『中国の大工はなぜイレズミを隠したのか 反レイシズムを怯ませる時代の空気』(6/21日経ビジネスオンライン 山田泰司)について

宮脇淳子著『教科書で教えたい真実の中国近現代史』の46頁には「シナ文明の特徴は、漢字と都市と皇帝にある」、「漢人とは文化上の観念であって、人種としては蛮・夷・戎・狄の子孫です」(52頁)とありました。中国は中華思想のせいか、歴史的に西洋主導の国際ルールを守らない国です。第二次アヘン戦争(アロー号事件)後の天津条約を守らず、「ところが英仏軍が退去すると、清朝政府のなかで主戦派の立場が強くなり、一八五九年六月、天津条約を批准するために天津から北京へ向かっていた英仏艦隊が、防衛の責任者だった欽差大臣センゲリンチンによって大沽砲台から砲撃されました。これに怒った英仏両国は、一八六〇年八月、報復のために約一万七千の兵力と軍艦二百隻からなる大遠征軍を派遣して大沽砲台を占領し、清朝との交渉にあたりました。しかし、パークス領事をふくむ英仏人が咸豊皇帝の指示によってセンゲリンチンに囚われ、十一名が殺害されるという事件が起こったため、北京に進軍した英仏連合軍は、十月、報復として北京郊外の円明園という美しい離宮に侵入し、貴重な財宝を掠奪したあと、その事実を隠蔽するために徹底的に破壊し離宮を焼き払ったのでした。」(156頁)とあります。円明園の焼き打ちも日本人がしたように思っている中国人が多いです。丹東にある「援朝抗美記念館」には堂々と「南鮮が北鮮に侵攻して来た」と説明があるくらいですから、歴史改竄はお手の物です。宮脇教授も「シナの歴史は政治であって、日本のように史実に基づく実証主義ではない」と言っています。

6/24宮崎正弘氏メルマガ<中東の秩序を搦め手で攪乱する中国 兵器を武器に密輸にも手を染め、はてしなく拡がる闇>こちらの記事にありますように、中国は如何に国際ルールを守らないか、世界平和の攪乱分子かという事です。独裁国は民主主義国の手順をふっ飛ばし且つ批判者は投獄されるか死刑になるので、誰も批判しないことを良いことに好き勝手やります。国際社会が中国を封じ込めないからです。「読者の声」に出てきます田村秀男氏は「中国の軍拡原資は貿易黒字」と言っていましたが、貿易戦争で$が不足して日本にスワップ要請があっても絶対受けないことです。反日国で、裏で日本を貶めることを沢山しているのですから。人民元の下落は輸出に有利となりますが、対外債務は重くなります。暴落すれば外資のキャピタルフライトが起きる可能性があります。$での支払ができず、益々貿易できなくなるのでは。

http://melma.com/backnumber_45206_6700445/

本日のブログは中国人の生活を紹介するものですので、中国語の記事も政治ではなく、生活についての記事を紹介します。

6/23阿波罗新闻网<在“变态”的日本“常态”的中国人=(中国から見て)変わっている日本、普通の中国人>浅草寺、忍野八海、金閣寺、天守閣、道頓堀等日本には有名な観光地があるが、中国人でにぎわっている。中国人はどこに行っても、思ったことをストレートに言い、迷惑を顧みずもてなすが、出過ぎず、謹直であり、融通が効かなく、真面目且つ礼儀正しい日本人とは大きく違う。ある日銀座を歩いていたら、中国人女性が相方に「出国したのを忘れたわ。まだ中国にいる感じ」というのが聞こえた。

中国人も日本に旅行に来るなら、買い物だけでなく、品質の良いものを作る日本の良い所を理解した方が良い。でも大部分の中国人は日本を理解したくないし、理解もできないと思う。成田空港で抗議の為の国家を歌うなんぞ。中国人にとって日本人には複雑な感情がある。羨み、妬み、恨み、蔑視である。一位は恨みで歴史的なもの、蔑視が二位、中国は経済的にも大きくなり、「小日本」と蔑むようになった。しかし日本は世界で最高品質のものを作りだしている。中国の富裕層の爆買対象は地理的に見て日韓両国である。日本の小学生の昼食も規則正しく、衛生的である。教育こそが国民性を築く基礎である。中国人にとっては見慣れないため、日本人の細かい所に拘るのを「変わった」人達と思い、煩わしさを感じてしまう。「排水溝で魚を飼う、バスの運転手はストで罷業するはずが運転し、乗客から金を取らない、病院食はレストラン並み、マンホールは芸術品、学校は清掃員を雇わず、学生が掃除をする、手洗い終わった水をトイレの水洗に使う、出退勤時に混んでいても皆ルールを守る、出発を20秒前にした列車は乗客に謝る等」。サッカーを見終わった後、観客がゴミを集めることや分別収集なども。

日本人を「変態」と言うのは中国人の歴史の恨みだけでなく、自己崇拝の気持ちから。私は日本にいて中国人の押し合いへし合い、出し抜かれるのを恐れ、思う存分大声で喚き、好き勝手に人を批判し、買い漁る等、これらは中国人の「常態」である。前述の中国人女性の発した言葉は銀座が中国人で一杯だったからである。去年、世界選手権で優勝した男性は日本のホテルで水道水の栓を開けて流し放しにしたが、これこそが「変態」では。反日を言うのであれば、何故日本に旅行に行くのか。一方で見下し、一方で利用する。それでいて矛盾していることに気が付かない。良いものを手にしたとき、心の中には大中華思想があり、争って買うような卑しい行動をしても心でバランスを取り、虚栄心を満足させる。中国人は自分を改良する必要があるのでは?

さすが中華思想にドップリ浸かった西太后や精神勝利法を編み出した魯迅の阿Qを産んだ国です。でも筆者は真面な感覚をお持ちです。大部分はここに書かれている通りで、民族的特徴と言えます。真実の現代史を知っている中国人と日本人が少ないので、片方は恨み、もう一方は贖罪に走るようになっています。お互い正しい情報を取ることが必要です。孫文、汪兆銘、コミンテルン、FDRについて良く調べた方が良いでしょう。

http://www.aboluowang.com/2018/0623/1133299.html

山田氏記事では、「多少の息苦しさや理不尽を感じても、現状維持が一番いい。この点で、いまの中国と日本が奇妙なほどよく似ているということにも驚くのである。」とありますが、中国と日本がそんなに似ている気はしません。日本には自由があり、差別も過敏なくらい戒められています。どこが似ているのでしょう?山田氏は中国在住が長いので、日本のことが分からないか左翼メデイアの影響を色濃く受けたかどちらかです。そもそも共産主義と言う結果の平等を目指す国のジニ係数が0.73なんておかしいでしょう。ただ、日本人にも反体制を標榜する人がまだたくさんいますが、格好つけだけで、命を懸けてやっているようには見えません。村上春樹や是枝裕和は是非中国に帰化してほしいです。中国は歓迎するでしょう。是非かの国で反体制を貫いてほしい。反体制を標榜している学者も。本記事に出て来る反体制をやって来た人達とは覚悟が違います。収監される恐れがありますので。それにしても習近平の自由への弾圧の程度が大きくなったという事でしょう。

記事

現在開催されているワールドカップの1次リーグ・アルゼンチン対アイスランド戦で、アイスランドのラグナル・シグルドソン(白いユニフォーム)と争うアルゼンチンのリオネル・メッシ(紺のユニフォーム)。両選手にタトゥーが確認できる〔写真:IJMPA代表撮影(福地和男)

サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会のテレビ観戦で連日寝不足という人も多いことだろう。中国はアジア予選で敗れてしまい本戦出場は叶わなかったのだが、中国のSNS「微信(ウィエポー)」を見ると、特に男性の投稿はここ数日W杯一色と言ってもいいほどである。中国の内陸に住んでいる、見るからに運動音痴の仕事仲間がSNSで「あー歳には敵わない。眠い。スペイン対ポルトガルは録画で見る。無念」とつぶやいて寝落ちしたりしている。サッカーに特に興味が無い私はテレビでJリーグをやっていても5分と観ていられないが、W杯となると、いくらハリルホジッチ監督の解任に納得がいかなくとも、格上のコロンビアとの一戦で香川がPKを決めた際には心の中で小さくガッツポーズをしたし、セルビア対コスタリカといった縁もゆかりもない国同士の試合でもなんとなく最後まで観てしまう。これが一流の持つ魅力ということなのだろう。

しかし今回、W杯を観て改めて認識したのが、タトゥーを入れている選手の多さだ。アルゼンチンのメッシをはじめ、タトゥーをしている選手はもはやまったく珍しくない。

一方で、W杯出場を逃した中国のサッカー界で、最近もっとも大きな話題になったのもタトゥーなのだ。

タトゥー選手は代表戦に参加できず

タトゥーをしていることで有名な中国のサッカー選手・張琳芃(黄色いユニフォーム、2018年5月に開催されたアジアチャンピオンズリーグから)。中国代表として出場した試合は60を超える。対する赤いユニフォームの選手は、ブラジルの代表経験を持つアレシャンドレ・パト。イタリア、イングランド、スペインのリーグでプレーした経験も持ち、現在は中国の天津権健所属。彼の腕にもやはりタトゥーが見られる(写真:Imaginechina/アフロ)

中国は3月末、ウェールズ、ウルグアイ、チェコを招いてチャイナカップという国際親善試合を開いたのだが、この際、複数の中国選手がスリープやサポーターでタトゥーを隠して試合に臨んだことが話題になった。また、タトゥーをしている中国のサッカー選手と言って真っ先に名前の挙がる張琳芃はいずれの試合も欠場した。複数の中国メディアによると、中国サッカー協会が選手らに、代表戦でタトゥーを見せるのを禁じたのだという。理由は、中国共産党の道徳と価値観に反するからなのだそうだ。

中国でも長い間、イレズミは負のイメージを持つものとして捉えられて来た。中国版ウィキペディアの「百度百科」によると、刑罰として顔にイレズミを入れる「黥刑」は、秦(BC778~BC206)代から始まり、途中消えたり復活したりを繰り返しながら清代(1616~1912)まで続いた。中国共産党が支配する中華人民共和国(1949~)の時代に入ると、一般的には、黒社会、すなわち暴力団や反社会的勢力の代名詞として捉えられてきた。この流れは日本とほぼ同じである。

ちなみに、『イレズミと日本人』(平凡社新書)で山本芳美氏が、日本では昭和のヤクザ映画が「イレズミ=暴力団」というイメージをことさら強調することに一役買っており、やはりイレズミをしている鳶や火消しの古老たちにイレズミと言うと嫌がられ彫り物と言ってくれと注文を付けられる、と書いているように、中国でも、90年代に香港、中国、台湾で大流行した『古惑仔』等の香港のヤクザ映画で主人公たちが龍や虎のイレズミをしていたことが、「イレズミ=黒社会」のイメージを市民に定着させた部分がある。

だから、現在の中国で20~40代でタトゥーをしている人が驚くほど多いことにはいささか驚かされる。上海では、「刺青」「入墨」「紋身」の看板を掲げたタトゥーの店が、繁華街の他、住宅街にもたくさんある。

タトゥー流行の端緒は、中国人のバスケットボール選手で国民的スターの姚明(ヤオ・ミン)が2002年にNBA入りしたことで、タトゥーを入れているNBAのスター選手たちのビジュアルが大量に中国に入ってきたことにあると私は考えている。そして、この2~3年、第2次ブームと言ってもおかしくないほど、タトゥーをする人が増え目立ち始めた。今回、タトゥー人口を一気に増やしたのは20~30代の女性である。

街のあちこちで見られるタトゥーを入れる店

タトゥー支える富裕層と森ガール

ここで一つ中国のイレズミについて断っておくと、この原稿では、香港ヤクザ映画の影響までのものを「イレズミ」、姚明のNBA入り後のものは基本的にタトゥーとするが、明らかにファッション性の動機と異なる理由で入れたものは「イレズミ」として使い分けることにする。

さて、現在、中国でタトゥーを入れる人は大きく3つに分けることができる。(1)富裕層、(2)「小清新」(シャオチンシン)と呼ばれる20~30代の女性、(3)そして工場やウェイター、美容師等、比較的低賃金で働く人たちだ。

このうち、W杯のサッカー選手がしているような、二の腕から手首にかけてとか、太股から足首まで、つまり半袖のTシャツや短パンを着ていても見える部位にタトゥーを入れるのは、(1)の富裕層だ。絵柄もサッカーやバスケットのNBA等スポーツ界の有名選手やセレブの影響を受けているものが多い。彼らが通うタトゥー屋は彫り代が1時間1500元(2万5500円、1元=約17円)程度が相場。サッカー選手らが好むような絵柄は彫り上げるまでに相当な額がかかるため、経済的に余裕のある富裕層が勢い中心ということになる。

次に(2)の「小清新」と呼ばれる20~30代の女性。中国の若い女性にモノやサービスを売ろうとしているビジネスパーソンにとっては、既に手垢のついた言葉だと思うが、一般の日本人にはなじみがないと思うので、彼女らがいったいどのような人たちなのかを説明する必要がある。しかしこれが難しい。そこで中国国有のラジオ局中国国際放送が日本語ホームページの「キーワードチャイナ」で説明している小清新の説明を引用することにする。

「最初は音楽でアコースティックやフォーク風のジャンルを指す言葉。今は文学や映画、写真など各ジャンルの芸術まで広がった。また、そのような芸術やライフスタイルを好む人も『小清新』という。ファッションで説明するとわかりやすいかもしれない。『小清新』のおしゃれというのは、天然素材で淡い色、小さな花柄やレースなどがポイントになる。また、化粧もナチュラル系で、日本でいうカントリー風だったり森ガールのようなものなんだろう」

日本人がイメージしやすいように大づかみで言えば、「村上春樹や岩井俊二や無印が好きな意識高い系の女子」と言えるだろうか。事実、小清新をターゲットにしたサイトには、無印良品を小清新の代名詞と表現しているところもある。

この小清新の女性たちがこの2~3年、タトゥーを入れているのを本当によく見かけるようになった。手首、足首、鎖骨、肘の内側、首の後ろ等、服を着ていても他人から見える場所にワンポイントで入れているというのが多い。グーグルで「小清新」と入力すると、検索候補に「小清新紋身」というキーワードが出てくることからも、彼女らのタトゥー人口の多さが分かろうというものだ。

ここまでの説明で分かると思うが、富裕層と小清新のタトゥーは、オシャレタトゥーである。

そして(3)の工場労働者や美容師、ウェイター等の比較的低賃金の人びと。日本で言うところのヤンキー比率が高いこの層は、いきがって入れることがほとんどのようである。図柄はサソリ、どくろ、星等々、ワンポイントで入れるのが主流。ただ、工場の多くは採用の条件にタトゥー禁止を盛り込んでいる。だから工場や工員の暮らす寮のある町には工員らを対象にしたタトゥー屋が必ずと言っていいほどあるのだが、看板に目立つように書いてあるのが、タトゥーを消すサービスを提供しているという点。服を着ていても見えるところに入れている人は採用面接にあたって消すのだろう。

さて、サッカーの中国代表選手がタトゥーを隠すよう求められた一件は、ここに挙げた(1)~(3)の人びとに何らかの影響を与えたのだろうか。

6月初旬の上海は肌の露出が高い季節になり始めたこともあり、タトゥーをしている人が、昨年よりもさらに増えたような印象を受けた。つまり、サッカーの一件は今のところ、「タトゥー」の人びとには影響していないということである。タトゥー屋が大量に廃業し始めているというような現象も、今のところ聞かない。

都会で受けた壮絶な差別とイレズミ

ただ、気になることもある。それは、都会人に差別された屈辱を忘れず中国で生き抜くことを決心した証として背中一面にイレズミを入れた青年が、サッカーの件が起きるほんの少し前に、イレズミを隠すようになっていたことである。

彼の名前は仮にA仔(エーチャイ)としておく。彼と知り合ったのは2016年、海南島の海口だった。当時彼は22歳。仕事はマンションの内装工事が中心の大工。経営者ではないが、現場監督のような立場にあり、収入は当時で月1万元(17万円)。国産だがSUVのマイカーも持っている。海南島に訪ねた私の若い友人の親友で、空港の送迎にクルマを出してくれたり、食事に誘ってくれたりと、滞在中、「叔叔、叔叔」(おじさん、おじさん)と言っては何かと世話を焼いてくれた。

そのA仔がタトゥーを入れていることは、空港から彼の車の後部座席に乗り込んだときに分かった。肩甲骨の部分が深くえぐれたタンクトップから模様がのぞいている。背中一面に大きなタトゥーがあるのは間違いないようだったが、正面からは彼がタトゥーを入れているのは全く分からない。ただ、中国の富裕層のように、たんなるオシャレで入れているのとは違うように思えた。オシャレで入れるならば、服を着ていてももっと目立つように入れるのではないかと思ったのだ。一方で、工場労働者や美容師たちのように、ほどほどのいきがりとほどほどのオシャレをミックスしたのとも明らかに一線を画していると感じさせるほどの大きさではあった。

そこでA仔との3度目の食事の時、私は思い切って彼にタトゥーを入れたわけを聞いてみた。すると彼は、親友の遠方から着た年長の友人ということを尊重してくれたのか、ポツリポツリと話をしてくれた。

彼は内陸部の重慶郊外の農家に三男坊として生まれた。その地域の子供たちのほとんどがそうであるように、彼も中学を卒業すると、実家を出て北京へ働きに出た。

「そして」と彼は言った。

「そこで北京人から差別を受けた。そして北京を離れた。差別されたことを一生忘れまい、と思って、ある土地で背中にイレズミを入れた。そして海南島に来た、というわけです」

中学を卒業したばかりの少年が、背中一面にイレズミを入れようと思うほどの差別とは、一体どのようなものなのかを想像した。想像がつかなかったが、根掘り葉掘り聞く気にもなれなかった。北京に何カ月いたのか、何の仕事をしたのかについては聞いてみたが、これについても黙って笑うだけで答えてくれなかった。

北京に行った彼が、黒社会に勧誘され、契りとして若気の至りで背中にイレズミを入れてしまったのではないか、とも考えた。

ただ彼が「差別を受けた」というのを聞いて、私はそれは本当なのだろうと確信した。

農村で生まれるか、都会に生まれるかで、人生のスタート地点で天と地ほどの差がついてしまう中国。都会人による地方出身者に対する蔑視は、せいぜい「ダサい」「田舎者」と馬鹿にされる程度の日本に生まれた私には想像がつかないほどのものがあるのだろう。同じ漢民族でありながら、他の国におけるレイシズムに近いものがあるのだ。

「ふーん、そうだったのか。知り合って3年以上になるけど、いま初めて知ったよ」

隣で聞いていた共通の友人がポツリと言って、フーッと息を吐いた。

その夜。A仔にイレズミの写真を撮らせてもらった。

A仔のイレズミ。中学を卒業したばかりのころの壮絶な記憶を背中に刻みつけて生きている

タンクトップを脱ぐと、観音菩薩と龍が現れた。

オレを差別したこの国で生き抜くにはどうしたらいいのか。イレズミを入れてでも気合いを入れて、立ち上がらなければ。

22歳になったA仔の背中には、中学を卒業したばかりのころの悲壮な決意が張りついていた。

「非主流のカリスマの引退」との共通点

そのA仔が、イレズミを隠すようになったことを知ったのは、今年の春節直後のこと。SNSに、白いワイシャツを着た自撮り写真を投稿しているのを見つけたのだ。「袖付きのシャツを着るなんて、何年ぶりか覚えてないほどだよ」と書き込んでいた。そしてその次の投稿も、さらにその次も、彼はワイシャツ姿だった。そこから今日まで、彼はイレズミがのぞくタンクトップを着て外には一度も出ていない。

SNSで、どうしてワイシャツを着るようになったのかと尋ねた。しかし、彼から返事は返ってきていない。

彼がイレズミを隠すようになった理由を考えていた私は、ある日、中国で「殺馬特」(シャマト)と呼ばれるパンクの若者たちの中でカリスマ的存在だった青年が「卒業」したということを知った。そして彼が卒業を決めたのも、A仔がイレズミを隠すようになったのとほぼ同じ時期だったということも。

殺馬特のカリスマの引退については前回の原稿で書いているのでここで詳しくは書かないが、どうして引退を決めたのかとの私の問いに彼は、

「同じような考えの人ばかりにしようというのは、とても怖いことだ。病んだ社会だ」

という言葉を返してきた。

A仔がイレズミを隠すようになったこと。殺馬特のカリスマの引退。そしてサッカー中国代表のイレズミの一件。これらが重なり合うように起こったのは、恐らく偶然の符合ではない。

A仔もカリスマも、だれかに直接警告されたわけではないのだろう。しかし、彼らのような中国社会の「非主流」を排斥しようとする空気が中国で確実に増していて、A仔やカリスマのように、自らの意思を明確に自覚して行動してきたような人たちが、激烈な悔しさを糧に研ぎ澄まされた豊かな感受性で、世の中の空気を敏感に感じ取った末の、生き抜くための行動なのだと思う。その後に出てきたサッカー代表の一件は、彼らを潰しにかかっている「大きな意思」が、いよいよ表にも顔を見せ始めたのだということなのだろう。

ではなぜ、富裕層や小清新、工場労働者や美容師らのタトゥーは増えているのだろう。それは、芽を摘む理由がないからだ。工場労働者などの低所得者層については、オシャレといきがりでタトゥーを入れるのでとりあえずは満足していると判断されているのだろう。そして富裕層も小清新も、1時間1500元のタトゥーを楽しめるのは、いまの社会のおかげだということが分かっている。いまの社会を支えているのはこの層だ。

多少の息苦しさや理不尽を感じても、現状維持が一番いい。この点で、いまの中国と日本が奇妙なほどよく似ているということにも驚くのである。

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『中国メディアが「マハティール首相訪日」に見せた強い関心』(6/18ダイヤモンドオンライン 第一財経)について

6/23朝7時のNHKニュースで、大和葡萄酒(甲州市)のワインが紹介されていました。栃の心の故郷のジョージア(旧グルジア)はワイン発祥の地と言われ、その製法(大きな甕の中で発酵させる)を採り入れて作っているとのことでした。昨年10月の防人と歩む会主催の「河添恵子先生講演会」で大和葡萄酒の萩原社長と知り合いましたが、彼もTVに出ていました。映像が無いのは残念です。

同じく6/23朝7時のNHKニュースで、カリフォルニア州のどこかの町で聖域都市から離脱したというのが放映されました。トランプ政権の連邦政府の補助金減額or停止政策が効いてのことと思われます。これも映像が無いのが残念ですが。聖域都市と言えば聞こえは良いですが、国の中に国を作るようなものでしょう。この裏には中共の存在があるのではと睨んでいます。米国のリベラルは容共と言うか、自由をはき違え、自由を一番弾圧する共産主義を受け入れる所がダメな点です。法治国家を標榜するのであれば、厳格な法執行をしなければならないでしょう。日本の沖縄も独立運動をしている人間がいますが、裏で中共が金を出していると思います。スパイ防止法があれば一発で逮捕でしょうけど、ないので公安は外患誘致罪の疑いか何かで身辺を良く洗った方が良いのでは。日本政府も辺野古移転工事の妨害を沖縄県が排除しないのだから、トランプ同様交付金を大幅削減すれば良いでしょう。

6/18阿波罗新闻网<马来西亚反腐涉及中共=マレーシアの反腐敗運動は中共にまで及ぶ>ナジブ首相は中国の「一帯一路」のパートナーとして、中国がマレーのインフラ整備をすることに対し大歓迎した。ポケットに入れただろうという醜聞のある中で、選挙に負け、首相を下りた。マハテイール新政権は「以前に中共と締結した契約は疑わしき取引と思われるので、審査をし直す。ナジブ一派は公金を横領した。国民は彼らの醜聞を聞いて、嫌悪感を深め、政権打倒の引き金になった。仏メデイアに対し、マハテイール新首相は「クワラルンプール~シンガポール間の高速鉄道は国の債務が大きくなるので取りやめる。建設の初期段階で、中国の金も未だ入っていない」と。但し中国側は雲南省とシンガポールまで繋がるのでやりたいと思っている。もう一つの高速鉄道は、中国の金が入って、建設が始まっており、マレーの東海岸を走る。建設資金は140億$とも。新首相は「これについても中国と協議する」と。仏メデイアは「ムラカの深水港と巨大工業区(多分ジョホールバルのフォーレストシテイでは?)も協議の対象に。唯、今の所変更又は取消せるかどうか分からないが、専門家はプロジェクトによっては取り消せるだろう」と。

http://www.aboluowang.com/2018/0619/1132037.html

本記事にもありますように、マハテイールはTPP11も再交渉と言っていますのは、中国との契約の見直しをするため、バランスを取る必要に迫られたためなのでは。TPP11はガラス細工の積み上げでできており、再交渉を言いだせば崩壊するかマレーシアをオミットするかどちらかです。TPP11は、参加国の過半数が国内手続きを完了してから60日後に発効するとのことですから。老練な政治家のマハテイールがこのことを理解していないとは思えません。19年にはTPP11は発効予定ですので、マレーシアがどうするのかは今は読めません。

ASEAN発足時の狙いは反共でしたのに、中国の存在が大きくなりすぎて、誰も中国の横暴を非難できなくなりました。米国衰退が原因とは思えず、米国の二極化で国内が分裂して、外にエネルギーが回せなくなっていることが大きな原因だと考えています。裏では中共が暗躍している部分もあると思いますが。米国は中国を見くびり過ぎたのでしょう。また北朝鮮も。大日本帝国を崩壊させた咎めです。でも、今の日本はどうかと言うと、自立の気概を持った日本人は殆どいません。先人たちは不平等条約を解消するのに53年かけて実現しましたのに、戦後73年経つのに国連の敵国条項一つ削除できないでいます。大正・昭和以降の外務省職員の劣化でしょうけど、それを許すというか無関心な国民も劣化してきていると思います。マハテイールは、今は心の中ではルックイーストとは思っていないでしょう。しかしEAECは中国を利するだけです。大事なのは中国を大きくしないことです。

参考:6/22JBプレス 末永 恵<アリババも”手中”に、マハティール首相の巧外交術 新ルックイーストもベトナムも注視の全方位外交>

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/53372

記事

写真:代表撮影/ロイター/アフロ

—15年ぶりに再登板したマレーシアのマハティール首相は、6月10日から12日の日程で来日。安倍晋三首相や黒田東彦日本銀行総裁と会談したが、中国メディアはこの訪日をつぶさに追い続けていた。背景には中国にとってマレーシアは極めて重要な貿易相手国であること、さらにマレーシアでのインフラ投資において、中国と日本はライバル関係だということがある。中国メディアはマハティール訪日をどう報じたのか。中国の経済メディア「第一財経」の記事を転載する。

マレーシアのマハティール首相(92)は復帰(5月10日)

日本政府はマハティール首相を手厚くもてなした。訪問期間中(6月10日~12日)、安倍晋三首相と黒田東彦日本銀行総裁とそれぞれ会談した。 また日本側は、マハティール首相を日本商工会議所、ジェトロ(日本貿易振興機構JETRO)などが主催する投資・貿易フォーラムに招待した。

だが、マハティール首相は訪日期間中多くの場で発言したが、初の外遊での発言に特に期待を寄せていた人たちを失望させた。

マハティール首相は3日間の東京訪問で多くのことを語ったが、中国への言及は期待したほどではなかった。それに、日本が最も気にかけている環太平洋パートナーシップ協定(TPP)問題でも、「特に関心がなく」、再交渉が望ましいと直接述べた。

対立ではなく話し合い 対中関係重視を強調

今回の訪問は、復帰前から決まっていた。

マハティール首相は外界の様々な憶測を打ち消すため、初の外遊先に日本を選んだ理由について、毎年参加している日本経済新聞社主催の第24回「アジアの未来」国際会議に出席するためだと自らの口で語った。

