日高義樹著『「オバマの嘘」を知らない日本人』を読んで

昨日朝、NHKのニュースを見ていました。22日の与那国島の住民投票の結果ですが、朝5時台は「陸上自衛隊の配備賛成派の勝利と市長の中学生も含めた投票のあり方についての批判」について報道されていましたが、6時台には市長の批判は流されませんでした。左翼人士にとって都合の悪いことは多くの人が見る時間帯には報道しない姿勢なのかも。「報道しない自由」の権利の行使です。聞けば「編集権は天下のNHKが持っている」とか「時間がなかった」とか言い訳するのでしょうけど。この本を読めば、中国が如何に侵略国かわかります。実際領土問題を抱える南支那海には堂々と軍事基地を作っております。ISIL、ウクライナ問題で手を打つことができないオバマの姿勢を読み切ったうえでのこと。与那国、尖閣、沖縄だけでなく彼らは日本を全部手に入れようと考えています。国民一人ひとりが国防を真剣に考えないと侵略されます。「念仏平和主義」は抑止力にならないのはISILの人質事件を見れば分かるでしょう。九条擁護派の考えは犬養毅の「話せば分かる」に対して「問答無用」の回答を受けるでしょうと言いたい。世界はいろんな考えの人がおり、平和を実現するには抑止力が必要です。左翼人士は利敵行為をしているとしか思えません。

表題の本は昨年7月に刊行されました。日本の核保有をアメリカは反対しないとかプーチンは北方領土を返さないとか『「「プーチン大統領は千島列島をめぐって日本側と対決をしていると考え、最新鋭の揚陸用空母や海軍歩兵部隊と呼ばれる海兵隊をウラジオストックに実戦配備しようとしている」。この会議に出席したアメリカ海軍の退役提督が、こう言ったが、ワシントンの軍事専門家はプーチン大統領が日本と対決し、北方領土を取り返されるのを防ごうとしていると見ている。「プーチンと日本との対決は続いている。プーチンは、軍事力でもってロシアの利益を守らなければならないと思っている」』とか内容はいたって刺激的です。アメリカ発の情報なので、よく咀嚼して考えたいと思います。

帯には

尖閣を守る」を信じてはいけない

米国民の61%がオバマは嘘をつくと考え、ワシントンの軍事専門家の多くは「ウクライナの次に危ないのは日本」だと言い始めた!  PHP研究所 定価・本体1,500円

・米•中のバブル崩壊は先送りされる

・オバマ大統領の平和外交は完敗した

・ロシア極東太平洋艦隊が日本と対決する

・中国は核戦力を飛躍的に増強する

・朝鮮半島で五年以内に戦争が始まる

・オバマ大統領は戦争を始められない

・アメリ力がアメリカでなくなる

・ドイツ・ヨーロッパがアメリカ離れを始めた

・ペンタゴンで内乱が起きている・・・他

と面白い内容です。是非購入して読んで戴きたく。

内容

FRBはこれまで五年間、毎年一兆ドルずつ、連邦債や不良債権を買い続けてきた。連邦債や不良債権を買い続けるということは、ドルの発行高を増やすことで、通貨の過剰流動性を生み、経済にとって重荷となる。このまま金融緩和政策を続ければィンフレは避けられな いが、金融緩和を取りやめ、緊縮財政を始めれば、ニ〇〇九年以来のアメリカの不完全な景気回復の中で生じているミニバブルが崩壊してしまう。

アメリカの人々は、中国のバブル崩壊が世界経済を混乱させることを懸念しているが、もっと深刻な問題はアメリカ経済の先行きなのである。長い間続けてきた金融緩和政策を打ち切れば、アメリカ経済が大打撃を受け、中国のバブル崩壊に勝るとも劣らない難しい問題を引き起こす恐れが十分にある。

アメリカ経済は長期間にわたる金融緩和の結果、まさに借金漬けになっている。アメリカ連邦政府の財政赤字はすでに一八兆ドルに達しているが、新しい医療保険制度が実施されると、借金はさらに増え、あっという間にニ〇兆ドルを超す。

アメリカ国民の個人的な借金も急速に増えている。一般家庭の借金は二〇一二年の暮れには一兆八〇〇〇億ドルであったものが、一年後の二〇一三年暮れには二兆ドルを超した。こうした借金のほかに、クレジットカードの借金がほぼ一兆ドル、自動車ローンが一兆ドル弱、 学費ローンの借金も一兆ドルを超している。そのほか、住宅関連の借金が一一兆ドルある。

