『大卒青年たちを死に追いやる中国マルチ商法の闇 各地で頻発、背景に就職難、大学は出たけれど…』(9/8日経ビジネスオンライン 北村豊)、『習政権、中国伝統医術を政治利用』(9/11日経ビジネス The Economist)について

9/11小坪慎也ブログ<拡散】朝鮮大学、在校生に総決起を指示。「日米を壊滅できる力整える」金正恩氏に手紙【敵国だと思ったらシェア】> 北への制裁決議が国連安保理で、全会一致で通りました。中露を巻き込めば妥協せざるを得ません。中露とも米国の一強支配を終わらせようと裏で北を助けているのですから、茶番と言えば茶番です。でも10/18の中国共産党大会が終われば、軍事オプションを発動するかもしれません。単なる休戦ですから。宣戦布告も当然ないでしょう。或はもっと厳しい経済制裁、他国を巻き込んだ金融制裁をするかも知れませんが。朝鮮総連、朝鮮学校はテロリストの巣窟と見て良いのでは。生物兵器や化学兵器が隠匿されている可能性もあります。警察・外事は何をしているのでしょうか?

https://samurai20.jp/2017/09/shukai/

9/11NHK安倍内閣支持率

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170911/k10011135251000.html

http://www.nhk.or.jp/senkyo/shijiritsu/

9/10NNN安倍内閣支持率

http://www.news24.jp/articles/2017/09/10/04372134.html

安倍内閣の支持率が回復したとのニュース、それでも2月のように不支持率が20%台までは行きません。如何に国民がメデイアの嘘放送に弱いかという事を表しているかと思います。このままのペースではメデイアの狙い通り、憲法改正は出来なくなったと思っています。それなら、山尾の不倫問題、日本ファーストの態勢が整わない内に衆院解散に踏み切るかもしれません。

9/12加藤嘉一氏記事<中国は党大会を目前に控え「米朝戦争」を最も警戒している>

http://diamond.jp/articles/-/141835

加藤嘉一氏は中国を「法治国家」と書いていますが、中国に長く住んでいてその認識しか持てないのであれば「めくら」であり、知っていて言っているとすれば中国共産党の代弁者=プロパガンダ広報官でしょう。小生は後者と思っています。こういう駄文というか害のある文章(中国の北への参戦条項、殆ど死に体)を掲載するのを見るとダイヤモンド社も見識がないとしか思えません。まあ、表現の自由は守らないといけませんが。

宮崎正弘・石平・ 福島香織共著『日本は再びアジアの盟主になる トランプvs.習近平!米中激突で漁夫の利を得る日本』の中で宮崎氏は「中国政府発表の数字は眉唾ものばかり

中国の「ジニ係数」は、2014年には0.73に達している。この数字は北京大学の独自調査で、産経新聞によれば、「中国の国内個人資産の3分の1を上位1%の富裕家庭が握り」 「極端な富の偏在が進行している」(同紙、2016年12月25日)。

ジニ係数とは、所得格差を測る指数で、1に近いほど不平等さが高いことを示す。数年前まで中国のジニ係数は0.62あたりが最悪値といわれていた。この数字は西安のある大学の独自な調査に基づいたもので、アメリカの華字紙などが盛んに報じていたが、中国の公式発表はなかった。なにしろ国家統計局の公式の数字ですら0.462である。通常、0.4を 超えると、社会が擾乱状態に陥るとされ、0.5を超えると内乱になるケースがある。

2016年1月19日、国家統計局長の王保安は「2015年の中国の経済成長率は6.9%」と発表したが、そのわずか1週間後に「重大な規律違反」で失脚してしまった。ようするに誰も国家統計局の数字など信用していないということだ。したがって中国国家統計局が2016年のGDP成長が6.5 と言っているのも、まったくの眉唾である。