また、日本やマレーシア、その他の参加国もそうだが、「アジアの未来」において、中国は極めて重要な存在であると語った。

マハティール首相は会議で、司会者と来賓からの質問に一つひとつ答え、中国に対する自らの見解を丁寧かつ忍耐強く説明した。また、マハティール首相は、中国との友好交流を望んでおり、対立ではなく話し合いを望んでいると、これまでメディアが伝えていたのとは全く異なる立場を表明した。マハティール首相が最も望んでいるのは、マレーシアの産業が強くなることだ。

TPPに全く反対というわけではない

第24回「アジアの未来」で、日本側は「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(CPTPP、米国離脱後の11ヵ国のTPP)の参加国の高官を多数招待した。CPTPP参加国高官は、CPTPPの妥結に向けた交渉の中で日本が中心的役割を果たしたことに感謝し、CPTPPが合意に達した後の互恵・ウィンウィン関係について語ったが、はじめに姿を見せたマハティール首相はCPTPPに冷水を浴びせ、「TPPに関心がない」と述べた。

3月8日、チリの首都サンティアゴでTPP11協定の署名が行なわれた。メンバー国は、日本、カナダ、オーストラリア、ブルネイ、チリ、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムの11ヵ国。アメリカ離脱後のCPTPPの国内総生産(GDP)は3分の2に減少し、13兆ドル(約83兆元)で、アメリカ離脱前は世界のGDPに占める割合は40%だったが、離脱後は13.5%に減少した。CPTPPの経済規模は縮小しているが、発効後も太平洋国家の川上産業・川下産業の産業チェーンの構築に好影響を与えることが予想される。

オーストラリアは、CPTPP発効後、加盟国間で98%の関税障壁が撤廃されると予測している。

マハティール首相はそうは思っておらず、「再交渉が望ましい」と述べ、マハティール政権は貿易条項の見直しを求めていくとの考えを示した。だが、マハティール首相は、マレーシアは「TPPに全く反対というわけではない」とも述べた。

東アジアは日中韓中心に団結して発展すべき

マハティール首相は、TPPが支持されないのは、この協定がマレーシアの公平な競争にマイナスとなるからだと説明し、次のように語った。

「乳幼児期の産業があるように、乳幼児期の国もある、これらの国は発展が始まったばかりで、強い貿易国または産業と競争することができないので、特別措置をある程度設け、ある程度保護することが必要であることを、われわれは認識しなければならない」

さらに、マハティール首相は「このようにしてこそ競争がより公平となるのだ」と指摘する。

そのため、マハティール首相は「東アジア経済協議体」(EAEC)を重視している。それは、ASEAN諸国、中国、日本、韓国などの東アジア諸国の団結を目指す構想で、90年代にマハティール首相が提唱した。しかし、当時アメリカの強い反対に遭い、その構想は実現しなかった。

「当時、アメリカがわれわれに反対したため、EAECは実現しなかったが、今やアメリカは再び孤立主義へと向かっているように見受けられ、もはやEAECをつくるなとは言えなくなっている」

マハティール首相は、東南アジア諸国は団結して発展すべきだと述べた。

高速鉄道プロジェクトはカネがかかりすぎる

その一方で、15年ぶりに首相に復帰したマハティール首相は、国内産業を発展させることを考えている。

マハティール首相は マレーシアの自動車製造技術はいくつかの大国に引けを取らないが、競争の中で貿易障壁という壁に今も阻まれていると語る。さらに、マハティール首相は、マレーシアに投資する外資が技術とアイデアを持ち込むことを望んでいるとも語っている。

マハティール首相が訪日期間中にクアラルンプール=シンガポール高速鉄道問題についての立場を変えたことは、注目に値する。マハティール首相はこう述べている。

「マレーシアは現在、このプロジェクトを続けることができないが、マレーシアが高速鉄道を永遠に持てないということではない。このプロジェクトはカネがかかりすぎるため、われわれが今すべきことはこのプロジェクトを延期することだ」

5月28日、マレーシアはクアラルンプール=シンガポール高速鉄道の中止を宣言し、この計画を「不必要な計画」と呼んだ。 理由は、建設費用が1100億リンギ(約177億元)に上る一方で、何の利益も見込めないからだ。

2013年にマレーシアとシンガポールが合意に達したクアラルンプール=シンガポール間の高速鉄道プロジェクトは、2014年に建設を始め、2026年末の操業開始を目指していた。

この高速鉄道は全長350キロメートル。マレーシアのクアラルンプールから南部のジョホールバルを経て直接シンガポールに行くことができる。 この高速鉄道が完成すると、シンガポールからクアラルンプールへの移動時間は4、5時間から90分に短縮され、一日当たりの旅客数は数十万人に達すると見込まれていた。

マハティール首相がこの計画の中止を宣言した後、マレーシアが支払うべき違約金は1億2500万ドル(約8億元)に達するのではないかと見られた。

マハティール首相は日本メディアのインタビューに応じ、「高速鉄道は、長距離なら大いに意義があるが、短距離は役に立たないと思う」と述べた。

だが、マハティール首相がこの計画の中止を宣言した時、シンガポール交通省は、マレーシア政府が協力中止を正式に通告していないとの声明を発表した。その後シンガポール側は、マレーシア政府に外交ルートを通じて立場を表明するよう求めたと述べた。

中国に“借り”を作りたくない

マハティール首相は訪日期間中、各方面の関係者の質問を受けたが、「中国」が中心的テーマだった。 以前の報道によると、マレーシアの新政権は、これまで中国と結んだ取り決めの一部条項について再交渉する可能性があると表明した。

それに対し、中国外務省は「中国はマレーシアが引き続き安定と発展を維持していくものと信じている。マレーシアとともに、相互尊重と平等互恵の原則に基づいて両国の包括的戦略的パートナーシップの持続的発展を促し、両国の人々にさらに幸福をもたらし、地域の安定と繁栄を促進していきたい」と述べた。

マハティール首相は東京で、上述の質問に直接答えなかった。だが、マハティール首相は外国直接投資の定義について自分の考えを控えめに述べた。マハティール首相によると、外国直接投資は外資企業が資本と技術を投資対象国に持ち込むことを意味するが、現在、外資企業がマレーシアで土地を購入していることには賛成できないという。

一方で、マハティール首相は、中国についてこう述べている。

「中国は長い歴史を持ち、中国とマレーシアの間には2000年の交流の歴史があり、それに中国はマレーシアを植民地にしたことは一度もなかった」

それとは逆に、マレーシアの貿易相手国としての中国については、「中国との友好関係を保つのを望んでいるが、中国に“借り”を作りたくない」と述べている。

マハティール首相は、中国とマレーシアとの貿易交流の歴史は長く、14億人の市場は世界にとって魅力的であると指摘し、現在の中国はより強く豊かになっており、消費者市場も拡大しているので、「われわれはこの市場に入りたいと思っている。だから、われわれは中国と付き合わなければならない」とも述べた。

それぞれのイデオロギーを尊重しそれぞれの市場にアクセスしたい

現在、中国は9年連続でマレーシアの最大の貿易相手国であり、2年連続でマレーシアの製造業への最大の投資国であり、6年連続で訪れる観光客が最も多い国となっている。

ただ、マハティール首相は、「一国だけでは、いかなる目標も達成できないかもしれない」ので、東南アジア諸国は東アジア経済協議体を通じて“グループ”として意思疎通・交流すべきだと考えている。

マハティール首相はこう述べた。

「政権が交替したが、世界のすべての国と友好的に付き合い、それぞれのイデオロギーを尊重したいと思っており、あらゆる国と引き続き貿易を行なってそれぞれの市場にアクセスできるようにしたい。なぜなら、われわれは貿易に頼ってわが国を発展させるからである」

マハティール氏の首相復帰が決まった後、中国外交部の耿爽(こうそう)報道官は定例記者会見でこうコメントした。

「マハティール氏はベテランの政治家で、マレーシアとASEANの発展、中国・マレーシア関係および東アジア協力に積極的かつ重要な貢献をしてきた。中国はマハティール氏のマレーシア首相就任に祝意を表す。マハティール首相の指導の下、マレーシアの国家建設が新たな成果をあげ、中国とマレーシアの包括的戦略的パートナーシップが引き続き着実に前に向かって発展すると信じている」

2年後、世界最年長の首相になっているだろう

5月24日朝、白天・マレーシア駐在中国大使は、首相に復帰したマハティール氏を訪ね、祝意を伝えた。

白天大使はこう述べた。

「閣下は、中国とマレーシアの外交関係樹立から44年間の半分の22年間、マレーシア首相を務められました。その間、7回中国を訪問し、広範囲かつ深い現在の両国間の実務協力の基礎を築き、中国・マレーシア関係に重要な貢献をされました。また閣下は、中国・ASEAN協力とASEAN+3協力の構想を提起され、今日勢いよく発展する東アジア協力で歴史的役割を果たしてこられました」

これに対し、マハティール首相はこう述べた。

「近年、中国経済は急速に成長し、鉄道などのインフラで顕著な成果をあげており、農業などの分野の科学技術レベルが目覚しい進歩を遂げている。中国の発展の経験と科学技術はマレーシアも学ぶ必要があり、両国間の協力はさらに発展するだろう。中国企業がマレーシアに投資し、両国間の協力を引き続き前に進めていくことを歓迎する」

今回東京で、マハティール首相は日本の各界の人々からの祝福を受けた。

任期についての質問に答えたとき、マレーシアの人々が望むなら、2年後も首相を続けたいとの考えを示した。マハティール首相は「人々が私を必要とするなら、私は喜んで働きたいが、どれだけ長生きできるかわかりません」と語り、さらに「2年後に私は95歳になりますが、もうすでに世界最年長の首相となっています」とユーモラスに語った。

(翻訳/フリーライター 吉田陽介)

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『米朝首脳会談の勝者は中国なのか 半島問題は小休止、誰が勝者か判断するには早すぎる』(6/20日経ビジネスオンライン 福島香織)、『中国が米朝首脳会談の結果を「歓迎」する3つの理由』(6/19ダイヤモンドオンライン 加藤嘉一)について

6/21阿波罗新闻网<中外专家:胜算很高 川普逼迫习近平放弃中共模式=中国と外国の専門家:勝算は高い トランプは習近平に中共モデルを放棄するよう迫る>米国は貿易戦争中、初めてファイアーウオールを槍玉にあげた。それによりネットが繋がらず、商機を失したと言うもの。香港中文大学の林教授は「米国は実質的に習に圧力をかけ、中共モデルの経済発展を変えさせようとしている。それはモデルとしての国営企業を含んで共産党が全面的にコントールするやり方である。中国は国際経済や市場のルールに従うのを望む」と。

香港冠城商業経済研究センターの関主任は「中共の対米報復措置は限られている。米国の対中輸出量と中国の対米輸出量とを比べて見れば、全然少ない。且つ中国の米国への輸出品は容易に代替が効く。中共は米国に直接投資部門で報復に出る。ただ中共にとっては逆風である。人民元は米国の関税措置を受けて暴落するだろう」と。WSJは「トランプは貿易戦争のレベルを上げるのを厭わない。勝算は高い。衆議で決せず、準備はできている。ビジネス界の圧力があっても気にしない」と。ナバロは「トランプ大統領はあらゆる機会を通じ中国の侵略的行為を変えさせようとしてきた。米国と比べると中国が負けるのは確実に高い」と。ライトハイザーは「第二波の関税措置は未だ効力を発せず。数カ月かけて業界の意見を聞いて決める」と。

トランプの関税措置は中国の「中国製造2025」を狙い撃ちしたもの。米国のハイテク部品の輸出を制限して、「2025」をできなくしようとしている。

http://www.aboluowang.com/2018/0621/1132738.html

6/22阿波罗新闻网<美国农民:受中共关税冲击 仍然支持川普=米国の農民:中共の関税の攻撃を受けても依然としてトランプ支持>中共の報復関税に対し、農場主は将来の不安はあるものの、トランプの不公平貿易に対する措置を支持している。加州の柑橘類互助会のジョエル・ネルソン会長は「この2ケ月の果物の輸出量は下がっているが未だ摘果と売る時期ではないので影響はそれほど大きくない。ただ貿易戦争が緩んでいない状況で、将来は不確実である。もし中国市場が閉ざされたら、他を探さざるを得ないが困難である。」と。肉類輸出連合会は最新の数字を挙げ「豚肉の4月の輸出数量は去年と比べ下がっているが、輸出額は安定している。豚肉の海外輸出総量は記録を刷新するくらい増えて、中でも韓国が激増している」と。アイオワの養豚業者のクリス・ナペルはボイスオブアメリカの取材に対し「今は特に悪いという事もない。飼料のトウモロコシの値段も下がっている。商売はまずまずである。豚肉の価格もそんなに下がっていない。ただ今後は影響を受ける可能性がある」と。肉類輸出連合会は「関税の影響は今後数カ月経ってから出て来るだろう」と警告した。

一般には「中共の報復関税はトランプ支持者の多い農業地域に照準を合わせたもので、明らかに農民が共和党とトランプに圧力をかけるか、選挙でトランプを罰することを望んだもの」と受け止められている。しかしナペルはトランプに一票を投じたし、今もトランプ支持は変わらない。トランプは既に農業省に農民保護の政策を検討するよう命令した。農民は愛国者だから。WHのナバロは今週「トランプ大統領の採った行動は自衛措置であり、米国の優れた科学技術を守るため中共の侵略的な権利侵害は受けないようにすることである。政府は現在米中貿易戦争の最中、米国の農民を救うにはどうしたらよいか研究中である。ただ今の所、具体的な措置は発表されていない」と。

加州の柑橘類互助会のジョエル・ネルソン会長は「果物が売れる時期が来る前に、政府は解決の道を探し出すのを期待する。しかし、政府が中共に強硬な態度を採るのは理解する。もし、我々の産業が不公平に扱われるのなら、政府に働きかけて戦って貰う。政府は中国政府から二、三の産業が不公平に扱われたのを確認している。それで政府は圧迫を加えるやり方をした。これは疑問の無いやり方である。もし我々個人でも不公平に扱われたら、政府にそうするように望むだろう。当然のこと」と。

http://www.aboluowang.com/2018/0622/1132924.html

福島氏の見立ては、「中国の変心(北を守らない)が北の変心を招いたのでは」というものです。中国大陸も朝鮮半島も歴史上裏切りの連続ですから、お互い疑心暗鬼になるのは仕方のない所です。最終的に金が米中どちらを取るかです。まあ、北が一部核保有して、日本も核保有すれば一番困るのは中国ですから、そうなるのを望みます。でも、日本は左翼の似非平和主義者に刷り込まれているから、なかなか大変ではありますが。

加藤氏の記事では、中共指導部は米朝対話を歓迎したとありますが、あくまで戦争になる事との比較の上の話でしょう。中共が、米朝がくっつくのを恐れるのはその通りと思います。ただ、金が習に共産主義者として同じ匂いを感じたというのはどうでしょうか。暴君・独裁者と言う意味ではそうですが。国民の殺し方を見れば金は毛沢東に似ていて、習はまだそのレベルまで達していないと感じます。まあ、毛と習とでは時代が違いますから。北は50年前の中国と同じです。

福島記事

中国・北京で販売された米朝首脳会談を報じる雑誌の表紙(写真:AP/アフロ)

シンガポールで国際社会の耳目を集めた米朝首脳会談が行われて1週間あまりが経った。この会談に対する評価は、トランプが妥協しすぎた、金正恩の一人勝ちだとか、あるいは一番の勝者は中国の習近平である、といったものが多いようだ。理由は、米朝首脳会談後に発表された共同声明にCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)の文言や非核化の期限設定が入らなかったこと、なのに米国側が米韓合同軍事演習の中止という妥協を早々に決めたこと、あたりだろう。軍事演習の中止は、中国にとってもありがたいことであるのは間違いない。では、この首脳会談で米国は敗者だったのだろうか。この結果に、中国がほくそ笑んでいるのだろうか。

米朝首脳会談について簡単に振り返っておこう。共同声明で確認されたのは4点。

①米朝は両国民の平和と繁栄への希求に基づき、新たな米朝関係の樹立を約束した。

②米朝は朝鮮半島の恒久的かつ安定した平和体制を築くことに共同で取り組む。

③2018年4月27日の板門店宣言を再確認し、北朝鮮は朝鮮半島の完全なる非核化に取り組むことを約束した。

④米朝はすでに身元が分かっている遺骨の即時返還も含め、戦争捕虜や行方不明兵の遺骨収集を約束した。

会談後のトランプの記者会見では、共同声明には盛り込まれていないが、北朝鮮側が非核化の検証やミサイルエンジン実験場の廃棄に同意したこと、米国は経済制裁は非核化が再核化しないと判断した段階で解くとしたことなどが説明された。また朝鮮戦争の終結についても、「終わりはもうすぐだ」と期待を示した。

米韓軍事演習を「金のかかる戦争ゲーム」と表現し、その中止を言明、「いずれ在韓米軍を撤退させたい」とも語った。人権問題についても提起し、今後も議論するとした。また、日本人の拉致問題についても共同声明には盛り込まれていないが、話し合いに「取り組む予定」とした。非核化の費用については、日本と韓国が支援してくれると思う、とし、米国が助けなければならないわけではない、とした。

こうした内容について、トランプは自分が譲歩しすぎだと言われることを承知しているが、譲歩はしていない、と主張した。また、プロセスは始まったばかりであり、共同声明に盛り込まれていない約束について、半年後に守られていなかったら、「私が間違ってました、と言う」「何か言い訳する」と答えていた。トランプは金正恩について、有能、信頼ができる、だがいい人とは言っていない、と評価した。

会談では、トランプサイドが作った「北朝鮮の非核化がもたらす未来の繁栄を想像させる映像」を金正恩に見せたという。高級ホテルを作って不動産で儲ける話などもしたらしい。

会談は中朝関係を根本的に変えた

さて、この会談の成果について、どう評価するか。ケチも付けられるが、準備期間2カ月の会談から得られる合意はこの程度のものではないか、とも言える。予測したものより若干、米国の妥協分が多かったが、米韓軍事演習の中止や、在韓米軍の撤退は、かねてから米国側も検討していたことを思えば、大きく予測を超える妥協でもなかっただろう。

トランプの言う通り、プロセスは始まったばかりで、ポンペイオとボルトンというトランプ政権の強面二枚看板による交渉チームがどこまでできるか、というところにかかっているのではないだろうか。ただCVIDが実現するかどうかについては、私は最初からあまり期待はしていない。

そもそも米国にとって北朝鮮の核兵器がどれほど脅威なのか。米国の本音で言えば、ICBM開発をやめさせるためのミサイル実験場の破壊で十分な成果かもしれない。これに、核弾頭の一つや二つを引き渡させれば、たとえすべての核施設を完全廃棄する前にトランプ政権が終わっても、当面は北朝鮮の核兵器の対米攻撃力を丸裸にできたという意味では、米国にとっての非核化はできた、と言えるかもしれない。

何度もこのコラム欄で繰り返し言っているが、半島問題は米朝問題ではなく、米中のアジアにおけるプレゼンス問題、覇権争いである。米朝の直接対話の実現、しかも金正恩を、海を越えてシンガポールにまで引っ張りだしたプロセスを考えると、私はこの会談の本当の意義は、中朝関係を根本的に変えたことではないか、と思う。

私は中国が専門なので、この米朝会談が中国に与えた影響力について整理してみたいと思う。ちょうど、朝日新聞(6月17日付)が、特ダネとして米韓軍事演習中止の要求は、習近平が5月の大連で金正恩と会談した際に提起するように促した、という中国外交筋の話と、北京の北朝鮮筋による「我々が最も優先するのは体制保証だ。米韓軍事演習中止の要求は(中朝首脳会談前に)念頭になかった」という発言とを合わせて、金正恩がトランプに「相手を敵視する軍事行動の中止」を求めたのは中国の代弁であった、つまり中国の思惑を反映した米朝首脳会談であった、との見方を示した。

この記事は、香港メディアなどが朝日新聞の名前を引用する形でも報じている。これが事実なら、習近平は金正恩を利用して、米朝首脳会談を思惑通りにコントロールしたので、中国が影の立役者であり、本当の勝者である、とも言える。

「中国は不安に陥っている」という見方

だが、BBCやシンガポールメディアによれば、次のような見方もある。米朝首脳会談の実現で、中国は不安に陥っている―。

米朝首脳会談の前に金正恩が中国に二度も訪れ金正恩と会談したことで、いかにも中国が風上に立っているように見えるが、これは習近平の不安の表れではないか、ということだ。これはいわゆる筋ネタではなく、中国の北朝鮮の内情を知る著名学者、沈志華ら、識者の分析である。これは割と説得力のある話で、北朝鮮はもともと中国依存脱却のために、米朝直接対話を望んできた過去がある。

また、中国自身「旧ソ連との関係を絶って米国に寝返った」過去もある。米中首脳会談の実現は、かつてのニクソンショックと類似した部分もあり、米国の無党派シンクタンク・スティムソンセンターのアナリスト・孫雲は「当時の中国にできたことがどうして北朝鮮にできないと思うのか?」と問いかけている。

実は私自身は、朝日新聞の独自ネタより、BBCの分析のほうに傾いている。中国の本筋が一部の大手メディアだけにリーク情報を流すとき、何等かの意図がある場合が考えられるからだ。中国は北朝鮮に対して依然強い影響力を維持し続けているというメッセージを今のタイミングでことさら国際社会にアピールするのは、中朝関係が以前のようなものではないからだ、と疑う用心深さは持ったほうがいい。

金正恩が中国とのパイプ役であった張成沢を処刑し、さらにやはり中国が庇護していた異母兄である正男を暗殺し、6年もの間、中国との距離を置き、中国が党大会後に送り込んだ特使をお茶も出さずに追い返した上で、いきなり今年の3月と5月に金正恩が中国にまで来て習近平との面会を求めたのは金正恩の米朝首脳会談に向けての駆け引きの一環にすぎず、本当に中朝が信頼関係を再構築できたとは考えにくい。

習近平も金正恩に疑念を持ちつつ対米外交の戦術上、金正恩に会ったほうがよい、と判断したにすぎないと私は思う。北京、大連の会談報道のテレビ映像から、そういう空気は見てとれないだろうか?

中朝の長い歴史を振り返れば、友誼よりも恨みを募らせた時間のほうが長いのだ。だから朝鮮戦争で40万人の中国人兵士が犠牲になっても、朝鮮には彼らの犠牲に感謝をささげる記念碑すらない。北朝鮮には中国に対する友誼がもともとなく、中朝関係が外交戦略上、戦術上のものにすぎないとすれば、かつて中国が旧ソ連に対して行った戦略転換を北朝鮮が中国に対して行う可能性を懸念してもおかしくない。

「北を守らない」という選択肢の余波

そもそも米朝首脳会談の実現の背景には、中国が北朝鮮有事に備えて動きを見せ始め、しかも北朝鮮に対しては「守らない」という選択肢を検討したことが、私は大きいと思う。

北朝鮮の基本外交は、自らの地政学的価値を利用して、米中両大国の間に立って双方を刺激して相互に牽制しあう均衡の中で自らの安全を模索するというものだった。だが、ここにきて、中国は米国が北朝鮮を攻撃したとしても黙認するかもしれない、と不安になった。

実際、2017年11月、中国は米国による北朝鮮攻撃の可能性はあるとみて、国境沿いに難民キャンプを建設し、不測の事態に備えて国境防衛を増強。中朝友誼大橋の遮断をはじめ中朝国境を完全に閉じ、中朝国境で北部戦区国境管轄部隊による軍事演習を行った。この演習は北朝鮮に味方して米国と戦うための演習ではなく、中国の国境を守る演習だ。

つまり11月上旬の北京で行われた米中首脳会談の結果、中国は米軍による北朝鮮攻撃の可能性はあるとみたが、その際に同盟国の義務を守るつもりはなく、国境防衛に専念する姿勢を見せた。間違いなく、これは北朝鮮への圧力となった。

だから北朝鮮は狼狽し、米国との直接対話を急いだ。トランプはこれに応じたが、ボルトンから「リビア方式」という発言があり、米国が一筋縄でいかないと思い至って、習近平にも会談を求めた。ひょっとすると金正恩は習近平に背後から狙われることを恐れたのかもしれない。

朝鮮問題に詳しいジャーナリスト、重村智計が、金正恩が首脳会談直前に大連に行った目的は、シンガポールでの首脳会談の留守中の国内でクーデターが起きないよう習近平に頼んだのではないか、と指摘していた。北朝鮮で軍事クーデターが起きる場合、解放軍旧瀋陽軍区が関与する可能性は高い。

習近平が北部戦区(旧瀋陽軍区)をきちんと掌握できているか、という問題はあり、習近平が解放軍を通じてわざと北朝鮮に政変を起こさせる工作をするとは考えにくいが、北朝鮮内部で起きている政変の動きに気づかないふりをするぐらいのことはやりそうだ、と疑って釘を刺したのではないか。

そういう流れをたどれば、中朝がタッグを組んで米国に相対しているというよりは、米朝首脳会談実現に至るまでのプロセスで、米国が中朝関係を大きく揺るがせた、あるいは見せかけにすぎなかった対米戦略上の友誼の仮面をはがした、と言えないだろうか。私は米朝首脳会談の本当の意味は、中朝関係の変質を決定的にしたことではないか、と思う。

この会談自体の結果は、中国にとって損はない。米韓合同軍事演習が中止となることも、いずれ在韓米軍が撤退するということも中国にとっては朗報だ。中国は北朝鮮を信じてはいないが、中国に刃向かう実力はないという前提は揺らいでいない。

半島問題は小休止状態にある

だが、誰が勝者か判断するには早すぎる。半島問題は決着したのではなく、何か大きな変化を控えての小休止に入っただけと考えるほうが、私は納得がいく。

半島の問題を米中新冷戦対立構造の中の一つに過ぎないと考えると、中国の関心は、米朝首脳会議が決定して以降は、明らかに半島問題よりも次のステージである通商問題、そして南シナ海・台湾問題に移っていた。中国にとっては米韓軍事演習の中止よりも、リムパックが中国を外して行われることのほうが重要だ。米朝首脳会議が終わると、米国は即刻、対中貿易戦争を再燃させた。

米中対立がこうして先鋭化する中で、日中関係も12月の北京における日中韓会合、来年の大阪で行われるG20を利用した日中首脳の相互訪問の予定などが取りざたされ、動きがでてきた。世界の激しい変化の中で、日本の外交力も試されている。

加藤記事

写真:「労働新聞」より

歴史的な米朝首脳会談の交渉は金正恩側の“勝利”という見方が主流

「今回、トランプ大統領と金正恩委員長は歴史的な会談を実現し、かつ前向きな成果を得た。これは朝鮮半島の核問題を政治的に解決する上での重要な一歩である。中国は米朝双方を心から祝福したい。朝鮮半島問題は複雑であり、順を追って一歩一歩解決していく以外に道はない。米朝が相互に尊重し、向き合い、朝鮮半島問題の政治的解決に絶え間ない努力を続けることを希望する」

6月14日、シンガポールで開催された米朝首脳会談に同席し、ソウル経由で北京入りしたマイク・ポンペオ米国務長官を人民大会堂に迎え入れた習近平国家主席はこのように米朝首脳会談を評論した。ポンペオ長官は「トランプ大統領からぜひともよろしくお伝えくださいという言葉を預かっている。特に、習近平主席朝鮮半島問題において施してくれた重要なアドバイスやサポートに感謝していると言っていた」と述べ、中国の働きを評価した。

世界中で多くの人間が“歴史的な1日”と振り返った6月12日。歴史上初めて実現したトランプ大統領と金正恩委員長による米朝首脳会談の具体的な経緯や内容については、その多くがすでに大々的に報道されているため、ここでは詳細を省くことにするが、会談に対する評価を大きく色分けすれば「具体的成果に欠ける内容であった」というものと「それでも意味のある会談であった」というものであろう。

前者に関しては、米国が唯一受け入れられる結果と断固強調してきた「完全で検証可能、不可逆的な非核化(CVID)」という言葉が共同声明に盛り込まれず、非核化のための具体的な期限設定や行程表の提示もなかったこと、後者に関しては、それでも米朝の現役最高指導者が歴史的に初めて会談を実現し、「新たな米朝関係や、朝鮮半島における永続的で安定した平和の体制を構築するため、包括的で深く誠実に協議を行った」(共同声明)こと、この会談の実現を通じて、一時は一触即発の危機すら懸念されていた朝鮮半島情勢が少なくとも緩和の方向に向かいつつあることであろう。