アメリカの人々の貯蓄は急速に減っている。国民の貯金がゼロに近いところから、借り入れのほとんどが外国から行なわれている。したがって、その利息を外国に支払わなければな らない。アメリカの国内総生産が一五兆ドル、借金の利息はその一〇パーセント弱だが、借金の総額は増える一方なのである。しかも基本的にアメリカ経済は資本が不足している。アメリ力経済はいまや硬直化して、自由な拡大が阻害されている。

アメリカにとって最大の問題は、このまま経済緩和政策をとり続ければ、赤字がとめどもなく増え続け、現在は抑制されているィンフレが爆発的にひどくなる危険が増大することである。

アメリカはこれまで、財政赤字をはじめとして借金を増やし続けてきたが、その借金によって新しい産業を起こし、新しい技術を開発して経済を拡大してきた。ところがいまや、アメリ力の借金は利子の支払いと、拡大する財政赤字に消えてしまっている。新しい産業を起こす力になっていない。

いまFRBが金融緩和政策を取りやめ、金融を引き締めることになると、アメリカ経済は重大な影響を受ける。伸び悩んでいる資本がさらに不足し、減っている個人所得がさらに少なくなる。

FRBの夕力派が主張しているように、借金を増やし続けて、借金漬けになってしまったアメリカは、このあたりで金融緩和を取りやめ、引き締めに戻らなければならない。しかし 戻れば資本が不足するだけでなく支出も減り、とくに個人消費が少なくなるところから、 アメリカ経済が大きな打撃を被ることになる。いまアメリカは留まるにしろ、新しい動きを 始めるにしろ、逃れられない危機に直面している。

ウクライナの非核平和外交は無力だった

一九九四年十二月五日、ウクライナのレオニード・クチユマ大統領は、ウクライナがソビエトから分離独立したときに保有していた一九〇〇発の核弾頭をロシア側に引き渡す条約に調印した。

この条約は核拡散防止条約の一部として取り扱われ、アメリカとイギリスがロシアと協力して核兵器のなくなったウクライナの安全と平和を保障することになっていた。この条約の締結に最も力を入れたのがアメリカのクリントン大統領だった。クリントン大統領はこの条約の成立するほぼ一カ月前、一九九四年十一月二日、ホワイトハウスでクチユマ大統領と会 い、ウクライナ経済を支援するため二億ドルの援助を与えることを約束していた。

この取り決めには後日談がある。ロシア側に渡された一九〇〇発の核弾頭はすべて解体され、ロシアは核弾頭から取り外した放射性物質を原子力発電の燃料としてアメリカに売り渡した。これもまた核拡散防止条約の一環として取り扱われ、ロシアの核兵器削減の一環として取り扱われロシアの核兵器削減の項目の一つになった。

一九九四年、ウクライナがアメリカ、ロシア、イギリスと結んだ条約は、核兵器を売り渡す代償として安全と平和を与えられるというものだった。核を持たず、日米安保条約のもとで安全を保障されている日本と同じ立場になったのである。歴史的に見れば、ウクライナは日本に続いて、核兵器を持たない代わりに大国によって安全を保障される国になった。大国が「守ってやるから、核兵器を持つ必要はない」と保証したのである。

日本と異なり、ウクライナ議会は、この取り決めに猛烈な勢いで反対した。クチユマ大統領は弾劾され、解任されてしまった。いまウクライナの人々は、一九九四年にロシアに核兵器を引き渡し、アメリカとイギリスに守ってもらうことにしたのは大きな間違いだったと、強く感じている。

ロシアがクリミア半島を占領した直後、ウクライナ議会のパブロ・リザネンコ議員はアメリカのテレビに出演して、こう述べた。

「我々は一九九四年の取り決めに基づいて核兵器を諦めたが、あれは大きな間違いだったと多くの人々が考えている」

今度のロシアの侵略行動についてアメリカの雑誌『ニューズウイーク』は、核拡散防止条約に対する真正面からの挑戦であり、国際法違反であると非難して次のように伝えた。 「純粹に軍事的に見るとウクライナが核兵器を維持し、モスクワを直撃する中距離ミサイルを開発して装備していれば、核兵器による報復を恐れ、ロシア軍はクリミア半島に対する侵略に二の足を踏んだはずである。つまり核の抑止力がありさえすれば、ウクライナはロシアの侵略を受けずに済んだ」

