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『台湾の自衛力』(3/21AC通信 アンデイ・チャン)、『トランプ政権、過去最大の武器供与を台湾へ 総額18億ドル、対艦ミサイル、フリゲート艦など』(3/22宮崎正弘メルマガ)、『台湾の蔡英文総統、潜水艦の自主建造を表明』(3/21 Newsweek)、について
本日は台湾関係のニュースです。日本が本年1/1より「交流協会」を「日本台湾交流協会」に名称変更したのに合わせ、今般台湾でも「台湾日本関係協会」に名称変更しました。
3/20李登輝友の会HPより<行政院が認可「亜東関係協会」を「台湾日本関係協会」に名称変更へ>
http://www.ritouki.jp/index.php/info/20170320-1/
兵頭二十八著『日本の武器で滅びる中華人民共和国』を読みますと、台湾関係についても書かれていますが、それ以外でも面白い部分がありますので紹介します。(主な頁だけ表記)
・尖閣を守るにはtripwire(=鳴子)を配置する必要あり。自衛戦争だけが国連憲章で認められているため。Tripwireとして、魚釣島に穴を掘り、日本の74式戦車を半分埋め、コンクリで固めて「沿岸砲台」とする。(当然人員配置する)。日本の施政権を強調できる。(P.32)
・ニクソン・毛の密約。「両国はICBMの競争をしない」、「米国は東京に核の傘をさしかけず、日本には決して核武装させない。東京は当分、中共からの核攻撃に対して丸裸にしておく。」(P.58)
(3/21三島由紀夫研究会主催の西村幸祐氏講演会で、氏は、片岡鉄哉氏から聞いた話で「沖縄返還交渉時、ニクソンは佐藤総理に日本の核武装を勧めたが、佐藤総理が断った」とのこと。日本側密使として若泉敬京産大教授が当たったが、この裏話を三島に話したのではと推測している。あくまでも推測でしかないが。それを基に三島は『美しい国』を書いた。これは映画化され、本年5月に封切りされる。核戦争の危機を書いたものだが、映画は原作と違っている。ただ、若い人は三島を知らない人が多いので、三島を知るきっかけとしては良いとのこと。)
・米国とNATOのニュークリア・シエアリングはB61(小型水爆)を分解して部品として貯蔵されているドイツ、オランダ、ベルギー、イタリアが「核の傘」があるとロシアは認識している。(P.74)
・日本に「核の傘」はあるか。71年11月の「非核三原則」衆議院決議で核の持ち込みすら拒否した形。(P.75)
・弾道ミサイル防衛の如何わしさ。弾道ミサイルは、その軌道の絶頂部分が、スピードが最低に。その時を狙って迎撃ミサイルをヘッドオン(正面衝突)できれば破壊が可。イージス艦も敵ミサイルの飛翔コースの中間点にいる必要あり。現実に中国大陸から発射されれば、朝鮮半島の陸地に阻まれ、位置することはできない。(P.95)
・中国の核脅威から逃れる術=中共体制を崩壊させ、各地に軍閥政府が乱立、米政府の特殊部隊が「核弾頭差押え」のため出動する。(P.100)
・中共の「アキレスの踵」は沿岸の大陸棚に沈底式機雷を撒かれること。(繋維式機雷と違い安い)。水深30m未満の浅い海面に機雷敷設は簡単。マレーシア、フィリピン、ベトナム、ブルネイ、インドネシアの海軍でも、特別な訓練は必要でなく、高額な専用設備も必要ない。(P.111)
・アジアに平和を齎すにはマレーシア、フィリピン、ベトナムでスプラトリー島嶼全域での領有権主張の調整が必要。+ブルネイは簡単。(四か国で軍事同盟を結べば良いという事)(P.129)
・これに対し、台湾は、『まあ、「本当に戦争にでもなったら、台湾から遠い海外へ逃げてしまえばよい」というのが、フットワークの軽い台湾国民の本音でしよう。そして政府にも、工廠などの固定資本に投資しても、内戦になれば持って逃げられないから損だ、という、チャイナ夕ウンの零細料理店主に似た思惑があるのかもしれません。
台湾軍がいくら望もうとも、台湾政府と国民は、台湾海峡に機雷を敷設することに反対するでしょう。大陸との往来ができなくなったら、ビジネスが干上がってしまうのは台湾湾人のほうなのです。
面白いのは、中共海軍もそこを見抜いていることでしょう。「こっちが機雷を撒けば台湾は終わりだぞ」と、よく宣伝しています。第三者から見たら、台湾海峡が機雷だらけになったら、中共軍は輸送船や揚陸艦で台湾へ押し寄せられなくなってしまうのですから中共側が困り、台湾側は喜んでよいはずです。』(P.131)
・『現今の台湾政権は、二〇一五年一〇月に、「一五〇〇トン級の国産潜水艦を整備する」 という計画を公表しています。しかし、もしその話が最速で前進しても、初号艦の就役は 二〇二五年よりも後になるらしい。
いったいその前に中共軍が上陸作戦を発起したら、彼らはどうするつもりなのでしょうか?
台湾の指導層は、大陸(中共)の最大の弱点が、「沿岸に機雷を撒かれると簡単に体制 が崩壊し、長期にわたって経済的三等国に転落するしかない運命にある」ということがよく分かっている。それゆえに機雷戦には乗り気ではないのだと想像しますと、台湾のこのような不自然な軍事政策が、矛盾なく説明されるように思います。
両国間には暗黙の了解があるので、台湾海軍もまた、沈底式機雷を探知•掃海するための近代的装備が事実上ゼロであっても、平気なのでしよう。』(P.157)
・『中共に筒抜けになる軍事情報
米国は、国民党がシナ大陸内に保持している人脈、すなわち親戚や戦前の知人を通じた情報の収集力を、貴重だと評価しています。
ところが一九八五年以降、大陸と台湾のあいだの直接商売や個人旅行が趨勢としてもう止めようがなくなると、それに乗じて台湾軍内にも中共側のスパイ工作が浸透しました。
台湾軍の中堅将校としては、いまさら台湾軍が大陸を征服できるわけのないことは判断できますし、その逆に米国政府次第では大陸が台湾を吸収してしまう事態があり得るという計算ができます。だから、古い長老将軍たちに義理立てするよりも、自分の現在や将来を考えるようになるでしよう。米国は、そこまで読んでいます。』(P.160)
・『台湾単独でも機雷戦で勝てるが
台湾経済は、一九九〇年代から、大陸経済への依存を強めてきました。そしてニ〇〇九 〜一三年にかけて、もう事実上、中共経済に隸属してしまったと見ていいのではないでしょうか。
インド、マレーシアもしくはインドネシアが(台湾の行動とは関係なく)、マラッカ海峡を機雷で封鎖した場合、中共の石油輸人はそれだけでも八割を断たれることになると思われますけれども、実は台湾単独で機雷戦に訴えても、中共を亡ぼすのにはもう十分なのです。
そうなってしまうのは、なにも現代の機雷がスーパー兵器だからではなくて、誰も予想もしなかったほど経済発展してしまった一九九〇年代以降の中共の「地政学的弱点」が、それだけ特異であるからなのです。
しかし、撒いた機雷の効果が長期におよぶことを、台湾人は怖れているように見えます。要するに台湾人は、中共経済を破壊したくはないのです。』(P.167)
著者は中国に民主主義革命を起こさせることが、世界への中国の脅威をなくすことと信じていますが(P.206)、中国は民主主義にはならないでしょう。分裂してもミニ中共ができ、軍閥支配の多国家ができるだけのような気がします。それでもそちらの方が安心ですが。
日本の新幹線技術も台湾高鉄の副総裁から中国に流出しました。彼は台湾人ではなく、中国人だからできたのでしょう。外省人と思われます。
https://news.infoseek.co.jp/article/searchina_1630582/
アンデイ記事
中国の強い圧力にもめげず韓国はサード(THAAD、終末高高度防衛)ミサイルを導入すると決定した。日本の自衛隊は二年前からサードミサイルの導入を検討していて、稲田防衛相は今月13日にグアムの空軍基地でサードミサイルを視察した。ところが台湾では同じ日に国会で議員から台湾にサードの導入を聞かれた馮世寛国防部長はNoと答えた。しかも馮世?部長は理由を聞かれて、台湾は米中間の戦争に巻き込まれたくないと答えたのだ。 ●サード導入に反対の理由 馮世寛部長が導入に反対した理由の第一は、台湾は米中間の戦争に介入せず中立を守る。台湾は自国の主権を守るために戦うべきで他国を援助すべきではないと言ったのだ。これは誰でもおかしいと感じる。アメリカは台湾の安全を守ることを法律で決めている。つまり台湾の敵か味方かはすでに明らかだ。アメリカに頼っていながらアメリカの味方にならないで中立を守ると言う理屈は通らない。 米中戦争に巻き込まれたくないと言っても戦争になれば中国は真っ先に台湾と沖縄、グアムを攻撃する。馮世寛が台湾は中立を守ると言ったのは中国に忠誠心を示したのであろう。これが台湾の国防部長なら一旦戦争になれば台湾軍はすぐに降参するか、それとも中国に寝返るかもしれない。この男は早急に更迭すべきである。 次に馮世寛部長は、台湾は中国に近いから高高度ミサイルで台湾を攻撃する必要がないと言った。だが韓国と北朝鮮はもっと近いけれど韓国はサードの設置に踏み切ったのだ。中国がサードを怖れる理由はサードのレーダーが広い範囲にわたって敵陣の動きを探知できるからである。サードを台湾に設置すれば韓国に設置したサードレーダーが探知できない中国の内部や、海南島や南シナ海まで監視できる。サードを拒否した馮世寛は中国の味方である。 馮世寛部長の第三の理由は高価なサードを買う金で他の武器を買う方が良いと言うのだ。確かにサードは高いだろう。しかしサードは中国の動きを監視できるから台湾の安全にも寄与するはずだ。 台湾がサードを買わなくてもアメリカにサード基地を貸せば金は要らない。アメリカの基地があれば中国は台湾を攻撃できなくなる。台湾を防衛するならこれが最良だ。アメリカと台湾は国交がない。しかしアメリカは台湾から99年租借で土地を借りて大規模な領事館を建設した。それならサード基地の租借など簡単である。 台湾の安全はアメリカに頼っているのに台湾の国防部長は中国を怖れているか、中国に味方しているかのような態度である。台湾はこのような軍隊に頼れるだろうか。 ●アメリカの軍備提供 アメリカがトランプ政権に変わって台湾に新しい武器を提供すると言い出した。最近のニュースではアメリカが台湾に高移動性ロケット砲撃システム(HIMRS)を売ると言ったそうだ。HIMRSミサイルは射程が200キロもあるので、ミサイル防御の外に中国沿岸のミサイル基地を先制攻撃することもできる。 これについて蔡英文総統は、アメリカが最新武器を提供するならF35ステルス戦闘機や潜水艦も売って欲しいと述べた。