5/20日経ビジネスオンライン 福島香織 『習近平の知識人狩り、希望を粛清 良心的知識人を排した先は、悪夢しかない』記事について

習近平は毛沢東を尊敬し、マネをしていると言われていますが、本記事は文化大革命の再来かもしれません。元々毛は文革を政敵倒しの名目に使ったわけですが、知識人もこの網から逃れることはできず、文豪老舎は入水自殺します。実際は、紅衛兵に殺されたも同然でした。習も同じように知識人を目の敵にしています。一党独裁の弊害です。物事の道理が分かる人間=知識人としたら共産党政権にとってこんな怖いことはありません。共産党統治の正統性は否定されるでしょうから。日本共産党だって政権を取ったとしたら中国と同じことをするでしょう。何せ中国は三権分立でなく、為政者の意のままに動かせる国で、反対する者には厳しい弾圧をします。

中国共産党に操作されている政治家(二階とか翁長等親中派議員)や財界(経団連)、マスメデイア(サンケイを除く媒体全部)はこういう状況を知っていて日本国民を誤導しようとしています。本記事を読めば共産党支配の恐ろしさが分かるハズです。選挙のときに、共産党や社民党、民主党左派には入れないことです。またメデイアの洗脳から脱し、保守派の活動を支援して戴きたいと思っています。

記事

中国の人権状況が急速に悪化している。多くの人が、冤罪の言いがかりであると分かっているにもかかわらず、このほど人権派弁護士の浦志強がついに起訴された。その罪名は、民族の仇恨を扇動した罪、という。民族の仇恨とはなんだろう? 4月には改革派ジャーナリスト 高瑜が国家機密漏洩罪で懲役7年の判決を受けた。何が国家機密漏洩だというのだろう。昨年9月には、ウイグル族学者のイリハム・トフティが国家分裂罪で無期懲役判決をうけ、上訴するも、そのまま罪が確定してしまった。誰が国家を分裂させようというのだろうか。

 彼らはみな中国の敵ではなく、暗黒に見える中国人権状況の未来をほのかに照らす小さな星のような人物たちだった。決して急進的ではなく、体制内にも、彼らの主張に賛同する官僚や政治家が大勢おり、現体制を覆すのではなく、むしろ支えて、良い方向に転換させていこうとしてきた、体制内の改革派人権派知識人である。こういった良心的知識人がいるからこそ、真っ暗に見える中国の未来にもかすかな希望があるのだと思い直すことができた。ところが、今やこの体制内にいる、良心的な知識人を習近平政権は「反動知識分子」と呼び、粛清の対象としている。

深刻にして悪辣な「言いがかり罪」

 浦志強が正式に逮捕されたのは昨年の6月30日。この時の逮捕容疑は、いわゆる「騒動挑発罪(言いがかり罪とも訳す)」と「個人情報の不正取得」だった。昨年5月3日、天安門事件(1989年)に関する非公開の私的勉強会に出席し、5月6日に身柄を拘束された。この勉強会に出席したことで同じ時期に身柄拘束された徐友漁ら4人の知識人たちはその後釈放されたが、彼だけが、そのまま正式逮捕され、そして約1年たった今年5月15日に正式起訴が発表された。この時、起訴状に書かれた罪名は「民族の仇恨を扇動した罪」および「騒動挑発罪」。起訴状には、「被告人浦志強はネットを利用して、前後して何度も微博(ツイッターに似たSNS)で、民族の仇恨を扇動。公然と他人を侮辱するなど、その状況は深刻にして悪辣であり、社会秩序を破壊するものとして、刑事責任が問われるべきである」とされた。

では浦志強が微博を通じて煽ったという民族の仇恨とは何なのか。

 香港紙明報によれば、検察側は、浦志強が発信した30あまりの微博の中に「新疆は中国のものだが、中国は植民地のように扱ったり、征服者・掠奪者となってはならない。…相手を敵とみなすのは誤った国策である」「昆明事件(2014年、昆明鉄道駅でウイグル族グループが起こした無差別殺人、29人の無関係の旅客が殺害された)は非常に血なまぐさく、犯人の罪は非常に深い。新疆独立派がテロの恐怖を生んでいるという言い方は、しかし、結果であって原因ではない。きわめて凄惨で、結果は堪えられないものだが、新疆独立派の残虐さに対して、あなたに責任がないというのであれば、私は不満である」といった発言を民族の仇恨を扇動したものとして、問題視しているようである。また「公然と他人を侮辱する」が指すのは、毛沢東の毛新宇に関する議論や、山西省の人民代表(国会議員に相当)申紀蘭が全人代制度が始まった1954年から60年以上も人民代表を続けており、しかも一度も全人代決議において反対票を投じたことがないことなどを指摘した発言のようである。