中国は富裕層の外貨持ち出しを急激に警戒し、多様な規制をかけてきたが、海外企業買収の上限枠設定、外貨持ち出しの両替制限から、ATMの利用制限、ついには銀聯カードの新規発行停止を決定した。それでも巧妙な手口でせっせと外貨は海外へ持ち出されている。外貨準備高は急激に落ち込んでいる。1つは地下銀行、もう1つはぺ—パー化させた有価証券の持ち出しで、いずれもマフィアが牛耳る世界である」(P.60~61)と紹介しています。

北村氏の記事のように、中国人の大多数は貧しいという事が宮崎氏のジニ係数の話で分かると思います。如何に富の分配がうまく行っていないかです。「結果の平等」を標榜する共産国がこれですから。本記事の学生について、ポンジスキームに騙される方が悪いといえば悪いですが、一番悪いのは多分公安です。会社から賄賂を取って見逃していると思います。中国ではよくあること。賄賂文化を元から断たないと駄目ですが、中国数千年の歴史の重みがありますので望むべくもありません。

エコノミスト記事にありますTCMとは伝統中国医学 (Traditional Chinese Medicine)のことです。また「死んだいも虫に寄生する菌類」というのは冬虫夏草のことです。でもwikiでは芋虫ではなく、オオコウモリガとのこと。中国は冬虫夏草を捕るためブータンの国土を侵略したとも言われています。また国際条約で禁止されている象牙も習近平の専用機で密輸した事件もありました。こういう行為のどこが加藤氏の言う「法治国家」なのでしょうか?民主主義の手続きに依らず、立法化したものを国民に強制するだけの国、対外的な約束は守らなくても良いというのが加藤氏の言う「法治国家」なのでしょう。中国で学ぶと、北京大学出の先輩の富坂聰氏同様考えがおかしくなるようです。

TCMの基本は医食同源にあると思います。医食同源の考えは、体の不調な部分を補うために、動物のその部位と同じ器官を食す、人間に近ければ近いほど良い(ですからカニバリズムが起きる訳です)と言うものです。そう言う説明をTVで見た記憶があります。エコノミスト記事にありますように、これでは欲望最大の中国人のことですから、動物虐待や種の絶滅に繋がりかねず、危険です。どうせ習近平が国威発揚を狙ったプロパガンダでしょう。毛沢東ですらその効果を疑っていたというのですから。

悪の帝国・中共(現在中国大陸を統治しているという意味です)は滅ぼさないとなりません。今回の朝鮮半島問題がその引き金になり、分裂するのが良いと思うのですが。またネットでは北の核とICBMは南進の為で、米国の参戦を防ぐためだという意見もありました。

<2017-07-03中共の崩壊はどう起きるか>

http://kaiunmanzoku.hatenablog.com/entry/2017/07/03/101705

北村記事

7月14日の午後6時55分、天津市の“静海区公安局”(以下「区公安局」)に死体発見の通報が入った。現場は天津市の西南部に位置する“静海区”の郊外を走る国道G104の傍らにある濁った池で、死体は背中を上にして水に浮いていた。地元の消防隊が引き上げた遺体は男性で、服装は整っていた。上着のポケット内にあった身分証から、死者は山東省“徳州市”の管轄下にある“武城県郝王庄鎮仁徳庄村”出身の“李文星”(23歳)と判明した。

同夜、区公安局の警官が李文星の家族に連絡を取り、李文星が死体となって発見されたことを連絡して、速やかに天津市へ来て遺体の確認を行うよう依頼した。翌日、天津市入りした李文星の家族は遺体と対面して本人であることを確認した。7月20日、家族同意の下で監察医による李文星の遺体解剖が行われた結果、死因は溺死と判定されたが、不思議なことに、遺体の胃袋は空っぽの状態で、死亡当時の李文星は餓死寸前であったことが判明した。

