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『メルケルを脅かすSPDの「シュルツ旋風」 ポピュリズム台頭に対抗するドイツ』(3/23日経ビジネスオンライン 熊谷徹)、『EUは危機打開の第1関門を通過したけれど 「極右ポピュリズム」のドミノ倒しは防げたか』(3/22日経ビジネスオンライン 岡部直明)について
欧州は米国と違い、日本国内ではあまり関心がないのではと思います。文化芸術の部分では米国より遙かに優れたものの蓄積があり、旅行へ行くのでしたら欧州へという日本人は多いと思いますが。
本記事を読みますと、ドイツでは欧州統一派のシュルツがドイツ優先主義(?)のメルケルを破るかも知れないという事のように思えます。メルケルはトランプのアメリカ・ファースト政策を批判していますが、彼女はEUの統一通貨ユーロのお蔭で、強いマルクの代わりに、ユーロ使用の欧州各国にドイツ製品を輸出して、経済的にドイツの独り勝ちの状況を作り出してきました。ギリシャ救済でも緊縮財政を要請して支援を渋る所なぞ、トランプを批判できないのでは。欧州全体の利益よりドイツ人の価値観を押し付けている形でしょう。それはそうです。各国話す言葉が違うし、伝統文化が違うものを無理やり、一つにしようとしても国民が受け入れないでしょう。欧州で反EU、反移民の嵐が吹いていますのは、グローバリズムというフィクションに国民が反旗を翻している構図です。
シュレーダーのアゲンダ2010は誤りだったというのは、端的に言えばグローバリズムが誤りだったという事でしょう。「雇用市場改革プログラム」は労働者の地位を低下させ、経営者のみが富む状況であれば、国民が犠牲になるだけです。ビル・クリントンの政策が会社の利益の90%を株主に還元することを始めてから、世界的に貧富の差が拡大したと思われます。日本の経営者は横並びが好きで、よそがやっているからウチもとなり、労働市場も自由化して、非正規労働者を増やしてきました。非正規労働者が増えれば生活が苦しくなり、結婚もできず、少子化に拍車をかけます。グローバリズムのやり方を真似したことが日本の社会に歪みを齎しました。今は労働力が足りなくなってきており、非正規労働者を正規に切り替える動きが出てきています。やっとまともになってきました。
大学でもグローバリズムの美名のもとに、中国人が爆留学してきているとのこと。3/26TV“バンキシャ”の中の「モクゲキシャ! (ニュース)」で紹介していました。概要が下記のように纏められています。世界の大学ランキングで北京大学とか清華大学とかが東大より上との解説がありましたが、週刊朝日の記事が事情をキチンと説明しています。『北京大を卒業し、東大大学院博士課程に在籍する朱偉(仮名・26歳)の回答はこうだ。「北京大が東大よりもランキング上位? そんなの中国人は誰も信じないですよ。そもそもイギリスの会社が発表したランキングで、評価基準は曖昧で欧米有利。教授の英語論文の数では日本が不利なのは当たり前だし、英語で学位が取れるコースも日本はもともと少ない。でも、少なくとも教授の質という点で東大はアジアでナンバーワンだと自分は思います。少なくとも北京大学を卒業し、アジアでの進学を考えるなら、香港大やシンガポール国立大よりも東大に行きたいと望むはずです」』と。自由のない国が学問の自由を認める訳がないのに、北京や清華大学を日本の大学より上のランクにするのはおかしいでしょう。ですから、日本の大学は外国人の入学枠を設け、制限しないと。長く税金を納めて来なかった外国人の子弟を試験だけで入学させるのは納得いきません。また中国人の研究は中国に帰れば、軍事目的に利用されます。日本学術会議の軍事研究はしないというのはおかしいでしょう。また、日本を侵略しようとする国にメリットを与えて放置するのは、愚かなことです。在日が東大や京大で研究したものが核ミサイル開発に利用されたのは有名な話です。日本人は自分以外のことにももっと関心を持つべきですし、メデイアのいう事をもっと疑ってかかるべきです。
<昨年度、東京大学や早稲田大学では外国人入学生が過去最多を記録、そのおよそ半数を中国の入学生が占めていた。1月、成田空港の到着ロビーでは男性が日本の大学を目指す中国からの受験生31人を待っていた。3月10日に合格発表が行われ今年は3012人が難関を突破した。日本にやってくる外国人留学生は増え続けている。来日した受験生が通うのは中国人専用の名校志向塾であった。中国人女性は「競争もそんなに厳しくないので日本にきてよかった」などと話した。
朱光耀さんは一昨年日本へやってきた。月20万円の仕送りを受け寮で暮らしている。朱光耀さんは「北京大学とか定員数がかなり限られていて、なかなか入れない」などと話した。中国では大学のある地域に戸籍を持つ受験生が優遇されるなど、過酷な入試制度が敷かれている。北京大学の場合去年の新入生3425人で特別枠で2027人。一般入試の受け入れは1398人だった。この一般枠も地域ごとに何人合格できるか決まっている。
上海から来た蔡蘊多さん。取材した日は1か月半ぶりの外出。蔡蘊多さんは高校生のときに日本に1年間留学していた。その時に日本の高校生の英語力が酷くて驚いた、中国だと小学校で習う内容だという。蔡蘊多さんは地方出身のハンデがのしかかり、得意な日本語をいかし東大を目指そうと決意した。中国では学歴で人を見極める社会だという。
園田茂人は「江蘇省で北京大に落ちた子と北京市で受かった子では落ちたこの方が頭がいいかもしれない。そういう子たちが東京大学の研究・教育全体の水準をあげてくれればハッピーなこと」などと話した。
東京大学の合格発表の日。蔡蘊多さんは不合格だった。しかし蔡蘊多さんは早稲田、慶応、一橋に合格していた。蔡蘊多さん「中国にいると一橋大学レベルの中国の大学には絶対に入れない」などと話した。>(以上)
http://www.news24.jp/articles/2017/03/06/07355783.html
https://dot.asahi.com/wa/2016120700209.html
本記事で、ルッテが勝ったとありますが、議席数を減らしておいて勝ったというのはおかしいでしょう。印象操作の一つです。オランダ自由党は議席数を増やしたのですから、自由党勝利と言っても良い。ドイツの選挙の前に仏大統領選がありますのでそちらに注目したいと思います。ルペンとマクロンの争いと言われていますが、どちらに転ぶかは分かりません。
熊谷記事

SPDの党大会で挨拶するシュルツ氏(写真:ロイター/アフロ)
9月に連邦議会選挙が行われるドイツ。この国の政治のダイナミズムを象徴する現象が今起きている。左派勢力のカムバックは、欧米を覆いつつある右派ポピュリズムの暗雲に対するドイツの回答だ。
3月19日、社会民主党(SPD)はベルリンで臨時党大会を開催した。最も重要な議題は、党首の正式な選出である。最も有力な党首候補は、欧州議会の議長だったマルティン・シュルツ(61歳)。1月末にジグマー・ガブリエルが党首の座を退き、シュルツが事実上内定していた。
得票率100%で党首に
この党大会で、驚くべきことが起きた。有効票を投じた605人の代議員の全員が、シュルツを党首に選んだのだ。SPDの153年の歴史の中で、党首が100%の得票率で選ばれたのは、今回が初めて。
シュルツは満面の笑みをたたえて「この投票結果は、我々が連邦首相府を制覇するという堅い意志の表れだ」と獅子吼。党員たちは座席から立ち上がり、スタンディング・オベーションを送った。年配の女性党員は「全員が立ち上がって党首に拍手を送ったのは、ヴィリー・ブラントが1964年に党首に選ばれた時以来ではないかしら」と感慨深げに語った。
シュルツ登場でSPDの人気が急上昇
いまSPDは、熱い興奮に包まれている。10年以上にわたり低迷を続けた同党が、シュルツの登場以来、猛然たる巻き返しに転じたのだ。SPDによると、今年1月以降、約1万人の市民が新たにSPDの党員になった。この「シュルツ現象」の勢いにはドイツの政治ジャーナリストだけではなく、SPDの幹部たち自身も目を丸くしている。
シュルツ現象のダイナミズムは、ここ数カ月間の世論調査の結果にはっきり表れている。公共放送局ARDが3月9日に行った調査によると、SPDの支持率は1ヶ月前の調査に比べて3ポイント増えて31%となった。今年1月に比べるとほぼ10ポイントの上昇である。
SPDはメルケルが率いるキリスト教民主・社会同盟=CDU・CSU(32%)に肉迫している。もしもSPDが左翼党(リンケ)、緑の党と連立すれば47%になり、CDU・CSUを大幅に上回る。
メルケルは2015年に89万人のシリア難民を受け入れたことをめぐり、保守勢力から厳しく批判され、支持率が低下している。ARDが実施した世論調査によると、回答者の55%が「メルケル政権の仕事ぶりに不満だ」もしくは「やや不満だ」と答えている。
左派連立政権が誕生する可能性
保守派に属するドイツ人の間では、「メルケルの政策があまりにも左傾化している」として疎外感を抱く人が増えている。このためCDU・CSUは、反EUと反イスラムを旗印に掲げる右派ポピュリスト政党「AfD(ドイツのための選択肢)」に支持者を奪われつつある。メルケルにとって最大の脅威は、これまでAfDだと考えられてきた。
しかし今年1月に突如巻き起こったシュルツ旋風も、メルケルが無視することのできない重大な脅威となりつつある。つまり、シュルツを首班とするSPD+リンケ+緑の党の「赤・赤・緑連立政権」の誕生が、急激に現実味を帯びてきたのだ。
ARDが2月初めに行った世論調査によると、「もしも首相を直接選ぶとしたら、シュルツを選ぶ」と答えた回答者は50%に達し、メルケルへの支持率(34%)を上回った。
ドイツ政党支持率調査(2017年3月9日)

資料・ARD
「アゲンダ2010は誤りだった」
なぜシュルツの人気は高いのだろうか。彼はベルリンでの党大会で「社会的公正を実現するとともに教育と家庭を重視し、労働組合との結束を強める」と宣言したが、具体的な政策はまだ提示していない。詳細は今年6月の党大会で発表する予定だ。
だがすでにはっきりしていることは、彼が社会保障を重視するSPD左派に属することだ。つまりシュルツは、1998年以来SPDを支配してきた、シュレーダー、ガブリエルという財界寄りもしくは実務派の政治家とは、一線を画す人物なのである。ある意味では、SPDが「労働者と社会的弱者を守る」という伝統路線に戻ろうとしていることを示している。そのことが、多くの党員を熱狂させているのだ。
シュルツは今年2月に、かつてSPDの党首だったゲアハルト・シュレーダーが断行した雇用市場改革プログラムを修正し、富の再配分を強化する方針を明らかにしている。2003年に実施されたこの改革は、戦後ドイツの雇用市場・社会保障制度に最も深くメスを入れた。
「アゲンダ2010」と呼ばれるこの改革で、シュレーダーは失業者に対する国の給付金を切り詰め、長期失業者の数を大幅に削減することに成功した。さらに彼は社会保障サービスの切り詰めによる労働コストの削減、人材派遣業の規制緩和など、企業の利益を増大させる政策を次々に打ち出した。この政策は、財界だけではなくCDU・CSUからも高い評価を受けた。メルケルは、2005年に首相に就任した時に、アゲンダ2010について、シュレーダーに感謝の言葉を送ったほどだ。
2009年にユーロ危機が表面化した後も、ドイツ経済が絶好調であった理由の一つは、シュレーダー改革によって、労働コストの伸び率を他国に比べて低く抑えることに成功したからだ。
だがシュルツは、「ドイツでは所得格差が拡大する一方で、不安定な仕事しか持てない人が増えている。これは、社会の主流派が過去に犯した過ちがもたらした結果だ。我が党も過ちを犯した。だが我々はそのことに気づき、過ちを修正しつつある」と述べた。
つまり、彼は「アゲンダ2010」が過ちだったとして、この改革プログラムを批判したのだ。
社会保障の拡充による富の再配分を
特にシュルツは、中高年の失業者向け援助金の支給期間を延長する方針を打ち出した。なぜ彼は、この点を問題視しているのか。
シュレーダー改革以前のドイツには、Arbeitslosengeld (失業者給付金)とArbeitslosenhilfe(失業者援助金)という2つの援助金があった。前者は税引き前の年収(上限6万2000ユーロ)から社会保険料と税金を引いた額の60%~67%を、最長32カ月支給した。また後者は、失業者給付金の支給期間が過ぎた後に、手取り所得の53%~57%を支給。その期間は、無期限だった。
シュレーダーは「失業者への援助が手厚すぎるので、賃金の低い仕事に就きたがらず、失業者でいる方が良いと考える人が多い」として、このシステムを廃止。これらに代えて、Arbeitslosengeld(第一次失業者給付金)とArbeitslosengeld II(第二次失業者給付金)という2つの給付金を導入した。
前者は、税引き前の年収から社会保険料と税金を引いた額の60~67%を支給するもの。この点は変わらないが、シュレーダーはその支給期間を18カ月に短縮した。以前のシステムに比べて14カ月も短い。
18カ月が過ぎると、失業者は第二次失業者給付金を受け取ることになる。その金額は当初西独で毎月345ユーロ(4万1400円・1ユーロ=120円換算)、東独では月331ユーロ(3万9720円)と定められた。これは、生活保護とほぼ同じ水準である。多くの年配の勤労者が、失業して1年半経つと生活保護並みに低い援助金しかもらえなくなったのである。これは多くの失業者にとって、屈辱だった。
2005年に誕生したメルケル政権は、シュレーダー改革はあまりにも厳しいと考え、58歳以上の失業者に対する第一次失業者給付金の支給期間を24カ月に延長した。さらに第二次失業者給付金の金額も若干引き上げた。
シュレーダー改革は、企業に長年勤めた後に解雇された失業者も、ほとんど働いていない若年失業者と同じく、生活保護と同水準の援助金しかもらえないシステムを生み出した。このことは、特に中高年労働者のSPDに対する怒りを増幅させた。彼らは長年にわたり失業保険制度に保険料を払い込んできた。それゆえ、若年労働者と同じ扱いを受けるのは不当だと感じたのだ。
シュルツは、これらの政策が社会の不公平感を強めていると主張している。
さらに、期限付き雇用契約についても彼は批判の目を向けている。ドイツの雇用契約は、原則として無期限だった。シュレーダーが規制を緩和し、期限付きの雇用契約を締結しやすいようにした。シュルツは、企業が期限付きの雇用契約を締結できる条件を、これまでに比べて厳しくする方針を打ち出している。
アゲンダ2010はSPDに深い傷を与えた
ドイツの雇用統計を見ると、失業者数は2005年には486万人だったが、2012年には290万人に減った。だがその一方でシュレーダー改革は、低賃金労働者を増加させた。たとえばシュレーダーは、ミニジョブという制度を作り、企業に対し社会保険料の支払いを免除した。仕事の内容はオフィスの掃除など、低賃金の職種である。
