『“サッカー”より“クリケット”を選んだ英国 BREXITの不経済学』(4/11日経ビジネスオンライン 岡部直明)について

欧州とロシアでムスリムのテロが起きているのに、何も手を打てないでいるEUに愛想を尽かしたのがBrexitでしょう。メルケルが移民の受入を止めれば英国もEUに留まった気がしますが。シリアを第一次大戦後、植民地統治していたのはフランスですから、難民受け入れするなら、フランスがするべきなのかもしれません。日本の朝鮮半島統治はあくまで併合であって、植民地統治とは違っています。今の在日朝鮮人は密航して日本に来た子孫が殆どなのに強制的に連れて来られたと嘘を言い、金儲けのネタにしようとします。どこまでも、腐った民族です。

メルケルは「英国のいいとこどりは許さない」と言ったそうですが、それはそうでしょう。難民受入が嫌で出て行く国に以前と同じ条件で優遇すれば、他のEU参加国も真似するに決まっています。そんなことは、英国は百も承知でしょう。ダメモトで言っている気がします。

貿易上の不利な点、特に関税については£安になるので相殺されるのではと宮崎正弘氏が以前言っていました。ただ、新たに一から交渉するとなると手続きに時間がかかります。2年後までに終わらなければ、拠点をEU側に移す企業も出て来るのでは。日米企業がどうするのかがポイントでしょう。

53ケ国からなるコモンウエルスだけで貿易と言っても遠く離れており、購買力もばらつきがありますので、EUみたいにはいかないでしょう。そうなると中国頼みになるのが一番危ないでしょう。何せ隠れた負債が山のようにあり、代金回収できなくなる恐れがあります。

記事

3月29日、英国のメイ首相はEU基本条約(リスボン条約)50条を発動し、EUに対して離脱を正式に通知した。EU離脱を正式通告する書簡に署名するメイ首相 (写真:PA Photos/amanaimages)

英国は3月29日、欧州連合(EU)離脱を正式に通知した。2年間の予定で離脱交渉が動き出す。スポーツに例えるなら、EUで愛され世界的なスポーツであるサッカーより、英連邦で普及する英国流のクリケットを英国は選んだのである。

ポピュリズム(大衆迎合主義)を背景にしたBREXIT(英国のEU離脱)は今後、世界を揺さぶるだろう。なによりEUと外資に依存してきた英国経済にとって、BREXITは非合理な選択であり、「新英国病」の危険をはらんでいる。

大英帝国の幻想再び

クリケットは英国や英連邦では伝統的で人気のあるスポーツである。世界100カ国以上で楽しまれているという。野球の原型ともいわれるが、日本人にはなじみは薄い。なにしろ長時間かかるから、テレビ観戦向きではない。オリンピックには20世紀のはじめに1度採用されただけで、姿を消している。世界的なスポーツであるサッカーに比べると、英国色の濃い特異な存在といわざるをえない。

BREXITは英国がサッカー(コモン・マーケット)からクリケット(コモン・ウエルス=英連邦)に逆戻りすることを意味する。英国が欧州統合の原点である欧州石炭鉄鋼共同体(ECSC)に加わらず、EUの前身である欧州経済共同体(EEC)にも参加しなかったのは、英連邦の存在があったからだった。英国にとって「欧州」は貿易関係が深い英連邦、そして米英関係に続く第3順位だった。「欧州合衆国」構想を提起したチャーチル首相も欧州について「With not in」(共にであり、中にではない)と述べている。

そこにはかつての覇権国である大英帝国の幻想があった。第2次大戦中のヤルタ会談以来、3大強国(米英ソ)という意識が抜けなかった。欧州統合の父、ジャン・モネは「部外にて英国は大国の幻想に満足していた」と痛烈に皮肉っている。

この大英帝国の幻想がBREXITで再び頭をもたげたのだろう。

EUあっての外資立国

不思議なのは、英国経済がEU経済全体に組み込まれ、それを狙って外資が導入されてきたのに、なぜ合理的なはずの英国人がBREXITという不合理な選択をしたかである。

英国の貿易のEU依存度は50%近い。EUのなかでサプライチェーンはきめ細かく張りめぐらされている。英国そのものよりEUという巨大市場に照準を合わせて外資は大挙して英国に進出している。対内直接投資残高の国内総生産(GDP)比は63%と際立って高い。欧州大陸諸国の2、3倍の水準である。日本の3.7%とは比べようがない。空港、港湾、水道、電力など社会インフラも含めて外資依存は浸透している。飲食などサービス業は移民労働者に支えられている。中央銀行であるイングランド銀行のカーニー総裁はカナダ出身だ。

外資導入が可能だったのは、英国が開かれた社会であるだけでなく、英国がEUという巨大市場のなかにあったからだ。EUあっての外資立国だったのである。EU離脱で少なくとも外資は英国への新規投資を見合わさざるをえなくなる。外資に支えられた英国経済は外資の出方しだいで、その基盤を揺るがされることになる。メイ首相が日産自動車や日立製作所といった日本の進出企業に直接働きかけているのは、外資の動きが英国経済の将来を決めるという危機感からだろう。

金融センターの座は盤石か

ニューヨークのウォール街と並ぶロンドン・シティーの金融センターとしての地位は盤石だろうか。米金融大手のゴールドマン・サックスはBREXITをにらみ、英国からの異動を含めてEU内の拠点の人員を数百人規模で増強するとともに、EU拠点への投資を急ぐ方針だ。EU内の金融パスポートが適用されなくなるのなら、シティーから機能を分散せざるをえなくなる。

