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5/15ダイヤモンドオンライン 北野幸伯『安倍総理の“米国ヨイショ演説”が日本の戦略的勝利だった理由』記事について
アメリカも5/14上院でTPAが審議再開しました。 オバマの手柄にすると言う意見もありますが、もっと大きく見た方が良いでしょう。真の敵は中国、しかも共産主義国でバブル崩壊すると言われて久しいですが、崩壊しないのは中西輝政氏によれば「自由主義国と違い、不動産(使用権)の供給を抑えれば、不動産価格は下がらない。そんなに簡単にバブル崩壊しないだろう」とのこと。軍事的に対決するのを避ける(左翼が良く言う平和的な解決)には中国の経済をまず崩壊させないと軍事拡張するだけです。敵はRCEP等でTPPをなきものにしようとしていると思います。ADBに対するAIIBみたいなもの。保守派はTPP反対派が多いように見受けられますが、もっと大きな目で見てほしいと思います。対米従属が進むだけと言っても一国で平和は確保できない現状で経済的にも軍事的にも連携を進めるしかないのではと思っています。中国を経済的に多国間で封じ込めないと。
しかし、習は鄧小平にはなれませんね。「韜光養晦」から「有所作為」は中国にとっては大きな戦術的誤りだったと思います。鄧は100年でも200年でも待って中国が覇権を取れば良いと考えていたと思います。だから78年8月に園田直外相が鄧に尖閣について聞いたときに「数年、数十年、100年でも脇に置いておけばいい」と答えたのです。アメリカに中国系アメリカ人の大統領を出すまで待とうと考えていたかもしれません。100年待つことができない習は転ぶ気がします。 アメリカも中国の野望に気付き出したという事でしょう。いいことです。小生が2005年日本に帰国以降、中国の野望に警鐘を鳴らしたら「国粋主義者」「人種差別主義者」と言われた時代からすれば隔世の感があります。これも習のお蔭です。
記事
日本が抱える安全保障面での問題を解消するという目的から見ると、安倍演説は大成功だった。ほんの1年ほど前まで、中国の反日プロパガンダは成功しつつあり、日米分断が進んでいたが、AIIB参加見送りと安倍演説によって関係は修復された。中国の脅威にさらされる日本にとって、日米関係修復は「安全確保」に欠かせない最重要戦略である。
米国を褒めまくっただけの演説だが極めて戦略的に練られている
「すばらしかった!」「全然ダメだった!」安倍総理の米議会演説について、「賛否両論」が山のように出ている。言論の自由がある日本で、ある演説について、「いい」「悪い」と意見がわかれるのは当然だ。
そして「絶対的な正解」を求めるのは間違っている。そんなものは、あるはずがないのだから。「安倍演説をどう評価するか」は、その人の立場によって異なる。
たとえば、「親米なのか反米なのか?」「親中なのか反中なのか?」「リベラルなのか、保守なのか?」などだ。
筆者がこれから書くのは、「親米」でも「反米」でも、「親中」でも「反中」でもない、そして、「保守」でも「リベラル」でもない見方である。筆者の視点は「戦略的に見て、安倍演説は成功だったのか?失敗だったのか?」という一点にある。
最初に断わっておくが、筆者はいわゆる「安倍信者」ではない。「消費税増税」「残業代ゼロ」「移民受け入れ毎年20万人」など、安倍政権の政策に賛成できないことはたくさんある。しかし「安倍憎し」で、総理のすることは「なんでもかんでも反対」というわけでもない。悪いことは「悪い」というが、「成果」は「きちんと評価すべき」という立場である。そういう前提で、続きをお読みいただきたい。
最初に、安倍演説の内容を見てみよう。この演説は、はっきりいえば「米国を褒めて、褒めて、褒めまくっただけ」といえる。実際の演説から引用してみよう。
<「アメリカは、すごい国だ」。驚いたものです。>
<私の名字ですが、「エイブ」ではありません。アメリカの方に時たまそう呼ばれると、悪い気はしません。>(エイブとは、リンカーンの愛称)
<日本にとって、アメリカとの出会いとは、すなわち民主主義との遭遇でした。>
<親愛なる、友人の皆さん、日本国と、日本国民を代表し、先の戦争に斃れた米国の人々の魂に、深い一礼をささげます。とこしえの、哀悼をささげます。>(中韓には謝罪しなかったが、米国にはきっちり謝った。)
<私たちは、アジア太平洋地域の平和と安全のため、米国の「リバランス」(再均衡)を支持します。徹頭徹尾支持するということを、ここに明言します。>
<日米同盟は、米国史全体の、4分の1以上に及ぶ期間続いた堅牢(けんろう)さを備え、深い信頼と、友情に結ばれた同盟です。
自由世界第一、第二の民主主義大国を結ぶ同盟に、この先とも、新たな理由付けは全く無用です。それは常に、法の支配、人権、そして自由を尊ぶ、価値観を共にする結びつきです。>
<米国が世界に与える最良の資産、それは、昔も、今も、将来も、希望であった、希望である、希望でなくてはなりません。>
一見「米国をヨイショするだけの、属国演説」とも思える。しかし裏を知ってみれば、この演説は、きわめて戦略的に練られていたことがわかる。どういうことか、これから説明していこう。
中国の凶暴化に怯える日本 安倍演説の真の目的とは?
