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『「第2次朝鮮戦争」を前に日米を裏切る韓国 文在寅政権は早くも北朝鮮に引きずり回され始めた』(6/5日経ビジネスオンライン 鈴置高史)について
6/6日経朝刊に依れば、「安倍首相は日経主催の<アジアの未来>の中で、『一帯一路に協力姿勢 公正さ条件 日本企業の参画、妨げず』」と表明したようです。これに対し政治部次長の吉野直也氏は次のようにコメント。<日中関係改善へメッセージ 首相、アジア投資銀は慎重
安倍晋三首相が中国主導の広域経済圏構想「一帯一路」について協力姿勢に転じたのは、停滞する日中関係改善へのメッセージにほかならない。北朝鮮問題やトランプ米政権の誕生に伴う北東アジア情勢の変化が背景にあるが、同構想を無原則に認めるわけではない。「一帯一路」構想を資金面から支えるアジアインフラ投資銀行(AIIB)加盟にはなお慎重だ。

晩さん会で演説する安倍首相(5日、東京都千代田区)
今回の首相発言の要諦は「一帯一路」構想を入り口から否定するわけではないという点だ。これまで安倍政権は構想に否定的と受け止められていた。少なくとも中国側はそう思っていた。日本側が構想への条件や注文に傾斜していたためだ。今回、まず構想を前向きに評価、そのうえで条件や注文をつけた。中国側の印象は変わった。
首相の演説を聞いた中国政府高官は「基本的に前向きなメッセージだったと理解し、歓迎する」と述べた。
この時期の首相発言は来年の政治日程からの逆算に基づく。今年と来年は日中にとって節目の年。今年は日中国交正常化45周年、来年は日中平和友好条約締結40周年に当たる。来年はとりわけ重要だ。
日本政府は7月に開く20カ国・地域(G20)首脳会議を利用して首相と中国の習近平国家主席が会談、その後、中断している日中韓首脳会談の早期開催を描く。
この日中関係改善のシナリオを円滑に進めるための布石として「一帯一路」構想の協力姿勢を持ち出した。日中関係改善は北東アジアの安全保障環境とも連動する。核・ミサイル開発を続ける北朝鮮問題だ。
日米韓で圧力強化を申し合わせ、国連の声明で非難したところで、北朝鮮が蛮行を改める兆しはない。北朝鮮が貿易のほとんどを依存する中国が本気で説得しない限り、北朝鮮には響かない。
もう一つは米国だ。環太平洋経済連携協定(TPP)を推進したオバマ前政権は「一帯一路」構想をTPPに対抗する枠組みととらえ、敵視した。安倍政権もオバマ前政権と足並みをそろえたが、その歯止めはなくなった。
むしろ「米国第一」主義を掲げるトランプ大統領が安全保障の原則などを無視して突然、中国との危うい「取引」に出かねないとの懸念がある。日本が中国と距離を詰めるのは米中間に埋没しないための「保険」の意味合いもある。
中国側にも首相の協力姿勢は、関係改善に踏み出しやすい環境をつくる。秋の共産党大会で習主席は2期目の人事を決める。この人事で政権基盤をさらに強固にしたい。その前に日米などとの大きな摩擦でエネルギーを費やす事態は避けたいのが本音だ。
習主席には首相とトランプ氏の蜜月関係が一種の「圧力」にも映っている。日中関係改善は、中国を標的にした日米同盟関係の深化という大義を形骸化させることにもつながる。ただし、日中がこのまま一直線に改善に向かうわけではない。
首相が「一帯一路」構想に協力姿勢を示したといっても、日本政府にその具体策があるわけではない。AIIB加盟に慎重なのは、その一例だ。譲れない一線もある。中国による沖縄県・尖閣諸島付近の挑発は看過できない。南シナ海で領有権を主張し、人工島を造成している行為も容認できない。
北朝鮮問題にしても中国が動かず、北朝鮮が核実験やミサイル発射をやめなければ、日米と中朝、これにロシアが加わり、にらみ合う展開となる。日中関係改善への道は平たんではない。>
まあ、リップサービスの部分もあると思いますが。日本企業が「一帯一路」にどれだけ魅力を感じるかでしょうけど。$の海外流出規制をし、日本人人質を取り、先日は7人目を処刑したような国に投資するかどうかです。それを見据えて発言したのかも。勿論米国とは擦り合わせ済でしょう。AIIBに参加しないのは賛成です。6/5宮崎正弘氏のメルマガに依れば、「一帯一路」は閑古鳥が鳴いているそうです。魅力は少ないでしょう。
http://melma.com/backnumber_45206_6538623/
本記事に依れば、鈴置氏は「早ければ6月末、遅くとも8月末までに北朝鮮への攻撃を開始するとの観測が高まっています。」と述べています。在韓米軍は文在寅政権が裏切ることが予想されるため当初は使わず、空母や日本、グアム、米本土からの攻撃になるという見立てです。米国は中露には相談すると反対されるため、相談せず一気に攻撃すると思います。日本にはロジの問題があるので、連絡を取り合っていると思いますが、韓国は聾桟敷に置かれている状態でしょう。
朝鮮半島では、中国の皇帝の使いを迎えるために、1536年(李氏朝鮮時代)に迎恩門を造りました。日本が日清戦争に勝利して、やっと中国の属国の立場から独立でき、1897年に独立門が立てられました。捏造された歴史しか教わらない韓国人は独立門を「日本からの独立」と勘違いしているそうで、哀れとしか言いようがありません。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BF%8E%E6%81%A9%E9%96%80
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8B%AC%E7%AB%8B%E9%96%80
日本は『非韓六原則=助けない、教えない、関わらない、観ない、行かない、買わない』で行くべきです。6/6NHK朝7時のニュースで韓国デビューした日本人若手芸能人を採り上げていました。母親が関西弁でしたので、韓国に親和性があるのかもしれませんが、延々と続けて報道する姿勢に疑問を感じました。そんなに長時間使って報道する価値があるのかと。まあ、韓国が孤立しているので、日本人の嫌韓感情を和らげようと左翼・リベラルが判断したのでしょうけど、こんな番組を見せられれば見せられるほど嫌韓は進んでいくでしょう。NHKに対する信頼も薄れて行くというのが分かっていません。左翼・リベラルはアナクロ、ガラパゴスという自分の立ち位置が分かっていません。長い目で見れば滅びるだけです。反日、二重基準、ご都合主義が見えてきていますので。
記事

カール・ビンソン、ロナルド・レーガンに続き、「北朝鮮包囲」に加わる原子力空母ニミッツ。米国による北朝鮮攻撃が実行される時、文在寅政権はどう動くのか(写真は2013年、米韓合同演習に参加した時のもの。写真:AP/アフロ)
(前回から読む)
北朝鮮が文在寅(ムン・ジェイン)政権をたぐり寄せ始めた。
突然「西側」から抜けた
—「文在寅の韓国」はどこに行くのでしょう。米国との同盟を続けるのか、中国を頼るのか、あるいは北朝鮮と組むつもりなのか……。
鈴置:「つもり」だけで言うなら、北朝鮮との関係を一気に改善し、「民族和合」を基に周辺国家に堂々と対することができる国を作る「つもり」でしょう。
これは多くの韓国人の描く国の理想像でもあります。ただ現実には、韓国は周辺国家にますます引きずり回される国となりました。まず、北朝鮮に頭が上がらなくなったのです。
国連安全保障理事会は5月22日、前日の北朝鮮の弾道ミサイル発射に対し「強く非難する」との報道声明を発表しました。
日本、米国、英国、フランスなど西側各国はそれに加えて「さらなる対北制裁を実行すべきだ」と表明しました。ところが韓国は沈黙を貫きました。これまでは各国と足並みをそろえていたのに、突然、変身したのです。
韓国各紙は「裏切り」に懸念を表明しました。中央日報のシム・ジェウNY特派員は「駐国連韓国代表部の沈黙」(5月26日、日本語版)で以下にように書きました。
- 北朝鮮の挑発の度に韓国は米日大使とともに記者会見を行い、強力な追加制裁を要求してきた。しかし、この日(5月23日)の韓国代表部は突然姿を見せずに沈黙を貫いた。
- 一部では制裁より対話に比重を置いている新政府が立ち上がってから顔色を伺っているのではないかという指摘が出た。
朝鮮日報も「安保理、対北制裁に声を強めるのに……韓国は沈黙」(5月24日、韓国語版)で「突然の沈黙」に疑念を呈しました。
人権決議不参加も文在寅
—韓国にとっても北朝鮮の核・ミサイルは脅威です。なぜ、日本や米国を裏切るのでしょうか。
鈴置:韓国が北朝鮮に「NO」が言えない国になったからです。文在寅政権は北朝鮮との関係改善を公約に掲げ誕生しました。
北朝鮮はこれに付け込み「言うことを聞かないと、対話してやらないぞ」と脅せるようになったのです。
対北制裁に関して言えば、韓国は安保理決議以上の厳しい制裁には言及できなくなったということです。いずれ、安保理による対北制裁決議に加わらなくなる可能性もあります。
2007年、日本を含む西側が主導した国連の北朝鮮人権決議案への投票で、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権(2003-2008年)は棄権しました。その棄権を推進した1人が当時、同政権で秘書室長などの要職を務めていた文在寅氏です。
対話を哀願する左派政権
文在寅大統領も「NOと言えない」のが明らかになったのは政権が発足して4日後の5月14日でした。この日、北朝鮮は大統領の就任後、初めてとなる弾道ミサイルを撃ちました。
文在寅大統領は「強く糾弾する」と北朝鮮を非難しながらも「対話路線は変えない」と語りました。そのうえ「ミサイル発射をする限り対話しない」つまり「ミサイル発射を辞めたら対話する」とも表明してしまいました。(「北朝鮮のミサイル発射が増幅する米韓の不協和音」参照)。
こんなことを言えば「よほど対話してほしいのだな」と北朝鮮から足元を見られてしまいます。さらには「俺を怒らせるなよ。対話してやらないぞ」と脅されてしまいます。
南北関係の改善が始まらないと、文在寅政権は一部の国民から「公約は空手形だった」と批判されるでしょう。保守派からも「ほら見ろ。関係改善など理想論じゃないか」と馬鹿にされてしまう……。一方、北朝鮮は対話などしなくても困らない。
北朝鮮にとって文在寅政権の登場は干天の慈雨でした。世界中から「核を捨てろ」と圧迫される時に「対話を哀願してくる」ありがたい政権が南に発足したのです。
中国にも譲歩を開始
—「文在寅の韓国」を米国が警戒するわけですね。
鈴置:朴槿恵(パク・クネ)政権の米中二股外交に米国は手を焼きました。その「離米従中」に今度は「親北」も加わったのです。米国は北朝鮮だけではなく、韓国も潜在的な仮想敵と見なしていると思われます。
—文在寅政権は中国にも「NO」と言いません。
鈴置:5月19日に大統領特使として習近平主席と会った李海瓚(イ・ヘチャン)元首相は大きく譲歩しました。
朴槿恵政権が「中国に害を与えるものではない」と主張していたTHAAD(地上配備型ミサイル防衛システム)について「中国の憂慮を理解する」と述べたうえ、配備見直しに関する協議まで申し出たのです(「文在寅政権は『五面楚歌』から脱出できるか」参照)。
—なぜ中国に対し、そんなに弱腰なのでしょうか。
鈴置:文在寅政権は反米政権です。米国の神経を逆なでする数多くの公約を掲げて当選しました。米国と敵対する以上、中国に傾かざるを得ないのです。
- 米国が神経を尖らす文在寅の「離米従中親北」公約 ・早期の南北首脳会談 ・在韓米軍へのTHAAD配備の見直し ・開城工業団地と金剛山観光の再開 ・戦時作戦統制権の返還 ・日韓慰安婦合意の破棄または再交渉
「香港扱い」された韓国
—でも、普通の韓国人までもが「従中」し、例えばTHAAD撤去に賛成するでしょうか。
鈴置:普通の人こそが「従中」なのです。李海瓚・元首相の訪中時に「香港並み事件」が起きました。
特使は大統領の名代ですから、普通は習近平主席と同じ大きさの椅子に小机を挟んで向き合って座ります。実際、過去の特使にはそうした席が用意されました。
ところが今回、李海瓚特使に与えられたのは「対等の席」ではなく、習近平主席とは離れた場所の「下座」でした。
朝鮮日報の「中国、特使団に香港行政長官級の低い待遇 首脳会談も確答せず」(5月20日、韓国語版)の写真を見ると、それを確認できます。
—「中国の一部」に扱われて、韓国人は怒ったでしょうね。
鈴置:話はここからが興味深いのです。確かに「香港扱い」に各紙は怒りました。でも「そんな中国の言うことをついつい聞いてしまう自分たち」であることを認めもしたのです。
中央日報の社説「国益と自尊を優先する堂々とした対中外交を展開せよ」(5月25日、韓国語版)には、以下のようなくだりがありました。
- 中国の態度に懸念を覚える。習近平主席が上席に座り、我が大統領の特使は下座に座らせるという儀典に対する疑念を抱く我々としては、韓国を馴致(じゅんち)しようとの意図が中国にあるのではないかとの思いを禁じ得ないのだ。
蘇る冊封体制
—韓国人が「馴致」――飼いならされなければいいだけの話でしょう。
鈴置:そこがポイントです。中国がどう出てこようと「馴致」されなければいいと日本人は思います。でも中国人に上から目線で接せられると、韓国人はごく自然に「馴致」されてしまう。だから「馴致しないで」と社説で中国に頼む、奇妙な光景が出現するのです。
宗主国と朝貢国の関係――文明の中心地たる中国が周辺の遅れた国々を「馴致」するという世界観――から、中国も韓国も脱していないことがよく分かります。
中国は韓国人の心情をよく見抜いていて命令する時は、昔の宗属関係を思い出させたうえで言い渡すのです。すると韓国人も自分たちの生命がかかったTHAADの問題でさえ、中国の顔色を見てしまう。
なお、中央日報の日本語版では、「馴致」は宗属関係を感じさせない「懐柔」という単語に訳されています。
米国も対韓威嚇に本腰
—では「文在寅の韓国」は中国と北朝鮮に引きずられ、米国からどんどん離れていくのですか。
鈴置:米国も韓国を威嚇し始めました。米国の武器は「同盟打ち切り」です。米国の朝鮮半島専門家、スナイダー(Scott Snyder)外交問題評議会(CFR)シニア・フェローがNIKKEI Asian Reviewに「Trump-Moon friction points to watch out for」(5月18日)を書きました。
見出しの「トランプと文の摩擦は警戒を要する」が示す通り、今後予想される米韓の葛藤を分析した記事です。
スナイダー・フェローは「文政権は(トランプ政権が反対する)早期の南北交渉に乗り出し(北朝鮮へのドル送金パイプとなっている)開城工業団地を再開しそうだ」と書いた後、次のように記しました。
- A coordinated strategy will be essential: Conflict here would strain the alliance and drain American congressional and public support for South Korea.