交渉に関して言えば、CVIDではなく「朝鮮半島の完全な非核化」という文言にとどめた金正恩側の“勝利”だったという見方が主流のようである。

冒頭で中国の最高指導者による最新のコメントを引用したが、中国共産党指導部は今回の米朝首脳会談をどのように観察・評価し、かつ今後の動向をどのように見積もっているのであろうか。

本稿では以下このテーマを「全体的評価」、「戦略的考慮」、「内政的要素」という3つの視角から検証していきたい。

中国共産党指導部は米朝首脳会談を歓迎している

まず1つ目であるが、習近平によるコメントにもあるように、共産党指導部としては全体的に今回の会談を前向きに評価し、歓迎していると言える。

このような感想を保持し、立場を表明する最大の動機の1つはやはり「“第2次朝鮮戦争”が回避されたこと、あるいは少なくとも回避される方向に向かっていること」であろう。

「中華民族の偉大なる復興」と定義された“中国夢”というスローガンの下、改革開放・現代化建設を推し進めている中国としては、北朝鮮問題が引き金となって、自国の国境付近で再び米国と一戦を交えることのダメージは計り知れない。党・政府の官僚や体制内研究者はしばしば口にする。

「中国にとって対外開放とは、まずは対米開放であり、対米関係とは中国現代化建設のプロセスにおける最大の外部要素である」

そんな米国と武力衝突に陥ることの経済的、外交的、軍事的、そして政治的ダメージを涼しい顔をして吸収できるほどの国力を中国は持ち合わせていないし、“米国に戦争で勝利すること”を通じて中国の国際的影響力を一気に向上させようなどともくろむ余裕は、少なくとも現段階ではないであろう。

もう1つの動機としては、北朝鮮の体制や核を巡る動向とインパクトに帰する。北朝鮮が核武装し米国や韓国、そして中国との関係を悪化させ外交的に孤立していく中で、国内の経済情勢が悪化し、その過程で、あるいは結果的に極度の混乱、“崩壊”を彷彿とさせるような状況に陥り、中朝国境の中国側に大量の“難民”が流れ込んできたり(実際にこのような状況に対処するための政治的・物理的な準備を中国は進めてきていた)、核の放射能が漏洩してくるような事態になれば、中国国内では社会不安が蔓延し、“国家安全保障”をも脅かしかねない。

また、北朝鮮が継続的に核武装していく流れは、韓国や日本、そして台湾を核武装に向かわせ、北東アジアに“核の連鎖”が発生する引き金となりかねない。

このような事態を回避するために、具体性や徹底性に欠けるとはいうものの、「トランプ大統領は北朝鮮に体制の保証を提供する約束をし、金委員長は朝鮮半島の完全な非核化について断固として揺るがない決意を確認した」(共同声明)ことの意義や価値は、中国の全体的国益に資する流れであると共産党指導部は読んだに違いない。

6月12日、米朝首脳会談直後に中国政府が「外交部声明」と題して出した声明文は「この期間、朝鮮半島情勢に出現している重大で前向きな変化、特に米朝首脳会談が得た成果は中国側の期待に符合するものである」と指摘している。

中国が最も嫌がるシナリオは朝鮮半島全体が“親米化”すること

次に2つ目であるが、中国が米朝首脳会談を観察し、そこに関与していく過程での戦略は、今日経済貿易関係が悪化し、台湾問題でも不透明感が漂う米中関係が1つの土台になっているという点を指摘しておきたい。

米国がトランプ政権になって以来“ダイナミック”に動いているように見える朝鮮半島情勢であるが、中国が最も嫌がるシナリオは、米中関係が悪化する中で、北朝鮮と韓国との関係、および米朝関係が劇的に改善し、その過程で北朝鮮が“親米化”し、結果的に(南北が統一するか、どのように統一するかという問題はさておき)朝鮮半島全体が“親米化”するというものであろう。

こうなれば、中国にとって最大のライバルであり“戦略的競争相手”である米国の脅威が実質的に中国の国境まで迫ってくることになり、中国はこれまでとは比較にならないほどの安全保障的な恐怖に見舞われる事態に直面することになる。

このような事態を回避すべく、中国は南北首脳会談、米朝首脳会談が準備・開催される中で習近平・金正恩による中朝首脳会談を2度アレンジした。習近平は上記で取り上げた1点目の目的を果たすべく金正恩の背中を押し、アクセルを踏ませつつも、いまだ若く、経験不足とされる金正恩が前のめりになりすぎないよう後ろで支え、ブレーキを利かせるべく働きかけた(もっとも、習近平に言われるまでもなく、金正恩にはアクセルとブレーキを原則性と柔軟性に基づいて踏み分ける意思と能力がそもそもあったのかもしれないが)。

その1つの結晶が“中途半端な形”で発表された共同声明である。

特に、「北朝鮮の完全で検証可能、不可逆的な非核化」ではなく、「朝鮮半島の完全な非核化」という文言は中国の国益に全く符合するものである。

中国にとっては、北朝鮮だけでなく、韓国における米国の“核の脅威”が撤去されて初めて、自らの戦略が達成されたといえるからだ。習近平・金正恩会談の開催、およびトランプ・金正恩会談の分析双方に直接関わった党中央対外政策関係者はこう述べる。

「米国は不可逆的で検証可能な非核化を、北朝鮮は非核化と制裁解除の同時進行を主張している。両者の妥協点として、段階的かつ検証可能な非核化、それと同時進行で、徐々に制裁を解除していくというものになると我々は見込んでいるし、それを望んでいる」

トランプ大統領が、米朝間で非核化に向けた交渉が続いている間は米韓合同軍事演習を中止することに理解を示したことも、中国の戦略に符合するといえる。「北朝鮮が核実験を停止し、米韓も軍事演習問題で自制的になっている。これは事実上中国側が提起してきた“双暫停”というイニシアチブを実現したことにほかならない」(6月13日、中国外交部耿爽報道官、同部定例記者会見)。

本稿は中国の見積もりを検証することに焦点を当てているため多くは書かないが、筆者から見て、金正恩が今回対米関係の改善に乗り出した最大の動機の1つが米中関係の悪化である。金正恩は米中摩擦に戦略的契機と外交的空間を見いだし、それを利用しながら、中国機でシンガポールに飛び米国大統領との会談に臨んだのだと筆者は見ている。

「北朝鮮化」する中国・習近平政権を北朝鮮の金正恩は信用した!?

そして、最後の3点目である。

北京で開催された中朝首脳会談後に書いた『習近平が訪中した金正恩を破格に手厚く歓迎した理由』でも触れたが、今回の米朝首脳会談に至る一連の流れや動きには、中国の内政的な動向や要素が底流部分で影響している。

筆者が見る限り、仮に北朝鮮指導部が百戦錬磨であったとしても、いまだ34歳と若い金正恩率いる同国が、中国(そして補足的・側面的にロシア)という後ろ盾なくして、韓国と米国というこれまで敵対してきた軍事同盟に挑んでいくことなど到底できなかったであろう。前述したように、米中関係の悪化に金正恩が契機を見いだしたことは関係しているが、それだけで金正恩は中国、そして習近平を信用したであろうか。

筆者は金正恩率いる北朝鮮が習近平率いる中国を信用し、後ろ盾にするに至った内政的要素が(議論を可視化し、分かりやすくするためにあえて乱暴な表現を使うが)“中国の北朝鮮化”である。

本連載でも度々扱ってきたように、2期目に突入した習近平政権は「党がすべてを領導する」という方針の下、社会主義やマルクス主義といったイデオロギーを至るところで掲げ、政治的に異なる立場や意見を一切許さず、言論や報道、教育や社会に対する締め付けを一層強化し、国内企業・外国企業、中国人・外国人を問わず、すべての市場・世論でのプレーヤーに共産党の立場を尊重し、忠誠を誓わせる政策を取っている。

「そんな習近平に金正恩が見出したのは安心感という感情に違いない」

長年共産党のプロパガンダ政策に関わってきた共産党のある長老はこのように語る。

金正恩は習近平が自国の政治を北朝鮮のように“発展”させつつ、経済的には貧困の撲滅や民生の改善という、党が絶対的権力を擁する状況下でも推進できる分野に特化して政策運営をしているやり方に、安堵を覚えたに違いないと筆者も捉えている。習近平も、金正恩が政治的には絶対的権力を行使しつつ、経済的には部分的改革と開放を徐々に推し進めていくことを支持するであろう。

(国際コラムニスト 加藤嘉一)

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『「北朝鮮は非核化で譲歩しなかった」は間違い 焦点は米朝の「和解」だった』(6/18日経ビジネスオンライン 森永輔)について

6/20西村眞悟の時事通信<我らの使命は、北朝鮮と中共の独裁体制が崩壊するのを見ることである>北と中共の独裁体制が崩壊するのは大賛成です。でも、真の敵は中国ですので、北を味方につけて攻める手も「あり」と思います。サウジも秘密警察の強い独裁国家ですが、米国は石油とオイルダラーの為に、それを黙認し、同盟しています。小生も北の国民が死の恐怖におびえながら暮らすより、民主化され自由な社会に生きた方が良いと思いますが、先ず隣国を民主化しない限り、中国が北に攻め上げて来るでしょう。中共を打倒するまでは致し方ないと思います。

http://www.n-shingo.com/jiji/?page=1435

6/21阿波罗新闻网<美议员提议案 呼吁摒弃一中并承认台湾=米国議員(ローラバッカー下院議員、カリフォルニア選出、共和党)は議案を提出 一中政策を止め台湾を承認する呼びかけ>議員は20日、議会に議案を提出し、「米国は台湾と外交関係を回復するプロセスを始め、米国政府の数十年に亘る“一中政策”を止めるべき」と。「“一中政策”には瑕疵があり、“一中一台”に改め、台湾を主権国家として承認すべき。米国政府は台湾を全面的に支持し、国家として国連組織全部に参加させ得るようにすべき。米国が国家承認をしていないのは成熟した民主国家としての台湾以外はシリア、イラン、北朝鮮、ブータンの4ケ国」とも。

いよいよ議会も台湾を国家承認、中共切捨ての方向で動き出したのでは。蔡英文総統がトランプ大統領との電話会談、米海軍艦艇寄港検討や要人の交流可とした事など、中共を正面の敵と認識し、米・日・台で対抗しようとしているのでは。

http://www.aboluowang.com/2018/0621/1132596.html

6/21看中国<金正恩玩弄两手策略 朝媒狠戳川金会(图)=金正恩は両天秤の策 北のメデイアは米朝首脳会談を思い切って後押しする>北京の外交関係筋は「金の三度目の訪中は①中国の朝鮮半島における不関与の懸念にバランスを取ること②トランプに核問題での進め方に注意を与える」と分析。北のメデイアは「金は習に対し、“朝中は家族と同じで、苦楽を共にし、お互いに関心と支持を寄せ、世界に向けて手を携えて朝中関係は既に伝統的な関係を超越し、歴史上前例のない特殊な関係に発展した”と述べた」と。もう一点注目すべきは「金は未来の朝鮮半島の発展に於いて中国の官員の協力があれば真の和平が保てる」と。トランプは金が習に面子を与えるのは面白くない。外交筋は「金が北京に近づくのは、ある種米国にヒントを与えているのである。(米国は中国を説得しないとの意?)この両天秤は至れり尽くせりとも言える」と。

まあ、金の本心が奈辺にあるかは神のみぞ知るでしょうけど。両大国を相手に振り回すだけの力量があることは大したものとも言えますが、日清戦争前夜の朝鮮の大院君、閔妃、高宗の事大主義でシナ、日本、ロシアに付いたり離れたりの例を思い起こせば、危ない綱渡りとも言えます。それもこれも米国の優柔不断、日本の無関心が招いた北の核保有国としての地位があればこそです。本当に核放棄するのかどうかです。

https://www.secretchina.com/news/gb/2018/06/21/862279.html

本記事の宮本氏の意見は、米朝首脳会談を肯定的に捉えています。本ブログでも何人かの意見を紹介しましたが、批判的に見る人の方が多かった印象です。小生は重村氏や宮本氏の言うように米国は譲歩していないし、いつでも戦争できる態勢にあるし、(安倍首相がトランプにアドバイスしたとも言われる)文書化もできました。細かい所が書かれていないのは、やはり金を助けるためでしょう。下手にストレートに書けばクーデターが起きる可能性があります。米国としてもここまで交渉してきて、海のものとも山のものとも分からない未来のクーデター政権と交渉するより良いとの判断と思います。

宮本氏も「中国は隣の国が共産主義国でなくなることを恐れている」と思っているようです。

記事

史上初の米朝首脳会談が6月12日に開催された。「非核化」の具体策と期限が示されなかった点に批判の声が上がる。だが、北朝鮮外交・政治・軍事の研究者、宮本悟・聖学院大学教授は「焦点は『和解』にあった」と見る。そして「金正恩委員長は非核化を目指す」(同)

(聞き手 森 永輔)

この笑顔は米国との和解を達成した喜びを表すのか、非核化で譲歩しなかったことの達成感をしめすのか(写真:AFP/アフロ)

—6月12日、史上初の米朝首脳会談が開催されました。注目されたのは、どんな点ですか。

宮本:第1に、北朝鮮が「完全な非核化」を米朝首脳会談で受け入れたことです。4月27日に行われた南北首脳会談の「板門店宣言」に記されている通りの内容です。これは北朝鮮が譲歩したことを意味します。

宮本悟(みやもと・さとる)
聖学院大学 政治経済学部 教授 1970年生まれ。同志社大学法学部卒。ソウル大学政治学 科修士課程修了〔政治学修士号〕。神戸大学法学研究科博士後期課程修了〔博士号(政治学)〕。日本国際問題研究所研究員、聖学院大学総合研究所准教授を経て、現在、聖学院大学政治経済学部教授。専攻は国際政治学、政軍関係論、比較政治学、朝鮮半島研究。著書に『北朝鮮ではなぜ軍事クーデターが起きないのか?:政軍関係論で読み解く軍隊統制と対外軍事支援』(潮書房光人社)など。(撮影:加藤 康)

—「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)が共同声明に盛り込まれなかったことから、「北朝鮮は非核化で譲歩することがなかった」とする見方が多くあります。

宮本:私は異なる見方をしています。まず北朝鮮は6カ国協議の際にCVIDを否定していました。なのでCVIDの「C」すなわち「完全な」が入った分、北朝鮮は譲歩したと見るべきです。

もちろん「完全な」が意味するものが明確でないことは否めません。しかし、その点を責めるべきではないでしょう。そもそもCVID自体が曖昧なもので、同じ状態でも、北朝鮮に対して「まだCVIDになっていない」とも、「すでにCVIDである」とも言うことができるものです。極端に言えば、米国がこれはCVIDだと言えばCVIDになるのです。

それに、今回は「首脳」会談です。和解し、非核化の大きな目標を示すことがその目的でした。「非核化」の定義が明確でないとの批判は的外れな気がします。よって「米国は負けた」「北朝鮮ペースで交渉が進んだ」と見るのは適切でないと思います。

—「和解」の重要性に注目していますね。

宮本:はい。米国の見方は、非核化したら和解できるというものでした。しかし北朝鮮は「和解できたら非核化する」と考えている。そもそも、朝鮮戦争を発端とする米国との対立があるから北朝鮮は核開発を始めたのです。今回は、米国がこの北朝鮮の考えを受け入れて首脳会談に臨んだのだと思います。

つまり、米朝が対立をやめ、和解と非核化のスタートラインに立つことが首脳会談の目的だった。この目的は一応達成できたのではないかと評価します。

米国側で、この北朝鮮の考えを理解したのがマイク・ポンペオ国務長官だったと思います。

—国務長官がレックス・ティラーソン氏からポンペオ氏に交代したのは、米朝首脳会談を開くという点においてはグッドニュースだったわけですね。ポンペオ氏が理解しているのはどこから分かるのですか。

宮本:5月13日に、「北朝鮮が核兵器を放棄する戦略的選択を行なえば、米国は北朝鮮に安全保障を提供する用意がある」と発言していました。

北朝鮮がシンガポールでの会談に応じたのも譲歩です。元々はピョンヤンで開くことが北朝鮮側の希望でした。しかし、そうなれば北朝鮮の国民が「米国が謝罪に来た」と解釈する可能性があるでしょう。この案はドナルド・トランプ米大統領が拒否しました。

宮本:次に浮上した板門店もホワイトハウスが受け入れなかった。韓国の影響を強く受けることが望ましくないと考えたようです。

シンガポールは空路で移動する必要があります。北朝鮮においては神にも等しい存在である金委員長を危険な目に遭わせることは国家の尊厳に関わることでしょう。それに、北朝鮮の航空機は老朽化しているため、戸惑いがあったはずです。結果的には中国国際航空を利用することで解決させました。

2月15日から3月5日の間に「非核化」を決断

—北朝鮮はこれまで米国からの脅威に「核」で対抗する道を歩んできました。これを、「和解」することで米国の脅威をなくす方針に転換したわけですね。なぜでしょう。

宮本:核兵器開発や核抑止体制を維持するにはコストがかかります。「和解」して非核化すればそれが必要なくなり、核兵器開発に対する経済制裁も解除されます。

また、北朝鮮は、中東やアフリカなど第三世界との交流を進めています。テロ支援国家の指定や制裁によって国家イメージが悪化するのをよしとしていません。

—米国に対する方針転換を図ったのはいつだったのでしょう。

宮本:1月1日から3月5日の間のどこかだったと考えます。そして、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領の説得が金委員長の背中を押した。

1月1日に新年の辞を発表した時点では、まだ米国に対して強硬姿勢でした。核のボタンは執務机の上に置かれている、としていた。いっぽう3月5日には、金委員長と会談した韓国の特使がその足で訪米し、米朝首脳会談をしたいという金委員長の意向をトランプ大統領に伝えています。

2月9日に金委員長の妹である金与正(キム・ヨジョン)氏と金永南(キム・ヨンナム)最高人民会議常任委員長が平昌(ピョンチャン)五輪に出席するため訪韓し、大統領府を訪れました。文大統領が米朝会談を進めることを提案しましたが、北朝鮮側は反応を示しませんでした。

しかし2月25日、今度は金英哲(キム・ヨンチョル)党副委員長が訪韓し、文大統領に「米朝会談をする用意がある」と伝えました。

—この時点で「和解」へのかじを切った。

宮本:そうかもしれません。党の高官がこのように発言したことの意義は大きいでしょう。しかし、核問題について米国と協議することは許されていませんでした。

北朝鮮は2013年3月に開いた党中央委員会全員会議の場で、核問題を協議の対象としてはならないと定めていたからです。この全員会議は、核開発と経済再建を並行して進める「並進路線」を定めた会議として知られているものです。

同会議は次のように宣言しました。「先軍朝鮮の核兵器は決してアメリカのドルと換えようとする商品ではなく、我々の武装解除を狙う対話の場と交渉卓上に載せて議論する政治的交渉物や経済取引物ではない」

つまり、この2月25日から3月5日までの間に、この宣言を取り下げる大きな決断をしたのではないかと思います。これは大転換です。党中央委員会全員会議の開催なしで、党の方針を変えられるのは、当然、金委員長しかいません。

—平昌五輪を皮切りに南北が接触する過程で、文大統領が金委員長を説得したわけですね。ただ、文大統領が説得しても、金委員長がすぐに受け入れるとは考えられません。北朝鮮の側に文大統領の説得を受け入れる下地があったのでしょうか。

宮本:そう思います。金委員長はかつて「脅威がなくなり、安全が確保されるなら、苦労して核を開発する必要はない」と語っていました。「苦労して」と言っているところから、核開発にかかる資金面の負担が財政を悪化させていたことが読み取れます。

—冷戦末期のソ連と同じですね。軍拡の負担が重くなっていた。

宮本:そう思います。

「体制の保証」も定義されていない

—北朝鮮は非核化の具体策を示していないのに米国は北朝鮮の「安全の保証(security guarantee)」をしたという批判も多いですね。

宮本:実は、北朝鮮が求める「安全の保証」の定義も「完全な非核化」と同様に具体的ではありません。具体性がない点ではイーブンではないでしょうか。

(撮影:加藤 康)

トランプ大統領が「米韓合同軍事演習を当面行なわない」と示唆したのは米国の譲歩だと見る向きもあります。これに対して北朝鮮は「米国はいつでも容易に再開できる」と評価しているでしょう。反対に、北朝鮮が核実験場とミサイル実験場を破棄しても非核化にあまり意味がないと評価する向きが米国で多いですね。

トランプ大統領の発言は北朝鮮の安全を保証する意思があることを示すシグナルではあっても、保証そのものではありません。同様に、北朝鮮が核実験場とミサイル実験場を破棄したのも非核化の意思を示すシグナルであっても、非核化そのものではありません。今は、米国も北朝鮮もお互いに、意思を示すシグナルを出している状態であって、お互いに何も相手に与えていないのです。

繰り返しになりますが、今回の米朝首脳会談は両国の首脳が仲直りの握手をしたことに意義があるのです。そして、非核化と北朝鮮の安全に関する大きな方針を掲げたわけです。

—トップダウンで方針を決めて、詳細は実務者に任せる。これがトランプ流でしょうか。

宮本:そうは思いません。大きな外交交渉ではよくあることです。先の南北首脳会談もそうでしょう。具体的な話は、今後予定されている実務者協議が進むのを待って評価するべき。

イランと北朝鮮が異なる理由

—実務者協議は期待できるでしょうか。

宮本:進展させるためには米国が現実的な人物を交渉担当者に据える必要があります。核の平和利用にまで制限を課すようだと、北朝鮮は決して受け入れないと思います。1994年に米朝が枠組み合意に達した時も、北朝鮮の平和利用の核は認めました。北朝鮮は慢性的な電力不足に苦しんでいます。国内にウラン鉱を保有しているので原子力発電を切望しているのです。

—米国は5月8日、イラン核合意から離脱することを決めました(関連記事「米国の『原則ある現実主義』が導く核なき中東」)。この合意は、医療用途などウランの平和利用をイランに認めるものでした。

米国のその核合意から離脱した。このことは米朝首脳会談における北朝鮮の態度に何か影響を与えたでしょうか。

宮本:恐らくなかったでしょう。「米国は約束を守らない国だ」という印象を北朝鮮に与えたなら、北朝鮮は首脳会談を進めなかったと思います。

またイランと北朝鮮では置かれた環境がかなり異なります。トランプ大統領が離脱を決めた理由の一つに、バラク・オバマ前大統領が達成したレガシーを否定する意図があります。イラン核合意しかり、TPP(環太平洋経済連携協定)しかりです。一方、北朝鮮の核問題には、オバマ政権は手を着けませんでした。だから、オバマ前大統領のレガシーを否定するには、北朝鮮の非核化に何か手を着ければよいのです。

—米国がイラン核合意から離脱した背景には、イスラエルの安全を守る意図もありそうですね。

宮本:そう思います。米朝首脳会談が実現した背景に、米国の同盟国であるイスラエルが反イランであるのに対して、同じく同盟国である韓国の文政権が親北朝鮮にかじを切った点も影響したでしょう。

懸念は、米朝の国内にいる反対勢力の存在

—実務者協議を成功に導く要素と、破綻につながる要因を一つずつ挙げていただけますか。

宮本:成功に導く要素は、金委員長が非核化を実現する意思を固めていること。和解が順調に進めば、核開発の全貌を明らかにするところまでは少なくともいくと思います。現在は、核弾頭が何発存在するのか、それは高濃縮ウランを使ったものも含まれているのか、プルトニウムを使ったものだけなのか、まったく分かっていません。

加えて、朝鮮労働党は4月20日に中央委員会全員会議を開いて、並進路線を集結し、経済建設に集中する意向を発表しました。北朝鮮が路線の終結を明らかにするのは極めて異例です。ここにも金委員長の決意が表れていると言えるでしょう。

一方、ネガティブな要素は米朝双方にある政治的雑音、つまり反対勢力の存在です。

核兵器を開発している研究チームや、その管理を担当する戦略軍が簡単に納得するとは考えられません。

北朝鮮の閣僚の中にも「米国は信用できない」と考える人がいます。閣僚ではありませんが、第1外務次官を務める金桂寛(キム・ゲグァン)氏が5月16日、ジョン・ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)を「えせ憂国の志士」と罵倒したのは、金第1外務次官が米国の意図に疑いを持っていたからかもしれません。同氏が本来、米国と交渉してきた外交官であることを考えると、彼自身がそう考えたのではなく、反対派の突き上げに遭い、言わせられたことも考えられます。

さらに、朝鮮労働党の機関誌である『労働新聞』も和解に反対する個人論評を掲載していました。トランプ大統領が米朝首脳会談を中止する意向を表明し、金第1外務次官が再考を促す談話を発表した翌日の5月26日のことです。「帝国主義の侵略的本性は絶対に変わらない。死ぬ時まで他国と他民族に対する侵略と略奪をこととするのが帝国主義者の生存方式であり、本業である。帝国主義、特に米帝に幻想を抱いて、それからの『恩恵』を期待するのは革命的原則を譲歩し、反帝・反米闘争から退く卑屈な行動である」との記事を掲載しました。

記事は少なくとも党組織の検閲を通らないと掲載できないことを考えると、執筆者だけでなく同じ考えの人々が朝鮮労働党内に存在することが分かります。

こうした反対勢力が今後、例えば、査察対象とする施設のリストを作成する際に、その一部を故意に省くことがあるかもしれません。それが明らかになれば、米国は北朝鮮が国ぐるみで行った隠蔽工作と疑うでしょう。実務者協議が停滞することになりかねません。

—米朝首脳会談を直前に控えた6月3日、北朝鮮は軍の幹部3人を解任しました。彼らも反対派だったのでしょうか。

宮本:それは分かりません。

—首脳会談で1対1の話し合いを終えた後、金委員長は「誤った偏見と慣行が時に目と耳をふさいできたが、あらゆることを乗り越えてこの場にたどり着いた」と発言しました。これは反対派による抵抗を意味していたのでしょうか。

宮本:はい、そう理解しています。米国に対する偏見によって誤った判断を金委員長に報告したり、金委員長自身も米国に対する悪イメージから判断を誤ったことがあるでしょう。

金英哲とポンペオが米朝首脳会談の舞台を回した

—米朝首脳会談の出席者から読み取れることはありますか。

宮本:米朝首脳会談に北朝鮮側は外交の大物をそろえました。首脳二人だけの会議に続いて開催された拡大会議に参加したのは、金委員長に加えて、李洙墉(リ・スヨン)氏、李容浩(リ・ヨンホ)氏、金英哲氏でした。李洙墉氏は朝鮮労働党副委員長兼国際部長、李容浩氏は外務大臣です。

金英哲氏は朝鮮労働党副委員長兼統一戦線部長なので、対米外交とは本来関係ないのですが、ポンペオ氏がCIA(米中央情報局)長官として訪朝した時に、諜報部門の代表としてカウンターパートになったものと考えられます。それ以来、金英哲氏とポンペオ氏の交渉ラインが、米朝首脳会談にこぎつけました。

妹の金与正氏は3月末の中朝首脳会談には参加しなかったので、最高指導者の肉親の安全を図るため外されたと思っていましたが、南北首脳会談の後はずっと金委員長についていますね。しかし、重要な会議に参加したのは南北首脳会談だけですから、重要な役割があるわけではなさそうです。本人が希望してついてきているとしか思えません。

北朝鮮は中国への警戒を解いていない

—中国について伺います。今回の米朝首脳会談に中国は何かしらの影響を及ぼしたのでしょうか。もしくは、北朝鮮が有利な立場を築くため、中国の存在を利用したことはありますか。

宮本:中国が米朝首脳会談を成功させたかったのは明らかです。米国が米朝首脳会談を中止する意向を表明した時、中国共産党系の環球時報はこれ以上ないくらいに批判していました。

—北朝鮮が核開発を続け、米国と対立していた方が、中国にとっては好ましい。北朝鮮に対して影響力を行使できるから、という考えがあります。

宮本:私は違うと思います。北朝鮮が非核化を進め、朝鮮半島の緊張が緩和されることこそが中国の利益と考えているのです。対立が高じたり、戦争が起きたりすると、中国が開発に力を入れている中国東北部や山東省の経済に悪影響が生じるからです。首都・北京だって、わずかの距離しか離れていませんから影響を受けます。

そのために、金委員長がシンガポールに移動するための飛行機を提供したり、事前に中朝首脳会談を2回も行なったりしているのです。安定を得るためのコストとして米朝首脳会談を受け入れたわけです。

中朝の関係を振り返えると、ある傾向が見て取れます。南北関係や米朝関係が宥和に進む時ほど中朝の往来も活発化しているのです。例えば、2000年に中朝首脳会談が行なわれました。これは、南北首脳会談が開かれる直前のことでした。北朝鮮は、米国や韓国との話し合いの時にこそ、中国の後ろ盾を必要とするのです。

南北関係や米朝関係が悪化した時に、北朝鮮が中国を頼る――と考えるのは朝鮮戦争の時に中国が義勇軍を派遣して北朝鮮を支援した時のイメージが記憶に残っているからでしょう。その時とは既に構図が変わっています。

それに、考えてみてください。中国軍を北朝鮮国内に入れて、裏切られたらどうなるでしょう。そんな恐ろしいことを北朝鮮はしたくないと考えます。北朝鮮が軍事面で中国を頼るのは非常に考えにくいことです。

中国が安全を維持するため、バッファーとして北朝鮮を必要としている――という考えはもう古いでしょう。今はどこからでもミサイルが飛んでくる時代ですから。それよりも中国が発展する邪魔はしてくれるな、暴れてくれるな、というのが中国の考えでしょう。

—昨年の春、米国が北朝鮮を軍事攻撃するのではと緊張が高まっている時、「中国が人民解放軍を北朝鮮に進駐させて守るのでは」との見方が浮上しました。米軍は、誤って中国軍を攻撃すれば一大事になるので北朝鮮への攻撃を踏みとどまる、という発想です。

宮本:そういう話もありましたね。しかし、逆の説もありました。人民解放軍が北朝鮮に入って武力をもって政権交代を進める、と。もちろん、どちらも滑稽な話です。

—仮に将来、統一コリアができるとして、これが韓国主導であっても中国は容認するでしょうか。

宮本:統一そのものは問題視しないと思います。それよりも、北朝鮮という一党独裁制の仲間が一つ減ることの方が嫌でしょう。

中国にとっては、統一コリアが敵対的になったり、朝鮮半島が内戦になって混乱したりしなければ、それでよいのです。

ただ、南北のどちらかがどちらかを吸収合併する事態になれば、内戦が発生するかもしれません。

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『中国・トラック運転手3000万人がスト敢行?退路を断って決死の抗議行動に打って出たワケ』(6/15日経ビジネスオンライン 北村豊)について

6/19日経朝刊<中国の経済統計に不自然な動き… 「水増し」ひそかに修正?

