3/10日経ビジネスオンライン 長尾賢『海洋安保をめぐって激化する本物のスターウォーズ 日印は宇宙空間でも連携するべき』について

中国の衛星破壊事件では、宇宙ゴミ(スペースデブリ)が沢山出て、他の衛星を脅かしました。人の迷惑を顧みない国です。

http://www.sankei.com/world/news/150325/wor1503250042-n1.html

中国は三戦(世論戦、法律戦、心理戦)の他に、戦闘領域を宇宙・深海・インターネットの世界に広げています。昨年7/1国家安全法により定められました。日本も今までの戦争の概念に閉じこもっていたのでは、敗れることになります。第二次大戦の敗戦はABCD包囲網を築かれた時点で決まったようなものです。中国の軍事暴発を防ぐためにはATO(Asian Treaty Organization)による同盟構築が重要です。条約締結よりは具体的行動の積み上げで信頼関係を重ね、然る後に条約締結の流れが自然かと。中国包囲網を作ることが重要です。3/8王毅外相は日本に「日中関係の改善について日本側の対応が妨げになっている」と注文を付けて来ましたが、それだけ日本の行動が中国の軍事行動の牽制(南シナ海での)になっているという事です。中国の嫌がることはドンドンした方が良い。

インドとの宇宙部門での提携もした方が良いでしょう。「はやぶさ」が地球に帰還できるだけの技術力を持っている日本だから、インドと日本が協力して宇宙空間から中国の行動を監視できるようにした方が良いと思います。勿論、日米豪印で情報も共有化すべきです。またインドと核技術でも協力しあい、いざと言うときはインドから核を有償譲渡して貰えるだけの関係が作れれば良いと思います。

記事

海洋安全保障をめぐって宇宙空間でも競争が起きている。映画のスターウォーズほど派手ではないが活発な動きだ。今月、東京で「安全保障分野における日米宇宙協議」が行われた。先月は米国とインドが宇宙利用に関する協議を行い、海洋安全保障についても話し合った。

 特にインドは具体的な動きを進めつつある。南シナ海を囲むベトナム、ブルネイや、インドネシアにも衛星追跡局(厳密には、データ受信追跡テレメタリー局)を設置する計画だ。すでに1月、ベトナムの施設は完成した(図1参照)。

 こうした動きは何を意味しているのだろうか。それは地域の安全保障情勢、そして日本の国益にとってどのような意味を持つのか。本稿は、海洋安全保障と宇宙空間のかかわりと、特にインドが進める宇宙利用に焦点をおき、日本の国益について考察する。

図1:インドが衛星追跡局を整備しつつある国々(オレンジ色)

Tracing satellite office

出所:筆者作成(インドは、インド洋のモーリシャス、アンダマン・ニコバル諸島=インド、東南アジアのベトナムのホーチミン市、ブルネイ、インドネシアのビアク島、南太平洋のフィジーに、衛星追跡局を設置する)

海洋安全保障と宇宙空間が交わる3つ交差点

 このトピックを考える際に、まず気になるのは、そもそも宇宙が海洋安全保障にどうかかわるのか、ということだ。一見すると明確ではないかもしれない。しかし、実は大きなかかわりが出始めている。それは大きく3つに分かれる。南シナ海を例に説明しよう。

 1つ目は、南シナ海で何が起きているかを知るために宇宙が活用されている。例えば、南シナ海で中国が進める人工島建設や対空ミサイルの配備動向を把握するため、米国の戦略国際問題研究所(CSIS)は人工衛星を使った画像を利用している。南シナ海のように、人があまり住んでおらず、周辺各国のレーダー網の整備も十分でない海で何が起きているのか把握するには、衛星の力に負うところが大きい。

 2つ目は、自分がどこにいるかを把握すること。中国が建設している人工島から12カイリの海域に米国が軍艦を航行させる場合、衛星を利用した位置測位(GPS)システムが有用だ。

 3つめは通信である。状況をいち早く届けるのに衛星通信を使用するのである。衛星通信は妨害されづらく、軍事用には最適だ。

このように現代の海洋安全保障のシステムは、平時から衛星に依存している。そして、もし戦争になった場合、衛星はより重要性を増す。特に、最先端の武器を保有している米国は衛星に依存する度合いが大きい。艦艇から巡航ミサイルを発射し敵の拠点を攻撃する場合、敵の拠点がどこにあるのかを衛星で把握し、発射したミサイルがどこを飛んでいるかを衛星で把握しながら誘導する。これらの情報を衛星を通じて通信し、命中したのかどうかまで衛星を使って確認する(図2参照)。

図2:巡航ミサイル発射と人工衛星のかかわり概念図

Artificial satellite & launching missile

出所:筆者作成

 結果、心配事が出てきたのである。2001年、米国議会が設置した宇宙委員会(正確には「米国国家安全保障宇宙管理・組織の評価委員会」)が報告書を発表した。この報告書が、米軍が衛星を使ったシステムに依存していること、衛星を攻撃される脆弱性があることを指摘したのである。

 実際、2007年、中国が衛星を破壊する実験を行った。地上から打ち上げたミサイルで、宇宙空間の衛星を破壊したのだ。衛星を破壊されれば、南シナ海で何が起きているのか把握できなくなる。把握できても攻撃できないかもしれない。これは海洋安全保障上、重要な問題である。米国も日本も、そしてインドも、宇宙の安全保障上の利用について認識を改めざるを得なくなった。結果、インドの宇宙利用が今、急速に進み始めている。

衛星追跡局防衛は軍事行動の理由になる

 インドの宇宙利用はどの点で急速に進んでいるのだろうか。最初にみるのは、何が起きているか把握するための衛星である。南シナ海沿岸国に衛星追跡局を配置したのはこの一環とみられる。これらの施設は、インドの衛星が撮影した画像情報を受信する役割を担う。同時に、沿岸国に情報を提供する。インドがベトナムに設置した施設は、南シナ海で何が起きているか、インドとベトナム双方が把握するための重要な情報源になる。

 この施設にはもう一つの役割がある。もし中国がこの施設を脅かす軍事行動を起こした場合、インドは自国の施設を守るために軍を派遣することができる。2012年12月、インド海軍の当時の参謀長がインドとベトナムが共同資源開発している施設の安全確保を理由に挙げて、インド海軍を派遣する用意があることを述べた。インド国防相が2015年12月に訪米した時には、南シナ海における米印共同パトロールについて話し合ったようだ。

 こうした動向から見て、インドが将来、南シナ海に海軍を派遣することは、まったくあり得ない話ではなくなりつつある。インドの衛星追跡局の誘致は、そのきっかけを作る役割を持ち、政治的に重要なものである。

2つ目はGPSをはじめとする位置測位衛星について。この分野でもインドの取り組みは積極的だ。インドは複数のシステムを複合的に構築している。GPSに加え、ロシア製のGLONASS、そしてインド国産のシステムIRNSSも構築している。こうすることで、特定の国に依存することのない外交的な自由が得られる。軍事的には、どれか1つの衛星が攻撃された場合でも、代替システムを確保することができる。

 3つ目の通信衛星についても同様だ。特にインドが2013年に打ち上げた衛星は、インド海軍が本国と通信する能力を飛躍的に向上させた。以後、インド海軍はインド洋北半分だけでなく、さらに遠方でも軍事作戦が可能になったといわれている。

衛星を攻撃する能力を、衛星を守る抑止力に

 そして、やはり衛星破壊兵器について動きが出始めた。インドは、日本と同じように、宇宙の軍事利用に反対する「宇宙の平和利用」を掲げてきた国だ。だから、この種の兵器の開発を長年にわたって忌避してきた。しかし、中国が2007年に衛星破壊実験を行って以降、インドが独自に開発しているミサイル防衛システムの開発計画(本来は弾道ミサイルを迎撃するためのもの)の中で、衛星破壊兵器も一緒に開発しているといわれている。インドの国防研究開発機構の長は2010年に、衛星破壊兵器を開発しているとはっきりと言及したことがある(注)。

 なぜインドに衛星破壊兵器が必要なのか。衛星破壊能力を保有することは、自国の衛星を守ることにつながるという論理があるからだ。例えば中国がインドの衛星を攻撃することを考えたとしよう、もしインドが中国の衛星を攻撃する能力を持っていれば、報復を恐れる中国は攻撃を躊躇するかもしれない。

 つまりインドは、衛星を利用して東南アジア各国との協力関係を構築するとともに、インド海軍の行動範囲を拡大しようとしている。その努力を、中国に衛星を破壊させないように、宇宙における抑止力を高めながら行っているのだ。非常に手堅い動きである。

(注)インドの衛星破壊兵器についてはGroup Captain RK Singh, “Indian Anti Satellite Weapon: Necessity, Urgency and the Way Ahead”, USI Journal, Jan-Mar 2013, Vol. CXLIII, No.591 (The United Service Institution of India, New Delhi), pp.85-92に詳しい。

衛星を守るべく、日米印で協力を

 こうしたインドの動きは、特にアジア地域で高まる海洋安全保障上の脅威と連結している。中国が東シナ海、南シナ海、そしてインド洋などで活動を活発化させる中で、海洋安全保障を支えるための宇宙空間での活動を活発にしているのだ。

 では、こうした環境における日本の国益は何か。日本の衛星も攻撃に対して脆弱ではないのか、考えなくてはならない。インドはすでに米国と、宇宙分野とミサイル防衛の両方で協力しつつある。日本も米国と宇宙分野、ミサイル防衛分野で協力しつつある。だとすれば、日本とインドは協力するべきではないのか。

 協力できる分野は少なくとも2つある。インドが他の東南アジア各国と宇宙分野で連携を深めるならば、日本、インド、東南アジアで衛星を介した情報共有や、東南アジア各国が衛星を活用するための日印協力が可能なはずだ。施設の重複を避けるなど、より効率的なシステムを作ることができるかもしれない。

 2つ目はミサイル防衛と衛星破壊兵器に関する協力だ。衛星破壊兵器について、日本は深刻にとらえる必要がある。衛星攻撃は相手国に効果的なダメージを与えるが、人を殺傷しない。だから、安易に使用される可能性がある。日本の衛星を破壊する動機をもつ国が現われたとき、その国の意思をくじいて抑止する力は何か。日本には手段が必要だ。

 日本はインドとミサイル防衛で協力できないか。米国を含めたミサイル防衛の中で、衛星破壊兵器の技術も共有できないか。検討してみる価値があるはずだ。

3/10日経ビジネスオンライン 鈴置高史『米国から「ピエロ役」を押し付けられた朴槿恵 北朝鮮への「最強の制裁」にも浮かぬ顔の韓国人』について

蝙蝠外交をすればどういう結末に陥るかは普通に考えれば分かりそうなもの。それができないのは民族性の為せる業では。「火病」という宿痾を持ち、情緒優先社会で合理的判断ができない、かつ反日以外に生きる目標を持たない民族です。中国の千年属国だったことを忘れ、文句の言い易い日本にストーカー行為をし続ける下劣な連中です。

韓国の国会議員が日本国旗を踏みつける写真や、日本の首相の顔に×を付けたり日本国旗を燃やしたりする韓国民の写真を見たことは沢山ありますが、昭和天皇の生首写真をネットに上げるとは何をか況やです。三島由紀夫は『サロメ』を愛しましたが、韓国民はサロメの結末を知らないのでしょう。やがて怒れる日本国民から鉄槌を下されるでしょう。その前に北から攻撃されて回復不能なダメージを受けるかもしれませんが。民度が低い民族と言うのは言を俟ちません。

the freshly served head of emperor

韓国は米中から馬鹿にされているというのにやっと気づいたようです。大国の間に入って振り回すだけの力があると思いこむことが如何に危険なことか身を持って経験するようになるでしょう。日本に統合される時だって、目立った反抗はなかったくらいと言うか、一進会は統合を進めていたくらいですから。被害妄想、誇大妄想で生きている国はツケを払わされることになります。それがチエスの”pawn”という表現に表れているのだと思います。あるときは中国に、あるときは米国に擦り寄り、而も都合の悪いことは全部日本のせいにして逃げるというのは成熟した国家のやる事ではありません。

北が攻撃を仕掛けても、日本は傍観すべきです。国家元首の生首写真をアップして平気でいられる精神異常の民族とは関わらない方が良い。何があっても助けることは避けるべきです。通貨スワップなぞは論外です。

記事

 

taiks about deploying THHAD between US & S.korea

3月4日、THAAD配備について米韓がようやく公式協議入りしたが、先行きは不透明(写真:YONHAP NEWS/アフロ)

前回から読む)

 米国から梯子を外された――。北朝鮮に対する「最強の制裁」が発動されたというのに、韓国人は浮かぬ顔だ。

裏切り者の韓国

—北朝鮮に対する制裁がようやく決まりました。

鈴置:3月2日、国連安全保障理事会は全会一致で制裁決議を採択しました。今年に入って、北朝鮮が4回目の核実験と長距離弾道ミサイル実験を実施したからです。

 米国の国連大使によれば「ここ20年間の国連制裁のうち、最も強力なもの」です。しかし韓国紙は暗いムードの紙面を作っています。

—「どうせ中国は決めたことを守らない。制裁は尻抜けになって北朝鮮に核を放棄させるなんて無理」との諦めからですか?

鈴置:それが第1の理由です。もう1つは、制裁案を米中が固める過程で、韓国が「ピエロ」を演じる羽目に陥ったからです。

 北朝鮮の核・ミサイル実験を受けて2月7日、韓国は在韓米軍基地への地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD=サード)の導入を認めました。

 2014年以降、米国が韓国に圧力をかけ続けた結果です。韓国を防衛するために在韓米軍基地が存在します。それを守るためのTHAAD配備なのです。これに難色を示す韓国は、米国からすれば裏切り者そのものでした。

 「北の核」の実戦配備が現実化した今、米国は韓国に対し「それでも配備を拒否するというなら、在韓米軍を引き揚げる」くらいは言ったと思います。

米国のドタキャン

 韓国が逡巡したのは中国の、これまた強力な圧力からです。中国は「THAADが韓国に配備されれば、そのレーダーにより自国のミサイルの動きを米国に捕捉される」との理由を掲げ、認めないよう韓国を脅してきました。

 米中の間で板挟みとなった韓国は、最後は米国の要求を入れ配備容認に動いたわけです。当然、その後も「核攻撃の対象にする」と中国から威嚇されています(「『THAADは核攻撃の対象』と韓国を脅す中国」参照)。

 韓国人は中国に反発しながらも「どんなイジメに遭うのか」と首をすくめる毎日です(「 『中国大使に脅された』とうろたえる韓国人」参照)。

 さて韓国に配備をのませた米国は、具体策を詰めるため韓国と合同実務協議団を設置することにしました。

 米韓両国は2月23日に設置の約定書を交わすことになっていたのですが、この日になって突然、米国側が延期を申し入れ、セレモニーはキャンセルされました。

中国との駆け引きに転用

 結局、国連で対北制裁が決まった後の3月4日、米韓は約定書を交換しました。10日間も遅れたのは、米国が中国との駆け引きのカードとして「THAAD配備」を利用したためでした。

 東亜日報の社説「米中のTHAAD・平和協定の気流変化、韓国は不意打ちを食らうのではないか」(2月27日、日本語版)がその間の事情と、韓国で高まった米国への不信感を率直に書いています。以下がポイントです。

  • ワシントンで2月25日、ハリス(Harry Harris, Jr.)米太平洋軍司令官が記者会見し「(韓国と)THAAD配備を協議することで合意したからといって、必ず配備するわけではない」と述べた。
  • 2月24日、ケリー(John Kerry)国務長官の「THAAD配備に汲々としない」との発言と比べ、さらに一歩後退した表現だ。
  • 米国の北朝鮮制裁に中国が積極的に参加する代わりに、米国がTHAAD配備による中国の憂慮を減らす方向で、米中が戦略的取引をしたようだ。
  • 朴槿恵(パク・クンへ)大統領は「THAADの配備は安全保障と国益によって検討していく」と語っていた。
  • それだけに韓国は苦しい立場となった。米中の駆け引きの可能性を、政府が果たして分かっていたか疑問だ。

碁盤の石に転落

 米国の強い要求に屈し、中国に脅されながらもTHAADの配備を認めた。というのに裏で米国は中国に「対北制裁案で譲歩してくれるなら配備をやめてもいい」と言っているようだ――という展開に、韓国人は腰が抜けるほどショックを受けたのです。

 そこで東亜日報をはじめとするメディアは政府に「『THAADのカード化』を米国からちゃんと知らされていたのか」と食ってかかったわけです。

 確かに、約定書を交わすセレモニーのドタキャンを食った時の韓国国防部の慌てぶりを見ると「韓国政府は米国から手の内を一切、知らされていなかったのだな」と考えるのが自然です。

 興味深いのは、韓国が梯子を外されたと気づくだいぶ前から中国が「このままでは、あんたはピエロになるよ」と忠告というか、警告していたことです。

 約定書の交換が突然に延期されたのが2月23日。その1週間前、ケリー国務長官やハリー司令官が「後退発言」を繰り出す10日以上も前の2月16日、環球時報が社説で「THAADを配備すれば韓国は、中・米両大国が打つ碁盤の石に転落する」と書いていました(「表・THAADを巡る米韓中の動き」参照)。

THAADを巡る米韓中の動き(2016年)
1月6日 北朝鮮、4回目の核実験
1月7日  
朝鮮日報、社説で核武装を主張
与党セヌリ党幹部2人、核武装に言及
1月13日 朴大統領、国民向け談話で「THAAD配備は国益に基づき検討」
2月7日  
北朝鮮、長距離弾道ミサイル実験
韓国国防部「THAAD配備に関し、米国と公式協議に入る」
中国外交部、北朝鮮と韓国の双方の大使に抗議
Global Times社説「配備すれば戦略・戦術の両面で軍事目標に」
2月16日  
環球時報・社説「配備すれば韓国は中・米の碁盤の石だ」
朴大統領、国会演説で「配備の協議開始も抑止力の一環」
2月17日 王毅外相、平和協定締結のための米朝協議を提唱
2月21日 WSJ「2015年末、米朝が平和協定に関し秘密交渉」
2月23日 米国、配備に関する合同実務団結成のための約定書交換を突然に延期
2月24日 ケリー国務長官「配備に汲々としない」
2月25日 ハリス米太平洋軍司令官「必ず配備するわけではない」
3月2日 国連安保理、対北朝鮮制裁を採択
3月4日 米韓、配備に関する合同実務団結成のための約定書を交換

中国の忠告は親切心から?

 この新聞は中国共産党の対外威嚇用メディアで、社説は「中韓は互いに冷静になるべきだ」(中国語版)。英語版のGlobal Timesでは「China, Korea must keep clear mind」です。英語版こちらでは碁石ではなく、チェスのポーン(Pawn)に例えています。

  • It will make the Blue House further lose its national independence, and become a pawn in the game between major powers.

—「青瓦台(韓国大統領府)は国としての独立性を一層失い、大国間のゲームのポーンになる」とはなかなか厳しいですね。

鈴置:「独立性を一層失う」――。要は「すでに独立国ではないのだが、さらに……」ということですからね。日本語に翻訳すれば「お前は将棋の歩だ」あるいは「捨て駒に過ぎないのだ」と言い切ったわけです。

—なぜ、中国はわざわざ韓国に「あんたはピエロを演じているよ」と教えたのですか。

鈴置:中国のやることですから、親切心からとは思えません。「米国に騙されているぞ」と韓国人の心を揺さぶるのが目的でしょう。

 韓国が「米国の裏切り」に気づく前にそれを指摘しておけば、効果はより大きいのです。実際、韓国各紙は環球時報のこの社説を引用し「碁盤の石」という表現を使うようになりました。

小憎らしい元・属国

 左派系紙のハンギョレは「韓国は米国の『碁石』にすぎないのか」(2月23日、日本語版)という寄稿を載せました。書いたのは金東椿(キム・ドンチュン)聖公会大学教授。ポイントは以下です。

  • ついに中国から「碁石」に過ぎないという屈辱的な言葉まで聞くことになった。
  • ウィキリークスが公開した資料によれば、米国が韓国に軍隊を維持している理由は北東アジアで自国の「利益」を守るためのものであり、特に「韓国が米国産兵器の主要顧客」であることを強調している。
  • 米国は北朝鮮の崩壊、あるいは朝鮮半島の統一には関心がない。 中国を屈服させ、米国の市場を拡大できるか否かが彼らの死活的利害だ。
  • 米中間に局地的衝突が起きても戦場は朝鮮半島であり、最大の犠牲者は韓国と北朝鮮の人民であろう。
  • 旧韓末、休戦協定期のように韓国は再び周辺国に自身の命運を任せなければならない存在に転落している。 政権にとって利益になるならば「超大国の防具」であっても構わないというのか?

—「碁石」という言葉を手がかりにして、ダイナミックに「反米論」を展開しましたね。

鈴置:古典的な左派の従属理論――韓国は米帝国主義に従属する存在だ、という主張です。久しぶりに見ました。

 中国は、米国が切ってきた「THAAD配備」というカードを上手に加工して「碁石」とし、反米用の素材として韓国に撃ち込んだのです。この寄稿はそれが功を奏したいい例です。

 もちろん中国が「碁石」と揶揄したのは、韓国が小憎らしかったこともあったでしょう。米国の軍事力を背景に「THAADを配備するぞ」と言い出した韓国――。中国人の目には、元・属国のくせに生意気な振る舞い、と映ったはずです。

THAADでのませた強い制裁

—「碁石」だろうが「ピエロ」だろうが、THAADのカード化によって中国に「極めて強い制裁」をのませたのではないのですか?