訳せば以下です。
- 戦略的な協調が重要だ。米韓の対立は同盟を脅かし、米国の議会と世論による韓国への支持に冷や水を浴びせるであろう。
「韓国は中国の一部だ」
—「同盟を打ち切るぞ」ですね。
鈴置:米議会の重鎮もはっきりと韓国に申し渡しました。中央日報が「『THAADは米韓同盟による、同盟のための決定だ』と米議員らは韓民求(ハン・ミング)国防長官に語った」(5月29日、韓国語版)でそう報じました。
「米議員」とは訪韓した上院外交委員会・アジア太平洋小委員会のガードナー(Cory Gardner)委員長です。
5月29日、韓民求・国防長官に「THAADは米韓同盟による、同盟のための決定だ」と語りました。THAADは同盟の象徴だ。その配備を文在寅政権が見直すというなら同盟を打ち切るぞ、とクギを刺したのです。
トランプ(Donald Trump)大統領自身が「韓国は歴史的に中国の一部だった」と公然と語り、韓国を切り捨て中国に譲り渡してもよいと言い出しています(「『韓国は中国の一部だった』と言うトランプ」参照)。
米朝は「第2次朝鮮戦争」の瀬戸際にあります。開戦となれば北朝鮮は韓国、日本、米国をミサイルなどで攻撃します。北朝鮮は核弾頭を搭載したミサイルも使うと宣言しています。
そんな非常時に、文在寅政権はTHAAD配備を見直すとの公約を掲げたまま。米国が「同盟を打ち切る」と言い出すのは当然です。
米韓同盟はいつまで持つのか分からない、という認識が米国の専門家の間に次第に広がっています。米国の「同盟打ち切り」は脅しではなく本気なのです。
詭弁で誤魔化す
—文在寅政権はどう対応するのでしょう?
鈴置:問題を先送りするつもりでしょう。5月31日、米上院・民主党院内幹事のダービン(Dick Durbin)議員から「THAADに関する立場」を聞かれた文在寅大統領は以下のように応えています。
中央日報の「文大統領、『THAAD真相調査の支持は完全に国内的措置』」(5月31日、韓国語版)から、発言を引用します。
手続き上の正統性を踏まなければならない。まず(導入に関する)環境影響評価を経ねばならず、議会でも十分な議論がなされる必要がある。これは米国でも全く同じである。
過去の政権の決定ではこの2つのプロセスが十分ではなかった。時間がもう少しかかるだろうが、米国が理解してくれると考える。
「配備見直し」の公約は取り下げたくない。しかし、見直しに踏み切れば米国から見捨てられてしまう。そこで環境影響評価で時間を稼げばよいと考えたのでしょう。
—「米国も同じ。だから理解してくれる」のでしょうか。
鈴置:全くの詭弁です。北朝鮮の核ミサイルが降ってくるかもしれない時に、環境影響評価に時間をかけ、議会に諮ってから防衛兵器を導入するなどということを米国はしません。現に、アラスカやカリフォルニアに実戦配備する迎撃ミサイルの数を一気に増やしました。
文在寅政権としては、へ理屈をこね、その間に状況が変わるのを待つしかないのです。米国側も大統領の詭弁を聞いて唖然としたと思います。が「今すぐにTHAADを撤去せよ」と言われなければ「同盟を打ち切る」とは言い出さない。
巡航ミサイルは600発
—「状況が変わる」なんてことがありますか?
鈴置:北朝鮮の核問題が解決すれば、韓国は米国に対し「THAADを撤去してほしい」と言いやすくなります。対北用ということで緊急配備されたのですから。
トランプ政権は米国の軍事的圧力と中国の経済的な圧力で北朝鮮に核を放棄させるつもりです。が、いつまでも待つつもりはありません。早ければ6月末、遅くとも8月末までに北朝鮮への攻撃を開始するとの観測が高まっています。
対北攻撃は航空母艦を3-4隻、ことによれば5-6隻使い、空軍や海兵隊の爆撃機も可能な限り出撃する見込みです。朝鮮半島周辺海域から600発の巡航ミサイルを撃ち、米本土からも大陸間弾道弾(ICBM)を発射する構えです。
「第2次朝鮮戦争」が始まれば、北朝鮮の軍事施設はほぼ完ぺきに破壊されます。結果的に韓国もTHAADで米中板挟みに悩む必要はなくなります。
先制攻撃なら北に言いつける
—「第2次朝鮮戦争」が起きたら、韓国はどうするのでしょうか。
鈴置:文在寅大統領は「米朝の間に立って止める」と宣言しています。選挙戦の最中に「米国が軍事行動を実施しかけたら、大統領としてどう動くか」との質問に、こう答えています(「米国に捨てられ、日本に八つ当たりの韓国」参照)。
- まず、米国の大統領に電話し、我々との同意がない米国の一方的な先制攻撃は認めないことを知らせ、留保させる。次に、全軍に非常命令を下し、国家非常体制を稼働する。
- ホットラインを初めとする複数のチャネルを通じ、北朝鮮に対し米国の先制打撃の口実となるような挑発を即刻中断するように要請する。その過程では中国とも協調する。
—「先制攻撃されるぞと、北に言いつけるつもりか」と問題になった発言ですね。
鈴置:そうです。米国はそんな韓国に攻撃を事前には教えないと専門家は口をそろえます。朴槿恵政権(2013―2017年)当時も「事前通告はない」と見られていました。その頃は、北朝鮮ではなく中国にたれ込む、との懸念からでしたが。
—米国は北朝鮮を攻撃する際、韓国の基地は使わないのですか?
鈴置:少なくとも初めの一撃には使用しない模様です。韓国に情報が漏れますから。日本やグアムの基地よりも、烏山(オサン)など在韓米空軍基地を使った方が敵地に近い分だけ効率はいいのですが。
「中立化」を宣言?
—結局、「誰にもNOを言えない韓国」は戦争を止められないということですね。
鈴置:もちろんです。第2次朝鮮戦争は「米国・日本と北朝鮮の戦い」なのです。韓国には北朝鮮の核武装を止めるために戦争する覚悟はないのです。
保守派の黄教安(ファン・ギョアン)首相が大統領代行を務めていた時でさえ、米国の先制攻撃を支持しなかったではありませんか、日本とは対照的に(「米国に捨てられ、日本に八つ当たりの韓国」参照)。
とは言え、戦争になれば韓国も巻き込まれます。米国は地上戦はしないと言っていますが、北朝鮮はミサイルや長距離砲、ロケットで日本や韓国を攻撃します。
文在寅政権はこれを防ぐため「中立化」を宣言するかもしれません。北朝鮮に対し「韓国は参戦しないし在韓米軍基地も使わせない。その代わりに韓国への攻撃はしないでほしい」と持ちかけるわけです。
中国の歓心を買う文在寅
米国は「第2次朝鮮戦争」が終結するまでは少なくとも、韓国の裏切りを許しません。6月1日、訪韓中のダービン議員が以下のように語りました。聯合ニュースの「『韓国がTHAADを望まないなら他で使う』と大統領に伝えた」(6月1日、韓国語版)から引用します。
- 「米国は困難な予算状況に直面し、多くの事業を削減している。韓国がTHAADを望まないなら、9億2300万ドル(THAAD配置・運用費用)は他の場所で使う」と文大統領に伝えた。
- (韓国)政府の一部の人が「THAADは主に在韓米軍を保護するもの」との主張を繰り広げていることに懸念する。この2万8500人の米軍兵士は韓国の安全のために命をかけている。すべての韓国民と同様に彼らも守られなければならない。
「THAAD配備見直し」の公約を降ろさない文在寅政権への“最後通牒”です。ダービン議員の“最後通牒”を青瓦台(大統領府)は明らかにしていませんでした。米韓関係が際どい状況にあると国民に知られたくなかったのでしょう。
6月2日には朝鮮日報が「『文在寅政権の裏切り』に米国が怒る」と報じました。朝鮮日報の見出しは「米CNBC『THAAD調査は中国の歓心を買う文大大統領の試み』」(韓国語版)です。
大統領選挙中、米軍がTHAADの部材を追加して韓国に搬入しました。韓国メディアもそれを報じていたのですが、5月30日になって突然、文在寅大統領は報告が上がっていなかったと激怒、経緯を調査するよう命じました。
「文在寅政権は未報告を問題化することでTHAAD配備を拒否するつもりだ」と米国側は疑い始めたのです。「これから米国のムチが降ってくる」と韓国人は身をすくめています。
(次回に続く)
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『米国留学中国人「自由礼賛」卒業スピーチの波紋 「中国批判」と批判され、ネットで「忠誠と謝罪」表明へ』(6/2日経ビジネスオンライン 北村豊)について
6/4は天安門事件の28周年記念日でした。相変わらず、中国は報道を統制し、昨日は朝6時台のNHKニュースでは「中国でのNHKのニュースの中で天安門事件を報道した2分間、画面が真っ黒になり、何も見えず、音も出ない状態になった」とのこと。中国人はもっと共産党政府の嘘に怒るべきでしょう。貧しい時代だったらいざ知らず、「走出去」や海外旅行で傍若無人の振る舞いにより顰蹙を買うぐらい外国と接することが多くなっているので、共産党政権のやり方がおかしいとすぐ気づくはずです。でもそれを発言すれば、北村氏の記事のように「物言えば唇寒し」のようになります。こんな社会が理想とは思えません。でも中国人の本性は「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」ですから、中共政府を賢いと思っているのかも。
「南京事件」も「従軍慰安婦」も中共が仕掛けた歴史戦の嘘です。やっと、日本人も「従軍慰安婦」は嘘だったというのに気付いてきましたが、「南京事件」はまだまだです。「事件」と言われるほどの殺戮があったかというと、通常の戦闘行為でそれ以上でもそれ以下でもないと言ったところが正解でしょう。中国は国民党のように平気で「黄河決壊事件」を起こし平気で数十万人も人民を殺すことをしましたし、毛沢東は大躍進や文革で少なくとも2000万人以上を殺したと言われています。政党が変わっても為政者は平気で人民を殺せる国です。共産主義の特質ではなく、中国・漢民族の特質です。
デービッド・ケイ国連特別報告者(個人の立場)の「日本の報道の自由の危機」というのも左翼の手が伸びているためです。まあ、彼にとって事実はどうでも良く金が稼げれば良いと言ったところでしょう。デービッド・ケイだけでなく、ケナタッチ国連特別報告者について「特別報告者は国連とは別の個人の資格で活動しており、その主張は必ずしも国連の総意を反映するものではない」とグテーレス事務総長が明言したことで分かります。左翼・リベラルが裏で金を渡してやっているだけです。国民も国連と名前がついたのを有難がるのは一種の舶来病と思った方が良い。杉田水脈氏のHPやツイッターにも載っています。
http://www.sankei.com/politics/news/170602/plt1706020053-n1.html
http://blog.livedoor.jp/sugitamio/archives/8882295.html
話は変わり、北のミサイルについて国民の避難訓練の記事が6/5日経朝刊に出ました。日経も大部分の記事にロックがかかり、URLだけでは全文が見れないため、朝刊の記事を貼り付けます。<未知の脅威 手探りの試み ミサイル避難訓練相次ぐ 住民の理解促進課題に
北朝鮮が弾道ミサイルの発射を繰り返していることを受け、攻撃を想定した住民避難訓練をする自治体が出始めた。ミサイルは発射から7~8分程度で日本に届くとされ、避難に与えられた時間はさらに短い。地震や津波といった自然災害と異なる「前例のない脅威」への対処でもあるだけに、自治体は戸惑いつつも手探りで訓練に取り組んでいる。


3月17日朝、秋田県男鹿市北浦地区で「ブウォー」という聞き慣れないサイレン音が響いた。武力攻撃など有事の際に国民に警戒・避難を呼びかける「国民保護サイレン」だ。この日実施された日本初の弾道ミサイル攻撃時の避難訓練の開始を告げるもので、小学生や住民らは指定された建物内への避難を2分程度で完了した。
米軍基地も標的
北朝鮮は昨年、20発以上の弾道ミサイルを撃ったほか、今年は既に9回計12発を発射。一部は秋田県沖合の日本海の排他的経済水域(EEZ)内に着弾した。実際に半島有事になれば米軍の拠点である在日米軍基地にミサイルを撃ち込む構えも示している。
こうした動きに危機感を強めた国が、秋田県と男鹿市に協力を求めて実現したのが男鹿での訓練だった。ミサイル攻撃時には、爆風や破片などから身を守るため、いかに素早く建物や地下に身を隠せるかがカギになる。小規模でも実動訓練を実際にやってみることで課題を洗い出し、さらに報道などを通し攻撃時にとるべき行動を国民に知ってもらうのが国の狙いだった。
4月21日、内閣官房と総務省消防庁は都道府県向けにミサイル脅威に関する説明会を都内で開催。具体的な避難方法を住民に周知するとともに、各自治体でも訓練をするよう要請した。
最初に動いたのは自衛隊の重要施設のある青森県むつ市だった。「避難方法に関する文書を市のホームページに載せるだけでは市民に十分伝わらないのではないか」――。宮下宗一郎市長の一声で、国の説明会から約3週間後の5月11日、住民約40人を公共施設の窓のない場所に誘導する訓練をスピード実施した。同市はその後、参加者が頭部を守りつつ身をかがめた訓練の写真をホームページ上で公開した。