台湾のニュースによるとアメリカはブッシュ時代に潜水艦を台湾に売ると約束したが今になってもまだ提供していないと言う。アメリカが最新武器を提供しないのは台湾の軍部が信用できないからだろう。 三年ほど前にアメリカがアパッチヘリコプターを台湾に売ったところ、パイロットの空軍中佐が芸人グループを軍事基地に招待してアパッチヘリを見せびらかし、コックピットの計器類の写真を撮らせた事件があった。しかもこの操縦士は叱責されただけで今でもアパッチのパイロットとして軍務に勤めている。こんな軍隊にF35ステルス戦闘機を提供したらどうなるか。パイロットが離陸して台湾のレーダーから消えたとたんに中国に飛んでいくかもしれない。潜水艦も同様だ。馮世寛部長の話を聞けば台湾軍の忠誠心に問題があることは明らかである。 ●最新武器よりも忠誠心が先決 問題の核心は台湾に中台統一したい人間がいて、おまけに彼らが政治や軍事の決断をする上層部に居ることである。台湾にはすでに中国から来た人が数十万も居る。戦争になったら台湾軍が最新武器を持っていても上層部が降参するかもしれないし、内通する者が居るかもしれない。国民の85%が台湾人で独立を望んでいても少数の中国人が政治や軍事を操っていれば安心できない。 台湾人の蔡英文が総統になったが、彼女にとって大切な仕事は台湾に忠誠を尽くし、台湾のために戦う軍隊を作ることである。それには中国系の将軍たちを引退させ、台湾人を上層部に任命して最新武器を持つ部隊の忠誠心を厳しく監督しなければならない。 国会議員も国家の安全と将来を真剣に考えるべきである。先日の国会ではある議員が馮世?部長を召喚し漫才の掛け合いのように二人で軽口をたたいていた。時間の浪費だけでなく政治家失格である。 軍事機密を中国に渡した事件は数え切れないほどある。武器よりも軍隊の士気と軍人の忠誠心が大切だ。アメリカが最新武器を提供しても台湾軍の自衛力は疑問だらけ、台湾人さえ信用しない軍隊をアメリカが信用するわけがない。外省人の台湾に対する忠誠心が問題なのだ。蔡英文は現状維持など寝言を言うときではない。台湾軍の刷新は蔡英文にかかっている。
宮崎記事
トランプ政権は台湾の安全保障のため、要請のある武器供与を過去最大の規模に拡大する模様である。 もっとも米国は「台湾関係法」により、台湾への武器供与を条約上も義務付けているが、オバマ政権では北京からの抗議の少ない、「比較的穏やかな武器」(ネッド・プライス前安全保障会議スポークスマン)に限定してきた。 トランプ大統領は昨年12月3日に、蔡英文台湾総統からの祝賀電話を受け、「ひとつの中国」という過去の歴代政権が取った原則には拘らないと発言し、北京を慌てさせたが、その後、やや発言を修正し、浮上した北朝鮮のミサイル実験以後は、中国との関係重視に傾いた。 4月6日には習近平主席をフロリダ州に招待し、北朝鮮問題を主議題に話し合う予定が組まれている。 このため、事前のつめの目的でティラーソン国務長官を北京に派遣した。 こうした情勢を踏まえ、台湾への武器供与は米中会談が終わるまで表面化することはないが、ロイターは(3月18日)、政権内部で真剣に議論されており、供与される武器は対艦ミサイル、フリゲート艦など、総額18億ドルを超えるだろう、と報道した。 しかしながらトランプ政権は肝腎の政権高官人事が遅れに遅れており、国務省、国防省ともに副長官、次官、次官補人事が難航している。 このため、実際に台湾への武器供与が決められるのは、2018年に持ち込むことになろうと観測筋はみている。
ニューズウイーク記事

3月21日、台湾の蔡英文総統は、南部・左営の軍港を視察し、潜水艦を自主建造する方針を表明した。同総統が視察した潜水艦は50年近く運用されており、主要防衛装備を刷新する必要性が浮き彫りとなった。写真は潜水艦から手を振る同総統。台湾の高尾市の海軍基地で撮影(2017年 ロイター/TYRONE SIU)
台湾の蔡英文総統は21日、南部・左営の軍港を視察し、潜水艦を自主建造する方針を表明した。同総統が視察した潜水艦は50年近く運用されており、主要防衛装備を刷新する必要性が浮き彫りとなった。
蔡総統は、水中での戦闘能力の引き上げは台湾の防衛にとって必要不可欠だと指摘。「これは誰もが認識している問題だ」とし、「軍の指揮官として、この問題を解決する決意がある」と述べた。
台湾が所有する潜水艦4隻のうち、2隻は第2次世界大戦時代の潜水艦。米国から購入し、主に訓練用に使われている。残りの2隻は1980年代にオランダから購入したもので、運用開始は70年代となる。
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『米中経済戦争勃発に新たな火種 北朝鮮リスクと中国市場悲観論に傾き始めた米産業界』(3/21JBプレス 瀬口清之)について
瀬口氏の中国に対する見方は、基本的に間違っています。中国に完全に自由な民間活動はありえません。あるのは共産党の指導の枠内での自由です。勿論、自由主義国であっても法律による規制はありますが、中共は法治国家を仮装している人治国家です。賄賂で何とでもなる世界、逮捕状なしで拘引できるのですから。
「主要プレイヤーが政府ではないことによるリスク」と言って、恰も自由に行動できる民間企業が存在するように書いていますが、あのアリババのジャック・マー会長がトランプ大統領と会いに行ったのも、中共の命令です。ソフトバンクの孫社長がトランプ大統領と会ったのとは目的が違います。ジャック・マーは中国への経済制裁防止、孫は「Tモバイル」の買収の道筋をつけ、「スプリント」と合併させ、シナジーを出すことです。勿論、民間企業が国の外交に関与して悪いと言う訳ではありませんが、国が民間企業に強制的にやらせる仕組みが問題と思っています。共産主義は官民の総力戦ができ、非常に効率は良いです。共産主義こそが全体主義の一部でしょう。
瀬口氏も富坂聰氏と同じく、中国をわざと誤解して見せるような誘導をしているようにしか思えません。まあ、中国の悪口、中国に不利な記事を書けば、ペナルテイが待っています。情報をシャットアウトすれば記事が書けなくなりますので。金もハニーも使う必要はありません。
今般のテイラーソン国務長官と王毅外相、習近平主席との会談で、中国は北朝鮮問題にゼロ回答だったようです。4/6~7の習訪米(3/14日経から、未確定?)、トランプとの会談も中味の無いものになりそうです。それはそうでしょう。今秋には大事な党大会があり、人事が決定されるので、迂闊に譲歩できません。そんなことをすれば北戴河会議で長老から袋叩き似合い、望んでいる人事もできなくなります。でも、手土産なしで会えば、トランプがメルケルに示したような態度で終わることでしょう。中国国内的には、「米中経済の発展を確認」くらいでお茶を濁すのでは。鄧小平が中越戦争で中国が勝利したと誤魔化したように。
瀬口氏は米中経済戦争を避けることを願っていますが、中国の軍事拡張に時間の利益を与えるものです。現実の戦争になるより、経済で追い込み、崩壊させて、軍事拡張もできなくさせ、ひいては解放軍の内乱、中国の分裂となるのが理想でしょう。このまま中国を肥大化させれば、日本にとっての軍事的脅威は膨大なものとなります。日本の独立は心もとなくなります。それが読めない人間は、学力レベルだけの頭の良さでしょう。地頭が無いという事です。“没有头脑”です。
記事

20か国・地域(G20)外相会合の開催地であるドイツ・ボンで初会談に臨む、レックス・ティラーソン米国務長官(左)と中国の王毅外相(2017年2月17日撮影)〔AFPBB News〕
米中両国は経済的相互依存関係を深めており、仮に経済戦争に突入すれば互いに報復をエスカレートさせ、双方が極めて深刻な打撃を受ける関係にある。
これは両国経済のみならず、最悪の場合、世界経済全体にリーマンショック以上の衝撃を与え、世界大恐慌を招く可能性も十分ある。
米中両国間の経済戦争がそうした深刻な打撃を与えることを考慮すれば、両国政府は経済戦争を仕かけることによるリスクを十分認識し、互いにそうした事態を回避するよう努力するはずである。
以上が米中両国の経済関係には大量の核兵器保有国同士の間の相互確証破壊と似た関係が成立しているように見えると述べた前回2月の拙稿の主な論点である。
3月前半に米国出張した際に、以上の筆者の見方を米国の国際政治学者らに伝えたところ、概ね賛同を得られた。
ただし、米中両国間の外交問題を巡る深刻な対立による関係悪化が経済面での疑似的「相互確証破壊」の成立を妨げ、経済戦争に突入するリスクを完全に否定することはできないなど、いくつかの貴重な指摘を受けた。
本稿ではそれらのポイントについて紹介したい。
1.北朝鮮リスク
先月の筆者の論稿は米中両国の経済関係に焦点を当てたものだったが、米国の国際政治学者は以下のような外交問題が両国の経済関係に与えるリスクについても考慮する必要があると指摘した。
ドナルド・トランプ政権下において、現在、米中外交関係上の最大の懸案は北朝鮮問題を巡る対立先鋭化のリスクである。
トランプ政権は北朝鮮がミサイル発射による対米牽制行動をとったことに対し、北朝鮮に対する武力攻撃を含むあらゆる選択肢を検討し、強い態度で臨むスタンスを示していると報じられている。
早ければ4月にも行われる可能性があるトランプ大統領・習近平主席間の初の米中首脳会談において、北朝鮮への対応が主要議題の1つになると予想されている。
トランプ大統領は習近平主席に対して、中国からも北朝鮮に対してより強く厳しい対応をとるよう要求すると見られている。
しかし、中国と北朝鮮の関係はすでに冷え切っており、中国がある程度強く厳しい制裁措置を実施したとしても、北朝鮮が中国からの要求に耳を貸す可能性はほとんどないとの見方が一般的である。
そうした状況下で中国が北朝鮮に対してとり得る制裁措置は、エネルギーおよび食料の供給停止といった究極の強硬策しかない。もしこれを実施すれば北朝鮮経済は危機的状況に陥り、大量の難民が中国東北地域にあふれ出してくると予想される。
東北地域は過剰設備を多く抱える構造不況業種が集積しており、ただでさえ長期の経済停滞に苦しんでいることから、ここに難民が流入するのは中国の政治経済の安定確保に深刻な悪影響を及ぼすリスクが高い。
これほど内政上のリスクの大きな措置を中国政府が米国のために実施することは考えにくい。
そうした点を考慮すれば、中国が米国からの強い要請に応えて、米国がそれに満足する可能性は極めて低いと見られている。その場合、米中両国の対立が先鋭化し、米国側が中国に対して一段と強硬姿勢に転ずる可能性が高まる。
