1/23日経ビジネスオンライン 長尾賢 『周辺国への介入を嫌うインドと、遠交近攻の日本 日本とインドが「同盟」を組む可能性』記事について

 

インドで思い浮かぶのはカレー、カースト制、貧困、賄賂、マザーテレサ、IIT(インド工科大学)と言ったところでしょうか。アジアであっても遠い国のイメージになると思います。顔つきも日本人と違うので、あまりなじみがない感じがします。

以前、アフターブ・セット元駐日インド大使と飲んだ時に「日本とインドは歴史的に見てぶつかった時がない。仏教を初めとして長い間、友好が続いている。」と言われました。確かに、インド国民軍のチャンドラ・ボースやパル判事等第二次大戦前後に日本の立場を良く理解してくれた人たちもいます。

青山繁晴氏が以前TVで「チャンドラ・ボース・ジャパン大学」を作ろうと提案していた記憶があります。戦後、日本は戦勝国に歴史を書き換えられ、不名誉なこと(南京虐殺、慰安問題)まで押し付けられました。西欧中心の歴史観、中華思想に立脚した歴史観でない立場で歴史を眺め、世界に発信する基地となれればいいと思っています。本来、日本がやるべきなのでしょうが、まだまだ外圧に弱いのと歴史を改竄するのかと言われそうだからというのがあると思います。歴史の改竄が得意なのは中韓ですが。

ハンチントンは『文明の衝突』の中で、「イスラムと儒教文明圏が手を結んで西欧文明に対抗する」と主張したとあるメルマガで読んだ記憶があります。(申し訳ありませんが、本は読んでおりません)。儒教は宗教ではなく、礼と楽を教えた道徳なのではと思います。それが一神教のイスラムと手を結ぶことは考えにくいです。中国が「孔子学院」を世界に作っても広がらず、というか共産党の都合の良い話しか教えないと言うので閉鎖しているところも出て来ています。儒教の影響を最も受けたのは日本で、中国・韓国は残っていたとしても形だけでしょう。日本は神道、仏教、儒教とあらゆるものをうまくミックスさせ、換骨奪胎してきました。

最後に、中国の台頭を抑えるためには遠交近攻が必要です。今オバマがインドに行っていますがもっと地政学を勉強してほしいです。日本ももっともっと交流していくべきです。

記事

日本とインドが接近する動きが加速する傾向にある。昨年はその傾向を示す事態が相次いだ。1月にはインドの共和国記念日の軍事パレードの主賓として安倍晋三首相を選んだ。5月に就任したナレンドラ・モディ首相は、主要国で最初の訪問国として日本を選んだ。この1月に訪印した岸田文雄外務大臣は、中国が領有権を主張しているインドのアルナチャル・プラデシュ州は「インドの領土」であると明確に表明した。

 日印間の連携はこのまま強化が進んでいくのだろうか。これを疑問視する見方もある。インドは同盟関係を結ぶことによって、かえって、外交政策を自ら主導的に決めることができなくなることを恐れているからだ。だからインドでは、「非同盟」という言葉が、一定の支持をもって受け入れられている。

 一方、日本にもインドを低く評価する向きがある。インドはまだまだ貧困にあえぎ、多くのトラブル・犯罪の話に事欠かない国である。軍事的にも、米国のように世界的なレベルで強い国ではない。そもそもインドは、日本から遠すぎるのではないか。疑問は尽きない。

 こうした疑問を解消する一つの指標は、インドの外交戦略上の傾向を分析することだ。インドはどのような国と同盟を組む傾向があったのか。その原因は何だったのか。これらを分析することで、今後を占う基準にすることができよう。本稿はこの課題に取り組む。

インドは自称「非同盟」

 筆者は、インドが1947年に独立した後に経験した軍事行動を28に分けて分析した(注1)。その結果、興味深い特徴をみつけることができた。

 特徴の1つ目は、インドが自称「非同盟」であることだ。独立当初、インドは本当に非同盟だった。しかし、1962年に中国との戦争に負けて以降、米国との軍事協力を進め、その後、ソ連との関係を強化するに至った。これは事実上の「」つき「同盟」である。だから、今後もインドが「同盟」を組む可能性を示している。

(注1)インドの軍事行動28の分析は、筆者が2011年に書いた学習院大学における博士論文。ミネルヴァ書房より出版する予定

南アジア全域に及ぶ縄張り意識

 では、インドはどこと「同盟」を結ぶのだろうか。インドは、国益を脅かされたと感じた時に「同盟」を結んでいる。ではどのような時に国益を脅かされたように感じるのだろうか。インドは、インドの本土を脅かされた時だけでなく、インドの周辺国に外国が介入した時にも国益を脅かされたと感じ、「同盟」を結ぶのだ。これが2つ目の特徴である。

