8/25・26・27日経『中国の「一帯一路」、世界に増殖  (アジア・インフラ大競争)』『アジアインフラ大競争(下)リスク投資に挑む日本 試される目利き力』について

8/26宮崎正弘メルマガ『中国経済大破綻、そして「シルクロード」構想も破綻への一歩 習近平の中国、株暴落、人民元切り下げ、天津大爆発で蟻地獄へ』の記事で、

「習近平の中国、高度成長時代は終わった。予測されていたように株暴落、人民元切り下げ、そして天津大爆発で蟻地獄へ陥没寸前の状況となった。

 世界同時株安に見舞われ、日本株まで悪影響が波及しているが、理論的に考えると、日本経済はしっかりしており、5%ていどの影響しか受けない筈である。いまの同時株安は投資家のパニックを利用してファンド筋の空売りが主因ではないだろうか。

 たとえばトヨタの中国依存度は3-4%程度であり、なぜトヨタ株が上海株下落開始以後に10%も値下がりしているのか、中国主因ではなく複合的なものであろう。

 さて、シルクロード構想が破綻するのは時間の問題となったように見える。

 世界的規模で中国の軍事的脅威はアジアに留まらず、全地球的規模に及んでいた。しかし、財源の問題がでてきて、「真珠の首飾り」は新バージョンになって実現しそうな状況から一転するだろう。

従来は南シナ海からマラッカを越え、ミャンマー、スリランカ、モルディブ、パキスタンを越えアフリカの南部ジンバブエまでを「海のシルクロード」として「一帯一路」構想の中核と位置づけされてきた。

ところがミャンマーは反中国に転び、スリランカは中国の建設していた人口島プロジェクトを見直して過度の中国傾斜を再考するに到り、総選挙の民意も全方位外交を良しとしたため、中国の構想に大きな誤算が生じた。

 中国はスリランカの影響力回復、人口島構想復活に執念をもやし、ラジャパスカ前大統領を梃子に権力の奪還を目指させたが、八月の選挙で敗北、中国の影響力は頓挫した。

 スリランカに中国の潜水艦は二回寄港している。

 ▲上海株暴落で少なくとも二兆ドルが蒸発した

そこで中国は南インド洋にあってインドを南西から脅かすモルディブ群島に濃密に接近した。「中国城」の建設である。

モルディブ政権は独裁色が強く、中国の海洋埋立てプロジェクトにのって、外国の土地所有を、その国が開発したのであれば70%まで認める法律を制定した。

 つぎに国際的な海賊退治で協力行動の拠点であるジブチに目を付けた。

 ジブチ政権も独裁、米国はここの空港と港湾を借り受け、巨大な軍事基地(レモニエ空軍基地とオボック海軍基地)を設営しているが、一方で米国務省がゲレ大統領の独裁を強く批判するため、ジブチは中国にも軍事基地建設を持ちかけ、シルクロードの一環とする方向にある。

 すでにジブチの港湾運営は中国企業が請け負っている。パキスタン、ギリシアと同様である。

 さらに中国は「海のシルクロード」の通貨拠点としてケニア、タンザニア、マダガスカル、セイシェルからモザンビーク、ジンバブエから喜望峰をまたぎ南西アフリカのナミビア、アンゴラへと一帯一路構造を延ばす戦略に傾いている。 

 これらを支える財源が問題となった。ついに高度成長経済が終幕を迎え、上海株式の破綻に直面して、強気の財政支出を継続できるかどうか、きわめて怪しくなった。

 拙著『アジアインフラ投資銀行の凄惨な未来』(PHP)で指摘したように、もはや『中国の時代は終わった』とみてよいのではないか。」とありました。

日経も中国が主導する「一帯一路」の危うさについて触れるようになりました。今まで中国進出を煽りに煽ってきたのとは様変わりです。そりゃそうでしょう。上海株が一気に8%下落とか、株の売り禁止とかありとあらゆる禁じ手を使い放題です。異形の大国と言われる所以です。これでもAIIB参加を日経は勧めるのでしょうか?買収したFTの母国イギリスが参加表明したとしても彼らは地政学的なリスクを負っている訳ではありません。

中国は過剰設備・過剰負債・過剰在庫に陥っています。それらを解決するためには人の褌で相撲を取るのが一番良い。さしずめ騙しやすい日本を誘って、日本の金で信用を付け、AIIBの格付けを上げ、「一帯一路」の国々に融資し、インフラ投資させ、過剰在庫を吐き出すつもりでしょう。そうすれば中国経済も浮上できると思ってのこと。だから習が安倍首相に9月に会談をしつこく持ちかけたのです。でも考えても見て下さい。ADBが融資をしない案件が、還ってくるメドがありますか?多分融資を受けた国は払うつもりもないでしょう。そうなれば中国は債務国を徳政で棒引きにする代わりに中国の属国にするつもりでしょう。そんな敵国・中国を助ける必要はありません。利敵行為に他なりません。日本がAIIBに投資・貸付けても焦げ付き戻ってくることはないと断言します。