資源探査を学んだが…

李文星とその妹の“李文月”は、1994年の1月に“龍鳳胎(男女の双子)”として仁徳庄村の貧しい農民家庭に生まれた。出生時、男の子は呼吸がなく、女の子は低体温であったが、医院の応急処置によって命を救われた。しかし、李文月は病弱で治療費の出費がかさみ、李家の生活は困窮していた。李文星は小さい頃から学業優秀で、“高考(全国大学統一入試)”で遼寧省“瀋陽市”にある一流大学“東北大学”に合格したが、家計を考えて入学手続きを逡巡して、父親に叱られた。東北大学生となった李文星は李一族で唯一の大学生であり、李一家の希望だった。李文星は昨年(2016年)6月に東北大学の“資源勘査工程専業(資源探査工程学科)”を卒業した。

将来に希望を抱いて東北大学の資源探査工程学科を卒業したものの、専攻した学問を活かせる良い就職先はなかなか見つからなかった。就職したら故郷の家族に仕送りをしたいと考えていた李文星は焦りを覚え、世間で人気の“JAVA程序員(JAVAプログラマー)”になろうと考えた。JAVAプログラマーなら給料も高いし、出張もない。彼の専攻はコンピューターとは無縁であったにもかかわらず、李文星は無謀にも夢をかなえようと北京市へ移り、コンピューター関連の専門学校へ入学した。大学時代に李文星と宿舎で同居していた友人は、今年の年初に別の仕事を李文星に紹介したが、李文星の決意は固く、即座に断られたという。

専門学校の授業を終了した李文星は、5月15日からインターネットの著名な求人サイト“BOSS直聘”を通じてJAVA関連企業の求人広告に応募を開始し、何社にも履歴書を送信した。しかし、どこからも返事はなく、焦りを覚え始めた5月19日に“北京科藍軟件系統公司(北京科藍ソフトウエアシステム)”(以下「北京科藍公司」)という名の企業からメールを受け取った。李文星は知らなかったが、このメールは北京科藍公司という実在する企業の社名を騙(かた)った“李鬼公司(インチキ会社)”から発信されたものであった。当該インチキ会社は“傳銷(マルチ商法)”集団が求職者をおびき寄せるための手段であったことにより、李文星は最終的に死を遂げることになったのだった。

北京科藍公司からのメールで連絡を受けた李文星が、そこに記載されていた番号へ電話を掛けて電話面接を受けた結果、ハンドルネーム“五殺楽隊”という人物から合格通知のメールを受け取った。そこには速やかに天津市の“静海火車站(静海鉄道駅)”(以下「静海駅」)へ来るよう指示があり、列車の時刻表を調べた李文星は翌20日の午後1時20分に静海駅へ到着する旨をメールで返信した。5月20日、李文星は北京駅から列車に乗り、午後1時20分過ぎに静海駅に降り立った。その後の李文星の足取りは不明だが、7月8日に故郷の母親へ電話を入れ、「誰かが電話でカネを要求して来ても、絶対に支払わないように」とだけ言って電話を切ったことが確認されていた。

騙されたことに気付いたはずだが…

ニュースサイト「“中国青年網(ネット)”」は8月6日付で李文星事件について以下のように報じた。

【1】“蝶貝蕾(ちょうばいらい)”は2005年に発足した“傳銷(マルチ商法)”集団で、全国各地にはびこり、多数の被害者を出し、度々大がかりな取り締まりを受けながらも、依然としてしぶとく生き残っている。求人サイト“BOSS直聘”に北京科藍公司の名前を騙って求職者を陥れる罠を仕掛けたのは、“蝶貝蕾”の天津支部に属する“陳〇”だった。李文星から5月20日午後の列車で静海駅に到着する旨の返信メールと受け取った陳〇は、上司である“張●”に報告し、張●はその上司である“胡△”に報告した。胡△は部下の“江▲”に静海駅で李文星を出迎えるよう指示した。

【2】静海駅で李文星を出迎えた江▲は、李文星を静海区の“静海鎮上三里村”にある仲間の“艾◇”が管理する部屋へ連れて行った。その後、李文星は同じ静海鎮の“楊李院村”にある胡△が管理する部屋へ移され、最後は楊李院村にある仲間の“李◆”が管理する部屋へ移された。恐らく李文星は“艾◇”が管理する部屋に連れていかれた時点で騙されたことに気付いたはずだが、狼たちが捕らえた獲物を逃がす訳がなく、常に厳しい監視の下に置かれ、身の危険を感じて逃げ出すことができなかったのだろう。