それが米国政府のどのような施策につながるかは未知数であるが、仮に南シナ海における軍事行動を伴う対中強硬姿勢や台湾に関する「1つの中国」論の見直しを迫るといった対応に出れば、米中関係は一気に悪化する。
そうした米国の強硬姿勢が中国国民の反米感情を煽り、中国全土で米国製品ボイコット運動や反米デモなどを引き起こし、米国政府が為替操作国の認定や関税引き上げなどで対抗するといった形でエスカレートしていくと、経済戦争に突入する可能性は否定できない。
ただし、以上のシナリオは民主党寄りの国際政治専門家が主張する、かなり極端な悲観的シナリオであり、トランプ政権の外交政策の欠陥を強調するために、あえて最悪のケースを想定している面は否めない。
これに対して、共和党寄り、あるいは中立的な立場の専門家は、これほど深刻な事態に至る可能性はそれほど高くないと見ている。
現在、トランプ政権内において対中政策をリードしているのは、ジェームズ・マティス国防長官、レックス・ティラーソン国務長官、ゲーリー・コーンNEC(国家経済委員会)委員長、ケネス・ジャスター国家安全保障会議(NSC)国際経済担当大統領次席補佐官らであると言われている。彼らはトランプ政権内では穏健派に属する。
これに対して、対中強硬路線を主張するタカ派には、スティーブ・バノン主席戦略官、ピーター・ナヴァロ大統領補佐官(国家通商会議担当)、ウィルバー・ロス商務長官らがいるが、今のところ対中政策にはあまり影響を及ぼしていないと見られている。
こうした穏健派主導の体制で対中外交を進めていくと、上述のような激突シナリオを回避できる可能性も十分あると考えられる。
ただし、これらのトランプ政権の主要メンバー間の勢力バランスの変化というリスクに加え、トランプ大統領自身の気分の変化が政策に及ぼす影響がもう1つのリスクであるとの見方がある点は考慮しておく必要がある。
このようにトランプ政権の対中外交方針は不透明で予測不可能な部分が多い。これに対して中国政府があまり過敏に反応せず、じっくりと構えて慎重に対応していくことができれば、米中衝突リスクは軽減される。
2.主要プレイヤーが政府ではないことによるリスク
当面、米中関係を悪化させる主因は上記の政治外交要因であるが、これを受けて米中関係の悪化を加速させる可能性があるのが、経済分野における主要プレーヤーである市場参加者=一般国民の動向である。
安全保障面における本来の相互確証破壊の関係を支える主要プレーヤーは両国政府である。一方、経済面での疑似的「相互確証破壊」の主要プレーヤーは市場参加者=一般国民であるため、政府同士のような制御が効きにくい。
いったん相手国に対する強い不満や憤りが国民感情として広く共有される場合、政府の力でこれをコントロールすることが難しくなる。
つまり疑似的な「相互確証破壊」の関係が成立していると分かっていても、両国の激突を招くモメンタムを止めることができなくなる可能性がある。
具体的には、中国国民による米国製品のボイコット運動や反米デモの動きが中国全土に拡散する場合、これを中国政府が短期間の間に沈静化させるのは極めて難しい。
あるいは、米国の労働者や一般国民の間で強い反中感情の高まりが生じる場合、米国政府もこれをコントロールすることは難しい。これは以前、尖閣問題発生後の日本に対する中国国民の姿勢の変化を思い起こせば容易に理解できる。
この主要プレーヤーのコントローラビリティの低さが疑似的「相互確証破壊」の成立を妨げる1つの要因となる。
3.中国ビジネスに対する米国企業の悲観論増大の影響
さらに、もう1つの指摘は、最近の米国企業の対中投資姿勢の変化である。
米国企業はこれまで、アップル、ゼネラル・モーターズ(GM)、フォード・モーター、ファイザー、P&G、マクドナルド、スターバックスなど、様々な分野で中国国内市場の大きなシェアを確保し、巨額の売上高と利益を享受してきた。
しかし、最近になって、上海の米国商工会議所の不満に代表されるように、知的財産権の侵害、資金回収難、政府の規制の突然の変更、中国企業と外資企業との差別的な扱いなどに対する不満が強まっている。
この1、2年、これらの問題点により、米国企業にとって中国市場は以前ほど魅力的ではなくなっているとの見方が増大している。
同時に中国経済の減速を眺め、中国市場の将来に対する見方も悲観的になっていることから、対中投資が慎重化しているとの声を耳にすることが多くなっている。ただし、実際の米国企業の対中直接投資金額は減少せず、むしろ逆に増加している。
以上で指摘されている問題点は日本企業にとっては数年前からずっと直面してきている問題であるため、最近になってこうした問題点に関する懸念が高まっているという声は聞いたことがない。
米国企業が最近になってこうした懸念を強めている背景についてはさらに分析を深める必要がある。
以上のような米国企業の中国ビジネス悲観論の拡大、それに伴う対中投資姿勢の慎重化は、両国が激突することによって生じる経済的打撃に対する受け止め方の変化をもたらす。
以前であれば深刻なダメージを懸念して、米中対立が先鋭化しないことを強く望んだ人々が、今後はそれほど強く望まなくなる可能性が高い。
これも疑似的「相互確証破壊」の成立にとってマイナス要因である。
以上のように、経済面における疑似的「相互確証破壊」は上記の3つの要因によって成立しにくくなる脆弱性を内包している。
米中両国はこうした点にも慎重に配慮しながら、経済戦争への突入を回避するために、様々な努力を重ねていくことが望まれる。
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『THAAD韓国配備開始、止まらぬ中国のロッテ叩き 中国内の店舗閉鎖、大規模事業中断、ねつ造文書の拡散も』(3/17日経ビジネスオンライン 北村豊)について
中国は人口の多さを武器にして投資誘導、技術を総て奪い尽したら、中国市場から追い出しをかけます。コンビニだってそうでしょう。中国は一党独裁で、個人であっても、営業許可証、生産許可証を持たない限りビジネスできません。許認可権を全部役人が持っています。賄賂の世界です。コンビニもノウハウを日本企業から奪って、中国国内企業に認可をドンドン下ろしていきました。
https://messe.nikkei.co.jp/fc/news/134185.html
今回は韓国企業だけでなく、日本企業も商品撤去させられました。これからドンドンこういう動きが出て来るでしょう。2005年の反日デモ、2012年の反日デモは官製デモです。共産党一党独裁の中国に集会の自由はありません。何せ反共デモを一番恐れている訳ですから。反日デモは共青団の若いのを使って、裏から大量動員させ、わざと暴徒と化させ、日系企業を震え上がらせるのが目的です。こういう国に投資し、援助してきた企業が馬鹿と言うもの。
http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20170317/frn1703171130002-n1.htm
http://www.newsweekjapan.jp/column/furumai/2012/10/post-567.php
中国工作員の富坂聰は官製デモでないと主張していますが、拓大は良くこういう嘘をつく人間を雇っていると思います。中国はシステム上、官製デモしかできません。労働者のストですら禁止されていて(明確に法で禁止している訳ではありませんが、実態として禁止)、公安の取締り対象です。一般人のデモが許される筈がありません。
http://www.pressnet.or.jp/news/headline/121129_2194.html
http://www.iewri.or.jp/cms/archives/2011/08/post-32.html
1915年の日本の「対華21ケ条」を不当として、1919年5月4日に、国民の反発を利用して五四運動を起こさせ、「抵制日貨」(=日本製品ボイコット)といって攘夷を実現させようとしました。中国人の心の根底には中華思想があり、儒教秩序があって(華夷秩序)、馬鹿にしていた日本からしてやられたことを快く思っていなかったと思います。でも、満州は漢人の土地ではありません。清国のラストエンペラー愛新覚羅溥儀を政権から追い出した時点(辛亥革命、1911年)で満洲人に返さなければ。漢人に了解を取り付ける所がミスコースなのでは。まあ、溥儀が満洲に帰ったのが1931年の満州事変後ですから、仕方がなかったのかも。でも、「対華21ケ条」は袁世凱が日本を騙して、日本に要求という形を採らせ、世界に日本の強欲ぶりを見せつけようとしたのです。騙される方が悪い。時は大隈内閣、加藤高明外相時代、諭吉の「脱亜論」と比べると、どちらが先を読む力を持っていたかが分かります。ただ慶應卒の経営者が喜んで中国に出て行ったのを諭吉が草葉の陰から見て、どう思うかです。
http://d.hatena.ne.jp/jjtaro_maru/20100929/1285712786
北京駐在時代には、北京の食品工場を訪問したことがあります。工場長がワンマンのトップを恐れていたのが印象に残りました。韓国系企業全体に言えるのでしょう。トップは絶対権力を持ち、異論を許さない雰囲気です。サムスンも多分そうで、「恨」の感情を持つ国民から、朴槿恵同様その地位から引きずり降ろされ、拍手喝采されたのでしょう。韓国民は将来が読めないという点では愚かと思いますが、今まで富を独占してきたやり方が復讐を受けているのだと思います。
ふるまいよしこ氏の『中国メデイア戦争 ネット・中産階級・巨大企業』を読みました。中共はSNSが脅威になることを敏感に察知し、ネット社会に党主導で組織を作り、さも一般人が発言するようなふりをして世論誘導をしているとのこと。五毛帮が良い例でしょう。それに引き換え、日本政府の取り組みは危機感が無いです。敵はあらゆる手段を利用してプロパガンダに使用しているのに。少なくとも総務省はTV局に入札を導入して電波使用料を上げるべきです。それすらできないのでは、ネット社会には対応できません。『中国メデイア戦争 ネット・中産階級・巨大企業』の中から少し紹介したいと思います。
P.178~181
編集部の「裏切り」