しかしさらに重要なのは、『ニユーズウイーク』が指摘しているように、今度のロシアの行動が核拡散防止条約に対する重大な違反で、核拡散防止を基本的な国際戦略としてきたアメリ力に対する挑戦であるという事実である。

またそれ以上に留意すべきは、核拡散防止政策を推し進めてきたアメリカは、核兵器を諦めてアメリカに命運を委ねたウクライナを何としても助けるべきだったのに、助けなかったという事実である。

これは日本からすれば、きわめて重要な事実である。日本は昭和憲法をつくるにあたって軍事力を放棄し、その代わりにアメリカの核の傘による安全を保障されてきた。ところがウクライナを前例とすれば、日本は同じような侵略を受けた場合、アメリカから見放されてしまう危険がある。

ロシアのウクライナ侵攻を見逃した才バマ大統領は、アメリカの力によってしかプーチン大統領を抑えることができないという国際政治の現実に目をつむったわけである。しかも、わずかニ十年前に同じ民主党のクリントン大統領がつくり上げたアメリカの基本戦略を破ってしまった。アメリカはウクライナを裏切ったといっても言い過ぎではない。

ウクライナという国が平和的に、ロシア帝国の一部といってもよいかたちで存在してきたことは、私が実際に訪問して体験したことである。冷戦が唐突に終わり、混乱が始まった頃、私はモスクワからキエフを訪問した。キエフに入るビザはモスクワのクレムリンで友人の助けを借りて手にしたが、モスクワからロシアの航空便で入ったキエフは穏やかそのものだった。

ビジネス界の指導者だという人物が「ウクライナには特別な輸出品というものはないが、 良質な粘土が採れるから、瓦用に日本に買ってもらおうかと思うがどうか」などと、のんびりとした話をしていたのを覚えている。

ジンギスカンの侵略と支配のなごりでアジア系の人も多く、混血特有の美人が大勢いることに目を見張った。ウクライナは平穏そのものだった。

チェルノブイリの原子力発電所の事故のあと、再びキエフをテレビ取材のため訪問した。 放射能の被害を受けた地域は放置され、野原にいる牛や空を飛ぶツバメが痩せているように見えて気になったが、政射能を浴びたはずの自然はあまり大きな被害を受けた様子はなかった。

ロシアは戦後レジームから離脱した

ワシントンで親しくしている人々の中に、インド政府の高官シン博士がいる。皮はインド のマンモハン•シン前首相の軍事顧問で、ハドソン研究所にもときどき顔を出すが、ハーバード大学ケネディスクールの学者の一人でもある。ロシア軍がクリミア半島を侵略した翌日、 シン博士がベセスダの自宅の近くにあるカントリークラブのプールでこう話しかけてきた。 「ロシアのウクライナ侵攻をどう考えますか。ウクライナが核兵器を持っていればプーチン大統領も簡単にはウクライナを侵略できなかったのではないでしょうか。世界の平和主義者に非難されながら、インドが核兵器や戦略部隊を持っている大切さが明らかになったとは思いませんか」

私としては異論の余地もなく、まったく同じ考え方だと述べたが、その数日後、ホワイトハウスのすぐ前にある、私が「ホワイトハウスの第二ダイニングルーム」と呼んでいるヘイアダムスホテルのロビーで、サウジアラビアの若い軍人と顔を合わせた。一緒にいたハドソ ン研究所の元所長と三人で話し合っている最中に、彼がこう言った。

「サウジアラビア同内ではいま、若い王子たちを中心にアメリカが反対しても核兵器を待たければならないという声が出てきていますよ」

この数日後、オバマ大統領はサウジアラビアを訪問し、ニ時間半以上にわたってアブドラ国王と対談した。アブドラ国王は歳をとり、健康もすぐれないため、呼吸器をつけての会談であったと報じられているが、ニ時間半という長い会談のわりには、詳しい内容は報道されなかった。

ハドソン研究所の学者によると、会談の主なテーマは、スンニー派の多いサウジアラビアとは異なりシーア派の多いパーレーンや、アラブ首長国連邦を代表するアブダビ首長国とサウジアラビア政府の関係、アメリカを交えた湾岸国家との首脳会談についてだったが、サウジアラビアの核装備の問題を話し合ったことは公表されなかった。

