて寄港した。
3日後の15日には、海自の潜水艦「はくりゅう」が共同訓練に参加するため、豪州のシドニー港に自衛隊の潜水艦として初めて寄港。日本は豪州に同じタイプの潜水艦を売り込んだ。受注競争では仏政府系造船会社に敗れたものの、中国をにらんだ日米豪3か国の防衛協力強化は引き続き強化したい考えだ。
こうした動きに中国も対抗の動きを隠さない。カーター長官の空母ステニス訪問と同じ4月15日、中国国防省は范長龍・中央軍事委員会副主席(軍制服組トップ)がこのほど南シナ海中部のスプラトリー(南沙)諸島内の人工島を視察したと発表。人工島造成の動きをやめる意思がないことを強調した。
中国は、人工島造成などを通じて南シナ海を米軍の立ち入れない「聖域」にしたうえで、最終的に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を配備し、米国に東アジアへの軍事介入を躊躇(ちゅうちょ)させることを意図している。冷戦時代のソ連が、日本の北に位置するオホーツク海を聖域化し、そこにSLBMを配備して米国をけん制したことを南シナ海で再現しようというわけだ。
ただ、中国にとって情勢は厳しい。冷戦時代のオホーツク海は、南西部(日本の北海道)を除くすべての方面をソ連が占有する「ソ連の湖」だった。南シナ海の場合、中国領は北部の中国本土と海南島のみ。それ以外は台湾、フィリピン、マレーシア、ベトナムなど外国に囲まれる。
■当面は軍事衝突避けながら存在感強める戦略か
しばしば、中国にとっての南シナ海は、国益上の重要さなどから「米国にとってのカリブ海」にたとえられる。だが、実態は「ロシアにとってのバルト海」、つまりドイツやデンマークなど北大西洋条約機構(NATO)6か国と、NATO入りの機会をうかがうスウェーデン、フィンランドに囲まれている状況に近い。
人工島は「島」である以上、空母のように動かすことができない。仮に米中間の軍事衝突が起きた場合、人工島は真っ先に米軍の攻撃型原子力潜水艦の発射する巡航ミサイルなどの標的となって使用不能になり、中国が人工島造成に費やした巨額の投資も無駄になる。
潜水艦の最大の敵は潜水艦だ。中国軍が人工島を守り抜くには、米軍に対抗しうる優れた潜水艦部隊を持つことが欠かせない。しかし、当面はこの分野で米日豪の「潜水連合艦隊」が中国を抑え込む展開が続きそうだ。
このため、中国としては、米軍などとの直接的な軍事衝突を慎重に避けながら「平時」のうちにじわじわと南シナ海の軍事的プレゼンスを強めるという現在のアプローチを続けるのが上策となる。
先々は、戦闘に持ち込まない範囲で、人工島から発進した中国軍戦闘機が他国の航空機に過剰接近したり、人工島を拠点とする海軍艦艇が他国の艦船にミサイル攻撃の前段階であるレーダー照射をしたりして威圧する事件も起きそうだ。こうした事態が起きて沿岸国が萎縮し、南シナ海の航行を自粛するようになれば、中国の思惑通りになる。米日豪やフィリピン、ベトナムなどは、連携を強めて中国包囲網を構築し、有事の際だけでなく「平時の優勢」も確保しようと努める展開が続きそうだ。
→Nikkei Asian Reviewに掲載の英文はこちら
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5/15伊勢雅臣メルマガ 国際派日本人養成講座『地球史探訪:ルーズベルト大統領が播いた「竜の歯」 ~ 日米戦争、冷戦、そして共産中国』について
5/27オバマ大統領の広島訪問でライス補佐官(トランプの副大統領候補として名前の上っているコンドリ-ザ・ライスとは違います。http://business.newsln.jp/news/201605161021170000.html)は「謝罪はしないし、日本から求められたこともない」とインタビューで答えていました。米国内向けの答弁と思われますが、トルーマンの原爆投下の正当性主張が米世論に与えた影響が大きいためです。本記事はその見方をフーバー大統領が完全に否定しています。日本は勿論中韓のように謝罪要求→金よこせのような乞食根性は持っていません。プライドが許しません。ですから謝罪は不要です。それより、歴史の見直しを進めてほしいです。事実を述べると「修正主義者」の烙印を押し、発言を封じ込めるのでは、米国も中韓と同じレベルになります。日米共にこの本が流通し、早く歴史の真実が各国民に伝わってほしい。”freedom betrayed”は未翻訳or未出版です。どこかで圧力がかかっているのかも。『ルーズベルトの開戦責任: 大統領が最も恐れた男の証言』(ハミルトン・フィッシュ著 渡辺惣樹訳)と『日米戦争を起こしたのは誰か ルーズベルトの罪状・フーバー大統領回顧録を論ず』(藤井厳喜、稲村公望、茂木茂道、加瀬英明著)は読めますが。
東京裁判だってパル判事は日本の開戦責任を否定していました。
http://rokugadb.html.xdomain.jp/book/Diplomacy/pal/body.html
http://www6.plala.or.jp/mwmw/kotoba.html