「南方週末」の編集者と記者たちに向けられたウエイボユーザーの「報道の自由を!」という声援でタイムラインが沸いていた頃、党直轄のタブロイド紙「環球時報」が、「事件は西洋諸国が裏で煽っている」という内容の社説を掲載した。続いて、共産党のイデオロギー宣伝担当部門の中央宣伝部からも事件を「海外敵対勢力の介人によるもの」と決めつける通達が下った。そうしてウェイボなどの公的な場で記者たちによる「南方週末」編集部への声援が禁じられた。
中央政府は、人々が考えていた以上に事態を深刻にとらえていた。突然出てきた「海外敵対勢力」という言葉は、過去のチベット騒乱やウイグルでの暴動でも使われたものだった。
つまり中央宣伝部の通達は、この「南方週末」編集部の抵抗を、反国家的組織に操られた、国家転覆を狙う動きだと政府が判断しつつあるということを意味した。「国家転覆」容疑が中国においてどれほど深刻な「罪」であるのか。メディア関係者がそれを知らないはずがなかった。
あっという間にメディア関係者や「公知」からの抗議のトーンが落ち始めたなか、一月一〇日、「南方週末」の第二号が癸売された。なんと、事件解決までは職場をボイコットすると威勢よく叫んだはずの編集者たちは無言で職場に戻って新聞作りをしていたのである。しかし、ウェイボ上でそのことを説明する編集部関係者はもう一人もいなかった。
社屋ビル前に集まっていた人たちの前にも、編集部関係者は姿を現さなかった。同紙のある論説委員に至っては、「報道の自由を!」と叫ぶ人たちを指差して、ウェイボで「彼 らは何をやってるんだ?オレたちが頼んだわけでもないのに」とつぶやいた。このつぶやきは、中央宣伝部の通達を経てすでに同紙編集部が当局に屈服したと気がついていたメ デイア関係者から、激しい非難を浴びた。
事件の波紋
しかし、事件はそれほど簡攀に終わらなかった。
抗議活動を続けた市民活動の一部は逮捕され、その後有罪判決を受けている。その裁判において「南方週末」の編集関係者が証人として出廷し、被告らに不利な証言をしたとも言われている。あるメディア関係者は、「『南方棄』はこの判決をどう報道するんだろうな」と皮肉っていた。
さらに編集関係者に声援を送り続けた「公知」たち—そこには、メディアの論説員レベルの人たちや、マイクロソフトやグーグルの要職を歴任した企護の李開復氏、中国で活動していた台湾の人気夕レント伊能静さんなども含まれていた——は、次々に当局に事情聴取に呼び出され、マークされるようになった。IT起業支援業を営む李開復氏はこの 年癌罹患を公表して台湾での長期治療に入ったが、それも政治的な嫌疑を回避するためだったと信じている政治ウォッチャーは多い。
後に多くのメディア人の証言により明らかになったところによると、「新年のことば」をすり替えたのは、省宣伝部から送り込まれた同紙の編集長だった。その更迭要求は受け入れられずその一方で編集作業における記事検閲の体制が変更になった。それまで編集部では企画立案時と原稿提出後、さらに印刷直前のそれぞれに検閲が義務付けられていたが事件後には編集作業後の校正刷りチエックだけの「事後チェック」となった。
事件を経て編集部は、「報道の自由」などではなく、これまでよりちょっぴり多めの「編集の自由」だけを手に入れただけ。その後、結果に不満を抱いた人気論説員たち数人が同紙を去ったが、それでもこの事件の幕引きに加担し、社会的責任を果たさなかったと陰で言われ続けている。
この事件はメディア業界にも非常に大きな禍根を残した。当局はこの事件後、ますますメデイア菅理に力を入れるようになった。このときに積極的に声を上げた記者や公知たちの多くがブラックリストに入れられ、その後もたびたびマ—クされるようになった。
そして一番問題なのは、事態を真剣に見守っていた読者たちの多くが、事態が如何に解決したのかを知らされないまま、時問の流れの中に置いてけぼりを食ってしまったことった。
P.184~186
「デマ抑止」が名目の締め付け
ウェイボ利用の「七つの原則」が示された「中国イン夕―ネット大会」、そして続けて起こった薛蛮子事件以降、政府によるウェイボ利用の「ガイドライン化」が進められた。
ニ〇一三年九月には、今度は最高法院と最高検察院は連名で、「デマが五〇〇回『転送』 (リツイート)された、あるいは自分が転送したデマが五〇〇〇回読まれた場合、発信者は三年以下の懲役、強制労働、政治権利剝奪などが科される可能性がある」という通達を発表した。
また、それに合わせてウェイボ最大手の新浪も信用ポイント制度を導入。このポイント制は各ユーザーの持ち点の八〇ポイントから、「デマ」を流したと認定されれば五ポイン ト減点され、持ち点が六〇ポイントを下回ると、ファン(フォロワー)を増やすことができなくなったり、書き込みを他者が転送できなくなる。さらに四〇ポイントを割れば、フォロワーのタイムラインに自分の書き込みが表示されなくなり、〇ポイントでアカウント抹消、というものだった。
挽回の手段はあった。それはなんと、「他人がデマを書き込んだことを運営者に知らせること」。つまり密告である。これではまるで一九六〇年代から七〇年代に実際に他人を陥れ合った文化大革命のようじゃないか—。
ウェイボに夢中だった人たちは完全にしらけてしまった。なにが楽しくて、つぶやきのたびにいちいち自分の得点を気にしたり、他者を密告しなければならないのだ?だいたい何を「デマ」というんだ?政府がデマだといえば「デマ」なのか?だが政府は自分の都合の悪いことはすべて「デマ」だと言うではないか。
そこから、民間のデマ「民謡」と政府のデマ「官謡」という流行語が飛び交い、大議論となった。人々はもはや、一方的に与えられる情報をすんなりと信じるわけにはいかないと実感するようになっていた。
記事

ロッテマート、次々と営業停止に(写真:Imaginechina/アフロ)
3月6日、米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(Terminal High Altitude Area Defense missile、 略称:THAAD)」が韓国の烏山基地に到着した。翌7日、米韓両軍は北朝鮮の弾道ミサイル攻撃に備えてTHAADの韓国配備を開始すると発表したが、当初予定していた年末までの配備を大幅に前倒しし、早ければ5~6月にも運用を開始するものと思われる。
中国人に人気の「楽天集団」だが
THAADが配備されるのは韓国南東部の慶尚北道星州郡にあるゴルフ場「ロッテスカイヒル星州カントリークラブ」(以下「星州ゴルフ場」)の敷地である。その名からも分かるように星州ゴルフ場は、韓国第5位の財閥「ロッテグループ」(以下「ロッテG」)が所有していたが、2月28日にロッテGが韓国国防部との間で星州ゴルフ場と京畿道南揚州市にある国有地とを交換する契約に締結したことによりTHAADの配備が本格化することになった。昨年11月16日、両者は星州ゴルフ場と国有地を交換することで合意し、国防部は1月にも正式に契約を締結する積りだったが、THAAD配備に対する中国の反発が強かったためにロッテGの手続きが遅れ、2月末にずれ込んだのだった。
11月16日にロッテGが国防部と土地交換で合意し、星州ゴルフ場がTHAAD配備地に確定したと報じられると、中国はロッテGを標的とするバッシング(叩き)を開始した。
ロッテGは中国では“楽天集団”(略称:楽天)と呼ばれ、楽天は多くの中国国民にとって非常に身近な存在なのである。2017年の“春節(旧正月)”休暇(1月27日~2月2日)には615万人もの中国人観光客が韓国を訪れ、前年比7%増の史上最高を記録したが、彼らの多くが免税品を購入したのは“楽天免税店(ロッテ免税店)”であった。ある分析によれば、ロッテ免税店で中国人観光客が消費する金額は1日当たり6000万元(約9億9000万円)前後に上り、年間では219億元(約3614億円)という計算になる。
そればかりではない、楽天は中国国内にデパートの“楽天百貨(ロッテデパート)”5店舗とスーパーマーケットの“楽天瑪特(ロッテマート)”113店舗を運営しており、多くの人々が楽天で生活用品を購入しているのである。また、楽天は食品や飲料の製造販売、ファーストフードチェーンの“楽天利(ロッテリア)”などの事業を通じて中国国民に親しまれている。
韓国が中国と国交を樹立したのは1992年であった。その2年後の1994年に中国に進出を果たしたロッテGは、中国に累計10兆ウオン(約1兆円)の投資を行って事業を拡大してきた。今ではその市場は24の一級行政区(省・自治区・直轄市)に及び、中国における売上高は3.2兆ウオン(約3200億円)に達し、中国国内の従業員数は2万人に上っていると言われる。ロッテG、すなわち楽天が中国国内で展開する主要な事業の詳細は<表1>、<表2>および<表3>の通り。



ロッテマート、次々と営業停止に
12月に入るとこれら楽天の中国国内にある店舗や企業に対するバッシングが目に見える形で本格化する。中国政府は楽天の中国本社を含む全事業所に対する税務および消防検査を実施する方向に舵を切った。中央政府の意向をくんだ地方政府は楽天に対する監督を強化し、各地の“消防局”を動員してロッテマートの消防安全検査を実施し、不合格として店舗に対し営業停止を命じた。ロッテマートに対する消防安全検査は徐々にその件数を増し、12月中は数店舗だったものが、1月、2月と月を追うごとに増大した。
韓国の通信社「聯合ニュース」が3月8日付で報じたところでは、THAADの韓国配備が報じられた3月7日までに営業停止を命じられたロッテマートは39店舗であったが、翌8日には55店舗に増大したという。営業停止を命じられた店舗では正門に「“臨時査封決定書(臨時封鎖決定書)”」が貼られ、扉やシャッターには「〇〇市消防大隊“封条(封印紙)”」と書かれた紙が交差する形で貼られ、店舗は法的に封鎖された。
一方、3月3日の午前中にインターネットのコミュニティサイト“凱迪網絡”の投稿サイト“猫目看人”に、“藍心閣”というハンドルネームの人物が投稿した『楽天集団会長:中国人は“市儈(利に敏く)”、我々が値段を下げれば、彼らはすぐに買う』と題した文章が掲載された。同投稿サイトには多数の文章が掲載されており、同文章はほとんど読む人もなく放置されていたが、3日の夕方に“微博(マイクロブログ)”のブロガーで自称「作家」の“唐文立”が自身のブログに転載したことにより、次々と転載されて全国へ伝えられた。その全文は以下の通り。
作家 唐文立 03-03-19:29