続く6月4日には、山口県と同県阿武町が国と共同で、福岡県大野城市も市単独でそれぞれ訓練を実施した。大野城市はもともと同日に総合防災訓練を計画しており、国からの要請を踏まえ「急きょ訓練メニューにミサイル避難を組み込んだ」(危機管理課)。
月内には山形県酒田市、新潟県燕市が国・県と共同訓練を実施する。福岡県の吉富町は町全体に国民保護サイレンを鳴らし、中学生や教職員、一部の住民ら約400人の大規模な避難を試す訓練を県と共催する。このほか、長崎県が7~8月ごろに検討中で、長野県軽井沢町は「訓練をしたいという意思を県に伝達済み」(消防課)という。
内閣官房でミサイル攻撃時の国民保護を担当する伊藤敬・内閣参事官は「複数の都道府県から相談がきており、今後も共同訓練を実施していく」と語る。訓練の動きは今後も広がりそうだ。
ミサイルを想定した訓練は初めての試みだが、「警報を聞いて避難行動に移るという点では、自然災害と基本は同じ」(山口県防災危機管理課)という。それよりも一部の県が苦心しているのは「訓練実施について市町村や住民の理解をどう得るか」だという。
秋田県で日本初のミサイル避難訓練が実現できたのは、佐竹敬久知事が防衛問題への関心が強いうえ、男鹿市が1983年の日本海中部地震の津波被害をきっかけに防災意識の高い自治体になっていたことが役立った。
迎撃は不可能に
自治体の防災意識は、地震発生や台風来襲の多寡など地域の環境によって濃淡がある。さらに、「弾道ミサイル攻撃」という未体験の人為的災害ともなると、住民の理解はなかなか及ばない。「現在、市町村に訓練実施の意向の有無を確認中だが、ピンときていないところもあるようだ」(ある県の担当者)
北朝鮮が5月14日に発射したミサイルは高度2000キロメートルまで上昇し、推定マッハ15かそれ以上の速度で着弾。自衛隊のミサイル防衛網では迎撃がほぼ不可能なレベルに達したようだ。国民の命を守るミサイル避難訓練を着実に広げるには、国、自治体、国民が目の前の脅威について共通の認識をつくれるかどうかにかかっている。>
<遅れに遅れた訓練 大都市部の対応焦点
北朝鮮が日本に届く中距離弾道ミサイルの発射実験を初めてしたのは1993年だった。ただ、日本では「自衛隊のミサイル防衛(MD)網があるから迎撃できる」といった建前論が支配的で、ミサイル避難訓練の実現は遅れに遅れた。
流れが変わったのは昨年夏。複数のミサイルを同時発射する北朝鮮の「MDすり抜け」の意図に危機感を強めた内閣官房と総務省消防庁が、ついに「ミサイル避難訓練」実現へ動き始めた。
「津波のときは高台へ逃げるように、ミサイルが来るときは建物や地下室に退避すればいいのだな」「建物や地下がない場合は、伏せるだけでも立派な避難行動になる」――。いち早く訓練を計画・実施した自治体の職員たちは今、対処法を急速に学びつつある。山口県が早々と訓練を実施することにしたのは「1回目を早めに済ませれば、それを踏まえて他の市や町にも迅速に広げていくことができる」(防災危機管理課)と考えたからだった。未体験の脅威への「段階的アプローチ」である。
訓練実施は、日本海沿岸や朝鮮半島に近い九州北西部が先行している。今のところ、人口の集中する大都市部で訓練を実施する動きは表面化していない。
北朝鮮の相次ぐミサイル発射が示す通り、脅威はそこに現実にある。もはやタブー扱いが許されなくなった「ミサイル避難訓練」の実施は、自治体の首長や職員が住民をより確実に守ろうとする意思と方策を持っているか否かを知る目安になってきたようだ。
(編集委員 高坂哲郎)>(以上)
確かに高坂編集委員の述べた通り、九州西北部が先行しているというのは、4/6に小坪慎也行橋市議がブログに載せてからのことで、政府もそれに動かされて、自治体に住民への「国民保護ポータルサイト」の広報につき協力要請しましたのではと思っています。ま、国民一般のレベルでは正常性バイアスがかかり、「起きる筈がない」と言う人が大半です。
https://samurai20.jp/2017/04/j-alert/
「ミサイル避難訓練」の報道自体も少ないです。国民の生命及び財産を守るのが政府の第一番目の使命です。避難訓練もしない、ガスマスクの配布もしないのでは、国民の命を軽視しているとしか言えません。でも東京メトロが運転を休止した時に、「ミサイル避難訓練は騒ぎ過ぎ」とか言って、水を差す輩が居る訳です。自分が勝手に死ぬのは良いですが、多くの国民を巻き込むのは止めてほしいし、国民もこんな声に騙されてはいけないと思います。危機管理の要諦は「最悪を想定し、準備する」、「悲観的に準備し、楽観的に対処せよ」です。企業も声を上げないのはおかしいです。BCP(Business Continuity Plan)で多くのセミナーを開いてやっているのに、ミサイル避難訓練をしているなんて聞いたことがありません。まあ、左翼・リベラル・在日からクレームが入るのを恐れて発表しないだけかもしれませんが。経団連が音頭を取り、「自社の人材保護の観点から避難訓練を」と誘導すれば良いのに。もし、核や生物化学兵器が飛来すれば、少子化問題どころでなく、忽ちに人口大幅減となることが予想されます。GDPを云々する経済評論家はもっと騒いで良いのでは。なお、7/1には「士気の集い」主催で国民保護についてのセミナーを開きます。詳しくは本HPの「トップページ」をご覧ください。
http://jp.reuters.com/article/idJP2017060401001211?il=0
http://www.news24.jp/articles/2017/06/04/07363346.html
6/2二階堂ドットコムの記事に<海上自衛隊が合同作戦並びに攻撃作戦を立案中
残ってしまうので文書での明示や公式の命令はされてないようだが、情報5省庁(内調・防衛・外務・公調・警察庁)+2庁(海保・総務省消防庁)の安全保障会議出席省庁は、「有事の際に」ということでそれぞれの機関が行う「戦時特別体制」の立案が極秘になされている。それこそ「忖度」の世界で、政府は一切、そのような命令を出していないし、公式の記録にもない。あっても特定機密となる。
ミサイル防衛など、日本の矢面に立つのは海上自衛隊。上陸作戦をやることがあるとすれば特別警備隊であろうが、そこまでは人数が少ないので無理だろう。陸上作戦は米軍に任せることになるだろうね。
陸上イージスシステムを設置するという案もあるが予算と国会的な問題で先に進まないようだ。
外務省は北朝鮮の動向を探るならスイスとフランス、まぁ広義で言えばヨーロッパが重要ということを知っているようだが情報が取れないだろうね。そりゃぁ、普段の仕事もあるし仕方ない。でも、いつまでもトランプの直電とか、米軍に頼ってるようじゃしょうがないだろう。もっと情報収集を強化しないと。日本の場合は法律によって活動が抑制されるから、民間に投げるしかないのかもしれない。でもそうすると民間人は守ってもらえないし当該国でスパイの疑いをかけられ逮捕される場合もある。
いやはや、我が国はいつになったらまともに海外情報収集ができるようになるのかねぇ。>というのもありました。真偽の程は分かりませんが。自衛隊は敵と戦うため、国民は自分で自分の身を守るしかありません。それは戦争になれば、どの国でもそうならざるを得ないからです。平和憲法で脳内お花畑になり、他人が守ってくれると70年間も思ってきたため、脳が麻痺してしまっているのでしょう。現実は違うという事を肝に銘じなければ。
北村氏の記事を読んで、自由の貴さに気付いた楊舒平に「南京虐殺」と「従軍慰安婦」について意見を求めたいと思いました。「言論の自由」の本質は「政府を批判できる自由」だからです。共産党政府の言っていることをそのまま信じるだけでは楊舒平の気付いたという自由の味も半ばなりけりでは。良く調べてから発言してほしいと思います。何故アイリスチャンが自殺したか?戦勝国である米国と中国は日本を悪者にするという点では利害が一致しています。
でも、中共のやり方は本末転倒で、本来「汚染された空気」をなくすよう努力すべきでしょう。それを、一介の女子学生がユーモアを交えて紹介したからと言って、目くじらを立てるようなレベルではないと思います。所詮独裁国家の限界なのでしょうけど。本来、彼女を非難するのでなく、国民に「言論の自由」を与えるべきでしょう。またすぐ中共にご注進する他の留学生のレベルも推して知るべしです。中共の国民総動員法や反スパイ法の影響かもしれませんが。
共産主義の理念が崩壊したため、経済発展と愛国主義しか中共を支える論理がなくなってしまったわけです。日本の左翼は「愛国」というとすぐに目くじらを立てますが、中国の「愛国」にも注文を付けなければ。日本の左翼・リベラルはご都合主義で論理破綻しているのが国民にもやっと分かってきたと思います。外国への内政干渉と言うなら、靖国や教科書問題で中韓がうるさく言って来るのもそうでしょう。左翼・リベラルは中韓を排撃してください。
記事

中国外交部報道官の陸慷氏は「中国国民は態度表明に責任を負わねばならない」と語った。写真は2015年のもの。(写真:ロイター/アフロ)
5月21日、米国メリーランド州のカレッジパーク(College Park)にあるメリーランド大学カレッジパーク校(University of Maryland, College Park)で卒業式が開催された。同校の卒業式では式の始めに教職員と学生によって選ばれた卒業生の代表がスピーチを行うことが毎年の慣例となっている。今年の卒業式が始まるとメリーランド大学学長の“Wallace D. Loh(陸道奎)”がステージに上がり、「今年、卒業生の代表として選出されたのは“Shuping Yang(楊舒平)”です」と紹介し、彼女に登壇を促した。
楊舒平がステージに上ると、学長は彼女の肩を抱きながら、会場に向かって「ご両親はどこにおられますか。差支えなければ、お立ちください」と呼びかけた。すると、これに応じて、楊舒平の母親が立ち上がり、手にした花束を高く掲げて会場から沸き上がる拍手に答えた。学長は母親に向かって、「貴女は娘さんを誇りに思っているでしょう。私たちも同様の気持ちです」と述べた。続けて、学長は楊舒平に専攻は何だったかと尋ね、楊舒平が「心理学と演劇で、第二外国語はドイツ語です」と答えると、学長は大きくうなずき、微笑みながら、楊舒平にスピーチを始めるよう促した。そして、楊舒平は演台に立ち、はっきりした口調でスピーチを始めた。
楊舒平が行った卒業スピーチの全文は以下の通り。
さわやかで新鮮で、すがすがしく自由な空気
【1】教職員の皆さん、学友の皆さん、父母の皆さん、友人たち、今日は。私はメリーランド大学の2017年度卒業式でスピーチできることを大変光栄に思います。人々はしょっちゅう私に「貴女はどうしてメリーランド大学へ来たの」と尋ねます。私はいつも決まって「さわやかで新鮮な空気」と答えます。5年前、中国から留学に来た時、私は5枚のマスクを準備していました。飛行機から降りて、ダラス空港ターミナルから離れる時、私はマスクを装着する準備をしつつ、米国で最初の空気を吸い込みましたが、マスクはすぐに仕舞いました。ここの空気はとってもさわやかで甘く、すごく贅沢なものに思えました。私には意外でした。私は中国のある都市で生まれ育ちましたが、小さい時から外出には常にマスクを装着していました。マスクを着けなければ、病気になります。しかし、ダラス空港でここの空気を吸ったその時、私は自由を感じたのです。
【2】私の目には霧も見えないばかりか、呼吸困難になることもなく、息苦しさも覚えなかった。毎回呼吸するたびに喜びを感じたのです。今日、私はここに立っていても、未だにあの自由の感覚を思い出さずにはいれません。メリーランド大学では、もう一つのすがすがしい空気が私を感動させてなりませんでした。それは自由という空気です。米国へ来る前、私は歴史の授業で独立宣言を学びましたが、「生命、自由、幸福の追求」といった言葉は私にとって何の意味もありませんでした。私はただただこれらの言葉を暗記して試験に臨み、好成績を収めました。メリーランド大学へ来るまでは、私にはこれらの言葉がそれほど奇怪で、抽象的で、異質なものに思えました。
【3】私はついに、自由が米国ではそれほどまでに神聖なものだということが分かったのです。メリーランド大学での日々、私はいつもディスカッションの授業で自分の観点を表明するよう励まされました。私は指導教官の観点に疑問を呈することができ、ネット上では教授たちを採点することまでできました。しかし、私を最も驚かせたのは、メリーランド大学が創作した劇『“Twilight Los Angeles(たそがれのロサンゼルス)”』を観た時に受けたカルチャーショックでした。『たそがれのロサンゼルス』は、Anna Deavere Smithが演出した、1992年のロサンゼルス暴動に関する劇です。黒人のRodney King(ロドニー・キング)を逮捕して暴行を加えたのをビデオに撮られた4人のロサンゼルス警官が、裁判で無罪となったことから、暴動が始まりました。丸6日間、人々は街に群れ、都市は混乱に陥りました。
ここでは自由に発言してよいのだ