だがミニジョブだけでは、給料の額が低すぎて生活できない市民が多い。このために第二次失業者給付金を受け取っていた市民の数は、2011年の時点で286万人に達した。彼らは国から援助金をもらっているものの、一応仕事を持っているので、雇用統計上は失業者とはカウントされない。シュレーダーが失業者数を大幅に減らすことに成功した陰には、こうした統計上のトリックがあった。つまりシュレーダー改革は、米国や日本と同様のワーキング・プアー問題をドイツにもたらしたのだ。
シュレーダー改革に対して、旧東独を中心に抗議の声が上がった。SPDは州議会選挙で次々に惨敗。SPD地方支部からは、シュレーダーを批判する声が高まった。労働組合も、彼に背中を向けた。シュレーダーは2005年の連邦議会選挙で敗北して、首相を辞職し政界を去った。1998年の連邦議会選挙におけるSPDの得票率は約40%だったが、2009年には23%に落ち込んだ。史上最低の得票率を記録することになった。
シュレーダー政権で財務大臣を務めたオスカー・ラフォンテ―ヌら党内の左派勢力はSPDを去り、「リンケ」を創設した。1990年にSPDの党員数は約94万人だったが、2012年には約半分の47万人に減少した。アゲンダ2010はドイツに未曽有の好景気をもたらしたが、SPDは満身創痍となった。
庶民派首相候補・シュルツ
シュレーダーがアゲンダ2010を実施して以降、CDU・CSUとSPDの政策が似通ってしまい、両党とも独自性が見えなくなった。
つまり、SPDが「アゲンダ2010」をはじめとするネオリベラル的な政策を取り始め、労働者ではなく企業を利する党に変質したとして、市民たちは落胆した。彼らは今、シュルツが登場し「アゲンダ2010を見直すことによって、SPDが以前の姿を取り戻す」ことに強い希望を抱いているのだ。これに対してCDU・CSUと経済界は「シュルツの政策はドイツの経済成長にブレーキをかけ、再び失業率を高めるだろう」と警告している。
社会保障を拡大することで富の再配分をめざすシュルツの路線は、CDU・CSUとSPDの政策の違いを多くの市民に見えやすいものにした。
シュルツの経歴は異色だ。彼は1955年に、オランダ国境に近い、ノルトライン・ヴェストファーレン州のヴュルゼレンという人口4万人足らずの町で、警察官の家庭の五男として生まれた。1966年にアーヘンの近くのギムナジウム(大学へ進学する準備をするための高等中学校)に入ったが、1974年に中退。大学などの高等教育を受ける道は閉ざされた。
このため彼は本屋の店員になるための実務教育を受け、出版社や書店に勤務。1982年から1994年まではヴュルゼレンで書店を経営していた。彼は1970年代に一時アルコール依存症となったが、克服して1980年からは断酒している。
彼は19歳の時にSPDに入党し、1984年にヴュルゼレン市議会の議員、1986年にはヴュルゼレンの市長を務めた。1994年には欧州議会選挙で初当選し、欧州議会の社会民主党議員団の院内総務などを歴任。2012年から今年1月までは、欧州議会の議長を務めた。
つまり、シュルツは23年間欧州議会に所属し、ドイツの州レベル、連邦レベルでは議員として活動したことが全くない。ドイツ国内の政争にもまれず、シュレーダーが2003年にアゲンダ2010を断行した時にも、この国の政界から離れていたことが、シュルツにとって幸いした。前党首ガブリエルの人気が高まらなかった理由の1つは、彼がアゲンダ2010を支持したために、党内の左派から常に冷ややかな目で見られていたことである。
つまりSPDはシュルツというドイツ国内政治の門外漢を迎えることによって初めて、アゲンダ2010の呪縛から解放されることができた。髭面のシュルツは大学を出ていないせいもあり、エリート臭さがない。むしろ町工場の経営者か食料品店の店主のような、庶民的な印象を与える。
同じSPDに属しながら、イタリアの高級紳士服「ブリオーニ」をまとい、葉巻をくゆらすのを好んだシュレーダーとは、全く毛色が異なる政治家なのだ。CDUに属するヴォルガング・ショイブレ財務大臣は、シュルツについて「左のポピュリストだ」と警戒心をむき出しにしている。
首相レースは振り出しに?
ドイツの保守系日刊紙フランクフルター・アルゲマイネ紙(FAZ)の記者ヤスパー・フォン・アルテンボックムは、3月20日付の社説で「シュルツが登場し、連邦首相の座をめぐる競争は振り出しに戻った」と述べた。彼は、去年12月まではほぼ確実と見られていたメルケル4選が、覆されるかもしれないと主張しているのだ。
政治の世界ではモメンタム(勢い)が重要な役割を果たす。2003年以来右に振れていたSPDの振り子は、今大きく左へ戻ろうとしている。この勢いを利用したシュルツが、メルケルを破って首相の座に就く可能性も否定できない。
9月の連邦議会選挙の動向を占うカギとなるのは、3月から順次行われる州議会選挙の結果だ。まずは3月26日にザールラント州で、5月14日にはノルトライン・ヴェストファーレン州で行われる。ドイツの政治が、ますます面白くなってきた。(文中敬称略)
岡部記事

オランダ下院選(定数150)の投開票が3月15日行われ、現職のマルク・ルッテ首相率いる与党・自由民主党が33議席を獲得し、現有の40議席から大きく減らしたものの、第1党を維持した。(写真:新華社/アフロ)
欧州連合(EU)の行方を左右すると見られていたオランダの下院選は、ウィルダース党首率いる極右ポピュリズム(大衆迎合主義)政党、自由党が伸び悩み、ルッテ首相率いる中道右派の自由民主党が第1党を維持した。英国のEU離脱、米国のトランプ大統領の登場で、世界にポピュリズムが蔓延するなかで、EUはともかく危機打開の第1関門は通過した。しかし、反EUの排外主義はEU全域に浸透しており、フランスの大統領選挙はなお予断を許さない。EUが危機打開できるかどうかは、EU自身が大胆な改革に踏み出せるかどうかにかかっている。
反面教師になったトランプ流排外主義
「オランダ国民は誤ったポピュリズムに待ったをかけた」。ルッテ首相はこう勝利宣言をした。自民党は議席を40から33に減らしたが、ともかく反イスラムを鮮明にする極右ポピュリズム政党・自由党の台頭に歯止めをかけたのは、勝利だったと言えるのだろう。英国のEU離脱、トランプ米大統領の誕生に連鎖する形で、オランダで極右ポピュリズム政党が第1党になれば、フランスの極右「国民戦線」を勢いづかせる恐れがあった。それはEUの今後に深刻な打撃を与えかねないところだった。投票率が80%を上回ったのをみても、オランダ国民の間に極右台頭への警戒感が強かったことを示している。
その背景にあったのは、トランプ米大統領が実践する排外主義をめぐる大混乱だろう。大統領令による移民排斥、難民受け入れ停止など保護主義を超えた排外主義は、米国の分裂を招いただけでなく、国際社会の批判にさらされた。そんななかで、「オランダのトランプ」と言われるウィルダース氏率いる自由党が第1党の座に就く危うさを、オランダ国民は感じていたのだろう。ウィルダース氏をはじめ欧州の極右勢力はトランプ大統領の登場を「次はわれわれの番だ」と大歓迎したが、トランプ流排外主義はオランダ国民にとって「反面教師」になったのである。
オランダの選択は時代の流れを変えるか
では、オランダ国民の選択はポピュリズムの世界的潮流を変えられるだろうか。小さな国ではあるが、先進国のオランダが時代の流れを変えたことはある。冷戦末期の1980年代はじめ、米ソ間の軍拡競争はピークに達していた。旧ソ連の中距離核ミサイルSS20配備に対抗して、米国の核ミサイルが西欧諸国に配備されるなかで、西欧には核危機への不安が高まっていた。西欧に反核運動が広がるなかで、オランダ政府は米核ミサイルの配備延期を決断する。
それは北大西洋条約機構(NATO)の一員として苦渋の決断だった。当時のルベルス・オランダ首相にインタビューしたが、狭い首相執務室で頭をかきむしる若き首相の姿をいまも思い浮かべる。
NATOの結束を乱す決断に西側で一時批判が高まったが、この小さな国の選択は世界を動かすことになる。米ソ緊張から米ソ・デタント(緊張緩和)へ、そして冷戦の終結へと時代は大きく転換することになる。
世界に蔓延するポピュリズムに対するオランダの選択もまた時代の流れを変えることになるだろうか。オランダ国民の選択がそれに続く仏独の国政選挙にどんな影響を及ぼすかにかかっている。
仏大統領選にどう響くか
オランダの選挙結果に、仏独を中心に欧州の首脳たちは祝意を表明した。メルケル独首相は「欧州人として協力を続けられるのが楽しみだ」と民主主義の勝利を素直に喜んだ。フランスのオランド大統領は「過激主義に対する明白な勝利だ」と述べた。国政選挙を控えて、極右ポピュリズムへの防波堤になってくれたことを歓迎した。
最大の焦点は、フランスの大統領選挙である。4月23日に第1回投票、5月7日に決選投票が実施されるが、いまのところ極右・国民戦線のルペン党首が先頭を走り、無所属でリベラル派のマクロン前経済相が追い上げる展開になっている。一方で、当初は有力とみられていた共和党のフィヨン元首相は、家族の不透明な給与問題で苦戦を強いられている。決戦投票では、ルペン氏とマクロン氏の対決が予想されるが、極右大統領の誕生を食い止めるため左派と右派が連携できるかどうかが注目点だ。
オランダ国民の選択がルペン陣営の足を引っ張るかどうかは別にして、ルペン陣営が隣国の極右政党の台頭という追い風を受けられなくなったのは間違いない。
もっとも、オランダ選挙でウィルダース氏率いる自由党は、第1党になれなかったとはいえ、議席を8から20に伸ばしている。当初の見積もりははずれたものの、議会で影響力を発揮できる地位を確保したともいえる。仏国民戦線のルペン党首は、この極右勢力の伸長に着目している。
少なくともEU諸国で極右ポピュリズムはなお影響力をもっているとみておくべきだろう。移民問題などでオランダのルッテ首相はウィルダース氏の主張を一部受け入れることによって、第1党の座を維持した面はある。そこに政権に影響を及ぼすポピュリズムの本質がある。
フランスの大統領選も英国のEU離脱とトランプ流排外主義の影響は大きいとみられる。トップを走るルペン候補が反EU、反ユーロを鮮明にしているだけに、英国のEU離脱交渉の展開は微妙な影響を及ぼすだろう。交渉の難航が避けられないうえに、スコットランドの独立機運など「英国の分裂」を招く事態になれば、仏国民も反EU、反ユーロの極右ポピュリズムを選択しにくくなるはずだ。
トランプ米政権が排外主義を強め、地球温暖化防止のためのパリ協定を離脱する事態になれば、トランプ大統領を歓迎してきたルペン候補の足を引っ張る可能性もある。
メルケル首相は4期目に入れるか
ドイツでも右派「ドイツのための選択肢」が勢力を拡大している。といっても、ドイツの場合、右派が政権の座に近づく可能性は皆無である。秋の総選挙でEUの盟主といえるメルケル首相が4期目を迎えられるかどうかが焦点である。
対抗馬と目されるのは連立を組む社会民主党の新党首、シュルツ前欧州議会議長である。ここにきて急速に支持率を高めている。メルケル、シュルツ氏ともに筋金入りのEU主義者だけに、EUを主導する姿勢には変わりはないだろう。シュルツ氏は内政経験がないのがアキレス腱だが、社民党が前に出れば、財政規律より成長戦略という現実路線が期待できるという見方もある。
しかし、英国のEU離脱とトランプ米大統領の排外主義のもとでEUを運営するには強力なリーダーシップが求められる。メルケル首相4選への期待は高まるだろう。
「2速度方式」でEUは再生できるか
EUは反EUのポピュリズムを乗り越えて統合を進化させられるかが問われている。ユンケルEU委員長は、英国のEU離脱を受けて2025年に向けての「欧州の将来に関する白書」を公表した。そこには統合をどう進化させるか5つのシナリオを提示している。第1は現状維持、第2は単一市場の完成、第3はEU域外の国境警備などに限定・集中、第4は2速度方式(統合を進めるのに熱心な加盟国はどんどん統合を進め、熱心でない国や現状では困難な国はゆっくりで構わないという方式)、第5は連邦主義的統合、である。
現状維持から「欧州合衆国」までかなり広い視野で統合を推進する姿勢である。EUの究極の目標であるはずの「欧州合衆国」構想を1つのシナリオと位置付けているのは、危機のなかで、EUも現実的選択を模索せざるをえなくなったことを示している。
この5つのシナリオのうち、ユンケルEU委員長やメルケル独首相はじめEU主要国の首脳が推しているのが2速度方式である。防衛、治安対策、税制などでの統合推進を念頭に置いている。
EUはもともと原加盟国と後発国、ユーロ加盟国と非加盟国、移動の自由を求めるシェンゲン協定加盟国と非加盟国など、2速度方式で運営されてきているが、これをさらに広げ徹底しようというものだ。
これは現実的選択にみえるが、この構想に後発組の旧東欧圏がはやくも強く反発している。27カ国の結束を維持しながら、統合を進化させられるかどうかが問われる。
とはいえ、EUが崩壊の危機にさらされているとみるのは悲観的すぎる。2度の世界大戦を経て創設され、冷戦終結で進化したこの平和の組織は簡単には崩壊しない。危機にあってこそEUの粘り強さに着目すべきだ。オランダ国民の選択は、そんなEU市民の粘り強さを示したといえる。
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『米国から「同盟国」と呼ばれなくなった韓国 「食事会なし」で韓国を離れた米国務長官』(3/23日経ビジネスオンライン 鈴置高史)、『韓国の米ミサイル配備に中国の不満(社説)』(3/23日経FT)について
テイラーソンの食事接待の問題は、嘘つき韓国の面目躍如たるものがあります。韓国は「所謂従軍慰安婦」と同じく、嘘をついてもその場が凌げれば良いという発想でしょう。米国は日本と違い、事実関係を追及して発表します。翻って我が国はすぐに謝ります。事実関係を無視してまでも。GHQの占領期間、彼らに媚び諂ってきたメデイアが未だ自虐史観によって立つ報道を続けますので、ネット情報を取れない人は、洗脳されたままその情報を安易に信じてしまいます。戦後の呪縛がまだまだ解けていません。
米国人もやっと韓国人が嘘をつく民族だというのに気付いてきているのでは。“Korean fatigue”と言う言葉が囁かれ出した頃から、日本人と朝鮮半島人は違うと気付いたはずです。「金三胖(=金王朝三代目のデブ)」の瀬戸際政策も米国にとっては許し難く、今迄問題解決してこなかった中国(というか米国攪乱の道具として放置してきた)にも怒りを覚え、従北に揺れる韓国にも呆れ返り、今回の接待問題で、同盟破棄の手前まで来ているのを分からせようとしたのでは。