韓国紙「環球新聞眼」はロッテG会長の“辛東彬”<注1>をインタビューした。目下中国人が楽天をボイコットしていることについて、ロッテGはどうする積りかと記者が質問すると、辛東彬は笑みを浮かべながら、「心配は要らない。中国人は非常に利に敏く、“無骨気無血性(気骨もなければ気概もない)”、我々が値下げすれば、彼らはすぐに買う。従来の経験から言って、中国人のボイコットは一時的で、突風が吹くようなものだ」と述べた。
<注1> 辛東彬(シン・ドンビン、日本名:重光昭夫)
ここまで言うと、辛東彬はカメラに向かって笑いかけ、「《Super Star K5》<注2>の中のパフォーマンスや気取り、激情のほとばしりなどは一時的な興奮に過ぎず、終わってみれば何もない。我々はひたすら値引きすればよく、そうすれば中国人はもうけものだと蜂のように群がってやって来る。数年前に日本の商品やフィリピンの果物のボイコットが行われたが、その結果、突風が吹き抜けた後は、日本商品もフィリピン果物も販売量が急増した。君は中国人を知らない。彼らは非常に功利的だから、我々は何も心配することはない。中国人がより重視するのは自分の利益であり、国家に対する責任感は希薄で、我々韓国人とは異なる。(転載)
<注2>《Super Star K5》は、韓国No.1の新人発掘オーディション番組
ねつ造文書も拡散
唐立文が転載した文章を読んだ多くのネットユーザーは、辛東彬の中国人を馬鹿にした傲慢な言葉に憤り、「楽天許すまじ」と決意を新たにしたが、一部の冷静なネットユーザーは、韓国に「環球新聞眼」などという新聞は存在しないし、新聞記者のインタビューを受けた際に、ロッテGの会長ともあろう者がこのような不用意な発言をするはずがないなどとして、当該文章の信憑性に疑問を呈した。その後、中国メディアも当該文章は韓国に対する反感を煽るためにねつ造されたものと断定したし、韓国紙「Newsway」も「ロッテG会長はいかなるメディアのインタビューを受けていない」と報じたことで、事態は沈静化した。しかし、文章の内容がねつ造であろうとも、扇動により燃え上がった楽天に対する敵愾心は容易に消えることはない。
3月4日付の“江蘇網(ネット)”は、3月3日の午後と夜に江蘇省“連雲港市”に6店舗あるロッテマートのうちの3店舗を取材した記事を掲載した。その記事によれば、平日で客は少ないと思っていたら、驚くことに、店内は買い物客で溢れ、レジは行列ができるほどに盛況だったという。楽天に対する反発が強まる中、ロッテマートにこれほどの買い物客が殺到しているのはなぜかと訝(いぶか)しく思っていたら、疑問が解けた。買い物客の9割以上はロッテマートの“購物卡(商品券)”を手にし、「商品券を全て使い果たしたら、ロッテマートには二度と来ない」と口々に言明しながら大量の商品を購入し、中には数万元(約50~80万円)の買い物をした客もいたという。
「反楽天」のデモ隊も
3月6日には河南省“鄭州市”の管轄下にある“新鄭市”のショッピングセンター“万佳時代広場(万佳タイムズスクエア)”に組織された「反楽天」を標榜するデモ隊が中国国旗を掲げて押しかけた。2階建ての万佳時代広場の屋上からは5本の垂れ幕が下げられ、1階の壁面には横断幕が掲げられた。そこには次のような標語が書かれていた。
(1)「“楽天”操你祖宗 “楽天”我日恁娘 老子不売了」 (“楽天”FUCK YOU “楽天”FUCK YOU 俺たちは“楽天”の商品を売らない) (2)「万佳人憤怒了 下架併銷毀楽天所有商品 楽天滾出中国去!」 (万佳時代広場の従業員は憤っている。全ての楽天商品を棚から下ろして廃棄しろ。楽天は中国から出て行け!)
万佳時代広場の前庭には店内から運び出された楽天製の食品や飲料が大量に積み重ねられていたが、工事用のホイールローダーがそれらを粉々に踏みつぶした。それを見ていたデモ隊や万佳時代広場の従業員、そしてそれを取り巻く野次馬たちはどっと歓声を上げたのだった。こうした楽天商品排斥の動きは今後全国で次々と展開される可能性が高い。
3月8日には中国の動画サイトに「“抵制楽天(楽天ボイコット)”」と題するわずか10秒間の動画が掲載された。その動画には中国の某小学校の講堂に集められた小学生たちが映し出され、彼らが壇上に映し出された「おやつを拒絶して、楽天をボイコットしよう。我が中華を愛するのを我々から始めよう」という標語を大声で唱えると、教師が生徒たちに「私たちは楽天のおやつを買うのを止めねばならない。それを自分の行動で示そう」と呼びかけていた。某小学校がどこにあるのか不明だが、小学生に対して「楽天ボイコット」を強要して洗脳していることは明白で、文化大革命(1966~1976年)時代の“紅小兵”<注3>を想起させる。こうした動きは中国全土の小・中学校に波及しているものと思われる。
<注3>7~14歳の小・中学生で構成され、中国共産党の指導下で活動した組織。
この動画を見たネットユーザーの1人は、「私の子供にこのような教育は不要だ。もしあんたがこのような馬鹿げた教育を自分の子供が受けるのを好きならば、誰も止めはしないけど」とネットの掲示板に書き込んだ。また、別のネットユーザーは、「久しく人を罵(ののし)ったことはないが、昨日この動画を見て我慢ならなかった。これも父親になったためだろうか、そこにあるのは絶望だけだ。あの教師は豚と同様だ」と書き込んだ。
2つの大規模プロジェクトも中断
しかし、こうした声を上げるのは一部の冷静な人々だけで、大多数の中国国民はお上の意向に沿って楽天ボイコットを叫ぶと同時に、THAADを配備する韓国からの進出企業や韓国製品に対し十把一からげで排斥を行うのである。それは上述したハンドルネーム““藍心閣”が投稿した文章に書かれていたように、「数年前に日本の商品やフィリピンの果物のボイコットが行われた」のと同様に、国民全体を巻き込んだ反楽天、反韓国の動きへと発展して行くのだ。
楽天が建設を進めていた2つの大規模プロジェクト、遼寧省“瀋陽市”の“瀋陽楽天世界”(投資額:3億ウオン=約3000億円、竣工予定:2018年)と四川省“成都市”の“成都楽天世界”(投資額:10億ドル、竣工予定:2019年)は、すでに工事の中断を余儀なくされた。中国政府“国家旅游局”は国内の旅行業者に3月15日以降は韓国行き団体旅行の取扱いを禁止するよう指示を出したと言われている。それが本当ならば、ロッテ免税店が莫大な損失を被ることは火を見るより明らかである。
3月15日は“国際消費者権益日(世界消費者権利デー)”だが、当日夜に中国国営テレビ“中央電視台(中央テレビ)”は「消費者の友特別夜会」を放映し、各種商品の問題点を厳しく指摘し、それが当該商品の販売に大きな影響を与える。今年の同番組では楽天商品を含む韓国製品および韓国進出企業の製品がやり玉に上がる可能性は大きいが、原稿締切日の関係で本稿ではその結果について言及することができない。果たして楽天は中国で生き残れるのか。
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『「移民政策は公約比で満点が付けられます」 米専門家がトランプ政権を採点』(3/17日経ビジネスオンライン 篠原匡・長野光)について
3/15日経電子版<米大統領令「200本用意」 政権移行チーム元幹部に聞く
【ワシントン=河浪武史】トランプ米大統領の政権移行チームで政策立案の責任者だったアド・マチダ氏が、日本経済新聞の取材に「既に大統領令は200本用意されている」などと政策づくりの舞台裏を語った。日米経済関係では「トランプ政権は2国間の自由貿易協定(FTA)に向けた対話を始めたいと考えている」と明言した。

アド・マチダ氏 Ado Machida 1964年ニューヨーク生まれ。トランプ政権移行チーム唯一の日系人幹部で約200人の「政策実行チーム」の責任者。公約を「就任初日」「就任100日」などに分けて大統領令や関連法案に落とし込んだ。移行チームは2月末に解散し、3月からはコンサルティング会社の共同経営者に。53歳。
――トランプ政権は大統領令を多発し、通商政策などでは強硬姿勢も目立ちます。政権運営は計画通りと言えますか。
「政権運営はここまで90%うまくいっている。大統領令は30本程度が発令されたが、実は既に200本ほど用意してある。移民問題、メキシコ国境の壁、インフラ整備、教育改革など14分野に分けて優先順位を付けた」
「これからも大統領令を発していくだろう。大統領令は法的効力は大きくないが、大統領のリーダーシップを示すPR効果が期待できる」
「環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱と北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉も打ち出した。これを真っ先に持ってきたのは通商交渉を多国間から2国間交渉に移すという『貿易観』の転換を印象づけるためだ。トランプ氏は2国間交渉でこそ経済大国である米国の強みが発揮できると考えている」
――「米国第一」を掲げる貿易政策の本当の狙いは何ですか。
「貿易政策はトランプ氏を支持した中西部の製造業の再興に焦点を置いているが、防衛産業を育てる狙いがある。航空部品や自動車部品、レーダーシステムなどソフトウエアも含めた国内防衛産業を再興し、米国の安全保障を高めることが重要だ。『米国第一』には多面的な意味合いがある」
「米通商代表部(USTR)は組織変更を検討している。アジア、欧州など方面別で組織化しているが、ハイテクや製造業など業種別に変える案を提出した。貿易協定は外交との位置づけだけでなく、米国の雇用をどれだけ増やし、経済成長をどれだけ高められるかの観点でみる必要がある」
――4月に日米経済対話が始まります。米国側は何を求めますか。
「政権は早期に日米FTAの対話を始めたいと考えている。FTAが日本の内政に影響するのも理解している。経済対話では第1弾として経済協力で走り出すことも考えられる。高速鉄道やエネルギー、インフラなど協力できる分野は多い」
「とはいえ米政権の優先課題は貿易赤字の削減で、自動車問題は避けて通れない。日本メーカーは米国での生産を増やしているが、政権内にその認識は浸透していない。日本ももう一段の努力が求められる」
――移民問題などでは混乱もみられ、国際的な批判も強まっています。
「中東など7カ国からの入国を一時的に禁止した大統領令は、テロ対策強化のために入国を止めている間に対策を再検討するということだった。移民問題の混乱は省庁間の調整がうまく進まなかったことに原因がある」
「政権の政策は『反移民』ではない。4%の経済成長のためには移民の活用が不可欠だ。ただ移民問題を冷静に議論するには、一時入国禁止などでまず米国の安全と安心を確保する必要がある。移民活用の議論はそこからだ。不法移民も経済の活力源であり、滞在できる何らかの道を作る」