【4】『たそがれのロサンゼルス』の中で、学生の演者たちは公然と人種差別主義や性差別、政治問題を論じていました。私は驚きました。私は今までこのような話題を堂々と討論できるとは思っていませんでした。あの劇は私が今まで見たこともない政治的な話であり、観衆に批判的に考えさせるものでした。私はずっとこのような話について語りたい強い願望を持っていました。但し、このような話ができるのは権力部門で、権力部門だけが真実を確定することができるのだと固く信じていました。しかし、メリーランド大学で様々な集団の中に溶け込む機会を得て、私は多くの異なった角度から真実を見ることができるようになりました。それから間もなくして、私はここでは自由に発言してよいのだということを理解したのです。私の発言が重要であり、貴方の発言も重要であり、私たちの発言も重要なのです。
【5】市民参加は政治家だけの任務ではありません。私は、学友たちがワシントンD.C.の通りを行進し、大統領選挙に投票し、各種事業のために募金を行ったのを見ました。私は誰もが参加と変革を支持する権利を持っていることを見て来ました。私は今まで一個人が市民参加しても改革はできないと思っていました。しかし、ここにいる私たちが一致団結すればできないことはありません。手を携えれば、私たちは社会をもっと開放的で平和なものにできます。
【6】2017年度卒業生の皆さん、私たちは批判的な思考を育み、人間性を気遣い、感知する教養教育を取り入れた大学を卒業します。私たちは各種分野の知識を身に付け、社会の挑戦に立ち向かう準備ができています。ある者は大学院へ進み、ある者は職業に就き、ある者は探検の旅を始めるかもしれません。しかし、私たちが何をしようとも、自由と民主主義は与えられるものではないことを忘れないでください。自由と民主主義は勝ち取る価値がある新鮮な空気なのです。自由は酸素であり、自由は激情であり、自由は愛です。フランスの哲学者ジャン・ポール・サルトルがかつて述べたように、自由は一種の選択であり、私たちの未来は今日や明日に私たちが行う選択によって決まるのです。私たちは皆が人生の次章を書く劇作家なのです。一緒に人類の歴史を書こうではありませんか。友人の皆さん、新鮮な空気を享受し、決して放してはなりません。ありがとうございました。
さて、楊舒平がスピーチを終えると、会場の聴衆は割れんばかりの拍手を楊舒平に送り、彼女がメリーランド大学での学生生活を通じて習得した「新鮮な空気」の重要性について賛意を表明したのだった。上述した楊舒平のスピーチは極めてまっとうな内容であり、誰が考えても問題はなさそうに思える。しかし、彼女が中国からの留学生であることが災いし、そのスピーチの内容が大きな問題に発展したのである。
中国を真っ向から批判し、辱めた
楊舒平がメリーランド大学の卒業式で行ったスピーチの内容は、卒業式に出席していた中国人留学生にとっては祖国の中国を辱めるものと言えた。スピーチの内容に不満を持ち、反発した中国人留学生の誰が、どのようなルートで「楊舒平のスピーチ」の動画を中国国内に伝えたかは定かではないが、中国共産党中央委員会の機関紙「人民日報」の国際版である「環球時報」およびそのネットサイトである「環球網(ネット)」は5月22日付で、前者は記事として、後者は動画そのものを報じたのであった。
環球時報は、楊舒平がメリーランド大学の卒業式で行ったスピーチは、中国の学生や全米各地の留学生の不満を誘発し、動画が中国国内に伝わった後はインターネット上における質疑を引き起こしたと報じた。環球網は当初はスピーチ全体の動画を英語と中国語の字幕付きで配信していたが、その後にこれを転載した“網易視頻(網視動画)”などはスピーチの冒頭と結語だけに編集して、肝心な内容を割愛した動画を配信した。これは恐らくスピーチの内容に危機感を覚えた当局が各プロバイダーに対し、そうするように指示を出したものと思われる。とにかく、楊舒平が米国で行ったスピーチの内容は間もなく中国国内に伝わり、ネット上に立てられたこの件に関するスレッドは、賛否両論が激しく対立して炎上した。
要するに、楊舒平はスピーチの中で、中国の環境と自由度を何度も非難したのである。空気の汚い中国では常にマスクを常用する生活を送っていたから、米国も同様だろうと考えてマスクを5枚も持参したのに、実際に吸った米国の空気は新鮮で驚いた。また、中国では種々の敏感な問題について真実を確定するのは権力部門に限定されていたが、自由と民主主義を標榜する米国では誰もが自由に思ったことを発言することが許されている。我々、卒業生はこの「新鮮な空気」を享受する権利を決して手放してはならない。楊舒平はそう述べたのだが、それは国土の大部分を深刻な大気汚染の脅威にさらされ、中国共産党の専制下にあり言論の自由を封じられている祖国の中国を真っ向から批判し、辱めたものであった。
5月24日、中国政府“外交部(外務省)”が開催した定例記者会見の席上で、外交部報道官の“陸慷”に対して外国人記者から中国人留学生の楊舒平がメリーランド大学の卒業式で行ったスピーチに関する質問が出された。それは、「中国国内では楊舒平のスピーチ内容に対し憤慨するムードが盛り上がっているが、中国人留学生、特に米国への留学生は責任を負う形で中国に関する発言を表明する義務があると、中国政府は考えているのか。中国駐米国大使館はこのことに介入するのかどうか。中国政府は中国人留学生に対し言って良い事、悪い事の手引書を発行しているのか」という質問だった。
この質問に対して、陸慷報道官は以下のように答えた。
中国国民は態度表明に責任を負わねばならない
(1)いかなる中国国民も何かについて態度を表明する時はその責任を負わねばならない。それは中国に関する問題だけでなく、いかなる問題に関しても同様である。また、中国駐米国大使館が今回の件に介入したとか、中国政府が留学生に手引書を発行しているとかいう話は、今まで聞いたことがない。
(2)事実上、貴方が提起した問題は外交問題ではないので、答える必要はないのだが、貴方が質問をしたし、ネット上でも多くの評論が展開されているので、私は敢えて二言だけ述べる。すなわち、多くのネットユーザーは、いかなる国家も誇れる一面を持ち、同時にどの国家も発展過程の中に多かれ少なかれ発展中の問題があると考えていると思う。ある国民が自分の国家を評論する時には、それがどのような場合で、どのような方式で評論するかを考えるものである。そして、誰もが彼あるいは彼女が祖国に対してどのような感情を持っているかを、その評論の中から感じ取ることは難しいことではない。
(3)貴方が言及した当該学生は卒業式後に公開で態度表明を行ったが、それをある者は遺憾を表明したと述べた。彼女は自分が祖国を愛しており、学業を成就したら帰国し、祖国のために貢献したいと述べた。もし、これが事実なら、私はこう言いたい。目下、中国は国外に非常に多くの留学生がいる。中国から出国した後は、彼ら若者たちのある事柄に対する見方や認識は一つの発展や変化の過程を経ることになるだろう。但し、彼らが最終的には心の底から自分の祖国を愛し、祖国に貢献することを願うのであれば、中国政府は彼らを励まし、支持し、歓迎すると私は信じている。
陸慷報道官が言及したように、中国国内で自分のスピーチが波紋を巻き起こしたことを知った楊舒平は、中国最大のソーシャルメディアである“微博(Weibo)”を通じて弁明を行った。その内容は以下の通り。
「今回のスピーチがもたらした反響は私の予想を大きく超えて、不安を感じています。ここに以下の通り事態を説明すると共に謝罪する次第です。私は自分の祖国と故郷を深く愛していますし、国家の繁栄発展を深く誇りとしています。また、今後自分が国外で学んだ事を活かして中国文化を発揚し、国家のために積極的に貢献したいと考えています。スピーチは、自分の留学体験を卒業生の仲間と分かち合う目的だけのもので、国家および故郷を否定し、貶める積りは全くありませんでした。ここに深く謝罪すると同時に衷心より皆さまのご理解を賜りたく。今後は今回の件から学んだ教訓を活かす所存です。また、私のスピーチのさらなる分析、ひいては人身攻撃を止めていただくよう希望します。ありがとうございます」
楊舒平は米国留学を通じて、彼女が米国という国と社会に対して感じた素直な気持ちを卒業スピーチで述べたのだった。しかし、彼女が中国という一党独裁の専制国家の国民である以上は、自由と民主主義で構成された新鮮な空気に言及することはタブーであり、越えてはならないレッドゾーンであったのだ。
亡命した学長はスピーチを称賛
彼女が学んだメリーランド大学は、「米国の軍系大学(Militarized Universities in America)」の第1位に位置づけられ、CIAなどの米国情報機関と緊密な関係にあると言われている。一方、メリーランド大学と中国との関係は1979年から始まり、同大学に設立されたOffice of China Affairs(中国事務弁公室)を通じて、累計で1万人以上の中国政府の官僚や大学管理者が研修を受けているという。但し、これを裏側から見れば、中国事務弁公室を通じて、米国が中国における情報活動を強化していることにつながるのである。
文頭で、メリーランド大学学長の“Wallace D. Loh(陸道奎)”と述べた。Loh学長は1945年に中国・上海市生まれで、世が世なら「上海のDonald Trump」と呼ばれたであろう上海の大地主の息子であった。1949年10月に中華人民共和国が成立したことで、Loh学長の一家はペルーへ政治亡命を果たし、ペルーでの悲惨な生活を経て米国へ移り住んだのである。そうした経歴を持つLoh氏がメリーランド大学の学長であり、今回のスピーチ事件がLoh学長が主導する卒業式の中で発生したことは何か関連があるのだろうか。
なお、メリーランド大学は楊舒平のスピーチについて声明を発表したが、その要点は下記の通り。
楊舒平は我が校の優等生であり、委員会が5月21日の卒業式でスピーチを行う卒業生として選出した。彼女はメリーランド大学で学べたことの喜びを表明する機会を得て、自身の経験に基づいて留学を通じて感じたことを卒業生たちと分かち合ったのである。メリーランド大学は、楊舒平が彼女の観点と独自の見解を分かち合う権利を持つことを支持するのを誇りとすると同時に、彼女が卒業式で行ったスピーチを称賛するものである。
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『「一帯一路」に対抗する日・インドの戦略構想』(6/2日経ビジネスオンライン 長尾賢)について
6/3宮崎正弘氏メルマガにもスリランカの記事がありました。<習近平の夢「一帯一路」、スリランカでまた挫折。前途多難 現地では反中国暴動が頻発、「反中」の筈のシリセナ政権も困惑>
http://melma.com/backnumber_45206_6537502/
小生のブログでもカンボジア・スリランカの中国からの負債の罠について触れたことがあります。
http://dwellerinkashiwa.net/?p=6097
中国は遅れて来た「帝国主義国」です。それを世界が「新しい現実」と認めてしまえば、どうなるでしょうか?力による領土争奪の戦争が起きることは必定です。宥和政策を採ればより大きな戦争が起きることは歴史が証明しています。マテイス米国防長官がシンガポールで北朝鮮のみならず中国をも非難したのは、アジアの国々にとっては朗報です。「アジアの安全を確保するため同盟国と協働」、「同盟国やパートナー国を交渉の切り札には使わない」と明言しました。6/4日経朝刊には<米、アジアへの積極関与強調 中国寄り懸念の払拭狙う マティス米国防長官、安全保障会議で講演>の記事の中で、『トランプ氏は北朝鮮の核問題の解決を優先し、「もし中国が北朝鮮問題を解決するなら、貿易問題で米国と遙かに良い取引ができると習近平国家主席に説明した」と明言。中国の為替操作国の指定を見送るなど融和姿勢への傾斜が目立つ』とありました。トランプはFONOP(航行の自由作戦)を軍から要請されても却下してきて、5月24日になってやっと認めたという話もあります。でも、オバマのやってきたことを全否定するなら、最大のターゲットは中国であることを忘れないでほしい。
http://jp.reuters.com/article/asia-security-us-idJPKBN18U044
https://www.cnn.co.jp/world/35100731.html
長尾氏の記事を読みますと、中国の金利は6.3%と法外に高く、サラ金と同じです。日本でも在日企業がパチンコとサラ金を経営し、取り立てを苦にして自殺する人が多かったと言われ、2006年新貸金業規制法ができるまでは、毎年自殺者が3万人を超えていました。その後、なだらかに減り、2万に近い所まで下がって来ています。中国は暴力団国家なので同じ発想をするでしょう。金が返せなければ、資産・領土を奪い、それでも足りなければ奴隷としてただ働きさせるでしょう。ロシアが北朝鮮の債務を9割カットしてやったようなことは望むべくもないです。何せ中国はハニトラと賄賂の名人なので、スリランカの前大統領ラジャパクサは賄賂を受け取ったと睨んでいます。日印で中国の融資額と同額を融資し、返済させないと債務は雪だるま式に増えます。ただ契約上、中国に返すのがどうなっているのかと、建設工事等の付帯条件が付いているのか等調べなければなりませんが。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E8%87%AA%E6%AE%BA