さて、どんな演説にも「目的」がある。つまり「なんのために演説をするのか?」。これが明確であれば、演説はわかりやすくなる。ここが曖昧だと、わけのわからないスピーチになってしまう。
安倍総理が「米国を褒めて、褒めて、褒めまくった」目的はなんだったのか?それは、「国益」(国の利益)を確保することである。では、「国益」とはなにか?いろいろあるが、もっとも重要なのは、「経済的利益」と「安全の確保」である。「経済的利益」について、今回は触れない。日本は今、「安全保障面」で「深刻な問題」を抱えているのだから。
背景をおさらいしよう。2008年のリーマンショックから、米国発の「100年に1度の大不況」が起こった。09年、世界の大国は軒並み大幅なマイナス成長になったが、中国は9.2%の成長を果たして「ひとり勝ち状態」になった(より正確にいうとインドも勝ち組)。
中国は、翌10年には10.4%、11年には9.3%の経済成長をした。そして、この国は、いまやGDPでも軍事費でも世界2位。「G2(=米中)時代」という言葉が流行するのは当然だった。
「米国は没落した」
「中国はひとり勝ちだ」
この認識が中国を増長させる。10年9月、「尖閣中国漁船衝突事件」が起こった。事件直後、中国は「尖閣はわが国『固有の領土』であり『核心的利益』である!」と世界に宣言する。領土要求は1970年代はじめからあったが、ここまで大騒ぎしたのは初めてだった。
しかも中国は、「レアアース輸出禁止」など過酷な制裁を日本に課し、世界を驚かせた。日中関係は、日本政府が12年9月に尖閣を「国有化」すると、戦後最悪になってしまう。中国政府も国民も、これ(尖閣国有化)に激怒し、大規模な「反日デモ」が起こった。そればかりでなく、中国政府は「日本を破滅させるための戦略」を構築した。
「尖閣国有化」から2ヵ月後の12年11月、中国の代表団が、事実上の同盟国・ロシアの首都モスクワを訪問。そして、中国代表団は、驚愕の「対日戦略」を明らかにした。この戦略については、ロシア国営放送「ロシアの声」HPの記事を熟読していただきたい。
過去にも触れたことがあるので、ここでは詳述しないが、中国の意図と戦略の重要ポイントは、以下のようになる。
・中国は、ロシア、韓国に「反日統一共同戦線」を組むことを呼びかけた。
・日本には、尖閣ばかりか沖縄の領有権もない。
・「反日統一共同戦線」には、米国も引き入れなければならない。
どれもショッキングな内容だ。「平和ボケ」している日本人には、ある国が日本に対し「反日統一共同戦線」を組むなど、想像もできないことだ。そして、中国が「日本には沖縄の領有権もない!」と、ロシアや韓国に公言しているのも驚きだ。しかし、一番の重要ポイントは、「米国を反日統一共同戦線に引き入れる」と宣言していることだろう。
日米分断を狙う中国の戦略は昨年途中までは成功していた
実際、「日米分断」が、中国の戦略の最重要ポイントである。なぜか?尖閣有事の際、「日米安保」に沿って米軍が日本を助ければ、中国に勝ち目はない。逆に、日米関係が破壊されて「日米同盟」が「無力化」していればどうなるだろう。米軍は日本を助けないだろう。そうなれば、中国は尖閣を容易に奪うことができる。ひょっとしたら、沖縄も強奪できるかもしれない(そういう意味で、沖縄の反米軍基地運動は、中国の国益にはプラスである)。
そして、「日米分断」には、もっと大きな意義もある。そう、経済力世界1位と3位の同盟を破壊すれば、中国が「覇権国家」になる道が見えてくる。だから、中国にとって、「日米分断」は戦略の「要」なのだ。
さて、この戦略は、その後どうなったのか?
戦略を実現するために中国は、「日本は右傾化している」「再び軍国主義化している」「歴史の修正を目指している」と全世界で大プロパガンダを行った(今も行っている)。そして、日本を憎む韓国は、嬉々として中国の先陣をつとめている。
なぜここ2~3年、「慰安婦問題」が再度クローズアップされるようになったのか?中国の戦略に乗っかった韓国が、米国、カナダ、オーストラリアなどで、「慰安婦像建立運動」を精力的に進めているからである(最近では、「従軍慰安婦」をユネスコの「世界記憶遺産」にする運動もはじまっている)。
ロシアはどうか?幸い、プーチンが日本との関係改善を望んでいることから、「反日統一共同戦線」には参加していない。
肝心の米国はどうか?実をいうと、驚くべき勢いで、中国の反日プロパガンダは浸透していった。そもそも、リベラルな米民主党には親中派が多い。また、米財務省は、バリバリの親中である。そしてなによりも「日本が米国の書いた歴史を書き直そうとしている」というのは、米国にとってリアルな脅威なのだ。
なぜか?「安倍総理は、『日本は悪、米国は善』というこれまでの米国史観をひっくりかえし、『日本は善、米国は悪』にしようとしている」。そんな風に、米国からは見えるからだ。
「中国のプロパガンダは、米国と世界に浸透している」。このことがはっきりわかったのは、安倍総理の「靖国参拝」(13年12月26日)直後だった。中韓だけでなく、米国、英国、EU、ロシア、オーストラリア、台湾、シンガポールなどが参拝を非難した。
ちなみに、小泉総理は在任中6回靖国を参拝したが、中韓以外の国は、ほとんどノーリアクションだった。ところが、今回はあまりにも多くの国が「安倍参拝」を批判した(「大げさだ!そんなに批判されてなかったぞ!」という方は、こちらをご一読いただきたい)。日本は世界で孤立し、中国の戦略は成功しつつあったのだ。
クリミア併合に救われた日本 AIIBがさらなる追い風に
しかし、予期せぬ大事件が起こる。ロシアによる「クリミア併合」(14年3月)である。これで、ロシアは米国の敵ナンバーワンになった。米国は「対ロシア制裁」を効果的に行うために、日本を巻き込まざるをえない。それで、「安倍問題」はひとまず棚上げされたのだ。
しかし、中国の「反日統一共同戦線」戦略は、今も継続されている。そして、「終戦70年目」にあたる今年、中国は「安倍談話」と「憲法改正」問題で、再び「反安倍プロパガンダ」を強化していた。今回の総理訪米前、米国政府は、日本政府に「中韓への謝罪を演説に入れるよう」圧力をかけていた。
そして演説後、「安倍は中韓に謝罪しなかった」と批判する米議員がいた。常識で考えると、これはとてもおかしなことである。なぜ、日本の総理が米国で中国、韓国に謝罪しないといけないのか?これは、たとえば「米国大統領は、中国にいったら日本への原爆投下を謝罪せよ」というようなものである。
どう考えても、「日本の総理が米国議会で中韓に謝罪しなければならない理由」は見当たらない。しかし、それが米議員の一部で「常識」になるほど、中国のプロパガンダは成功していたのだ。
