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櫻井よしこ×花田紀凱『「正義」の嘘』について
マスメデイアはすぐに「言論の自由」とか「表現の自由」とか言いますが、自分に都合が悪くなると頬かむり。朝日新聞なんてその最たるもの。昨年の8月の慰安婦誤報報道も開き直り、海外向けでの謝罪もしていません。『「正義」の嘘』は朝日が代表するメデイアの嘘を指します。今の日本のメデイアに「正義」の観念があるかどうか。理性的でなく、すぐに情緒的に大騒ぎする癖があります。貧困問題、安全保障問題、不法在留問題等現実を見据えて自ら合理的解決案を提示してみたらと言いたくなります。この点では民主党、社民党、共産党と同じく無責任であります。しかも平気で嘘をつくところも一緒。8/30国会周辺デモは主催者側発表12万人と言う数字を垂れ流して報道していますが、警察発表は3万人。60年安保の時は警察発表で13万人ですから、今回の数字は大したことがありません。どうせ共産党とかが動員したのでしょう。日本のメデイアは産経・読売を除き、中国と朝鮮半島の手先です。
朝日新聞は如何に戦争を煽っていたかが西尾氏の発言から分かります。戦後は手のひらを反してGHQに擦り寄り、共産中国や北朝鮮擁護に走りました。こんな変節新聞を、「日本の良識」と思って有難がって読んでいる人は、朝日新聞の過去をキッチリ理解した上で読んでほしい。でないと刷り込まれるだけです。金を払って、インチキ情報を頭にインプットしてるようなもので二重に悪いとしか言いようがありません。小生は日経を読んでいますが、富田メモに象徴されるように政治は偏向していますし、経済は中国進出を煽りに煽ってきましたので、その2点については眉に唾して読んでいます。でも、伊奈久喜、春原剛、鈴置高史、福島香織(フリー)の記事が読めます。
ドイツはひどいですね。ユダヤ人だけではないですね。第二次上海事変も一次と違い日本軍が苦しめられたのもドイツ軍事顧問団指導による要塞でした。中国とは裏で繋がってましたし、今でも経済的結びつきは強いです。ワイツゼッカーの謝罪は国家としての謝罪(=賠償)でなく、ユダヤ人虐殺に対してです。日本のメデイアは中国発なのでしょう。そういった事実には目を塞ぎます。
今の日本の社会は軍事には無関心。政治に無関心以上です。やはり日本が弱くないと困る国があるのでしょう。でも主権在民の国で、軍事に関心がなければ、平和を維持するのは難しくなります。隷従一直線です。(昔、小林よしのりの「東大一直線」という漫画がありましたが)。オバマを見ていると分かるでしょう。軍事嫌いが何を引き起こしたか。ウクライナや南沙・西沙、尖閣の問題、チエンバレンの宥和政策が何を齎したか。自分の頭で考えるためにはいろいろ調べることが必要です。今は幸いネットという強い味方があります。検索すればすぐに必要な情報が入ります。
内容
P.42~50
櫻井:私と花田さんが番組を持つ「言論テレビ」は、イン夕―ネットの動画コンテンツなので、若い人たちだけが見ていらっしゃるかと思ったら意外にそうではありません。実は言論テレビを毎週見て下さる正会員の中には若い世代と共に五〇代、六〇代、七〇代の方もたくさんいらっしゃいます。
花田:そうなのです。だからどちらかといえば、ネットの世論調査のほうが実は客観的なのではないかという気が私はしています。
櫻井:安倍総理の靖国参拝後の世論調査では、ネットでは八割が支持したという数字があったとも聞きました。
花田:ヤフーが行った意識調査で〈安倍首相の靖国神社参拝は妥当?〉という質問では、八割近くが妥当と回答していました。
櫻井:でも、彼らは都合が悪いので、それを書かない。
都合が悪くなると書かないということについては、ずいぶん古い事例なのですが こういう本を挙げておきます。
それは、『読んでびっくり朝日新聞の太平洋戦争記事』で、戦後五〇年が迫った一九九四年にリヨン社というところから出版された本です。すぐに朝日新聞が権利関係で法的手段をちらつかせてこれを絶版にさせました。その後、太田出版からほぼ同じ内容の『朝日新聞の戦争責任—東スポもびっくり!の戟争記事を徹底検証』が発行されています。
『読んでびっくり朝日新聞の太平洋戦争記事』には、昭和ニ〇年八月一四日の朝日新聞の記事が挙げられています。翌ー五日に日本は降伏するわけですが、その前日の朝日新聞の社説〈敵の非道を撃つ〉にはこう書かれています。
〈われらはわれらに與へられた至上命令である航空機増産、食糧増産その他の刻下の急務にひたすら邁進すれば足る。敵の暴虐に対する報復の機は一にこの國民の胸底に内燃する信念が、黙々としてその職場に於て練り固めつつある火の玉が、一時に炸裂するときにある。
すでに幾多の同胞は戦災者となっても、その闘魂は微動だもせず、いかに敵が焦慮の新戦術を実施しようとも、一億の信念の凝り固まった火の玉を消すことはできない。
敵の謀略が激しければ激しいほど、その報復の大きいことを知るべきのみである〉 まだ戦え、戦えと奨励している。
終戦の前の日の社説ですよ。
私がこのことを本当に酷いと思うのには理由があります。終戦の五日前に当時の下村(宏)情報局総裁談話によって、「戦局は最悪の状態」との声明が発表された。そして、朝日新聞はこれを日本の敗戦を示唆した初めての政府声明だと受けとめたということですが、新聞人としては、敗戦を政府が発表したと受けとめたのならば、すぐに発表しなければならないわけでしよう。
にもかかわらず、そうしていない。先の書籍が細川隆元氏の著書『実録朝日新聞』を引用しながらどう書いているか。当時の朝日新聞の編集主幹たちが、新聞はむしろ知らぬ顔をして、従来の「国体護持、一億団結」を表に出していった方がよかろう、 と編集方針を定めたというのです。そして前の日の社説までイケイケドンドンを主張して、多くの死ななくていい人たちを戦場に送り込んでしまった。
急に編集方針を変えることができないから、徐々に書いていこうということだったようですが、それはつまり単に自分たちのメンツを守りたいということでしよう。
花田:メンツに捉われるから、報道が歪むんです。
櫻井:こういうメディアがいまや「日本の良識」などという。
花田:自社が戦時中に戦意高揚のためにどういう報道をしてきたかについてきちんと検証し、それを詫びるということをまずやらなくてはいけなかった。
櫻井:していないですね。
花田:それがもう根本的におかしいと思います。単なる誤報ではない。
櫻井:朝日はしかし「いや、我々はやりました」という主張だと思います。終戦直後の新聞にものすごく小さなスペースでちょっと反省文を書きました、と。しかし、これは朝日新聞の一面の真ん中よりちょっと下のところに小さく書いてあるだけです。 これをもって戦前戦中、戰争を煽ったことに対する謝罪だとは誰も考えないでしょう。
毎日や他の新聞も多かれ少なかれそうだと思うので、朝日だけを責めるのはどうかという意見もありますが・・・・。
花田:朝日は日本の新聞の一応、代表的存在ですから。
なぜ朝日新聞ばかりを標的にするのかとよく言われます。たとえば、ぼくは一九八八年から『週刊文春』の編集長を六年間やりましたが、その間に朝日について八〇数本もの記事で取り上げたそ、うです。『ダカーポ』編集部が調べてくれたのですが。
「なぜ朝日ばかり」と聞かれたら、朝日は日本の新聞の代表だからだと答えています。部数はたしかに読売の方が多いかもしれないけれども、やはり朝日新聞に対する読者の信頼感は高いものがあるわけで、日本の新聞の代表として取り上げている。別に朝日が憎くてやっているわけではありません、とこう言っています。
櫻井:朝日に期待するという部分が、逆説的にいえばあるのかしら。
花田:そういうこともあるかもしれませんね。いや、ないか(笑)。
櫻井:批判は、がんばるべきだと、がんばってほしいという気持ちでもあるということでしょう。
大メディアをよくする方法
花田:本当に安倍総理の靖国参拝と特定秘密保護法に対する朝日新聞などの報じ方を見ていて、ぼくはもうほとほと日本の大新聞に絶望しました。いくらやっても虚しいなという気さえしましたね。
櫻井:花田さんがそんなことを仰ると、メディアは困るじゃないですか(笑)。
花田:そう言いつつ大批判の特集を組むんですけどね(笑)。朝日新聞だけでなく、テレビもいい加減な報道をしていますね。
櫻井:私もテレビの無責任さにはいろいろな思いを抱いているのですが、テレビの検証は難しいのです。新聞はあとで読めますが、テレビでの発言はなかなか確認ができない。
花田:前から言ってるのですが、一度放送したものについては、たとえば研究者やジャーナリスト、あるいは他のメディアなどが希望したら、必ず放映済みの映像をDVDなどで提供するというシステムをつくるべきです–それは有料でもいいのですよ。そういうシステムをテレビ界自身がつくらなければテレビはよくならないでしょう。このままだと批評ができない。
何気なくテレビを見ていて、「あれ?変だな」と思っても、すぐに消えてしまうわけです。ニ四時間、録画したり、メモしているわけではないですしね。最近、ネット上にはウォッチャーがいて、テレビ朝日の『報道ステ—ション』やTBS日曜朝の 『サンデーモーニング』など問題番組はきちんとウオッチしていたりしますけれども、 批判にさらされなければ、テレビ界はよくなりませんよ。
櫻井:日本のメディアがこのままでいいはずはないわけですから、どうにかよくしていきたい。テレビに関してはいま花田さんが言われたこと、一度報道したニユースや 番組は要求があれば自動的に供給しなければならないというルールは非常にいいですね。是非、NHKをはじめ民放各社に取り組んでほしいものです。 新聞はどうですか?