同盟を破棄したとしても、米軍基地を置くこととは別問題です。THAADは配備したままにすると思います。“tripwire”の役目を果たすのでは。しかし、同盟破棄すれば間違いなく戦時作戦統帥権は韓国に返還されると思います。同盟破棄後、もし朝鮮半島で戦争が起きれば、米軍基地が襲われない限り、米国としては自動参戦せず、北と南で戦争するのを暫し眺めるという可能性もあります。核を北が使わない限り、放置するでしょう。米国が出なければ、中国も傍観するでしょう。その前に、米軍基地はかなり、縮小するのでは。その分を台湾に回せば良いでしょう。
FTの記事は、白人は中国人のことを殆ど理解していないと思います。歴史的に中国は外国製品ボイコットや暴力的デモを多用してきました。そもそも個人の基本的人権や民主主義について中共が国民に教えているとは思えません。個人が自由に生きる権利を制限していますので、中共の命令は絶対です。個人で動くにしても、中共の了解のもとに動かなければ、逮捕抑留されます。所詮共産主義国家、一党独裁国家です。自由主義諸国と社会構造の基本が全く違うという事を必ず思い起こして判断しないと間違います。習近平がダボスで「自由貿易を擁護」する発言をしたとのことですが、先ずは自国民に「言論の自由」を与えてから言ってほしいと思います。
日経ビジネスオンライン記事

尹炳世外相と臨んだ会見で、ティラーソン国務長官は厳しい表情を見せた(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)
(前回から読む)
米韓の間の外交的な亀裂が、傍目にも分かるほどに広がった。
岸田外相とは飯を食べたのに
鈴置:米国のティラーソン(Rex Tillerson)国務長官の訪韓で騒ぎが起きました。国務長官は3月15日からの訪日の後、17日にソウル入りしました。
米国は現在、THAAD(=サード、地上配備型ミサイル迎撃システム)の在韓米軍への配備を進めています。それを韓国が邪魔しないよう督励に来たのです。
マティス(James Mattis)国防長官らの訪韓と同様、対韓圧力の一環です(「米国のTHAADを巡る対韓圧力」参照)。
米国のTHAADを巡る対韓圧力
| 2016年 | |
| 12月20日 | 安全保障補佐官に内定のフリン元陸軍中将、訪米した韓国政府高官に「THAAD配備は米韓同盟の強固さの象徴」 |
| 2017年 | |
| 1月31日 | 訪韓を前にしたマティス国防長官、韓民求国防長官に電話し、THAAD配備を確認 |
| 2月2日 | マティス国防長官、訪韓し「北朝鮮の核の脅威が最優先課題」と表明、THAAD配備も再確認 |
| 3月1日 | マクスター安全保障補佐官と金寛鎮・国家安保室長、電話会談し「THAAD配備を再確認」 |
| 3月1日 | マティス、韓民求の米韓両国防長官、電話で会談しTHAAD配備を再確認 |
| 3月6日 | 米軍、THAADの一部機材を烏山空軍基地に搬入 |
| 3月17日 | 訪韓したティラーソン国務長官、会見で「韓国の次期政権もTHAADを支持することを期待する」 |
ティラーソン国務長官は翌18日に北京に向かいましたが、韓国政府の誰とも食事をしませんでした。これが騒ぎの発端です。
韓国各紙は「尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官が夕食に誘ったのに断られた」と一斉に書きました。
中央日報の「米国務長官、日本外相と1時間の夕食会、韓国では会談だけ」(3月18日、日本語版)から引用します。
- 予想されていた尹長官との夕食会がなかった。韓国側は今回の訪韓を契機に両国外相間のスキンシップ強化を内心望んでいた。
- このため外交部は当初、夕食会の日程を構想していたが、ティラーソン長官は個人の日程を消化するという立場だった。外交部は招待を断られる格好となった。
- ティラーソン長官は岸田外相とは3月16日午後5時40分から1時間ほど業務協議を兼ねて夕食会をした。
- 同長官は3月17日の晩、ナッパー(Marc Knapper)駐韓米国大使代理と食事をし、韓国の動向などについて報告を受けたという。
国務長官の「疲れ」のせいだ
—「差別された」と怒っているのですね。
鈴置:韓国人はどんなことでも「日本並み」の待遇を受けないと怒り出します。当然、この怒りを英語でも発信しました。
コリア・ヘラルド(The Korea Herald)はティラーソン訪韓のまとめ記事「US says ‘strategic patience’ on NK is over」(3月17日、英語)の最後でそれを訴えました。
- Tillerson spent almost 2 1/2 hours with Japanese Foreign Minister Kishida including a dinner, and another hour with Prime Minister Abe. But his meetings with Yun and Hwang were each confined to about an hour, without a lunch or dinner gathering. Seoul officials said the US side opted not to have a meal together, citing the secretary’s “fatigue.”
岸田外相とは夕食付きで2時間半も話したのに、尹外相とはたったの1時間。ランチも夕食もなかった――という恨み節です。
これだけなら「また韓国人がひがんでいるな」という話で終わったと思います。が、韓国の役人が言ったとされる「余計な一言」が問題に火を付けました。「食事なしはティラーソン長官の疲労のせい」との部分です。
米国の外交界には「韓国疲れ」(Korea Fatigue)という言葉があります。日本の足を引っ張ろうと韓国政府が「日本の首相を米議会で演説させるな」などと無理難題を言うようになったからです(「米国の『うんざり』が『嫌韓』に変わる時」参照)。
米国の外交担当者は一時は韓国人に会うのも嫌がるようになりました(「『アベの米議会演説阻止』で自爆した韓国」参照)。でも、今回の「疲れ」は肉体的な「疲労」です。
この記事を読んだ誰もが「それぐらいの体力がなくて米国の国務長官が務まるものか」と考えたことでしょう。さっそく、世界のメディアがこの記事を引用しました。
ワシントン政界に大きな影響力を持つ政治サイト「ザ・ヒル(The Hill)」は「Report: Tillerson cuts short South Korean Visit, citing ‘fatigue’」(3月17日、英語)と「疲労」を見出しにとりました。
訪韓のまとめ記事ですが「疲労のために訪韓日程をはしょった話」から書き起こしています。
韓国政府は嘘八百
—なぜ、韓国の役人は「疲れのせい」にしたのでしょうか。
鈴置:米国側の、それも不可抗力の理由にしておかないと「日本と比べ軽んじられた」との怒りが、自分たちに向くと思ったからでしょう。韓国の役人が本当にそう言ったとしての話ですが。
国務長官としての資質に疑問を付けられたティラーソン長官は、直ちに反論しました。3月18日、ソウルから北京に向かう機中で、ただ1社だけ長官搭乗機への同乗を許されたウェブメディア「インデペンデント・ジャーナル・レビュー」(IJR)の記者に以下のように語ったのです。
「Transcript: Independent Journal Review’s Sit-Down Interview with Secretary of State Rex Tillerson」(英語)から引用します。記者の初めの質問が「韓国紙は疲労から夕食会を断ったと報じているが、何があったのか?」で、それへの答えです。
- They never invited us for dinner, then at the last minute they realized that optically it wasn’t playing very well in public for them, so they put out a statement that we didn’t have dinner because I was tired.
ティラーソン長官は「私が夕食会を断ったのではない。韓国政府が招いてくれなかったのだ」と明言しました。さらには「それが明らかになると世論に悪い影響が出ると気がついた韓国政府が、私の疲労のせいにしたのだ」と言い切りました。
すると記者がすかさず「韓国側が嘘を言っているのですね?」と確認しました。それに対してティラーソン長官は「いや、状況を説明しただけだ」と答えました。
中国の顔色を見た韓国
—「状況を説明しただけ」ですか……。
鈴置:「韓国人が嘘つきと大声で言うつもりはないが、彼らの言っていることは嘘だ」ということです。
長官は自らの主張を補強するためでしょう、「政府高官の日程はホスト国が組むものだ」と付け加えています。
—どちらの言っていることが本当なのでしょうか。
鈴置:それに関しては「ヴァンダービルド」のペンネームで外交・安保に精力的に筆をふるう韓国の識者が考察を加えています。
崔甲済(チェ・カプチェ)ドットコムの「朴槿恵の最悪の失策は尹炳世の起用」(3月20日、韓国語)の一部を翻訳します。
- ティラーソン長官の主張が事実なら「尹炳世の外交部」の態度(思惑)を以下のように推定(仮定)しても無理筋ではない。
- 「中国はTHAAD配備に反対している。ティラーソン長官は配備を督励(強調)するために韓国に来た。その長官を我々(韓国外交部)が手厚くもてなせば、中国が不快に思うことだろう」
「ズボンが破れた」と言い訳
—「飯なし」は中国の顔色を見てのことだった、というのですね。
鈴置:十二分にあり得る話です。中国の反対を懸念して韓国外交部はTHAAD配備に消極的でした。朴槿恵政権内部でも、配備派の国防部と厳しく対立していました。
2016年7月8日、国防部は在韓米軍司令部と突然、「2017年末までの配備に合意した」と発表したのです。この時「尹炳世の外交部」は決定に「すねて見せる」パフォーマンスを敢行しました。
国防部の記者会見と同時刻に尹炳世長官は「ズボンが破れた」と称し、ソウル市内の百貨店の紳士服売り場でショッピングをして見せたのです(「『中国入り陣営寸前』で踏みとどまった」参照)。
外相として顔を出してもいい会見には出ず、敢えて衆目の中で買い物をする――。韓国では「私は配備に反対しました」との中国に対する言い訳だったと見なされました。
中国に気に入られるためなら、せこいパフォーマンスを平気でやる外相ということです。である以上は今回の「飯なし事件」の犯人も韓国側と見なされてもおかしくはありません。
安倍首相にも「飯なし」
—そう言えば、訪韓した安倍晋三首相に対しても「飯なし」でしたね。
鈴置:2015年11月、日中韓首脳会談に出席するため訪韓した安倍首相は朴槿恵(パク・クンヘ)大統領と2国間でも会談しました。が、食事には招待されませんでした。朴槿恵大統領は李克強首相に対しては晩さん会で歓迎しましたから、露骨な嫌がらせです。
どの国でもそうですが、ことに韓国では客に飯を出さないというのは異常なこと。当時、韓国では「いくら日本との関係が悪いからと言って、これは恥ずかしい」との声も上がりました。
ヴァンダービルド氏も先ほど引用した記事で、安倍首相とティラーソン長官がそれぞれ経験した「飯なし事件」を並べて書いています。以下です。
- 「尹炳世の外交部」にはすでに「反日に迎合する昼食不提供(対安倍)」という前科がある。先の推定が正しければ、今回は「親中に迎合する夕食不提供(対米国)」である。
- 中国の顔色を見、反日勢力の顔色を見るためなら、友好国(米日)との外交に悪影響を及ぼす非礼も辞さないアマチュア(国益毀損)外交を「尹炳世の外交部」は展開してきたのだ。
「文在寅の門前」に市
—韓国人はよほど中国が怖いのですね。
鈴置:元・朝貢国とはそういうものなのでしょう。もっとも「尹炳世の外交部」が顔色を見るのは中国だけではありません。
5月9日の大統領選挙で本命と見られるのが文在寅(ムン・ジェイン)「共に民主党」前代表です。
朴槿恵前大統領の「国政壟断事件」が起きる直前には、北朝鮮との関係を疑われて支持率が低迷していました。というのに大統領の弾劾事件を主導した形となって、他を大きく引き離す人気No.1候補に躍り出たのです。
文在寅・前代表は反米左派の盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権で秘書室長を務めました。今も「大統領になったら、THAAD配備の見直しや開城工業団地の再開を検討する」と明言しています。
そして「共に民主党」は大統領権限代行の黄教安(ファン・ギョアン)首相に対し「THAAD配備は国会の批准を得てからにせよ」と米国との約束をひっくり返すよう要求し始めました。
朝鮮日報が「事前に約束もなしに突然、黄代行を訪れTHAADを抗議した民主党」(3月21日、韓国語版)で報じています。
政権をとったかのような「共に民主党」の一連の振る舞いに、同紙は社説「いくら支持率1位とは言え、やり過ぎの民主党人士」(3月17日、韓国語版)で厳しく批判しています。
一方、役人も次期政権で登用してもらおうと、文在寅氏の周辺に群がっています。朝鮮日報の「文の前に列を成す官僚たち」(3月17日、韓国語版)が詳しく報じました。
韓国はただのパートナー
—それを聞くと今回の「飯なし事件」の犯人は「尹炳世の外交部」という気がしてきました。
鈴置:確たる証拠はありませんが、状況証拠では真黒です。ティラーソン長官も、そうしたレクチャーを受けたと思います。ちゃんと「お返し」しています。
先に引用した「インデペンデント・ジャーナル・レビュー」(IJR)の「Transcript: Independent Journal Review’s Sit-Down Interview with Secretary of State Rex Tillerson」で、「尹炳世の外交部」を真っ青にさせる発言をしました。
「韓国人の嘘」に関する会話の次に「日本に何を求めるか」と聞かれた長官は以下のように答えました。
- Japan is ― because of the size of their economy ― they are our most important ally in the region, because of the standpoint of both security issues, economic issues, stability issues. So that’s not anything new. That’s been the situation now, for decades. South Korea, similarly, is an important partner relative to stability of northeast Asia.