【北京=原田逸策】中国の経済統計に異変が相次いでいる。地方の水増しだけでなく、国の統計にも不自然な数値がみられる。経済減速のサインなのだろうか。景気の先行きに目をこらす必要がありそうだ。

2018年1月に国の国内総生産(GDP)にあたる域内総生産の水増しを公表した天津市。18年1~3月の実質成長率は1.9%と、全国31の省・自治区・直轄市で最低だった。19年から地方の域内総生産の作成も国が主導する。不正が後で発覚すれば厳罰となるため、天津は正直な数字を出したのだろう。

全国31地区をみると、吉林、雲南、青海、河北、内モンゴルの5地区は実質成長率が名目成長率を上回った。吉林や内モンゴルは名目成長率がマイナス。物価が上昇しているのに不自然だ。

恐らく真相はこうだ。18年から実態に近い域内総生産を出し始めたが、17年までの水増しした数値は維持したまま。だから名目の成長率が実質を下回る。ひそかに水増しを正しているようだ。

1~3月の実質成長率が国(6.8%)を上回ったのは、31地区のうち18地区と過去10年間で最少。かつては全体の9割の地区が国を上回っていた。

域内総生産の「季節性」も薄れる。以前は31地区合計の域内総生産と国のGDPを比べると、1~3月は国を下回り、4~6月と7~9月はやや上回り、10~12月は10%超上回った。これが17年10~12月は国を5%しか上回らず、18年1~3月は国とほぼ同じだ。毎年の成長目標を達成するための「背伸び」をやめた可能性がある。

異変は国の統計にもある。国家統計局が毎月公表する小売売上高(社会消費品小売総額)。実額と前年同月比の名目伸び率を公表するが、18年から統計局が公表する伸び率と前年の額から計算した伸び率がずれる。統計局は「農業調査をもとに17年の値を修正した」と高い伸びを説明する。

製造業などの企業利益は18年1~4月の累計で前年同期比15%増の2.1兆元(約36兆円)。だが、17年1~4月の利益(2.3兆元)から計算すると6.6%の減少だ。統計局は「調査対象は毎年異なる」とする。

12年1月まで遡って計算すると、計算値と公表値の動きはほぼ一致してきた。差が開いたのは17年秋から。「水増し修正で一部の地方が国に報告する企業利益が大幅に減った」との指摘がある。固定資産投資の伸び率も同じことが起きた。

中国の統計は経済が不調になると実態や実感とずれやすい。「人民元ショック」が起きた15年は貿易やが落ちたのに成長率が安定していた。相次ぐ統計の異変は経済の下押し圧力の高まりを映している可能性がある。信頼できない統計から中国経済の実態をどうとらえるか。古くて新しい問題が突きつけられた。>(以上)

数字の誤魔化しの修正は高度のテクニックが要ります。何せ今までの発表数字を睨みながら数字をいじらないと辻褄が合わなくなりますので。まあ、彼らは「没関係」なのでしょうけど。

6/19看中国<在日本干过这种事的人 明年起将被拒绝入境!(组图)=日本でかかった医療費を払わなかった人は来年から日本に入国できなくなる!>こんなことは当り前の話なのに厚労省の役人は「外国人にも人権がある」といって規制を渋ってきました。外国人に人権があるのは当り前ではないですか。要は支払いを怠った人を人権といって保護する構図になっているのに、放置して来たという事です。あり得ません。そんなことを言えば借金し放題ではないですか。我々日本人ですら保険証を受診前に提出するというのに。この記事にあるように海外旅行者は海外渡航保険に入るべきで、中国人はその証明がない限り入国させないようにしないと。ビザを要求する国があるのだから、差別でも何でもなく、そう言うことをする不埒な人間が多いと説明すれば済むこと。或は担保を差し出せるかどうか。でもそんな金持ちばかりではありません。この記事の中では、中国人父母が日本を旅行中、心臓発作を起こし、救急に運ばれ、入院、分割払いで払うことにしたが、帰国してすぐ親父が死んで、債務が大きく息子は払えないと言って払わないのもいます。中国では人命第一の措置はとるはずもなく、金が無ければ受診できません。日本に来て高額医療を受けて帰るのもいます。海外旅行者を増やすことばかりに目が言って、大きな安全(日本の富のロスも含めて)についての検討がお留守になっていたという事です。日本で中国人に受診だけでなく、帰化の仕方などをいろいろ教える輩もいます。違法行為幇助の罪で逮捕してほしい。なお、中国人の医療費未払い者の入国禁止でお茶を濁していますが、偽パスポートを発行できる国ですから、偽名で入国できます。入国時に顔認識でマッチさせないと駄目でしょう。それでも根本的対策ではありません。やはり保険付保者以外は入国できないようにしないと。

北村氏の記事は少しずつ中国でもストライキができるようになってきたということです。デモは官製デモ、ストは違法で禁止ですから。何せ生産優先の国で人命が犠牲になろうと政府はお構いなしです。それが公害を発生させ、空気、水、土地を汚染してきました。こんな国が世界を指導するなんて思うことが、ずれているとしか思えません。しかし、ストに参加したトラック運転手は過酷な処分が待っているのか、それとも人手不足だからそのままにして、運賃を上げるよう行政指導して解決するのかどうかです。

記事

中国でトラック運転手による全国規模のストライキが行われた

南米最大の経済を誇るブラジルでは5月21日から連続で10日間にわたるトラック運転手によるストライキが行われた。これは世界的な原油価格の高騰とブラジル通貨「レアル(BRL)」安により燃料価格、特にトラックの燃料となるディーゼルオイルの価格が値上がりしたことが原因であった。ディーゼルオイルの値上がりによりトラック運転手が生活苦に直面したことから、彼らを束ねるトラック運転手協会が燃料価格の引き下げを求めてストライキに突入したのだった。

トラック運転手による長期ストは物流を滞らせ、各地の工場を生産停止に追い込み、庶民の生活に深刻な影響を与え、ブラジル経済に大きな損害を与えて、経済成長率の引き下げを余儀なくさせた。

さて、中国でも6月10日にトラック運転手による全国規模のストライキが呼びかけられた。これは燃料価格の高騰、各種各様な通行税、各地の交通警察や運輸管理部門による過酷な搾取に堪え兼ねたトラック運転手が全国の仲間を結集する形で抗議行動に打って出たものだった。

メディアやインターネット上の情報によれば、6月8日に重慶市、江西省“修水市”、安徽省“合肥市”、山東省“聊城市”、貴州省“銅仁市”などでは6月10日の本番に先行する形でストライキが始まり、多数のトラックが高速道路、国道、駐車場などに集結して燃料価格の値下げと運賃の値上げを要求すると同時に、トラックに対する交通警察や運輸管理部門による勝手気ままな罰金徴収などの不公平な処遇を止めるよう呼びかけた。

6月8日、四川省“成都市”ではSNSの“微信(WeChat)”を通じて、トラック運転手に対して次のような呼びかけが行われた。

トラック運転手諸兄

成都市では6月10日に全ての営業貨物トラックがゼネラルストライキを行います。これと同時に、全ての営業貨物トラックが成都市へ物品を運び入れる、成都市から物品を運び出すことが禁止されます。その時、成都市の外環状道路には人を派遣して巡回調査を行い、営業貨物トラックを見つければ一律に戻るよう説得しますが、頑迷で逆らう場合は車両を叩き壊します。反抗者がいればその場で決着を付け、成都市の何万人ものトラック運転手がその責任を負います。全国のトラック運転手たちよ、この事を心に留めて協力願います。
成都協会

上記の呼びかけは成都協会の名義で行われたが、成都協会とはいかなる協会なのかは分からない。恐らく成都市のトラック運転手が団結して設立したものと思われるが、無認可の組織であり、誰が責任者であるのかも不明である。同様の呼びかけは全国各地で行われたと思われるが、ネットの記事で確認できるのは上記の成都協会の呼びかけだけである。

この成都市の呼びかけと呼応するように、“微信”の“朋友圏(モーメンツ)”には“中国政府大卡車十宗罪?(中国政府のトラックに関する10の罪を問う)”と題する文章が投稿された。その内容は以下の通り。

成都協会の呼びかけに呼応

中国政府のトラックに関わる10の罪。関係部門は我々の質問に回答願いたい。

第1問:トラックの場合、“行駛証(車検証)”の有効期限が15年だが、どうして今、我々のトラックを“黄標車(高濃度の汚染を排出する車)”に変更して、廃車するよう要求するのか。この結果として10万台から50万台のトラックが1万台まで減少することになる。そうなったら、我々はどうやって生きて行けばよいのか。

第2問:“道路運輸管理局”の規定では55トンまでは積載重量超過にならないのに、これが交通警察になると49トン以上は積載重量超過になる。どうして統一しないのか。

第3問:ある地点では積載荷重の限度がない無蓋トラックにも積載荷重超過の輸送許可証を手続きしなければならないのはなぜか。

第4問:車両検査の時、検査をしているのは交通警察官か警察協力員か、一体どちらか。警察協力員なら彼らに処罰する権利はあるのか。彼らは法執行に当たって先に法執行を証明する書類を提示すべきではないのか。

第5問:“黒銭(賄賂)”を受け取るのは交通警察官か、あるいは警察協力員か、はたまた「なりすまし」か。こうした賄賂の受け取りはいつになったらなくなるのか。

第6問:どうして1台の車が交通警察と道路運輸管理局という二つの部門から処罰を受けることがあるのか。

第7問:交通警察の罰金徴収任務は一体だれが決めたものなのか。これは罰金を徴収することが目的で、積載荷重超過を罰することを目的としていない。いつになったら合理的な規則案が出てくるのか。

第8問:罰金を徴収しながら領収書を切らない。領収書を切れば、免許の点数を減点する。これは法執行なのか、強奪なのか。

第9問:車両に問題がなければ、欠点を探し、欠点を無理やり作り出す。この種のあら探し式の法執行を受ける我々はどうやって生活したらよいのか。

第10問:全国の高速道路は損失が出るとすぐに高速料金を値上げする。損失を我々に転嫁するだけで、どうして自分たち自身の原因を探そうとしないのか。路面品質はどうしてあんなに悪いのか。道路の使用年限は10年なのに、その10年の間に度々道路を修復し、補修する。そのつけをどうして我々運輸業者に払わせようとするのか。

我々が故郷を離れたのは同じ目標のためだ。それは、生活し、生存するためである。だから我々は団結して全社会に我々の存在を知らしめねばならない。もしこの文章の転送が100万回に及んでも、関係部門が我々に注意を向けないなら、我々は彼らに我々の声を聞かせなければならないのだ。

全国のトラック運転手はこうした表明を行うことで、退路を断って一致団結して協調行動を取るべく、各地のトラック運転手組織が連盟を結成し、全国規模のストライキを6月10日に実施することを決定したのだった。そして、次のような檄文が微信に投稿された。

通知:全国のトラック運転手へ宛てた手紙

6月10日は全国のトラックの運行停止日です。もし、当日にトラックが運行を停止せず路上を走行していたら、どのトラック運転手でも構わないから、車をぶつけてください。これは前もって通知済みのことであり、人の意見を聞かない独断専行の者はトラック運転手には相応しくないのです。今回はトラック運転手の団結力を証明しなければなりません。つらい労働をし、不当な待遇を受けているトラック運転手の友人たちよ、我々はすでに我慢の限界を超えたのです。もはや退路はないのです。どうか皆さんの手を動かしてこの文章を転送してください。成敗はこの一事にあります。

6月10日に仕事を停止しても飢え死にすることはありませんが、廉価な運賃は我々を飢え死にさせます。我々は大きな犠牲を払ってトラックを買い、命を懸けてカネを稼ぎ、長年他郷に暮らして家を思い、子供を思っています。

それは少しでも多くのカネを稼ぐためです。この安い運賃と高い燃料価格を見て下さい。これなら故郷の家にいて心安らかに田畑を耕すに越したことはありません。それなら元手が出て行くこともなし、危険もありません。再度繰り返しますが、皆さん手を動かして本文章を転送してください。2018年6月10日は全国のトラック運転手の仲間が仕事を停止する日です。我々、3000万人のトラック運転手が一致団結していることを見せてやりましょう。6月10日、6月10日です。

上記の檄文には「3000万人のトラック運転手」と書かれているが、実際はどうなのか。中国政府“公安部”の“交通管理局”が2018年1月15日に発表した統計によれば、中国の自動車保有台数は3.1億台で、免許証保有者数は3.85億人となっている。“載貨汽車(トラック)”の保有台数は2341万台、このうち新規登録台数は310万台で、史上最高を記録したとある。

統計上でトラックは、“薇型”(長さ3.5m以下、車両重量1800kg以下)、“軽型”(長さ6m以下、車両重量4500kg以下)、“中型”(長さ6m以上、あるいは車両重量4500kg以上12000kg未満)、“重型”(車両重量12000kg以上)の4つに分類されているが、一般にトラック運転手と呼ばれる人たちが運転するのは薇型と軽型を除く、中型、重型だろう。

この点に関し、中国メディアは「政府統計によれば、中国の現在のトラック保有台数は1500万台であり、一般に1台毎に少なくとも2人の運転手がいるとして計算すると、全国には少なくとも3000万人のトラック運転手がいる計算になる」と報じている。したがって、トラックの保有台数2341万台から薇型と軽型の台数を除いた“中型”と“重型”の台数が1500万台ということになるものと思われる。

中国の高速道路は日本の15倍の長さ

一方、中国政府“国家統計局”発表の『2017年国民経済・社会発展統計公報』によれば、2017年の貨物輸送総量は479.4億トンで、その内訳は、鉄道輸送:36.9億トン(総量に占める比率7.7%)、道路輸送:368億トン(同76.8%)、水路輸送66.6億トン(同13.9%)となっている。実に貨物輸送総量の8割近くが道路輸送で占められ、その多くがトラックによって輸送されているのである。

2017年7月に中国政府“交通運輸部”が発表したところによれば、中国の高速道路の総延長距離は13.1万kmで、2012年末から4万km増大して世界一であるという。日本の高速国道の総延長距離が2017年末で8776kmであることを考えると、中国の高速道路は日本の何と15倍の長さである。それだけ距離が長い高速道路を使って全国各地へ貨物を輸送するトラック運転手の仕事が過酷なものであることは疑いの余地はない。

その彼らを待ち受けるのが交通警察や道路運輸管理局による検問であり、積載荷重超過や荷締め不足、タイヤの空気圧不足などの理由で難癖をつけて罰金を科し、時として見逃しを条件に賄賂を要求する。また、各地政府が独自に定めた非公式な道路通行料や渡橋料の支払いを要求される。こうした関門がトラック運転手を悩ませ、彼らの収入を圧迫することになる。

一方、検問を行う交通警察官や道路運輸管理局の職員は、気分が良ければ検査も適当だが、気分が悪ければ徹底的にあら探しを行い、片っ端から罰金を科す。これではやられる側のトラック運転手はたまったものではない。こうした不満を取りまとめたのが上記の「中国政府のトラックに関する10の罪」なのである。

トラックの燃料であるディーゼルオイルの価格は、2017年10月12日に1リッター当たり6.08元(約103円)だったものが、その後は徐々に値上がりし、現在(2018年6月11日)は6.79元(約115円)となり、8カ月間で0.71元(約12円)の値上がりとなっている。これに引き換え運賃は安いままに据え置かれている。あるトラック業者は以下のように述べている。

【1】40トンの貨物を積載できるトラックで、山東省“済寧市”から200km離れた江蘇省“徐州市”まで貨物を運ぶ場合、所用時間は5時間、人員は2人で、運賃は1トン当たり45元(約765円)の計算で1800元(約3万600円)である。しかし、道路通行料だけで280元(約4760円)、これに燃料を加えると700元(約1万1900円)になる。人件費は運転手が300元(約5100円)、護衛が100元(約1700円)であるから、これら諸経費を合計すると1380元(約2万3460円)となり、手元に残るのは420元(約7140円)。これでは故を起こしたりして賠償が必要となれば利益が吹っ飛ぶ。

【2】そればかりか、検問で積載荷重超過と判定されて1回200元(約3400円)の罰金を払ったら赤字しか残らない。時には貨物の依頼主からの支払いが延滞して、いつになったら入金するか分からないこともある。したがって、トラックを積載荷重の限度内で営業していては赤字になり、積載荷重超過を前提に営業しないと利益が出ない。40万元(約680万円)でトラックを1台購入して運送業を始めたが、仕事をすれば赤字、しなければ赤字で、身動きが取れず、トラックを売りたくとも買手がいない。これでは如何ともしがたく、やっていられないというのが本音である。

6月10日、トラック運転手による全国規模のストライキは予定通り実施された。しかし、政府側から脅しを受けたり、運転手仲間の協調がうまくいかなかったりしたため、トラック運転手3000万人のうちのどれだけの人数がストライキに参加したのかは、中国政府による情報管制もあって確認されていない。

但し、上海市、四川省、重慶市、湖北省、山東省、安徽省などの各地では多数のトラック運転手がストライキに参加したことが確認されている。彼らは高速道路に車列を並べ、橋を占拠して通行を妨げて、気勢を上げた。また、一部の地域ではストライキに参加した運転手が、ストライキに参加せず運送営業を行っていたトラックの通行を妨害したことで、双方の運転手間で暴力による衝突が発生し、一部のトラックは破壊されたという。

政府に対して生存権を保障するよう要求

最近では一部の中国政府を後ろ盾とする物流会社が貨物の大口出荷元を独占し、運賃を安く抑えて、業務を拡大しているので、燃料価格の上昇やその他の各種要因により個人経営のトラック輸送業者が彼らと競合することは難しくなっているのが実情である。こうした厳しい状況下で、全国3000万人のトラック運転手は退路を断つ覚悟で1日限りのゼネラルストライキを敢行した。

それは中国政府に対して彼らの生存権を保障するよう要求するものであった。トラック運転手の大多数は農村出身者で、家族を故郷に残した出稼ぎ者であるから、家族を養うための仕送りは欠かせない。そんな彼らが決起してゼネラルストライキに打って出たのは、生きるための最低条件の確保を求めたのである。

果たして中国政府はトラック運転手が提起した『中国政府のトラックに関わる10の罪』の質問に答えて、何らかの改善策を提示するだろうか。米誌「ニューヨークタイムズ」によれば、今年に入って現在までに中国国内で報じられたストライキだけでも400件以上に及んでいるという。

蓄積された庶民の不満が爆発すれば、いかな独裁体制を敷く中国共産党といえども安泰とは言えない。3000万人ものトラック運転手が一致団結してゼネラルストライキを敢行したことで、中国共産党指導部が肝を冷やしたであろうことは想像に難くない。

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『中国監視社会の実態、自由闊達な深センの「裏の顔」』(6/15ダイヤモンドオンライン 姫田小夏)について

6/16看中国<普京訪華後 俄禁中國在貝加爾湖取水(圖)=プーチン訪中後にも拘わらずロシアは中国にバイカル湖での取水を禁じる>イルクーツク州裁判事は中国・ハルピンの企業にバイカル湖からの取水によるペット詰飲用水の生産を禁じる判決を出した。同じくペット詰飲用水を作って­いる韓国企業はお咎めなしにも拘わらず。理由はロシアの水質基準に合わないとのこと。これはバイカル湖周辺の住民は豊かでなく、国家として政府が中国と付き合うのは仕方がないとしても、国民感情レベルでは反中であることには変わりはない。シベリアの森林も伐採され中国に輸出される。天然資源が奪われる恐怖がある。プーチン政権は腐敗しているので嫌われているが司法は独立しておらず、上の指示に従って判決を出す。ロシア国内での外国投資、特に中国からは必ず贈賄する。この判決は反中感情の為せる業。

ロシアも中国も腐敗という意味では似たり寄ったりです。日本と言う国がどんなに良い国かこの点を比較してみても明らかです。左翼は日本の良さを認めませんが。ロシア国民か中国国民になる事を勧めます。日本政府はロシア国民の反中感情を利用して、中国を牽制するようなことも考えたほうが良いのでは。

https://www.secretchina.com/news/b5/2018/06/16/861937.html

6/16阿波羅新聞網<專家:中共用關稅回擊美國是一個錯誤=中共が関税で米国に対抗するのは誤りである>マルコルビオは「トランプは素晴らしい。米国が中国産のものに関税を課すのは、中国が知財等を盗んで作った製品だから。関税と言わずに窃盗税と言うべき」と。あるIT関係者は関税をかければ消費者が困るだけ。歴史上関税で解決した問題はないと。ロック元駐華大使(華僑第一号大使)は「中国の米国からの輸入品は代替性がある。大豆然り、ボーイング然り。損をするのは米国」と。中共はやられたら同程度でやり返すと。米国のある研究所員は、「中国の関税報復措置は誤り。トランプは更なる報復を課そうとするだろう。両者とも傷つくだけ。中国は米国産製品の輸入等貿易黒字を減らすような、別な手を考えるべき」と。トランプは「米中の貿易戦争はとっくに始まっていて、今まで米国は負けて来た。彼らは多くを得て来た。それを今変えるだけ」と。

トランプのやり方は正しいと思います。真の敵は中国なのだから、中国が困ることをすれば良いと思います。特に貿易黒字を軍拡原資にしている中国であれば

http://tw.aboluowang.com/2018/0616/1130471.html

中国の監視社会は本ブログで何度も伝えて来ました。しかし、それが香港にも及んでくるとは。勿論、新幹線での包丁による殺人事件から教訓を得るとすれば、やはり改札前後での手荷物チエック(金属探知機か身体全部スキャンか)は必要と思います。新幹線以外でも事件が起きる可能性がありますので、JRに任せるのでなく、政府としても国家安全の見地から対策は練るべき。

公安が威圧警備するのはやりすぎと思います。事件が起きたらすぐ出動できる体制を整えておくくらいでしょう。監視カメラはもっともっと増やすべきですし、スパイ防止法も。

記事

深セン市の入り口に掲げられた看板。香港側からの移動者に社会主義思想を見せつける Photo by Konatsu Himeda

香港特別行政区の北側に隣接する深セン市は、「中国のシリコンバレー」として、昨今世界中から熱い視線を集める新興都市だ。だが、自由闊達なイノベーションの一大拠点という輝かしい一面の裏には、治安維強化の厳しい現実があった。(ジャーナリスト 姫田小夏)

深センの出入境ゲートで指紋と手の甲をスキャン

4月半ばの午前9時過ぎ、筆者は香港の繁華街・旺角から香港MRTの東鉄線に乗り、深セン市を目指した。香港の北端・東鉄線終点の羅湖駅に着いたのは午前10時。ここで下車するのは、観光目的で訪れる筆者のような、もの好きな外国人もわずかにいたが、多くは仕入れ目的の行商人だ。

車両から吐き出された乗客のほぼ全員が、越境ゲートを目指して歩く。眼下には、香港と深センの間を流れる深セン河に鉄条網が張り巡らされ、緊張感を醸し出す。境界となる細い川を渡るとそこは中国本土、空気はガラリと変わり「厳しい管理下」に置かれたことを察知する。天井にぶら下がるのは無数の監視カメラだ。いまどき日本でも監視カメラは珍しくないが、これほどの数となるといい気分はしない。

出入境ゲート(形態は空港のイミグレーションとほぼ同様)では、パスポートの提示だけでは済まされなかった。親指を除く四本の指の指紋に加えて、左右の手の甲のスキャンを要求された。指紋による認証は、2017年から深センのイミグレーションや越境ゲートで始まって全国で導入され、上海の空港でも、この4月から10本の指の指紋が取られるようになったばかりだ。

近年、中国政府は二重国籍者への取り締まりを強化していることから、生体識別を役立てるつもりなのかもしれない。とはいえ、吸い取った後の膨大な個人データは「どんな形で二次利用されるのだろうか」と不安になる。中国IT企業の成長は著しいが、その技術がこうした監視体制の強化に使われていることは間違いない。

手続きが終わり、深センでの第一歩を踏み出す。自由と法治の都市である香港から来た乗客らを待ち受けていたのは、全面真っ赤な共産党スローガンだった。習近平国家主席による新時代の「特色ある社会主義思想」の徹底を強調したものだ。

黒い制服組の公安が地下鉄内を巡回

出入境ゲートを抜けた筆者は、市街地に向かう深セン地下鉄1号線の始発駅を目指した。だが、地下鉄の乗車も簡単ではなかった。改札を過ぎると、手荷物はX線検査を通され、人間もまた金属探知ゲートをくぐる。手荷物の中にペットボトルなどの液体が確認されると、係員が取り出した上で、再度の安全確認を行う。そのセキュリティチェック体制は、まるで飛行機に搭乗するかのように厳重だ。

ちなみに上海でも、2010年に開催された上海万博と前後して、治安維持のための手荷物検査が地下鉄の全駅で導入されたが、これほど厳重なものではなかった。万博後もそのまま検査機器と検査係は残されたものの、これに応じる市民は少数で、むしろ「手持ち無沙汰な係員」が気の毒なくらいだった。