ここまでで、「中国の戦略の要は、日米関係の破壊」であることを、ご理解いただけただろう。では、日本の最重要戦略は、なんなのか?当然、「日米関係を強化すること」となるだろう(プラスで、米中関係を破壊すればさらによい)。
だから、日本の今の国益も、演説の目的も、「日米関係を強化すること」である。この結論、裏事情を知らない人が聞けば、「結局、日本は米国の属国でありつづけろということか!?」と思える。しかし、背景を詳しく知れば、「日米関係強化」は「戦略的に絶対必要なこと」なのだ。
これは、あくまで日本の「戦略的選択」である。
さて、今年3月、安倍総理にさらなる「神風」が吹いた。それが「AIIB事件」である。同盟国であるはずの、英国、ドイツ、フランス、オーストラリア、韓国、イスラエルなどが、米国の制止を無視して、中国主導の「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)に参加した。
米国は、世界的に孤立。「覇権国家」の権威は、失墜した。そんな中、日本は大国で唯一、米国を裏切らず、AIIB参加を見送った。これは「属国だから」と見る人が多く、実際そうかもしれない。しかし、戦略的にも正しい判断であった。
「米国に逆らう右翼」から一気に「米国の大親友」に
結果、安倍総理は、中国の反日プロパガンダを見事粉砕し、米国を日本の味方につけることに成功した。つい最近まで「右翼」「軍国主義」「歴史修正主義者」だったはずの安倍総理は、いまや「米国の大親友」になったのだ。
「AIIB事件」で大恥をかかされ、孤立し、意気消沈していたオバマ大統領は、安倍総理の訪問と演説で元気を取り戻した。オバマの反応について、読売新聞5月4日付は、以下のように報じている。
<オバマ氏も同日、これに応じ、ホワイトハウスのツイッターに「歴史的な訪問に感謝する。日米関係がこれほど強固であったことはない」と英語で記した上で、ローマ字の日本語で「また近いうちに」と書き込み、再会に期待を示した。>
いったい、いつ「日米関係が強固になった」のか?「AIIB事件」と「安倍演説」以外に答えは見当たらない。安倍演説によって、日米関係は一気に改善された。
これで、中国は、尖閣や沖縄を奪うことが難しくなった。そして日本は、米国から抵抗されることなく、軍事力を増強し、「軍事的自立」に向かっていける。だから、安倍総理の演説は、「大成功だった」といえるのである。
5/16士気の集い講演会について
5/13日経ビジネスオンライン 福島香織『米国を巻き込む習近平の権力闘争 政商もカネも極秘情報も握る米国、どう使う?』記事について
以前も野中広務の朋友である曽慶紅について本ブログで取り上げて来ました。
http://dwellerinkashiwa.net/?p=381 http://dwellerinkashiwa.net/?p=1611
いよいよ習VS曽の戦いの最終戦となるようです。しかし自分を主席まで押し上げてくれた恩人を政治的に抹殺しようとするのですから、中国人と言うのは凄いものです。日本では企業のトップが禅譲した後、後任に刺されるケースは稀にありますが。多くないと言うのは、そんな気骨のある人を殆ど選んでいないという事なのかも知れません。習の暗殺の危険性は高まっているでしょう。味方は殆どいません。彼の権力の源泉は「党主席」と「国家主席」です。国家主席は打倒された例がありますが党主席はありません。どちらが勝とうが反日は止むことはないでしょうから、高みの見物です。
北朝鮮の金正恩の命令で、4月30日ごろに玄永哲人民武力(国防)部長を無慈悲にも数百人の高官が見守る中、対空砲で処刑したとのこと。軍の反発は物凄いものがあるでしょう。若気の至りでしょうが、政権基盤を揺るがします。金正恩も暗殺されそうな気がします。後は中国の後ろ盾がある金正男に任せるしかないのでは。米中共同で始末するかも知れません。
日本もいい加減引退した政治家(野中、古賀)がしゃしゃり出て来て碌でもない話はしないでほしい。北朝鮮が崩壊或は朝鮮総連の文書の中から金で転んだ政治家の名前が出てくれば面白い。過去のことであろうと売国政治家として名前が残ります。
記事
少し前だが、中国メディアの財経が、闇の政商こと郭文貴を総力を挙げて批判し、郭文貴が香港メディアのインタビューに答えて反論するという、興味深い出来事があった。この背景には、今年に入って進めた国家安全部の「虎退治」、すなわち馬建副部長が汚職容疑で失脚させられた事件がある。
習近平の反腐敗キャンペーンが実のところ、権力闘争であることはたびたびこのコラムでも指摘してきたが、国家安全部の情報収集能力が実は党中央の政敵にも向けられ、この馬建が、習近平を含む党中央指導者のスキャンダルを相当握っていたらしい。その情報が、たとえば香港メディアを含む海外メディアに流されて、権力闘争に利用されていたという構造があるらしい。らしい、らしいで申し訳ないが、これは香港のゴシップ誌にしか書けない「裏の取れない話」なのだ。複雑でややこしい話だが、中国の権力闘争の形を見極める上で、このゴシップ情報をちょっと分かりやすく整理してみよう。
馬建は指導者層を盗聴→政商に漏洩→逮捕
1月初旬、国家安全部の副部長(次官)の馬建が重大な規律違反で身柄を拘束された。中国の報道によれば、彼は6つの別荘と6人の情婦と2人の私生児をもち、しかも諜報機関幹部の立場を利用して、指導者たちの会話を盗聴するなど非合法な活動もしていたとか。
馬建はかつて安全部第十局(対外保防偵察、海外の中国人駐在員や留学生の監視)の任務なども負っていたが、2006年に副部長に昇進、当時は次期部長候補とも目されていた。その昇進を推したのが元国家副主席の曾慶紅という。この馬建は、先に失脚した元統一戦線部長の令計画の事件にも連座していると話もある。令計画の妻・谷麗萍の国外逃亡(失敗)に協力するよう、元北大方正集団CEO李友から3000万元の賄賂を受け取ったらしい。李友は令計画やその妻の腐敗の温床と化していた西山会(山西省出身官僚利権グループ)に資金提供していた政商で、谷麗萍への贈賄などの疑いがある。
しかし、馬建が「狩られた」本当の理由は、習近平含む国家指導者たちの秘密を盗聴などの非合法行為を通じて握っていたからだと見られている。その秘密情報を闇の政商の呼び名もある郭文貴が受け取り、現在、米国に高飛びしているという。
郭文貴は1967年生まれ、山東省出身。河南で起業後、著名俳優・朱時茂との共同出資で北京に投資会社を創った。この会社が、後に摩根投資、北京盤古投資会社と名を変える。また、郭は2002年、新たに政泉不動産(後に政泉ホールディングス)を起業、北京五輪公園の開発計画で摩根、政泉は暗躍した。今、反腐敗キャンペーンで辣腕を振るっている規律検査委トップの王岐山は五輪準備時代の当時、北京市長で、副市長は劉志華(2009年失脚済)だ。郭文貴は馬建と組んで劉志華から便宜を図ってもらい、巨額の利益を得た。五輪公園を見下ろす七つ星ホテル・盤古大観は、盤古投資のものだ。ここの最上階のレストランは、国家安全部幹部たちの御用達でもあった。