拷問反対の思想家は、都合が悪い

 浦志強は、弱者の立場にたって人権や自由のために戦う弁護士として中国国内でも評価され、2012年暮れには「南方人物週刊」や「新週刊」などの雑誌が中国社会に影響を与えた「年度人物」として取り上げた。2014年から、中国共産党政治の悪習であった労働教養所が廃止になったのも、その違法性を訴えてきた彼らの地道な活動の成果とポジティブに受け取られていた。当然、国際社会でも注目され、米フォーリンポリシー誌も「百人の思想家」に選んでいる。

 今回、彼が起訴された本当の理由は、おそらく起訴状には書かれていない。彼が習近平政権に都合の悪い人物とみなされたに過ぎない。おそらくは中央規律検査委が司法の外で行う「双規」(共産党幹部に対して司法機関より前に紀律検査委として取り調べを行う制度)の廃止を目指して活動を開始したことが理由だと見られている。2013年に双規の取り調べ中に拷問を受け、3人の官僚が死亡したことで、「双規」が単なる党内調査ではなく、時に政敵に対するリンチが行われ、法治を標榜する国であってはならない制度であることは誰の目にも明らかになっていた。習近平政権の「反腐敗キャンペーン」と言う名の粛清の嵐が吹き荒れる中、多くの地方官僚たちにとって「双規」中の拷問は、明日は我が身の危機でもあり、浦志強の活動に対しては党内でも期待が高まっていたという。

 しかし、双規制度にケチをつけるということは、一党独裁の根幹を揺るがすことでもある。一党独裁の根幹とは、党の掟・党規が司法、憲法を含めて法の上に立つという了解であり、党幹部を裁くのは党中央だけである、というルールである。

 この党幹部を裁くのは党中央だけ、というルールは、習近平政権になってから、さらに党幹部を裁くのは習近平と王岐山である、に変わってきている。つまり、浦志強の「双規撤廃」への活動は、習近平体制への抵抗と受け止められたということだろう。

71歳のジャーナリスト、3度目の投獄

 高瑜の懲役7年の判決も衝撃であった。71歳になる彼女は、そのジャーナリスト人生において天安門事件後の90年、93年に続く3度目の投獄を経験することになった。人生で3度も、言論を理由に投獄されるジャーナリストなど、他の非民主国家でもあまり聞かない。彼女の罪状である国家機密漏洩とは、いわゆる「9号文件」(習近平のイデオロギー政策に関する内部通達文書。西側の民主、人権、公民の権利、市場経済など、7分野について中国の現状を批判する形で流布してはならないと通達するのを否定する内容、大学などで通達されている『七不講(七つのタブーな話題)』の基礎となっている)を外国メディア(米ニューヨークタイムズ、香港明鏡月刊)が2013年8月に報じたことに関与した、ということになっている。

 彼女は2014年4月24日突然、“失踪”。2週間後に機密漏洩で逮捕されていたことが明らかになった。さらに同年5月8日、起訴前の拘置所の中に中国中央テレビ(CCTV)のカメラが入り、彼女が自白と懺悔をする様子を全国に流した。裁判も経ずに、テレビで有罪を印象づけるこうした手法は、習近平政権の劇場型知識人弾圧というべきものだった。そして今年4月17日に北京市中級人民法院で懲役7年が言い渡された。

 これが冤罪であることは、誰もが内心わかっている。まず、9号文献の内容など、すでにネットで流布していたという。

 9号文件のスクープ報道をした明鏡月刊の出版元明鏡新聞出版(本社、米国)の総裁・何蘋は2013年8月時点ですでに流布していたと主張している。その年4月に、各部門に通達され、遼源日報など一部の地方紙はその内容を紙面で紹介し、メディアとして全面的に学習するように呼びかけたという。また明鏡月刊は文件の原文をかなり早い段階で入手しているが、表紙に「秘密」の文字もなければ、流出禁止の注意書きもなかった、と言う。「9号文件の全文を報じたのは、国家や人民の生活を損なうつもりはなく、ただ中国共産党のイデオロギー政策を紹介しただけ」としている。