やっとの思いで地下鉄に乗ると、今度は “黒い制服組”が乗客と一緒に列車に乗り込んできた。背中には「列車安全員」とあり、扉が閉まるや、早速車内の巡回を始めた。全身黒づくめの制服なので、妙な威圧感がある。彼らはいわゆる「公安」で、2017年8月から深センで全面的に始まった治安維持のために巡回しているというのだ。

駅構内には、2人の公安に挟まれ尋問されている女性がいた。どうしたのかと見ていると、公安の1人が自分のスマートフォンを取り出し、動揺する女性に向けてシャッターを切った。身なりもごく一般的で、会社勤めとおぼしき普通の女性だが、彼女が何をしたというのだろう。深センではこんなことが公然を行われているのかと戦慄を覚えた。

中国では2015年に国家安全法が成立し、その後、毎年4月15日を「国家安全教育日」として、全国で教育強化を実施するようになった(今年から香港でもその導入が始まった)。これほどの警戒を高めるのは“治安維持月間”に重なったためなのかもしれないが、翻せば想像以上に治安が悪いのかもしれない。

隣接の香港で治安が悪化 無数の監視カメラが設置される

香港に戻り、筆者は香港屈指の繁華街・旺角の歩行者天国(西洋菜南街)を散策した。ちょうど週末だったせいで、夜の歩行者天国にはどこからともなくパフォーマーが湧き出し、それぞれに歌ったり踊ったり楽しんでいた。しかし、ここでも筆者は違和感を持った。やはり、設置されている監視カメラが多かったからだ。民衆のたわいもない自己表現の空間には、あまりにも不釣り合いなのだ。

歴史ある賑やかなホコ天も 親中派と本土派の対立の舞台

学生が普通選挙を求め、中環(セントラル)を占拠した2014年の「雨傘運動」は記憶に新しいが、2016年にも市民のデモが地元警察と衝突する大規模な事件が起きている。

この歩行者天国は18年に及ぶ歴史があるが、一見、賑やかな“ホコ天”にも、実は「親中派」と「本土派」の対立抗争の舞台という裏の顔が存在していた。“香港独立分子”が潜在していることも、エリア一帯の監視体制を高める要因になっているといえそうだ。

自由と法治の都市であるはずの香港でも無数の監視カメラが回る Photo by K.H

もとより、深センと香港をまたぐエリアについては、博打やドラッグ、性風俗などで乱れた一面も存在する。そのため、「安全強化はむしろ歓迎」と言う声もある。しかし、国家が社会のあらゆる領域に統制を及ぼすかのような物々しい監視体制は、健全な市民社会の形成という観点からは明らかに逆行するものだ。

自由闊達な創造の空間、技術革新が進む一大拠点といわれる深センをこの目で見たいと訪れたが、目のあたりにしたのはもう一つの現実だった。習近平体制になっていまだかつてない厳しい監視社会が深センにも到来する中で、今後も新たなビジネスモデルやイノベーションは創出され続けるのだろうか。

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『「金正恩勝利」で終わった米朝首脳会談、元駐韓大使が徹底解説』(6/14ダイヤモンドオンライン 武藤正敏)、『米朝首脳会談の「落としどころ」は日本にとって最悪だった』(6/14ダイヤモンドオンライン 上久保誠人)、『北朝鮮、経済変革の「指南役」は米国より中国か』(6/13ダイヤモンドオンラインロイター)、『トランプでも金正恩でもなく「北朝鮮問題」の本質は「中国問題」』(6/15Yahooニュース The PAGE)について

本日も紹介記事が多いのでコメントは短くします。武藤氏は外務省出身ですから昨日の本ブログの宮家氏と同じ見方をしています。トランプは外交のプロシージャーを踏んでいないと言うものです。でも踏んでやっていればいつまで経っても首脳会談は開かれなかったのでは。突破力が必要なときもありますし、下がある程度詰めて来たから会談ができたと思っています。上久保氏は、今回の合意は日本にとって厳しいものと見ているようですが、米国と日本の制裁は続きますし、問題は中国、韓国が制裁を緩めることです。国連の場を利用して緩和を許さないようにしませんと。勿論、CVIDにかかる経費や拉致被害者解放ができれば日本が経費負担せざるを得ません。トランプが北との戦争は金がかかるので避けるというのであれば、戦争以外で締め上げるしかありません。米中で貿易戦争の口火が切って落とされました。お互いに関税の掛け合いです。中国が米国との貿易量が減れば、朝鮮を援助する余裕ができるかどうかです。まあ、北を緩衝国家のままで置いておきたいとは思うでしょうから支援はするのかもしれませんが。でも裏で米朝が握っていたとすれば、中国の支援も必要はなくなります。以前本ブログで中国語の記事を紹介しましたが、中国は米朝がくっつくのを懸念しているというものでした。ロイターの記事のように行くかどうかは今後の展開を見てみないと分かりません。渡辺氏の記事は、昔から小生が言ってきた所ですので、目新しさは感じませんでした。

武藤記事

米朝首脳会談で、会場のホテル内を散策さるトランプ大統領と金正恩委員長 Photo:Reuters/Aflo

6月12日、シンガポールにおいて歴史上初めてとなる「米朝首脳会談」が行われた。だが、その結果は、トランプ米大統領ではなく、金正恩朝鮮労働党委員長にとって満足のいくものであったと言えるだろう。

それを端的に表していたのが、会談前と後の金委員長の表情だ。会談場所のカペラホテルに降り立った時の金委員長の表情は硬く、こわばっていた。しかし、会談を終えてトランプ大統領と連れ立って歩いたときの表情は、満面の笑みを浮かべて勝ち誇っているかのように見えた。

表情が、これだけ明らかに変化したのはなぜなのか。会談の中身について、詳細に見ていくことにしよう。

合意文書に盛り込まれず 非核化の実現は疑わしい

会談における主要な課題は、「北朝鮮の非核化」と「北朝鮮に対する体制の保証」だった。

しかし、会談後に発表された共同声明を見ると、「非核化」については、「金委員長は、朝鮮半島の完全な非核化を強く断固として取り組むと再確認した」「2018年4月27日の板門店宣言を再確認し、北朝鮮が朝鮮半島の完全なる非核化に向けて取り組む」とするのみであり、具体的な道筋などについては触れられていない。

会談前、具体的な内容までは合意できないだろうとの観測が広がり、大きな枠組みの原則合意にとどまるのではないかと言われていた。それでも、日米が主張してきた「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(以下CVID)に関しては合意するのではと期待されていたのだが、それも合意できなかった。

トランプ大統領は記者会見で、CVIDについて「話をしたが書いていないだけ。これは完全な非核化ということであり、検証されることになる」と述べたが、これまで北朝鮮が何度となく約束を反故にしてきたことを考えれば、少なくとも合意内容を文書化すべきであった。

実よりも名を取ったトランプ大統領

トランプ大統領は会談前、「完全な非核化の意思が確認できなければ、会談を中座する」とまで言っていたのだが、なぜ、このような曖昧な内容の文書に合意したのか。それは、トランプ大統領にとって、今回の米朝首脳会談は、「自身の成果」とすることが重要であり、そのため「実よりも名を取った」からである。

両国は、会談を有利に進めようと、会談前から猛烈な駆け引きを行った。その結果、トランプ大統領は、「北朝鮮は怒りとあからさまな敵意を表明しており、現時点で会談するのは不適切」だとして、突如、米朝会談の中止を発表した。

これに驚いた北朝鮮は、金桂官第一外務次官の談話で、「いつでもどのような方式でも向かい合って問題解決の用意がある」と前言を翻して、金英哲統一戦線部長が米国を訪問、トランプ大統領やポンペオ国務長官と面談して会談の再設定を試みた。

これだけ慌てたのは、北朝鮮が切実に米朝首脳会談を求めていたからだ。この時点では米国が圧倒的に優位に立っており、北朝鮮に対して譲歩を迫れる立場にあった。そのままの姿勢で会談に臨めば、北朝鮮に対しCVIDへの歩み寄りを不可避なものにできたと思う。

しかし、トランプ大統領はそうしなかった。「北朝鮮の核問題で成果を上げたい」と焦るあまり、安易に会談の再設定に応じてしまったのだ。これが原因で、米朝の立場が逆転してしまったと言える。

トランプ大統領がこうした行動に出てしまったのは、歴史的な米朝首脳会談を実現して自らの「政治的成果」とすることで、今年11月の中間選挙や、2年後の大統領選挙に向けて体制の立て直しを図りたいと考えていたからだ。彼にとって重要なのは、「会談が成功した」と主張できるようにすることだったのだ。

他方、金委員長は、生きるか死ぬかの覚悟で会談に臨んでいた。国の安全保障のために、核ミサイルはどうしても手放せない。だからといって、このまま開発を続ければ、制裁を強化されてますます経済的に追い込まれ、生存自体が危うくなりかねない。そのため、粘り腰で非核化を遅らせ、その間にできるだけ多くの経済支援を勝ち取ろうとしたのだ。

このように見ていくと、会談準備過程の膠着状態は北朝鮮の“遅延戦術”によるもので、時間切れとなった米国が譲歩を迫られた形だったといえる。そもそも、首脳会談の再設定から準備期間は2週間ほどしかなく、北朝鮮の譲歩を引き出す時間的な余裕はほとんどなかった。そういう意味で、米国は首脳会談の日程を設定せず、北朝鮮をじらしながら、非核化に向けて歩み寄りを見せたところで日時を決めるのが得策だったのだ。

CVIDで合意できなかったことが今後の禍根になる可能性

今回の会談が出発点となり、来週以降、ポンぺオ国務長官やボルトン大統領補佐官が、北朝鮮側のカウンターパートとなって具体策を詰めていくという道筋をつけたことは一つの成果といえる。しかし、北朝鮮からCVIDの約束をきちんと取りつけることができなかったことは、今後に禍根を残しかねない。

というのも第一に、閣僚レベルで具体策を詰めていくにしても、合意した以上の譲歩を北朝鮮側から引き出すことは容易でないからだ。また、トランプ政権としても、北朝鮮が完全な非核化の意思を示さないからといって、自ら今回の会談が「失敗だった」と言うことはできない。要するに、トランプ政権は北朝鮮との交渉の余地を自ら狭めてしまったのである。

第二に、段階的非核化によって北朝鮮が時間稼ぎをし、その間に体制を立て直して核ミサイルを開発する機会を与えかねないからだ。そもそも、北朝鮮が非核化の道筋をつけることを頑なに拒否しているのは、その意思がないからであり、北朝鮮がこれまで再三にわたって約束を反故してきたことの再現になりかねない。

そして第三に、今回の米朝合意をテコに中国やロシア、そして韓国が制裁の手を緩めてしまう可能性がある。既に、中朝国境沿いの貿易は、以前より活発になっている模様だ。韓国も開城に連絡事務所を設け、開城工業団地の再開準備ともとれる動きを示し始めている。制裁が緩和されれば、北朝鮮が非核化を進めなければならない動機はなくなってしまう。

非核化に関する言及が不十分で盛り込まれなかった終戦宣言

今回の会談では、朝鮮戦争の「終戦宣言」についても合意するのではないかと言われていた。北朝鮮にとって、非核化する上での最大の懸念材料は「体制の保証」であり、終戦宣言はその第一歩となる。

合意文書の中で、「トランプ大統領は、北朝鮮の安全保障の提供に取り組むとした」とし、「米国と北朝鮮は平和と繁栄のため、両国民の望みに従い、新たな米朝関係構築に取り組む」「米国と北朝鮮は恒久的で安定した平和的な体制を朝鮮半島に築く努力を共に続ける」と記されてる。

朝鮮半島に恒久的な平和をもたらすことは重要であり、そのため北朝鮮に安全保障を提供することは肯定的な動きだ。トランプ大統領は記者会見で、在韓米軍に関連し、「米韓合同演習はとても挑発的であり、費用も莫大だとしてこれを減らしていく」と言及した。

しかし、米韓側が一方的にこうした措置をとるのはいかがなものか。確かに朝鮮半島の緊張が緩和されるなら、それはいいことだ。しかし、朝鮮半島の緊張を高めているのは、38度線沿いに配備された北朝鮮の膨大な長距離砲である。米韓側が緊張緩和を図るなら、北朝鮮にも対等に緊張緩和の措置を取るよう求めるべきではないか。北朝鮮の要求を一方的に聞くだけでは、交渉にはならない。

今回、終戦宣言が盛り込まれなかったのは、非核化に関する言及が不十分だからだろうが、近々、終戦宣言から平和協定の締結に向けて動き出す可能性は高い。だが、護衛艦の天安艦砲撃やプエブロ号事件、延坪島砲撃など、数々の衝突事件を起こしているのは北朝鮮側であることに鑑みると、平和への取り組みを強く促してほしい。

トランプ大統領は記者会見で、「人権問題については細かいところまで議論した」と述べた。しかし、そこで強調したのは米国の戦争捕虜・行方不明兵士の遺体回収、帰還問題だった。しかし、記者の質問の趣旨は、北朝鮮住民の人権問題だったはずで、金正恩体制の圧政下で政治犯収容所に送られ、惨殺されている人々のことを指していたのだ。

北朝鮮は米朝関係を改善し、国際社会に復帰することで経済発展を進めることを目指している。しかし、北朝鮮の人権状況が現状のままであれば、北朝鮮を支援しようとする国際機関や、投資をしようという企業が現れるわけもなく、人権問題の解決は避けて通れない。

北朝鮮は、長年、国民を締めつけてきた。これを一気に開放すれば反政府活動が広がり金正恩体制は持たないかもしれない。そのためにも、まず住民の生活改善は不可欠であろう。こうした問題に北朝鮮がどう取り組むのか、米国をはじめとする国際社会がいかに取り組んでいくべきか、議論を始めるべきであろう。

拉致問題に言及されたものの解決は容易ではない

トランプ大統領は会談前、安倍晋三首相に対し、「拉致問題について取り上げる」と述べた。会談でいかなる議論がなされたかについては、既に安倍首相に伝えられたであろう。拉致被害者家族も、「今回が最後の機会だ」として希望を持っている。最終的に解決しなければないのは日本政府であり、安倍首相も真剣に取り組んでいる。

北朝鮮にとっても、日朝首脳会談を開きたいはずだ。米朝関係が進んでも、米国は金は出さないと言っており、日本、韓国、中国に丸投げしている。日本としても戦後処理の問題は片付いていないので、拉致や核ミサイルの問題を包括的に解決し、国交正常化の過程で経済協力を提供することになるだろう。

しかし、北朝鮮は相変わらず拉致問題は解決済みだとしている模様で、スウェーデン合意に基づく調査も途中で打ち切っている。北朝鮮のような統制国家では調査の必要はなく、拉致被害者の現状はすでに把握済みだと思われるにもかかわらずである。となれば、日本政府が拉致被害者の現状をできるだけ詳細に把握し、追及することで、金委員長が拉致被害者を返さざるを得なくなるようもっていく必要があるだろう。

今回の米朝首脳会談をきっかけとして、米国の北朝鮮との交渉は今後も続いていく。その過程で、非核化について進展があることを期待する。ただ、日本も傍観者ではいられない。日本は、米国に対して要請して推移を見守るのではなく、当事者としての意識を持って北朝鮮との交渉に臨む必要があると言える。

(元在韓国特命全権大使 武藤正敏)

上久保記事

Photo:AFP/AFLO

「大山鳴動して鼠一匹」とは、まさにこれだ。米国のドナルド・トランプ大統領と北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の米朝首脳会談が行われた。両首脳は、(1)「米国と北朝鮮の新たな関係の樹立を約束」(2)「朝鮮半島の持続的かつ安定的な平和構築に共に努力」「北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向けた作業を行うと約束」「戦争捕虜、戦争行方不明者たちの遺骨収集を約束」の4項目で合意し、文書に署名した。しかし、「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化」(CVID)という表現は明記されず、全ての項目において、「いつまでに、どのように実現するか」の具体策は示されなかった。

本連載が主張してきた「米国には決して届かない短距離・中距離の核ミサイルが日本に向けてズラリと並んだ状態でとりあえずの問題解決とする」(本連載第166回)という状況が出現する。「史上最大の政治ショー」が起こるかのように大騒ぎした割には、何一つ決まらなかった。「落としどころ」は至って平凡で、日本にとっては最悪なものとなった。

トランプ大統領は「拉致問題提起」を日本からカネを引き出すために利用した?

首脳会談終了後の記者会見で、トランプ大統領は「完全な非核化」実現のために「圧力は継続する」と述べた。また、首脳会談で「日本人拉致問題」を提起したという。安倍晋三首相はこれを高く評価し、感謝の意を表した。後は、首相自らが動いて「日朝首脳会談」を開催し、拉致被害者を取り返すだけとなった。

だが、トランプ大統領は記者会見で「非核化のための費用は、日本と韓国が出す」とも述べた。「圧力を継続」と言いながら、非核化のためという名目で日本に「カネを出せ」とクギを刺したということだ。これで安倍首相は日朝首脳会談に「手ぶら」では行けなくなった。

安倍首相は、日朝首脳会談の開催前から、拉致問題を首脳会談で提起するように、トランプ大統領に積極的に働きかけてきた。そして、そのことを日本国民に対してアピールし続けてきた。トランプ大統領も安倍首相に会うたびに「シンゾー、任せろ。必ず金正恩に話す」と応え、実際に会談で提起したという。拉致被害者の会の皆様は「これが最後のチャンス」と切なる思いで見守っている。いまさら安倍首相が平壌には行かないと言い出せない状況になっている。

この連載は、「北朝鮮との融和」は拉致問題を動かす好機と指摘してきた(前連載第1回)。そして、今回はこれまでとは違い、本当に拉致被害者を少なくとも数名取り戻せるかもしれないと考えている(第181回)。実際に、そういう状況が出現したといえるかもしれない。だが、それは日本が「非核化のためという名目でいくらカネを出すのか」を提案することと、バーターとなっているのではないだろうか。

日朝首脳会談で、北朝鮮に非核化のためのカネを出すことを決めれば、その見返りに拉致被害者が2~3人帰国するかもしれない。もしそうなったら、日本の世論は歓喜するだろう。だが、北朝鮮に渡すカネが、本当に非核化のために使われるかどうか、わかりはしない。逆に、日本が渡すカネが「最大限の圧力」が形骸化するきっかけとなる懸念もある。しかし、その時、拉致被害者を返してもらった日本政府と国民は、北朝鮮に面と向かって厳しく批判できるだろうか。

今の北朝鮮にとって、拉致被害者を2~3人返すことなど、たやすいことだ。金委員長は米朝首脳会談の実現によって、長年の「国家的悲願」であった「米国による体制保証」をトランプ大統領から引き出したのだ。それに比べたら、拉致問題など、言葉は悪いが実に小さなことだ。

「拉致問題は解決済み」という立場の北朝鮮にとって、さらなる拉致の事実を認め、日本に謝罪することは「国家的な恥」ではある。だが、米国による体制保証という「国家的悲願」の実現と比べれば、実に小さな「恥」である。

金委員長が安倍首相に対して「祖父・父の時代に、恥ずかしい振る舞いがあった。だが、私はそれを解決する」と言えば、朝鮮中央放送が「金委員長が寛大な心で偉大な決断をされた」と大絶賛するだろう。それで安倍首相からカネを引き出せるならば、簡単なことだ。

トランプ大統領が米朝首脳会談で拉致問題を提起した。それは「圧力一辺倒」で「完全なる非核化」を求め続ける安倍首相にカネを出させるために、周到に仕組んだ罠だったように思われてならない。

米国、中国、韓国、ロシアの「完全な非核化」に対する本音

日本を除く、「北朝鮮核ミサイル開発問題」の関係国である、米国、中国、韓国、ロシアは、口を開けば「完全な非核化」と言うが、実際は非核化に強い関心はない。米国は「アメリカファースト」であり、既に米国に届くICBMの開発を北朝鮮に断念させて、核実験場を爆破させた。それで目的達成なのである(第184回)。その意味で、トランプ大統領は米朝首脳会談に、「うまくいけば、ノーベル平和賞が取れるかな」という程度の、軽いノリで臨んでいた。

しかも、ノーベル賞を取るのに、北朝鮮の完全な非核化までは実は必要なく、「朝鮮戦争の終結」とそれに続く「在韓米軍の撤退」で十分だと考えている。在韓米軍の撤退は、時期はともかくとして、既に米国では決定事項である(第180回・P.5)。しかも、トランプ大統領は「経費節減にいいことだ」と言い切っているのだ。その上、米朝首脳会談では「米韓軍事演習」の中止にまで言及した。

要するに、トランプ大統領は「アメリカファースト」と「ノーベル平和賞」しか関心がなく、「完全な非核化」は、「金委員長と話はつけた。後は、やりたければシンゾーがカネを出してやれ」と言って、無関心なのである。

一方、ロシア・中国は、本音の部分では、北朝鮮が核兵器を持つことは悪いことではないとさえ考えている。東西冷戦期から、中国・ロシアは「敵国」である米国・日本と直接対峙するリスクを避ける「緩衝国家」として北朝鮮を使ってきた。米朝首脳会談でトランプ大統領が北朝鮮の体制を保証したことで、「緩衝国家」は今後も存続するのだ。

その上で「緩衝国家」が核兵器を保有し、それを日本に向けることは、北東アジアの外交・安全保障における中国・ロシアの立場を圧倒的に強化することにつながる。換言すれば、緩衝国家・北朝鮮の体制維持と核武装は、中国・ロシアにとって「国益」だと言っても過言ではない(第166回)。

韓国は、同じ民族であり、統一すれば領土となる土地に、北朝鮮が核を撃つわけがないと思っている。核はあくまで日本に向けられるものであり、それは悪いことではないと考えるだろう。

トランプ大統領が言及したように、「在韓米軍」の撤退が、韓国が中国の影響下に入ることを意味し、北朝鮮主導の南北統一の始まりになるのかもしれない。北朝鮮よりも圧倒的に優位な経済力を持ち、自由民主主義が確立した先進国である韓国が、最貧国で独裁国家の北朝鮮の支配下に入ることはありえないと人は言うかもしれない。しかし、明らかに「左翼」で「北朝鮮寄り」の文大統領にとっては、それは何の抵抗もないどころか、むしろ、歓迎かもしれないのだ(第180回・P.6)。

日朝首脳会談をきっかけになし崩し的な経済協力が始まる

少なくとも、文在寅大統領は、南北首脳会談で金委員長が求めてきた経済協力を進めるだろう。一応、韓国も「完全な非核化」まで圧力を継続するという立場だが、日朝首脳会談で安倍首相が非核化のためのカネを出すことになれば、後はなし崩しとなる。

北朝鮮の後見役を自認する中国が、米朝首脳会談での融和の進展を受けて、非核化のための圧力の有名無実化に動くことは自然である。そして、日本とともに「蚊帳の外」とされてきたロシアにとっては、北朝鮮への経済協力こそ蚊帳の外から脱する唯一の方法だ。

米朝首脳会談前にウラジーミル・プーチン大統領と安倍首相の日露首脳会談が行われた。日ロ経済協力は着々と進んでいる(第147回)。プーチン大統領から、「日ロ経済協力を発展させて、ロシア、日本、北朝鮮の『環日本海経済圏』をつくろう」とぶち上げられたらどうだろう。北方領土問題を抱える日本は、それを断れるのだろうか。

拉致問題の進展は完全な非核化を遠のかせるかもしれない

本連載の著者、上久保誠人氏の単著本が発売されます。『逆説の地政学:「常識」と「非常識」が逆転した国際政治を英国が真ん中の世界地図で読み解く』(晃洋書房)

「日本人拉致問題」の解決は、拉致被害者とその家族の皆様にとっては、まさに「最後のチャンス」である。できることならば、横田めぐみさんをはじめ、全員が帰国できることを願ってやまない。

安倍首相は、拉致問題についての日本国民の期待を高めてしまった。いまさら「平壌に行かない」とは言えない。しかし、平壌に行ったら、日本は北朝鮮の非核化という名目で、カネを出さなければならないことになる。「拉致問題」は完全にトランプ大統領と金委員長に、いいように利用されたのではないだろうか。

拉致問題の進展は、北朝鮮の完全な非核化の実現を遠のかせてしまうという、相反する結果をもたらしてしまうのかもしれない。

(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)

ロイター記事

6月11日、トランプ大統領は、北朝鮮が核放棄すれば、米国からの投資に支えられて「非常に豊かに」なるだろうと約束したかもしれない。だが、同国における変革の原動力となるのは米国ではなく、中国だろう。5月、平壌で撮影。KCNA提供(2018年 ロイター)

[ソウル/北京 11日 ロイター] – トランプ大統領は、北朝鮮が核放棄すれば、米国からの投資に支えられて「非常に豊かに」なるだろうと約束したかもしれない。だが、同国における変革の原動力となるのは米国ではなく、中国だろうと、北朝鮮に詳しいエコノミストや研究者は予想する。

北朝鮮にとって最も身近な手本となるのは、米国式の資本主義ではなく、1978年に中国指導者となった鄧小平氏が最初に推進した、国家統制下の中国式の市場経済だと指摘する。

当時の中国は、27年間に及ぶ故毛沢東国家主席による統治がもたらした混乱、つまり資本主義が禁止され、私有のビジネスや財産が国家に接収され集団所有の下に置かれた時期から、抜け出そうとしていたのである。

鄧小平氏は痛みを伴う改革を導入し、現在では、過去40年にわたる中国経済の奇跡の基礎を築いたという評価が広がっている。その変化は巨大であり、成長は驚異的だった。しかし何よりも重要なのは、中国共産党が、権力をただ維持するだけにとどまらず、国内統制をさらに強めつつ、こうした成果を達成したことである。

シンガポールで12日、トランプ大統領と北朝鮮の指導者である金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長による史上初の首脳会談が行われる中で、北朝鮮政府の関心は、ますます中国に傾斜しつつある。

正恩氏は3月以来、中国を2度訪問し、習近平国家主席と会談している。一方で、北朝鮮を支配する朝鮮労働党の高官級代表団は5月、11日間にわたる中国訪問のなかで、中国のハイテク都市交通や最新の科学的成果などを中心に、いくつかの産業拠点を視察した。

この代表団が中国を訪問したのは、正恩氏が核実験・ミサイル実験の中止を宣言し、「社会主義経済建設」に専心すると誓ったほんの数週間後である。中国メディアは正恩氏の声明を、鄧小平氏の政策を簡潔に表現した「改革開放」の北朝鮮版だと位置付け、中朝国境の丹東市では住宅建設投資が急増した。

「金正恩氏がトランプ大統領と会談するのは、米国に制裁を解除してもらう必要があるからだ。その後の見出しはすべて、金正恩氏と習氏の名で埋め尽くされるだろう」と語るのは北朝鮮関係に詳しい韓国のエコノミスト、Jeon Kyongman氏だ。

中国は、北朝鮮にとって最も重要な同盟国であり、最大の貿易相手国である。2011年に金正恩氏が権力を継承して以来、中国との貿易関係はますます重要となっている。現在、中国は北朝鮮の貿易全体の90%以上を占め、北朝鮮経済にとって唯一の生命線となっている。

北朝鮮の「開放」に狙いを定める中国

2017年4月、平壌で撮影(2018年 ロイター/Damir Sagolj)

英リーズ大学で中国・北朝鮮関係を専門とするアダム・キャスカート氏によれば、中国北東部の「ラストベルト」地域で経済成長が停滞していることも、北朝鮮との経済関係強化に関心が高まる追い風となっているという。

北京の東興証券でチーフエコノミストを務めるZhangAnyuan氏によれば、計画経済から市場経済への移行という中国のモデルは、それが政治や経済、社会の安定を損なわずに実現されただけに、北朝鮮政府にとって魅力的である。

「地理的な位置や経済システム、市場規模、そして経済の開発段階を考慮すれば、中国と北朝鮮のあいだの経済協力は他に代えがたい、模倣しようのない優位を得ている」とZhang氏は言う。

だがキャスカート氏は、経済自由化の進展はゆっくりしたものになる可能性が高いという。というのも、北朝鮮は、通貨や移民を巡る規制緩和による政治リスク増大については慎重になることが見込まれるからだ。

