『中国の大工はなぜイレズミを隠したのか 反レイシズムを怯ませる時代の空気』(6/21日経ビジネスオンライン 山田泰司)について

宮脇淳子著『教科書で教えたい真実の中国近現代史』の46頁には「シナ文明の特徴は、漢字と都市と皇帝にある」、「漢人とは文化上の観念であって、人種としては蛮・夷・戎・狄の子孫です」(52頁)とありました。中国は中華思想のせいか、歴史的に西洋主導の国際ルールを守らない国です。第二次アヘン戦争(アロー号事件)後の天津条約を守らず、「ところが英仏軍が退去すると、清朝政府のなかで主戦派の立場が強くなり、一八五九年六月、天津条約を批准するために天津から北京へ向かっていた英仏艦隊が、防衛の責任者だった欽差大臣センゲリンチンによって大沽砲台から砲撃されました。これに怒った英仏両国は、一八六〇年八月、報復のために約一万七千の兵力と軍艦二百隻からなる大遠征軍を派遣して大沽砲台を占領し、清朝との交渉にあたりました。しかし、パークス領事をふくむ英仏人が咸豊皇帝の指示によってセンゲリンチンに囚われ、十一名が殺害されるという事件が起こったため、北京に進軍した英仏連合軍は、十月、報復として北京郊外の円明園という美しい離宮に侵入し、貴重な財宝を掠奪したあと、その事実を隠蔽するために徹底的に破壊し離宮を焼き払ったのでした。」(156頁)とあります。円明園の焼き打ちも日本人がしたように思っている中国人が多いです。丹東にある「援朝抗美記念館」には堂々と「南鮮が北鮮に侵攻して来た」と説明があるくらいですから、歴史改竄はお手の物です。宮脇教授も「シナの歴史は政治であって、日本のように史実に基づく実証主義ではない」と言っています。

6/24宮崎正弘氏メルマガ<中東の秩序を搦め手で攪乱する中国 兵器を武器に密輸にも手を染め、はてしなく拡がる闇>こちらの記事にありますように、中国は如何に国際ルールを守らないか、世界平和の攪乱分子かという事です。独裁国は民主主義国の手順をふっ飛ばし且つ批判者は投獄されるか死刑になるので、誰も批判しないことを良いことに好き勝手やります。国際社会が中国を封じ込めないからです。「読者の声」に出てきます田村秀男氏は「中国の軍拡原資は貿易黒字」と言っていましたが、貿易戦争で$が不足して日本にスワップ要請があっても絶対受けないことです。反日国で、裏で日本を貶めることを沢山しているのですから。人民元の下落は輸出に有利となりますが、対外債務は重くなります。暴落すれば外資のキャピタルフライトが起きる可能性があります。$での支払ができず、益々貿易できなくなるのでは。

http://melma.com/backnumber_45206_6700445/

本日のブログは中国人の生活を紹介するものですので、中国語の記事も政治ではなく、生活についての記事を紹介します。

6/23阿波罗新闻网<在“变态”的日本“常态”的中国人=(中国から見て)変わっている日本、普通の中国人>浅草寺、忍野八海、金閣寺、天守閣、道頓堀等日本には有名な観光地があるが、中国人でにぎわっている。中国人はどこに行っても、思ったことをストレートに言い、迷惑を顧みずもてなすが、出過ぎず、謹直であり、融通が効かなく、真面目且つ礼儀正しい日本人とは大きく違う。ある日銀座を歩いていたら、中国人女性が相方に「出国したのを忘れたわ。まだ中国にいる感じ」というのが聞こえた。

中国人も日本に旅行に来るなら、買い物だけでなく、品質の良いものを作る日本の良い所を理解した方が良い。でも大部分の中国人は日本を理解したくないし、理解もできないと思う。成田空港で抗議の為の国家を歌うなんぞ。中国人にとって日本人には複雑な感情がある。羨み、妬み、恨み、蔑視である。一位は恨みで歴史的なもの、蔑視が二位、中国は経済的にも大きくなり、「小日本」と蔑むようになった。しかし日本は世界で最高品質のものを作りだしている。中国の富裕層の爆買対象は地理的に見て日韓両国である。日本の小学生の昼食も規則正しく、衛生的である。教育こそが国民性を築く基礎である。中国人にとっては見慣れないため、日本人の細かい所に拘るのを「変わった」人達と思い、煩わしさを感じてしまう。「排水溝で魚を飼う、バスの運転手はストで罷業するはずが運転し、乗客から金を取らない、病院食はレストラン並み、マンホールは芸術品、学校は清掃員を雇わず、学生が掃除をする、手洗い終わった水をトイレの水洗に使う、出退勤時に混んでいても皆ルールを守る、出発を20秒前にした列車は乗客に謝る等」。サッカーを見終わった後、観客がゴミを集めることや分別収集なども。