馬建と郭文貴は相互利益供与の同盟関係
国家安全部は諜報・防諜活動のためという建前で巨額の「特費」と呼ばれる予算を自由に使える身分であり腐敗しやすい背景がある。その職務の特殊性から政商と結びつき、情報と金、保護と金という利権関係に陥りやすかった。馬建と郭文貴はまさに、そういう相互利益供与による同盟関係にあったという。ちなみに、郭文貴は李友とも、また王岐山とも相互利益供与の関係にあり、3人が仲良く映っている写真が中国ネットで出回っている。つまり、このころの北京五輪利権には王岐山自身も加担している可能性があり、郭文貴はその証拠を握っている可能性もあるわけだ。
さて、馬建が失脚した後の3月下旬、中国メディア・財新グループが徹底した郭文貴批判を展開した。財新は中国メディア界の女傑と呼ばれる胡舒立が立ち上げたメディアグループ。その報道では、郭文貴が失脚した馬建の盟友であること、郭文貴と結託していた河南省の官僚が巨額の汚職で死刑になっても郭文貴が無事でおられたこと、李友とのビジネス上のトラブルや確執、劉志華の乱交を盗撮ビデオに収めて、党中央上層部に刺したのは郭文貴の自衛のためであったこと、その他もろもろの悪行を事細かに暴露している。1月中旬に李友ら方正集団幹部が取り調べにあったと見られており、これらのネタは李友サイドが「捜査協力」として当局に提供した可能性がある。
ところがこれに対して、半年前から米国に滞在している郭文貴サイドが3月29日、ネットを通じて、反論を発表した。いわく、財新の報道は事実無根であり、郭文貴本人と盤古大観の名誉を大いに棄損した。胡舒立はメディア人の立場を利用して、悪意をもってニセの情報で世論を操作し、これは報道倫理にもとる。郭文貴サイドはオフィシャルな場で、胡舒立との公開討論を望む、という。
「妻一筋30年、私生児はいない」
しかも、胡舒立について、「自由の闘士、人権闘士、法律の防衛者と外部に喧伝しているが、巨大な政治人物をバックにつけている。正義の士として、どんな強大な政治的人物にケツモチさせているか公開してはいかが?」と王岐山の庇護をうけていることをにおわせたうえで、「私は妻一筋30年、あなたと李友、その仲間たちのように私生児はいない」と、胡舒立が李友の愛人で、子供までいるといった発言も飛び出た。
さらに、香港メディアの取材を受けて「自分の手のうちには一部の人たちの致命的な情報がある」「北京五輪期間中、私と王岐山との関係は非常によかった」「米国に来てから、わたしは米国政府やいくつかの国ともずっとやり取りを続けている。米国が私の行動を支持し、未だ公開していない情報も把握している」などと語り、いざとなれば米国政府が自分を守ってくれるといったニュアンスもにおわせている。この郭文貴の反論に対しては、財新側は「胡舒立女史の人格を棄損した。法的手段に訴える」との声明を発表している。
実は王岐山が7月にも訪米するとの観測がある。その目的が、指導者たちのスキャンダルを握って米国に逃げ込んでいる郭文貴ら政商の身柄を中国に引き渡してもらう交渉のためだと言われている。
ちなみに郭文貴のほかに、もう一人、爆弾情報を握ったまま米国に逃げ込んでいる人物がいる。王誠こと令完成、つまり令計画の弟だ。このコラムで、米国に逃亡した令完成が、米国政府に追い出されてシンガポールですでに中国当局により身柄拘束されたという情報を紹介したが、実はそれは令計画一味を動揺させるためのガセネタで、令完成はまだ米国内に残留しているという。しかも、令計画の弟にして、元新華社幹部であった令完成の握る情報は、郭文貴の情報レベルではない。
香港ゴシップによれば、令完成が握るのは馬建から預かった現指導者たちの乱交ビデオ、幹部らの不正蓄財、隠し資産情報、そして中国の政治、軍事、経済などに関する国家機密文書約2700件。「令完成の持ち出した情報は、核爆弾級」という報道もあり、その情報価値もあって、米国政府サイドは令完成を中国側に引き渡すことはないのではという観測もある。
令完成は元新華社を退社した後、王誠の偽名でプライベートエクィティファンドを立ち上げ、香港メディアや中国のネットメディアに積極的に投資、メディアを通じた世論操作を担ってきた。妻はCCTVの美人キャスター・李萍。だが、身の安全のために李萍とは離婚、米国女性と結婚して、すでに米国のグリーンカードを取得しているという話もある。
ちなみに郭文貴は早くから香港パスポートに切り替えており、香港メディア上では、自分が中国パスポート保持者でないから、いくら中国が米国に対して引き渡しを要求しても、米国政府がそれに応じることはないとも言っている。
「大虎退治」の最終ゴールは恩人・曾慶紅の首か
郭文貴、馬建を中心とする政商グループを盤古会、令計画、令完成、李友らの政商グループを西山会といい、両グループとも周永康との関係が深いと言われている。だが、本当の黒幕は、曾慶紅だとまことしやかにささやかれている。少なくとも、李友、郭文貴両氏と親密な間柄にあった馬建の背後には、常に曾慶紅の影があった。
曾慶紅は、ご存知のように江沢民の懐刀と呼ばれた辣腕家であり、今なお太子党でもっとも幅広い人脈を築く実力者である。胡錦濤政権時代は国家副主席まで上り詰めたが、習近平を後継として国家副主席に就けた後、完全引退し、その後、その名前はほとんど表舞台に出ていない。習近平の総書記・国家主席への出世ルートに乗せたのは曾慶紅だとも言われている。こういったことから、習近平の「大虎退治」の最終的ゴールは、自らの最大の恩人である曾慶紅の首を取ることではないか、という観測もでている。
どこまでが本当かどうかはわからない。だが、中国の国家安全部というインテリジェンスの中枢とビジネスマンたちと政治家が、利権と情報、政治的立場の庇護といった相互利益供与で強く結ばれて、この国の権力と富をほしいままにしていた状況は垣間見える。そして、メディアもまた、この利権構造に加担していたとも見える。興味深いのが、彼らのため込んだ金も、自衛のためにかき集めた情報も最終的に米国に逃げ込んだ。この情報を米国政府がどのように料理するのか。中国の権力闘争の最後の鍵を握るのは、米国だと考えると、中国の権力闘争とは外交や国際情勢にも影響するものだともいえる。
5/13日経ビジネスオンライン 堀田佳男『米国保守派の本音?「やはり中国をやっつけるしかない」』記事について