――トランプ政権の成長戦略は30年ぶりの税制改革にかかっています。
「経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均法人税率は20%台。米国は州の法人税が4.5%あるから、連邦法人税率を15%まで下げれば先進国平均よりも税負担が軽くなる。出発点はそこだ。税制改革を主導するライアン下院議長は『法人税の国境調整』を検討しているが、トランプ政権としては、消費者負担が増えるリスクがある国境調整には反対だ。議会審議がこじれれば、大統領として口を挟んでいくことになるのではないか」>(以上)
トランプが今一番やりたいことを、ピーター・ナヴァロの著書『米中もし戦わば――戦争の地政学』から紐解いて解説しています3/18伊勢雅臣氏のブログ「国際派日本人養成講座」を是非お読み戴ければ。
http://blog.jog-net.jp/201703/article_5.html
小生の考えていることと同じですが、伊勢氏は20年前から中国の危険性に気付き、警鐘を鳴らしてきたとのこと。先見の明を持った真の経営者です。小生が中国の悪に気付いたのは2005年の反日デモの時からですので。やはりビル・クリントンが最悪の癌と言うのが分かります。江崎道朗氏も言っていましたが、米国が生み出す利益の内、90%も株主の物にしたのはビル・クリントンで、従業員に還元されなくなったとのこと。米国の中産階級が没落したのは間違いなくビルのせいです。それでビルの妻のヒラリーは大統領になれず、トランプが大統領になった訳です。
トランプのやりたいことはいろいろ拡散しているように見えますが、基本は新興敵勢力の打倒にあります。中国が敵と明確にさせないように、日本や欧州をバッシングしていると思っています。それでも、米国内に敵勢力が金とハニーで浸透していますので、抵抗勢力となって邪魔をしている構図です。ユダヤ金融勢力も中国の金にしてやられているのでしょう。悪魔の仕組みである共産主義(三権分立無し、人権弾圧、非法治、自由無し、選挙無し)が世界に跋扈するのは人類にとって不幸の極みです。今の中国や北朝鮮の国民を見ていれば分かるではないですか。政府のプロパガダに反対する者は拘引、拘留、死刑です。而も、三権分立してないため、逮捕状無く拘引、人知れず殺される世界です。自由主義国は連帯して悪のシステムに対抗しなければなりません。世界史的観点から、トランプこそがその輝ける星と現段階では思っています。中国に籠絡されないことを祈っています。
大前研一氏は二国間交渉はやってはいけないと主張していますが、時代遅れです。政治センスがないから都知事選にも落ちたのでしょう。TPPはNAFTA撤廃より発効前なので簡単と思われてサインしなかった訳です。それを元に戻すことはありません。TPPの条文に基づき、二国間で交渉するしかないのでは。特に、農産物は纏まらなければ豪州に利益を与えるだけというのを、時間をかけて交渉すれば良いと思います。
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20170317/plt1703172059006-n1.htm
インフラ投資で日本が協力できる分野は多いのでは。リニアモーターカーをNY~ワシントン間に通せば便利になります。日米の民間投資で賄えば堅固な関係が経済でも出来上がります。
移民制限の隠れた目的は、テロリスト排除だけでなく、勢力を増してきている中国人を狙ったような気もしています。何せスパイがうようよしていますから。また売春目的の韓国女性も。
記事
トランプ政権が発足して早2カ月。最初の100日間で成果を出そうとスタートダッシュをかけたが、現状では混乱の方が目立つ。
2月28日の施政方針演説は「大統領らしい」と高評価だったが、その直後にジェフ・セッションズ司法長官が大統領選中に駐米ロシア大使と接触していた事実が判明、その後もトランプ大統領が「オバマ大統領に盗聴された」と爆弾ツイートを投下したため、再びホワイトハウスは喧噪に包まれている。
それでは専門家はここまでのトランプ政権をどう見ているのか。政治リスク分析に定評がある米ユーラシア・グループのジョナサン・リーバー米国政治担当ディレクターに話を聞いた(取材は3月9日)。
(ニューヨーク支局 篠原 匡、長野 光)
—ここまでのトランプ政権をどう評価しますか。
ジョナサン・リーバー氏(以下、リーバー):トランプ政権はいわゆる移行期間、ハネムーン期間にあり、政権を評価するのはまだ早すぎると思います。実際のところ、現在はハネムーン期間というよりはむしろ婚約期間のようなものだと思います。トランプ大統領は強力な政策チームが不在の状態でホワイトハウスに来ましたので、結婚自体が始まっていないように感じます。それが現在の遅さにつながっています。
そのため、新政権の立法面や行政面を評価するにしても、現時点ではかなり限定的になります。トランプ大統領は新しくホワイトハウスに入ったリーダーであり、彼自身、同じように政権に入ったばかりのアドバイザーに囲まれています。また、彼はワシントンDCのエスタブリッシュメントから多くの抵抗を受けています。そういう事情を考えれば、移行期間は大目に見てもいいのではないでしょうか。

ジョナサン・リーバー 米ユーラシア・グループ米国政治担当ディレクター。ミッチ・マコーネル上院議員の主席経済政策アドバイザーを務めるなど、連邦議会での豊富な経験を有する。(写真:Mayumi Nashida 以下同)
あと1カ月、2カ月もたてばトランプ大統領は立法上の“勝利”を手に入れると思います。例えば、オバマケアの撤廃法案であり、暫定予算案の期限切れに伴って4月末に出される歳出法案です。確かに、行政という面では移民関連の大統領令もあってスタートは不安定でしたが、トランプ政権は大統領令を修正しました。これまでに、間違いから学んでいる面もあります。よって、選挙公約や期待されていることをベースにここまでの成績をつけるとすれば、現時点では「保留」という評価になります。
「やる」と言ったことをすべて実行している
—オバマケアの撤廃や大規模減税などの個別公約はどうでしょうか。
リーバー:オバマケアも現時点では「保留」という評価ですが、いい方向に進んでいると思います。税制改正も大した修正がなければ、2017年末、あるいは2018年初に関連する法案が議会を通過すると見ていますが、大きな変更がある場合は現時点では分かりません。ゆえに、これも「保留」です。移民に関しては、彼らは「やる」と言ったことをすべて実行しており10点満点だと思います。
—満点?
リーバー:そう思います。トランプ大統領は不法移民に断固たる措置を執ると述べていました。あくまでも選挙公約との比較という意味ですが、満点だと考えています。
貿易については、まだ政策を実行するための人事が承認されていません。とりわけ、米通商代表部(USTR)の代表に指名されているロバート・ライトハイザー氏が承認されていません(※編注:取材時点)。商務長官のウィルバー・ロス氏も承認されたばかりです。彼らが仕事を始めるにはもう少し時間がかかるため、貿易の評価も「保留」とします。
インフラ投資も同様です。インフラ投資という公約を実現するために動き始めているようですが、今後、トランプ政権は議会の抵抗に遭うと思います。そのため、ここも評価は「保留」ですが、インフラ投資はオバマケアと違って、間違った方向に向かっていると感じています。
—外交政策はどうでしょうか。
リーバー:日本については10点満点がつけられるのではないでしょうか。トランプ政権は日本を米中関係の中心に置き、アジア太平洋地域のキープレイヤーに位置づけました。予断ですが、トランプ大統領に対する安倍首相の扱いは極めて上手い。ここは最高得点でいいと思います。
中国とロシアについては、やはり「保留」です。米中は貿易や安全保障で懸念材料があります。北朝鮮問題など心配すべき案件もありますが、まだ何も始まっていません。ロシアも同様で、マイケル・フリン前安全保障担当補佐官が辞任するなど、トランプ大統領の周辺とロシアを巡って様々な話が渦巻いています。ただ、その真相はまだ何も分かっていません。「保留」だと思います。
—政権運営という面ではどうでしょう。だいぶ混乱しているように見えます。
リーバー:確かに、政権運営にはコミュニケーション不足や調整不足など明確な不安定さがあります。さらに安全保障担当補佐官が辞任したり、国務省が脇に追いやられたり、といった状況を見ると、そこから何が出てくるのかを語るのは難しい。政権運営のところは5点といったところでしょうか。
付け加えれば、ホワイトハウスの報道官には改善の余地があると思う。トランプ大統領はツイートで自身のメッセージを発しており、政権として組織的なコミュニケーション戦略を持っていないように見えます。ただ、改善の兆候も見えるため3点はつけられるのではないかと思います。
閣僚は合格点、次官級以下に課題残す
—閣僚の顔ぶれはどう評価しますか。
リーバー:これは本当に上手くやったと思っています。指名候補で一人辞退者が出ましたが、上院で拒否された人はいません。トランプ政権は保守派が心地よく感じる真の保守内閣を作りました。民主党は反対していますが、それは問題ではありません。国務省や国防総省をはじめ、トランプ政権が仕事を遂行する上で、クオリティーの高い人材を見出したと思います。ここは8点。
もちろん、次官級以下のレベルでは問題を抱えています。ティラーソン国務長官やムニューシン財務長官を支える人々はまだ埋まっていません。今の状態が続けば、2カ月後には問題になるでしょう。内閣のキャパシティ不足は政権に打撃を与え始めていると思いますが、切り抜けられるのではないかと現時点では思っています。それについてはものすごく心配しているわけではありません。
—就任当初、イスラム圏の人々の入国禁止など物議を醸すような大統領令を連発しました。ここについてはどう思いますか。
リーバー:全体的に、トランプ大統領は「やる」と言ったことを実行していると思います。まさに選挙期間中に見た姿そのままと言えます。大統領令にしても、話題を提供しているだけでしょう。
リーバー:トランプ大統領が何を成し遂げられるかということを考えるときに重要なのは議会との関係です。議会との関係がよく、コンセンサスが得られれば、トランプ大統領は多くのことができる。一方で、彼のしたいことに議会が協力しなければ、トランプ大統領は何もできなくなる。この政権の成功や失敗を考える時に重要なのは、議会との関係で何が起きるかということです。