日本人を「変態」と言うのは中国人の歴史の恨みだけでなく、自己崇拝の気持ちから。私は日本にいて中国人の押し合いへし合い、出し抜かれるのを恐れ、思う存分大声で喚き、好き勝手に人を批判し、買い漁る等、これらは中国人の「常態」である。前述の中国人女性の発した言葉は銀座が中国人で一杯だったからである。去年、世界選手権で優勝した男性は日本のホテルで水道水の栓を開けて流し放しにしたが、これこそが「変態」では。反日を言うのであれば、何故日本に旅行に行くのか。一方で見下し、一方で利用する。それでいて矛盾していることに気が付かない。良いものを手にしたとき、心の中には大中華思想があり、争って買うような卑しい行動をしても心でバランスを取り、虚栄心を満足させる。中国人は自分を改良する必要があるのでは?

さすが中華思想にドップリ浸かった西太后や精神勝利法を編み出した魯迅の阿Qを産んだ国です。でも筆者は真面な感覚をお持ちです。大部分はここに書かれている通りで、民族的特徴と言えます。真実の現代史を知っている中国人と日本人が少ないので、片方は恨み、もう一方は贖罪に走るようになっています。お互い正しい情報を取ることが必要です。孫文、汪兆銘、コミンテルン、FDRについて良く調べた方が良いでしょう。

http://www.aboluowang.com/2018/0623/1133299.html

山田氏記事では、「多少の息苦しさや理不尽を感じても、現状維持が一番いい。この点で、いまの中国と日本が奇妙なほどよく似ているということにも驚くのである。」とありますが、中国と日本がそんなに似ている気はしません。日本には自由があり、差別も過敏なくらい戒められています。どこが似ているのでしょう?山田氏は中国在住が長いので、日本のことが分からないか左翼メデイアの影響を色濃く受けたかどちらかです。そもそも共産主義と言う結果の平等を目指す国のジニ係数が0.73なんておかしいでしょう。ただ、日本人にも反体制を標榜する人がまだたくさんいますが、格好つけだけで、命を懸けてやっているようには見えません。村上春樹や是枝裕和は是非中国に帰化してほしいです。中国は歓迎するでしょう。是非かの国で反体制を貫いてほしい。反体制を標榜している学者も。本記事に出て来る反体制をやって来た人達とは覚悟が違います。収監される恐れがありますので。それにしても習近平の自由への弾圧の程度が大きくなったという事でしょう。

記事

現在開催されているワールドカップの1次リーグ・アルゼンチン対アイスランド戦で、アイスランドのラグナル・シグルドソン(白いユニフォーム)と争うアルゼンチンのリオネル・メッシ(紺のユニフォーム)。両選手にタトゥーが確認できる〔写真:IJMPA代表撮影(福地和男)

サッカーのワールドカップ(W杯)ロシア大会のテレビ観戦で連日寝不足という人も多いことだろう。中国はアジア予選で敗れてしまい本戦出場は叶わなかったのだが、中国のSNS「微信(ウィエポー)」を見ると、特に男性の投稿はここ数日W杯一色と言ってもいいほどである。中国の内陸に住んでいる、見るからに運動音痴の仕事仲間がSNSで「あー歳には敵わない。眠い。スペイン対ポルトガルは録画で見る。無念」とつぶやいて寝落ちしたりしている。サッカーに特に興味が無い私はテレビでJリーグをやっていても5分と観ていられないが、W杯となると、いくらハリルホジッチ監督の解任に納得がいかなくとも、格上のコロンビアとの一戦で香川がPKを決めた際には心の中で小さくガッツポーズをしたし、セルビア対コスタリカといった縁もゆかりもない国同士の試合でもなんとなく最後まで観てしまう。これが一流の持つ魅力ということなのだろう。