花田:新聞はいまの大部数を維持しようということ、大部数神話が一番の問題だと思います。それによるいろんな無理がきている。それぞれの新聞社が自前の販売店を持って、そこに莫大なお金を投入しているわけです。しかし、戦時中のように合配制度をとれば、ある新聞店が朝日も読売も毎日も産経も配ることができる。軒並み配れるから能率もいいし、費用も少なくて済む。 ところがいまは各社がそれぞれに配っているわけでしょう。ものすごい無駄。 こういうところを改善すればいいと思うのですが、彼らがなぜやらないかというと、お互いに正確な部数がバレて新聞の優劣がハッキリしてしまうからです。
櫻井:朝日は嫌だから読売にするということも簡単にできてしまうようになりますしね。
花田:だから絶対にやらない。それにそもそも押し紙(売れないのに販売店に押しつける部数)してまで、八〇〇万部、一千万部の大部数である必要はないですよね。
櫻井:小さな新聞社でも、合配制度を使えば「クオリティーペーパー」を全国に配ることができる可能性があります。が、いまは単体の販売所を持たなければならないので、小さな新聞社ではどうしても体力的に無理な状況が続いています。
花田:アメリカは新聞の数は多いけれども、発行部数はそうでもない。電子版が好調のようですが、紙と電子を併せても「ニユーヨーク・タイムズ」で一五〇万くらいでしよう?「ウォール•ストリート•ジャーナル」も二〇〇万部くらいですよ。
櫻井:私がかつて勤めていた「クリスチャン•サイエンス・モニター」は、当時は 一八万部でした。
花田:けれど、すごく影響力はあるわけじゃないですか。言論界に大きな影響力がある。そういう新聞をつくっていかなければならないですよね。だからぼ<は今、東西で一六〇万部くらいの産経新聞には期待していて、日本のクオリティ—ペーパーは産経だ、あまり大きくならない方がいいと言っています。
櫻井:ハッハッ、それでも私は産経新聞の部数が增えてほしいと思います。とりわけ沖縄県では何とかもっともっと読まれてほしい。
P.118~127(西尾は西尾幹二)
西尾:結局どうなるのか。朝日が生きていくためには、読売、産経に近づくのか。私はそれを期待しますが、読売、産経に近づいてしまったら、ひょっとすると、産経より右なったりするかもしれませんよ。なにせ、ペティ•ジャステイスですから。「右がジャスティスだ」となったら、「右向け右」となってしまう。朝日新聞とは、そういう会社なのですよ。だって、戦争中がそうだったのですから。
花田:今度は右に暴走すると(笑)。
西尾:私は花田さんも知っての通り、『GHQ焚書図書開封』(1-10、徳間書店、二〇〇八年〜)という仕事をしています。GHQ焚書図書とは、戦後アメリカの連合国軍総司令部(GHQが没収した戦前、戦中の七〇〇〇冊以上の図書のことですが、この中で朝日新聞社から刊行された書物は一四一点ほどで一番多いのです。
花田:いかに戦争協力に熱心だったかということですね。
西尾:そうです。いかに戦時プロパガンダで生きた新聞だったかということです。ベストスリーは朝日新聞、講談社(八三点)、毎日新聞(八一点)の順です。この3社こそ、その後は戦後民主主義、白虐史観で生きようとしてきた会社です。私はしみじみ考えるのですが、なぜ朝日がこうなったかということは、罪の意識でそうなったのではなく、戦争.にとことん打ちのめされると打ちのめした相手の神を自らの神として、それにすり寄っていくことで生きようとする。こういう心理構造だと思うのです。
戦後日本はだいたいそういう傾向があったのですが、だんだん国民がまともになってきて、極端な自己否定の間違いに気がつき、敗者にも正義があることを知るようになり、今までの硬直した生き方を少しずつ捨てようとしています。国民がまともになっていく中で、今まで全面敗北主義でいちばん突出した世界が真っ先におかしくなる。朝日新聞の問題は、そういう事件だとみているのです。
ドイツの凄まじい管理売春
花田:ドイツの慰安婦問題については昔から発言されていますね。
西尾:慰安婦問題について、ドイツ人自身はほとんど考えていません。知られていない。なぜならば、先に述べたようにナチスのことで頭がいっぱいですから、彼らが慰安婦について考えている余裕はないのです。
一般のドイツ人は、自分たちに慰安婦の問題などないとずっと思っていました。
二〇年ほど前、日韓で騒いでいる話がドイツにも伝わってきて、そういえばナチス時代にもあった、あれはどうだったのかとドイツの左翼が騒ぎ出したのです。日本でも翻訳書がニ、三点出ていますが、それ以前の一九七〇年代に、軍事衛生問題研究家のフランツ•ザイドラー著『売春・同性愛・自己毀損—ドイツ衛生指導の緒問題 一九三九—四五年』(一九七七年)という本が出ています。翻訳はされていません。
この本の中で、ドイツで行われていたことが事細かに研究されていますが、それは軍事問題というよりも「衛生問題」でした。というのも、第一次世界大戦のとき、ドイツは約二〇〇万人の性病患者を出して、兵力が落ちたからです。
花田:どの国の軍隊にとっても大問題ですよね。日本軍が慰安婦の検診をするようになったのもそれが原因です。
西尾:その教訓から、第二次世界大戦ではいろいろな知恵を絞って、徹底した管理売春を行ったのです。まず売春の方法としては、司令部、司令官がすべてを取り仕切る。
花田:そういう施設は軍が作ったのですか。
西尾:ふた通りあって、西ヨーロツバ、つまりフランスやオランダでは公娼制度が熟成していたため、ドイツ国防軍は軍の専属施設としてこれを利用し、いわゆる女郎屋の女主人が売春婦の確保に努め、その代わり収入の半分を手にしました。
しかし東方、つまり東ヨーロツバからソ連にかけては、公娼制度がなかったため前線司令官の命令で、人さらいのような「強制連行」が少なからず行われました。
花田:軍が強制的に集めたりしていたと。
西尾:そうです。ザイドラーの前述の本には、例えば次のように書かれています。 〈若い娘で、労働力投入への呼びかけに応じてドイツに行くのはいやだといって拒んだ者は、二者択一として、国防軍売春宿にしばらく勤務する以外に選択の余地はなかった。ユダヤ女性に対してさえもこの二者択一が提案された。「やるべきことをちゃんとやれば」釈放が保証されるといって強制収容所で募集された女たちが、東部占領地区の売春宿に連れて行かれたか、それとも、ラーヴエンスブリュツク強制収容所で売春婦に仕立てられていった女性在監者と同じような運命を辿って、ドイツ国内で使役されるにいたったか、そこははっきりしていない。ただ、彼女らが美人で使いものにさえなれば、アーリア人であろうとセム人であろうと、たいして問題ではなかったのだ〉
強制連行は当たり前に行われていたのですが、へルケ・ザンダーとパーバラ・ヨールが書いた別の本、これは翻訳があり、『1945年・ベルリン解放の真実—戦争・強姦・子ども』(現代書館、一九九六年)にはこう書かれています。
<連合軍が押収して一九四六年にニュルンべルク裁判に提出されたドイツの記録文書、恐怖をあおるためにドイツ人征服者が組織的に強姦したことを立証している。ポーランド、ユダヤ、ロシアの女たちが強姦され、多くの場合、むごたらしく殺された。情容赦なく何百人もの少女や女性が迫害され、軍用娼家へ追い込まれそこで強制売春に使役された。いわゆる「慰安勤務」である。それが管理的に行われた大量殺人の前段階だったこともしばしばだった〉
こういう凄まじいことが行われたのです。
花田:ザイドラーの本には、西尾さんが著書『歴史を裁く愚かさ新しい歴史教科書のために』 (PHP研究所、一九九七年)に出された訳文によると、パリ大隊本部司令官の衛生指導将校がドイツ兵に対し、「性病にどう立ち向かうか」と通達した書類も紹介されています。これがまたすごいですね。
〈常軌を逸した房事に耽けらぬよう注意せよ!それはあなたの職務能力を引き下げ、あなたの健康にも良くない。
性病にかかった軍人は勤務不能である。自らの責任で勤務不能になることは、ドイツ軍人たるにふさわしくない!
それゆえ軍管理外の軽佻浮薄な女性との交際は避けよ。彼女らはたいてい性病持ちである!
アルコールは「性病の父」である。……〉
西尾:つまり、第1次大戦の失敗から、兵士を街で遊ばせると危ない、完全に管理したほうがいいということになったのです。特に東ヨーロツバではそうでした。
ドイツは合理的といえば合理的ですが、表も裏もない国です。これが日本だったら、売春婦を買ったといった話は隠れて言ったり、亡くなった小野田寛郎さんが書き残されていたように「ピー」という隠語で呼んだり、あるいは売春婦と結構仲よくなったり、人間的なのですね。
ところがドイツでは、性行為そのものが徹底的に監視されていました。不能も、中断も、全部監視され、記録されていたのです。だからそれは女性の悲劇だけでなく、男性の悲劇でもあるのです。
「強制連行」したドイツ軍
花田:そうすると、ドイツの場合の軍の慰安婦こそ、強制連行し、完全に軍の管理の下にあり、統制性のあるものだったのですね。
西尾:そうです。売春宿は五〇〇もありました。例えば、南イタリアの慰安所は終戦と同時にドイツの慰安所から米軍の慰安所へひっくり返った。そして女性もろともアメリカへ移ったそうです。そんな愉快な話もあります。
だから、どこの国もやっていたのです。どうか朝日新聞、調べて欲しいですね。 大いに研究して欲しい。朝日新聞に期待しますよ。世界中の戦時慰安婦がいかにひどく、いかに日本は微笑ましかったかということが、きっと分かるでしょう。
当時は売春宿のおかみがドイツ軍当局に対し、売春宿についての報告を全部、記録して提出しなければならなかったため、そうした書類も残されています。
花田:この書類を見ますと、売春宿が誰によって設立されたかをはじめ、安全保安対策は誰によってなされているか、娼妓の数、年齢、娼妓への報酬、誰が護を検査するのか、客の訪問時間は時間的に制限されているかなど、全部答えなければならなかったのですね。
西尾:売春宿の内規もありました。前線司令官の署名があります。 〈この宿は前線司令官の軍事的かつ警察的監督下に置かれる。許されるものは、軽い地酒のワイン、ビール、ミネラルウォーター、果汁ジュースに限られる。前線司令官の命令に反する騒音、暴行ならびに違反諸行為は、罰せられる。 この売春宿の女主人(または、その代理)は、緊急時に警察や軍隊の助力を求めるこ とが義務づけられている〉
ですから、売春婦をことごとく「キープ」したのです。これこそまさに、軍が管理 し、軍が「人さらい」までやった慰安所なのです。特にポ—ランド、ルーマニア、ウクライナの女性は被害者でした。拉致されたのですから。
ところが、驚くべきことはその先にありました。特に東ヨーロッパからソ連地域で大きな問題だったのですが、そこまでやっても性病を防ぎきれなかったのです。 しかも、南ウクライナでは、軍が建てた売春宿が、性病の発生源だということが分かって軍当局はほとほと困り果てたのです。そこで何を考えたかというと、売春宿を軍が管理しても駄目だということで、一般の女性にやらせろと。
花田:え?