ADBもAIIBに張りあって安易な融資はしないことです。計画に合わせた数字作りは止めて、現地政府と良く擦り合わせ、ネック解消を親身になって教えることが必要と思います。日本の民間銀行の知恵を借りるのも良いでしょう。

記事

「一帯一路(新シルクロード構想)はウィンウィンの道であり、各国経済の緊密な結合を促す原動力になる」――。習近平国家主席の大号令のもと、国内外で巨大インフラ整備プロジェクトに乗り出した中国政府と企業。「一帯一路」は、はやくも世界各地で増殖が始まっている。

■海洋進出や海底資源の確保狙う

 世界的なリゾート地として知られる南太平洋の島国フィジー。首都スバの郊外で5月中旬、片側1車線の真新しい道路の建設が進んでいた。中国の援助を受け、2011年6月から建設が始まった全長19キロの「セリア・ロード」だ。

 工事現場ではフィジー人のほか、多くの東洋系の労働者が汗を流す。現場監督より上の役職はほとんどが中国人だ。道路脇には中国人作業員向けの簡易宿泊所が立ち、中国人の料理人が油をふんだんに使った中華料理に腕を振るっていた。

 島の東端にあるスバと西側の地域を結ぶ幹線道路沿い。中国の援助で建てられた病院や、中国企業による建設計画を示す看板が数多く並ぶ。現在は空き地が広がる道路脇に産業団地をつくり、企業を誘致する計画のようだ。「農地を買いたい」「リゾート開発の用地を探してほしい」。スバで観光業を営むサミー・アリさんの携帯電話には、中国本土からこうした依頼が毎日のように寄せられるという。

 フィジーは南太平洋の島々をつなぐ船舶や航空の要衝で、地域の大国だ。現首相のバイニマラマ氏による軍事クーデターを機に、06年から14年9月まで軍事政権が続き、欧米との関係が冷え込んだ。その隙間を埋めたのが中国だ。

 オーストラリアのシンクタンク、ロウイー研究所によると、フィジーに対する06~13年の中国の援助額は3億3300万ドル(約410億円)に達し、豪州の2億5200万ドルを抜いてトップに躍り出た。中国はフィジーの政治問題に深入りせず、インフラ整備の受注拡大という実利を取る戦略に徹してきた。

 「中国語しか話せない中国人との意思疎通は手間がかかる」「仕事の質が悪い。フィジーをインフラ建設の練習場にしているのではないか」――。これまで批判も多かった中国企業の進出だが、どんなに小さな案件でも積極的に手を挙げる姿勢に「インフラが不足するフィジーで、いま本当に必要な相手は中国かもしれない」と、地元の見方も徐々に変わってきているという。

 もちろん、中国の積極姿勢には、南太平洋への海上進出をにらんで足がかりをつくることや、付近に眠る広大な海底鉱物資源の確保という狙いが透ける。インフラ支援は外交の一環――。中国の実利主義が、南太平洋へも「一帯一路」を広げる。

■ミャンマー山岳地帯でダム建設計画目白押し

 中国・チベット高原に源を発し、ミャンマーを縦断してインド洋に注ぐ大河、タンルウィン川。山岳地帯で長く開発が手つかずだったが、ミャンマー国内の流域でいま、中国企業によるダムの建設計画が目白押しだ。

 漢能控股集団(ハナジー)、中国水電工程(ハイドロチャイナ)、中国長江三峡集団……。名だたる電力大手が競って大型水力発電所の開発計画を打ち出す。

 国内に大規模河川が多いミャンマーは、電力の7割を水力に依存する。だが、水力は雨期と乾期の出力変動が大きい。このため経済成長に伴う電力不足に悩む政府は、稼働の安定する火力主体の電源構成への転換を急ぐ。大型ダムと水力発電所の相次ぐ建設計画はそうした政府の方針と大きな食い違いを感じさせるが、実はいずれも生み出した電気の8~9割を中国に供給する計画だ。

 ミャンマーは11年に民政移管を果たすまで旧軍事政権時代に国際的な孤立を深めたが、その間は中国による大型資源開発が相次いだ。象徴が07年に中国電力投資集団が主導してスタートしたミッソンダムの建設だ。総事業費は約36億ドルで、最大出力は600万キロワットとミャンマーで最大の水力発電所となる計画だった。周辺地域で約700平方キロメートルを水没させる可能性があるとされ、環境破壊を懸念する住民らの間で中国に対する反発が強まった。