鈴置:その通りです。今後、中国が対北制裁の手を緩めた際にも、米国は再び「THAADカード」を発動して中国に圧力をかけることができます。

 THAAD配備を具体化するための米韓の実務協議は、これから始まります。実務協議は開かないか、あるいはゆっくりと進めておき、中国が本気で制裁に動かないと判断したら、協議のテンポを一気に速める――という手もあるのです。

 ハリス米太平洋軍司令官の「配備を協議することで合意したからといって、必ず配備するわけではない」との発言は、そうした作戦が念頭にあるのかもしれません。

 ただ韓国も、面白くはないにしろ「カード化」自体は我慢せざるを得ないでしょう。なにしろ今、一番大事なことは対北制裁の効果を上げることなのですから。

いつの間にか仲間外れ

—では、韓国メディアは何が不満なのでしょうか。

鈴置:「カード化」を米国から知らされていなかったことです。こんな調子なら韓国の運命に関わる、もっと重要なことまで自分の知らないうちにどんどん決められてしまう――と危機感を持ったのです。

 タイミング良くと言うか悪くと言うべきか、米国と北朝鮮が2015年末に、国交正常化や在韓米軍撤収につながる可能性の高い秘密交渉に入りかけていたことがこの頃、明らかになりました。

 この秘密交渉に関しても韓国政府は米政府から知らされていなかったのではないか、と韓国各紙は疑っています。

 米国と中国、果ては北朝鮮までが自分の知らないところでこっそり朝鮮半島の将来に関し話し合っている――と韓国人は疑心暗鬼に陥ったのです。「THAAD」だけならまだしも、「韓国」という国の運命までがカード化されたら大変です。

 韓国人は「米中を手玉に取り、両大国の力を生かして日本と北朝鮮を叩く」という“天才的な朴槿恵外交”に酔ってきました。

 そこに突然降ってわいた「周辺国に命運を任せる」予感。いくら楽観的な韓国人でも、これでは落ち込まざるを得ないのです。

そのあたりは次回に詳しく聞きます。

(次回に続く)=3月14日に掲載予定

3/9日経ビジネスオンライン 福島香織『拍手は?トイレは?「全人代」の意外な見どころ 「習近平の不満」と「習近平への不満」が醸す不安感』、3/9日経電子版『習近平氏と王岐山氏「衆人環視の密談」広がる臆測』について

要人の健康問題に関するタブーは世の東西を問わず、民間企業ででもあります。況してや秘密主義の共産党では。それでも記者が鵜の目鷹の目で何かを見つけようとしていますのは、本記事で分かりました。確かに李克強は下放中も勉強に勤しみ、農民と交わることもなかったとのこと、頭が良い分だけ肚が据わってない印象を受けます。やはり、下放されてもっと厳しい状況に置かれた、習近平や王岐山の方が度胸はあると思います。腹黒くなければあの時代は生き延びれなかったでしょうから。

福島氏記事にありますように、財政支出は債務を増やすだけで、根本解決でなく、デフォルトの先送り策です。これが持続可能とは思えません。貨幣増刷で乗り切ろうとするのでしょうけど、人民元のキャピタル・フライトを引き起こします。資本規制をすれば、中国の在米資産凍結を招く可能性もあります。

国有企業のリストラで600万人の解雇、軍人30万人のリストラは共産党打倒の革命を引き起こすかも知れません。地方や軍が簡単に言うことを聞くとは思えません。

南方都市報は昔から骨のある新聞でした。何清漣も深圳法制報の記者でしたから、南の方が度胸があるのかも知れません。結局彼女は米国亡命せざるを得なくなりますが。南方都市報は広州市で発行されています新聞で、同じ系列で発行している南方週末は社説差し替え命令を受け、共産党に抗議の意を示したことがありました。また、オバマのインタビュー記事の掲載ストップ指示に、抗議して二ページの下半分を白紙で発行したこともありました。葉剣英が牛耳っていた土地ですから一筋縄では行きません。小生が住んでいた感想としては無法地帯と言った印象でした。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%97%E6%96%B9%E9%80%B1%E6%9C%AB%E7%A4%BE%E8%AA%AC%E5%B7%AE%E3%81%97%E6%9B%BF%E3%81%88%E4%BA%8B%E4%BB%B6

「●東京新聞(TOKYO Web)

■中国週刊紙記事 差し替え 記者スト 市民も抗議

http://www.tokyo-np.co.jp/article/world/news/CK2013010802000089.html

2013年1月8日 朝刊

7日、広東省広州市の「南方週末」が入るビルの前で、言論の自由を訴える市民ら=今村太郎撮影

 【広州(中国広東省)=今村太郎】広東省の週刊紙「南方週末」の記事が当局の指示で削除、差し替えられた問題で、同紙記者の一部が七日、抗議のストライキを始めた。共産党宣伝部によって厳しく管理される中国メディアが、当局側と激しく対立するのは極めて異例。広州市にある同紙本社ビル周辺には市民数百人が集まり、「言論の自由を」と書いた紙などを手に、同紙を支持している。 

 南方週末は六日夜、短文投稿サイト「微博(ウェイボ)」で、記事差し替えを否定する声明を発表。だが、記者らは「当局の圧力を受けて出された偽の声明」と反発し、ストライキを宣言。本社ビル前では七日朝から「われわれには言論の自由が必要だ」「南方週末を支持する」と書いたビラを持った市民が集まり、正門前にビラや花束を並べた。警戒に当たる警官隊約五十人に抗議する市民もいたが、排除はされなかった。

 同紙は三日発売の新年特別号で「中国の夢、憲政の夢」と題し、憲法に基づく民主政治の実現などを主張する記事を掲載する予定だった。だが、広東省の共産党・宣伝部の指示を受け、中国の発展を強調する内容に差し替えられた。同紙の元記者らは省宣伝部の〓震(たくしん)部長の辞任を求め、対決姿勢を強めている。

 南方週末は、独自の調査報道や踏み込んだ政治評論で知られ、たびたび当局の介入を受けてきた。二〇〇九年十一月には初訪中したオバマ米大統領に単独インタビューしたが、宣伝部の指示で掲載を中止。この際は、インタビュー記事のスペース(二ページの下半分)をほぼ白紙で発行し、抗議の意思を示した。 ※〓は度の又の部分が尺」

福島記事

bowing Li Keqiang

全人代でお辞儀をする李克強と、隣に座る習近平。誰が拍手をしたのか、しなかったのか、健康状態はどうか、読み取るべき情報がそこかしこに(写真:ロイター/アフロ)

 中国の全国人民代表大会(全人代)が5日開幕した。一足先の3日に開幕した全国政治協商委員会とあわせて両会と呼び、日本では国会のようなもの、と紹介される。だが、はっきり言って、政策や法案の中身は前年の秋までに決められており、その審議も採決も議員に相当する人民代表や政協委員が自由に議論したり反対票を投じられるようなものではないので、政策決定上はほとんど意味のない一種の政治儀式である。

 では、なぜ世界各国のメディアが、わざわざ現地に赴き、この無意味そうな儀式を懸命に取材するのかというと、一つには現場にいなければ分からない、政権の“空気感”を確認したいという思いがあるだろう。なにせ、中国の最高指導者たち政治局常務委員7人が人民大会堂の大ホールのひな壇に揃うのである。その表情やしぐさすべてが、外国人記者たちにとっては普段得られない情報である。今年の全人代の見どころを、いくつか拾っていきたい。

「健康」は?「関係」は?「核心」は?

 まず全人代では、中国の指導者たちの健康状態をチェックするのが記者たちにとっては結構重要な仕事である。今年の全人代の初日に行われる李克強首相の政府活動報告のときに話題になったのは、お辞儀したときに見えた李克強の頭頂部の髪がずいぶん薄くなったことだった。

 そして、李克強が政府活動報告を読み終えて席に戻るとき、出席者は全員拍手するのが慣例なのだが、隣に座っていた習近平は拍手をしなかった。それどころか視線を合わせたり会釈したりすることもなかった。胡錦濤政権時代、温家宝が首相として政府活動報告を読み上げたときは、席に戻ったときに胡錦濤と温家宝は握手をするのが常であった。

 この全人代開幕日の政府活動報告宣読は、拍手を入れるタイミングまで、事前に決められている。今年、拍手が起きたのは45回。去年は51回。2014年も50回以上だった。今年はかなり拍手が少なかった。こうしたことから、記者たちは習近平と李克強の関係がかなり冷え込んでいること、ストレス負けしているのはおそらく李克強の方であること、習近平自身はこの政府活動報告の内容(政府活動報告は李克強が起草)にかなり不満を持っていそうなことなどを推測するのである。

仮に習近平がこの政府活動報告に不満だとすると、いったいどこが気に入らないのだろうか。

 これも、推測の範囲でしかないのだが、習近平サイドは、この政府活動報告で「習近平同志を“核心”とした党中央の指導のもとに」といった文言を入れてほしかったのかもしれない。だが、政府活動報告は“習近平同志を総書記とした党中央”という表現にとどまっている。

 実は、今年に入ってから、習近平を“核心”と位置付ける発言が安徽や広西など地方の党委書記から出ている。“核心”というのは、唯一の権力の中心と位置付ける言葉であり、この言葉が使われるのは権力掌握の証ともされている。毛沢東、鄧小平は間違いなく党中央の核心に君臨。江沢民は鄧小平によって“核心”と位置づけられたが、胡錦濤政権ではついぞ使われなかった。つまり、胡錦濤は江沢民との権力闘争の中で最後まで核心になりえなかった。

 習近平は今年になって、“核心”という言葉を使わせようと、地方からじわじわ裏工作を謀っているようで、全人代では“核心”呼びを定着させるつもりではないか、という予測が事前にあった。それが、できなかったのはまだ、抵抗勢力が強いということだろう。

「定年でも残留」が長期独裁の布石に

 もう一つ、記者たちが驚いたのは、全人代開幕後1時間半を過ぎたころの政府活動報告中、党中央規律検査委書記の王岐山が突然、席を外したことである。汚職摘発の辣腕を振るってきた王岐山が突然、ひな壇から姿を消したので、ひょっとすると、何か突発事件が起きたのではないか、とざわめきが起きた。

 5分後に何事もなく戻って来たので、ひょっとしてトイレか?と記者たちは思った。だが続く第2回全体会議でも開始から1時間半後に8分ほど離席。この現象について、記者たちの間では王岐山は頻尿ではないか、という噂が駆け巡ったという。

 今後の権力闘争の行方を占う上で、王岐山の健康状態は鍵である。2017年秋の第19回党大会で本来なら内規上の定年年齢に達している王岐山が政治局常務委に残留することになれば、その前例をもって習近平がその5年後の第20回党大会で引退をせずに、長期独裁政権を樹立する根拠となりうる、と見られているからだ。だが、王岐山が頻尿だとすると、2015年11月に、王岐山が28日にわたって動静不明になったことが、健康問題ではないかという推測も成り立つ。当時は、王岐山が失脚したのではないか? あるいは新たな大物政治家の取り調べが始まっているのではないか? という噂が流れていた。

 次に、記者たちの仕事は、政府活動報告の中身の分析である。まず今年のGDP成長率目標として「6.5%から7%」という数字が挙げられたことの意味。政府活動報告ではその年のGDP成長率目標の具体的数字が盛り込まれるが、このように何%から何%という幅のある目標値が挙げられるのは初めてである。

 2015年の全人代同様、7%前後という目標値を挙げたいのだが、いくら何でも信憑性がなさすぎるので、表現をぼかしたのではないか、と見られる。実際のところ6.5%成長も無理目であり、昨年の成長率6.9%も、全人代で目標値を7%前後と言ってしまった故に、こじつけた数字だろう。実際は6%にも満たない、5%以下ではないか、というのが国内外のアナリストたちの見解である。

 いわゆる李克強指数(電力消費、鉄道貨物輸送量、銀行融資残高。GDPの数字があてにならないので、この3つの統計によって実際の経済状況を把握せよと李克強が言ったとされる)では、昨年の電力消費の伸びは0.5%増、鉄道貨物輸送量は昨年上半期だけで前年比10%減、銀行融資残高は2015年末で前年比14.3%増なので、正直これで6・9%成長がかなうのは不思議である。

一層の元安へ? 債務爆弾、今年こそ備えよ

 2016年の財政赤字は2.18兆元、GDP比3%に引き上げたのは、予想通りとはいえ、それなりの衝撃を与えた。これは1998年から2003年のアジア金融危機のときに当時の朱鎔基首相が財政出動をとった時以来の高さ(朱鎔基はこの時、数字公表を拒否)であり、2008年のリーマンショックで、胡錦濤政権が4兆元の財政出動を行ったときですら、財政赤字のGDP比は2.8%にとどまっていた。

 昨年のうちに当局者からGDP4%以上の財政赤字も大丈夫だ、という発言が出ていたので、今年は過去最大規模の積極財政方針をとるだろう。日本や米国の財政赤字比率からすれば、大したことないじゃないかと思う人も多いだろうが、マネーサプライ(M2)が対GDP比200%以上の中国の場合、これはかなり大胆な挑戦であり、生産過剰と不良債権化がむしろ進み、一層の元安に直面する、といった予測もある。

 ちなみに地方専項債権の4000億元はこの財政赤字には入っていない。中国の総債務(政府、企業、家計)は2014年半ばでGDPの282%(米マッキンゼー報告書)、すでにGDP比300%を超しているという報道もあるので、中国の債務爆弾爆発に対する衝撃に今年こそ備えが必要かもしれない。

 もう一つの注目点は、十三次五カ年計画(十三五計画、2016~2020年の経済計画)の中身だ。2021年は中国共産党建党100年目であり、習近平政権の二つの100年目標の一つである2021年に全面的小康社会(そこそこゆとりある社会)の建設を実現するための最後の経済計画である。インフラ建設の強化が打ち出され、中でも北京と台北間の高速鉄道計画が話題をさらった。もちろん、台湾サイドの意向などお構いなしの「言うだけ」計画で、中台統一を警戒する台湾は大反発している。

十三五計画の肝は「安楽死」、改革の分業は崩壊

 十三五計画で一番、キモとなっているのはインフラ建設資材を生産する鉄鋼、石炭、アルミ、ガラス、セメント分野のいわゆるキョンシー企業、ゾンビ企業とよばれる万年赤字国有企業の“安楽死”問題だ。過剰生産分の資材をインフラ建設強化で消化しつつ、ゾンビ企業を整理して、これに伴う失業者対策に1000億元を拠出して基金を創るという。今後2~3年で600万人前後をレイオフ(一時解雇、事実上の失業)するという予測が伝えられているが、90年代、自ら憎まれ役を買ってでた鬼宰相の朱鎔基ですら道半ばであった国有企業改革を、ストレスに弱そうな李克強に貫徹できるか。失業者問題は中国社会の不安化を一気に加速する可能性もある。

 今回の政府活動報告でも「改革」と言う言葉を70回前後連呼していたが、連呼されるほどに、今の中国に改革を断行できる力量は見えない。2013年の三中全会(第三回中央委員会全体会議)で打ち出された“リコノミクス(李克強経済学)”では法治化、市場化、政府介入の減少こそが改革の骨子であった。ところが現実には、株価も為替も政府介入、行政指導の連続であり法治化、市場化はむしろ遠のく印象だ。

 今やリコノミクスという言葉は忘れさられ、キンペノミクス、シーコノミクス(習近平経済学)という言葉を使うようになった。つまり、国家主席と首相の本来あった分業体制は完全に崩れている。江沢民と朱鎔基は相当仲が悪かったが、少なくともこの分業体制は機能しており、首相が全面的に指揮と責任を引き受けて改革に取り組むことができた。それと比べると、今回、90年代以上に困難な経済改革に、誰が責任をもって命がけで取り組むかというと、そういう人物が見当たらないのも、中国経済改革の先行きの暗さの一因だろう。

 肝心の習近平は、独裁志向と自らの個人崇拝志向をますます強めており、メディアに対する忠誠を恥ずかし気なく求め、これまでならば許されてきた程度の批判でさえ、処罰の対象とするようになった。表向き習近平礼賛を合唱するメディア関係者の腹の中の怨嗟の声は、外国人の私たちにも漏れ伝わるレベルである。習近平の独裁志向と、批判や提言を自らに対する反逆ととらえる性格は、結果的に国務院(内閣)、政府機関の職能を弱め、官僚の心理的サボタージュを引き起こしている面もあると指摘されている。

 国内の経済政策や外交政策の仕切りのほとんどは、習近平を中心とする党中央の小組が執り行っているが、習近平は経済から外交、軍制改革までの責任を一人で負えるほどのスーパーマンではない。結果として米中対立の先鋭化や中国株式市場への信用失墜、香港の核心的価値の決定的喪失といった事態が起きていて、これらは紛れもなく中国の国益を損なっている。

行き詰まり感とバランスの悪さと不満感と

 全人代開幕直前の4日夜、中国国内の比較的新しいネットニュースサイト「無界新聞」に、「習近平同志に党と国家の指導職を辞職することを要求する」と題した匿名の“忠誠の共産党員”による公開書簡が掲載され、一時はサイトがダウンする事態も起きた。

 「無界新聞」は「財経」誌を発行している財訊集団と新疆ウイグル自治区、アリババが出資して新疆地域に対する宣伝工作、世論誘導のために昨年4月に立ち上げた、いわば習近平政権肝いりサイトである。サイト関係者はハッキングされたと説明しているそうだが、習近平の政策の失敗を並べたて、国家と党のために引退してくれと訴える公開書簡が、中国のニュースサイトに掲載されたのだから、やはり党内部の習近平に対する不満の高まりを反映した“政治事件”と見る向きが強い。そうした国内党内の不満は、全人代のような場で多少なりとも話し合いで解消するのが、本来の役割なのだろうが、チベット自治区代表団が習近平バッチをつけてきたことからもわかるように、習近平への忠誠アピールを競うようなムードになっているのである。

 今年の全人代の空気が示すのは、中国の改革には期待できそうにないという行き詰まり感、党中央と国務院機能のバランスの悪さ、そしていつ何が起きても不思議ではないほどの党内人士の不満感、不安感ではないだろうか。

日経記事

中国の“絶対権力者”になりつつある国家主席、習近平に背後から手をかけて呼び止め、対等に話しながら退場する反腐敗の鬼、王岐山――。

 3月3日、極めて珍しい光景が出現した。北京で開幕した全国政治協商会議の全体会議が終わり、「チャイナ・セブン」といわれる習ら最高指導部メンバーがひな壇から順番に退場する際の一幕だ。

 衆人環視の下での密談である。2千人以上の全国政協の委員、1千人もの記者らが見守るなか、政治局常務委員の王岐山は、ボスである習に何を言ったのか。これが注目の的だ。次々と大物を捕まえた、泣く子も黙る共産党中央規律検査委員会の書記だけに、である。

 一考に値する推測がある。権力者への諫言(かんげん)のあり方、そして翌4日に発表される反腐敗の大物摘発が話題だったのでは、というのだ。幕の向こうに習と王岐山が消えてからも会話は続いただろうから、2つのテーマくらいは話題にできたかもしれない。

■トップへの諫言問題が話題か

Xi & Wang Qishan

政治協商会議の開幕式を終えて習近平(左)に話しかける王岐山・政治局常務委員(北京の人民大会堂)=写真 小高顕

 前者には根拠がある。王岐山が仕切る共産党の中央規律検査委員会などの機関紙。そして同委と中国監察省が合同でつくる公式サイトだ。全国政協の開幕直前、司馬遷による史記の記述などを引いて、諫言の重要性を指摘する文章をほぼ同時に発表していたのだ。

 「唯々諾々と従う1千人のイエスマンは、ただ一人の志ある人物による諫言に及ばない」

 意訳すると、こんな内容だった。中国の戦国時代、強国への道を歩む秦国の政治家だった商鞅と、その腹心の関係。名声の高い「貞観の治」で知られる唐王朝第2代皇帝、李世民と臣下の関係を例に挙げている。

 耳に痛い諫言をする人物を遠ざけてはいけない。それができれば、歴史に名を残す偉大な人物になれる。文章が説く趣旨だ。筆者は王岐山ではない。とはいえ、いまは言論統制が非常に厳しく、全国政協の委員や全国人民代表大会(全人代、国会に相当)代表らの口も重い。その時代に“危険な文章”を公式掲載するには、王岐山の許可が必須だ。

 「これだけ高度なテクニックを要する文は、王岐山自らがアイデアを考えたに違いない」。北京の知識人の見方だ。

その後の展開が興味をひく。中央規律検査委の“公式見解”はすぐに流布され、これを引用して言論の自由を説く文章がインターネット上に次々登場した。すると一部の文章が「問題あり」とされ、削除されたのだ。

 言論統制の元締めは党中央宣伝部や、新設された国家インターネット情報弁公室である。削除の基準は、中央宣伝部などが示す。そして宣伝部の担当は、党内序列5位の政治局常務委員、劉雲山である。

Liu Yunshan

政治協商会議に出席した劉雲山・政治局常務委員(北京の人民大会堂)

 読み解きはこうなる。「中央規律検査委の王岐山と、中央宣伝部の劉雲山の言論問題への見解は異なる。もしかしたら対立しているのでは……」。知識人らのひそひそ話である。ネット上に書くと削除されてしまうので、昔のように口コミ(中国の言葉で「小道消息」)で広がっている。

■「中国版トランプ」への集中砲火

 もう一つ、面白いエピソードがある。今、中国のネット上で熱い議論が交わされているのは、「不動産王」の言論だ。彼の名は任志強。歯に衣(きぬ)着せぬ舌鋒(ぜっぽう)の鋭さで、有名なネット言論人でもある。

 任志強のブログの内容が党内で批判を浴びている。「中国メディアの姓はすべて共産党で、党に忠誠を誓うべきだ」という党が打ち出したスローガンに敢然とかみついたのだ。

 「すべての(中国)メディアの姓が党で、人民の利益を代表しないなら、人民は見捨てられたということだ」

 任志強はブログで繰り返し反発した。メディアは一般大衆の利益を代弁すべきだ、と主張しているのだ。正論である。彼の反発は、習が2月19日に国営、中央テレビなど三大メディアを視察したのがきっかけだった。

 任志強は「太子党」に属する。旧商業省次官を務めた父を持つ。首都防衛の要、第38集団軍に所属した軍人の出身で、後に不動産大手、華遠集団を率いた。共産党員であり、労働模範として表彰を受けている。北京市の政協委員でもある。

 不動産王で舌鋒が鋭いといえば、米共和党の大統領候補を争っているドナルド・トランプと似ているが、中国の不動産王も負けてはいない。

 この任志強。実は王岐山と極めて親しい。弟子といってもよい。文化大革命の嵐が吹き荒れた1960年代、北京の中学校で先輩、後輩の仲だった。年上の王岐山が任志強の指導員まで務めた。

 その任志強が劉雲山の中央宣伝部の系統から集中砲火を浴びるなか、王岐山は習を呼び止めた。共産党のしきたりからして、指導部の一員でもない任志強の個別問題に、王岐山が直接言及するはずもない。とはいえ、もっと大きな「習の治世と諫言のあり方」を話題にすることはできる。例えば、「中央規律検査委の文章を読んでください」というように。「周辺にこう推測させるだけで十分効果は得られる」。関係者は指摘する。

王岐山は翌4日に発表した元遼寧省、吉林省トップの中央委員、王珉の摘発について報告した、という推測ももっともらしい。全国政協と全人代の期間中に格の高い中央委員の摘発を公表するには、トップである習の承認が不可欠だ。時間がないなか、王岐山は習を呼び止めて立ち話せざるを得なかったのかもしれない。

National politics & business conference

3日に開幕した全国政治協商会議(北京)=写真 小高顕

 とはいえ、王岐山と任志強の個人関係、中央規律検査委機関紙や公式サイトの文章を見れば「諫言問題説」にも十分な説得力がある。

 そもそも習と王岐山は親しい。文革の際、2人は陝西省の黄土高原に位置する延安近くに「下放」され、そこで知り合った。習は15歳、王は20歳の知識青年。王はまだ幼い習を自らの洞窟式の住居に泊め、読書も指南した。ちなみに同じころ、後の不動産王、任志強も延安付近に「下放」されていた。

 いまや習は、中国の権威あるトップだ。だが、旧交がある先輩、王岐山には、習を後ろから呼び止めるだけの度胸があった。それも公衆の面前で。他の誰もそんな恐ろしいことはできないが。これは指導部内での人間関係の機微でもある。

■南方都市報の編集者は解雇

 先週、このコラムで広東省の新聞、南方都市報が勇気をもって習政権のメディア統制を批判した経緯を紹介した。紙面づくりを担当した気骨ある女性編集者はその後、解雇された。編集責任者も処分を受けた。理由は「政治的な配慮を欠き、紙面に重大な欠陥をもたらした」というものだった。やはり党中央宣伝部などの怒りに触れたのだ。

 言論をどこまで統制するのか。この問題は、ネット上や巷(ちまた)の大きな話題であり、今後も尾を引きそうだ。そして習近平、王岐山、劉雲山らがどう動くのか。来年、2017年には5年に1度の党大会がある。最高指導部人事を前にした「力比べ」も絡むだけに非常に興味深い。(敬称略)

3/7JBプレス 森清勇『中国の南シナ海要塞化を見逃す米国の凋落と歴史観 このままでは日本、台湾、ASEANとの同盟関係維持も困難に』、3/8西村眞悟メルマガ『平和を望むならば戦いに備えよ』について

藤岡信勝氏のFacebookより引用。日教組打倒のために非常に良いことです。広島の中学生の自殺も日教組が強いく教育そっちのけで政治活動をしているせいで起きた事件ではと思っています。