【3】8月6日早朝、静海区はマルチ商法撲滅行動を展開し、2000人余りの取締官を動員して“村・街・社区(村・通り・地域)”など418カ所でローラー作戦による捜査を行い、午前11時までにマルチ商法の拠点301カ所を摘発し、マルチ商法メンバー63人を捕捉した。拘束した“蝶貝蕾”メンバーの供述から、静海鎮で“蝶貝蕾”集団の監視下に置かれた李文星は強制的に入会金を支払わされて正式に集団メンバーになり、死亡する前の時点では監視を解かれて集団内で自由に活動することが許されていたことが判明した。但し、李文星が溺死した原因は解明されておらず、さらなる調査が行われている。

実は、8月3日に北京紙「新京報」の記者が李文星の死体が発見された池から100m程離れた下水溝でマルチ商法集団が捨てたと思われる“傳銷日記(マルチ商法日記)”などの物品を発見した。この周辺の住民によれば、この地域にはマルチ商法集団のメンバーが集まる拠点があり、1年中多くの人々が拠点に居住し、常に授業を受けていた。しかし、彼らは1週間前に突然姿を消したので、どうしたのかと思っていたら、彼らの拠点近くの下水溝に布団、衣類を含む大量のゴミが捨てられていたという。彼らは見た目には正常だったが、住民たちと話をすることはなく、衣服は汚れ、ズボンには泥が付いていた。また、記者が発見したマルチ商法日記には手書きで“蝶貝蕾”の内部構造や“蝶貝蕾”集団が取り扱う商品を販売する際に必要な騙しの話法などが書かれていて、その中には「当社のビジネスパートナーは“広州蝶貝蕾精細化工有限公司”である」といううたい文句のインチキな記述もあった。

2900元の化粧品購入を強要され…

この発見によって、李文星と“蝶貝蕾”集団との関係は明白なものとなったのだが、「新京報」は同じ記事の中で、“苦肉計(苦肉の策)”を用いて、“蝶貝蕾”の拠点から必死の思いで逃げ出した25歳の“李冬”の体験を報じている。その概要は以下の通り。

(1)北京市内の某理工系大学を卒業した李冬は、今年5月に求人サイト“BOSS直聘”で“北京泰和佳通”という名の企業が“軟体測試人員(ソフトウエアテスト員)”を募集しているのを見つけた。李冬はこの企業に応募したが、採用試験は電話面接だけで、李冬の就業経験などを聴取した2日後には合格の連絡があり、天津市の静海駅へ出向いて来社するようにと指示があった。静海駅で出迎えを受けて向かった先は1軒の農家で、そこには20人程の人数がいた。これを見て李冬は非合法組織だと悟って逃げ出そうとしたが、そのうちの1人に首を絞められた。窒息する寸前に許しを乞うて助かったが、死の恐怖に打ちのめされた。それからは李冬に3人の監視が付き、1人が李冬に話をし、他の2人は李冬の左右を取り囲んだ。

(2)それからの毎日は昼間にこの農家にいるのは短い時間だけで、警察を避けるために、組織のリーダーがメンバーたちを荒野や田畑へ連れて行き、1日中マルチ商法の講義を聴かされた。李冬と同様に合格通知を受け取って静海駅へ来た人の多くが、駅から農家の門前まで連れて来られた時点で騙されたと気付き、Uターンして逃げようとするが、組織の人数は多かったから、たちまち捕まって連れ戻されるのだった。