「日本は最も重要な同盟国」と語った後に、聞かれてもいない韓国に触れ「北東アジアを安定させるための重要な1つのパートナー」と述べたのです。
韓国では「日本が最も重要な同盟国と位置付けられた半面、我が国は同盟国と呼んでもらえなかった」「米国にとって、我が国は『1つのパートナー』に過ぎない」と問題になりました。
聯合ニュースのシム・インソン・ワシントン特派員の「ティラーソン『日本は同盟、韓国はパートナー』で論議、日本優先の本音が露呈?」(3月20日、韓国語版)は、必死で火を消そうとする韓国の外交関係者の発言を紹介しています。
- ティラーソン長官はインタビューで米日と韓米関係に不均衡はないと言っている。全体の文脈を見れば「同盟」か「重要なパートナー」かに意味を与える必要はない。
しかし、この記事はそれを否定する次のような「反証」も載せています。
- 米国の当局者は通常、友好国に言及する時には戦略的な重要度に応じて、同盟―友人―パートナーの順で言及する。
お灸を据えた米国
—「同盟国事件」は、ひがみがちな韓国人の思い過ごしでしょうか。
鈴置:いいえ、ティラーソン長官は意図的に韓国を「同盟国」扱いしなかったのだと思います。
この「たった1人の同行記者」との一問一答は実によく練られていて、米国政府の意向の微妙なヒダまで伝えています。
例えば「日韓の核武装」というテーマにも触れていますが、日本で大騒ぎにならないよう言葉を選ぶ半面、「北の核武装を許すのなら日韓にもさせるぞ」と、ちゃんと中国を脅しています。
米国政府の意向をとにかく正確に伝えることを狙ったこの記事で、不要な誤解を招く発言をするはずはありません。明らかに韓国にお灸を据えるために「同盟国から外した」のだと思います。
身から出たサビ
—そもそも韓国は米国から離れ始めていますしね。
鈴置:そこです。韓国人は「米国が大事にしてくれない」と文句を言いますが、韓国自身が米中二股外交に邁進して来て今、一気に「離米」に動くところなのです。「軽んじられる」のは当然です。身から出たサビなのです。
ことに第2次朝鮮戦争が始まるかもしれないという時です。米国にすれば、在韓米軍を守るTHAADの配備を韓国政府に邪魔されてはかなわない。
ティラーソン長官の訪韓の最大の目的は、韓国が中国側に寝返ってTHAAD配備を拒否することを防ぐことでした。
しかし5月中旬にスタートする次期政権は配備拒否に動く可能性が高い。現政権でさえ、中国の顔色を見るのに必死であることが現地に来てよく分かったことでしょう。
となれば、ここで一発、韓国を脅しておく必要があります。「THAAD配備を拒否したら同盟を打ち切るぞ」――とです。
同盟を直ちに打ち切るかはともかく、配備を拒否したら米国は在韓米軍の撤収に動くと見るのが日米の専門家の常識となっています。
「パートナー」という言葉にも意味があるのかもしれません。米軍は北朝鮮の核武装を防ぐために韓国の基地を使う可能性が大です。
「パートナー」からは「とにかく基地は使うからな。その後、同盟がどうなろうと気にしない。もう、お前は一時的な協力者に過ぎないのだ」との米国の気分が嗅ぎ取れます。
「米韓」は「日米」の下受け
—ティラーソン長官の脅しは効きましたか?
鈴置:大いに効きました。韓国経済新聞の社説「『日本は核心同盟、韓国はパートナー』と述べた米国務長官」(3月21日、日本語版)は「同盟国事件」と「飯なし事件」に関し、強い懸念を表明しました。
- 韓米同盟は我々にとって死活的な利害関係だ。繁栄を可能にした原動力でもある。「隷属だ」と騒ぐ一部の声は民族主義的な安っぽい感傷論にすぎない。
- 米国は「アメリカファースト」のスローガンの下、外交安保葛藤を覚悟して原点から見直している。世界は動いているが、韓国外交部はどういう考えなのか心配だ。
朝鮮日報は3月21日の社説「米国務長官の言葉通り、朝鮮半島の未来は予測できない」(韓国語版)で以下のように書きました。
- トランプ政権は韓米同盟を米日同盟の下部システムと認識している感もある。米国の朝鮮半島政策と韓米関係が、これまでは想像もできなかった方向にも行くかもしれないという事実をまずは受け入れねばならぬようだ。
「米韓同盟」は「日米」の下請けに過ぎなくなった。それに気づかず今まで通りに行動していると、米国から見捨てられるかもしれない、との焦りの表明です。
陳謝のためワシントンへ?
中央日報の金玄基(キム・ヒョンギ)ワシントン総局長も同じ日に「あきれる韓国外交」(日本語版)を書きました。この記事は「飯なし事件」を主題にしていますが、興味深いくだりがあります。
- 怒ったティラーソン長官に陳謝でもするかのように、尹炳世外交部長官は会談4日後の21日、我々には特に急ぎでもない米国務省主催の「反イスラム国(IS)外相会議」に出席するためワシントンへ行く。
確かに、尹外相のこの会議への参加発表には唐突感がありました。「陳謝」のための可能性が大です。記事は以下のように結ばれています。
- 朝米間、米中間の衝突より韓米間の衝突が先に発生するしかない構造だ。その場合、「コリアパッシング」どころか、韓米同盟64年の最大の危機を迎えることもある。大統領候補らはそのような覚悟ができているのか。
「名誉革命」が呼ぶ米韓同盟の危機
ほとんどの保守系紙を含め、韓国メディアは「世界に誇る名誉革命」と、朴槿恵弾劾劇を誇って来ました(「『名誉革命』と韓国紙は自賛するのだが」参照)。
でも、その結果「反米左派政権」が誕生しそうです。「革命」を煽っているうちに、国を滅ぼしかねない危険な穴に自らを落とし込んでしまったと保守系紙もようやく気がついたのです。今となってはもう、手遅れの気もしますが。
(次回に続く)
FT記事
他国を攻撃させるために自国のナショナリスト(国家主義者)を解き放ち、逆に同じナショナリストに倒された政権の事例は歴史上いくつもある。中国共産党はこのことを知っている。にもかかわらず、その時々にたまたま中国を刺激した国がどこであれ、中国はその標的に対する攻撃をあおり、ボイコットを促さないと気が済まない。
今回は韓国にその順番が回ってきた。韓国は、北朝鮮による核武装の脅威にさらされるなか、国内に米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)を配備すると決断した。これを受けて中国は、そのレーダーの監視範囲が中国の奥深くにまで届くことから、この配備は地域の戦略的バランスを崩し、中国自身の軍事力を弱体化させると主張している。

米ミサイルの韓国配備に反発して韓国製品のボイコットが広がっている(北京のロッテマートの店舗)=AP
これこそが、米国政府によるTHAAD配備計画の理由の一部であることに間違いはない。米国は、中国に依存する北朝鮮を制する中国の行動は不十分で、そのことに業を煮やしているのだと中国政府に告げている。もし中国がTHAAD配備を望まないのであれば、北朝鮮による挑発的攻撃を抑え込むようさらに手を打つべきだ。
■子どもにも韓国ボイコット教え込む
だが、中国共産党はそうする代わりに、反韓国の辛辣な批判や、韓国ビジネスに対する攻撃、中国人観光客の訪韓阻止を国営メディアで展開した。さらには、学校の子どもたちに対してさえも、韓国製品に対する大規模集会やボイコットを教え込んでいる。
中国による攻撃の矢面に立ったのは、THAAD配備に土地の一部を提供した韓国のスーパー、ロッテだ。中国で展開する99店舗の実に87店舗は一時的、もしくは恒久的に閉店させられた。なかには、偽りの「防火安全対策」違反の標的になった店舗も多かった。こうした行為は世界貿易機関(WTO)の規則に抵触する可能性があり、韓国政府は既に、WTOに中国の行為を調査するよう求めている。
中国は現在、米国のトランプ大統領が持つ保護主義への強い衝動に対抗しようとしているが、そのなかで、中国自身がとったこの行為は自滅的だ。中国がグローバル化を嫌っていると非難する西側諸国に、攻撃の手段を与えるようなものだ。
中国は、単に国民の意見を反映したものだとして、対韓国の抗議行動から距離を置こうとした。だが、中国では、党の指導者がいら立ちを募らせる最新の的(韓国)に対して不満を募らせる人たちを除いて、公の場でのあらゆる形の抗議は実質的に禁止されているのだが。
■ナショナリズム利用は慎重に
中国が、韓国の次期大統領にTHAAD配備を撤回させることを期待して、ボイコットを促し、反韓感情をあおっているのは明かだ。韓国の大統領を罷免された朴槿恵(パク・クネ)氏の後任を選ぶ選挙は5月上旬に実施される。後任の最有力候補は、最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表で、配備を見直すこと既に表明し、米国に対して「ノー」と言うことを学ばなければならないと語っている。どの候補が大統領になっても、北朝鮮との緊張緩和の道を探らなければならない。また、最大の貿易相手国である中国とも協力しなければならないだろう。だが、中国の経済的圧力に屈したり、一方的にTHAAD配備を撤回するのは過ちだ。
中国は、圧力をかけるのは効果的だと考えており、他国との対立に経済的ナショナリズムを利用し続ける。これまで圧力で他国を引き下がらせることに成功してきた。良識のある指導者なら、自国でナショナリズムをあおる一方で、そうした戦略的要請と商業的強要を混同して他国に対することには慎重になるだろう。この混同は貿易関係をこじらせるだけでなく、同じナショナリストが、結局は自分にとっても手に負えない勢力であると証明しかねない。
(2017年3月23日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)
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『韓国ロッテが怯えた中国「告発TV番組」の顛末 日本産食品の「産地誤読」で面子を失った国営中央テレビ』(3/24日経ビジネスオンライン 北村豊)、『中国の「放射能汚染」告発に無印良品が徹底反証 “小清新”は「中国産フェイクニュース」より「日本産」を支持』(3/22日経ビジネスオンライン 福島香織)について
本両記事を読んで感じましたのは、「無印良品」の中共への戦い方が正しいという事です。ナイキは米国企業なのに簡単に謝罪し、補償金まで払ったというのでは、余りに骨がありません。思い起こすのは小生が2005年に北京駐在時代、反日デモを仕掛けられたことでした。本社の指示で、「翌日記者会見を開いて謝罪せよ」とのことでした。言いがかりに近いもので、義憤を感じ、北京駐在の役員に掛け合っても「本社指示」とのことで相手にしてくれませんでした。後で聞くと、社外取締役の岡本行夫氏が「早く謝罪した方が良い」と言ったからとのこと。それを鵜呑みにして、現地に言ってくる本社役員もどうしようもありません。岡本氏はアメリカ、エジプトしか駐在経験がないはずです。それが、中国について判断し、あろうことか「謝罪を」というのですから。アメリカにいれば謝罪の意味が何であるかが分かるはずです。謝罪=賠償と言うのは国際常識です。ですから、慰安婦でも強制徴用でも韓国は金をせびる道具として使っている訳です。認めたら歴史への冒涜、日本人の不名誉、賠償と繋がる訳です。日本の政治家は国際化していないし、共産国家の思惑にしてやられてきたという事です。
岡本氏は三菱マテリアルの強制徴用問題でも簡単に謝罪をさせ、賠償金を払ってしまいました。売国奴です。日韓基本条約で解決済なので突っぱねれば済むのに、金で解決という安易な道を選びました。外務省は戦える人間がおらず、日本の名誉を傷付けても、自分が安泰であれば良いという輩ばっかりです。また岡本氏は「北米一課長時代、日本が出した湾岸戦争の戦費をちょろまかした」と日高義樹氏の本にありました。機会があり、日高氏にこの件を確認しましたところ、「そのとおり。岡本氏から何も抗議が来てないのが良い証拠」という事でした。最低な奴が偉そうに発言している所に、戦後日本の問題が凝縮されていると思います。
話しが飛びましたが、反日デモの話に戻ります。謝罪したくないと思った社員達が知恵を出し、日本の広告会社と新華社の合弁企業のPR会社の社長を読んで話を聞こうという事にしました。来たのは女性社長でしたが、きっぱりと言われました。「新聞に掲載された内容は事実ですか?もし、事実でなければ、謝る必要はないし、中国国民を愚弄するものになる。事実を何らかの手段で伝えた方が良い」とのことで、彼女の考えを本社に伝達、翌日の謝罪記者会見は中止とし、中国用のHPに事実関係を掲載しました。
その後、本記事の福島氏(当時、彼女も産経新聞社の北京駐在でした)から小生宛電話があり、「もし、御社が事実でないことを書かれたなら、裁判を起こした方が良いのでは」と。小生は「この中国で今まで、裁判や労働委員会に訴えられ、逃げずに相手をしてきたことはありますが、国家を相手では・・・・。またご存じのように中国の裁判官は賄賂を取りますし。個人的には戦いたいという気持ちはありますが・・・」ということで電話を置きました。まあ、あの当時の日本企業の役員で中国を相手に戦うという気概を持った人はいないでしょうし、蟷螂の斧になるだけです。今の役員でも大部分そうだろうと思います。その後、福島氏とは日本で「士気の集い」の講師としてお招きし、懇親会で北京時代の話をしたりしました。
北村記事

中国の「告発番組」で日本産の食品が標的となったが…(写真:Imaginechina/アフロ)
中国の国会に相当する“全国人民代表大会”の第12期第4回会議は3月5日に開幕し、3月16日に12日間の会期を終えて閉幕した。その閉幕日前日の3月15日は“国際消費者権益日(世界消費者権利デー:World Consumer Rights Day)”で、中国では“中国消費者協会”が毎年テーマを決めて全国的な活動を展開している。今年のテーマは「“網絡誠信 消費無憂(誠実で信用できるインターネットで憂いなき消費)”」で、全国各地の消費者協会はインターネットショッピングで安全な消費を行うためのキャンペーンを展開した。
