『トランプの大統領就任とNATOの運命』(12/8日経ビジネスオンライン 熊谷徹)について

12/8中国観察の看中国の記事<川普時代的美中關係將進入戰略互疑階段(圖)

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川普觸碰了美中關係最敏感的神經?

12月2日,即將上任的美國總統川普和台灣總統蔡英文通了一個10分鐘的電話。消息傳出,美中兩國的政界和外交界立即炸了鍋。川普此舉到底是無心而為還是有意之舉,兩國的專家們吵的不可開交。

美國方面的無心派認為,川普和蔡英文通電話,是川普不了解兩岸問題的複雜性而犯下的無心之過。這派以外交界和政界的政策研究者、制定者和執行者為代表。他們擔心川普會由於缺乏準備和不願聽取意見,稀里糊塗地引發危機。《外交政策》雜誌(Foreign Policy)總編戴維•羅特科普夫(David Rothkopf)表示:“我們需要認識到的是,我們正在進入一個口無遮攔的外交政策的時代。所有這些電話都顯示了無知和某種不成熟政策立場的結合。”白宮和國務院為川普不按牌理出牌、只憑感覺行事的做法而整天提心弔膽。

美國方面的有意派則認為,川普了解台海關係和美中關係的複雜性,和台灣通電話根本不是無心之失,而是有備而來。這派以川普的競選大將、現川普團隊的高參康威(Kellyanne Conway)、經常往來台灣的布希時代的國安官員葉望輝(Stephen Yates)和《華爾街日報》為代表。康威說,川普完全明白“美國對中國政策是怎樣的”;葉望輝披露,台灣早就被川普交接團隊列入了要聯絡的外國領袖名單;《華爾街日報》認為,此事是深思熟慮之舉,川普的強勢立場對未來美中較量應是好的開始。

從川普團隊、《金融時報》、《世界日報》和《華爾街日報》等披露的消息來看,川普和蔡英文通電話顯然不是誤入敏感區。第一,這是雙方互搞“小動作”、互相精心策劃的結果。第二,川普事先知道並且同意通話。第三,這個安排的背後,由共和黨內的鷹派人物操盤,包括美國傳統基金會創辦人佛納(Edwin Feulner),川普未來的白宮幕僚長蒲博思(Reince Priebus)、前美國駐聯合國代表波頓(John Bolton)和納瓦羅(Peter Navarrro)等。

最值得關注的是,一些主張對中國採取強硬立場的資深中國通和學者,異口同聲地提出警告,美國不能再對中國綏靖下去。川普的中國政策幕僚白邦瑞(Michael Pillsbury)出了一本新書《2049百年馬拉松:中國稱霸全球的秘密戰略》,其基調就是,美國不能再被中國的“不稱霸”說辭所欺騙了。政治學者約翰•米爾斯海默(John Mearsheimer)認為,美國在歐洲和波斯灣沒有足夠強大的對手,只有崛起中的中國才會挑戰到美國霸權。

中國方面當然希望這個通話只是川普的無心之失,而不是有意之舉。所以一開始中國外交部長的反應是,僅僅指責台灣方面在搞“小動作”。但是現在中國方面明白了來龍去脈,因此而感到非常不安。這反映在《人民日報》前天發出的威脅意味十足、矛頭直指川普陣營的狠話上:給中美關係製造麻煩,就是為他們自己製造麻煩。

川普顯然是觸碰了美中關係最敏感的神經。這對中國意味着什麼?中國如何應對呢?一些中國鷹派精英認為,這是美國方面針對中國的新鷹派態度。這些中國鷹派精英主張對抗。清華大學國際關係教授閻學通說,隨着軍事力量的不斷增長,作為世界第二大經濟體的中國大體上能夠想怎麼做就怎麼做。上海復旦大學國際關係學教授沈丁立說,如果這種美國和台灣的接觸在川普就職之後仍然繼續下去的話,中國應該與美國斷絕外交關係。“要是我的話,我會關閉我們駐華盛頓的大使館,撤回我們的外交官”。

毫無疑問,中國開始意識到,不按牌理出牌的川普會讓中國的日子很難過。所有曾在奧巴馬後期發展起來的戰略互疑,在川普還未執政就開始膨脹。一些川普的中國大陸粉絲曾經非常欣賞川普的率性而為,但現在他們對川普的態度變了。用不了多久,中國不管是官媒還是微信群,就會掀起對川普的排山倒海一樣的抨擊。

