武者氏は昔は弱気派だったのが、ここ10数年くらいは強気派と言われています。株価予想も強気で4万円と主張した時もありました。株価が景気の先行指標であるなら、高ければ高い方が良いことになります。安倍政権も株価を重要視しています。マイナス金利もその流れでしょう。
武者氏は、中国は資本規制すべきとの考えですが、市場経済国認定できないでしょう。本文中にもあります1/27の日経・FT記事には「中国には資本規制が唯一の選択肢(社説) 中国政府の当局者たちも相手が海外投資家となると、意思伝達は得意でないとあっさり認める。中国が通貨の人民元をどのように管理するかという問題は、世界の貿易と商品相場に極めて重要だ。最近の為替管理体制の変更後に起きた市場の混乱は、中国政府が意図を説明しなかったがために悪化した。政策当局者は、大幅な切り下げをする意図はないことを明示した。しかし、資本流出と経済減速という現実と、通貨安定への期待と、どう折り合いをつけるつもりなのか、はっきり語ろうとしなかった。
人民元を市場の実勢に委ねると、大混乱を引き起こす恐れがある=ロイター
わかりにくい報道発表を解釈して中央銀行の市場介入の度合いを現状で見定めることに苦労している投資家には、もっとくっきりとすることが救いになる。しかしながら、中国人民銀行の伝達力を高めることは簡単な問題ではない。中央銀行総裁であっても完全な権限を持って話すことができないシステムのなかで、しかも改革路線の政策に国内の他の部分から政治的な制約や抵抗を受けるなかで、中央銀行の伝達力を高めることは革命にも相当するだろう。
加えて、中央銀行が指針を示すことが最大限に効果を発揮するのは、その政策が明瞭であり、その政策が経済指標の変化に応じてどう変わっていくのかを比較的単純に読み通せる場合だ。現時点での中国の現実では、中国人民銀行は明確な行動指針をもっておらず、柔軟性を残しておきたがっている。
■人民元への不安は取り繕えない
どれほど明確さを高めても、根底にある問題を取り繕うことはできない。その問題とは資本流出である。米国の利上げを見通して企業がドル建て債務の返済を急ぐなか、汚職取り締まりと投資機会の不足という国内事情が、中国の人々を国外への資金移動に駆り立てている。さらに人民元切り下げの不安が資本流出に輪をかけている。しかし、中央銀行は人民元安を求めるどころか、逆に買い支えに巨額の外貨準備を費やすことを余儀なくされている。
この圧力が続くなか、中国の政策当局に魅力的な選択肢はほとんどない。3.3兆ドルの蓄えがあっても外貨準備を際限なく減らし続けることはできず、また政府もそれを許さないだろう。国内投資の魅力を高めるための利上げも、資本流出に歯止めがかかることになる可能性は低い一方で、すでに痛みを引き起こしている実体経済の減速を悪化させてしまう。人民元を市場の実勢に委ねることは、知的には筋が通るが、短期的に市場に極めて大きな混乱を引き起こす恐れがあり、世界経済に巨大なショックとなる。中国内にも国外にも、このような道筋を検討しようとする政策立案者はほぼ皆無だろう。
残る唯一の選択肢は、日本の中央銀行総裁が先週示唆したように、圧力が和らぐまで資本規制を強化することだ。改革を逆行させる考えはないとの断言とは裏腹に、聞いた話に基づく事例証拠は中国政府がすでに海外送金を難しくしていることを示唆している。これは最近の自由化策の基調に反する。中国の人民元が昨年、伝統的な準備通貨と並んで国際通貨基金(IMF)の特別引き出し権(SDR)の構成通貨に採用されたのも、自由化があってのことだった。しかし、そのIMFも、量的金融緩和が新興国への短期資金の大量流入の引き金になってからは、一時的な資本規制の妥当性を認めることに前向きになっている。
資本規制は長期的な解決策ではないが、現在極めて困難な状況にある中国政府にとっては正しい一歩だ。ただし、それが効果を発揮するのは、中国が息を継げるようになった間に明確な経済再調整の政策を示し、長期的には通貨をより自由化する場合に限られる。そのプロセスには何年もかかるだろう。(2016年1月26日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)」とあります。