西尾:一般の女性に性行為をさせろと。
花田:そんな通達が出たのですか。
西尾:はっきりそれが書けないから、軍事刑罰法典を改定して、被占領地域において強姦を犯したドイツ軍人の処罰が寛大に扱われるよう改められた、とザイドラーは指摘しています。
花田:よく、ソ連の兵士は「強姦型」というか、ドイツへ侵攻したら必ず女性たちを強姦していったと言われていますが、ドイツはそれに近いひどさですね。
西尾:だから、ドイツはベルリンでソ連に復讐されたのです。 話を戻すと、ドイツ軍人に対しては、次のように改められたのです。 〈ドイツ帝国と帝国併合地域の外部に動員されたSS親衛隊ならびに各種警護部隊の構成員に有罪の判決を下すに際しては、強姦罪の量刑に当っては、つねに特別の事情が考慮されなければならない。彼らは特別の事情の下に勤務を果たしているからである〉
戦争がある限りなくならない問題
西尾:さらには、次のような条文もありました。〈よしんば、強姦犯罪が武器の脅しで行われた場合があったにしても、ただそれだけでは、それは一九三九年十二月五日付の暴力犯罪法規定の、あるいはまた、戦時特別処罰法規定第五条(a)の適用をそのまま正当化するものではない。兵たる者は職業上武器を携行し操作する者であり、強姦犯罪に際しそれを使用したからといって—西尾註/「それ」とは「武器」ですよ—それだけでは彼が暴力犯罪者であるとの烙印をただちに捺されるいわれはない〉
ポーランドやルーマニア、ウクライナ、ロシアの女性をドイツ兵が武器で威嚇して手籠めにし、強姦行為を果たしても、まあ大目に見てやってほしいという公式文書です。このような文書があれば、ドイツ軍事法廷は「運用」次第で、たいていのドイツ兵の性犯罪を無罪放免としてしまったと考えられます。
P.182~186(古谷は古谷経衡)
無人機の時代に『徴兵制』から出ない朝日
花田:そこで、ぜひおうかがいしたいのは、集団的自衛権のことです。朝日新聞や東京新聞は、集団的自衛権の行使容認について、いますぐ戦争になる、または、徴兵制になるといったことを書きます。それについて古谷さんは「最新の軍事を知らない。おかしい」と発言されています。
古谷:全く噴飯ものですね。朝日新間も、以前はもう少し知識があったような気がするのですが、いまはひどい。
花田:だいたい、世界の国は徴兵制をどんどんやめていますよね。
古谷:やめています。朝日などの「戦争になる」論に関連して、無料通信アプリ「LIINE (ライン)」では、テイ―ンの間で次のようなチェーンツイートが出回りました。
〈集団的自衛権ができたら子供は最低でも2年、自衛隊の訓練をしないといけなくなる!もしこの訓練期間中に戦争があったら戦場に行かないといけないんだって!〉 このデマは、朝日新聞的には肯定したい内容でしょうが、まず集団的自衛権は「できたら」と言うものではなくて、法概念ですので、できるも何もない。これをテイーンの一部でも信じているということが本当であれは、ずいぶんレベルが落ちていると言えます。
というのも、これは伝聞ですよね。こういうテイーンに流れるデマは昔からありました。例えば一九七〇年代、八〇年代には「ロ裂け女」ブームや「人面犬」ブームがありました。
花田:そのレベルですか、集団的自衛権が。
古谷:実はそのレベルでさえないのです。ロ裂け女は「隣の中学校の隣の隣の友達が見たって」といった伝聞でしたが、検証はできない。本当はいるかもしれない。分からないのです。
それに対して、集団的自衛権の話はすぐに検証できる。あり得ないのですから。検証可能なデマが流されているという意味では、テイーンのうわさ話の歴史上、最も低俗な部類です。本当に信じているのならば、レベルが落ちています。
次に、徴兵制についてですが、朝日は社説で「徴兵制につながる」と書いています。そんなトンデモな論調で大丈夫なのでしょうか。朝日的イデオロギーの人でも、 本当に分かっている人は何も言わないのですが。
こうした反応はやはり、近代戦の発想から抜け切れていないからです。社民党のポスターも同じ雰囲気ですが、ある日突然、「赤紙」が外部から来る。外部のまがまがしい悪意に無辜の人民が引っ張られて、三八式歩兵銃を担がせられて突撃する。こういうイメージ。そこから一歩も出ていないのでしよう。
いまの現代戦はUAV (unmanned Air vehicle)、無人機の時代なのです。自衛隊も二〇一五年、無人偵察機「グローパルホーク」を導入する見通しで、これは偵察機なので攻撃する能力はありません。ただ、最新のX47B「ペガサス」という無人攻撃機 は、一三年七月、史上初めて空母への着艦に成功しました。無人機がですよ。あの大東亜戦争のときは、それでさんざん訓練して、死者も出たことが、無人でできる段階までで来ているのです。
ペガサスはまだ実戦には投入されていないようですが、「プレデター」という無人機はすでにアフガニス夕ンやパキスタンで使われています。これは米国本土のネバダやフロリダ、ペンタゴン(国防総省)で、フライトシミュレー夕―のような装置にセンサー要員と操縦士の二人が乗る。センサー要員がモニターを確認して、例えばこれが本当にタリバンの幹部かどうかを伝えて、OKならば撃つ。それをデー夕リンクという衛星の通信システムで操作するのですが、こうしたシステムがほぼ主力になりつつある。無人機がなぜいいかというと、安いのです。
花田:安いのですか。
古谷:プレデター一機が、為替によりますが四億円くらいです。戦闘機一機は一〇〇億円、ニ〇〇億円するのに対してです。維持費も、有人機なら撃墜された搭乗員を救助しなければならないし、搭乗員の医療費もかかる。給料も払わないといけないし、住居費も軍が責任を持たなければならない。
無人機はそれらが一切ありません。一説には、無人機の全体の維持費は有人機の5%程度だと言われます。 ニ〇分の一です。やはり世界の趨勢はそちらになっていく。
地上から無人機を操る操縦員も、一朝一夕で養成できるわけではなく、「ゲームみたいにできる」と言われてもそんなに簡単なものではない。一年くらい訓練が必要らしい。つまり、徴兵制を敷いて、「お前、あしたから無人機を操縦しろ」「強襲揚陸しろ」などと言われても、できるわけがない。こうした専門要員を育てるためにアメリカへ行っている時代なのに、徴兵制という発想自体がまずおかしいのです。
花田:軍事の現状を何も知らないのですね。
8/27・28日経ビジネスオンライン 鈴置高史『“恩知らず”の韓国 「従中」一直線、でも困った時は米国頼み』『「どうせ、中国の属国だったのだから……」 韓国は「恐怖」と「甘え」の狭間で生きる』について
韓国は桂・タフト協定、アチソン声明を覚えてないようです。アメリカもこのような蝙蝠外交にいつまで耐えるのでしょうか。結局、裏で動いて恫喝し続けた中国の勝利になった訳です。ましてや次期大統領候補の潘基文まで9/3抗日行事に参加します。無能、ネポテイズムで史上最低の事務局長と言われる所以です。でもこんな男をアメリカと共に事務局長に推薦したのですから、日本の政治家は間抜けとしか言いようがありません。慰安婦で世界に嘘を吐きまくってきた彼らは得た権力を利用することは充分読めたでしょうに。
アメリカも舐められたものです。韓国ごとき小国にゆさぶられてしまうのですから。オバマになってからです。同盟国を同盟国と扱ってこなかったから、アメリカ離れが起きてしまったのです。AIIBに参加表明した英国、イスラエル、サウデイ、韓国はアメリカの(準)同盟国です。
韓国は戦勝国になりたいがために中国へ行くとしたら、歴史の改竄・捏造がまた行われるという事です。北朝鮮はどう出るか。朝鮮半島で正統性を持つ政権は北と自負を持っているので。まあ、ソ連に逃げていた金日成が亡命政権(これも怪しいが)というのですから。それで朴槿恵は李承晩が一時いた上海へ行くのでしょうけど。イタリアもムッソリーニを逆さ吊りしたことから戦勝国と主張する人もいますが認められていません。フランスのドゴールだけがその政治力で戦勝国と認められましたが、実質はドイツの第二次大戦始まってからの占領国で連合国によって解放されました。台湾・韓国は第二次大戦開始前から日本国でした。その事実を鑑みれば戦勝国扱いは無理でしょう。中国共産党も日本と殆ど戦ったことがないのに、こういう行事を平気でできるのですから、中華・小中華は似た者同士です。
韓国は中国の属国になった方が良い。そのとき初めて日本統治時代が良かったと気付くでしょう。アメリカも甘やかしせず、同盟解消した方が良いのでは。彼らは「アメリカはどうせそこまではできない」と高をくくっている訳ですから。「桂・タフト協定、アチソン声明を思い出せ」と言ってやれば良い。昔ですら朝鮮半島を見限れたのですから、ミサイル、ICBMの時代に朝鮮半島の価値はないと思います。レーザーやロボット(無人機等も含む)、衛星等で監視、後の先で相手を攻撃できるようにしておかないと。これが抑止力になります。
記事
「行かないで」と頼む米国を振り切って、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領は北京に行く。韓国の二股外交はこれで大きく中国に傾く。
韓国は「忘恩の徒」だ
鈴置:匿名で外交を論じる韓国のヴァンダービルド氏が、烈火のごとく怒りました。「我が国は米国から忘恩の徒と見なされるぞ」と警告したのです。
親米保守派のサイト、趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムに載せた「自らの評価と他人の評価」(8月22日、韓国語)の全文を以下に翻訳します。
- 非常事態(北朝鮮の挑発)が勃発したら、韓国人が叫ぶのは……「韓米連合作戦を発動し対処する必要がある」「米空母の投入が至急だ」「韓米同盟をさらに固めるべきだ」
- 平常に戻ると……「米国にだけ頼ってはいけない」「中国が経済で世界1位になる。中国が重要だ」「日本と親しくする米国はひどい目にあわせよう」
- 韓国人自身の評価は「これを我々は『等距離外交』と呼ぶ」
- 他人の評価は「二股外交」「恩知らず」「中国への事大主義のDNA」……
「米空母を呼ぶぞ」
—8月20日には軍事境界線で砲撃し合うなど、南北は8月下旬に緊張を高めました。
鈴置:何をするか分からない北朝鮮に対峙する韓国は、米国の軍事力を全面的に頼りにしています。というのに米国から「行かないでくれ」と言われた、北京での「抗日戦勝70周年記念式典」に朴槿恵大統領は出席します。
ヴァンダービルド氏ならずとも「なんと不義理な国だ」「米国はいつまで韓国を助けるのだろうか」と考えるでしょう。
韓国は今回も緊張が高まると、北朝鮮に対し「米国の空母やB52、B2爆撃機を呼ぶぞ」と脅しました。
聯合ニュースの「米国と原子力空母などの配備時期を検討中=韓国政府」(8月24日、日本語版)によると同日、国防部報道官は会見で「韓米は現在の危機的状況を持続的に注視し、米軍の戦略資産の展開時期を検討している」と語りました。報道官は「B52」「B2」など米国の戦略資産――装備の具体的な名称にもちゃんと言及しました。
異様な朴槿恵の参加
—「俺の後ろには、強力な兵器を持った米国がいるぞ」との威嚇ですね。
鈴置:韓国は北を脅す時には必ず「世界最強の米国」を持ち出すのです。ところが、これほどに世話になりながら、朴槿恵大統領は「抗日式典」に参加します。
「抗日戦勝70周年記念式典」とは、中国が北京で9月3日に開くイベントです。ロシアやベトナム、南アフリカなどの国家首脳が参加します。
一方、米国やNATO加盟国――いわゆる西側諸国の首脳は参加しません。交戦国だった日本の安倍晋三首相も非公式の経路で招かれましたが、断りました。
「抗日式典」の名をつけていますが、要は中国が世界に軍事力を誇示するためのイベントです。ことに今、中国は軍事力の増強を背景に東シナ海や南シナ海で領土・領海の拡張に動いています。
この式典に参加すれば、中国の膨張主義を認めることになりかねない。西側の首脳が参加しないのは当然です。そんな中、米軍に最も助けてもらっている韓国の大統領が参加するという、異様な事態が起きかけているのです。
—ではなぜ、朴槿恵大統領が出席するのでしょうか。
鈴置:理由は2つ挙げられています。「経済的に中国とのつながりが深い」と「北朝鮮への牽制や、統一問題で中国の助けがいる」――です。
米韓間の問題になるぞ
—まっとうな理由ですか。
鈴置:いずれも言い訳にすぎません。経済的に中国とのつながりが深いと言い出せば、どの国も同じことなのです。
確かに韓国は、輸出額をGDPで割った数字が50%に迫るなど輸出依存度が高いこともあって、貿易大国たる中国に気を使いたくなるのは事実です。なお、日本のその数字は10%台です。
でも、先ほども指摘したように韓国は「おカネ」より大事な「命」を米国に託しているのです。その米国が参加するな、と言ったのです。
もちろん米国が大声でそう叫んだわけではありません。様々の外交チャネルを通じて静かに韓国に警告を発し、それが効かなかったので日本や韓国のメディアを使ったようです(表「南北の緊張激化と朴大統領の訪中」参照)。
| 表●南北の緊張激化と朴大統領の訪中 | |
| 8月4日 | 非武装地帯(DMZ)の韓国側で韓国軍兵士2人が地雷で負傷 |
| 8月9日 | 共同通信「米国が韓国に対し、朴大統領の抗日式典参加への懸念を伝達」と報道 |
| 8月10日 | 韓国国防部「8月4日に非武装地帯で起きた爆発は北朝鮮が仕掛けた地雷」 |
| 8月10日 | 韓国軍、地雷への報復措置として軍事境界線付近で拡声器による対北宣伝放送再開 |
| 8月11日 | 中央日報「抗日式典へは朴大統領ではなく駐中大使の参加を、と米国が要望」と報道 |
| 8月13日 | 「10月16日にワシントンで米韓首脳会談を開催」と両国政府が発表 |
| 8月15日 | 米サンフランシスコのチャイナタウンに抗日戦争記念館設立 |
| 8月17日 | 米韓両軍、指揮所演習「乙支フリーダムガーデン」を韓国内で開始 |
| 8月20日 | 韓国政府「北京での抗日式典に朴大統領が参加。軍事パレード参観は未定」と発表 |
| 8月20日 | 北朝鮮「48時間以内に宣伝放送を中止しなければ軍事的行動をとる」 |
| 8月21日 | 朝鮮中央通信「金正恩第1書記が軍事境界線付近を準戦時状態にと命令」と報道 |
| 8月22日 | 南北、板門店で午後6時半から高官会談を開催。23日午前4時15分まで10時間弱続く |
| 8月23日 | 午後3時半に南北高官会議が続開 |
| 8月24日 | 終日、南北高官会談が継続 |
| 8月25日 | 未明に南北高官会談が妥結。北は「地雷事故に遺憾」を表明し「準戦時状態」を解除。南は宣伝放送を中止 |
| 8月25日 | 中国外交部「朴大統領含む30カ国首脳が抗日式典に加え軍事パレードに参加」と発表 |
注)赤字は南北の緊張激化に関する項目、黒字は朴大統領の訪中に関する項目を示す
マイケル・グリーン(Michael Green)米戦略国際問題研究所(CSIS)副理事長も中央日報の取材に答え、以下のように語っています。
「<戦後70年談話>『米国が歓迎する内容…韓国の部分は3、4点』」(8月17日、日本語版)という記事の最後のくだりです。
- (「朴大統領が戦勝節行事出席のために訪中する可能性が残されているが、米国の立場は何か」との質問に答え)中国軍の閲兵式(軍事パレード)に出席すれば、韓米間の問題になるだろう。米国の他の同盟国のうちどこが行くだろうか。英国も豪州も日本も行かないはずだ。焦点は朴大統領が閲兵式に出席するかどうか、中国に利用されないかどうかという点だ。
北を制御できない中国
—もう1つの「対北朝鮮政策で中国の助けがいる」という理由は?