北朝鮮は中国だけでなく、上からの厳しい統制が維持されている他の国の経済システムも参考にするかもしれない、とキャスカート氏は述べ、ベトナムや、あるいは韓国の「財閥」型ビジネス構造を例に挙げた。それにより「資本独裁制」に近いものが可能になるからだという。

習主席は、トランプ大統領からの強いプレッシャーを受けて、2017年後半には北朝鮮に対する制裁を厳格に実施し始めた。中国は今年3月までの6ヵ月連続で、国連安保理の制裁決議に従って、北朝鮮からの鉄鉱石や石炭、鉛鉱石の輸入を完全に停止している。

この制裁は石炭依存度の高い北朝鮮の重工業や製造業に打撃を与えた。だが、より重要なのは、中国政府との貿易が急減することによって「経済の最も繁栄する部分がやられてしまった」ことだという。

つまり、個人や卸売業者が中国製の消費財や農産物を売買する非公式の闇市場だ、とJeon氏は語る。「北朝鮮経済を締め上げた最大の要因は、制裁実施に向けた中国の決断であり、この制裁の解除が金正恩氏にとっての急務だ」

「蚊帳スタイル」

ソウル国立大学のKim Byungyeon教授(経済学)は、制裁解除後も、北朝鮮は国家管理の下での経済成長を追求する可能性が高いという。統制を失うことは現体制を不安定化する可能性があるからだ。「そうなれば、正恩氏は現在手中にある権力を半分以上失うだろう」

フィッチグループ傘下のBMIリサーチは、統制維持に向けた努力の一環として、市場開放が行われるとしても当初は「経済特区」に限定されると予想。こうした特区において、北朝鮮政府は自国の低コスト労働力と中国の資金力や技術的ノウハウを結合することを目指してきた。

5月、韓国ソウルでTVニュースを眺める人々(2018年 ロイター/Kwak Sung-Kyung)

東岸の元山(ウォンサン)観光特区や、韓国との境界線にある開城工業地区などの例に見られるように、正恩氏は経済における国家統制を維持しようとするだろう、と専門家は言う。

正恩氏はすでに元山にスキーリゾートや新たな空港を開設し、人口36万人の同市を多額の外貨を稼ぐ観光名所に変貌させている。

「制裁が緩和されれば、まずこの種のプロジェクトが進められる可能性が最も高い」とBMIリサーチは言う。

Jeon氏は、これは鄧小平氏のモデルに似た「蚊帳スタイル」の改革だという。国家統制の厳しい枠組みのなかで限定的に外資導入と市場自由化を進めるやり方だ。

鄧小平氏は中国東部沿岸に一連の経済特区を設け、固有の地方特例法によって輸出市場向けの合弁製造事業に対する外国からの投資を奨励する一方で、多国籍企業との直接の競争から国内産業を保護した。

「鄧小平氏は深センを経済特区に指定し、かつての静かな漁村を、世界の製造業の一大拠点に変貌させた」とJeon氏は語る。「正恩氏は、特に経済の他の部分においては最小限の変化しか望まないだろうから、こうした経済特区に熱心になるだろう」

(Cynthia Kim and Christian Shepherd/翻訳:エァクレーレン)

ヤフー記事

アメリカのトランプ大統領と北朝鮮に金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長が初めての対面を果たし、華々しく世界の注目を集めた「米朝首脳会談」。その影で忘れてはならない「主役」がいます。アメリカ研究が専門の慶應義塾大学SFC教授、渡辺靖氏は、今回の首脳会談の結果は、まさに中国が望んだ流れになっていると指摘します。朝鮮半島情勢を考えるとき、アメリカにとっても、北朝鮮にとっても、そして日本にとっても、つきまとう中国の影。渡辺氏に寄稿してもらいました。
【写真】共産党大会に首脳会談 北京で思う米中関係、民主主義、そして日本

朝鮮半島めぐり中国が望む流れに

米朝首脳会談の結果を「信頼醸成の第一歩」と見るか「ただの政治ショー」と捉えるか。会談を実現したトランプ大統領の手腕を評価するか、北朝鮮に押し切られたと批判するか。米国民の評価はおよそ二分されており、外交・安保専門家の間ではより辛口の意見が目立つ。引き続き、米朝交渉の行方から目が離せないが、中長期的な、地政学的な観点からすると、「北朝鮮問題」の本質は「中国問題」であると考える。

[写真]シンガポールまで向かう専用機まで用意した中国。事態は習近平主席の望む流れへと動いている(代表撮影/ロイター/アフロ)

当然ながら、中国は対岸における有事を望まない。核武装した隣国の存在も然り。米韓同盟の存在も目障りだ。中国にとっては、米朝の緊張緩和、北朝鮮の非核化、朝鮮半島からの米国の影響力後退が最も望ましい。
その意味で、今回の米朝首脳会談の実現、そして共同声明の内容は中国にとって歓迎すべきものであったろう。米国による北朝鮮攻撃のオプションは事実上消え、北朝鮮も核・ミサイルを開発しにくくなり、さらにはトランプ大統領から米韓軍事演習中止や在韓米軍撤退を示唆する発言があったからだ。
今回の共同声明は「段階的非核化」を事実上容認する内容になっているが、それはまさに中国が望んでいたものだ。とりわけ、北朝鮮が核・ミサイル開発を凍結する見返りに、米韓が軍事演習を凍結するという「二重凍結」を中国は重視していた。記者会見の席上、トランプ大統領は同軍事演習を「戦争ゲーム」と(北朝鮮の認識に沿った名称で)呼び、その中止を示唆した。在韓米軍と米韓同盟の運用に関わる核心部分が、事前に韓国側と――そればかりか一部報道によると米国防総省のマティス国防長官とも――すり合わせがないまま、北朝鮮との会談後に発表された格好だ。
今後「段階的非核化」の見返りとして、北朝鮮は「在韓米軍の撤退」や「THAAD(終末高高度防衛ミサイル)の撤去」なども求めてくるかもしれない。それは中国にとっても理想的な話であり、その実現のためにも、中国には北朝鮮を支援する価値がある。中国・大連での2回目の中朝首脳会談の際に「米国が望む(核の一括放棄後に制裁解除する)リビア方式に従わなくとも中国は北朝鮮を支援する」といった確約を金正恩委員長は習近平国家主席から受け取っていたのだろう。中国は金委員長がシンガポールへ向かう専用機(中国国際航空)を提供するなど緊密ぶりを印象づけた。

「一帯一路」が朝鮮南端まで繋がる

北朝鮮が今年に入って対話路線に転じた一因は、最大の貿易相手国である中国による経済制裁が一定程度効いたからだとされる。しかし、すでに中朝国境の経済活動(石炭や石油精製品の船舶同士の取引、ブラックマーケット、出稼ぎ労働者の往来など)は元に戻りつつある。
中国は北朝鮮が核実験場などを爆破したことを「非核化に取り組んでいる証し」として、国連加盟各国が北朝鮮に科している経済制裁を緩和する決議案を提出する可能性もある。その際、トランプ政権が拒否権を発動すれば、せっかくの対話ムードが壊れかねない(北朝鮮は「米国が敵視政策を再開した」と反発するかもしれない)。北朝鮮の東西両岸と38度線(南北分断線)を結ぶ「H」型の経済回廊が完成すれば、韓国の経済界にとっても大きなビジネスチャンスが開ける。そして、中国からすれば「一帯一路」が朝鮮半島の南端まで直に繋がることになる。
北朝鮮との交流が進み、中国との経済的結びつきがさらに深まり、米軍のプレゼンスが低下する韓国の状況は、「米韓切り離し(デカップリング)」を狙う中国の地政学的目標と合致する。
もちろん、韓国内では保守派を中心に、そうした展開を危惧する声が強い。また、北朝鮮も、中国の衛星国になることを回避すべく、実は一定程度の在韓米軍のプレゼンスを望んでいるという見方もある。北朝鮮が米国との関係改善を望む理由は、短期的には米国、長期的には北朝鮮を完全に影響力下に置こうとする 中国から身を守るためという見方もあながち的外れではないだろう。

[写真]トランプ大統領は史上初の米朝首脳会談の成果を強調した(ロイター/アフロ)

中国の「シャープパワー」警戒する米国

米国がこうした中国の勢力拡張を警戒しているのは明らかだ。今年1月に公表されたトランプ政権下初の「国家防衛戦略(NDS-2018)」において、米国は中国を(ロシアとともに)既存の国際秩序への脅威となる「修正主義勢力」と位置付けている。海洋(尖閣諸島、台湾、南シナ海)、サイバー、関税、知的財産権など争点は山ほどある。
加えて、最近では、中国やロシアなどの権威主義国家による世論形成プロジェクトを「ソフトパワー」ならぬ「シャープパワー」として警戒する雰囲気が米国内でとみに強まっている。シャープパワーは昨年末に全米民主主義基金(NED)の研究員によって提唱され始めた概念で、相手国を情報操作などによって世論誘導する能力を指す。 中国政府が世界各地で展開している言語文化教育機関「孔子学院」についても、米国内では「プロパガンダ機関」として問題視されており、有力大学を中心に距離を置き始めている。
米国では少し前まで「中国がグローバルな市場経済のなかで発展すれば、次第に民主化が進むだろう」との楽観論があったが、「現実はむしろ民主化に逆行するかのような強権国家化が進んでいる」との失望感や反発が急速に広がっている。私は今年1~3月までワシントンに滞在していたが、米国における対中強硬論や中国警戒論の台頭ぶりは日本で想像していた以上であった。
その一方、TPP(環太平洋経済連携協定)、パリ協定(地球温暖化対策の国際枠組み)、イラン核合意など、多国間枠組みから次々と離脱するトランプ政権は、自らの影響力拡大を狙う中国にとってあながち悪い存在ではない。

中国が日米切り離しを仕掛ける可能性

韓国における米軍のプレゼンスが低下すれば、日本はその中国と対峙する「最前線国家」となり、今まで以上に安全保障上の負担が必要になる可能性がある。そして、中国は「米韓」の次に「日米」の切り離しに照準を合わせてくるかもしれない。
今は北朝鮮について議論しているが、中長期的に見れば、日本にとっても問題の核心は中国なのだと思う。 今は日米同盟を基軸に対応しているが、「米国第一主義」の行方次第では、数年後には、米中の狭間でバランスを取らざるを得ない状況まで押し込まれている可能性もある。

■渡辺靖(わたなべ・やすし) 1967年生まれ。1997年ハーバード大学より博士号(社会人類学)取得、2005年より現職。主著に『アフター・アメリカ』(慶應義塾大学出版会、サントリー学芸賞受賞)、『アメリカのジレンマ』(NHK出版)、『沈まぬアメリカ』(新潮社)など

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『トランプ流は外交の教科書に失敗事例として載る 「この会談はやらないほうがよかった」』(6/15日経ビジネスオンライン 森永輔)、『「米朝会談」の成果はどうであれ、これは歴史だ ロシアゲートの聴取逃れのため米朝首脳会談を利用した?!』(6/14日経ビジネスオンライン 高濱賛)、『拉致提起に安堵の日本、日朝首脳会談にはなお時間』(6/13ダイヤモンドオンラインロイター)について

本日は米朝首脳会談をマイナスに評価する見方を紹介します。長いので短くコメントします。総じて、ジュリアーニ発言を気に留めている人はいないという事です。共同声明の外形上から見れば、厳しい評価になるのは止むを得ません。ただ、米国のリベラルや民主党支持者の意見が色濃く反映されている気がします。トランプは11月の中間選挙のことを考えて華々しく演出したのはその通りでしょう。でも高濱氏記事にありますようにロシア疑惑聴取から逃れるためにシンガポールへ行ったというのは言い過ぎです。宮家氏の言うように「核弾頭付きの巡航ミサイル」を日本に配備、ニュークリアシエアリングは必須です。

6/14ダイヤモンドオンラインロイター<米朝首脳会談、ニクソン訪中と似て非なる「外交的意義」>

https://diamond.jp/articles/-/172551?utm_source=weekend&utm_medium=email&utm_campaign=doleditor

森記事

元外交官で外交交渉に精通している宮家邦彦氏(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)は、米朝首脳会談における米国の交渉術を「稚拙」と評価する。例えば「切り札を最初に切る」「決定権のない者と交渉する」という具合だ。今後は、戦争ではないものの平和でもない“新常態”に北東アジアは突入すると展望する。

(聞き手 森 永輔)

一見したところ会談を主導したトランプ米大統領(右)。果たして交渉上手はいずれだったのか(写真:AFP/アフロ)

—今回の米朝首脳会談で最も注目したのはどんな点でしょう。

宮家:一つは、交渉の進め方。「ディール・メーカー」「交渉の達人」を自賛するドナルド・トランプ米大統領の外交交渉が自滅したことです。それも北朝鮮のような小国にすら通用しなかった。セオリーを軽視し、無手勝流を通したつけが回ったのです。将来、外交の教科書に失敗事例として載るのではないでしょうか。

宮家邦彦(みやけ・くにひこ)キヤノングローバル戦略研究所研究主幹。1978年外務省入省後、外相秘書官、中東第一課長、日米安保条約課長、在中国/イラク大使館公使、中東アフリカ局参事官等を経て、2005年に退職。その後、2006~7年、安倍晋三内閣で総理公邸連絡調整官。現在、外交政策研究所代表、立命館大学客員教授も務める。近著に『語られざる中国の結末』(撮影:陶山 勉 以下、同)

—セオリーに則っていないとは、どんな行動を指しますか。

宮家:例えば、切り札を最初に切ってしまいました。首脳会談は本来、最後に切るカードです。実務者が協議して内容を詰めた末にやる。まして今回のケースでは、北朝鮮側が切望している会談ですから。

さらに、首脳による1対1の協議を冒頭に持ってきました。安倍晋三首相のように何度も会っている相手なら、それでもかまいません。しかし、金正恩(キム・ジョンウン)委員長とは初対面です。まずはみんなで会って、どのような人物かを見極めるべきです。

二つ目は共同声明の内容について。北朝鮮は非核化について、従来からの主張を守り通し、一切譲ることがありませんでした。「これはすごい。まして米国相手に」と思いました。まあ、攻める米国があまりに稚拙だったので、救われた部分もありましたが。

三つ目は、北朝鮮が自らを普通の国に変えようとしているようにも見えることです。例えば、以前より情報を公開するようになりました。これが本当なら金委員長は冷戦を終了に導いたソ連のゴルバチョフのような存在になるかもしれません(関連記事「金正恩がゴルバチョフになる可能性を読む」)。この点は、たまたま道下さんと同意見です。しかし、それゆえ北朝鮮の政治体制がかえって危なくなる可能性があります。

米国は、米朝首脳会談がもたらすこうした効果を計算に入れているのかもしれません。ただし、入れていないかもしれない。

第1ラウンドは北朝鮮の完勝

—共同声明の内容についてうかがいます。

宮家:第1ラウンドは北朝鮮の「粘り勝ち」でした。米国がこれを挽回することは相当難しいでしょう。

北朝鮮は今回の米朝首脳会談と共同声明を通じて二つのものを得たと思います。一つは国際的な認知。外交交渉の場で米国と伍す力のある国の指導者であると国際社会に認めさせました。二つ目は、米国による体制の保証です。

一方、非核化について譲歩することはありませんでした。北朝鮮にとっては95点の出来だと思います。

—北朝鮮は非核化に取り組む意図がそもそもあるのでしょうか。

宮家:私は恐らくないと見ています。仮にあったとしても、最後の最後に切るものとして温存するでしょう。北朝鮮の方が外交交渉のセオリーに則っています。

非核化は本来、動くはずのないものでした。「段階的な非核化」と「CVID(完全で検証可能かつ不可逆的な非核化)」は相反するもので妥協の余地がありません。

金正恩を説得できるのはトランプだけ

—米国の逆転が難しいのはなぜですか。

宮家:理由は二つあります。一つは「朝鮮半島の完全な非核化」を「板門店宣言」と結び付けてしまったこと。同宣言は5月26日に行われた南北首脳会談を受けて出して宣言。共同声明は「板門店宣言にある通り」と表現しています。このことは、「非核化」が何を意味するかの解釈権を韓国にも与え得ることを意味します。本来なら、米国が一方的に定義して、それを北朝鮮に押し付けるべきでした。韓国が関与するようになると、話はまとまりません。

もう一つは今後の展開が、マイク・ポンペオ国務長官をはじめとする実務者協議に委ねたことです。北朝鮮側の実務者が誰であれ、金委員長を説得することはできません。つまり実務者協議の結果が尊重されることはないということです。

—北朝鮮側は金英哲(キム・ヨンチョル)朝鮮労働党副委員長を担当者に選びました。

宮家:金英哲氏であっても、金委員長を説得することはできません。北朝鮮で譲歩できるのは金委員長だけです。誰であれ、説得しようと試みれば命に関わることになりかねません。

そんな金委員長を説得できるのはトランプ大統領だけです。ここは、先ほどお話ししたセオリー無視と関連します。本来なら実務者が協議してまとめた結論をもって、トランプ大統領が金委員長を説得する段取りを取るべきでした。

こうした段取りを踏まなかったのは、トランプ大統領が今回の首脳会談の実務的側面についてあまり興味がなかったからでしょう。だから下に丸投げした。

こんなことなら、この会談はやらないほうがよかったとすら言えます。

—非核化の議論はこのまま米朝の2国間交渉(バイ)で進むのでしょうか。日本が関与する余地はないまま進んでしまう。

宮家:基本的にはバイでしょう。「日米」と「朝」という交渉は北朝鮮が絶対に受けません。しかし、いずれ中国やロシアが加わる時が来るかもしれません。その時には日本も加わればよいと考えます。ただ、過去を振り返ると6カ国協議が機能するとは思えないですね。

費用対効果で考えたら、現在の進め方がよいかもしれません。米朝がバイで進める形を取るものの、日本は米国の後ろに立って知恵を出し、交渉を制御する。

首脳会談の決行は「興行」のため


宮家:それもあるでしょう。しかし、それ以上に、トランプ大統領自身が金委員長と会談したかったからだと思います。周囲の興味を引き付けたかった。彼は「交渉の達人」ではなく「興行の達人」です。

トランプ大統領は自己愛が強い。なので、自分より目立つ人が周りにいるのが許せない。何人もの側近を排除してきたのはこのためです*。自分に意見する人はクビにする*。やりたい放題です。

*:スティーブ・バノン首席ストラテジスト兼大統領上級顧問が2017年8月18日に辞任した

*:2018年3月13日、レックス・ティラーソン国務長官を解任した

トランプ氏が経営する企業の中でやるならかまいません。しかし、アメリカ合衆国のホワイトハウスでやられたら、たまったものではありません。

—トランプ大統領はそれほど幼稚な人物なのでしょうか。

宮家:そうかもしれません。しかし、バカではない。もしバカなら、ここまで政権を維持することはできなかったでしょう。

—先ほど北朝鮮にとって今回の首脳会談は95点と採点されました。米国側の得点は何点でしょう。

宮家:日本にとっては45点。非核化でも拉致問題でも進展がありませんでしたから。

これを85点と高く評価する向きもあります。戦争の危機が当面回避されたことを評価する。これは朝鮮半島の人にとっては重要なことでしょう。トランプ大統領の支持者も同様に評価している。遠いアジアの地で戦争する必要性を感じていないですから。

しかし、日本は幸い直接戦場になる危険は朝鮮半島ほど高くありません。我々にとって最重要事項は非核化であり、拉致問題です。

—戦争の危険は本当に回避できたのでしょうか。北朝鮮が非核化を進めない場合、米国が再び武力攻撃を考えることはありませんか。

宮家:その点は流動的だと思います。しかし、少なくとも今は攻撃しない方向にある。17年春のような緊迫した状況になることはしばらくないでしょう。

「終戦」「平和協定」は米朝だけでは進められない

—「完全な非核化」との交換条件になる「終戦宣言」「平和協定」も進捗はありませんでした。これらの取り扱いは今後どうなるのでしょう。

宮家:北朝鮮が非核化について全く譲歩しないのですから、米国が譲歩する理由はなかったということです。

また終戦宣言や平和協定は、米朝だけが議論して進められるものではありません。現行の休戦協定は、北朝鮮の朝鮮人民軍と中国人民志願軍、そして国連軍との間で交わされたものです。

加えて、勝者と敗者を決めなければならない。朝鮮戦争で生じた被害に対する賠償や保障も話し合う必要があります。遺族への補償も考えなければなりません。これらは容易なことではありません。

—ということは、当分、議論の土俵に上がることはない。

宮家:とは限りません。中身がないものにとどまっても、政治的な宣言を発し、それをシンボルとして利用する方法はあります。

ただし、その時、注意しなければならないことがあります。経済制裁の意味が薄れてしまうことです。北朝鮮が「戦争が終わったのに、なぜ制裁を続けるのか」と主張し、国際社会がこれに理解を示すかもしれない。

—複雑ですね。

宮家:そうですね。韓国はそうやりたいのでしょうけど。米国が「終戦」「平和協定」に踏み込まなかったのは賢明だったと思います。

制裁のなし崩し的緩和をとめよ

—米国は制裁を継続する意向を示しています。しかし、中朝の国境では制裁が緩んでいるとの話が伝わってきます。

宮家:中国と韓国、そしてロシアは制裁解除を虎視眈々と狙っているでしょうね。今後、なし崩し的に緩められていく恐れがあります。日米には、この動きが深刻なものにならないようとどめる努力が必要です。

—文在寅(ムン・ジェイン)政権の性格を考えると韓国の意図は理解できます。でも中国が制裁を緩和したい理由は何ですか。それによって北朝鮮に対する影響力を高めることができるのでしょうか。

宮家:それが一つ。加えて、中国企業や個人が二次制裁の対象にされないようにしたいのでしょう。純粋に経済的な事情で。中朝貿易を生業としている中国の市民が少なからずいます。数年前ピョンヤンを訪問した際も、貿易に携わる中国人が非常に多いことに驚きました。

中国は北朝鮮の後ろ盾ではない

—今回の米朝首脳会談の展開に、中国は何かしら影響を及ぼしているでしょうか。もしくは、北朝鮮が交渉を有利に進めるため中国の存在を利用したことは。

宮家:私はあまりなかったと思います。金委員長と習近平(シー・ジンピン)国家主席が大連で2度目の会談をした後、北朝鮮の姿勢が強気になったと見る向きが、トランプ大統領を含め、あります。しかし、会っても会わなくても、結果は変わらなかったのではないでしょうか。中国に言われたくらいで、北朝鮮が核に対する基本方針を変えるようなことはありません。

私は「中国は北朝鮮の後ろ盾」という見方に与しません。もちろん、この点については別の意見もあり得ると思います。

—だとすると、中国は影響力の回復を目指して巻き返しに転じるかもしれませんね。

宮家:それはあり得る話だと思います。6カ国協議の議長国を務めていた国です。それに比べると、今の状況は忸怩たるものがあるでしょう。

例えば中朝間の貿易を拡大することがそのための手段になりえるかもしれません。そうだとすれば、中国は経済制裁の緩和を求める動きを強めるでしょう。

イランの核問題とはリンクしない

—米国は5月8日、イランとの核合意から離脱決定を下しました。このことは米朝首脳会談に影響を与えたでしょうか。

トランプ大統領は首脳会談後の記者会見で「核の問題を第1に考えている。だからイランとの核合意から離脱した」と言及しました。

宮家:その影響もあまりないでしょう。もし米国が、イランに対するのと同様に北朝鮮に対するならば、より厳しい姿勢を示したはずです。しかし、そうはなっていません。

北朝鮮とイランでは核兵器の開発状況が全く異なるからです。イランは核兵器を保有していません。仮に有事に至っても、米国は通常兵器だけで対応ができます。一方の北朝鮮は実質的には核保有国です。事の進展によっては核戦争にもつながりかねません。軍事的な手段だけでは、北朝鮮問題は解決できないのです。

冷戦期の欧州に学ぶ日本の核抑止

—北朝鮮の非核化が進まないとすると、日本は抑止能力を高める必要がありませんか。

宮家:おっしゃるとおりです。お金はかかりますが、イージスアショア*などを導入し、ミサイル防衛の精度を高め、守りを固める必要があるでしょう。

*:陸上配備型の弾道ミサイル迎撃システム

—西欧諸国は冷戦時代、ソ連が中距離核ミサイル「SS20」を配備したのに対抗して、米国製の「パーシングII」とGLCM(地上発射巡航ミサイル)を配備。抑止力を高めると同時に、中距離核の廃棄に向けた交渉を開始すると決定しました。同様の選択肢を検討するよう主張する人がいます。

宮家:そうした選択肢をタブー視して排除する時代ではなくなったと感じています。議論はするべき。欧州がおよそ40年前に行ったいわゆる「デカップリング」*の議論から学び、この危機を乗り越えていかなければなりません。

*:ソ連がSS20で西欧を攻撃した場合に、米国が本土に配備した戦略核で報復すると、今度は米本土がソ連から報復を受ける可能性が生じる。「それでも米国は西欧を守るのかと」の疑念が西欧で起こった。これが同盟の「デカップリング(切り離し)」問題と呼ばれる。パーシングIIとGLCMの配備はこの問題に対する一つの回答だった

もちろん、日本自身が核武装することは難しいでしょう。核武装しても負担するコストが大きくなってしまい、結局ペイしないと考えます。しかし、そのことを議論すること自体は抑止力になる。中国は逆上するかもしれませんが。例えば、NATO(北大西洋条約機構)で行われているように、核弾頭付き巡航ミサイルを日本に数発配備する案などはより現実的な検討課題でしょう。

戦争でもなく、平和でもない

—最後に、朝鮮半島の今後についてうかがいます。どのような状態が想定されますか。

宮家:戦争ではないけれども、かといって平和でもない状態が続くと考えます。どうやら、戦争は起こりそうもない方向に動いています。しかし、非核化も進みそうにありません。安定しているのか、不安定なのかも、よくわからない。こうしたスッキリしない状態が常態化する。

そして、長い目で見れば北朝鮮が優勢勝ちする可能性が大です。

日本は安全保障政策を考え直す必要に直面するかもしれません。その時には、自前の装備による核抑止も議論に上る可能性がある。私はこれを勧めているのではありません。しかし、議論を強いられることはあるでしょう。

高濱記事

合意事項は、漠然としたものにとどまった(写真:AP/アフロ)

—米朝首脳会談が終わりました。米国内の反響はどうですか。

高濱:米国のテレビはドナルド・トランプ米大統領と金正恩・朝鮮労働党委員長との歴史的握手の瞬間を中継で報じました。

新聞各紙の電子版は両首脳が握手をした6月12日午前9時(日本時間同10時)直後、「歴史的な出会い」とか「北朝鮮の国家元首と会談する最初の米大統領」といった見出しをつけていました。

しかし米朝首脳会談が終わり、共同声明が出るや、具体策に欠ける点を厳しく指摘しています。「非核化がすぐ始まるとしているが、その詳細には触れていない」(米ニューヨーク・タイムズ)。「米国が求めてきた完全で検証可能かつ不可逆的な非核化(CVID)を実現させるプロセスに言及していない」(米ウォール・ストリート・ジャーナル)。

トランプ大統領の記者会見の模様を、筆者と一緒にテレビで見ていた口の悪いリベラル派の米ジャーナリストはこう言いました。「両首脳はこの瞬間を作るだけで、今回の会談の目的の8~9割は達成できたと思ったのではないか。ところがどっこい、メディアはそう簡単には騙せないよ」

トランプ大統領は「記念撮影だけには終わらせたくない」と言っていました。そんなことを言ったのは、両首脳が握手する場面が世界中に流れることをやはり意識していたからなのでしょうね。なにしろ、ご自身でショー番組の企画制作出演をしていた御仁ですから。

余談ですが、トランプ支持を鮮明にしている保守系のフォックス・ニュースの女性アンカーのエビィ・ハンツマン氏が会談直前にこんなリポートをしてしまいました。

二人の『独裁者』による米朝首脳会談。その結果がどうなろうともこれは歴史です」とやってしまったのです。放映直後、この女性アンカーはツイッター上で平謝りしていました。

ただし、金正恩委員長は、人権抑圧政策を続ける世界に冠たる独裁者。一方のトランプ大統領も大統領特権を使ってまでロシア疑惑捜査を阻止しようとする「独裁者」です。女性アンカーの発言は言いえて妙でした(笑)。トランプ大統領は北朝鮮の人権問題について厳しく批判するようなことはしませんでしたから。

米一般市民は「歴史的会談」にも関心なし

—米朝首脳が握手する光景をテレビで見て、米国民はエキサイトしたでしょうね。

高濱:それが、そうではないのです。人にもよりますけど。日本や韓国のように国を挙げて、という感じではありません。

騒いでいるのはメディアだけ、などと言うと叱られるかもしれませんが(笑)。筆者が住んでいるロサンゼルス近郊の市民に聞いてみたところ、米朝首脳会談にあまり関心はないようです。

都会だからそうなのかもしれないと思い、中西部のアパラチア山脈地域に住むベイカーさん(55歳、零細農業経営者)に電話で聞いてみました。同氏は中低所得の白人層の典型です。

彼はこう答えました。「テレビは見ない。さっきラッシュ・リンボー*のラジオで知った。6600マイルも離れているアジアの国の独裁者が核兵器を持とうが持つまいが、俺らには関係ないよ。わが大統領が『リトル・ロケットマン』(トランプ大統領がかって金正恩委員長を小ばかにしてこう呼んでいた)に会おうと会うまいと俺の生活には無関係だしね」

*:ラッシュ・リンボー氏は保守系全米人気ラジオ番組のホスト人気コメンテーター。毎日正午から午後3時(東部時間)放送されている。リスナーは週平均1325万人。中西部、南部の白人大衆層に圧倒的な影響力を持っている。

メディアは「具体策欠如」を批判

—首脳会談の中身について、米国の専門家や知識層はどう評価していますか。

高濱:トランプ大統領と金委員長は会談後、会談内容を踏まえた共同声明に署名しました。同大統領は「包括的なものだ。できるだけ迅速に(文書の内容を具体化する)プロセスを進める」と言明しました。

共同声明には次の点を明記しました。

  1. トランプ大統領は北朝鮮の体制保証を約束し、金正恩委員長は朝鮮半島の完全な非核化に断固取り組むことを確認
  2. 米朝は永続的で安定的な朝鮮半島の平和体制構築に共に努力する
  3. 米朝は新たな関係を構築する

またトランプ大統領は「金委員長を絶対にホワイトハウスに招く」と語り、2回目の首脳会談を行う意向を明らかにしました。中間選挙前にもう一度「政治ショー」をやって共和党を勝利に導こうという選挙戦術の一環なのでしょうね。

米メディアが今回の米朝首脳会談に辛い点数をつける伏線は会談の前からありました。米朝首脳会談の開催を決めてから6月12日までの2カ月ちょっと、政府部内の専門家や官僚を一切遠ざけて、一握りの側近と策を練るトランプ流に厳しい目を向けていたのです。米メディアは、トランプ大統領の政治手法を、「seat-of-the pants」(計画を立てずに勘やフィーリングで事を進める)とか、「wing it」(役者がセリフを覚えずに舞台に立ち、芝居の最中、袖にいる付け人にセリフをささやいてもらうこと)という表現で報じてきました。

トランプ大統領がこうした手法をとったのは米朝首脳会談だけではありません。米朝首脳会談の直前、同大統領は先進国首脳会議(G7)で自由貿易をめぐって西側同盟諸国と大喧嘩をしました。戦後の国際秩序において最も重要な欧米関係は崩れかねない状況になっています。

特別検察官の「聴取」を逃れるためのシンガポール行き?