日本は如何に戦争したくなかったかは、本記事を読めば分かります。でも日本の陸海軍とも邪悪なFDRの罠に嵌まってしまいました。而も宣戦布告を外務省が遅らしてパールハーバーを攻撃したというおまけ付き(これが原爆投下の正当性の論理に繋がる)。尚且つセカンドアタックもしないという中途半端な攻撃で終わりました。日清戦争後の三国干渉に明治の軍人は「臥薪嘗胆」しました。それができなかったのは昭和の日本人は劣化したということでしょう。戦後の日本人は更に劣化して他国の言うがままに動き、捏造が得意な朝日新聞社の言うことを容易に信じてきました。常識が足りないとしか言いようがない。日本の弱体化に国民が自覚もなく手を貸してきたわけです。自分で自分の首を絞めてきました。いい加減、戦後利得者の跋扈を許さないようにしないと。
一人でも多くの日本人が真実の歴史に近づかんことを。他国や左翼のご都合主義の解釈ではなく。
記事
共産主義者に操られたルーズベルト大統領が、日本を開戦に追い込み、ソ連を護り育て、世界に戦争の危機をばらまいた。
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■1.「狂人(ルーズベルト)の欲望」
米国の第31代大統領ハーバート・フーバーは、退任後の昭和21(1946)年5月、日本を占領中のマッカーサー総司令官を訪れて対談した。そこで次のようなやり取りがあった、とフーバーは記録している。
< 「日本との戦争の全ては、戦争に入りたいという狂人(ルーズベルト)の欲望であった」と私(フーバー)がいうとマッカーサーは同意した。[1,p7]・・・
私(フーバー)は更に続けて次のように言った。「1941年7月の(日本への)経済制裁は、・・・例え自殺行為であると分っていても、日本に戦争を余儀なくさせるものであった。なぜなら、この経済制裁は、殺人と破壊を除く、あらゆる戦争の悲惨さを(日本に)強制するものであり、誇りのある国ならとても忍耐できるものではないからだ」。この私の発言にもマッカーサーは同意した。[1,p7] ・・・
さらにマッカーサーは言葉を続けて「ルーズベルトは1941年の9月に近衛と和平を達成できたはずだ。そうすれば太平洋と中国の自由、そして恐らく満州の自由を確保するというアメリカの目標をすべて獲得出来ていたに違いない」と言った。[1,p162]>
フーバーはルーズベルト大統領の前任者で、その回想録”Freedom Betrayed(『裏切られた自由』)が47年ぶりに出版された。そこでは第二次大戦が「民主主義 対 全体主義」の戦いだったというアメリカの史観は完全に否定されている。この回想録が完成後半世紀近くも刊行されなかったという事実が、その衝撃を表している。
同様の史観は今までにいろいろな歴史学者、軍人、政治家が発表して、弊誌でも紹介してきたが[a,b,c]、前大統領の発言となれば重みが違う。しかもフーバーは30冊もの著書を残した著述家であり、20数年かけて、後に資料25百万点を備えるスタンフォード大学のフーバー研究所に発展するほどの資料を収集して書いたのが、この本なのだ。
あと20年もすれば、この史観が世の定説になるのではないか。そのためにも、まず日本人自身がこういう本を読んで、自虐史観から脱しなければならない。今回は、フーバーの著書から、ルーズベルトが日本を開戦に追い込んだ経緯を見ていこう。
■2.共産ロシアを1933年11月に承認
フーバーはルーズベルトが冒した19の過ちを列挙しているが、その2番目に以下がある。
<ルーズベルトの第2の失策が、共産ロシアを1933年11月に承認したことである。四人の大統領と、五人の国務長官にわたって、共和党か民主党かを問わずに、そのような承認行為を、(国際共産主義運動の目的と手法の全体を知った上で)ずっと拒否してきた。
共産主義者は、宗教の信仰、人間の自由と民族や国家の独立をぶちこわすようなばい菌を運び、アメリカに浸透してくることを、彼ら(四人の大統領と五人の国務長官)は知っていたからである。彼らは、米国が共産ロシアを承認すれば、ソ連の威信と国力が高まることを知っていた。
ルーズベルトが(スターリンと)結んだ愚かな合意、つまり共産主義者は、米国の国境の内側では活動しないという約束は、48時間後には公然と反故にされた。共産主義の機関車と、それに乗った共産主義の乗客が、政府の高いレベルに入り込み、第五列の活動が全国にひろがり、フランクリン・ルーズベルトが大統領であった12年間に亘って、国家反逆者の行為が長く続く事になった。[1,p81]>
ルーズベルト政権に多くの共産主義者が入り込み、その政策を親ソ反日にねじ曲げていった様子がヴェノナ文書などで明らかにされている。公民権活動や、中国支援などの看板を掲げつつ、内実はソ連のために活動していた組織が1千もできた。これが日米開戦の悲劇の最大の要因となった。
■3.ソ連への軍事支援、航空機1万4千7百機、、、
ルーズベルト政権の親ソ路線は、ますます露骨になっていく。
<アメリカの歴史の全史を通じてもっとも政治の大道が失われたのが、ヒトラーがロシアを1941年に攻鑿したときに、共産ロシアを支援して、アメリカとロシアが非公然の同盟関係になったことである。・・・
ロシアを米国が支援すると言うことは、共産主義が世界に広がることであった。ドイツとロシアの戦争に米国は巻き込まれるべきではなかった。平和が持続するという最大のチャンスがあったのだが、ルーズベルト大統領は、その機会を捉えることができなかった。[1,p97]>
共産主義のソ連とナチスドイツの二つの全体主義国家が戦っているのだから、アメリカは独ソ戦を傍観していれば、とも倒れになり、アメリカも欧州も「平和が持続するという最大のチャンスがあった」というのが、フーバーの考えである。