 11年春に発足した今のテイン・セイン政権は“脱・中国”を志向。ミャンマーにおける中国の大型開発の象徴だったミッソンダムは、同年秋に建設が凍結された。テイン・セイン大統領は自身の任期中に開発を再開しないと明言している。

 ただ、今年11月の総選挙が近づくにつれ、再び中国資本による電源開発が勢いづいてきた。総選挙ではアウン・サン・スー・チー氏率いる国民民主連盟(NLD)の優勢が予想される。政権交代という波乱の芽は、中国の「一帯一路」と結びついて、ミッソンダムの開発の再開という思わぬ形で吹き出す可能性も出てきた。

 無人の新築マンションが次々と砂嵐に飲み込まれていく。中国・新疆ウイグル自治区の南西部に位置するカシュガル市。郊外ではパキスタンと高速道路や鉄道、原油パイプライン、光ファイバー網で結ぶ「中パ経済回廊」の拠点整備が進むが、実際に広がっていたのは「鬼城(ゴーストタウン)」だった。

 4月中旬、中国の習主席がパキスタンを訪問し、同国を縦断する経済回廊の開発に総額約450億ドルを拠出すると約束した。カシュガルからアラビア海にのぞむパキスタン南部のカラチ、南西部のグワダルまでを結ぶ壮大な計画だ。起点となるカシュガルは少数民族のウイグル族が多数派を占め、砂漠と小さな果樹園だけの経済発展が遅れた地域だったが、回廊計画で地元経済も一気に活気づくかに見えた。

 たしかに、現地では開発の進展を見越した巨大な工業団地や商業施設の整備が進む。だが、よく見ると、どこも人影がなく、建設途上の建物の多くが砂にまみれている。上海市政府が主導する「上海新城」地区。250万平方メートルの広大な敷地に60億元(約1200億円)を投じ、高層マンションや大型ショッピングモール、高級ホテルを建てる巨大プロジェクトが進行中だ。ただ、地元のウイグル族からの評判は散々だ。

 「花都大道」「明珠大道」……。各新城の地名はいずれも中国名。「ここはカシュガルなのに、なぜ中国の地名を使うのか」。多くの地元住民から不満が漏れる。入居が始まったニュータウンもあるが、実際に購入する地元住民は少数で、多くの建物が利用される当てもないままゴーストタウンと化している。

(北京=阿部哲也、シドニー=高橋香織、ヤンゴン=松井基一)

万年雪を頂く天山山脈が間近にそびえる。中国の西端、カザフスタン国境の新疆ウイグル自治区ホルゴス市。「世界有数の商業地区になる。買い時だよ」。不動産会社社長が高層マンションの購入を熱心に勧めてきた。

中国―カザフの国境地帯で重機が列をなして待機する(中国・新疆ウイグル自治区ホルゴス市)

 商業施設や五つ星ホテル、国際会議場……。東京ドーム400個分の広さを誇るカザフとの「共同開発特区」は、中国側だけで200億元(約3850億円)を投じる。

 3年前は砂と岩だけだった辺境の地は、山を切り開いた高速道路と鉄道の建設を合図に、開発の大波が押し寄せた。「年内にカザフ側の開発も始まる。道がつながれば必ずにぎわう」。閑古鳥が鳴く免税百貨店に出店した電器店店主は強気だ。

 自国から中央アジア、中東、欧州を陸路と海路でつなぐ「一帯一路(新シルクロード構想)」を掲げた中国。アジアインフラ投資銀行(AIIB)の創設と併せ、ヒト・モノ・カネの三位一体でアジアのインフラ整備に手を貸し、周辺の開発まで主導しようと狙う。

地元は潤うが…

 先行する一帯一路の国内部分はすでに多くの大規模事業が進行し、地元経済を潤している。が、各地を歩けば、国家戦略に名を借りた過剰開発の実態が浮かび上がる。

 「一帯一路の建設へ団結しよう」。中部の陝西省西安市の街中には勇ましい標語があふれる。ここでも道路と鉄道に沿い、巨大工業団地やマンション群が建設される。威容が際立つ韓国サムスン電子の半導体工場には70億ドル(約8500億円)が投じられる。

 「昔は畑しかなかった。習近平(国家主席)のおかげさ」。タクシー運転手の鄭藍藍さん(43)は喜ぶが中国経済は減速が鮮明。「こんなに工場を建てて大丈夫か」。現地進出した欧州機械大手の幹部は心配顔だ。

