『[FT]責任欠くメルケル氏発言 米欧の亀裂、恒久化も』(6/1日経朝刊)、『パリ協定離脱で米欧の亀裂深刻 杉浦正章』(6/2渡部亮次郎メルマガ)、『信念なき発言で、もはや誰からも信頼をされないトランプ大統領』(6/2 大前研一メルマガ)について

6/3日経朝刊には<メルケル氏、計算ずくの「脱米国宣言」 欧州結束・国内選挙も意識>という記事が載り、「独は貿易、仏は温暖化対策、伊は難民支援。EUの主要3ケ国と米国との亀裂が明白になった。・・・メルケル氏の狙いは3つ。第一は対米けん制。第二は欧州結束の引締め。第三が国内選挙対策」とありました。国際協調は戦争を回避する手段として必要と考えますが、ご都合主義に堕していないかどうか。何時も言っていますように、何故クリミア侵攻したロシアにだけ経済制裁を課し、南シナ海に侵攻している中国に経済制裁しないのか。米国も欧州も中国との貿易で儲けたいなら、ロシアとの貿易で儲けたいと思っても良いはず。中国には資源がなく、人口の多さが売りで、逆にロシアは、人口は日本と左程変わらない1.4億人で、資源は逆に豊富です。やはり、馬渕睦夫氏の言う「ウイーン会議時に、ロシア皇帝がユダヤ人の「中央銀行を民間に」の提案を断った怨み」が今も残っているのでしょうか?また中国は第二次大戦までは米国のクーリー(苦力)貿易、東南アジアの華僑の抗日等白人の僕としてうまく立ち回って来たため、白人からは「愛い奴」と思われているためでしょうか?まあ、ユダヤ人も中国人も拝金教という意味で似た種族と思っていますが。ただ、日本にとっての脅威は中国であって、ロシアではありません。それを米国だけでなく、欧州にもっと理解してもらわねば。

FT記事にありますように、「ドイツのメルケル氏こそが西側世界の真の指導者だと主張する者さえいる。だが、その称号をメルケル氏に与えるのは早すぎたようだ。」というのは正しいでしょう。GDPでみても米国:EU=18569B$:16408B$で米国の方が多い。米国1ケ国に対し、EUは28ケ国にも亘り意見調整が難しいです。勿論、米国にも州の自治はありますが。世界をリードするのは、経済指標だけでなく、軍事力、人類への理念が揃っているかです。軍事力ではEUも米国に水をあけられています。だからNATOがある訳です。人類への理念も今の国連を見ていると戦勝国の特権の維持と後進国の支援要請、特定国のプロパガンダに堕しています。腐敗官僚も多くいるとのこと、潘基文を見ていれば分かる通りです。日本の「以和為貴」が世界に実現するのが理想ですが、国連憲章に「敵国条項」が残っているのを見ても、実現は難しいと言えます。日本も削除の努力をしてきたとは思えませんが。

http://ecodb.net/ranking/imf_ngdpd.html

http://ecodb.net/ranking/group/XD/imf_ngdpd.html

https://news.yahoo.co.jp/byline/kodamakatsuya/20170512-00070880/

杉浦氏の記事に対し、全面的に賛成です。日本のメデイアはWSJの記事を伝えていません。結局、米国のリベラル紙の尻馬に乗ってトランプを叩いているだけです。そうすれば、我が身が一番安全だからでしょう。トランプは今ユダヤ国際金融資本と戦っています。娘婿のクシュナーもユダヤ人ですがバッシングに遭っています。自分達の権益を守ろうというユダヤ人は、同じ民族が虐殺されても痛痒を感じなかったのと同様で、ハンナ・アーレントが言った通りです。

大前氏の記事は何時も感じることですが、経済の側面からのアプローチや欧米メデイアの受け売りだけで、米軍がどう思っているかについては触れられません。軍事を知らないエリートは片端です。日本にはそういう知識人と称される人が多すぎと感じています。

FT記事

トランプ米大統領の初めての訪欧は、なかなかきまずいものだった。その後遺症はかなりやっかいだ。

イタリア南部で開かれた主要国首脳会議(タオルミナ・サミット)を終えてトランプ氏が帰国した直後の5月28日、ドイツのメルケル首相はミュンヘンで行った選挙演説で、西側同盟はもはや終わったともとれる発言をした。

イラスト Daniel Pudles/Financial Times

「ほかの国々を全面的に当てにできる時代は過ぎ去りつつある。そのことをこの数日間、痛感した。我々欧州人は、自分たちの運命を自分たちで切り開いていかなければならないということだ。もちろん米国とも、英国とも、そしてロシアを含む近隣諸国とも友好的な関係を保つ必要はある。しかし、我々は自分たちの将来のために自ら戦う必要がある」と同氏は訴えた。