しかし今回、W杯を観て改めて認識したのが、タトゥーを入れている選手の多さだ。アルゼンチンのメッシをはじめ、タトゥーをしている選手はもはやまったく珍しくない。

一方で、W杯出場を逃した中国のサッカー界で、最近もっとも大きな話題になったのもタトゥーなのだ。

タトゥー選手は代表戦に参加できず

タトゥーをしていることで有名な中国のサッカー選手・張琳芃(黄色いユニフォーム、2018年5月に開催されたアジアチャンピオンズリーグから)。中国代表として出場した試合は60を超える。対する赤いユニフォームの選手は、ブラジルの代表経験を持つアレシャンドレ・パト。イタリア、イングランド、スペインのリーグでプレーした経験も持ち、現在は中国の天津権健所属。彼の腕にもやはりタトゥーが見られる(写真:Imaginechina/アフロ)

中国は3月末、ウェールズ、ウルグアイ、チェコを招いてチャイナカップという国際親善試合を開いたのだが、この際、複数の中国選手がスリープやサポーターでタトゥーを隠して試合に臨んだことが話題になった。また、タトゥーをしている中国のサッカー選手と言って真っ先に名前の挙がる張琳芃はいずれの試合も欠場した。複数の中国メディアによると、中国サッカー協会が選手らに、代表戦でタトゥーを見せるのを禁じたのだという。理由は、中国共産党の道徳と価値観に反するからなのだそうだ。

中国でも長い間、イレズミは負のイメージを持つものとして捉えられて来た。中国版ウィキペディアの「百度百科」によると、刑罰として顔にイレズミを入れる「黥刑」は、秦(BC778~BC206)代から始まり、途中消えたり復活したりを繰り返しながら清代(1616~1912)まで続いた。中国共産党が支配する中華人民共和国(1949~)の時代に入ると、一般的には、黒社会、すなわち暴力団や反社会的勢力の代名詞として捉えられてきた。この流れは日本とほぼ同じである。

ちなみに、『イレズミと日本人』(平凡社新書)で山本芳美氏が、日本では昭和のヤクザ映画が「イレズミ=暴力団」というイメージをことさら強調することに一役買っており、やはりイレズミをしている鳶や火消しの古老たちにイレズミと言うと嫌がられ彫り物と言ってくれと注文を付けられる、と書いているように、中国でも、90年代に香港、中国、台湾で大流行した『古惑仔』等の香港のヤクザ映画で主人公たちが龍や虎のイレズミをしていたことが、「イレズミ=黒社会」のイメージを市民に定着させた部分がある。

だから、現在の中国で20~40代でタトゥーをしている人が驚くほど多いことにはいささか驚かされる。上海では、「刺青」「入墨」「紋身」の看板を掲げたタトゥーの店が、繁華街の他、住宅街にもたくさんある。

タトゥー流行の端緒は、中国人のバスケットボール選手で国民的スターの姚明(ヤオ・ミン)が2002年にNBA入りしたことで、タトゥーを入れているNBAのスター選手たちのビジュアルが大量に中国に入ってきたことにあると私は考えている。そして、この2~3年、第2次ブームと言ってもおかしくないほど、タトゥーをする人が増え目立ち始めた。今回、タトゥー人口を一気に増やしたのは20~30代の女性である。

街のあちこちで見られるタトゥーを入れる店

タトゥー支える富裕層と森ガール

ここで一つ中国のイレズミについて断っておくと、この原稿では、香港ヤクザ映画の影響までのものを「イレズミ」、姚明のNBA入り後のものは基本的にタトゥーとするが、明らかにファッション性の動機と異なる理由で入れたものは「イレズミ」として使い分けることにする。

さて、現在、中国でタトゥーを入れる人は大きく3つに分けることができる。(1)富裕層、(2)「小清新」(シャオチンシン)と呼ばれる20~30代の女性、(3)そして工場やウェイター、美容師等、比較的低賃金で働く人たちだ。

このうち、W杯のサッカー選手がしているような、二の腕から手首にかけてとか、太股から足首まで、つまり半袖のTシャツや短パンを着ていても見える部位にタトゥーを入れるのは、(1)の富裕層だ。絵柄もサッカーやバスケットのNBA等スポーツ界の有名選手やセレブの影響を受けているものが多い。彼らが通うタトゥー屋は彫り代が1時間1500元(2万5500円、1元=約17円)程度が相場。サッカー選手らが好むような絵柄は彫り上げるまでに相当な額がかかるため、経済的に余裕のある富裕層が勢い中心ということになる。

次に(2)の「小清新」と呼ばれる20~30代の女性。中国の若い女性にモノやサービスを売ろうとしているビジネスパーソンにとっては、既に手垢のついた言葉だと思うが、一般の日本人にはなじみがないと思うので、彼女らがいったいどのような人たちなのかを説明する必要がある。しかしこれが難しい。そこで中国国有のラジオ局中国国際放送が日本語ホームページの「キーワードチャイナ」で説明している小清新の説明を引用することにする。