「検定中の教科書を教員など採択関係者に見せ、金品を渡していた事案につき、新しい歴史教科書をつくる会は、3月7日、教科書発行10社を東京地検特捜部に刑事告発した。この日、文部科学大臣に告発の報告と申し入れを行い、文科省記者クラブにおいて記者会見を行った。以下、つくる会のFAX通信から転載する。

【新しい歴史教科書をつくる会は、3月7日、一連の検定中教科書「贈収賄」事案について、東京地検特捜部に該当する教科書会社10社の社長を「贈賄」の罪で刑事告発しました。続けて、文部科学省において文科大臣宛に刑事告発の報告と併せて下記の申し入れを行い、その後記者会見を行いました。

 申し入れ及び記者会見には、髙池勝彦会長、石原隆夫副会長、岡野俊昭副会長、藤岡信勝副会長、荒木田修理事が出席し、各々よりこの問題の重大性を説明しました。

平成28年3月7日

文部科学大臣 馳 浩 様

(一社)新しい歴史教科書をつくる会会長 高池 勝彦

          検定中教科書「贈収賄」事案についての要望

この度、教科書発行各社が検定中教科書を教員らに見せ、金品などを謝礼に渡していた事実が明らかになりました。文部科学省は各社からの報告を公表し、さらに実際の教科書選定・採択への影響の有無を、全国都道府県教育委員会に3月中旬までに報告するよう指示されました。このことに私どもは謝意と敬意を表します。

今回の事案は、教科書業界と公務員である教育委員会・教師との間で起きた、下記の法律に抵触した重大な「犯罪行為」です。

・「刑法第197条(収賄、受託収賄及び事前収賄)及び198条(贈賄)」の違反

・「地方公務員法第29条(懲戒)」の違反

・「独占禁止法」の違反           (各法律については資料LinkIcon参照)

当会はまず上記の「刑法第198条」への違反について、本日3月7日、該当各教科書会社を東京地方検察庁に刑事告発したことをご報告いたします。

さらに本事案は独占禁止法に基づく規制(「教科書業における特定の不公正な取引方法」)にも逸脱しており、まさに教科書無償措置法の根幹を揺るがす未曾有の大不祥事です。本来、子供や生徒に対し、不正行為を否定する教育をすべき立場の教員や教科書業界の倫理感が疑われます。「子供たちに顔向けできるのか?羞恥心があるのか?」を問いたい思いです。

よって私どもは文部科学省に対し、教育行政の信用回復と再発防止のために、下記の6点について速やかな検討・実施を切に望みます。

(1)文部科学省は、今回指示した各都道府県教育委員会からの報告の結果を精査し、影響があったとされた教育委員会は「教育委員会名とその報告内容」を公表すること。また該当する教育委員会の採択地区については、採択の無効化とやり直しを検討すること。

(2)謝礼を受け取った当事者は全員氏名を公表し、処分を科すこと。

(3)教育現場で教育に関する不正行為を発見した者は、身分保障も含め安心して、文部科学省へ直接通報できるシステム(内部通報制度)を構築すること。

(4)1月20日の教科書発行各社からの報告にあたり、義家弘介文科副大臣は、「報告漏れが発覚した場合は指定の取り消しも含めて必要な措置を講じることも辞さない。徹底的な調査を行っていただきたい」との発言をされているが、各社より報告されたものは「氷山の一角」にすぎない可能性が極めて高い。これまでの膿を一切出し切るために、文部科学省主導で調査を続行すること。さらに、全国各教育委員会に対して、報告漏れの事案の有無について、既に退職している教育関係者への聞き取りなども含め徹底した調査を指示すること。

(5)その調査報告いかんでは、義家副大臣の発言通り、該当する発行会社を教科書発行停止などの厳罰に処すること。

(6)現行の制度では、無償措置法の趣旨により適った教科書採択が行われることを目的とした、現場教員などによる「調査研究制度」や「共同採択区制度」がある。しかしそれらの実態は、日教組等の教職員経験者による恣意的な運用などにより、本来の趣旨にそぐわないものとなっている。それが結果的に今回のような不祥事を生んでいる。

文部科学省はこれらの制度の問題点について早急に検討・見直しを行い、今後、国民にとってより透明性の高い公正な教科書採択が行われるよう改善をはかっていただきたい。

最後に、本事案発覚の経緯は、昨秋からの報道の追及と文科省からの指導によって隠しきれないと判断した各教科書会社が、言わば自首した形で行われたものです。2月24日には、該当教科書会社10社が文科大臣に謝罪をおこないました。

しかし、本件は大臣の厳重注意をもって一件落着として幕を引くような軽微な事案ではありません。当会は、文部科学省の本件の対応について、今後も引き続き注目して参る所存です。大臣に於かれましては、一層の指導力を発揮していただきたいと思います。(以上)】」

さて、本記事ですが台湾を含めたATO(Asian Treaty Organization)を早期に作って対応しなければ。米国の対応が遅いのはオバマのせいだけではなく、金に転んでいる要人が一杯いるためです。日本も米国とニュークリアシエアリングの交渉をして行かないと。その際、日米安保条約が破棄される場合、一部の核を日本に譲渡する内容で締結してはどうか。やがては破棄されなくても譲渡されるようになれば良い。オフショア・バランシングとか言うのなら日本にも核を持たせないと。

中国の全人代の李首相の発表で、後半ずっと汗をかいていたことがTVで話題になっていました。それはそうでしょう。自分の思い、考えと違うことを無理やり言わされたのですから。従来ですと、政治・外交は主席、経済は首相と分けていたのに、習が無理やり「財経小組」を作ってリーダーとなり、李克強から実権を奪いました。でも全人代で李に発表させたという事は、経済が立いかなくなったら(というかここまで債務が膨れ上がれば、誰がやっても回復できないでしょう)、李の首を斬ると言うのを中国全土にアピールしたのです。それで、李は汗をかいたというのが真相では。習の腹黒さが窺えます。こうでなければ中国のトップにはなれないのでしょう。「騙す方が賢く、騙される方が馬鹿」という民族なので。

やはり、中国の経済を崩壊させるのが軍事膨張の野心を止めるのに一番良いと思います。財務省の通貨スワップの議論や外務省のODAは止めるべきです。こいつらは学力が高いだけで、世の中が見えてない連中です。支援をすればどういう結末を迎えるか分かりそうなもの。まあ、老後の天下り先の心配ばかりしている官僚たちですから、矜持を持って仕事せよと言っても難しいのかも知れませんが。保身ばかりが目立ちます。自己中心な日本人の典型です。

記事

Philippino's protesting action in front of Chinese consulate

フィリピン・マニラの中国領事館前で抗議活動を行うベトナム人とフィリピン人たち(2016年2月25日撮影、資料写真)〔AFPBB News

 南シナ海における中国の傍若無人の行動を見るにつけ、アジア重視にピボットしてリバランスしたはずの米国に疑問が湧いてくる。

 カリブ海と南シナ海では米国にとっての意味が異なることは分かる。しかし、ソ連がキューバにミサイルを持ち込んだ時の対応に比して、中国の南シナ海における行動に対しては余りにも対応が鈍い。

 軍首脳たちは対応が遅れれば遅れるほど、大きな犠牲が伴うことを進言しているようであるが、2回ほど「航行の自由」作戦を行っただけである。「世界の警察官ではない」と宣言した大統領には別の思惑があるのかもしれない。そうした米国の対応を見越して、中国は急ピッチで南シナ海の軍事拠点化を進めている。

 内向きのバラク・オバマ政権で、果たして日本の安全は保障されるのか。日本はどういう立ち位置で行動すればいいか、今一度真剣な考察が必要であろう。

台湾の政権交代を追い風に

 台湾では先の総統選挙で親日的な蔡英文氏が大差で勝利し、5月に8年ぶりの政権交代が行われる。同時に行われた立法院選挙でも民進党が過半数を超す議席を確保し、与党による安定した議会運営が期待される。台湾の現状維持は日本のシーレーン維持のためにも不可欠である。

 しかし、中国が主張するように南シナ海が中国領となり、内海化して対空ミサイルや戦闘機・戦闘爆撃機を配備し、さらに防空識別圏を設定すると、海上自衛隊や米第7艦隊は通りにくくなる。それはとりもなおさず台湾の孤立化であり、その先にあるのは台湾の香港化であろう。

 その結果、台湾海峡とバシー海峡の自由航行が阻害されることになれば、南シナ海を通る日本のシーレーンは遮断され、ASEAN(東南アジア諸国連合)との通商は大きな打撃を受けることになる。

 もちろん、中東からの原油輸送も南シナ海の航行ができなくなれば迂回が必要で、長大な航路となり、経済的損失は計り知れない。また、台湾を拠点に東シナ海における中国の活動は一段と加速され、尖閣諸島が大きな影響を受けることは必定である。

 このように考えると、日本と価値観を同じくする台湾が健在することは、何よりも日本の安全保障にとって不可欠の要件である。

 いまは台湾が頑張ってくれているから海峡通過が可能であるが、中国の影響下に入ったならば、万事休すである。中国は尖閣を自国領にして、台湾に影響を及ぼしたいと思っている。そうした意味で、尖閣諸島の重要性も浮かび上がってくる。

 台湾の命運は日本の安全保障にもかかわる。リチャード・ニクソン政権(当時)の動きに慌てて、台湾をあっさり切り捨てた日本であるが、中国が国際社会の声を無視する形で南シナ海の内海化を図っていることに対応して、日本は対台湾関係で新たな施策を取るべき時ではなかろうか。

 先の国会での安保法案が理解されにくかったのは、緊迫している国際情勢についての議論を野党が避けて憲法論議に持ち込んだからである。

 南シナ海の現実に照らして、一段と法案の重要性が認識されなければならない現在である。破棄法案を提出する野党の無責任はいくら批判してもし過ぎることはないであろう。

日本の立ち位置

 中西輝政・京都大学名誉教授は「愚かにも、ここ20~30年、日本では政府も国民も鄧小平以後の中国は平和志向に変わった、と妄想した」(『正論』2015年3月)と悔しがる。

 日本が自国に都合がいいように妄想したこともあろう。しかし、日本が独自にとり得る中国に関する情報が少なく、米国がもたらす情報で行動せざるを得なかったということが大きい。

 その米国には前科がある。戦前の米国は「日本帝国主義に痛めつけられた中国」という認識が強く、南京攻略戦を中国が南京大虐殺に仕立てるのに多大の協力もした。中国の報道はおかしいと米国民に呼びかけたラルフ・タウンゼント元上海副領事などは戦争中、フランクリン・ルーズベルト大統領によって牢獄につながれたほどである。

 戦後の米国は「可哀そうな中国」ではないが、しっかり支援してやれば米国に応えてくれるといった認識から同盟国である日本と天秤にかけ、時には中国に肩入れして日本敵視政策をとる状況もあった。

 日本人の中国専門家、もっと広く国際問題専門家と言われる人たちの講演をいくつか聞いたが、米国は中国をこう見ているという話が主体で、日本も米国と同じ視線で中国を見ておれば大丈夫だろうと言った論評がほとんど。独自に10年後、20年後を語る話はあまり聞けなかったように思料する。

 中国の政治的状況や軍政関係など、内部からしか得られないような内容の話をすれば、自国民でさえ容赦なく逮捕する国への入出国が難しくなることもあり得よう。そうした配慮から話を控えているのかも知れないと惻隠の情で聞いていたが、根本的な情報が欠落しているというのが実態のようであった。

 そうしたところに、米国から次々に対中警戒の声が上がってくると、日本の報道機関はそうだったのか、それほどまでに中国の傍若無人ぶりが増大して危険な状況になりつつあるのかとびっくりし、慌てて報道し始める仕儀である。

日本は独自の核抑止力を欠いているので、米国に強く言えない。あるいは米国の対中政策と違った行動をとり得ない、あえて行動しようとすると圧力がかかるなどの目に見えない同盟の枷がかけられていることもあろう。

 先の北朝鮮のミサイル発射に関連して自衛隊が対処行動をとったことに関し、某氏はこの態勢をそのまま維持して、対中布陣としてはどうかという意見を出していた。対北朝鮮対処だけでなく、いや北朝鮮対処以上に中国対処が日本にとっては重要であることが忘れられているように思えるがいかがであろうか。

 いまは日本の立ち位置が定かでないように思える。

中国の詭弁に寛容すぎる

 南シナ海では「(中国の)軍事拠点化の進展を示す証拠が日々、浮上している。深刻な懸念対象だ」(「産経新聞」平成28年2月19日)とジョン・ケリー米国務長官が非難した。これは昨秋訪米した習近平主席がオバマ大統領と記者会見に臨んだ時、「南シナ海を軍事拠点化にしない」と語ったことを念頭に述べたものである。

 3000メートル級の滑走路が何本も完成し、戦闘機の配備が明らかになり、また対空ミサイルの配備も明らかになると、中国は意味不明な「防衛体制は昔から存在する」「主権国家の自衛権に合致する」などと反論するようになってきた。

 尖閣諸島の帰属や南シナ海について、以前は「古代から中国のものであった」などと国際法を無視して何の根拠にもならない発言を繰り返してきた。中国流の詭弁でしかないが、こうした詭弁は今に始まったことではない。

 中国と1969年以来かかわり、米政府への助言もしてきたマイケル・ピルズベリー氏が「騙されてきた」と近著『China 2049 秘密裏に遂行される「世界覇権100年戦略」』で告白している。

 正確には「騙されていた」と言うよりも、「信じようとしないままずるずるときた」ということであろう。

 なぜなら、彼はビル・クリントン政権時代の国防総省とCIA(米中央情報局)から「中国のアメリカを欺く能力と、それに該当する行動について調べよ」と命じられ、中国が隠していた秘密を調べており、「(中国の)タカ派が、北京の指導者を通じてアメリカの政策決定者を操作し、情報や軍事的、技術的、経済的支援を得てきたシナリオ」を発見していたからである。

 そのシナリオこそ「100年マラソン」と呼ばれるもので、「過去100年に及ぶ屈辱に復讐すべく、中国共産党革命100周年にあたる2049年までに、世界の経済・軍事・政治のリーダーの地位をアメリカから奪取する」というものだったと述べる。

ピルズベリーは中国がどうなるとみていたかを、「間違っていた前提」として5つにまとめている。

(1)つながりを持てば完全な協力がもたらされる。 (2)中国は民主化への道を歩んでいる。 (3)はかない花、中国(と思てきた)。 (4)中国はアメリカのようになることを望み、実際、その道を歩んでいる。 (5)中国のタカ派は弱い。

 いま分かったことは、すべての前提が間違っていたということである。

 どうしてこうなるのか、孫子の兵法に見るように、中国の戦略は「戦わずして勝つ」のを最上の策としており、そのために謀略をめぐらし、相手の謀略に打ち勝つことを奨めている。こうして力がつくまでは「平和的台頭」を信じ込ませてきたのだ。

 日本が防衛白書などで「中国の軍事力増強は不透明である」と警鐘を鳴らしても、中国は常に「平和的台頭」であり「覇権国になることはない」と繰り返すばかりであった。南シナ海での埋め立てや滑走路などの敷設に対して、「軍事化を意味しない」と言ってきたのと同類である。 

オンショア・バランシングの米国へ

 オバマ大統領が「米国は世界の警察官ではない」と語ったのは、シリアで化学兵器が使われた疑惑が持ち上がり、米国の対応が問われた2013年9月10日である。

 これは「9.11」の12周年を迎える前日のことであった。それを発火点にしたかのように、シリア情勢は一段と混乱し、ロシアはクリミア半島を侵略した。

 「オバマ大統領のホワイトハウスが現在関心を持っている世界情勢は、ロシア・ウクライナ問題、そして中東とそれに関連した国際テロが依然として大きなウェートを占めている」(『正論』2015年3月)と田久保忠衛氏は述べ、「中国の台頭、ひいては危険で野心的な膨張主義は、アジアに局面を限れば目立ってきたと感じている程度だと言わざるを得ません」とみていた通りであった。

 第1期オバマ政権は中国閉じ込めの色彩が強かったが、第2期になると、アジアへ回帰してリバランスの宣言をしたにもかかわらず、「オフショア・バランシングに変わってきたのではないか。中国と直接対峙するのは日本など同盟国や友好国で、アメリカはそれらをオフショア(沖合)、つまり後方から支援し、対抗行動をとるという戦略」(同上)で、なかなか動こうとしなかった。

 米国は昨2015年7月、4年ぶりに「国家軍事戦略」を公表した。

中国の南シナ海における人工島造成が国際的な海上交通路にまたがり、中国軍の兵力配置を許すことや、ロシアはウクライナ軍事介入で武力行使も厭わないなどと分析しているが、「米国と同盟・友好国のネットワークは世界の安全と安定の礎となる類まれな強さがある」とし、「集団的な軍事力を高めることなどにより、侵略を阻止する」(「産経新聞」平成27年7月3日)と強調するだけで、米国が指導力を発揮するような文言はない。

 こうした米国の動きにリアリストたちが危機感を抱き声を上げ始めた。

 ピルズベリーの上記著書やジョン・ミアシャイマーの『大国政治の悲劇―米中は必ず衝突する』、さらにはアーロン・フリードバーグの『支配への競争―米中対立の構図とアジアの将来』などが相次いで出版される。

 これらの著書は『孫子』『春秋左氏伝』『三国志演義』などの古典、あるいは鄧小平が語っていた「韜光養晦、有所作為」(才能を隠して控えめに振る舞い、成すべき事は成すという意味)などの用語を多用して論述している。カギは中国の古典にあり、中国の計略にはまったという印象を強く醸し出そうとしていることが分かる。

 米国が今後も我関せずのような態度を続ければ、中国が地域覇権国になることは必定であろう。しかし、米国が地域覇権国となって以降、米国は他の国が地域覇権国となることを許したことはない。その流れからすると、米国は台頭する中国を抑えなければならない。

 そのことをミアシャイマーは自著で、「現地の国々(筆者注:日本やベトナム・フィリッピンなど)が潜在覇権国(注:中国)を自分たちの力で閉じ込められない場合には、沖合に位置しているオフショア・バランサー(注:米国)というのは、実質的にオンショア、つまり岸に上がらなければならなくなる」と述べている。

米国の日本理解

 他方で、米国の行動を見ると、世界の警察官でないどころか、同盟国の警察官でもないように見受けられるというのは言いすぎであろうか。

 米国には、もともとモンロー主義という考えがあり、最小限アメリカ大陸にだけは敵性国家を近づけないし、いざというときには引き籠ればいいという考え方である。キューバ危機はそうした意識の顕現であった。

 南シナ海については「航行の自由」を主張しながら、中国の軍事拠点化にさしたる異議申し立ても行動もとろうとしない。米国の力を期待していたASEANの国々は米国を見限りつつあるのではないだろうか。

 南シナ海では中国が数年前から人工島を築き作業していたことが分かっていた。昨年は飛行場の完成、そして民間機の飛来、その後は戦闘機の発着である。今年になると対空ミサイルの搬入が明らかになった。それにもかかわらず、米国は中国の行動を抑制させるまでには至っていない。キューバの時と大違いである。

 こうした米国の動きを見ていると、日米同盟で日本の安全はどこまで保証されるのか、理解が困難になる。米国務長官や国防長官は「尖閣は日米安保5条の適用を受ける」としばしば発言していたが、米国が本当に守ってくれるのか心配でならなかった。

 そこへ、国賓として迎えたオバマ大統領が同様の発言をしたことで、これ以上の保証はないと言わんばかりに日本はすっかり安心した。

過去の歴史や米軍占領後の尖閣を射爆場として使っていたことなどからして、「領有権」は明確であるように思えるが、あえて「領有権は日中両国の問題」と突き放す。

 こうしたことから、「安保条約の範囲内」の意味については、有識者の間でも意見が分かれている。ざっくり言って、米国が最大限の関与、すなわち戦争に訴えてでも日本の味方をしてくれるという意見から、リップサービスで中国を牽制するだけで、実際に中国が動き抑止が破綻すれば関わりを放棄するという意見まである。

 西尾幹二氏は「アメリカの対外政策をみていると、ことごとくまるで絵に描いたようなご都合主義で、私たちはアメリカを本当に信じることができるかどうかわからないという局面に、身を置いている。(中略)アメリカ人は余りにも他国を理解しようとしない。そしていまはオバマ政権の軽率かつ臆病な判断によって世界最大の軍事大国が外交的失敗を繰り返している」(『正論』2016年3月号)と書いている。

 中国発の情報の間違いと日本発の正しさを米国民に伝え続けたタウンゼントに対する米国の仕打ち、戦後の米国の行状を見ただけでも、米国の国益次第で日本は翻弄されかねない。

おわりに

 台湾は日本へのシーレーンを扼する戦略的要衝である。親中政権から親日政権に代わるのを好機と捉え、日台友好を深めると同時に、経済的深化を強める必要がある。

 日本単独の中国進出は危険が伴うことが多いが、台湾は中国での損失が少ないと聞く。このことは、日中の関係に台湾を噛ませることで損失の少ないルーチンを築く機会でもある。

 中国は法の支配を守らない、民主主義を否定する、IS(イスラム国)を批判しないなど、従来確立されていた国際秩序を破壊する行動を平然と行っている。

 また、中国や半島の国々の要人や広報官の声明などを聞いていると、あたかも詭弁術の講義のようである。これが国際政治の現実という理解も必要であろう。

 他方、米国はいま中国のこうした詐術に気づいたかのように主張するが、それも詭弁であるように思える。米国はとっくに中国の言行を知っていたはずである。ただ、自信過剰が災いしたとは言えよう。

 いま米国の地域覇権が脅かされそうになり、日本やASEANの結束を呼びかけているが、米国益絡みの思惑で一蓮托生にされてはかなわない。

 日本自身の立ち位置をしっかり確立することが求められているようである。

メルマガ記事

中共の首脳は、全人代で、「海洋強国」を建設すると宣言し、 東シナ海・南シナ海そして西太平洋に覇権を拡げて「中国の海」とするための「軍事闘争への備えを統一的に推進する」国防費を提示した。 その額、日本円で約十六兆七千億円であり我が国の国防費の三・三倍である。 しかし、この公表された国防費は総額の二分の一に過ぎないと指摘されている。これは経済の失速のなかでも断じて軍事拡張を止めない姿勢を示したものである。

  産経新聞社説は、この状況に関して 「自ら敵を増やすつもりか」 という強烈な題名を与えて異常性を強調した上で、 「習主席は異常な軍拡を思いとどまり、各国と手を携える道を探らなければならない。 経済の回復にも国際協調は不可欠だ」と結んでいる(二十八年三月六日)。この社説の終わり方に、じょ、じょ、冗談言うな、となった。さんざん相手の異常性を強調しておいて、 なんやこれは、異常な相手に、国際協調を勧めても聞き入れるはずがないではないか。そもそも、異常、なんやから。

 よって、産経新聞の社説の結論とは逆に、この相手に、国際協調を勧めるのはもう止めようと強く訴えたい。何故なら、軍拡を続ける独裁権力に対する「宥和」こそ、戦争の引き金になる「最も危険な錯誤!」であると歴史が教えているからである(チャーチルの第二次世界大戦回顧)。第二次世界大戦勃発の直前まで、つまりドイツのポーランド進撃直前まで、イギリスもフランスも、ヒトラーに国際協調を勧めていたことを忘れてはいけない。

 すなわち、我々は、頭から対中宥和思考を排除した上で、相手の「実態」を把握し、如何にして相手を抑止するか決断し実行に移さねばならないときがきている。その決断が、本稿の表題「平和を望むならば戦いに備えよ」である。