メルケル氏の発言は、即座に様々なところで大きく報じられた。米外交問題評議会のトップを務め、米外交政策の第一人者の一人とされるリチャード・ハース氏は、ツイッターで「メルケル氏の欧州はもはや他国を頼りにはできない、従って事態を自ら掌握する必要があるという発言は(欧州外交の)転換点と言える。それは、米国が第2次世界大戦以降、まさに避けようとしてきたことだ」と発信した。

この事態を招いたトランプ氏を非難することは容易だし、当然とも言える。しかしメルケル氏の発言も、慎重な言葉遣いだったとはいえ、責任に欠ける。それは、米国と欧州の関係に既に広がる危険な亀裂をさらに拡大し、恒久的な断絶に向かわせかねないものだからだ。

トランプ氏を非難するのは簡単だ。確かに彼の欧州訪問中の振る舞いは、ひどいものだった。5月25日の北大西洋条約機構(NATO)での演説では、加盟国の集団的自衛権を保障した条約第5条の順守を確約しなかった。たまたま言い忘れたのではない。欧州に何かあれば米国が防衛するのは当然ともはや考えてはならない、という明確なメッセージだった。こうなると、ロシアにNATOの防衛体制を試そうとする機会を与える危険性が浮上する。

今回の首脳会議で、トランプ氏だけが温暖化対策のパリ協定を支持しなかった。またドイツが米国でクルマを売りすぎているとして、「悪い、非常に悪い」と評したことも広く報じられた。

欧州連合(EU)からの離脱を決めた英国に加えて、米国のこうした姿勢を目の当たりにして、メルケル氏としては、同盟国である米国と英国はもはや当てにできないという明白なことを述べただけかもしれない。それでも、彼女の発言は、少なくとも5つの理由から大間違いだと言わざるを得ない。

■欧米関係疑うのはまだ早い

第1に、大統領に就任して4カ月のトランプ氏の言動から、欧州の平和を70年間維持してきた欧米の同盟関係に疑いの目を向けるのは間違っている。実際に欧米関係を疑う時はくるかもしれない。だが、むしろトランプ氏が大統領に就任したのは例外的なことで、遠からずその職を失う可能性もある。

第2に、欧州加盟国の大半がNATOが定める軍事費負担の目標(編集注、国内総生産の2%)を達成していないのは問題だとするトランプ氏の指摘はもっともだ。確かに同氏の欧州での行動は、彼が物事をあまりに知らないことを浮き彫りにした。しかし、米国がNATOの防衛費の75%近くを拠出し続けることはできないという主張は正しい。これは、オバマ前政権のゲーツ国防長官も指摘していた。

ドイツが米国の防衛支出にタダ乗りしてきたことを考えると、ドイツが米国を同盟国として頼りにできないと非難するのは、少々おこがましい。

第3に、メルケル氏が西側諸国の同盟に亀裂が入りつつあると示唆したことで、トランプ氏がNATO条約第5条への支持を表明しなかったという事態を一層深刻にしてしまった。両氏のいずれの行為も、ロシア政府に西側同盟の分裂を狙う機会を与えることになる。そのことは、欧州の安全保障が一層危険な状況に陥ることを意味する。

第4に、メルケル氏が英国とトランプ氏の米国とをひとくくりにした点は、賢明でも公正でもなかった。気候変動問題では、英国は、米国側ではなくEU側に立っている。同様に、英国のメイ政権はNATOが定める軍資支出の達成が重要だと懸命に強調している。

しかし、メルケル政権が英国の離脱交渉で、現在のような対決的な姿勢を続けるなら――貿易協定の交渉入りすらしていない段階で、英国に巨額の離脱清算金の前払いを約束するよう求めている――それは、欧州の同盟関係に亀裂が入りつつあると自ら指摘したことで、実際に亀裂の拡大を加速させるようなものだ。そして英国とEUの対立を永続させる危険さえある。

離脱交渉では敵対する国々が、NATOとの関係では同盟国となるという状況を英国がどう判断するのか。それを見通すことは難しい。英国が本当に「ハードな(強硬な)」離脱を選んだ場合、NATOに対する英国の関与の仕方にも当然、疑問が生じることになる。ましてや米国も西側諸国の同盟から距離を置こうとしているとなれば、なおさらだ。