「最初は音楽でアコースティックやフォーク風のジャンルを指す言葉。今は文学や映画、写真など各ジャンルの芸術まで広がった。また、そのような芸術やライフスタイルを好む人も『小清新』という。ファッションで説明するとわかりやすいかもしれない。『小清新』のおしゃれというのは、天然素材で淡い色、小さな花柄やレースなどがポイントになる。また、化粧もナチュラル系で、日本でいうカントリー風だったり森ガールのようなものなんだろう」

日本人がイメージしやすいように大づかみで言えば、「村上春樹や岩井俊二や無印が好きな意識高い系の女子」と言えるだろうか。事実、小清新をターゲットにしたサイトには、無印良品を小清新の代名詞と表現しているところもある。

この小清新の女性たちがこの2~3年、タトゥーを入れているのを本当によく見かけるようになった。手首、足首、鎖骨、肘の内側、首の後ろ等、服を着ていても他人から見える場所にワンポイントで入れているというのが多い。グーグルで「小清新」と入力すると、検索候補に「小清新紋身」というキーワードが出てくることからも、彼女らのタトゥー人口の多さが分かろうというものだ。

ここまでの説明で分かると思うが、富裕層と小清新のタトゥーは、オシャレタトゥーである。

そして(3)の工場労働者や美容師、ウェイター等の比較的低賃金の人びと。日本で言うところのヤンキー比率が高いこの層は、いきがって入れることがほとんどのようである。図柄はサソリ、どくろ、星等々、ワンポイントで入れるのが主流。ただ、工場の多くは採用の条件にタトゥー禁止を盛り込んでいる。だから工場や工員の暮らす寮のある町には工員らを対象にしたタトゥー屋が必ずと言っていいほどあるのだが、看板に目立つように書いてあるのが、タトゥーを消すサービスを提供しているという点。服を着ていても見えるところに入れている人は採用面接にあたって消すのだろう。

さて、サッカーの中国代表選手がタトゥーを隠すよう求められた一件は、ここに挙げた(1)~(3)の人びとに何らかの影響を与えたのだろうか。

6月初旬の上海は肌の露出が高い季節になり始めたこともあり、タトゥーをしている人が、昨年よりもさらに増えたような印象を受けた。つまり、サッカーの一件は今のところ、「タトゥー」の人びとには影響していないということである。タトゥー屋が大量に廃業し始めているというような現象も、今のところ聞かない。

都会で受けた壮絶な差別とイレズミ

ただ、気になることもある。それは、都会人に差別された屈辱を忘れず中国で生き抜くことを決心した証として背中一面にイレズミを入れた青年が、サッカーの件が起きるほんの少し前に、イレズミを隠すようになっていたことである。

彼の名前は仮にA仔(エーチャイ)としておく。彼と知り合ったのは2016年、海南島の海口だった。当時彼は22歳。仕事はマンションの内装工事が中心の大工。経営者ではないが、現場監督のような立場にあり、収入は当時で月1万元(17万円)。国産だがSUVのマイカーも持っている。海南島に訪ねた私の若い友人の親友で、空港の送迎にクルマを出してくれたり、食事に誘ってくれたりと、滞在中、「叔叔、叔叔」(おじさん、おじさん)と言っては何かと世話を焼いてくれた。

そのA仔がタトゥーを入れていることは、空港から彼の車の後部座席に乗り込んだときに分かった。肩甲骨の部分が深くえぐれたタンクトップから模様がのぞいている。背中一面に大きなタトゥーがあるのは間違いないようだったが、正面からは彼がタトゥーを入れているのは全く分からない。ただ、中国の富裕層のように、たんなるオシャレで入れているのとは違うように思えた。オシャレで入れるならば、服を着ていてももっと目立つように入れるのではないかと思ったのだ。一方で、工場労働者や美容師たちのように、ほどほどのいきがりとほどほどのオシャレをミックスしたのとも明らかに一線を画していると感じさせるほどの大きさではあった。

そこでA仔との3度目の食事の時、私は思い切って彼にタトゥーを入れたわけを聞いてみた。すると彼は、親友の遠方から着た年長の友人ということを尊重してくれたのか、ポツリポツリと話をしてくれた。

彼は内陸部の重慶郊外の農家に三男坊として生まれた。その地域の子供たちのほとんどがそうであるように、彼も中学を卒業すると、実家を出て北京へ働きに出た。

「そして」と彼は言った。

「そこで北京人から差別を受けた。そして北京を離れた。差別されたことを一生忘れまい、と思って、ある土地で背中にイレズミを入れた。そして海南島に来た、というわけです」