 この観点から眺めるならば、現在、韓国では、アメリカ軍と韓国軍が大規模軍事演習を展開し、 南シナ海には、アメリカの原子力空母ジョン・ステニスを中心とする空母打撃群が展開している。

 また、我が国においても、 昨日三月七日、秘匿性に優れた最新鋭潜水艦「じんりゅう」が三菱重工神戸造船所から就役して「そうりゅう型潜水艦」が次々と生まれており、フィリピン海域の海底に我が潜水艦が遊弋していると聞いている。いうまでもなく、秘匿性の高い潜水艦は、一発で空母を撃沈できる。

 これらを総合すれば、中共の全人代で喋っている連中と中共の軍隊は、海洋においてかなりの圧力を受けて抑止されており、八十年前の昔に、何の圧力も受けずにラインラントに進駐できて 舞い上がったヒトラーの状況とは違うと思われる。

 アメリカ国内は、現在、不動産王と上昇志向が化粧をして歩いているような二人による内向きの大統領選の最中だが、軍事行動に消極的でアメリカの威信と国際的信頼感を失墜させたオバマ政権末期を迎え、オバマに辟易した国防長官と軍が、歴史の教訓に忠実な、きっちりとした行動を始めたと評価する。

 さて、原子力空母ジョン・ステニスの空母打撃群の周りには、「見たこともないほどの中国人民の艦船が来ている」ということだ。 この情報に接して、思い出したのは、日中条約締結前の福田赳夫内閣の時、突如、尖閣周辺海域に百隻を超える中共の武装漁船が群れた情景である。之を見た福田内閣は驚き腰を抜かす。そして、そのタイミングを計っていた鄧小平の「尖閣棚上げ」提案に飛びつく。つまり、この時、我が内閣は、「自国の領土を他国に棚に上げてもらってホッとする」、 という馬鹿よりもひどい痴呆を演じるのである。そして、この武装漁船の「船員」達は、リストラにあった元人民解放軍の兵士であったというわけだ。

  そこで現在、中共では、「軍の近代化」のために大リストラが行われているのだが、アメリカ空母打撃群の周りにいる「見たこともないほどの中国人民の艦船」は、福田赳夫内閣を慌てさせて「尖閣棚上げ」効果を獲得した例に倣って、中共首脳が、ひょっとして「スプラットリー諸島棚上げ」が転がり込むかも知れないと思って、リストラ兵士を繰り出しているかも知れないと思う次第だ。何れにしても、アメリカ空母打撃群の周辺に出てきた「見たこともないほどの中国人民の艦船」は、アメリカ軍の行動が、中共に効いている証拠である。

 なるほど、中共(中国共産党)は、軍備を増強して海洋に進出している。しかし、そのカラダの内部は、ガン細胞が増殖を続けている。その内蔵が腐れば生体は維持できない。従って、脆弱である。いたずらに、中共の軍備増強を怖れる必要はない。対中軍事行動は、明らかに平和を確保する。対中宥和は、中共を増長させ危険な軍事的冒険を誘発させる。よって、我が国は、「平和のための戦略」を確立し、軍備の充実に邁進する時に至っている。

 その「平和のための戦略」の大きな柱は、台湾そしてフィリピンからインドネシアというアセアン諸国との連携である。この中共を取り巻く「海洋の輪」が機能すれば、中共の「海洋強国」は停止する。陸上から飛び立ってイギリスの太平洋艦隊の旗艦である戦艦プリンス・オブ・ウェールズと巡洋戦艦レパルスを撃沈した戦訓を思い起こすべきである。この「海洋の輪」が機能すれば、東アジアの海を乗っ取ろうとする中共の野望は必ず破綻する。

 最後に、最も警戒すべきことを記す。それは、中共の「対日工作」を見くびってはならないということである。冒頭に示した産経新聞の社説でも、中身は中共の「異常性」を説きながら、締めくくりは「中共に国際協調を勧めよう」というまことにしおらしい結論で終わるではないか。血に飢えた猛獣が平和の鳩になると本当に思っているのか。

 昨年に延々と続けられた国会における安保法制の議論の中で、「中共による南シナ海の埋め立てと軍事基地化工事の脅威」については民主党からはもちろん、自民公明の与党からも質問は出なかった。南シナ海に関する質問は、「日本のこころ」からだけであった。この国会は、明らかに中共に「配慮」していた。これを「異常」だと思わねばならない。反対から言えば「異常」と思っていないことが「異常」なんだ。すなわち、中共の工作活動が国会すなわち政府与党と野党に及んでいる。 つまり、我が国国会は、中共に協力していたのである。一部は意識して、一部は無意識に。

 かつて、ソビエトのKGBのスパイであるレフチェンコは、「日本の世論をソビエトに有利になるように仕向ける」任務を受けて日本に来て、我が国の政界、官界、財界、マスコミ界等のエージェントと接触し工作活動を展開した。そして、アメリカに亡命して次の通り証言した(一九八二年)。「日本人はソビエトに協力しているという意識なく協力してくれた。日本はスパイ天国である。」ソビエト無き今、我が国において、この「スパイ天国」を満喫しているのは何処の誰か。中共の工作員ではないか。彼らは現在進行形で言うだろう。「日本人は中共に協力しているという意識なく協力している。 日本はスパイ天国である。」まさに、レフチェンコの証言通りのことが、昨年の国会で起こっていたのである。それどころか、昨年起こっていたことは、今も各所で起こり続けている!

 そこで、痛恨、無念の思いを以て言っておく。昨日、田母神俊雄元航空幕僚長の事務所等を東京地検特捜部が家宅捜索した。その容疑は、「勇気ある内部告発者」の告白に基づく政治資金の業務上横領であると発表され、マスコミはその通り官に「言われるままの疑惑」を流している。これによって、全国津々浦々の日本国民に、我が国を取り巻く中共の軍事的脅威を権威を以て伝達できる軍事専門家が沈黙させられるのだ。

 これを喜ぶのは、何処の誰だ。喜ぶのは国内と国外にいる。都知事選挙から二年以上も経過したこの時期に、突然為された検察特捜部による田母神俊雄事務所家宅捜索が、「スパイ天国」における中共の工作活動と無縁の公明正大なもの、すなわち、社会正義の実現、であると、言い切る材料はない。

 つまり、政界における中共の工作に影響された国策捜査ではないと言い切れないということだ

3/8JBプレス 横地光明『習近平がヒトラーに変貌する日への備えは万全か 「ミュンヘンの宥和」が大惨事に発展したことを忘れるな』について

横地氏の論理展開は至極当然と思いますが、一番問題なのは国民レベルで危機の認識が共有されていないことです。左翼・リベラルに偏ったメデイアと学会(含む日教組)、傍観を決め込む経済界と悪条件が重なっています。国民はこのままでは「奴隷の平和」という事態になることを想像できないのでしょう。左翼は共産党支配を受けたいと思っていますので、確信犯でしょうけど。

自民党の責任は大きいです。マスコミのバッシングを恐れるあまり、長期的戦略を持たず、その場を糊塗してきて、左翼・リベラルに譲歩してきたためです。でもネットの発達により少しずつ情勢は変わってきました。朝日新聞のリストラ(OBへの新聞無料配布取りやめ、賃金カット)は、その表れでしょう。朝日新聞社員・配達員の不祥事も相次いで起きています。駅や電車内で女性に暴行、救急車への唾吐き等。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160305/k10010432541000.html

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160305-00000554-san-soci

逮捕されても、傲慢としか言いようがない言いぐさです。こんな新聞がクオリテイペーパー扱いされてきたことが日本の不幸です。日教組が受験対策で勧めてきたのが大きいのでしょうけど。朝日は日本共産党・中国共産党・朝鮮労働党の「喉と舌」です。日本国民のことは全然考えていません。戦前も尾崎秀美(大阪朝日記者)のスパイ事件で日本を誤導してきました。不買でドンドン売り上げを下げる必要があります。また「押し紙」問題もありますので、こういう不正をしながら「社会の木鐸」を標榜するのはチャンチャラおかしいと思います。公取に糾弾した方が良い。

3/8には朝日新聞から電話で「新紙面になったので一定期間無料で配達できます」と言うので「即座に「要りません」と断りました。相当の焦りがあるものと見受けられます。でも何故自宅の電話番号を知ったのでしょう。大事な個人情報ではありませんか。言っていることとやっていることが違いすぎます。どうせなら思想調査をすれば、勧誘の電話はなかったでしょうけど。

自民党は自分でPRするTVチャンネルを持てば良いでしょう。既存のTV放送局には入札制を入れず、安くしか電波利用料を取っていないので、同じようにすれば良い。週1回限られた時間でも良いでしょう。憲法改正の必要性を党として国民にもっと説明しなければ、国民投票で支持は得られないでしょう。既存のメデイアは憲法改正反対なので。横地氏の仰っています「自分の国は自分で守る」ことも丁寧に説明していかなければ、メデイアの「戦争反対」のアピールに負けてしまいます。

記事

Steria Hacking Challenge

仏パリ(Paris)西部のムードン(Meudon)で行われたハッキングのコンテスト「ステリア・ハッキング・チャレンジ(Steria Hacking Challenge)」に参加する学生〔AFPBB News

米紙の衝撃的報道

 JBpressは最近立て続けに尖閣諸島をめぐる日中交戦に関し、「衝撃のシミュレーション『中国は5日で日本に勝利』」(1.27部谷直亮氏)、「オバマ政権最期の今年、中国は尖閣を攻撃する」(2.3古森義久氏)なる驚くべき記事を報じた。

 前者は米ランド研究所のデヴィッド・シラパク氏の尖閣事態シミュレ―ション公開リポートの紹介である。

 「日本の右翼が尖閣に上陸すると中国海警が逮捕し海警と海保が衝突、日中の艦艇・軍用機が展開し中国艦の空自機への発砲から日中交戦が始まり、米潜水艦が中国艦を撃沈すると中国は米国西部をサイバー攻撃、また対艦ミサイルで海自艦艇を撃沈、中距離ミサイルで日本本土を攻撃。米国は日本の空母参戦と中国本土基地攻撃要請を拒否し、中国は5日間で尖閣を占領」とその内容を伝えた。

 後者は28.1.25付ウォール・ストリート・ジャーナルに掲載された米ハドソン研究所のルイス・リビー氏らの論文『北京の次の先制行動は東シナ海だ』(Beijing’s Next Gambit, the East China Sea ;By Arthur Herman and Lewis Libby)に関するもの。

 「中国は日本と密接な関係を持ちながらも突然尖閣に軍事行動を開始し両国の軍事衝突になる。オバマ政権は日米安保発動の日本の強い要請を抑え日本は引き下がり外交的解決を求めるが、国際調停で中国の主張がより支持され尖閣領有権主張が日中対等に扱われることになる」との主張とそれへのコメント記事。

 これに対し、元航空自衛隊空将の織田邦男氏は、ランド研究所のリポートについて「あまりにも稚拙なシミュレーション」と批判(本誌2.4)する。

 「そんな前提はあり得ない。米が潜水艦を参戦さても中国が軍事行動を停止せず、米国がサイバー攻撃で大きな社会混乱を起こされても参戦しないはずがない。近代戦を支配する航空戦に少しの配慮もなく話にならない。これらは米政府にあまり深入りするなとの警告を促すものであり、あるいは中国の思惑を入れての仕業(コミットメント・パラドックス)である」と主張し大方の賛同を得ているようだ。

 確かにその可能性も高い。しかし、中国が米空母2隻の行動でミサイル発射を中止(1996年:台湾総統選挙)したのはまだ対艦ミサイルを十分保有しなかった時代のことで、現在の米中の相対的力関係とは著しく違っている。中国の軍事力を少しでも過小評価するようなことは危険である。

 前者が海自の撤退収容で終わるのは、あたかもベトナム戦争の最期を見るようだし、後者には、アドルフ・ヒトラーによるチェコスロバキアのズデーテン地方割譲要求を認めた「ミュヘン宥和」の歴史的愚挙を想起させられた。

 こうした歴史を振り返れば、中国が日本と通常の関係を保ちながらも突然短期局部的軍事行動を仕かけることは十分考えられる。

 米国はその尖閣攻撃事態発生に対し、大統領を含む政府高官が「尖閣は安保5条の適用範囲で米国は日本を必ず護る」としばしば公約している。しかし、実際にはミュンヘン宥和のような事態が発生する恐れはないだろうか。

 もし、尖閣諸島が中国から攻撃された場合、米国は自らの国際的信頼性が一気に地に落ちることを承知で、日本の要請を抑えて中立を守り、日本本土が中国の中距離ミサイルで大被害を受けても、空母を大西洋に逃がしたり、国際調停で中国の尖閣領有権の主張を認めたりする可能性は否定できない。

 現実問題として、中国が尖閣諸島に対して本格的侵攻を行う危険性はそれほど高くはないかもしれない。しかし、前者のシミュレーションは地位の確立した専門家のものであり、後者の論文はブッシュ政権の国防次官補らによる論文で「最善を期待し最悪に備える」べき安全保障の原則からして軽々しく扱ったり無視していいものではない。

米国は尖閣諸島防衛を公約していても軍事支援を発動しないことがある。国家防衛に強い意志と能力を欠くものは見捨てられるという国際政治の非情さを忘れてはならない。

 政府も国民も等しく短期的局部的な中国の軍事行動はいつでもあり得ることを覚悟し「自分の国は自分で守らなければならない」現実に目覚め、その指摘する日本の安全保障上の根本的欠陥是正の警鐘を真剣に受け止め、すみやかにこれらを改善しなければならない。

尖閣防衛には何が必要か、彼らの警告

 政府は尖閣事態に対する米国の公約履行の確証を高めるべく施策するとともに、防衛省・自衛隊は尖閣事態に対しこれを抑止・対処するため、南西方面を防衛努力の焦点としてその対応を急いでいる。

 例えば陸上自衛隊では、島嶼奪還部隊のための水陸両用部隊の整備、与那国島への沿岸監視隊、石垣島への対艦・対空ミサイル部隊と警備部隊の配置、奄美大島への対艦・対空部隊配置、「オスプレイ」の導入、作戦部隊の軽快な輸送展開のための師団・旅団の軽量化を進めている。

 海上自衛隊はイージス艦2隻の迎撃ミサイル「SM-3」の装備化と2隻の新造、潜水艦6隻の増加を図る計画である。また航空自衛隊は既に九州から1個飛行群を那覇に移し第82航空隊の部隊と合わせ第9航空団を新設し「F-15」を倍増し40機体制とした。

 海上保安庁も保安官・巡視船を増加し石垣島に尖閣海域監視専任部隊を設けた。

 しかし彼らが指摘しているのは、そのような戦術レベル次元を超えて戦略レベルあるいは国家安全保障レベルの欠陥なのである。

 すなわちこの論文とシミュレーションが指摘する最大の問題は、再言するが中国は予期しない時に突然軍事攻撃を仕かけることがあり、その場合米国は予ての国家公約(オバマ大統領や国防長官や軍高官の発言)にもかかわらず尖閣事態に軍事支援を避けることがありうるという深刻な問題だ。

 第2次世界大戦を誘発してしまった「ミュンヘン宥和」が尖閣諸島を舞台に再現されないと誰が断言できるだろうか。中国の習近平国家主席がヒトラーのような野望を抱いていないと確信できるのだろうか。

 日本がもっぱら米軍に期待している抑止力を欠き、我が国本土までが一方的に中国のミサイル攻撃に晒され、またそのサイバー攻撃によって社会インフラ、政官軍経のシステムが機能を失う危険性は常に念頭に置いておかなければならない。

 またこれらのリポートは、作戦部隊の作戦輸送展開と戦力発揮のためこれを支援さるための兵站的支援確保に信頼性が乏しく、加えて航空基地などに掩体(えんたい=敵の砲弾から身を守る土嚢などの装備)が全くなく甚だ脆弱であることも指摘している。

 中国が容易に兵を動かすのは、国境における短期的攻撃がインド(1959、62)、ソ連(69)とベトナム(79)の例でも知られる。インドとソ連の両国は敢然と戦いこれを阻止したが、ベトナムは海上戦力が弱く西沙諸島では固有領土の島嶼を軍事占領された。

 中国は核大国のソ連とさえダマンスキー島で戦い半分を領有化(1969)した。決して油断できる相手ではない。

 日本が尖閣諸島を絶対に守り抜く強い意志と現実的態勢を示し中国に乗ずる隙を与えず、またいかに日米安全保障条約の信憑性を確立するかが問題である。しかし今日までの施策ではその保証は薄弱で抜本的見直しが必要である。そして諸々の形骸的防衛政策を刷新することも不可避である。

日米安保条約信憑性の確立

 中国が尖閣に武力攻撃をすれば、米国は日本の救援に必ず必要な武力を行使する姿勢が確信されれば、核大国同志の米中の戦いは最終的には核戦にも繋がる恐れがあり、ともに国家の存非のリスクを懸ける決意しなければならないので、両者の武力対決は強く抑止されよう。

 したがって平素からいかに米国が日本に対する中国の武力使用に対して、不退転の決意で日本防衛に参戦する不動の意図をコミットするばかりでなく、日米の現実の関係と軍の態勢と活動を示すことによって中国に誤解を生じさせないかが肝要になる。

 しかし、この論文などが示すように日米は、いまだ真の運命共同体ではない。一般米国民の世論のみならず政権当事者も、無人の岩礁の日中の争いになぜ米国の青年の血を流さなければならないかと考えるのは当然だ。

 そして、仮に中国がアジア・西太平洋を支配しても、ハワイ以東を支配できれば米国の安全は保障され経済繁栄に支障はないとの意見もある。米国の国力の相対的衰退と現在進行中の大統領予備選挙からも米国政治の内向き傾向がさらに強まることが容易に観察できる。

 日米同盟信憑性の確立は容易でない。しかしやらなければならない。

 第1は尖閣諸島の持つ日本・ASEAN(東南アジア諸国連合)・米国にとっての至高な戦略的価値と安全保障上の象徴性を米国政府と国民に一層認識させる努力だ。

 第2には日本自身が米国にとって失い得ない国際戦略上の大きな価値を持つことだ。強い経済力・外交力に加え強い防衛力を構築し、アジア・太平洋の安全保障にしぶしぶ関与するのではなく、覚悟を持って積極的に先導し、米国を巻き込みASEAN・豪・ニュージー-ランド・印と共に中国の国際法侵害対処に行動しなければならない。

 これはちょうどヒトラーの修正主義の領土拡大の野望を前にし、英国が米国を巻き込み現状維持派の諸国に訴え国際情勢を指導したのに似ている。

抑止目的達成のための政策の刷新

 我が国の防衛政策の第1はもちろん抑止である。しかしながらその実態は抑止のための能力を整備しないばかりか愚かにもそれを機能しないような政策ばかりを進めている。

 具体的に示そう。古くは鳩山一郎総理の時代から「我が国に対して誘導弾等による攻撃が行われた場合、座して自滅を待つべしというのが憲法の趣旨とは考えられない。――(したがってその)誘導弾等の基地を叩くことは法理的に自衛の範囲に含まれる」(衆院内閣委S31.2.29)との一貫した立場を取りながら、「我が国防衛力は周辺諸国に脅威を与えてならない」とし「専守防衛」を政策の基本にしている。

 この「専守防衛」なる軍事用語は世界にないが、「侵攻を受けたら立ち上がり、防衛力の行使を発動し日本を防衛するとするものである」とされる。このため戦闘機の行動半径を抑えるため態々その空中給油装置を外したたり、対地攻撃能力の保有を禁止し、ミサイルの射程を厳しく制限してきた。

 このため、日本への侵略を考える周辺国は日本の持つ防衛力に脅威を感ずれば感ずるだけその企図が封ぜられ即ち抑止されるのに、その脅威をなくし、加えて不意急襲的第一撃で自衛隊の各基地の航空機、護衛艦が一挙に壊滅させられる公算を大きくし、かえって相手を侵攻の誘惑に駆り立てる危険性を高めている。

 したがって、抑止を政策の基本とするならば、敵に乗ぜられない隙のない強靭な防衛力を備え周辺に無言に厳然たる脅威を与え、特に強力なサイバー能力を整備するとともに、我が国を攻撃する基地を破壊できるよう航空機の對地攻撃能力を整備し、かつ中国や北朝鮮の中距離弾道弾攻撃基地を叩き得る誘導弾を整備しなければならない。

 こうした論議に対して、日本が中距離誘導弾(弾道あるいは巡航)を持っても、奥地からさらに長い射程のミサイルで国家中枢を狙われ、その攻撃の意図を封ずることはできない。したがって中国の中距離ミサイルに対抗せんとするのは誤りであるとする説がある。

 しかしその考え方は、戦争はいつどんな場合でも無限界に全面戦争に拡大するとして、戦争にあるラダ―(ladder:堺域)の存在を無視するものである。

 また中国はミサイルの射程を増大すればするだけ、ますます日・米・豪・インドなどが結束してその対抗施策を講ずることを危惧し、中国が最近、ミサイル開発を抑えようとしているとする主張がある。

 しかしそれは自説の合理性を裏づけようとする一方的理屈ではないのか?