中国の3.3兆$の外貨準備に触れるなら、外貨負債の4.4兆$にも触れないと片手落ちと言うもの。それでキャピタルフライトが起きている訳です。日経・FTは中国を延命させようと考えているのでは。米国は気にせずFDRが予定通り金利を引き上げていくべきです。中国からの資金流出を促し、人民元を暴落させればピレウス港の買収のようなことはなくなるでしょう。中国の軍事拡張を止めさせるには経済で締め上げる必要があります。問題は経済でなく、軍事です。南シナ海、東シナ海の中国の行動をどう考えるのか。資本規制したら、新たな資金は中国には入っていきません。投資と輸出で持ってきましたが、新たな資金が入って来なければ、負債の多い中国では投資もできないでしょう。それで資本規制に二の足を踏んでいると思います。中国社会そのものが誤魔化しの世界ですので、どこかでゼロ・リセットしないといけないと思います。それで世界に悪影響を与えたとしても、戦争になるよりはずっと良い。反戦主義者こそ中国が苦しむのを喜ぶべきです。
天安門に掲げられた毛沢東の肖像画や人民元の毛沢東の肖像について中国人は何も感じていないのが凄い所です。自国民を少なくとも2000万人も虐殺した張本人を崇めるなんて。中共の歴史教育が如何にいい加減かが分かろうと言うもの。普通の判断力があれば、「南京虐殺」や「従軍慰安婦」がいい加減と言うのが分かるはずです。
記事
新関:武者リサーチ代表の武者陵司先生にお話しをお聞きします。本日のテーマは『鍵は中国「毒」の伝染遮断、資本規制だ~世界株安底入れのかすかな曙光見え始めた~』ということでよろしくお願いします。
中国関連で世界の経済金融のオピニオンリーダーである「エコノミスト」誌と「フィナンシャル・タイムズ」紙から『中国は資本規制を導入するべきだ』という記事が出されました。その概要と重要性を教えてください。
武者:世界の株安、今年1月に入って突如15%から20%近い同時株安が起こっているということで人々は不安につつまれていると思います。端的に言って、この大きな不安を根底から払拭する動きが出始めたというのが私の解釈です。
ポイントは、時間は少しかかるかもしれませんが、中国にあるデフレの様々な毒素を遮断するということが起きそうだということです。そうなると世界の株安は一転大幅な株価上昇に転ずる可能性が出てきます。
鍵は、中国から海外に伝染している最大の経路は中国からの資本流出、それによる人民元暴落、その結果として起こる世界のデフレという心配だったと思います。従ってこの不安を遮断するためには、中国からの資本流出が断たれ、人民元が際限なく下落していくという人々の不安が止まれば、一気に局面は好転するわけです。
そういった点で注目したいのは「エコノミスト」と「フィナンシャル・タイムズ」という世界の金融経済のオピニオンリーダー的な2つのメディアが相次いで中国は資本規制を導入するべきだという明確なオピニオンを発表したということです。
もっとも注目するべきなのは1月26日のフィナンシャル・タイムズの社説で ”Capital control may be China’sonly real option” という記事が出たことです。つまり資本規制が今の中国にとって唯一選択可能な政策手段だという記事です。奇妙な記事です。これまでエコノミストもフィナンシャル・タイムズも中国は規制を緩和し、資本取引を自由にし、それによって市場経済を使った経済の改革を進めるべきだという主張でした。その主張とは全く逆の資本規制を強化しろ、これは極めて奇妙とみえる記事ですが、これこそが現在の情勢の鍵だということであります。
もう1つは少し前1月16日付のエコノミスト誌に同じような記事がカバーストーリーとして掲載されています。この号の表紙には荒れ狂う龍の上に乗って振り落とされまいと、しがみついている習近平国家主席の絵が描かれていますが、これの趣旨も中国は資本規制を導入するべきだということです。曰く、”One step back, two forwards”。つまり二歩進むためには一歩後退するべきだという記事です。
それは1月19日の日経新聞に全訳で紹介されています。資本規制強化で危機に備えろ。つまりエコノミストもフィナンシャル・タイムズもそしてそれを受け継いだ日経も主張しているのは、危機回避のためには徹底的な資本のコントロールをやるべきだという記事です。
1月8日に私もレポート(ブレティン154号『中国経済のフリーランチ、終わりの始まり ~世界連鎖株安は中国の市場封鎖で下げ止まる~』)を書いて、これこそが状況を転換させる鍵だと主張しました。正しくそのようなオピニオンがこのような世界の最も人々が注目するメディアの中心に登場したということは驚くべきことであると同時に非常に迅速に世界の人々のオピニオンが収れんしていく可能性を示していると思います。
なぜ資本規制が鍵なのか。今や、世界危機の最大の源泉は中国が史上最大の供給力過剰をため込み、その供給力過剰によって経済が急速に悪化し、その中国経済の悪化が世界を巻き込むことにあることは明らかです。原油価格が下がり、それが世界の人々の不安心理を煽いでいますが、原油価格が下がる理由は中国における劇的な経済の失速と、それによる需要の落ち込み、需給の悪化が大きな原因です。そう考えると中国問題こそが様々な懸念の最も中心である、と言っていいわけです。