それなのにルーズベルトはソ連に対して凄まじい軍事支援を行う。その内容は、航空機1万4千7百機(零戦の全生産量に匹敵)、戦車7千両、装甲車6千3百両、トラック37万5千台、ジープ5万2千台という規模であった。
もちろん、これだけの規模の軍事支援は、ルーズベルトだけでなく、実務面も含めて多数のソ連工作員が政権内に蠢(うごめ)いていたからこそ、可能になったのだろう。
■4.経済封鎖による「宣戦なき戦争」
<第5の誤りは、41年の冬にルーズベルト大統領が、米国がドイツと日本に対して、宣戦をしないで戦争を始めた事である。これは、数週間前の大統領選の公約に全面的に違反するものであった。[1,p93]>
1940年秋、ルーズベルトは、「米国は海外でのいかなる戦いにも巻き込まれない」との公約で、大統領再選を果たした[a]。そのわずか数ヶ月後の41年冬には、日独に対して経済封鎖という「宣戦なき戦争」を始める。
同年1月、幕末に黒船の圧力で強要した日米友好通商条約を破棄し、いつでも日本に対する原油や鉄鋼などの輸出を止めることができるようになった。「経済封鎖は戦争行為である」とはパリ不戦条約批准の際にケロッグ米国務長官の議会での発言である。
<第8番目の、ルーズベルトが犯した巨大な誤りは、1941年7月、つまり、スターリンとの隠然たる同盟関係となったその一ヶ月後に、日本に対して全面的な経済制裁を行ったことである。その経済制裁は、弾こそ射っていなかったが本質的には戦争であった。
ルーズベルトは、自分の腹心の部下からも再三に亘って、そんな挑発をすれば遅かれ早かれ報復のための戦争を引き起こすことになると警告を受けていた。[1,p099]>
この7月、米国は工作機械、石油、屑鉄などを輸出許可制とした。これらの品目を米国からの輸入に頼っていた我が国の新聞は、これは経済的対日挑戦であると論じ、駐米大使が正式抗議を申し入れた。ルーズベルトはさらに日本の在米資産を凍結し、8月には石油の対日全面禁輸を実施した。
「参戦しない」という公約を守りながら、戦争を始めるには、日本から攻撃をさせる必要があり、そのために日本を経済的窮地に追い込んでいったのである。
■5.近衛総理大臣の和平の提案を受け入れ拒否
第9の過ちは:
<ルーズベルトが近衛総理大臣の和平の提案を受け入れ拒否したこと。この和平の提案が受け入れられることを、日本に駐在するアメリカの大使もイギリスの大使も積極的に働きかけたし、又祈る様な気持で見守っていた。近衛が提案した条件は、満州の返還を除く全てのアメリカの目的を達成するものであった。
しかも、満州の返還ですら、議論する余地を残していた。皮肉に考える人は、ルーズベルトは、この重要ではない問題をきっかけにして自分の側でもっと大きな戦争を引き起こしたいと思い、しかも満州を共産ロシアに与えようとしたのではないかと考えることになるだろう。[1,p102]>
昭和16(1941)年9月、石油禁輸のもとで、あてどない対米交渉を続けていくのは座して死を待つのみ、と近衛内閣は10月下旬までに平和的交渉が決着しなければ対米開戦すると決意したが、昭和天皇は御前会議で「よもの海みなはらからと思ふ世になど波風のたちさわぐらむきようく」との明治天皇御製を読み上げられた。
この御心を受けて、近衛は日米首脳会談による打開を決意し、ルーズベルトに申し入れたが、拒否されたのである。
■6.「90日の冷却期間」提案を拒否
それでも、日本はなおも忍耐強く和平交渉の道を探ったが、ルーズベルトは第10の過ちで応える。
<昭和16年の11月に、天皇陛下が三ヶ月間のスタンドスティル、すなわち冷却期間をおこなうとの提案を、駐日の米国大使を通じてされたが、ルーズベルトは是を拒否した。米国の軍高官も、冷却期間の提案を受け入れるべきであるとルーズベルト大統領に促した。
当時、日本はロシアが、同盟関係にあったヒトラーを打倒する可能性を警戒していたのである。90日の冷却期間があって、(戦端開始の)遅れがあれば、日本から全ての戦意を喪失させて、太平洋で戦争する必要を無くしたに違いない。[1,p107]>
日本の真珠湾攻撃は12月8日だったが、この頃にはソ連軍の冬期大反抗が開始され、ドイツ軍をモスクワ正面から後退させていた。3ヶ月の冷却期間があれば、ドイツ軍の敗色は日本の朝野にも明らかになり、開戦の意思は萎(しぼ)んでいただろう。
<スティムソンの日記が明らかにしたように、ルーズベルトとその幕僚は、日本側から目立った行動が取られるように挑発する方法を探していたのだ。だから、ハルは、馬鹿げた最後通牒を発出して、そして我々は真珠湾で負けたのだ。[1,p107]>
陸軍長官スティムソンの日記には、日本にハル・ノートをつきつけたコーデル・ハル国務長官が「私はこの件(日米交渉)から手を引いた。あとはあなたとノックス海軍長官の出番だ」と語ったとある。
ハル・ノートは米国からの最後通牒として出されたものであり、それがソ連工作員ハリー・デクスター・ホワイトによって作成された事が明らかになっている。[b]
■7.日本に無条件降伏を要求し、原爆投下
こうして日本は対米戦争に追い込まれ、当初は西太平洋、東南アジアから米英勢力を駆逐したが、昭和20(1945)年には敗色濃厚となり、講和の道を探っていた。そこにポツダム宣言が出される。
< ポツダムにおけるトルーマンの過ちが、第16番目の過ちである。・・・