鈴置:一見それらしいのですが、よく考えるとおかしな理屈です。そもそも中国は北朝鮮をコントロールできないからです。
今回の緊張激化を思い出して下さい。発端は北が韓国側に地雷を仕掛けたことです。中国が北朝鮮を制御できるなら、こんなことは起きません。
北朝鮮が渋々ながら「地雷事件に遺憾の意」を表明したのも、中国の圧力によるものではありません。軍事境界線付近で、北が最も嫌がる拡声器による宣伝放送を韓国が再開したからです。その背景には米国の軍事力がありました。
統一問題だってそうです。朝鮮半島には中国の死活的利益がかかります。今、韓国が少々ゴマをすっておいても、中国はいざという時に韓国の願う方向で動いてくれるとは限りません。
むしろ韓国の、恩を忘れた「離米従中」の結果、米国との関係を悪化させる方が統一にはマイナスになるでしょう。怒った米国が韓国を見捨てたら、韓国はますます中国の言う通りに動くしかなくなります。
朝鮮戦争は中国の義戦
東亜日報が8月11日に載せた社説「朴大統領は南北統一を阻止した中国の人民解放軍に拍手を送れない」(韓国語版)も対米配慮を訴えています。
8月9日に共同通信が「米、韓国に不参加要請 中国の抗日記念行事」と報じました。翌8月10日、この記事にコメントを求められた青瓦台(大統領府)が参加を匂わせました。
東亜日報の社説はそれを批判したのです。行くべきでない理由は2つで、それを述べた部分は以下です。
- 人民解放軍は朝鮮戦争に突如参戦し、我々の統一を妨げた敵軍である。習近平主席は2010年10月25日に「(米国に抗し北朝鮮を助けた)抗美援朝戦争は偉大で、侵略に対抗した正義の戦争」と述べた。この軍のパレードに朴大統領は拍手できない。
- 習近平主席は今回の行事を中国の国際影響力と軍事力を誇示する機会と考えている。中国の覇権拡大の意図があると考える米国は参加しない方針だ。韓国が参加した場合、米国、日本との関係を損なう恐れがある。
賛否は5対2
—南北の緊張が激化する前から「参加するな」との社説が書かれていたのですね。
ただそれは少数意見でした。朝鮮日報の「朴大統領の訪中必要、軍事パレードには異論」(8月18日、韓国語版)によると、同紙が意見を聞いた米韓関係、中韓関係の専門家7人のうち6人が「参加すべきだ」と答え、はっきりと「参加すべきでない」としたのは1人に留まったのです。
ただ、抗日式典の中核行事である軍事パレードに関しては、この6人の中、1人だけが積極的な参加を唱えました。残り5人は「避けるべきだ」と答えました。
—普通の人の意見は?
鈴置:韓国の世論調査会社、リアルメーターが8月10日に「朴大統領は抗日式典に参加すべきか」(韓国語)を聞いています(グラフ1参照)。
グラフ1●中国の「抗日式典」に参加すべきか
(8月10日、リアルメーター調査)
それによると、51.8%が「参加すべきだ」、20.6%が「参加すべきでない」と答え、「よく分からない」が27.6%でした。
興味深いのは「保守が反対、左派が賛成」ではなかったことです。自らを「保守」と考える人の賛否の比率は64.0対23.1。これに対し「進歩層」は40.8対24.3。「中道層」は52.1対18.4でした。「右」になるほど、抗日式典に参加すべきだと考える人の比率が増すのです。
奇妙な日本の“リベラル”
—なぜでしょうか。
鈴置:保守の中の、ヴァンダービルド氏のような親米派は「反対」を唱えます。でも保守の中にも親中派がいます。彼らの中には「賛成」と答えた人が多いと思います。
一方「進歩層」――韓国のリベラルの中には独裁政権である中国に警戒感を持つ人もいます。彼らは反対に回りがちです。
—変な感じがします。
鈴置:日本人が見ると奇妙かもしれませんね。でも、それは日本の感覚がおかしいのです。日本のリベラルを自認する人の相当数が、独裁国家で膨張主義の中国を一切批判しません。
安保法制に関する議論でも「戦争ができる国、日本」を非難しても「中国の脅威」には触れません。日本の“リベラル”の方が異常なのです。
なお、リアルメーターは8月18日には「朴大統領は軍事パレードを参観すべきか」(韓国語)も聞いています(グラフ2参照)。
グラフ2●軍事パレードにも参加すべきか
(8月18日、リアルメーター調査)
朝鮮日報の記事が示すように「式典に参加しても、パレードは参観すべきでない」という人が多いため、敢えてこれだけ聞いたのでしょう。
結論は「軍事パレードを参観すべき」が39.5%、「参観すべきではない」が32.7%でした。この調査でも、保守の方が参観に肯定的な傾向がありました。
世論はますます参加に傾く
—いずれにせよ、式典参加への賛否は5対2、という世論構成なのですね。
鈴置:少し後に実施した韓国ギャラップの調査では、賛否の比率が69対18と、さらに差が大きくなりました。ざっくり言って、7対2です(グラフ3参照)。
グラフ3●抗日式典に朴大統領は参加すべきか
(8月18―20日、ギャラップ調査)
この「デイリーオピニオン176号 2015年8月第3週」の調査期間は8月18日から20日。8月20日に韓国政府が「式典へは参加、軍事パレードは検討中」と発表したので、現状追認的に賛成した人の分がかさ上げしたのかもしれません。
なお、その後の8月25日には中国外交部が「朴槿恵大統領を含む30カ国の首脳が、抗日式典に加え軍事パレードにも参加する」と発表しました。
朝鮮日報は速報で「中国の抗日式典に崔竜海参加、朴大統領は真っ先に紹介」(8月25日、韓国語版)と、韓国がいかに中国から大事にされているかを強調しました。
—だんだん中国に取り込まれて行きますね、韓国は。
鈴置:その通りです。韓国政府の参加の発表を受けた東亜日報の社説「抗日戦記念行事に出席する朴大統領、外交後遺症を相殺する実利を得よ」(8月21日、日本語版)も「結局、大統領は軍事パレードも参観する可能性が高い」と指摘しつつ、反対を撤回しました。
決まったことを反対しても仕方ない、ということもあるのでしょうが、世論が「参加」に流れたことが大きいと思います。
韓国人はすっかり「中立気分」
—「米国から恩知らずと思われるぞ」とのヴァンダービルド氏の警告も不発に終わりそうですね。
鈴置:神戸大学大学院の木村幹教授は8月20日、ツイッターで以下のようにつぶやいています。
- 大統領訪中についてKBSは、「米中間の均衡模索」と明確に説明。改めて米中間で韓国が中立的な立場であることが、韓国内で常識化している事を実感。
KBSとは韓国の公共放送のことです。それだけに報道に癖は少なく、韓国人の意見の最大公約数を映します。
木村幹先生が指摘するように、韓国人は「自分たちは米中間で中立であることが当然だ」と考えるようになったのです。
そして、この大統領訪中によって――中国の狙い通り今後、韓国が一気に中国に傾く可能性が大きいのです。米国がますます韓国を中国側の国と見なし、冷たくなると思われるからです。
戦勝国の地位与える中国
それに加え、中国も一気に韓国取り込みに動くでしょう。例えば、韓国が望んでも米国からは与えられなかった「戦勝国の地位」です。「抗日式典」は、ある意味でその授与式でもあります。
大統領の抗日式典参加に一時は強力に反対した東亜日報も、8月21日の社説では「訪中する以上は外交的な成果を挙げよ」と主張しました。そして結論は以下でした。
- 訪中の成果は、韓国が米国と中国の間で新しいバランス外交を模索する試金石になるだろう。
「新しいバランス外交」――つまり、中国側にグンと傾く、ということでしょう。
(次回に続く)
(前回から読む)
韓国は「中国への恐怖」と、米国への「甘え」の間で生きる。
異例の抗日式典参加
—前回の「“恩知らず”の韓国」は、朴槿恵(パク・クンヘ)大統領の「抗日戦勝70周年記念式典」参加を機に、韓国はますます中国に引き込まれるだろう、というところで終わりました。
鈴置:読んだ人から「なぜ韓国は中国の言うままになるのか」との質問が寄せられました。
「抗日式典」に、西側の国の首脳で参加するのは朴槿恵大統領だけです。中国の覇権主義をほう助することになりかねないからです。同盟国の米国も「抗日式典には行かない方がいい」と止めたのです。
それでも朴槿恵大統領は北京に行く。そこまで中国の顔色を見ることもないだろうに……と多くの人が首を傾げました。「経済や外交面で中国の協力が重要だ」という韓国の説明は言い訳に過ぎませんし。
「高句麗も中国のものだ」
—日本人は、そこがよく分からないのです。
鈴置:一言で答えれば、韓国人独特の中国観からです。彼らの心の奥底には「中国は韓国の上に君臨する国であり、逆らってはいけない」との抜きがたい観念があります。これが韓国を「従中一直線」にと突き動かしているのです。
2006年秋のことです。韓国の指導層の4人と夕食をとりながら歓談しました。彼らが韓国語で会話し、私は黙って聞いている。少しお酒が入って舌は滑らかになっているけれど皆、酔うほどではない。
1人が中国の悪口を言い出すと、座が一気に盛り上がりました。当時、中国と韓国は「歴史認識」で対立を深めていました。中国の学界が高句麗や渤海は中国の少数民族が建てた国だったと主張したからです。
21世紀の韓国では「高句麗も渤海も韓民族の国家」と教えていますから「中国人に歴史を盗まれる!」と大騒ぎになったのです。
高句麗などの領域は現在の北朝鮮の領土と重なります。韓国人は「北が崩壊した後に、中国がその領土を我がものとする布石ではないか」とも疑いました。
学界の論争は両国民の間の感情問題に発展しました。最後は両国政府が「政治問題化しないこと」で決着したのですが、対立は今も燻り続けています。
韓国人はこれを単に歴史や領土の対立ではなく「力を付けた中国が韓国を見下し、再び宗主国のように振る舞い始めた」象徴と受け止めたのです。
中国には逆らってはいけない
—歴代、朝鮮半島の王朝は中華帝国に属しましたね。
鈴置:そこがポイントです。話を韓国人4人との歓談に戻します。ひとしきり中国の悪口になった後、1人が「でも、どうせ我が国は属国だったからなあ」とポツリと漏らすと、皆が黙ってしまったのです。
私が驚いたのは「属国」という言葉がスルリと出てきたことです。日本の属国だったことさえ認めたがらない韓国人が、中国に対してはごく自然に使う。それも「中国には逆らえない」という意味で。
私がソウルに住んだのは1980年代後半から1990年代初めにかけて――まだ、中国が貧しかったころです。当時の韓国人は中国を完全に下に見ていて「中国の属国だった」などという言い方は聞いたことがありませんでした。
しかし2006年のこの体験以降、しばしば「属国だったのだから、しょうがない」という言説を聞くようになりました。韓国人がかなりリラックスした時に限りますけれど。