この中国の問題を世界全体の不安に拡大させないための処方は危機を中国の中に封じ込めるということです。中国のデフレ圧力がどのように世界に広がっていくかというと、最大の鍵は資金の流出、人民元の暴落、それによる世界的な資産価格の下落という悪連鎖だと思います。そのような悪連鎖を食い止めるためには資本の規制が必要だというのが記事に書かれているのです。
中国は今どういう状態にあるのか。基本的には第1に経済は著しく失速しています。従って必要なことは金融緩和をして、経済の失速や不動産バブルの崩壊を食い止めることです。
一生懸命金融緩和をやるということは、当然のこととして中国の金利が安くなり、アメリカでは利上げを行われるということもあって、資本は中国から海外に逃げて行くことになります。まして今の中国は外国人が4兆ドルお金を貸している国(証券投資を除く対外債務は4兆ドル)ですから、中国に貸しているお金を早く取り戻さないと、元が弱くなって元本が毀損するということで一気に外国人は中国からお金を引き上げようとします。他方、中国人も持っている資産価値を維持するためには元で持つよりは外貨で持つことが有利だということでお金が外に逃げる。つまり国内の経済困難とは裏腹に、ますます資金が国内から海外に逃げていくということが起ころうとしています。そのような状況のもとで、さらに国内経済のために金融緩和をすればお金が外に逃げていって元安になるということもあるわけです。
お金をたっぷり国内に供給しても、その供給したお金が外に逃げていって、金融緩和がしりぬけになる。つまり今の中国にとって、国内で金融緩和をやりながら、他方で自由な為替の取引をしてお金が海外に自由に逃げていくことを許すということは二律背反であり無理なのです。このようなことが今年初めからの世界の金融市場の不安の最も中心にあることなのです。
従って中国政府には2つに1つの選択肢しかありません。1つは国内の金融緩和をやめて元の価値を維持すること、あと1つは、国内の金融緩和をやりながら他方で元の価値を維持するために資本の海外への流出を食い止めることです。
2つのジレンマのうちどちらを取るべきか。答えは明らかでしょうとフィナンシャル・タイムズは言っているのです。それは資本のコントロールしかないでしょう。
国内で元の価値を守るための金融引き締めをやることは到底不可能です。同時に放っておいて元がどんどん暴落すれば、今度は中国発の世界金融危機が起こる可能性をより強める。どちらも取らないとすれば、今は資本規制しかないでしょう。これがフィナンシャル・タイムズの記事であり、エコノミストの記事であり、1月8日に書いた私のレポートの内容でもあります。
つまり世界の危機の根源的な原因である中国からの資本流出を遮断する。このところにいよいよ焦点がしぼられてきたというのが現在の情勢です。おそらくオピニオンリーダーたちがこのような主張するということは近い将来、政策として実現する可能性が高くなったというふうに言っていいと思います。
* * * *
新関:それが世界株安の底入れとなるのでしょうか。株価底入れの条件は何かお伺いします。
武者:おそらくこれが起こると当面世界の株式の大きな底入れとなると思います。その後、鋭角的な株価上昇が起こる可能性があり得ると思います。
今年に入ってからの世界同時株安の原因は何かということを考える必要があります。私は端的に言って世界株安の原因は、中国が原因であるにせよ、原油が原因であるにせよ、世界が再びリーマンショック並みの深刻な同時不況に陥ると言う仮説が何となくもっともらしくなって、それをマーケットが織り込もうという動きだったと思うのです。もちろん、そのような悪材料、暗いシナリオを一生懸命宣伝してマーケットを売り崩そうという投機筋のかなり組織的な動きがあったことも明らかだと思います。
従って必要なことはリーマンショックのような世界同時不況が絶対起きないのだという確信を持たせることです。そのような確信がはっきりすれば株安が終わって今度は逆に大きく上昇に転ずることになるわけです。
それでは、いったいどういう条件がそのような世界同時不況を否定するかということになりますが、私は3つしかないと思います。
第1は実体経済が明らかに良くなることです。中国の経済が深刻化しても、先進国(アメリカ、ヨーロッパ、日本)の経済は大丈夫なのだと明らかになること。これは様々な指標や企業業績の発表などでいずれ明らかになっていくと思います。しかし、それは非常に緩慢であり時間がかかると思うのです。そのような景気がよくなる指標がでてくる前に、株価が底割れするとか人民元が大暴落することになると、景気が実際に良くなるよりも先にマーケットの悪化によって今度は景気が腰折れをする可能性が出てきます。従って短期的には、景気実態や企業業績によって株価が底入れをするという期待は持つことができないと思います。