これ(JOG注: ソ連の東欧への勢力拡張を許した事)に加え、指導者の人々の忠告に反して、日本に無条件降伏の最後通牒が出されたことである。アメリカの経験ある多くの專門家が勧告した、天皇(みかど)を維持することを許す救済条項を入れないで、無条件降伏を要求したのである。日本側は、回答として、この条件のみを求めたが、原子爆弾が投下された。そして、最後になって、この条件が受け入れられた。1,p124]>
<第17番目のアメリカの政治の大道からの逸脱は、トルーマンが日本人の上に原子爆弾を落とすという非道徳的な命令を下したことである。日本は繰り返して平和を求めていたにもかかわらず。これはアメリカの全ての歴史のなかで、他に比較するもののない残忍な行為であった。これはアメリカの良心に対して、永久に重くのしかかるであろう。[1,p127]>
■8.「竜の歯が、世界中の至る所にばらまかれた」
こうして、ルーズベルトは共産主義の防壁である日独を打ち破って、ソ連に東独から北朝鮮に至る勢力圏を築かせた。さらに後任のトルーマンは中国の共産化を許した。
「第三次世界大戦を引き起こす危険のある竜の歯が、世界中の至る所にばらまかれた」とは、第19の過ちの一節だ。ギリシャ神話には、大地に播かれた竜の歯から武装戦士たちが生まれ出た、という逸話がある。
その予言の通り、冷戦と朝鮮戦争、ベトナム戦争の種はこうして蒔かれた。のちの共和党レーガン政権は日独の協力を得て、冷戦に打ち勝ち、ソ連の打倒を果たしたが、その際に利用した中国が強大化して、現在の世界を危機に陥れている。
日米戦争は、共産主義者に操られたルーズベルトの錯誤によって引き起こされたものだが、その時に播かれた竜の歯はいまも世界の平和を脅かし続けているのである。
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5/12日経ビジネスオンライン 『日本人には「リアリズム」の視点が欠けている 今、世界史と地政学を学ぶ理由(1)』、5/13日経ビジネスオンライン 『移民を先兵に領土を奪ってきたリアルな歴史 今、世界史と地政学を学ぶ理由(2)』について
日本の歴史学会は実証主義とアイデアリズムをベースにしていると茂木氏は言いっていますが、実証主義については「慰安婦」や「南京虐殺」など中韓のデッチアゲを認め、畸形左翼のイデオロギーで歪曲したものが大手を振ってまかり通る世界です。また、アイデアリズムというのもダーウィンを発展させた社会進化論をベースにした進歩主義(≒リベラリズムではないか)で保守主義とは相容れない価値観でしょう。戦後民主主義が齎した弊害と思います。歴史学会の偉い先生が教科書を執筆する訳ですから堪ったものではありません。偏向教科書になるのは必定。教科書以外であれば、「表現の自由」の範囲内ですが。育鵬社や自由社の教科書が採択されないのは問題です。出版社が教育委員や先生に賄賂を与えて、教育を捻じ曲げていることに国民はもっと怒るべきです。
日本人は権威に弱いというか、安易に権威を有難がり過ぎでは。和田秀樹の『学者は平気でウソをつく』にも権威に対しもっと眉に唾して見た方が良いとありました。学説は時代と共に変わり、ニュートン力学からアインシュタインの相対性理論に、フロイトも世界では20年くらい前から相手にされなくなったとのこと。フロイトが日本でまだ生き延びているのは、マルクス経済学を教えている大学がまだあるのと同じです。東大=官僚と朝日新聞を有難がる心理は戴けません。日本に害を為す連中は糾弾していかねば。
これに対し、地政学はリアリズムの世界、突き詰めればハードパワー(軍事力)とソフトパワー(経済・文化)の世界です。
第二次大戦で果たした日本の世界史的役割は、副次的効果(主たる目的は資源確保・アウタルキーできる生存権確保)でありましたが植民地の解放を成し遂げたことです。トインビーもそれを認めています。日本の戦後利得者達が認めないだけです。護憲を言っている連中は言うことで利権(メシの種)を持っているからです。
<1956年10月28日付け「オブザーバー」紙
ひとたび失われた(欧米の)政治権力はもはや回復できない。インドシナ半島を取り戻したフランスはわずか8年でベトナムの抵抗に屈し、インドネシアを取り戻したオランダは戦前の地位を回復できないで独立を承認した。・・・・・マレー半島とシンガポールで起きた激変はイギリス軍の軍事的瓦解である。ひとたび惨敗した以上、失われた権威は戻らない。・・・・・第二次大戦において日本人は、日本のためよりもこの戦争によって利益を得た国々のために偉大な歴史を残したと言わねばならぬ。それは日本が掲げた思想『大東亜共栄圏』に含まれた国々である。今日のアジアの最重要課題は、この覆された日本の衣鉢を誰が継ぐかである。日本人が歴史の上に残した業績の意義は、西洋人以外の人類の面前で、アジアとアフリカを支配してきた西洋人が、過去二百年の間に考えられてきたような不敗の半神ではないことを明示したことにある。イギリス人も、フランス人も、オランダ人も、ともかくわれわれは皆ばたばたと将棋倒しにやられてしまったのだ。やっと最後にアメリカ人だけが軍事上の栄誉を保てたのである。>