■歴史から謙虚に学ぶべき

メルケル氏の発言の最後の問題点は、いつになく彼女が歴史の声に耳を傾けていないように見える点だ。現代のドイツから深く感銘を受けるのは、どんな国と比べても、この国は歴史が残してきた教訓について真剣に考え、徹底的かつ謙虚にその教訓から学んできたという点だ。

それだけにドイツの指導者がミュンヘンのビアホールで英国や米国との決別を語り、しかもその2カ国とロシアを同列に論じる姿は、歴史が繰り返される(編集注、第2次大戦では米英ロが共に戦った)ようで、背筋が寒くなる。

だからといって、メルケル氏は道徳的、政治的にトランプ氏と同じレベルだ、と言うつもりは全くない。トランプ氏は西洋社会の核となる価値観をないがしろにする態度を何度も繰り返し見せてきた。報道の自由から拷問の禁止、世界中の民主主義体制を支援することなどだ。

トランプ氏がこうした姿勢を見せてきたために、今ではドイツのメルケル氏こそが西側世界の真の指導者だと主張する者さえいる。だが、その称号をメルケル氏に与えるのは早すぎたようだ。悲しいことに、同氏には西側諸国の同盟を救うために戦う気はなさそうだ。

By Gideon Rachman(2017年5月30日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/)

(c) The Financial Times Limited 2017. All Rights Reserved. The Nikkei Inc. is solely responsible for providing this translated content and The Financial Times Limited does not accept any liability for the accuracy or quality of the translation.

杉浦記事

「トランプVsメルケル紛争」の現状  日本は双方の過剰反応を戒めよ

トランプ対メルケルの対立で、ただでさえ離反が目立った米欧関係に、「米パリ協定から離脱」という報道の追い打ちである。もはや亀裂は決定的なものとなりつつある。

「アメリカ第一」を掲げるトランプの唯我独尊姿勢は、イギリスの欧州連合(EU)離脱でメルケルが牽引しているEUとの関係悪化を増幅し、抜き差しならぬ段階にまで至った。幸い対ロシア軍事同盟である北大西洋条約機構 (NATO)にひびが入る気配はないが、防衛費分担をめぐってギクシャクし始めたことは否めない。

米欧の内輪もめにプーチンが小躍りしている事は確かだろう。日米関係はかつてなく良好だが、首相・安倍晋三はサミットでも果たしたように米欧離反への接着剤として、双方の「過剰反応」を戒める必要があろう。

「トランプVsメルケル紛争」は根が深い。3月の米独首脳会談でもトランプはメルケルに視線も向けず、そっぽを向き握手すらしなかった。トランプの欧州訪問とこれに続くG7サミットでも激しく対立した。とりわけメルケルは、オバマが任期最終年に署名したパリ協定をトランプが受け入れな かったことに腹を立てたようだ。メルケルは「気候変動に関しては、非常に満足のいかないものだった。サミットでもパリ協定支持、不支持は6対1 で、EUを加えるなら7対1の状況だった」とトランプへの不満を述べている。

このメルケルの不満が爆発したのが28日、ミュンヘンで開催されたパーティー形式の選挙集会での演説だ。ビール片手にメルケルは演説のボルテージを上げ、「私はこの数日で、ヨーロッパが他国に完全に頼れる時代はある程度終わったと感じた」と述べ、米国への不満を表明した。そのうえで、メルケルは、アメリカとの友好関係の重要性を指摘しつつも、 「ヨーロッパは、自分たちの運命を自分たちで切り開いていくしかない」 と述べ、ヨーロッパが地球温暖化対策などを主導していく必要性を訴えた。

発言について米国のNATO大使であったイボ・ダールダーはニューヨークタ イムズ紙に「米国が導き欧州はついてきた時代の終末が来たようだ。米国は主要イシューで欧州と反対方向に向かっていて、メルケルの発言はこうした現実認識から出たもの」と論評した。さらにニューヨークタイムズ紙はG7サミットを論評して「過去ドイツおよび欧州は、自動的に米国に依存してきたが、もはやトランプは信頼すべきパートナーではないと結論づけた」と言い切っている。

またワシントンポスト紙は「メルケル首相が米欧関係に新たなページが開かれたことを宣言した」と分析している。

一方米欧双方にトランプが、トルーマン以来歴代大統領が言及してきたNATO条約第5条への言及がなかったことへの懸念が生じている。5条は「NATO同盟の一つの国への攻撃を同盟全体への攻撃と見なし、集団的に防衛する」とし条約の要である。