2つ目の条件は、先進国が不退転の決意で景気を底割れさせないという政策を打ち出すことです。まず日本は第3弾の量的金融緩和を打ち出すこと。それから財政をどんどん増やすこと。それから2017年に予定されている消費税増税を棚上げすることです。この3つを打ち出せば日本株に限っていえば非常に大きなリバウンドをもたらす可能性はあると思います。
しかしこれは日本だけの話なので、日本だけでやっても力不足。やはり同じような政策をアメリカ、ヨーロッパの先進国が協調して打ち出す必要があります。アメリカでは利上げを延期するとか、最悪の事態に備えて量的金融緩和の第四弾を打ち出すなどやれば雰囲気はがらと変わると思います。ヨーロッパではドラギ総裁が3月に再度の量的金融緩和を打ち出すことを示唆しましたけど、そのようなことが同時に行われる必要があると思います。つまり先進国の協調的な政策対応。これが2つ目に状況を劇的に変える条件です。
3つ目に状況を劇的に変える条件はやはり中国だと思うのです。様々な問題の根源は中国にあるので、中国がしかるべき手を打てば状況は劇的に変わると思います。第1は景気対策です。しかしこれはいろいろやっているけれどなかなか実効が伴わない。景気の完全な底入れ転換はあまり期待できない。となると中国は今可能な最も重要な政策は何かというと正しい資本規制です。資本規制をやって、国内の金融緩和が世界の人民元安に結び付かないということを明確にすれば、投機筋のマーケットの売り崩しは完全に経路を遮断されると思うのです。中国の資本規制強化が3つ目の大きな転換点になり得る条件です。
もう一度言います。実体経済の好転。これは時間がかかって当面期待はできない。2つ目、先進国の大胆な同時、協調的なテコ入れ政策。これはあり得ると思います。3つ目は中国の資本規制。この3つのうちどれかが顕在化すればマーケットは大きく転換し得ると思うのですけれど、可能性としてかなり早いと思われるのは中国の資本規制。これが打ち出される可能性がでてきた。こうなるとマーケットの底入れはそう遠くない将来に実現する可能性があるということだと思います。
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新関:今の市場をどうみるかを武者リサーチの基本的な考え方として教えてください。
武者:武者リサーチとして現在どういうスタンスとしてマーケットを見ているか、6点ほど申し上げたいと思います。まず、第1に日本株価の長期上昇トレンドは全く変わらない。いずれ2万円を超え、数年後には3万円を超えていく可能性は極めて高い。なぜなら、日本株式の本質的な価値がそこにあるから。企業の稼ぐ力がそこにあるから。今のような金融市場の混乱があっても、それは全く損なわれないと思います。
第2に武者リサーチが申し上げたいのは中国経済の悪化と、株価下落、資本流出というのは資本規制などの強化が打ち出されない限り止まらないと思います。
第3に主張したいのは、アメリカ経済は大抵のことが起こっても堅調であり、リセッションに陥る心配はまずないと言っていいと思います。もちろん、マーケットの売り崩しを止めることができなければリセッションということもあり得ます。しかしこれは止められます。
第4、日本経済も追加的な経済対策、アベノミクスの第3弾がリセッションを回避する可能性が極めて高いと思います。安倍政権、黒田日銀は不退転の決意でデフレ脱却をやるということを約束していますから、約束を違えることはないと思います。
第5、世界の同時株安は中国発の世界同時不況という仮説が織り込まれようとしているわけですから、これが否定されれば事態は変わる。
6つ目に主張したいのは政策の発動によってマーケットは劇的に反発するということです。仮に上述の困難によって日経平均が1万6000円、1万5000円、1万4000円、または1万3000円まで下がったとします。しかしそこからあと政策の転換によって事態は急激に変わり一気に2万円、場合によっては2万3000円、2万4000円という株価の急騰が起こる可能性があるということです。
以上6点が武者リサーチとして現在主張したいポイントです。
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新関:株価の展望を教えてください。