米国は親中派の国の首脳を、パナマ文書を利用して追い落としを図っているように見えます。英国のキャメロンや豪・ターンブル等。キャメロンはオズボーン(パンダハガー、ハニーにかかったのではと小生は見ています)財務相の言いなりになって臍を噛んでいるのでは。エリザベス女王の園遊会での中国人に対するrude発言は内閣に「中国に近づくな」という事を示唆したのでは。中国経済が崩壊寸前で「元」を活用して儲けようというのは甘すぎ。独も中国に近づきすぎてEUもガタガタになるでしょう。6/23Brexitは起きないと見ていますが。
記事
「世界史」と「地政学」がにわかに注目を集めている。メディアの報道を見ると「地政学的リスク」という文字があちこちで躍る。書店では「○○の世界史」というタイトルが棚を占める。地政学とは何なのか。世界史とはいかなる関係にあるのか。地政学と世界史を学ぶと、世界で起きているニュースはどのように理解できるのか。『世界史で学べ! 地政学』などの著書がある茂木誠氏に聞いた。
(聞き手 森 永輔)
—「地政学」という文字を頻繁に目にするようになりました。この言葉の使われ方を見ていると、「世界史」と何が違うのだろうという疑問が浮かびます。

東京都出身。大学受験予備校の世界史科講師。iPadを駆使したビジュアルな授業に人気がある。近著に『世界史で学べ! 地政学』『ニュースの“なぜ?”は世界史に学べ』がある。(撮影:菊池くらげ、以下同)
茂木:まず「歴史」についてお話ししましょう。事実の羅列・記録は歴史ではありません。なので年表は歴史とは言えません。年表を歴史にするためには歴史観を加える必要があります。たくさんある出来事の中で、どの事実に注目するのか、ある事実ともう一つの事実はどういう関係にあるのかを解釈するための視点ですね。
—私が高校時代に習ったのは世界史ではなくて年表だった気がします。その年表すら十分に覚えることはできませんでしたが。
茂木:同じ事実を見ても、その解釈の仕方は幾通りもあります。その解釈の視点の一つが「リアリズム」という考え方に基づいて歴史を見る方法です。「歴史には正義も悪もない。生存競争を続けているだけ」とする歴史観です。地政学は「リアリズム」の一つで、地理的条件に注目して国家の行動を説明します。
学者や教科書の執筆者は自分の歴史観を示すのを嫌がる傾向があります。歴史観は多様なので、異なる歴史観を持つ人から必ず批判されます。それを恐れて、事実の羅列に終始するのです。
—他の国の歴史教育も、事実の羅列にとどまる傾向があるのですか。
茂木:例えば米国には検定制度がありません。だから、教科書会社がそれぞれの歴史観に基づいた教科書を出版しています。日本への原爆投下を「仕方がなかった」と解釈する教科書があれば、「必要なかった」と書いているものもあります。
日本の学会はこの半世紀にわたって事実に重きを置く実証主義とアイデアリズム(理想主義)に重心を置いてきました。アイデアリズムというのは、世の中は「進歩」「統一」「戦争のない世界」などの理想(アイデア)に向かって動いているという歴史観です。
例えば国連中心主義というのはアイデアリズムに基づいた考え方の典型例です。日本もこれに則って、第2次世界大戦までの行動を反省し、国連の一員として活動し、軍備を制限すれば平和に貢献できると考えてきました。
ところが、周囲を見渡すと、どうもそうなっていないことが肌感覚として分かってきました。それが、世界史と地政学が注目を集めるようになった原因なのだと思います。
悪である共産主義が打倒され、冷戦が終わった。自由と民主主義の世界が実現し、紛争はなくなるだろうと米国の思想家フランシス・フクヤマ氏が『歴史の終わり』で論じました。しかし、そんな世界は到来しませんでした。中東は大混乱に陥って、過激派組織の「IS(イスラム国)」が登場。中国は海洋進出を強化。ロシアもウクライナ問題に介入し、西側に対して再び対決姿勢を取るようになりました。
こうした現実を説明する手段として、リアリズムが注目されているのだと思います。
学校では教わらないリアリズム
—今、ビジネスパーソンが世界史と地政学を学ぶ意義は何でしょう。
茂木:ビジネスと地政学はかなり遠い関係にあると思います。ビジネスは「理性」の世界ですよね。数字に基づいて合理的判断する。市場があって儲かるところに出ていく。一方、地政学は不合理と感情の世界です。価格が多少高くても自国製品を使いたいとか、生産性が低くても国内での雇用を優先したいというのは感情です。「ナショナリズム」の世界と言い換えてもよいでしょう。しかしこれがリアルな現実なのです。
ビジネスパーソンにはぜひリアリズムの考え方を身につけていただきたいと思います。日本の学校では、小学校でも中学校でも、アイデアリズムに基づいた教育がなされます。「話し合えば、ジャイアンとも仲良くやっていける」と習うわけです。性善説に立っているわけですね。こうしたしつけの影響は大きい。結果として社会や世界に出た時に、騙されたり、いいように使われてしまったりするわけです。
世界にはずるいことをする国や、ダブルスタンダードで外国に接する国があることを世界史と地政学から学ぶ必要があるわけですね。英国は第1次世界大戦の時、トルコ人が牛耳るオスマン帝国を内部から崩壊させるべくアラブ人をけしかける一方で、同帝国の支配地域をアラブ人の意向を無視して列強で分割する協定をフランスやロシアと結びました。米国はイスラエルの核開発には目をつぶる一方で、イランや北朝鮮には厳しい態度を崩しません。
私は世界史と地政学を学ぶべき理由として、日本人は「大きな地図」を見る訓練ができていないことがあるのではと考えています。「小さな地図」はちゃんと見ています。しかし、大きな地図にはなかなか注意がいきません。