 それが事実であれば、中国のアジア西太平洋から米国勢力を駆逐せんとする意図を放棄した明確な証左や、南シナ海における領有権争いのある岩礁を埋め立てて造成した軍事基地を放棄するなどの確たる事実でこれが証明されなければならない。

 しかもリスクが高い侵害ほど発生の蓋然性は少なく、その大きい蓋然性のあるリスクに備えることに合理性が有り、日本が中距離ミサイルを保有する大きなメリットを忘れてはならない。

 この中距離ミサイルを、我が国で独自に開発国産化するには、相当の期間と経費を投入しなければならない。しかるに幸にも、米海軍にはトマホーク巡航ミサイル(射程1250、1650、2500、3000キロの各種、価格1億円前後)があり、海自艦はその発射装置VLS(MK41)を既に装備しておりミサイルの購入と計画飛行制御装置の導入だけで済む。

 仮に対中国用に1000発、北朝鮮用に200発の計1200発を整備したとしても費用は1200億円程度であり、これはいずも級大型護衛艦の建造費に相当するが、何年間かに分けて整備すれば何隻かの耐用艦齢の延長によって、費用の捻出が可能でありその防衛効果は絶大である。

サイバーセキリティ能力の抜本的強化

 サイバー戦争は第5の戦いの空間として、平戦両時に、しかも瞬時に、国家・軍事機能が全面的に麻痺混乱喪失させ得る特殊な脅威を有する。サイバー攻撃は兵器開発の詳細な図面も容易に知らない間に盗み取られ、その危険性は往時の暗号文傍受解読の比ではない。

 ロシアは世界最強のサイバー戦能力を有すると言われるが、中国が絶えず米国日本に陰に陽にサイバー攻撃を仕掛けていることは公然たる事実だ。そのため中国が強力な該軍事組織(61398部隊等)を持ち、加えて民間に膨大(800万人とも)な専門家集団を養成していることはよく知られているところである。

 中国が開発中といわれる第5世代ステルス戦闘機「J-20」が米国などが開発し、空自が導入を図っている「F-35」と外形がそっくりであるが、これもサイバー戦の重大な一面として認識しなければならないであろう。

 このため、米軍は大将を長とする数千人規模の統合軍を設け、韓国もサイバーコマンドを保有(公表6800人)し国防費の3%を振り当てていると言われる。

 翻って、我が防衛省・自衛隊のそれを見ると地位と名は立派な統合部隊だが前者に比べれば真に貧弱な憐れな憂うべき存在でしかない。

 防衛省は速やかに民間のホワイトハッカーを急募し、少なくとも現情報本部位の態勢を整備しサイバー戦の攻防兼備の能力のある部隊に画期的に強化し、政府も特命大臣を置きサイバーセキリティに国を挙げて取り組まなくてはならない。

自衛隊を戦い得る体制への緊急措置

 自衛隊は形は何とか揃っているが、よく観察すれば実戦能力に乏しく瞬発力を発揮できても、人的物的に縦深性を欠いていることを認めざるを得ない。

 陸上自衛隊の部隊は米国が32万10個師団の整備を求めたのに18万で13個師団を編成したから、師団と称しても人員も装備も少なく、国内戦を理由に兵站機能を極端に絞り、戦闘員も多くの任を兼務するから少しの損害発生で全部隊の機能が大きく失われる宿命的脆弱性を持っている。

 しかも財務省は、定員に対してさらに充足率を課しているから初めから本来の能力を発揮できない。もとより自衛隊の装備・弾薬・燃料・部品の備蓄は甚だ乏しいうえ、これを必要方面に移動する十分な手段が準備されていない。

 陸上自衛隊は南西方面の事態に対応するため、1個機甲師団、3個機動師団、4個機動旅団を整備しようとしているが、これらの南西諸島への部隊・装備の緊急輸送も陸自および空自の航空輸送力は大きな限界があり、海上自衛隊も輸送艦は僅か3隻しか持たず、民間ヘリーなどの庸船を前提としている。

 だが、果たして業務に就いている船の緊急確保が可能なのか、何より危険な業務につく多くの船員の協力が得られるかの保証は全くなく、それには国家的な法的準備がなければ不可能である。

 参考に記しておくが、1個作戦師団の必要輸送所要は40万トンとされるのが常識である。陸自の師団は規模が小さく軽いからその4分の1、旅団は規模が師団の2分の1であるから8分の1、機甲師団を2分の1として計算しても所要合計は実に70万トンにも上る。

 この所要を容易に確保可能できるだろうか。最近北朝鮮のミサイル発射実験に備え、イージス艦(SM-3Aは射高300キロ・射程数100キロ位)とPAC-3部隊(射程20キロ程度)が展開したが、日本のBMD (弾道ミサイル防衛)は層が薄く、防護空域が限定され過ぎる。PAC―3は本来陸軍の野戦の拠点防空用のものだ。

 したがって速やかにSM-3B(射程、射高は1000キロが期待される)を開発装備化するとともに空自各高射隊はそれぞれPAC-3の半分をTHAAD(射高約150キロほど)に換装することが必要だ。

 陸・海自使用の対艦ミサイルの射程は短か過ぎるし、中国海警にはフリゲート艦の転用船があり更に軍艦仕様の超大型巡視船を建造中と報ぜられるが、そんな船に体当たりされては商船仕様の海保の巡視船はひとたまりもない。

 戦時所要の大きく拡大が予想される予備役自衛官は、我が国の社会制度と特殊な社会環境から質量ともに致命的な欠陥を持っている。

 新しい防衛計画では統合機動防衛力整備の名の下に、北海道以外の師団・旅団から戦闘力の骨幹である戦車と火砲を外すそうであるが、これでは作戦部隊でなく、警備師団(旧陸軍の後方警備にに任じた独立混成旅団)に過ぎなくなる。

 「国防力の相対的優劣は国際関係に影響を及ぼす」(「国際政治」モーゲンソー)と言われるが、最近力信奉のロシアが対日姿勢を強硬にしているのは、これが反映しているのかもしれない。

まとめ

 ある高名な国際政治学者は、国際情勢が不安定になったのは、「米国が弱くなり中露が強くなったのでもなく、中露が地域覇権を模索しながらもバラク・オバマ政権が軍事介入に消極的になったからだ。しかし次の政権が戦う姿勢になれば世界の不安定さは加速するだろう」と言っている。

 立派な国際政治学者の御託宣であればそういう公算が高いのであろう。しかし核大国の米ソが対立した冷戦時代は安定し、その終焉とともに世界は一挙に不安定不確実の情勢に陥り、世界の誰もが不安に悩ませられたのも否定し難いものがある。

 したがって、米国の次期政権がその第一流の国力と軍事力を背景に、国際秩序を侵すことは軍事力使用してもこれを許さないとの厳然たる政策を採用すれば、かえって世界情勢は安定するのではなかろうか。

 思うに、日本が世界最大の長期負債を抱え、少子化で人口問題が危機的状態に陥り、自国の防衛が形骸化の姿にあるのは「環境に適応できない種は生き残れない」(ダーウィン)のに世界の情勢変化に目をつぶる国民におもねり、政権がその維持にまた政治家が票を求めることを優先し、国家の長期的基本問題を放棄してきたからである。

 万一の場合に備え、国防の象徴尖閣防衛を事態的に確実にするためには早急に警察官僚が警察原理で作った国防政策と自衛隊を軍事原理で刷新することが現下日本の国家的緊急課題である。

3/4日経ビジネスオンライン 北村豊『元最高指導者「華国鋒」の銅像に取り壊し命令 サッカー場14個分の陵墓、銅像完工から21日目に』について

3/5池内紀氏の『カント 永遠平和のために ~私が歩んだ戦後70年~』講演会に参加しました。予想通り、岩波・朝日文化人の反権力を標榜するリベラル(自由人)です。戦争は儲かるからやるとの話、それはそうで赤字になるなら誰もしないでしょう。領土奪取・賠償金というメリットがなければ。米国のイラク侵攻も石油と$の基軸通貨維持のためと言われています。日本の戦前のアジア進出も資源確保のためです。物事が起きるのには動機が必要です。それが経済or名誉or倫理なのか千差万別です。石川明人氏の『戦争は人間的な営みである』の中では、確か総力戦となる近代戦では、利益のためだけでは戦えなく、友のためにと言う大義が必要とあったと思います。本の紹介には「戦争は「純然たる悪意」のみの産物ではない。むしろ、愛や、希望や、真心や、正義感があるからこそ、人は命をかけて戦うことができ、戦争を正当化できてしまう」とあります。物の見方は一様でないという事です。自由な国に生まれて良かったという事。中韓のような国でなくて本当に良かったと思います。

プラハの春の時に池内氏はチエコにいて、20年後民主化が実現したことで言論の力を感じたとのこと。言論で共産党支配の状況が変わった訳ではなく、レーガンのSDI計画でソ連の国防費が肥大化して、衛星国の面倒が見られなくなったためです。歴史解釈が現実を見てなく、都合の良い解釈=脳内お花畑になっています。理想で解釈するのではなく、現実(経済的利益面をも考慮)で判断しないと、間違うのでは。マルクス経済学だって「下部構造が上部構造を規定する」と言っているではないですか。そもそもチエコはZB26軽機関銃を開発したことで有名な国です。日本の九六式軽機関銃はそれを模倣して作られました。それだけ東欧諸国の中では技術先進国です。軍事技術が民生技術をリードしてきたのは、インターネットや飛行機を上げるまでもなく、便利な社会を築いてきました。戦争が人類の進歩にも貢献してきた部分もあります。でなければ戦争は国際法違反として禁止されるべきでは。自衛戦争は許容されると言いますが、線引きできないでしょう。中国に言わせれば、南シナ海も東シナ海も自衛だと言い張るでしょう。

ワイツゼッカーの話もドイツは国として謝罪したわけでなく、全部ヒットラーのせいにして言い逃れしている事実についても触れませんでした。ワイマール憲法下で独国民にヒットラーは選ばれたことを今の独国民はどう思っているのか。

難民の受け入れでメルケルの決断を褒めていますが、100万人も受け入れして大きな問題を抱えたため、支持率は極端に下がったことには触れていません。「独メルケル連立政権の支持率が13年以来最低に=ビルト紙

[ベルリン1月19日 ロイター] – 日刊紙ビルト紙が世論調査会社INSAに委託した調査で、ドイツのメルケル首相(キリスト教民主同盟)率いる、保守大連立政権の支持率が2.5%下がり、2013年9月の総選挙以来最低水準の32.5%になった。同紙が19日伝えた。(ロイター)」とあります。

全般的に理念先行型の発想で、その理想を現実のものにするプロセス構築が弱いと感じました。現実把握が正しくできていないせいと思います。また反権力を貫くためには反共でなければならないことを分かっているかどうかです。でないと銅鑼湾書店メンバーのように拉致されますよと言いたい。民主主義と自由は表裏一体で、自由の中には精神の自由だけでなく、経済的自由も含まれるという事です。

本記事のように為政者の一存で物事が簡単にひっくり返る国でなくて良かったと本当に思います。この自由な国を守るためには、ありとあらゆる手段を使う必要があります。世論戦にも負けないような国際広報も考えて行かないと。ATO(Asian Treaty organization)も発足させたい。なお、周も鄧も、後世墓を暴かれるのを恐れて散骨したと言われています。

記事

Mao & Hua Guofeng

華国鋒(右)と毛沢東(写真:AFLO)

 2月18日、山西省“交城県”では3万人以上の県民たちが“県城(県政府所在地)”から北へ約3kmに位置する“呂梁人民英雄広場”に建てられた“華国鋒(かこくほう)”の銅像を取り囲むように集まり、当該銅像の取り壊し反対を唱えて気勢を上げた。高さ約10mの銅像は、2月16日が華国鋒の生誕95周年記念日であることから、交城県の県民たちが資金を出し合って建設したもので、1月27日に完成した。しかし、記念日翌日の2月17日に、地元の“交城県政府”は銅像が建設に必要な申請・承認の手続きを経ていないとして取り壊しを命じた。このため、関係当局は銅像を赤い布で覆い、その周囲には取り壊し作業用の足場を組んで、取り壊し作業を今にも開始しようとした。

遺言を残した毛沢東の座像と同じ理由で

 河南省の“通許県”では、地元の人々の資金で建設された高さ36.6mの巨大な“毛沢東”座像が、同様に必要な申請・承認の手続きを経ていないことを理由に、竣工を間近に控えた1月7日に取り壊された<注1>。メディアの報道を通じてこの毛沢東座像の取り壊し事件を知る交城県の県民たちは、銅像の取り壊し作業が開始されようとしていることに焦りの色を隠せず、交城県は緊迫した空気に包まれた。県民たちは居ても立ってもいられぬ気持ちで、何としても銅像の取り壊しを阻止しようと、大挙して呂梁人民英雄広場へ集まったのだった。

<注1>毛沢東座像の取り壊し事件については、1月29日付の本リポート「なぜ完成直前の毛沢東座像は壊されたのか」参照。

 交城県は、山西省中西部に位置する“呂梁市”の管轄下にあり、黄河を挟んで陝西省と隣接する。交城県の面積は1821km2で日本の香川県(1877km2)とほぼ同じ、人口は約23万人で香川県(98万人)の4分の1に過ぎない。また、同県はこれといった特産品のない平凡な農村地帯だが、中国の重要仏教寺院の一つである“中玄寺”が存在していることで知られる。中玄寺は中国に伝来した浄土宗がその教えを広める起点となったところで、日本の浄土宗や浄土真宗とも関係が深く、日本の仏教界でもその名は広く知られている。

 さて、その交城県が誇りとするもう一つの事柄がある。それは交城県がかつて中国の最高指導者であった華国鋒の出身地であるということである。華国鋒は1976年9月9日に逝去した“毛沢東”の後継者として、1949年の中華人民共和国成立以来で唯一、“中国共産党中央委員会”主席、“国務院”総理、“中国共産党中央軍事委員会”主席を兼任して「党」・「政」・「軍」の最高指導者となった人物である。華国鋒は死に瀕した毛沢東が彼に残したとされる「“你辦事,我放心(貴方がやれば、私は安心だ)”」と書かれた遺言を根拠に毛沢東が定めた後継者であると名乗り出て最高指導者の地位を得た。彼は“葉剣英”(当時は国防部長)などの古参軍人の支援を受け、当時権勢を誇っていた「四人組」<注2>を逮捕して、毛沢東が主導した“文化大革命”を終結させた。

<注2>「四人組」とは、文化大革命の中で実権を握った中国共産党中央政治局委員4人(王洪文、張春橋、江青<毛沢東夫人>、姚文元)を指す。

華国鋒は1976年10月7日から約5年にわたり中国共産党中央委員会主席として最高指導者の地位にあったが、「毛沢東が決めた政策を絶対に擁護し、毛沢東の指示に従う」という通称“両個凡是”と呼ばれる方針に固執し、毛沢東に対する個人崇拝を継続し、鄧小平を始めとする“老幹部”の復活を妨害し、経済政策を急ぎ過ぎたなどと批判され、1981年6月28日に党中央委員会主席の職を辞した。その後は党中央委員会委員の職に形式的に留まったが、ほとんど表面に出ることはなく、趣味の書道に没頭する日々を続け、2008年8月20日に北京市で死去した、享年87歳。

 但し、伝えられるところによれば、華国鋒は2000年頃に中国共産党を脱退しており、その脱退声明には、「現在の共産党は過去の国民党と区別がない。当時の中国共産党は腐敗反対、専制反対のスローガンを唱えて国民党政府を打倒したが、中国共産党が政権を執ってから50年以上にわたる、一党独裁の堅持、人権の抑圧、国民の自由のはく奪、汚職腐敗、司法の濫用などは当時の国民党政府の比ではない」と述べられていたとされる。

孫文をしのぐ陵墓に非難轟々

 それはさておき、華国鋒の葬儀は2008年8月31日に北京市“八宝山革命公墓”<注3>で元国家指導者としての体面を保つ形でしめやかに行われた。華国鋒の遺体は荼毘に付された後、その遺骨は八宝山革命公墓に預けられた。一方、華国鋒は生まれ故郷の山西省交城県に埋葬されることを望んでいたことから、華国鋒の遺族は交城県当局と交渉を重ね、中国政府当局の承認を得て、交城県の景勝地である“卦山(かいざん)”に“陵園(陵墓を中心とした林園)”を作ることを決定した。

<注3>“司局級(局長クラス)”以上の幹部が埋葬される資格を持ち、一般大衆用の“八宝山人民公墓”とは区別される。

 2009年に工事を開始した“陵園”は完工を間近に控えた2011年4月に、メディアの記者に公開されたが、その規模は度肝を抜くものだった。華国鋒の陵墓は卦山の南側半分を占め、敷地面積は10ha(=10万m2:標準のサッカー場14個分)と広く、江蘇省“南京市”の“紫金山”にある“孫文(別名:孫中山)”の陵墓“中山陵(敷地面積8万m2以上)”に匹敵する規模だったのである。孫文は台湾では“国父”と呼ばれるが、中国では“中国偉大的民主革命開拓者(中国の偉大な民主革命の開拓者)”と定義付けられ、革命の先駆者として尊敬されている。華国鋒の陵墓はその孫文の陵墓をしのぐ規模であるばかりか、その総投資額は1億元(約18億円)を上回ると、中国メディアは一斉に批判的な記事を報じた。

後に、交城県当局の関係者は、華国鋒墓陵、華国鋒記念館および華国鋒広場の総工事費は2500万元(約4億5000万円)前後であったと述べたが、当時一般大衆の華国鋒陵墓に対する反発は激しいものがあった。このため、交城県政府は華国鋒墓陵を一時的に閉鎖し、当初予定していた“華国鋒広場”の名称を呂梁市に因んで“呂梁人民英雄広場”に、“華国鋒記念館”を“晋綏革命歴史記念館”<注4>に各々変更すると同時に、華国鋒墓陵は呂梁人民英雄広場の一部分とすることを決めた。交城県政府はこれら変更によって華国鋒墓陵に対する世論の反発を躱し、墓陵の一時閉鎖によって嵐の過ぎ行くのを待つ作戦に出たのだった。

<注4>“晋綏”とは「晋(山西省)」+「綏(綏遠省;現内モンゴル自治区の一部)」を指す。

郷土の誇りを、新たな台座に

 それから半年後の2011年11月初旬、北京市の八宝山革命公墓から移送された華国鋒の遺骨は、華国鋒墓陵内の石室に収められた。本来は逝去3周年当日に当たる8月20日に納骨式を挙行する予定であったが、庶民の反発により2か月延期されたものだった。こうして華国鋒は、1921年2月16日に出生し、少年時代を過ごし、青年時代は日本軍に対するゲリラ戦を展開した故郷の交城県へ戻ったのだった。彼の墓陵の前に置かれた石碑を兼ねた台座は、彼の名前“華国鋒(Hua Guofeng)”の頭文字であるアルファベットの大文字「H」の形状で、彼が国家の最高指導者となった時の年齢である55歳に因んで5.5mの高さだった。本来、台座の上には高さ10mの華国鋒の銅像が据え付けられる計画だったが、庶民の反発を恐れた交城県政府は銅像の据付を取り止め、すでに完成していた銅像は倉庫内に放置された。

 このような状況に心痛めた交城県の県民たちは、郷土の誇りである華国鋒の銅像を本来なら「華国鋒広場」と呼ばれるべき「呂梁人民英雄広場」に建てたいという思いを募らせた。そこで、県民たちは、墓陵前の台座に銅像を据え付けることがいけないなら、呂梁人民英雄広場に新たに台座を作り、その上に放置されたままになっている華国鋒の銅像を据え付ければよいという結論に至った。華国鋒の生誕95周年に当たる2月16日以前に銅像の据付を完成させることを目標に、華国鋒の親友たちが中心となって地元に商人たちの支援を受けて資金集めを行い、呂梁人民英雄広場の中心に台座を建設した。こうして1月27日、呂梁人民英雄広場に新たに建設された台座の上に華国鋒の銅像が据え付けられた。県民たちはその威風堂々たる華国鋒の銅像を目にして、郷土の偉人に対する尊敬の念をより深いものとしたのだった。

 ところが、上述したように、交城県政府は建設に必要な申請・承認の手続きを踏んでいないという理由で、2月17日に華国鋒の銅像の取り壊しを命じたのだった。

取り壊し反対の声は「削除」

 これを知った県民たち1万人以上が「華国鋒の銅像を守れ」の合言葉の下、交城県の県城内のデモ行進を行った上で、呂梁人民英雄広場に集まって「取り壊し反対」の集会を開いた。翌18日には早朝から3万人もの県民たちが呂梁人民英雄広場に集まって「反対」の気勢を上げた。県民たちの一部は当局によって派遣された警察部隊と衝突し、双方に負傷者を出すに至った。同日午後、“交城県党委員会”副書記の“李義祥”は県民の安全を考えて、18日中の取り壊しは行わないと表明した。また、その後、交城県政府は文書を公布して、県民に対して銅像は必要な手続きを経ていないため取り壊さざるを得ない旨の説明を行った。李義祥は、「銅像取り壊しの命令は上部からの指令であり、交城県党委員会ならびに交城県政府は何も言えない立場にある。上部の説明は銅像の建設には手続きが必要であると述べただけだった」とメディアに語ったという。

 2月19日を境に、華国鋒の銅像の取り壊しに関する報道もネット上の書き込みも一切見当たらず、その後の銅像の状況については何も分かっていない。恐らく報道管制が敷かれ、ネットも規制されて、書き込みは削除されているものと思われる。銅像取り壊しが上部からの指令である以上は、たとえどんなに交城県の県民たちが取り壊しに反対を唱えようとも、最終的には銅像は力ずくで取り壊されたと考えざるを得ない。当初、華国鋒の遺族が交城県に陵墓の建設を相談した際に出した条件は、「農地を占用せず、古跡を破壊せず、環境を破壊せず、住民と土地を争わず」の原則で、荒地に埋葬すれば良いというものだったにもかかわらず、交城県が墓陵の規模を必要以上に巨大化したことが、その後に発生した全ての問題の出発点となったのだった。

それなら、華国鋒の銅像が取り壊された真の理由として考えられるのは何か。

習近平以外には考えられない

【1】華国鋒銅像の取り壊しを命じたのは、河南省通許県の毛沢東座像と同様に「上部」であった。華国鋒は毛沢東と同様にかつての国家最高指導者であり、その銅像の撤去を命じることができるのは、現在の最高指導者である中国共産党総書記の“習近平”以外には考えられない。しかも、華国鋒銅像は毛沢東の様に全国各地に多数の像が建てられているのと違い、恐らく交城県の銅像が唯一の物と思われるのに、その像すらも建てることを認めないのはどうしてなのか。

【2】上述したように、生前の華国鋒が中国共産党を脱退していたという事も、一つの要因と言えるのかもしれない。中国共産党を脱退し、その際に中国共産党を批判する声明を発表したことが事実ならば、華国鋒を賛美する象徴となるような銅像を建てることを認めるわけには行かない。

【3】華国鋒には隠された秘密があると言われている。それは彼が毛沢東の隠し子であったという噂である。毛沢東が女癖の悪い人物であったことはすでに周知の事実となっているが、1920年に毛沢東が湖南省“長沙市”に滞在中に知り合った“姚”姓の女性もそのうちの1人であった。この女性は山西省交城県から長沙市へ来ていた「たばこ商人」の娘で、1921年に故郷の交城県で毛沢東の子供を出産した。それが華国鋒であったという。華国鋒は、中華人民共和国成立直後の1951年には毛沢東の故郷である湖南省“湘潭県”の党委員会書記に任命されたのを皮切りに出世階段を駆け上ることとなる。なお、華国鋒の湘潭県党委員会書記在任中に、毛沢東は都合9回湖南省を訪れたが、その度に華国鋒との面会を手配させたという。

【4】これなら、毛沢東が上述した遺言を華国鋒に残した理由が説明できる。また、2002年12月26日、華国鋒が毛沢東の娘たちと共に北京の天安門広場にある“毛沢東記念館”を訪れて、毛沢東の冥福を祈った際に、彼が持参した花輪には「忠実な息子国鋒哀悼」と書かれていたという。花輪はその後すぐに撤去された。

【5】華国鋒が毛沢東の私生児だったとすれば、毛沢東が華国鋒に残した遺言は父から子への政権の世襲を意味することになり、北朝鮮の世襲統治に異を唱える立場の中国にとっては極めて都合が悪い話である。さらに、中国にとって毛沢東は革命の指導者であり、国家の偉人であり、神に等しい存在である。そんな人物なのに、女癖が悪いばかりか、非嫡出子までいたとなっては、国家の体面にも関わる問題となる。それなら、華国鋒には静かに交城県の墓陵で眠ってもらい、人々の目に触れる銅像などは建てないに越したことはないという結論に達するのである。

 なお、話のついでに、中国の国家指導者の死後について述べると以下の通り。

【毛沢東】中国の指導者の中で最初に火葬を推奨したのは毛沢東だったが、その本人の遺体は永久保存処理を施されて毛沢東記念館の中に安置されている。皮肉以外の何物でもない。

【周恩来】生前の遺言「遺骨は保存せず、まき散らせ」に従い、遺骨は4分割され、北京市や天津市など4地点の上空からまかれた。

【鄧小平】生前の遺言「角膜は寄贈、遺体は解剖、遺骨は保管せず、海へまく」に従い、遺骨はその希望である“回帰大海(海に帰る)”を実現して海にまかれた

3/3日経ビジネスオンライン 山田泰司『中国経済異変!昼の町に立ち始めた夜の女たち 城壁廃止議論の中、路地裏文化の勃興か不景気の顕在化か』について

上海では街並みを見るときに「弄」という文字を良く見かけました。「中国上海市长宁区古北路60弄2号501室 200051」=” 2-501, 60 Gubei Road Changning 200051 SHANGHAI P.R. CHINA”と表記されます。200051は邮政编码(郵便番号)です。「弄」はさしずめ日本で言う「丁目」に相当すると思います。上海には「魯迅公園」もあり、「内山完造」も住んでいました。日本と中国が仲が良かった古き良き時代です。