彼は議会のコンセンサスを得ることができるのか、彼は議会共和党をまとめあげることができるのか。政権の不安定さとコミュニケ―ションにおける問題、政策の選択に関してはっきりとしたガイダンスを提示する人がいないという事実は、共和党が多数派を占める議会が彼らの政策目標を成し遂げられないということを意味するのか、などなど。こういった疑問はこれから明らかになっていくと思いますが、政権全体としては現時点で7点はつけられるのではないでしょうか。
—個別の政策についてもう少し詳しく教えてください。足元を見ると、オバマケアの撤廃と置き換えに時間がかかっているように見えます。
リーバー:オバマケアはコンセンサスがまだないため、大きな試練に直面しています。ただ、厄介な状況にはありますが、代替案がコンセンサスを得られる可能性もあり、私としては外部から見るほど悪い状況ではないと思っています。次の2~3週間で撤廃・置き換え法案は下院を通過すると思います。上院は下院とは選挙区などで事情が異なりますので、もう少し時間がかかるでしょう。
国境調整は通せないが、法人税25%減は可能
—トランプ大統領が公約している大規模減税はどうでしょう。トランプ大統領は法人税15%、ライアン下院議長は20%の実現を目指しています。

リーバー:両者の数字は大きすぎると思います。今の35%という法人税を考えた時に、1%の法人税が下がるごとに10年間で1200億ドルの税収を失います。仮に法人税20%とすれば1.8兆ドルですよ。これは大きすぎる。ただ25%程度であれば十分に達成可能な数字だと思います。共和党には財政赤字を心配しているメンバーもいますが、この辺であれば達成可能でしょう。それでもトランプ大統領の政治的勝利になると思います。
—ライアン下院議長など下院共和党の執行部が提唱している国境調整なしでも大規模減税は実現するでしょうか。
リーバー:まず国境調整が議会を通る可能性は低いと思います。共和党の議員は国境調整をガソリン税、つまり消費者に対する新たな課税、あるいは彼らが最も嫌忌する新たな関税と見なし始めていますので、本当に難しい作業になると思います。確かに、国境調整が導入されれば大幅な減税が可能になりますが、25%でも十分に勝利だと言えますので、それ以上税率を引き下げる必要はないと思います。
国境調整がなくても、トランプ政権は政府債務の拡大を通して減税を実現させると思います。確かに共和党には、とりわけ下院には財政赤字の拡大に制限をかけたいと考える財政タカ派がいます。一方で、減税をまず実行して、その後に財政支出の削減を実行するという順序でもいいと考えている共和党議員もたくさんいますので。
—インフラ投資はどうでしょう。トランプ大統領は熱心ですが、議会共和党は前向きとは言えないようです。
リーバー:トランプ政権が掲げている政策の中で、インフラ投資の優先順位はかなり後ろの方だと思います。とりわけ議会はインフラ投資に関心がありません。
トランプ大統領は国境の壁、国防費の増額、インフラ投資という大規模な支出を伴う3つの政策を訴えています。私は物理的な壁ではなく、国境警備のための支出は可能だと思っています。10%の増額は無理だと思いますが、国防費の増額も可能でしょう。ただ、インフラ投資は難しいと思います。仮に実現するとすれば、連邦政府の巨額支出ではなく、税制上のインセンティブを民間企業に与えるというものだと思います。
市場のインフラ投資への期待は過大だ
—インフラ投資に対する市場の期待は大きいと思いますが…。
リーバー:市場は過大評価していると思います。小さなインフラ投資、そして穏当なサイズの減税になる可能性が高いのではないでしょうか。
—最後に、貿易についてはどうでしょう。「国境調整は難しい」という話ですが、NAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉など企業にとって懸念材料はいろいろとあります。
リーバー:議会の共和党議員はNAFTAを支持していると思いますよ。彼らは自身の州にとってNAFTAは効果的だと思っていますし、北米の統合されたサプライチェーンの価値を認めています。実際、NAFTAに依存した仕事はかなりありますし。そういった現実がトランプ政権の動きを縛ると思っています。
既に、ウィルバー・ロス商務長官はNAFTAの改善点についてビジョンを述べています。電子商取引に関わる項目を入れたり、原産地規則を見直したり、恐らく為替操作に関する拘束力のある文言も入れたいと思っているでしょう。また、トランプ政権はメキシコに対して労働法や環境法の改善を求めています。そのあたりがネゴシエーションのベースになると考えています。
メキシコは米国の要望に対応しようとすると思います。輸出の8割が米国向けと、彼らは米国に大きく依存しています。もちろん、国境の壁の費用は払わないでしょう。関税の引き上げも米国が主張すれば容認するとは思いますが、米議会もそれを望んでいませんので、そこまではしないと思います。ただ、メキシコは米国の要求をほとんど容認する可能性が高いとみています。
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『日本の安全保障のカギを握るP-3C哨戒機の輸出』(3/16日経ビジネスオンライン 長尾賢)について
3/18日経朝刊<中国の資本規制、日本企業に影 海外送金ストップ続出
中国の通貨である人民元と外貨の双方で国境をまたぐ取引を抑える中国の資本規制が、日本企業の活動に影を落とし始めた。現地事業の売却代金を受け取れなかったり、日本への送金が止まったりする例が続出。ごく一般的な資金管理すら難しくなっている。中国は2016年に円換算で30兆円超が国外に流れた。当面は規制を優先せざるを得ず、習近平政権が掲げる人民元の国際化は揺らいでいる。
アサヒグループホールディングスは16年末、子会社である山東省の農業会社と牛乳製販会社を現地の乳業大手に売却した。売却額は日本円で約十数億円。しかし国境をまたいだ送金の規制が強化されたため、代金は3カ月近くたったいまでもアサヒの日本の口座には届いていない。
現地乳業大手は支払う意思は示しているが、現時点では送金の手立てがないという。アサヒは「弁護士らと相談しながら粛々と手続きを進めていく」というものの、着金には時間がかかりそう。大規模なM&A(合併・買収)を通じ、世界市場での事業再編成を進めるアサヒにとって、山東省の件は影響は小さいが、想定外の中国の資本規制にとまどいを隠さない。
深刻な例もある。「当局の許可がおりず、送金できない」。コンデンサーやプリント回路を手掛けるエルナーは16年12月、資本提携で合意していた中国企業からこんな連絡を受けた。
エルナーは財務内容の改善と中国事業の強化に道筋をつける目的で、中国企業への第三者割当増資で資金を調達する計画だった。しかし、増資は失効。経営戦略の練り直しを迫られている。
人民元を取り巻く環境が急変したのは15年8月。中国人民銀行(中央銀行)は突如、元を「過大評価されている」として切り下げに踏み切った。当時1ドル=6.1元台だったが、3日にわたる切り下げによって6.4元まで下落した。一定の範囲で値動きを認める「管理変動相場制」を導入した05年以降、元は初めて大きく下落した。
唐突な切り下げは「元は今後も値下がりする」との疑念につながり、元安と資金流出が止まらなくなった。人民銀はドル売り・元買いの為替介入で外貨準備をすり減らすなかで、規制の強化によって強引に資金流出の食い止めに動いた。
徐々に強化されてきた資本規制だが、16年末に「一線を越えた」(大手銀行)。500万ドル(約5億7千万円)以上の海外投資は当局の事前審査が必要になり、銀行の外貨両替や元の海外送金を制限した。「外貨と元の両方で規制がかかり、一気に厳しくなった」(外国銀行幹部)。中国から日本への海外送金も滞るようになった。
「とにかく待ってください」。ある商社は中国拠点から数億円の資金を日本に送ろうとしたが、銀行にこう告げられた。重工大手の中国拠点は、日本の親会社から調達した数億円相当の部品代金を支払えなかった。三菱電機は中国子会社の送金で外貨への切り替えなどを検討。TDKは中国事業の余資送金で、銀行や通貨当局に手続きに必要な時間を確認しているようだ。リスク管理で子会社に必要以上の資金を持たせないという経営管理すら難しい。
「経常項目は制限していない」。人民銀の周小川総裁は10日の記者会見でこう述べた。貿易取引の決済や配当金の支払いなどは規制の対象外だと明言した。銀行の審査を通れば資金をやり取りできるはずだが、実際には当局の窓口指導で銀行は慎重。「16年末以来、海外送金で支障をきたした企業は数十社にとどまらない」(銀行関係者)
中国で事業展開する外資系銀行は、送金額や時期について取引先の企業と調整を始めた。ヤマは6~8月で、中国現法による親会社への配当支払いがラッシュを迎える。ある銀行幹部は「現行の規制は外貨の方がまだ送金しやすい。経費増になるかもしれないが、外貨に両替したうえでの送金を頼むしかない」とあきらめた表情で語った。
中国は銀行金利の自由化など金融規制を少しずつ緩和してきた。国際通貨基金(IMF)が15年に仮想通貨、特別引き出し権(SDR)への組み入れを認めたのも自由化の努力が底流にあった。
だが、16年は貿易決済に占める人民元の比率が15年の26%から18%に低下。銀行間決済も2.3%だった世界シェアは1.7%になった。元の信認低下は数字にはっきり表れているだけでなく、中国の事業環境の評価を損ねかねないところまで来ている。(上海=張勇祥)>(以上)
中国の資金の海外流出が止まらないため、強引に規制をかけている実態が明らかになってきました。人民元をSDRの通貨バスケットに組み入れたラガルドIMF専務理事の力量は問われても良いのでは。こういう展開になることは予想されていました。2001年に中国はWTOに加盟しましたが、違反が多く、パネルに訴えられてばかり。尖閣問題時の報復としてのレアアース輸出規制もそう。南シナ海の国際裁判所の判決も「紙屑」と言い切る国ですから。国際ルールはハナから守るつもりはありません。それは白人が作ったルールで「中華思想」と相いれないためです。利用できるところは利用するというスタンスでしょう。