日露戦争が典型例です。朝鮮半島の権益を巡って日本と帝政ロシアが対立しました。日本人の頭の中には、日本とロシア、朝鮮半島、中国の一部からなる地図が思い浮かぶ。これが小さい地図です。
一方、日露戦争は、南下政策を進めるロシアとこれを阻止しようとする英国とが演じるグレートゲームの一部をなすものでした。英国は、クリミア戦争ではロシアと戦うオスマン帝国を支援、第2次アフガニスタン戦争ではロシアに支援されたアフガニスタンと対決。日露戦争ではロシアと戦う日本を支援しました。この「大きな地図」については、司馬遼太郎さんが書いた「坂の上の雲」も多くの紙幅を割いてはいません。
—日本人は大きな地図を見られるように訓練する必要があるのではないでしょうか。
茂木:世界観の欠如ですね。日露戦争の時、ロシアとの講和に反対し、ロシアの当時の首都だったサンクトペテルブルグまで攻め込むよう新聞に意見広告を出した東大教授がいました。大きな地図を見ることができなかったのでしょう。
ただ、大きな地図を見られる人は限られています。世界に影響を及ぼすことのできる大国、例えば米国、英国、ロシアといった国のリーダーだけです。
学ぶべきは近代以降の支配国の歴史
—ビジネスパーソンが改めて世界史を学ぼうと考えたとき、どこから手を付けるのがよいでしょう。期間は長いし、国の数も多いので悩みます。
茂木:近代以降の帝国主義の時代、日本で言えば明治時代からの歴史を学ぶべきです。この時代を動かす原理は「国益」です。これは今にも通じます。古代や中世はとりあえず放っておきましょう。これらの時代を動かしていた原理は「宗教」で今とは異なります。
注目すべきは支配する側だった国、列強ですね。欧州では英国、フランス、ドイツ、オーストリア、イタリアの5大国。これにロシアと米国。あと日本を加えた8大列強です。
—日本史を見ると、スポットライトが当たる時期というのは決まっています。NHKの大河ドラマは戦国時代と明治維新を繰り返し取り上げています。世界史にも同様の時期があるのでしょうか。
茂木:世界史、なかでも欧州史は統一と混乱の繰り返しです。最初の統一はローマ帝国が果たしました。これが崩壊して中世が始まる。中世はカトリック教会が再統一します。これをルターによる宗教改革が打ち壊した。カソリックとプロテスタントによる宗教戦争が拡大して混乱。これを収集して統一を果たしたのがナポレオンでした。ナポレオン体制が崩れると三国同盟と三国協商が対立する混乱の時代が訪れ第1次世界大戦へとつながります。第1次世界大戦でオーストリア、ロシア、ドイツの3つの帝国が滅びると、生き残った国々は国際連盟を結成して統一を図りました。
(次回に続く)
『世界史で学べ! 地政学』などの著書がある茂木誠氏に聞く第二弾。世界の注目を集める現在進行形の事件について、その意義と背景をリアリズムの視点から斬る。取り上げるのは「ブレグジット」「パナマ文書」「中国の一帯一路政策」「カラー革命とアラブの春」だ。
(聞き手 森 永輔)
(前回記事はこちら)
ブレグジットは、英国によるドイツ覇権への反発
—ここからは、いま注目を集めている出来事を対象に、世界史と地政学の視点からどう解釈できるかうかがいます。最初のテーマは英国のEU(欧州連合)離脱(ブレグジット)です。英国はこれまでオフショアバランシングを対欧州大陸政策の柱にしていました。大陸に覇権国家が現れそうな時にはそのライバル国を支援して叩くというものです 。第2次世界大戦ではドイツを叩くべく、ソ連と手を組みました。それまでグレートゲームを戦ってきたにもかかわらずに。ブレグジットはこのオフショアバランシングとはずいぶん趣を異にしているように見えます。

東京都出身。大学受験予備校の世界史科講師。iPadを駆使したビジュアルな授業に人気がある。近著に『世界史で学べ!地政学』『“ニュースのなぜ?”は世界史に学べ』がある。(撮影:菊池くらげ、以下同)
茂木:英国にとってドイツは長年のライバルです。ブレグジットは、ドイツの風下には立ちたくないという英国のナショナリズムの表れでしょう。英国から見ると、EUはドイツに仕切られている機関にほかなりません。
英国は産業革命によっていち早く工業立国を実現したものの、19世紀後半には輸出額でドイツに抜かれ、金融立国に転換しました。輸出によって蓄えた資本を外国に投資し、その収益によって成り立っています。いま、この金融国家の地位もドイツに脅かされるようになりました。冷戦が終わって東西ドイツが統合し巨大ドイツが復活したことも英国にとって脅威でした。ユーロ導入を拒否してポンドを守ってきたのもそのためです。
ドイツが仕切る大陸市場に依存したくない英国が選んだ投資先が中国です。中国の習近平国家主席が昨年10月 に訪英した時に、キャメロン首相らが非常な歓待をしたことが話題になりました。中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に参加するといち早く名乗りを上げたのもこのためです。米国の不興を買うことも厭いませんでした。
—第1次世界大戦の時にロシアと手を組んでドイツを叩いたように、他の国と協力してドイツにビジネス的に対抗することは考えなかったのでしょうか。
茂木:現在の欧州にドイツと対抗する力を持った国は見当たりません。