Lu Xun’s home

 

 

 

 

 

 

 

 

魯迅旧居 

Uchiyama Bookstore

                

 

 

 

 

 

内山書店跡

また「社区」というのもあり、本記事にあるようにそこで生活が完結できるような仕組みもありました。監視社会を徹底させるためだと思いますが。

街娼は中国では床屋が多く、近くを通ると女性が呼び込みしていました。当時は10元くらいだったような気がします。汚いので近づかないようにした方が良いでしょう。またホテル(外資系でも)のロビーにそれらしき人が屯しておりました。この人たち以外を外から持ち込むと、通報され、公安による逮捕、パスポートに破廉恥を意味する「恥」のスタンプが押されるという話を聞いたことがありますが、見たことはありませんので真偽のほどは分かりません。

中韓とも今現在売春婦がこれだけたくさんいるのに70年以上の日本の慰安婦を非難します。キチンと反論しなければ汚名を雪ぐことはできません。米軍の7年に亘る調査結果や朝日新聞の誤報で強制性を裏付けるものはない=強制性はなかったことをもっと強烈に主張すべき。従軍慰安婦の概念で言えば、解放軍施設の中に一杯慰安婦はいます。

記事

Street in Shanghai-1

上海の一般的な住宅。通りに面してごく小さな入り口があり、その奥に住居が広がっている。通りからは奥にこれほどの広がりのあるスペースがあるとは想像できない(上海市内)

 日本文学史に残るそうそうたる作家たちが書き残した日本以外の国の町、という点で、上海は他の町を圧倒しているのではないだろうか。

 ロンドンに船で留学に向かう途中に寄航した夏目漱石が、新聞社の視察員として訪れた芥川龍之介が、父の赴任先を訪れた当時17歳の永井荷風が、杭州に駐留する火野葦平に芥川賞を授ける使命を帯びてやってきた小林秀雄が、愛人に傾く妻の気持ちを再び自分に向かせるために夫婦で旅立った金子光晴が、日記、エッセー、小説とスタイルはさまざまだが、当時の上海を記録している。金子光晴が、じっと何かを考え込んで1時間も動かない魯迅を見かけた横浜という名前の橋や、永井荷風が庭園の壮麗さに打たれた豫園など、当時の面影を今も残す場所は少なくない。

 これら作品の収録された文庫本や電子書籍の入ったスマホをガイドブック代わりに散歩するのに、上海は格好の町である。残念なことに最近は、PM2.5等の大気汚染がひどすぎない日ならば、という条件付きだが。

中国には路地裏が存在しない

 ただ、上海、そして中国の町歩きでもの足らないなと思うこともある。それは、裏通りや路地裏、横町を歩く楽しみがないことだ。中国には表通りしかなく、裏通りや路地裏が存在しないのである。

 こう言うと、上海や北京を知っている人の中には、「何を寝ぼけたことを。裏通りや路地裏ならそこらじゅうにあるじゃないか」「北京の胡同こそ裏通りではないのか」と指摘する向きもあろう。しかし、中国の都会にある道路は、道幅が広いか狭いかの違いだけですべてが表通り。上海や北京にも裏通りや路地裏があるという人が頭の中に思い浮かべているのは、ただ道幅が狭いというだけで、表通りに過ぎない。

 中国の町に路地裏や裏通りが存在しない理由は、住宅の構造にある。

 中国は古来、囲う文化である。町全体を城壁で囲い、一族や共同体の住む複数の住居を壁で囲う。町を城壁で囲うことで外の世界と遮断し、住宅の四周を壁で囲むことで、一族以外の人間や、通りがかりの見知らぬ人物の侵入を防いできた。住宅の中に入るにはいったん、通りに面した門をくぐって囲いの中に入り、中庭などを通ってようやく自分の家の玄関にたどり着くというスタイルである。

Street in Shanghai-2

高層の集合住宅の入り口と、中庭の様子。四方を囲む形にして外部と遮断し通り抜けできないようなスタイルにしている(上海市内)

町造りや住居造りにおけるこのような精神やスタイルは、現代に至るまで脈々と受け継がれてきた。こうした住宅群の中には数百戸、数千戸が入居する大規模なものもあるため、囲いの中に学校、スーパー、病院、銭湯、美容院、レストランなど生活に必要なものがそろっていて、壁の外に出なくても最低限の用が足りるようになっている所もある。

 こうした居住区の中にある小さな路地が、壁で囲う文化のない都市における路地裏、裏通り、横丁に相当するものなのだろう。ただ、囲いの中の路地には、閉鎖された他人の空間に入っていくような居心地の悪さと、あくまで壁で守られた生活の空間という予定調和の空気が流れている。無防備に外界にさらされている場所に自然発生的に形成された路地や裏通り、横丁で感じる危うさやスリル、ドキドキ感やワクワク観が、囲いの中には欠如しているのだ。

城壁文化廃止の論争

 さて、住居群を壁で囲って住人以外の出入りを制限する居住区を形成することで困るのは、誰でもが通行でき利用できる一般道の数が少なくなることである。壁や壁代わりの商店で四周を囲った四角い積み木のような居住区をすき間無く敷き詰めた結果、行けども行けども次の道との交差点にたどり着かない町が出来上がってしまったというわけだ。

 その中国で今、壁で四周を取り囲むスタイルの居住区――中国語では「封閉式小区」と呼ぶ――を禁止しようという動きが持ち上がっている。

 提案しているのは中国共産党中央と中国政府だ。今年の2月下旬、これから新たに開発する住宅については壁を設けず、居住区の敷地内を通る道路も、クルマと人の往来を自由にさせようというのがその内容。さらに、既にある居住区についても、段階的に壁を取り払って誰でも自由に通り抜けできるようにしていくことを目指すという。

 当局が理由として挙げているのは、誰でも通れる一般道を増やすことによる交通渋滞の緩和。なかなか解決の糸口がつかめないPM2.5をはじめとする深刻な大気汚染も、交通渋滞が元凶の1つだから、理由としてはごくまっとうなものだと言える。

Street in Shanghai-3

上海市内の住宅。中央の通りを挟んで右側と左側は別の団地。だが、塀と門で遮り、中央の道を一般車両や住民以外の通り抜けをできないようにしている(上海市内)

 ただ、中国の庶民は当局の説明を額面通りに受け止めてはいない。当局の真の目的は土地に課税することにこそあるというのである。それはこういうことだ。現在、壁で囲っているがために公共の場所扱いになっている花壇などの公共スペースを、壁を取り払うことで個人に分け与える。そこを私有財産と見なして課税し税収を増やすことにこそ真の目的がある、というわけである。

 また、人やクルマの通り抜けを認めることで事故の確率が増すなど安全が確保されなくなると反対する声も上がっている。

 壁撤廃の議論は始まったばかりであり、当面見送りとされたり、強い反発に遭って廃案になったりする可能性だってある。ただ、町ごとすっぽり取り囲む城壁は取り壊しても、住居を囲うことだけは頑なに守ってきた中国で、これが撤廃されることになれば、それはやはりエポックメイキングなことだと言えるだろう。自分の周囲を囲うことで培い積み上げてきた文化や思想、習慣にも変化が生じるかもしれない。なにより、壁の撤廃により、路地裏や裏通りの文化が中国に出現するかもしれないのだ。

昼日中の都心に大量出現した街娼の衝撃

 これはなかなか面白いことになってきたと1人興奮した私は最近、壁で取り囲む居住空間を改めて観察してみようと、時間を見つけては地下鉄に乗り、いくつかの住宅を見て回っている。

 そうした最中である。さる都心部の居住区で目を疑う光景を目の当たりにしたのは。日曜日の昼下がり、上海の中心部の住宅街に、街娼が立っているのを見つけたのである。それが1人や2人だったなら恐らく気付かなかっただろうし、その程度の人数なら、高級ホテルの入り口付近で見かけたこともあった。ところがその居住区では、この通りに4~5人、隣の通りに7~8人、その隣りにまた4~5人と、一目でそれと分かるほどの人数が立っていたのだった。

Street in Shanghai-4

街頭で客引きする女性ら(上海市内)

 その後、彼女らの立つ通りを歩いてみたところ、何人かが「遊んでいかない?」と声をかけてきた。料金は最低50元(約850円)から、とのことだった。あまりの安さに衝撃を受けた。年齢は20代と思しき人もいたが、40代前後が最も多いように見えた。

 そこは、再開発が決まって住民の立ち退きが始まり、一部では取り壊しが既に始まっている集合住宅の集まる居住区だった。元々はそこも四周が壁で囲まれていたようだが、囲いの中に出入りするための門が取り払われていた。建物と建物の間の道が人が2人すれ違うのがやっとというほど狭いのでクルマは進入できないが、人は自由に往来し通り抜けているようだった。私はここに2日通ったのだが、2日目には立ち退きを渋る住民を追い出しに来たと思しき目つきの鋭い若者たちが20人ほどたむろしていた。

 それらの光景を見て私はまず、取り壊しのどさくさでこの居住区に不法組織が入り込み、彼らの仕切りで女性たちを立たせて商売させているのではないかと考えた。

地上げ屋の仕切りではない

 ただ、待てよ、である。

 住宅の解体業者で働く友人がいることもあり、私はこれまで、取り壊しが決まって住民が立ち退きを始めた居住区をいくつも見てきた。しかし、そこに街娼が白昼堂々、1人や2人でなく10数人、しかも都心部と言っていいエリアに出現するなど、少なくとも私は初めて見たし、そのような現象が起きたということも寡聞にして知らない。そして、地上げの若者たちが滞在していた2時間ほどの間、街娼たちはどこかに姿を消し、彼らが立ち去ると再び町角に立った。これを見ても、地上げの若者らの組織が街娼たちを仕切っているのではなさそうだ。

 さらに、取り壊しの居住区からワンブロックほど離れた通りで、建物の影に隠れるようにして立ち客を引く何人かの街娼の姿も認められた。そこは、路線バスが通るような大きな通りに面した場所だ。

共産党が厳しく統制している国という印象のある中国、そして上海にも、もちろん(と言うのが適当なのかどうかはさておき)、風俗店はある。日本のように公然と風俗店を名乗ってはいないが、ナイトクラブやカラオケ、サウナ、足裏マッサージ店の看板を掲げている店の中には性風俗のサービスを提供する店がごまんとある。また、中国語圏では一部の床屋が風俗店の役割を果たしていて、町中に点在している。店の外に漏れる照明が薄暗かったり紫色など怪しい色だったり、店の中の様子をのぞけるように入り口のドアの磨りガラスが一部だけ素通しになっていたりするので、風俗床屋だということは一目で分かる。

アフリカ出稼ぎと街娼の共通点

 調べてみたところ、街娼が立っていた居住区からさほど離れていない場所に、風俗店が比較的多いことで知られるスラム街があることが分かった。ただそれらが営業するのは店の中、建物の中でのこと。繰り返すが、上海の都心で昼日中、何十人もの街娼が立つなどということはこれまでに無かった。性風俗に携わる彼女らが、表に出てきたのはなぜか。そうした現象を発生させる何らかの変化が起きているのではないか。

 すると、アフリカで働く中国人のことを調べている研究者からこんな話を聞いた。アフリカで働く中国人の出稼ぎ男性を相手に性のサービスを提供するためにアフリカに渡る中国の女性たちが存在するのだが、半年ほど前から渡航する数が、男性、女性とも増え始めているようだと。そして、その中心がアラフォー世代だということ。そして、増加している背景には、不景気があるようだということだった。

 中国では、高卒や専門卒、あるいはそれ以下の学歴の人たちは、35歳を過ぎると途端に仕事が見つからなくなる。アパレルや飲食店の店員にも採用されない。男性であれば50歳を過ぎると警備員でもなかなかなれない。そうした女性たちの選択肢の1つに家政婦があるのだが、不景気の影響でここ2~3カ月、家政婦の口が減り始めているということは、前々回のこのコラムで書いた。

 囲いが取り払われた居住区の路地に突如として出現した大勢の街娼たち。その姿はまるで、中国経済の軋みでできた城壁のひび割れから押し出されたかのようだが、家政婦の仕事を見つけるのも困難になった女性たちが、ある人は上海の町角に立ち、ある人はアフリカに渡る決断をしているということの現れであり、景気が確実に悪くなり始めていることを示すものなのだろう。さらに、囲いがなくなり往来が自由になると、このような光景の路地裏が中国の他の居住区にも誕生するだろうということを予見させるものでもある。

3/2JBプレス 高濱賛『反日のトランプとヒラリーより世界はルビオに期待 民主党が最も嫌がる男に、共和党主流派が一致団結へ』、3/4日経ビジネスオンライン 高濱賛『スーパーチューズデーの隠れたカギ「特別代議員」 規則変更がトランプの追い風に』について

 

Hiroshi Yamada3/3アミュゼ柏で行われた山田宏氏講演会。京大時代、会田雄次教授から「戦後教育の欠落したものとして①宗教心(何かを畏れる心)②道徳(人の道)③歴史への誇り(先人への感謝)が挙げられる。君達はそれがないから指導者になってもダメになるだろう」と言われたと。また民主党且つ京大の後輩(多分前原)と話した時に、彼が保守と言うので何を守りたいのか尋ねたら、「渡辺京二の『逝きし世の面影』のような社会を作りたい」と答えたので、「それは花であって、幹や根ではない」と言った。でも、自分もその時は分からなかったが、ずっと考えて守るべきものの結論が出た。①皇室②神社③日本語の3つである。以上が簡単に内容を紹介したものです。

3/4日経朝刊には「クリントン氏、はや本選に向け動く 米大統領選

【ワシントン=川合智之】1日の米大統領選候補者選びのヤマ場「スーパーチューズデー」を終え、米メディアでは躍進したヒラリー・クリントン前米国務長官(68)が一段と優勢になったとの見方が強まっている。クリントン氏陣営は、早くも指名獲得後の不動産王ドナルド・トランプ氏(69)との本選に照準を合わせて動き出している。

 米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)は2日、スーパーチューズデーはクリントン氏にとって「最善の日になった」と評価。米紙ワシントン・ポスト(電子版)も1日、「サンダース氏が今後、連勝するとは考えにくい」として民主党の指名争いは「終わりに近づいている」と報じた。

 米メディアによると、クリントン陣営のロビー・ムック選対本部長は2日、クリントン氏がサンダース氏より600人以上多い代議員を得たことを踏まえ「2008年大統領選でのオバマ氏のリードよりも大きい」と指摘。指名獲得圏内に入ったと示唆した。

 仮にサンダース氏が5日のカンザス州やネブラスカ州の党員集会で勝っても、黒人に人気があるクリントン氏は南部ルイジアナ州などで優位を保ち、差は縮まらないという読みだ。クリントン氏は2日、ニューヨークでの集会で「昨日は歴史の一ページになった」と述べるなど、トランプ氏との本選対決を見越した発言を繰り広げた。

 一方のサンダース氏は2日、8日投票の大票田ミシガン州で1万人規模の集会を開催。「ますます差は縮まっている」と逆転に望みをつないだ。

 共和党ではトランプ氏が通算15州で10勝と圧倒的リードを保つ。原動力は、暴言を含む過激な発言を武器に、これまで投票したことのない共和支持者を掘り起こしたことだ。トランプ氏は2日、「私のおかげで共和党は数百万人の新たな有権者を得た。注意しないと皆離れていくぞ!」とツイッターに投稿した。

 米公共ラジオNPRによると、1日は11州の共和党予備選・党員集会に850万人が参加。前回の12年大統領選の470万人に比べ8割増え、過去最大となった。特にバージニア州では3.8倍と記録を大幅に塗り替えた。逆に民主は08年に比べ3割減だった。

 一時はトップを走った元神経外科医ベン・カーソン氏(64)は2日、1日の惨敗を受けて撤退を示唆。通算4勝のテッド・クルーズ上院議員(45)、1勝のマルコ・ルビオ上院議員(44)らは選挙戦を続ける方針だ。

 共和指導部はトランプ氏への対抗馬を一本化する構えをみせてきたが実現は遠い。米政治専門サイト、リアル・クリア・ポリティクスが集計した主要世論調査の平均によると、トランプ氏とクリントン氏が本選に出た場合、クリントン氏の支持率が3.4ポイント上回る。一方でクルーズ氏やルビオ氏が共和候補なら、どちらもクリントン氏に勝てるという。一本化の遅れが共和の誤算となる恐れが強まっている。」とありました。JBプレスの高濱氏の記事に詳しい数字が載っています。

共和党はトランプ下ろしが功を奏するかですが、「ここまで来たらもう遅い」との声もあり、WSJもトランプ支持に回るとの観測もあります。コッチ兄弟の「スーパーPAC」によるルビオ支援が間に合うかどうか。ルビオの地盤のフロリダでも世論調査ではトランプに抜かれている状況です。やはり、同じ地元のジェブ・ブッシュが味方にならないことが尾を引いているのでは。ブルームバーグが本選に名乗りを上げ、民主党支持を分裂させないと、共和党は勝てないかも。

JBプレス記事

Marco Rubio-2

米テキサス州ダラスで開いた選挙集会で演説する米大統領選の共和党候補指名を争っているマルコ・ルビオ上院議員(2016年1月6日撮影)〔AFPBB News〕

民主ヒラリー、共和トランプ独走で中盤戦に突入

 「スーパー・チューズディ」を終えて、米大統領選予備選の輪郭がより鮮明になってきた。

 民主党大統領指名レースではヒラリー・クリントン前国務長官が独走態勢に入った。一方の共和党は不動産王ドナルド・トランプ氏が「保守草の根一揆」の波に乗って快走。キューバ系のマルコ・ルビオ上院議員が共和党保守本流の期待を一身に背負ってトランプ氏を追いかけるといった構図になってきた。

 これまでの論争では、外交問題は内政に追いやられて取り上げられてこなかった。が、クリントン氏は、ミネソタ州党員集会を前に地元紙に寄稿し、TPP(環太平洋経済連携協定)に「ノー」を打ち上げた。

 日本が為替操作しているといった難癖までつけている。

 予備選段階での発言は多分に票目当て。民主党の強力な支援団体の労組の顔色を窺うポーズだが、「ヒラリーが大統領になると、せっかく日米で合意したTPPはひっくり返される可能性が出てきた」(外務省筋)と早くも心配する声も出ている。

 では、トランプ氏が大統領になったらTPPはどうなるのか。

 同氏は、日米安保をめぐっては日本の「タダ乗り論」をぶち上げてはいるが、TPPについてはいまだ発言したことがない。

 「まだそこまで勉強していないんだろう」(米主要シンクタンク上級研究員)が、議会共和党はTPP賛成派が多いわけだし、「大統領になればTPPに賛成する可能性が大」(同)というのが大方の見方だ。

 いずれにしてもどちらが大統領になっても反日スタンスになることは不可避。「いろいろ批判されたが知日・親日のオバマが懐かしくなる時が必ずやってくる」(在米日本人商社幹部)のかもしれない。

共和党主流がトランプを嫌がる理由は3つ

 ヒラリー指名はどうやら確実になってきた。だが、共和党サイドはまだ分からない。共和党主流、政財界、主流メディアこぞっての「ストップ・ザ・トランプ」総動員が「発令」されているからだ。

 なぜか。

 共和党保守本流はもとより共和党支持の財界勢力がトランプ氏に嫌悪感を感ずる理由は3つある。今や危機感にまでなり始めている。

 1つは、暴言と無差別的差別発言を繰り返すトランプ氏が指名されれば、民主、共和どちらの党にも属さない「無党派」層が強く影響する本選挙では、共和党はクリントン氏にはまず勝てない、という選挙戦略的な理由。

 2つ目は、万一、トランプ氏が大統領になったとしても、これだけ共和党既成体制を罵倒し、反発してきたトランプ氏の下、秋の上下両院選挙後も両院過半数を維持しそうな議会共和党とうまくいくわけがないと見る政治的理由。

 それよりも何よりも、「政策立案能力ゼロのトランプ氏がいくら共和党系のブレーンを集めたとしても大統領として政治をつかさどることなどまず無理」(共和党系シンクタンクの上級研究員)との判断がある。

 そして3番目には、オバマ大統領が指摘しているように「トランプ氏には大統領としても資格がない」点だ。能力ばかりではない。品位がなさすぎるのだ。

 「アメリカ合衆国の大統領に不可欠なのは思いやりと優しさ。ケネディにもレーガンにもイデオロギーを超えてそれがあった」(前述の上級研究員)

 となれば、共和党保守本流としては、予備選中盤戦に突入する3月中旬から4月にかけて「ストップ・ザ・トランプ」を全開にしなければならない。

保守本流の「切り札」ジェブ・ブッシュは「兄貴の負の遺産」で撤退

 共和党保守本流はこれまでジョージ・W・ブッシュ元大統領の実弟、ジェブ・ブッシュ元フロリダ州知事を「ストップ・ザ・トランプ」の急先鋒に使おうとしてきた。トランプ氏に対抗させる強力指名候補として物心両面から支援してきた。

 ところが支持率はてんで上がらず5%前後を低迷。2月下旬には大統領選から早くも撤退してしまった。

 ネオコン(新保守主義派)にそそのかされて国民を裏切り、無謀なイラク戦争突入した兄貴ジョージの「負の遺産」に最後まで足を引っ張られたのだ。

 保守本流はそこで用意していた「2枚目のカード」としてルビオ氏を切らざるを得なくなった。弁護士出身でフロリダ州議会議長を経て、上院選挙に出馬し見事当選したマルコ・ルビオ氏(44)。保守本流から内政、外交、軍事のブレーンが集まっている。

 だが、そのルビオ氏も「スーパー・チューズディ」では、バージニアで唯一首位となったが、トランプ氏を阻止するだけの弾みをつけるところまではいっていない。

トランプには勝てるヒラリーが最も恐れる男

 共和党保守本流がルビオ氏に熱い視線を向けている最大の理由は、まだ中央政界での経験は浅いものの、万一、本選挙でクリントン氏と一騎打ちになった場合、ルビオ氏が勝つチャンスがあるという点にある。

 「若さ、カリスマ性、端正な顔立ちと三拍子そろった保守本流の星。高齢、かつ好感度の低いクリントン氏を相手に絶対勝てる」(共和党選挙対策関係者)と共和党主流は見ている。

 2月2日から17日までに各種世論調査機関が行った支持率平均値によれば、以下の通りだ。

クリントン42.8%:ルビオ47.5%  クリントン44.5%:クルーズ45.3% クリントン45.3%:トランプ42.8%

 事実、クリントン陣営もルビオ氏を警戒している。選挙通で知られるビル・クリントン元大統領は、ヒラリー候補の超側近グループとの数か月前の会合で「ルビオに注意せよ」と警鐘を鳴らしているという。

日本にとっては最適の「日米安保現状維持派・TPP推進派」

 さて、そのルビオ氏とはいかなる人物か。

 同氏はキューバ系移民の3世。フロリダ州マイアミで生まれ、フロリダ大学、マイアミ大学法科大学院を卒業して、弁護士を開業。2000年から2009年までフロリダ州下院議員を務め、一時は下院議長にもなっている。

 2010年には上院議員選に出馬し、見事当選している。その強みは先輩議員、特に長老議員に可愛がられていること。「爺キラー」なのだ。とんとん拍子に出世街道をばく進するルビオ氏を「フロリダのケネディ」と呼ぶものもいるほどだ。

 2012年の大統領選挙の際にはミット・ロムニー共和党大統領候補の副大統領候補の1人に名を連ねたことからも党内ではそのカリスマ性と政治力が評価されてきた。

 上院では1年生議員にもかかわらず、皆が望む商業委員会と外交委員会に属し、後者では東アジア太平洋小委員会のメンバーとして日本にもたびたび訪問している。日米安保の現状については熟知しているし、TPP推進派の1人でもある。