日本でも昭和40年代まで「まあ、アメリカさんの言うことだから」なんて言い方がありました。米国から少々無理を言われても、戦争に負けたのだからしょうがない、との意味です。
でも、それとは比べものにならないほど韓国人の「属国だったのだから」は強烈です。なにせ、この一言でどんな議論も終わってしまうのです。
貢女も常態化
—何が異なるのでしょうか。
鈴置:太平洋戦争で負けた日本は、初めて国土を外敵に占領されました。その体験は日本人に強烈な影響を与えました。ただ、米国は日本人が想像していたほどには厳しい統治は行いませんでした。
一方、朝鮮半島の歴代国家の手痛い敗戦は1度ではなく、度重なるものでした。さらに朝鮮半島に対し苛酷な支配体制を敷いた中国大陸の王朝もありました。
冊封体制の下で、朝鮮半島から中国大陸へと貢女――若い女性を大量に貢ぐことも常態化していたのです。
「属国だった」という言い方には「中国にはかなわない」との心情だけではなく、中国に対する恐怖感も混じっているのです。
2009年、韓国の指導層の1人に以下のように質問したことがあります。「膨張する中国に対し、日本人は立ち向かう決意を固め始めました。インド人やベトナム人も同様です。でも韓国人はそうは見えない。なぜでしょうか」――。
中国には勝ったことがない
その人は、こう答えたのです。「歴史の差です。日本人と異なって我々は中国に勝ったことがない」。
そこで私は「高句麗は隋に勝ちました。統一新羅も唐を朝鮮半島から追い出したではないですか」と問うたのです。
すると彼はふっと寂しそうに笑って「そんな大昔のことは関係ないのです。我々は中国と仲良くやっていくしか道はありません」と言い切ったのです。
要は「韓国人は中国に対抗する覚悟を固めることはない。勝ったことがないからだ。これからは中国の言うことを聞いて生きていく」との告白でした。
この人の言うように確かに「大昔」を除いて、韓国人が中国人に戦争で勝ったことはありません。それどころか、常に隣の超大国の恐ろしい力を見せつけられてきたのです。直近では朝鮮戦争です。
韓国を侵略した北朝鮮軍を米軍が朝鮮半島から駆逐しました。その世界最強の米軍を、突然に介入した中国の人民解放軍が敗走させたのです。
米軍は北緯38度線付近まで押し戻しましたが、人民解放軍の力を目の当たりにした韓国人の、中国への恐怖感は今も相当なものです。
その前は17世紀の明清交代期の経験です。のちに清となる後金の軍勢に朝鮮の領土は蹂躙され、多くの国民が拉致されました。
ヘビににらまれたカエル
—400年も前の話ですよね。
鈴置:400年前の話ですが、いつでも繰り返され得る話なのです、大陸に住んでいる限りは。そして「北方の強大な異民族への恐怖」は今も小説や映画で再生産されています(「『異様な反日』生む『絶望的な恐中』」参照)。
中国と向き合う韓国人には、ヘビににらまれたカエルのようなところがあります。私の観察するところ、2010年を過ぎる頃には「中国には従うしかない」との空気が、韓国社会の密かなコンセンサスになっていたと思います。
2013年2月までは親米路線の李明博(イ・ミョンバク)大統領の時代でしたから、外交的な動きとしては「離米従中」は表に出ませんでしたが。
—今回の朴槿恵大統領の「抗日式典」参加も中国への恐怖感が主因、ということですね。
鈴置:その通りです。
国家意思などない
—でも、米国との関係は、どうするつもりなのでしょうか。
鈴置:韓国の行動からは「どうするつもり」などといった、国家の大方針や国家意思は読み取れません。とにもかくにも恐ろしい隣の超大国の怒りを買わないよう、びくびくと動いているだけです。
韓国はヘビににらまれないようにするので精一杯なのです。その結果「ヘビほどには恐ろしくない米国」の意向は無視するようになっています。
匿名の外交評論家、ヴァンダービルド氏がそのあたりの「感じ」を説明しています。趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムの「最近の韓米間の重要な動き」(8月22日、韓国語)から引用します。
米国には甘えても大丈夫
まずヴァンダービルド氏は、韓国が米国の要請は聞かず、中国の言う通りに動く国になったと指摘します。
具体的には、日本の集団的自衛権の行使容認、アジアインフラ投資銀行(AIIB)、終末高高度防衛ミサイル(THAAD)、「抗日式典」などの米中対立案件で、です。
私が「米中星取表」でしばしば指摘するのと同じです。
| 米中星取表~「米中対立案件」で韓国はどちらの要求をのんだか (○は要求をのませた国、―はまだ勝負がつかない案件、△は現時点での優勢を示す。2015年8月27日現在) | |||
| 案件 | 米国 | 中国 | 状況 |
| 日本の集団的自衛権 の行使容認 | ● | ○ | 2014年7月の会談で朴大統領は習近平主席と「各国が憂慮」で意見が一致 |
| 米国主導の MDへの参加 | ● | ○ | 中国の威嚇に屈し参加せず。代わりに「韓国型MD」を採用へ |
| 在韓米軍への THAAD配備 | ▼ | △ | 青瓦台は2015年3月11日「要請もなく協議もしておらず、決定もしていない(3NO)」と事実上、米国との対話を拒否 |
| 日韓軍事情報保護協定 | ▼ | △ | 中国の圧力で署名直前に拒否。米も入り「北朝鮮の核・ミサイル」に限定したうえ覚書に格下げ |
| 米韓合同軍事演習 の中断 | ○ | ● | 中国が公式の場で中断を要求したが、予定通り実施 |
| CICAへの 正式参加(注1) | ● | ○ | 正式会員として上海会議に参加。朴大統領は習主席に「成功をお祝い」 |
| CICAでの 反米宣言支持 | ○ | ● | 2014年の上海会議では賛同せず。米国の圧力の結果か |
| AIIBへの 加盟 (注2) | ● | ○ | 米国の反対で2014年7月の中韓首脳会談では表明を見送ったものの、英国などの参加を見て2015年3月に正式に参加表明 |
| FTAAP (注3) | ● | ○ | 2014年のAPECで朴大統領「積極的に支持」 |
| 中国の 南シナ海埋め立て | ● | ○ | 米国の対中批判要請を韓国は無視 |
| 抗日戦勝 70周年記念式典 | ● | ○ | 米国の反対にも関わらず韓国は参加を決定 |
(注1)中国はCICA(アジア信頼醸成措置会議)を、米国をアジアから締め出す組織として活用。 (注2)中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)設立をテコに、米国主導の戦後の国際金融体制に揺さぶりをかける。 (注3)米国が主導するTPP(環太平洋経済連携協定)を牽制するため、中国が掲げる。
そしてヴァンダービルド氏は最後に「韓国人の習性」を指摘しました。以下です。
- 時に露見する韓国人の特徴:好意的に接してくれる側(米国)に対しては礼儀を守らないどころか、むしろ組みしやすしと見て、ぞんざいに扱う習性がある。
- 同じ陣営である米国や日本を軽く見る傾向
- 中国に対しては口一つ聞けぬ傾向
「好意的に接してくれる側はぞんざいに扱う」と直訳しましたが、この部分を「米国には甘えてばかり」と意訳すると、ニュアンスがより、はっきりするかと思います。「中国ほど怖くない米国には甘えても大丈夫」という感じなのでしょう。
反中デモは起きない韓国
—「中国には口一つ聞けない」とは厳しいですね。
鈴置:韓国では毎週、反日集会や反日デモが開かれます。それほどの頻度ではないにしろ、反米デモも行われます。ただ、反中デモはほとんど起こりません。
この現象について、韓国の記者から「我が国にとって、中国は特別な国なのです。何をして来るか分からない国だから」と解説されたことがあります。
日本にも「中国の要求を受け入れることが平和を維持する方法」と思い込んでいる政治家や経済人がいます。ただそれは、韓国のように国民的「コンセンサス」にはなっていない。そこで中国から属国扱いされずに済んでいるのです。
—中国経済の不調が明らかになってきました。それでも韓国は中国側に行くのですね。
鈴置:まさにそこです。韓国人は「抗日式典に参加するのは中国に経済的に依存しているからだ」と言います。でも今、中国への輸出が減る中、経済面でも再び米国頼りになり始めているわけで、この理屈は相当に怪しい。
実際、多くの韓国人が「経済も中国頼みではダメだ」と考え始めました。でも「中国への恐怖」から、もう米国側に後戻りできなくなっているのです。
57%が「米中等距離」
—普通の韓国人はどう考えていますか?
鈴置:韓国の世論調査会社、リアルメーターが7月29日に「米中、どちらが重要か」を聞き、翌30日に公表しています(グラフ参照)。これによると、「米国が重要」と答えた人が50.6%、「中国」が37.9%です。
グラフ●米中どちらが重要か
「中国派」の比率が「米国派」に迫っていることが分かります。なお、この結果はネット上に記事スタイルで提供されていますが、主見出しは「まだ、米国?」です。少しの差だけどいまだ米国派が中国派よりも多いことがニュース、という感覚です。
もう1本の見出しは「中・米の中でより重要な国は」と「中国」を先に表記しています。米国より中国を先にする書き方は初めて見ました。
また、朝鮮日報とソウル大学アジア研究所が実施した世論調査の結果が、同紙に載っています。「2030女性たち『韓米同盟を強化』の声、増える」(8月10日、韓国語版)です。
それによると「韓中関係を強化し、米中間で等距離外交をすべきだ」と答えた人が57.1%で、「米韓同盟を強化すべきだ」の42.9%を上回りました。
調査日は記事中に示されていませんが、独立記念日特集なので、今夏に実施したと思われます。なお見出しは、調査結果のうち「20歳代と30歳代の女性に限れば、10年前と比べ米韓同盟支持者が増えた」という部分からとっています。
日本のメディアの編集者なら「米中等距離派が米国派を超えた」と付けるところです。もう韓国では「等距離外交」が当たり前になったということでしょう。
米国は韓国を捨てないはずだ……
—韓国では「等距離外交」が当たり前、ですか!
鈴置:ええ、韓国人の平均的な意見は「米中間では等距離に位置すべきだ」との方向に傾いています。ただ、「米韓同盟は維持しておきたい」という人も多いと読むべきでしょう。米国には、北朝鮮からの攻撃を防いでもらわねばなりませんからね。
—米中等距離をやりながら米国に守ってもらう――そんな虫のいいことが可能ですか?