ロシアも頼りにはなりません。プーチン大統領とドイツのメルケル首相が良好な関係を維持しています。またロシアは、「90年代に外資導入で痛い目にあった」というネガティブな感情を英国に対して抱いています。プーチン大統領の前任だったエリツィン大統領が外資の導入と資本主義化を推進したのに伴って、ガスや石油といった基幹産業を含む多くの企業が外資企業やそれと結んだ新興財閥によって買収されたからです。
米国のドル支配に対しても、英国は快く思っていません。ドルもユーロも敵となれば、人民元と手を組むしかない、というのがロンドンの金融街(シティ)の判断です。
パナマ文書はドイツによる英国への意趣返し
パナマ文書が注目を集めています。これはドイツによる英国への意趣返しの面があるでしょう。この文書を最初に入手したのは南ドイツ新聞とされています 。そしてキャメロン首相と習近平国家主席の名前がいの一番に報じられました。
この文書を世界に公開した国際報道ジャーナリスト連盟(ICIJ)という団体には、米国の代表的ヘッジファンドのジョージ=ソロスが資金を提供しています。ウォール街は、英国と中国が関係を密にするのを面白く思っていません。同文書を巡って、米国の大物政治家の名前が出てこないのも作為を感じます。
一帯一路政策は「モンゴル帝国」の再来
—なんともきな臭い話ですね。次にお伺いしたいのは中国が進める一帯一路政策です。これは習近平国家主席がモンゴル帝国(元朝)の再現を狙っているのでしょうか。極東から欧州に至る巨大な勢力圏を築こうとしている。
茂木:その通りです。目的の一つは、長い国境線を接し、潜在的には緊張関係にあるロシアとの間でユーラシア同盟を築きたいということ。同時に、カザフスタンなど旧ソ連圏の中央アジア諸国に投資して影響力を拡大すること。
—ロシアはかつて2世紀にわたってモンゴル帝国に支配されました。一帯一路政策が経済的に元を再現するものであれば、ロシアはこれに恐怖を抱いているのではないでしょうか。
茂木:そうですね。ロシアはその2世紀を「タタールのくびき」として暗黒時代と位置づけています 。「タタールがまた来た」という思いかもしれません。
ロシアは極東でも中国の人口圧力を警戒しています。バイカル湖以東のロシア人口が620万人で千葉県の人口程度しかいないのに対し、国境の南の旧満州には1億人が住んでいます。
米国は移民を先兵にテキサスとハワイを手に入れた
—移民を受け入れることは「人道的に正しいこと」というイメージがあります。しかし、現実には移民は“武器”と言えませんか。茂木先生は著書の中で「テキサス共和国」について触れています。米国は、当時はメキシコ領だったテキサスへの移民を拡大。これは合法的なものでした。人口でメキシコ人を上回ると独立を宣言し、米国への加盟を申請し、28番目の州になりました 。
ハワイでも同様のことをしています。大量の移民を送り込んだ後に「ハワイ革命」を起こし、米国の50番目の州となった 。
茂木:おっしゃる通りです。ロシア系住民が多いクリミアをウクライナから分離してロシアに併合したプーチン大統領も、当然、これらの歴史的事実を意識していたでしょう。
加えて、一帯一路政策は純粋な経済政策ではないことも、ロシアの恐怖心を高めていると思います。例えば中国企業が、「一帯」の西端に位置するギリシャ最大の港、ピレウス港を買収しました 。ロシアから見ると、ロシア艦隊が黒海から地中海に出る際のチョークポイントを、中国に塞がれる可能性が出てきました。
同様に中国は、海路である「一路」の通り道であるオーストラリアでも港を抑えています。米海兵隊がローテーションで駐留するダーウィンの港を、中国企業が99年にわたって借りる契約を結びました 。米豪の同盟関係にくさびを打ち込むことが狙いでしょう。オーストラリア経済は、資源を海外に販売することで成り立っています。その最大の貿易相手は中国です。
—オーストラリアが、米海兵隊の拠点近くの港を中国に貸し与える判断までしているのでは、日本の潜水艦が選ばれないのも道理ですね(関連記事「豪潜水艦の商談を機に日本の防衛産業を考える」)。
茂木:オーストラリアには中国からの移民が年々増えています。中国傾斜を強めるターンブル政権は彼らの意向にも配慮する必要があったのでしょう。
—ここでも移民が重要な役割を果たしているのですね。
中央アジア諸国は一帯一路政策をどう思っているのでしょう。彼らもモンゴル帝国に支配された記憶を思い出すのでしょうか。
茂木:ロシアほどではないと思います。民族的にも同じ系統ですし。
例えばカザフスタンの場合、反イスラム過激派ということで中国と利益を共有しています。ナザルバエフ大統領 は旧ソ連時代から政権を維持しており世俗主義をとっています。従ってイスラム過激派とは相容れません。一方、中国はISが新疆のウイグル人独立派に勢力を拡大しようとしているのを警戒しています。「反テロ」で両者の利害は一致します。
—ロシア以外に大きな反対勢力がないとすると、一帯一路政策は順調に進むのでしょうか。
茂木:この政策の進み具合を左右するのは、周囲の国の動向よりも、上海株の暴落以来、失速している中国経済のほうだと思います。
カラー革命とアラブの春の背景にあったもの
—米国の状況についてうかがいます。内向き志向がどんどん強まっているように見えます。オバマ大統領は2013年9月に「米国は世界の警察官ではない」と明言しました 。次期大統領を目指して予備選を戦う候補者たちも、格差を中心とする内政にその興味が向いています。TPP(環太平洋経済連携協定)やTTIP(環大西洋貿易投資協定)などのメガ自由貿易協定にもネガティブな姿勢を示しています。