パキスタンの記事の中にバルチスタン州が出てきますが、パキスタンが侵略してスレマン国王は亡命したとのこと。4/22アジア自由民主連帯協議会の講演で紹介があったようです。(西村幸祐氏ツイッターより)
https://twitter.com/i/web/status/856769910009061376
中国を封じ込めるために日印が協力することに大賛成です。政府も長尾氏の意見を参考にして政策を実現していってほしい。
記事

スリランカのインフラ開発において、ハンバントタ港の開発は罠となる(写真:ロイター/アフロ)
中国が5月中旬、「一帯一路」サミットを北京で開催した。「シルクロード」を再構築する大規模な試みだ。ロシアやインドネシアなどの大統領も集まり、大きなイベントとなった。
このサミットに、明確に反旗を翻した国がある。インドだ。インドは招待されたにもかかわらず代表を送らなかったばかりか、「一帯一路」構想の問題点を指摘する公式声明を出した(注1)。
そのインドのナレンドラ・モディ首相は5月24日、「アジア・アフリカ成長回廊」という構想を明らかにした。これは日本とインドが協力する構想である。
インドは中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)や、BRICS首脳会議などの主要メンバー。経済面では、日本や米国だけでなく、中国やロシアとも付き合ってきた国だ。そのインドが、今、中国と対決する姿勢を明確に見せている。
どうして明確な立場を示したのか。インドが「一帯一路」構想に反対した背景、インドが日本と進めているインド洋周辺の対抗策、日本としてどうするべきなのか。本稿はこの課題を分析する。
(注1)Ministry of Foregin Affairs Government of India, ”Official Spokesperson’s response to a query on participation of India in OBOR/BRI Forum”, May 13, 2017
借金漬けにして中国の影響下に
インド外務省のホームページに、「一帯一路」構想を取り上げたページがある。ここには、本来あるべき経済協力の姿と、「一帯一路」構想がその理想からかけ離れていることが書かれている。どうやら、インドは2つのことを気にしているようだ。
1つ目は、返済できないような多額のローンを中国が高い金利で貸している点だ。諸国を借金漬けにして中国の影響下に置こうとする、悪意に満ちた計画ととらえているのである。
例えば、中国がスリランカに建設したハンバントタ港の建設がその例として挙げている。スリランカ政府は、ハンバントタという場所に、中国の協力を得て港と空港を建設した。その際、中国から借り入れを受けた。金利は6.3%。
ローンは返さなければならない。だがスリランカは80億ドルに及ぶローンを返却するめどが立っておらず(注2)、中国に今後99年にわたって運営権を渡す契約に合意することになりそうだ。さらには、同港の敷地内において治安や警備の権限まで中国に認めることになりかねない。
もし治安や警備の権限を認めた場合、スリランカ政府は、ハンバントタ港の中で何が行われているか把握できない状態に陥る。同港は中国の、中国による、中国のための港になってしまう。
世界銀行や、日本が主導するアジア開発銀行から国が借り入れをする場合、利率は0.25~3%である。中国の6.3%というのは非常に高い(注3)。インドはこれを見て、帝国主義時代に欧米列強が植民地を作ったやり方と同様だと考え始めている。インドの歴史を振り返ると、英国は、税金を払えない農民の土地を差し押さえることで、インド人を、英国人の支配下においていった(注4)。
(注2)スリランカが返却しなければならない金額は膨大で、スリランカの財務相がNHKのインタビューに応えて語ったところによると、返済に400年かかるので現実的な話ではない、との見方をしている(「国際報道2017」(NHK、BS1、2017年5月19日放送)。スリランカ全体では返却しなければならないローンは640億米ドルになり、それは国家の年収の約95%になる(Yogita Limaye, “Sri Lanka: A country trapped in debt”, BBC, 26 May 2017 )
(注3)Dipanjan Roy Chaudhury, “China may put South Asia on road to debt trap”, Economic Times, May 2 2017
(注4)スリランカでも中国のやり方に反発が強まっている。スリランカは中国との経済関係を維持する一方で、この5月、中国潜水艦の寄港を拒否した。インドのモディ首相がスリランカを訪問する時期に近かったこともあるが、それ以上に、中国のインフラ開発支援が軍事色を帯びてきている(後述)ことへの警戒感があるものとみられる。 Shihar Aneez and Ranga Sirilal, “Sri Lanka rejects Chinese request for submarine visit: sources”, Economic Times May 11 2017
“インドの領土”で中国軍が道路建設
インドが反対したもう1つの理由は、インドの領土問題にかかわるからだ。「一帯一路」構想には、「中国・パキスタン経済回廊」が含まれる。中東産の石油をパキスタンで陸揚げし、パキスタン国内を北上して中国へ運ぶルートを指す。
このルートは、パキスタンが管理するカシミール地域を通過する。この部分の道路を、中国軍が駐留して建設している。インドが自国の領土と主張しているところに中国軍が駐留して道路を建設して使用するというのは、インドにとって譲れない一線だ。
こうした理由から、インドは「一帯一路」構想との対決を決めたのである。
しかし、なぜ今、対決を決めたのであろうか。何か代替案をみつけたのであろうか。実は、注目すべき経済構想が実際に動いている。中国ではなく、日本と連携する構想だ。どんなものがあるのか(図参照)。

筆者作成
インドと東南アジアを陸路でつなぐ
まず注目されるのは、インド北東部の道路建設プロジェクトだ。このプロジェクトの趣旨は、インドと東南アジアを陸路でつないで物流を活発化させ、経済を活性化させることにある。ただし、経済的な目的の裏に、安全保障を含めたより戦略的な思惑もある。
中国が南シナ海で強引な行動を取っている原因の一つとして、東南アジア諸国の態度がはっきりしないことがある。安全保障に不安を覚えつつも、経済面で中国に強く依存していることが一因だ。この中国依存を緩和するのに、インドとの貿易拡大が貢献する。
さらに、インド北東部には、インドと中国の双方が領有権を主張しているアルナチャル・プラデシュ州(中国名:南チベット)がある。インドは防衛力の増強を進めているが、インフラがないために軍を素早く移動させることができない。もし道路が整備されれば、それがたとえ民生用の道路だったとしても、インド軍の展開を助ける結果になるだろう(関連記事「インドが日本に示した奥の手」)。
中国に対抗し、スリランカに新港を建設
次に注目されるのはスリランカのトリンコマリー港の開発だ。日本とインドが協力して同港を建設する計画である。その戦略的背景は何か。
前述のように、スリランカでは中国がハンバントタ港を建設している。日印は、中国がスリランカで影響力を強め、最終的に中国海軍の拠点を構築することを懸念している。
そこで日印は、スリランカに中国製よりも優れた港を作り、中国の港の存在意義を低下させて、日印の影響力を維持しようとしているのである。優れた港とは、実際にスリランカの経済に資する拠点となるものだ。そこでトリンコマリー港が候補になった。
同港は、スリランカ北東部に位置する。天然の良港で、地形上、台風や津波などから守られている。深さは25mもあり、商船も軍艦(例えば空母や大型の原子力潜水艦まで)も利用できる。だから大英帝国時代にはここが海軍の拠点であった。第二次世界大戦のときに、日本の空母機動部隊が爆撃したのもこの港である。しかし、英国が去って以降、スリランカ政府はあまり利用してこなかった。
そこで日印の計画が浮上した。今年4月、スリランカのラニル・ウィクラマシンハ首相が来日したとき、日本とスリランカの両国は共同声明を発表し、トリンコマリー港の設備整備のために日本が10億円を無償提供することに言及した。
実は今月、インドのモディ首相がスリランカを訪問した際にも、トリンコマリー港の石油タンクをインドとスリランカが共同管理することで合意している。石油タンクを管理すれば、寄港した船がどの程度燃料を受け取ったかわかる。行先や目的などが推測できるから、とても重要な合意だ。
このトリンコマリー港と、中国が開発しているハンバントタ港とを比べると、トリンコマリー港のほうが不利な要素がある。ハンバントタ港がスリランカ南部を通るシーレーンのすぐ横にあるのに対して、トリンコマリー港は少し離れている。つまり、多くの船はハンバントタのすぐ目の前は通るが、トリンコマリー港の周辺には船があまり通らない。
一方、利点もある。ハンバントタ港の失敗を見てから、トリンコマリー港の開発をスタートしている点だ。実はハンバントタ港は、港と飛行場が完成しているにもかかわらず、経済的利益を生み出していない。最も大きな原因は、港と空港が都市とつながっていないことだ。ハンバントタは田舎で、スリランカの大都市は首都のコロンボである。だから、船に積んだものを売りたければコロンボ港に寄港したほうがいい。
そこで別の使い道を考える。インド、バングラデシュ、ミャンマー、インドネシア向けの荷を他の船に積み替えるハブ港として活用するならば、ハンバントタ港は役立つのではないか。しかし、これも期待薄だ。船員は、寄港したときぐらい町へ行きたい。町がない港はつまらない。結局みんな、ハンバントタ港ではなく、コロンボ港へ行ってしまう。
トリンコマリー港も大都市コロンボとはつながっていない点では同じだ。しかし、日印はハンバントタ港の失敗を見て、大都市コロンボとつなぐことを考えている。コロンボ=トリンコマリー経済回廊構想だ。距離は直線距離で255㎞、東京=大阪間の約半分だ。現在はクルマで6時間、鉄道で8時間かかる。この時間を短くする。
イランにも新港、グワダル港をけん制
日本とインドが進める3つ目のインフラ開発は、イランのチャーバハール港である。元々はインドが、イランのチャーバハールにある港の近代化を進めていた。これに日本が参加し、資金や技術面で協力する。日本がかかわる戦略的な背景は何か。やはり、中国の存在がある。
中国は今、「中国・パキスタン経済回廊」の計画を進めている。中国軍がカシミールのパキスタン側に駐留して道路を建設しているのは前述の通りだ。この道路は、中国からカシミールを通ってパキスタン国内を南下、バルチスタン州のグワダルにたどり着く。そのグワダルで中国は港湾建設を進めている。
「中国・パキスタン経済回廊」は、実は多分に軍事的な色彩を持っている。カシミールで中国軍が道路を建設しているだけでなく、グワダル港を警備するために中国軍は海兵隊1個旅団を派遣する用意をしている。また、パキスタン軍に警備艇をはじめとする武器を提供してグワダル港の警備を強化する。
中国がパキスタンに輸出する潜水艦8隻についても関係している。これらの潜水艦は、グワダル港を封鎖する可能性のあるインド海軍の接近を阻止するのに役立つだろう。
パキスタン軍の動きも顕著だ。「中国・パキスタン経済回廊」の道路を守るために、2016年、パキスタンは1万5000人(9000人の軍人と6000人の治安部隊要員で構成)からなるセキュリティ師団を創設している。今後、セキュリティ師団をさらに増設する計画だ。
チャーバハール港は中央アジア戦略でもある
しかも、この「中国・パキスタン経済回廊」構想は単に中国とパキスタンだけでなく、中央アジアへの影響力も持っている。例えば中央アジア諸国が天然資源を輸出するとしたらどこを通るだろう。
陸続きのルートはあるが、やはり海に出ないと不便だ。そこで、インド洋への出口を探すことになる。アフガニスタンを通ってパキスタンに出て、「中国・パキスタン経済回廊」の道路をたどればインド洋に出ることができる。これは、中央アジアの国々の重要な貿易ルートを、中国が管理することを意味する。
そこで、日本とインドとしては、まず、中国がインド洋へ進出するのを阻止するために、グワダル港のプロジェクトを無力化したい。方法は2つある。1つは、「中国・パキスタン経済回廊」の信頼性を低下させること。もう1つは、中央アジアからインド洋につながる別のルートを開拓することである。