最有力候補は韓国ロッテグループ
また、3月15日の夜には国営の“中央電視台(中央テレビ)”が、特別番組「世界消費者権利デー消費者の友特別夜会」(略称:3・15夜会)を放送するのが毎年恒例となっている。3・15夜会は1991年3月15日から開始された番組で、中国政府の関係部門と中国消費者協会が共同で主催し、社会生活の中で消費者の権益を侵害する事例を取り上げてその実態を暴露することにより、消費者の権利保護を呼び掛けると同時に、消費者の合法的権利意識の向上を目的としている。
3・15夜会に対する中国国民の関心は非常に高く、視聴率が高い国民的人気番組の一つとなっている。このため、3・15夜会で消費者権益を侵害している事例として取り上げられると、致命的なダメージを受ける可能性が高く、企業は存亡の危機に立たされるし、商品は販売に急ブレーキがかかり、売上高の大幅な低下は避けられない。そればかりか、3・15夜会は外資企業を標的とした外資叩きの手段としての役割も果たしており、2013年にはアップルとスターバックス、2014年にはニコン、2015年には日産、ベンツ、フォルクスワーゲンが消費者権益を侵害しているとして取り上げられ、各社が大きな損失を被っている。
さて、中国国民は3・15夜会を心待ちにすると同時に、消費者権益を侵害している事例として取り上げられる可能性が高いのは何かと想像をたくましくした。そこで最有力候補に浮かび上がったのは韓国のロッテグループ(中国名:“楽天”)であった。中国が反対する米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(略称:THAAD)」の韓国配備に、その配備地として所有するゴルフ場の敷地を国有地と交換する形で提供したのがロッテだった。THAADの韓国配備に協力したロッテは中国に盾突いた企業となった。ロッテ所有のゴルフ場敷地がTHAAD配備地に決定した昨年11月以来、中国はロッテ叩きを開始し、中国国内でロッテが「楽天」として展開する事業に対する規制を強化し、楽天は事業の休止を余儀なくされつつある。<注1>
<注1>中国の楽天叩きについては、2017年3月17日付の本リポート「THAAD韓国配備開始、止まらぬ中国のロッテ叩き」参照。
人々は3・15夜会で消費者権益侵害の事例として槍玉に挙げる可能性が最も高いのは楽天であろうと想像していたし、多数の評論家も同様の予想を発表していた。そうした事態を最も恐れていたのは楽天を始めとする韓国の中国進出企業であった。今や韓国はTHAAD配備によって中国に敵対する国として位置づけられ、楽天を筆頭とする韓国の中国進出企業は針のむしろに座らせられ、祈るような気持ちで3・15夜会の放送が始まるのを待った。
告発は7件、韓国企業は含まれず
3・15夜会は中央テレビの「財経チャンネル(CCTV2)」で3月15日の夜8時から2時間にわたって会場となる中央テレビ本部ビル内の大ホールから実況放送された。同番組の中で消費者権益を侵害している例として取り上げられたのは7件で、その概要は以下の通りであった。
(1)世界最大の中国語百科ウェブサイト“互動百科”に掲載されているデタラメな広告。
4800元(約8万円)を支払えば、科学的裏付けのない薬品や経歴詐称の医院の広告が堂々と掲載され、善良な消費者を騙す手助けをしている。
(2)河南省“鄭州市”の“科視視光公司”
科視視光公司は無資格で鄭州市内の小中学校で視力検査を行い、検査時に児童・生徒に家庭情報を記入させ、そこに書かれた電話番号を使って父母に連絡を取り、同社が扱うコンタクトレンズの販売を行っている。彼らには医師資格もなく、彼らの行為は全て違法である。
(3)家畜の成長促進剤、オラキンドックス(Olaquindox)
かつて中国では“痩肉精(赤身エキス)”<注2>と呼ばれる飼料添加剤が大きな問題となったが、今日新たにオラキンドックスが飼料添加剤として販売されている。その肉を人間が食べることにより健康に与える影響は極めて危険である。
<注2>“痩肉精”の詳細については、2011年4月1日付の本リポート『薬品漬け「健美豚」の恐ろしい副作用』参照。
(4)日本の放射能汚染地域で生産された食品を輸入して販売
2011年3月に日本の福島県で発生した原発事故による放射能汚染地域で生産された食品が生産地をごまかす形で輸入されて、「無印良品」や「“永旺超市(イオン)”」などの店舗で大量に販売されている。中国は日本の放射能汚染地域からの食品輸入を禁止しており、これは明らかな違反行為である。
(5)“耐克(ナイキ)”製シューズの「エアクッション」搭載という虚偽広告
米バスケットボールの選手「コービー・ブライアント」が2008年の北京オリンピックで使用したシューズの複製品の販売広告で、ナイキが特許を持つエアクッション「ズームエアー」搭載の製品と宣伝していたのに、実際に当該製品を購入したらズームエアーは搭載されていなかった。これは明らかに虚偽広告である。
(6)黒いサプライチェーンの“月嫂(出産・育児ヘルパー)”
浙江省“杭州市”の一角には100m足らずの路地に数十軒の“月嫂公司”が軒を連ねて“月嫂”の紹介・派遣業務を行っている場所があるが、“月嫂公司”は無資格なのに、“月嫂”になりたい女性たちに“月嫂”の資格証明書である「“月嫂証”」の偽物を販売して金儲けしている。このため、彼らが派遣する“月嫂”の多くは何の知識もない無資格者である。
(7)老人に伸びる黒い手、悪辣な「健康講座」
全国各地で老人を集めて行われている健康講座は、優しい言葉で老人の信頼を獲得した後は、病歴などを聞き出した上で言葉巧みに騙して、病状の改善には何の効果もない健康補助食品を数十倍の高値で販売する詐欺集団である。
人々の予想に反し、上記の通り3・15夜会が提起した7件の消費者権益侵害の事例には楽天を始めとする韓国の中国進出企業は含まれていなかった。3・15夜会を外資叩きの手段の一つとしている感のある中国が、どうして楽天を筆頭とする韓国の中国進出企業を標的にしなかったのか。その理由は不明だが、楽天が胸を撫で下ろしたことは想像に難くない。
ナイキは謝罪・賠償、無印良品は反駁
外資企業として消費者権益侵害の例に挙げられたのは、(4)の日本の放射能汚染地域で生産された食品を輸入販売したとされた無印良品などの日本企業と(5)の米国のナイキであった。“耐克体育(中国)有限公司(ナイキ中国)”は3・15夜会の放送直後に“上海市楊浦区市場監督管理局”の調査を受け、翌16日には謝罪を表明した。3月17日、ナイキ中国は声明を発表し、同社製品の「ハイパーダンク(Hyperdunk)2008 FTB」モデルの宣伝に間違いがあったとして販売済み商品の回収を表明し、回収に応じた購入者に対して販売価格1499元(約2万5000円)の全額を返金するのに併せて4500元(約7万4000円)の賠償金を支払うことを言明した。さすがはナイキで、3・15夜会が告発した問題に迅速に対応し、わずか2日で解決にこぎ着けたのだった。
ところで、無印良品などの日本企業はどう対応したのか。中国は2011年3月に福島県で発生した原発事故から6年間が経過した現在もなお、日本の宮城県、福島県、茨城県、千葉県、栃木県、群馬県、埼玉県、東京都、新潟県、長野県からなる10県を放射能汚染地域として認定し、当該10県を原産地とする食品の輸入を禁止している。良品計画の中国子会社“無印良品(上海)商業有限公司”は、3月16日に“微博(マイクロブログ)”を通じて中央テレビの3・15夜会の指摘に対して下記の声明を発表して強く反駁した。
声 明 書
2017年中央テレビ「3・15夜会」の中で暴露された「無印良品の一部輸入食品が日本の放射能汚染地域産である」とされた件に関し、当社は次のように声明する。
【1】今回誤解を引き起こした原因は、当社が販売している輸入食品の表示に「販売者・株式会社良品計画RD01 東京都豊島区東池袋4-26-3」とあったことだが、これは当社の親会社の名称と登記住所を示すものであり、当社が輸入販売する食品の原産地ではありません。
【2】3・15夜会が指摘した2件の輸入食品の原産地は以下の通り:
無印良品「ノンカフェイン ハト麦とレモングラス(穀物飲料)」原産地:日本国福井県 無印良品「卵黄ボーロ(焼き菓子)」原産地:日本国大阪府
【3】当社は全国の消費者に向けて言明します。当社が輸入・販売する日本の食品は、「国家品質監督検査検疫総局」が公布した日本の食品・農産物の検査検疫に関わる規定を厳格に遵守しており、中国政府が禁止した日本の放射能汚染地域産の食品を輸入・販売していません。当社が輸入・販売する食品には全て「原産地証明書」が有り、証明書の正本は「上海出入境検査検疫局」に提出し、併せて「中華人民共和国入境貨物検査検疫証明」を取得しています。毎回の輸入食品の通関検疫申告書および証明書は全て規定に合致しています。
声明者:無印良品(上海)商業有限公司 2017年3月16日
無印良品の2件以外に3・15夜会が暴露したのは、(a)“永旺超市(イオン)”が販売していた北海道産米の「パックご飯」の中国語表示を剥がしたところ、実際の原産地は放射能汚染地域の新潟県であった、(b)広東省“深圳市”の“海豚跨境科技有限公司”がネット上で販売していたカルビーの「フルグラ(フルーツグラノーラ)」は中国語の原産地表示は「日本」となっていたが、袋の裏面に表示されていた工場記号K1は放射能汚染地域である栃木県の清原工場であった、という2件であった。(a)と(b)について反論が行われた様子はなく、3・15夜会の指摘が正しいものであるかどうかは分からない。
北京市で「汚染地域産食品」見つからず
3月16日に“中新網(中国新聞ネット)”は「“北京市食品薬品監督管理局”:北京市で日本の放射能汚染地域産の食品は差し当たって見つからず」と題する記事で次のように報じた。
【1】3月16日、北京市食品薬品監督管理局は全市の流通要所に対し食品安全監督取締り検査を行った。“食品管理流通処”の処長は、「今回の検査範囲は、市場、“超市(スーパーマーケット)”、“便利店(コンビニエンスストア)”、農産物市場などの実質的な食品経営企業で、無印良品、“永旺(イオン)”、“711(セブンイレブン)”、“屈臣氏(Watsons)”などの総合食品経営企業も含むものだ」と述べた。
【2】16日午前9時までに、北京市内の“家楽福(カルフール)”、“華堂(イトーヨーカ堂)”、“永旺(イオン)”、“沃尓瑪(ウォルマート)”、“楽天(ロッテ)”などの18のスーパーマーケットチェーン、北京市の農産物市場、“京東商城”などの電子商取引企業が輸入食品の自主検査を行った結果、国家が禁止する日本の放射能汚染地域を原産地とする輸入食品はとりあえず見つからなかった。セブンイレブン本部は北京市内の全店舗に対して日本からの輸入食品を売場から下げて自主検査を行うよう指示したが、問題の商品は存在しなかった。
上記の事実から分かることは、3・15夜会が暴露した「中国が禁止している日本の放射能汚染地域を原産地とする食品が輸入され、中国市場で販売されている」という事実は存在しないということである。それは単に食品薬品監督管理局の役人が商品に貼られていた表示を読み誤り、生産企業の本社所在地を生産地と誤解しただけのことだった。その誤解を鵜呑みにして、3・15夜会で意気揚々と消費者権益侵害の事例として放送したのは中央テレビの極めて恥ずかしい勇み足と言える。
「独善と我田引水」治す薬、見つからず
この事実を踏まえて、中国のインターネットの掲示板には中央テレビを非難する書き込みが殺到した。あるネットユーザーは、「ばつが悪い話だ。中央テレビは問題の商品を摘発しようとして、逆に虚偽報道を摘発された」と書き込んだ。また、別のネットユーザーは、「無印良品をやっつけようとしたのは中央テレビではなく、“外交部(外務省)”だった。結果として、中央テレビは無印良品の宣伝に寄与した」と書き込んだ。
事の真相は分からないが、中央テレビは国営メディアであり、中国共産党総書記の“習近平”が主導する“媒体姓党(メディアの名前は党)”であるからには、中国共産党が何らかの意図で日本からの輸入食品に対し打撃を与えようとした可能性は否定できない。だが、残念ながら、その意図はあっけなく打ち砕かれ、中央テレビは面子を失ったのだった。
3・15夜会が楽天を含む韓国の中国進出企業を槍玉に挙げることはなかったが、それが確認された後の3月20日、韓国政府はTHAADの韓国配備を理由に中国が韓国に対する経済的報復を強めているとして、世界貿易機関(WTO)へ中国による協定違反の可能性を提起した。これに対し中国外交部の報道官は、報復措置は中国国民の民意によるものだとして、政府の関与を否定した。しかし、上述の無印良品に関わるネットユーザーの書き込みからも分かるように、報復措置への中国政府の関与を否定する中国国民はごく少数なのではなかろうか。独善と我田引水は中国が患う難病だが、それを治す薬は残念ながら未だ開発されていない。
福島記事

中国中央テレビCCTVは特別番組「315晩会」で「無印良品」を告発したが…(写真:Imaginechina/アフロ)
毎年3月15日の世界消費者デーの夜に、中国中央テレビCCTVは特番を組んで消費者目線に立って企業やブランドの問題点を暴露する。いわゆる「315晩会」である。消費者保護のためのキャンペーン番組の体をとっているが、その実、外資企業や大手企業をバッシングすることで、社会不満を募らせる庶民のガス抜きをする番組でもあり、また外資系企業の評判を落とすことで、中国国内企業を擁護する狙いもあるといわれている。とにかく視聴率は高く、その番組でやり玉に挙げられた企業は株価が一気に下がったり、クレームが殺到して、一時的にでも市場から排除されるので、外資企業も含め、この日はびくびくなのだった。