茂木:おっしゃる通りですね。米国が内向きになった理由はイラク戦争とリーマンショックの二つです。イラク戦争が長引いたため、厭戦気分が広まりました。「なぜ中東で、米国の若者が命を落とさなければならないのか」という声が高まっています。
リーマンショックは貧富の格差を拡大させました。奨学金を返済できずに苦しんでいる人がたくさんいます。ここに、共和党のトランプ氏や民主党のサンダース氏が大統領候補として躍進してきた理由があります。
米国が力を落としたのにつけ込んで、ロシアはウクライナに、中国は南シナ海に触手を伸ばしました。
—アラブの春も米国の衰退が原因でしょうか。
茂木:アラブの春は様相が異なります。これはソ連の崩壊を受けて米国が中東の親ロシア政権を倒す運動の一環でした。
アラブの春で倒れたのは、エジプトのムバラク、チュニジアのベン・アリ、リビアのカダフィの各政権です。いずれも親ソ派でした。これらの国は冷戦終結を受けて米国にすり寄る姿勢を見せましたが、米国は面従腹背と見て信用しませんでした。
アラブの親ロ政権が倒される中で、唯一、政権を維持しているのがシリアのアサド政権です。ロシアが軍事介入に踏み切ったのはそれゆえです。ロシア海軍がシリアのタルトス港を拠点として利用しているのも理由の一つです 。
アラブの春に先立って、ジョージア(グルジア)でバラ革命が、ウクライナでオレンジ革命が起こりました。これは旧ソ連諸国における親ロ政権を倒したものです。スポンサーは例のジョージ・ソロスの財団でした。アラブの春はこれを中東に応用したものです。
—独裁政権が倒れるのは、アイデアリズムの視点から見れば好ましいことですが、その結果起きたのは混乱でした。
茂木:中東には「どんな独裁であっても混乱よりはましだ」ということわざがあります。
—なんとも皮肉なことわざですね。
再びシーパワーを目指す中国
茂木:中国の話をしましょう。習近平政権は明時代の中国のようにランドパワーからシーパワーへ転換することを目指しているのだと思います。永楽帝は、鄭和に南海遠征を命じました 。艦隊を東南アジアからインド洋、東アフリカへと回らせ、周辺国に朝貢するよううながしたのです 。
—しかし、その試みは長続きしませんでした。
茂木:北方騎馬民族のモンゴル人が中国の北辺を再び襲ったからです 。
—茂木先生は著書の中で、中国は長いこと南と北に敵を背負ってきたことを説明されています。「北虜南倭」ですね。北には騎馬民族、南には倭寇。米国の力が衰え、ようやく海洋進出の機会を得た中国は、北を襲う可能性があるロシアと敵対したくはないでしょうね。
茂木:中国の海洋進出が可能になったのは、ソ連崩壊で北の脅威から解放されたからです。
冷戦期に、ソ連に対抗するため毛沢東とニクソンが米中関係を正常化して以来、両国は良好な関係にありました。だからこそ、中国は経済を急速に発展させることができた。しかし、海洋進出やAIIBの設立で流れが変わりました。AIIBの設立は米国にとって、飼い犬に手を噛まれたようなものでしょう。米国は今後、警戒感を強めるでしょう。
これまでは米国防総省と防衛産業が中国を敵視しても、米国務省と金融界は中国に好意的でした。しかし今は国務省も警戒感を強めています。習近平国家主席は「やり過ぎた」と言えるでしょう。
—米国の戦略家、エドワード・ルトワック氏の近著『中国4.0』によると、習近平政権はやり過ぎに気付き、政策を改めつつあるようです。
茂木:習近平政権が政策を改めるかどうかは国内政治の動向によるでしょう。カギを握るのは人民解放軍です。独裁政権は民衆の声を気にしませんが、軍の忠誠は政権の維持に不可欠です。そして軍の中には「米国なんか目じゃない」と主張する強硬派がいるのです。
—世界史と地政学の視点から分析すると、米中関係の将来像が読めるものでしょうか。
茂木:地政学では北米大陸を巨大な島と考えます。カナダやメキシコが、米国を軍事的に脅かすことは考えられません。一方、中国は常に、北方にロシアの脅威を抱えています。
—オバマ政権の動きを見ていると、ウクライナ問題でもシリア問題でもロシアに対して寛容であるように見えます。これは、中国の北辺にプレッシャーをかけ得る存在であるロシアとの関係を保ちたい意図があるからでしょうか。
茂木:オバマ大統領がそこまで考えているかどうかは分かりません。しかし、側近の中にはそのように考えている人もいるでしょう。
—だとするとオバマ政権は、安倍政権がプーチン政権との関係を深めるのも歓迎でしょうか。
茂木:日ロ首脳会談を開くことにオバマ大統領は不快感を示していますね。しかし、リアリズムの視点に立てば、日ロの関係強化を認めることもありうるでしょう。
ロシアがISへの空爆を始めて以降、ロシアに対するオバマ政権の姿勢はソフトになっています。対ISでロシアの力を利用しようと考えているのでしょう。同じように、中国を牽制するためにもロシアを利用しようと考えるかもしれませんね。
だとすると、現在の環境は、日本にとって北方領土交渉を進めるチャンスです。米国からの妨害を受けずに対ロ交渉を進められますから。米国の衰退は、日本が自立した外交を展開する千載一遇のチャンスなのです。
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