中学を卒業したばかりの少年が、背中一面にイレズミを入れようと思うほどの差別とは、一体どのようなものなのかを想像した。想像がつかなかったが、根掘り葉掘り聞く気にもなれなかった。北京に何カ月いたのか、何の仕事をしたのかについては聞いてみたが、これについても黙って笑うだけで答えてくれなかった。

北京に行った彼が、黒社会に勧誘され、契りとして若気の至りで背中にイレズミを入れてしまったのではないか、とも考えた。

ただ彼が「差別を受けた」というのを聞いて、私はそれは本当なのだろうと確信した。

農村で生まれるか、都会に生まれるかで、人生のスタート地点で天と地ほどの差がついてしまう中国。都会人による地方出身者に対する蔑視は、せいぜい「ダサい」「田舎者」と馬鹿にされる程度の日本に生まれた私には想像がつかないほどのものがあるのだろう。同じ漢民族でありながら、他の国におけるレイシズムに近いものがあるのだ。

「ふーん、そうだったのか。知り合って3年以上になるけど、いま初めて知ったよ」

隣で聞いていた共通の友人がポツリと言って、フーッと息を吐いた。

その夜。A仔にイレズミの写真を撮らせてもらった。

A仔のイレズミ。中学を卒業したばかりのころの壮絶な記憶を背中に刻みつけて生きている

タンクトップを脱ぐと、観音菩薩と龍が現れた。

オレを差別したこの国で生き抜くにはどうしたらいいのか。イレズミを入れてでも気合いを入れて、立ち上がらなければ。

22歳になったA仔の背中には、中学を卒業したばかりのころの悲壮な決意が張りついていた。

「非主流のカリスマの引退」との共通点

そのA仔が、イレズミを隠すようになったことを知ったのは、今年の春節直後のこと。SNSに、白いワイシャツを着た自撮り写真を投稿しているのを見つけたのだ。「袖付きのシャツを着るなんて、何年ぶりか覚えてないほどだよ」と書き込んでいた。そしてその次の投稿も、さらにその次も、彼はワイシャツ姿だった。そこから今日まで、彼はイレズミがのぞくタンクトップを着て外には一度も出ていない。

SNSで、どうしてワイシャツを着るようになったのかと尋ねた。しかし、彼から返事は返ってきていない。

彼がイレズミを隠すようになった理由を考えていた私は、ある日、中国で「殺馬特」(シャマト)と呼ばれるパンクの若者たちの中でカリスマ的存在だった青年が「卒業」したということを知った。そして彼が卒業を決めたのも、A仔がイレズミを隠すようになったのとほぼ同じ時期だったということも。

殺馬特のカリスマの引退については前回の原稿で書いているのでここで詳しくは書かないが、どうして引退を決めたのかとの私の問いに彼は、

「同じような考えの人ばかりにしようというのは、とても怖いことだ。病んだ社会だ」

という言葉を返してきた。

A仔がイレズミを隠すようになったこと。殺馬特のカリスマの引退。そしてサッカー中国代表のイレズミの一件。これらが重なり合うように起こったのは、恐らく偶然の符合ではない。

A仔もカリスマも、だれかに直接警告されたわけではないのだろう。しかし、彼らのような中国社会の「非主流」を排斥しようとする空気が中国で確実に増していて、A仔やカリスマのように、自らの意思を明確に自覚して行動してきたような人たちが、激烈な悔しさを糧に研ぎ澄まされた豊かな感受性で、世の中の空気を敏感に感じ取った末の、生き抜くための行動なのだと思う。その後に出てきたサッカー代表の一件は、彼らを潰しにかかっている「大きな意思」が、いよいよ表にも顔を見せ始めたのだということなのだろう。

ではなぜ、富裕層や小清新、工場労働者や美容師らのタトゥーは増えているのだろう。それは、芽を摘む理由がないからだ。工場労働者などの低所得者層については、オシャレといきがりでタトゥーを入れるのでとりあえずは満足していると判断されているのだろう。そして富裕層も小清新も、1時間1500元のタトゥーを楽しめるのは、いまの社会のおかげだということが分かっている。いまの社会を支えているのはこの層だ。

多少の息苦しさや理不尽を感じても、現状維持が一番いい。この点で、いまの中国と日本が奇妙なほどよく似ているということにも驚くのである。

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