鈴置:韓国人の多くが可能と考えています。日本人から見れば、あるいは韓国では珍しい外交感覚のヴァンダービルド氏から見れば、それは「米国に対する甘え」なのですが。
韓国人と話せばすぐに分かりますが「こんなことをしていたら、米国が怒り出すだろうな」と考える人は予想外に少ないのです。「確かに韓国は米国に世話になっている。でも、米国は韓国との同盟をやめるわけにはいかない」との認識からです。
覇権交代期には「二股」可能
—なぜ「米国が韓国との同盟をやめられない」のでしょうか。
鈴置:平均的な韓国人は現在の国際社会を冊封体制的な視点で見ています。そこでは朝貢国は、冊封体制に属しているということだけで、宗主国に恩を売っているのです。
なぜなら宗主国の皇帝は、より多くの朝貢国を抱えることで内外に権威を示せるからです。だから、朝貢物よりもはるかに価値がある品物が宗主国から下賜されるのです。
現在の韓国人も「私は中国側に行ってもいいのだけれどまだ、米国と同盟を結んであげているのだ」と、心のどこかで思っています。
明清交代期に朝鮮は明と清の双方に朝貢しました。二股外交です。当然、明清双方から「敵方に行くなよ」と言われました。しかし清の力が決定的になるまで、いずれからも白黒を付けるよう厳しく迫られることはありませんでした。
明も清もその覇権が不安定な時期は、朝鮮を相手方に押しやるような厳しい姿勢はとれなかったのです。そこで数十年間ですが、朝鮮の二股外交が成立したのです。
米国は口を出すな
—現在の指導層も「二股外交は十分可能だ」と考えているのでしょうか。
鈴置:中央日報で国際問題を担当する金永煕(キム・ヨンヒ)大記者が「韓国の外交的決定は『韓国のもの』であるべき」(8月21日、日本語版)を書いています。
国際情勢を色々と説いていますが、結論部分は以下です。なお日本語版では、金永煕大記者の肩書は「論説委員」と訳されています。
- 韓米同盟が韓国安保の根幹だが、米国の顔色をうかがい過ぎだ。9月3日に中国戦勝節(抗日式典)に行くのに米国の暗黙的な了解を求めるのは時代錯誤的な屈従外交だ。
- 北朝鮮牽制に中国の役割は必須だ。いつかあるだろう統一外交にしても同じだ。朴大統領は戦勝節に出席して軍事パレードまで参観することに対して躊躇する必要はない。
- 韓国は堅実な中堅国家として周辺強大国パワーゲームのバランスウエイトだ。今後は広い北東アジアを視野に置いて、この地域唯一の中堅国家として「バランスウエイトの力」を使って北東アジアの平和を牽引しながら南北問題に接近することができる。
- 米国は韓国を中国包囲網に編入させようと、韓米日の3角安保体制に入れ、THAADを受けろ、ミサイル防衛(MD)網に参加しろとしきりに圧迫するが、判断は徹頭徹尾「韓国のもの」でなければならない。
気分は明清交代期
—強気ですね。
鈴置:「米国は、韓国のやることにいちいち口を出すな」との主張です。韓国の「自主外交宣言」です。
「『バランスウエイトの力』を使えば二股外交も可能だ」との主張でもあります。米国に対し「朝貢をやめるぞ」と言えば、中国側に行かれては困る米国が逆に大事にしてくれるだろう――との読みが見え隠れします。
中央日報は保守系紙の中でも最も現政権に近いと見られています。朴槿恵政権の本音もこんなところかと思われます。
韓国の気分は明清交代期なのです。そうそう、言い忘れていました。今の韓国では「米中の間で覇権が交代し始めた」――米中交代期との認識が一般的なのです。
トランプのただ乗り論
—米国はどう動くでしょうか。
鈴置:韓国が同盟国の義務を果たさないどころか、敵方陣営に堂々と出入りし続けるなら、いずれ捨てるかもしれません。ことに今、米国では「帝国の規模」を現実の力に合わせて縮めるべきだ、との声が高まっています。
米共和党の大統領候補者の1人で実業家のトランプ(Donald Trump)氏が「米国との同盟にただ乗りしている」と韓国を批判しました。安倍晋三政権になって必死で米国に忠義を尽くす日本との同盟さえも「片務的だ」とやり玉にあげました。
トランプ氏の意見は極端かもしれません。が、共和党候補の中で一番の人気を誇っているところを見ると、米国の気分を反映しているのは間違いありません。
そもそも米国人の同盟観が、韓国が長い間属していた冊封体制の感覚と同じである保証はありません。米国人は自分の理念を世界に広げる方を好むように見えます、朝貢国の数を増やすことよりも。中国人のような下品な恫喝はしませんが、米国人は裏切り者には厳しいですしね。
8/26 大礒正美メルマガ『天皇の憲法誤解を解かねば』について
確かに、大礒氏の言うように日本の2つの憲法は上から付与されたものです。明治憲法は不平等条約改定のため、西洋人に安心感を与えるため法の整備をする必要があったからです。結果として日本の近代化、法治主義の徹底(どこかの国のように人治主義、情治主義ではありません。明治時代にです)が進められました。
昭和憲法はGHQの押付け憲法です。東大法学部を頂点とした国家統治の官僚システムでは、護憲に対し非常に威力を振るって来ました。憲法99条は「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」とあり、公務員試験・司法試験受験者はこれが頭に刷り込まれることになります。ただ、現憲法は96条に改正手続きがあるので、当然に変えられるはずです。それが不磨の大典のように扱われるのは思考停止しているとしか思えません。護憲派というのは適者生存できない(環境変化に対応できない)合理性に欠く人達か、外国の手先かどちらかです。学者、マスメデイアの権威者・知識人と言うのがこのレベルです。自分の頭で考える癖をつけましょう。
三島由紀夫の『文化防衛論』で天皇親政・天皇の軍隊を主張していましたが、小生は「天皇は“priest-king”で権威の象徴、政治の実権を握る権力者とは分離しておいた方が良い。戦争に負けたときに断絶させられる可能性もある。日本の悠久の歴史の中で守ってきたものが変わってしまうことになりかねない」と思っていますので、この部分は三島の意見に反対です。
そもそも憲法で天皇の地位を定める(明治憲法も含めて)のは間違っていると思います。日本の歴史の中で天皇が政治の実権を握った時代は短かったと思います。「君臨すれど統治せず」は王が実権を握った時代が長かった英国の知恵でしょう。天皇は憲法を超えた存在と言うのが正しいのでは。今上天皇が憲法に拘りを見せるのは憲法99条を意識してのことかも知れません。
ただ、今年の年頭の感想で「この機会に,満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び,今後の日本のあり方を考えていくことが,今,極めて大切なことだと思っています。」と日中戦争が満州事変から始まったと位置づけるのは東京裁判史観です。この発言は踏み込みすぎでしょう。リットン報告書も日本軍の侵略行為と認定していません。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%B3%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E5%9B%A3
孫文は「革命が成功したら、夷荻の国満州は日本に売却してもいい」と言っており、エリザベス・シューペンターやヘレン・ミアーズも日本の満州での行動を欧米諸国の取った行動と同じと擁護しています。
記事
近代日本の不幸の1つは、たった2つしか持ったことのない憲法が、2つとも上から国民に与えられたものだということである。
その事実を知るだけで、憲法が国家権力を縛るためのものだという主張が、いかに後付けのこじつけか分かるはずだ。
明治の大日本帝国憲法は、天皇が「臣民」に与えた欽定憲法と言われるもので、政府・議会も国民投票で信任を得るという手続きは考えもしなかった。
つまり、上から順に「天皇」「憲法」「国民」という上下関係が初めから決まっていた。
戦後の日本国憲法は、マッカーサー憲法と呼ばれるように、占領軍から「天皇を含む日本国民」に与えられた。
したがって上から順に、「マッカーサー」「憲法」「国民」という上下関係になった。
当時の日本人がどんなに独裁的司令官を尊崇し敬愛したか、今でも語り草になっているほどだ。そのマッカーサーがいなくなれば、自然に憲法が最上位に位置し、国民が下につく。
これが、憲法至上主義を生んだ根本原因である。
分かりやすくいえば、憲法をあがめることで、その上にあるはずのマボロシの権威に従うという心理である。すなわち平和や民主主義を天与の宝物のように受け止めた。
こうなると宗教と同じで、憲法が神殿のようになり、もちろん9条が「ご神体」となる。当然、ご神体を毀損することなどバチ当たりの極で、神殿が古くなって改修が必要となっているのに、それさえも手を触れるなと大声で反対する。
そういう憲法至上主義論者たちは、日本国憲法を与えた米国自体の憲法を、都合よく無視しているのが常だ。
米国憲法はそもそも、英国からすれば反逆者となる13の植民地が、独立の理由付けと、連邦国家にまとまって英国の再攻撃に備えるために、妥協を重ねて作った外交文書のようなものだ。
国民が政府を縛るというような発想はなく、13の仮想独立国が連邦政府の権限を縛ることに集中している。通商交渉の権限が、政府でなく議会にあるのが典型的な例だ。
それよりも重要なのは、前文で独立が「神の御意志・祝福」(Blessings)だと宣言し、英国の反逆者呼ばわりを跳ね返している点である。
キリスト教、ユダヤ教、イスラムの文化では、明示しなくても一神教の神(造物主)を前提にした言い回しが普通に見られる。
米国憲法には、大統領を始め公務員は宣誓しなければならないという規定が複数あるが、その宣誓とは当然に「ゴッド」を対象としている(異教徒は別文言)。
つまり、米国民は憲法の上位に「ゴッド」を置いていると言ってもいい。ドル紙幣の裏面には「IN GOD WE TRUST」と明記されている。日本流に言うと「おてんとうさまが見てる」という価値観、
宗教観だろう。
では、アメリカを生んだ元の英国では憲法をどう見ているかというと、ここでは成文憲法がないのである。憲法がないのではなく、マグナカルタ(1215年)以来の重要法や判例の積み重ねが、不成典憲法として存在している。
どうしてそういう特異な最高法規が成立したのかというと、王権と宗教権が長期間に亘り激しく対立してきた歴史があるからだ。
結果として16世紀に英国国教会がローマ教会から独立し、国王が首長を兼ねて今日に至っている。
そうなると、憲法の上位にゴッドを戴く米国スタイルは都合が悪いということになる。
英国は、仏、米、日、独、伊の諸国と異なり、近代国家への脱皮が明確でないので、特に成文憲法を必要としなかったという事情もあるだろう。
逆に日本は、西欧と足並みを揃えようと焦って憲法を制定したため、今日に至る大混乱を生み出してしまったと言えるだろう。
悪いことに、マッカーサーなきマッカーサー憲法に、君主である天皇が国民の一部として、無条件に従っている。昭和天皇に比べ今上陛下は一段と、日本国憲法に思い入れが強いように推察されている。
こうした根本的な憲法誤解が続く限り、9条はおろか、神殿である憲法に一指も触れられない日本が、今後も続いていくのではないかと危惧される。
平和安全法制の審議が60年安保騒動になぞらえられるほど混乱してきたのは、思いがけず「戦後レジーム」の核心にぶち当たってしまったからだと考えられる。
そのため安倍首相は米国向けに、「戦後レジームからの脱却」という看板を下ろしますと宣言して見せた。
それが「戦後70年談話」の真意だと見ることもできよう。
8/24産経ニュース 野口 裕之『海賊退治に原潜を随伴する中国軍 山賊には重戦車軍団を充てる!』について
相変わらず、中国のあくどさが分かる記事です。世界覇権の野望を着々と進めています。口先では綺麗なことを言いながら、中国の属国にという野望を「衣の下の鎧」をちらつかせながら進めようとしています。でも、ミャンマーもスリランカもそれに気づいて中国とは距離を置くようになりました。
アメリカがリバランス政策とか言いながらアジア回帰に見えない所が問題です。中国の増長・傲慢はアメリカの軍事費削減とオバマの「世界の警察官はヤメタ」発言を見聞きしてからです。プーチンも然り。だからクリミアや東ウクライナを取りに行ったのです。オバマは史上最低の米国大統領として記憶されるでしょう。彼の言動により、侵略を事実上許してしまったのですから。オバマケアの成功など大したことはありません。米国内の問題ですから。