 中国の南シナ海、東シナ海での海洋権益拡大には猛反発している。日本の「安保タダ乗り」論を展開するトランプ氏を一喝しているのも共和党候補の中ではルビオ氏だけだ。

「民主党リベラリズムがアメリカン・ドリームをぶち壊す」

 そのルビオ氏自身が書き上げたのが本書だ。昨年4月に立候補する前に出た自叙伝だ。予備選の推移とともにルビオ氏への注目度が高まるなか、目下ベストセラーになっている。

 タイトルは、「American Dreams: Restoring Economic Opportunity for Everyone”のDreamsは「ドリーム」というだけでなく、「Development, Relief, and Education for Alien Minors」(つまり「外国生まれの未成年者たちへの発育と救済と教育」)の頭文字だ、とご本人は説明している。

 いかにも、1950年代、カストロによるキューバ革命直前にキューバを逃れて、米国に移住した祖父の孫マルコ・ルビオらしいタイトルのつけ方だ。

 祖父が常に言っていたことは、「卑賎で恵まれない出であろうとも誰でもアメリカ合衆国に来れるのだ。そして自らの大きな望みをかなえることができるんだ」。

ルビオ氏によれば、1950年代、祖父が求めた「アメリカン・ドリーム」はその後、達成が難しくなってきた。その理由は、「連邦政府を軸に米国市民を指揮統制するリベラリズム」にあった、というのだ。

 「アメリカン・ドリームを堅持できるか否かは、我々米国民が我が国が他国とは異なる例外的国家(An exceptional nation)であり続けられるかどうかにかかっている。これを明確に定義づけることこそが保守主義運動の根幹であり、真の保守主義なのである」

 ルビオ氏の祖父や父親が享受したアメリカン・ドリームは今怪しげになっている要因は何か。

 ルビオ氏は、第1の原因は公的な教育をごり押しし、伝統的な家族制度を無視したオバマ政権のリベラルな政策であり、第2にはハイテク優先主義を突っ走り、付随的に生じる仕事喪失を生み出しているグローバリゼーションにある、と言い切る。

 「しかしながら私は楽観的だ。アメリカ人は、1950年代に謳歌したアメリカン・ドリームを再び復活させるためにいかにしたら今の新しい現実に対応するかのすべを知っているからだ」

トランプ潰しに「スーパーPAC」がネガティブ・キャンペーン活発化

 共和党主流派は、何とかトランプ氏の勢いを止め、7月の全国党大会前の早い段階でルビオ氏の指名への確実な道筋をつけるべく動き出している。

 ルビオ氏を支援する「スーパーPAC」の「アメリカン・フューチャー・ファンド」(AFF)は、全米ネットでトランプ氏に対するネガティブ・キャンペーンをすでに開始、同氏が2005年に不動産投資術を教えると称して始めた「トランプ大学」が詐欺まがいだったことやトランプ・グループが大量の不法移民を雇っていることと大々的に批判し始めている。

 資金はルビオ指名実現を目指す共和党主流派に近いコッチ兄弟ら億万長者たちとされている。

日経ビジネスオンライン記事

—民主党11州、共和党12州の予備選・党員集会が同時に行われた「スーパーチューズデー」。この結果をどうみたらいいのでしょう。

高濱:どの候補が得票率で勝ったかということばかり取り上げられますが、指名を獲得するのに重要なのは代議員をどれだけ確保したかです。

Trump & Hillary

スーパーチューズデーを制した共和党のトランプ氏(左)とクリントン氏(写真:ロイター/アフロ)

 3月1日深夜(米東部時間)時点での集計では、共和党サイドでは、不動産王のドナルド・トランプ氏が12戦7勝。代議員237人を獲得しました。緒戦4州の予備選・党大会以降2月29日までに獲得した代議員数319人と合わせると、556人となります。

 共和東の代議員総数は2472人。指名を獲得するには、この過半数である1237人が必要です。トランプ氏はこれでその45%を手中に収めたわけです。 (”Election 2016 – Republican Delegate Count,” Real Clear Politics, 3/1/2016) (”Super Tuesday state results,” The Washington Post, 3/1/2016) (”The Green Papers: Presidential Election USA 2016.” 3/1/2016)

共和党保守本流の「ストップ・ザ・トランプ」作戦は失敗

 「反主流派」の一匹狼であるトランプ氏を嫌う共和党主流派は政治資金団体「スーパーPAC」(スーパー政治行動委員会)などが中心となり、「穏健派」のマルコ・ルビオ上院議員を物心両面から応援しました。

 しかし、そのルビオ氏は振るわず。ミネソタ州で一矢を報いましたが、必勝を期していたバージニア、バーモント両州でも、接戦の末、トランプ氏に敗れてしまいました。

 それに比べ、共和党保守本流とは距離を置く「保守強硬派」のテッド・クルーズ上院議員は地元テキサス州とオクラホマ州で勝者となったばかりか、ルビオ氏との2位争いも5勝2敗としルビオ氏を突き放しました。

 スーパーチューズデーの前からトランプ氏が圧勝することは予想されていました。ですから米主要紙のベテラン政治記者は筆者にこう解説しました。「共和党主流派の面々もいよいよ『トランプの現実』(Trump Reality、トランプが本当に指名されるという現実)を考えざるをえなくなってきたようだ」。

 気の早いコラムニストの中には、トランプ氏の副大統領候補は誰それだ、と予測記事を書く者も現われ始めました。 (”Trump is No.1, but who’s his No.2?” Roger Simon, www.politico.com., 2/24/2016)

アメリカ独特の複雑怪奇な代議員制度

—予備選挙が採用している代議員制度というのは日本人にはわかりづらい制度です。代議員が2種類あったり。とくに民主党の場合は候補者が実際に獲得した代議員のほかに別の代議員が加算されたりしていますね。

高濱:確かに、複雑な制度です。まず、代議員には「一般代議員」(Delegate)と「特別代議員」(Super Delegate)とがあります。とくに民主党では代議員の15%が「特別代議員」なのです。共和党のほうは割合少なく4%です。

 一般代議員は、その州に住む18歳以上の党員であれば誰でもなれます。一方、特別代議員はその州選出の連邦上下両院議員、州知事、歴代の正副大統領、党の幹部などいわゆる党内エリートしかなれません。無投票で事前に決まっています。

 クリントン氏が緒戦の4州予備選・党大会後に着実に代議員数を増やしているのは、態度を留保していた特別代議員の中からクリントン支持誓約をする者が続々と現れているからです。

 民主党主流派によるある種の「操作」が働いているわけです。これについてはこれまでにも一般党員から批判がありまし。現にサンダース陣営は今回激しく抗議しています。しかし、党主流派は「伝統的な党是を守るためだ」と突っぱねています。

 一方、共和党の特別代議員の数は民主党に比べると少なく、「党内エリートがトランプ氏の快進撃に歯止めがかけられない要因の一つだ」と、筆者に解説してくれる選挙専門家もいます。

—一般代議員と特別代議員との大きな違いはなんですか。

高濱:一般代議員は、登録する際に自分が支持する候補の名前を明記し、自腹を切って全国党大会に出席し、予備選の際に自分が支持してきた候補者に必ず投票しなければなりません。

 一方の特別代議員は、自分が誰に投票するかを党大会までに決めても決めなくてもいいのです。通常は「スーパー代議員」と呼ばれますが、メディアあるいは選挙専門サイトは「Bonus Delegates」(ボーナス代議員)とか「Unpledged Delegate」(誓約に縛られない代議員)とも呼んでいます。

比例配分の州でも総取りできる

 さらに話を複雑にしているのは、勝敗を決める選挙の方式です。「勝者総取り」(Winner-takes-all)と比例配分方式とがあります。どちらを採用するか、州ごとに異なります。

 共和党は2012年に大統領指名規約の一部を改正しました。比例配分方式を採用する各州に例外条項を設けさせたのです。これを「Rule 40B」(ルール40B項)と呼んでいます。

 その内容は以下の通りです。 1)候補者が50%以上の票を得れば、州全体の代議員を総取りできる。 2)得票率が50%未満でも、他の候補者たちの得票率が20%(あるいは15%)を下回った場合、第1位の候補者が州全体の代議員を総取りできる。 3)連邦下院議員選挙区で50%以上の得票を得る候補者がいない場合は、1位の候補者が2人、2位の候補者が1人の代議員を獲得できる(各州の連邦下院議員選挙区ごとに3人ずつ割り当てられている)。  おおざっぱに言うと、得票率の高い候補に重点的に代議員が割り振られる仕組みになりました。

 12年まで、各州に割り当てられた代議員数は、各候補者の得票に応じて配分されました。つまり実際の投票結果を反映した生の数字でした。

トランプに有利に働いた「例外条項」

—「スーパーチューズデー」が行われた各州はすべて比例分配方式でした。その例外条項はどういった影響を与えましたか。

 スーパーチューズデーでは、アラバマ、ジョージア、ルイジアナ、テキサス、テネシーなど南部州がこの「ルール40B」を適用しています。従ってトランプ氏はアラバマ、テネシーの両州ですべての代議員を手中に収めました。勝者総取りと同じ結果になったわけです。 (”The Real Import of Rule 40 in 2016,” frontloading.blogspot.com, 12/13/2015) (”Dramatic, Little Known GOP Rule Change Takes Choice Of Presidential Candidate Away From Rank And File Republicans And Hands It to Party Elite,” Rich Ungar, Forbes, 4/7/2014)

トランプの「禁じ手作戦」功を奏す

—トランプ氏は同じ共和党のジョージ・W・ブッシュ元大統領を名指しで批判しましたね。それなのになぜこれほどの票を集めているのですか。予備選は党の中での指名争いですから、自分が所属する党出身の歴代大統領は批判しないのが慣例なのでは。

高濱:トランプ氏はサウスカロライナ州予備選前になってブッシュ元大統領のイラク政策を真正面から批判しました。トランプ氏はライバル候補であるジェブ・ブッシュ氏を批判する手段として、ブッシュ元大統領のイラク戦争突入を厳しく批判しました。それだけでなく、01年の東部中枢同時多発テロですら、「大統領がブッシュでなければあのテロは防げた」とその責任を追及したのです。

 民主党でも共和党でも、大統領候補が自分の党出身の歴代大統領を名指しで批判することはしません。その意味では、トランプ氏はまさに「禁じ手」を使ったのです。ところがそれが見事成功しました。

 声を大にしては言いませんが、共和党員の多くもトランプ氏と同じことを思っているはずです。そこをトランプ氏は代弁し、ブッシュ元大統領を批判、返す刀で兄ジョージ氏を弁護するジェブ氏を叩いたのです。結局トランプ対ブッシュの論戦はトランプ氏に軍配が上がりました。

 CNNテレビが行った出口調査でも明らかになったように、共和党員の半数は既成の共和党が自分たちを裏切ったと答えています。その意味で、ブッシュ元大統領およびブッシュ・ファミリーはその格好の標的になってしまったようです。

 自らが所属する党の元指導者や既成政治家を批判して選挙で勝つ手法は、日本でもありましたね。01年、小泉純一郎氏が党総裁選で「自民党をぶっ潰す」と言い放って、党主流派が推す橋本龍太郎氏を破ったことを思い出します。

反既成体制、反権力機運は民主、共和両党に

—民主党のサンダース氏も、クリントン氏に政治資金を提供し続ける民主党系富裕層を批判しています。トランプ氏は右、サンダース氏は左と分かれていますが、ともに既成の権力に対抗している点では共通項がありそうですね。

高濱:興味深い世論調査結果があります。15年9月24日に公表されたウォール・ストリート・ジャーナルとNBCが行った世論調査結果です。

 これによると、回答権者の44%がこう答えています。「今の既成政治システムはウォール・ストリート(金融・経済界)やワシントン(行政府、立法府)の富裕層や権力者たちのためだけに機能しており、一般市民の日常生活のためには全く機能していない。そのことに憤りを感じる」

—一般市民の憤りは、民主、共和両党をクロスオーバーして広がっているわけですね。

高濱:米政治学者の中には、「今回の大統領選の特徴は米国民が4つに分かれていること」と指摘する者もいます。つまり民主党主流、民主党草の根、共和党主流、共和党草の根の4つです。

 こう見てくると、民主、共和どちらのどの候補が大統領になったとしても、次期大統領はこうした一般市民の声を無視するわけにはいかなくなることが予想されます。 (”The establishment’s swan song,” Fortune CEO Daily, 2/20/2016)

ローマ法王の「クリスチャン否定」発言に猛反発

—トランプ氏による批判は共和党既成体制だけではなく、カトリックの最高位、フランシスコ・ローマ法王にも向けられましたね。

高濱:スーパーチューズデーの直前、フランシスコ・ローマ法王のコメントにトランプ氏は激しく反論しました。

 トランプ氏は、予備選の緒戦から「不法移民を入れさせないよう、メキシコとの国境に巨大な壁を作る」と主張していました。これに対し、法王は「あなたはクリスチャンではない」と批判しました。

 トランプ氏は食って掛かりました。「宗教指導者が他の人間に疑問を挟むとは不名誉で、けしからん(disgraceful)話だ」。米総人口の20.8%を占めるカトリック信者が敬愛するローマ法王に口答えしたわけです。

 筆者は当初、カトリックとプロテスタントとの違いはあれ、南部、中西部を中心に米総人口の25.4%もいるエバンジェリカルズの票田に影響は出ないのか、と考えました。ところが、その後に行われた予備選、党員集会でトランプ氏のコメントに対するネガティブな反応は全くなく、投票にはほとんど影響なかったようです。 (”Donald Trump calls Pope Francis ‘disgraceful” for questioning his faith,” Ben Jacobs, The Guardian, 2/18/2016)

 エバンジェリカルズ系の牧師は筆者にこう説明しています。「同じキリスト教とはいえ、プロテスタントの原理主義者にとってカトリック法王は特別な存在ではない。むしろ、南米出身のフランシスコ・ローマ法王が米国の不法移民対策に口を挟んだのを不快に思っている。だからトランプの反発をそれなりに評価している」 (”Right-Wing Media Lash Out At Pope Francis For Suggesting Donald Trump’s Immigration Plans Do Not Reflect Christian Values,” Alex Kaplan, Mediamatters.org., 2/18/2016)

 党の既成勢力だけでなく、どんな権力者や権威をも恐れぬ「一言居士的なトランプ」が共和党員・支持者の間で喝采を浴びていることがよくわかります。

 これが今後の予備選でも持続できるかどうか、その結果がトランプ氏にとって吉と出るか、凶と出るか。

 3月5日にはカンザス、ケンタッキー、ルイジアナ。次いで15日には、勝者総取りを採用しているフロリダ、ミズーリと続きます。代議員数ではフロリダが99人、ミズーリが52人。1位になれば大口の代議員が一気に転がり込みます。

 ルビオ氏などは地元フロリダでトランプ氏を迎え討ち、なんとか雪辱を果たしたいところでしょう。

本命クリントン、指名に必要な代議員数獲得にまっしぐら

—民主党の選挙結果をどう見ていますか。

高濱:いよいよヒラリー・クリントン前国務長官が独走態勢に入りましたね。スーパーチューズデーが行われた11州での勝敗は7勝4敗。バーニー・サンダース上院議員を完全に突き放しました。とくに南部では夫君ビル・クリントン元大統領が黒人層に圧倒的な人気を誇っていることも手伝って、黒人票の大多数を獲得したことが勝因の一つなったといえましょう。

 クリントン氏が今回獲得した代議員数は504人。クリントン氏が3月1日以前の予備選・党集会で確保した代議員数は548人。これを合計すると、3月2日午後現在で1052人になります。指名に必要な代議員数は2383人(特別代議員を含む)ですからクリントン氏は現時点ですでにその44%を手にしていることになります。 “Delegate tracker – Associated Press Interactives,

 一方、サンダース氏は地元のバーモンドのほか、コロラド、ミネソタ、オクラホマの4州でクリントン氏を破りました。善戦したと思います。中西部の民主党員、とくに学生や若い世代が、オバマ政権をはじめとする民主党既成勢力に反発し、クリントン氏への投票をためらったものと思われます。

3/2日経ビジネスオンライン 福島香織『「過去20年で最も厳しい北朝鮮制裁」の意味 真の争点は、米中「アジア争奪」の駆け引き』について

米中主導で北への制裁がまとまりかけましたが、土壇場でロシアのクレームがつき、安保理採択は日本時間3時未明となりました。米中だけで決めさせはしないというロシアの思惑でしょう。中国が本気になって制裁すれば、金王朝はすぐにでも倒れるでしょう。やはり中国にとって、バッファーゾーンは必要だし、金正男に首を挿げ替えても北の人民が従うかどうか不明で、リスクは冒せないと思っているのでは。

韓国の二股外交を逆手に取って、米中が北のみならず、韓国をも懲らしめている構図にも見えます。蝙蝠国民は相応の報いを受けるべしと。韓国は米中を手玉に取った気でいましたがTHHADで手痛いしっぺ返しを受けた形です。その内、戦時作戦統制権も韓国に返還するかもしれません。一気に駐韓米軍撤退はないでしょうけど。朴大統領は益々苦しくなりました。昨年末の日本との慰安婦合意に続いて、THHAD配備検討に米国が梯子を外そうとしているのですから。桂・タフト協定、アチソン声明に続く朝鮮半島切り捨てに繋がるかも知れません。米中で宗主国の言うことを聞かない北と南の扱いを裏で決めている可能性もあります。

北の6者協議復帰は、核とミサイル開発の時間の利益を北に与えるだけです。米国も中国も北の封じ込めはできないと思っているはずです。拉致被害者の帰国については今度の制裁でも難しいでしょう。日本が北と交渉して、単独で制裁緩和は出来ないでしょうから。軍事作戦でしか救出は出来ないでしょう。ただどこにいるか分からないのでは作戦は展開できません。拉致被害者は戦後憲法の犠牲者です。左翼・在日が憲法擁護をして政府の改憲の動きを制約してきました。自分の子供たちが拉致され、取り戻せない現状について想像できないアホな似非学者・似非ジャーナリストが多すぎます。国民も拉致を自分のこととして考えてほしい。問題解決について根本的な部分で考えないと。

中国が一番恐れているのは本記事にありますように、アジア版NATOを作られることです。中国の嫌がることをすることが世界平和のためには必要です。中国の軍事膨張を防ぐためには、封じ込めが必要です。合従連衡策として、日米豪印比越でまずATO(Asian Treaty Organization)を作り、後にその他のASEAN諸国を巻き込むようにすれば良いと思います。

記事

Wang Yi VS Kerry

ワシントンで開催された米中外相会談。「北朝鮮制裁」の裏側で「アジア争奪戦」の駆け引きが続く。(写真:ロイター/アフロ)

 北朝鮮の核実験に対する国連制裁決議をあれほど渋っていた中国が一転、同意した。王毅外相が2月23日から25日に訪米し、ケリー国務長官らと会談、制裁案について合意に至った。報道によれば、50日に及ぶ長期交渉の結果という。ロシアは「検討に時間が必要」と言っているので、採決にはまだ時間がかかるかもしれないが、中国はすでに金融機関が対北朝鮮業務をストップしているという報道もあり、すでに独自制裁に踏み切っているもようだ。中国はなぜ、態度をここにきて変えてきたのだろう。

本気でやれば体制維持に影響も…

 米国が国連安保理に提出した北朝鮮決議草案は、過去20年の中で最も厳しい制裁だと言われている。禁輸措置は石炭、鉄鉱石、金、レアアースなど鉱物資源全般に及び、これらは北朝鮮の対外輸出総額の40%を占める。また、北朝鮮への航空燃料、小型兵器、軽武器などの輸出も全面禁止。同時に制裁参加国国内の銀行における金融資産の凍結を行い、北朝鮮への出国も禁止。北朝鮮を行き来する船舶はすべて厳格な審査を受け、制裁措置の履行を保証する。高麗航空機の国連加盟国領空の飛行も禁止する。また、北朝鮮の非合法活動を行う外交人員の退去も行う。例えば北朝鮮国家宇宙開発局など約30の組織および個人が制裁対象としてブラックリスト入りしている。

 北朝鮮を除く国連加盟国192か国にこれを履行する義務が課され、もし本気でやれば、北朝鮮の核兵器開発を阻止するどころか、その体制維持にすら影響するのではないか、というレベルだ。

 中国は当初、国連の対北朝鮮決議に対してなかなか賛同を示さなかった。核実験直後、米国などが国連による制裁の声を上げた時は、中国は「当面の急務は関係国が共同の努力でもって、北朝鮮を対話のテーブルに再びつかせることだ」と、制裁についての直接の言及を避けた。1月15日の段階で、「安保理が北朝鮮にそれなりの代償を求めることは支持するが、北朝鮮を崖っぷちに追い込むことには賛成しない。対話のテーブルに引き戻さねばならない」との立場だった。ミサイル実験が行われる前の2月初めまでは、強すぎる制裁は北朝鮮の不安定化を招く、として慎重に制裁内容を調整するように働きかけていた。

 その理由は、建前上は正常な中朝関係を損なう、あるいは民生を損なう制裁は人道的にも望まない、というものだったが、本音のところは、中国で報道されている専門家の見解を総合すると、

①国連の枠組みの中で制裁に参加するよりも、中国が独自のハンドリングで北朝鮮をコントロールしたいという思惑があった。 ②北朝鮮の核実験への対応よりも、国内の軍制改革や南シナ海の軍事拠点化を優先させたかった。 ③内心は北朝鮮に対し腹を据えかねていたが、北朝鮮のロシアへの急接近を警戒しており、いそいそと制裁に参加する態度を北朝鮮に見せたくなかった。 ④韓国との緩衝地帯でもある北朝鮮の体制維持は中国にとって必要不可欠であり、体制を弱体化あるいは崩壊させるレベルの制裁には参加したくなかった。 ⑤北朝鮮が不安定化して大量の難民が押し寄せてくることなどを警戒している。 …といったところだろう。

 それが、なぜ急に、このような厳しい制裁に同意するよう、態度を変えることになったのだろうか。これは中国の妥協なのだろうか。

THAAD延期と制裁同意の“取り引き”

 独立系華字ネットメディア・多維は、その理由を次のように報じている。多維はもともと米国に本部のあった反共産党的な報道が特徴であったが、近年はかなり北京の立場に近い報道を行うようになっている。

①制裁決議草案は、対外情報工作を担う朝鮮人民軍偵察総局、核・ミサイル開発を担う原子力工業省、国家宇宙開発局を対象に絞ったものである。中国の「民生を損なうことは人道主義にもとる」という建前の理由は必要なくなった。

②米国と韓国が韓国にTHAADミサイルシステムを配備しようとしたことが、中国の妥協を促した。中国はこれに一貫して反対しており、米韓のTHAAD配備規約締結の延期が発表されたのは、中国が対北朝鮮制裁に合意したことへの米国からの見返りだった。

③中国側は、安保理決議では、半島の核問題は解決しないとしている。最終的には対話のテーブルに戻って北朝鮮と米国の和平協議にもっていくしかない。制裁によって北朝鮮の現体制を崩壊させないこと、また米国側も、先に核放棄しなければ対話もしないという姿勢を軟化する、という感触を得たので妥協した。