中国は進出企業に対し、利益が出ても現金を中国国内において再投資させようと誘導します。ただ、配当とロイヤルテイは海外へ送金できます。しかし、合弁企業であれば「董事(=取締役)全員一致の原則」があり、中国側は再投資させようとしますので配当の海外送金は難しいです。
日本企業の中国からの撤退も難しくなってきた感じです。まあ、中国人ですからのらりくらり払わないで逃げ切るつもりでしょう。中国へ進出した企業の授業料でしょう。日本を侵略しようとしている国を経済的に支援してきた訳ですから自業自得と言えます。人口の多さに幻惑され、儲けるつもりで出て行っても、悪辣な中国人が簡単に儲けさせてくれる筈がありません。本社の役員は、自分が中国での仕事の経験がないため、日本国内と同じ判断をします。中国の問題を言うと「人種差別主義者」のレッテルを貼り、物を言えなくしたりします。愚かな人達です。その咎めが出てきたという事でしょう。
さて、本記事ですが、小生が先月旅行に行ったスリランカの記事です。スリランカは親日国ですが、本記事にある通り、中国がどんどん進出してきています。特に前大統領は中国から賄賂を貰った疑いがあります。中国お得意の戦術ですから。コロンボ港の99年租借なんて前にも書きましたが李鴻章の為した香港租借と同じではないですか。99=久久=永遠の意味です。中国語の発音がjiu3で同じですので。スリランカはまだまだ貧しく、外国からの投資と技術援助を欲しがっています。騙すことが当り前の中国に技術支援するなら、スリランカにした方が良い。国民はキチンと感謝してくれます。中国と違う大きな点です。
http://biz-journal.jp/2016/06/post_15498.html
インド洋を中国の海にしないためにもインド、スリランカとの協力は必要です。P3-C哨戒機の中古を売ることで結びつきが深まれば、こんなに嬉しいことはありません。
記事
日本とインドの間で今月、外務・防衛当局の審議官が話し合う「2プラス2」が開かれた。そこで話し合われたかもしれない議題が、P-3C哨戒機の中古6機をスリランカへ輸出する件だ。実はこの話は、日本の安全保障に大きな影響を与えるかもしれない潜在性を持っている。3つ理由がある。中国対策に有効で、日米印連携を深めるのにも好都合。そして日本の防衛装備品輸出にとってカギになる可能性が高いからだ。

海上自衛隊が運営するP-3C哨戒機
中国対策に有効
まず、スリランカへの防衛装備品輸出を今、実現することは、中国の海洋進出に対抗する上で大きな意義がある。中国は昨今、インド洋へ潜水艦を活発に派遣している。昨年は3か月平均で4回程度確認された。
中国は2016年11月、バングラデシュに潜水艦を2隻輸出した。パキスタンへは8隻の輸出を決めている。さらにパキスタンが原子力潜水艦を保有する計画も支援する可能性が出ている。潜水艦の輸出は、中国の軍人がインストラクターとして輸出先に常駐する状態を生むから、中国軍の存在感と情報収集能力が高まっていくだろう。
さらに、中国はインド洋で大規模な港湾建設計画を進めている。いわゆる「真珠の首飾り戦略」と呼ばれる中国の商業港開発計画だ。インドの国土の周りに真珠の首飾りをかけたかのような位置に港湾を建設している。表向きは商業港だが、中国の軍艦が補給や整備するのに使えば、海軍拠点として機能する(図1)。

図1:スリランカ・コロンボ港における中国の港湾開発光景(撮影:筆者)
中国のインド洋進出は日本にとって問題だ。インド洋には、日本のシーレーンが通っている。中東から石油を運ぶ海のルートだ。今、日本の電力は火力に大きく依存している。石油が必要なのだ。輸入する石油の9割近くを中東から輸入する日本にとって、インド洋の安全保障はますます重要性を増している。そこに中国の潜水艦がいて、「日本のシーレーンを守ってやっているのだ。だから日本は中国に感謝して、中国の政策にもっと配慮しろ」と迫ってくるかもしれない状況が近づきつつある。
だから、理想を言えば、日本も海上自衛隊をインド洋に常駐させて存在感を示さなくてはならない。実際2001年以来、海上自衛隊はインド洋に展開し続けている。しかし、海上自衛隊の努力にも限界がある。海上自衛隊は日本海、東シナ海、南シナ海でも仕事があるからだ。
ではどうしたらいいか。やはり現地の国の協力が必要だ。そこで、インド洋における安全保障上の要衝、インド洋の真ん中にある島国、スリランカに注目するのである(図2)。実は過去から、日本はスリランカに注目してきた。
第1次世界大戦では、日本海軍は総力を挙げてシーレーン防衛に当たった。その一環としてインド洋にも大規模展開した。第二次世界大戦では、日本は空母機動部隊を派遣してスリランカ沖で英空母を撃沈した。戦後も、スリランカ内戦の和平に尽力してきた。スリランカに寄港した海上自衛隊の艦艇数は2011年4月から2016年6月までに22隻に及ぶ。報道によれば2017年夏に、ヘリ空母「いずも」もスリランカに寄港する予定だ(注1)
現在は、2隻の巡視艇を輸出する計画が進んでいる。日本はスリランカの重要性に気付いてきたのだ。だから、スリランカに哨戒機6機を輸出して、その訓練などに当たるための自衛官も常駐させて、インド洋における海洋の状況把握に当たることを検討している。すぐれた計画である。
(注1) Tim Kelly and Nobuhiro Kubo, “Exclusive: Japan plans to send largest warship to South China Sea, sources say” (Reuters, March 13, 2017)

図2:スリランカの位置
しかも今、チャンスが訪れている。スリランカの雰囲気が、日本にとって追い風なのだ。スリランカでは内戦が終わり、外を見る傾向が出始めている。インド洋の海洋安全保障に対する関心が高まっているのだ。また、中国に依存してきた政権が倒れ、新しい政権が誕生した。新しい政権は日本や米国、インドとの関係をより重視している(関連記事「佐川急便がスリランカの会社を買収した理由」)。しかも、あるショッキングな事件が起きた。
中国が今年1月、スリランカ南部で建設を進めるハンバントタ港の運営権99年分を手に入れたというのである。この話を聞いた現地のスリランカ人は、怒り始めた。これでは植民地と同じではないか、と。結果として、中国のイメージが地に落ちている。スリランカが中国へ依存することは警戒すべきであると、スリランカ人を説得し、中国海軍の海洋進出対策を進めるチャンスが巡ってきたわけだ(注)。
(注)筆者自身も努力中である。スリランカ国防省で2月、日本と組むよう講演した。以下は、その講演について報じたインド紙とスリランカ国防省のページ。スリランカ紙にも報道があった。
(新聞記事) P.K.Balachandran, “Japanese expert says Sri Lanka should befriend India and Japan to counter China”, The New Indian Express, 16 February 2017 (スリランカ国防省の掲載ページ)
日米印連携のチャンスになる
スリランカへの中古P-3C輸出が、日本の安全保障に大きな影響を与える可能性がある理由の第2は、この計画が日本だけでなく、米国とインドを巻き込んだ計画になるからだ。
もともとP-3Cは、米国が開発した防衛装備品である。だから、日本がスリランカに中古機を輸出する場合は、米国の国務省と国防省の許可がいるはずだ。
また、南アジアで何かする場合、南アジアに縄張り意識を持つ国の存在を忘れてはならない。インドだ。かつて日本がスリランカ内戦を和平に導く仲介役となったとき、インドは日本の意図を警戒した。スリランカへ防衛装備品を輸出する場合、当然、インドへの配慮が欠かせない(関連記事「動き出した「日本のインド洋戦略」)。
だから、スリランカへの中古P-3C輸出は必然的に日米印3か国が協力する事例になる。良い意味でこの状況を利用すればいい。
例えば、インド軍は対潜水艦用の哨戒機として米国製の哨戒機を使っている。米国はもちろん米国製の哨戒機である。日本は国産と米国製の哨戒機の2機種だ。だから、3か国と、同じ米国の系統の装備を利用している。情報の共有などが、やりやすいはずだ。だとすれば、スリランカに輸出した中古P-3Cが収集した情報を、日米印で共有するシステムを開発し、日米印・スリランカで海洋安全保障連携を積極的に進めることができるはずである。こうした連携で日米印の連携が深まれば、3か国のパワーは中国を圧倒する力をもつ可能性がある。
日本の防衛装備品輸出のカギになる
さらに、スリランカへ中古P-3Cを輸出した後、他の国々への輸出が続く可能性がある。中古P-3Cの輸出は、日本にとって数少ない有利な取引だからだ。その理由は3つある。
まず、中古であれば価格を抑えられる点だ。日本が開発する防衛装備品は価格が高い。例えば、インドと現在、輸出の交渉を進めているUS-2救難飛行艇は1機100億円といわれる。このような高額の防衛装備品を途上国に輸出しようとしても、当然、取引が成立しない。しかし、中古の装備品であれば、価格を抑えることができる。
次に、十分な数がそろう点である。日本は過去、P-3C哨戒機を100機ほど保有し、現在でも66機保有している。しかもこれらの装備は更新期に入り始めており、日本は新しい国産のP-1哨戒機への切り替えを図っているところだ。だから、最終的には66機すべてが中古P-3Cとして輸出できる可能性がある。
日本はかつて、P-3Cをフィリピンに輸出することを検討したことがある。スリランカに6機輸出する案が実現すれば、他の国に輸出する前例となり、より多くの国との協力関係につながる可能性がある。
最後に、中古P-3Cの輸出は、日本国内で政治的に問題になり難いことだ。防衛装備品の輸出は、日本にとって新しい分野。政府だけでなく国民も慣れていない。そのため、輸出した装備品が相手国の紛争で使用され人を殺傷する事件などが起きると、日本で問題視されるかもしれない。しかし、哨戒機は海洋監視に使用するもの。紛争に使われる可能性は他の装備品より低い。
カギを握る哨戒機輸出
つまりスリランカに哨戒機を輸出する案は、中国の海洋進出に対する対策として有効。日米印との連携を促進するため太平洋・インド洋全域に及ぶ協力につながる可能性がある。さらに、日本の国内事情にも合致した、かなり可能性のある輸出案件である。積極的に進め、今後増えるであろう同種の取引の典型的事例にすることが期待される。
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