1つ目の方法、信頼を低下させるにはどうしたらいいか。「中国・パキスタン経済回廊」にはもともと脆弱性がある。そのことを強調すれば、信頼が低下する。例えば、パキスタンのグワダル港があるバルチスタン州では、独立を求める反乱がある。この地域の反乱軍 は2004年に中国人技術者を殺害している。2017年に入ってからは、道路の建設現場を襲撃したり、中国人を誘拐したりする事件も起こしている。パキスタンは、これらをインドが支援したとして非難している。
インドが実際に支援している証拠はない。ただ、バルチスタンの反乱軍がおかれた状況に同情はしているようだ。インドのモディ首相は2016年8月、パキスタン政府がバルチスタンで行っている人権侵害(反乱軍を鎮圧する苛烈な作戦)について公式演説の中で初めて非難した。2016年9月には、バルチスタン反乱軍の指導者がインドに入国し、亡命を申請している。
バルチスタンにおける反乱軍の活動によってこの地域の治安情勢が不安定との情報が強調されれば「中国・パキスタン経済回廊」の信頼性が低下することが予想される
もう1つの方法、中央アジア諸国がインド洋へ出るための別の貿易ルートを開拓するのは、日印による協力事業だ。ここにイランのチャーバハール港が登場する。
この港はグワダル港にほど近いイラン側にある。つまり、中東からインドに向かうシーレーンは、先にチャーバハール港に着く。さらに、海底にガスパイプラインを敷設する。そうすると、モノも資源も、パキスタンをすっ飛ばして、イランからインドに直接つくルートを開発することができる。
チャーバハールは既に中央アジアと道路でつながっている。鉄道を建設計画もある。治安も比較的いい。だから、中央アジアの国々が「中国・パキスタン経済回廊」を通らずに、インド洋に出ることができるようになる。
今がチャンスの日本外交
このほかにも日本とインドが共同で進めている計画がある。インドが進めるチェンナイ=バンガロール産業回廊の構想は、チェンナイ港を通じて海洋の情勢にかかわるものだ。また、アンダマン・ニコバル諸島とラクシュイープ諸島では、発電所やレーダーの整備に取り組んでいる。アンダマン・ニコバル諸島はマラッカ海峡近くの戦略的重要地、ラクシュイープ諸島はインド南部に位置しておりシーレーン防衛上重要な役割を果たす。さらには、日印に加えて米国も巻き込んだ計画がアフリカ地域で進められている。
これらを総合して考えると、日印関係は新時代を迎えているといっていい。日本はインドと共同で、アフリカを含むインド洋周辺から東南アジア、そして日本につながる一大経済圏の整備を目指している。そして、この地域の安全保障の確保にも深く関わり始めている。このような緊密な日印連携があるからこそ、インドは「一帯一路」構想との対決という決断に至ったのであろう。日本としてはこのチャンスを積極的に生かし、インドと世界規模の長期的な関係を築いていくべきといえよう。
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『[FT]責任欠くメルケル氏発言 米欧の亀裂、恒久化も』(6/1日経朝刊)、『パリ協定離脱で米欧の亀裂深刻 杉浦正章』(6/2渡部亮次郎メルマガ)、『信念なき発言で、もはや誰からも信頼をされないトランプ大統領』(6/2 大前研一メルマガ)について
6/3日経朝刊には<メルケル氏、計算ずくの「脱米国宣言」 欧州結束・国内選挙も意識>という記事が載り、「独は貿易、仏は温暖化対策、伊は難民支援。EUの主要3ケ国と米国との亀裂が明白になった。・・・メルケル氏の狙いは3つ。第一は対米けん制。第二は欧州結束の引締め。第三が国内選挙対策」とありました。国際協調は戦争を回避する手段として必要と考えますが、ご都合主義に堕していないかどうか。何時も言っていますように、何故クリミア侵攻したロシアにだけ経済制裁を課し、南シナ海に侵攻している中国に経済制裁しないのか。米国も欧州も中国との貿易で儲けたいなら、ロシアとの貿易で儲けたいと思っても良いはず。中国には資源がなく、人口の多さが売りで、逆にロシアは、人口は日本と左程変わらない1.4億人で、資源は逆に豊富です。やはり、馬渕睦夫氏の言う「ウイーン会議時に、ロシア皇帝がユダヤ人の「中央銀行を民間に」の提案を断った怨み」が今も残っているのでしょうか?また中国は第二次大戦までは米国のクーリー(苦力)貿易、東南アジアの華僑の抗日等白人の僕としてうまく立ち回って来たため、白人からは「愛い奴」と思われているためでしょうか?まあ、ユダヤ人も中国人も拝金教という意味で似た種族と思っていますが。ただ、日本にとっての脅威は中国であって、ロシアではありません。それを米国だけでなく、欧州にもっと理解してもらわねば。
FT記事にありますように、「ドイツのメルケル氏こそが西側世界の真の指導者だと主張する者さえいる。だが、その称号をメルケル氏に与えるのは早すぎたようだ。」というのは正しいでしょう。GDPでみても米国:EU=18569B$:16408B$で米国の方が多い。米国1ケ国に対し、EUは28ケ国にも亘り意見調整が難しいです。勿論、米国にも州の自治はありますが。世界をリードするのは、経済指標だけでなく、軍事力、人類への理念が揃っているかです。軍事力ではEUも米国に水をあけられています。だからNATOがある訳です。人類への理念も今の国連を見ていると戦勝国の特権の維持と後進国の支援要請、特定国のプロパガンダに堕しています。腐敗官僚も多くいるとのこと、潘基文を見ていれば分かる通りです。日本の「以和為貴」が世界に実現するのが理想ですが、国連憲章に「敵国条項」が残っているのを見ても、実現は難しいと言えます。日本も削除の努力をしてきたとは思えませんが。
http://ecodb.net/ranking/imf_ngdpd.html
http://ecodb.net/ranking/group/XD/imf_ngdpd.html
https://news.yahoo.co.jp/byline/kodamakatsuya/20170512-00070880/
杉浦氏の記事に対し、全面的に賛成です。日本のメデイアはWSJの記事を伝えていません。結局、米国のリベラル紙の尻馬に乗ってトランプを叩いているだけです。そうすれば、我が身が一番安全だからでしょう。トランプは今ユダヤ国際金融資本と戦っています。娘婿のクシュナーもユダヤ人ですがバッシングに遭っています。自分達の権益を守ろうというユダヤ人は、同じ民族が虐殺されても痛痒を感じなかったのと同様で、ハンナ・アーレントが言った通りです。
大前氏の記事は何時も感じることですが、経済の側面からのアプローチや欧米メデイアの受け売りだけで、米軍がどう思っているかについては触れられません。軍事を知らないエリートは片端です。日本にはそういう知識人と称される人が多すぎと感じています。
FT記事
トランプ米大統領の初めての訪欧は、なかなかきまずいものだった。その後遺症はかなりやっかいだ。
イタリア南部で開かれた主要国首脳会議(タオルミナ・サミット)を終えてトランプ氏が帰国した直後の5月28日、ドイツのメルケル首相はミュンヘンで行った選挙演説で、西側同盟はもはや終わったともとれる発言をした。

イラスト Daniel Pudles/Financial Times
「ほかの国々を全面的に当てにできる時代は過ぎ去りつつある。そのことをこの数日間、痛感した。我々欧州人は、自分たちの運命を自分たちで切り開いていかなければならないということだ。もちろん米国とも、英国とも、そしてロシアを含む近隣諸国とも友好的な関係を保つ必要はある。しかし、我々は自分たちの将来のために自ら戦う必要がある」と同氏は訴えた。
メルケル氏の発言は、即座に様々なところで大きく報じられた。米外交問題評議会のトップを務め、米外交政策の第一人者の一人とされるリチャード・ハース氏は、ツイッターで「メルケル氏の欧州はもはや他国を頼りにはできない、従って事態を自ら掌握する必要があるという発言は(欧州外交の)転換点と言える。それは、米国が第2次世界大戦以降、まさに避けようとしてきたことだ」と発信した。
この事態を招いたトランプ氏を非難することは容易だし、当然とも言える。しかしメルケル氏の発言も、慎重な言葉遣いだったとはいえ、責任に欠ける。それは、米国と欧州の関係に既に広がる危険な亀裂をさらに拡大し、恒久的な断絶に向かわせかねないものだからだ。
トランプ氏を非難するのは簡単だ。確かに彼の欧州訪問中の振る舞いは、ひどいものだった。5月25日の北大西洋条約機構(NATO)での演説では、加盟国の集団的自衛権を保障した条約第5条の順守を確約しなかった。たまたま言い忘れたのではない。欧州に何かあれば米国が防衛するのは当然ともはや考えてはならない、という明確なメッセージだった。こうなると、ロシアにNATOの防衛体制を試そうとする機会を与える危険性が浮上する。
今回の首脳会議で、トランプ氏だけが温暖化対策のパリ協定を支持しなかった。またドイツが米国でクルマを売りすぎているとして、「悪い、非常に悪い」と評したことも広く報じられた。
欧州連合(EU)からの離脱を決めた英国に加えて、米国のこうした姿勢を目の当たりにして、メルケル氏としては、同盟国である米国と英国はもはや当てにできないという明白なことを述べただけかもしれない。それでも、彼女の発言は、少なくとも5つの理由から大間違いだと言わざるを得ない。
■欧米関係疑うのはまだ早い
第1に、大統領に就任して4カ月のトランプ氏の言動から、欧州の平和を70年間維持してきた欧米の同盟関係に疑いの目を向けるのは間違っている。実際に欧米関係を疑う時はくるかもしれない。だが、むしろトランプ氏が大統領に就任したのは例外的なことで、遠からずその職を失う可能性もある。
第2に、欧州加盟国の大半がNATOが定める軍事費負担の目標(編集注、国内総生産の2%)を達成していないのは問題だとするトランプ氏の指摘はもっともだ。確かに同氏の欧州での行動は、彼が物事をあまりに知らないことを浮き彫りにした。しかし、米国がNATOの防衛費の75%近くを拠出し続けることはできないという主張は正しい。これは、オバマ前政権のゲーツ国防長官も指摘していた。
ドイツが米国の防衛支出にタダ乗りしてきたことを考えると、ドイツが米国を同盟国として頼りにできないと非難するのは、少々おこがましい。
第3に、メルケル氏が西側諸国の同盟に亀裂が入りつつあると示唆したことで、トランプ氏がNATO条約第5条への支持を表明しなかったという事態を一層深刻にしてしまった。両氏のいずれの行為も、ロシア政府に西側同盟の分裂を狙う機会を与えることになる。そのことは、欧州の安全保障が一層危険な状況に陥ることを意味する。
第4に、メルケル氏が英国とトランプ氏の米国とをひとくくりにした点は、賢明でも公正でもなかった。気候変動問題では、英国は、米国側ではなくEU側に立っている。同様に、英国のメイ政権はNATOが定める軍資支出の達成が重要だと懸命に強調している。
しかし、メルケル政権が英国の離脱交渉で、現在のような対決的な姿勢を続けるなら――貿易協定の交渉入りすらしていない段階で、英国に巨額の離脱清算金の前払いを約束するよう求めている――それは、欧州の同盟関係に亀裂が入りつつあると自ら指摘したことで、実際に亀裂の拡大を加速させるようなものだ。そして英国とEUの対立を永続させる危険さえある。
離脱交渉では敵対する国々が、NATOとの関係では同盟国となるという状況を英国がどう判断するのか。それを見通すことは難しい。英国が本当に「ハードな(強硬な)」離脱を選んだ場合、NATOに対する英国の関与の仕方にも当然、疑問が生じることになる。ましてや米国も西側諸国の同盟から距離を置こうとしているとなれば、なおさらだ。
■歴史から謙虚に学ぶべき
メルケル氏の発言の最後の問題点は、いつになく彼女が歴史の声に耳を傾けていないように見える点だ。現代のドイツから深く感銘を受けるのは、どんな国と比べても、この国は歴史が残してきた教訓について真剣に考え、徹底的かつ謙虚にその教訓から学んできたという点だ。
それだけにドイツの指導者がミュンヘンのビアホールで英国や米国との決別を語り、しかもその2カ国とロシアを同列に論じる姿は、歴史が繰り返される(編集注、第2次大戦では米英ロが共に戦った)ようで、背筋が寒くなる。
だからといって、メルケル氏は道徳的、政治的にトランプ氏と同じレベルだ、と言うつもりは全くない。トランプ氏は西洋社会の核となる価値観をないがしろにする態度を何度も繰り返し見せてきた。報道の自由から拷問の禁止、世界中の民主主義体制を支援することなどだ。
トランプ氏がこうした姿勢を見せてきたために、今ではドイツのメルケル氏こそが西側世界の真の指導者だと主張する者さえいる。だが、その称号をメルケル氏に与えるのは早すぎたようだ。悲しいことに、同氏には西側諸国の同盟を救うために戦う気はなさそうだ。
By Gideon Rachman(2017年5月30日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)
(c) The Financial Times Limited 2017. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.