現在可以肯定的是,和台灣通話,為川普時代的美中關係拉開了戰略互疑新階段的序幕。在這個新階段,美中關係會不會發展到實質性對抗,非常值得關注。【看中國2016年12月8日訊】>(以上)

長いので赤字のポイントの部分だけ訳します。

トランプ時代の米中関係は戦略的互疑(互恵でなく)の段階に入る

米国の(今回のトランプVS蔡の電話の)故意派(過失で無いの意味)は「トランプは台中、米中関係の複雑性について理解しているし、台湾との電話は全く間違えてしたことではなく、周到に準備したものである。

トランプは米国の対中政策を完全に理解している。ステファン・イエーツは「トランプは台湾をとっくに連絡を取るべき外国のリーダーのリストに入れていた」と述べた。WSJは「これは熟慮を重ねて為されたもので、将来の米中の立場を比較してもトランプの立場を強め、良い出だしとなった」

トランプの対中政策のスタッフであるマイケル・ピルズベリーは『China 2049 100年のマラソン 中国の世界制覇を唱える秘密戦略』と言う本を出した。その基調は「米国は中国の覇を唱えずというのに騙されることはない」というもの。政治学者のミアシャイマーは「米国には欧州と中東で対抗できる国はなく、現在台頭中の中国のみが米国の覇権に挑戦できる

米国の対中政策が大きく変わる予感がします。ゆっくりであろうとも。トランプはオバマと違い、軍事を強化し、米国の栄光を取り戻そうとしているように見えます。NATOや日本、韓国に防衛費負担増を言いだしたのは、単に金の問題だけでなく、同盟が片務的になっているからです。それはそうです。米国にケンカを売る国は中国以外ありませんので。核で自由主義国は守ってやるが、通常兵力での戦争は「自分達でやれ」という事と思います。

確かに、本記事にありますようにバルト三国はロシアに蹂躙される可能性もあります。ヤルタ密約のようにトランプ・プーチンで何らかの取引が為される可能性もあります。NATOはソ連と対峙するためだけに置かれた訳でなく、日本と同じく、敗戦国ドイツの監視用に置かれていたと思われます。それ故、完全撤退はないでしょう。アングロサクソン同盟の英国のNATOでの立場も弱くします。

NATOの事務総長のストルテンベルグが不安を感じるのは当然です。米国から今までと違った対応を求められているのですから。日本はそう言う意味で危機感が足りないのでは。米国は日本を見捨てないと安易に思っているのではと心配になります。マイケル・フリンが長島昭久議員に会った時に、「日本は『中国が脅威だ』とか『北朝鮮が脅威だ』とか言っているわりには20年間ほとんど防衛費が変わっていない。ちょっとおかしいのではないか」と言ったとされます。もし、防衛費2%になると、10兆円ですから、一気には無理でしょうけど、中国の脅威と言う外部環境の変化に合わせて、防衛費を増やしていくのは当然です。中国に肩入れする朝日新聞を筆頭に反日メデイア、反日日本共産党や反日民進党が大騒ぎするでしょうけど、無視すれば良いです。彼らは人権を弾圧する中国共産党の手先ですから。日本はこういう内なる敵とも戦わないといけないのがつらい所です。世界では愛国者こそが高い尊敬を受けるのに、日本に限っては売国奴が評価されるという倒錯が起きています。日本国民よ、しっかりせいと言いたい。

日本は人的・財政的に軍事的能力を高めて行くことは必須ですが、直接の戦争を避けるには、中国の経済を崩壊させるのが一番です。自由主義諸国で結束して中国に経済制裁するのが一番です。日本が課せられたABCD包囲網を中国にする訳です。各国の対中貿易で儲けたいという思いがあってなかなか難しい面がありますが、中国の侵略に対してはロシア同様制裁を課すべきです。日本も愚かなことに日中韓通貨スワップなどしたら、反日国中国と韓国を助けるだけ。それが戦争を引き起こす可能性について真剣に考慮すべきです。日本にとって、経済的・軍事的に何も良いことはないと胆に銘じるべきです。

記事

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NATOの演習に参加する東欧諸国の兵士たち(写真:熊谷 徹)