 一方、中央ラジオの報道では、これは中国の妥協ではなく、高明なる策略であり、妥協しているのは米国の方だ、と報じている。

 「韓国は、北朝鮮の核実験を口実に、THAADミサイルシステムの配備を画策していた。…これは米国がアジア版NATOをつくろうとしているということではないか?」  「中米の北朝鮮に対する姿勢はもともと明らかな違いがあった。米国は『極めて厳しい制裁』を行おうとし、それを口実に『中国は北朝鮮をかばっている』というロジックでもって、中国を米国の原則に従わせようとしていた。米国は、北朝鮮を崩壊させるまでの制裁に中国を参加させようとしていた。これは中国の国家利益には全く合致しない。中国にとって、制裁は北朝鮮を崩壊させることが目的ではなく、話し合いのテーブルに回帰させることが目的である。中国は最後までこの国家利益のボトムラインを守り抜いた」  「北朝鮮の両弾(原爆と水爆)の軽挙が脅威か、それとも米韓の北朝鮮体制崩壊戦略やTHAAD配備が脅威か」  「王毅は半島の非核化と和平協議の推進を並行して行う考えを提示している。(今回の合意は)その具体的ステップ、プロセスを含めた話し合いである」

Xバンドレーダーによる封じ込めに危機感

 こうした報道を見てみると、中国にとっての脅威は、北朝鮮が核兵器を持つこと以上に、北朝鮮の崩壊であり、米国によるTHAADミサイル配備に象徴される“アジア版NATO作り”である。THAADは最大射程200キロ、ミサイルの探知、追跡、迎撃誘導を行うXバンドレーダーの探知距離は1000キロ以上という、イージス艦もびっくりの性能であり、これが韓国に導入されれば、北京もばっちりレーダー探知範囲に収まってしまう。

 北朝鮮の一発や二発の核兵器は1000発の核弾頭を保有する中国にとってさほど脅威ではないが、THAADのXバンドレーダーで中国のミサイルが封じ込められるのは、明らかに脅威であろう。さらに言えば、中国当局は日本が核兵器を持つと言い出すことを非常に警戒している。世界から孤立する極貧小国が持つ核兵器と、米国の同盟国、世界第三の経済大国の日本が持つ核兵器とは意味が違う。中国に対して、朝鮮戦争の血で固めた友誼を忘れ、嫌がらせのように核実験やミサイル発射を行う北朝鮮は、腹立たしい存在だが、喫緊の脅威ではないのだ。

 そして、中国は核保有の大国論理で、米国も北朝鮮の核兵器など本気で脅威とは思っていないはずだと考えている。米国がかくも北朝鮮の核の脅威を強く言うのは、それを口実に、アジアにTHAADを持ち込み、アジアのNATO作りを進めようとしているからだと警戒している。

 中国が目下、南シナ海の軍事化を急ピッチで進めていることからもわかるように、今、アジアにおいては、米中の軍事的陣取り合戦の真っ最中なのである。中国は南シナ海で軍事拠点化を進め、米国は極東で日米韓軍事同盟の強化を進めている。中国の立場からいえば、南シナ海を軍事問題化しているのは米国の方で、韓国のTHAAD配備問題以前から、米国が中国の南シナ海での脅威を煽るのは、アジアにおけるTHAAD配備の口実にするつもりだという警戒論もある。

本質は「北朝鮮の核問題」にあらず

 中国の立場から今回の件を見ると、問題の本質は「北朝鮮の核問題」ではなく、米中のアジアの軍事化競争における駆け引きであり、今後の展開も、アジアにおける米中対立のシナリオから見た方が分かりやすい。中国側がこれは妥協ではなく、策略だと言っているのが本音であれば、この合意によって中国の方が、アジアの軍事化のコマをより多く進めることができるだろう。実際、王毅とケリーの会談では、南シナ海における中国のミサイル紅旗9配備問題もテーマになったはずだが、こちらの話し合いは平行線に終わったようだ。このまま、南シナ海のミサイル配備やレーダー配備を恒常化し、最終的には防空識別圏の宣言まで行っても、米国は文句を盛大に言うぐらいで、具体的に対中関係を先鋭化させるようなアクションは起こさないかもしれない。

 さらに言えば、北朝鮮の“極めて厳しい制裁”によって北朝鮮が核開発を断念する、という結果を本気で期待しているのは、実際のところ日本ぐらいではないだろうか。繰り返すが、中国にとっては、制裁に効果があるかないかよりも、北朝鮮の核問題を口実とした米国のアジア軍事進出をいかに抑え、そして自らの南シナ海での軍事進出を有利に進めるかの駆け引きの方が重要なのだ。少々、北朝鮮に苦しい思いをさせて、今までの中国に対する舐めた真似を反省させれば、十分であり、北朝鮮の体制崩壊など望んでいない。国連の制裁により、北朝鮮の体制が崩壊すれば、その核兵器の安全を確保するために米軍などが北朝鮮内に派遣される可能性があるが、それは中国としては絶対避けたいシナリオだ。

 とすると、今回の極めて厳しい制裁も、中国として、北朝鮮の体制維持に影響するようなレベルにいかないように、かなり短期間で終わらせたい目算があるのではないか。

 中国は、北朝鮮が対話のテーブルに着くことに同意した時点で制裁をやめるだろうが、その対話のテーブルに着く条件は、米国がもともと主張していた、先に北朝鮮が核開発放棄してからというものではなく、王毅外相の主張する核廃棄と和平協議の同時進行となる可能性が高い。これでは、かつての六か国協議と同じで、北朝鮮に核開発を断念させるどころか、むしろ北朝鮮の核保有準備に時間的猶予を与える結果になろう。

 ちなみに制裁は北朝鮮の党大会が開かれる5月の前に解除されるのではないか、というのが中朝国境で貿易に携わる関係者らの感触である。正式に解除が発表されなくとも、「上に政策あれば下に対策あり」の中国で、中朝国境貿易の現場にはいくらでも抜け道は作れるだろう。もともと密貿易の多い地域である。国境守備の辺境の解放軍幹部がレアアース密貿易に加担していることも多く、北朝鮮の鉱山利権を中国側が握っている例も少なくない。軍制改革はそういった北朝鮮利権と癒着している将校を一掃する目的もあるとは思われるが、朝鮮族の解放軍将校らが遠い北京への忠誠よりも近くの北朝鮮利権の方を重視する傾向はそう簡単には是正されまい。

アジアのNATO化と南シナ海軍事拠点化の間で

 そもそも、中国も「ズボンをはかなくても核兵器を作って見せる」と言って、大躍進と右派運動と大飢饉で人民が飢えている最中に核実験を成功させた国である。そして核兵器を持ったからこそ、国際社会で承認され、今、米国とほぼ互角に渡り合える大国になった歴史がある。少々の経済制裁で開発を断念するはずがないと中国も自分たちの経験に照らしてみればわかっているだろう。

 こうした背景を考えれば、過去20年で一番厳しい制裁というのも、中国が本気で北朝鮮の制裁に参加するというのも、建前の新聞見出しであり、日本は制裁の効果に余り期待しすぎると、がっかりする結果になるかもしれない。それよりも、北朝鮮が核兵器を保有し、米国よる“アジアのNATO化”vs 中国による“南シナ海の軍事拠点化”という陣取り合戦が今後激化するという過程で、日本は自国の領土の主権と安全を守る具体的方策を練り直す必要があるだろう。

3/1日経ビジネスオンライン 堀田佳男『大統領選とカネ:最も集金力のある候補は誰?』について

スーパーチューズデーが終わりました。共和党はトランプ、民主党はヒラリーが予想通り制しました。トランプが大統領候補ではヒラリーに勝てず、民主党からまた大統領が出ることになります。ベンガジ事件等平気で嘘をつき、中国やサウジからの金塗れの人物で、夫と一緒にホワイトウオーター疑惑に関与していたのではと思われる人物です。

http://www.eis-world.com/template/eiscolum/seiron/071204.html

http://blogs.yahoo.co.jp/minaseyori/62684177.html

http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20150422/frn1504221532006-n1.htm

日本人にとって民主党はFDR(日本と開戦)、トルーマン(原爆投下)、クリントン(ジャパン・パッシング)とイメージが良くありません。無能のカーターやオバマもですが。

トランプがなるにしろ、ヒラリーがなるにしろ「衆愚の極み」というイメージしか持ち得ません。多数の圧制ならぬ多数の横暴のように見えます。

『トクヴィル アメリカにおけるデモクラシーについて』(岩永健吉郎訳)を読みました。訳者が東大名誉教授で文章が硬く、非常に読みにくかったですが。トクヴィルの米国訪問・観察は1831年(『アメリカにおけるデモクラシーについて』は1835年出版、続編を1840年に刊行)、アンドリュー・ジャクソン第7代大統領の時代ですので、200年程前近くなります。ですから述べていることも当然時代の制約を受けます。①trail of tears(インデイアンの強制移住、1838年)②黒人奴隷についてこの本では触れていません。まあ、あの当時白人にとって有色人種は獣以下だったのかもしれませんが。彼が強調していたのは

Ⓐ自由であるが「多数の圧制」を恐れること。米国人は議論の末に多数意見に従うようになる。そうしないと村八分となり、命までは取られないものの精神生活・経済生活面で苦しむことになる。

P.57~59

「全能は、それ自体、悪であり、危険なものと思われる。その行使は、行使者が誰であろうと人力を超えるもののように見える。神のみが全能であって危険がない。その英知と正しさとが、常にその力に等しいからである。しかし地上では、いかなる権威も、それを何らの抑制なく行動させ何の障碍もなく支配させてよい、と私が思うほど、それ自体が尊敬に値する神聖な権利を身に帯びてはいない。万能の権力が何らかの勢力に与えられた場合、その勢力が人民と呼ばれようと、王と呼ばれようと、またデモクラシーであれ、アリストクラシーであれ、さらにそれが君主政で行使されようと共和政で行使されようと、そこに圧制の萌芽があると私は宣言し、他の法制の下に生きる場所を求める。

合衆国に組織された民主政において私が最も強く非難する点は、ヨーロッパで多くの人が主張するその弱体さではなく、反対に、それが抗いがたい力をもつからである。アメリカにおいて私に最も厭わしいのは、そこに支配する極端な自由ではなく、圧制に対する保障が少ない点である。合衆国において個人や一党派が不正をこうむったら、誰に訴えよというのか。世論にか。世論は多数(派)の形成者である。立法の府にか。これは多数を代表し、それに盲従するものである。執行権にか。これも多数によって任命され、それに奉仕する用具にすぎぬ。警察にか。警察は武器をもった多数以外の何ものでもない。陪審にか。陪審とは判決の権利をまとった多数である。いくつかの州では、判事さえ多数によって選ばれる。うけた処分が、いかに不正または不当であろうと、それに従わなければならぬのである。

反対に、多数を代表してはいるが、必ずしもその激情の奴隸にはならないよう構成されている立法部があり、固有の機能をもつ執行権、他の権力から独立した司法権があるとする。これも民主的な政府であろうが、もはや圧制に向かう機会はほとんどなかろう。

現在アメリカにおいて、しばしば圧制が行なわれている、というのではない。圧制に対する保障が全く見られず、法制によりも環境と習俗とに権力の発動が緩和される要因が求められなければ ならぬ、というのである。

Ⓑ「陪審制度」を高く評価していること。

P.93~96

「陪審は各人に、自分の行為の責任にひるむな、と教える。男らしい態度、それがなくては、政治的に立派ではありえない。それは各市民を一種の司法官の職につける。社会に対して果たすベ き義務があるとすべての人に感じさせ、また政治に参与するのだとも感じさせる。陪審は人々を その私事以外のことにかかわらせて、個人の利己主義と闘う。利己主義は社会の錆である。

陪審は、人民の判断力を形成し、知能を拡充するのに信じがたいほど貢献する。私の見解によ れば、この点にこそ最大の長所がある。無料で常時開設の学校、そこで陪審員は、おのおの自己 の権利についてみずから学び、上層階級の中でも最高の教育をうけ最も見識のある人々と日々接し、法を実際的な方法で教わり、弁護士の努力、判事の意見、当事者の熱情さえもが、法を自分に理解のできるものにしてくれる。そのように陪審を考えるべきである。アメリカ人の実学的な知性と政治的良識とは、主として、民事陪審によって長らく培われたものとしなければならない、と私は考える。

陪審は訴訟するものに役立つかどうかわからないが、その裁定にあずかるものには、たしかにきわめて有用である。私は、これを人民の教育に役立つ最も有効な方法の一つと見なす。

以上に述べたところはすべての国民に妥当する。しかし、ここにアメリカの人々に独特のもの、そしてデモクラシーの人民一般に通ずる事情がある。デモクラシーにおいては、法曹、なかでも司法官が、人民の動きを穏健にしうる唯一のアリストクラティックな集団を形成すると前(節)に述べた。この貴族(というべきもの)は何ら物的な権力をまとわず、その影響は人の精神に及ぶのみである。そして、この力の主要な源泉を民事陪審に見出している。刑事訴訟では社会が個人に対して争うが、そのさいに陪審員団は、判事とは社会のカを受け身に示すものと見るようになり、その意見を無視する。さらに、刑事訴訟は全面的に、良識があれば容易に評価されるような簡単な事実にもとづいている。この領域では、判事も陪審員も同等である。民事訴訟においては状況が異なる。判事は、当事者の激情の間に立つ公平な仲裁者として現われる。陪審員は彼の言動に信頼し、その意見を傾聴する。この場合には、判事の知見が全く、陪審員にまさっているからである。彼らの前に、記憶するのに骨の折れる多様な議論を展開するのは判事であり、また、訴訟の迂路を乗り越えていくのに手をかすのも彼である、事実の点で範囲を区切り、権利の問題で出すべき解答を教えるのも、そうである。その影響たるや、ほとんど無限といえよう。

最後に、陪審員は民事においては無能という議論、これに私があまり動かされない理由をいわなければなるまいか(そうしよう)。民事訴訟においては、事実問題に関しない場合は少なくともすベて、 陪審員団は司法機関の外見をもつにすぎない。陪審員は判事が下した判決を発表する。 彼らが代表する社会の権威を判決に付与するのであり、それは理性と法との権威である。

イギリスとアメリカとにおいて、判事が刑事訴訟の運命に及ぼす影響には、フランスの判事のかつて知らぬものがある。この差異の生ずる理由は容易に理解できる。イギリスまたはアメリカの裁判官は民事において権威を確立し、次いでそれを他の場面で行使するにすぎぬ。刑事において何かを獲得するのではない。アメリカの判事は、単独で判決できる場合がいくつかあり、それは、しばしば最も重要なものである。そのさいには、たまたまフランスの判事が通例おかれる (のと同じ)立場にある。しかし、彼の道徳的権能ははるかに大きい。陪審の思い出が彼に付随し、 陪審は社会の一機関であるから、彼の声には社会の力とほとんど等しい力がある。彼の影響は法廷の外にまでひろがる。多忙な政治活動においても、私生活の憩いにも、立法の府においても市の広場でも、アメリカの判事は絶えず人々に取り巻かれている。そして、この人々は、判事の知性には自分たちよりすぐれたものがあると見ることになれている。訴訟で影響力を行使したあとでも、その権威を事件の裁定に協力した人々の心のすべての習性、そして魂にまで感じさせるのである。

陪審は司法職の権能を縮小するかに思われるが、実は、その権威を基礎づけるのである。人民 が司法官の特権を分かちもつところほど、裁判官が強力な国はない。アメリカの司法が私のいう法曹的精神を社会の底辺にまで浸透させるのは、何よりも民事陪審によってである。また、陪審 は人民の支配を確立する最も強力な方法であるが、同時に人民に支配する術を教える最も有効な方法でもある。」

この本の最後にロシア人とイギリス系アメリカ人が台頭してくると予言していました。一方は剣で、一方は鍬で、前者は総ての権力を一人に集中し、後者は個人利益に基づき、個人の力と理性を自由に活動させ東征しないとありました。確かに冷戦まではロシアとアメリカが争いましたが、米国の勝利で終わり、今は米中の熱戦になるかもしれない所です。

記事

米大統領の職はカネで買える―

 米政界で昔から語られているフレーズである。もちろん数百億円を出せば大統領の職を手に入れられるほど簡単なわけではない。ただ、多額の選挙資金なくして大統領選を戦い抜くことはできないことも確かである。

 筆者は米大統領選を「ライフワーク」と位置づけ、長年取材を続けている。最初に大統領選に接したのはロナルド・レーガン大統領が再選された1984年だ。まだ読売新聞ワシントン支局のインターンだった。実際にジャーナリストとして取材を始めたのは92年で、今回で7回目となる。

 これまで大統領選をさまざまな視点から取材してきた。候補の人物像、政策、選挙対策本部、スタッフ、有権者、選挙戦略、選挙の仕組みや歴史、さらに選挙資金などだ。特に最後の選挙資金は、集めた額によって候補の命運が決まると言えるほど重要である。

 実は戦後71年間、集金力に乏しい候補が大統領に当選したことはない。少なくも筆者が取材をしている過去25年間は、より多くの選挙資金を集めた候補が勝ってきた。正比例ではないが、当選と集金力には強い相関関係がある。

集金額トップはヒラリー氏

 連邦選挙管理員会が2月20日に発表した報告書によると、今年の大統領選の主要候補で最も集金額が多いのは民主党ヒラリー・クリントン氏だ。選挙対策本部に献金された金額と外部の政治団体(スーパーPAC)に献金された総額は1億8800万ドル(約215億円)。2位に約100億円の差をつけている。

 2位は共和党テッド・クルーズ氏(テキサス州選出の上院議員)の1億400万ドル(約118億円)。3位が民主党バーニー・サンダース氏(バーモント州選出の上院議員)で9600万ドル(約110億円)。4位が共和党マルコ・ルビオ氏(フロリダ州選出の上院議員)の8400万ドル(約96億円)である。この額は現在の数字で、11月まで勝ち残る候補は1000億円超のカネを集めることになる。

 上記の候補はいずれも選挙戦で上位に残っている人たちだ。ちなみに、報告書には20人以上の候補がリストされている。すでに選挙戦から退いた人もいるが、上位4人よりも多額の選挙資金を集めたまま撤退した候補はいない。つまり、選挙を戦い抜くためには資金が必要であり、資金があるからこそまた上位に残れると言える。

トランプ氏は自己資金で賄う

 例外は不動産王ドナルド・トランプ氏である。利益団体やロビイストなどから多額の献金を受け取っていない。それにもかかわらず、共和党では昨夏から支持率でトップを維持する。スーパーチューズデーでも圧勝する見込みだ。トランプ氏の強さの要因は1月の当欄に記したのでお読み頂ければ幸いである(関連記事:「民主党支持者の票をも奪い始めたトランプ候補」)。

 トランプ氏は選挙を「自己資金でまかなう」と宣言しているが、実は一般有権者からの資金も受け取っている。利益団体やロビイストからの「ひも付き」のカネを受け取らないだけだ。この点はサンダース氏も同じである。

 トランプ氏の選挙対策本部には一般有権者からの献金(2月20日発表)が、2730万ドル(約31億円)集まっている。自己資金をどれほど使っているかは報告義務がないため闇に包まれたままだ。本人は「たぶん3000万から4000万ドル」と述べており、献金額と合わせると少ない額ではない。

論功行賞狙いの献金も

 それではトランプ氏以外の候補は、億円単位の選挙資金をいったい誰から受け取るのか。 昨年から今年2月まで、大統領候補に最も多額の献金した人物の名はすでに明かされている。ロバート・マーサー氏。ニューヨークにあるヘッジファンド企業ルネッサンス・テクノロジーズの経営者だ。

 コンピューター・サイエンスで博士号を持つ同氏はIBMの元社員で、初期の頃の音声認識プログラムを開発した人物だ。93年に同社を起ち上げた。

 資産約1億2000万ドル(約136億円)。死刑復活や経済システムの金本位制を説く保守派の大物だ。マーサー氏は昨年、クルーズ氏に1000万ドル(約11億円)を献金した。

 献金は簡単なことだが、自己資産の約10%を政治献金として捧げることは億万長者でも簡単にできることではない。政治信条が重なる保守派のクルーズ氏が大統領になることを見込んでの献金である。

 マーサー氏はクルーズ氏が大統領になった後、なにがしかの見返りを期待していると考えるのが普通だろう。いわゆる論功行賞だ。たとえば、ジョージ・ブッシュ前大統領が大統領に当選した2000年、同氏に対して最も多額の政治献金をしたのはマーサー・レイノルズ氏だった。レイノルズ氏は石油採掘会社の経営者であり、大リーグ・テキサス・レンジャーズのオーナーだった人物。

 当時は、今のように無制限の政治献金をすることはできなかったため、多数の富裕層に働きかけて、個人献金を集める方法をとる。レイノルズ氏は計約6500万円をブッシュ氏のために集金してきたのだ。当選後、同氏はスイス大使に任命された。スイスとは何の関係もないにもかかわらずだ。ワシントンではよく見られる人事である。

クリントン氏のバックにジョージ・ソロス氏

 現在、民主党のクリントン氏に最も多額の献金をしているのは投資家のジョージ・ソロス氏だ。700万ドル(約8億円)を出している。資産約3兆1500億円を保有する伝説的な投資家である。ハンガリー生まれのユダヤ系米国人で、クリントン家と知己で、オバマ政権につづいて民主党政権が継続することを望んでいる。

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ヒラリー氏に最も多額の献金をしているのは、この人物だ(写真:Imaginechina/アフロ)

 さらにクリントン氏のところには、エンターテインメント業界のチェリル・セイバン氏、金融業界のハーバート・サンドラー氏、IT企業パロマ・パートナーズ社のドナルド・サスマン氏がそれぞれ250万ドル(約2億8500万円)を献金している。

 前述したように、サンダース氏はスーパーPACからの献金を一切受け取っていない。それでも110億円もの選挙資金を集めているのは、1人平均27ドル(約3000円)と言われる小口献金を多数の有権者から集めている証拠だ。

莫大なカネが非難広告に流れる

 それでは、候補たちは何に多額のカネを使うのか。

 米国には「選挙業界」と言われる産業が存在する。大統領選だけでなく、連邦上下両院議員選挙、州知事選、さらには州議会や市議会の選挙など機会が多いため、選挙請負人が職業としてなりたつのだ。

 その業務は多岐にわたる。政策立案、立法サービス、データベース管理、DM発送、選挙区対策、献金コンサルティング、広告、演説訓練、世論調査、オンライン情報サービス、ウェブサイト構築、メディア対策、対抗馬のリサーチ、人工衛星サービス、ビデオ制作などだ。

 さらに全米50州に置かれる選挙事務所の運営費も必要だ。プロのスタッフを何人も雇う必要がある。電話勧誘のための通信費や郵便料金などもかさむ。

 それ以上にもっとも予算を割くのが、テレビとラジオに流す政治CMである。連邦選挙管理委員会はCMの本数や予算、さらに内容に制限を加えていないため、ライバル候補への非難広告を1つのテレビ局で1日100本流しても構わない。

 多数のネガティブ広告がテレビやラジオから流れると、サブリミナル効果によって相手候補のイメージが落ちる。非難された候補はCMを打ち返さないと、支持率が確実に下がる。打たれたら必ず非難広告を打ち返さなくてはいけない。

 例えばサンダース氏がニューハンプシャー州でクリントン氏に圧勝した理由の1つに、クリントン陣営の約3倍に上る金額をテレビCMに費やしたことが挙げられる。インターネット時代でありながら、テレビは依然としてメディア戦略の主軸なのだ。

 トランプ氏が実際にポケットマネーをどれほど使用しているかはわからない。けれども、昨年から勢いが継続していることと支持率の高さを考慮すると、驚くほどの金額を自己資金でまなかっていても不思議ではない。

 たぶん、大統領というポジションが手に入るのであれば、トランプ氏は数百億円の金額でも何の迷いもなく捻出するだろう。