その典型的な例は、1971年にインドとソ連が結んだ印ソ平和友好協力条約である。この時、米国はソ連を封じ込めるために、中国との接近を図った。しかし米国と中国とは、直接国交がない。だから、米中両国と国交があるパキスタンが中継地となった。インドからみれば、米中がパキスタンとの関係を強化した形になる。しかも当時、インドはパキスタンと戦争寸前の状態にあった。米中両国がパキスタン側に立って参戦することを恐れていた。だから、インドはソ連との「同盟」関係を構築して対抗したのである。

india alliance

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図:1971年当時の各国の位置関係

同じようなことが1980年代にも繰り返された。80年代には米国がスリランカとの軍事的な関係を強化した。中国もネパールに武器を輸出した。こうした行動はインドを強く刺激し、インドとソ連の軍事的関係を強化することにつながった。80年代にインドがソ連から大量の武器を輸入した事実が、このことをよく示している。

 さらに、同じ傾向が現在も続いていると言ってよい。1990年以後、インドと米国の関係は強化される傾向にある。しかし、米国がパキスタンに武器を売ると、米印関係の進展の障害になる。同じように、昨今、ロシアがパキスタンに武器を売ることを決めると、インドはロシアに対して強い警戒感を示した。

インドの外交の3つのグループ

 こうして見ると、インド外交の対象は、大きく3つのグループに分かれるように見える。1つは、インドの周辺国である。インドに比べれば圧倒的に小さい国々だ(注2)。これらの国々を、インドは自らの「縄張り」ととらえている。

 2つ目のグループは、そのインド周辺国に介入するかもしれない国々である。特に中国だ。

 そして3つ目のグループは、インドの周辺国に介入することなく、介入してくる国々を牽制する国々だ。中国の外側にいる国、つまりロシアは、このグループといってよい。

 このグループ分けでややこしいのは米国だ。冷戦時代、米国はパキスタンやスリランカを軍事的に支援した。この点ではグループ2に当たる。しかし、インドが中国に対抗する際、米国はグループ3に属する国だ。

(注2)米ドル換算で計算すると南アジア諸国の国防費の合計額の約8割をインド1国が占める。パキスタンも含め残りすべての国を合わせても約2割にしかならない。

インドにとっての日本

 さて、このような傾向の中で、日本はどこに含まれているだろうか。実は、日本はこのグループ3に含まれるものと考えられる。インドが日本に注目する時、その理由には共通点があるからだ。

 例えばインドは、英国からの独立運動を支援した存在として日本を高く評価していた。冷戦末期、ソ連の力が弱くなり、米国に対抗するための新しい国を探していた時に、インドは日本との「同盟」関係に注目した。日本の経済成長が著しく、米国内には日本脅威論すら生まれていたからだ。そして現在、中国との関係を考える際に、インドは日本との「同盟」関係強化に注目する。

 つまりインドにとって日本は、インド周辺国に介入することなく、介入してくる国々を牽制する国々の一つと言える。今後、インドと中国の関係に問題が生じると、日本との関係をより重視するようになる可能性があろう。

日本はどこと同盟を結ぶか

 一方、日本の外交戦略上の傾向は、日印の「同盟」関係強化を後押しするものだろうか。

 過去に日本を分析した有識者の中には、日本にはバンドワゴンの傾向があると指摘する向きがある。バンドワゴンとは、「最強国との提携」を意味している。例えば日本が同盟を結んだ時、英国は世界の海を支配する大帝国だった。日本がドイツと同盟を結んだ時、ドイツはヨーロッパの全域を支配する勢いがあった。そして日本が米国と同盟を結んだ時、米国は世界で一番強い超大国であった。このような見方をする有識者には、例えばハーバード大学教授だった故サミュエル・ハンチントンがいる。

 ハンチントンが大変優秀な学者であることに疑いの余地はない。しかし、日本は本当にバンドワゴンなのだろうか。もしバンドワゴンだとすると、米国の力が後退し、中国の影響力が最も強くなった時、日本は中国の興隆を認め、その秩序に順応することになる。ハンチントンは日中が手を結ぶ可能性すら指摘している(注3)。ところが実際には、昨今の日本は中国の台頭へ対抗しようとしているように見える。これは、ハンチントンの予測とはまったく逆の傾向だ。

 もしかしたら、日本はバンドワゴンではなく、遠交近攻によるバランシング(勢力均衡策)を好むのかもしれない。遠くの国と同盟を結んで、近くの脅威に対抗するという意味だ。例えば日英同盟には、ロシアの南下政策に対抗する意味合いがあった。日本がドイツやイタリアと同盟を結んだ時も、関係が悪化し始めた米国を牽制する側面があったと指摘できよう。戦後、日本が米国と同盟を結んだ時は、冷戦初期で共産主義が拡大する脅威が存在した。つまり、日本は近くの脅威に対抗するために、その反対側の国と同盟を結ぶ傾向があることになる。

 もしそうであれば、日本は次にどこと同盟を結ぶであろうか。ここに、中国の脅威に対抗してインドとの同盟を考える可能性を指摘できる。昨今、実際に起きている日印の接近は遠交近攻に近い。

 つまり、日本とインドは、共に同じような傾向を示しながら、お互いひかれ合っていることになる。明確な条約で結ばれた「」なしの同盟にはならないかもしれない。でも、どのような形であれ、日印「同盟」は、両国の外交戦略上の傾向から、実現する方向にあると言えよう。

 

 

 

 

 

 

 

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