世界最大の軍事同盟を覆う憂鬱

ブリュッセルの北東部に車を走らせると、世界最大の軍事同盟・北大西洋条約機構(NATO)の巨大な本部が目に飛び込んでくる。

米国を盟主とするNATOは、ソ連の脅威に対抗するため1949年に創設された。その本部は当初ロンドン、そしてパリに置かれたが、1967年にブリュッセルに移転。約半世紀にわたり使用したブリュッセル本部の建物が老朽化したため、NATOは2010年、隣接した敷地に新しい本部ビルを建設する工事を開始した。この建物は今年ほぼ完成し、2017年初めに移転作業が始まる。

旧本部は実用性だけを重視した、四角いコンクリートの箱を並べたような、地味な灰色の建物だった。これとは対照的に新しい本部ビルは、曲線とガラスの壁を多用し、近代的で軽快な印象を与える。

NATOは、「新しいビルは、未来を念頭に置いてデザインされた。目まぐるしく変化するNATOの任務に対応するために、オフィス・スペースの柔軟性を重視し、最新の情報通信システムを導入した。1960年代には加盟国が15カ国だったが、今では28カ国と大幅に増えたので、新しいビルが必要になった」と説明している。

約4000人が働く本部棟の総面積は25万4000平方メートル。6年間の建設工事にかかった費用は、11億ユーロ(約1320億円)にのぼる。

NATOの事務総長イェンス・ストルテンベルグ(57歳)は、ノルウェー人。2014年からNATOの事務方トップの座にある。1993年にノルウェー議会の議員に当選して以来、23年にわたり政治家としての道を歩み、首相や財務大臣を務めたこともあるベテラン政治家だ。ストルテンベルグ、そしてNATOの職員たちにとって、2017年は、新しい本部棟での勤務を始める記念すべき年となるはずだった。

だが最近、ストルテンベルグの表情は冴えない。こめかみに白髪が目立つストルテンベルグは、記者団の前でも時折中空に視線を泳がせ、不安に耐えているような顔つきを見せる。今ブリュッセルのNATO本部は、緊張した空気に包まれている。

NATOに批判的な初めての大統領

その理由は、共和党の異端児ドナルド・トランプが大統領選挙に勝利し、第45代米大統領として2017年にホワイトハウス入りすることが決まったからだ。「アメリカ・ファースト」を旗印とするトランプは、選挙戦の期間中に、NATOに対する批判的な発言を繰り返した。NATOは、TTP(環太平洋経済連携協定)とともに、トランプが最も頻繁に槍玉に挙げる、国際的な枠組みとなった。

NATOの最大の任務は、ソ連を頂点とする軍事同盟・ワルシャワ条約機構軍を抑止することだった。NATOは、圧倒的な地上兵力を持つワルシャワ条約機構軍が西欧に侵攻し、この攻勢を通常兵力で支えきれなくなった場合、米国の核兵器で反撃することになっていた。このため、NATOの軍事部門の最高司令官のポストには、必ず米軍の将軍か提督が就任する。

1991年にソ連が崩壊し、東西冷戦は西側の勝利に終わった。砲弾を一発も撃つことなく冷戦に勝ったNATOは、世界で最も輝かしい成功を収めた軍事同盟と呼ばれてきた。

だが今やNATOに批判的な人物が、米国の次期大統領になろうとしている。67年に及ぶNATOの歴史で一度もなかった事態だ。トランプはNATOの存在意義に疑問を投げかけることで、共和・民主の両党が第二次世界大戦後、党派の壁を越えて守ってきたNATO支持の伝統と訣別した。NATOは、同盟のトップに立つ人物からのこのような「奇襲攻撃」を想定していなかった。盟主・米国の変節はNATOにとって、創設以来最大の危機である。

「欧州はコスト負担が不十分」

トランプがNATOを批判する際の最大の焦点は、コスト負担である。彼は2016年9月に行なわれたテレビ討論の中で「NATO加盟28カ国の大半は、米国に比べると、応分のコスト負担を怠っている。私は、これを不満に思っている」と述べた。同氏はビジネスマンらしく、コスト・パフォーマンスを重視しているのだろう。トランプは、「NATO加盟国が他国に攻撃された場合、その国がNATOに対する貢献を十分に行っていない時には、米国はこの国の防衛に参加するべきではない」と発言したこともある。