昨日はAIIBの記事を載せましたが、彼らに金融まで好き勝手やらせれば、軍事目的に使われることは必定です。寄港地にするために大きなポートやバースをAIIBの低利貸し付けでやらせ、その国の貿易も活性化すると言った触れこみで取り込み、属国化するつもりでしょう。
中国人は過去に拘る民族(=未来志向ではないが、未来の阿漕な掠奪については知恵が回る)で、鄭和(馬三保、1405~1433年7度にわたる大航海をし、アフリカまで行った。中国で馬姓は先祖は回教徒と聞いた覚えがあります)が回った国々も中国にひれ伏すべきと考えているのでは。
中国ほど人権・民族自決を蔑ろにしている国はありません。孫文の三民主義の「民族主義」ですら、滅満興漢の意味で、漢民族の政府樹立を目的としました。民族自決とは程遠い。だから今でもチベット、ウイグル、内蒙古の人々は悲惨な目に遭っています。邪悪な国・中国をのさばらせない為に①中国の経済崩壊②多国間よる封じ込めが必要です。日本人も中国との貿易が減る、株価がそれで下がる痛みを覚悟し、かつまた集団安保法制を早めに通して、中国の経済崩壊で国民の目を逸らすための戦争勃発に備えなければなりません。平和を愛する人々こそこの法案の大切さが分かるはずです。
記事
狡猾な帝国は海賊の悪用法をご存じだ。イングランドを治めたエリザベス1世(1533~1603年)は、海賊の頭目フランシス・ドレーク(154頃~96年) に出資して略奪行為を支援し、見返りに莫大な金銭を受け取り、大英帝国繁栄への道筋を敷いた。今なお、海賊は使い勝手がすこぶる良い。
◆実体は戦力投射演習
中国海軍はソマリア沖などで跋扈する海賊より商船を護る任務に、憑かれたように、参加各国中突出した積極性を見せる。南シナ海の係争海域で岩礁を埋め立て、東シナ海では日本領海を侵すなど、国際法を公然と破る中国が、海賊退治では国際社会との協調性を示す不可解。
案の定「水面下」でたくらんでいた。海賊退治には無用の長物・原子力潜水艦を随伴したのだ。海賊退治は隠れみので、実体は米軍に比肩する遠征軍創設に向け、実戦を意識した長期・遠方での戦力投射演習。
しかも 往復の航海中、インド洋での有事を想定し、宿敵のインド軍や米軍など敵性国軍を迎え撃つべく、潜水艦の待ち伏せ場所の探査まで行う。中国軍膨張を看過できぬ国はインド洋を表玄関とするインドや、航行の自由を国是とする米国に限らない。
エネルギーや食料の大動脈=インド洋で、航行の生殺与奪権を中国が握れば、日本や東南アジア諸国の生存に関わる。中国海軍はエネルギーや途上国の市場など、世界の富をあさりまくる「大海賊」の様相を呈している。
中国海軍は2008年12月~15年8月まで21次にわたり、延べ1万7000人の海軍将兵+1400人の海軍陸戦隊・特殊作戦部隊が800回以上の任務を遂行。13年12月 以降だけで、攻撃型原潜や通常型潜水艦、潜水艦救難艦が最低各1回随伴した。
海賊をにらむ商船護衛に潜水艦は原則必要ナシ。そもそも海賊の操る高速艇に比し、水上航行する潜水艦は遅い。新世代は甲板に大砲や機関銃は装備していな い。丸みを帯びる船体も、海賊船の拿捕に使う小型ボートの緊急発進を阻害する。
実は、オランダ海軍が10年と12年、海賊対処活動中のNATO(北大西洋条約機構)艦隊に通常型潜水艦を参加させている。潜水艦には、海賊根拠地の偵察や、 根拠地に対する特殊作戦部隊の潜入・急襲任務を支援する母艦としての役割も考えられる。
ただ、海賊の警戒網突破は潜水艦の隠密行動が不要なほど難度が低く、潜水艦投入は例外中の例外だ。
◆「親善」寄港も看板に偽り
国力や取り巻く情勢に見合う《軍備=能力》保有は独立国の権利だが、問題は《意図》。日米印や豪州、東南アジア諸国の多くは中国が邪悪な軍事拡大意図を隠していると警戒する。
中期的には、エネルギー・市場や台湾の支配を狙った南シナ海/東シナ海の覇権確保。長期的には政治・経済・安全保障上の「中華圏」に、米国を介入させない総合力の確立だろう。中華圏が膨張し続けるには南シナ海/東シナ海のみならず、さらに遠方=インド洋での覇権も必要となる。
覇権達成には、陸海空軍の統合運用を基盤としつつ、陸空軍兵力投射が難しい遠地における、海軍の長期作戦が不可欠。作戦成功には、武装水上艦/潜水艦/補給艦/艦載・艦上機の相互連携などがカギとなる。
当然ながら、純粋に国際の安定を目的に海賊対処に加わる国の海軍でも装備・作戦・補給・教育訓練といった各面での「戦訓」を得ようと総括を繰り返す。ただし「付加価値」追求には常識と節度が求められる。
「戦訓」を暴力的な覇権目的に悪用されては、東シナ海/南シナ海/インド洋をエネルギー・食料の生命線と位置付ける国々の生存は脅かされる。
中国が静粛性を向上した潜水艦の投入をインド側に通告しなかったケースでは、探知できなかった印国防省が衝撃を受けた-との情報も在り、生命線を分断される不吉な予兆は既に顕著だ。
「親善・補給・休養」目的の寄港でさえ看板に偽りが有る。一般的に「移動大使館」でもある海軍艦は陸空軍に比べ外交の一翼を担いやすいが、中国の軍事外交は生臭過ぎる。中国海軍は海賊対処活動を行っている7年近くの間に百数十回の外国寄港を果たした。多くはインド洋上か沿岸の国々で、その内ミャンマー▽イエ メン▽オマーン▽パキスタン▽スリランカ▽ケニア▽タンザニア▽モザンビーク▽セーシェル▽ジブチ…などで、中国企業が港湾・補給施設建設を終了か計画している。
◆モルディブが「周辺国」?
16世紀の海賊は港湾都市などを急襲して財宝を奪い、酒と女性に飽きれば次の獲物を目指した。ところが、現代の「海賊」はもっと獰猛で、相手国を骨抜きにして事実上乗っ取る。
中国海軍は海賊退治を名目に、乗っ取りの先兵として寄港。 本国が乗り出し次第に誼を深め、文化交流→経済支援・インフラ建設→貿易拡大→軍事交流や兵器供与→兵器輸出→労働者派遣→港湾・補給施設建設→軍事同盟締結→中国 船・国民保護名目で駐留軍派遣→中華街建設…と、受け入れ国の意向に関係なく、中華圏に呑み込んでいく。
欧州列強の苛烈な植民地政策に虐げられたアフリカ・アジアの人々に「遅れてきた帝国」の恐ろしさは自覚してもらわなければなるまい。
ハリウッド映画上はともかく、今どきの海賊は損得しか考えぬ。インド洋上のモルディブで14年12月、海水淡水化施設が火災に遭い断水に陥ったときのこと。
淡水化装置を有す中国潜水艦救難艦が対海賊任務を中断、来援したのは支援要請2 日後だった。大量の飲料水を積む空軍の大型輸送機や民間機も次々に到着。迅速な給水・資金支援に国際社会は目を疑った。
同時に、中国外務省報道官の「モルディブ国民の危機をわが身のことのように感じ(略)親・誠・恵・容という中国の外交政策 を明示した」とのコメントに、少なからず関係者は白けた。
インド国防関係者も、伝統的に担保してきたモルディブの安全保障を切り崩している、中国の野望を憂う。 借款+外務省庁舎・国立博物館建設などは全て、軍事協定締結と潜水艦基地建設を求める“中国の善意”だった。
中国外務省報道官は「中国と周辺諸国は運命共同体」だとも説明したが、小欄には「周辺諸国の運命は中国が握っている」と響く。はるか遠方のモルディブ が「周辺諸国」と認定するズレた感覚にも中華帝国の「鎧」を見る。
8/25・26・27日経『中国の「一帯一路」、世界に増殖 (アジア・インフラ大競争)』『アジアインフラ大競争(下)リスク投資に挑む日本 試される目利き力』について
8/26宮崎正弘メルマガ『中国経済大破綻、そして「シルクロード」構想も破綻への一歩 習近平の中国、株暴落、人民元切り下げ、天津大爆発で蟻地獄へ』の記事で、
「習近平の中国、高度成長時代は終わった。予測されていたように株暴落、人民元切り下げ、そして天津大爆発で蟻地獄へ陥没寸前の状況となった。
世界同時株安に見舞われ、日本株まで悪影響が波及しているが、理論的に考えると、日本経済はしっかりしており、5%ていどの影響しか受けない筈である。いまの同時株安は投資家のパニックを利用してファンド筋の空売りが主因ではないだろうか。
たとえばトヨタの中国依存度は3-4%程度であり、なぜトヨタ株が上海株下落開始以後に10%も値下がりしているのか、中国主因ではなく複合的なものであろう。
さて、シルクロード構想が破綻するのは時間の問題となったように見える。
世界的規模で中国の軍事的脅威はアジアに留まらず、全地球的規模に及んでいた。しかし、財源の問題がでてきて、「真珠の首飾り」は新バージョンになって実現しそうな状況から一転するだろう。
従来は南シナ海からマラッカを越え、ミャンマー、スリランカ、モルディブ、パキスタンを越えアフリカの南部ジンバブエまでを「海のシルクロード」として「一帯一路」構想の中核と位置づけされてきた。
ところがミャンマーは反中国に転び、スリランカは中国の建設していた人口島プロジェクトを見直して過度の中国傾斜を再考するに到り、総選挙の民意も全方位外交を良しとしたため、中国の構想に大きな誤算が生じた。
中国はスリランカの影響力回復、人口島構想復活に執念をもやし、ラジャパスカ前大統領を梃子に権力の奪還を目指させたが、八月の選挙で敗北、中国の影響力は頓挫した。
スリランカに中国の潜水艦は二回寄港している。
▲上海株暴落で少なくとも二兆ドルが蒸発した
そこで中国は南インド洋にあってインドを南西から脅かすモルディブ群島に濃密に接近した。「中国城」の建設である。
モルディブ政権は独裁色が強く、中国の海洋埋立てプロジェクトにのって、外国の土地所有を、その国が開発したのであれば70%まで認める法律を制定した。
つぎに国際的な海賊退治で協力行動の拠点であるジブチに目を付けた。
ジブチ政権も独裁、米国はここの空港と港湾を借り受け、巨大な軍事基地(レモニエ空軍基地とオボック海軍基地)を設営しているが、一方で米国務省がゲレ大統領の独裁を強く批判するため、ジブチは中国にも軍事基地建設を持ちかけ、シルクロードの一環とする方向にある。
すでにジブチの港湾運営は中国企業が請け負っている。パキスタン、ギリシアと同様である。
さらに中国は「海のシルクロード」の通貨拠点としてケニア、タンザニア、マダガスカル、セイシェルからモザンビーク、ジンバブエから喜望峰をまたぎ南西アフリカのナミビア、アンゴラへと一帯一路構造を延ばす戦略に傾いている。
これらを支える財源が問題となった。ついに高度成長経済が終幕を迎え、上海株式の破綻に直面して、強気の財政支出を継続できるかどうか、きわめて怪しくなった。
拙著『アジアインフラ投資銀行の凄惨な未来』(PHP)で指摘したように、もはや『中国の時代は終わった』とみてよいのではないか。」とありました。
日経も中国が主導する「一帯一路」の危うさについて触れるようになりました。今まで中国進出を煽りに煽ってきたのとは様変わりです。そりゃそうでしょう。上海株が一気に8%下落とか、株の売り禁止とかありとあらゆる禁じ手を使い放題です。異形の大国と言われる所以です。これでもAIIB参加を日経は勧めるのでしょうか?買収したFTの母国イギリスが参加表明したとしても彼らは地政学的なリスクを負っている訳ではありません。
中国は過剰設備・過剰負債・過剰在庫に陥っています。それらを解決するためには人の褌で相撲を取るのが一番良い。さしずめ騙しやすい日本を誘って、日本の金で信用を付け、AIIBの格付けを上げ、「一帯一路」の国々に融資し、インフラ投資させ、過剰在庫を吐き出すつもりでしょう。そうすれば中国経済も浮上できると思ってのこと。だから習が安倍首相に9月に会談をしつこく持ちかけたのです。でも考えても見て下さい。ADBが融資をしない案件が、還ってくるメドがありますか?多分融資を受けた国は払うつもりもないでしょう。そうなれば中国は債務国を徳政で棒引きにする代わりに中国の属国にするつもりでしょう。そんな敵国・中国を助ける必要はありません。利敵行為に他なりません。日本がAIIBに投資・貸付けても焦げ付き戻ってくることはないと断言します。
ADBもAIIBに張りあって安易な融資はしないことです。計画に合わせた数字作りは止めて、現地政府と良く擦り合わせ、ネック解消を親身になって教えることが必要と思います。日本の民間銀行の知恵を借りるのも良いでしょう。
記事