(3)この組織は“蝶貝蕾”という名のマルチ商法集団で、扱っていたのは化粧品であった。騙されて連れて来られた人は2900元(約4万6400円)で一組の化粧品を購入することを要求される。2900元を支払った人は下っ端から格上げされて“老板(店主)”と呼ばれるようになり、優秀な“老板”は副班長に相当する“懈(かい)”に格上げされる。その上は班長に相当する“大扛(だいこう)”、さらにその上は班主任に相当する“導”となる。“導”がメンバーたちにマルチ商法の授業を行い、記憶力の良い“老板”にメモを取らせて暗記させてから、新入りに対して授業を行わせる。

逃亡失敗で監禁され…

(4)そうこうするうちに、“大導”と呼ばれる上級幹部が現れてメンバーたちに授業と称する洗脳を行う。すなわち、4~5カ月で代理店になれる。代理店になれば収入が増えて裕福になれる。その前提は化粧品を十数組購入することだが、それには4~5万元(約64~80万円)が必要になるから、化粧品の販売を名目に親戚や友人を騙してカネを巻き上げろ。こうして、“大導”は“蝶貝蕾”の違法活動を正当化し、カネ持ちになれるとメンバーを煽り、徐々に肉親や親類、友人、さらには赤の他人を騙すことに罪悪感を覚えなくさせるのだった。なお、李冬によれば、化粧品というのは概念に過ぎないようで、彼は最初から最後まで化粧品の実物を見たことがなかったという。

(5)“蝶貝蕾”集団内のメンバーは全員が大学を卒業したばかり、あるいは卒業して1~2年の人たちで、中には就労経験を持つ者もいた。彼らの組織を発展させるには、末端のメンバーを増やすしかないので、現有メンバーの友人を引き込んだり、ネットの求人サイトで求職者を騙して招き入れるしかない。李冬は“蝶貝蕾”の拠点で約20日間を過ごしたが、その間に李文星を見かけた。当時、彼らは警察の目を避けて、基本的に人里離れた場所で毎日トランプ遊びに興じていた。李文星もトランプに参加したが、彼は言葉少ないタイプで、内向的に見えた。しかし、3~4日後に李文星は別の場所へ移されたのか、見かけなくなった。

(6)李文星がいなくなってから数日後に、李冬は“蝶貝蕾”の拠点から逃げ出すことを決意した。李冬が目まいで倒れた振りをすると、彼らは意識を取り戻させようと脚をライターの火であぶり、タバコの火を鼻の頭に押し付けた。脚も鼻も火傷を負ったが、何の治療もしてもらえなかったので、脚の火傷は悪化した。李冬は“導”に医者に行かせて欲しいと訴え続けたところ、下手をすれば厄介なことになると考えた“導”は、800元(約1万2800円)払えば解放してくれると約束した。李冬は友人にメールを入れて1000元を借り、“導”に800元を支払って自由の身となり、手元に残った200元で列車の乗車券を買って、姉の所へたどり着いたのだった。李冬はわざと彼らに身体を傷つけさせて、治療を理由に解放を求めて成功した。これこそ正に苦肉の策の脱出行であった。

李冬は“蝶貝蕾”からの脱出に成功したが、内向的な李文星は飢餓状態で溺死した。恐らく、李文星は逃亡を図って失敗し、食事を与えられぬまま監禁されていたのだろう。李文星は見張りの隙を見て逃げ出したが、走っている途中で誤って池に落ち、空腹で体力が衰えていたために溺死したのではなかろうか。無念の最後であった。

天津市では李文星の死体が発見されたのと同じ7月14日に、静海区に隣接する“西青区”でも若い男性の死体が発見された。調査によって死体は山東省“臨沂市郯城県”出身の“張超”(25歳)であることが判明した。検死の結果、遺体に外傷はなかった。張超は“内蒙古科技大学”の卒業生で、李文星と同様にマルチ商法集団に騙されて7月10日に静海区へ来たばかりだった。その後の調べで、張超は熱中症を発症したため、仲間によって車で天津駅へ運ばれる途中で病状が悪化したため、無慈悲にも置き去りにされたことが判明した。これ以外にもマルチ商法関連で若者が死亡する事件は全国各地で次々と発生している。