杉浦記事
「トランプVsメルケル紛争」の現状 日本は双方の過剰反応を戒めよ
トランプ対メルケルの対立で、ただでさえ離反が目立った米欧関係に、「米パリ協定から離脱」という報道の追い打ちである。もはや亀裂は決定的なものとなりつつある。
「アメリカ第一」を掲げるトランプの唯我独尊姿勢は、イギリスの欧州連合(EU)離脱でメルケルが牽引しているEUとの関係悪化を増幅し、抜き差しならぬ段階にまで至った。幸い対ロシア軍事同盟である北大西洋条約機構 (NATO)にひびが入る気配はないが、防衛費分担をめぐってギクシャクし始めたことは否めない。
米欧の内輪もめにプーチンが小躍りしている事は確かだろう。日米関係はかつてなく良好だが、首相・安倍晋三はサミットでも果たしたように米欧離反への接着剤として、双方の「過剰反応」を戒める必要があろう。
「トランプVsメルケル紛争」は根が深い。3月の米独首脳会談でもトランプはメルケルに視線も向けず、そっぽを向き握手すらしなかった。トランプの欧州訪問とこれに続くG7サミットでも激しく対立した。とりわけメルケルは、オバマが任期最終年に署名したパリ協定をトランプが受け入れな かったことに腹を立てたようだ。メルケルは「気候変動に関しては、非常に満足のいかないものだった。サミットでもパリ協定支持、不支持は6対1 で、EUを加えるなら7対1の状況だった」とトランプへの不満を述べている。
このメルケルの不満が爆発したのが28日、ミュンヘンで開催されたパーティー形式の選挙集会での演説だ。ビール片手にメルケルは演説のボルテージを上げ、「私はこの数日で、ヨーロッパが他国に完全に頼れる時代はある程度終わったと感じた」と述べ、米国への不満を表明した。そのうえで、メルケルは、アメリカとの友好関係の重要性を指摘しつつも、 「ヨーロッパは、自分たちの運命を自分たちで切り開いていくしかない」 と述べ、ヨーロッパが地球温暖化対策などを主導していく必要性を訴えた。
発言について米国のNATO大使であったイボ・ダールダーはニューヨークタ イムズ紙に「米国が導き欧州はついてきた時代の終末が来たようだ。米国は主要イシューで欧州と反対方向に向かっていて、メルケルの発言はこうした現実認識から出たもの」と論評した。さらにニューヨークタイムズ紙はG7サミットを論評して「過去ドイツおよび欧州は、自動的に米国に依存してきたが、もはやトランプは信頼すべきパートナーではないと結論づけた」と言い切っている。
またワシントンポスト紙は「メルケル首相が米欧関係に新たなページが開かれたことを宣言した」と分析している。
一方米欧双方にトランプが、トルーマン以来歴代大統領が言及してきたNATO条約第5条への言及がなかったことへの懸念が生じている。5条は「NATO同盟の一つの国への攻撃を同盟全体への攻撃と見なし、集団的に防衛する」とし条約の要である。
懸念の発信源はハーバード大学教授のニコラス・バーンズのようだ。バーンズは「歴代の米大統領は全て第5条への支持を表明した。米国は欧州を防衛するということだ。トランプ氏は、NATOでそうしなかった。これは大きな間違いだ」と指摘した。これにメディアが乗った結果大きな問題となった。しかしウオールストリートジャーナル紙は社説で、トランプはNATO本部で開かれた「第5条とベルリンの壁」に関する記念式典で、 「この式典は記憶と決意のためにある。われわれは2001年9月11日にテロリストによって残忍な方法で殺害された約3000人の罪なき人々をしのび、追悼する。われわれNATO加盟国は歴史上初めて第5条の集団防衛条項を発動し、迅速かつ断固たる態度で対応した」と述べた点を指摘している。直接的ではないが間接的には5条を支持したというのだ。さすがのトランプもNATOを全面否定すればどうなるか位のことは分かっているものとみられる。
メルケルは1次、2次世界大戦の敗戦国としてドイツがあえて米国に異論を唱えることのなかった長い間の慣習を打ち破り、米国の“独善”に勇気を持って発言したことになる。国内はこれを歓迎する空気が濃厚だが、ドイツが直ちに欧州の平和にとっての脅威として登場することはあるまい。しかし、長期的にみれば、大きな曲がり角と見るべきだろう。
背景には9月の総選挙で4回連続で首相の座を狙うメルケルが、トランプに批判的な国内世論に訴えようとする意図もないとは言えない。ドイツの野党は「メルケルがトランプに寛容すぎる」と批判しており、トランプ批判は国内の政情に対応するメッセージでもあった。
こうした中で日米関係は安倍が昨年12月にトランプタワーで就任前のトランプといち早く会談したことが効を奏して、極めて良好である。とりわけ北朝鮮の「核・ミサイル亡者」が暴発している現状において、日米同盟の結束は不可欠だ。トランプにとっても欧州との亀裂が極東にまで及んでは 米国の完全孤立になり、日米関係の堅持は基本戦略だろう。
一方、欧州も安倍がサミットでパリ協定の順守と、保護主義否定に回ったことで一目置いている。安倍は機会を捉えて双方に過剰反応を戒めるべきだろう。トランプも選挙戦のときのような「NATOは時代遅れだ」といった発言は控え、G7の首脳宣言に「保護主義と闘う」との文言を盛り込むこと にも同意した。
メルケルも基本的には親米的である。トランプが数日以内にパリ協定脱退を宣言すれば、当面の米欧関係はこじれにこじれるだろうが、次回G20サ ミットが7月7日から8日にかけて、ハンブルグで開催される予定であり、 こうした場を活用して米欧双方をなだめることも必要だろう。
大前記事
主要国首脳会議が、先月26日、27日、イタリア南部シチリア島のタオルミナで開催されました。
会議では英国マンチェスターで起きた自爆テロを受けて、国際社会が協力することで一致する一方、初参加のトランプ米大統領が各国の貿易障壁を批判し、公平な条件を求めるなど貿易面では摩擦が鮮明になりました。
メルケル首相によると、「7カ国協議ではなく、1対6だった」と言わせるほど、トランプ大統領が孤立していたとのことです。欧州の報道を見ると、トランプ大統領の態度があまりに下品に過ぎてフィットしていない、と伝えていました。
トランプ大統領にとっては外交デビューであり期待されていましたが、関税障壁のことなどすべて自分を中心に前に出ていくだけで、米国の放送局でさえ「恥ずかしい、世界の指導者と同格ではない」と報じていました。
今回のG7でも一層明白になりましたが、トランプ大統領が口先だけの「嘘つき」であるということが、何よりの問題だと私は思います。
例えば、中東問題です。
選挙期間中はサウジアラビアやエジプトを持ち上げて、ISやイランと徹底的に闘うと発言していました。オバマ元大統領はイランと話し合いの場を持つに至りましたが、それをすべて無にしました。それにも関わらず、自分の目の前にスンニ派の人がいると手の平を返して歯の浮くような発言をします。ローマ法王についても、散々喧嘩をふっかけていたのに、いざ目の前に出ると「勉強になりました」という始末です。
米国の選挙民からすれば、トランプ大統領のあのキャンペーンは一体何だったのか?と感じているでしょう。NATOでも今回のG7でも、もはやトランプ大統領の言うことは、何一つ信用されないというレベルになっていると私は感じて言います。
主要国首脳会議はかつてG8でしたが、ロシアが排除されてG7になりました。今のトランプ大統領なら米国も除いて、G6でもいいと欧州側は考えているでしょう。結局、トランプ大統領には自分の信念がないので、目の前のことだけを良く言う、という態度になってしまうのだと思います。
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『怒る中国、惑う米国、揺れる「南シナ海」情勢 ハーグ裁定“無視”から約1年、改めて中国包囲網の強化を』(5/31日経ビジネスオンライン 福島香織)について
5/30ブロゴス<トランプ政権、初の「航行の自由作戦」 なぜ今実施しなければならなかったのか?>にありますように、「航行の自由作戦」(Freedom Of Navigation OPeration:FONOP)で米国は中国に対し北朝鮮問題とは切り離して、南シナ海を中国の海とは認めない姿勢を示したという事です。オバマの8年間は中国に好きにやらせて来ました。この1点だけでもトランプが大統領になって良かったと思います。オバマ時代の無害通航ではなく、人工島の12海里内を通航したとのことです。
http://blogos.com/article/225974/
福島氏の言うように、トランプが中国に騙されず、中国包囲網形成に戻ってほしいと願っています。今後経済発展が続くと思われるアジアを米国が取り込むか中国が取り込むかの争いになります。北の問題で譲歩を重ねれば、中国は米国の足元を見て侵略を益々進めるでしょう。北は中国の侵略制止の一里塚と思った方が良い。中国は北を利用して様子見しています。
自由を尊重する体制が良いか、共産主義という人権弾圧する体制が良いか選択の問題でしょう。人命を鴻毛の如く考える共産主義体制にシンパシーを感じている人は信用できません。日本社会に左翼・リベラルが跋扈するのは糊口を凌ぐためと、戦前戦中の軍部の独走で抑圧されていた知識人が戦後獲得した地位を保全する利権を手放さないように奮闘努力するためです。中国に行って1年もすれば如何に貧しき人々に厳しい社会かと言うのが分かるはずです。結果の平等を目指す社会システムなのに、格差は米国以上にあります。普通の日本人が左翼・リベラルに親和性を持つというのは、余りに現実を見なさ過ぎです。或は偏向メデイアに騙されているのでしょう。情弱こそが問題です。
6/2宮崎正弘氏ブログ<ことしのシャングリラ対話、米国が熱心。中国は手抜き 重要閣僚出席のワシントンとは対極的。軽量級で応じる北京>の記事の感想として、中国は6ケ国協議と同じく、会議を隠れ蓑にして、自国の軍事力拡大、勢力拡大に利用してきただけでは。米国は容易に騙されてしまうという事でしょう。特に、オバマや民主党は酷かったです。シャングリラ対話自体は2002年に始まりましたので子ブッシュの時代ですが。中国を甘やかして来たツケが今回っているという事です。
http://melma.com/backnumber_45206_6537303/
記事

イタリア G7サミットの後、米軍基地で演説するトランプ大統領。対中政策はぶれずに進むのか(写真:AP/アフロ)
トランプ政権が初めて南シナ海で「航行の自由」作戦を実施した。これに中国は大激怒である。続いてイタリア・タオルミナで開催されたG7サミットで採択された首脳コミュニケで、中国を念頭においた東シナ海・南シナ海の非軍事化を再確認する文言が盛り込まれた。