「一帯一路(新シルクロード構想)はウィンウィンの道であり、各国経済の緊密な結合を促す原動力になる」――。習近平国家主席の大号令のもと、国内外で巨大インフラ整備プロジェクトに乗り出した中国政府と企業。「一帯一路」は、はやくも世界各地で増殖が始まっている。
■海洋進出や海底資源の確保狙う
世界的なリゾート地として知られる南太平洋の島国フィジー。首都スバの郊外で5月中旬、片側1車線の真新しい道路の建設が進んでいた。中国の援助を受け、2011年6月から建設が始まった全長19キロの「セリア・ロード」だ。
工事現場ではフィジー人のほか、多くの東洋系の労働者が汗を流す。現場監督より上の役職はほとんどが中国人だ。道路脇には中国人作業員向けの簡易宿泊所が立ち、中国人の料理人が油をふんだんに使った中華料理に腕を振るっていた。
島の東端にあるスバと西側の地域を結ぶ幹線道路沿い。中国の援助で建てられた病院や、中国企業による建設計画を示す看板が数多く並ぶ。現在は空き地が広がる道路脇に産業団地をつくり、企業を誘致する計画のようだ。「農地を買いたい」「リゾート開発の用地を探してほしい」。スバで観光業を営むサミー・アリさんの携帯電話には、中国本土からこうした依頼が毎日のように寄せられるという。
フィジーは南太平洋の島々をつなぐ船舶や航空の要衝で、地域の大国だ。現首相のバイニマラマ氏による軍事クーデターを機に、06年から14年9月まで軍事政権が続き、欧米との関係が冷え込んだ。その隙間を埋めたのが中国だ。
オーストラリアのシンクタンク、ロウイー研究所によると、フィジーに対する06~13年の中国の援助額は3億3300万ドル(約410億円)に達し、豪州の2億5200万ドルを抜いてトップに躍り出た。中国はフィジーの政治問題に深入りせず、インフラ整備の受注拡大という実利を取る戦略に徹してきた。
「中国語しか話せない中国人との意思疎通は手間がかかる」「仕事の質が悪い。フィジーをインフラ建設の練習場にしているのではないか」――。これまで批判も多かった中国企業の進出だが、どんなに小さな案件でも積極的に手を挙げる姿勢に「インフラが不足するフィジーで、いま本当に必要な相手は中国かもしれない」と、地元の見方も徐々に変わってきているという。
もちろん、中国の積極姿勢には、南太平洋への海上進出をにらんで足がかりをつくることや、付近に眠る広大な海底鉱物資源の確保という狙いが透ける。インフラ支援は外交の一環――。中国の実利主義が、南太平洋へも「一帯一路」を広げる。
■ミャンマー山岳地帯でダム建設計画目白押し
中国・チベット高原に源を発し、ミャンマーを縦断してインド洋に注ぐ大河、タンルウィン川。山岳地帯で長く開発が手つかずだったが、ミャンマー国内の流域でいま、中国企業によるダムの建設計画が目白押しだ。
漢能控股集団(ハナジー)、中国水電工程(ハイドロチャイナ)、中国長江三峡集団……。名だたる電力大手が競って大型水力発電所の開発計画を打ち出す。
国内に大規模河川が多いミャンマーは、電力の7割を水力に依存する。だが、水力は雨期と乾期の出力変動が大きい。このため経済成長に伴う電力不足に悩む政府は、稼働の安定する火力主体の電源構成への転換を急ぐ。大型ダムと水力発電所の相次ぐ建設計画はそうした政府の方針と大きな食い違いを感じさせるが、実はいずれも生み出した電気の8~9割を中国に供給する計画だ。
ミャンマーは11年に民政移管を果たすまで旧軍事政権時代に国際的な孤立を深めたが、その間は中国による大型資源開発が相次いだ。象徴が07年に中国電力投資集団が主導してスタートしたミッソンダムの建設だ。総事業費は約36億ドルで、最大出力は600万キロワットとミャンマーで最大の水力発電所となる計画だった。周辺地域で約700平方キロメートルを水没させる可能性があるとされ、環境破壊を懸念する住民らの間で中国に対する反発が強まった。
11年春に発足した今のテイン・セイン政権は“脱・中国”を志向。ミャンマーにおける中国の大型開発の象徴だったミッソンダムは、同年秋に建設が凍結された。テイン・セイン大統領は自身の任期中に開発を再開しないと明言している。
ただ、今年11月の総選挙が近づくにつれ、再び中国資本による電源開発が勢いづいてきた。総選挙ではアウン・サン・スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)の優勢が予想される。政権交代という波乱の芽は、中国の「一帯一路」と結びついて、ミッソンダムの開発の再開という思わぬ形で吹き出す可能性も出てきた。
無人の新築マンションが次々と砂嵐に飲み込まれていく。中国・新疆ウイグル自治区の南西部に位置するカシュガル市。郊外ではパキスタンと高速道路や鉄道、原油パイプライン、光ファイバー網で結ぶ「中パ経済回廊」の拠点整備が進むが、実際に広がっていたのは「鬼城(ゴーストタウン)」だった。
4月中旬、中国の習主席がパキスタンを訪問し、同国を縦断する経済回廊の開発に総額約450億ドルを拠出すると約束した。カシュガルからアラビア海にのぞむパキスタン南部のカラチ、南西部のグワダルまでを結ぶ壮大な計画だ。起点となるカシュガルは少数民族のウイグル族が多数派を占め、砂漠と小さな果樹園だけの経済発展が遅れた地域だったが、回廊計画で地元経済も一気に活気づくかに見えた。
たしかに、現地では開発の進展を見越した巨大な工業団地や商業施設の整備が進む。だが、よく見ると、どこも人影がなく、建設途上の建物の多くが砂にまみれている。上海市政府が主導する「上海新城」地区。250万平方メートルの広大な敷地に60億元(約1200億円)を投じ、高層マンションや大型ショッピングモール、高級ホテルを建てる巨大プロジェクトが進行中だ。ただ、地元のウイグル族からの評判は散々だ。
「花都大道」「明珠大道」……。各新城の地名はいずれも中国名。「ここはカシュガルなのに、なぜ中国の地名を使うのか」。多くの地元住民から不満が漏れる。入居が始まったニュータウンもあるが、実際に購入する地元住民は少数で、多くの建物が利用される当てもないままゴーストタウンと化している。
(北京=阿部哲也、シドニー=高橋香織、ヤンゴン=松井基一)
万年雪を頂く天山山脈が間近にそびえる。中国の西端、カザフスタン国境の新疆ウイグル自治区ホルゴス市。「世界有数の商業地区になる。買い時だよ」。不動産会社社長が高層マンションの購入を熱心に勧めてきた。
中国―カザフの国境地帯で重機が列をなして待機する(中国・新疆ウイグル自治区ホルゴス市)
商業施設や五つ星ホテル、国際会議場……。東京ドーム400個分の広さを誇るカザフとの「共同開発特区」は、中国側だけで200億元(約3850億円)を投じる。
3年前は砂と岩だけだった辺境の地は、山を切り開いた高速道路と鉄道の建設を合図に、開発の大波が押し寄せた。「年内にカザフ側の開発も始まる。道がつながれば必ずにぎわう」。閑古鳥が鳴く免税百貨店に出店した電器店店主は強気だ。
自国から中央アジア、中東、欧州を陸路と海路でつなぐ「一帯一路(新シルクロード構想)」を掲げた中国。アジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設と併せ、ヒト・モノ・カネの三位一体でアジアのインフラ整備に手を貸し、周辺の開発まで主導しようと狙う。
地元は潤うが…
先行する一帯一路の国内部分はすでに多くの大規模事業が進行し、地元経済を潤している。が、各地を歩けば、国家戦略に名を借りた過剰開発の実態が浮かび上がる。
「一帯一路の建設へ団結しよう」。中部の陝西省西安市の街中には勇ましい標語があふれる。ここでも道路と鉄道に沿い、巨大工業団地やマンション群が建設される。威容が際立つ韓国サムスン電子の半導体工場には70億ドル(約8500億円)が投じられる。
「昔は畑しかなかった。習近平(国家主席)のおかげさ」。タクシー運転手の鄭藍藍さん(43)は喜ぶが中国経済は減速が鮮明。「こんなに工場を建てて大丈夫か」。現地進出した欧州機械大手の幹部は心配顔だ。
中国政府が自作自演する開発バブルは、国境を越えてまん延し始めた。
3つの高層ビルの屋上を200メートルの巨大な船型プールでつなぐ。シンガポールの名所「マリーナベイ・サンズ」にそっくりな光景がカンボジアのプノンペンで再現される。リゾートホテルや国際展示場、商業施設を詰め込む開発の背後に中国企業の影がちらつく。
中国は港湾や橋、最近では国立競技場の建設を支援し、その見返りに巨大複合施設の開発権を得た。建設現場で目立つのはクメール文字ではなく漢字。コンドミニアムの販売価格は1平方メートル当たり1800ドルと、地元の工場労働者の年収より高い。
支援待ちの現実
「開発が年内に始まる」というホルゴス市の特区のカザフ側に入ると、散乱した古びた資材とパイプが白い砂をかぶっていた。「本気で開発を進める地元企業はいない。中国の支援待ちだ」とカザフ側関係者は言う。
中国とカザフは今年、総額230億ドルの「インフラ整備協力契約」を結んだ。セメントや鉄鋼、ガラスなど、中国からの過剰生産品目の供給が柱だ。突然の人民元切り下げにも通じる、輸出促進策の顔が見え隠れする。
天津市や山東省での相次ぐ大規模爆発事故で国民からの不信が強まるなか、中国政府は国威発揚のため一帯一路をむしろ加速する公算が大きい。検問所で会った30歳代のカザフ人貿易商は「中国のカネを利用する。でもバブルは持ち込まれたくない」と流ちょうな中国語でささやいた。
フィリピンの首都マニラ。線路際まで雑草が生い茂ったレールの上を、かつて日本で走っていた中古の電車が満員の乗客を詰め込んで都心へと走り去る。
対中国で危機感
スペイン統治下で開業したフィリピン国有鉄道は戦後の混乱で整備が遅れ、走行距離はピークの半分以下になった。今は3~5両編成で1日26便が運行するだけだ。マニラの人口は約1200万人。東京に匹敵する大都市だが、それに見合う社会基盤が整わない。
経済成長を阻むインフラ不足を解消しようと、アキノ政権は鉄道や高速道路など50事業を立ち上げた。だが着工にこぎ着けたのはわずか数件。採算割れでも政府保証がないといったリスクが高く、資金集めが難航したからだ。
今夏、そんなフィリピンの窮状に日本が手を差し伸べた。マニラの鉄道事業に1回の政府開発援助(ODA)としては過去最大規模の2400億円の円借款に踏み切る。通常は工事の進み具合を確かめながら複数回に分けて資金を出すが、今回は資金を一括で提供する。
「(アジアのインフラ整備では)現地政府に必要以上のリスク保証を求めるやり方がまかり通っていた。そうした慣習を変える」。安倍晋三首相は今春のセミナーでこう語り、有言実行とばかりにフィリピンの案件に手を挙げた。
日本の背を押したのは中国主導で発足するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の登場だ。AIIBは素早い資金提供が売り物。うかうかしていたら、中国の影響力が増すばかりだ。採算性第一だった日本の尻に火がつき、よりリスクを取る方向にかじを切った。
民間資金を呼ぶ
政府は来年の通常国会に国際協力銀行(JBIC)法の改正案を出す。採算が合う案件にしか資金を出せない制約をやめ、複数案件を合算して黒字ならば個別案件の赤字に目をつぶる。対象が広がるのは確実だ。
日本が描くのはJBICやアジア開発銀行(ADB)が主導し、潤沢な民間資金を巻き込む姿。膨らむ投融資リスクを官民で分かち合う。だがリスクを避けてきた日本にはAIIBに対抗して素早く案件を組成できる人材が足りない。
苦い教訓がある。国際協力機構(JICA)は2012年、インフラ整備を手がける民間事業体への直接出資を11年ぶりに再開した。経団連が切望した事業だが、ふたを開けると案件は6月末時点で3件のみ。政府関係者は「JICAにリスク投資に詳しい人材がいなかった」と漏らす。
枠組みを整えても迅速に組成できないと絵に描いた餅。ADBは米ゴールドマン・サックスの元幹部など経験豊かな人材獲得に注力する。日立製作所の幹部は「スピード感が高まれば(国の支援を)より活用しやすくなる」と期待する。
「AIIBは民間がどう関与できるか分からない」。JBICの渡辺博史総裁はAIIBの融資基準が不透明ならば民間の参加は難しいとみる。裏を返せば、民間との協調でリスク許容度を高める枠組みの日本に勝機はある。ただリスクを取りながら、不採算案件をどう排除するか。アジアのインフラ競争に向け、迅速な実行と目利きの力の両方が求められる。