撲滅できるか

李文星事件はメディアによって大々的に報じられた。このため、上述したように、天津市静海区は8月6日にマルチ商法集団の一斉取り締まりを実施し、“蝶貝蕾”を含むマルチ商法集団の拠点を摘発し、多数のマルチ商法メンバーを捕捉したのだった。但し、それは静海区に限定した取締りであり、広大な中国のほんの一部分に過ぎない。

中国各地ではマルチ商法集団がはびこり、関連の犯罪が激増し、集団によってメンバー入りを強制された人およびその家族が破産したり、自殺するなどの悲劇が頻発している。今やマルチ商法集団は中国国民共通の怒りの対象であり、全国各地の公安局はマルチ商法集団の取り締まりを強化している。そうした最中に発生したのが李文星事件であり、この事件を契機としてマルチ商法集団撲滅の動きは全国的に活発化するものと思われる。

筆者は8月4日付の本リポート『幹部釈放を求め「ねずみ講」会員6万人が北京へ』で、「“善心滙(ぜんしんかい)”」という名のねずみ講に関する記事を報じたが、中国語の“傳銷”は「マルチ商法」とも、「ねずみ講」とも訳される。一般的に両者の違いは、前者には商品が介在するが、後者には商品の介在はなく、カネだけが動くとされる。上述した“蝶貝蕾”の場合は商品が存在しないようだから、実質的にはねずみ講と言ってよいのかもしれない。

いずれにせよ、“善心滙”を代表とするねずみ講と“蝶貝蕾”を代表とするマルチ商法は、中国政府にとって徹底的に取り締まって撲滅すべき標的の一つとなった。中国共産党総書記の習近平は、「党と国家の存亡の危機」を回避して、国民の信頼を取り戻すために「トラ退治とハエ駆除」を標榜して汚職官僚の摘発に全精力を傾注した。これと同様に、国民の怒りを解消して信頼を勝ち得るためには、ねずみ講とマルチ商法の撲滅は不可避なものとなっているのである。「トラ」と「ハエ」に新たに「ねずみ」が加えられたと言える。

The Economist 記事

中国政府は、中国の伝統医術を普及させるべく、法律まで作って後押ししている。「伝統文化の擁護者」とのイメージを習近平国家主席に持たせる狙いだ。毛沢東も同様の策を講じた。政治的な思惑の裏で、環境や絶滅危惧種への悪影響が懸念される。

TCMで使用する薬物を調合している。調合師はテストに合格する必要がある(写真=Imaginechina/アフロ)

「かつて十分な科学的根拠に欠けるとして疑問視されていた中国の伝統的な医術が、まさに世界を席巻しようとしている」。中国国営通信の新華社は2016年、ある記事の中でこう論じた。

むろん、これは戯れの誇張だ。たとえ中国共産党であっても、効果の定かでない古来の療法で近代医学に取って代わろうなどと計画しているわけではない。

だが同党はこうした治療法(一般にTCMとして知られる)を世界中に広めようと本腰を入れている。国内においても、TCMを施術する病院や診療所のネットワークを広げていく意向だ。

中国では近年、TCMが急速に成長している。これを施術する中国の病院は03年には約2500だったが、15年末には4000余りに増加した。中国国内で免許を持つTCMの施術師の数は、この6年の間に50%近く増加して45万人を超えた。

中国政府は「孔子学院」のネットワークを通じて、米国や英国など様々な国におけるTCM教育に助成金を出している。中国政府の意向を伝える英字紙「チャイナ・デイリー」は同紙のウェブサイト上で「世界はTCM時代に入りつつあるか」と問いかける記事を掲載した。答えがイエスなら中国政府は大喜びだろう。だが、人類や、TCMに材料を提供している自然界にとっては、必ずしもそうではなさそうだ。

毛沢東が支持獲得に利用

中国においてもTCMは、いつも今のようにもてはやされてきたわけではない。中国の最後の王朝である清朝が1911年に滅んで以降、中国の新たな指導者たちはTCMを迷信に基づく行為としてはねつけてきた。