懸念の発信源はハーバード大学教授のニコラス・バーンズのようだ。バーンズは「歴代の米大統領は全て第5条への支持を表明した。米国は欧州を防衛するということだ。トランプ氏は、NATOでそうしなかった。これは大きな間違いだ」と指摘した。これにメディアが乗った結果大きな問題となった。しかしウオールストリートジャーナル紙は社説で、トランプはNATO本部で開かれた「第5条とベルリンの壁」に関する記念式典で、 「この式典は記憶と決意のためにある。われわれは2001年9月11日にテロリストによって残忍な方法で殺害された約3000人の罪なき人々をしのび、追悼する。われわれNATO加盟国は歴史上初めて第5条の集団防衛条項を発動し、迅速かつ断固たる態度で対応した」と述べた点を指摘している。直接的ではないが間接的には5条を支持したというのだ。さすがのトランプもNATOを全面否定すればどうなるか位のことは分かっているものとみられる。

メルケルは1次、2次世界大戦の敗戦国としてドイツがあえて米国に異論を唱えることのなかった長い間の慣習を打ち破り、米国の“独善”に勇気を持って発言したことになる。国内はこれを歓迎する空気が濃厚だが、ドイツが直ちに欧州の平和にとっての脅威として登場することはあるまい。しかし、長期的にみれば、大きな曲がり角と見るべきだろう。

背景には9月の総選挙で4回連続で首相の座を狙うメルケルが、トランプに批判的な国内世論に訴えようとする意図もないとは言えない。ドイツの野党は「メルケルがトランプに寛容すぎる」と批判しており、トランプ批判は国内の政情に対応するメッセージでもあった。

こうした中で日米関係は安倍が昨年12月にトランプタワーで就任前のトランプといち早く会談したことが効を奏して、極めて良好である。とりわけ北朝鮮の「核・ミサイル亡者」が暴発している現状において、日米同盟の結束は不可欠だ。トランプにとっても欧州との亀裂が極東にまで及んでは 米国の完全孤立になり、日米関係の堅持は基本戦略だろう。

一方、欧州も安倍がサミットでパリ協定の順守と、保護主義否定に回ったことで一目置いている。安倍は機会を捉えて双方に過剰反応を戒めるべきだろう。トランプも選挙戦のときのような「NATOは時代遅れだ」といった発言は控え、G7の首脳宣言に「保護主義と闘う」との文言を盛り込むこと にも同意した。

メルケルも基本的には親米的である。トランプが数日以内にパリ協定脱退を宣言すれば、当面の米欧関係はこじれにこじれるだろうが、次回G20サ ミットが7月7日から8日にかけて、ハンブルグで開催される予定であり、 こうした場を活用して米欧双方をなだめることも必要だろう。

大前記事

主要国首脳会議が、先月26日、27日、イタリア南部シチリア島のタオルミナで開催されました。

会議では英国マンチェスターで起きた自爆テロを受けて、国際社会が協力することで一致する一方、初参加のトランプ米大統領が各国の貿易障壁を批判し、公平な条件を求めるなど貿易面では摩擦が鮮明になりました。

メルケル首相によると、「7カ国協議ではなく、1対6だった」と言わせるほど、トランプ大統領が孤立していたとのことです。欧州の報道を見ると、トランプ大統領の態度があまりに下品に過ぎてフィットしていない、と伝えていました。

トランプ大統領にとっては外交デビューであり期待されていましたが、関税障壁のことなどすべて自分を中心に前に出ていくだけで、米国の放送局でさえ「恥ずかしい、世界の指導者と同格ではない」と報じていました。

今回のG7でも一層明白になりましたが、トランプ大統領が口先だけの「嘘つき」であるということが、何よりの問題だと私は思います。

例えば、中東問題です。

選挙期間中はサウジアラビアやエジプトを持ち上げて、ISやイランと徹底的に闘うと発言していました。オバマ元大統領はイランと話し合いの場を持つに至りましたが、それをすべて無にしました。それにも関わらず、自分の目の前にスンニ派の人がいると手の平を返して歯の浮くような発言をします。ローマ法王についても、散々喧嘩をふっかけていたのに、いざ目の前に出ると「勉強になりました」という始末です。

米国の選挙民からすれば、トランプ大統領のあのキャンペーンは一体何だったのか?と感じているでしょう。NATOでも今回のG7でも、もはやトランプ大統領の言うことは、何一つ信用されないというレベルになっていると私は感じて言います。

主要国首脳会議はかつてG8でしたが、ロシアが排除されてG7になりました。今のトランプ大統領なら米国も除いて、G6でもいいと欧州側は考えているでしょう。結局、トランプ大統領には自分の信念がないので、目の前のことだけを良く言う、という態度になってしまうのだと思います。

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