NATOでは、ある加盟国が他国から軍事攻撃を受けた場合、他の加盟国はこれを自国への攻撃と同等に見なし、反撃する義務を負う。この集団自衛の原則は、NATOの存在基盤である。だがトランプは、米大統領候補として初めて、この集団的自衛権に疑問を投げかけた。共和党の一部の議員たちは、「この発言はNATOを根底から揺るがしかねない」と考え、トランプを批判した。

トランプ発言の背景にあるのは、米国とそれ以外のNATO加盟国の間に横たわる、防衛支出の大きな格差だ。

米国は2015年に、GDP(国内総生産)の3.33%を防衛予算に充てた。これに対し、他の27カ国のうち、2%を超えているのは、ギリシャ(2.38%)、ポーランド(2.23%)英国(2.09%)、エストニア(2.07%)の4カ国だけ。このため米国はこれまでも、他のNATO加盟国に対し、防衛支出を少なくともGDPの2%に増やすよう求めてきた。

たとえばドイツはEU最大の経済パワーだが、防衛支出の対GDP比率は1.19%と米国の要求にほど遠い。ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、ドイツの2015年の防衛支出の絶対額は394億ドル(約3兆9794億円)で、英国やフランスよりも少ない。この額は、米国の約15分の1である。

ストルテンベルグは、「米国が他国に防衛支出の増額を求めるのは、当然のことだ」と理解を示しながらも、「現在これらの国々も防衛支出を増やそうと努力しているところだ」と述べ、2%の目標達成までにはまだ時間がかかるという見方を打ち出した。

いずれにせよトランプが2017年1月に大統領に就任すれば、防衛支出を大幅に増額して2%の目標値を一刻も早く達成するようNATOの他の加盟国に強く求めてくるのは確実だ。その圧力は、歴代の政権を上回るだろう。

図1 2015年の主要国の防衛支出

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出所:SIPRI

対テロ戦争への関与の低さも批判

またトランプは、欧州情勢よりも中東での対テロ戦争に強い関心を示している。過激派組織イスラム国(IS)の最大の標的の一つは、米国だからだ。トランプは「NATOはISとの戦いに熱心ではない」と批判。「我々は、NATOの尻を叩いて、中東での戦いに参加させるべきだ」と言ったこともある。現在フランスやドイツは個別に有志国連合に加わり、シリアにあるISの軍事拠点への空爆を実施している。これに対しトランプは、個別の国だけではなくNATO全体が、イラクやシリアでの対テロ戦争に、積極的に加わるべきだと考えているのだ。

これに対しストルテンベルグは、NATOは対テロ戦争に消極的だというトランプの批判に次のように反論した。「米国が2001年9月11日にアルカイダの同時多発テロの被害にあった時、NATOはこれを初めてNATO全体への攻撃とみなして、アルカイダに反撃した。NATOはアフガニスタンでの戦争にも米国とともに参加した。最近もISを監視するため、中東に偵察機を投入している」。

バルト三国で高まる不安

さてNATO加盟国の中で、トランプ大統領の誕生に最も強い懸念を抱いているのが、バルト三国(リトアニア、ラトビア、エストニア)とポーランドである。現在NATOとロシアの間の緊張は高まりつつある。ロシアが2014年、クリミア半島に戦闘部隊を送って強制併合するとともに、ウクライナ東部における内戦で分離独立派を軍事的に支援しているためだ。

欧米の軍事関係者の間では、ロシアが次に併合の対象にするのはバルト三国だという見方が強い。焦点となるのが、ポーランド北東部に位置するスバルキという町だ。欧米の外交官や軍事関係者の間では「スバルキ・ギャップ」という言葉が頻繁に飛び出すようになっている。

ロシアは、バルト海に面したカリーニングラード周辺に飛び地を持っている。この町には、同国海軍の重要な軍港がある。飛び地の北にはリトアニア、南にはポーランド、南東にはロシアの友好国ベラルーシがある。

ロシア領土の飛び地とベラルーシの間の距離は、わずか100キロメートル。この地峡部がスバルキ・ギャップだ。NATOは、「東西間の対立が高まった場合、ロシア軍の戦車部隊がベラルーシからカリーニングラードの飛び地に向けて進撃する」と推測している。こうすれば、ロシアはバルト三国を他のNATO加盟国から切り離すことができる。