TCMは煎じ詰めると、はり治療や、各種薬草や動物の様々な器官から取った成分を混ぜ合わせた調合薬による治療を少々超えたものにすぎない。

そこに神秘的な色合いが加わることもしばしばある。気と呼ばれる力が人体の健康に影響を与え得るとの考えだ。

中華人民共和国の設立時に最高指導者となった毛沢東はTCMを信頼していると公言する愛好者だった。農民の間でTCMの人気が高いことを知っていたからだ。農民こそが、毛沢東が取り組むゲリラ活動を支える原動力だった。

TCMは料金が安いことも利点の一つに挙げられる(毛沢東は裏では、お付きの医師の一人にこう打ち明けていた。「TCMの普及を促す必要があることを理解しているが、私個人としては効果を信じてはいない」)。

現在の中国を率いるリーダー、習近平国家主席は、毛沢東以上に強くTCMを支援している。習政権は2016年に「白書」を発表。その中で、TCMを推進していく計画を提示するとともに、「(TCMは)人類の文明化の進展に好影響を与える」と主張した。同白書は、TCM産業は中国経済の「新たな成長エンジン」になるとも記している。

 

TCM部門の設置を義務化

今年7月、すべての一般病院にTCM部門を開設するよう地方政府に義務づける法律が施行された。同法はまた、TCMと、中国が「西洋医学」と呼ぶものを同列に扱うよう求めている。

習氏の努力はある程度の恩恵をもたらす可能性がある。TCMが健康な食と生活の実現に一役買うなら、称賛されるべきだ。通常の医療にも造詣の深いTCMの施術師は、著しく立ち遅れている中国のプライマリーケア制度の穴を埋められるかもしれない。

西欧社会におけるTCMの受け入れは進まない(写真=Imaginechina/アフロ)

とはいえ危険もある。より多くの資源をTCMに配することで、科学に基づく医療に向けるお金が減ることになる可能性がある。これはTCM振興がもたらす落とし穴だ。TCMによる治療の大半はプラセボ効果がある程度で、悪くすると疾病治癒という本来の役割を果たせない。危険を伴うことすらあり得る。

中国の薬理学者、屠呦呦(ト・ユウユウ)氏が15年に、中国国内で取り組まれた研究成果を対象とするノーベル賞を初めて受賞した。同氏は、TCMにおいてマラリアに効果があるとされる物質から、有効な化学物質を抽出するのに成功した。

中国政府はこのことがTCM全体の有効性を実証していると主張する。だが、TCMは実際には、屠氏がノーベル賞を受賞するに至った研究に、インスピレーションを与えただけだ。ノーベル委員会もこの点を強調する。伝統的な医療の効果が認められるようになる場合は常に、その背後に確たる医療メカニズムが存在している。

TCMの推進は、環境に打撃を与え、絶滅危惧種の生存を危険にさらすリスクを増幅しかねない。チベット高原では、一獲千金を狙う者たちがTCMで珍重される死んだいも虫を探して草原を破壊している。このいも虫に寄生する菌類がTCMにおいて人気なのだ(公式には使用が認められていないものだが)。この菌類の価格は、同じ重さの金よりも高い。この薬剤が性欲を活性化させる証拠はない。

南アフリカの草原地帯(サバンナ)では角を切り取られたサイの死骸が横たわっている。サイの角は関節炎に効くとされており、粉末にして利用される。中国にあるTCMの闇市場では1kg当たり数千ドルが相場だ。こうした例は枚挙にいとまがない。

TCMの振興を図るよう習氏を突き動かしている動機の一部は政治的なものだ。熱烈な愛国者、かつ中国文化を擁護する者とみられることを願っている。だが、効果の定かでない治療法に助成金を支給するよりも、科学の進展を支援するほうが、中国にもたらすものは大きいだろう。

©2017 The Economist Newspaper Limited Sep. 2-8, 2017 All rights reserved.

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