問題はどれだけの機能が分散され、雇用が削減されるかである。1割説から3割説まで幅広い観測があるが、金融ビジネスは英国の基幹産業だけに、英国経済に深刻な打撃を与えかねない。BREXITを推奨してきたロジャー・ブートル氏(英調査会社キャピタル・エコノミクス会長)もシティーがセンターになってきたユーロ決済機能は「移転せざるをえない」とみる。

欧州大陸ではフランクフルト、パリ、アムステルダムなどがシティーからの受け皿をめざして、誘致合戦にしのぎを削っている。シティーが一挙に金融センターの座を失うことはないにしても、機能分散が進むことはまちがいないだろう。

「リトル・イングランド」の恐れ

BREXITで最大の懸念材料は「英国の分裂」だろう。スコットランドは独立してEUに加盟し、北アイルランドはアイルランドに統合する。さらにシティーを基盤にするロンドンも独立し、シンガポールのような都市国家になる。「グレートブリテン」が「リトル・イングランド」になるという説である。

これにはもちろん反論もある。スコットランド独立・EU加盟について、ブートル氏は「原油価格が120ドルの頃と違って50ドルでは経済的に独立はできないし、EU側からはカタルーニア独立問題を抱えるスペインに拒否権を発動される」と指摘する。それでもスコットランド独立を問う住民投票は実施されるだろう。

ブートル氏もアイルランドと北アイルランドの統合の可能性がないわけではないとみている。そのアイルランドは、英連邦で最も成長力があるインドより、貿易依存度が高い。EU内の結びつきが英連邦よりいかに深いかを示している。

メイ政権はBREXITの過程で「英国の分裂」という内憂を抱え込んでいる。

A50はハイウェイではない

英国の離脱通知でEUとの離脱交渉は動き出したが、リスボン条約50条に基づく離脱交渉は難航が避けられない情勢だ。リスボン条約50条は「A50」と呼ばれるが、ハイウェイではなく、ロンドン市街のように交通渋滞は必至である。

交渉の入り口からEUと英国の食い違いが目立っている。EUはEU予算の未払い金など約7兆円の決済が先だという。27カ国が統一して交渉に臨み、個別交渉は認めない。トゥスクEU大統領は離脱条件が達成できるまで、自由貿易協定(FTA)など将来協定は同時並行では協議しないと明言している。離脱交渉とFTAなどの将来協定を同時決着させたい英国との開きは大きい。

とくに、EUでは4、5月の仏大統領選挙や秋の独総選挙などEU運営を左右しかねない国政選挙が待ち受けているだけに、英国に甘い顔はできない事情がある。メルケル独首相はかねて「良いとこ取りは許さない」と断言しているが、移民を制限しながら単一市場に自由にアクセスしようという英国には厳しい姿勢で臨まざるをえない。

EU加盟各国の離脱承認を考えると、交渉は実質1年半でまとめる必要がある。離脱交渉が長引けば、英国に拠点を置く外資の流出が避けられなくなる。もちろん、英国が苦境に陥れれば、関係の深いドイツなどへの悪影響も想定されるが、EUの盟主としてドイツの抜け駆けは考えにくい。

英国は離脱交渉の間に日米など2国間のFTAの準備を進められると考えているが、EUは2国間FTA交渉などは離脱交渉の決着後でなければ認めない方針だ。そうなれば、英国は世界貿易機関(WTO)のもとに置かれ、FTAなき状態に陥ることになりかねない。

「TPP」が推すBREXIT

英国にとっても、EUにとっても頭痛の種であるBREXITをだれが推したのだろうか。離脱派のポピュリスト(大衆迎合主義者)が英国の高齢、低所得層をあおったのはたしかだが、国際社会で離脱を歓迎したのは、トランプ米大統領、プーチン・ロシア大統領、そしてル・ペン仏国民戦線党首の「TPP」である。環太平洋経済連携協定(TPP)はトランプ政権によって後退させられたが、新たな「TPP」が猛威を振るっている。

危険なのは、そこには合理性より感情を優先させる自国本位のポピュリズムの風潮が蔓延していることである。

「自国第一」がもたらすもの

英国が戦後の「英国病」を抜け出したのは、サッチャー改革よりもEUのおかげである。英国はEUの恩恵を受け、外資立国を実現したのである。EUからの独立をめざすBREXITだが、英国は外資の出方に一喜一憂せざるをえなくなるだろう。経常収支赤字のもと外資流出が続けば、ポンド危機による新「英国病」に陥る危険がある。

ロンドンの街を歩く限り、英国にはBREXITによる昂揚感が感じられる。ポンド安が観光客を増やし、輸出を底上げして、英国経済を下支えしている。しかし、BREXIT対応で、金融緩和が長引き、行き過ぎた減税など財政拡大に傾斜すれば、「BREXITバブル」になる恐れがある。

英経済を支えるポンド安だが、ポンド危機になれば、スタグフレーション(物価上昇と景気停滞の同時進行)に陥りかねない。新英国病への道を防ぐには、合理的精神に立ち返るしかない。

英国が発祥の地であるラグビーは、「ワン・フォー・オール、オール・フォー・ワン」が基本精神だったはずである。「自国第一主義」は何をもたらすか。BREXITはその弊害を思い知らされる機会になるだろう。

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