ここで言う外交問題評議会(CFR=Council on Foreign Relations)はウイキを読むと単純に保守とも言えない気がします。ユダヤ人が多い感じです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%96%E4%BA%A4%E5%95%8F%E9%A1%8C%E8%A9%95%E8%AD%B0%E4%BC%9A
何を以てユダヤ人と言うのかという所ですが。日本は出生の場合、法律上(国籍法2条)は父または母親が日本人であれば子はどこで生まれようとも日本人となります(血統主義)。これに対し移民の国、アメリカは出生地主義です。ユダヤ人はイスラエルの帰還法によれば「ユダヤ人を母に持つもの又はユダヤ教に帰依し、他宗教に帰依しないもの」となるそうです。でもこれはイスラエル国人の定義であって民族的なユダヤ人の定義ではないとパルパースは言っていました。彼はユダヤ人が国を持つことに反対しているユダヤ系オーストラリア人です。そういえばピ-ター・フランクルはユダヤ系フランス人です。講演を聞いたときに「何故長く日本に住んでいるのに、日本に帰化しないのか」と聞かれて、「迫害を受けそうになったときに、2つの国と関係を持っている方が良い」とリスク管理を優先させている様子でした。
アメリカもやっと中国の脅威に気が付いたかという感じです。現実にやっている所を見れば、「中国も豊かになれば民主化される」と思っていた御仁は如何に甘かったかという事です。日本は「換骨奪胎、瞬発適応」で海外の知識・技術を採り入れ、同化してきたのに対し、中国は中華思想を持ち、自己中心で海外を見下す傾向があります。いつも言っていますように「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」と言うのでは安定した取引は見込めません。法治の概念がないのも宣なるかなです。
今は中国と新冷戦が始まっていると思った方が良いでしょう。集団的自衛権なんてのは当り前で、中国を戦争に駆り立てないためには、多国間同盟で中国を封じ込めるしかありません。
次のアメリカ大統領はヒラリーで決まり(バフェットも太鼓判、3000億円の選挙資金を集めた)と言われていますが、中国人から献金を受けたことがある彼女にここに書かれたようなことができるかどうかです。
記事
米国の有名シンクタンクが4月、「米保守派の本音」と呼べるほど強硬な対中政策に関する報告書を発表した。
まず核心と言える部分を抜粋するので、お読みいただきたい。「中国はアジア地域で米国の力を試そうとしている。米国は、そうした抵抗勢力と戦わなくてはいけない。そして彼らを打ち負かすための戦略を練り上げなくてはいけない」。
打ち負かす(defeat)を口語訳すれば「やっつける」となる。このような表現が全70ページの中で7回も使われている。米国と同盟関係にある日本に対して使うことはない。つまり、中国と既存の協調路線を模索する一方で、最終的には「やっつけるしかない」という考え方を表している。
この報告書のタイトルは『中国に対する国家戦略の変更』。発表したのは外交問題評議会(CFR)というシンクタンクだ。CFRは1921年にニューヨークに設立された非営利団体で、主に米国の外交政策について提言している。
CFRは世界的に広く読まれている隔月雑誌『フォーリン・アフェアーズ』の発行元としても知られる。旧ソ連の封じ込めを説いたジョージ・F・ケナン氏の「X論文」や、サミュエル・P・ハンチントン氏の「文明の衝突」など、米国の外交政策に大きな影響を与えた論文を掲載してきた実績を持つ。
対中強硬+反オバマの考えと
今回の報告書は中国を刺激する内容で、「あおっている」と呼んでも差し支えない。同評議会の代表であるリチャード・ハース氏は「中国との協調というこれまでの路線は、これから、『戦略的で過激な競争相手』と対峙する路線に置き換えられていくだろう」と述べている。
同氏は同時に、「すべての人が報告書の内容に賛同するわけではないことは分っている」とも発言している。つまり、米国の中でも対中強硬派の考えとしてこの報告書を理解すべきということだ。
CFRは特定の政党に肩入れしているわけではないが、思想的には共和党保守に近いと見なして差しつかえない。このため報告書では、バラク・オバマ政権への批判も述べている。例えばこんな下りがある。「オバマ政権は中国の安全保障戦略を十分に理解していないようだ。確実に米国の利害と力を削ごうとしている。大統領は現実をそしゃくできていないのではないか」。
さまざまな政治的立場がある米国で、中国をやっつけるべきという政治信条を持ち、オバマ政権を批判する一派がいるということである。
冒頭の段落に次の内容がある。「米国は歴史上、ライバル国との競争に勝つために国家戦略を追求してきた。最初は北米大陸を掌握するため。次に西半球、最終的には世界を牛耳るためだった。(中略)米国にとって中国の経済的、軍事的拡大は間違いなく国家的な危機であり、それを阻止するためには現在の対中政策を変更しなくてはいけない」。
近年、経済力と軍事力をつけてきた中国に対し、真っ向勝負を挑まなくてはいけないと提唱する。オバマ政権の対中協調路線は「手ぬるい」というのだ。
米国の東部エスタブリッシュメントが賛同
ジャーナリストで歴史家のエリック・ジュッセ氏は同報告書をこう評している。「この報告書は、米国の特権階級が中国に対して宣戦布告したようなものです。しかも報告書の基本的な内容は、中国がアジアで覇権を獲得しつつあることを表したものです」。中国への宣戦布告という表現は過激である。もちろん軍事的に交戦することを米政府に勧めているわけではない。
米国はこれまで中国に対して、国際ルールを順守する「責任あるステークホールダー(利害関係者)」になることを期待してきたと言われてきた。だが、この報告書は米国の思い通りに動かない中国にいら立ち、協調は限界点に近づいたと捉えている。
さらにジュッセ氏によると、ウォールストリートの金融関係者を中心とする財界人の多くがこの報告書の主旨に賛同しているという。いわゆる米東部エスタブリッシュメントと呼ばれる知識層が、中国を脅威として認識し、米国は対中強硬策に出るべきと考えているわけだ。報告書の冒頭の文章から、米国は「最終的には世界を牛耳る」ということが、特定の人たちの間で暗黙のうちに了解されていることが分かる。
「日本ほど重要な国はない」
報告書はまた、アジアの安全保障問題も論じている。「日本ほど重要な国はない」「米国は日本という重要な同盟パートナーを引き続き支援すべきだ」と述べている。日米両国が防衛協力を強化して、地域の安定に努めることが重要という現実的な指摘をする。以下が論旨だ。