サウジアラビアはふんだんな石油資源を持ち、そのうえドイツ企業との関係も強く、いつでも核兵器を製造できる体制にある。

「サウジアラビアは、今度のプーチン大統領によるウクライナ攻撃に強い衝撃を受け、中東でロシアの影響力が強まってくるのではないかと懸念している。そうしたなかで独自の安全保障体制を強化するため、核兵器を持つ必要に迫られていることを強調したのだろう」

ハドソン研究所の学者はこう述べたが、インドのシン博士とサウジアラビアの若い軍人の二人が、アメリカの核の傘は、ロシアのウクライナ侵略に対して全く有効でなかったと考えてえているのは明らかだ。

ロシアのウクライナ侵略を機に世界の各国が、これからは独自のかたちの安全保障体制が必要だという考え方を強めている。日本の専門家の中にはウクライナ事件について、アメリ力とロシアという二つの大国が、大国の利益を優先し、小国のウクライナを犠牲にしたという表面的な見方をしている人が多い。だがインド政府の高官やサウジアラビアの若い軍人が指摘しているのは核拡散防止政策というアメリカの基本戦略が今度のプーチン大統領の侵略行動の犠牲になったことである。

プーチンによるウクライナ侵略は、紛れもなくオバマ大統領の失敗、アメリカの間違いがもたらしたものである。アメリカの核戦略が世界から不信の目を持って見られるようになったのは、アメリカの自業自得ということができる。

ウクライナは、核拡散防止の戦略的構想に基づいて安全を保障されていたはずだが、ロシアもアメリカもウクライナを見捨てた。表面的に見れば小国であるウクライナを大国であるロシアが侵略し、アメリカがその小国を守る努力をしなかったわけだが、インドのシン博士やサウジやサウシアラビアの軍人から見れば、そうではない。

オバマ大統領は結局、同盟国である核を持たない小国を守ろうとする意欲に欠けているのである。

アメリカの核戟略を分析すれば、アメリカの核兵器がアメリカの利権を守るために配備されていることは一目瞭然である。アメリカの本土に展開しているミニットマン・ミサイルや大型戦略爆撃機に搭載された核兵器、それに潜水艦に装備されたトライデント型ミサイルは、アメリカ本土攻撃に対する報復のためのものである。アメリカの基地や領土が核攻撃を受ければ、アメリカは、大量破壊力を持つ大型の核ミサイルで報復攻撃する。

つい先頃亡くなったジエームス・シユレジンジャー博士が考え出した全方位戦略といわれる核戦略は、アメリカの軍事基地が攻撃された場合に、ロシアのあらゆる都市を無差別に攻撃することを基本としている。したがって、アメリカ政府が膨大な費用をかけてつくっている早期警戒体制は、アメリカに対する先制攻撃を察知し、反撃態勢をとるためのものであ る。

朝鮮半島で五年以内に戦争が始まる

ニ○一四四月、オバマ大統領が日本、韓国などを訪問する直前、オバマ政権に強い影響力を持つワシントンのシンクタンクが、次のような報告を行なった。

「北朝鮮政府部内の政治情勢がきわめて不安定で、侵略的な行動を起こす危険が強まっている。アメリカは北朝鮮に対する態勢を再点検し、対応策を強化しなければならない」

オバマ政権内部では、北朝鮮の脅威は実体がなく核兵器の脅しは口先だけだという考えが強いため、オバマ政権の一部といわれるこのシンクタンクが警鐘を鳴らしたものと思われる。

ワシントンの軍事専門家の間でも、ロシアのプーチン大統領によるウクラィナ侵略はアメリカの核抑止カの失敗がもたらしたもので、その結果、ロシアの容認のもとで北朝鮮が侵略行動をとる危険があるという見方が急速に強くなっている。

ワシントンの専門家がとくに注目しているのは、北朝鮮の政治が依然として非常に不安定で、このまま事態が進行すれば、北朝鮮政府が分裂し、政治騒動の最中に韓国に対する攻撃が行なわれる危険があることだ。シンクタンクの報告をまとめたパトリック・クローニン博士は、次のように警告している。 「北朝鮮はロケットなどの開発に力を入れていることから、いまの事態が進めば、向こう一年ないし五年以内に、朝鮮半島で偶発的に戦争が起きる危険がある」