武者:まだしばらく株価の下落は続くと思います。底打ち転換は政策発動以外に考えられず、政策転換は株価が堅調な局面ではでてきそうもないからです。もっと深刻な株価の下落だとか、経済の悪化、人々がより悲鳴をあげる環境が必要だと思われます。ここ数週間、あるいは数か月間、場合によっては株価の下落、低迷が続く可能性があるのです。しかし、そのようなことがあってもここから先の株価の底値はそんなに深くないのではないか。
そしてその後は、経済実態は大きく明るくなると思うのです。なぜなら前から説明している通り、実は原油価格の下落というのは世界経済にとっては極めて大きな好材料なのです。日本にとっては、例えば2014年日本が輸入した化石燃料の輸入額はGDPの3.4%あったわけです。従ってこれが半分になったら1.7%GDPが押し上げられます。今は半分どころか3分の1です。3分の1ということですと経済成長は2%超える押し上げ効果があるわけです。これはアメリカでもヨーロッパでもそうです。おそらく年初の暗い雲が大きく消えた後、かなり明るい晴天が待っている可能性があり得るのです。
中国は中国で資本規制を導入する。しかし他方で国内では徹底的な金融緩和をやることということで中国経済・金融のとてつもない悪化も一旦歯止めがかかると思います。このように考えるとこの先の短期的な下落とともに、年後半にかけての大幅な上昇ということを念頭に置いておく必要があると思います。やはり鍵は政策対応になると思います。
新関:それでは、今のような急落場面において投資家はどのよう心構えが必要か、何か教えてください。
武者:今年は驚くべき変化が起こりました。だれもが想像していなかったマーケットの暴落が起こり、中国は破局してしまうのではないかというほどの不安を世界の人々に放ち続けたわけです。原油価格も下値の目途が立たないほど急落しました。こういう状況の中で人々は異常な不安心理にとらわれたということはだれもが想像できなかった意外性だったと思うのです。
私は4つの点を強調したいと思います。第1はこのような局面というのは本来株式が持っている本質的な価値から値段がどんどん下の方に乖離しているということです。これは言葉を変えて言えば、空前の投資チャンス、バーゲンハンティングの機会が巡ってきつつあるということです。その好例をあげると、リーマンショック直後です。リーマンショックのとき世界の株価は6割暴落したのです。6割大暴落した2009年の初めというのは本質的価値に比べ著しく株が安くなった時期です。従って、その時に株を買っていたとすれば、2年後に世界の株価は倍になって、3年後には3倍になっているわけです。大幅な株価上昇の可能性を秘めているのはこれから先の株式市場である。大きな投資チャンスですから、あるいは価値のある株を大変安く買えるバーゲンのチャンスですから、そのチャンスを逃さないように。これが第1の心構えだと思います。
第2に申し上げたいのは、中国の望ましい政策は規制強化です。人々は、中国は規制緩和し、市場経済を導入すればよくなるのでその方向で改革しないさいと言っています。しかし危機を抑えるためには規制強化が不可欠なのです。規制強化は緊急避難政策、いわゆるコンティンジェンシー・プランということで、正しくどこの国でも危機が起こったときに導入したことです。リーマンショックの後でも世界が安定したのは規制強化あるいは権力の介入によって市場は安定したのです。中国もそのようなことによって事態は一旦は沈静化する。
3つ目は、何と言っても日本は政策発動の可能性はほぼ間違いないということです。2017年4月には消費税増税があります。安倍政権はこれをどうするかを決める前に7月に参議院選挙があります。衆参同時選挙になる可能性もあります。こういう局面においてアベノミクスは成功したのだ、日本はデフレ脱却間違いないのだという現実を作るということは是が非でも必要であり、それをやるための手立てがあるとすれば安倍政権と黒田日銀はアクションを起こすと思います。
4点目に申し上げたいのは、ダウンサイドのリスクはあまりないのではないか。ここまで来ますと一定の条件で底入れするというシナリオは、私は見えてきたと思います。おそらくエコノミスト、フィナンシャル・タイムズなどがこういう主張を始めたということは多くの人々がこれで底入れが見えてくると思い始めるということです。このようなことで底値感が形成されるのはそう遠くないではないか。
以上、第1は本質的な価値から大きく下がりバーゲンのチャンスである。第2に中国の必要なことは規制の強化であり、その可能性は極めて高い。第3に日本の政策の発動、これもほぼ間違いない。第4にこれから下のダウンサイドは小さくなった。この4点を念頭に置いておく必要があるのではないかと思います。
新関:なるほどよくわかりました。
新関/武者:ありがとうございました。