「アジア地域全体を対象として、日本との安全保障関係を実質的に強化すべき」
「日本の自衛隊のさらなる増強を支援していく」
「防衛省との密接な対話を通して、エア・シーバトル(空海戦闘)における自衛隊の役割、目的、能力を確認、向上させていくべきだ」
日本にとって重要な案件である尖閣諸島での有事にも触れている。「日米安全保障条約の下、日本は米国のアンブレラ(傘)の下で十分に守られている事実を日本側にこれまで以上に発信していく」。
また報告書は、日米の2国間関係の絆がどれほど強いのか、日米同盟が有事の際に本当に力を発揮するかどうかを中国が探っていると書く。報告書は、日本が米国の軍事力に依存するのと同様に、実は米国も日本の経済的、軍事的なサポートを極めて重視していると説く。
「米国は同盟国や友好国の持続的な支援なしに、アジアで国益を守ることはできない。そのため中国は、米国が維持する2国間関係を崩そうしてきている」。報告書は、これに対抗するため日米両国の関係を強化しなくてはならないと結んでいる。
前出のジュッセ氏は米保守派の心中を見透かしたように述べる。「米国は旧ソ連との冷戦に勝ったことで、帝国主義的な優位性を誇っています。それは米社会の特権階級が勝った勢いに乗って今でも社会を仕切っているということなのです」。
この報告書が提示する視点に則って世界を眺めると、中国は邪魔者であり異物でしかないのかもしれない。だが共和党保守派が報告書にある通りに世界を動かせるわけではないし、オバマ政権の後に共和党政権が誕生するかどうも分からない。
この報告書は、あくまでCFRというシンクタンクのものである点を最後に記しておく。
5/13日経ビジネスオンライン 熊谷徹『英国保守党の圧勝で、EU脱退が視野に ヒトの移動の自由をめぐる価値観に関わる断層』記事について
5/14日経朝刊「経済教室 英国総選挙とEUの行方上 経済優先奏功、「残留」が濃厚」の記事にもありましたように、キャメロンは国民投票をダシにしてEUと交渉してある程度の譲歩を勝ち取り、鉾を納めるのではと思います。やはり、離脱は英国にとって損失の方が大きい。メデイアの予想を覆して保守党が勝ったのは、ブッシュ父を敗ったクリントンと同じく経済です。経済に悪影響を与えれば次の選挙で保守党は選ばれなくなりますから。EU離脱はスコットランド独立の引き金、外資の本社移転(税金徴収問題、シテイの凋落)、国連P5からの脱落等失うものの方が大き過ぎます。まともな感覚の持主なら絶対にしないでしょう。
ただ移民の問題は欧州全体で考えないと。南欧は北アフリカからの移民ですが、英国は欧州からの移民とのこと。国のありようが壊れます。日本も他人事ではありません。日本の伝統文化が壊されないようにしませんと。“入郷随俗”で日本に敬意を払い、勤勉であれば良いですが、数は多くは必要ないでしょう。その国で経済発展させ得る人材の育成に手を貸すのが一番です。
オズボーン財務相がAIIB参加の旗振りをしたとのことですが、中国の今の経済状況を認識しているとは思えません。中国が日本の参加を執拗に求めて来るのは日米分断の他に「格付け」の問題があるからです。低利で資金を得なければ低利で融資はできません。日米と中国では信用差があり、低利資金獲得は難しいためです。英国のAIIB参加はロスチャイルドが裏で動いて、今後の世界は米国でなく、中国にすると認めたからと言うユダヤ陰謀論に近いことを言う人もいます。真偽のほどは分かりません。ただ、米国の軍部は中国の台頭を認めないでしょう。一旦覇権を握った国がそうやすやすと覇権を手放すことはないと思います。英国もアメリカに渡したのは二度の世界大戦で経済が疲弊したからで、今のアメリカはそんな状況にありません。アイクが心配した軍産複合体(=WASPで構成)がユダヤ人の言いなりになるとは考えにくいです。
朝刊記事
「損得計算は様々だが、外資に依存する英国経済だけに、試算に含まれないタイプの損失も懸念される。EUとの間に貿易障壁ができれば、世界中から進出した多国籍企業は大陸へ生産拠点を移すであろう。外国の多国籍銀行が離脱すれば、ロンドン金融市場は空洞化する。海外直接投資の流入も減少する。自由と開放を誇った英国が移民排斥とナショナリズムへ大転換すれば世界へ悪影響を与える。
ただ、筆者は英国残留の可能性の方が高いとみている。第1に、世論調査で離脱支持の方が多いのは60歳代以上だけで、25歳以下では残留支持が30%も多い。投票率が高ければ残留になる。第2に、今回の選挙でUKIPは不振でファラージユ党首は引責辞任した。影響はこれから出る。第3に、これまで慎重だった産業界が残留運動に乗り出すであろう。英銀行大手HSBCが4月末、「本社の外国移転を検討中」と発表したのはその始まりかもしれない。第4に、英国離脱となればスコットランドは独立し、EU加盟へと進むであろう。離脱は英国分裂へとつながる。第5に、キャメロン首相が残留支持なら、EUとの再交渉次第で、残留を支持するという声がかなり多い。新政権は規制改正などでEUと再交渉し、その成果を背景に国民投票に臨む。EU側にもある程度の譲歩の用意はあろう。
戦後の欧州統合の隠れた目的は、独仏両国を中心とする欧州の不戦体制構築だった。この目的は達成され、不戦は世論を団結させる力を失った。そしてユーロ危機以降、多くの国でEU統合懐疑派の政治運動が盛り上がった。批判の矛先は、統合によるナショナルアイデンティティーの喪失、EUの官僚主義と非効率、EU諸国からの移民流入による雇用や社会保障制度の損失などに向かっている。
だが、統合はEU諸国経済を強固に結びつけている。個々の批判はともかく、EU離脱要求に合理性はない。ユ- ロ危機はすでに終息、域内国民のユーロへの信頼は厚い。ギリシャでさえ8割の国民がユーロ残留を望んでいる。
にもかかわらず、多数国で懐疑派運動が持続する主要な理由は、リーマン危機後の先進諸国経済の低成長とユーロ危機後遺症による高失業、欧州経済の南北分断などだ。
原油安・ユーロ安・QE (欧州中央銀行の量的緩和)と3 重の追い風を受けて、今年と来年のEUの成長率は2%を視野に入れる。経済改善のスタートを期待できそうだ。今回の英議挙は、安定成長の経済こそが政治の安定をもたらす、という古典的命題を再確認させた。国民投票の16年繰り上げもありえよう。」
記事
5月7日に行われた英国総選挙で、「どの政党も過半数を取れない」という報道機関や世論調査機関による事前予測を覆し、キャメロン首相が率いる保守党が大勝利を収めた。保守党は議席数を307から331に大幅に増やして、単独過半数を確保した。これに対し、野党は総崩れとなった。労働党は議席数を258から232に、自由民主党は57から8に減らした。