今年は、折りからTHAADミサイルの報復として韓国企業・ブランド・韓流ドラマなどが排斥されていたので、ターゲットは韓国企業になるだろうと思われていたのだが、蓋を開けてみると、ターゲットになったのは、米国企業と日本だった。ナイキと、日本の“福島原発汚染食品”を販売していたとされた無印良品だ。
興味深いのは、無印良品側はこの報道に対し、「誤解である」と反論、対象商品の撤去にも応じなかったことである。そしてさらに面白いことには、ネット上にはCCTVの取材のほうが怪しい、どっちを信じる?といった発言まで流れた。これまでも「315晩会」の取材の在り方には確かに不条理な部分もあったのだが、企業側はその不条理に文句を言わず、ひたすら謝罪し、“バッシング”をやり過ごす、という方法をとってきた。その方が“被害”が少ないからだ。
では、無印良品が強気にも反論した背景は何なのか。
互動百科は謝罪、ナイキは返金を表明
今年の315晩会で、消費者をだます悪徳企業としてバッシングされたのは大手では、中国ネット企業・互動百科、アメリカのスポーツ関連品メーカー・ナイキ、そして日本の無印良品(良品計画)である。
互動百科は中国のウィキペディアみたいな、ネット上の知識プラットフォームだが、そこにはあからさまな商品広告が載せられていた。例えば健康食品「極核5S」の欄には、「冬虫夏草の800培の功能」といった虚偽の商品宣伝が載せられている。中国では健康食品の広告において、根拠のない功能をうたってはいけないと決められているが、互動百科という、“ネットユーザーによる知識プラットフォームにおける意見”というスタイルにすることで、その盲点をついた“広告宣伝”が可能というわけだ。
しかも、百度百科は本来、ユーザーが無料で知識・情報を書き込んでいくもので、そこに虚偽があった場合は、互動百科側が削除・凍結するルールになっているのだが、実のところ、互動百科側に広告費を払えば、あたかもユーザーによる知識プラットフォームの体を装った広告が、削除されないまま残ることまで暴いた。互動百科はこの番組放送後、いち早く「一部社員のやったことで、今後企業管理に漏れがないようにいたします」と謝罪を表明した。
またナイキのテクノロジーシューズ・ズームエアに内蔵されているはずのエアユニットが、中国でコービー・ブライアント北京五輪仕様復刻版と銘打って売り出されたものに関しては内蔵されていなかったことも315晩会で暴露された。国際標準のズームエアと、中国国内限定販売用のズームエアと仕様が二つあるというのだが、消費者にしてみれば納得いかない話だろう。ナイキ側は誤解を呼ぶ広告の仕方をしたとして、消費者が望めば全額返金に応じるとしているが、消費者側は消費者権益保護法にのっとって、購入額の三倍の慰謝料を支払うべきだと訴えていた。ちなみに、この番組放送後、ナイキ側は沈黙を守っている。
「なんと恐ろしいことか」
さて、問題の日本の“放射能汚染食品”のバッシング報道だが、CCTVは中国国内1万3000以上のネットショップやスーパーで日本の核汚染食品が売られていると暴露した。例えば、カルビーのスナックの製造元は東京都。工場は栃木県。東京都も栃木県も2011年の311東北大地震以降、中国が食品輸入禁輸措置をとっている対象12都・県(現在は10都・県)に含まれている。スーパーの棚に並んでいるレンジでチンするごはんパック。中国語の製造元表示には北海道産とあるのだが、その中国語表示をめくると、製造者住所は新潟県。これも禁輸措置対象地域だ。こうした“日本の放射能汚染食品”は、良質・安全を売りにしているブランド・無印良品のスーパーで売っていることも判明した。
からくりは至って単純で、天津や深圳の保税区留めで輸入したのち、保税区内から宅配便で保税区外に送る。よくある密輸入のパターンである。
こうしたCCTVの調査報道映像のあと、スタジオの司会者は、「初期統計で1万3000もの店で放射能汚染食品が売られているとは。この数字はなんと恐ろしいことか。まさか輸入代理店は、国家の法律を知らないわけではないでしょう。まさか、これら食品が自分たちの同胞友人たちの健康を損なうかもしれないことを知らないわけではないでしょう」と怒りをあらわに訴えるのである。
この放送を受けて、中国のメディアは「恐怖!日本の放射能汚染食品を我々は食べていた!」と煽情的なニュースを流し、ネットショップでは一斉にカルビー製品が姿を消し、全国のスーパーは日本産の食品を棚から撤去したのだ。だが、この番組に反論した企業があった。無印良品だった。
CCTVを信じるか、無印を信じるか
無印良品サイドは、中国のSNS微博のオフィシャルアカウントで「輸入食品はすべて安全検査を受けている。放射能汚染食品を販売したという事実はなく、CCTVは製造会社の住所と生産地を混同しているだけであり、報道は全くの誤解だ」と表明した。そして315晩会で批判対象となった日本産食品・飲料の原産地は、実は福井県と大阪府であるとの説明をしたうえで、原産地証明を出してきちんと税関検査を受けて、合格を得た商品であるということを、税関書類の写真を添付しながら訴えた。もちろん、店舗から対象食品・飲料を撤去しなかった。
さらに意外なことに、この無印良品の抵抗は中国のネットユーザーたちを味方につけ「無印良品の逆襲が成功!」「企業広報は無印良品に学べ!」「CCTVを信じるか?無印を信じるか?」といった発言も飛び出した。また、一部大手ネットメディアも無印良品側の言い分を丁寧に報じた。
これはなぜかということを考えるとなかなか面白い。
微博ユーザーのV(VIP称号、影響力のあるアカウント)アカウントの少なからずが、CCTV報道に突っ込みを入れて、無印良品サイドの立場に立って発言している。
例えば「青年考古学生」という編集者のアカウントはこういう。
「CCTVが何を言おうが、地方メディアが何を信じようが、無印良品が声明を出す前は、ほとんど一方的な暴露でしかなかった。さらに言えば新京報メディアは、(独自取材もせずに)“無良印品”などと揶揄した。メディアは自分で事実を求める精神で再調査・再取材しないのか?」
とあるブログニュースはこう指摘する。
「中国において、メディアの擬人化がひどく進んでいて、まるで視聴者・消費者を父母のように一方的に誘導するようになっている。…CCTVが発信したのだから、我々も唱和せねばならない。CCTVをそらんじておけば、どちらにしろ私たちには責任がない。こういう大衆の心の在り方は、無責任なメディアと同じである」
中国における官製メディアへの不信は実は、ネットを駆使するような若い世代や知識層の間には根強くある。だが、メディアが共産党の喉舌であり、党の代理人としての立場にある以上、表立った官製メディア批判は党批判となるので、多くの視聴者はフェイクニュースだとわかっていても、あまり文句はいわない。そして、政治的安全を考えて、時にそのフェイクニュースにあえて乗じて、自分の利益になるように行動する。
例えば、かつて日本で生産されているSK‐Ⅱの化粧水に、中国の品質検査上問題のある成分が検出された、という報道があると、それが実は日中関係悪化にともなう中国サイドの一種の報復バッシングであるとわかっている消費者も、空のSK‐Ⅱの瓶を持って返金を要求したりもした。真実は何かということよりも、どう行動すれば政治的に安全であり、個人として利益を得られるか、ということが中国大衆の判断基準でもあった。
では、この“日本の放射能汚染食品”問題について、少なからぬネットユーザー、大衆が多少の“政治的安全”を犯して、無印良品のサイドに立ったのは、どういうわけか。
“小清新”が好む村上春樹、岩井俊二、無印良品
ここからは私の想像なのだが、一つの背景は、“無印良品”という日本を体現するようなブランドの威力、信頼性というものがあったのではないか、と思う。中国経済の悪化にともない、外資系企業、外資系ブランドの撤退ラッシュが続く中、無印良品は怒涛の出店を展開し中国の若い世代に圧倒的な支持を受けている。中国の「名創優品」チェーンなどは、明らかに無印良品のブランド力に乗じた戦略で人気を博した。しかも無印良品の持つイメージ、たとえばシンプル、ナチュラル、エコ、オーガニック、ちょっと上質な暮らしといったキーワードは、中国のプチブル層に誕生した“小清新”と呼ばれる若い女性層の好みに合致し、いわゆるエルメスやシャネルに身を固めるセレブ層とは違う、洗練された自然派の都市民ファッションの一つの流行となった。
そもそも小清新というイメージ自体が、非常に日本的といわれ、小清新が好む小説・映画といえば村上春樹や岩井俊二がトップに来るし、化粧も日本的なナチュラルメイク、美肌スキンケアに重点を置き、ふかひれアワビの飽食よりも、オーガニック食品やマクロビ(日本発の健康食生活法)にこだわる。つまり小清新のイメージは無印良品であり、無印良品のイメージは日本を体現しており、若い小清新な中国人にとって日本とは、シンプル、ナチュラル、エコ、オーガニック、ちょっと上質な国として、圧倒的な信頼を得ている。日本のこの無印良品的ブランド力は、中国における一つの文化形成に寄与するだけの影響力を持っていたわけだ。このあたりの背景は、拙著『本当は日本が大好きな中国人 (朝日新書)』(朝日新書)に詳しいので参照してほしい。
そのきわめて日本的イメージの無印良品が、CCTV報道に対して「誤解だ」といち早く発信した。ここで、CCTVは嘘つきだ、といわずに「誤解だ」というあたりが奥ゆかしい。そして、わざわざ丁寧に、証拠の税関書類や品質検査合格書類などを添付して、冷静に誤解を解こうとしていることが、好感を得た。こうなってくると、普段、中国のフェイクニュースに対して正面から声を上げることが難しい中国ネットユーザーたちも、ちょっと嬉しくなってくるようだ。ネット上では「疑いなく、無印良品の勝利」と指摘する声もあった。
傲慢フェイクニュースにうんざり
もう一つは、中国人消費者の間に、中国の“日本の放射能汚染地域生産物”の全面禁輸にうんざりしている空気があった。エコ、ナチュラル、安心、安全、ちょっと上質にこだわる中国の都市部プチブル層は、実は日本製の食品を買いたい。だから、日本旅行に行った際に食品の爆買いをするし、日本に留学・駐在している友人に頼んで送ってもらったりする。売れるから、ネットショップで、カルビーのフルグラ(栃木県産)が販売されるのだし、密輸入の真空パックごはんにわざわざ北海道産とウソの生産地を書いたシールを張ってまでスーパーの棚に並べられるのだ。
スーパー側も消費者側も、震災後6年も経つ今なお、日本の10都県からの禁輸措置を不条理だと感じているのだ。はっきり言って、日本の放射能汚染食品の問題よりも、そろそろ北京にも飛んでくる黄砂とともに放射性セシウムを吸い込むことによる内部被ばくの方がよっぽど深刻で切実な問題ではなかろうか。
この後、中国当局の無印良品イジメが本格化して、最終的に無印良品側が前言を撤回して謝ることになるのか、それとも無印良品の冤罪ということで決着がつくのかはまだわからない。
だが、消費者にとって、バッシングすべき不良品は、自前取材をせずにフェイクニュースを日常的に流し、あたかも自分たちが世論をコントロールしているかのような傲慢さを隠さないメディアの方だということは、別に中国だけの話ではないということだ。
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『高まる経済ナショナリズム 中国の反韓行為は自滅的』(3/24日経FT)、『米中首脳は歩み寄れるか 』(3/23日経FT)、『強硬トランプ 中国危機感 対北朝鮮制裁を前倒しか 石炭輸入停止、米に配慮 』(3/23日経朝刊)について
メデイアの中国の見方は甘いとしか言いようがありません。歴史的に国家が他国の製品ボイコットやデモをさせ(五四運動・裏には米国が動いたという説もあり。反日デモ、カルフールへのデモ、マックへの期限切れ鶏肉調査)、中華思想に基づく国際的なルール破りは当り前です。レアアースの対日輸出禁止に見られるようなWTO違反や南シナ海の国際仲裁裁判所の判決を「紙屑」と言い切ることができる国です。
中国が自由貿易の守護者と言うのは間違っています。自国の輸出には甘く、ソーシャルダンピングを平気でします。鉄鋼の在庫を吐くために低価格で輸出してきていました。また、非関税障壁で、輸入物品の通関をいくらでも遅らせることもできます。通関職員に賄賂を贈らない限り、スムースな通関は出来ません。それで外国企業は、通関は中国人にやらせるわけです。日本人は担当できません。賄賂の金は当然「小金庫」(中国企業は必ず二重帳簿、三重帳簿にして役人に贈る賄賂の裏金をプールする仕組みにしています)から出します。韓国にも懲罰的な製品・サービスのボイコットを国がやらせています。どんなに民間が決めたと言い逃れてしても、中共に営業の自由はありません。党の命令以外に、外交問題に発展することが決められるはずがありません。
3/23FT記事では、習近平がトランプを自由貿易に戻るよう説得せよとの話ですが、中国は自分の都合の良いときだけ「発展途上国」を主張して、国際ルールは守らないような行動を取る国です。トランプを説得できる立場にはないでしょう。先ず自分の行動を改めてからのみ人に説得は可能です。蓮舫が森友問題で安倍昭恵氏を国会で証人喚問をと喚いていますが、先ず自分の二重国籍の問題を説明してから他人に要求するのが筋では。自分を棚に上げられるところは、やはり中国人(≠台湾人)の面目躍如たる所があります。
また中国は米国のインフラ投資に協力できるとの見方ですが、①軍事的に米中対決するかも知れない国に、インフラ投資させれば、バックドアを仕掛けられ、機雷を陸上に仕掛けられるのと同じ意味を持ちます。筆者は平和ボケの典型です。米国軍はそんなことは許さないでしょう。②中国経済は崩壊寸前にあり、データを遣り繰りして誤魔化しているだけです。自国内でも融資平台の扱いに困り果てているのに、これ以上の投資余力はないし、外貨流出防止策を採っていて、下請けとなる米国の土建・建設業者に払う米$もないのでは。
3/24FT記事