南シナ海の領有権をめぐる問題では、2016年7月、ハーグ国際仲裁裁判所で中国が全面的に敗北した裁定が出たものの、中国はこれを完全に無視。親中派のフィリピンのドゥテルテ大統領の登場やトランプ政権の北朝鮮問題解決優先姿勢もあって、中国が国際法を無視していることに対しては、国際社会としてさして大きな圧力をかけることはなかった。だが、5月になって、少し情勢が変わってきた。今回のコラムでは、ハーグ裁定から約1年近く経った南シナ海をめぐる国際情勢の変化について、整理しておこうと思う。
中国を念頭に「非軍事化」を要求
G7の首脳コミュニケでは「我々は、海洋法に関する国際連合条約(UNCLOS)に反映されたものを含む国際法の諸原則に基づく、ルールを基礎とした海洋における秩序を維持すること、並びに仲裁を含む外交的及び法的手段を通じた海洋に関する紛争の平和的解決に対するコミットメントを再確認する。我々は、東シナ海及び南シナ海における状況を引き続き懸念し、緊張を高め得るあらゆる一方的な行動に対し強く反対する。我々は、全ての当事者に対し、係争のある地形の非軍事化を追求するよう要求する」との文言が盛り込まれた。中国の名前は入っていないが、中国が念頭にあるのは間違いない。シリア問題や北朝鮮問題、ウクライナ問題に対する部分と比べるとあっさりした表現だが、中国が怒りだすには十分な内容だったとみえる。
これに対し中国外国部報道官は定例会見でこうコメントした。
「G7サミットで、国際法の名義を騙って、東シナ海および南シナ海問題に対し、あれこれあらさがしすることに強烈な不満を示す。中国側の東シナ海、南シナ海問題における立場は明確で一貫している。中国側は終始、当事国と直接対話・交渉を通じて妥当なコントロール管理を行い、関連する争議の解決に尽力している。各領域での協力を推進し、東シナ海と南シナ海の平和安定を維持し、航行と飛行の自由及び海上航行の安全を維持することに尽力している。 G7および域外国家には情勢をはっきり認識してもらい、関連の争議問題において何ら立場を持たないようにし、該当地域当事国が争いをコントロールしようとする努力を尊重し、無責任な言論を発表することをやめていただき、該当地域の平和安定のために建設的な影響を発揮するよう希望する」
部外者はだまっとけ、と言わんばかりの横柄な批判をぶつけてきた。
解放軍パイロットは「安全である」
その直前の5月24日、南シナ海上空の国際空域で飛行中の米海軍P3偵察機に中国海軍J-10戦闘機2機が180メートルまでに接近し、複数回にわたり米偵察機の飛行能力を制限してきた。これに対し、米国防総省が「危険でプロらしくない行為」と控えめに懸念を表明。だがこれに、中国外交部はかみついた。
「米国側の言い分は事実と違う。米軍の偵察機が香港の東南空域で偵察活動を行っていたので、中国軍機は法に従って、米国機の識別査証を行っただけだ。プロの操作であり安全である」
中国の領土である香港近くを偵察に来やがったから、当然の権利として識別査証を行っただけ、という開き直りである。解放軍パイロットは優秀だから、この程度の異常接近は技術的に問題ない、というのは、2001年4月に米軍偵察機に異常接近した末、接触事故を起こしたころより、解放軍パイロットの技術は向上している、といいたいのだろうか。
さらにほぼ時を同じくして25日、トランプ政権としては初めての米海軍の「航行の自由」作戦を実施した。中国が兵器格納庫を建設しているというミスチーフ礁12カイリ海域に、駆逐艦デューイが航行。5月初めのCNN報道によれば、米海軍からの「航行の自由」作戦実施の要請をトランプ政権は却下したことがあり、北朝鮮問題で中国の協力を要請したいトランプ政権は南シナ海問題において、中国に配慮していると思われていた。米海軍からの「航行の自由」作戦実施要請をトランプ政権が拒否したのは三度、という報道もある。
おそらく、こうした中国への配慮のし過ぎに対し、軍部はもちろん共和党内からも民主党内からも批判が出始めたので、トランプ政権もしぶしぶ「航行の自由」作戦にGOサインを出したのではないか。
中国は「争うことのない主権を保持」
だが、中国側はこれにも、激しくかみついた。外交部報道官は、「米軍が中国の許可なく勝手に海域を航行した」として、こう発言した。
「我々は米国がすぐさま過ちを正し、中国の主権と安全の利益を損なう挑発的行為をやめ、地域の平和と安定と中米協力の大局に悪影響を与えないように、強烈に促す。…目下、中国とASEAN諸国は共同の努力のもと、南シナ海情勢を鎮静化させるとともに、絶えず積極的に状況を発展させている。米国側のこのような行動は、南シナ海をめぐる対話協議のプロセスに深刻な妨害を与え、誰の得にもならない」
国防部報道官もこう牽制した。
「中国は、南沙諸島および近海に対し、争う余地のない主権を保持している。米軍がこのように武力を誇示して、地域の軍事化を推進し、海域空域において予想外の事件を引き起こしかねない行動をとるならば、中国軍は、断固として反対を表明する。米国サイドには厳正な交渉をすでに提出している。 …米国側の誤った行動は、南シナ海の好転していた局面を破壊し、南シナ海の平和と安定に不利益をもたらすだろう。中米両軍の軍事関係は重要な発展時期を迎えている。健全で安定的な中米ウィンウィン関係のために、我々は双方の共同的努力が必要だ。…米軍が誤った行動を行うことは、中国軍にさらに建設能力を高めさせ、国家主権と安全の防衛を強固にさせるだけである」
中国海軍はミサイル護衛艦二隻によって、デューイ号に対し識別査証を行い、現場海域から離脱するよう警告したという。
全体的な流れをみると、南シナ海問題は確実に中国の有利に動いていた。まず、フィリピンのドゥテルテ大統領は、「信頼できるのはロシアと中国だけ」と発言し、米国と距離をおき、中ロから武器購入するなど、軍事同盟の軸足を変えようというそぶりまで見せていた。4月から5月にかけてマニラで行われた、フィリピンが議長国となったASEAN首脳会議では中国批判は完全に封印した。
ドゥテルテはその後、フィリピンの南シナ海の島々の資源採掘を行うとその領有権を習近平に対して主張したところ、「戦争になる」と脅されたことを明らかにした。ドゥテルテの姿勢は一貫していて「戦争は絶対しない」だ。つまり、戦争を盾に脅された時点で、主張を引っ込めたということだろう。
そもそも3月の段階で、中国に武力で実効支配を奪われたスカボロー礁に中国が建造物(環境モニタリング基地?)を造ることは止められない、中国に宣戦布告でもしろというのか、と発言しており、国際社会ではこれをフィリピンの事実上の敗北宣言と見ていた。フィリピン世論には、ドゥテルテの対中弱腰を批判する声もあるのだが、それに阿るように強気の発言をしたとたん、中国から恫喝されて、前言を撤回するということを何度か繰り返している。
トランプは、容易に路線変更するタイプ
中国はスカボロー礁の実効支配については、すでに米国に干渉の余地を与えないレベルにまで固めていたのだから、「航行の自由」作戦やG7も、もう少し忍耐をもって対応してもよかっただろう。だが、中国サイドの反応は、かなり焦った感じで、激しい反論をしてきた。なぜだろうか。
一つには、中国側がトランプ政権の対中政策が再び転換するかもしれない、と見ているからかもしれない。環球時報の解説をみるに、5月下旬の米国の動きは、米国内部のタカ派の圧力によって、トランプ政権のこれまでの「北朝鮮問題で米中が協力していくために、南シナ海の問題は妥協していく」という対中路線を変更せざるを得なくなっている、という分析が党内にあるようだ。もし、トランプ政権がこの圧力に対して抵抗するだけの意思があるなら、中国としてもトランプのメンツを立てるという意味で、忍耐を示したかもしれないが、中国側は、トランプが容易に路線変更するタイプだと見定めているようである。
国防大学戦略研究所の元所長の楊毅(海軍少将)は、こう説明している。
「ペンタゴン、国務総省、財務省、商務省など米国各省庁がそれぞれ別の方向を向いている。南シナ海を緊張させればペンタゴンは予算を多く取れるが、財務、商務は中国との衝突を願わない。問題はトランプが誰の意見に耳をかたむけるか、だ。…米国がシビリアンコントロールの国である一方で、軍部がホワイトハウスに無理な決断を迫る芝居を何度も上演している」
あるいは、トランプが「航行の自由」作戦をしないと信じていたのに、裏切られたという思いがあり、激しい反応が出たのかもしれない。つまり、米中の間で、南シナ海については当面は双方、表立った挑発行為はしない、中国は北朝鮮問題について真剣に制裁に参加する代わりに、南シナ海問題は保留される、という水面下の合意があったのではないか。中国側からすれば、それを米国から突然反故にしてきた、というならば、その条件反射的怒りもよくわかる。
しかしながら、もしトランプが中国との水面下の合意や、暗黙の了解を裏切って対中強硬路線に切り替えるのだとしたら、これは日本など、同盟国の立場から言わせてもらえば、ようやく正しい東アジア政策の軌道に戻る、とほっとさせられる。
4月上旬の米中首脳会議以降、トランプの対中政策は明らかにまともではなかった。北朝鮮問題解決のために中国側の協力を得ようと、トランプは習近平に譲歩を重ねてきたが、経済問題はともかく、南シナ海における譲歩は米国の安全保障問題の基礎を揺るがしかねない話だ。
その一方で、中国が米国と協力して武力で北朝鮮を叩くということも、普通なら考えにくい。明らかに、トランプに対しての中国の”協力約束”は口先だけの、秋の党大会までの時間稼ぎである。しかも、韓国に文在寅政権という親北親中政権ができたとなると、ますます中国が北朝鮮に対し武力を背景にした圧力を行使するのは得策ではない。いずれこの協力体制は破たんする。
ASEANを巻き込んだ中国包囲網の復活を
ならば、中国に南シナ海の実効支配強化と軍事拠点化の猶予を与えるだけの”米中協力関係”はさっさと見切る方がよかろう。香港の一部のメディアは、南シナ海で中国に圧力を少しかけて見せて、緩みかけている中国の北朝鮮制裁のねじを巻き上げるつもりである、という見方も報じていたが、それよりは、これまでの対東アジア政策が過ちであったことに気づいたトランプ政権がようやく修正しはじめたのだ、と期待したい。
米国が中国に南シナ海問題で配慮を示すようになると中国の脅威に直接脅かされている東南アジアの近隣国は、本音を偽りながらも中国に恭順的な姿勢をとらざるを得ない。その中国と東南アジア諸国との”柵封体制”が完成してしまえば、南シナ海から米軍のプレゼンスは排除され、米国のアジア政策は大きく後退する。それは北朝鮮の核兵器保有よりも、米国の安全を脅かす事態ではないだろうか。
もう一度、ASEANを巻き込んだ中国包囲網の復活を、日本の安全保障のためにも、願う。だが、トランプの本音がどこにあるのかは、中国当局ですら予測できないのだから、私の期待も裏切られるかもしれない。もっとも、そうなる前にトランプ自身が弾劾される可能性もそれなりに高いのだが。
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