筆者は、多くの有権者が保守政党に票を投じた理由の1つは、昨年以来、英国経済に回復の兆しが見えていることだと思う。実際、キャメロンは選挙戦の中で、「保守党は英国経済の体力を着実に強化しつつある」という点を強調していた。
2014年の英国の実質GDP成長率は2.8%で、EU(欧州連合)平均(1.3%)やドイツの成長率(1.6%)を大幅に上回っている。
実質GDP成長率の推移
資料=欧州連合統計局
就業者数も、前回の選挙が行われた2010年以来、毎年増加しており、2014年には前年比で2.3%増えた。これは、就業者の数が4年間で170万人増えたことを意味する。2014年の英国の就業者の増加率はEU全体の平均(0.8%)を大幅に上回っている。
英国の失業率は、2010年以来10%を超えていたが、2014年には4年ぶりに10%台を割って8.4%になった。これは、EU全体の失業率(17.4%)の半分以下である。
失業率の推移
資料=欧州連合統計局
GDPに対する累積公的債務残高の比率は2010年から2014年の間に増加しているものの、キャメロン政権は財政赤字比率(GDPに対する新規債務の比率)を2010年からの4年間で9.7%から5.7%へ4ポイント減らすことに成功した。
ドイツでメルケル首相が圧倒的な人気を誇っている最大の理由は、ドイツ経済が好調で失業率が1990年以来最低の水準になっていることだ。キャメロンが圧勝した背景にも、有権者の似たような心理を感じる。英国市民は、労働党などのリベラル政党ではなく、保守党に経済の舵取りを任せておいた方が安全だと考えたのだろう。
EUによる政治統合の深化を拒否
だが今回の保守党の圧勝は、EUの未来に大きな影を投げかける。欧州の報道機関は、「今回の選挙結果により、EUが今の形のまま存続できるかどうかが、わからなくなった」という論調を強めている。その理由は、英国がEUに残留するべきかどうかについて、2017年までに国民投票を行うことをキャメロンが約束しているからだ。
彼は2013年1月23日に行った演説の中で、EU内で民主主義が実行されていないことを批判。EUの政府に相当する欧州委員会が、独断的な決定を英国に押しつけることを拒否する姿勢を、明確に示した。彼は、この演説の中で、EUが条約を改正して、英国の意向を尊重する改革を行わない限り、国民投票を断行する方針を明らかにした。
キャメロンは2年前の演説で何を要求したのだろうか。彼は、次の5つの点に要約している。
1.国際競争力の回復
2.柔軟性
3.欧州委員会に集中した権限の、加盟国への部分的な返還
4.民主的な説明責任の強化
5.ユーロ圏に加盟していない国に対する公正さ(フェアネス)
この5つの要求は、密接にリンクしている。
彼によると英国がEUに加盟している理由は、ひとえに「単一市場」の利益を享受できるからだ。EU域内では関税が廃止されているだけでなく、金融サービス自由化指令によって、ある国で銀行業や保険業を営む権利を取得すれば、他の加盟国でも営業できる。
英国にとっては単一市場があれば十分で、他の点については干渉しないでほしいというのが本音だ。
ユーロ危機をきっかけとして、通貨同盟に属する19カ国の間で、将来ギリシャやイタリアが野放図な借金経営をしないように、政治統合を深化させようという動きが強まっている。キャメロンは「ユーロ危機後のEUは、もはや以前のEUと似ても似つかないほど、違ったものになる」と指摘する。英国は正にこの政治統合を最も恐れている。
英国のことは英国が決める
キャメロンは「EUが現在めざしている政治的統合は、英国が我慢できる範囲を超える」と断言している。つまりキャメロンは、欧州委員会やドイツ、フランスがめざす政治統合の強化に、「ノー」と言ったのだ。この発言は、英国と大陸諸国との亀裂を決定的にするものだ。ドイツやフランスは、「債務危機の再発を防ぎ、ユーロを防衛するには、これまで以上に政治的統合を強め、財政政策・経済政策を調和させなくてはならない」と考えている。これに対し、英国は政治統合を深めることに真っ向から反対している。
キャメロンは「EUはこれまで、リスボン条約を変更し、その力をどんどん強大にしてきた。一方、英国民は意見を言う権利を与えられてこなかった。英国民は、EUが不必要な規則や規制を設けることによって自分たちの生活に干渉しつつあるという怒りを抱いている」と訴える。
キャメロンは「欧州の全てを調和させることは、不可能だ」と断言する。そして彼は「たとえば英国の医師の労働時間が、英国議会や医師たちの意向とは無関係に、ブリュッセルで決められるのはおかしい」と告発する。
そしてブリュッセルで中心的に決める必要がない事柄については、権限を各国の議会に返すことによって、再び議会の力を強めるべきだと訴える。彼は、そのことがEUの民主的な性格を強化すると考えている。
移民による社会保障ただ乗りに「ノー」
保守党は、EUによる銀行規制や資本取引税にも反対している。加えて今回の選挙戦の中で、移民の規制を争点の1つにした。EUは、域内での資本や営業の自由と並んで、市民の移動の自由を極めて重視している。つまりEU加盟国の市民は、職業に就くために他の加盟国に移り住み、労働許可なしに働くことができる。しかもEU法は加盟国政府に対し、他のEU加盟国から移住した外国人に対して、原則として自国民と同程度の社会保障サービスを提供するよう求めている。このことは、自国よりも社会保障サービスの水準が高い国をめざして移住する外国人が増える可能性を秘めている。
このため、ポーランドやハンガリーなど21世紀にEUに加盟した東欧諸国から、英国への移住者が増加した。他の欧州諸国から英国に移住した外国人の数は、2003年から2013年の間に約12万人増えている。英国統計局によると、移民が人口に占める比率は、1991年には7.3%だったが、2011年には13.4%に増えている。
英国市民の中に移民が占める比率の推移(単位:%)
出所:Office of National Statistics
キャメロンは、不法移民に対する規制を強化する方針を選挙期間中に打ち出した。彼はマニフェストの中で「真面目に働いている市民が不公平感を抱かないような移民政策を導入する」と訴えていた。具体的には、英国に滞在する資格のない移民を、これまでよりも容易に摘発したり、国外追放にしたりできるようにする。さらに、不法移民が社会保障制度を不正に利用することを制限する。
保守党は、「我々は、社会保障制度の恩恵を得るために英国に移住する外国人を規制する。労働党が政権についていた頃には、英国の移民制度が不法移民に悪用された。労働党は、今後さらに移民を増やす方針を打ち出している」と主張し、移民の規制が必要だと感じている市民の票をひきつけた。
英国はEUを脱退するか?