歴史上、自国のナショナリストの不満が他国への攻撃に向かうようにした結果、逆に同じナショナリストに倒された政権は枚挙にいとまがない。中国共産党はこのことを知っているのに、神経を逆なでした国に対し、国民による攻撃をあおり、製品ボイコットをたきつけている。
今回は韓国だ。北朝鮮による核攻撃の脅威にさらされる同国は、国内に米軍の地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)を配備することを認めた。これに対し中国は、レーダーの監視範囲が国内の軍事拠点まで届くことから、地域の戦略バランスが崩れ、同国の軍事力が脅かされると主張している。
確かに、これも米国が配備する理由だろう。もし、中国が韓国内のミサイル配備を望まないなら、北朝鮮の挑発的攻撃を抑えるため、さらに手を打つべきだというのが米国の言い分だ。
ところが、中国共産党は国営メディアを総動員して韓国への辛辣な批判を展開し、韓国企業へ嫌がらせをしたり、中国人観光客が訪韓しないようにしたりもしている。小学生児童にも韓国製品をボイコットするよう教え込んでいる。
そうした攻撃の矢面に立たされたのが、配備に土地の一部を提供した韓国のロッテグループだ。中国で展開するスーパー99店舗のうち87店舗が一時的なものも含め、閉店に追い込まれた。
中国はトランプ米大統領の保護主義的な主張に反発しているにもかかわらず、こうした反韓行為をとっている。これは自滅的だ。グローバル化に問題点があるのは中国のせいだと非難する西側諸国に、攻撃材料を与えるようなものだ。
韓国の次期大統領が配備を撤回することを期待し、中国がボイコットなどで反韓感情をあおっているのは明らかだ。
朴槿恵(パク・クネ)前大統領の後任の最有力候補で、最大野党「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)前代表は、既に配備を見直すと表明している。どの候補が大統領になっても、北朝鮮との緊張緩和の道を探らなければならない。しかし、中国の経済的圧力に屈し、一方的に配備を撤回するのは誤りだろう。
他国との対立に経済ナショナリズムを利用するのは中国の常とう手段で、これまではそうしてかなり言い分を通してきた。自国内でナショナリズムをあおる一方、戦略的要請と商業的重要課題を混同して外交を展開するのは賢明な指導者のやることではあるまい。今のやり方では、重要な隣国との貿易関係をこじらせるだけでなく、外に向けたはずのナショナリストの怒りが、結局、国内に跳ね返ってくることにもなりかねない。
(23日付、社説)
3/23FT記事
今後の世界は、建国の歴史は比較的浅いが覇権国として長く世界に存在感を示してきた米国と、古代は帝国であり、近年再び超大国として急浮上してきた中国がどんな関係を築くかに大きく左右される。両国の関係は、ポピュリスト(大衆迎合主義者)で排外主義を掲げるトランプ氏が米国で大統領に就任し、中国では権力を一手に掌握する習近平国家主席が独裁色を強めていることから、非常に厳しいものになっている。

保護主義を掲げる米国のトランプ氏=AP
同様に対照的なのは、両者の世界経済の捉え方だ。中国をかつて支配した毛沢東が目指したのは自給自足による経済の自立だった。だが1978年以降は、一貫して毛の後継者、鄧小平が提案した「改革開放」を合言葉にしてきた。一方、米国は第2次世界大戦後、国際的な自由主義体制を築いたが、多くの米国人は米国が世界の指導者であることに問題を感じ始めた。そのため、目覚ましい成果を収めてきた従来の米国の政策は自国の利益に反すると考える人物を指導者に選んだ。
■世界経済への姿勢、食い違い
開かれた世界経済に対する両国の姿勢が逆転したのは皮肉だ。それを浮き彫りにしたのが1月の2人の発言だ。世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)で習氏はグローバル化を支持するとのメッセージを強く発したのに対し、トランプ氏は3日後の20日、大統領就任式で「(自国産業の)保護こそが素晴らしい繁栄と強さにつながる」というとんでもない演説をした。3月18日に閉幕したドイツでの20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、共同声明から「あらゆる形態の保護主義に対抗する」という文言が削られた。米国によるこうした保護主義的な動きがどんな影響をもたらすかは未知数だが、極めて気がかりだ。脆弱な世界経済にとり、米中間の貿易戦争ほど望ましくないものはないからだ。

自由貿易の重要性を強調する中国の習近平氏=AP
北京で先ごろ開かれた「中国発展高層論壇(チャイナ・デベロップメント・フォーラム)」に参加して、各国政府が掲げてきた理想と現実のギャップがいかに大きいかを痛感した。中国側の参加者らは非公式に、資本主義や民主主義、開かれた経済の成功モデルとして米国を見てきたと話してくれた。ところが世界金融危機が起こり、トランプ氏が大統領に選ばれ、米国が保護主義に傾くのをみて、彼らはこの3つのモデルにおける米国の成功は崩れ去ったと考えている。
これに対し西側諸国は、中国は先端産業で世界に通用する企業を育成しようと手厚く保護するなど、中国経済は開かれているとする中国の主張は現実とかけ離れていると批判する。海外企業への中国のサイバー攻撃も批判の対象だ。加えて、中国の経済開放を支援すれば民主化が進むだろうとの期待にもかかわらず、中国の民主化が進んでいないことへの失望感も強い。
しかし、欠くことのできない世界的な公益、つまり地球規模で人類が共有している資産の管理や国際安全保障、安定した繁栄を確保していくには、この奇妙なコンビが協力しなければならない運命にあることも明らかだ。トランプ氏が「米国第一」を宣言し、習氏は自国民の快適な暮らしの実現を最優先しようとするかもしれない。
ただ、いずれも他の国々の利益や考え方に注意を払わなければ、自分の望みを実現させることはできない。現在、中国の指導者の方が米国の指導者よりもこのことをよく理解しているように見えるのは、驚くべきことだ。
■会談、多くは期待できぬが
両氏が4月、初の首脳会談で「冬のホワイトハウス」と呼ばれるフロリダ州にある別荘「マール・ア・ラーゴ」で会う時は、互いに協力できる基盤を見つける必要がある。最近の状況を考えると、会談にはあまり期待できそうにない。トランプ氏は中国の通商政策と為替政策を標的にし、中国大陸と台湾が一つの国に属するという中国政府の「一つの中国」の政策に異議を唱えるそぶりまで見せた。2人は性格もこれまでの経験も大きく異なる。「最高ツイート責任者」であり、様々なディール(取引)をまとめてきた不動産王のトランプ氏に対し、習氏は昇進していくのが難しい共産党の組織を上り詰めた勝者だ。
ここで経済にだけ目を向け、互いに相手の言うことにほぼ耳を傾けない2人が会談でどうしたらうまくいくか考えてみたい。
まず、習氏とトランプ氏は、2人が対立していたら、どちらも自分の目標を達成できないことを互いに納得し合わなければならない。これが実際の戦争なら当てはまるのは明白だ。だが、貿易戦争にも当てはまる。どちらの国がより深く打撃を被るかはあまり重要なことではない。間違いなく両国ともに直接的、間接的に損をする。
第2に、習氏はトランプ氏に、中国の政策に対するトランプ氏の見方は救いがたいほど時代遅れだということを説得する必要がある。中国は2014年6月以降、人民元を下支えするために外貨準備から1兆ドル(約111兆円)を使った。06年から16年にかけて、中国の輸出は国内総生産(GDP)比35%から同19%に低下した。中国の劇的な経済成長を支えた輸出はもはや昔の話だ。
第3に、トランプ氏は習氏に対し、中国の産業政策について諸外国が懸念を持つのはもっともなことだと伝える必要がある。中国が自国はまだ発展途上国だと主張するのは当然だろう。だが既に巨大な経済大国でもある。中国が発展を求めて進める諸政策は、他国の目には侵略的な重商主義のように映る。各国が互いに依存する今の世界では、他国も中国がやることについては相応の利害を持っているということを中国は認識すべきだろう。この点は、中国の経常黒字の規模にも当てはまる。トランプ氏も当然、似たような論点を理解しなければならない。トランプ氏が自分の行動が世界にもたらす影響を気にしないのなら、中国も気にする必要はないということになる。
第4に、中国はトランプ氏が望みを実現するのに手を貸せる。トランプ氏は産業空洞化により打撃を受けた米国の地域に新しい工場を建設していきたいと望んでいる。産業空洞化の流れを反転させることはできないが、習氏にとって、喜んで米国に投資したい中国企業を見つけるのは簡単だろう。トランプ氏はそうした投資決定の発表を好むだけに、習氏はトランプ氏を支援すべきだ。
最後に、トランプ氏は米国でのインフラ投資ブームを起こしたいと考えている。中国は、実際のインフラ構築から、その引き渡しまで圧倒的なスピードで実現できると自負する存在だ。この中国の能力をトランプ氏の目標と結びつけるのは可能に違いない。
米中がどれほど対照的に見えるとしても、両国は利益を共有している。開かれた世界経済を維持することもその一つだ。トランプ氏に、貿易に対する彼の見方が間違っていると納得させることも極めて重要だ。自由な世界貿易を維持するメリットについて、米大統領を説得するのに中国の共産党指導者を頼りにしなければならないとは、従来は考えられなかった。しかし、今の絶望的な状況においては、そうした考えにくい手段も必要ということだ。
By Martin Wolf
(2017年3月22日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)
3/23日経朝刊
中国は2月19日から北朝鮮からの石炭輸入を停止した。核・ミサイル開発の原資を断ち切るために国連制裁決議が定めた上限に、2017年の輸入額が「近づいたため」だと説明する。ところが1月の税関当局の統計をみると上限額の3分の1にも達していない。浮かぶのは、トランプ米政権の強硬姿勢に危機感を強め、前倒しで制裁に踏み切ったという構図だ。

北朝鮮・新義州の石炭積み出し港
「こんな数字が出るとは不可解だ」。2月下旬、北京で中朝関係を担当する外交官の間で疑問の声があがった。中国税関総署が発表した1月の石炭輸入額は1.2億ドル。国連制裁決議が定めた上限額は4億ドルで、まだまだ余裕があった。
中国政府と深いつながりがあるシンクタンクの研究者が日本経済新聞の取材に、からくりを解説してくれた。「米国に協力姿勢をアピールするために制裁を前倒しで発動した」。トランプ米大統領の対北強硬姿勢への危機感があったという。
難民流入を懸念
トランプ氏は大統領選中、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長との直接会談に意欲を示したが、最近は「かなり先になる」と後退。「中国に意思があれば北朝鮮問題は簡単に解決できる」と中国に積極的な対応を求めるようになった。
中国は北朝鮮への圧力強化に及び腰だ。北朝鮮はそれに乗じて核・ミサイル開発を進め、核弾頭を搭載した大陸間弾道ミサイル(ICBM)で米本土を射程に収めようとしている。そうなる前に、米国は手を打つ必要があり、まずは中国を動かすのが先決だ。ある中国人研究者はトランプ氏の思考をこう分析する。
2月17日、ティラーソン国務長官は王毅外相との初会談で、北朝鮮の挑発抑止へあらゆる手段を使うよう求めた。中国ではトランプ政権の強硬姿勢に危機感が一気に高まった。中国商務省が北朝鮮からの石炭輸入停止を関係者に通知したのは翌18日のことだ。北京の外交筋は米が中国に3つの圧力をかけたとみる。
一つは日韓両国との安全保障協力の強化。中国が嫌がる在韓米軍への地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)配備はその一環だ。もう一つは北朝鮮と取引する第三国企業に独自制裁をかけること。実施されれば中国企業が対象になる。最後に北朝鮮への軍事力行使。発足したばかりのトランプ政権がすぐに打てる策ではないが、北朝鮮の混乱で難民が押し寄せることを懸念する中国がもっとも嫌がる話だ。
ティラーソン氏は3月中旬のアジア歴訪でも、「あらゆる選択肢がテーブルの上にある」と軍事オプションをちらつかせた。韓国から中国へ移動する専用機内では、米メディアのインタビューに応じて日韓の核武装に言及。現時点では検討していないとしたうえで、「将来はわからない」と含みを持たせた。石炭禁輸だけでは足りないとの意思表示だった。
次の協力探る
王毅氏は3月の会談で北朝鮮への圧力強化に一定の協力姿勢を改めて示した。米国をなだめると同時に、中国が期待する早期の首脳会談へ環境整備する必要があったからだ。ただ、「対話による解決」を求める方針は変えず、石炭禁輸に続く協力策を明示することもなかった。北朝鮮を混乱させない範囲内で協力しつつ、米国を北朝鮮との直接協議へ促すとの方針をなお維持した。
中国の筋書きに展望があるわけではない。かつては米朝平和協定を結べば北朝鮮が核兵器を放棄するとみていたが、すでに北朝鮮は憲法に核保有国と明記し、核を手放す選択肢は事実上ない。対話しても米国が受け入れ可能な合意は得られそうにない。このまま次の協力策を出さなければ、米国が再び中国への態度を硬化させるとの見方が浮上している。
北朝鮮は今月19日、北京での米中外相会談を尻目に弾道ミサイル用とみられる新型エンジンの燃焼実験を実施したと発表した。中国は北朝鮮問題の根本的な解決策を探しあぐね、先送りしてきた。だからこそ微妙な均衡にある現状を崩しかねないトランプ政権の強硬姿勢に神経をとがらせる。王毅氏はその翌日、北京での講演で語った。「我々は戦争に至るか対話に戻るかの岐路にある」
(北京=永井央紀)