バルト三国は第二次世界大戦の初期にソ連、次いでナチス・ドイツ軍に占領された。戦後はソ連の一部に編入されたが、1990年~1991年にソ連から独立して、21世紀に入りEUとNATOに加盟している。最大の問題は、ウクライナ東部やクリミアと同じくバルト三国でも、ロシア系住民の比率が高いことだ。ラトビアのロシア系住民の比率が25.8%。エストニアでは25.1%。これはソ連が多くのロシア人を移住させたためである。

つまり「ロシア系住民の権益を守る」というプーチンがクリミアで振りかざした大義名分は、バルト三国についても使われる可能性がある。

ロシアは2013年、カリーニングラード周辺に7万人の兵士を動員し「SAPAD2013」という大規模な軍事演習を実施した。またロシア軍は、カリーニングラード周辺にSA400型対空ミサイルを配備したほか、2016年10月に、核弾頭を装備できる地対地ミサイル「イスカンダー」も配備している。

一方NATOは、ロシアの脅威に対抗するため、ポーランドとバルト三国にそれぞれ1000人規模の戦闘部隊を駐屯させることを決めた。またNATOは2016年夏、3万1000人の兵士を動員した軍事演習「アナコンダ」をポーランドで実施。その数日後に、エストニア領内の、ロシア国境から約150キロの地域に約1万人の部隊を投入して、軍事演習を実施した。

NATOが、かつてソ連に属していた国に戦闘部隊を配置し、ロシアを仮想敵国とした演習を実施したのは、初めてのことだ。ロシアによる反NATOのプロパガンダはエスカレートしており、1980年代の東西冷戦期を想起させる雰囲気が高まっている。たとえばロシアのあるメディアは、NATOの新しい本部ビルの航空写真をネットマガジンに掲載し、「NATO本部のビルは、空から見ると、ナチス・ドイツの親衛隊が襟につけていたルーン文字の『SS』の形をしている」と主張。NATOが、ロシア攻撃を企てる危険な軍事同盟だという印象をロシア国民に与えるためだ。NATOをナチス・ドイツと結びつけるプロパガンダは、冷戦の時代にソ連が頻繁に使った常套手段である。

今年11月27日にはドイツの通信企業ドイッチェ・テレコムのルーターがハッカーによる攻撃を受け、約90万人が数時間にわたってインターネットや電話を利用できなくなった。ハッカーは「ミライ(未来)」という有害なソフトウエア(マルウエア)を市民のルーターに忍び込ませ、この数10万台のルーターから、膨大な量のデータを政府機関や企業などに送り付けて業務を麻痺させようとした。10月に米国のネット企業ダインが受けた、いわゆるDDOS攻撃という戦法である。

マルウエアを注入する過程でルーターがクラッシュしたため、犯行が発覚した。ドイツの首相メルケルは、「一般的にロシアはサイバー攻撃を行うことで知られている」と述べ、この攻撃にロシアが絡んでいる可能性を示唆した。ドイツなどEU諸国では、政府機関、発電所や病院などについて、サイバー攻撃に対する防護措置の強化を求める声が強まっている。

米国が率いる軍事同盟がバルト三国の「保険」

ソ連の「衛星国」とされていたバルト三国など中東欧諸国は、ソ連が崩壊した後、NATOへの加盟を迅速に申請した。

中東欧諸国は過去100年間、ドイツとソ連(ロシア)という2つの軍事大国に挟まれ、運命を激しく翻弄されてきた。たとえばこの地域では、ヒトラーとスターリンが1939年に結んだ独ソ不可侵条約の記憶が今も強く残っている。独ソの2人の独裁者はこの条約によって、バルト三国とポーランド東部をソ連の領土、ポーランド西部をドイツの領土にすることを決めた。これらの国々の市民の民族自決権は、軍靴によって踏みにじられた。東欧諸国はこうした苦い経験から、欧州の外に存在する超大国・米国の核の傘の下に入ることが、生き残るための最善の道だと選択したのだ。

米国は多大な犠牲とコストを払って、欧州大陸をナチス・ドイツの圧制から解放した。戦後は、「自由と民主主義の防衛」を大義名分として掲げ、欧州に大兵力を駐屯させて、ソ連の脅威から守ってきた。ベルリンがソ連によって封鎖された時には、食料、燃料から小型発電所まであらゆるものをベルリンに空輸することで、この町を兵糧攻めから救った。