キャメロンは2014年11月に行った演説の中でも、EUに改革を求めた。最も重要な項目の1つとして「EU域内での移動の自由の制限」を規定した。だがこれは欧州委員会にとって、妥協することが難しい根本的な政策目標である。欧州委員会のユンケル委員長や、ドイツの首相、メルケルはすでに「移動の自由について交渉する余地は全くない」と断言している。
EU加盟国にとって現在の優先課題は、ギリシャで再燃したユーロ危機に対する対応や、ウクライナ危機をめぐる対ロシア政策であり、英国のためにリスボン条約を改正することではない。しかも「移動の自由」のような重要な項目については、原則として全ての加盟国が賛成しなくてはならない。果たして全ての加盟国が、英国の主張に賛成するかどうかは未知数である。
つまり現状では、欧州委員会や欧州大陸の加盟国が、英国に妥協してリスボン条約を改正する可能性は、極めて低い。もしもEUが英国の要求に屈して、移動の自由を制限する方向に踏み切った場合、他の国も将来、英国と同じような手段で、条約の改正を勝ち取ろうとするかもしれない。その意味でも、EUは英国の圧力の前に負けたという印象を与える措置を避けようとするだろう。
一方、下院選挙で圧勝した事実を背景に、キャメロンがEUに対し条約改正への圧力を高めることは確実だ。
また、今年は北アフリカや中東から、地中海を経て欧州にやってくる難民の数も急増している。ドイツ政府は、同国に亡命を申請する外国人の数が今年45万人に達すると予測している。これは過去25年間で最高の数だ。特に「アラブの春」以降混乱が続くシリアやリビアなどからの難民が増えている。現在、イタリアなど南欧諸国に大きな負担がかかっているため、将来はEU加盟国内で難民の受け入れ数を割り振る可能性もある。その際にもキャメロン政権が強く抵抗する事態が起こりうる。
さて英国でEU残留に関する国民投票が行われた場合、どのような結果になるのかは、予断を許さない。市民の反応は、大きく揺れている。英国の世論調査機関YOUGOVが今年2月に行った世論調査では、「英国はEUに残るべきだ」と回答した市民の比率は45%で、「脱退するべきだ」と答えた回答者の比率(35%)を大幅に上回った。だがこの機関が2011年9月に行った世論調査では、脱退賛成派が52%で、残留希望派(30%)に比べて圧倒的に多かった。
英国は、ドイツに次ぐEU第2の経済大国。そのGDPは、2014年の時点でEUの約16%に相当する。Brexitと呼ばれる英国脱退が現実化した場合、EUは経済的に大きな打撃を受ける。
Brexitは日本企業にも大きな影響
英国に展開している日本企業にとっても、BrexitはEU加盟国との貿易のコストを高めることにつながるだろう。EUとの間に特別な協定を結ばない限り、英国とEUとの間に関税が再び導入される。
英国は、日本企業にとって欧州で最も重要な国の1つである。外務省によると、英国には約1000社の日本企業が進出している。この数はドイツに次いで欧州で2番目に多い。言語が英語であることも、日本人にとっては大きなメリットだ。
日本企業による対英投資額は1兆3084億円(2013年)で、過去最高。国別に見ると、英国は米国に次いで第2位の投資先である。日本から英国への新規直接投資(プロジェクト件数)も116件と、米国に次いで第2位である(2013年)。また日本から英国への対外直接投資残高は7兆1379億円(2013年末)で、EUではオランダに次いで2番目に多い。
英国がEUから脱退した場合、欧州経済の中で大陸諸国、特にドイツの影響力と発言力がさらに高まるだろう。欧州経済における英国の地位が低下することは避けられない。
英国の有権者たちは、経済的な不利益が増加しても、EUと袂を分かつ道を選ぶのだろうか。
英国のEU脱退が、スコットランド独立の火を再燃させる可能性
今回の選挙でもう1つ注目される出来事は、スコットランド国民党(SNP)が大躍進し、議席数を6から56に伸ばしたことだ。同党は、スコットランドが英国から独立することを求めている。SNPの地滑り的勝利も、欧州で強まる「地域第一主義」という遠心力を象徴している。
スコットランドで2014年9月に行われた住民投票では、有権者の55.3%が独立に反対したため、スコットランドは英国に残留した。しかし今回の選挙結果は、スコットランド市民の間で独立を求める機運が衰えていないことを示している。2017年の国民投票で英国がEU脱退を選んだ場合、スコットランドでは英国からの独立を求める声が再び燃え上がるかもしれない。
英国の金融関係者から「スコットランドが独立したら、スコットランドに本社を持つ大手企業は、本社をイングランドに移すだろう」と聞いたことがある。
キャメロンが国民投票の期限と定めた2017年まで、残された時間は、あと1年半しかない。英国の要求に対してEUはどのように対応するのだろうか。欧州政局に、目を離せない難題がもう1つ増えた。