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『見え始めたトランプ政権の“行動原理” ピュアな外交課題は従来路線を踏襲する(3/22日経ビジネスオンライン 篠原匡、長野光)、『トランプ氏 移ろう中国観』(3/22日経朝刊 本社コメンテーター 秋田浩之)について
トランプが中国に弱腰になってきたように見えるのは、やはり、クシュナー・イバンカへの安邦保険のプレゼントが効いているのかもしれません。でもそれでは、本記事のオースリン氏が言っている「米国の労働者と米国経済を守りたい」という所から外れます。「アメリカ・ファースト」の看板が泣きます。
本当に弱腰になっているかどうかは
①4/6,7に習近平の訪米を受け入れるかどうか
②訪米したら、共同声明の中味がどうなるか
によって判断できると思います。まあ、訪米しても、両者譲れる所は多くないでしょう。両者の裏には軍がついており、迂闊な譲歩は出来ません。経済的な面にしても、トランプは国民に公約してきた手前、中国に甘い顔をすることは出来ません。そう考えると、習の方が不利で、それなら訪米は止めようとなるでしょう。いくら訪米しても、帰りのお土産もなくては北戴河会議でここぞとばかりに叩かれます。何せ反腐敗運動で政敵をつるし上げて来ていますので。
昨日の小生のブログで宮崎氏のメルマガを紹介しましたが、米国は台湾の軍事支援に力を入れ出しました。ただアンデイ氏や兵頭氏が心配するように、中国への技術流出が国民党残党から為されることです。早く内省人中心の部隊編成にしないと、台湾軍は台湾国民党軍となり、国共合作がまた起こり得ます。
蔡総統も少しずつ現状維持の姿勢を変えようとしているのでは。李登輝総統のように慎重こそが政治家には必要かも。昨日のブログで兵頭氏は機雷敷設すれば中国は台湾に負けると述べました。ただ、台湾経済も対中依存度が高いため、ガタガタになります。やはり、中国を抜きにした経済体制を作っていかねば。日本も勿論そうです。敵を経済的に助け、軍事拡張に手を貸すのは愚の骨頂です。
日経ビジネスオンライン記事
トランプ政権が発足して早2カ月。貿易・通商政策や移民政策、国境警備の厳格化など大統領選の際のスタンスを継続している分野もあるが、同盟国に対する立場や「一つの中国」原則に対する見方など、主張を修正させている分野も目立つ。端から見るとぶれているように見えるトランプ政権の主要政策。その背景にある法則について、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)のマイケル・オースリン日本部長が解説した。(日経ビジネスニューヨーク支局 篠原匡、長野光)
—日韓の核武装を容認したり、北大西洋条約機構(NATO)を時代遅れと批判したり、ロシアとの関係改善に強い意欲を示したり、外交・安全保障に関するトランプ氏の選挙期間中の発言は従来の米国の政策とは大きく異なるものでした。ただ、その後は「一つの中国」原則を尊重するなど、伝統的な路線に回帰しているようにも見えます。トランプ政権の外交・安全保障政策をどう整理すればいいのでしょうか。
マイケル・オースリン氏(以下、オースリン):トランプ氏が大統領選に勝利した後、誰もが彼の外交政策はラジカルなのではないか、米国の外交政策のプライオリティは大きく変わるのではないか、と考えました。ただ現実を見ると、彼が変えようとしているのは国内問題に直結する外交課題に過ぎません。

「トランプ大統領には一貫したロジックがある」と語るAEIのマイケル・オースリン氏(写真:Aaron Clamage Photography (c) American Enterprise Institute)
例えば、トランプ大統領はTPP(環太平洋経済連携協定)からの離脱やNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉を表明しましたが、これは国内の雇用問題につながるイシューとしてTPPやNAFTAを捉えているからです。イスラム圏7カ国の入国禁止を命じた大統領令も、国内のテロ対策という文脈で捉えれば一貫しています。どちらも外交課題ですが、トランプ大統領は国内問題としてみています。
一方で、純粋な外交政策については従来の政策を踏襲しています。トランプ大統領は日米同盟の重要性に繰り返し言及していますし、(対日防衛義務を定めた)日米安全保障条約第5条の尖閣諸島への適用も明言しました。NATOに対する支持も表明しており、従来からの「一つの中国」という原則を尊重するとも語っています。
もちろん、そういう伝統的な外交政策を変えようと思えば変えられます。トランプ大統領と外交政策チームは今後、変えようとするかもしれない。ただ現在についていえば、あらゆることが直ちに変わると思われてきたけれども、それは起きていません。国内問題に直結する外交課題か否か。トランプ大統領には一貫したアプローチがあるとみています。
—トランプ大統領は選挙期間中からロシアに対して融和的な姿勢を取ってきました。先ほどのロジックに照らすとロシアはどうでしょうか。
オースリン:少し前に統合参謀本部のジョセフ・ダンフォード議長がシリアにおけるロシア軍との共同作業について、ロシアのカウンターパートと話し合いを持ちました。これはオバマ政権からの大きな変化です。一方で、トランプ政権はウクライナを巡る対ロ制裁は続けていますし、国連代表も国連の場でロシアによるウクライナ侵攻やシリア介入を批判しています。
確かに、ロシアについてトランプ大統領はかなり複雑なポジションを取っており、現時点では様々なものが混じり合っています。ロシアを巡るスタンスについては、もう少し成り行きを見守る必要がありますが、ロシアに対する伝統的な政策を維持していると言えます。
彼の言う経済ナショナリズムは保護主義とは異なる
—トランプ政権にはスティーブ・バノン首席戦略官のような人物がいる一方で、マティス国防長官など伝統的な立場を取る人々もいます。
オースリン:我々が知る限り、バノン氏はかなり高いレベルで政策に関与しており、トランプ大統領に強い影響力を持っています。イスラムすべてを指しているのかは分かりませんが、彼は米国がイスラムと戦争状態にあると信じています。宗教上の対立をナチュラルなものと捉えているという面で、バノン氏の世界観はかなり独特と言えます。
一方で、トランプ大統領はマティス国防長官やティラーソン国務長官、マクマスター大統領補佐官など伝統的な志向を持つ人々を数多く指名しています。彼らは並外れた頭脳を持つ、クオリティの高い優れた人々です。彼らはバノン氏の世界観を共有していません。そのため、政権内には競争が起きていますが、意見の相違があるのは決して悪いことではありません。
バノン氏は強固な信念を持っていますが、それがトランプ政権のすべてを形作っているとは思いません。バノン氏のビジョンに同意すべきものがあれば、大統領は自身の政策を変えるでしょうし、同意しない場合もあるでしょう。最終的に決断するのが大統領だということを考えれば、自身の政策がベターだと両方のサイドが大統領を納得させなければなりません。
足元でみれば、純粋な外交政策については伝統的な立場を取る人が勝利を収めているように見えますが、移民や貿易など国内問題についてはバノン氏が勝利を収めているように見えます。どちらかが100%という話ではありません。バノン氏の世界観は物議を醸していますが、その裏側にある「米国に利益をもたらす」という哲学は議論されてしかるべきものだと思います。
—バノン首席補佐官は経済ナショナリズムを主張しています。
オースリン:彼の言う経済ナショナリズムは保護主義とは異なるものだと思います。トランプ大統領は米国の労働者と米国経済を守りたいと考えています。そして、彼らが実際に話しているのは、現在の自由貿易がフェアかどうか、米国が経済活動の中で打撃を受けていないか、それを確認しましょうということです。経済ナショナリズムとは、こういう考え方を指す新しい言葉です。
ご存じの通り、保護主義は海外の貿易相手に対して国境を閉ざすということですが、トランプ大統領がそれを望んでいるとは思いません。日本の方々がどう受け止めているかは分かりませんが、米国の利益のために、もっといいディールになるように交渉しようと言っているだけです。それがピュアな保護主義だとは思いません。
—メキシコなど海外に製造拠点を移そうとした企業を攻撃している点はどうでしょうか。
オースリン:経済ナショナリズムという観点で見れば、トランプ大統領のしていることはロジカルだと思います。次に生じる疑問は、トランプ政権が採ろうとしている政策がいい政策なのかどうかです。彼の政策が経済を改善させるのか。それこそが問われるべき真の問いでしょう。我々は開かれた国境がベターであり、強固な自由貿易体制がベターだと考えていますが、真実はまだ分かりません。トランプ政権の下で経済に何が起きるのか、もう少し注視する必要があると思います。
日経記事
なぜだろう。就任前、あれほど厳しかったトランプ米大統領の中国観が、じわりと変わり始めているという。その真相を探ると、アジアに混乱をもたらしかねない不安の種がみえてくる。
米中要人の往来が加速している。中国外交トップの楊潔篪国務委員(副首相級)が2月末に訪米したのに続き、ティラーソン国務長官が18~19日に北京入りした。習近平国家主席が4月上旬に訪米する案も検討されている。
「中国と建設的で、結果を重視した関係をめざしていく。米国民の利益になり、同盟国との信頼関係にもかなうはずだ」。米政府高官はこう説明する。
だが、米国のアジアの同盟各国には不吉な予感が漂っている。米中が何らかの裏取引を交わし、自分たちが外されてしまうのではないか。そんな不安だ。
なぜなら、トランプ氏の対中戦略はなかば空洞であり、軸足がぶれやすい現実が少しずつ明らかになってきたからである。
たとえば、事実上、台湾を中国の一部とみなす「一つの中国」政策への対応がそうだ。トランプ氏は当初、これに従わない可能性をにじませていた。
ところがトランプ氏は2月上旬になると、この政策の堅持をあっさり中国に約束し、関係改善に意欲すらみせた。かつて強く非難した人民元や南シナ海の問題でも、最近は発言を控え気味である。
いったい、トランプ氏の中国観はどうなっているのか。手がかりになるのが、2月10日の安倍晋三首相との初会談だ。複数の関係者によると、伏せられたやり取りはこんな感じだったらしい。

約40分間の会談のほとんどが中国問題に費やされたほか、その後の昼食会でも中国が主な話題のひとつになった。
中国は経済力や軍事力にものをいわせて、東・南シナ海で勢力圏を広げようとしている。「中国主導のアジア」をつくり、米国の影響力を排除するつもりだ。そうさせないよう、日米同盟を強めなければならない――。
会談は安倍氏が主導し、こんな対中認識を共有する流れになった。最側近のバノン大統領首席戦略官・上級顧問は会談後、「中国に関する安倍首相の説明はすばらしい」と、日本側にささやいた。
ところが、トランプ氏は時折、日本側が「おやっ」と、不安を感じる発言もしていたのだ。
「そうはいっても、習近平氏もなかなか見どころがある人物だ」
「習近平氏とは初めて電話したが、とても良い話ができた」
トランプ氏は、安倍氏との共同記者会見でも米中連携に前向きな姿勢をみせた。彼は安倍氏と親交を結ぶ一方で、もう片方の手で習近平氏とも握手をかわそうとしているようなのである。

秋田浩之(あきた・ひろゆき) 政治部、北京支局、ワシントン支局などを経て、外交・安全保障担当の編集委員兼論説委員。近著に「乱流 米中日安全保障三国志」
トランプ氏の心変わりのきっかけは、日米首脳会談の前日にあたる2月9日、習近平氏と交わされた電話だ。
米中関係者らによると、米政権が重視する国内雇用やインフラの整備のため、中国が協力していく姿勢を習近平氏がみせたらしい。オバマ前政権が求めていた米中投資協定の締結について、前向きな意向を示したとの情報がある。
トランプ氏はこの見返りとして「一つの中国」政策を堅持し、関係の改善に動いたとみるべきだろう。習近平氏への4月の米国招待も、この延長線上にある。
トランプ氏には骨太な戦略観がなく、損得に外交が流されやすいという不安がかねて指摘されていた。やはり、そうだったのだ。
むろん、彼としても中国の対米貿易黒字や東・南シナ海での強硬な行動に怒ってはいる。だが、それは明確な理念にもとづく反応というより、感情的に腹を立てているといったほうが近いという。
中国の外交ブレーンによれば、習近平氏は「トランプ氏は取引好きで、御しやすい」と見抜いている。トランプ氏を取り込むため、今後、さまざまな協力案件を打診するにちがいない。経済に加えてもう一つの有力なカードが北朝鮮問題での協力だ。
ひそかに、米中間で取引が始まっている形跡がある。米国は先月17日、ドイツで開かれた初の外相会談で、北朝鮮に「あらゆる手段」を使って圧力を強めるよう、中国側に求めた。
すると、その翌日。中国商務省は突然、北朝鮮からの石炭輸入を今年末まで停止すると発表した。「偶然とは思えない。何らかのディールが交わされたのだろう」。アジアのベテラン外交官からはこんな声が漏れる。
北朝鮮問題をめぐって米中が連携を深めること自体は、世界にとっても朗報だ。問題は、トランプ氏がその見返りに、中国側にどんな譲歩をするのかである。
もし、東・南シナ海での中国の行動をめぐり、米政権が甘い態度をとることになれば、日本やオーストラリア、東南アジアの同盟国の安全保障が脅かされてしまう。
では、日本やオーストラリアはどうすればよいのか。ひとつの方策は安全保障に精通し、厳しい対中観をもっているマティス国防長官らと連携し、トランプ氏が危ない対中取引に走らないよう抑えることだ。この意味で、ペンス副大統領もカギをにぎる。
それでも、大統領が絶大な権力をにぎる米国では、副大統領や閣僚の影響力には限界がある。空洞になっているトランプ氏の中国観がきちんと肉付けされていくよう、同盟国は彼との対話を深めていかなければならない。
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