つまり中東欧諸国にとって、米国が率いる軍事同盟に入ることが、生き残るために不可欠の保険(reinsurance)だった。だが2016年11月9日の米大統領選挙を境に、この保険が大きく揺らいでいる。

バルト三国をめぐる東西間の緊張が高まる中、NATOを「obsolete(古臭い)」と形容する大統領が米国で生まれることは、バルト三国、さらに隣接するポーランドにとって安全保障上の重大な「脅威」だ。

たとえばトランプを支持する一人、元米下院議長のニュート・ギングリッチは、2016年7月、米国のメディアに対し「ロシアのサンクトペテルブルクに近いエストニアのような国を守るために、ロシアとの核戦争のリスクを冒すべきだとは思わない」と発言した。この発言は、トランプ政権がバルト三国の防衛について、歴代の政権よりも消極的な姿勢を取る可能性を示唆している。

米国の独り歩きへの危惧

さらにトランプは選挙運動の期間中に、プーチンとの関係を改善する可能性も示唆した。クリミア併合をめぐる経済制裁や原油価格の下落のため、ロシアのGDPは大幅に低下した。トランプの大統領就任はプーチンにとって、西側陣営の結束に楔を打ち込むための福音となる。プーチンはトランプが当選した後、いち早く祝辞を送った。

トランプやギングリッチの発言は、ロシアに対して強硬姿勢を取っているNATOとEU諸国にとって、梯子を外されるようなものだ。トランプが海外での軍事介入について消極的な姿勢を強め、プーチンに対し懐柔的な態度を取った場合、米国の核兵器によって裏打ちされたNATOの抑止力は、大幅に弱まる。抑止力の低下は、バルト三国併合という賭けに踏み切ろうとするプーチンへの誘惑を高めるだろう。バルト三国にとって、米国とロシアが自分たちの頭ごしに話し合い、宥和路線に転換することは最悪のシナリオである。

私はNHKのワシントン特派員だった1989年以来、NATOの変貌について取材してきた。1996年には、ミュンヘンのヨーロッパ戦略研究所のウーヴェ・ネアリヒ所長にインタビューした。ネアリヒは、ドイツ政府の安全保障問題に関する諮問機関「エーベンハウゼン研究所」で約30年にわたり、米国と欧州の同盟関係について研究してきた。

ネアリヒは「冷戦後の米国は、外交の比重を多国間関係から二国間関係に移しつつある。私は、30年後には米国が多国間関係へのかかわりを形式的な物にとどめ、国際政治への関与を減らして、単独で行動する傾向を強めると考えている。その頃に、米国とヨーロッパが共同で意思決定を行うための、防衛協力のメカニズムが残っているかどうか、私には確信が持てない」と語った。ネアリヒの不吉な予言は、トランプの大統領就任によって、現実になるのかもしれない。

自己防衛能力の強化を目指すEU

さてトランプ大統領の誕生後、EUは「米国に頼ることなくEU加盟国だけで、欧州やアフリカで生じる局地紛争に対処するための軍事能力の確保」に向けて努力を続けている。ドイツのキリスト教民主同盟(CDU)で連邦議会院内総務を務めるフォルカー・カウダーは11月13日に「欧州諸国は安全保障に関して、これまで以上に自己責任を負わなくてはならない。各国は連帯して、ヨーロッパ軍の創設へ向けて第一歩を踏み出すべきだ」と発言した。

同国の国防大臣ウルズラ・フォン・デア・ライエン(CDU)も「NATOは将来、欧州の安全保障に関する全ての課題に取り組むことはできないだろう。だが現在EUの軍事能力はバラバラで、弱い」と指摘した。ただしフォン・デア・ライエンは、「NATOに競合するEU軍を創設することには反対だが、EU加盟国が軍事問題をめぐってこれまで以上に協力関係を深めるために、安全保障・防衛連合をめざすべきだ」と述べている。

EUがどのようにして独自の防衛体制を強化するかは未知数だが、トランプの大統領就任が、欧州の安全保障に関する地図を大きく塗り替えることだけは、確実である。米国の核の傘の下にいる我々日本人にとっても、トランプ当選がヨーロッパ人たちに与えた戸惑いは、決して他人事ではない。今後ヨーロッパ人たちが、安全保障をめぐって、どのように自分たちの運命を切り開いていくのかを、我々はしっかりと見極める必要がある。

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