 中国政府が自作自演する開発バブルは、国境を越えてまん延し始めた。

 3つの高層ビルの屋上を200メートルの巨大な船型プールでつなぐ。シンガポールの名所「マリーナベイ・サンズ」にそっくりな光景がカンボジアのプノンペンで再現される。リゾートホテルや国際展示場、商業施設を詰め込む開発の背後に中国企業の影がちらつく。

 中国は港湾や橋、最近では国立競技場の建設を支援し、その見返りに巨大複合施設の開発権を得た。建設現場で目立つのはクメール文字ではなく漢字。コンドミニアムの販売価格は1平方メートル当たり1800ドルと、地元の工場労働者の年収より高い。

支援待ちの現実

 「開発が年内に始まる」というホルゴス市の特区のカザフ側に入ると、散乱した古びた資材とパイプが白い砂をかぶっていた。「本気で開発を進める地元企業はいない。中国の支援待ちだ」とカザフ側関係者は言う。

 中国とカザフは今年、総額230億ドルの「インフラ整備協力契約」を結んだ。セメントや鉄鋼、ガラスなど、中国からの過剰生産品目の供給が柱だ。突然の人民元切り下げにも通じる、輸出促進策の顔が見え隠れする。

 天津市や山東省での相次ぐ大規模爆発事故で国民からの不信が強まるなか、中国政府は国威発揚のため一帯一路をむしろ加速する公算が大きい。検問所で会った30歳代のカザフ人貿易商は「中国のカネを利用する。でもバブルは持ち込まれたくない」と流ちょうな中国語でささやいた。

フィリピンの首都マニラ。線路際まで雑草が生い茂ったレールの上を、かつて日本で走っていた中古の電車が満員の乗客を詰め込んで都心へと走り去る。

対中国で危機感

 スペイン統治下で開業したフィリピン国有鉄道は戦後の混乱で整備が遅れ、走行距離はピークの半分以下になった。今は3~5両編成で1日26便が運行するだけだ。マニラの人口は約1200万人。東京に匹敵する大都市だが、それに見合う社会基盤が整わない。

 経済成長を阻むインフラ不足を解消しようと、アキノ政権は鉄道や高速道路など50事業を立ち上げた。だが着工にこぎ着けたのはわずか数件。採算割れでも政府保証がないといったリスクが高く、資金集めが難航したからだ。

 今夏、そんなフィリピンの窮状に日本が手を差し伸べた。マニラの鉄道事業に1回の政府開発援助(ODA)としては過去最大規模の2400億円の円借款に踏み切る。通常は工事の進み具合を確かめながら複数回に分けて資金を出すが、今回は資金を一括で提供する。

 「(アジアのインフラ整備では)現地政府に必要以上のリスク保証を求めるやり方がまかり通っていた。そうした慣習を変える」。安倍晋三首相は今春のセミナーでこう語り、有言実行とばかりにフィリピンの案件に手を挙げた。

 日本の背を押したのは中国主導で発足するアジアインフラ投資銀行(AIIB)の登場だ。AIIBは素早い資金提供が売り物。うかうかしていたら、中国の影響力が増すばかりだ。採算性第一だった日本の尻に火がつき、よりリスクを取る方向にかじを切った。

民間資金を呼ぶ

 政府は来年の通常国会に国際協力銀行(JBIC)法の改正案を出す。採算が合う案件にしか資金を出せない制約をやめ、複数案件を合算して黒字ならば個別案件の赤字に目をつぶる。対象が広がるのは確実だ。

 日本が描くのはJBICやアジア開発銀行(ADB)が主導し、潤沢な民間資金を巻き込む姿。膨らむ投融資リスクを官民で分かち合う。だがリスクを避けてきた日本にはAIIBに対抗して素早く案件を組成できる人材が足りない。

 苦い教訓がある。国際協力機構(JICA)は2012年、インフラ整備を手がける民間事業体への直接出資を11年ぶりに再開した。経団連が切望した事業だが、ふたを開けると案件は6月末時点で3件のみ。政府関係者は「JICAにリスク投資に詳しい人材がいなかった」と漏らす。

 枠組みを整えても迅速に組成できないと絵に描いた餅。ADBは米ゴールドマン・サックスの元幹部など経験豊かな人材獲得に注力する。日立製作所の幹部は「スピード感が高まれば(国の支援を)より活用しやすくなる」と期待する。

 「AIIBは民間がどう関与できるか分からない」。JBICの渡辺博史総裁はAIIBの融資基準が不透明ならば民間の参加は難しいとみる。裏を返せば、民間との協調でリスク許容度を高める枠組みの日本に勝機はある。ただリスクを取りながら、不採算案件をどう排除するか。アジアのインフラ競争に向け、迅速な実行と目利きの力の両方が求められる。

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