—準備不足を指摘されながらどうして、トランプ大統領は米朝首脳会談に意欲を燃やしたのですか。

高濱:よく言われているように北朝鮮の金正恩委員長と会って脚光を浴び、あわよくばノーベル平和賞をもらい、返す刀で支持率を盛り返して秋の中間選挙で共和党大勝利をもくろんでいるから、というのはどうやら本心のようです。

でもワシントン政界にはこんな説もまことしやかに流れています。

<ロシアゲートを捜査するロバート・モラー特別検察官チームは大統領に対する聴取を要求してきた。これを逃れる手段として米朝首脳会談を利用した。外交上の理由で聴取を蹴るよう弁護団に指示した>

米朝首脳会談で成果を上げれば、自分に対する疑惑もすっ飛ぶのではないか、と考えたというのです。どこまで真実かは別としてトランプ大統領は大統領特権を行使して捜査を中止させようとしています。これに対しモラー特別検察官は、同大統領が聴取を拒否するなら召喚状を出す構えです。

トランプ大統領が主張する「非核化」は進展したのか

—米朝首脳会談で「非核化」は進展したのでしょうか。

高濱:共同声明だけではその辺がはっきりしません。これから議会やメディアが徹底検証することになるでしょう。

非核化が具体的に進むためには北朝鮮がいつからいつまでに核を破棄するというスケジュール表が必要です。

米国にとっての最善のシナリオは、北朝鮮が保有している核兵器を「CVID」することです。このことが共同声明に明記されていないのが気がかりです。

百歩譲って、共同声明に盛り込まれた事項をこれから進めていくのに不可欠なことを考えた場合、「核兵器を廃棄するための具体的で筋の通った共通の目標、組織、原則を明確に示す必要がある」と指摘しています。

“A Peace Treaty for the Korean peninsula: Will the Past be Prologue?”Charles Kartman, 38 North, 6/11/2018)

拉致問題はトランプ大統領の「リップサービス」?

—最後に安倍首相が最後の最後までトランプ大統領に懇願した拉致問題について、米朝首脳会談で言及したのでしょうか。

高濱:トランプ大統領は記者会見で、「金委員長との会談で拉致問題について言及した」と明らかにしました。同大統領は、会談前に安倍首相と電話でやりとりした際、「必ず取り上げる」と確約していました。

会談と直接関係はないのですが、ワシントン外交筋からこんな話を聞きました。「トランプ大統領が拉致問題を持ち出すと言ったのは、安倍首相の国内的立場をおもんぱかったリップサービスだ。米国が北朝鮮に『日本人を返せ』とは言えない。米国にとって日本人の拉致被害者救出問題は、非核化や対北朝鮮経済制裁解除に比べて優先すべき問題ではない。口利きはするが、実際に北朝鮮と交渉するのは日本政府。交渉は日朝首脳間でやってくれ、ということだ」

「もう一つ、米政府内部には、北朝鮮が終始言っている『拉致問題は解決済み』という立場に留意する者もいる。つまり、日本政府は拉致被害者の存否に関する諸情報を徹底調査する必要があるというのだ」

「世紀の首脳会談」の第1幕は一応幕を閉じた。すでに米メディアから批判が上がっている。再び幕が開くのはいつか。ワシントン政界筋の間では「中間選挙直前」といった臆測が早くも飛び交っている。

ロイター記事

6月12日、米朝首脳会談でトランプ米大統領が拉致問題を提起したことに、日本の政府内では安堵(あんど)の声が聞かれた。写真は7日、ワシントンでトランプ大統領との記者会見に臨む安倍晋三首相(2018年 ロイター/Carlos Barria)

[東京 12日 ロイター] – 12日の米朝首脳会談でトランプ米大統領が拉致問題を提起したことに、日本の政府内では安堵(あんど)の声が聞かれた。しかし、会談で北朝鮮の非核化に向けた具体的な進展はなく、すべてはこれから。

日本は北朝鮮との首脳会談を早期に実現したい考えだったが、まだ米朝協議の行方を見極める必要がありそうだ。

日朝会談は「危険」

「日本にとって重要な拉致問題について、しっかりと言及していただいたことを高く評価する。トランプ大統領に感謝したい」──。米朝首脳会談後、安倍晋三首相は記者団にこう語った。

トランプ氏は米朝首脳会談後の会見で、金正恩朝鮮労働党委員長に日本人拉致問題を提起したと明言。共同文書に拉致の文言は盛り込まれなかったものの、「米国の大統領が北朝鮮との会談で取り上げたことに意味がある」と、日本の政府関係者は胸をなでおろした。

拉致問題を最重要課題と位置づける安倍政権は、米朝会談で拉致問題を提起してもらったうえで、早期の日朝首脳会談につなげることを狙っていた。核・ミサイル問題と歩調を合わせて拉致問題を解決し、国交正常化を目指すことを考えていた。

狙い通り拉致問題は米朝会談の議題に載ったものの、拓殖大学海外事情研究所長の川上高司教授は「このまま日朝首脳会談を開くのは危険だ」と指摘する。米朝の間で非核化に向けた成果がないまま、日本が拉致問題を前進させようとすると「日米の離反を招く。北朝鮮の狙い通りになる」と話す。

米朝は12日の首脳会談で「北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に取り組む」ことで合意したが、具体的な道筋は合意文書に盛り込まれなかった。トランプ大統領は会談後の会見で「極めて迅速に」非核化のプロセスが始まるとの見方を示したものの、詳細には踏み込まなかった。

「(合意文書には)何も新しいこと、具体的なことがなく、非常にがっかりした」と、元自衛艦隊司令官の香田洋二氏は言う。「トランプ大統領や側近は、過去の過ちは繰り返さないとは言っていたが、これではうまく行かないのではないか」と指摘する。

米韓演習は取りやめ

金政権の体制保証を約束したトランプ大統領は会見で、北朝鮮と協議をしている間は韓国との合同軍事演習は行わないと話した。「米側が具体的な行動を示したわけだから、金委員長にはプレッシャーになる。非核化に向けた具体的な行動を取らざるをえないだろう」と、海上自衛隊の元一佐で、笹川平和財団上席研究員の小原凡司氏は予測する。

しかし、金委員長がトランプ大統領に約束したとされるミサイルエンジン試験施設の破壊も、文書には明記されていない。北朝鮮が本当に核とミサイルの廃棄を進めるのか、不明なままだ。

自民党外交部会長の阿達雅志参議院議員は「交渉しようとこれまで間接的に言ってきた2人が、直接顔を合わせ、交渉に入りましょうと確認するための会談だった。すべてはこれからなのだろう」と言う。「日本が北朝鮮と会談をするには、もう少し米朝協議の行方を見る必要がある」と語る。

(久保信博、ティム・ケリー、竹本能文 編集:田巻一彦)

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『非核化の義務を負うのは「米朝」でなく「北朝鮮」 「核」より「お家の事情」が優先』(6/14日経ビジネスオンライン 重村智計)、『米朝首脳会談、「具体性なし」でも評価すべき理由』(6/14ダイヤモンドオンライン 北野幸伯)、『米朝合意 6.12後の世界(上) 非核化の裏、米中暗闘へ』(6/14日経朝刊)、『米朝合意 6.12後の世界(中) 金正恩氏が迫られる決断』(6/15日経朝刊)について

これから数日、米朝首脳会談の評価を書いた記事を紹介します。プラスに捉えるのもあれば、マイナスに捉える意見もあります。本日はプラスの意見を掲載します。小生も世に言うほど(特に米民主党系のメデイア)本会談が失敗だったとは思いません。表に出て来ない部分が必ずあるはずで、それを出すと金正恩が困るからだと思います。クーデターも起こりかねないからでしょう。

本ブログでジュリアーニの「会談実施を土下座して頼んで来た」発言(6/11ブログ)や鍛冶俊樹氏の「米国が金正恩の秘密口座凍結、金は金欠病」(6/13ブログ)という意見は合っているのでは。でないとプライドの高い金が頭を下げることはないでしょう。

重村氏の見方はこのところ的を射ていると思っています。中国人の書いた記事を何度か紹介しましたが、「中国は朝鮮半島に影響力を失うのではという恐怖感を指導部が持っている」ことは間違いありません。主体思想は中国からの独立を目指したものですから、理念どおりに北が動き出したのではないでしょうか。

北野氏の見立ては全面的に北を信頼はできないけど、会談は両者の信頼醸成の第一歩と捉えています。ポンペオが「大統領の任期までに非核化を実現」と発言していますので、交渉は進んでいく予感がします。北が世界に向け約束したのも同然で、これで反故にすれば、必ずや米国は躊躇わず北を攻撃するでしょう。

秋田氏も北は米中の牽制のカードとして捉えています。しかしオバマと言うのは本当に無能でした。取り巻きが悪いのもあったのでしょうけど。国務省はリベラルの巣窟だったので、結局武力行使を材料に使わなかったのでは。日本も自衛隊を軍に引き上げ、憲法改正しないと真面な外交は出来ません。拉致被害者の救出もできないのですから。旧社会党のように「拉致はない」といって憚らないような政党もありましたし。今その精神を受け継いでいるような左翼政党があります。選挙で落としませんと。米朝・日朝関係がうまく行けば、民潭・総連との関係を見直し、特別永住者の制度は廃止すべきです。

峯岸氏の記事ではトランプのデイールのやり方が功を奏したのではと言う思いです。飴(経済発展)と鞭(軍事攻撃の脅し)を上手く使ったという印象です。米国と良く連絡を取り合いながら、日朝会談に臨み、拉致被害者家族が生きている間に拉致被害者と会い、日本で生活できるようにしてあげたいです。日本政府の正念場です。

重村記事

両首脳の笑顔は何を意味するのか(写真:AFP/アフロ)

米朝首脳会談が行われた。共同声明には完全な非核化の進め方や期限についての言及がなく、失望を買っている。だが、重村智計・早稲田大学名誉教授は「非核化の主体を北朝鮮に限定したことの意義は大きい」と指摘する。その意味するところは……

ドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩委員長は12日、シンガポールでの会談後、共同声明に署名した。共同声明には、「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)への合意はなく、多くの失望と批判が聞かれる。

トランプ氏は、金正恩委員長が直面する北朝鮮軍部からの圧力に理解を示し、同委員長を追い詰めなかった。同委員長に「北朝鮮の完全な非核化」を約束させたのは、成果だ。二人はともに、国内での懸案を解消するため、「歴史的」会談を「ライブ中継」する演出を必要としたのだった。

首脳会談の真実は、冒頭40分間の二人だけの会談に隠されている。二人だけで何を話したのか。他の閣僚や高官に聞かせたくない本音を、語り合った。金正恩委員長が会談の冒頭でした発言は異例だった。緊張した表情で口を開くと、次の言葉が飛び出した。

「ここまで来るのはそれほど容易な道ではありませんでした。我々には足を引っ張る過去があり、誤った偏見と慣行が時に目と耳をふさいできたが、あらゆることを乗り越えてここの場にたどりついた」

会談の最後にもう一度、「我々は足かせとなっていた過去を果敢に克服した」と、感慨深げに語った(日本経済新聞6月13日朝刊)。

この言葉が何を意味するのかは、明らかだ。トランプ大統領が5月24日に発した「会談中止」騒動を指しているのではない。「足を引っ張った」のは誰なのか、明かに北朝鮮の国内事情や歴史、国際認識、「抵抗勢力」の存在である。「様々な障害」は、北朝鮮軍部を中心とした「抵抗勢力」の存在を、意味する。だから、首脳会談直前に、軍首脳3人を入れ替えたのだ。北朝鮮軍部の「抵抗」を抑えて、シンガポールまで来た事情を理解するよう、金正恩委員長はトランプ大統領に求めたとみられる。この思いが同大統領に伝わった。

完全な非核化よりお家の事情

米朝両首脳はともに、国内の「抵抗や批判」にさらされる共通の悩みを抱える。そのため、批判を抑えるための「ライブ・ショー」を共演した。米国では、11月の中間選挙に向けた選挙戦がすでに幕を開けた。中間選挙で共和党が勝利しないと、トランプ大統領は議会で弾劾されるかもしれない。支持率を上げる必要がある。

だから会談は、米国の夜のテレビニュースに間に合うように、日本時間午前10時(米東部時間午後9時)に始まった。米テレビは、いずれも緊急生中継で大々的に報じた。会談後の記者会見も、朝のモーニングショーに間に合うよう午後5時過ぎに設定された。米テレビは、特集で報じた。

トランプ大統領にとって今回の首脳会談は、「核問題解決」よりも「中間選挙対策」が大きな目的だった。中間選挙で負ければ、大統領弾劾の危機に直面し、核問題も解決できない。

一方、金正恩委員長も国内の「抵抗勢力」による「暗殺」や「クーデター」の危険が常にある。軍部の中には、口には出さないが「核放棄反対」「米帝の首魁と会談するなどとんでもない」との空気がある。それを抑えるために、米韓合同軍事演習の中止などの成果がほしい。だから、トランプ大統領は「米韓合同軍事演習中止」に言及してあげた。

朝鮮半島の非核化は「北朝鮮の非核化」

共同声明は、当初期待されたCVIDに、まったく触れなかった。これに対して「成果がない」との声が聞かれる。トランプ大統領は、記者会見で「そこまで時間が足りなかった」と正直に述べ、米朝高官による交渉を直ちに開始すると語った。

それでも、共同声明には注目すべき表現があった。声明は「金正恩委員長が『朝鮮半島の完全な非核化』を再確認した」と2度も触れた。板門店宣言においてこれまでの北朝鮮の「朝鮮半島の完全な非核化」は、南北朝鮮が共に行うとの表現で合意されていた。

この表現は、完全な非核化は北朝鮮だけが行うのではなく、韓国も行うとの意味を含んでいた。韓国は核兵器を保有しないが、北朝鮮は「米国の核の傘」の撤去を求めた。これは、米国がグアムに配備する核の撤去をも含む表現であった。つまり、北朝鮮の立場は、「朝鮮半島の非核化」は、米国がアジア太平洋で非核化することも含んでいた。

米朝首脳会談の共同声明は、北朝鮮によるこの解釈を明確に退けた。共同声明は、「北朝鮮が朝鮮半島の非核化」を約束したと表現している。「米国と北朝鮮は、朝鮮半島の非核化を約束した」とは、表現していない。完全な非核化をする主語は、「北朝鮮」だけであった。これは、「朝鮮半島の完全な非核化」は金正恩委員長が取り組み実行する、との意味になる。「米国の核の傘」問題は、なくなったのだ。

この結果、共同声明は「朝鮮半島の完全な非核化」との表現を使ってはいるが、「北朝鮮の非核化」を意味することになる。そのうえで、ポンペオ米国務長官が「できるだけ早い日程で」北朝鮮高官と交渉に入ると明記しており、「核交渉」は継続される。これが、「非核化」についての首脳会談の唯一の成果であろう

北朝鮮が米国の影響下に

米朝の歴史の中で、両首脳が初めて信頼関係を築いた意味は大きい。現代の国際政治は、首脳同士が直接話しあい、問題を解決する。米朝の首脳外交が、幕を開けた意味は小さくない。北朝鮮は、中国に対して「米国カード」を使えるようになった。

朝鮮半島の国際政治は、これまで中国だけが朝鮮半島の南北両国に大きな影響力を持っていた。米朝首脳会談の実現で、米国の影響力が初めて南北双方に及ぶことになった。北朝鮮の指導者が、米国大統領に直接連絡し、話し合える時代が訪れた意味は大きい。

金正恩委員長のワシントン訪問とトランプ大統領の訪朝が、年内に実現する可能性が高い。朝鮮半島の国際関係は、変化する。

拉致問題の解決へ前進

トランプ大統領は、拉致問題を解決するよう金正恩委員長に伝えた。米国の指導者が、日本の拉致問題解決を北朝鮮指導者に求めたのは、初めてだ。金正恩委員長は、米国が強い関心を持っている事実を告げられたから、対応せざるをえない。年内に日朝首脳会談が開かれる可能性が、出て来た。

北朝鮮高官によると、金正恩委員長はすでに昨年はじめ、拉致被害者を管理する「国家保衛部」に拉致問題への取り組みを準備するよう命じた、という。

米朝首脳会談が日本に対してもたらした最大の成果は、トランプ大統領が拉致問題に言及したことだ。これまで中国やロシアの指導者が、北朝鮮の指導者に拉致問題の解決を求めたことはなかった。日本と北朝鮮の問題であり、大国が介入する義理はなかった。トランプ大統領と安倍首相の信頼関係が、拉致問題の前進に効果を上げた。

首脳会談は、米朝の指導者による公式の話し合いで、これまでのような外務次官や国務次官補の低いレベルの約束とは違う。発言と要求、回答はすべて記録される。米朝首脳の共同声明と公式発言は、拘束力を持つ重要な外交約束になる。

北野記事

トランプと金正恩が12日、シンガポールで米朝首脳会談を行った。両首脳は何を話し合い、何に合意したのか?これから、米国と北朝鮮はどうなっていくのだろうか?(国際関係アナリスト 北野幸伯)

溝が埋まらないまま開催された米朝首脳会談

「完全非核化」の見返りは「体制保証」――これが今回のディールの核心である。共同声明の中身に具体性が乏しいとの批判もあるが、今の段階でそれを憂える必要はあまりない Photo:AFP/AFLO

まず、これまでの経緯を振り返ってみよう。2017年、北朝鮮は核実験、ミサイル実験を狂ったように繰り返していた。トランプは激怒し、誰もが米朝戦争勃発を恐れていた。

この時期、北朝鮮へのスタンスに関して、世界は2つの陣営に分かれていた。すなわち中国とロシアを中心とする「対話派」と、日本、米国を中心とする「圧力派」だ。

中ロは「前提条件なしの対話」による、北朝鮮核問題の解決を主張していた。一方、圧力派も戦争を欲していたわけではない。圧力派は「非核化前提の対話」を求めていたのだ。

2018年になると、北朝鮮が大きく動いた。

1月1日、金正恩は「韓国と対話する準備がある」と宣言。
1月9日、「南北会談」が再開された。
3月5日、金は訪朝した韓国特使団と会談。

一連の流れを受けて3月8日、とうとう米国も動いた。トランプが「金正恩と会う」と宣言したのだ。事前に何の相談もなかった日本は、衝撃を受ける。確かに唐突ではあったが、実をいうと当然の流れだった。というのも、金は、韓国特使団に「非核化前提の対話をする準備がある」と伝えたからだ。

金が圧力派の条件をのんだので、米朝対話が始まるのは、論理的に当然だったのだ。

トランプのいきなりの動きに慌てた日本だったが、ほどなく落ち着きを取り戻した。この時点で「圧力派」は消滅し、世界中が「対話派」になっている。
しかし今度は、「対話派」の中で意見が2つに割れた。北朝鮮、中国、ロシア、韓国は「段階的非核化」「段階的制裁解除」を主張。一方、日本と米国は「非核化後に制裁解除」を主張した。

4月27日、歴史的な南北首脳会談が開催される。この後、世界の注目は、来るべき米朝首脳会談に移った。ところが、会談が始まるまで両国の溝は埋まらなかった。

米国vs北朝鮮で食い違い 論点はどこにあったのか?

米国は、北朝鮮がウソをつき続けてきたことを知っている。1994年、北朝鮮は「核開発凍結」を確約し、見返りに軽水炉、食料、毎年50万トンの重油を受け取った。しかし、彼らは密かに核開発を継続していた。

2005年9月、金正恩の父・正日は、「6ヵ国共同宣言」で「核兵器放棄」を宣言している。しかし、現状を見れば、それもウソだったことは明らかだ。

米国は北朝鮮にだまされることを警戒し、「CVID」(=Complete, Verifiable, and Irreversible Denuclearization、完全かつ検証可能で不可逆的な核廃棄)を主張するようになる。

さらにネオコンの大物・ボルトン大統領補佐官は、北朝鮮問題を「リビア方式」で解決すると述べた。03年、リビアのカダフィ大佐は核開発を放棄し、制裁は解除された。しかし11年、彼は米国が支援する「反体制派」に捕まり、惨殺されている。
「CVID」や「リビア方式」に、北は激しく反発。北朝鮮の崔善姫(チェ・ソンヒ)外務次官は5月24日、6月12日の米朝首脳会談の中止をにおわせ、さらに「核による最終決戦」の可能性を警告した。

これを受けて、トランプは同日、「米朝首脳会談は行われない」と宣言。慌てた北朝鮮がへりくだってきたので、トランプは25日、「やはり会談をする」といい、また世界を仰天させた。

いずれにしても、会談ギリギリまで、米朝の立場は異なっていた。米国は「CVID」を、北は「段階的非核化」を主張していた。

米朝の「ディール」の核心は何か?

トランプと金は会談後、共同声明に署名した。どのような内容だったのだろうか?

1.米朝の新関係(双方の平和と繁栄)
2.朝鮮半島の平和的な体制保証
3.北朝鮮が板門店宣言に基づき、朝鮮半島の完全非核化に取り組む
4.米朝は戦争捕虜遺骨の回収で協力

重要なのは、北朝鮮が「完全非核化」をし、その見返りに米国が北朝鮮の「体制保証」、つまり金正恩体制の継続を保証するという部分だ。これがディールの核心である。

金は会談当初、とても緊張している様子だった。しかし、トランプとの一対一の会談後、笑顔をしばしば見せるようになった。これはあくまで想像だが、トランプは、金にかなり説得力のある形で「体制保証」を確約したのではないだろうか。

共同声明の中に、米国が今まで主張してきた「CVID」という言葉はなかった。この部分を指摘し、批判する人は多いだろう。これは、米国が譲歩したのだろうか?

おそらく、そうだろう。しかし救いはある。

トランプは、共同声明署名後の記者会見で、「制裁を続ける」と断言した。つまり、1994年や2005年のように、「北朝鮮の口約束だけで制裁を解除したり、支援したりしない」ということだ。

では、いつ制裁は解除されるのだろうか?トランプは、「核問題が重要ではなくなった時点で考える」としている。つまり、「非核化」がある程度進み、「北は後戻りできなくなった」と判断した時点で解除されるということだろう。

共同文書に、「CVID」という言葉や、非核化までの「タイムテーブル」がなかった件に関して、トランプは「非核化までには時間がかかる。しかし、プロセスを始めれば、終わったも同然だ」と答えた。実際、「完全非核化」には6~10年かかるといわれている。

では、金正恩はいつ、非核化を開始するのか?トランプは「彼はすぐプロセスに着手するだろう」と答えた。

「中身が具体的ではない」ことに落胆しなくていい理由

トランプ・金会談の結果については、「CVIDの約束をさせることができなかった」「中身が具体的でない」「タイムテーブルがない」など、多くの批判が出ることが予想される。

しかし筆者は、この会談は「大成功だった」と考える。なぜか?

2017年、世界は「核戦争の恐怖」におびえていた。トランプは、金のことを「チビ、デブ、ロケットマン」と呼び、金はトランプのことを「老いぼれ!」とののしっていた。
ところが今回の会談後、トランプは金のことを「才能のある素晴らしい人物」と絶賛した。さらに、金を「ホワイトハウスに招く」と言い、自身が平壌を訪問する可能性もあると語った。

また、トランプは「米韓合同軍事演習」を中止する可能性についても言及している。

米朝最大の問題は、米国は北朝鮮を、北朝鮮は米国を「ウソつきだ」と確信してきたことだ。だから、「ディール」を前進させる前に、信頼醸成が必要なのだ。そういう意味で、今回の会談は大きな意味を持っていた。そして、トランプと金は、これから何度も会うことになるだろう。

共同声明に「具体性」や「タイムテーブル」がなかった点も、現段階で危惧する必要はない。

トップの仕事は、「大きな方向性を示すこと」だ。トップは方針を決め、具体的なことは下の実務者が行う。それが普通ではないだろうか?実際、トランプは「ポンぺオ国務長官が協議を続けていく」と語った。共同声明の具体化については、これから国務省が取り組んでいくのだ。

今後の焦点はIAEAの査察 受け入れれば金は本気だ

これから、米朝は、そして世界はどう変わっていくのだろうか?