オバマ政権は登場以来、朝鮮半島問題をすべて中国に任せ、中国との関係を強化すること で、朝鮮半島に対するアメリカの影響力と抑止力を維持しようとしてきた。オバマ大統領が「アジアへの大転回」と銘打って始めたアジアに対するアメリカ軍の増強計画は、軍事的に見るとほとんど実体がないと軍事専門家は見ている。

アメリカ海兵隊の幹部がとくに懸念しているのは、国防予算の削減でアジア極東におけるアメリカ海兵隊の有事即応体制に支障が生じていることである。アメリカ海兵隊のジョン・パクストン副司令官は次のように述べている。

「当面は何とか予算をやりくりして訓練を強化するつもりだ。短期的には何とかなるが、この状況を長期的に続けるわけにはいかない」

アメリカ海兵隊は、朝鮮半島有事の際にはアメリカ軍の即応能カの中心になるため装備の近代化や厳しい訓練が行なわれてきた。だがオバマ政権のもとで沖縄の海兵隊の数は減少し、アメリカ海兵隊の有事即応能力にかげりが見え始めている。

朝鮮半島有事の際、日本にあるアメリカ軍基地の使用について事前協議に応じないこともありうるという安倍総理の発言もこういったアメリカ軍の状況を反映したものと思われ る。ウクライナ危機と北朝鮮の政治的混乱は、アメリカと日本が忘れてきた朝鮮半島有事について、再び真剣に考えなければならないことを示唆している。

朝鮮半島と並んで中国の軍事的膨張も危険の度合いを増している。古いロシアの空母を化粧直ししただけの「遼寧」はニ○一三年一月二十日、海南島の基地を出港し、ベトナム沖を西沙群島からマレーシアまで南下し、一月二十六日、マレーシアの沖合で儀式を行なった。「遼寧」以下の中国艦隊が航海した地域は、すべて中国の領海にするという勝手な行動だったが、エンジンの不調で動けなくなったのだという噂もある。

「違寧」と中国艦隊は、さらに南へ下り、マレーシアとインドネシアの間をジャワ島西側の海峡を南太平洋に出ると航路を東にとり、ロンボク海峡から北上し、マカッサル海峡を抜けて、二月三日にはフィリピン沖に達して実弾訓練を展開した。

中国艦隊はその一週間後の二月十一日、中国南部の軍事基地に帰島したが、この航行によって中国は、南シナ海から南太平洋にかけての海域が中国のものになったと主張しているのである。これについては、さすがにアメリカ政府もアメリカのマスコミも真面目には取り上げていない。日本のマスコミも相手にしなかったようであった。だが歴史的に見ると、中国 はこういった愚かな主張をくり返し行なっている。

第二次大戦後、アメリカがアジアを軍事カで制圧していた間は、中国の動きは沈静化して いた。だがアメリカが後退を始めると、それに乗じて中国は、防空識別圏を勝手に拡人する一方で、ロシア艦隊のお古の空母を中心に、まるで大名行列のような航海を南シナ海一帯で行ない、中国の領域であると宣伝している。

こうした中国の新しい戦略的な行動で最も被害を受けるのは、台湾であると予想されている。私はハーバード大学で教えていた頃、台湾の李登輝総統の招きで台北を訪問し、軍人たちと話し合う機会があった。そのときに感じたのは、台湾はあくまでも北京とは異なっているということだった。地理的には大きな中国の中に抱え込まれていても、台湾という国に私は何の違和感も覚えなかった。

私は北京も訪問して、ハーバード大学の一員として講演したことがあるが、当時から中国政府の考え方ははっきりとしていた。中国の指導者は長い目で見て台湾を吸収できる可能性が存在するかぎり、軍事力は使わないと決めている。軍事行動を起こせば台湾を合併して得られる利益よりも損失が多いと考えているからである。

しかしながら、 はっきりしているのは、中国政府が“レッドラィン”と考えているいくつかの限定条件があることだ。まず台湾が独立宣言を行なわないこと。また独立をめざす動きをしないこと。台湾内部で騒動を起こさないこと。そして核兵器を持たないことである。中国との合併の話し合いを永遠に引き延ばすこと。さらに台湾の内政問題に外国の勢力が介入しないこと。外国の軍隊が台湾に駐留しないことなどである。

大統領選挙中、長い時間を一緒に過ごした力ーター大統領やその側近と、台湾問題について話し合ったことがあるが、台湾問題に性急に介入することはできないと考えているのは明らかだった。アメリカの指導者はいずれも、同じ考え方をしている。

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