 彼女を有罪にしたのは、機密漏洩などの問題ではなく、おそらくは中国のジャーナリスト、知識人が外国メディア・記者と自由に意見を交換することを牽制する目的であろうとうかがえる。

反動知識分子に厳しい打撃を

 イリハム・トフティは2014年1月15日、突然自宅に押し寄せた警官隊に「証拠」を押収され、「ネットを使って新疆独立を呼びかけていた」として「国家分裂容疑」で連行され、2月20日に正式に逮捕された。7月30日に起訴され9月23日に無期懲役の一審判決が出て、11月21日に一審判決が確定した。彼は2009年7月5日のウルムチ事件の背景であった当時の新疆ウイグル自治区党委書記の王楽泉の圧政に対する厳しい批判はしてきたが、決して、新疆独立派ではない。少なくとも胡錦濤政権は、彼の主張を受け入れる形で、ウルムチ事件後に一時拘束するも釈放し、王楽泉を更迭し、新疆政策の転換を図ろうとした。彼もまた、まぎれもない冤罪である。

 ではなぜ、習近平政権は、ニセの罪をでっちあげて彼ら体制内の知識分子たちを粛清するのだろうか。習近平は2014年8月19日に全国思想宣伝工作会議でおこなった重要講話(8・19講話)の中で「反動知識分子」について、こう語っている。「一部の知識分子はネットを利用して、党の指導、社会主義制度、国家政権に対し、デマを流し、攻撃し、誣告している。彼らに対し、必ず“厳しい打撃”を与えねばならない」「良い知識分子を奨励し、悪い知識分子を取り締まらねばならない」。

 習近平政権にとって良い知識分子とは自分を賞賛してくれる知識分子であり、自分の政策に批判的な知識分子は悪い知識分子である。悪い知識分子が公民運動家の許志永、イリハム・トフティ、高瑜、浦志強らだった。昨年来、知識分子たちの間では、こんな噂が立っている。「習近平政権は、知識分子のスケープゴートを非常に考え抜いて計画的に選んでいる。許志永が2014年1月に懲役4年の判決を受けたことで、新公民運動に打撃を与えた。続いてネットの微博で『大V』アカウントをもつ発信力のあるネットユーザー、ブロガーたちを威嚇し、続いて浦志強を逮捕することで人権派弁護士たちに容赦のない姿勢をみせて、高瑜にCCTV上で罪を認めさせて独立派ジャーナリストたちを恫喝した。今後もメディア界、評論界、学界で習近平にとって『悪い知識分子』が反動知識分子として狩られることだろう」。その業界で、もっとも有名かつ象徴的な人物をもっとも残酷な方法で見せしめにし、恐怖でもって知識分子たちをコントロールし、政権に従順にすることが狙いだというわけだ。

諫言を断罪、追従を強いる愚

 なので、冤罪であろうが、取り調べや裁判がフェアでなかろうが、政権の目的と全く関係ないのである。香港消息筋の話を信じれば、高瑜の懲役7年判決も、浦志強の起訴も習近平その人が決定したと言う。浦志強はすでに懲役8年から13年を党中央指導部が指示されているという噂もある。こういう状況なので今の中国国内の学者や記者、また日本を含む海外の大学などに在籍する中国人学者や特派員記者が習近平政権を肯定し、習近平をあたかも実力派の優秀な指導者だと賞賛するのは致し方ないことなのだろう。最近、そうした体制内学者や中国人記者たちをネタ元にしている外国メディアや外国の官僚たちに、習近平が非常に優秀な指導者であり政治家であるといった評価を言う人が増えている。

 だが、本当に優秀な為政者とはあえて諫言を聞き入れる人物であり、為政者に気に入られるような発言をするのではなく、あえてその過ちを指摘する人たちを“良い知識分子”とみなすことができる人物のことである。

 今の知識人狩りの様子を見る限りでは、習近平は決してすぐれた為政者ではない。その権力を正しく支え、国家のより良い運営に寄与してくれるはずの“良い知識分子”を自らの手で刈り取って、自分をヨイショするだけの“悪い知識分子”に取り囲まれたまま、どうやって「中国の夢」を叶えることができるだろうか。このままでは、中国に待ち受けているのは「悪夢」でしかない。

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