まず、北朝鮮は目立つ形で非核化のアクションを起こすと予想される。金は、せっかく出来上がった「いいムード」を壊したくないはずだ。

もちろん、彼が本気で「完全非核化」を決意したかどうかを判断するのは時期尚早だろう。しかし、「非核化」が「不可逆」な段階まで進むまで、「制裁を続ける」とトランプは言っている。だから共同声明に「CVID」という言葉があったかどうかは、それほど大きな問題ではない。

金にとって核兵器よりも大切なのは「体制保証」である。これさえトランプが約束してくれれば、非核化は進んでいくはずだ。

今後の焦点は、北が国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れるかどうかである。これは、金の本気度を測る大きな指標となる。北が受け入れを表明すれば、世界は「どうやら本気らしい」と判断するだろう。

いずれにしても北朝鮮は、今後しばらく核実験やミサイル実験で、わが国や世界を脅かすことはないだろう。日本は、トランプが「非核化前に制裁解除」という過去の過ちを繰り返さなかったことを喜んでいい。

実際に、「完全非核化」は成るだろうか?現段階ではなんとも言えない。会談開催か中止かを巡って二転三転したように、トランプと金のことだから、何があるかわからない危うさは否めない。しかし、少なくとも「米朝首脳会談前より非核化の可能性は高まった」といえるだろう。

秋田記事

初めての顔合わせが実現したというほか、非核化ではさしたる成果もなく、米朝首脳会談は終わった。

米朝は史上初のトップ会談をテコに非核化プロセスに取り組む(12日、シンガポール)=AP

「もはや、北朝鮮が核ミサイルを持つのを止められないだろう」。日本の政府関係者はこう落胆する。米朝交渉にかつて関わった元米政府高官からも、会談の結果を酷評する声が出る。

少なくとも理由は2つある。まず査察について何も合意できなかった。2005年の非核化合意では査察を明記したが、それでも破綻した。

第2に、非核化の期限も決められなかった。トランプ大統領は2年もすれば、大統領選に忙殺されてしまう。

「中国に頼らぬ」

前例のない米朝のトップ外交だけに今後、予期しない進展が生まれる余地もある。が、初戦は金正恩(キム・ジョンウン)委員長の勝利といわざるを得ない。

それでもトランプ氏が前のめりなのは11月の米中間選挙をにらみ、外交の手柄を焦るからだ。だが、別の思惑もある。米政権に通じた安全保障専門家はこう明かす。

「米朝のパイプを築き、いまほど中国に頼らず、北朝鮮問題に対応できるようにする。そうすれば、米国の国益を脅かすサイバーや通商、海洋問題で、もっと中国を締め上げられる」

トランプ氏がこんな思惑から米朝融和に走るとすれば、朝鮮半島をめぐり、米国と中ロの攻防はさらに熱を帯びる。

そもそも北朝鮮にとって、米朝の改善は宿願だ。米国から攻撃されるのを防ぐだけでなく、深まりすぎた中国への依存を減らし、衛星国になるのを避けたいからだ。

「私たちが手を組み、一緒に中国に対抗しようではないか」。元米政府高官によると、北朝鮮はオバマ前政権当時から、ひそかに米側にこう打診し続けていたという。

米朝が急接近すれば、中国は将来、米国の「準友好国」を隣に抱え込む羽目になりかねない。米国勢力の浸透を恐れる中国からすれば、決して許せないシナリオだ。

対立が招く悪夢

そうならないよう、習近平(シー・ジンピン)国家主席は北朝鮮に圧力をかける。「大事な戦略については互いに必ず、事前に協議する」。中国外交ブレーンによると、彼は5月上旬、金正恩氏の2度目の訪中を受け入れた際に、こんな言質を取りつけた。

中国は同じ思惑から、表で非核化を支持しながらも、裏ではその実現を遅らせようとするかもしれない。一括ではなく、段階的な非核化を主張するのはこの一環だ。

朝鮮半島で米国の影響力が強まるのを阻止したい点では、ロシアも同じだ。習氏はプーチン大統領と組み、米朝主導の非核化交渉へのけん制を強めるだろう。

中ロの意図に気づいたトランプ氏は5月上旬の電話で、米朝のディール(取引)を邪魔しないでもらいたい、と習氏に警告したという。

世界秩序をめぐって対立する米国と中ロが、北朝鮮問題で結束するのは、そもそも容易ではない。だが、大国がいがみあえば、対北包囲網はさらに緩んでしまう。北朝鮮は時間を稼ぎ、核武装を進めるだろう。

そのような展開は米中ロだけでなく、北朝鮮のミサイル射程内にある日本と韓国にとって、さらに深刻な悪夢だ。

大国攻防の果てに、残った勝者は北朝鮮だけだった……。こんな結末は、何としても避けなければならない。(本社コメンテーター 秋田浩之)

峯岸記事

「朝米首脳会談は最も敵対的だった両国の関係を画期的に転換させていくうえで巨大な出来事となる」。シンガポールでの金正恩(キム・ジョンウン)委員長とトランプ米大統領の会談から一夜明けた13日。北朝鮮メディアは誇らしげに伝えた。

11日、シンガポールの観光名所を訪れた金正恩委員長=朝鮮中央通信撮影・共同

伝統の戦術踏襲

最大の焦点だった非核化は、朝鮮半島の平和と安定、非核化を実現する過程で「段階別、同時行動原則」を順守するのが重要との認識で一致したと紹介した。非核化措置を切り売りしながら制裁緩和の見返りを手に入れて時間を稼ぐ。北朝鮮ペースにはまったとの見立てが浮かぶのは自然だ。だが、史上初めて米朝の最高権力者が直接会って合意を交わした意味は軽くない。

共同声明に盛り込まれた見慣れない表現には、米国の変化が投影されている。「新たな米朝関係の確立が朝鮮半島と世界の平和と繁栄に寄与すると確信し、相互の信頼醸成によって朝鮮半島の非核化を促進できる……」

つまり、米朝が相互に敵視するのをやめてこそ非核化を導きだせるという論理で、北朝鮮の主張に沿う。米国が堅持してきた「まず核放棄」とは逆の新しいアプローチだ。前政権の政策や手法をことごとく否定してきた異端の大統領だからこそ踏み切れた大胆な方針転換だ。

トランプ氏は米韓合同軍事演習の中止も表明した。戦争の危機さえ漂っていた半島の緊張は緩和する。北朝鮮は当面、対話路線を続け、非核化にも前向きな姿勢をとるだろうが、問題はその先だ。

トランプ氏は12日の会談で、タブレット端末を使い金正恩氏に約4分間の映像を見せた。ミサイルや戦闘機が映し出された場面と北朝鮮各地に明かりがともりビル建設が進む様子。「結果は2つだけ。過去に戻るのか、前に進むのか」。好対照の映像は金正恩氏へのメッセージだ。

北朝鮮が切望していた安全の保証というプレゼントを与えても、非核化の約束を破れば元に戻るとの無言の圧力を米国はかけている。軍事演習の中止も「対話が続いている間」との条件付きだ。

「経済集中」にカジ

金正恩氏は今年に入って核開発と経済建設の並進路線に区切りをつけ、「経済集中」にカジを切った。外国企業や投資を呼び込もうにも、非核化を進めなければ援助や資金は入ってこないジレンマを抱える。米朝の融和モードを保たなければ経済重視路線の足取りはおぼつかない。「完全に非核化するのか、しないのか」。金正恩氏は時間稼ぎをしても、いずれ決断をしなければならない局面に追いつめられる。

韓国は非核化プロセスの進展を待ち構えている。米朝をとりもった韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は、開城工業団地の再稼働など南北経済協力への意欲を隠さない。韓国紙・毎日経済新聞が7日の経済フォーラムに参加した企業を対象にアンケートしたところ、約7割が制裁が解除されれば北朝鮮投資を検討すると答えた。ロッテグループや通信大手のKTなどの大手企業も制裁解除をにらみ、食品や物流、通信インフラといった分野で北朝鮮事業の可能性を探り始めた。

金正恩氏は4月の南北首脳会談で「いつでも日本と対話する用意がある」と話し、米朝首脳会談でもトランプ氏に日朝対話にオープンな姿勢を示していた。本格的な経済建設には日本からの資金協力も欠かせない。日朝に舞台が移る日も近付いている。(シンガポールで、編集委員 峯岸博)

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『女優・范冰冰に脱税疑惑? 芸能ゴシップを深読み 軍部関与もささやかれる「陰陽契約」の実態』(6/13日経ビジネスオンライン 福島香織)について

6/7阿波罗新闻网<狡兔三窟!不止政协委员冯小刚 范冰冰郭德纲等大陆明星纷纷海外置产=狡兎は難を逃れるのが上手い 政協委員の馮小剛に止まらず範氷氷、郭徳綱等大陸のスターが次々と海外に資産を置く>馮小強は米国に900万$の不動産、女性スターの範氷氷はカナダに不動産を購入して賃貸、漫才の郭徳綱はオーストラリアに222万豪$でシャトー付の豪邸を購入、女性歌手の田震はシドニー富裕層地区に1100万豪$で豪邸を購入。崔永元(有名アナウンサー)が微博(チャット)で馮小強について暴露。他はメデイアが暴露。

http://www.aboluowang.com/2018/0607/1126226.html

6/8阿波罗新闻网<陰陽合同事件反轉?崔永元好友被發追逃公告 中宣部下令官媒噤聲=二重契約事件が反転 崔永元の友人はお尋ね者になる 中共宣伝部はメデイアに報道を禁じる>6日中央規律検査委員会(王岐山がトップでいた所)が職務関連犯罪や経済犯罪で逃亡中の50人の名前を公表した。この中に崔永元の友人の快鹿集団(上海で不動産業、映画製作)の元会長・施建祥が入っていた。崔永元が範氷氷の二重契約で脱税を図ったことを暴露した後、すぐに世論が沸騰し、官製メデイアが脱税を取り締まると発表したため、演劇界は騒然となった。為に中共宣伝部は報道を禁じた。施建祥は2016年3月に米国に逃亡、2017年1月に国際刑事機構のレッドノーテイス(犯人引渡要請)が発給された。演劇界では不法に金を集め、マネロンしている。範氷氷と婚約者の李晨は二人でラスベガスで豪遊、1500万$の小切手の内、1200万をすり、残りはヘリでの大峡谷観覧をした。マネロン目的でバクチをしている。

http://tw.aboluowang.com/2018/0608/1126511.html

6/9看中国<崔永元发飙事件折射大陆社会病态(图)=崔永元が引き起こした事件は大陸社会の病態を表す>崔永元は15年前に「携帯電話」(電話で不倫がばれる)という映画のモデルにされ、彼と家族が傷ついたにも拘わらず、その2作目を馮小剛監督、範氷氷主演で作ろうとしたため崔永元が彼らの不都合な真実を暴露した。しかし大衆は崔永元に関心がなく、範氷氷の脱税問題と「国家精神象徴の栄誉」を受賞したことに対して関心が集中した。範氷氷が受賞した「国家精神象徴の栄誉」は一種の社会風刺ではないか。実際全体主義制度下の国家精神とは、どんな良いものもそぐわない。臣従精神、阿諛精神、貧しきを嫌い、富を愛する精神、弱きを挫き強きに媚び諂う精神、是非を問わず、成功か失敗かだけを問う精神以外にない。

https://www.secretchina.com/news/gb/2018/06/09/861168.html

6/14日経朝刊<中国、海外で商標出願急増 政府が補助金

中国が世界で商標の出願を増やしている。日米欧での出願は2017年までの3年で7倍近くに急増した。中国政府が世界的なブランド育成を目標に掲げ、国外での商標を含む知的財産権の出願に補助金を出している。政府の過度なテコ入れは安易な出願を招き、企業活動に混乱が生じかねない。中国国内で相次ぐ商標登録を巡るトラブルが国外に“輸出”されることへの警戒感も強まっている。

中国から日本への出願件数は17年に8464件と14年比で5倍強に増えた。国別トップの米国(8789件)との差を急速に縮め、18年には逆転する勢いだ。欧州連合知的財産庁への出願も14年比で4倍強に増加した。

米国は日欧と統計の取り方が異なるが、中国からの出願が8倍に急増。17会計年度(16年10月~17年9月)は全出願の8.5%を占めた。英国やカナダ、ドイツを引き離し、圧倒的に多い。

商標は知的財産権の1つ。自社と他社の商品を区別するための文字や記号、図形などを指す。認められれば独占的に使用でき、企業のブランド戦略に欠かせない権利だ。

中国政府は17年に「商標ブランド戦略を徹底的に実施する」との方針を策定し国外での商標登録の後押しを始めた。外国で商標を申請する企業に補助金を支給する。中国メディアによると、浙江省では欧米での商標登録費用の5割、発展途上国では7割を補填する。

米国にはインターネットで雑貨などを販売する零細業者による出願が目立つ。補助金目当てとみられる申請も多く、米ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、ほぼ同じデザインの服に異なるロゴをつけた出願が何枚も届いた事例が確認されている。出願の殺到で他の申請者の処理が遅れる懸念がある。

商標の出願競争は先進国でも行われており、知財保護のために必要なことだ。だが補助金を使って急激に拡大させる中国の手法は競争をゆがめ、企業活動に混乱を招きかねない。

商標登録が専門の米ガーベン法律事務所の弁護士ジョシュ・ガーベン氏は「中国の補助金は米国の商標登録制度を傷つける意図がうかがえる」と指摘する。日本の特許庁も中国からの大量出願を警戒している。

中国で目立つ商標を巡るトラブルが日米欧で起きる事態も懸念される。

中国では09年に「今治タオル」を日本の団体が出願しようとしたが、別の企業が「今治」を出願済みだと当局に拒否された、などの事例がある。価値が出そうな商標を先回りして出願し、後で必要な企業に売って利益を得る例もあるとされる。

21世紀構想研究会の馬場錬成理事長は「中国では商標の先取りなどの問題と、先進的な知財戦略が併存している。国内外で当面、不正はなくならない」と解説する。>(以上)

中国人の基本的価値観は何時も言っていますように「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」というものです。信頼で成り立つ社会ではありません。外国人に対してだけでなく、中国人同士でもそうです。「他人のものは俺のもの、自分のものは当然自分のもの」という世界です。ですから知財・商標の問題でも国家を利用して、自分に有利になるようにします。トランプが不公正と言うのは尤もでしょう。今まで中国は海賊版を沢山作って、製作者の利益を盗み、今度は知財法を使って囲い込みを図るのは余りに自己中でしょう。中国との貿易を禁じれば良い。

“中国男人没有仁义、中国女人没有贞节、他们只有拜钱教=中国人男性には慈愛・高潔と言うものがなく、中国人女性には貞操観念がなく、彼らにあるのは金を有難がることだけ。”(中国語が正しいかどうかは分かりません。小生が作文しました。でも内容は合っていると思います)というのが当て嵌まるのでは。ここで言っています仁義は新渡戸の「武士道」の中の、仁=benevolence、義=rectitudeをイメージしています。貞節はそのまま、範氷氷の例で分かるように、金の為には権力者(王岐山)に近づき、身体を捧げ、不正をしても捕まらないようにしているという事です。範氷氷の顔は韓国整形美人を彷彿させますが。章子怡も張芸謀監督(北京オリンピック開会式総監督)の愛人だったと言う話です。まあ、中国では“Me Too”運動みたいなのは絶対に起こらないでしょう。何故なら女性の方から近づいて行くからです。セクハラはパワハラの一種ですが、権銭交易と権色交易は中国人にとっては長い歴史の中で当り前になっています。勿論、何清漣は、共産党政権になってからその程度が激甚になったと言っていますが。

中国では三重帳簿が当り前の国ですから、別に二重契約だって罪の意識なくできるのでしょう。でも中国語の記事を読みますと、やはり権力者と通じていると、簡単に不都合な真実に蓋をすることができると思わせます。やはり人治の国だけあります。左翼にシンパシーを持っている人は現実を良く見た方が良いでしょう。福島氏の記事にありますように習近平と彭麗媛は不仲で軍部ともうまく行っていないとすれば、世界平和の為に、クーデターを起こして習を排除するのが理想です。なお、ここに出てきます軍の歌姫の宋祖英は江沢民の愛人と言われています。

記事

脱税疑惑が持ち上がった人気女優の范冰冰(写真:AP/アフロ)

中国で最も美しいといわれる人気女優・范冰冰(ファン・ビンビン)の脱税疑惑が思わぬ方向に広がるかもしれない。単なる美人女優のスキャンダルでなく、これも権力闘争、しかも軍部がらみとなると気になるではないか。今回は芸能ゴシップを深読みしてみたい。

范冰冰は山東省出身、1981年生まれで、女優、歌手と多方面で活躍している。日本では日中合作映画「墨攻」に出演したことで知られ、サントリー・ウーロン茶のCMでも親しまれるようになった。最近では主演を務めた映画「わたしは潘金蓮じゃない」(馮小剛監督、2016)で、サン・セバスチャン国際映画祭の最優秀女優賞を受賞。カンヌ国際映画祭のレッドカーペットの常連でもあり、昨年はコンペティション部門の審査委員に選ばれて話題になった。彼女のファンには年配男性が多く、范爺と呼ばれている。

范の婚約者の李晨は、知名度はかなり劣るが人気の中国人俳優で、昨年の彼女の36回目の誕生日に正式にプロポーズ。このとき、李晨が愛の証に贈った范冰冰そっくりの人形が、マリーナ・ビチコバという世界的に有名な人形師に特注したものでお値段30万ドル、というのも話題となった。

そんな大人気女優の范冰冰だが、黒い噂が一つあった。元国家副主席で2017年までは中央規律検査委員会書記として反腐敗キャンペーンの陣頭指揮をとっていた王岐山の愛人であったという噂だ。この噂の出元は、米国に逃亡した巨額汚職容疑で国際指名手配中の実業家・郭文貴だ。ただ、郭文貴がインターネットを通じて流すこうした情報の多くが共産党指導者たちの動揺や疑心暗鬼を狙ったガセ情報という見方も強いし、私もあまり信じていない。

だが、CCTV元アナウンサーの崔永元が5月末にSNS微博を通じて暴露した范冰冰の「陰陽契約」(表と裏のある二重契約、おもに脱税目的)の実態は、ガセとは言い切れない。この情報発信をきっかけに、中国当局が捜査を開始し、しかもターゲットは范冰冰にとどまらず、その背後の中国最大の映画エンタメ企業グループ「華誼兄弟(ファイ・ブラザーズ)」、そしてその背後の軍部にまで及ぶのではないかといわれているのだ。

華誼兄弟は1994年に軍籍の王中軍、王中磊が創設した総合エンタメ企業で、馮小剛や姜文ら才能ある監督を発掘し積極的に投資、中国を代表するヒット作を飛ばし続けてきた。2009年には深センベンチャーボードに上場。2017年にはハリウッドのSTXエンタテイメントと提携して、本格的なハリウッド進出を狙っている。

華誼の急成長の背景には軍があるとかねてから言われている。創業者の王兄弟は軍高官の息子、「軍二代」であり、いわゆる「部隊大院児」の特権階級。王中軍自身も元軍人だ。もともと中国の映画産業を含むエンタメ産業の根っこは八一電影製片廠や解放軍文工団にあり、中国エンタメのノウハウ、人材の少なからずが、部隊大院出身といわれている。

そもそも中国映画の名作には解放軍礼賛のプロパガンダ映画が多い。昨今、中国で異例なヒットとなった「戦狼」や今年春の興行成績1位となった「紅海行動」は民間の制作会社が作った軍事映画だが、解放軍が物心ともに関与しているという意味では、軍部プロパガンダ映画の系譜といっていいだろう。

中国のエンタメ産業を牛耳る主要人物たち

映画だけでなく文藝、演劇、歌謡といった中国のエンタメ産業を牛耳る主要人物のおよそ半分は軍部出身、北京の部隊大院出身者、あるいはその子弟や周辺者が占めている。

部隊大院とは、解放軍の様々な部隊に所属する軍籍者家族が暮らす統一整備された共同生活圏で、食堂、病院、プールなどさまざまな施設がそろい、幼稚園から中学校までの教育機関もあって一貫した英才教育が行われていた。

ほかにも国務院や国家機関の幹部家族の暮らす幹部大院もある。北京ではもともと、「大院文化」というものがあり、職業や身分が同じ人間が共同生活しながら助け合い、子弟の英才教育を協力して行う伝統がある。故宮自体も一種の大院であり、胡同生活もそうである。

もともとそういう文化があるから、幼稚園から学校まで併設された社会主義的な共同生活システムとの相性がよかったのかもしれない。解放軍の部隊大院はさまざまな大院の中でも、飛び切りの英才教育が可能で、特に本来、生活スキルに直結しない芸術、芸能方面のエリートは、部隊大院でないとなかなか育たない中国の社会状況もあった。

こうして英才教育された子弟を「大院児」とよぶが、具体例をあげると、文壇では王朔、ドラマ・映画界では鄭暁龍や陳凱歌、姜文、管虎、中国ロックの父である崔健など、中国を代表する文化人が軒並み部隊大院児なのである。

はり大院児である華誼兄弟こと王兄弟が、こうした部隊大院人脈を駆使して、また文工団出身の馮小剛らエンタメ方面の英才を集結させてみるみる間に中国最大の映画エンタメ娯楽企業集団を作り上げたのである。

さて范冰冰は、この華誼映画の看板女優である。彼女の高額ギャラについては、かねてからいろいろな噂があった。だが崔永元が5月28日、29日に微博で、范冰冰が「陰陽契約」で、巨額脱税していると告発。これを契機に、国家税務総局が調査する動きをみせ、にわかにその噂に信憑性がでてしまった。

崔永元のツイートによれば、范冰冰は4日の映画撮影で、1000万元のギャラをもらったが、じつは裏契約があり、5000万元を受け取ってその分を脱税しているという。

実はこの暴露の前から、崔永元VS范冰冰、葛優、馮小剛および華誼兄弟とは因縁があった。華誼兄弟の製作で馮小剛がメガホンをとり葛優、范冰冰が主演を務めた大ヒット映画「手機」は人気司会者が携帯電話を家に忘れたことで浮気が発覚するドタバタコメディだが、この人気司会者のモデルが崔永元で、内容がほぼ実話ではないか、と噂になったからだ。崔永元はこの映画が自分を侮辱したものだと、たびたびSNSで范冰冰らを批判、攻撃していた。ちょうど、「手機2」の製作発表があったばかりで、このバトルが再燃していたのだ。

動き出した国家税務総局

だが、単なる芸能ゴシップにとどまらないことに、国家税務総局が動き出した。6月3日までに范冰冰の個人事務所に税務調査が入ったという。CCTV、人民日報はじめ、国営メディアも芸能人の陰陽契約バッシングを開始した。関係者の話では芸能界の陰陽契約は実のところ、公然の秘密であったという。申告用の契約書でのギャラは銀行に振り込まれ、その数倍のギャラが現金などでひそかに渡される。

その誰もが公然の秘密と安易に考えていた陰陽契約が今になって問題視されたのはなぜか。范冰冰が仮に脱税容疑に問われることになったとしても、それはスケープゴートでしかない、というのはファン以外でも想像できることだ。当初は天安門事件前に国内や国際社会の関心をそらすのが目的か、などという説もあったのだが、どうやら狙いはもっと大きいのではないか。

ここでにわかに注目されている説が、狙いは華誼兄弟および、北京芸能界から軍部の影響力を排除することではないか、というものだ。習近平政権VS軍部の権力闘争の延長ではないか、という見方もある。

そう思わせる一つのネタが、崔永元が香港「蘋果日報」のインタビューで指摘をしていた、空軍元テストパイロットの徐勇凌の「暗殺司令」疑惑だ。徐勇凌は2014年に現役を引退したのち、軍事映画のアドバイザーなどしていた。最近では范冰冰の婚約者・李晨が初監督、主演したステルス戦闘機映画「空天猟」のアドバイザーもしていたという。

元軍人の映画協力に習近平激怒

だが習近平は現役引退したとはいえ、元軍人(しかも軍事最高機密を知るテストパイロット)が民間映画に関わったことで大激怒。徐は全面的な謝罪を行ったが、習近平の怒りは収まらず「暗殺命令」が出たとか出なかったとか。徐勇凌はSNSを含む公式の場から完全に撤退し、沈黙を守っている。

暗殺命令は話が盛りすぎだとしても、これを機に軍が民間娯楽映画に関与することへの全面的禁止が言い渡された、というのは間違いない。近年、民間制作会社が作る中国の近未来戦争をイメージした軍事娯楽映画が大ヒットしており、一部では習近平政権が強軍化政策を後押しするために、こうした軍事娯楽映画に力を入れているのではないか、という見方もあった。だが、蘋果日報によれば、習近平は軍部が全面的に製作を支援した「戦狼2」や「紅海行動」を名指しで批判しているともいう。

そう考えると、習近平政権としては、中央宣伝部および軍部の掌握はできていないのかもしれない。また宣伝部と軍部がこうした娯楽エンタメを通じてやたらと民間の好戦的な空気を盛り上げているのは、習近平に対する手の込んだ嫌がらせ、という推理もでてくる。

つまり、国内の民族主義的高揚感が、習近平政権の外交上の選択肢を狭め、米国や日本相手の妥協が難しくなってくる上、周辺国は中国の軍国主義化に警戒を深めるので、さらに外交がやりにくくなる、という寸法だ。確かに、表立って習近平を批判する人はほとんどいなくなったが、内心、内政や外交で習近平が失敗することを願っているアンチ習近平派が党内にかなり多いことは、私も仄聞している。特にメディア、宣伝部、軍部に多いとも聞く。

このほか、八一電影製片廠も軍制改革の延長で、大規模リストラされ、総政治部歌舞団やその他文化活動団と一緒くたに、解放軍文化芸術センターにまとめられている。今年1月、トロント国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞した「芳華」(馮小剛監督)は解放軍文工団員の栄華盛衰を描いた作品(感動的名作なのでぜひ見てほしい)だが、これ自体が習近平政権に葬りされつつある解放軍文藝・映画の伝統へのレクイエムだったかもしれない。

しかし、ここで一つ新たな疑問がわく。北京の芸能界に関しては、軍部出身で元歌手の習近平夫人、彭麗媛がかなり影響力をもっているはずだ。もともと芸能界を牛耳っていたのは曽慶紅とその弟および関係者といわれていた。それを権力暗闘の末、彭麗媛が奪ったといわれる。曽慶紅も彭麗媛も軍部とは深い関係なので、どちらが北京芸能界を牛耳っても、軍部が芸能界とつながりを持つ状態は変わらない。

だが、習近平が芸能界から軍の関与を徹底排除すると決めれば、総政治部歌舞団出身の元歌姫の彭麗媛の立場はどうなるのだろう。彼女は、まさに軍部と芸能界の接点に位置する重要人物だ。

そこで出てくるのが習近平と彭麗媛の不和説である。たとえば、彭麗媛が姉としたって、家族同然の付き合いをしていた軍の歌姫の宋祖英が政治協商会議全国委員の名簿から消え、一時汚職容疑で取調べを受けたことで、彭麗媛は習近平に強い不満を抱いたとかいう話もある。結婚30年目の二人は5月20日の「我愛你 アイラブユー」の日に、そのおしどり夫婦ぶりが一斉報道されている。だが、そういう報道に力が入るほど、この不仲説への疑いも増してくる。

范冰冰の見せしめに逮捕はあり?

さて今後、この事件がどう展開するかは、まだ動きの途中なのでなんともいえない。華誼兄弟は「税務調査は受けていない」とコメントしているが、株価は影響を受けて下落している。范冰冰は「手機2」の撮影現場にひそかに戻っているらしいが、表だっての活動はすべてキャンセル。婚約者の李晨が実はすでに中国国籍を捨ており、米国におよそ67.8億元相当の資産を移転しているという疑惑報道が香港メディアに出ている。

かつて、脱税取締り強化キャンペーンのために、中央政府は大女優・劉暁慶を逮捕した。これは当時、当たり前のように脱税していた有名人に対する見せしめ逮捕だったといわれている。習近平政権は范冰冰を見せしめに逮捕するのか、おとがめなしか、その前に李晨と国外脱出するのか。あるいは芸能界粛清を建前に、軍の芸能界利権を完全につぶそうとするのだろうか。そうなると、習近平と軍部の関係はどうなる? 芸能ゴシップも深読みすると、なかなかきな臭い話になってくるのが中国らしいだろう。

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